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審決分類 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  F24H
審判 全部無効 特29条の2  F24H
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F24H
審判 全部無効 2項進歩性  F24H
管理番号 1309862
審判番号 無効2012-800115  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-07-20 
確定日 2015-05-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3845031号発明「逆流防止装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3845031号に係る出願は,平成14年2月28日に特許出願され,平成18年8月25日にその発明について特許の設定登録(請求項の数2)がなされたものである。

以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
1.平成24年 7月20日 本件無効審判の請求
2.平成24年 9月 4日 上申書(請求人)
3.平成24年10月19日 審判事件答弁書(以下「第1答弁書」という。)
4.平成24年10月19日 訂正請求書
5.平成24年12月17日 審判事件弁駁書(以下「第1弁駁書」という。)
6.平成24年12月28日 補正拒否の決定(許可する)
7.平成25年 2月 6日 審判事件答弁書(以下「第2答弁書」という。)
8.平成25年 3月 1日 審理事項通知書
9.平成25年 4月11日 口頭審理陳述要領書(請求人)
10.平成25年 4月11日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
11.平成25年 4月25日 手続補正書(請求人)
12.平成25年 4月25日 口頭審理
13.平成25年 5月17日 上申書(請求人)
14.平成25年 6月 6日 上申書(被請求人)
15.平成25年 7月17日 審決の予告
16.平成25年 9月13日 上申書(請求人)
17.平成25年 9月20日 上申書(被請求人)
18.平成25年10月31日 審決の予告
19.平成25年12月25日 訂正請求書
20.平成25年12月25日 上申書(被請求人)
21.平成26年 2月12日 審判事件弁駁書(第2回)(以下「第2弁駁書」という。)
22.平成26年 2月21日 手続補正書(請求人)

第2 当事者の主張
1.請求人
請求人は,請求書,第1弁駁書,口頭審理陳述要領書,第2弁駁書及び上申書において,「特許第3845031号の特許(請求項の数2)の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」ことを請求の趣旨とし,甲第1?12号証を提出して,次の無効理由を主張する。

無効理由の概要
(1)訂正請求について
「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁」の事項は,本件特許の明細書,特許請求の範囲,図面に記載されていない事項を含むから,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に違反するものであって認められない。

(2)訂正が認められない場合
(2-1)無効理由1(甲第1号証による新規性喪失事由)
訂正前の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は,甲第1号証に記載された発明と同一であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

(2-2)無効理由2(甲第2号証による新規性喪失事由)
本件発明1は,甲第2号証に記載された発明と同一であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

(2-3)無効理由3(甲第3号証による拡大先願に基づく新規性喪失事由)
本件発明1は,本件特許の出願日前に出願され本件特許の出願日後に出願公開された甲第3号証に記載された発明と同一であるから,特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

(2-4)無効理由4(甲第4号証あるいはこれと周知技術との組み合わせによる進歩性喪失事由)
本件発明1は,甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができる。仮に,そうでないにしても,本件発明1は甲第4号証に記載された発明に周知技術(甲第1号証,甲第2号証,甲第5号証及び甲第6号証)を適用することにより容易に想到することができる。
したがって,本件発明1は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2-5)無効理由5(甲第4号証による進歩性喪失事由)
訂正前の請求項2に係る発明(以下「本件発明2」という。)は,甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができる。
したがって,本件発明2は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)訂正が認められる場合
(3-1)無効理由6(記載不備に基づく無効理由(特許法第36条第6項第1号違反))
大気開放弁について,開弁方向に付勢するスプリングを有しながらも,上水道の圧力低下がない状態で閉じ状態が保たれるための構成が明確になっていないから,訂正後の請求項1に係る発明は,特許法第36条第6項第1号に違反する。

(3-2)無効理由7(甲第8号証の1及びこれと周知技術との組み合わせによる進歩性喪失事由)
甲第8号証の1の【0064】,【0065】にはダイアフラムの両面に差圧を発生させる方法として,検圧管分岐部と逆流防止室23との間に逆止弁を入れる構成が開示されている。ただ,逆止弁の設置位置が電磁弁の上流側となるか下流側となるかのいずれの可能性もあるが,少なくとも下流側に設置されることの可能性が排除される技術常識はない。また,複数を配置するとの積極的記載もないことからして,配置される逆止弁は常識的に一つのみであると考えられる。したがって,甲第8号証の1には大気開放弁と電磁弁との間に一つの逆止弁を配置することが実質的に開示されている,と言い得る。
この点に関し,甲第11号証の結果は,甲第8号証の1における【0065】の記載の構成が,大気開放弁と電磁弁との間に逆止弁を配置する可能性が決して否定されるべきものではないことを示しているのである。
なお,甲第8号証の1において,大気開放弁と電磁弁との間に逆止弁を配置する目的はダイアフラムの両面への差圧の発生であり,大気に開放されるべき水と吸い込まれた空気とを電磁弁側に逆流するのを阻止する,という本件特許の目的とは相違する,という主張に対しては,たとえ目的が相違するとしても,一旦,そのような位置に逆止弁が配置されれば,逆止弁の本来の機能からして逆流防止機能を果たすのは当然であり,作用効果において本件特許発明と何ら変わるところはない。
上記したように,第2の逆止弁の配置及びその個数が一つのみであることについては甲第8号証の1中に実質的に開示されている。そうであれば,本件特許発明と甲第8号証の1の相違点は,第1の逆止弁の配置数のみである。
しかし,大気開放弁(逆流防止装置)と浴槽との間に逆止弁を一つのみ配置することは周知の技術に過ぎない。すなわち,甲第1号証の第1図,第2図には大気開放型の弁装置(23)(27)(31)と浴槽1との間に一つの逆止弁15が配置されていることが示され,甲第2号証の第1図においても浴槽とバキュームブレーカ11との間に一つの逆止弁7が配置されていることが示され,甲第5号証の第1図等においても大気開放弁12と浴槽24との間に一つの逆止弁11が配置されていることが示されている。
また,もともと,社団法人日本水道協会の定めた基準(甲第12号証参照)によれば,給湯回路には,逆止弁は2つ設けるのが一般的である。
甲第8号証の1においては逆流防止装置Aと電磁弁との間に逆止弁(一つ)を設定する可能性についての言及があったことを考慮すれば,大気開放弁と浴槽との間に配置される逆止弁は一つだけ配置すれば上記基準を満たすのであるから,敢えて二個のまま残すのはコスト等を考えれば,到底,合理的な選択とは言えない。そうであれば,甲第8号証の1のものにおいて,電磁弁と逆流防止装置の間に逆止弁が配置される場合には,日本水道協会の基準(技術標準)を加味すれば逆止弁は1つのみと考えるのが妥当である。
以上の結果,訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明1」という。)は甲第8号証の1に技術標準を加味することにより,あるいは甲第8号証の1に周知技術を適用することによって,当業者が容易に想到し得たものである。
したがって,本件訂正発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3-3)無効理由8(対象製品と甲第8号証の1との組み合わせによる進歩性喪失事由)
甲第8号証の1の段落番号【0064】及び【0065】には,逆流防止装置Aのダイアフラムの両面に差圧を発生させる,との観点で,検圧管分岐部と逆流防止室との間に逆止弁を入れることが記載されていた。対象製品のメカシスターンの内部構造は,甲第9号証の5中の第40頁の下側の図に示されている通りであり,これによれば対象製品のメカシスターンの形式も,給水側の圧力とふろ側の圧力との差に基づいて動作する差圧動作式の開閉弁であって,これは甲第8号証の1の逆流防止装置と同一形式である。また,差圧動作式の開閉弁において開閉動作をより確実にするべく差圧を増大させる,という課題は,甲第8号証の1によって本件特許の出願前に公知のものである。対象製品中のメカシスターンにもかかる課題は同様に存在するから,その解決を図ろうとする動機も存在すると言うべきである。そうであれば,対象製品のメカシスターンと電磁弁との間に逆止弁を付加する程度のことは,当業者であれば容易に着想できる。また,その場合において,配置されるべき逆止弁の個数は常識的には一つであり,敢えて複数個を設ける等の積極的記載も甲第8号証の1にはないのであるから,付加される逆止弁は一つのみと考えるのが妥当である。
仮に,そのような解釈が成り立たないにしても,大気開放機能を有する弁と電磁弁との間に逆止弁を一つのみ配置することは甲第1号,甲第2号,甲第5号及び甲第6号に開示されている周知の事項に過ぎない。
上記したように,メカシスターンと電磁弁との間に逆止弁が一つ配置されるのであれば,日本水道協会の基準からして,メカシスターンと浴槽との間に配置される逆止弁を敢えて複数個設定することは非合理的である。
以上の結果,本件訂正発明1は当業者が対象製品と甲第8号証の1との組み合わせによって,あるいはさらに甲第1号証,甲第2号証,甲第5号証及び甲第6号証の周知技術を適用することによって容易に想到し得たものである。
したがって,本件訂正発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3-4)無効理由9(甲第1号証と甲第8号証の1との組み合わせによる進歩性喪失事由)
甲第1号証と本件訂正発明1との相違点である,「大気開放弁は,上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」点は,甲第8号証の1中に記載されている。
大気開放弁が「上水道の圧力低下がない状態において閉じ状態を保つ」という課題,換言すれば「上水道の圧力低下がない状態でのドレンの発生を回避する」という課題は,甲第8号証の1の【0008】乃至【0011】に記載されているように,本件特許の出願前に公知の課題である。そして,甲第8号証の1中には従来技術として甲第1号証が挙げられ,上記した課題は甲第1号証それ自体に存在することとして記載がなされている。甲第8号証の1の逆流防止装置Aはこの課題を解決したものであり,甲第8号証の1の逆流防止装置Aはまさに甲第1号証中の弁装置(23)(27)(31)と置き換え可能であることを示す何よりの証左である。
また,甲第1号証と甲第8号証の1とは,その属する技術分野が共通し,かつ作用・機能において共通するため,甲第1号証のものと甲第8号証の1のものとを組み合わせる動機付けとして働く。したがって,甲第1号証に記載の逆流防止装置があるときに,甲第8号証の1に記載の逆流防止装置Aが知られるに至れば,甲第1号証の逆流防止装置中の弁装置に代えて甲第8号証の1記載の逆流防止装置を適用することに何らの困難性も存しない。
以上のとおり,本件訂正発明1は当業者が甲第1号証のものと甲第8号証の1のものとを組み合わせることによって容易に想到し得る程度のものに過ぎない。
したがって,本件訂正発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3-5)無効理由10(甲第1号証と対象製品との組み合わせによる進歩性喪失事由)
甲第1号証と本件訂正発明1との相違点は,上記のとおり「上水道の圧力低下がない状態において閉じ状態を保つ」点のみであり,またそのような相違点に係る構成は対象製品が備えている。
大気開放弁が「上水道の圧力低下がない状態において閉じ状態を保つ」という課題,換言すれば「上水道の圧力低下がない状態でのドレンの発生を回避する」という課題は,甲第8号証の1に開示されているとおり,本件特許の出願前に公知であり,甲第1号証のものにおいてもかかる課題が存在するものである。
これに対し,対象製品のメカシスターンは,上水道の圧力低下がない状態ではドレンの発生がない構成である。したがって,甲第1号証の弁装置(23)(27)(31)が上水道の圧力低下がない状態でドレン路(18)へのドレンの発生があり得るから,そのような課題を解決しようとして甲第1号証の弁装置に代えて,対象製品のメカシスターンに置換しようとすることは,当業者であれば容易に思いつく程度のことに過ぎない。
加えて,甲第1号証と対象製品とは,その属する技術分野が共通し,かつ作用・機能において共通するため,甲第1号証のものと対象製品のものとを組み合わせる動機付けとして働く。したがって,甲第1号証に記載の逆流防止装置があるときに,対象製品のメカシスターンが公知・公用となれば,甲第1号証の逆流防止装置中の弁装置に代えて対象製品のメカシスターンを適用することに何らの困難性も存しない。
以上のとおり,本件訂正発明1は当業者が甲第1号証のものと対象製品とを組み合わせることによって容易に想到し得る程度のものに過ぎないと言い得る。
したがって,本件訂正発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3-6)無効理由11(甲第2号証と甲第8号証の1との組み合わせによる進歩性喪失事由)
甲第8号証の1に開示の逆流防止装置は,上水道の圧力低下がない状態で閉じ状態を保つ形式であり,さらに開弁方向に付勢するスプリングを有している。
大気開放弁が「上水道の圧力低下がない状態において閉じ状態を保つ」という課題については,甲第8号証の1により本件特許の出願前に公知であった。甲第2号証のバキュ?ムブレーカ11は上水道の圧力低下がない状態でも,通水を停止すると開弁してドレンを生じさせる形式である。したがって,甲第2号証に内在するこのようなドレンの発生回避という本件特許の出願前に知られている課題を解消しようとして,バキュームブレーカ11に代えて甲第8号証の1の逆流防止装置Aを利用する,との考えに至ることは当業者にとっては極めて自然なことに過ぎない。
加えて,甲第2号証と甲第8号証の1のものとは,その属する技術分野が共通し,かつ作用・機能において共通するため,甲第2号証のものと甲第8号証の1のものとを組み合わせる動機付けとして働く。以上により,甲第2号証に記載の逆流防止装置があるときに,対象製品のメカシスターンが公知・公用となれば,甲第2号証のバキュームブレーカに代えて甲第8号証の1の大気開放弁を適用することに何らの困難性も存しない。
以上のとおり,本件訂正発明1は当業者が甲第2号証のものと甲第8号証の1とを組み合わせることによって容易に想到し得る程度のものに過ぎない。
したがって,本件訂正発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3-7)無効理由12(甲第2号証と対象製品との組み合わせによる進歩性喪失事由)
大気開放弁が「上水道の圧力低下がない状態において閉じ状態を保つ」という課題については,甲第8号証の1により本件特許の出願前に公知であった。そして,甲第2号証のバキュームブレーカがかかる課題を有する一方で,対象製品のメカシスターンはそのような課題を解消し得るものである。したがって,当業者であれば,甲第2号証のバキュームブレーカを対象製品のメカシスターンに置換しようとの発想が生じるのはごく自然なことである。
加えて,甲第2号証と対象製品とは,その属する技術分野が共通し,かつ作用においても共通するため,このことも甲第2号証のものと対象製品のものとを組み合わせる動機付けとして働く。したがって,甲第2号証に記載の逆流防止装置があるときに,対象製品のメカシスターンが公知・公用となれば,甲第2号証の逆流防止装置中のバキュームブレーカに代えて対象製品のメカシスターンを適用することに何らの困難性も存しない。
以上のとおり,本件訂正発明1は当業者が甲第2号証のものと対象製品のものとを組み合わせることによって容易に想到し得る程度のものに過ぎないと言い得る。
したがって,本件訂正発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3-8)無効理由13(甲第4号証による進歩性喪失事由)
訂正後の請求項2に係る発明(以下「本件訂正発明2」という。)は,甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができる。
したがって,本件訂正発明2は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

