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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1309460
審判番号 不服2014-11565  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-18 
確定日 2016-01-06 
事件の表示 特願2009-509872「トナー組成物及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日国際公開、WO2007/133669、平成21年10月22日国内公表、特表2009-537031〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2007年(平成19年)5月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年(平成18年)5月12日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年8月31日付けで拒絶理由が通知され、平成25年3月4日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月29日付けで拒絶理由が通知され、同年10月2日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月24日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年2月4日付けで拒絶査定され、これを不服として、同年6月18日に審判請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成26年6月18日に提出された手続補正書による補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成26年6月18日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、平成26年1月9日に提出された手続補正書によって補正された本件補正前(以下「本件補正前」という。)の特許請求の範囲についてするものであって、そのうち請求項1についての補正は、以下のとおりである。

(1)本件補正前の請求項1
「 (a)トナー粒子、及び
(b)(i)疎水性処理剤で表面処理された複合金属酸化物粒子であって、第1の金属酸化物からなるコア(ここで、コアは実質的に球形であり、凝集しておらず、そして表面を有する)と、(ii)水中で形成されたものであって、第2の金属酸化物からなるコーティングとを含む複合金属酸化物粒子
の混合物を含むトナー組成物であって、
コーティングは、コアの表面に接着しており、コーティングは、連続的又は非連続的であり、そして第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物と同一であるかもしくは異なっており、前記第1及び第2の金属酸化物は、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化スズ、及び酸化セリウムよりなる群から独立に選択され、
但し、コーティングが連続的である場合に、第2の金属酸化物は第1の金属酸化物と同じではなく、そして
前記複合金属酸化物粒子は1.5未満のσ_(g)を有する、トナー組成物。」

(2)本件補正により補正された請求項1(下線は補正箇所を示す。)
「 (a)トナー粒子、及び
(b)(i)疎水性処理剤で表面処理された複合金属酸化物粒子であって、第1の金属酸化物からなるコア(ここで、コアは実質的に球形であり、凝集しておらず、そして表面を有する)と、(ii)水中で形成されたものであって、第2の金属酸化物からなるコーティングとを含む複合金属酸化物粒子
の混合物を含むトナー組成物であって、
コーティングは、コアの表面に接着しており、コーティングは、連続的又は非連続的であり、そして第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物と同一であるかもしくは異なっており、前記第1及び第2の金属酸化物は、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化スズ、及び酸化セリウムよりなる群から独立に選択され、
但し、コーティングが連続的である場合に、第2の金属酸化物は第1の金属酸化物と同じではなく、そして
前記複合金属酸化物粒子は、単離された複合金属酸化物粒子であり、30nm又はそれ以上の平均粒子径を有し、そして1.5未満のσ_(g)を有する、トナー組成物。」

2 補正の目的の適否及び新規事項の有無
上記請求項1に対する補正は、特許法184条の12第2項の規定により本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面とされる国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面中の説明に限る)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く)(以下「翻訳文等」という。)の【0039】の記載を根拠にして、本件補正前の「複合金属酸化物粒子」を「単離された」ものに限定し、かつ、翻訳文等の【0019】及び【0026】の記載を根拠にして、本件補正前の本件補正前の「複合金属酸化物粒子」を、「30nm又はそれ以上の平均粒子径を有」するものに限定するものである。
したがって、上記補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、本件補正の前後で請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、上記補正は、翻訳文等に記載された事項の範囲内においてした補正であって、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか)について、以下検討する。

3 独立特許要件の検討
(1)引用例の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で「引用文献3」として引用され、本願の優先権主張の日より前(以下「優先日前」という。)に頒布された刊行物である、特開2002-148848号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)

(ア)「【請求項1】 樹脂、着色剤、及び外部添加剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、前記外部添加剤の少なくとも1つがシリカ内包酸化チタン粒子であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。」

(イ)「【請求項3】 前記シリカ内包酸化チタン粒子が疎水化剤で表面処理され、ESCAによる測定で、チタン原子の濃度が0.02?5atm%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。」

(ウ)「【請求項5】 前記シリカ内包酸化チタン粒子の一次平均粒径が11?120nm、BET値が40?200g/m2、疎水化度が40?80%であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。」

(エ)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、使用環境の温湿度の影響を受けず、長期に亘って使用しても画像濃度の低下やカブリの発生等の画像欠陥を生じない静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、現像方法、画像形成方法、画像形成装置を提供することにある。」

