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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1309502
審判番号 不服2014-9280  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-19 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2013- 13393「防眩フィルムおよびそれを用いた表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開,特開2013-101386〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成21年6月23日(優先権主張平成21年6月1日)に出願した特願2009-148432号の一部を平成25年1月28日に新たな特許出願としたものであって,平成25年11月8日付けで拒絶理由が通知され,平成26年1月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年2月4日付けで拒絶査定がなされたところ,同年5月19日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され,当審において,平成27年7月8日付けで拒絶の理由が通知され,同年9月14日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は,平成27年9月14日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5によってそれぞれ特定されるものであるところ,請求項1に係る発明は次のとおりのものと認められる。

「透光性基体上に,樹脂成分および層状有機粘土を含有する防眩層が積層されてなる防眩フィルムであって,
該防眩層が少なくとも,複数の第一の相と複数の第二の相を有しており,
前記第一の相は,樹脂成分を層状有機粘土よりも相対的に多く含有し,
前記第二の相は,樹脂成分を層状有機粘土よりも相対的に少なく含有し,
前記第一の相と第二の相とは入り組んで存在しており,
前記層状有機粘土は,雲母,合成雲母,バーミキュライト,モンモリロナイト,鉄モンモリロナイト,バイデライト,サポナイト,ヘクトライト,スチーブンサイト,ノントロナイト,マガディアイト,アイラライト,カネマイト,層状チタン酸,スメクタイト,合成スメクタイトから選択された1種または複数種類であり,
該防眩層の表面における平均傾斜角度が0.2°?1.4°であり,
該防眩フィルムをJIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した画像鮮明性が5.0?80.0の範囲であることを特徴とする防眩フィルム。」(以下,「本願発明」という。)

3 当審で通知した拒絶理由の概要
当審において平成27年7月8日付けで通知した拒絶の理由の一つ(以下,「当審拒絶理由」という。)は,概略,本願発明は,引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された技術を適用することによって,あるいは,引用文献2に記載された発明に引用文献1に記載された技術を適用することによって,その優先権主張の日(以下,「本願優先日」という。)より前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
当審拒絶理由で引用した各引用文献は次のとおりである。
引用文献1:特表2007-512547号公報
引用文献2:特開2009-75621号公報

4 引用例
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
当審拒絶理由で引用した引用文献1は,本願優先日より前に頒布された刊行物であって,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化バインダー中に層状粘土粒子を含有する層を含んでなる光学フィルム。
・・・(中略)・・・
【請求項9】
前記粒子が層状有機変性粘土粒子を含む,請求項1に記載の光学フィルム。
・・・(中略)・・・
【請求項33】
可撓性の透明なポリマー支持体を準備すること,当該支持体に,有機溶剤中に多官能性アクリル化合物,層状粘土粒子を含む放射線硬化性バインダー塗膜を塗布すること,そして当該塗膜を放射線硬化させて層を形成することを含んでなる,光学フィルムの形成方法。」

(イ) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,優れたグレア防止性を付与するためのLCD及びCRTパネルのような高鮮明度画像ディスプレー装置に使われる光学フィルムに関する。
【背景技術】
・・・(中略)・・・
【0003】
LCDは,多くのタイプのディスプレーの使用に伴って,それが重量的に軽くて,コンパクトに作れることから,この携帯端末機の市場で大きな役割を果たしている。これらの携帯端末機は,屡,戸外で使用されることから,出来るだけ完全にグレア又は正反射を抑えることによって,明るい直射日光でも良好な可視性を確保することが重要である。これを確保するために,グレア防止フィルムが,外部光を拡散させ,正反射を抑える目的でディスプレー表面に備えられていることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0006】
前記先行技術では,主として,対称球体粒子を使用することが教示されている。球体対称ポリマー粒子は,所望のグレア防止性を与えることができるが,その高度に湾曲した表面は,潜在的に,当該システムに有害となる可能性がある。摩耗すると,かかる球体粒子は,粒子/バインダー界面での接着が弱くなるため,その塗膜から離脱する傾向がある。これによって,その表面が粉立ち,顕微鏡的な毛孔が生じて,その結果,透過曇りが増大して,画像のコントラスト及び鮮明度を低下させてしまう。更に,グレア防止塗膜が,三酢酸セルロースのような可撓性基体上に塗布されるときは,かかる可撓性基体は,屡,巻き取られたロール形態で取り扱われるという事実に照らして,当該基体に対する接着性が,益々重要となる。
【0007】
当該技術分野では,グレア防止姓を与えるために,塗膜中に,凝集したシリカ粒子を用いることが周知である。これらの粒子は,コントロールされた曇りと光沢を与える一方で,それらが,かかる巻き取られた可撓性基体のロールにおいて摩耗による巻き斑を引き起こす一因ともなり得る。」

(ウ) 「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば,放射線硬化バインダー中に層状粘土粒子を含有する層を含む光学フィルムが提供される。また,本発明によれば,有用な分散体,当該フィルムの製造方法,及び当該フィルムを組み込んだLCD又は接触スクリーンディスプレーが提供される。」

(エ) 「【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,所望の光沢及び曇りレベルの両特性を有する材料が提供される。」