証拠方法
<審判請求書に添付>
甲第1号証:実願平2-79045号(実開平4-36551号)のマイクロフィルム
甲第2号証:実願平2-71754号(実開平4-30393号)のマイクロフィルム
甲第3号証:特開2003-239334号公報
甲第4号証:実願平2-35916号(実開平3-124155号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実願平3-83521号(実開平5-36243号)のCD-ROM
甲第6号証:特開2000-304144号公報
甲第7号証:「日本水道協会規格 JWWA 水道用減圧式逆流防止器 JWWA B 134:1999」 発行者:日本水道協会 発行日:平成11年6月23日
なお,甲第7号証は取り下げられた。(口頭審理陳述要領書)

<第1弁駁書に添付>
甲第8号証の1:特開平7-103358号公報
甲第8号証の2:甲第8号証の1中の図1の拡大図
甲第9号証の1:対象製品を含む給湯機のアフターサービスマニュアル・パーツリスト(抜粋)
甲第9号証の2:甲第9号証の1の第14頁左上に記載の給湯回路の拡大図
甲第9号証の3:TOTO株式会社のホームページ掲載のリコール通知に関するサイトをプリントしたもの
甲第9号証の4:TOTO株式会社製ハイアクティシリーズのアフターサービスマニュアル(抜粋)
甲第9号証の5:対象製品を含むTOTO株式会社製給湯機の技術マニュアル(抜粋)
甲第9号証の6:対象製品の実機を撮影した写真撮影報告書
甲第9号証の7:対象製品の実機の製造年月日に関して請求人であるタイム技研株式会社の社員である山口修とTOTO株式会社のお客様相談室の担当である?吉(タカヨシ)氏との間でやりとりしたメールの内容を示すもの
甲第9号証の8:対象製品の実機を動画撮影した動画撮影報告書
甲第9号証の9:対象製品の実機のメカシスターンを表す図面

<上申書(平成25年5月17日付け)に添付>
甲第8号証の2の1:甲第8号証の1中の図1の拡大図
甲第10号証:JIS 家庭用ガス燃焼機器の構造通則(JIS S 2092-1991)平成3年8月31日 第1刷発行,財団法人日本規格協会 6ページ,19ページ

<第2弁駁書に添付>
甲11号証:試験報告書「逆止弁位置によるTotal圧力損失の差異」
甲12号証:「給水装置に係わる器具等関係規程・規則および審査基準(昭和58年7月改正)」社団法人 日本水道協会,追加事項3(昭和62年4月?昭和63年10月)

2.被請求人
被請求人は,第1答弁書,第2答弁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において,「本件審判請求は成り立たない,審判費用は審判請求人の負担とする,との審決を求める。」ことを答弁の趣旨とし,乙第1?11号証を提出して,次のように反論する。

答弁の概要
(1)本件発明の解釈
平成25年12月25日付けの訂正の請求では,平成24年10月19日付け訂正の請求でなした訂正と異なり,「上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作」をする「大気開放弁」につき,「電磁弁よりも上流側の圧力を検知することにより」との限定を付していない。
しかしながら,本件発明における大気開放弁は,かかる限定など無くとも,当然に当該弁を開閉させるために検知する1次圧は,電磁弁より上流側である。

(2)無効理由について
(2-1)無効理由1
本件訂正発明1と甲1発明とは,その構成が異なり,かつ,作用・効果の面でも異なるものであって,全く異なる技術思想であるといえ,本件訂正発明1は,甲1号証に記載されたものではない。

(2-2)無効理由2
本件訂正発明1と甲2発明とは,その構成が異なり,かつ,作用・効果の面でも異なるものであって,全く異なる技術思想であるといえ,本件訂正発明1は,甲2号証に記載されたものではない。

(2-3)無効理由3
本件訂正発明1と甲3発明とは,その構成が異なり,かつ,作用・効果の面でも異なるものであるから,本件訂正発明1は甲3発明と同一ではない。

(2-4)無効理由4
本件訂正をしても,審決の予告においてなされた無効理由4に対する判断は当てはまり,本件訂正発明1は,甲4発明に基づいて当業者が容易に想到することができるものではない。

(2-5)無効理由5
無効理由5は,請求項2に係る発明に対するものであるが,請求項2に係る発明は,本件訂正発明1の従属項であり,上記のように,本件訂正発明1に無効理由が存しない以上,請求項2に係る発明についても無効理由は存しない。

(2-6)無効理由7?12
甲8号証の1においては,ダイヤフラムの両面に差圧を発生する方法として(【0064】段落),検圧管分岐部と逆流防止室の間に逆止弁を入れて,その開弁圧で差圧を発生させることが記載されている(【0065】段落)にすぎず,電磁弁と逆流防止室の間に逆止弁を設けることは何ら記載されていない。
本件訂正発明1と甲8の1発明とでは,「電磁弁→逆止弁→大気開放弁(逆流防止室)」の配列の有無という実質的な構成の差異を有し,さらにはかかる構成の差異により作用効果の面でも全く異なるのであるから,両者は全く別の技術思想である。
甲第1,甲第2ないし甲第5号証に記載の「大気開放機能を有する弁装置」は,甲8の1発明における逆流防止装置とは異なる原理のものであって,周知技術としての適用の前提を欠くといえるし,また,本件技術分野においては,これらの構成要素の選択,配置にこそ特許性があるのであって,その配置の一部を取り出して,この配置は周知であるから,組み合わせれば容易であると言えるようなものではないのである。さらには,本件訂正発明1は,「電磁弁→第2の逆止弁→大気開放弁」の構成を採用することによって,かかる第2の逆止弁がオリフィスとして働き,上水道の負圧によって大気開放弁まで逆流してきた汚水をさらに給湯管側へ吸引させないという格別の作用効果を有するのであるから,甲8の1発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。
対象製品についてであるが,被請求人は,従来の給湯システムでは,汚水の逆流を防止できなかったことから,かかる従来の給湯システムを出発点として,本件特許発明をなしたものであり,逆止弁の配置を除いた構成を対象製品が有していることは被請求人も否定しない。
甲第1,甲第2ないし甲第5号証に記載の「大気開放機能を有する弁装置」は,対象製品にかかる発明におけるメカシスターンとは異なる原理のものであって,周知技術としての適用の前提を欠くといえるし,本件技術分野においては,これらの構成要素の選択,配置にこそ特許性があるのであって,その配置の一部を取り出して,この配置は周知であるから,組み合わせれば容易であると言えるようなものではないのである。

(2-7)無効理由13
本件訂正発明2は,甲第4号証に記載の発明から当業者が容易になし得た発明ではない。

証拠方法
<第1答弁書に添付>
乙第1号証:「自動湯張り型強制循環式風呂釜における逆流事故の発生」と題する書面
乙第2号証:実験報告書「逆流防止装置 圧力検知位置の違いよる圧力測定」 開発実験部 小林充紀
乙第3号証:実験報告書「逆流防止装置 圧力検知位置違いよる大気開放弁『開弁』領域について」 開発実験部 小林充紀

<第2答弁書に添付>
乙第4号証:特公平7-88978号公報
乙第5号証:特許第2841160号公報
乙第6号証:特許第3835277号公報
乙第7号証:特公平6-20425号公報
乙第8号証:平成9年審判第14067号審決

<口頭審理陳述要領書に添付>
乙第9号証:特開平2-256976号公報
乙第10号証:特開2001-133036号公報
乙第11号証:実験報告書「逆止弁における通水圧-差圧の関係について」 第二開発部 梅谷将史

第3 訂正請求について
1.訂正の内容
本件審判の手続において被請求人がした平成25年12月25日付けの訂正の請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は,特許第3845031号に係る明細書及び特許請求の範囲(以下「本件特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正しようとするものであり,その訂正の内容は,次のとおりである。(下線は訂正箇所。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲を
「【請求項1】 給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって,
前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と,
開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁と,
を備えた逆流防止装置において,
前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と,
前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する第2の逆止弁と,
を備えていることを特徴とする逆流防止装置。
【請求項2】
前記電磁弁と前記給湯管との間に配置され,前記給湯管の側の配管内の負圧を感知して前記配管内に大気を導入する負圧破壊装置を備えていることを特徴とする請求項1記載の逆流防止装置。」
と訂正する。

(2)訂正事項2
明細書中の段落番号【0013】及び【0014】を,
「【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記問題を解決するために,給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって,前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と,開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前期上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁と,を備えた逆流防止装置において,前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と,前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する第2の逆止弁と,を備えていることを特徴とする逆流防止装置が提供される。
【0014】
このような逆流防止装置によれば,第1の逆止弁および第2の逆止弁が異物の噛み込みなどで水密不良になっているときに,断水などで上水道が負圧になると,浴槽の汚水がその水頭圧により第1の逆止弁を介して大気開放弁まで逆流し,その汚水は上水道の負圧を受けて開弁した大気開放弁を介して大気に放出される。このとき,異物を噛み込んだ第2の逆止弁は,流れ絞り装置あるいはオリフィスとして働き,上水道の負圧によって大気開放弁まで逆流してきた汚水に対して給湯管側の方へ吸引するだけの吸引力は発生せず,実質的に,浴槽の汚水が上水道まで逆流することはない。このように,電磁弁と大気開放弁との間に第2の逆止弁を配置するだけで,給湯管側への汚水の逆流を実質的に完全に防止することができ,この逆流防止装置を適用した給湯システムの信頼性を大幅に向上させることができる。」
と訂正する。

2.訂正の適否について
(1)訂正事項1
訂正事項1は,「大気開放弁」について「開弁方向に付勢するためのスプリングを有」するとともに「上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」ことを限定するとともに,大気開放弁から浴槽へ向かう配管内に配置されて浴槽から大気開放弁の方向への流れを阻止する「少なくとも1つの逆止弁」について「一つのみ」配置される「第1の逆止弁」と限定し,また,電磁弁と大気開放弁の間に配置される「逆止装置」について「一つのみ」配置される「第2の逆止弁」と限定したものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,訂正事項1のうち「大気開放弁」についての訂正は,段落【0017】の「なお,大気開放弁12の構成および動作原理は,図4を参照して詳述した大気開放弁と同じである」なる記載,段落【0008】の「この1次圧は,電磁弁108から逆止弁109へ通過する配管内の通水圧(2次圧)より大きいため,ピストン116は弁体117を着座させる方向に付勢しているため,オーバフロー口115への通路は閉じた状態にある。」なる記載,段落【0004】の「ピストン116は,スプリング125によって接続部113,114側の空間とオーバフロー口115との間の通路を開く方向に付勢するように構成されている。」なる記載に基づくものである。
また,訂正事項1のうち「逆止弁」を「第1の逆止弁」とする訂正は,「逆止装置」を「第2の逆止弁」に訂正したことに伴い,2つの逆止弁を区別するための便宜上の訂正であり,「逆止装置」を「第2の逆止弁」とする訂正は,段落【0017】の「水比例弁5の下流側は,また,流量センサ7,電磁弁8,二つの逆止弁9,10を介して風呂の浴槽11に配管されており,逆止弁9と逆止弁10との間の配管には,大気開放弁12が配置されている。」なる記載及び図1に基づくものであり,「第1の逆止弁」及び「第2の逆止弁」が「一つのみ」配置されるという訂正は,段落【0017】の「水比例弁5の下流側は,また,流量センサ7,電磁弁8,二つの逆止弁9,10を介して風呂の浴槽11に配管されており,逆止弁9と逆止弁10との間の配管には,大気開放弁12が配置されている。」及び「この逆止弁9は,従来,浴槽11側に安全のために2個直列に配置した1個を利用することができ,」なる記載,段落【0032】の「また,従来,浴槽側にて安全のために2個設けていた逆止弁の1個を電磁弁と大気開放弁との間に配置するようにすれば,コスト上昇を伴わずに,逆流防止装置を実現することができる。」なる記載,及び図1に基づくものである。
さらに,請求項1に係る「を備えた逆流防止装置において,」の位置を変更する形式的訂正もなされた。
したがって,訂正事項1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲においてされたものであり,訂正事項1により,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は,訂正事項1に係る訂正に伴うものであって,特許請求の範囲の記載との整合性を図り,課題を解決するための手段を明確化したものであるので,「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり,また,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲においてされたものであって,訂正事項2により,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(3)請求人の主張について
請求人は,大気開放弁について,上水道の圧力低下がないときに,スプリングの開弁力に打ち勝つ手段が不特定であるが故に,その手段は広範なものとなる旨主張しているが,元々大気開放弁については上水道の圧力低下に応動することが特定されていただけであるから,その構成は願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内で広範なものが想定されていたのであって,その大気開放弁の構成を上記のとおり明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内で一部限定して具体化したことで,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲を越えて,新たな技術的事項を導入することにならないことは明らかである。
したがって,本件訂正は特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に違反するものということはできない。