(オ)「【0035】以下、本発明に用いられるシリカ内包酸化チタン粒子について記載する。本発明のシリカ内包酸化チタン粒子はシリカ粒子の表面を酸化チタン粒子又は酸化チタン膜で被覆したシリカ内包酸化チタン粒子である。
【0036】シリカ粒子の表面を酸化チタン粒子又は酸化チタン膜で被覆することにより、通常のシリカ粒子に比し、体積固有抵抗や水分含有量の環境依存性が小さく、これをトナーの外添剤として適用したときには良好な画像形成を可能にするトナーを作製することが出来る。
【0037】ここで酸化チタンの被覆状態はシリカ粒子の表面を全面均一に被覆することが好ましいが、部分的な被覆状態でも効果がある。
【0038】本発明のシリカ内包酸化チタン粒子の酸化チタンの被覆量はシリカ粒子100質量部に対し、酸化チタン5?40質量部が好ましい。特に好ましい範囲は10?30質量部である。酸化チタンの被覆量が5質量部未満では、低温低湿で連続使用した場合、帯電量上昇、濃度低下の問題がある。40質量部より多いと、高温高湿での放置帯電量低下、階調性の変動が大きく、細線が太る、細かい文字が潰れるなどの問題がある。
【0039】本発明のシリカ内包酸化チタン粒子の一次平均粒径は11?120nmが好ましい。この範囲の一次平均粒径を有することで、シリカ内包酸化チタン粒子はトナー母体、すなわち着色粒子に埋没しにくくなり、且つトナーに十分な流動性を付与でき、その結果トナーの帯電量変化が少なく、最終的に得られる画像の階調性変動が少ない。
【0040】なお、シリカ内包酸化チタン粒子の一次平均粒径は、透過型電子顕微鏡により観察して、画像解析により測定されるフェレ径の平均値をいう。
【0041】本発明の酸化チタンで被覆されたシリカ粒子の製造方法について記載する。即ち、シリカ内包酸化チタン粒子は湿式法で作製できる。前記湿式法としては、硫酸法及び塩酸法が挙げられる。湿式法によるシリカ内包酸化チタン粒子の製造例として硫酸法を以下に説明する。」

(カ)「【0044】本発明のシリカ内包酸化チタン粒子は疎水化し、湿度による帯電特性の変動を抑制するためにシランカップリング剤等の疎水化剤で表面処理することが好ましい。以下に好ましい疎水化の条件について記載する。
【0045】本発明のシリカ内包酸化チタン粒子は該微粒子をESCAで測定したとき、チタン原子の濃度が0.02?5atm%となるように疎水化処理剤で表面処理を行うことが好ましい。0.02atm%未満では、低温低湿で連続使用した場合、帯電量上昇、濃度低下の問題がある。5atm%より大きいと、高温高湿での放置帯電量低下、階調性の変動が大きく、細線が太る、細かい文字が潰れるなどの問題がある。ここで、チタン原子の濃度は、ESCAの測定法により、炭素、酸素、ケイ素、チタン原子を測定し、この4原子の中で、チタン原子の相対的な占有率から求める。
【0046】疎水化処理の方法としては、前述の酸化チタンで被覆されたシリカ粒子を後述する疎水化剤で処理する方法を挙げることができる。疎水化度としては、後述するメタノールウェッタビリティで測定した場合の測定値としては40?80が好ましい。
【0047】本発明のシリカ内包酸化チタン粒子の表面を疎水化する疎水化剤としては、例えば各種チタンカップリング剤、シランカップリング剤等のいわゆるカップリング剤やシリコーンオイル等が好ましく、又、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩等の疎水化剤も好ましい。中でもシランカップリング剤を用いた表面処理が最も好ましい。
【0048】以下、これら粒子の疎水化処理を行うための疎水化剤及びその処理方法について説明する。
【0049】上記疎水化処理を行う為の疎水化剤としては、例えばテトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートなどのチタンカップリング剤が挙げられる。さらに、シランカップリング剤としては、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ノルマルブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシランなどが挙げられる。なかでも、トナーに適度な負帯電性を付与する観点からノルマルブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシランが好ましく用いられる。
【0050】また、脂肪酸及びその金属塩としては、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸があげられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウムなどの金属との塩があげられる。
【0051】シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイルなどを挙げることができる。
【0052】これら化合物は、素材となる酸化チタン粒子、シリカ粒子、或いは酸化チタンで被覆されたシリカ粒子に対して質量で5?40%添加、好ましくは10?35%添加し、被覆することが良い。これらの材料を組み合わせて使用することもできる。又、アンモニウム塩を官能基として有するポリシロキサンで表面処理することもできる。」

