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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) A61M
管理番号 1309590
判定請求番号 判定2015-600029  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2016-02-26 
種別 判定 
判定請求日 2015-09-28 
確定日 2016-01-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第5687170号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真及び図面に示す「マイクロニードルパッチ収納容器」は、特許第5687170号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号写真及び図面に示すマイクロニードルパッチ収納容器(以下「イ号物品」という。)は、特許第5687170号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。

第2 手続の経緯及び本件特許発明
1 手続の経緯
平成23年 9月22日 本件出願
平成26年 7月 2日 (起案日)拒絶理由通知
平成26年 9月 4日 意見書・手続補正書
平成27年 1月30日 設定登録
平成27年 9月28日 判定請求
平成27年10月 8日 (起案日)被請求人、コスメディ製薬株式会社
宛て判定請求書副本の送達通知
平成27年11月 2日 被請求人判定請求答弁書

2 本件特許発明
特許第5687170号の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、特許第5687170号公報の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められ、その構成は、構成要件ごとに分説(以下「構成要件(A)」などという。)して記載すると次のとおりである。

(A) 周辺部より窪んだ1個若しくは複数個の底面と、
(B) 該底面と該周辺部をつなぐ側面と、
(C) 該底面から突出した底面凸部を有し、
(D) 柔軟性あるマイクロニードルパッチの離型シート部分を該各底面の 該底面凸部により保持し、
(E) 該周辺部と該底面凸部との間に該底面が存在する
(F) マイクロニードルパッチ収納容器。

3 本件特許発明の目的及び効果等
本件特許発明は、マイクロニードルパッチが、「その製造後流通過程を経て使用されるまでの間、衛生的でかつその薬効を損なわないように保持される」(段落【0009】)ことを目的とし、マイクロニードルパッチ収納容器を上記構成を有するものとし、それにより、「マイクロニードルパッチは離型シートの部分で保持され、マイクロニードル部分は容器のいかなる部分とも接触しない。マイクロニードルパッチが柔軟なシートであるとしても、開封するときまで衛生的に保持できる。」(段落【0023】)という効果を奏するものと認められる。

第3 イ号物品
1 判定請求書
判定請求書には、「イ号物品の説明」(第3ページ第6行?第34行)として、以下の事項が記載されている。

「イ号物品の説明
以下の説明に示すとおり、イ号は、本件特許発明に則して記載すると、次のとおりのものである。
『(a)周辺部(1)より窪んだ1個の底面(2)と、
(b)該底面(2)と該周辺部(1)をつなぐ側面(3)と、
(c)該底面(2)から突出した底面凸部(4)を有し、
(d)柔軟性あるマイクロニードルパッチ(10)の離型シート(13) 部分を該各底面(2)の該底面凸部(4)により保持し、
(e)該周辺部(1)と該底面凸部(4)とが間を空けることなく互いに密 着している
(f)マイクロニードルパッチ収納容器。』

・(a)の説明
イ号図面および写真に見られるとおり、イ号物品は『周辺部(1)よ り窪んだ1個の底面(2)』を有している。
・(b)の説明
イ号図面および写真に見られるとおり、イ号物品は『該底面(2)と 該周辺部(1)をつなぐ側面(3)』を有している。
・(c)の説明
イ号図面および写真に見られるとおり、イ号物品は『該底面(2)か ら突出した底面凸部(4)』を有している。
・(d)の説明
イ号図面および写真に見られるとおり、イ号物品は『柔軟性あるマイ クロニードルパッチ(10)の離型シート(13)部分を該各底面(2 )の該底面凸部(4)により保持』している。
・(e)の説明
イ号図面および写真に見られるとおり、イ号物品は『該周辺部(1) と該底面凸部(4)とが間を空けることなく互いに密着』している。
・(f)の説明
イ号図面および写真に見られるとおり、イ号物品は『マイクロニード ルパッチ収納容器』である。」

2 イ号図面
(1)イ号図面には、「平面図」並びに該平面図のA-A線による断面図として「断面図A」及び該平面図のB-B線による断面図として「断面図B」がそれぞれ示されている。

