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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A01N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A01N
管理番号 1309500
審判番号 不服2014-5578  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-26 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2010-525324「殺菌性株及び活性成分を含む組み合わせ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月26日国際公開、WO2009/037242、平成22年12月16日国内公表、特表2010-539213〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年9月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2007年9月20日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成25年4月17日付けの拒絶理由通知に対し、同年10月23日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月21日付けで拒絶査定がされた。これに対して、平成26年3月26日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成26年3月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成26年3月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 本件補正
平成26年3月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1である、
「【請求項1】
相乗効果がある量で
1)
a)NRRLアクセッション番号がB-21661のバチルス・サブスチリス株、及び
b)NRRLアクセッション番号がB-30087のバチルス・プミルス株、
から選択される殺菌性株(I)、又は全ブロス培地中のそのような株の懸濁液もしくはその上澄液、
及び、
2)
活性化合物群A)?F):
A)
アザコナゾール、ジニコナゾール-M、オキスポコナゾール、パクロブトラゾール、ウニコナゾール、1-(4-クロロ-フェニル)-2-([1,2,4]トリアゾール-1-イル)-シクロヘプタノール及びイマザリル-スルフファートからなる群から選択されるアゾール系化合物;
B)
2-(2-(6-(3-クロロ-2-メチル-フェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジン-4-イルオキシ)-フェニル)-2-メトキシイミノ-N-メチル-アセトアミド及び3-メトキシ-2-(2-(N-(4-メトキシ-フェニル)-シクロ-プロパンカルボキシミドイルスルファニルメチル)-フェニル)-アクリル酸メチルエステルからなる群から選択されるストロビルリン系化合物;
C)
ベナラキシル、ベナラキシル-M、2-アミノ-4-メチル-チアゾール-5-カルボキサミド、2-クロロ-N-(1,1,3-トリメチル-インダン-4-イル)-ニコチンアミド、N-(2-(1,3-ジメチルブチル)-フェニル)-1,3-ジメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、N-(4’-クロロ-3’,5-ジフルオロ-ビフェニル-2-イル)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、N-(4’-クロロ-3’,5-ジフルオロ-ビフェニル-2-イル)-3-トリフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、フルオピラム、N-(3-エチル-3,5-5-トリメチル-シクロヘキシル)-3-ホルミル-アミノ-2-ヒドロキシ-ベンズアミド、オキシテトラサイクリン、シルチオファム、N-(6-メトキシ-ピリジン-3-イル)シクロプロパンカルボン酸アミド、ペンチオピラド、イソピラザム、及び式III

[式中の各置換基は以下に定義されている通りである:
Xは、水素又はフッ素であり;
R^(1)は、C_(1)?C_(4)-アルキル又はC_(1)?C_(4)-ハロアルキルであり;
R^(2)は、水素又はハロゲンであり;
R^(3)、R^(4)及びR^(5)は、互いに独立して、水素、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C_(1)?C_(4)-アルキル、C_(1)?C_(4)-ハロアルキル、C_(1)?C_(4)-アルコキシ、C_(1)?C_(4)-ハロアルコキシ又はC_(1)?C_(4)-アルキルチオである]で表される1-メチル-ピラゾール-4-イルカルボキサミド化合物からなる群から選択されるカルボキサミド系化合物;
D)
5-クロロ-7-(4-メチルピペリジン-1-イル)-6-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン、2,3,5,6-テトラクロロ-4-メタンスルホニル-ピリジン、3,4,5-トリクロロ-ピリジン-2,6-ジ-カルボニトリル、N-(1-(5-ブロモ-3-クロロ-ピリジン-2-イル)-エチル)-2,4-ジクロロ-ニコチンアミド、N-((5-ブロモ-3-クロロ-ピリジン-2-イル)-メチル)-2,4-ジクロロ-ニコチンアミド、ジフルメトリム、ニトラピリン、ドデモルフ-アセタート、フルオロイミド、ブラスチシジン-S、チノメチオナート、デバカルブ、オキソリニックアシッド、ピペラリン、及び式IV

[式中の各置換基は以下の意味を有している:
E^(1)は、C_(3)?C_(12)-アルキル、C_(2)?C_(12)-アルケニル、C_(5)?C_(12)-アルコキシアルキル、C_(3)?C_(6)-シクロアルキル、フェニル又はフェニル-C_(1)?C_(4)-アルキルであり;
E^(2)は、C_(1)?C_(12)-アルキル、C_(2)?C_(12)-アルケニル、C_(1)?C_(4)-ハロアルキル又はC_(1)?C_(4)-アルコキシ-C_(1)?C_(4)-アルキルであり;
(ここで、
E^(1)及び/又はE^(2)中の脂肪族鎖は、1?4個の同じ又は異なる基R^(a)によって置換されていてよく;
R^(a)は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、C_(1)?C_(10)-アルキル、C_(1)?C_(10)-ハロアルキル、C_(3)?C_(8)-シクロアルキル、C_(2)?C_(10)-アルケニル、C_(2)?C_(10)-アルキニル、C_(1)?C_(6)-アルコキシ、C_(1)?C_(6)-アルキルチオ、C_(1)?C_(6)-アルコキシ-C_(1)?C_(6)-アルキル又はNR^(A)R^(B)であり;
R^(A)、R^(B)は、互いに独立して、水素又はC_(1)?C_(6)-アルキルであり;また、
E^(1)及び/又はR^(a)中の環式基は、1?4個の基R^(b)によって置換されていてよく;
R^(b)は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、ニトロ、NR^(A)R^(B)、C_(1)?C_(10)-アルキル、C_(1)?C_(6)-ハロアルキル、C_(2)?C_(6)-アルケニル、C_(2)?C_(6)-アルキニル又はC_(1)?C_(6)-アルコキシである)
E^(3)は、水素、ハロゲン、シアノ、NR^(A)R^(B)、ヒドロキシル、メルカプト、C_(1)?C_(6)-アルキル、C_(1)?C_(6)-ハロアルキル、C_(3)?C_(8)-シクロアルキル、C_(1)?C_(6)-アルコキシ、C_(1)?C_(6)-アルキルチオ、C_(3)?C_(8)-シクロアルコキシ、C_(3)?C_(8)-シクロアルキルチオ、カルボキシル、ホルミル、C_(1)?C_(10)-アルキル-カルボニル、C_(1)?C_(10)-アルコキシカルボニル、C_(2)?C_(10)-アルケニルオキシカルボニル、C_(2)?C_(10)-アルキニルオキシカルボニル、フェニル、フェノキシ、フェニルチオ、ベンジルオキシ、ベンジルチオ又はC_(1)?C_(6)-アルキル-S(O)m-であり;
mは、0、1又は2であり;
Aは、CH又はNである]
で表されるアゾロピリミジニルアミン化合物
からなる群から選択されるヘテロ環式系化合物;
E)
メタスルホカルブ及びプロパモカルブヒドロクロリドからなる群から選択されるカルバメート系化合物;
F)
メトラフェノン、ドジン遊離塩基、グアザチン-アセタート、イミノオクタジン-トリアセタート、イミンオクタジン-トリス(アルベシラート)、カスガマイシン-ヒドロクロリド-ヒドラート、ジクロロフェン、ペンタクロロフェノール及びその塩、N-(4-クロロ-2-ニトロ-フェニル)-N-エチル-4-メチル-ベンゼンスルホン-アミド、ジクロラン、ニトロタール-イソプロピル、テクナゼン、ビ-フェニル、ブロノポール、ジフェニルアミン、ミルジオマイシン、オキシン-銅、プロ-ヘキサジオンカルシウム、N-(シクロプロピルメトキシイミノ-(6-トリフルオロメチル-2,3-ジフルオロ-フェニル)-メチル)-2-フェニルアセトアミド、N’-(4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N’-(4-(4-フルオロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N’-(2-メチル-5-トリフルオロメチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン及びN’-(5-ジフルオロメチル-2-メチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジンからなる群から選択される他の殺菌剤;
から選択される、少なくとも1種の化学物質化合物(II)、
を含んでいる、植物病原性有害菌防除用殺菌組成物。」
を、補正後の特許請求の範囲の請求項1である
「【請求項1】
相乗効果がある量で
1)
a)NRRLアクセッション番号がB-21661のバチルス・サブスチリス株、及び
b)NRRLアクセッション番号がB-30087のバチルス・プミルス株、
から選択される殺菌性株(I)、又は全ブロス培地中のそのような株の懸濁液もしくはその上澄液、
及び、
2)
活性化合物群C)及びF):
C)
N-(2-(1,3-ジメチルブチル)-フェニル)-1,3-ジメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、フルオピラム、及び式III