(キ)「【0068】次に、本発明に用いられる上記外添剤以外のトナー構成について記載する。本発明のトナーは少なくとも樹脂及び着色剤を含有する着色粒子に外部添加剤を混合して作製される。この外部添加剤を混合する以前の着色粒子は大別して樹脂と着色剤の混練、粉砕による粉砕法と着色粒子を化学的に形成する重合法があるが、本発明のトナーは重合法で作製したトナーを用いることにより、より顕著な効果を発揮できる。即ち重合法で作製したトナーは粒度分布、形状係数分布等のトナー形状をシャープに均一化できることから、シリカ内包酸化チタン粒子の面積密度を均一にでき、外添剤に用いる効果が顕著に現れる。」

(ク)「【0326】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、文中「部」とは「質量部」を表す。
【0327】シリカ内包酸化チタン粒子1の作製
160g/Lの炭酸ナトリウム溶液中にシリカゾルを加え、続いて、脱鉄処理を行ったメタチタン酸を熱濃硫酸により溶解した硫酸チタニル溶液を、炭酸ナトリウム溶液中に液温が25℃を越えないようにゆっくりと滴下し、pHが10になった時、硫酸チタニルの滴下を止め沈殿を生成させた。
【0328】この沈殿を硫酸根がなくなるまで充分濾過洗浄した後、塩酸を添加し、酸化チタン濃度30g/L、塩酸濃度15g/Lに調整した。この液を加温し85℃で30分熟成し、シリカを内包したチタニアゾルを作製した。その後、4mol/L水酸化ナトリウムにてpH5.5まで中和し濾過水洗を行った後、300℃で脱水焼成してシリカ内包酸化チタン粒子を得た。
【0329】得られたシリカ内包酸化チタン粒子を水スラリーとし、湿式粉砕した後、6mol/L塩酸を添加しpHを2.0に調整し、n-ブチルトリメトキシシランを酸化チタンに対し25質量%(酸化チタン100質量部に対し、n-ブチルトリメトキシシラン25質量部)添加した。30分間撹拌保持後、4mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えpH6.5まで中和し、濾過、水洗、150℃で乾燥後、気流粉砕機にて微粉砕を行い、疎水性シリカ内包酸化チタン粒子を得た。これを「シリカ内包酸化チタン粒子1」とする。
【0330】「シリカ内包酸化チタン粒子1」は、シリカに対する酸化チタンの構成比が17質量%(シリカ100質量部に対し酸化チタン17質量部と言う意味)、ESCAによるチタン原子の濃度が0.28atm%、珪素原子の濃度が47.14atm%、炭素原子の濃度が18.00atm%、高温高湿下(30℃80%RH)の体積固有抵抗が5.4×10^(11)Ωcm、同じく高温高湿下(30℃80%RH)の水分量が0.57質量%、一次粒子径が20nm、BET値が134.9m^(2)/g、疎水化度が61.5%であった。
【0331】シリカ内包酸化チタン粒子2の作製
シリカ内包酸化チタン粒子1の作製において、シリカゾルの粒径、硫酸チタニルの滴下量を変えて、またn-ブチルトリメトキシシランの代わりにオクチルトリメトキシシランで表面処理し、本発明の疎水性シリカ内包酸化チタン粒子を得た。これを「シリカ内包酸化チタン粒子2」とする。
【0332】「シリカ内包酸化チタン粒子2」はシリカに対する酸化チタンの構成比が6.2質量%、ESCAによるチタン原子の濃度が0.06atm%、珪素原子の濃度が52.14atm%、炭素原子の濃度が21.12atm%、高温高湿下(30℃80%RH)の体積固有抵抗が9.8×10^(12)Ωcm、同じく高温高湿下(30℃80%RH)の水分量が0.32質量%、一次粒子径が15nm、BET値が194.3m^(2)/g、疎水化度が76.5%であった。
【0333】シリカ内包酸化チタン粒子3の作製
シリカ内包酸化チタン粒子1の作製において、シリカゾルの粒径、硫酸チタニルの滴下量を変えて、またn-ブチルトリメトキシシランの代わりにデシルトリメトキシシランで表面処理し、本発明の疎水性シリカ内包酸化チタン粒子を得た。これを「シリカ内包酸化チタン粒子3」とする。
【0334】「シリカ内包酸化チタン粒子3」は、シリカに対する酸化チタンの構成比が36.9質量%、ESCAによるチタン原子の濃度が4.15atm%、珪素原子の濃度が45.21atm%、炭素原子の濃度が16.21atm%、高温高湿下(30℃80%RH)の体積固有抵抗が1.48×10^(11)Ωcm、高温高湿下(30℃80%RH)の水分量が1.26質量%、一次粒子径が95nm、BET値が42.1m^(2)/g、疎水化度が45.1%であった。」