(オ) 「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
・・・(中略)・・・本発明によれば,本発明のグレア防止層は,良好なフィルム形成性,優れたグレア防止性,低曇り性,良好な耐指紋性,耐摩耗性,強靭性,硬度,良好な耐薬品性及び耐候性のような好都合な諸特性が付与されるように,可撓性の透明支持体上に塗布された層状粘土粒子を含有するオリゴマー又はモノマーの化学放射線硬化性分散体から得られる。化学放射線の具体例には,紫外(UV)線及び電子ビーム線が含まれる。勿論,UVが好ましい。
【0012】
本発明者等は,放射線で硬化した光学フィルム中に層状粘土粒子を使用すると,同レベルの光沢での比較例よりも望ましい低い曇り値が得られることを見出した。第2の予期しない結果によると,本発明の多くの実施態様では,高い粒子装填量での粘土粒子がグレア防止層に用いられる際でも,同様な曇り及び光沢値が得られたことが示されている。このことは,粒子含有層の靭性を高めることが望まれているときに,その粒子の装填量を高めることが望ましいとされている場合に好都合となり得る。
【0013】
本発明のグレア防止層を形成させるのに有用なUV硬化性組成物は,二つの主要なタイプの硬化性薬品,フリーラジカル薬品とカチオン薬品を用いて硬化されてよい。アクリレートモノマー(反応性希釈剤)とオリゴマー(反応性樹脂及びラッカー)は,フリーラジカル系配合の主な成分であり,硬化した塗膜に殆どの物性を付与する。光重合開始剤は,紫外線エネルギーを吸収し,分解してフリーラジカルを生成させ,そしてアクリレート基のC=C二重結合を攻撃して,重合を開始させる。カチオン薬品には,その主要な成分として脂環式エポキシ樹脂とビニルエーテルモノマーが用いられる。光重合開始剤は,紫外線を吸収して,ルイス酸を生成させ,それがエポキシ環を攻撃して,重合を開始させる。UV硬化とは,紫外線硬化のことをいい,280?420nm,好ましくは320?410nmの波長のUV線を使用することが含まれる。
・・・(中略)・・・
【0018】
グレア防止性を付与する粒子は,前述したように,放射線硬化性でグレア防止性の層組成物中に分散されており,それは,層状粘度粒子である。更に,当該粒子は,典型的に,2?1000m^(2)/gの範囲にある比表面積値を示している。
【0019】
それらの不規則な構造のため,かかる粒子は,UV硬化マトリクスと機械的結合を形成することが可能となる。これにより,表面の摩耗時に,グレア防止層の表面から粒子が離脱及び粉立ちすることを防止し,その結果,表面曇りを増大させる。他方,球体粒子は,表面層に付着することが難しいため,取り扱い時に表面から離脱して,結果として,表面を毛孔化して,曇りが生じる。
【0020】
グレア防止性を付与する層状粘土粒子の具体例には,平均粒度2?20μm,好適には2?15μm,そして望ましくは4?10μmを有する層状結晶物質が含まれる。それらは,2?50重量%,好適には約2?40重量%,典型的には2?20重量%,そして望ましくは2?10重量%の量で,層中に存在している。
【0021】
本発明に最も好適な層状物質には,非対称粒子における短軸方向に対する長軸方向の比であるアスペクト比で高アスペクト比をもつ,板状形態の物質が含まれる。・・・(中略)・・・
【0022】
本発明に好適な層状物質には,葉状(層状)ケイ酸塩,例えば,モンモリロナイト,特にナトリウムモンモリロナイト,マグネシウムモンモリロナイト,及び/又はカルシウムモンモリロナイト,ノントロナイト,バイデライト,ボルコンスコアイト,ヘクトライト,サポナイト,ソーコナイト,ソボクカイト,スティーブンサイト,スビンフォルダイト,バーミキュライト,マガデアイト,ケニヤアイト,タルク,雲母,カオリナイト,及びそれらの混合物が含まれる。他の有用な層状物質には,イライト,混合層状イライト/スメクタイト鉱物,例えばレディカイト及びイライトと前記した層状物質との混合物が,含まれてよい。他の有用な,特にアニオン性マトリクスポリマーにとって有用な層状物質には,層状二重水酸化物粘土,即ち,Mg_(6)AL_(3.4)(OH)_(18.8)(CO_(3))_(1.7)H_(2)Oのようなハイドロタルサイトが含まれる。このハイドロタルサイトは,正に荷電した層を有し,その中間層の空間でアニオンと交換可能である。好ましい層状物質は膨潤性であり,そのため,他の剤,通常,有機イオン又は分子が,層状物質の層間を広げ,つまり,層間挿入及び/又は展開して,その結果,無機相への所望の分散が可能となる。これらの膨潤性層状物質には,文献(例えば,H. van Olphen 著の「粘土コロイド化学入門」,John Willey & Sons 社発行)で定義されるような,2:1タイプの葉状(層状)ケイ酸塩が含まれる。50?300ミリ当量/100gのイオン交換容量を有する典型的な葉状(層状)ケイ酸塩が,好ましい。一般に,小板粒子をグレア防止塗膜に混入する前に,当該小板粒子の凝集体を分離させて小結晶体(「タクトイド」(粘土の単位層)とも言う)となすように,選定される粘土物質を処理することが望ましい。また,この小板粒子を予備分散させ,又は分離しておくことは,バインダー/小板の界面をも改善する。前記目的を達成する処理であれば,いかなる処理が用いられてもよい。有用な処理の具体例には,水溶性又は非水溶性ポリマー,有機反応剤又はモノマー,シラン化合物,金属又は有機金属化合物,カチオン交換に機能する有機カチオン,及びそれらの組み合わせを用いての層間挿入が含まれる。
・・・(中略)・・・
【0026】
有機カチオンを用いて層状粒子を変性させる多くの方法が知られているが,これらのいずれも,有機変性粘土を得るための本発明の処理に使用されてよい。本発明の一実施態様では,層状粒子物質を,最も好ましくは50?80℃の温水中に浸漬し,有機カチオン塩又は有機カチオン塩の混合物を(そのまま,あるいは水又はアルコール中に溶解させて)撹拌しながら添加し,次いで,この有機カチオンが,粘土物質の層間間隙に存在する金属カチオンの大部分と交換するに十分な時間ブレンドする方法によって,層状粒子が有機カチオンで変性される。その後,有機で変性された層状粒子物質は,濾過,遠心分離,噴霧乾燥,及びそれらの組み合わせを含むがこれに限定されない当該分野で公知の方法によって単離される。当該層状粒子の間隙に存在する金属カチオンの殆どを有機カチオンと交換可能とするに足る十分な量の有機カチオンを使用することが望ましいので,少なくとも1当量の有機カチオン塩が用いられ,そして,約3当量までの有機カチオン塩が用いられてもよい。約1.1?2当量の有機カチオン塩の使用が好ましく,約1.1?1.5当量の使用がより好ましい。洗浄及び当該分野で公知の他の手段によって,殆どの金属カチオン塩及び殆どの過剰な有機カチオン塩が取り除かれることが望ましいが,必要ではない。有機粘土の粒度は,磨砕,微粉砕,ハンマーミル粉砕,ジェット粉砕,及びそれらの組み合わせを含むがそれに限定されない公知方法によって,粒度が小さくされる。その平均粒度は,直径100μm未満に下げられることが好ましく,より好ましくは,直径50μm未満,そして最も好ましくは,直径20μm未満である。本発明の処理に有用な有機カチオン塩は,以下のように表される。
【0027】
【化1】