3.むすび
以上のとおり,本件訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書き及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するので,適法な訂正と認める。

第4 本件特許発明
本件訂正は上記のとおり認められるので,本件特許の請求項1,2に係る発明は,その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである(以下「本件特許発明1」,「本件特許発明2」という。)。

「【請求項1】 給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって,
前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と,
開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁と,
を備えた逆流防止装置において,
前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と,
前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する第2の逆止弁と,
を備えていることを特徴とする逆流防止装置。
【請求項2】
前記電磁弁と前記給湯管との間に配置され,前記給湯管の側の配管内の負圧を感知して前記配管内に大気を導入する負圧破壊装置を備えていることを特徴とする請求項1記載の逆流防止装置。」

第5 無効理由に対する当審の判断
上記「第3」のとおり,本件訂正は認められるので,請求人の主張する無効理由6ないし13について判断する。

1.甲各号証の記載事項
1-1.甲第1号証(実願平2-79045号(実開平4-36551号)のマイクロフィルム)
ア 明細書第1ページ第17ないし18行
「本考案は浴槽等から上水道等への逆流を防止する水路の逆流防止装置に関するものである。」(下線は当審で付与,以下同様。)

イ 明細書第3ページ第11行ないし第7ページ第14行
「第1図は本考案の装置が用いられた水路の一例としての自動給湯風呂装置(2)を示し,該水路(5)は市水道等の給水源(4)と高位置に設置された浴槽(1)とを接続するものである。水路(5)には給湯加熱器(6)が介設される。
更に水路(5)には逆流防止装置(16)及び該逆流防止装置(16)の下流側において逆止弁(15)が,上流側において電磁弁(8)が各々装着される。水路(5)は逆止弁(15)の下流からはポンプ(10)を有する強制循環追焚回路(3)を共用している。
逆流防止装置(16)は第2図に詳細を示す様に水路(5)に装着され,該水路(5)を上流側水路(5a)と下流側水路(5b)とに分離するホッパー(20)を有する。
該ホッパー(20)は上孔(21)において上流側水路(5a)に,下孔(22)において下流側水路(5b)に各々接続される。
又ホッパー(20)は側孔(23)において大気開放のドレン路(18)に接続される。ドレン路(18)の容量はホッパー(20)の側孔(23)より上方の容量よりも大きく設計されており,ドレン路(18)の末端は逆止弁(19)を介して下流側水路(5b)に接続されている。又,側孔(23)には圧力作動弁(27)が設けられている。該圧力作動弁(27)は,ダイヤフラム(28)で2室に区画せられており,一方の室(29)は水圧を受けるよう上流側水路(5a)に接続され,他方の室(30)は大気開放となっている。そしてダイヤフラム(28)にはその変位と連動し,前記側孔(23)を開閉する弁体(31)が取り付けられている。(32)はダイヤフラム(28)を室(29)側へ押圧するバネである。
一方,上流側水路(5a)には,圧力作動弁(27)との接続部と上孔(21)との間に一次圧限度設定弁(25)が介設されている。該弁(25)は,バネ圧が前記圧力作動弁(27)のバネ(32)より若干強めのバネ(26)によって通水方向と逆に押圧されている逆止弁である。このバネ圧の差は圧力作動弁(27)の動作を確実にさせるためのものである。
(9)はコントローラで,電磁弁(8)やポンプ(10)等の制御をするものである。
以上の実施例に示した本考案の装置の作用を次に説明する。
すなわち浴槽(1)に給湯する場合,開始スイッチ(図示せず)を閉じる。
そして,コントローラ(9)の指示により,電磁弁(8)が開かれる。
すると,上流側水路(5a)に水道圧がかかる。そしてまず,バネ圧の弱い圧力作動弁(27)が作動する。すなわち,室(29)にかかった水圧によりバネ(32)が押し縮められ,弁体(31)が側孔(23)を閉じる。次いで一次圧限度設定弁(25)が作動する。すなわち,水圧によって弁(25)が押され,ホッパー(20)へ湯(給湯加熱器(6)によって加熱されている)が流れるのである。上孔(21)からホッパー(20)内に流れ込んだ湯は下孔(22)から下流側水路(5b)を通って浴槽(1)に供給される。このとき弁体(31)は閉じており,湯がドレン路(18)に流れ出ることはない。
次に給湯が止まった時について説明する。すなわち,浴槽(1)が満水になって給湯を停止する時や給水源(4)が断水した時である。
このときは水道圧がかからなくなるため,一次圧限度設定弁(25),圧力作動弁(27)共にバネに押されて弁体が作動する。圧力作動弁(27)の弁体(31)は側孔(23)を開く。すると,ホッパー(20)内に溜まっていた側孔(23)より上方の湯はドレン路(18)に流れ出し,ホッパー(20)は大気と連通される。このときドレン路(18)に流れ出した湯は器具外には流れ出さない。ドレン路(18)に溜まった水は,浴槽(1)が下位にあれば浴槽(1)に流れていき,浴槽(1)が上位にあれば強制循環追焚回路(3)のポンプ(10)運転時に回路内に吸い込まれ,次回給湯時迄にはドレン路(18)は空となるのである。
逆止弁(15)の故障時は,浴槽(1)が逆流防止装置(16)より上位にあっても浴槽水がドレン路(18)に逆流するだけで,上流側水路(5a)には逆流しない。」

ウ 第1図,第2図


エ 上記イ及び第2図によれば,側孔23は圧力作動弁27の弁体31が室29の水圧とバネ32の付勢力により開閉するものであり,側孔23が開くことでホッパー20は大気と連通されるので,ホッパー20,側孔23,圧力作動弁27,室29,弁体31,バネ32からなる機構は大気開放弁ということができる。また,バネ32は大気開放弁を開弁方向に付勢するものである。この大気開放弁と浴槽1を繋ぐ下流側水路5bには逆止弁15が1つ配置されている。なお,逆止弁19はドレン路に設けられているものであって,大気開放弁と浴槽を繋ぐ下流側水路5bに設けられているものではない。さらに,上流側水路5aに設けられる一次圧限度設定弁25は一つである。

上記記載事項,認定事項及び図示内容を総合して,本件特許発明1の記載ぶりに則って整理すると,甲第1号証には,次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「水路5から浴槽1への配管の途中に設けられて前記浴槽1から上水道への逆流を防止する装置であって,
前記水路5から前記浴槽1へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁8と,
開弁方向に付勢するためのバネ32を有し,給湯を停止する時や給水源4が断水した時,前記電磁弁8より前記浴槽1の側のホッパー20内の水を大気に連通するよう開閉動作する大気開放弁と,
を備えた装置において,
前記大気開放弁から前記浴槽1へ向かう下流側水路5bに一つ配置されて前記浴槽1から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する逆止弁15と,
前記電磁弁8と前記大気開放弁との間の上流水路5aに一つ配置される一次圧限度設定弁25を備えている装置。」

1-2.甲第2号証(実願平2-71754号(実開平4-30393号)のマイクロフィルム)
ア 明細書第2ページ第10ないし19行
「産業上の利用分野
本考案は,上水道を浴槽等の水槽に直結して給水する給水装置に用いる排水機構付きバキユームブレーカに関する。
従来の技術
上水道を浴槽等の水槽に直結して給水する場合には,上水道の水圧が下がった時に水槽内の水が上水道内へ逆流しないように,上水道と水槽の間に空間を構成することが,日本水道協会の定めた技術基準により義務づけられている。」

イ 明細書第7ページ第19行ないし第12ページ第19行
「実施例
以下,本考案の一実施例を第1図乃至第3図に基づいて説明する。
本実施例のバキユームブレーカ11の構造を第2図及び第3図よつて説明すると,12はボデイであつて,その内部に,給湯管路2に接続される水平方向の流通路13が透設されており,そのボデイ12の凹孔14の形成された上面に,空気流入孔16を上面に形成し,かつ,それに連通する上下方向の弁口17を形成した上板15が,その弁口17の回りに突成した筒部18を上記の凹孔14に水密に嵌めて取り付けられ,その筒部18内が上部弁室20となつており,上記の流通路13の上面に,その上部弁室20の底面に開口する液体出入孔21が形成されている。その上部弁室20内には,上記の弁口17を開閉する上部弁体23が上下摺動自由に収容されており,この上部弁体23は,受圧板24の上面側に,4枚の板片25が十字に組まれて突設されて,弁口17内に緊密に嵌められているとともに,下面側にも同じく十字に組まれた4枚の板片26が突設されて筒部18内に緊密に嵌められていて,夫々,板片25,26の間に縦方向の流通空間25a,26aが形成されている。そして,受圧板24の上面外周部に,弁口17の弁座17aに接離して開閉する弾性リング28が装着されている。
上記はバキユームブレーカ本来の機能を果たす部分の構造であつて,流通路13の下面側に排水機構30が構成されている。流通路13の下面には装置孔31が開口され,ボデイ12の下面に当てた下板32との間に下部弁室33が形成されており,その下板32に,下面に開口した排水孔35と,上下方向の弁口36とが形成されている。その装置孔31の口縁にはダイヤフラム38が張設され,その中心の弁体取付部42に下部弁体39が嵌着されており,その下部弁体39の下端部は上記の弁口36に緊密に嵌合する筒部40であつて,その周面に一定間隔をおいて開口部41が形成されている。また,上記したダイヤフラム38の弁体取付部42の下面外周部が,上記した弁口36の弁座36aに接離して開閉するようになつており,ダイヤフラム38と下板32との間に装着された圧縮コイルばね44の弾力で,下部弁体39に開弁方向である上方への移動力が付勢され,下部弁体39の上面外周が装置孔31の口縁に当たつて上動が規制されている。さらに,流通路13の下面の装置孔31を開口した部分の下流側には,ダイヤフラム38の下面側において下部弁室33と連通する排水路46が形成されている。
そして,このバキユームブレーカ11が,第1図に示すように,給湯装置の給湯管路2の途中の第1と第2の逆止弁5,7の間において,第4,5図に示した従来のバキユームブレーカ6に代わつて接続されて使用される。
次に,作動を説明する。
電磁開閉弁4を開くと,逆止弁5,7並びにバキユームブレーカ11の流通路13を通つて浴槽8に給湯される。このとき,第3図に示すように,流通路13内の水圧が液体出入口21を通して上部弁体23の受圧板24に作用してこれを押し上げ,弾性リング28が上部弁室20の弁口17の弁座17aに押し付けられることによつて,弁口17すなわち空気流入孔16が閉じている。同時に,その水圧が下部弁体39並びにダイヤフラム38の上面に作用することにより,圧縮コイルばね44を弾縮し,かつ,ダイヤフラム38を弾性変形させつつ下部弁体39が下動し,ダイヤフラム38の弁体取付部42が下部弁室33の弁口36の弁座36aに押し付けられることによつて,その弁口36すなわち排水孔35が閉じている。
一方,給湯を停止するに当たつて電磁開閉弁4を閉じると,流通路13の圧力が下がることにより,第2図に示すように,下部弁体39が圧縮コイルばね44の復元弾力で上動して下部弁室33の弁口36すなわち排水孔35が開き,給湯管路2の湯のうちの電磁開閉弁4と第2の逆止弁7の間の部分が矢線で示すように排水路46を通して排水孔35側へ吸引される。これとともに,上部弁体23が自重により下がつて上部弁室20の底面に当たつた状態となると,弁口17が開いて,空気流入孔16からの空気が,上部弁体23の上側の流通空間25aを通り,さらに下側の流通空間26aから液体出入孔21を通つて,流通路13に流入し,上記部分の湯が排水路46から下部弁体39の開口部41を通つて排水孔35から排水され,これに代わつて空気が流入して上記の部分が空間となり,前述した技術基準が満たされる。
すなわち,本実施例のバキユームブレーカ11は排水機構30が備えられていて,給湯停止時において電磁開閉弁4を閉じると,排水機構30により排水されて空気が導入されるから,浴槽8の水面より高くして設置する必要がなく,従つて,それを組み込んだ給湯器ユニツト9の設置位置を低くすることができるとともに,2階の浴槽への給湯も可能となる。また,排水機構30が一体的に設けられた小嵩な構造であるから,給湯器ユニツト9自体も小型にまとめられる。しかも,その排水機構30は,電磁弁を用いることなく水圧の高低により開閉するようになつているから,電気的トラブルによる誤作動を招くおそれがなく,安心して使用することができる。」

ウ 第1図,第2図


エ 上記イ及び第1図の記載によれば,電磁開閉弁4,第1と第2の逆止弁5,7,バキユームブレーカ11は,電磁開閉弁4と第2の逆止弁7の間の部分の湯を排水することにより,浴槽8からの上水道側への汚水の逆流を防止する装置ということができる。また,バキユームブレーカ11の圧縮コイルばね44は下部弁体39を開弁方向である上方へ付勢するものである。さらに,給湯管路2に配置される第1の逆止弁5及び第2の逆止弁7はそれぞれ一つである。