(ケ)「【0355】トナー1?9、及び比較用トナー1、2の作製
以上のようにして得られた着色粒子1?7の各々100質量部に、表2にしめすシリカ内包酸化チタン粒子1?3を1.0質量部とステアリン酸亜鉛0.1質量部となる割合で添加し、ヘンシェルミキサーにより混合し、本発明のトナー1?9を作製した。なお、へンシェルミキサーの回転翼の周速を30m/秒とし、20℃のジャケット冷却水を流して30分間混合した。」

(コ)上記(ア)?(ケ)から、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「少なくとも樹脂及び着色剤を含有する着色粒子と、外部添加剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記外部添加剤の少なくとも1つが、シリカ粒子の表面を酸化チタン粒子又は酸化チタン膜で被覆したシリカ内包酸化チタン粒子であって、酸化チタンの被覆状態はシリカ粒子の表面を全面均一に被覆することが好ましいが、部分的な被覆状態でもよいものであり、
前記シリカ内包酸化チタン粒子が疎水化剤で表面処理されており、
前記疎水化剤は、例えばノルマルブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等であり、
前記シリカ内包酸化チタン粒子の一次平均粒径が11?120nmであり、
前記シリカ内包酸化チタン粒子は湿式法で作製したものであり、
具体的には、下記a?cの記載のように、シリカ内包酸化チタン粒子1?3を作製し、
その後着色粒子の100質量部に、作製したシリカ内包酸化チタン粒子1?3を1.0質量部とステアリン酸亜鉛を0.1質量部となる割合で添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して作製した、
静電荷像現像用トナー。
シリカ内包酸化チタン粒子の作製手順は以下のとおり。
a シリカ内包酸化チタン粒子1の作製
(a)160g/Lの炭酸ナトリウム溶液中にシリカゾルを加え、続いて、脱鉄処理を行ったメタチタン酸を熱濃硫酸により溶解した硫酸チタニル溶液を、炭酸ナトリウム溶液中に液温が25℃を越えないようにゆっくりと滴下し、pHが10になった時、硫酸チタニルの滴下を止め沈殿を生成させた。
(b)この沈殿を硫酸根がなくなるまで充分濾過洗浄した後、塩酸を添加し、酸化チタン濃度30g/L、塩酸濃度15g/Lに調整した。この液を加温し85℃で30分熟成し、シリカを内包したチタニアゾルを作製した。その後、4mol/L水酸化ナトリウムにてpH5.5まで中和し濾過水洗を行った後、300℃で脱水焼成してシリカ内包酸化チタン粒子を得た。
(c)得られたシリカ内包酸化チタン粒子を水スラリーとし、湿式粉砕した後、6mol/L塩酸を添加しpHを2.0に調整し、n-ブチルトリメトキシシランを酸化チタンに対し25質量%(酸化チタン100質量部に対し、n-ブチルトリメトキシシラン25質量部)添加した。30分間撹拌保持後、4mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えpH6.5まで中和し、濾過、水洗、150℃で乾燥後、気流粉砕機にて微粉砕を行い、疎水性シリカ内包酸化チタン粒子を得た。これを「シリカ内包酸化チタン粒子1」とする。
(d)「シリカ内包酸化チタン粒子1」は、シリカに対する酸化チタンの構成比が17質量%(シリカ100質量部に対し酸化チタン17質量部と言う意味)、ESCAによるチタン原子の濃度が0.28atm%、珪素原子の濃度が47.14atm%、炭素原子の濃度が18.00atm%、高温高湿下(30℃80%RH)の体積固有抵抗が5.4×10^(11)Ωcm、同じく高温高湿下(30℃80%RH)の水分量が0.57質量%、一次粒子径が20nm、BET値が134.9m^(2)/g、疎水化度が61.5%であった。
b シリカ内包酸化チタン粒子2の作製
(a)シリカ内包酸化チタン粒子1の作製において、シリカゾルの粒径、硫酸チタニルの滴下量を変えて、またn-ブチルトリメトキシシランの代わりにオクチルトリメトキシシランで表面処理し、本発明の疎水性シリカ内包酸化チタン粒子を得た。これを「シリカ内包酸化チタン粒子2」とする。
(b)「シリカ内包酸化チタン粒子2」はシリカに対する酸化チタンの構成比が6.2質量%、ESCAによるチタン原子の濃度が0.06atm%、珪素原子の濃度が52.14atm%、炭素原子の濃度が21.12atm%、高温高湿下(30℃80%RH)の体積固有抵抗が9.8×10^(12)Ωcm、同じく高温高湿下(30℃80%RH)の水分量が0.32質量%、一次粒子径が15nm、BET値が194.3m^(2)/g、疎水化度が76.5%であった。
c シリカ内包酸化チタン粒子3の作製
(a)シリカ内包酸化チタン粒子1の作製において、シリカゾルの粒径、硫酸チタニルの滴下量を変えて、またn-ブチルトリメトキシシランの代わりにデシルトリメトキシシランで表面処理し、本発明の疎水性シリカ内包酸化チタン粒子を得た。これを「シリカ内包酸化チタン粒子3」とする。
(b)「シリカ内包酸化チタン粒子3」は、シリカに対する酸化チタンの構成比が36.9質量%、ESCAによるチタン原子の濃度が4.15atm%、珪素原子の濃度が45.21atm%、炭素原子の濃度が16.21atm%、高温高湿下(30℃80%RH)の体積固有抵抗が1.48×10^(11)Ωcm、高温高湿下(30℃80%RH)の水分量が1.26質量%、一次粒子径が95nm、BET値が42.1m^(2)/g、疎水化度が45.1%であった。」
(以下「引用発明1」という。)