【0028】
式中,Mは,それぞれ窒素又はリンを表す。X^(-)は,ハロゲン,水酸化物,又はアセテートアニオン,好ましくはクロリド及びブロミドからなる群より選ばれるアニオンを表し,R1,R2,R3及びR4は,独立して,有機及びオリゴマー配位子から選ばれ,水素であってもよい。有用な有機配位子の具体例には,1?22個の炭素原子を有する線状もしくは分枝アルキル基,ベンジル及び当該構造のアルキル部分に1?22個の炭素原子の直鎖もしくは分枝を有する縮合環部位を含む置換ベンジル部分であるアラルキル基,フェニル及び縮合環芳香族置換基を含む置換フェニルのようなアリール基,6個以下の炭素原子を有するβ,γ不飽和基,及び2?6個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基が含まれるが,これに限定されない。有用なオリゴマー配位子の具体例には,ポリ(アルキレンオキシド),ポリスチレン,ポリアクリレート,及びポリカプロラクトンが含まれるが,これらに限定されない。
・・・(中略)・・・
【0030】
本発明のグレア防止層を塗布するために適用できる溶剤の具体例には,メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール,シクロヘキサン,ヘプタン,トルエン及びキシレン,酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルのようなエステル及びそれらの混合物が含まれる。溶剤が適切に選択されると,透明なプラスティック基体フィルムとその塗膜樹脂との間の接着が,その透明なプラスティック基体フィルムからの可塑剤及び他の添加剤の移行を最小にしつつ,改良される。TACのような支持体に係る好適な溶剤は,トルエン及び酢酸プロピルのような芳香族炭化水素及びエステル溶剤である。
・・・(中略)・・・
【0041】
本発明の支持体材料には,種々の透明なポリマーフィルム,例えば,三酢酸セルロース(TAC),ポリエチレンテレフタレート(PET),二酢酸セルロース,酢酸酪酸セルロース,酢酸プロピオン酸セルロース,ポリエーテルスルホン,ポリアクリル系樹脂(例えば,ポリメチルメタクリレート),ポリウレタン系樹脂,ポリエステル,ポリカーボネート,芳香族ポリアミド,ポリオレフィン(例えば,ポリエチレン,ポリプロピレン),塩化ビニルから誘導されたポリマー(例えば,塩化ポリビニル及び塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー),ポリビニルアルコール,ポリスルホン,ポリエーテル,ポリノルボルネン,ポリメチルペンテン,ポリエーテルケトン,(メタ)アクリロニトリル,ガラスなどから得られるフィルムが含まれてよい。当該フィルムは,厚さ1?50ミル又はその近辺で変わってもよい。
・・・(中略)・・・
【0043】
透明支持体材料のうち,TAC,ポリカーボネート及びポリエステルが,その全体の耐候性及び機械的強度のため,好ましい。更に,TACは,それが十分に低い複屈折を有して,相互に非グレアフィルムと偏光装置とを積層させることを可能にし,その上,グレア防止層に用いて優れた表示画質のディスプレー装置が提供できるので,液晶表示装置用に,特に好ましい。」

イ 引用文献1に記載された発明
前記ア(ア)ないし(オ)の記載から,引用文献1には,次の発明が記載されていると認められる。

「ポリマーフィルム等の可撓性の透明支持体上に,紫外線硬化バインダー中に層状粘土粒子を含有するグレア防止層が形成された光学フィルムであって,
前記グレア防止層は,多官能性アクリル化合物,前記層状粘土粒子,及び有機溶剤を含む紫外線硬化性組成物を前記透明支持体上に塗布し,紫外線照射により硬化させて形成した層であり,
前記層状粘土粒子は,モンモリロナイト,ノントロナイト,バイデライト,ヘクトライト,サポナイト,スティーブンサイト,バーミキュライト,マガデアイト,雲母等の層状物質を有機カチオンを用いて変性させた層状有機変性粘土粒子であり,
グレア防止層に球体対称ポリマー粒子や凝集したシリカ粒子を含有させた従来のものと比較して,表面の摩耗時にグレア防止層の表面から粒子が離脱及び粉立ちすることが抑制され,透過曇りの増大や画像のコントラスト及び鮮明度の低下が防止されるとともに,同レベルの光沢でより低い曇り値が得られる,
グレア防止性を付与するための光学フィルム。」(以下,「引用発明」という。)

(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載
当審拒絶理由で引用した引用文献2は,本願優先日より前に頒布された刊行物であって,当該引用文献2には次の記載がある。(下線は,後述する引用文献2記載の技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
この発明は,防眩性フィルムに関する。詳しくは,液晶表示装置などの表示装置の表示面に用いられる防眩性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置(ディスプレイ)では,表示面側に防眩性フィルムを設け,このフィルムにより光を拡散することにより,防眩性を付与したり,表面反射による映りこみを低減したりする技術が採用されている。従来の防眩性フィルムは,表面に設けられた微細凹凸形状により,防眩性を付与するものである。
【0003】
図8に,従来の防眩性フィルム101の構成を示す。この防眩性フィルム101は,基材111と,この基材111上に設けられた防眩層112とを有する。防眩層112は,不定形のシリカや樹脂ビーズからなる微粒子113を含む樹脂で構成され,この微粒子113を防眩層112の表面から突出させることにより,表面に微細凹凸形状が形成されている。この防眩性フィルム101は,微粒子112,樹脂,溶剤などを含有する塗料を基材111上に塗工し,この塗料を乾燥させることにより形成される。
【0004】
このように,微粒子113を添加した塗料を基材に塗布する手法は安価で生産性が良いため,広く採用されている製法である。しかし,この防眩性フィルム1は防眩性はあるものの,一個一個の微粒子113の突起形状によって表面に凹凸を形成しているので,これら微粒子113の突起によって曇価(ヘイズ値)が上昇して画像が白っぽくなり,コントラストが低下し,また画像鮮明度も低下してしまうという問題を抱えている。
・・・(中略)・・・
【0006】
そこで,図9に示すように,防眩層112における微粒子113の充填率を減らし,防眩層112表面の凹凸の周期を長くすることにより,コントラストを高めることができる。しかしながら,このように防眩層112表面の凹凸の周期を長くしてなだらかな凹凸形状にしようとすると,微粒子113の突起と突起との間に平坦な部分ができるため,防眩性が低下してしまう。
・・・(中略)・・・
【0012】
・・・(中略)・・・すなわち,防眩層表面の微細凹凸形状を制御することにより,防眩性とコントラストとを両立させることは困難であった。
【0013】
したがって,この発明の目的は,防眩性とコントラストとを両立することができる防眩性フィルムを提供することにある。」