(2)平面図並びに断面図A及びBから、「1」と引出線が付された水平面(以下「水平面(1)」という。)から垂直方向下方の箇所に「2」と引出線が付された水平面(以下「水平面(2)」という。)が略「H」形状に1個形成されていることが看取できる。

(3)断面図Aから、水平面(2)から水平面(1)に向けて、階段状の側部が形成されていることが看取できる。
そして、この側部は、平面図及び断面図Aから、水平面(2)の外周縁から上方に形成された垂直面(以下「垂直面A」という。)と、該垂直面Aの上周縁より水平面(2)から離れる方向に形成された、「4」と引出線が付された水平面(以下「水平面(4)」という。)と、該水平面(4)の外周縁と該水平面(1)の内周縁との間に形成された、「3」と引出線が付された垂直面(以下「垂直面(3)」という。)とから構成されていることが看取できる。

(4)断面図Bから、水平面(2)から水平面(1)に向けて、階段状の側部が形成されていることが看取できる。
そして、この側部は、水平面(2)の外周縁から上方に形成された垂直面Aと、該垂直面Aの上周縁より水平面(2)から離れる方向に形成された、水平面(4)と、該水平面(4)の外周縁と該水平面(1)の内周縁との間に形成された、垂直面(3)とから構成されていることが看取できる。

(5)平面図において「10」と引出線が付された破線の部分が示されているところ、この部分は、断面図A及びBを併せてみて2個の板状の部材である。
また、断面図A及びBにおいて上記板状の部材の左右下面には「13」と引出線が付された破線の部材が看取できる。
そして、断面図Aでは、この板状の部材が左右に2つそれぞれ水平面(4)の上に載置されて支持されていることが看取できる。
また、断面図Bの右側の板状の部材では、右側において水平面(4)の上に載置されて支持され、一方、左側では何らの部材にも支持されておらず浮いた状態であり、断面図Bの左側の板状の部材では、左側において水平面(4)の上に載置されて支持され、一方、右側では何らの部材にも支持されておらず浮いた状態であることが看取できる。

3 イ号写真
(1) イ号写真には、「蓋部が開いた状態」をタイトルとする「斜視写真1」及び「蓋部が開いた状態」をタイトルとする「斜視写真2」が示されている。

(2) 斜視写真1?2には、1個の無色で透明な素材で形成された略「H」形状の部分を有する部材が看取できる。

4 認定事項
(1)イ号図面の平面図並びに断面図A及びBに示される板状の部材は、上記1では「マイクロニードルパッチ(10)」と記載されており、「10」と引出線が付された破線の部分とマイクロニードルパッチとが関連づけられているから、マイクロニードルパッチであると認められる。
そして、通常のマイクロニードルパッチは、その周囲に離型シートが配置されたものであることを踏まえると、平面図並びに断面図A及びBにおける引出線「10」の破線部分はマイクロニードルパッチ全体を、引出線「13」の破線部分は、そのマイクロニードルパッチの離型シートの部分をそれぞれ示しているものと認められる。

(2)イ号図面の平面図、断面図A及びBにおいて全体形状が示される部材は、上記1では「イ号物品は『マイクロニードルパッチ収納容器』である。」と記載されているから、マイクロニードルパッチ収納容器であると認められる。

(3)上記2(5)と4(1)の事項から、マイクロニードルパッチ(10)の離型シート(13)の少なくとも一部が水平面(4)で支持されるものと認められる。

5 イ号物品の構成
上記1?4の事項からみて、イ号物品の構成を、本件特許発明の構成要件の分説と対応するように分説すると、イ号物品は次の構成(以下「構成(a)」などという。)を具備するものである。

(a) 水平面(1)より下方に形成された1個の水平面(2)と、
(b) 該水平面(2)の外周縁から上方に形成された垂直面Aと、該垂直 面Aの上周縁より該水平面(2)から離れる方向に形成された水平面( 4)と、該水平面(4)の外周縁と該水平面(1)の内周縁との間に形 成された垂直面(3)とを有し、
(d) マイクロニードルパッチ(10)の離型シート(13)部分を該水 平面(4)により支持する、
(f) マイクロニードルパッチ収納容器。