[式中の各置換基は以下に定義されている通りである:
Xは、水素又はフッ素であり;
R^(1)は、C_(1)-ハロアルキルであり;
R^(2)は、水素であり;
R^(3)、R^(4)及びR^(5)は、互いに独立して、水素又はハロゲンである]
で表される1-メチル-ピラゾール-4-イルカルボキサミド化合物からなる群から選択されるカルボキサミド系化合物;
F)
N-(シクロプロピルメトキシイミノ-(6-トリフルオロメチル-2,3-ジフルオロ-フェニル)-メチル)-2-フェニルアセトアミドからなる群から選択される他の殺菌剤;
から選択される、少なくとも1種の化学物質化合物(II)、
を含んでいる、植物病原性有害菌防除用殺菌組成物。」
とする補正を含むものである。

2 補正の適否
(1)補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1における植物病原性有害菌防除用殺菌組成物のうち、2)活性化合物群として挙げられているA)?F)から選択される少なくとも1種の化学物質化合物(II)を、C)及びF)から選択される少なくとも1種の化学物質化合物(II)としつつ、C)化合物群を、
「ベナラキシル、ベナラキシル-M、2-アミノ-4-メチル-チアゾール-5-カルボキサミド、2-クロロ-N-(1,1,3-トリメチル-インダン-4-イル)-ニコチンアミド、N-(2-(1,3-ジメチルブチル)-フェニル)-1,3-ジメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、N-(4’-クロロ-3’,5-ジフルオロ-ビフェニル-2-イル)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、N-(4’-クロロ-3’,5-ジフルオロ-ビフェニル-2-イル)-3-トリフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、フルオピラム、N-(3-エチル-3,5-5-トリメチル-シクロヘキシル)-3-ホルミル-アミノ-2-ヒドロキシ-ベンズアミド、オキシテトラサイクリン、シルチオファム、N-(6-メトキシ-ピリジン-3-イル)シクロプロパンカルボン酸アミド、ペンチオピラド、イソピラザム、及び式III

[式中の各置換基は以下に定義されている通りである:
Xは、水素又はフッ素であり;
R^(1)は、C_(1)?C_(4)-アルキル又はC_(1)?C_(4)-ハロアルキルであり;
R^(2)は、水素又はハロゲンであり;
R^(3)、R^(4)及びR^(5)は、互いに独立して、水素、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C_(1)?C_(4)-アルキル、C_(1)?C_(4)-ハロアルキル、C_(1)?C_(4)-アルコキシ、C_(1)?C_(4)-ハロアルコキシ又はC_(1)?C_(4)-アルキルチオである]で表される1-メチル-ピラゾール-4-イルカルボキサミド化合物からなる群から選択されるカルボキサミド系化合物」と記載された化合物群から、
「N-(2-(1,3-ジメチルブチル)-フェニル)-1,3-ジメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、フルオピラム、及び式III

[式中の各置換基は以下に定義されている通りである:
Xは、水素又はフッ素であり;
R^(1)は、C_(1)-ハロアルキルであり;
R^(2)は、水素であり;
R^(3)、R^(4)及びR^(5)は、互いに独立して、水素又はハロゲンである]
で表される1-メチル-ピラゾール-4-イルカルボキサミド化合物からなる群から選択されるカルボキサミド系化合物」と記載された化合物群に減縮とするものである。
また、F)化合物群を、
「メトラフェノン、ドジン遊離塩基、グアザチン-アセタート、イミノオクタジン-トリアセタート、イミンオクタジン-トリス(アルベシラート)、カスガマイシン-ヒドロクロリド-ヒドラート、ジクロロフェン、ペンタクロロフェノール及びその塩、N-(4-クロロ-2-ニトロ-フェニル)-N-エチル-4-メチル-ベンゼンスルホン-アミド、ジクロラン、ニトロタール-イソプロピル、テクナゼン、ビ-フェニル、ブロノポール、ジフェニルアミン、ミルジオマイシン、オキシン-銅、プロ-ヘキサジオンカルシウム、N-(シクロプロピルメトキシイミノ-(6-トリフルオロメチル-2,3-ジフルオロ-フェニル)-メチル)-2-フェニルアセトアミド、N’-(4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N’-(4-(4-フルオロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N’-(2-メチル-5-トリフルオロメチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン及びN’-(5-ジフルオロメチル-2-メチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジンからなる群から選択される他の殺菌剤;」と記載された化合物群から、
「N-(シクロプロピルメトキシイミノ-(6-トリフルオロメチル-2,3-ジフルオロ-フェニル)-メチル)-2-フェニルアセトアミド」と記載された化合物に減縮とするものである。
これらの補正は、植物病原性有害菌防除用殺菌組成物のうち、成分2)の活性化合物群を限定するものであり、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものであるから、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される特許を受けようとする発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて以下検討する。

ア 特許法第36条第4項第1号について
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。
よって、この観点に立って、本願の実施可能要件の判断をする。

(ア)特許請求の範囲の記載について
補正後の特許請求の範囲の請求項1には,以下のとおり記載されている。
「【請求項1】
相乗効果がある量で
1)
a)NRRLアクセッション番号がB-21661のバチルス・サブスチリス株、及び
b)NRRLアクセッション番号がB-30087のバチルス・プミルス株、
から選択される殺菌性株(I)、又は全ブロス培地中のそのような株の懸濁液もしくはその上澄液、
及び、
2)
活性化合物群C)及びF):
C)
N-(2-(1,3-ジメチルブチル)-フェニル)-1,3-ジメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、フルオピラム、及び式III

[式中の各置換基は以下に定義されている通りである:
Xは、水素又はフッ素であり;
R^(1)は、C_(1)-ハロアルキルであり;
R^(2)は、水素であり;
R^(3)、R^(4)及びR^(5)は、互いに独立して、水素又はハロゲンである]
で表される1-メチル-ピラゾール-4-イルカルボキサミド化合物からなる群から選択されるカルボキサミド系化合物;
F)
N-(シクロプロピルメトキシイミノ-(6-トリフルオロメチル-2,3-ジフルオロ-フェニル)-メチル)-2-フェニルアセトアミドからなる群から選択される他の殺菌剤;
から選択される、少なくとも1種の化学物質化合物(II)、
を含んでいる、植物病原性有害菌防除用殺菌組成物。」(以下、請求項1に係る発明を、「本願補正発明」という。)

(イ)発明の詳細な説明の記載について
本願の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
(a)「【0001】
本発明は、活性成分として、
1)
a)NRRLアクセッション番号がB-21661のバチルス・サブスチリス株(Bacillus substilis strain)、及び
b)NRRLアクセッション番号がB-30087のバチルス・プミルス株(Bacillus pumilus strain)、
又はそれぞれの株の識別特性の全てを有しているこれらの株の変異株
から選択される殺菌性株(I)、又は植物病原性菌に対して活性を示すそれぞれの株によって産生される代謝産物;
及び
2)
次の活性化合物群A)?F):
A)
アザコナゾール(azaconazole)、ジニコナゾール-M(diniconazole-M)、オキスポコナゾール(oxpoconazol)、パクロブトラゾール(paclobutrazol)、ウニコナゾール(uniconazol)、1-(4-クロロ-フェニル)-2-([1,2,4]トリアゾール-1-イル)-シクロヘプタノール及びイマザリル-スルフファート(imazalil-sulfphate)からなる群から選択されるアゾール系活性化合物;
B)
2-(2-(6-(3-クロロ-2-メチル-フェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジン-4-イルオキシ)-フェニル)-2-メトキシイミノ-N-メチル-アセトアミド及び3-メトキシ-2-(2-(N-(4-メトキシ-フェニル)-シクロ-プロパンカルボキシミドイルスルファニルメチル)-フェニル)-アクリル酸メチルエステルからなる群から選択されるストロビルリン系活性化合物;
C)
ベナラキシル(benalaxyl)、ベナラキシル-M(benalaxyl-M)、2-アミノ-4-メチル-チアゾール-5-カルボキサミド、2-クロロ-N-(1,1,3-トリメチル-インダン-4-イル)-ニコチンアミド、N-(2-(1,3-ジメチルブチル)-フェニル)-1,3-ジメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、N-(4’-クロロ-3’,5-ジフルオロ-ビフェニル-2-イル)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、N-(4’-クロロ-3’,5-ジフルオロ-ビフェニル-2-イル)-3-トリフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、N-(シス-2-ビシクロプロピル-2-イル-フェニル)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、N-(トランス-2-ビ-シクロプロピル-2-イル-フェニル)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、フルオピラム、N-(3-エチル-3,5-5-トリメチル-シクロヘキシル)-3-ホルミル-アミノ-2-ヒドロキシ-ベンズアミド、オキシテトラサイクリン(oxytetracycline)、シルチオファム(silthiofam)、N-(6-メトキシ-ピリジン-3-イル)シクロプロパンカルボン酸アミド、ペンチオピラド(penthiopyrad)、イソピラザム(Isopyrazam)、及び式III