(イ) 「【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは,微粒子を添加した塗料を基材に塗布する方法で,防眩性とコントラストとの両特性を有する防眩性フィルムを製造する方法を鋭意研究した結果,防眩層表面に突出した一個一個の微粒子の突起による光散乱ではなく,塗料に含まれる溶剤の揮発時に発生する表面張力の不均一分布(表面張力ムラ)によるマランゴニー対流を利用し,塗料内に生じる対流によってベナードセル構造を形成させ,ベナードセル内にできる液状の樹脂のメニスカスによって防眩層表面になだらかなうねりの凹凸形状を形成させることにより,防眩性とコントラストとを両立する防眩性フィルムが得られることを見出した。
【0015】
上述の課題を解決するために,この発明は,
基材と,
基材上に設けられた,少なくとも1層の防眩層と
を備え,
防眩層は,樹脂と,溶剤と,微粒子とを少なくとも含む塗料を基材上に塗工し,基材上に塗工された塗料を乾燥し,溶剤の揮発時に発生する対流により塗工層表面にベナードセル構造を形成し,ベナードセル構造の形成された塗料に含まれる樹脂を硬化することにより,微粒子の平均粒径以上,微粒子の平均粒径の3倍以下の膜厚に形成される防眩性フィルムである。」

(ウ) 「【発明の効果】
【0018】
この発明によれば,防眩層表面にベナードセルを形成させることにより,防眩性を有しつつ,コントラストの優れた防眩性フィルムを製造することができる。また,この発明によれば,塗料を基材に塗布する方法により防眩性とコントラストとを両立した防眩性フィルムを製造することができるので,生産性よく,かつ安価に,高品質な防眩性フィルムを得ることができる。」

