• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1309538
審判番号 不服2014-19286  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-26 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2010-181451「撮像装置、自動合焦方法、およびその方法をコンピュータが実行するためのプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月20日出願公開,特開2011- 13683〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成13年9月28日に出願した特願2001-304342号(以下,「原出願」という。)の一部を平成22年8月13日に新たな特許出願としたものであって,平成22年9月6日に手続補正書が提出され,平成25年2月14日付けで拒絶理由が通知され,同年4月15日に意見書及び手続補正書が提出され,同年12月24日付けで拒絶理由が通知され,平成26年2月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年7月3日付けで拒絶査定がなされたところ,平成26年9月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

2 平成26年9月26日提出の手続補正書による補正の適否
平成26年9月26日提出の手続補正書による補正(以下,「本件補正」という。)は,平成26年2月24日提出の手続補正書による補正後の特許請求の範囲及び明細書についてするもので,本件補正のうち請求項1に係る補正(以下,「請求項1に係る本件補正」という。)は,本件補正前の請求項1に記載された「前記風景撮影モードが設定されている場合」を「前記風景撮影モードが選択されている場合」に補正するものである。
当該請求項1に係る本件補正は,平成14年法律24号改正附則2条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「改正前特許法」という。)17条の2第4項3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
また,本件補正の前後で,請求項1に係る発明の発明特定事項に実質的な違いはないから,請求項1に係る本件補正は新規事項を追加するものではなく,改正前特許法17条の2第3項の規定に適合する。
したがって,請求項1に係る本件補正は,適法になされたものである。

3 本願の請求項1に係る発明
前記2で述べたとおり,請求項1に係る本件補正は適法になされたものであるから,本願の請求項1に係る発明は,本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ,次のとおりのものと認められる。

「自動合焦機能を備えた撮像装置において,
被写体に応じた画像データを入力するための撮像手段と,
前記撮像手段から入力される画像データの中から人物の顔を検出するための顔検出手段と,
前記顔検出手段で検出された人物の顔を測距エリアとして,自動合焦制御を行う自動合焦制御手段と,
撮影モードとして,人物を撮影するための人物撮影モードと風景を撮影するための風景撮影モードとを切り替えて設定するモード設定手段と,を備え,
前記モード設定手段により撮影モードとして前記人物撮影モードが選択されている場合には,前記顔検出手段は顔検出動作を実行し,前記自動合焦制御手段は,検出された人物の顔を測距エリアとして,自動合焦制御を行い,
前記モード設定手段により撮影モードとして前記風景撮影モードが選択されている場合には,前記顔検出手段は顔検出動作を実行せず,前記自動合焦制御手段は,所定の測距エリアに基づき自動合焦制御を行うことを特徴とする撮像装置。」(以下,「本願発明」という。)

4 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明に対応する本件補正前の請求項1に係る発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は,請求項1に係る発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
原査定の拒絶の理由で引用した引用文献1及び2は,次のとおりである。

引用文献1:特開2001-215404号公報
引用文献2:特開2000-298232号公報

5 引用例
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1は,特許法44条2項の規定により本願が出願されたとみなされる原出願の出願の時より前(以下,単に「本願の出願前」という。)に頒布された刊行物であって,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は主要被写体を検出する機能を有するカメラに関するものである。」

(イ) 「【0002】
【従来の技術】近年,複数の測距点を有するカメラに関する技術は,数多く提案されている。これらの技術に於いて,中央部とその左右の3点や3点に中央上下2点を加えた5点の多点測距するカメラが多いが,最近ではそれ以上の測距点を有するカメラが製品化されており,測距点は増加する傾向にある。将来は殆ど全画面に測距点を配置する可能性もある。
【0003】このように測距点が多くなると,どの被写体が主要被写体であるかの判別が困難になり,撮影者が意図しない被写体が主要被写体と判定されて,意図しない被写体にピントや露光が合うということが多くなる。
【0004】この課題を解決するために,撮影者の視線を検出して,撮影者が注視している被写体を主要被写体とする従来から良く知られた技術もある。しかしながら,視線検出機構が複雑であるために,ごく一部のカメラでしか採用されていない。したがって,視線検出技術以外で主要被写体を検出する技術をカメラに応用することが,多点測距カメラの課題の一つである。
【0005】ところで,撮影画面内に人物が入っている場合には,その人物が主要被写体である場合が多い。
【0006】また,画像処理技術によって,画面内に人物が入っていることを検出する技術が公知であり,後述するようないくつかの検出方法がある。
【0007】これらの人物検出技術をカメラに適用した従来の技術には,以下のような技術が知られており,検出した主要被写体にピントを合わせるだけでなく,適切な露出処理を施す技術である。
【0008】すなわち,特開平6-303491号公報に開示されている技術は,画面内に人物を検出すると人物の顔全体が被写界深度内に入るように露出を制御するものである。
・・・(中略)・・・
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかるに,上述した従来の技術は,以下のような課題を有している。
【0011】上記特開平6-303491号公報に開示の技術では,人物の数はカウントしていないので,人物の数によっては適切な露出処理がされ難い。
【0012】つまり,人物が一人或いは二人の場合で,且つ画面全体に占める人物の面積が多い場合には,いわゆるポートレート写真であり,人物にピントが合って背景はぼけるように露出制御する(つまり絞りを開ける)のが適切である。しかしながら,人物が数人以上の場合,或いは人物が一人または二人の場合でも,画面全体に占める人物の面積が少ない場合には,いわゆる記念写真となり,観光地で建物をバックに記念写真を撮るパターンと判定して,人物にも背景にもピントが合うように露出制御する(つまり絞りを絞る)のが適切である。
・・・(中略)・・・
【0019】したがってこの発明は上記課題に鑑みてなされたものであり,被写体に人物が含まれているか否かを判定し,更に撮影される写真がポートレート写真的な構図か記念写真的な構図かを判定し,それぞれのシーンで適切な撮影効果が得られる主要被写体検出機能を有するカメラを提供することを目的とする。」