【0002】
[式中の各置換基は以下に定義されている通りである:
Xは、水素又はフッ素であり;
R^(1)は、C_(1)?C_(4)-アルキル又はC_(1)?C_(4)-ハロアルキルであり;
R^(2)は、水素又はハロゲンであり;
R^(3)、R^(4)及びR^(5)は、互いに独立して、水素、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C_(1)?C_(4)-アルキル、C_(1)?C_(4)-ハロアルキル、C_(1)?C_(4)-アルコキシ、C_(1)?C_(4)-ハロアルコキシ又はC_(1)?C_(4)-アルキルチオである]で表される1-メチル-ピラゾール-4-イルカルボキサミド化合物からなる群から選択されるカルボキサミド系化合物;
D)
5-クロロ-7-(4-メチルピペリジン-1-イル)-6-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン、2,3,5,6-テトラクロロ-4-メタンスルホニル-ピリジン、3,4,5-トリクロロ-ピリジン-2,6-ジ-カルボニトリル、N-(1-(5-ブロモ-3-クロロ-ピリジン-2-イル)-エチル)-2,4-ジクロロ-ニコチンアミド、N-((5-ブロモ-3-クロロ-ピリジン-2-イル)-メチル)-2,4-ジクロロ-ニコチンアミド、ジフルメトリム(diflumetorim)、ニトラピリン(nitrapyrin)、デドモルフ-アセタート(dodemorph-acetate)、フルオロイミド(fluoroimid)、ブラスチシジン-S(blasticidin-S)、チノメチオナート(chinomethionat)、デバカルブ(debacarb)、オキソリニックアシッド(oxolinic acid)、ピペラリン(piperalin)、及び式IV

【0003】
[式中の各置換基は以下の意味を有している:
E^(1)は、C_(3)?C_(12)-アルキル、C_(2)?C_(12)-アルケニル、C_(5)?C_(12)-アルコキシアルキル、C_(3)?C_(6)-シクロアルキル、フェニル又はフェニル-C_(1)?C_(4)-アルキルであり;
E^(2)は、C_(1)?C_(12)-アルキル、C_(2)?C_(12)-アルケニル、C_(1)?C_(4)-ハロアルキル又はC_(1)?C_(4)-アルコキシ-C_(1)?C_(4)-アルキルであり;
(ここで、
E^(1)及び/又はE^(2)中の脂肪族鎖は、1?4個の同じ又は異なる基R^(a)によって置換されていてよく;
R^(a)は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、C_(1)?C_(10)-アルキル、C_(1)?C_(10)-ハロアルキル、C_(3)?C_(8)-シクロアルキル、C_(2)?C_(10)-アルケニル、C_(2)?C_(10)-アルキニル、C_(1)?C_(6)-アルコキシ、C_(1)?C_(6)-アルキルチオ、C_(1)?C_(6)-アルコキシ-C_(1)?C_(6)-アルキル又はNR^(A)R^(B)であり;
R^(A)、R^(B)は、互いに独立して、水素又はC_(1)?C_(6)-アルキルであり;また、
E^(1)及び/又はR^(a)中の環式基は、1?4個の基R^(b)によって置換されていてよく;
R^(b)は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、ニトロ、NR^(A)R^(B)、C_(1)?C_(10)-アルキル、C_(1)?C_(6)-ハロアルキル、C_(2)?C_(6)-アルケニル、C_(2)?C_(6)-アルキニル又はC_(1)?C_(6)-アルコキシである)
E^(3)は、水素、ハロゲン、シアノ、NR^(A)R^(B)、ヒドロキシル、メルカプト、C_(1)?C_(6)-アルキル、C_(1)?C_(6)-ハロアルキル、C_(3)?C_(8)-シクロアルキル、C_(1)?C_(6)-アルコキシ、C_(1)?C_(6)-アルキルチオ、C_(3)?C_(8)-シクロアルコキシ、C_(3)?C_(8)-シクロアルキルチオ、カルボキシル、ホルミル、C_(1)?C_(10)-アルキル-カルボニル、C_(1)?C_(10)-アルコキシカルボニル、C_(2)?C_(10)-アルケニルオキシカルボニル、C_(2)?C_(10)-アルキニルオキシカルボニル、フェニル、フェノキシ、フェニルチオ、ベンジルオキシ、ベンジルチオ又はC_(1)?C_(6)-アルキル-S(O)m-であり;
mは、0、1又は2であり;
Aは、CH又はNである]
で表されるアゾロピリミジニルアミン化合物
からなる群から選択されるヘテロ環式系活性化合物;
E)
メタスルホカルブ(methasulphocarb)及びプロパモカルブヒドロクロリド(propamocarb hydrochlorid)からなる群から選択されるカルバメート系活性化合物;
F)
メトラフェノン(metrafenone)、ドジン遊離塩基(dodine free base)、グアザチン-アセタート(guazatine-acetate)、イミノオクタジン-トリアセタート(iminoctadine-triacetate)、イミンオクタジン-トリス(アルベシラート)(iminoctadine-tris(albesilate))、カスガマイシン-ヒドロクロリド-ヒドラート(kasugamycin-hydrochlorid-hydrat)、ジクロロフェン(dichlorophen)、ペンタクロロフェノール及びその塩、N-(4-クロロ-2-ニトロ-フェニル)-N-エチル-4-メチル-ベンゼンスルホン-アミド、ジクロラン(dicloran)、ニトロタール-イソプロピル(nitrothal-isopropyl)、テクナゼン(tecnazen)、ビ-フェニル(bi-phenyl)、ブロノポール(bronopol)、ジフェニルアミン(diphenylamine)、ミルジオマイシン(mildiomycin)、オキシン-銅(oxin-copper)、プロ-ヘキサジオンカルシウム(pro-hexadione calcium)、N-(シクロプロピルメトキシイミノ-(6-ジフルオロメトキシ-2,3-ジフルオロ-フェニル)-メチル)-2-フェニルアセトアミド、N’-(4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルマ-ミジン、N’-(4-(4-フルオロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N’-(2-メチル-5-トリフルオロメチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン及びN’-(5-ジフルオロメチル-2-メチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジンからなる群から選択される他の殺菌剤;
から選択される、少なくとも1種の化学物質化合物(II);
を相乗効果がある量で含んでいる、植物病原性有害菌防除用殺菌組成物に関する。」

(b)「【0005】
上記で成分1)と呼ばれ、植物病原性菌に対して活性を示す株(I)、その変異株、及びそのような株によって産生される代謝産物、及びそれらの調製、並びにそれらの有害菌に対する作用は、特許文献1、特許文献2及び特許文献3で公知である(これらの文献ではAQ713(QST713)及びQST2808とも呼ばれている)。」

(c)「【0011】
しかしながら、公知の株(I)、それらの変異株、及びそのような株によって産生される代謝産物は、特に低施用量では、完全には満足のいくものではない。」

(d)「【0012】
成分2)と言及されている活性化合物(II)、その調製、及び有害菌に対するその作用は、一般に知られており(例えば、http://www.hclrss.demon.co.uk/index.htmlを参照されたい);また市販もされている。」

(e)「【0020】
本発明は、株(I)及び化合物(II)の施用量を低減しようとする目的、またその活性スペクトルを広くしようとする目的で、施用される活性化合物の全体量が低減された量で、有害な菌に対する、特にはある種の適応種に対する活性が向上されている組成物を提供することを目的としていた。」

(f)「【0021】
結果としてこの目的は、冒頭で定義した成分1)と成分2)との組成物によって達成されることを本発明者は見出した。さらに、成分1)及び成分2)の同時の(つまり一緒の又は別々の)施用、又は、成分1)及び成分2)の順次の施用は、一つには、株、その変異株、及びそのような株によって産生される代謝産物単独で可能なよりも、もう一つには、個々の化合物(II)単独で可能なよりも、有害菌のより優れた防除を可能にすることを本発明者は見出した(相乗作用混合物)。」

(g)「【0022】
成分1)及び成分2)の同時の(つまり一緒の又は別々の)施用によって、殺菌活性は超相加的に増大される。」

(h)「【0118】
以下の表2?表7に好ましい活性化合物組み合わせが列挙されている:・・・」

(i)「 【0120】
表4
群C)から選択される化合物IIを含んでいる、成分1)と成分2)との活性化合物組み合わせ:



(j)「【0123】
表7
群F)から選択される化合物IIを含んでいる、成分1)と成分2)との活性化合物組み合わせ:



(k)「【0182】
成分1)及び2)の殺菌作用、及び、本発明による組成物の殺菌作用は、以下の試験によって実証された。
【0183】
成分1)及び成分2)は、溶媒/乳化剤の体積比が99:1のアセトン及び/又はDMSOと乳化剤Uniperol(登録商標)EL(乳化効果及び分散効果があるエトキシル化アルキルフェノール系湿潤剤)との混合物を用いて10mlにまで作り上げられた、25mgの活性化合物を含んでいるストック溶液として、別々に又は一緒に、調製された。この混合物はこのあと水で100mlにまで作り上げられた。このストック溶液は、記載されている溶媒/乳化剤/水混合物で希釈されて、以下に述べる活性化合物濃度が得られた。
【0184】
目視で測定される感染葉面積の割合(パーセント)は、処理していない対照の%で表わされる有効性(efficacies)に変換された。
【0185】
有効性(E)は、アボットの式(Abbot's formula)を用いて以下のように計算される:
E=(1-α/β)・100
α 処理した植物体の%(百分率)で表される殺菌剤感染のレベル
β 処理していない(対照)植物体の%(百分率)で表される殺菌剤感染のレベル
【0186】
有効性が0ということは、処理した植物体の感染レベルが処理していない対照植物体の感染レベルに一致していることを意味し;有効性が100ということは、処理した植物体は感染しなかったことを意味する。
【0187】
組み合わせ活性化合物の期待有効性は、コルビーの式(Colby, S.R. "Calculating synergistic and antagonistic responses of herbicide combinations", Weeds, 15, pp. 20-22, 1967)を用いて決定し、実測された有効性と比較された。
【0188】
コルビーの式: E=x+y-x・y/100
E 濃度a及びbにある活性化合物A及びBの混合物を用いた場合の、処理していない対照の%(百分率)で表される、期待有効性
x 濃度aにある活性化合物Aを用いた場合の、処理していない対照の%(百分率)で表される、有効性
y 濃度bにある活性化合物Bを用いた場合の、処理していない対照の%(百分率)で表される、有効性。」

(ウ)判断
本願補正発明は、植物病原性有害菌防除用殺菌組成物という物の発明であり、下記成分1)と成分2)を相乗効果がある量で含むことを特徴とする。
1)
a)NRRLアクセッション番号がB-21661のバチルス・サブスチリス株、及び
b)NRRLアクセッション番号がB-30087のバチルス・プミルス株、
から選択される殺菌性株(I)、又は全ブロス培地中のそのような株の懸濁液もしくはその上澄液、
及び、
2)
活性化合物群C)及びF):
C)
N-(2-(1,3-ジメチルブチル)-フェニル)-1,3-ジメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、フルオピラム、及び式III
【化1】

[式中の各置換基は以下に定義されている通りである:
Xは、水素又はフッ素であり;
R^(1)は、C_(1)-ハロアルキルであり;
R^(2)は、水素であり;
R^(3)、R^(4)及びR^(5)は、互いに独立して、水素又はハロゲンである]
で表される1-メチル-ピラゾール-4-イルカルボキサミド化合物からなる群から選択されるカルボキサミド系化合物;
F)
N-(シクロプロピルメトキシイミノ-(6-トリフルオロメチル-2,3-ジフルオロ-フェニル)-メチル)-2-フェニルアセトアミドからなる群から選択される他の殺菌剤;
から選択される、少なくとも1種の化学物質化合物(II)。

これに対し、発明の詳細な説明には、成分1)及び成分2)のそれぞれは、有害菌に対する作用が公知であることが記載されており(摘記(b)及び(d))、成分1)では、特に低施用量では満足できる作用が得られていないことが示唆されており(摘記(c))、成分1)と成分2)の組成物とすることにより、成分1)又は成分2)の単独使用よりも、有害菌に対する防除作用について相乗効果を奏することを見いだしたことが記載されている(摘記(e)?摘記(g))。

しかしながら、発明の詳細な説明には、成分1)及び成分2)の組成物を使用し、有害菌に対して優れた防除作用を示す具体例は記載されていない。また、成分1)又は成分2)を単独使用して、有害菌に対する防除作用を示した具体例も記載されていないため、成分1)又は成分2)を単独使用した場合に比べて、成分1)及び成分2)の組成物を使用した場合が、有害菌に対する防除作用について相乗効果を奏するという具体的なデータは記載されていない。

確かに、発明の詳細な説明には、本願補正発明の成分1)及び成分2)の組成物の具体例は記載されており(摘記(i)及び摘記(j))、成分1)及び成分2)の組成物を使用すると有害菌に対する防除作用について相乗効果を奏することは記載されている(摘記(e)?摘記(g))が、これらの記載は、本願補正発明のうち、成分1)と成分2)とを具体的に組合せ、有害菌に対する防除作用について具体的なデータに裏付けられて相乗効果を示す記載ではない。そして、有害菌に対する相乗的な防除作用があるというためには、通常、対象の植物と有害菌に対して特定の施用方法(配合組成や使用量等)によって、その効果を測定することが必要であるところ、本願補正発明における成分1)及び成分2)の組成物について、どのような種類の有害菌に対して、どのような配合組成と施用量で適用することにより、拮抗作用や作物への毒性を示すことなく、相乗的な防除作用を発揮できるのかについては、何ら記載されていない。

また、成分1)又は成分2)は、それぞれ抗菌性を有することは記載されている(摘記(b)及び摘記(d))が、成分1)及び成分2)とを組み合わせて組成物として使用した場合に、上述のような具体的な施用の態様が不明であっても、防除作用について相乗効果を奏することが、当業者が理解できるとの技術常識があるとも認められない。

以上のことからみて、技術常識を勘案しても、発明の詳細な説明には、本願補正発明における成分1)及び成分2)の組成物の有害菌に対する防除作用について、拮抗作用を示すことなく使用できることが記載されておらず、相乗効果を示す具体的な施用の態様を得るために過度の試行錯誤を繰り返さざるを得ないと認められるから、本願の発明の詳細な説明には、本願補正発明の植物病原性有害菌防除用殺菌組成物が使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

(エ)審判請求人の主張
審判請求人は、平成26年5月15日付けの手続補正により補正された審判請求書の「四.本願発明が特許されるべき理由」の「(2)理由3及び4」において、
「本願明細書には、「成分1)及び2)の殺菌作用、及び本発明による組成物の殺菌作用は、以下の試験によって実証された」(段落0182)と記載され、相乗効果を奏することを実証する方法を詳細に述べているから、出願時の技術常識に照らせば、本願発明の課題を解決するための手段が発明の詳細な説明中に記載されていることを当業者は容易に理解し得るものと思料する。」と主張している。(以下「主張a」という。)

また、審判請求書中の同じ箇所において、
「さらに、平成25年10月23日付提出の意見書に記載した実験結果に加えて、下記に、本願の補正後の請求項1に記載されるフルオピラムを含む組み合わせについて、相乗効果を有することを示す実験結果を示す。これらの実験結果から、本願発明の組成物が相加効果以上の効果を奏することを当業者は十分に把握し得るものと思料する。」と主張し(以下「主張b」という。)、下記のとおり実験結果を記載している。

「<実験結果>
(葉枯病菌Phytophthora infestansに対する活性)
ストック溶液を所定の比率で混合し、マイクロタイタープレート(MTP)上に分注し、所定の濃度になるよう水で希釈した。ピージュースベースの水性培養液又はDDC媒体を含むPhytophthora infestansの胞子懸濁液をその後に加えた。プレートを、18℃の温度の水蒸気飽和室内に置いた。光吸収測定装置を用いて、MTPを405nm、接種後7日の条件で測定した。

(Alternaria solaniによって引き起こされる夏疫病に対する活性)
ストック溶液を所定の比率で混合し、マイクロタイタープレート(MTP)上に分注し、所定の濃度になるよう水で希釈した。Biomalt水溶液中のAlternaria solaniの胞子懸濁液をその後に加えた。プレートを、18℃の温度の水蒸気飽和室内に置いた。光吸収測定装置を用いて、MTPを405nm、接種後7日の条件で測定した。

(Leptosphaeria nodorumによって引き起こされるコムギ斑点病に対する活性)
ストック溶液を所定の比率で混合し、マイクロタイタープレート(MTP)上に分注し、所定の濃度になるよう水で希釈した。Biomalt水溶液又はイースト-バクトペプトン-グリセリン溶液中のLeptosphaeria nodorumの胞子懸濁液をその後に加えた。プレートを、18℃の温度の水蒸気飽和室内に置いた。光吸収測定装置を用いて、MTPを405nm、接種後7日の条件で測定した。

測定したパラメータを、活性化合物を用いない対照(100%)、並びに菌及び活性化合物を用いないブランク値の成長と比較し、それぞれの活性化合物における病原菌の相対的成長(%)を決定した。
これらのパーセンテージは有効性に変換した。
活性化合物混合物の予測される有効性は、Colbyの式(R.S. Colby, "Calculating synergistic and antagonistic responses of herbicide combinations", Weeds 15, 20-22 (1967))を用いて決定し、観測された有効性と比較した。
試験結果は以下の表のようになった。明らかに、試験を行った組み合わせは顕著な殺菌相乗効果を示した。