(エ) 「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお,以下の実施形態の全図においては,同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0020】
(1)第1の実施形態
(1-1)液晶表示装置の構成
・・・(中略)・・・
【0022】
(1-2)防眩性フィルムの構成
図2は,この発明の第1の実施形態による防眩性フィルム1の構成の一例を示す。この防眩性フィルム1は,図2に示すように,基材11と,この基材11上に設けられた防眩層12とを備える。防眩層12は微粒子13を含み,その表面には塗料の乾燥過程で塗料内に生じる対流によりベナードセルが形成され,微粒子13の適度な凝集によって形成された微細凹凸形状が設けられている。
・・・(中略)・・・
【0027】
(基材)
基材11の材料としては,例えば透明性を有するプラスチックフィルムを用いることができる。透明プラスチックフィルムとしては,例えば,公知の高分子フィルムを用いることができる。・・・(中略)・・・
【0028】
(防眩層)
防眩層12の平均膜厚は,微粒子13の平均粒径以上,微粒子13の平均粒径の3倍以下であることが好ましい。具体的には,防眩層12の平均膜厚は,微粒子13の平均粒径以上30μm以下であることが好ましく,より好ましくは微粒子13の平均粒径以上15μm以下である。平均膜厚が微粒子13の平均粒径未満である場合,白濁度が上昇し,平均膜厚が微粒子13の平均粒径の3倍を越える場合,製造時に樹脂を硬化させる過程でカールする場合があるからである。
【0029】
防眩層12の表面には微細凹凸形状が形成されている。この微細凹凸形状は,従来のように微粒子13が防眩層12から突起することにより形成された凹凸とは異なり,微粒子13を含有する塗料を基材11上に塗工後,乾燥させる過程で,塗料内に生じる対流によって塗工膜表面にベナードセルを形成することにより設けられたものである。この凹凸形状は周期の長いなだらかな凹凸形状であることが好ましく,例えば塗料内に生じる対流によって複数の微粒子13が面内方向に適度に衝突し,乾燥が進むとともに主として面内方向に凝集して防眩層表面の凸部を形成することが好ましい。また,微粒子13が防眩層12から突出して微粒子13の表面が露出していないことが好ましい。微粒子13の表面が露出すると,微粒子13の急峻な勾配部により急峻な角度成分を含む微細凹凸形状が形成されてしまい,光が広角にわたり拡散するため,表示画面が白濁化してしまうからである。
・・・(中略)・・・
【0032】
微粒子13は,例えば,無機微粒子または有機微粒子などの球形または扁平の微粒子である。微粒子13の平均粒径は,好ましくは5nm程度?15μm程度である。5nmよりも小さくなると防眩層12表面の粗さが細かくなりすぎて防眩性に劣り,15μmよりも大きくなると,防眩層12の膜厚が厚くなることから,製造時に樹脂を硬化させる過程でカールする場合があるからである。なお,微粒子13の平均粒径は,例えば,コールターマルチサイザーにより粒子径を測定し,得られたデータを平均して求めることができる。
・・・(中略)・・・
【0035】
無機微粒子としては,例えば定形のシリカ,アルミナなどを使用できる。これら無機微粒子を有機物処理により表面の極性を非極性側に変えることが好ましい。非極性の程度を調整することによって微粒子13の対流,凝集が適度に生じて所望のベナードセルが形成されるからである。
【0036】
微粒子13の充填率が4%以上10%以下であることが好ましい。充填率が4%未満であると,防眩層表面において平坦部が多くなり防眩性を発現しなくなる傾向があり,充填率が10%を超えると,塗布厚による防眩度依存性が減少し,塗布厚の調整による防眩性のコントロールが困難となる傾向がある。なお,充填率は,防眩性に含まれる樹脂の含有量Aに対する微粒子の含有量Bの割合(B/A×100)である。
【0037】
この第1の実施形態による防眩性フィルム1は,ベナードセル構造により防眩層12の表面に連続的でなだらかなうねりの微細凹凸形状を有するので,防眩性を維持しつつ,光が広角にわたり拡散することを抑えて表示画面が白濁化することを低減できる。
【0038】
(1-2)防眩性フィルムの製造方法
次に,上述の構成を有する防眩性フィルム1の製造方法の一例について説明する。この防眩性フィルム1の製造方法は,基材11上に,微粒子13と,樹脂と,溶剤とを含む塗料を塗工し,溶剤を乾燥する過程で対流を生じさせ,塗工膜表面にベナードセルを形成した後,硬化させるものである。
【0039】
(塗料調製)
まず,例えば樹脂と,微粒子13と,溶剤とをディスパーなどの攪拌機やビーズミル等の分散機で混合し,微粒子13が分散した塗料を得る。・・・(中略)・・・
【0040】
溶剤としては,例えば使用する樹脂原料を溶解し,微粒子13との濡れ性が良好で,基材を白化させない有機溶剤などが使用できる。上述したように平面状に並んだ微粒子13によりベナードセルを形成するために,使用する微粒子13の表面エネルギーと合った表面張力を有する溶剤を選択する。有機微粒子の表面エネルギーと溶剤の表面張力の差が8mN/m以上13mN/m以下であることが好ましい。表面張力の差が8mN/m未満であると,微粒子13が3次元的に激しく凝集し,ぎらついた白濁のおおきな表面となる傾向があり,表面張力の差が13mN/mを超えると,微粒子13が凝集せず,防眩性の小さな表面となる傾向があるからである。・・・(中略)・・・
【0042】
樹脂としては,製造の容易性の点から,例えば紫外線,もしくは電子線により硬化する電離放射線硬化型樹脂,または熱により硬化する熱硬化型樹脂が好ましく,紫外線で硬化できる感光性樹脂が最も好ましい。このような感光性樹脂として,例えば,ウレタンアクリレート,エポキシアクリレート,ポリエステルアクリレート,ポリオールアクリレート,ポリエーテルアクリレート,メラミンアクリレート等のアクリレート系樹脂を用いることができる。・・・(中略)・・・
【0043】
このような感光性樹脂は,樹脂を形成しうるモノマーやオリゴマーやポリマーなどの有機材料に光重合開始剤を配合して得られる。・・・(中略)・・・
【0044】
この発明の第1の実施形態において,樹脂を形成しうるモノマー,オリゴマー,およびポリマーは,乾燥させても液体であるモノマー,オリゴマー,およびポリマーのうちの少なくとも1種を用いることが好ましい。乾燥させても液体であるモノマー,オリゴマー,およびポリマーとは,乾燥後も塗料の表面にベナードセル構造を維持し,ベナードセル内に,樹脂の液体によるメニスカスを形成することが可能な,比較的粘度の高い性質のものが好ましい。塗工膜を乾燥させた後も表面になだらかな凹凸形状を保つことができるからである。
・・・(中略)・・・
【0046】
(塗工)
次に,上述のようにして得られた塗料を,平均粒径×2倍程度の細孔を有するフィルターで濾過し,基材11上に塗工する。塗料は,乾燥後の平均膜厚が好ましくは3?30μm,より好ましくは4?15μmとなるように塗工される。膜厚がこの数値範囲よりも薄い場合は,所望の硬さを得ることが困難となり,この数値範囲よりも厚い場合は,樹脂の硬化時に大きくカールする場合がある。塗工方法は,特に限定されるものではなく,公知の塗工方法を用いることができる。・・・(中略)・・・
【0047】
(乾燥・ベナードセルの形成)
塗料の塗工後,乾燥させることにより溶剤を揮発させる。この発明の第1の実施形態では,溶剤の揮発時に発生する表面張力の不均一分布によるマランゴニー対流を利用し,塗料内の対流により微粒子13の衝突および凝集を適度に生じさせ,塗工層表面にベナードセル構造を形成させる。そして,ベナードセル内に形成される液状の樹脂のメニスカスによって,塗工膜表面になだらかなうねりの微細凹凸を形成させる。
【0048】
塗料の乾燥時には,微粒子13を主として防眩層12の面内方向に凝集させ,2次元的な凝集体を形成すると共に,この凝集体を,防眩層表面において寄り集まることなく存在させることが好ましい。このようにすることで,防眩層表面に連続的でなだらかなうねりの微細凹凸形状を形成し,防眩性とコントラストとを両立することができる。ここで,『微粒子13が主として防眩層12の面内方向に凝集させる』とは,(1)すべての微粒子13が防眩層12の厚さ方向に重ならず面内方向にのみに凝集させること,もしくは,(2)ほとんどの微粒子13を面内方向に凝集させる共に,それ以外の残りの微粒子13を白濁度の増大を招く(黒色アクリル板を防眩性フィルム1の裏面に貼り合わせて測定される白濁度が1.7を超える)ことのない範囲で厚さ方向に重なり合わせることをいう。また,すべての微粒子13が2次元的な凝集体を形成していることが理想的であるが,白濁度の増大を招くことがない範囲で,一部の微粒子13が凝集体とならず孤立して存在していてもよい。
・・・(中略)・・・
【0052】
乾燥条件は特に限定されるものではなく,自然乾燥でも,乾燥温度および乾燥時間などを調整して人工的に乾燥させてもよい。ただし,例えば乾燥時に風を当てた場合は,塗工層表面に風紋が生じないよう注意する必要がある。防眩層12の表面に所望のなだらかなうねりの凹凸形状が得られなくなり,防眩性とコントラストとを両立することができなくなるからである。乾燥温度および乾燥時間は,塗料中に含まれる溶剤の沸点によって適宜決定することが可能である。その場合,乾燥温度および乾燥時間は,基材11の耐熱性に配慮し,熱収縮により基材の変形が起きない範囲で選定することが好ましい。
【0053】
(硬化)
乾燥後,電離放射線硬化型樹脂を硬化することにより防眩層12を形成する。硬化エネルギー源としては,例えば,電子線,紫外線,可視光線,ガンマ線などがあるが,生産設備の点から紫外線が好ましい。・・・(中略)・・・
【0054】
この硬化工程により,ベナードセルが形成された状態で樹脂が固体となり,表面になだらかな凹凸形状を有する防眩層12が形成される。
以上により,目的とする防眩性フィルム1が得られる。
【0055】
この第1の実施形態によれば,塗料中に含まれる溶剤の揮発時に,微粒子13の対流と凝集によってベナードセルを形成させることにより,防眩層12の表面はなだらかなうねりの微細凹凸形状となる。したがって,高コントラストかつ優れた防眩性を有する防眩性フィルム1を実現できる。この防眩性フィルム1を液晶表示装置に用いることにより,液晶表示装置に表示される画像の視認性を向上させることができる。」

(オ) 「【0068】
(実施例1)
以下のようにしてグラビアコーターで連続塗布して,長尺の防眩性フィルムを100m作製した。
まず,粒径5?7μmで,平均粒径6μmのスチレン微粒子200gと,樹脂材料として紫外線硬化型の液状の4官能ウレタンアクリルオリゴマー4000gと,光反応開始剤としてイルガキュア184(チバガイギー製)200gとを,溶剤として表面張力が20.0mN/mである第3級ブタノール6000gに加えて攪拌し,塗料を調製後,10μmのメッシュのフィルターで濾過した。
【0069】
次に,濾過した塗料を厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に,グラビアコーターで塗布速度20m/分で塗布した。塗布後のフィルムは乾燥温度80℃に設定した30m長の乾燥炉で乾燥させた。この際に,溶剤の揮発時に発生する表面張力の不均一分布によるマランゴニー対流を利用し,塗料内の対流により微粒子の衝突および凝集を適度に生じさせ,塗工層表面にベナードセル構造を形成させた。そして,ベナードセル内に形成される液状の樹脂のメニスカスによって,塗工膜表面になだらかなうねりの微細凹凸を形成させた。その後フィルムは連続して紫外線硬化炉に入り,160W,積算光量300mJ/cm^(2)の条件で紫外線を照射して,乾燥後の平均膜厚6μmの防眩層を形成し,巻き取り防眩性フィルムを得た。
・・・(中略)・・・
【図面の簡単な説明】
【0132】
・・・(中略)・・・
【図5】実施例1の防眩性フィルムの表面写真である。
・・・(中略)・・・
【図5】