イ号物品の特定について、請求人は、イ号物品の説明(上記1を参照。)において、イ号を、「(b)該底面(2)と該周辺部(1)をつなぐ側面(3)」及び「(d)柔軟性あるマイクロニードルパッチ(10)の離型シート(13)部分を該各底面(2)の該底面凸部(4)により保持」としている。
しかしながら、イ号図面の平面図並びに断面図A及びBに示される「3」と引出線が付された面は、上記2(3)?(4)で述べたとおり、水平面(4)の外周縁と水平面(1)の内周縁との間に形成されたものであり、水平面(2)と水平面(1)とをつなぐ面とはいえない。
また、マイクロニードルパッチが「柔軟性ある」ものかどうかは、イ号図面及びイ号写真からは確認できない。
したがって、これらの点を踏まえて上記のとおり認定した。

第4 対比・判断
1 本件特許発明の各構成要件とイ号物品の各構成との対比・判断
イ号物品の「水平面(1)」、「水平面(2)」、「マイクロニードルパッチ(10)」、「離型シート(13)」、「支持」及び「マイクロニードルパッチ収納容器」が、それぞれ本件特許発明の「周辺部」、「底面」、「マイクロニードルパッチ」、「離型シート」、「保持」及び「マイクロニードルパッチ収納容器」に該当することは明らかである。
また、イ号物品の水平面(4)は、マイクロニードルパッチ(10)の離型シート(13)に当接する部分であるから、本件特許発明の底面凸部の上面の部分に該当する。

(1)構成要件(A)について
イ号物品は、「水平面(1)より下方に形成された1個の水平面(2)」(上記構成(a)を参照。)を有しているから、イ号物品の水平面(2)は、水平面(1)に対して「窪んだ」ものと認められる。
してみると、イ号物品は、水平面(1)より窪んだ1個の水平面(2)を有するものといえる。
よって、イ号物品は、本件特許発明の構成要件(A)の「周辺部より窪んだ1個若しくは複数個の底面」を有するものといえる。
したがって、イ号物品は構成要件(A)を充足する。

(2)構成要件(B)について
イ号物品の、水平面(2)と水平面(1)との関係をみると、両者は、垂直面Aから水平面(4)を通じて垂直面(3)に至る面によりつながっているといえる(上記構成(b)を参照。)。
してみると、イ号物品は、垂直面A、水平面(4)及び垂直面(3)からなる部分が、水平面(2)と水平面(1)をつなぐ側面を有するといえる。
よって、イ号物品は、本件特許発明の構成要件(B)の「該底面と該周辺部をつなぐ側面」を有するものといえる。
したがって、イ号物品は構成要件(B)を充足する。

(3)構成要件(C)について
イ号物品の水平面(4)は、該水平面(2)の外周縁から上方に形成された垂直面Aの上周縁より該水平面(2)から離れる方向に形成された面であるから、水平面(2)から突出した凸部といえる。
してみると、イ号物品は、水平面(2)から突出した水平面(4)からなる部分、すなわち底面凸部を有するものといえる。
よって、イ号物品は、本件特許発明の構成要件(C)の「該底面から突出した底面凸部」を有するものといえる。
したがって、イ号物品は構成要件(C)を充足する。

(4)構成要件(D)について
上記「構成要件(C)について」に記載したとおり、イ号物品の水平面(4)は、底面凸部といえるものであり、その上面でマイクロニードルパッチの離型シート部分を保持するものである。
よって、イ号物品は、本件特許発明の構成要件(D)の「柔軟性あるマイクロニードルパッチの離型シート部分を該各底面の該底面凸部により保持」する機能を有するものといえる。
したがって、イ号物品は構成要件(D)を充足する。

(5)構成要件(E)について
イ号物品は、「該水平面(2)の外周縁から上方に形成された垂直面Aと、該垂直面Aの上周縁より該水平面(2)から離れる方向に形成された水平面(4)と、該水平面(4)の外周縁と該水平面(1)の内周縁との間に形成された垂直面(3)とを有(する)」(上記構成(b)を参照。)ように構成されており、水平面(1)と、水平面(4)との間には水平面(2)は存在していない。
してみると、イ号物品は、本件特許発明の構成要件(E)の「該周辺部と該底面凸部との間に該底面が存在する」構成を有しない。
したがって、イ号物品は構成要件(E)を充足しない。