審判請求書で引用している平成25年10月23日付けの意見書では、下記の実験例が記載されている。

「(実験例)
テストレポート1
活性化合物をそれぞれ、ジメチルスルホキシド中10000ppmの濃度を有するストック溶液として調製した。
市販の最終製品としてセレナーデ(バチルス・スブチリス株を含む農薬)を使用し、活性化合物が所定の濃度になるよう水で希釈した。

(マイクロタイタープレート試験による灰色カビ病(Botrytis cinerea)に対する活性)
ストック溶液を所定の比率で混合し、マイクロタイタープレート(MTP)上に分注し、所定の濃度になるよう水で希釈した。Biomalt水溶液中のBotrytis cinereaの胞子懸濁液をその後に加えた。プレートを、18℃の温度の水蒸気飽和室内に置いた。光吸収測定装置を用いて、MTPを405nm、接種後7日の条件で測定した。
測定したパラメータを、活性化合物を用いない対照(100%)、並びに菌及び活性化合物を用いないブランク値の成長と比較し、それぞれの活性化合物における病原菌の相対的成長(%)を決定した。
これらのパーセンテージは有効性に変換した。
有効性が0とは、病原菌の成長レベルが、処理していない対照での成長レベルと等しいことを意味している。有効性が100とは、病原菌が成長しなかったことを意味する。
活性化合物混合物の予測される有効性は、Colbyの式(R.S. Colby, "Calculating synergistic and antagonistic responses of herbicide combinations", Weeds 15, 20-22 (1967))を用いて決定し、観測された有効性と比較した。
試験結果は以下の表のようになった。明らかに、試験を行った組み合わせは強い殺菌相乗効果を示した。


テストレポート2
活性化合物をそれぞれ、ジメチルスルホキシド中10000ppmの濃度を有するストック溶液として調製した。
市販の最終製品としてセレナーデを使用し、活性化合物が所定の濃度になるよう水で希釈した。

(マイクロタイタープレート試験による灰色カビ病(Botrytis cinerea)に対する活性)
ストック溶液を所定の比率で混合し、マイクロタイタープレート(MTP)上に分注し、所定の濃度になるよう水で希釈した。Biomalt水溶液中のBotrytis cinereaの胞子懸濁液をその後に加えた。プレートを、18℃の温度の水蒸気飽和室内に置いた。光吸収測定装置を用いて、MTPを405nm、接種後7日の条件で測定した。
測定したパラメータを、活性化合物を用いない対照(100%)、並びに菌及び活性化合物を用いないブランク値の成長と比較し、それぞれの活性化合物における病原菌の相対的成長(%)を決定した。
これらのパーセンテージは有効性に変換した。
有効性が0とは、病原菌の成長レベルが、処理していない対照での成長レベルと等しいことを意味している。有効性が100とは、病原菌が成長しなかったことを意味する。
活性化合物混合物の予測される有効性は、Colbyの式(R.S. Colby, "Calculating synergistic and antagonistic responses of herbicide combinations", Weeds 15, 20-22 (1967))を用いて決定し、観測された有効性と比較した。
試験結果は以下の表のようになった。明らかに、試験を行った組み合わせは強い殺菌相乗効果を示した。


テストレポート3
活性化合物をそれぞれ、ジメチルスルホキシド中10000ppmの濃度を有するストック溶液として調製した。
市販の最終製品としてソナタ(バチルス・プミルス株を含む農薬)を使用し、活性化合物が所定の濃度になるよう水で希釈した。

(Septoria triticiによって引き起こされるコムギの葉枯病に対する活性)
ストック溶液を所定の比率で混合し、マイクロタイタープレート(MTP)上に分注し、所定の濃度になるよう水で希釈した。Biomalt水溶液中のSeptoria triticiの胞子懸濁液をその後に加えた。プレートを、18℃の温度の水蒸気飽和室内に置いた。光吸収測定装置を用いて、MTPを405nm、接種後7日の条件で測定した。

(灰色カビ病(Botrytis cinerea)に対する活性)
ストック溶液を所定の比率で混合し、マイクロタイタープレート(MTP)上に分注し、所定の濃度になるよう水で希釈した。Biomalt水溶液中のBotrytis cinereaの胞子懸濁液をその後に加えた。プレートを、18℃の温度の水蒸気飽和室内に置いた。光吸収測定装置を用いて、MTPを405nm、接種後7日の条件で測定した。

測定したパラメータを、活性化合物を用いない対照(100%)、並びに菌及び活性化合物を用いないブランク値の成長と比較し、それぞれの活性化合物における病原菌の相対的成長(%)を決定した。
これらのパーセンテージは有効性に変換した。
有効性が0とは、病原菌の成長レベルが、処理していない対照での成長レベルと等しいことを意味している。有効性が100とは、病原菌が成長しなかったことを意味する。
活性化合物混合物の予測される有効性は、Colbyの式(R.S. Colby, "Calculating synergistic and antagonistic responses of herbicide combinations", Weeds 15, 20-22 (1967))を用いて決定し、観測された有効性と比較した。
試験結果は以下の表のようになった。明らかに、試験を行った組み合わせは顕著な殺菌相乗効果を示した。


テストレポート4
活性化合物をそれぞれ、ジメチルスルホキシド中10000ppmの濃度を有するストック溶液として調製した。
市販の最終製品としてセレナーデを使用し、活性化合物が所定の濃度になるよう水で希釈した。

(マイクロタイタープレート試験による灰色カビ病(Botrytis cinerea)に対する活性)
ストック溶液を所定の比率で混合し、マイクロタイタープレート(MTP)上に分注し、所定の濃度になるよう水で希釈した。Biomalt水溶液中のBotrytis cinereaの胞子懸濁液をその後に加えた。プレートを、18℃の温度の水蒸気飽和室内に置いた。光吸収測定装置を用いて、MTPを405nm、接種後7日の条件で測定した。
測定したパラメータを、活性化合物を用いない対照(100%)、並びに菌及び活性化合物を用いないブランク値の成長と比較し、それぞれの活性化合物における病原菌の相対的成長(%)を決定した。
これらのパーセンテージは有効性に変換した。
有効性が0とは、病原菌の成長レベルが、処理していない対照での成長レベルと等しいことを意味している。有効性が100とは、病原菌が成長しなかったことを意味する。
活性化合物混合物の予測される有効性は、Colbyの式(R.S. Colby, "Calculating synergistic and antagonistic responses of herbicide combinations", Weeds 15, 20-22 (1967))を用いて決定し、観測された有効性と比較した。
試験結果は以下の表のようになった。明らかに、試験を行った組み合わせは強い殺菌相乗効果を示した。


テストレポート5
活性化合物をそれぞれ、ジメチルスルホキシド中10000ppmの濃度を有するストック溶液として調製した。
市販の最終製品としてソナタを使用し、活性化合物が所定の濃度になるよう水で希釈した。

(灰色カビ病(Botrytis cinerea)に対する活性)
ストック溶液を所定の比率で混合し、マイクロタイタープレート(MTP)上に分注し、所定の濃度になるよう水で希釈した。Biomalt水溶液中のBotrytis cinereaの胞子懸濁液をその後に加えた。プレートを、18℃の温度の水蒸気飽和室内に置いた。光吸収測定装置を用いて、MTPを405nm、接種後7日の条件で測定した。

(Septoria triticiによって引き起こされるコムギの葉枯病に対する活性)
ストック溶液を所定の比率で混合し、マイクロタイタープレート(MTP)上に分注し、所定の濃度になるよう水で希釈した。Biomalt水溶液中のSeptoria triticiの胞子懸濁液をその後に加えた。プレートを、18℃の温度の水蒸気飽和室内に置いた。光吸収測定装置を用いて、MTPを405nm、接種後7日の条件で測定した。

測定したパラメータを、活性化合物を用いない対照(100%)、並びに菌及び活性化合物を用いないブランク値の成長と比較し、それぞれの活性化合物における病原菌の相対的成長(%)を決定した。
これらのパーセンテージは有効性に変換した。
有効性が0とは、病原菌の成長レベルが、処理していない対照での成長レベルと等しいことを意味している。有効性が100とは、病原菌が成長しなかったことを意味する。
活性化合物混合物の予測される有効性は、Colbyの式(R.S. Colby, "Calculating synergistic and antagonistic responses of herbicide combinations", Weeds 15, 20-22 (1967))を用いて決定し、観測された有効性と比較した。
試験結果は以下の表のようになった。明らかに、試験を行った組み合わせは強い殺菌相乗効果を示した。