イ 原査定の拒絶の理由で「引用文献6」として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2001-66820号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】 少なくとも、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有する着色粒子と外添剤とを有する静電潜像現像用トナーにおいて、該外添剤が、真比重が1.3?1.9であり、体積平均粒径が80?300nmである単分散球形シリカを含むことを特徴とする静電潜像現像用トナー。」

(イ)「【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、トナー流動性、帯電性、現像性、転写性、定着性を同時に、かつ長期に渡り満足でき、特に潜像担持体摩耗を促進させるブレードクリーニング工程を有さず、現像と同時に転写残トナーを回収する、あるいは静電ブラシを用いて潜像担持体上の残留トナーを回収する不具合を改善した静電潜像現像用トナー、その製造方法、それを用いた静電潜像現像用現像剤を提供することを目的とする。また、本発明は、高画質要求に対応する現像、転写、定着が可能な画像形成方法を提供することを目的とする。」

(ウ)「【0025】(単分散球形シリカ)本発明に用いられる単分散球形シリカは、真比重が1.3?1.9であり、体積平均粒径が80?300nmであることを特徴とする。真比重を1.9以下に制御することにより、着色粒子からの剥がれを抑制することができる。また、真比重を1.3以上に制御することにより、凝集分散を抑制することができる。好ましくは、本発明における単分散球形シリカの真比重は、1.4?1.8である。
【0026】前記単分散球形シリカの体積平均粒径が80nm未満であると、非静電的付着力低減に有効に働かなくなり易い。特に、現像機内のストレスにより、着色粒子に埋没しやすくなり、現像、転写向上効果が著しく低減しやすい。一方、300nmを超えると、着色粒子から離脱しやすくなり、非静電的付着力低減に有効に働かないと同時に接触部材に移行しやすくなり、帯電阻害、画質欠陥等の二次障害を引き起こしやすくなる。好ましくは、本発明における単分散球形シリカの体積平均粒径は、100?200nmである。
【0027】前記単分散球形シリカは、単分散かつ球形であるため、着色粒子表面に均一に分散し、安定したスペーサー効果を得ることができる。本発明における単分散の定義としては、凝集体を含め平均粒径に対する標準偏差で議論することができ、標準偏差として体積平均粒径D_(50)×0.22以下であることが好ましい。本発明における球形の定義としては、Wadellの球形化度で議論することができ、球形化度が0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。また、シリカに限定する理由としては、屈折率が1.5前後であり、粒径を大きくしても光散乱による透明度の低下、特にOHP上への画像採取時のPE値等に影響を及ぼさないことが挙げられる。
【0028】一般的なフュームドシリカは真比重2.2であり、粒径的にも最大50nmが製造上から限界である。また、凝集体として粒径を上げることはできるが、均一分散、安定したスペーサー効果が得られない。一方、外添剤として用いられる他の代表的な無機微粒子としては、酸化チタン(真比重4.2、屈折率2.6)、アルミナ(真比重4.0、屈折率1.8)、酸化亜鉛(真比重5.6、屈折率2.0)が挙げられるが、いずれも真比重が高く、スペーサー効果を有効に発現する粒径80nmより大きくすると着色粒子からの剥がれが起こりやすくなり、剥がれた粒子が帯電付与部材、あるいは潜像担持体等へ移行しやすくなり、帯電低下あるいは画質欠陥を引き起こしてしまう。また、その屈折率も高いため大粒径無機物を用いることはカラー画像作製には適していない。また、トナーの流動性及び帯電性を制御するために、着色粒子表面を充分に被覆する必要があるが、大径球形シリカだけでは充分な被覆を得ることがでないことがあるため、小粒径の無機化合物を併用することが好ましい。小粒径の無機化合物としては、体積平均粒径80nm以下の無機化合物が好ましく、50nm以下の無機化合物がより好ましい。
【0029】本発明における真比重1.3?1.9、体積平均粒径80?300nmの単分散球形シリカは、湿式法であるゾルゲル法により得ることができる。真比重は、湿式法、かつ焼成することなしに作製するため、蒸気相酸化法に比べ低く制御することができる。また、疎水化処理工程での疎水化処理剤種、あるいは処理量を制御することにより更に調整することが可能である。粒径は、ゾルゲル法の加水分解、縮重合工程のアルコキシシラン、アンモニア、アルコール、水の重量比、反応温度、攪拌速度、供給速度により自由に制御することができる。単分散、球形形状も本手法にて作製することにより達成することができる。」

