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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B66C
管理番号 1309359
審判番号 不服2015-1702  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-28 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2012-524676「作業機械用の少なくとも1つの電気機器を動作させるための電気操作システムおよび電気操作システムを備えた作業機械」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月17日国際公開、WO2011/019307、平成25年 1月17日国内公表、特表2013-501693〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2009年8月13日を国際出願日とする出願であって、平成24年2月10日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、同年4月10日に同法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文並びに同法第184条の8第1項に規定する特許協力条約第34条(2)(b)の規定に基づき提出された補正書の翻訳文が提出され、平成25年10月31日付けで拒絶理由が通知され、平成26年3月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月22日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年1月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、同年6月2日に上申書が提出されたものである。

第2 平成27年1月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成27年1月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成27年1月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年3月27日付けで提出された手続補正書により補正された)下記アに示す請求項1を、下記イに示す請求項1と補正するものである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
燃焼機関(20)を備える作業機械(10)用の少なくとも1の電気機器(60)を動作させるための電気操作システム(50)であって、
(i)前記少なくとも1つの電気機器(60)は、前記作業機械(10)に取り付け可能または配置可能な付属装置(62)であり、あるいは前記少なくとも1つの電気機器(60)は、電動機によって電気的に駆動可能な補助装置であり、前記少なくとも1つの電気機器(60)の動作に必要な電力を生成するフライホイール発電機(52)と、
(ii)前記フライホイール発電機(52)の出力に接続され、前記フライホイール発電機(52)によって提供される電圧レベルを、前記少なくとも1つの電気機器(60)の動作に必要な電圧レベルに適応させる電力用電子装置(54)と、
(iii)前記適応された電圧レベルの電力を前記少なくとも1つの電気機器(60)に提供するために、前記少なくとも1つの電気機器(60)が、前記作業機械(10)に取り付けられるかまたは配置されたときに前記電力用電子装置(54)および前記少なくとも1つの電気機器(60)に接続可能になるように適応されたコネクタ装置(58)と、を含み、
(iv)前記フライホイール発電機(52)は、前記燃焼機関(20)の出力シャフト(24)上、前記燃焼機関(20)と油圧ポンプ(26)の間の出力シャフト(24)上に配置され、
(v)エネルギー・バッファ(56)は、前記フライホイール発電機(52)および/または前記電力用電子装置(54)に結合され、
(vi)前記エネルギー・バッファ(56)が、前記燃焼機関(20)のスタータ・バッテリ(22)の充電システムとは別の前記フライホイール発電機(52)によって充電可能とすること、
を特徴とする電気操作システム(50)。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
燃焼機関(20)を備える作業機械(10)用の少なくとも1の電気機器(60)を動作させるための電気操作システム(50)であって、
(i)前記少なくとも1つの電気機器(60)は、前記作業機械(10)に取り付け可能または配置可能な付属装置(62)であり、あるいは前記少なくとも1つの電気機器(60)は、電動機によって電気的に駆動可能な補助装置であり、前記少なくとも1つの電気機器(60)の動作に必要な電力を生成するフライホイール発電機(52)と、
(ii)前記フライホイール発電機(52)の出力に接続され、前記フライホイール発電機(52)によって提供される電圧レベルを、前記少なくとも1つの電気機器(60)の動作に必要な電圧レベルに適応させる電力用電子装置(54)と、
(iii)前記適応された電圧レベルの電力を前記少なくとも1つの電気機器(60)に提供するために、前記少なくとも1つの電気機器(60)が、前記作業機械(10)に取り付けられるかまたは配置されたときに前記電力用電子装置(54)および前記少なくとも1つの電気機器(60)に接続可能になるように適応されたコネクタ装置(58)と、を含み、
(iv)前記フライホイール発電機(52)は、前記燃焼機関(20)の出力シャフト(24)上、前記燃焼機関(20)と油圧ポンプ(26)の間の出力シャフト(24)上に配置され、
(v)エネルギー・バッファ(56)は、前記フライホイール発電機(52)および/または前記電力用電子装置(54)に結合され、
(vi)前記エネルギー・バッファ(56)が、前記燃焼機関(20)のスタータ・バッテリ(22)の充電システムとは別の前記フライホイール発電機(52)によって充電可能とすること、
(vii)前記エネルギー・バッファ(56)は、フライホイールの回転変動により生じる電力供給の変動を補償すること、
を特徴とする電気操作システム(50)。」
(下線は、本件補正箇所を示すために、請求人が付したものである。)