(ウ) 「【0027】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
・・・(中略)・・・
【0033】図2は,この発明の第1の実施形態であるカメラの構成を示したブロック構成図である。
【0034】図2に示されるように,第1の実施の形態のカメラは,当該カメラ全体に於ける各回路の制御を司るマイクロコンピュータ(マイコン)11を有している。このマイクロコンピュータ11には,後述する測距光学系30により形成される被写体像を撮像して電気信号であるセンサデータに変換するAFエリアセンサ12と,撮影レンズ13内のフォーカスレンズ14を駆動するフォーカスレンズ駆動部15と,フォーカスレンズエンコーダ16と,ズームレンズ駆動部17と,シャッタ駆動部18と,フィルム駆動部19とが接続される。
【0035】更に,マイクロコンピュータ11には,測光部20と,ストロボ回路部21と,表示部22と,カメラ姿勢検出部23と,撮影モード設定部24と,図示されないレリーズ釦に連動したスイッチであるファーストレリーズスイッチ(1RSW)25及びセカンドレリーズスイッチ(2RSW)26とが接続されている。
【0036】このように,第1の実施の形態に於けるカメラは,マイクロコンピュータ11,AFエリアセンサ12,フォーカスレンズ駆動部15,フォーカスレンズエンコーダ16,ズームレンズ駆動部17,シャッタ駆動部18,フィルム駆動部19,測光部20,ストロボ回路部21,表示部22,カメラ姿勢検出部23,撮影モード設定部24,ファーストレリーズスイッチ25及びセカンドレリーズスイッチ26とにより,主要部が構成される。
【0037】上記マイクロコンピュータ11は,その内部に,CPU(中央処理装置)11aと,ROM11bと,RAM11cと,A/Dコンバータ(ADC)11dと,EEPROM11eとを有して構成される。このうち,CPU11aは,ROM11bに格納されたシーケンスプログラムに従って,一連の動作を行うものである。
【0038】また,上記EEPROM11eは,オートフォーカス(AF),測光・露出演算等に関する補正データをカメラ毎に記憶している。また,EEPROM11eには,後述する撮影画面内の主要被写体を検出するための各種パラメータ等が格納されている。
【0039】AFエリアセンサ12は,撮像領域12aである水平方向と垂直方向に二次元状に配置された受光素子群と,その処理回路12bとを備えている。そして,受光素子(フォトダイオード)への入射光により発生する電荷は,画素毎の画素増幅回路により,電圧に変換されると共に増幅されて出力される。マイクロコンピュータ11では,該AFエリアセンサ12の積分動作の制御,センサデータの読出し制御が行われ,AFエリアセンサ12から出力されるセンサデータが処理されて測距演算が行われるようになっている。
【0040】また,AFエリアセンサ12は,定常光除去回路12cを有している。この定常光除去回路12cは,マイクロコンピュータ11の制御下に定常光を除去するか否かを切換える機能を有している。
【0041】上記フォーカスレンズ駆動部15は,撮影レンズ13の一部であるフォーカスレンズ14を駆動する。また,フォーカスレンズエンコーダ16は,該フォーカスレンズ14の移動量に対応するパルス信号を発生する。マイクロコンピュータ11からは,測距演算結果に基いて,フォーカスレンズ駆動部15に駆動信号が出力される。そして,フォーカスレンズエンコーダ16の出力がモニタされて,フォーカスレンズ14の位置制御が行われる。
・・・(中略)・・・
【0044】上記測光部20は,撮影画面に対応し,複数に分割された測光用受光素子20aが発生する光電流信号を処理して,測光出力を発生する。マイクロコンピュータ11では,この発生した測光出力を,上記A/Dコンバータ11dによりA/D変換して測光・露出演算を行う。
・・・(中略)・・・
【0048】ファーストレリーズスイッチ25及びセカンドレリーズスイッチ26は,上述したように,レリーズ釦に連動したスイッチである。レリーズ釦の第1段階の押下げによりファーストレリーズスイッチ25がオンされ,引続いて第2段階の押下げでセカンドレリーズスイッチ26がオンされる。マイクロコンピュータ11は,ファーストレリーズスイッチ25のオンでAF,測光動作を行い,セカンドレリーズスイッチ26のオンにより露出動作,フィルム巻上げ動作を行うようになっている。
【0049】次に,このように構成された,第1の実施の形態のカメラの動作について説明する。
【0050】図3は,第1の実施の形態に於けるカメラに於けるマイクロコンピュータ11のメインルーチンを示すフローチャートである。
【0051】先ず,図示されない電源スイッチがオンされるか,或いは電池がカメラ本体に挿入されると,マイクロコンピュータ11の動作が開始され,ROM11bに格納されたシーケンスプログラムが実行される。そして,ステップS1にて,マイクロコンピュータ11でカメラ内の各ブロックの初期化,EEPROM11e内のAF,測光等の調整・補正データが,RAM11cに展開される。
【0052】次いで,ステップS2に於いて,マイクロコンピュータ11によってファーストレリーズスイッチ25の状態が検出される。ここで,ファーストレリーズスイッチ25がオンされると,ステップS3に移行して,マイクロコンピュータ11によりAF動作が行われるように該当回路が制御される。
【0053】そして,ステップS4にて測光・露出演算処理が行われると,続くステップS5にて,演算された露光値が補正されて被写界深度が浅くされるか深くされるかの処理が行われる。