上記記載事項,認定事項及び図示内容を総合して,本件特許発明1の記載ぶりに則って整理すると,甲第2号証には,次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。

「浴槽8への給湯管路2に設けられて前記浴槽8から上水道側への汚水の逆流を防止する装置であって,
前記給湯管路2の前記浴槽8へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁開閉弁4と,
開弁方向に付勢するための圧縮コイルばね44を有し,前記電磁開閉弁4を閉じると前記電磁開閉弁4と第2の逆止弁7の間の前記給湯管路2内の水を排水し空気を導入するよう開閉動作するバキユームブレーカ11と,
を備えた装置において,
前記バキユームブレーカ11から前記浴槽8へ向かう前記給湯管路2に一つ配置されて前記浴槽8から前記バキユームブレーカ11の方向への流れを阻止する第2の逆止弁7と,
前記電磁開閉弁4と前記バキユームブレーカ11との間に一つ配置される第1の逆止弁5を備えている装置。」

1-3.甲第3号証(特開2003-239334号公報)
ア 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】 浴槽や洗濯槽等の貯水槽に給水する設備では,貯水槽から上水管に逆流しないようにしておかなければならない。ここでいう上水管とは水道圧力が作用している水路をいい,給湯器内の加熱用水路も水道圧力が作用しているので上水管である。上水を給湯器で加熱して浴槽に給水する場合,給湯器と浴槽との間に逆流防止装置を設けて,浴槽に貯められている水が給湯器に逆流しないようにする必要がある。浴槽に貯められている水が給湯器に逆流しかねない場合には,2種類のケースが存在する。第1のケースは上水が断水して上水管内圧力が低下する場合であり,上水管内圧力が負圧となれば貯水槽から逆流しかねない。第2のケースは浴槽が高い位置に設置されている場合であり,断水しないまでも上水管内圧力が低下したときに浴槽から逆流しかねない。」

イ 段落【0013】?【0016】
「【実施例】 図1において,図示32は入水口であり,上水管(この場合給湯器)に接続される。図示50は出水口であり,浴槽に接続される。浴槽側の開口は浴槽に貯められた湯面よりも低い位置にある。浴槽は逆流防止装置の設置階よりも階上に設置されることもあれば,階下に設置されることもある。入水口32と出水口50の間には2個の逆止弁38,46が直列に挿入される。2個の逆止弁38,46を直列に用いることによっていずれか一方の逆止弁の作動が不調となって逆止作用が得られなくなっても(逆止弁に異物が噛みこむことによって逆止作用が得られなくなることがある)上水管に逆流しないようになっている。図1と2において,逆止弁38,46等は逆止位置と開放位置で図示され,中心線よりも右側では逆止位置を示し,左側では開放位置を示している。この逆流防止装置では,逆流防止の確実性をさらに高めるために,直列に配置された2個の逆止弁間39を大気に開放する大気連通口42を付加している。大気連通口42は大気開放弁41で開閉され,大気開放弁41はダイヤフラム40に取付けられている。ダイヤフラム40で区画される一方の室52は逆止弁38の上流36に連通し,他方の室54は逆止弁38の下流39に連通する。大気開放弁41と逆止弁38は入水口32に対して並列に配置されており,独立に動作することができる。なお,図示34は電磁弁であり,48は流量センサである。大気連通口42の下流には後記する逆流水を受入れてオーバフロー管58から排水するオーバフロータンク56が設けられている。
【0014】この逆流防止装置は下記のように作動する。
(正常時:入水口32の圧力が出水口50の圧力よりも高い場合)通常時の給水停止時には,貯水槽から排水されて第2逆止弁46よりも下流が大気に開放されていても,その上流には上水圧力がかかっており,第1逆止弁38の上流36と,第1逆止弁38の下流で第2逆止弁46の上流(逆止弁間39)の圧力は上水管圧力に等しい。逆止弁38を水が流れないので逆止弁38の上下で圧力差は生じない。このためにダイヤフラム40の上室52と下室54の圧力は等しくなる。ダイヤフラム40は,わずかな力で大気開放弁41で大気連通口42を閉じる側に付勢されており,ダイヤフラム40の上室52と下室54の圧力が等しいときには大気連通口42が閉じられている。上水は大気連通口42から漏れることはない。給水時には,電磁弁34が開くために,第1逆止弁38の上流36の圧力が高まる。この結果,大気開放弁41が大気連通口42に強く押付けられ,シール力が高められる。次いで第1逆止弁38と第2逆止弁46が開いて給水が開始される。第1逆止弁38と第2逆止弁46が開くにさきだって大気連通口42は大気開放弁41によって閉じられるために,上水は大気連通口42から漏れることはない。入水口32の圧力が出水口50の圧力よりも高い正常時には,給水の開始時にも給水の停止時にも水が大気連通口42から漏れることはなく,漏れ出る水に対策しておく必要はない。
【0015】給水後に断水して入水口32に負圧(大気圧以下の圧力)が加わったとき:装置が正常であれば,2個の逆止弁38,46によって2重に逆流が防止されている。ダイヤフラム40は変形して大気連通口42が開いて第1逆止弁38の下流39の圧力は大気圧となるが,第1逆止弁38の上流36の圧力は負圧であり,第1逆止弁38は逆流の発生を防止する。2個の逆止弁38,46の双方とも作動不良になって閉じないような事態が発生したとする。このような事態がおきると,ダイヤフラム40は変形して大気連通口42が開く。この場合,第1逆止弁38は閉じていないために,第1逆止弁38の下流39にも負圧がかかる。第1逆止弁38の下流39に負圧がかかっても上流の負圧の方が大きい(真空に近い)ので,圧力差によってダイヤフラム40は変形して大気連通口42が開く。第1逆止弁38の下流39に負圧がかかると,その負圧は,大気連通口42から大気を吸引し,出水口50から水を吸引しようとする(第2逆止弁46も作動不良で閉じない)。この場合,大気連通口42の開口面積が大きく,大気の吸引抵抗の方が水の吸引抵抗よりもはるかに小さい。第1逆止弁38の下流39に負圧がかかると,優先的に大気連通口42から大気が吸引され,出水口50から水を吸引することはほとんどない。このように,2個の逆止弁38,46の双方とも作動不良になり,入水口32に負圧が作用しても,水が出水口50から入水口32に逆流することはない。
【0016】出水口50が浴槽に接続されており,その浴槽が階上に設置されており,浴槽側の給水管の開口が湯面よりも下方にあると,出水口50には正圧がかかる。上水圧力が正常にあれば,入水口32の正圧の方が高いために,逆流することはない。断水しないまでも上水の圧力が低下すると,入水口32の圧力が出水口50の圧力よりも低下することがある。装置が正常であれば,2個の逆止弁38,46によって2重に逆流が防止されている。2個の逆止弁38,46の双方とも作動不良になって閉じないときに入水口32の圧力が出水口50の圧力よりも低下すると,出水口50の高い圧力がダイヤフラム40を変形させて大気連通口42を開ける。このために,出水口50からの逆流水は大気連通口42から排出され,出水口50から入水口32に逆流することはない。大気連通口42から排出された水は,オーバーフロータンク56からオーバーフロー配管58によってオーバーフローする。このオーバーフローは,装置の故障時にのみ生じる異常現象であり,オーバーフローを想定して配水管を接続しておく必要はない。装置の故障時に水が溢れ出すことはやむを得ないからである。逆流防止装置は戸外またはパイプハウスに設置されており,装置故障時に水があふれることがあっても,最悪事態にはならないように配慮されている。」

ウ 段落【0018】
「上記したように本実施例の逆流防止装置は,入水口32が上水管に接続され,出水口50が貯水槽に接続され,上水管と貯水槽との間に設置されて用いられ,出水口50から入水口32に水が逆流することを防止するために用いられる。入水口32に対して逆止弁38と大気開放弁41が並列に配置されており,大気開放弁41はダイヤフラム40に形成されており,ダイヤフラム40で区画される一方の室52は逆止弁38の上流36に連通し,他方の室54は逆止弁38の下流39に連通している。また,2個の逆止弁38,46が直列に接続されており,逆止弁間39を大気に開放する大気開放弁41を有し,逆止弁38と大気開放弁41は独立に動作可能であり,給水中に逆止弁38の上流圧力が下流圧力よりも高い間は大気開放弁41が閉じる。電磁弁34が開いて正圧が作用すると,大気開放弁41が先に閉じ(あるいは最初から閉じている)次いで逆止弁38が開くために,給水の開始時に水が大気連通口42から漏れることがない。さらに,逆止弁38と大気開放弁41は独立に動作可能であり,入水口32の圧力が出水口50の圧力よりも高い間,大気開放弁41が閉じられている。以上によって給水の開始時と停止時に大気開放弁から水が漏れることがなく,給水に大気が混入せず,逆流の発生を確実に防止することに成功している。」

エ 図1


オ 上記イの「32は入水口であり,上水管(この場合給湯器)に接続される。図示50は出水口であり,浴槽に接続される」によれば,逆流防止装置は給湯器の給湯管から浴槽への配管の途中に設けられ,浴槽からの逆流を防止するものである。また,「大気開放弁41はダイヤフラム40に取付けられ」,「ダイヤフラム40は,わずかな力で大気開放弁41で大気連通口42を閉じる側に付勢され」るものであるので,大気開放弁は閉弁方向に付勢されるものといえる。

カ 上記ウの「2個の逆止弁38,46が直列に接続されており」によれば,逆流防止装置の逆止弁38,46はそれぞれ一つ設けられるものと認められる。

上記記載事項,認定事項及び図示内容を総合して,本件特許発明1の記載ぶりに則って整理すると,甲第3号証には,次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。

「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽からの逆流を防止する逆流防止装置であって,
前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁34と,
閉弁方向に付勢されるとともに,入水口32の圧力が出水口50の圧力よりも低下するとき,出水口50からの逆流水を大気連通口42から排出する一方,入水口32の圧力が出水口50の圧力よりも高い正常時には閉じられている大気開放弁41と,
を備えた逆流防止装置において,
前記大気開放弁41から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁41の方向への流れを阻止する第2逆止弁46と,
前記電磁弁34と前記大気開放弁41との間に一つ配置される第1逆止弁38を備えている逆流防止装置。」

1-4.甲第4号証(実願平2-35916号(実開平3-124155号)のマイクロフィルム)
ア 明細書第2ページ第1ないし5行
「本考案は,給湯器の湯を給湯管路から風呂釜の循環追い焚き管路に落とし込んで風呂の自動湯張りを行う自動風呂釜に使用され,風呂側から給湯器側への逆流を防止する自動風呂釜の逆流防止装置に関するものである。」

イ 明細書第7ページ第10行ないし第12ページ第14行
「〔実施例〕
以下,本考案の一実施例を図面に基づいて説明する。なお,本実施例の説明において,従来例と同一の部分には同一符号を付してその重複説明は省略する。第1図には本考案に係る自動風呂釜の逆流防止装置の一実施例が示され,また,第2図には同装置を組み込んだ自動風呂釜のシステム図が示されている。
第1図において,装置本体のハウジング15には第1の逆止弁13と,開閉弁として機能する電磁弁10と,第2の逆止弁12とが直列に接続されて弁直列接続体を構成しており,第1の逆止弁13の上流側の管路である連通通路26にはバキュームブレーカ14が組み込まれている。また,ハウジング15には第1の作動室16と第2の作動室17とが形成されている。第2図に示すように,第1の逆止弁13の入口側の通路18は給湯管路7に接続されており,第1の逆止弁13の出口側には電磁弁10が設けられており,電磁弁10の出口側は第2の作動室17に通じている。第2の作動室17の出口側には当該電磁弁10よりも低位側に第2の逆止弁12が設けられ,この第2の逆止弁12の出口側の通路20は循環追い焚き管路4に接続されている。また,前記第1の作動室16は連通通路26によって逆止弁13の入口側の通路18に接続されている。
前記第1の作動室16と第2の作動室17とは弁体21を介して隔絶されている。弁体21は鉄板等の剛性を有するディスク22と,このディスク22を第1の作動室16の側壁に接続するダイアフラム23とによって構成されている。前記第2の作動室17の底面側からはオーバーフロー管24が上方に向けて突出しており,このオーバーフロー管24の突出先端面は前記弁体21のディスク22に対向当接されている。そして,第2の作動室17の底面と弁体21との間には弁体21を常時上方(開口する側)に付勢するスプリング29が介設されている。オーバーフロー管24の下部側は排水管27に接続される。本実施例では,第1の作動室16と,第2の作動室17と,弁体21と,オーバーフロー管24と,スプリング29は,負圧作動弁28を構成しており,この負圧作動弁28は第1の作動室16の圧力によって弁体21に作用する力が第2の作動室17の圧力によって弁体21にかかる力と,スプリング29の力を合わせた力よりも小さくなったときのみ,弁体21がオーバーフロー管24の上端開口25を開くように構成されている。このスプリング29の付勢力は任意の値に設計できるが,本実施例では第1の作動室16の圧力と第2の作動室17の圧力が等圧になったときに弁体21を開くようにスプリング29の付勢力を設定している。すなわち,第1の作動室16と第2の作動室17とが等圧になると,弁体21の受圧面積は第2の作動室17側よりも第1の作動室16側が大きいから,第1の作動室16の圧力によって弁体21を閉方向に作用する力が第2の作動室17の圧力によって弁体21を開方向に作用する力よりも大きく,弁体21は閉状態を維持しようとする。ところが,スプリング29の付勢力が弁体21を開く方向に加わるから弁体21を閉じる力に打ち勝ち,弁体21は開かれるのである。
本実施例は上記のように構成されており,以下,その作用を説明する。浴槽1の自動湯張り時には,電磁弁10が開かれ,給湯器からの湯は給湯管路7から第1の逆止弁13,電磁弁10,第2の逆止弁12を順に通って循環追い焚き管路4に入り,さらに同管路4を経て浴槽1に入り込む。この時,湯が第1の逆止弁13と電磁弁10を通る際の圧力損失により,電磁弁10の出口側,つまり,第2の作動室17の圧力よりも上流側の連通通路26に通じている第1の作動室16の圧力の方が高くなり,この第1の作動室16と第2の作動室17との圧力差により,弁体21はオーバーフロー管24の上端開口25をより確実に閉鎖する。この弁体21による前記オーバーフロー管24の確実な閉鎖により給湯管路7側から循環追い焚き管路4にかけて水道圧力がそのまま加わり,この水道圧力により給湯器の湯は浴槽1に落とし込まれ,速いスピードで浴槽1への自動湯張りが可能となる。
第2図に示すように,浴槽1がバキュームブレーカ14よりも充分に高い位置,例えば,家庭の2階等に設置された場合であって,かつ,逆止弁12,13と電磁弁10がまれにではあるが故障し,その上,断水が生じて給湯管路7内の圧力が負圧化したような場合には,第1の作動室16の圧力が低下し,第1の作動室16の圧力と第2の作動室17の圧力との差圧が変化する。そして,第2の作動室17の圧力によって弁体21にかかる力とスプリング29によって弁体21にかかる力よりも第1の作動室16の圧力によって弁体21に働く力が小さくなり,第3図に示すように,弁体21はオーバーフロー管24の上端開口25を開放する。本実施例では第1の作動室16の圧力が低下して第2の作動室17の圧力と等圧になったときに,弁体21が開き,同時に,バキュームブレーカ14が開いて空気が給湯管路7側に吸い込まれ,給湯管路7の大気開放が行われる。そして,このとき,浴槽1からの湯水は循環追い焚き管路4から第2の逆止弁12を通って電磁弁10よりも低位に位置する第2の作動室17内に入り込む。この湯水の逆流により,第2の作動室17内の水位は徐々に高くなるが,この逆流の水位がオーバーフロー管24の上端に達した時に,逆流湯水はオーバーフロー管24内に入り込み,排水管27を通って速やかに排水され,給湯管路7側と循環追い焚き管路4側との縁切りが行われる。したがって,浴槽1側の湯水が給湯管路7側に逆流することは全くない。」