2 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項である「エネルギー・バッファ(56)」について、「フライホイールの回転変動により生じる電力供給の変動を補償する」ものであるという限定を付加する補正である。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

3 独立特許要件
3-1 刊行物
(1)刊行物1の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である特開2007-45615号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。

ア 「【0001】
本発明は、磁性廃棄物を吸着する作業機械用のリフティングマグネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記作業機械は、エンジン駆動式の発電機により発電された電力を利用してリフティングマグネットを励磁することにより、このリフティングマグネットに磁性廃棄物を吸着させるのが一般である。
【0003】
この種の作業機械としては、当該作業機械の故障を検出する検出手段と、この検出手段により検出された故障の重度に応じて発電機からリフティングマグネットへの電力供給を停止又は継続させる制御手段とを備えたもの(例えば、特許文献1)が知られている。
【特許文献1】特開2004-299820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の作業機械では、リフティングマグネット励磁用の電力が発電機のみから供給されるので、検出された故障の重度にかかわらず、発電機から供給される電力が不足した場合(例えば、エンストが生じた場合)にはリフティングマグネットに対する磁性廃棄物の吸着状態が不安定になるおそれがあった。
【0005】
なお、前記特許文献1には、リフティングマグネットに対する供給電力が不足した場合にリフティングマグネットへの電力供給を継続する旨の記載(0024及び0025段落)があるものの、リフティングマグネット励磁用の電力を発電機のみから供給する特許文献1の構成では、発電機から供給される電力が不足している状況下においては磁性廃棄物の吸着状態を安定に保つだけの十分な電力を確保することが困難だった。
【0006】
そこで、発電機からの供給電力が不足している状況下であっても、磁性廃棄物の吸着状態を、少なくとも一定時間安定して保つことにより安全性を高めることが要望されている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、磁性廃棄物吸着中の状態で発電機からの供給電力が不足している状況下であっても磁性廃棄物の吸着状態を一定時間安定して保つことができるリフティングマグネットの制御装置及びこれを備えた作業機械を提供することを目的としている。」(段落【0001】ないし【0007】)

イ 「【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るハンドリング機の全体構成を示す正面斜視図である。図2は、図1のハンドリング機の電気的接続関係を主に示すブロック図である。
【0025】
各図を参照して、作業機械の一例としてのハンドリング機1は、クローラ2aを備えた下部走行体2と、この下部走行体2上に旋回自在に搭載される上部旋回体3と、この上部旋回体3の前部に起伏自在に装備されたアタッチメント4と、このアタッチメント4の先端部に装着されたリフティングマグネット5と、前記上部旋回体3に搭載された駆動装置6と、前記上部旋回体3に設けられた制御装置7とを備え、リフティングマグネット5を励磁させることにより磁性廃棄物を吸着することが可能とされている。
【0026】
アタッチメント4は、ブーム8と、このブーム8の先端部に連結されるアーム9とから構成されており、そのアーム9の先端部にリフティングマグネット5が揺動自在に取り付けられている。
【0027】
前記ブーム8は、ブームシリンダ10の伸縮動作によって起伏し、アーム9は、アームシリンダ11の伸縮動作によって揺動し、リフティングマグネット5は、マグネット用シリンダ12の伸縮動作によってリンク14a及び14bを介してアーム9に対して揺動する。
【0028】
駆動装置6は、エンジン15により前記各油圧シリンダ10?12用の油圧ポンプ(図示せず)とともにリフティングマグネット5用の油圧ポンプ16を駆動して、この油圧ポンプ16によって後述する発電機19駆動用の油圧モータ17を駆動するようになっている。
【0029】
そして、本発明に係る制御装置7は、前記リフティングマグネット5への電力供給を制御するコントローラ(制御手段)18と、前記油圧モータ17の駆動に応じて発電する発電機19と、吸着スイッチ20及び釈放スイッチ21と、発電機19による発電量が不足している旨を報知する報知ランプ22と、前記エンジン15の回転数を検出するE/G回転数センサ(検出手段の一例)23及びエンジンオイルの圧力を検出する油圧センサ(検出手段の一例)24と、前記発電機19により発電された電力を充電するバッテリ25とを備えている。
【0030】
コントローラ18は、発電機19から出力された電力(三相交流)の整流作用及び電圧制御を行う出力制御部26と、この出力制御部26に対し制御指令を出力する制御指令部27とからなり、出力制御部26からの出力(直流電圧)がリフティングマグネット5に加えられる。また、出力制御部26は、発電機19により発電された電力をバッテリ25へ出力して当該バッテリ25を充電するようになっている。
【0031】
制御指令部27には、吸着スイッチ20及び釈放スイッチ21によるスイッチ信号が入力され、このスイッチ信号に基づき制御指令部27から出力制御部26に吸着(リフティングマグネット5の励磁)、釈放(励磁停止及び逆励磁)の指令が出力される。
【0032】
さらに、制御指令部27は、リフティングマグネット5が励磁されている期間中において、E/G回転数センサ23により検出されたエンジン15の回転数又は油圧センサ24により検出された前記エンジンオイルの圧力が予め設定された基準回転数又は基準油圧以下であると判定した場合に、バッテリ25に充電された電力をリフティングマグネット5へ供給すべく出力制御部26へ指令を出力する。したがって、リフティングマグネット5の励磁期間中に発電機19による電力が低下した場合であっても、バッテリ25の残量分だけ一定時間リフティングマグネット5が励磁された状態を維持することができる。
【0033】
そして、制御指令部27は、前記バッテリ25からリフティングマグネット5への電力供給を指令する際に、当該バッテリ25の電力を報知ランプ22へも供給して当該報知ランプ22を作動すべき指令も出力制御部26へ合わせて出力する。したがって、発電機19による電力が低下した旨を報知ランプ22によって報知することができるので、この報知に気付いた乗員は、バッテリ25の残量が切れるまでの間に、磁性廃棄物の落下を想定した措置を前もって行うことができる。」(段落【0024】ないし【0033】)