(エ)上記(ア)?(ウ)から、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。
「少なくとも、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有する着色粒子と外添剤とを有する静電潜像現像用トナーであって、
前記外添剤が、体積平均粒径が80?300nmである単分散球形シリカを含むものであり、
単分散球形シリカは、単分散かつ球形であるため、着色粒子表面に均一に分散し、安定したスペーサー効果を得ることができ、
単分散の定義としては、凝集体を含め平均粒径に対する標準偏差で議論することができ、標準偏差として体積平均粒径D_(50)×0.22以下であることが好ましいものである、
静電潜像現像様トナー。」 (以下、「引用発明2」という。)

(オ)また、引用例2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「体積平均粒径80?300nmの単分散球形シリカは、湿式法であるゾルゲル法により得ることができるが、一般的なフュームドシリカは、粒径的にも最大50nmが製造上から限界であり、凝集体として粒径を上げることはできるが、均一分散、安定したスペーサー効果が得られないこと」

(2)周知技術を示す文献および周知技術
ア 本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2003-215837号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】 結合剤、着色剤および処理剤で表面処理されたゾルゲル金属酸化物粒子を含むトナー組成物。」
(イ)「【0009】ゾルゲルシリカは、従来の「ヒュームド」金属酸化物を用いては可能でなかった電子写真現像剤に追加の利点を付与することが発見された。ゾルゲルシリカは、テトラエトキシシランの制御された加水分解および縮合によって合成されたシリカである。ゾルゲルプロセスは、典型的には、沈殿した二酸化珪素製品の構造を制御するためにホモポリマー溶質が添加されたアルコール溶媒中で行われる。ゾルゲルプロセスにおいて用いられるアルコール溶媒の例には、メタノール、エタノールおよびブタノールが挙げられる。
【0010】外部添加剤としてゾルゲルシリカで処理されたトナーの転写効率は、「ヒュームド」シリカで処理されたトナーより優れていることが実証された。ゾルゲル金属酸化物の優秀性は、ゾルゲルプロセスによって生じた球状シリカ粒子によることが考えられる。この性能の相違が存在する理由に関する一つの理論は、粒子間の鎖の絡み合いが「ヒュームド」シリカ粒子の分岐構造のゆえに「ヒュームド」シリカ粒子に関して明らかであることである。しかし、球状ゾルゲルシリカ粒子は絡み合わない。」