ウ 第1図


エ 上記ア,イによれば,逆流防止装置は給湯管路7から浴槽1への配管の途中に設けられて前記浴槽1から給湯器側への逆流を防止する逆流防止装置ということができる。また,逆流防止装置の第1の逆止弁13及び第2の逆止弁12はそれぞれ一つ設けられるものと認められる。

オ 上記イの「第1の作動室16の圧力と第2の作動室17の圧力が等圧になったときに弁体21を開く」によれば,負圧作動弁28は第1の作動室16の圧力と第2の作動室17の圧力が等圧になるまでは閉じた状態を保つものと認められる。

上記記載事項,認定事項及び図示内容を総合して,本件特許発明1の記載ぶりに則って整理すると,甲第4号証には,次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。

「給湯管路7から浴槽1への配管の途中に設けられて前記浴槽1から給湯器側への逆流を防止する逆流防止装置であって,
前記給湯管路7から前記浴槽1へ向かう水の流れを開閉する電磁弁10と,
開弁方向に付勢するためのスプリング29を有し,給湯管路7内の圧力が負圧化したような場合,前記電磁弁10より前記浴槽1の側の第2作動室17内の水をオーバーフロー管24から排水する一方,第1の作動室16の圧力と第2の作動室17の圧力が等圧になるまでは閉じた状態を保つ負圧作動弁28と,
を備えた逆流防止装置において,
前記負圧作動弁28から前記浴槽1へ向かう前記配管内に一つ配置されて前記浴槽1から前記負圧作動弁28の方向への流れを阻止する第2の逆止弁12と,
前記電磁弁10の上流側に一つ配置された第1の逆止弁13を備えている逆流防止装置。」

1-5.甲第5号証(実願平3-83521号(実開平5-36243号)のCD-ROM)
ア 段落【0008】
「【実施例】
以下,本考案の実施例を図1に基づき説明する。
図1において,1は給湯機,2は熱交換器3の上流側に接続した給水栓28及び水量センサ4を設けた給水路である。5は熱交換器3の出口側に設けた湯温検出用のサーミスタである。6は熱交換器3の下流側となる給湯水路であり,途中に水路開閉用の開閉弁7が設けられてある。8は給湯水路6から分岐し浴槽24と接続する注湯水路であり,途中に水路の開閉を行なうとともに水路の開度を調整する注湯制御弁9と,逆止弁10,11と,通水時に閉弁し止水時に開弁する大気開放弁12とが設けられている。13はバイパス水路で,給水路2と給湯水路6の開閉弁7の下流側に接続されており,途中にバイパス水路13開閉用の電磁弁14及び水流検出装置15が設けられている。尚,電磁弁14の代わりに,水路の開閉及び水量調整可能な流量制御弁を用いてもよい。16は,バーナ19に接続するガス通路で,ガス栓29,ガス電磁弁17a,17b,ガス比例弁18を有する。20は燃焼用のフアンである。27はコントローラで,水量センサ4,サーミスタ5,開閉弁7,注湯制御弁9,電磁弁14,水流検出装置15,ガス電磁弁17a,17b,ガス比例弁18,フアン20等と電気的にされていて,給湯機の運転制御を行なうものである。21,22は給湯水路6の先端に設けられたシャワー栓と給湯栓,23は浴槽24に設けられた注湯の接続口,25は浴槽24の水位検出装置,26はリモートコントローラである。」

イ 図1


1-6.甲第6号証(特開2000-304144号公報)
ア 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は給湯機に使用する縁切り装置に関するものである。」

イ 段落【0017】
「【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態を,図面により詳細に説明する。図1は,本発明の一実施形態に係る縁切り装置の第1の実施例を示す構成図であり,開弁状態を図示している。上記縁切り装置は,図示のように,縁切り装置逆流水側のボディ1と給水源側のボディ3を固定し,縁切りしたい水の配管位置を給水源配管に対し同軸上に配置し,又,排水口を給水源配管に対し直行する様に配置し,内部にピストン5を配置構成している。そのピストン5のボディ1側にパッキン8をボディ3側に受圧部6をリテーナー4とネジ9とで固定配置し,パッキン8側に受ける力ベクトルと受圧部6側に受ける力ベクトルが,対向するように配置され,かつ開弁付勢処置であるバネ7が受圧部側に受ける力ベクトルに対向するように配置されている。・・・」

ウ 段落【0033】
「図14は,本発明の一実施例としての縁切り装置を給湯機に取り付けたときの構成図である。給湯21側からお湯はり経路を分岐し,電磁弁22後に本発明の縁切り装置23を取り付けその後に逆止弁24が取り付く。尚,縁切り装置23は逆止弁の後でも良い。又本図はお湯はり機能付きのみの給湯機を図示しているが,お湯はり機能付きの遠隔追焚給湯機でも対応できる。」

エ 図14


1-7.甲第8号証の1(特開平7-103358号公報)
ア 段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は,浴槽等から上水道等への逆流を防止する水路の逆流防止装置に関する。」

イ 段落【0027】?【0047】
「【実施例】以下,添付図に示す実施例を参照して,本発明に係る逆流防止装置Aを説明する。
【0028】なお,本実施例は,逆流防止装置Aを,いわゆる1缶2回路式給湯機に用いた場合である。
【0029】まず,1缶2回路式給湯機の構成について,図1を参照して簡単に説明すると,同1缶2回路式給湯機は,実質的に,加熱部Bの一端を給水源に,他端をシャワーノズルや台所の蛇口等の給湯栓に接続して給水を加熱する給湯路10と,加熱部Bと風呂Cとを往路管11aと戻し管11bで中途に循環ポンプPを設けて接続して循環により浴湯を加熱する循環路11と,前記給湯路10と循環路11とで共有する加熱フィン12を具備する単一の熱交換器Dとからなる。
【0030】なお,図1におけるその他の構成について説明すると,14は燃焼バーナ,15は電磁弁,16は比例弁,17は切替弁,18はバーナ14へ空気を送るための送気ファンである。
【0031】上記した構成を有する1缶2回路式給湯機において,本発明の要旨をなす逆流防止装置Aは,給湯路10と循環路11とを連絡する連絡水路13の中途に設けられている。
【0032】以下,逆流防止装置Aの構成を,図1及び図6を参照して具体的に説明する。
【0033】図1に示すように,連絡水路13の中途に,凹状の下部ケーシング20と,平板状の上部ケーシング21とからなる逆流防止ケーシング22が取付けられており,同逆流防止ケーシング22内には,逆流防止室23が形成されている。
【0034】逆流防止室23は,その上部ケーシング21に筒状流入部24を設けるとともに,同筒状流入部24の略直下をなす位置で,下部ケーシング20の側壁に筒状流入部25を設けている。
【0035】そして,筒状流入部24は,連絡水路13の上流側水路13aと連通しており,一方,筒状流出部25は連絡水路13の下流側水路13bと連通している。
【0036】また,逆流防止ケーシング22は,その底板22aの一側隅部に大気と連通する大径かつ筒状の大気開放口26を具備するとともに,同大気開放口26の上方に,ダイヤフラム取付開口27を設けており,同ダイヤフラム取付口27には,本発明の密閉面に対応する可撓性を有するダイヤフラム28が水密状態に装着されている。
【0037】そして,同ダイヤフラム28の上部には,上部ケーシング21の上面に取付けた蓋体29によって圧力室30が形成されており,同圧力室30は,圧力伝達水路31を介して,給湯路10と連絡している。
【0038】従って,圧力室30内には,給湯路10の水圧,即ち,上流側水圧P1が伝達され,同上流側水圧P1がダイヤフラム28の上面側密封面の全体にわたって作用することになる。
【0039】一方,ダイヤフラム28の下面側密封面の全体には,逆流防止室22内に充満される水の水圧,即ち,逆流防止室22の内圧P2が作用することになる。
【0040】さらに,このダイヤフラム28と大気開放口26との間には,変動する上流側水圧P1と内圧P2との相対関係によって上下するダイヤフラム28の動きに連動して,開放口26及び後述する大気連通口34を開閉する大気開閉弁32が介設されている。
【0041】以下,図6を参照して,大気開閉弁32の構成について説明する。
【0042】図中,33は筒状の開放口開閉用弁体であり,本発明における大気開放口開放手段に対応し,同弁体33は,その上端に小径の大気連通口34を設けている。
【0043】また,開放口開閉用弁体33は,その下部周縁に環状シール部35を設けており,通常使用状態では,環状シール部35は大気開放口26を水密状態に閉塞している。
【0044】また,大気連通口34の上端には,本発明における大気連通口開閉手段に対応する連通口開閉用弁体36が当接状態に配設されている。
【0045】連通口開閉用弁体36とダイヤフラム28を取付けたダイヤフラム支持体37との間には,閉弁方向付勢用スプリング38が介設されている。
【0046】一方,開放口開閉用弁体33とダイヤフラム支持筒37との間には中間スプリング受板39が介設されており,同中間スプリング受板39と開放口開閉用弁体33との間には,連通口開閉用弁体36を開方向に付勢する本発明における大気連通口開付勢弾性体である開弁方向付勢用スプリング40が介設されている。
【0047】また,開放口開閉用弁体33の上部外周面には,スプリング受け支持スリーブ41が一体的に取付られており,同支持スリーブ41の上端に設けたフランジ42と底板22aとの間には,本発明における大気開放口開付勢弾性体である開弁方向付勢用スプリング43が介設されている。」

ウ 段落【0049】?【0057】
「ついで,上記構成を有する逆流防止装置Aの作動について,図1?図5を参照して具体的に説明する。
【0050】(2階に浴槽Cが設置されている場合)図1に示すように,給湯路10の圧力が正常な場合,上流側水圧P1と逆流防止室22の内圧P2との関係は,P1>P2>0であるから,大気連通口34と大気開放口26とは開かない。
【0051】図2に示すように,断水または他水栓使用により上流側水圧P1が低下すると,P1=P2付近で,開弁方向付勢用スプリング40の付勢力によって大気連通口34が開き,大気連通口34からドレンが流出するが,逆流防止室内圧P2は,P2>0であるから大気開放口36は開かない。
【0052】この状態が他水栓使用によるものである場合,上流側水圧P1はそれ以上低下せず,大気連通口34からのドレン流出により低下する逆流防止室内圧P2は,やがて上流側水圧P1以下となるから,大気連通口34が閉じてドレン流出も終了する。
【0053】一方,図2の状態が断水によるものである場合,図3に示すように,上流側水圧P1がさらに低下するため,大気連通口34は閉まらず,大気連通口34からのドレン流出により逆流防止室内圧P2も低下し続け,やがて,逆流防止室内圧P2が,P2=0 となる付近で,大気開放口開付勢弾性体としての開弁方向付勢用スプリング43の付勢力によって大気開放口26が開く。
【0054】大気開放口26が開くと,逆流防止室23内の汚水が大気開放口26から排出されるとともに,大気開放口26から吸引された大気が上流側水路13aに吸引されるため,上流側水路13aへの汚水の逆流は発生しない。
【0055】(浴槽Cが一階等の下方に配置されている場合)図4に示すごとく,給湯路10の給水圧が正常な場合,上流側水圧P1と逆流防止室22の内圧P2との関係は,P1>P2>であるから,大気開放口26は開かない。
【0056】なお,大気開放口開付勢弾性体である開弁方向付勢用スプリング43により,内圧P2<0と,大気開放口26を開く方向の付勢力が発生するが,P1>P2による大気開放口26を閉じる方向の付勢力の方が大きくなるように,開弁方向付勢用スプリング43の付勢力,及び,大気連通口34と大気開放口26の面積比を設定しているため,大気開放口26は開かない。
【0057】また,断水または他水栓使用により,上流側水圧P1が低下すると,図5に示すように,上流側水圧P1と逆流防止室22の内圧P2とがP1=P2となる付近で,大気連通口開付勢弾性体としての開弁方向付勢用スプリング43によって,大気連通口34から排出されるとともに,大気開放口26から吸引された大気が上流側水路13aに吸引されるため,上流側水路13aへの汚水の逆流は発生しない。」