【0054】次に,ステップS6に於いて,セカンドレリーズスイッチ26の状態が検出される。ここで,セカンドレリーズスイッチ26がオンされると,ステップS7に移行して,マイクロコンピュータ11からはシャッタ動作が行われるよう指示されてフィルムに露出が行われる。次いで,ステップS8にて,フィルムが1駒巻上げられる。その後,上記ステップS2に移行する。
【0055】一方,上記ステップS2に於いて,ファーストレリーズスイッチ25がオンされていない場合は,ステップS9に移行して,マイクロコンピュータ11により,ファーストレリーズスイッチ25及びセカンドレリーズスイッチ26以外のスイッチの入力状態が検出される。
【0056】ここで,他のスイッチ入力が検出されると,ステップS10に移行して,当該スイッチ入力に応じた処理,例えばズームスイッチのズームアップ,ダウンの入力に対しては,ズームアップ,ダウン処理が行われるように各回路に指示がなされる。
【0057】尚,上記ステップS6でセカンドレリーズスイッチ26がオンされない場合,及びステップS9で他のスイッチ入力が検出されない場合は,上記ステップS2に移行する。
・・・(中略)・・・
【0073】次に,図8のフローチャートを参照して,第1の実施の形態に於けるカメラのAF動作について説明する。
【0074】先ず,ステップS21にて,マイクロコンピュータ11によりAFエリアセンサ12に積分制御信号が出力されて,積分動作が行われるよう指示される。そして,AFエリアセンサ12から所定範囲内のピーク(最も明るい画素)出力に対応するモニタ信号が出力される。マイクロコンピュータ11では,このモニタ信号が参照されながら,AFエリアセンサ12の受光部の受光量が適正となるように積分時間が調節される。
【0075】この後,ステップS22にて,マイクロコンピュータ11によってAFエリアセンサ12に読出しクロックCLKが出力される。続いて,センサデータ(画素データ)がA/Dコンバータ11dに出力され,A/D変換されて読出され,RAM11cに格納される。
【0076】更に,ステップS23では,マイクロコンピュータ11により,主要被写体が抽出される処理が実行される。次いで,ステップS24にて,上記抽出された主要被写体の領域内に複数の測距エリアが設定される。そして,ステップS25にて,上記複数の測距エリアについて測距演算が行われる。
【0077】ステップS26では,上記測距演算の結果,得られた測距データが所定の条件(信頼性の有無等)を満足するか否かが判定される。ここで,測距結果が所定の条件を満足していれば,ステップS27に移行して,マイクロコンピュータ11により,この所定の条件を満たす複数の測距データについて平均処理が行われ,その結果得られた測距データが採用される。
【0078】そして,ステップS28にて,上記採用された測距データに基いてフォーカスレンズ14が駆動された後,リターンする。
【0079】一方,上記ステップS26に於いて,測距結果が所定の条件を満足しない場合は,ステップS29に移行して,マイクロコンピュータ11により,上記主要被写体領域内のセンサデータが適正となるように制御されて再度積分が行われる。すなわち,AFエリアセンサ12内のモニタ選択回路36が制御されて,主要被写体領域内に対応する画素のみについてモニタ信号が取得され,例えばそれらの最大値がモニタ出力としてマイクロコンピュータ11に出力されるように設定される。
【0080】この後,再び上記ステップS21に移行して,再度積分,読出し,測距処理がやり直される。この場合は,主要被写体の領域内のセンサデータにつき測距演算が行われるために適正となるよう積分制御が行われるので,主要被写体について良好な測距データが得られる。
【0081】次に,図9のフローチャートを参照して,このカメラに於ける主要被写体検出動作について説明する。
【0082】この主要被写体検出ルーチンでは,特に主要被写体として人物を想定して,人物を検出する。尚,AFエリアセンサ12により2つの画像が得られるが,主要被写体検出に使用する画像データ(センサデータ)は何れか一方の画像でもよいし,両方の画像を使用してもよい。
【0083】また,AFエリアセンサ12のセンサデータは,マイクロコンピュータ11内のRAM11cに格納されており,このセンサデータに基いて以下の処理が行われる。
【0084】初めに,主要被写体検出処理の概要について説明する。
【0085】先ず,ステップS31にて,マイクロコンピュータ11により平滑化処理が行われる。この処理は,画像中のランダムノイズが除去される処理であり,当該ノイズは,フィルタ処理やフーリエ変換によって除去される。尚,除去されるランダムノイズは,AFエリアセンサ12自体が有するランダムノイズや,AFエリアセンサ12の電源電圧変動等の外的ノイズにより発生するノイズである。
【0086】次に,ステップS32にて,マイクロコンピュータ11により差分処理が行われる。この差分処理に於いて,マイクロコンピュータ11によってセンサデータに対して差分処理が行われ,エッジ検出を行う処理でエッジの候補領域とその強度が与えられる。
【0087】この後,ステップS33にて,マイクロコンピュータ11により2値化処理が実行される。この2値化処理に於いて,マイクロコンピュータ11によって画像に対して閾値処理によりある値以下の部分が抽出されて2値画像が求められる。
【0088】ステップS34では,マイクロコンピュータ11によって,連結・図形融合処理が行われる。続いて,ステップS35では,細線化処理が行われる。この処理により,エッジに対応するある幅を有する図形が得られるので,細線化アルゴリズムが適用されて,線幅が約“1”にされる。
【0089】この後,ステップS36にて,マイクロコンピュータ11により画像の形状が判定されて,主要被写体を抽出する形状判定処理が行われる。その後,リターンする。