イ 本願の優先日出願前に頒布された刊行物である、特開2005-241951号公報(以下「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】 静電荷による静電潜像を形成する像担持体と、像担持体に露光して潜像を形成する潜像形成手段と、像担持体表面の潜像にトナーを供給し可視像化する現像手段と、像担持体と接触しつつ表面移動する中間転写体を介して記録材上に転写させる転写手段と、転写後に像担持体表面に残留した転写残トナーを像担持体から回収するクリーニングブレードを有するクリーニング手段とを備える画像形成装置において、
前記画像形成装置は、少なくとも90?300nmの無機酸化物を0.4wt%以上トナーに含有させ、
トナーの初期の無機酸化物含有量に対して、像担持体から中間転写体に転写された後のトナーの無機酸化物含有量が75?95%の範囲で転写させる
ことを特徴とする画像形成装置。
・・・(略)・・・
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記トナーは、含有する無機酸化物が球形形状を有するシリカである
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載の画像形成装置において、
前記シリカは、ゾルゲル法によるシリカである
ことを特徴とする画像形成装置。」
(イ)「【0021】
本発明の90?300nmの無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、酸価バリウム、酸価セシウムなど、または他の無機酸化物が上げられる。またチタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウムのような酸化物間化合物も使用できる。
更に、このような酸化物の中でも酸化ケイ素が好ましい。酸化ケイ素の場合、色が白色でありカラートナーに使用でき、安全性が高い。製法としては、2種類の製造方法が確立されており、不定形および球形を容易に作ることができる。不定形の場合には、四塩化ケイ素を気相中で燃焼する燃焼型シリカ、球形の場合では水相中で酸化ケイ素を析出させるゾルゲル法による酸化ケイ素の製造方法がある。ゾルゲル法とは、アルコキシシランを水溶液中で、加水分解、縮合させて酸化ケイ素を析出させる。アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられる。加水分解の触媒としては、アンモニア、尿素、モノアミン等が挙げられる。
無機酸化物は、トナー母体と感光体1や中間転写ベルト6aとの間に入り、スペーサーとして働く。無機酸化物を球形にすることで、接触面積を減少させることができ、トナーの転写を良好にすることが出来る。」

ウ 前記(1)イ(オ)に記載した引用例2の技術事項並びに上記引用例3及び引用例4の記載事項から、本願の優先日前に、
「トナーの外添剤として用いるシリカ粒子について、ゾルゲル法で製造されたシリカ粒子は、球形であり、フュームドシリカ(ヒュームドシリカ、燃焼型シリカも同義である。)に比べ凝集が少ないこと」が、周知(以下、「周知技術」という。)である。

(3)対比
ア 本願補正発明と、引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の、「着色粒子」及び「静電荷現像用トナー」は、本願補正発明の「トナー粒子」及び「トナー組成物」に相当する。
(イ)引用発明1の「シリカ粒子」及び「『酸化チタン粒子又は酸化チタン膜』の『被覆』」は、本願補正発明の「第1の金属酸化物からなるコア」及び「第2の金属酸化物からなるコーティング」に相当する。
チタニアは酸化チタンであるから、引用発明1の「シリカ」及び「酸化チタン」は、本願補正発明の「シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化スズ、及び酸化セリウムよりなる群から独立に選択」された金属酸化物に相当する。
したがって、引用発明1の「シリカ粒子の表面を酸化チタン粒子又は酸化チタン膜で被覆したシリカ内包酸化チタン粒子であって、酸化チタンの被覆状態はシリカ粒子の表面を全面均一に被覆することが好ましいが、部分的な被覆状態でもよいものであり、前記シリカ内包酸化チタン粒子が疎水化剤で表面処理されており、」は、本願補正発明の「『疎水性処理剤で表面処理された複合金属酸化物粒子であって、第1の金属酸化物からなるコア(ここで、コアは表面を有する)と、(ii)第2の金属酸化物からなるコーティングとを含む複合金属酸化物粒子』及び『コーティングは、コアの表面に接着しており、コーティングは、連続的又は非連続的であり、そして第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物と同一であるかもしくは異なっており、前記第1及び第2の金属酸化物は、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化スズ、及び酸化セリウムよりなる群から独立に選択され、但し、コーティングが連続的である場合に、第2の金属酸化物は第1の金属酸化物と同じではなく』」に相当する。
(ウ)引用発明1において、シリカ内包酸化チタン粒子は、湿式法で作製されているから、その被覆は「水中で形成されたもの」である。
(エ)引用発明1は、シリカ内包酸化チタン粒子の一次平均粒径が11?120nmであり、具体的には、シリカ内包酸化チタン粒子3において、その一次粒子径が95nmであるから、「シリカ内包酸化チタン粒子」は、「30nmまたはそれ以上」の平均粒子径を有している。
(オ)引用発明1のシリカ内包酸化チタン粒子は、その作成において、疎水化剤、具体的にはn-ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン又はデシルトリメトキシシランで表面処理した後、濾過、水洗、乾燥しているから、「単離された」粒子である。
(カ)したがって、本願補正発明と引用発明1とは、
「 (a)トナー粒子、及び
(b)(i)疎水性処理剤で表面処理された複合金属酸化物粒子であって、第1の金属酸化物からなるコア(ここで、コアは表面を有する)と、(ii)水中で形成されたものであって、第2の金属酸化物からなるコーティングとを含む複合金属酸化物粒子の混合物を含むトナー組成物であって、
コーティングは、コアの表面に接着しており、コーティングは、連続的又は非連続的であり、そして第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物と同一であるかもしくは異なっており、前記第1及び第2の金属酸化物は、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化スズ、及び酸化セリウムよりなる群から独立に選択され、
但し、コーティングが連続的である場合に、第2の金属酸化物は第1の金属酸化物と同じではなく、そして
前記複合金属酸化物粒子は、単離された複合金属酸化物粒子であり、30nm又はそれ以上の平均粒子径を有する、トナー組成物。」
である点で一致し、次の点で相違している。