イ 引用文献2の記載から把握される技術的事項
前記ア(ア)ないし(オ)で摘記した引用文献2の記載から,引用文献2には,
「基材と,この基材上に設けられた防眩層とを有する防眩性フィルムにおいて,
微粒子を添加した塗料を基材に塗布する手法で防眩層を形成した従来の防眩性フィルムでは,一個一個の微粒子の突起形状によって表面に凹凸を形成しているので,これら微粒子の突起によってヘイズ値が上昇して画像が白っぽくなり,コントラストが低下し,また画像鮮明度も低下してしまうという問題があり,
この問題を解決するために,防眩層における微粒子の充填率を減らし,防眩層表面の凹凸の周期を長くすることにより,コントラストを高めるようとすると,微粒子の突起と突起との間に平坦な部分ができるため,防眩性が低下してしまうという問題が生じてしまうため,
紫外線で硬化できる感光性樹脂と,溶剤と,微粒子とを少なくとも含む塗料であって,前記微粒子の表面エネルギーと前記溶剤の表面張力の差が8mN/m以上13mN/m以下である塗料を透明プラスチックフィルム等の基材上に塗工し,基材上に塗工された塗料を乾燥し,溶剤の揮発時に発生する表面張力の不均一分布によるマランゴニー対流を利用し,塗料内の対流により微粒子の衝突および凝集を適度に生じさせ,塗工層表面にベナードセル構造を形成して,ベナードセル内にできる液状の樹脂のメニスカスによって防眩層表面になだらかなうねりの凹凸形状を形成し,ベナードセル構造の形成された塗料に含まれる感光性樹脂を硬化して,微粒子の平均粒径以上,3倍以下の膜厚で防眩層を形成するという手段を採用することによって,優れた防眩性と高コントラストとを両立させる」
ことが,記載されていると認められる。(以下,「防眩性フィルムにおいて,紫外線で硬化できる感光性樹脂と,溶剤と,微粒子とを少なくとも含む塗料であって,前記微粒子の表面エネルギーと前記溶剤の表面張力の差が8mN/m以上13mN/m以下である塗料を透明プラスチックフィルム等の基材上に塗工し,基材上に塗工された塗料を乾燥し,溶剤の揮発時に発生する表面張力の不均一分布によるマランゴニー対流を利用し,塗料内の対流により微粒子の衝突および凝集を適度に生じさせ,塗工層表面にベナードセル構造を形成して,ベナードセル内にできる液状の樹脂のメニスカスによって防眩層表面になだらかなうねりの凹凸形状を形成し,ベナードセル構造の形成された塗料に含まれる感光性樹脂を硬化して,微粒子の平均粒径以上,3倍以下の膜厚で防眩層を形成するという手段を採用することによって,優れた防眩性と高コントラストとを両立させる」技術を「引用文献2記載の技術」という。)

5 対比
(1) 引用発明の「透明支持体」,「紫外線硬化バインダー」,「層状有機変性粘土粒子」,「グレア防止」,「グレア防止層」及び「グレア防止性を付与するための光学フィルム」は,本願発明の「透光性基体」,「樹脂成分」,「層状有機粘土」,「防眩」,「防眩層」及び「防眩フィルム」にそれぞれ相当する。

(2) 引用発明は,ポリマーフィルム等の可撓性の「透明支持体」(透光性基体)上に,「紫外線硬化バインダー」(樹脂成分)中に「層状有機変性粘土粒子」(層状有機粘土)を含有する「グレア防止層」(防眩層)が形成された,「グレア防止性を付与するための光学フィルム」(防眩フィルム)であるから,「透光性基体上に,樹脂成分および層状有機粘土を含有する防眩層が積層されてなる防眩フィルム」であるという本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

(3) 引用発明の「層状有機変性粘土粒子」は,層状物質を有機カチオンを用いて変性させたものであり,「層状物質を有機カチオンを用いて変性させた」とは,引用文献1の【0022】の「カチオン交換に機能する有機カチオン・・・を用いての層間挿入」との説明,及び【0026】の「この有機カチオンが,粘土物質の層間間隙に存在する金属カチオンの大部分と交換する」との説明によれば,層状物質の層間間隙をカチオン交換によって有機カチオンで修飾したものを指していると解される。
ここで,本願明細書の【0035】ないし【0041】の記載によれば,本願発明の「層状有機粘土」とは,膨潤性粘土(引用発明の「層状物質」に相当する。)の層間に有機オニウムイオン(引用発明の有機カチオンに相当する。)を導入したものであって,有機オニウムイオンとしては,陽イオン交換性(カチオン交換と同義である。)を利用して有機化できるもの(引用文献1の【0027】ないし【0029】に「有機カチオン」として例示された第4級アンモニウム塩が例示されている。)であれば制限されないのだから,引用発明の「層状有機変性粘土粒子」は,本願発明の「層状有機粘土」に他ならない。
しかるに,引用発明の「層状有機変性粘土粒子」の「層状物質」として挙げられたモンモリロナイト,ノントロナイト,バイデライト,ヘクトライト,サポナイト,スティーブンサイト,バーミキュライト,マガデアイト,雲母は,いずれも,本願発明の「層状有機粘土」の「膨潤性粘土」の材質として挙げられた物質である。
したがって,引用発明の「層状有機変性粘土粒子」は,「雲母,合成雲母,バーミキュライト,モンモリロナイト,鉄モンモリロナイト,バイデライト,サポナイト,ヘクトライト,スチーブンサイト,ノントロナイト,マガディアイト,アイラライト,カネマイト,層状チタン酸,スメクタイト,合成スメクタイトから選択された1種または複数種類」であるという本願発明の「層状有機粘土」に係る発明特定事項に相当する構成を有している。

(4) 前記(1)ないし(3)から,本願発明と引用発明とは,
「透光性基体上に,樹脂成分および層状有機粘土を含有する防眩層が積層されてなる防眩フィルムであって,
前記層状有機粘土は,雲母,合成雲母,バーミキュライト,モンモリロナイト,鉄モンモリロナイト,バイデライト,サポナイト,ヘクトライト,スチーブンサイト,ノントロナイト,マガディアイト,アイラライト,カネマイト,層状チタン酸,スメクタイト,合成スメクタイトから選択された1種または複数種類である防眩フィルム。」
である点で一致し,次の点で一応相違する。