【0090】次に,上述したステップS31?S36の各処理について,更に詳しく説明する。
・・・(中略)・・・
【0124】次に,上記ステップS36の形状判定処理及び写真判定処理について説明する。
【0125】ここで,連結領域の面積はその連結領域に属する画素の個数である。周囲長は連結領域のまわりに境界に位置する画素の個数である。但し,斜め方向は水平,垂直方向に対して√2倍に補正する。
【0126】画像の形状を判定するために,円形度と称される以下の係数eが使用される。
【0127】
e=(周囲長)^(2)/(面積) …(7)
ここで,eは,形状が円形の場合に最小値を示し,形状が複雑になるほど大きい値を示す。
【0128】人物の顔はほぼ円形に近いと考えられるので,上記係数eと所定値とを比較して対称画像(審決注:「対称画像」は誤記であり,正しくは「対象画像」と解される。引用発明では「対象画像」と表現する。)が人物の顔か否かが判定される。
【0129】また,上記連結領域面積も所定値と比較して,対称画像人物の顔か否かが判定される。更に,形状判定に先立ち,面積が所定範囲の値と比較されて,所定範囲以外の場合は人物ではない画像と判別されて,形状判定処理が行われないようにしてもよい。
【0130】このようにして,演算量が減少されてAFタイムラグを縮小させることができる。また,人物であると判定された場合には,その写真が人物を主にしたポートレート的写真であるか否かが判定される。
【0131】図17は,図9のフローチャートに於けるステップS36の形状判定処理及び写真判定処理のサブルーチンである。
【0132】この第1の実施の形態では,図33で説明したi)の条件に従って判定が行われる。
【0133】すなわち,まず,ステップS61にて,抽出領域があるか否かが判定される。ここで,抽出領域がない場合にはリターンする。
【0134】次いで,ステップS62にて,以降のステップで人物の数をカウントするカウンタが“0”にクリアされる。そして,ステップS63にて,面積S,上記(7)式によって円形度eが演算される。
【0135】ステップS64では,上記ステップS62で求められた面積Sが所定値Sth以下であるか否かが判定される。ここで,所定値より大きければステップS67に移行する。
【0136】上記ステップS64にて上記面積Sが所定値Sth以下であった場合は,続くステップS65に於いて,上記ステップS63で求められた円形度eが所定値eth以下であるか否かが判定される。ここで,所定値より大きければステップS67に移行する。一方,所定値以下であれば,円形度が高いのでステップS66に移行する。
【0137】ステップS66では,被写体が人物であると判定されて,所定のフラグがセットされる。また,ステップS67では,被写体が人物でないと判定されて所定のフラグがセットされる。
【0138】次に,ステップS68では,人数計測カウンタが+1される。そして,ステップS69では,全抽出領域について形状判定されたか否かが判定される。ここで,まだ全抽出領域について形状判定終了していない場合には,ステップS70に移行して,次の抽出領域が設定される。その後,上記ステップS63に移行する。
【0139】一方,上記ステップS69にて,全抽出領域について形状判定が終了した場合は,ステップS71に移行して,人数計測カウンタが零であるか,すなわち被写体に人物が一人もいないか否かが判定される。
【0140】ここで,カウンタが“0”であればリターンする。上記ステップS71にて,上記カウンタが“0”でなければ,ステップS72に移行して,カウントされた人数が所定人数以内であるか否かが判定される。
【0141】上記ステップS72にて,人数が所定数以内であれば,人物を主体に撮影されたポートレート的な写真であると判定されたとして,ステップS73に移行して,所定のフラグがセットされる。その後,リターンする。
【0142】一方,上記ステップS72にて,所定人数以上であれば,背景にもある程度のウエイトをおいた記念写真的な写真であると判定されたとして,ステップS74に移行して,所定のフラグがセットされる。その後,リターンする。
・・・(中略)・・・
【0147】更に,図20は,第1の実施の形態に於ける人物判定領域及び人物判定領域内の設定された複数の測距エリアを示す説明図である。
【0148】図示されるように,本実施の形態では,人物の顔と判定された領域50が抽出され,人物判定領域50内の複数の測距エリア(例えば50a?50e)が設定され,測距されるようになっている。
・・・(中略)・・・
【0162】図25は,図3のフローチャートに於けるステップS5の測光結果補正の動作を説明するサブルーチンである。
【0163】まず,ステップS81に於いて,被写体に人物が入っているか否かが判定される。これは,図17のフローチャートで説明した人物計測カウンタによって判定される。ここで,人物が入っていなければ補正しないのでリターンする。
【0164】一方,被写体に人物が入っている場合は,ステップS82に移行して,ポートレート的な写真であるか否かが判定される。これは,図17のフローチャートに於けるステップS73,S74の判定結果が参照される。
【0165】上記ステップS82にてポートレート的な写真であると判定された場合は,ステップS83に移行して,被写界深度が浅くなるようにプログラム線図が補正されて露出値が変更される。この露出値の変更については後述する。
【0166】また,上記ステップS82にて記念写真的な写真であると判定された場合は,ステップS84に移行して,被写界深度が深くなるようにプログラム線図が補正されて露出値が変更される。」