相違点1:前記「コア」が、
本願補正発明では、実質的に球形であり、凝集していないのに対し、
引用発明1では、その形状及び凝集の有無が特定されていない点。
相違点2:前記「複合金属酸化物粒子」が、
本願補正発明では、「1.5未満のσ_(g)を有する」(σ_(g)は幾何標準偏差)のに対し、
引用発明1では、複合金属酸化物粒子のσ_(g)が特定されていない点。

(4)検討
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア)シリカは乾式法または湿式法で合成されるものであるところ、湿式法であるゾルゲル法により球形のシリカ粒子を得る事ができ、また、該シリカ粒子が、乾式法で合成されたシリカ粒子であるフュームドシリカ(ヒュームドシリカ、燃焼型シリカ)に比べて、凝集が少ないことは、上記(2)ウに示したように、周知技術である。
(イ)引用発明1では、シリカ内包酸化チタン粒子の核となるシリカ粒子として、具体的にはシリカゾルを用いており、上記周知技術を考慮すると、該シリカゾル中のシリカ粒子が球形であり、凝集していない蓋然性が高い。
少なくとも、引用発明1のコアのシリカゾルとして、周知技術を採用し、シリカゾル中のシリカ粒子が実質的に球形であり、凝集していないものを用いることは、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)よって、相違点1は、実質的な相違点ではないか、少なくとも周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
(ア)引用発明1及び引用発明2は、いずれも長期にわたって安定な静電荷像現像用トナーを得ることをその課題としていおり(引用例1【0008】、引用例2【0015】)、その課題は共通している。したがって、引用発明1において、引用発明2を採用し、その外添剤を単分散かつ球形のものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ)そして、粒径分布が「単分散」であるとは、粒径の幾何標準偏差が1.2以下程度であることを指すことが、技術常識であるから(例えば、特開2001-131735号公報の【0102】の記載、特開2003-22510号公報の【0017】の記載、特開2005-526769号公報の【0052】の記載、参照。)、引用発明2において標準偏差として体積平均粒径D_(50)×0.22以下であることが好ましいとされた「単分散」のものの粒径の幾何標準偏差は、おおむね1.2以下であると推認できる。よって、前記(ア)で述べた、引用発明2を適用して外添剤を「単分散」とした引用発明1は、相違点2に係る構成であるσ_(g)(幾何標準偏差)<1.5を満たすものであると認められる。
また、仮に引用発明2の、標準偏差として体積平均粒径D_(50)×0.22以下であることが好ましいとされた「単分散」のものの粒径の幾何標準偏差が必ずしも1.2以下になるとは限らないとした場合においても、そもそも引用発明1に引用発明2を適用する際に、どの程度単分散性の高い外添剤とするのかは、当業者が適宜決定できる設計事項にすぎず、かつ「幾何標準偏差が1.5より小さい」という条件は、従来「単分散」とされていないものをも許容する緩い条件でしかないから(前記技術常識を参照)、引用発明1において、外添剤の粒径の幾何標準偏差を1.5より小さいものとすることは、引用発明2に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)よって、相違点2は、引用発明1および引用発明2に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術から、当業者が予測し得た範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。なお、本願の翻訳文等に具体的に記載された本願補正発明の奏する効果は、TiO_(2)で被覆したコロイドシリカの摩擦帯電測定のみであり、コアの形状や複合金属酸化物粒子のσ_(g)の数値に対する効果を具体的に記載するものでない。

エ まとめ
上記ア?ウから、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正の却下の決定についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明
上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1?27に係る発明は、平成26年1月9日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?27によって特定されるものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3及び引用文献6の記載事項、及び周知技術は、上記第2の[理由]3(1)及び(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記第2[理由]2のとおり、「複合金属酸化物粒子」について発明特定事項を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2[理由]3のとおり、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-29 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-21 
出願番号 特願2009-509872(P2009-509872)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川村 大輔高松 大廣田 健介  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 清水 康司
大瀧 真理
発明の名称 トナー組成物及びその製造方法  
代理人 古賀 哲次  
代理人 石田 敬  
代理人 出野 知  
代理人 青木 篤  
代理人 蛯谷 厚志  

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