エ 段落【0063】?【0067】
「なお,図示しないが,本発明では,以下の変容例も考えられる。
【0064】ダイヤフラムの両面に差圧を発生する方法としては以下の手段がある。
【0065】i)検圧管分岐部と逆流防止室の間に逆止弁を入れて,その開弁圧で差圧を派生させる。
【0066】ii)温水電磁弁よりも上流側から検圧を分岐させることで,止水中に安定して大きな差圧が得られる。
【0067】iii)給湯熱交換器よりも上流側で分岐させることで,通水中は元々存在している熱交換器の圧損を利用して差圧が得られるので,器具全体の圧損は増加せず,また,逆止弁を不要とすることができる。」

オ 甲第8号証の2


カ 上記記載事項エの逆流防止装置Aの作動からみて,その大気開放口36は上流側水圧P1が逆流防止室内圧P2と同程度付近まで低下すると開弁方向付勢スプリング43の付勢力によって開くものであり,上流側水圧P1の低下がない状態においては閉じた状態を保つものということができる。

キ 図1及び甲第8号証の2には,逆流防止装置Aと浴槽Cの間は下流側水路13bと往路管11aで繋がっており,その下流側水路13bには,逆止弁が二つ設けられていることが図示されている。この二つの逆止弁は浴槽Cから逆流防止装置Aの方向への流れを阻止するものと認められる。

ク 一般に浴槽への給湯路には,浴槽への温水の流れを開放または遮断するための上記エ(段落【0066】)に記載されている「温水電磁弁」は設けられるものであり,図1(甲第8号証の2)にも,給湯路10と循環路11とを連絡する連絡水路13の上流側水路13aに二つの弁装置が設けられていることが図示されている。このうちのどちらかの弁装置が温水の流れを開放または遮断する「温水電磁弁」と認められるところ,請求人は甲第8号証の2において,上流側水路13aに設けられた弁装置のうち一つを「電磁弁」であるとしている。
また,第8号証の1の図1に示された1缶2回路式給湯器の構成から,温水電磁弁,逆流防止装置A,逆止弁及び連絡水路13からなる逆流防止機構を把握することができる。

上記記載事項エ(段落【0064】,【0065】)によれば,逆流防止装置Aにおいて,次の技術事項(以下「甲8記載事項」という。)が理解できる。

「上流側水圧P1と内圧P2との相対関係によって上下するダイヤフラム28の動きに連動して,開閉する大気開閉弁32を有する逆流防止装置Aのダイヤフラムの両面に差圧を発生する方法として,上流側水圧(P1)を伝達する検圧管分岐部と逆流防止室の間に逆止弁を入れること。」

そして,上記記載事項,認定事項及び図示内容を総合して,図1に開示された実施例について,上記甲8記載事項により改変したものを,本件特許発明1の記載ぶりに則って整理すると,甲第8号証の1には,次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されている。

「給水を加熱する給湯路10から浴槽Cへの連絡水路13の途中に設けられて前記浴槽Cから上流側水路13aへの汚水の逆流を防止する逆流防止機構であって,
前記給湯路10から前記浴槽Cへ向かう水の流れを開放または遮断する温水電磁弁と,
開弁方向付勢用スプリング43を有し,上流側水圧P1と逆流防止室23の内圧P2に応じて逆流防止室23内の汚水を大気開放口26から排出する一方,上流側水圧P1の低下がない状態においては大気開放口26は閉じた状態を保つ逆流防止装置Aと,
を備えた逆流防止機構において,
前記逆流防止装置Aから前記浴槽Cへ向かう下流側水路13bに二つ配置されて前記浴槽Cから前記逆流防止装置Aの方向への流れを阻止する逆止弁と,
上流側水圧P1を伝達する検圧管分岐部と逆流防止室23の間に入れられ,逆流防止装置Aのダイヤフラムの両面に差圧を発生させる逆止弁と,を備えている逆流防止機構。」

1-8.甲第9号証の1?9(対象製品)
ア アフターサービスマニュアル・パーツリストの抜粋:TOTO株式会社(甲第9号証の1)
・表紙の右上部に「ハイアクティシリーズ」,「全自動石油追焚付給湯機(水道直圧式)(RPE43/・33KD」の記載及び「アフターサービスマニュアル・パーツリスト ’00.6」の記載。
・表紙の左上部の「受領」「ネポン株式会社」,「日付’00.10.31」の記載。
・14ページ「5 作動原理」左上部にRPE43/33KDの給湯回路の記載。

イ 甲第9号証の1の14ページ左上部に示された給湯回路の拡大図(甲第9号証の2)


ウ TOTO:石油直圧式給湯機の点検・部品交換に関するお知らせ(URL:http://www.toto.co.jp/News/kyutoki0809/index.htm)(甲第9号証の3)
・1ページ「お詫びとお願い」項の「2000年5月から2004年8月まで製造いたしました「石油直圧式給湯機(TOTO販売ブランド名:ハイアクティシリーズ)におきまして,・・・」の記載。
・4ページの「対象型式および問い合わせ窓口」の「TOTO株式会社(旧:東陶機器株式会社」の「型式名(品番)」の欄の「RPE43*」の記載。

エ TOTO株式会社が発行する対象製品を含む製品のアフターサービスマニュアルの抜粋(甲第9の4)
・表紙の「アフターサービスマニュアル『ハイアクティシリーズ(MC品 据置型)』(全自動・オート・遠隔・給湯専用)」,「品番 RPE43/33KD*」の記載。
・表紙の「発売時期・廃番時期」の表の「全自動・オート」の「発売」欄の「00年06月」の記載。
・1ページの上部の表の「ハイアクティフルオート」欄の「RPE43KD」,「RPE33KD」の記載。
・14ページ「5 作動原理」の左上部にRPE43/33KDの給湯回路の記載。

オ 技術マニュアル:TOTO株式会社(甲第9号証の5)
・表紙の右上部の「ハイアクティシリーズ」,「全自動石油追焚付給湯機(水道直圧式)(RPE43/・33KD」の記載及び「技術マニュアル ’00.6」の記載。
・表紙の下方の「作動原理図・Q&Aなどは社外秘の情報が含まれていますので,マニュアルのまま社外に出さないように取扱いにはご注意願います。」の記載。
・目次ページの上部の表の「ハイアクティフルオート」欄の「RPE43KD」「RPE33KD」の記載。
・目次ページの下方の「11.作動原理図,13.Q&Aは社外秘の情報が含まれていますので取扱いにはご注意願います。問合せには口答などでお答え願います。」の記載。
・28ページ「11.作動原理」の左上部にRPE43/33KDの給湯回路の記載。
・40ページの2?11行「本機種は従来品と同様水道直圧でお湯はりを行います。このような機器では二階浴槽のように本体よりも上に浴槽が設置された場合,お湯はり経路・給水経路の逆止弁がごみ噛み等を起こしてすべて漏れる状態になり,断水などによって給水圧が異常に低下した際には浴槽水が逆流し,水道に混入する恐れがあります。
それを防止するための安全装置として本機種は「メカシスターン(縁切り装置)+逆止弁」を設け,浴槽からの逆流水をオーバーフロー口より機器外排出するようにしています。
この方式は,他社の多くが採用している「バキュームブレーカ+逆止弁」と比較すると,逆流に対する安全性がより高い方式です。
本機種より採用した新しいメカシスターンの縁切り性能は従来品と同じですが,部品点数を従来品よりも大幅に削減(42→14)してコンパクトな設計にしました。」



・40ページの下から7?1行「給水圧力をP1に接続して,ベロフラムで受圧します。ふろ(お湯はり経路)の圧力P2は,パッキンで受けます。P1とP2はお互いに押し合うのですが,通常は水道の圧力の方が高いので,パッキンが弁座に押し付けられて,開放弁は閉止しています。
断水などで給水圧がふろの圧力に近づくとパッキンを押し付ける力が小さくなりますので,スプリングの力で開放弁が開いて,ふろからの逆流水をオーバーフロー口から排出します。
更に給水圧が低下して負圧になった場合には,オーバーフロー口から空気を吸って負圧を解消します。」

カ 写真撮影報告書(甲第9号証の6),動画撮影報告書(甲第9号証の8),対象製品の実機を分解してゆく過程を動画(甲第9号証の8)及びメカシスターンの図面(甲第9号証の9)
甲第9号証の6?甲第9号証の9によれば,型式番号が「RPE43KDS」のTOTO株式会社製全自動石油追焚付給湯機(以下「対象製品」という。)は,その給湯回路が甲第9号証の2に示されるとおりのものであり,また,甲第9号証の8に記載されるメカシスターンを有していたものと認められる。

キ タイム技研株式会社の社員である山口修とTOTO株式会社のお客様相談室の担当である?吉(タカヨシ)氏との間でやりとりしたメール(甲第9号証の7)
・「(3)ご回答内容」項の「ハイアクティ遠隔(品番:RPE43KDS)に関する問合せ・・・・製造年月日は,2001年1月でございます。2000年06月は,発売年月でございました。」との記載。

ク 上記ア,ウ,エ,オ,カ及びキを総合すると,対象製品は本件特許の出願日前に実施されていたものと認められる。

対象製品の給湯回路(甲第9号証の2参照。)を技術常識を考慮して,本件特許発明1の記載ぶりに則って整理すると,対象製品は次の構成(以下「対象製品発明」という。)を備えている。なお,被請求人は対象製品が本件特許発明の逆止弁に関する構成(配置,個数)を除いた構成を備えていることを否定していない。(第2答弁書17ページ6?12行)

「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から給湯管への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって,
前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する温水電磁弁と,
開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記給水の圧力低下に応動して前記温水電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記給水の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つメカシスターンと,
を備えた逆流防止装置において,
前記メカシスターンから前記浴槽へ向かう前記配管内に二つ配置されて前記浴槽から前記メカシスターンの方向への流れを阻止する逆止弁と,
を備えている逆流防止装置。」

1-9.甲第12号証(給水装置に係わる器具等関係規程・規則および審査基準)
ア 給水装置に係わる器具等関係規程・規則および審査基準追加事項3(昭和62年4月?昭和63年10月)9ページ1?7行
「1.審査基準 瞬間湯沸器(4)構造の項に次の条項を加える。
10○ ふろ追いだき循環回路に直結する構造
a.自動給湯中循環ポンプは停止すること。
b.ふろ追焚き中は電磁弁を常に閉とし,給湯回路に圧力がかからない構造とする。
c.自動給湯回路とふろ追焚き回路は,最低二箇所以上の逆止め弁を設置し,給湯回路に圧力がかからない構造とする。ただし,逆止め弁一箇所については,逆止め機能を保持した切替え弁に代えることができる。」(「10○」は丸付き数字である。)

イ 同 11ページ下から7行?12ページ1行
「◆貯湯湯沸器
審査基準,貯湯湯沸器(4.3)二回路式のふろ循環式構造の項に次の条項を加える。
(4.3.4)ふろ追いだき循環回路に直結する構造
a.自動給湯中循環ポンプは停止すること。
b.ふろ追いだき中は電磁弁を常に閉とし,給湯回路に圧力がかからない構造とする。
c.自動給湯回路とふろ追焚き回路は,最低二箇所以上の逆止め弁を設置し,給湯回路に圧力がかからない構造とする。ただし,逆止め弁のうち一箇所については,逆止め機能を保持した切替弁に代えることができる。」

2.無効理由について
(1)無効理由6(記載不備)
請求人は,請求項1の記載は「大気開放弁は開弁方向に付勢するスプリングを有しながらも,上水道の圧力低下がない状態で閉じ状態が保たれるための構成が明確になっていない」旨主張している。
先ず,請求項1に記載の「大気開放弁」に関する「開弁方向に負勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」という特定事項は,発明の詳細な説明の段落【0004】,【0008】,【0009】,【0010】及び図面に記載された事項又は自明の事項であると認められる。
ところで,本件特許発明は「逆止弁が異物の噛み込みなどで水密不良になっても浴槽内の汚水が上水道の側へ逆流するのを完全に防止する」(段落【0012】)ことを解決する課題としてなされた逆流防止装置に関する発明であって,その解決のために,逆流防止装置を構成する大気開放弁は,「断水などが発生して給水管1内に負圧が発生したときに」,「上水道の1次圧の低下を感知して大気開放し,逆止弁9と逆止弁10との間の配管内の水を大気に放出する」(段落【0020】,【0028】)ものであれば良いと当業者が認識できることは明らかである。
そして,請求項1においては,そのような大気開放弁について「開弁方向に付勢するスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」と特定することで足りるので,それ以上の限定は必要ない。
なお,この大気開放弁は「開弁方向に負勢するためのスプリング」を有して「上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」ものであるので,「スプリングのばね力に打ち勝って大気開放弁を閉じ方向に作用する何らかの力」が存在することは,大気開放弁の作動からみて当業者が十分認識できるものであり,発明は明確である。
したがって,請求項1の記載は,発明の詳細な説明に,発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものである。