イ 引用文献1に記載された発明
前記ア(ア)ないし(ウ)の記載から,引用文献1には,次の発明が記載されていると認められる。

「レリーズ釦の第1段階の押下げによりオンされるファーストレリーズスイッチ25及びレリーズ釦の第2段階の押下げでオンされるセカンドレリーズスイッチ26と,
カメラ全体に於ける各回路の制御を司り,ファーストレリーズスイッチ25のオンでAF,測光動作を行い,セカンドレリーズスイッチ26のオンにより露出動作,フィルム巻上げ動作を行うマイクロコンピュータ11と,
撮像領域12aである水平方向と垂直方向に二次元状に配置された受光素子群を備え,被写体像を撮像して電気信号であるセンサデータに変換するAFエリアセンサ12と,
測光出力を発生する測光部20と,を有するカメラであって,
前記マイクロコンピュータ11は,前記ファーストレリーズスイッチ25がオンされると,
前記AFエリアセンサ12から読み出してA/D変換したセンサデータに対して,平滑化処理,差分処理,2値化処理,連結・図形融合処理,細線化処理を行った後に,センサデータから連結領域である対象画像を抽出して,当該対象画像が人物の顔か否かを対象画像の面積s及び円形度e(=(周囲長)^(2)/(面積))に基づいて判定し,人物の顔と判定された対象画像の数を被写体の人数としてカウントし,カウントされた人数が所定数以内であれば,人物を主体に撮影されたポートレート的な写真であると判定し,所定人数以上であれば,背景にもある程度のウエイトをおいた記念写真的な写真であると判定し,人物の顔と判定された人物判定領域50を主要被写体として抽出する形状判定処理及び写真判定処理を行い,その後,前記人物判定領域50内に複数の測距エリアを設定して,当該複数の測距エリアについて測距演算を行い,当該測距演算の結果得られた測距データが信頼性の有無等の所定の条件を満足するか否かを判定して,所定の条件を満たす複数の測距データについて平均処理を行って得られた測距データに基いて撮影レンズ13の一部であるフォーカスレンズ14を駆動するAF動作と,
前記測光部20が発生した測光出力に基づいて測光・露出演算を行う測光・露出演算処理と,
演算された露出値について,前記ポートレート的な写真か記念写真的な写真かの判定においてポートレート的な写真と判定されている場合には被写界深度が浅くなるように露出値を変更し,記念写真的な写真と判定されている場合には被写界深度が深くなるように露出値を変更する測光結果補正と,
を順次実行するよう構成されている,
カメラ。」(以下,「引用発明」という。)