テストレポート6
活性化合物をそれぞれ、ジメチルスルホキシド中10000ppmの濃度を有するストック溶液として調製した。
市販の最終製品としてセレナーデを使用し、活性化合物が所定の濃度になるよう水で希釈した。

(灰色カビ病(Botrytis cinerea)に対する活性)
ストック溶液を所定の比率で混合し、マイクロタイタープレート(MTP)上に分注し、所定の濃度になるよう水で希釈した。Biomalt水溶液中のBotrytis cinereaの胞子懸濁液をその後に加えた。プレートを、18℃の温度の水蒸気飽和室内に置いた。光吸収測定装置を用いて、MTPを405nm、接種後7日の条件で測定した。
測定したパラメータを、活性化合物を用いない対照(100%)、並びに菌及び活性化合物を用いないブランク値の成長と比較し、それぞれの活性化合物における病原菌の相対的成長(%)を決定した。
これらのパーセンテージは有効性に変換した。
有効性が0とは、病原菌の成長レベルが、処理していない対照での成長レベルと等しいことを意味している。有効性が100とは、病原菌が成長しなかったことを意味する。
活性化合物混合物の予測される有効性は、Colbyの式(R.S. Colby, "Calculating synergistic and antagonistic responses of herbicide combinations", Weeds 15, 20-22 (1967))を用いて決定し、観測された有効性と比較した。
試験結果は以下の表のようになった。明らかに、試験を行った組み合わせは強い殺菌相乗効果を示した。


テストレポート7
活性化合物をそれぞれ、ジメチルスルホキシド中10000ppmの濃度を有するストック溶液として調製した。
市販の最終製品としてソナタを使用し、活性化合物が所定の濃度になるよう水で希釈した。

(Septoria triticiによって引き起こされるコムギの葉枯病に対する活性)
ストック溶液を所定の比率で混合し、マイクロタイタープレート(MTP)上に分注し、所定の濃度になるよう水で希釈した。Biomalt水溶液中のSeptoria triticiの胞子懸濁液をその後に加えた。プレートを、18℃の温度の水蒸気飽和室内に置いた。光吸収測定装置を用いて、MTPを405nm、接種後7日の条件で測定した。
測定したパラメータを、活性化合物を用いない対照(100%)、並びに菌及び活性化合物を用いないブランク値の成長と比較し、それぞれの活性化合物における病原菌の相対的成長(%)を決定した。
これらのパーセンテージは有効性に変換した。
有効性が0とは、病原菌の成長レベルが、処理していない対照での成長レベルと等しいことを意味している。有効性が100とは、病原菌が成長しなかったことを意味する。
活性化合物混合物の予測される有効性は、Colbyの式(R.S. Colby, "Calculating synergistic and antagonistic responses of herbicide combinations", Weeds 15, 20-22 (1967))を用いて決定し、観測された有効性と比較した。
試験結果は以下の表のようになった。明らかに、試験を行った組み合わせは明確な殺菌相乗効果を示した。


テストレポート8
本発明に係る活性化合物の組み合わせによる高度な殺菌活性は、下記の例によって証明される。個々の活性化合物は、殺菌活性に関して不十分な値を示すが、その組み合わせは、それらの活性を単に足し合わせたものを超える活性を有する。
殺菌剤の相乗効果は、活性化合物の組み合わせによる殺菌活性がそれらの活性化合物を個別に適用したときの活性の合計値を超える場合に存在する。2つの活性化合物の組み合わせにおいて予測される活性は、次のように計算することができる(Colby, S.R., "Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combinations", Weeds 1967, 15, 20-22を参照)。
E=X+Y-(X・Y)/100
(ここで、
Xは、活性化合物Aをmの適用量(ppm又はg/ha)で適用したときの有効性。
Yは、活性化合物Bをnの適用量(ppm又はg/ha)で適用したときの有効性。
Eは、活性化合物A及びBをそれぞれm及びnの適用量(ppm又はg/ha)で適用したときの有効性。)
有効性の値は%として表され、0%は対照の有効性と一致する有効性を意味し、100%の有効性とは病害が観察されないことを意味する。
もし、実際の殺菌活性が計算値を超える場合、その組み合わせの活性は相乗効果を示すこととなる。この場合、実際に観測された有効性は、上記の式に従って計算された期待有効性(E)の値よりも大きくなければならない。
相乗効果を説明する別の方法は、Tammesの方法である("Isoboles, a graphic representation of synergism in pesticides" in Neth. J. Plant Path., 1964, 70, 73-80を参照)。
本発明を以下の例によって説明する。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。

例1
(Leptosphaeria nodorum試験(コムギ)/予防)
市販の化合物SONATA(登録商標)、活性化合物(1重量部)を溶解し、その後所定の濃度になるよう水で希釈した。
SONATAの適用量は、SONATAに含まれる乾燥バチルス・プミルスQST2808(NRRLアセッションNo.B30087)の量に基づく。
予防活性の試験を行うため、若い植物体に、活性化合物又は活性化合物の組み合わせの製剤を所定の適用量でスプレーした。スプレー後、塗布面を乾燥し、植物体にLeptosphaeria nodorumの胞子懸濁液をスプレーした。
試験の評価は、接種後8日経過後に行った。0%は、処理していない対照の有効性と等しい有効性を意味し、100%の有効性とは、病害が観察されないことを意味する。下記の表は、本発明に係る活性化合物の組み合わせによる観測された活性が、計算された活性よりも大きいことを明確に示しており、すなわち、相乗効果が存在することが分かる。


例2
(Pyrenophora teres試験(オオムギ)/予防)
市販の化合物SONATA(登録商標)、活性化合物(1重量部)を溶解し、その後所定の濃度になるよう水で希釈した。
SONATAの適用量は、SONATAに含まれる乾燥バチルス・プミルスQST2808(NRRI.アセッションNo.B30087)の量に基づく。
予防活性の試験を行うため、若い植物体に、活性化合物又は活性化合物の組み合わせの製剤を所定の適用量でスプレーした。スプレー後、塗布面を乾燥し、植物体にPyrenophora teresの胞子懸濁液をスプレーした。植物体は約20℃及び約100%の相対湿度でインキュベーションキャビネット内において48時間保持した。
試験の評価は、接種後8日経過後に行った。0%は、処理していない対照の有効性と等しい有効性を意味し、100%の有効性とは、病害が観察されないことを意味する。下記の表は、本発明に係る活性化合物の組み合わせによる観測された活性が、計算された活性よりも大きいことを明確に示しており、すなわち、相乗効果が存在することが分かる。


例3
(Fusarium graminearum試験(オオムギ)/予防)
市販の化合物SERENADE-MAX(登録商標)、活性化合物(1重量部)を溶解し、その後所定の濃度になるよう水で希釈した。
SERENADE-MAXの適用量は、SERENADE-MAXに含まれる乾燥バチルス・スブチルスQST713(NRRLアセッションNo.B-21661)の量に基づく。
予防活性の試験を行うため、若い植物体に、活性化合物又は活性化合物の組み合わせの製剤を所定の適用量でスプレーした。スプレー後、塗布面を乾燥し、植物体をサンドブラストを用いてわずかに傷付け、植物体にFusarium graminearumの分生子懸濁液をスプレーした。
試験の評価は、接種後5日経過後に行った。0%は、処理していない対照の有効性と等しい有効性を意味し、100%の有効性とは、病害が観察されないことを意味する。下記の表は、本発明に係る活性化合物の組み合わせによる観測された活性が、計算された活性よりも大きいことを明確に示しており、すなわち、相乗効果が存在することが分かる。



そこで、これらの審判請求人の主張について検討する。

a 主張aについて
実施可能要件を満たすためには、「第2 2(2)ア」で述べたとおり、植物病原性有害菌防除用殺菌組成物という物の発明においては、その植物病原性有害菌防除用殺菌組成物を製造できることを記載しただけにとどまらず、植物病原性有害菌防除用殺菌組成物として使用できることを当業者が過度の試行錯誤をすることなく実施できるように記載することが必要である。

そうすると、発明の詳細な説明に本願補正発明の相乗効果を奏することを実証する方法が、一般論として記載しているのみでは足らず、具体的に成分1)及び成分2)の組成物が有害菌に対する防除作用について相乗効果を確認することができる施用態様を示すなりして、当業者が過度の試行錯誤することなくその効果が確認できるように記載されている必要があるものと解される。