ウ 「【0034】
以下、コントローラ18により実行される処理について、図2及び図3を参照して説明する。
【0035】
まず、図略のキースイッチが操作されることによりエンジン15を始動させる(ステップS1)。このステップS1では、エンジン15の駆動と同時に発電機19を始動させる。
【0036】
次いで、吸着スイッチ20が操作されたか否かが判定され(ステップS2)、ここで、吸着スイッチ20が操作されていないと判定されると(ステップS2でNO)、繰り返しステップS2を実行する。
【0037】
一方、吸着スイッチ20が操作されたと判定されると(ステップS2でYES)、発電機19の発電量について予め設定された発電量低下条件(基準供給量)が成立したか否かが判定される(ステップS3)。
【0038】
本実施形態において発電量低下条件は、E/G回転数センサ23により検出されたエンジン15の回転数が予め設定された回転数以下であること、又は油圧センサ24により検出されたエンジンオイルの圧力が予め設定された圧力以下であること、が判定されたときに成立することになる。
【0039】
このステップS4で発電量低下条件が成立していないと判定されると(ステップS3でNO)、発電機19による電力によってリフティングマグネット5を励磁して(ステップS4)、バッテリ25の充電量(残量)が規定値以上であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0040】
ここで、バッテリ25の充電量が規定値未満であると判定されると(ステップS5でNO)、発電機19による電力のうちリフティングマグネット5への供給電力を除く余剰電力をバッテリ25に供給して当該バッテリ25を充電する(ステップS6)。
【0041】
一方、バッテリ25の充電量が規定以上であると判定された場合(ステップS5でYES)、又はステップS6を実行した場合には、次いで、釈放スイッチ21が操作されたか否かが判定される(ステップS7)。
【0042】
ここで、釈放スイッチ21が操作されていないと判定されると(ステップS7でNO)、前記ステップS3を繰り返し実行する一方、釈放スイッチ21が操作されたと判定されると(ステップS7でYES)、リフティングマグネット5の励磁を停止して(ステップS8)、前記ステップS2を繰り返し実行する。
【0043】
一方、前記ステップS4で発電量低下条件が成立したと判定されると(ステップS3でYES)、報知ランプ22によって発電量が低下している旨を報知するとともに(ステップS9)、バッテリ25の電力をリフティングマグネット5へ供給して(ステップS10)、当該リフティングマグネット5を励磁する。
【0044】
したがって、リフティングマグネット5に磁性廃棄物が吸着されている状態で発電機19による電力が低下した場合であっても、バッテリ25に充電された電力によってリフティングマグネット5を励磁することができるので、少なくともバッテリ25の残量分、一定時間磁性廃棄物の吸着状態を安定に保つことができる。
【0045】
ここで、発電機19からの電力でリフティングマグネット5を励磁している状態から急激に発電機19による電力が低下した場合(例えば、エンジン15がエンストを起こした場合)について検討すると、前記ステップS5からS11までの処理の進行の間にリフティングマグネット5への供給電力が急激に低下するため、この間に磁性廃棄物が落下してしまうようにも思われるが、図4に示すように、リフティングマグネット5では供給電力増加時の磁場L1に対し供給電力低下時の磁場L2が比較的高い値を維持しながら減少する、すなわち、リフティングマグネット5には供給電力低下時に残留磁化が生じるので、前記ステップS5からS11の間、磁性廃棄物を吸着させておくことが可能となる。
【0046】
そして、上述した供給電力が低下している旨の報知(ステップS9)及びバッテリ25による電力供給(ステップS10)は、釈放スイッチ21が操作されるまで実行され(ステップS11)、当該釈放スイッチ21が操作されると(ステップS11でYES)、バッテリ25からリフティングマグネット5への電力供給を停止することにより当該リフティングマグネット5の励磁を停止して(ステップS12)、当該処理を終了する。
【0047】
なお、前記ステップS9?ステップS11の処理の実行中にバッテリ25が残量切れした場合にもコントローラ18の処理が強制終了される。
【0048】
以上説明したように、前記制御装置7によれば、発電機19から供給されている電力供給量が不足しているときにバッテリ25に充電された電力を供給してリフティングマグネット5を励磁することができるので、少なくともバッテリ25の残量分だけ、一定時間リフティングマグネット5による磁性廃棄物の吸着状態を安定に保つことができる。
【0049】
したがって、前記制御装置7によれば、磁性廃棄物の吸着中の状態で発電機19からの供給電力が低下した場合であっても安全性を確保することができる。」(段落【0034】ないし【0049】)