(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2は,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該引用文献2には次の記載がある。(下線は,後述する引用文献2記載の技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
「【0035】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1から図12は本発明の第1の実施形態を示したものであり,図1は焦点検出装置の概要を示すブロック図である。
・・・(中略)・・・
【0037】このような焦点検出装置を適用したカメラの具体的な構成について図2を参照して説明する。図2は焦点検出装置を適用したカメラの光学的および電気的な構成を示すブロック図である。
・・・(中略)・・・
【0048】上記カメラ制御部50には,上記メインミラー17のアップ/ダウンおよびシャッタ19の駆動を行ってフィルム40への露光を制御する露光制御部42と,フィルム40の巻上げ/巻戻しの制御を行うフィルム駆動部41と,左右一対の光電変換素子列であるフォトダイオードアレイ37Lおよび37Rを有してなり各フォトダイオードアレイ37L,37Rの出力を焦点検出信号として該カメラ制御部50に出力するAFセンサ37と,カメラの制御部50の指示に基づき撮影レンズ10内の絞り16を適正な絞り値に駆動する絞り駆動部43と,撮影レンズ10のズーム位置をエンコーダ44bによって検出しながらズームモータ44aによってズームレンズ群を制御して駆動するズーム制御部44と,上記フォーカスレンズ群11,12の位置をエンコーダ45bによって検出しながらAFモータ45aによって制御して駆動するAFレンズ制御部45と,被写体の輝度に応じた出力を発生するフォトダイオード等のセンサを有してなり例えば上記ファインダ光学系20内に設置されている測光部46と,閃光発光により被写体を照明するストロボを制御するためのストロボ制御部47と,撮影者によって操作される全てのスイッチを含んでなるスイッチ群48と,が接続されている。
【0049】上記スイッチ群48に含まれるスイッチとしては,例えばカメラに電源を投入するためのメインスイッチや,レリーズ操作を行うための2段スイッチでなるレリーズスイッチ,ズーム操作を行うためのズームスイッチなどがあり,さらにカメラの撮影モードを設定するためのモード選択手段たる撮影モードスイッチもこれに含まれる。
・・・(中略)・・・
【0051】また,上記撮影モードスイッチにより設定される撮影モードとしては,風景を撮影するに適した風景モードや,人物を撮影するに適したポートレートモード,シャッタ速度をより高速にするスポーツモードなどがあり,さらに,夜景を撮影するに適した夜景モードがある。」

イ 引用文献2に記載された技術的事項
前記アで摘記した引用文献2の記載から,引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
「カメラに,撮影モードを設定するためのモード選択手段たる撮影モードスイッチを設け,当該撮影モードスイッチを撮影者が操作することによって,風景を撮影するに適した風景モード,人物を撮影するに適したポートレートモード,シャッタ速度をより高速にするスポーツモード,夜景を撮影するに適した夜景モードなどを設定できるように構成すること。」(以下,「引用文献2記載の技術」という。)

6 対比
(1) 引用発明の「カメラ」は,本願発明の「撮像装置」に相当する。

(2) 引用発明はAF動作を行うカメラであるところ,引用発明におけるAF動作を行うことが「自動合焦機能を備えた」ことに他ならないから,引用発明と本願発明は「自動合焦機能を備えた撮像装置」である点で一致する。

(3) 引用発明のAFエリアセンサ12は,被写体像を撮像して電気信号であるセンサデータに変換するものであるところ,「センサデータ」が本願発明の「被写体に応じた画像データ」に相当し,「AFエリアセンサ12」が本願発明の「撮像手段」に相当する。
したがって,引用発明と本願発明は「被写体に応じた画像データを入力するための撮像手段」を備える点で一致する。

(4) 引用発明のマイクロコンピュータ11は,AF動作における形状判定処理及び写真判定処理において,AFエリアセンサ12から読み出してA/D変換したセンサデータから連結領域である対象画像を抽出して,当該対象画像が人物の顔か否かを対象画像の面積s及び円形度e(=(周囲長)^(2)/(面積))に基づいて判定しているところ,「AFエリアセンサ12(撮像手段)から読み出してA/D変換したセンサデータ(画像データ)」が本願発明の「撮像手段から入力される画像データ」に相当し,「連結領域である対象画像を抽出して,当該対象画像が人物の顔か否かを対象画像の面積s及び円形度e(=(周囲長)^(2)/(面積))に基づいて判定」することが本願発明の「人物の顔を検出する」ことに相当するから,引用発明は,「AFエリアセンサ12(撮像手段)から入力されるセンサデータ(画像データ)の中から人物の顔を検出するための顔検出手段」を有しているといえる。
したがって,引用発明と本願発明は「撮像手段から入力される画像データの中から人物の顔を検出するための顔検出手段」を備える点で一致する。

(5) 引用発明のマイクロコンピュータ11は,AF動作において,人物の顔と判定された人物判定領域50を主要被写体として抽出し,当該人物判定領域50内に複数の測距エリアを設定して,当該複数の測距エリアについて測距演算を行い,当該測距演算の結果得られた測距データが信頼性の有無等の所定の条件を満足するか否かを判定して,所定の条件を満たす複数の測距データについて平均処理を行って得られた測距データに基いて撮影レンズ13の一部であるフォーカスレンズ14を駆動しているところ,「人物の顔と判定された人物判定領域50を主要被写体として抽出し,当該人物判定領域50内に複数の測距エリアを設定」し,当該複数の測距エリアから「得られた測距データに基いて撮影レンズ13の一部であるフォーカスレンズ14を駆動」することが本願発明の「顔検出手段で検出された人物の顔を測距エリアとして,自動合焦制御を行う」ことに相当するから,引用発明は,「顔検出手段で検出された人物の顔を測距エリアとして,自動合焦制御を行う自動合焦制御手段」を有しているといえる。
したがって,引用発明と本願発明は「顔検出手段で検出された人物の顔を測距エリアとして,自動合焦制御を行う自動合焦制御手段」を備える点で一致する。