相違点1:
本願発明では,「防眩層」が,少なくとも,複数の第一の相と複数の第二の相を有しており,前記第一の相は,樹脂成分を層状有機粘土よりも相対的に多く含有し,前記第二の相は,樹脂成分を層状有機粘土よりも相対的に少なく含有し,前記第一の相と第二の相とは入り組んで存在しているのに対して,
引用発明では,「グレア防止層」がそのような「第一の相」及び「第二の相」を有することは特定されていない点。

相違点2:
本願発明では,「防眩層」の表面における平均傾斜角度が0.2°?1.4°であり,「防眩フィルム」をJIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した画像鮮明性が5.0?80.0の範囲であるのに対して,
引用発明では,「グレア防止層」の表面における平均傾斜角度や「光学フィルム」の画像鮮明性が明らかでない点。

6 判断
(1)相違点1及び2の容易想到性について
ア 後述の(ア)ないし(エ)で摘記する本願優先日前に頒布された各刊行物の記載から,
「防眩フィルムにおいて,表面における平均傾斜角度(tan^(-1)(Δa)で表される値。Δaは粗さ曲線における平均傾斜。)が0.9ないし1.2°程度であり,JIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した防眩フィルムの透過像の像鮮明度が25ないし30%程度であると,優れた防眩性と高コントラストを両立したものとなる」(以下,「周知の技術的事項」という。)
ことが,本願優先日前に周知であったと認められる。

(ア)特開2009-69820号公報の記載(下線は,前述した周知の技術的事項の認定に特に関係する箇所を示す。後述の(イ)ないし(エ)で摘記する記載においても同様。)
a 「【0006】
最表面に防眩フィルムを用いた場合には,明るい部屋での使用の際に,光の拡散により黒表示の画像が白っぽくなり,コントラストの低下する問題が有った。このため,防眩性を低減させてでも,高コントラストが達成できる防眩フィルムが求められている(高コントラストAG)。・・・(中略)・・・
【0017】
本発明の光学積層体は,透光性基体上に1層積層した構成にもかかわらず,防眩性,高コントラスト,ギラツキ防止のバランスに優れるものであり,ディスプレイ表面に用いた場合に視認性の良い高画質のディスプレイ表示が可能となるものである。」,
b 「【0042】
更に,当該光学積層体は,前記樹脂層の最表面に微細な凹凸形状を有する。ここで,当該微細な凹凸形状は,好適には,ASME95に従い求められる平均傾斜から計算される平均傾斜角度が0.4?1.6の範囲にあり,より好ましくは0.5?1.4,更に好ましくは0.6?1.2である。平均傾斜角度が0.4未満では防眩性が悪化し,平均傾斜角度が1.6を超えるとコントラストが悪化するため,ディスプレイ表面に用いる光学積層体に適さなくなる。・・・(中略)・・・
【0043】
更に,当該光学積層体は,透過像鮮明度が5.0?70.0の範囲(JIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した値)が好ましく,20.0?65.0がより好ましい。透過像鮮明度が5.0未満ではコントラストが悪化し,70.0を超えると防眩性が悪化するため,ディスプレイ表面に用いる光学積層体に適さなくなる。」

(イ)国際公開2007/111026号の記載
a 「[0008] このような状況に鑑み,本発明は,防眩機能,高コントラスト化,色再現性,ギラツキ防止の機能をバランスよく充足する光学フィルムを安価に提供することを目的とする。」
b 「[0023] 本発明では,以上説明した樹脂層中に透光性樹脂微粒子を分散・含有せしめて,樹脂層表面に微細な凹凸を形成するものであり,この樹脂層の最表面の平均傾斜角度が0.8?3.0度の範囲にあり,好ましくは0.9?2.0度,より好ましくは0.9?1.5度である。平均傾斜角度が0.8度未満では防眩性が悪化し,平均傾斜角度が3.0度を超えるとコントラストが悪化するため,ディスプレイ表面に用いる光学フィルムに適さなくなる。
[0024] なお,本発明において規定する平均傾斜角度θaは,ISO4287/1-1984に従い,触針式表面粗さ計(商品名:サーフコム570A,東京精器社製)にて,粗面の表面粗さを駆動速度0.03mm/秒で測定し,この測定した平均線より,その平均線を差し引いて傾斜を補正し,下記式により計算して求めた。」
c 「[0028] 本発明の光学フィルムの透過像鮮明度は,JIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した値であり,具体的には,像鮮明度測定装置を用いて,試料を透過又は反射する光を,移動するくしを通して測定し,計算によって求める値である。
[0029] 本発明においては,0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が5?35%であることが必須であり,好ましくは20?35%である。透過像鮮明度が5%未満では画像コントラストおよび色再現性が悪化し,35%を超えると防眩性が悪化するため,ディスプレイ表面に用いる光学フィルムに適さなくなる。」

(ウ) 特開2008-304638号公報の記載
a 「【0013】
したがって,この発明の目的は,コントラストと防眩性とを両立することができる防眩性フィルムおよびその製造方法,偏光子ならびに表示装置を提供することにある。」
b 「【0032】
微細凹凸形状の平均傾斜角θaと光学特性(コントラスト(白濁感),防眩性)とは相関している。すなわち,平均傾斜角θaを制御することで,コントラスト(白濁感)と防眩性とを制御することが可能である。具体的には,平均傾斜角θaは0.2?1.5°,好ましくは0.4?1.2°である。この範囲にすることで,コントラストと防眩性とを両立することができる。具体的には,0.2°未満であると,表面がほぼ平面となるため防眩性が低下してしまう。1.5°を超えると,白濁感が増し,コントラストが低下する。
【0033】
図3に,この発明の平均傾斜角θaを説明するための模式図を示す。平均傾斜角θaは下記の式(1)により定義される。
θa=tan^(-1)Δa ・・・(1)」