(2)上記(1)及び図面から分かること
上記(1)イの段落【0029】及び【0030】並びに図2の記載によれば、出力制御部26からの出力(直流電圧)がリフティングマグネット5に加えられることから、制御装置7は、出力制御部26とリフティングマグネット5とを電気的に接続可能な接続部を有することが分かる。

(3)刊行物1に記載された発明
上記(1)及び(2)の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されているといえる。

「エンジン15を備えるハンドリング機1に備えられたリフティングマグネット5を制御する制御装置7であって、
リフティングマグネット5は、ハンドリング機1に備えられたものであり、
リフティングマグネット5を励磁するのに必要な電力を出力する発電機19と、
発電機19の出力に接続され、発電機19から出力された電力を、リフティングマグネット5に加えるために整流作用及び電圧制御を行う出力制御部26と、
整流作用及び電圧制御を行った電力をリフティングマグネット5に加えるために、リフティングマグネット5がハンドリング機1に備えられたときに、出力制御部26とリフティングマグネット5とを電気的に接続可能な接続部と、を含み、
バッテリ25は、出力制御部26に結合され、
バッテリ25は、発電機19によって充電され、
バッテリ25は、発電機19による電力が低下した場合に、リフティングマグネット5を励磁する制御装置7。」

(4)刊行物2の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である特開2003-235208号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の記載がある。

「【0008】
【発明の実施の形態】本発明にかかる建設機械の動力源の実施形態について図1ないし図2を参照して説明する。なお、図中同一部品には同一符号を付し説明の重複を省略する。図1は本発明の実施形態の説明図であって、前記図4に示した公知の油圧ショベルの動力源に実施した例である。
【0009】エンジンEのフライホイール8の外周面にロータマグネット9を設置している。マグネット9は永久磁石あるいは、電磁石いずれでもよい。前記マグネット9に対向してフライホイールハウジング11の内周面にステータコイル10を設置し、フライホイール8の外周部にアシスト用電動/発電機MGを形成させている。
【0010】図2は本発明の他の実施形態の説明図であって、フライホイール8の内周面にロータマグネット9を設置し、該マグネット9に対向してステータコイル10をフライホイールハウジング11またはエンジンケースに取り付けられたフランジ付円筒状機枠12の外周面に設置し、フライホイール8の内周部にアシスト用電動/発電機MGを形成させている。なお、アシスト用電動/発電機は公知のインバータ制御による三相交流誘導機やDCブラシレス電動/発電機が採用される。
【0011】本発明は内燃エンジンEのフライホイール8の外周部あるいは内周部にアシスト用電動/発電機MGを形成させたので既存の動力源の設置スペース内にアシスト用電動/発電機が容易に収容でき、エンジンの低負荷運転時には前記電動/発電機MGは発電機として運転され、図示していないバッテリへ充電し、逆にエンジンの高負荷運転時には前記電動/発電機MGは、前述のバッテリに蓄電された電気エネルギーを取り出して電動機として運転され油圧掘削機のアクチュエータの動力補助として機能する。」(段落【0008】ないし【0011】)