(6)構成要件(F)について
イ号物品は、構成(f)において、「マイクロニードルパッチ収納容器」を有しており、本件特許発明の構成要件(F)の「マイクロニードルパッチ収納容器」を有するものといえる。
したがって、イ号物品は構成要件(F)を充足する。

2 小括
上記1(1)?(6)に示すように、イ号物品は、文言上、本件特許発明の構成要件(E)を充足していないから、本件特許発明の技術的範囲に属するものとはいえない。

3 均等論
上記1(5)で検討したとおり、イ号物品は、本件特許発明の構成要件(E)を充足しないが、請求人は、判定請求書「5 請求の理由」の「イ号物品が本件特許発明の技術的範囲に属しないとの説明(均等論)」でイ号物品の構成は、上記構成要件(E)について、本件特許発明の構成と均等の要件も充足しないと主張しているので、以下検討する。
本件特許の審査過程をみると、平成26年7月2日付けで拒絶の理由が通知(甲第1号証)されたのに対して、被請求人は、平成26年9月4日付けで請求項1に「該周辺部と該底面凸部との間に該底面が存在する」との事項を追加することを含む補正(甲第2号証)をするとともに意見書(甲第3号証)を提出し、当該意見書において、「請求項1に追加した『前記周辺部と前記底面凸部との間に前記底面が存在する』は、いずれの引用文献にも記載されていません。・・・(中略)・・・本願発明においては、図2や図4に示すように、周辺部と底面凸部との間に底面を設けています。これはマイクロニードルパッチを収納容器から取り出しやすくするために必要な構成です。・・・(中略)・・・マイクロニードルパッチの取り出しやすさを考えますと、底面凸部と周辺部との間に底面をおいて底面凸部で離型シートの内側に近い部分を保持する方が、マイクロニードルパッチを指でつまみやすいため便利です。・・・(中略)・・・このような構成により収納容器を使いやすくすることは、いずれの引用文献にも記載も示唆もされていません。」(甲第3号証第2ページ第9行?第27行)と主張している。
してみると、被請求人は、本件特許発明の「該周辺部と該底面凸部との間に該底面が存在する」という特定の構成によって、本件特許発明には特許性がある旨主張しているのであるから、この構成と異なる底面の構成を備えるものは、特許請求の範囲から意識的に除外しているものと認められる。
そして、イ号物品の構成(b)に相当する「該水平面(2)の外周縁から上方に形成された垂直面Aと、該垂直面Aの上周縁より該水平面(2)から離れる方向に形成された水平面(4)と、該水平面(4)の外周縁と該水平面(1)の内周縁との間に形成された垂直面(3)とを有(する)」(上記構成(b)を参照。)ものが、上記引用文献(甲第4?8号証)と同様に、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに該当することは明らかである。
したがって、イ号物品は、最高裁平成6年(オ)第1083号(平成10年2月24日)判決で判示された均等要件(意識的除外等の特段の事情)を満たしていないから、均等なものとして、本件特許発明の技術的範囲に属するということはできない。


第5 被請求人の主張
被請求人は、平成27年11月2日判定請求答弁書において、「イ号物品がマイクロニードルパッチをどのように保持しているかについては、判定請求書に添付された斜視写真1、2に記載がある。しかし、これらの写真からは、『マイクロニードルパッチが柔軟か』や『離形シート部分で底面凸部により保持されているか』といった重要な内容を確認できない。」と主張している。
しかしながら、前者の主張については、本件特許発明はマイクロニードルパッチ収納容器の発明であるから、マイクロニードルパッチが柔軟であるか否かに関する被請求人の主張は、本件判定の属否の判断を左右するものではない。
また、後者の主張については、第3の4(3)、第4の1(3)及び第4の1(4)で示したとおり、イ号物品は「離型シート部分を底面凸部により保持」しているものといえるから、当該主張は理由がない。

第6 むすび
したがって、イ号物品は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。

 
判定日 2015-12-18 
出願番号 特願2011-225328(P2011-225328)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (A61M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 倉橋 紀夫  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 平瀬 知明
竹下 和志
登録日 2015-01-30 
登録番号 特許第5687170号(P5687170)
発明の名称 マイクロニードルパッチ収納容器  
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