(6) 引用発明のAF動作における「連結領域である対象画像を抽出して,当該対象画像が人物の顔か否かを対象画像の面積s及び円形度e(=(周囲長)^(2)/(面積))に基づいて判定」する処理,及び「人物の顔と判定された人物判定領域50を主要被写体として抽出し,当該人物判定領域50内に複数の測距エリアを設定」し,当該複数の測距エリアから「得られた測距データに基いて撮影レンズ13の一部であるフォーカスレンズ14を駆動」する処理が,本願発明の「人物撮影モード」が選択されている場合の「顔検出手段は顔検出動作を実行」する動作,及び「自動合焦制御手段は,検出された人物の顔を測距エリアとして,自動合焦制御を行」う動作にそれぞれ相当するから,引用発明と本願発明は「顔検出手段は顔検出動作を実行し,自動合焦制御手段は,検出された人物の顔を測距エリアとして,自動合焦制御を行うよう構成された」点で共通する。

(7) 前記(1)ないし(6)から,本願発明と引用発明は,
「自動合焦機能を備えた撮像装置において,
被写体に応じた画像データを入力するための撮像手段と,
前記撮像手段から入力される画像データの中から人物の顔を検出するための顔検出手段と,
前記顔検出手段で検出された人物の顔を測距エリアとして,自動合焦制御を行う自動合焦制御手段と,を備え,
前記顔検出手段は顔検出動作を実行し,前記自動合焦制御手段は,検出された人物の顔を測距エリアとして,自動合焦制御を行うよう構成された撮像装置。」である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本願発明が,「撮影モードとして,人物を撮影するための人物撮影モードと風景を撮影するための風景撮影モードとを切り替えて設定するモード設定手段」を備えており,当該モード設定手段により撮影モードとして「人物撮影モード」が選択されている場合は,「顔検出手段は顔検出動作を実行」し,「自動合焦制御手段は,検出された人物の顔を測距エリアとして,自動合焦制御を行」い,撮影モードとして「風景撮影モード」が選択されている場合は,「顔検出手段は顔検出動作を実行せず」,「自動合焦制御手段は,所定の測距エリアに基づき自動合焦制御を行う」よう構成されているのに対して,
引用発明は,そのようには構成されていない点。

7 判断
(1)相違点1の容易想到性について
「カメラ」である引用発明を用いて撮影を行う際には,人物以外にも様々なものが主要被写体とされ,様々なシーンで撮影がなされることが明らかであるところ,これら様々な主要被写体やシーンに対応してそれぞれ適した撮影動作を行わせるために,引用発明に,撮影モードを設定するためのモード選択手段たる撮影モードスイッチを設け,当該撮影モードスイッチを撮影者が操作することによって,風景を撮影するに適した風景モード,人物を撮影するに適したポートレートモード,シャッタ速度をより高速にするスポーツモード,夜景を撮影するに適した夜景モードなどを設定できるように構成することは,引用文献2記載の技術に基づいて,当業者が容易になし得たことである。
しかるに,引用発明における,「連結領域である対象画像を抽出して,当該対象画像が人物の顔か否かを対象画像の面積s及び円形度e(=(周囲長)^(2)/(面積))に基づいて判定」する処理(以下,便宜上「顔判定処理」という。),及び「人物の顔と判定された人物判定領域50を主要被写体として抽出し,当該人物判定領域50内に複数の測距エリアを設定」し,当該複数の測距エリアから「得られた測距データに基いて撮影レンズ13の一部であるフォーカスレンズ14を駆動」する処理(以下,便宜上「顔フォーカス処理」という。)は,主要被写体が人物であるときに適した動作であるから,これらの処理が,主要被写体が人物でないときには不要な動作であることは,当業者に自明である。
ここで,「人物を撮影するに適したポートレートモード」は,主要被写体が人物となる撮影モードである。
そうすると,撮影モードスイッチを設けて各種撮影モードを設定できるように構成を変更した引用発明において,「人物を撮影するに適したポートレートモード」が選択された場合に,顔判定処理(本願発明の顔検出動作に相当),及び顔フォーカス処理(本願発明の検出された人物の顔を測距エリアとする自動合焦制御に相当)を含むAF動作(並びに,ポートレート的な写真か記念写真的な写真かの判定結果に応じて露出値を変更する測光結果補正)を行うよう構成することは,引用文献2記載の技術の適用に際して,当業者が当然に行うことである。
また,「風景を撮影するに適した風景モード」は,主要被写体が風景であって人物ではない撮影モードであるから,撮影モードスイッチを設けて各種撮影モードを設定できるように構成を変更した引用発明において,「風景を撮影するに適した風景モード」が選択された場合に,顔判定処理,及び顔フォーカス処理(並びに,ポートレート的な写真か記念写真的な写真かの判定結果に応じて露出値を変更する測光結果補正)を行わず,例えば,引用文献1の【0002】に記載された,中央部とその左右の3点やこの3点に中央上下2点を加えた5点に測距エリアを設定してAF動作を行う従来の技術のように,適宜の位置に測距エリアを設定してAF動作を行うように構成することは,引用文献2記載の技術の適用に際して,当業者が適宜なし得たことである。
以上のとおりであるから,引用発明に,撮影モードを設定するためのモード選択手段たる「撮影モードスイッチ」(本願発明の「モード設定手段」に相当する。)を設け,当該撮影モードスイッチを撮影者が操作することによって,風景を撮影するに適した風景モード,人物を撮影するに適したポートレートモード,シャッタ速度をより高速にするスポーツモード,夜景を撮影するに適した夜景モードなどを設定できるように構成するとともに,撮影モードとして「ポートレートモード」(本願発明の「人物撮影モード」に相当する。)が選択された場合に,顔判定処理,及び顔フォーカス処理を行い(本願発明の「顔検出手段は顔検出動作を実行し,自動合焦制御手段は,検出された人物の顔を測距エリアとして,自動合焦制御を行」うことに相当する。),撮影モードとして「風景モード」(本願発明の「風景撮影モード」に相当する。)が選択された場合に,顔判定処理,及び顔フォーカス処理を行わず(本願発明の「顔検出手段は顔検出動作を実行せず」に相当する。)に,適宜の位置に測距エリアを設定してAF動作を行う(本願発明の「所定の測距エリアに基づき自動合焦制御を行う」に相当する。)こと,すなわち,引用発明を,相違点1に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(2)効果について
本願発明が有する効果は,引用文献1及び2に記載された事項から当業者が予測できた程度のものである。