以上のとおり,訂正後の請求項1の記載は,特許法第36条第6項第1号に違反するものではない。
したがって,請求人の主張する無効理由6は理由がない。

(2)無効理由7(甲第8号証の1及びこれと周知技術との組み合わせによる進歩性喪失事由)
ア 甲8発明との対比・判断
本件特許発明1と甲8発明とを対比すると,その作用,機能,構成からみて,後者の「給水を加熱する給湯路10から浴槽Cへの連絡水路13の途中に設けられて前記浴槽Cから上流側水路13aへの汚水の逆流を防止する逆流防止機構」は,前者の「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置」に相当し,以下同様に,
「前記給湯路10から前記浴槽Cへ向かう水の流れを開放または遮断する」「温水電磁弁」は,「前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する」「電磁弁」に,
「開弁方向付勢用スプリング43を有し,上流側水圧P1と逆流防止室23の内圧P2に応じて逆流防止室23内の汚水を大気開放口26から排出する一方,上流側水圧P1の低下がない状態においては大気開放口26は閉じた状態を保つ」「逆流防止装置A」は「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」「大気開放弁」に,
「前記逆流防止装置Aから前記浴槽Cへ向かう下流側水路13b」は「前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内」に,
「前記浴槽Cから前記逆流防止装置Aの方向への流れを阻止する」「逆止弁」は,「前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する」「第1の逆止弁」に,それぞれ,相当する。
そして,甲8発明の「上流側水圧P1を伝達する検圧管分岐部と逆流防止室22の間に入れられ,逆流防止装置Aのダイヤフラムの両面に差圧を発生させる」「逆止弁」と,本件特許発明1の「前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」「第2の逆止弁」は,「大気開放弁の上流側に配置され」る「第2の逆止弁」という限りで共通する。

そうすると,本件特許発明1と甲8発明とは,次の点で一致する。
「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって,
前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と,
開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁と,
を備えた逆流防止装置において,
前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁,
大気開放弁の上流側に配置される第2の逆止弁と,
を備えている逆流防止装置。」

一方で,両者は,次の点で相違する。
[相違点1]
本件特許発明1は,「前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁」が「一つのみ配置されて」,「大気開放弁の上流側に配置される第2の逆止弁」が「前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」のに対し,甲8発明は,「第1の逆止弁」が2つ配置され,「第2の逆止弁」が「上流側水圧P1を伝達する検圧管分岐部と逆流防止室23の間に入れられ,逆流防止装置Aのダイヤフラムの両面に差圧を発生させる」ものである点。

上記相違点1について検討する。
本件特許発明1は,「給湯管側が負圧になっている状態では全閉状態を維持できない特性を有していることから,給湯管側が負圧になった場合には,大気開放弁のオーバフロー口から勢いよく大気を吸い込むことになり,このとき,浴槽に近い側に安全のために2個直列に配置してある逆止弁がいずれも水密不良になっていると,浴槽の汚水が大気開放弁まで逆流してオーバフロー口から大気に放出されるが,その一部は吸い込まれてきた大気とともに電磁弁を通って給湯管の方へ逆流してしまうことがあるという問題点があった」(【0011】)ため,「逆止弁が異物の噛み込みなどで水密不良になっても浴槽内の汚水が上水道の側へ逆流するのを完全に防止することができる逆流防止装置を提供する」(【0012】)ことを課題として,上記相違点1に係る発明の特定事項を採用することにより,「たとえ,浴槽側に設けた逆止弁および電磁弁と大気開放弁との間に設けた逆止弁がともに水密不良になって,給水側の水圧が負圧になることで浴槽の汚水がその水頭圧により大気開放弁まで逆流してきたとしても,電磁弁と大気開放弁との間に設けた逆止弁がオリフィスのように機能するため,給水側の負圧が汚水を大気開放弁から給水側へ吸引する力が非常に弱くなり,汚水が給水側の方まで逆流することがなくなり,この逆流防止装置を適用した給湯システムの信頼性を向上させることができる。」(【0031】)及び「従来,浴槽側にて安全のために2個設けていた逆止弁の1個を電磁弁と大気開放弁との間に配置するようにすれば,コスト上昇を伴わずに,逆流防止装置を実現することができる。」(【0032】)という作用,効果を奏するものと認められる。

ところで,甲8発明についてみると,検圧管分岐部と逆流防止室23の間に入れられるダイヤフラムの両面に差圧を発生させるための逆止弁は,検圧管分岐部と逆流防止室23の間であればどこに配置されても差圧を発生させるという作用に大きく異なるところはなく(甲第11号証参照。),かつ,甲第8号証の1に逆止弁の具体的な配置箇所についての記載,示唆もないので,甲8発明は,ダイヤフラムの両面に差圧を発生させるための逆止弁の配置について,温水電磁弁の上流側あるいは下流側を区別していないということができる。

そこで,甲8発明において,ダイヤフラムの両面に差圧を発生させるための逆止弁を温水電磁弁の上流側あるいは下流側に配置した場合について,それぞれ検討する。

まず,甲8発明のダイヤフラムの両面に差圧を発生させるための逆止弁を温水電磁弁の下流側に配置した場合は,この逆止弁は配置位置からみて,本件特許発明1の一つのみ配置される第2の逆止弁に相当するといえる。
しかしながら,甲8発明において,第1の逆止弁は二つ配置されており,これは社団法人日本水道協会の定めた基準(甲第12号証参照。)において,給湯回路の電磁弁より下流側の回路に二箇所以上設置しなければならないとされていることに整合している。通常,このような基準にそぐわない設計は採用されないとみるのが自然であるから,特段の事情が無い限り,当業者であれば二つ配置された第1の逆止弁を一つにすることはないといえる。この点に関して,かかる特段の事情は見当たらず,しかも,甲1号証(第1図),甲第2号証(図1),甲第5号証(図1等)に大気開放弁から浴槽へ向かう配管内に逆止弁を一つ配置することが開示されているとしても,それぞれの大気開放弁と関連した構成で,逆止弁の配置のみを一つの技術思想として把握することもできないから,それらから逆止弁の配置のみを甲8発明に適用する動機付けがあるともいえない。
ところで,請求人は「甲第8号証の1においては逆流防止装置Aと電磁弁との間に逆止弁(一つ)を設定する可能性についての言及があったことを考慮すれば,大気開放弁と浴槽との間に配置される逆止弁はーつだけ配置すれば上記基準を満たすのであるから,敢えて二個のまま残すのはコスト等を考えれば,到底,合理的な選択とは言えない。そうであれば,甲第8号証の1のものにおいて,電磁弁と逆流防止装置の間に逆止弁が配置される場合には,日本水道協会の基準(技術標準)を加味すれば逆止弁は1つのみと考えるのが妥当である。」(第2弁駁書26ページ23?30行)と主張するが,逆止弁や電磁弁,大気開放弁等の各要素の配置関係が当該技術分野における技術の特徴である。そして,上記のとおり,甲8発明は,ダイヤフラムの両面に差圧を発生させるための逆止弁の配置について,温水電磁弁の上流側あるいは下流側を区別していないところ,あえて逆止弁を温水電磁弁の下流側に配置することにより,二つ配置された第1の逆止弁との関係において上記基準に着目し,第1の逆止弁を一つにするという動機付けがあるとはいえない。請求人の主張は本件特許発明1を知った上で認識した,いわゆる後知恵ないし後付けの論理であり,当業者が容易に想到し得たということはできない。

次に,甲8発明のダイヤフラムの両面に差圧を発生させるための逆止弁を温水電磁弁の上流側に配置した場合は,この逆止弁は本件特許発明1の構成(第1の逆止弁,第2の逆止弁)に関係しない逆止弁ということができる。
そこで,甲8発明において二つ配置された第1の逆止弁の配置についてみると,社団法人日本水道協会の定めた基準からみて,電磁弁より下流側であれば二つ配置される第1の逆止弁の位置は適宜に決められると解する余地もあるが,甲第8号証の1には,二つの逆止弁は図示されている程度で,その弁の配置を問題とする記載も見いだせないので,当業者において,あえて大気開放弁(逆流防止装置A)より下流に配置された二つの逆止弁のうちの一つを大気開放弁(逆流防止装置A)と電磁弁(温水電磁弁)の間に設け,第2の逆止弁とする動機付けはない。もっとも,この甲8発明においては,既に温水電磁弁の上流側に逆止弁が配置されているから,さらに,差圧を発生させる逆止弁を大気開放弁(逆流防止装置A)と電磁弁(温水電磁弁)の間に配置することはありえないことである。

さらに,いずれの証拠にも,大気開放弁と電磁弁との関係で,逆止弁が異物の噛み込みなどで水密不良になっても浴槽内の汚水が上水道の側へ逆流するのを完全に防止するために,電磁弁と大気開放弁との間に逆止弁を一つ配置する点が開示されていない。

そして,本件特許発明1は上記のとおり,相違点1に係る構成を採用することで,コストの上昇を伴うことなく,浴槽側に設けた逆止弁および電磁弁と大気開放弁との間に設けた逆止弁がともに水密不良になっても,汚水が給水側の方まで逆流することがないという作用効果を奏するものである。

以上を総合すると,上記相違点1に係る構成とすることは設計的事項とすることはできず,当業者にとって容易に想到し得たということはできない。

イ まとめ
以上のとおり,本件特許発明1は,甲第8号証の1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,無効理由7によって,本件特許発明1についての特許を無効とすることはできない。

(3)無効理由8(対象製品と甲第8号証の1との組み合わせによる進歩性喪失事由)
ア 対象製品発明との対比・判断
本件特許発明1と対象製品発明とを対比すると,その作用,機能,構成からみて,後者の「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から給湯管への汚水の逆流を防止する逆流防止装置」は,前者の「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置」に相当し,以下同様に,
「前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する」「温水電磁弁」は,「前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する」「電磁弁」に,
「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記給水の圧力低下に応動して前記温水電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記給水の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」「メカシスターン」は「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」「大気開放弁」に,
「前記メカシスターンから前記浴槽へ向かう前記配管内」は「前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内」に,
「前記浴槽から前記メカシスターンの方向への流れを阻止する」「逆止弁」は,「前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する」「第1の逆止弁」に,それぞれ,相当する。

そうすると,本件特許発明1と対象製品発明とは,次の点で一致する。
「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって,
前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と,
開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁と,
を備えた逆流防止装置において,
前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁,
を備えている逆流防止装置。」

一方で,両者は,次の点で相違する。
[相違点2]
本件特許発明1は,「前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁」が「一つのみ配置されて」,「大気開放弁の上流側に配置される第2の逆止弁」が「前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」のに対し,対象製品発明は,「第1の逆止弁」が二つ配置され,「第2の逆止弁」を備えていない点。

上記相違点2について検討する。
対象製品発明において,第1の逆止弁は二つ配置されているが,これは上記(2)で述べたとおり,社団法人日本水道協会の定めた基準(甲第12号証参照。)に整合し,当業者であれば二つ配置された第1の逆止弁を一つにすることはないといえ,また,甲1号証(第1図),甲第2号証(図1),甲第5号証(図1等)に大気開放弁から浴槽へ向かう配管内に逆止弁を一つ配置することが開示されているとしても,それぞれの大気開放弁と関連した構成で,逆止弁の配置のみを一つの技術思想として把握することはできないから,それらから逆止弁の配置のみを対象製品発明に適用する動機付けがあるともいえない。

また,甲8記載事項(上流側水圧P1と内圧P2との相対関係によって上下するダイヤフラム28の動きに連動して,開閉する大気開閉弁32を有する逆流防止装置Aのダイヤフラムの両面に差圧を発生する方法として,上流側水圧(P1)を伝達する検圧管分岐部と逆流防止室の間に逆止弁を入れること。)によれば,上流側水圧(P1)を伝達する検圧管分岐部と逆流防止室の間に逆止弁を入れることで,逆流防止装置Aのダイヤフラムの両面の差圧を,逆止弁の開弁圧を利用して得ることは,当業者における設計上の事項ということができる。このように,甲8記載事項は,逆流防止装置Aのダイヤフラムの両面の差圧を得るためのものであり,差圧動作式の開閉弁において,必要な差圧が得られないような場合に,当業者が行う設計上の事項にすぎない。してみると,対象製品発明においては,そもそもメカシスターンは逆止弁なしで作動するのであるから,あえて逆止弁を設けるという動機付けに欠けるものであり,逆に,逆止弁を配置することは,必要以上に開弁圧により圧損を発生させることになるので,当業者が避けるものといえる。
したがって,当業者が甲8記載事項に基づいて,相違点2に係る構成に至ることは容易とはいえない。

イ まとめ
以上のとおり,本件特許発明1は,対象製品及び甲第8号証の1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,無効理由8によって,本件特許発明1についての特許を無効とすることはできない。