3-2 対比
本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明における「エンジン15」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願補正発明における「燃焼機関」に相当し、以下同様に、「ハンドリング機1」は「作業機械」に、「リフティングマグネット5」は「少なくとも1の電気機器」及び「少なくとも1つの電気機器」に、「制御装置7」は「電気操作システム」に、「ハンドリング機1に備えられたリフティングマグネット5を制御する制御装置7」は「作業機械用の少なくとも1の電気機器を動作させるための電気操作システム」に、「リフティングマグネット5を励磁するのに必要な電力を出力する」は「少なくとも1つの電気機器の動作に必要な電力を生成する」に、「リフティングマグネット5に加えるために整流作用及び電圧制御を行う」は「少なくとも1つの電気機器の動作に必要な電圧レベルに適応させる」に、「出力制御部26」は「電力用電子装置」に、「整流作用及び電圧制御を行った電力をリフティングマグネット5に加えるために」は「適応された電圧レベルの電力を少なくとも1つの電気機器に提供するために」に、「出力制御部26とリフティングマグネット5とを電気的に接続可能な接続部」は「電力用電子装置および少なくとも1つの電気機器に接続可能になるように適応されたコネクタ装置」に、「バッテリ25」は「エネルギー・バッファ」に、それぞれ相当する。
また、刊行物1に記載された発明における「発電機19」は、「発電機」という限りにおいて、本願補正発明における「フライホイール発電機」に相当し、刊行物1に記載された発明における「発電機19から出力された電力」は、「発電機によって提供される電力レベル」という限りにおいて、本願補正発明における「フライホイール発電機によって提供される電圧レベル」に相当する。
さらに、刊行物1に記載された発明における「リフティングマグネット5は、ハンドリング機1に備えられたもの」は、本願補正発明における「少なくとも1つの電気機器は、作業機械に取り付け可能な付属装置」に相当するから、択一的に記載された本願補正発明における「少なくとも1つの電気機器は、作業機械に取り付け可能または配置可能な付属装置であり、あるいは少なくとも1つの電気機器は、電動機によって電気的に駆動可能な補助装置」に相当し、
刊行物1に記載された発明における「リフティングマグネット5がハンドリング機1に備えられたときに」は、本願補正発明における「少なくとも1つの電気機器が、作業機械に取り付けられるときに」に相当するから、択一的に記載された本願補正発明における「少なくとも1つの電気機器が、作業機械に取り付けられるかまたは配置されたときに」に相当し、
刊行物1に記載された発明における「バッテリ25は、出力制御部26に結合され」は、本願補正発明における「エネルギー・バッファは、電力用電子装置に結合され」に相当するから、選択的に記載された本願補正発明における「エネルギー・バッファは、フライホイール発電機および/または電力用電子装置に結合され」に相当する。