そこで、発明の詳細な説明の記載をみると、上記「第2 2(2)ア(ウ)」で述べたように、技術常識を勘案しても、発明の詳細な説明には、本願補正発明における成分1)及び成分2)の組成物の有害菌に対する相乗的な防除作用が確認できるように記載されているとはいえないため、本願補正発明の植物病原性有害菌防除用殺菌組成物が使用できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず、主張aは採用できない。

b 主張bについて
審判請求書及び意見書において、実験結果を示すことで、本願補正発明の成分1)及び成分2)の組成物の有害菌に対する防除作用についての相乗効果は当業者であれば十分に把握し得るという点についてみると、上記「第2 2(2)ア(ウ)」で述べたように、技術常識を勘案しても、発明の詳細な説明には、本願補正発明における成分1)及び成分2)の組成物の有害菌に対する防除作用についての相乗効果が示されているとはいえず、また、後から提出された追加実験の結果は、その施用態様が発明の詳細な説明に何ら記載がなく、当業者が推認できるものでもないので、発明の詳細な説明に記載されていない技術事項について、このような後から提出した追加実験を参酌して発明の詳細な説明の記載を補うことは、許されないものである。
よって、主張bは採用できない。

以上のとおりであるから、審判請求人の主張はいずれも採用できない。

(オ)特許法第36条第4項第1号についてのまとめ
よって、発明の詳細な説明の記載は、本願補正発明を当業者が実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されているものとはいえず、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項1号の規定を満たすものではない。

イ 特許法第36条第6項第1号について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (参考:知財高判平17.11.11(平成17(行ケ)10042)大合議判決)
また、上記大合議判決では、発明の詳細な説明に、当業者が発明の課題を解決できると認識できる程度に具体例を開示せず、技術常識を参酌しても特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないのに、特許出願後に実験データを提出して発明の詳細な説明の記載内容を記載外で補足することによって、その内容を特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで拡張ないし一般化し、明細書のサポート要件に適合させることは、発明の公開を前提に特許を付与するという特許制度の趣旨に反して許されないというべきである、という旨の説示もされている。

以下、この観点に立って検討する。

(ア)特許請求の範囲の記載について
補正後の特許請求の範囲の請求項1には、上記「第2 2(2)ア(ア)」に記載したとおりの記載がされている。

(イ)発明の詳細な説明の記載について
上記「第2 2(2)ア(イ)」に記載したとおりの記載がされている。

(ウ)本願補正発明の課題について
発明の詳細な説明には、
「本発明は、株(I)及び化合物(II)の施用量を低減しようとする目的、またその活性スペクトルを広くしようとする目的で、施用される活性化合物の全体量が低減された量で、有害な菌に対する、特にはある種の適応種に対する活性が向上されている組成物を提供することを目的としていた。」(摘記(e))と記載され、また、

「結果としてこの目的は、冒頭で定義した成分1)と成分2)との組成物によって達成されることを本発明者は見出した。さらに、成分1)及び成分2)の同時の(つまり一緒の又は別々の)施用、又は、成分1)及び成分2)の順次の施用は、一つには、株、その変異株、及びそのような株によって産生される代謝産物単独で可能なよりも、もう一つには、個々の化合物(II)単独で可能なよりも、有害菌のより優れた防除を可能にすることを本発明者は見出した(相乗作用混合物)。」(摘記(f))と記載されている。

そうすると、本願補正発明の課題は、成分1)及び成分2)の組成物を使用することにより、成分1)又は成分2)を単独で使用した場合よりも全体量が低減された量で、有害菌に対する防除作用について相乗効果を有する組成物を提供することであるといえる。

(エ)判断
本願の発明の詳細な説明において、本願補正発明の課題である成分1)及び成分2)の組成物を使用することにより、成分1)又は成分2)を単独で使用した場合よりも全体量が低減された量で、有害菌に対する防除作用について相乗効果を有する組成物を提供することが記載されているところを検討すると、段落【0022】に、「成分1)及び成分2)の同時の施用によって、殺菌活性は超相加的に増大される」と記載され(摘記(g))、段落【0120】及び同【0123】に成分1)と成分2)との組合せが記載されており(摘記(i)及び摘記(j))、実施例では、殺菌作用の試験方法、計算方法の記載がされている(摘記(k))だけである。

結局のところ、発明の詳細な説明には、成分1)及び成分2)として、具体的にどういった成分をどの程度の量を用いた組成物を、どのような植物に施用し、どのような有害菌に対して、どの程度の防除作用が得られたのかについては、具体的に記載されていない。

また、成分1)又は成分2)を単独使用して、有害菌に対する防除作用の程度の具体例も記載されていないため、成分1)又は成分2)を単独使用した場合に比べて、成分1)及び成分2)の組成物を使用した場合が、有害菌に対する防除作用について相乗効果を奏するという具体的なデータは記載されていない。

このため、成分1)及び成分2)の組成物を使用することにより、成分1)又は成分2)を単独で使用した場合よりも全体量が低減された量で、有害菌に対する防除作用について相乗効果を有する組成物を提供することは、データに基づいて具体的に記載されていない。

更に、有害菌に対して作用をすることが公知である成分1)又は成分2)を組み合わせて組成物として使用した場合に、拮抗作用を示すことなく活性を高め相乗効果を示すことが技術常識としては知られていないので、出願時の技術常識に照らしても、成分1)及び成分2)の組成物を使用することにより、成分1)又は成分2)を単独で使用した場合よりも全体量が低減された量で、有害菌に対する防除作用について相乗効果を有することが予測できるとはいえない。

従って、技術常識に照らしたとしても、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。

(オ)審判請求人の主張
審判請求人は、平成26年5月15日付けの手続補正により補正された審判請求書において、平成25年10月23日付け提出の意見書の記載も引用しつつ特許法第36条第6項第1号に基づく拒絶理由は解消した旨を主張する。具体的な主張については、上記「第2 2(2)ア(エ)」において記載したとおりである。

そこで、これらの審判請求人の主張について検討する。

a 主張aについて
サポート要件を満足するためには、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により、当業者が出願時の技術常識に照らし本願補正発明の課題である、成分1)及び成分2)の組成物を使用することにより、成分1)又は成分2)を単独で使用した場合よりも全体量が低減された量で、有害菌に対する防除作用について相乗効果を有する組成物を提供することを解決できると認識できる範囲であることが必要であるといえる。

そうすると、発明の詳細な説明に本願補正発明の相乗効果を奏することを実証する方法が一般論として記載されているのみでは足らず、具体的に成分1)及び成分2)の組成物が有害菌に対して相乗的な防除作用を奏することがデータに基づいて記載されている必要があると解される。

そこで、発明の詳細な説明をみると、上記「第2 2(2)イ(エ)」で述べたように、発明の詳細な説明には、技術常識に照らしても成分1)及び成分2)の組成物が有害菌に対して相乗的な防除作用を奏することが記載されているとはいえないので、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。
よって、主張aは採用できない。

b 主張bについて
審判請求書及び意見書において、実験結果を示すことで、本願補正発明の成分1)及び成分2)の組成物の有害菌に対する防除作用についての相乗効果は当業者であれば十分に把握し得るという点についてみると、上記「第2 2(2)ア(ウ)」で示したとおり、技術常識を勘案しても、発明の詳細な説明には、本願補正発明1における成分1)及び成分2)の組成物が有害菌に対する防除作用について相乗効果が示されているとはいえず、また、後から提出された追加実験の結果は、当業者が推認できるものでもない。

そして、具体例もなく、技術常識を参酌しても発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないのに、特許出願後に追加実験を提出して、発明の詳細な説明の記載内容を記載外で補足することによってサポート要件に適合させることは許されないことである。
よって、主張bは採用できない。

以上のとおりであるから、審判請求人の主張はいずれも採用できない。

(カ)特許法第36条第6項第1号についてのまとめ
よって、補正後の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする本願補正発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

ウ 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、発明の説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たすものではなく、また、補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第6項の規定の規定を満たすものではないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものである。

よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願の特許請求の範囲の記載について
平成26年3月26日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成25年10月23日付けでなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
相乗効果がある量で
1)
a)NRRLアクセッション番号がB-21661のバチルス・サブスチリス株、及び
b)NRRLアクセッション番号がB-30087のバチルス・プミルス株、
から選択される殺菌性株(I)、又は全ブロス培地中のそのような株の懸濁液もしくはその上澄液、
及び、
2)
活性化合物群A)?F):
A)
アザコナゾール、ジニコナゾール-M、オキスポコナゾール、パクロブトラゾール、ウニコナゾール、1-(4-クロロ-フェニル)-2-([1,2,4]トリアゾール-1-イル)-シクロヘプタノール及びイマザリル-スルフファートからなる群から選択されるアゾール系化合物;
B)
2-(2-(6-(3-クロロ-2-メチル-フェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジン-4-イルオキシ)-フェニル)-2-メトキシイミノ-N-メチル-アセトアミド及び3-メトキシ-2-(2-(N-(4-メトキシ-フェニル)-シクロ-プロパンカルボキシミドイルスルファニルメチル)-フェニル)-アクリル酸メチルエステルからなる群から選択されるストロビルリン系化合物;
C)
ベナラキシル、ベナラキシル-M、2-アミノ-4-メチル-チアゾール-5-カルボキサミド、2-クロロ-N-(1,1,3-トリメチル-インダン-4-イル)-ニコチンアミド、N-(2-(1,3-ジメチルブチル)-フェニル)-1,3-ジメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、N-(4’-クロロ-3’,5-ジフルオロ-ビフェニル-2-イル)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、N-(4’-クロロ-3’,5-ジフルオロ-ビフェニル-2-イル)-3-トリフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、フルオピラム、N-(3-エチル-3,5-5-トリメチル-シクロヘキシル)-3-ホルミル-アミノ-2-ヒドロキシ-ベンズアミド、オキシテトラサイクリン、シルチオファム、N-(6-メトキシ-ピリジン-3-イル)シクロプロパンカルボン酸アミド、ペンチオピラド、イソピラザム、及び式III