(3)撮像手段に関する予備的判断
ア 本件補正後の請求項1には,「撮像手段」から入力される画像データがカメラのユーザーに提供されることを示す発明特定事項や,カメラが電子スチルカメラ(いわゆる「デジタルカメラ」)であることが記載されていないから,本願発明の「被写体に応じた画像データを入力するための撮像手段」なる発明特定事項は,引用発明の「AFエリアセンサ12」のように,AF動作専用の撮像手段であって,カメラのユーザーに提供する画像データを取得する撮像手段ではないものを包含していると解するのが相当である。(したがって,前記6(3)では,当該解釈を前提として,引用発明の「AFエリアセンサ12」と本願発明の「撮像手段」の相当関係を判断した。)
しかしながら,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された実施の形態1,実施の形態2,変形例1及び変形例2が,いずれも,デジタルカメラであって,撮像手段によって取得された画像データ(測距エリアが設定される画像データでもある。)が,ユーザーに提供されることが明らかであることからは,本願発明の「被写体に応じた画像データを入力するための撮像手段」なる発明特定事項が,カメラのユーザーに提供する画像データを取得する撮像手段を指していて,本願発明が,当該撮像手段が取得した画像データに対して顔検出動作や測距エリアの設定がされるものとの限定解釈が不可能とまではいえない。
そこで,当該限定解釈をした場合の本願発明の進歩性の有無について,検討しておく。

イ 前記アの限定解釈を前提として,本願発明と引用発明とを対比すると,両者は,相違点1に加えて,次の点でも相違する。

相違点2:
本願発明の「撮像手段」が,カメラのユーザーに提供する画像データを取得する撮像手段であって,本願発明では,当該「撮像手段」が取得した画像データに対して顔検出動作や測距エリアの設定がされているのに対して,
引用発明は,撮像したフィルムをカメラのユーザーに提供するカメラであって,引用発明の「撮像手段」(AFエリアセンサ12)は,カメラのユーザーに提供する画像データを取得する撮像手段ではなく,引用発明における顔検出動作や測距エリアの設定を行うための画像を取得するAF動作専用の撮像手段である点。

ウ 相違点1の容易想到性は,前記(1)で述べたとおりである。

エ 相違点2の容易想到性について検討すると,ユーザーに提供する画像データを取得する撮像手段を有するデジタルカメラであって,前記撮像手段が取得した画像データに対して測距エリアを設定し,当該測距エリアに基づいて自動合焦を行う方式のAF機構(いわゆる「コントラストAF」や「山登り方式」と呼ばれる方式)を採用したデジタルカメラは,例えば,特開2001-255456号公報,特開平9-69974号公報,特開平8-313799号公報,特開平5-227465号公報,特開平4-296175号公報等にみられるように,本願の出願前に周知であったと認められる。
引用発明は,撮像したフィルムをカメラのユーザーに提供する銀塩写真用のカメラであって,AF機構として,AF動作専用の撮像手段を有するいわゆる「位相差AF」方式のものを採用したものであるところ,カメラを銀塩写真用のカメラとするのか,それともデジタルカメラとするのかについてや,AF機構として,如何なる方式のものを用いるのかについては,それぞれのメリット・デメリットを総合的に勘案して,当業者が適宜決定すれば足りる設計上の事項である。
しかるに,引用発明を,周知の「コントラストAF」のAF機構を採用したデジタルカメラとして構成することは,単なる設計変更にすぎない。
したがって,引用発明を,相違点2に係る本願発明の発明特定事項(カメラのユーザーに提供する画像データを取得する「撮像手段」が取得した画像データに対して顔検出動作や測距エリアの設定を行う)に相当する構成を具備したものとすることは,単なる設計変更にすぎない。

オ 以上のとおりであるから,前記アの限定解釈を前提として検討したとしても,本願発明は,引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

8 むすび
本願の請求項1に係る発明は,引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-30 
結審通知日 2015-11-04 
審決日 2015-11-17 
出願番号 特願2010-181451(P2010-181451)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 雅明  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 清水 康司
本田 博幸
発明の名称 撮像装置、自動合焦方法、およびその方法をコンピュータが実行するためのプログラム  
代理人 酒井 宏明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