そうすると、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とは、
「燃焼機関を備える作業機械用の少なくとも1の電気機器を動作させるための電気操作システムであって、
少なくとも1つの電気機器は、作業機械に取り付け可能または配置可能な付属装置であり、あるいは少なくとも1つの電気機器は、電動機によって電気的に駆動可能な補助装置であり、少なくとも1つの電気機器の動作に必要な電力を生成する発電機と、
発電機の出力に接続され、発電機によって提供される電圧レベルを、少なくとも1つの電気機器の動作に必要な電圧レベルに適応させる電力用電子装置と、
適応された電圧レベルの電力を少なくとも1つの電気機器に提供するために、少なくとも1つの電気機器が、作業機械に取り付けられるかまたは配置されたときに電力用電子装置および少なくとも1つの電気機器に接続可能になるように適応されたコネクタ装置と、を含み、
エネルギー・バッファは、発電機および/または電力用電子装置に結合される電気操作システム。」の点で一致し、次の点で相違する。
(1)相違点1
発電機に関し、本願補正発明においては、発電機が「フライホイール発電機」であって、「燃焼機関の出力シャフト上、燃焼機関と油圧ポンプの間の出力シャフト上に配置され」るのに対し、刊行物1に記載された発明においては、発電機19が「フライホイール発電機」であるか否かが不明であり、いずれの箇所に配置されるか不明な点(以下、「相違点1」という。)。
(2)相違点2
本願補正発明においては、「エネルギー・バッファが、燃焼機関のスタータ・バッテリの充電システムとは別の発電機によって充電可能とする」のに対し、刊行物1に記載された発明においては、バッテリ25は発電機19によって充電されるものの、その発電機19がエンジン15のスタータ・バッテリの充電システムとは別の発電機であるか否かが不明な点(以下、「相違点2」という。)。
(3)相違点3
本願補正発明においては、「エネルギー・バッファは、フライホイールの回転変動により生じる電力供給の変動を補償する」のに対し、刊行物1に記載された発明においては、バッテリ25は、発電機19による電力が低下した場合に、リフティングマグネット5を励磁する点(以下、「相違点3」という。)。

3-3 判断
(1)相違点1について
刊行物1に記載された発明は、ハンドリング機1のエンジン15によって間接的に発電機19を駆動して発電するものであるところ、ハンドリング機1におけるエンジン15と油圧ポンプ16の間の出力シャフト上に、フライホイール及びフライホイール発電機を配置し、エンジン15によって直接フライホイール発電機を駆動して発電することは、刊行物2にみられるように、本件出願前に周知の技術(刊行物2[上記3-1(4)並びに図1及び図2]のほか、特開2007-181273号公報[段落【0016】ないし【0026】及び図1]及び特開2008-290594号公報[段落【0017】ないし【0025】並びに図1及び図2]を参照。以下、「刊行物2にみられる周知技術」という。)である。
ここで、刊行物1に記載された発明において、ハンドリング機1のエンジン15にフライホイールを設けるか否かは、当業者にとって適宜選択しうる設計的事項であり、フライホイール発電機であるか否かは不明であるものの、少なくとも発電機19を備えたものでもあるから、刊行物1に記載された発明において、上記刊行物2にみられる周知技術を採用して、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

(2)相違点2について
刊行物1に記載された発明は、バッテリ25を充電する発電機19が、エンジン15のスタータ・バッテリの充電システムとは別の発電機であるか否かが不明であるが、それらを別のものとして構成することは、本件出願前に周知の事項(拒絶査定時に提示された特開2007-119179号公報[段落【0008】ないし【0014】及び図2]を参照。以下、「周知事項1」という。)である。
そうすると、刊行物1に記載された発明において、上記周知事項1に基づいて、バッテリ25を充電する発電機19を、エンジン15のスタータ・バッテリの充電システムの発電機とは別の発電機として構成し、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

(3)相違点3について
本願補正発明は、「エネルギー・バッファは、フライホイールの回転変動により生じる電力供給の変動を補償する」ものであるが、特許協力条約第34条(2)(b)の規定に基づき提出された補正書の翻訳文における明細書段落【0031】(出願当初の明細書では段落【0029】)には、
「エネルギー・バッファ56は、フライホイール52の回転の変動によりそれに対応して生じるフライホイール52の電力供給の変動を補償することができ、フライホイール52の回転の変動は、油圧ポンプ26に接続された作業機械10の燃焼機関20および/または油圧システム(図示せず)の動作の変動の結果のことがある。」
と記載されていることから、フライホイールの回転変動は、燃焼機関20の動作の変動の結果であるか、油圧システムの動作の変動の結果であると解釈すべきものである。