[式中の各置換基は以下に定義されている通りである:
Xは、水素又はフッ素であり;
R^(1)は、C_(1)?C_(4)-アルキル又はC_(1)?C_(4)-ハロアルキルであり;
R^(2)は、水素又はハロゲンであり;
R^(3)、R^(4)及びR^(5)は、互いに独立して、水素、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C_(1)?C_(4)-アルキル、C_(1)?C_(4)-ハロアルキル、C_(1)?C_(4)-アルコキシ、C_(1)?C_(4)-ハロアルコキシ又はC_(1)?C_(4)-アルキルチオである]で表される1-メチル-ピラゾール-4-イルカルボキサミド化合物からなる群から選択されるカルボキサミド系化合物;
D)
5-クロロ-7-(4-メチルピペリジン-1-イル)-6-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン、2,3,5,6-テトラクロロ-4-メタンスルホニル-ピリジン、3,4,5-トリクロロ-ピリジン-2,6-ジ-カルボニトリル、N-(1-(5-ブロモ-3-クロロ-ピリジン-2-イル)-エチル)-2,4-ジクロロ-ニコチンアミド、N-((5-ブロモ-3-クロロ-ピリジン-2-イル)-メチル)-2,4-ジクロロ-ニコチンアミド、ジフルメトリム、ニトラピリン、ドデモルフ-アセタート、フルオロイミド、ブラスチシジン-S、チノメチオナート、デバカルブ、オキソリニックアシッド、ピペラリン、及び式IV

[式中の各置換基は以下の意味を有している:
E^(1)は、C_(3)?C_(12)-アルキル、C_(2)?C_(12)-アルケニル、C_(5)?C_(12)-アルコキシアルキル、C_(3)?C_(6)-シクロアルキル、フェニル又はフェニル-C_(1)?C_(4)-アルキルであり;
E^(2)は、C_(1)?C_(12)-アルキル、C_(2)?C_(12)-アルケニル、C_(1)?C_(4)-ハロアルキル又はC_(1)?C_(4)-アルコキシ-C_(1)?C_(4)-アルキルであり;
(ここで、
E^(1)及び/又はE^(2)中の脂肪族鎖は、1?4個の同じ又は異なる基R^(a)によって置換されていてよく;
R^(a)は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、C_(1)?C_(10)-アルキル、C_(1)?C_(10)-ハロアルキル、C_(3)?C_(8)-シクロアルキル、C_(2)?C_(10)-アルケニル、C_(2)?C_(10)-アルキニル、C_(1)?C_(6)-アルコキシ、C_(1)?C_(6)-アルキルチオ、C_(1)?C_(6)-アルコキシ-C_(1)?C_(6)-アルキル又はNR^(A)R^(B)であり;
R^(A)、R^(B)は、互いに独立して、水素又はC_(1)?C_(6)-アルキルであり;また、
E^(1)及び/又はR^(a)中の環式基は、1?4個の基R^(b)によって置換されていてよく;
R^(b)は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、ニトロ、NR^(A)R^(B)、C_(1)?C_(10)-アルキル、C_(1)?C_(6)-ハロアルキル、C_(2)?C_(6)-アルケニル、C_(2)?C_(6)-アルキニル又はC_(1)?C_(6)-アルコキシである)
E^(3)は、水素、ハロゲン、シアノ、NR^(A)R^(B)、ヒドロキシル、メルカプト、C_(1)?C_(6)-アルキル、C_(1)?C_(6)-ハロアルキル、C_(3)?C_(8)-シクロアルキル、C_(1)?C_(6)-アルコキシ、C_(1)?C_(6)-アルキルチオ、C_(3)?C_(8)-シクロアルコキシ、C_(3)?C_(8)-シクロアルキルチオ、カルボキシル、ホルミル、C_(1)?C_(10)-アルキル-カルボニル、C_(1)?C_(10)-アルコキシカルボニル、C_(2)?C_(10)-アルケニルオキシカルボニル、C_(2)?C_(10)-アルキニルオキシカルボニル、フェニル、フェノキシ、フェニルチオ、ベンジルオキシ、ベンジルチオ又はC_(1)?C_(6)-アルキル-S(O)m-であり;
mは、0、1又は2であり;
Aは、CH又はNである]
で表されるアゾロピリミジニルアミン化合物
からなる群から選択されるヘテロ環式系化合物;
E)
メタスルホカルブ及びプロパモカルブヒドロクロリドからなる群から選択されるカルバメート系化合物;
F)
メトラフェノン、ドジン遊離塩基、グアザチン-アセタート、イミノオクタジン-トリアセタート、イミンオクタジン-トリス(アルベシラート)、カスガマイシン-ヒドロクロリド-ヒドラート、ジクロロフェン、ペンタクロロフェノール及びその塩、N-(4-クロロ-2-ニトロ-フェニル)-N-エチル-4-メチル-ベンゼンスルホン-アミド、ジクロラン、ニトロタール-イソプロピル、テクナゼン、ビ-フェニル、ブロノポール、ジフェニルアミン、ミルジオマイシン、オキシン-銅、プロ-ヘキサジオンカルシウム、N-(シクロプロピルメトキシイミノ-(6-トリフルオロメチル-2,3-ジフルオロ-フェニル)-メチル)-2-フェニルアセトアミド、N’-(4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N’-(4-(4-フルオロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N’-(2-メチル-5-トリフルオロメチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン及びN’-(5-ジフルオロメチル-2-メチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジンからなる群から選択される他の殺菌剤;
から選択される、少なくとも1種の化学物質化合物(II)、
を含んでいる、植物病原性有害菌防除用殺菌組成物。」

第4 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、平成25年4月17日付け拒絶理由通知における理由2?4であり、理由3は、この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、というものであり、理由4は、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないというものである。
そして、備考には、理由3及び4をまとめて、
「本願発明は、2つの菌株と、膨大な種類の化合物とを併用する殺菌組成物を含むものであるが、発明の詳細な説明には、該殺菌組成物の殺菌効果は一つとして具体的に開示されていない。
殺菌剤において、複数の有効成分を併用した場合に、相加効果以上の効果が得られるかは予測することが困難な事項であり、相乗効果を奏するか否かは、実際に使用し、確認することで把握されるものである。
発明の詳細な説明には、本願発明の組成物を実際に使用した例が記載されていないし、本願発明の組成物が相加効果以上の効果を奏することは、発明の詳細な説明をみても合理的に説明されていないし、技術常識でもない。
したがって、本願発明は、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものでないし、発明の詳細な説明は、本願発明が目的とする相乗効果が得られるように、明確かつ十分に記載されたものでない。」と記載されている。

第5 当審の判断
本願補正発明は、本願発明の成分2)の活性化合物群を限定して特定するものであるから、本願発明は、本願補正発明を包含するものである。

1 特許法第36条第4項第1号について
上記「第2 2(2)ア(オ)」で示したとおり、発明の詳細な説明の記載は、本願補正発明を当業者が実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されているものとはいえないので、本願補正発明を包含する本願発明についても、同様に当業者が実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されているものとはいえない。
よって、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号の規定を満たすものではない。

2 特許法第36条第6項について
上記「第2 2(2)イ(カ)」で示したとおり、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする本願補正発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないので、本願補正発明を包含する本願発明についても、同様に特許を受けようとする本願発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第6項の規定を満たすものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願の発明の説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たすものではなく、また、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第6項の規定を満たすものではないから、この出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-24 
結審通知日 2015-07-28 
審決日 2015-08-20 
出願番号 特願2010-525324(P2010-525324)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A01N)
P 1 8・ 536- Z (A01N)
P 1 8・ 575- Z (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三上 晶子今井 周一郎  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 木村 敏康
佐藤 健史
発明の名称 殺菌性株及び活性成分を含む組み合わせ  
代理人 田中 夏夫  
代理人 新井 栄一  
代理人 藤田 節  
代理人 平木 祐輔  

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