(エ) 特開2008-58723号公報の記載
a 「【0003】
・・・(中略)・・・防眩処理は,表面に微細な凹凸構造を形成することにより,表面反射光を散乱し,映り込み像をぼかす効果を有する。・・・(中略)・・・
【0011】
従って,本発明の目的は,外光の映り込みやぎらつきを抑制でき,かつ外光下でも黒い画像(明室コントラストの高い画像)を表示できる防眩性フィルム及びこの防眩性フィルムを備えた液晶表示装置を提供することにある。」
b 「【0106】
本発明の防眩性フィルムの写像(透過像)鮮明度は,0.5mm幅の光学櫛を使用した場合,10?70%程度の範囲から選択でき,例えば,20?30%,好ましくは25?30%程度である。
・・・(中略)・・・
【0109】
前記写像鮮明度測定の測定装置としては,写像性測定器(スガ試験機(株)製,ICM-1DP)が使用できる。光学櫛としては,0.125?2mm幅の光学櫛を用いることができる。
【0110】
写像鮮明度が前記範囲にあると,映り込みの輪郭を十分ぼやかすことができるため,良好な防眩性を付与できる。写像鮮明度が高すぎると,映り込み防止効果が低下する。一方,写像鮮明度が小さすぎると,前記の映り込みは防止できるが,画像の鮮明さが低下する。」

イ 引用発明は,多官能性アクリル化合物,層状有機変性粘土粒子,及び有機溶剤を含む紫外線硬化性組成物を塗布し,紫外線照射により硬化させて形成したグレア防止層が,ポリマーフィルム等の可撓性の透明支持体上に形成された,グレア防止性を付与するための光学フィルムであるところ,一個一個の層状有機変性粘土粒子の突起形状によってグレア防止層の表面に凹凸を形成するのでは,ヘイズ値が上昇して画像が白っぽくなり,コントラスト及び画像鮮明度が低下してしまい,また,層状有機変性粘土粒子の充填率を減らして,グレア防止層表面の凹凸の周期を長くすることにより,コントラストを高めるようとすると,防眩性が低下してしまうという,引用文献2記載の技術が解決しようとする従来の防眩性フィルムが有する問題が生じてしまう(前記4(2)イを参照。)ことは,引用文献2の記載に接した当業者が容易に把握できることである。
そうすると,引用発明において,優れた防眩性と高コントラストを両立させるために,引用文献2記載の技術を適用し,層状有機変性粘土粒子の表面エネルギーと有機溶剤の表面張力の差が8mN/m以上13mN/m以下の範囲にある適宜の有機溶剤を用いて紫外線硬化性組成物を調整し,当該紫外線硬化性組成物を透明支持体上に塗工した後,透明支持体上に塗工された紫外線硬化性組成物を乾燥し,有機溶剤の揮発時に発生する表面張力の不均一分布によるマランゴニー対流を利用し,紫外線硬化性組成物内の対流により層状有機変性粘土粒子の衝突および凝集を適度に生じさせ,塗工層表面にベナードセル構造を形成して,ベナードセル内にできる液状の樹脂のメニスカスによってグレア防止層表面になだらかなうねりの凹凸形状を形成し,ベナードセル構造の形成された紫外線硬化性組成物に含まれる多官能性アクリル化合物を硬化して,層状有機変性粘土粒子の平均粒径以上,3倍以下の膜厚でグレア防止層を形成するよう構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。
しかるに,前記アで周知の技術的事項として認定したように,防眩フィルムにおいて,表面における平均傾斜角度が0.9ないし1.2°程度であり,JIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した防眩フィルムの透過像の像鮮明度が25ないし30%程度であると,優れた防眩性と高コントラストを両立したものとなることが,本願優先日前に周知であったのだから,引用発明に対して前述したベナードセル構造によるグレア防止層表面の凹凸形状の形成という変更を行うに際して,グレア防止層表面に形成されるなだらかなうねりの凹凸形状の平均傾斜角度,及び,引用発明におけるJIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した透過像の像鮮明度について,有機溶剤の適宜選択(表面張力の設定)や,層状有機変性粘土粒子の粒径や含有量等の各種パラメータの適宜調整によって,優れた防眩性と高コントラストを両立できるとして広く知られていた0.9ないし1.2°程度,及び,25ないし30%程度となるように考慮することは,引用文献2記載の技術の具体的適用に伴って当業者が適宜行う設計上の事項にすぎない。

ウ ベナードセル構造とは,引用文献2の【0048】の記載(前記4(2)ア(エ)を参照。)によれば,層状有機変性粘土粒子が主として防眩層の面内方向に凝集し,2次元的な凝集体を形成した構造であって,白濁度の増大を招くことがない範囲で,一部の層状有機変性粘土粒子が凝集体とならず孤立して存在していてもよいものであり,かつ,引用文献2の図5(前記4(2)ア(オ)を参照。)から,当該ベナードセル構造が,層状有機変性粘土粒子が凝集して紫外線硬化バインダーよりも多く存在する複数の第1の部分と,層状有機変性粘土粒子がほとんど存在せずほぼ紫外線硬化バインダーで構成された複数の第2の部分とが入り組んで存在する構造であることを看取できるところ,当該ベナードセル構造の前記「第1の部分」及び「第2の部分」が,本願発明の「樹脂成分を層状有機粘土よりも相対的に多く含有」する「第一の相」及び「樹脂成分を層状有機粘土よりも相対的に少なく含有」する「第二の相」に,それぞれ相当するから,前記イで述べた構成の変更を行った引用発明において,グレア防止層の表面にベナードセル構造が存在することは,相違点1に係る本願発明の「少なくとも,複数の第一の相と複数の第二の相を有しており,前記第一の相は,樹脂成分を層状有機粘土よりも相対的に多く含有し,前記第二の相は,樹脂成分を層状有機粘土よりも相対的に少なく含有し,前記第一の相と第二の相とは入り組んで存在している」という発明特定事項に相当する。
また,前記イで述べた構成の変更を行った引用発明において,グレア防止層表面に形成されるなだらかなうねりの凹凸形状について,平均傾斜角度が0.9ないし1.2°程度であり,引用発明におけるJIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した透過像の像鮮明度が25ないし30%程度であることは,相違点2に係る本願発明の「防眩層の表面における平均傾斜角度が0.2°?1.4°であり,防眩フィルムをJIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した画像鮮明性が5.0?80.0の範囲である」という発明特定事項に相当する。
したがって,引用発明において前記イで述べた構成の変更を行うことは,引用発明を相違点1及び2に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることに他ならない。
よって,引用発明を相違点1及び2に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,引用文献2記載の技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。

(2)効果について
本願発明が有する効果は,引用文献1の記載,引用文献2の記載及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明,引用文献2記載の技術及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
本願発明は,引用発明,引用文献2記載の技術及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-20 
結審通知日 2015-10-27 
審決日 2015-11-09 
出願番号 特願2013-13393(P2013-13393)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 鉄 豊郎
清水 康司
発明の名称 防眩フィルムおよびそれを用いた表示装置  
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