一方、刊行物1に記載された発明は、「エネルギー・バッファは、発電機による電力が低下した場合に、少なくとも1つの電気機器を励磁する」ものであるところ、発電機19を駆動するのは、エンジン15、油圧ポンプ16及び油圧モータ17であり(段落【0028】及び【0029】)、発電機19による電力が低下した場合として、エンジン15がエンストを起こした場合が例示されているから(段落【0045】)、当業者であれば、刊行物1に記載された発明における発電機による電力が低下した場合が生じるのは、エンジン15の動作の変動の結果であるか、油圧ポンプ16又は油圧モータ17の動作の変動の結果であるか、発電機19自身の動作の変動の結果(以下、「エンジン15等の動作の変動の結果」という。)であると理解することが自然である。
そして、上記(1)で検討したように、刊行物1に記載された発明において、エンジン15にフライホイールを設けることは、当業者であれば容易に想到できたことであるので、エンジン15等の動作の変動の結果によってフライホイールの回転が変動し、そのフライホイールの回転変動により電力供給の変動が生じることは明らかである。
そうすると、刊行物1に記載された発明における「バッテリ25」が、「発電機19」による電力が低下した場合に、少なくとも1つの電気機器を励磁することは、本願補正発明における「フライホイールの回転変動により生じる電力供給の変動を補償する」ことと、同等の技術的意味を持つものであるといえる。

なお、審判請求人は、平成27年6月2日に提出した上申書において、
「燃焼機関にフライホイールを設ける理由を考慮すれば、燃焼機関の回転変動といえば、燃焼機関1サイクル中の回転変動であり、燃焼機関に直結されるフライホイールの回転変動も燃焼機関1サイクル中の回転変動によって生じる回転変動です。」
と説明している。しかしながら、明細書を参酌すると、そのように限定して解釈すべきものでないことは、上述のとおりである。
仮に、燃焼機関の回転変動が、燃焼機関1サイクル中の回転変動であると解釈したとしても、本願補正発明における「フライホイールの回転変動」には、明細書を参酌すると、上述のとおり、燃焼機関20の動作の変動の結果だけでなく、油圧システムの動作の変動の結果も含まれるものである。したがって、燃焼機関20の動作の変動が燃焼機関1サイクル中の回転変動であると限定して解釈したとしても、油圧システムの動作の変動の結果による回転変動を排除するものではないから、上記判断に変わりはない。
さらに、本願補正発明における「フライホイールの回転変動」が、燃焼機関1サイクル中の回転変動のみに限定して解釈すると仮定したとしても、燃焼機関が1サイクル中に回転変動することによって電力供給が変動することは、本件出願前に周知の事項(特開昭63-167640号公報[明細書第3ページ左上欄第10行ないし第13行及び第1図]、実願平1-109596号(実開平3-48333号)のマイクロフィルム[明細書第4ページ第15行ないし第19行及び第5図]及び特開2008-255876号公報[段落【0011】及び図13]を参照。以下、「周知事項2」という。)であるから、刊行物1に記載された発明において、上記周知事項2を考慮して、「発電機による電力が低下した場合」に加えて、燃焼機関が1サイクル中に回転変動より生じる電力供給の変動についても、「エネルギー・バッファ」が「少なくとも1つの電気機器を励磁する」ように構成することは、当業者であれば容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明は、全体としてみても、刊行物1に記載された発明、刊行物2にみられる周知技術及び周知事項1から、又は、刊行物1に記載された発明、刊行物2にみられる周知技術、周知事項1及び周知事項2から予想される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2にみられる周知技術及び周知事項1に基いて、又は、刊行物1に記載された発明、刊行物2にみられる周知技術、周知事項1及び周知事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-4 まとめ
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
平成27年1月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし7に係る発明は、平成26年3月27日付けで提出された手続補正書により補正された請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1アに示した請求項1に記載されたとおりのものである。

1 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載及び刊行物に記載された発明については、上記第2[理由]3-1に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は、上記第2で検討した本願補正発明の発明特定事項である「エネルギー・バッファ(56)」について、「フライホイールの回転変動により生じる電力供給の変動を補償する」ものであるという限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含む本願補正発明が、上記第2[理由]3-3で述べたとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は実質的に、上記第2[理由]3-2で示した相違点1及び相違点2の点で相違するから、本願発明は、同様の理由により、刊行物1に記載された発明、刊行物2にみられる周知技術及び周知事項1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-28 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-17 
出願番号 特願2012-524676(P2012-524676)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B66C)
P 1 8・ 575- Z (B66C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 筑波 茂樹  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 佐々木 訓
槙原 進
発明の名称 作業機械用の少なくとも1つの電気機器を動作させるための電気操作システムおよび電気操作システムを備えた作業機械  
代理人 秋庭 英樹  
代理人 重信 和男  
代理人 溝渕 良一  
代理人 清水 英雄  
代理人 林 道広  
代理人 高木 祐一  
代理人 堅田 多恵子  
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