(4)無効理由9(甲第1号証と甲第8号証の1との組み合わせによる進歩性喪失事由)
ア 甲1発明との対比・判断
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると,その作用,機能,構成からみて,後者の「水路5から浴槽1への配管の途中に設けられて前記浴槽1から上水道への逆流を防止する装置」は,前者の「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置」に相当し,以下同様に,
「前記水路5から前記浴槽1へ向かう水の流れを開放または遮断する」「電磁弁8」は,「前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する」「電磁弁」に,
「開弁方向に付勢するためのバネ32」は「開弁方向に付勢するためのスプリング」に,
「前記大気開放弁から前記浴槽1へ向かう下流側水路5bに一つ配置されて前記浴槽1から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する」「逆止弁15」は,「前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう」「配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する」「第1の逆止弁」に,それぞれ,相当する。
そして,甲1発明の「大気開放弁」は「給湯を停止する時や給水源4が断水した時」に開閉動作するものであるので,少なくとも給水源4が断水した時にも開閉動作するから,「上水道の圧力低下に応動」するものといえる。そうすると,甲1発明の「開弁方向に付勢するためのバネ32を有し,給湯を停止する時や給水源4が断水した時,前記電磁弁8より前記浴槽1の側のホッパー20内の水を大気に連通するよう開閉動作する」「大気開放弁」と本件特許発明1の「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」「大気開放弁」は,「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の水を大気に放出するよう開閉動作する」「大気開放弁」という限りで共通する。
また,甲1発明の「前記電磁弁8と前記大気開放弁との間の上流水路5aに一つ配置される」「一次圧限度設定弁25」と,本件特許発明1の「前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」「第2の逆止弁」は,「前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され」る「第2の逆止弁」という限りで共通する。

そうすると,本件特許発明1と甲1発明とは,次の点で一致する。
「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって,
前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と,
開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の水を大気に放出するよう開閉動作する大気開放弁と,
を備えた逆流防止装置において,
前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と,
前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置される第2の逆止弁と,
を備えている逆流防止装置。」

一方で,両者は,次の点で相違する。
[相違点3]
「大気開放弁」について,本件特許発明1は,「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」のに対し,甲1発明は,「開弁方向に付勢するためのバネ32を有し,給湯を停止する時や給水源4が断水した時,前記電磁弁8より前記浴槽1の側のホッパー20内の水を大気に連通するよう開閉動作する」点。

[相違点4]
「第2の逆止弁」について,本件特許発明1は,「前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」のに対し,甲1発明は,そのような動作をするか明らかでない点。

上記相違点3,4について検討する。
[相違点3について]
甲1発明の大気開放弁は給湯を停止するときにも開閉動作させることを目的として検圧部を電磁弁の下流側に配置したものであるから,その検圧部を,上水道の圧力低下がない状態においては大気開放弁を閉じた状態を保つように電磁弁より上流側に配置するように変更することはありえず,当業者が甲1発明を起点として相違点3に係る構成に至ることは容易とはいえない。
この相違点に関して,請求人は,大気開放弁は甲8号証の1に記載されている旨主張しているが,上記のとおり,甲1発明の大気開放弁は給湯を停止するときにも開閉動作させるものであるので,甲8号証の1に記載されている大気開放弁を適用する動機付けはなく,むしろ阻害事由があるものであり,相違点3は甲8号証の1に基づいて当業者が容易になし得たということはできない。

[相違点4について]
甲1発明の大気開放弁は,上水道の圧力低下にも応動するものであり,大気開放弁が上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,一次圧限度設定弁25は,バネに押されて弁体が作動し逆止弁として作用するものであって,大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が上水道の圧力低下によって電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止することは明らかであるから,甲1発明の第2の逆止弁(一次圧限度設定弁25)の動作は本件特許発明1の動作と相違するものではない。
したがって,相違点4は実質的な相違ではない。

イ まとめ
以上のとおり,相違点3に係る構成は甲第8号証の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではないから,本件特許発明1は,甲第1号証及び甲第8号証の1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,無効理由9によって,本件特許発明1についての特許を無効とすることはできない。

(5)無効理由10(甲第1号証と対象製品との組み合わせによる進歩性喪失事由)
ア 甲1発明との対比・判断
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると,上記(4)のとおり相違点3,4を有する。

相違点3,4について検討する。
[相違点3について]
上記(4)の相違点3の判断のとおり,当業者が甲1発明を起点として相違点3に係る構成に至ることは容易とはいえない。
この相違点に関して,請求人は,大気開放弁は対象製品との組み合せから容易である旨主張しているが,甲1発明の大気開放弁は給湯を停止するときにも開閉動作させるものであるので,対象製品のメカシスターンを適用する動機付けはなく,むしろ阻害事由があるものであり,相違点3は対象製品のメカシスターンに基づいて当業者が容易になし得たということはできない。

[相違点4について]
上記(4)で述べたとおり,相違点4は実質的な相違ではない。

イ まとめ
以上のとおり,相違点3に係る構成は対象製品のメカシスターンに基づいて当業者が容易に想到し得たものではないから,本件特許発明1は,甲第1号証に記載された発明及び対象製品に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,無効理由10によって,本件特許発明1についての特許を無効とすることはできない。

(6)無効理由11(甲第2号証と甲第8号証の1との組み合わせによる進歩性喪失事由)
ア 甲2発明との対比・判断
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると,その作用,機能,構成からみて,後者の「浴槽8への給湯管路2に設けられて前記浴槽8から上水道側への汚水の逆流を防止する装置」は,前者の「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置」に相当し,以下同様に,
「前記給湯管路2の前記浴槽8へ向かう水の流れを開放または遮断する」「電磁開閉弁4」は,「前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する」「電磁弁」に,
「開弁方向に付勢するための圧縮コイルばね44」は「開弁方向に付勢するためのスプリング」に,
「前記バキユームブレーカ11から前記浴槽8へ向かう前記給湯管路2に一つ配置されて前記浴槽8から前記バキユームブレーカ11の方向への流れを阻止する」「第2の逆止弁7」は,「前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する」「第1の逆止弁」に,それぞれ,相当する。
そして,甲2発明の「開弁方向に付勢するための圧縮コイルばね44を有し,前記電磁開閉弁4を閉じると前記電磁開閉弁4と第2の逆止弁7の間の前記給湯管路2内の水を排水し空気を導入するよう開閉動作するバキユームブレーカ11」と本件特許発明1の「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」「大気開放弁」は,「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する」「大気開放弁」という限りで共通する。
また,甲2発明の「前記電磁開閉弁4と前記バキユームブレーカ11との間に一つ配置される」「第1の逆止弁5」と,本件特許発明1の「前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」「第2の逆止弁」とは,「前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され」る「第2の逆止弁」という限りで共通する。

そうすると,本件特許発明1と甲2発明とは,次の点で一致する。
「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって,
前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と,
開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する大気開放弁と,
を備えた逆流防止装置において,
前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と,
前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置される第2の逆止弁と,
を備えている逆流防止装置。」

一方で,両者は,次の点で相違する。
[相違点5]
「大気開放弁」について,本件特許発明1は,「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」のに対し,甲2発明は,「開弁方向に付勢するための圧縮コイルばね44を有し,前記電磁開閉弁4を閉じると前記電磁開閉弁4と第2の逆止弁7の間の前記給湯管路2内の水を排水し空気を導入するよう開閉動作する」点。

[相違点6]
「第2の逆止弁」について,本件特許発明1は,「前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」のに対し,甲2発明は,そのような動作をするか明らかでない点。

上記相違点5,6について検討する。
[相違点5について]
本件特許発明1の大気開放弁は上水道の圧力低下に応動して開閉動作する一方,上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つものであるところ,甲2発明のバキユームブレーカ11(大気開放弁)は電磁開閉弁4を閉じると開閉動作するものであって,電磁開閉弁4より下流側の圧力が下がることにより開閉動作が行われるものである。このバキュームブレーカ11は,上水道の圧力低下がある場合には,電磁開閉弁4を閉じるのと同様,流通路13の圧力が下がることになるから,上水道の圧力低下にも応動して開閉動作するものといえる。しかしながら,このバキユームブレーカ11は,電磁開閉弁4を閉じると開閉動作するものであり,上水道の圧力低下がない状態においても,電磁開閉弁4を閉じると開閉動作を行うものであって,上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つものではない。
この点に関して,請求人は甲2号証の装置が有する課題を想定して,その課題を解決するために甲8号証の1の逆流防止装置Aを利用することは当業者が容易に想到し得る旨主張しているが,甲2号証が前提としている電磁開閉弁4を閉じると開閉動作させるという事項を無視するものであって,逆流防止装置という技術分野が共通するとしても甲8号証の1の逆流防止装置を適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって,当業者が甲2発明を起点として甲8号証の1の逆流防止装置に基づいて相違点5に係る構成に至ることは容易とはいえない。

[相違点6について]
上記のとおり,甲2発明のバキユームブレーカ11は,上水道の圧力低下にも応動するものであり,バキユームブレーカ11が上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,第1の逆止弁5は,逆止弁として作用するものであって,バキユームブレーカ11を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が上水道の圧力低下によって電磁開閉弁4の方向に流れてしまうのを阻止することは明らかであるから,甲2発明の第2の逆止弁(第1の逆止弁5)の動作は本件特許発明1の動作と相違するものではない。
したがって,相違点6は実質的な相違ではない。

イ まとめ
以上のとおり,相違点5に係る構成は甲第8号証の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではないから,本件特許発明1は,甲第2号証及び甲第8号証の1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,無効理由11によって,本件特許発明1についての特許を無効とすることはできない。

(7)無効理由12(甲第2号証と対象製品との組み合わせによる進歩性喪失事由)
ア 甲2発明との対比・判断
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると,上記(6)のとおり相違点5,6を有する。

相違点5,6について検討する。
[相違点5について]
上記(6)で述べたとおり,バキユームブレーカ11は,上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つものではない。この点に関して,請求人は甲2号証の装置が有する課題を想定して,その課題を解決するために対象製品のメカシスターンを利用することは当業者が容易に想到し得る旨主張しているが,甲2号証が前提としている電磁開閉弁4を閉じると開閉動作させるという事項を無視するものであって,逆流防止装置という技術分野が共通するとしても対象製品のメカシスターンを適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって,当業者が甲2発明を起点として対象製品のメカシスターンに基づいて相違点5に係る構成に至ることは容易とはいえない。

[相違点6について]
上記(6)で述べたとおり,相違点6は実質的な相違ではない。

イ まとめ
以上のとおり,相違点5に係る構成は対象製品のメカシスターンに基づいて当業者が容易に想到し得たものではないから,本件特許発明1は,甲第2号証に記載された発明及び対象製品に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,無効理由12によって,本件特許発明1についての特許を無効とすることはできない。

(8)無効理由13(甲第4号証による進歩性喪失事由)
請求人は無効理由13として,本件特許発明2に対して,甲第4号証に開示されたものに過ぎない旨主張しているが,本件特許発明2は本件特許発明1を引用するものであるから,実質的に,本件特許発明1に対する無効理由との組み合わせによる進歩性喪失について主張しているものと理解できる。
しかしながら,上記(2)ないし(7)のとおり,請求項1に係る発明(本件特許発明1)が特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく,また,後記(9-2)のとおり,本件特許発明1は甲第4号証に記載された発明に基づいても当業者が容易に想到することができたとはいえないので,請求項1を引用する請求項2に係る発明(本件特許発明2)は,特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
したがって,無効理由13によって,本件特許発明2についての特許を無効とすることはできない。

(9)その他の無効理由について
(9-1)無効理由3(甲第3号証による拡大先願に基づく新規性喪失事由)
ア 甲3発明との対比・判断
本件特許発明1と甲3発明とを対比すると,その作用,機能,構成からみて,後者の「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽からの逆流を防止する逆流防止装置」は,前者の「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置」に相当し,以下同様に,
「前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する」「電磁弁34」は,「前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する」「電磁弁」に,
「前記大気開放弁41から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁41の方向への流れを阻止する」「第2逆止弁46」は,「前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する」「第1の逆止弁」に,それぞれ,相当する。
そして,甲3発明の「大気開放弁41」は「閉弁方向に付勢されるとともに,入水口32の圧力が出水口50の圧力よりも低下するとき,出水口50からの逆流水を大気連通口42から排出する一方,入水口32の圧力が出水口50の圧力よりも高い正常時には閉じられている」ものであり,甲3発明において,入水口32の圧力が低下するときは,上水の圧力が低下するとき(記載事項イ段落【0016】参照。)であり,また,逆流水を大気連通口42から排出することは,大気開放弁41を開動作することといえるから,甲3発明の「大気開放弁41」は,本件特許発明1の「大気開放弁」と「前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁」という限りで共通する。
また,甲3発明の「前記電磁弁34と前記大気開放弁41との間に一つ配置される」「第1逆止弁38」と,本件特許発明1の「前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」「第2の逆止弁」は,「前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され」る「第2の逆止弁」という限りで共通する。

そうすると,本件特許発明1と甲3発明とは,次の点で一致する。
「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって,
前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と,
前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁と,
を備えた逆流防止装置において,
前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と,
前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置される第2の逆止弁と,備えている逆流防止装置。」

一方で,両者は,次の点で相違する。
[相違点7]
「大気開放弁」について,本件特許発明1は,「開弁方向に付勢するためのスプリングを有」するのに対し,甲3発明は,閉弁方向に付勢されるものである点。

[相違点8]
「第2の逆止弁」について,本件特許発明1は,「前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」のに対し,甲3発明は,そのような動作をするか明らかでない点。

相違点について検討する。
甲3発明の大気開放弁は閉弁方向に付勢されるものであるので,開弁方向に付勢するスプリングを有するものとは基本構成が相違するものであり,第2の逆止弁の動作が相違しないとしても,本件特許発明1は甲3発明と同一ということはできない。

イ まとめ
以上のとおり,本件特許発明1は,本件特許の出願日前に出願され本件特許の出願日後に出願公開された甲第3号証に記載された発明と同一といえないので,特許法第29条の2の規定に違反しない。
したがって,無効理由3によって,本件特許発明1についての特許を無効とすることはできない。

(9-2)無効理由4(甲第4号証あるいはこれと周知技術との組み合わせによる進歩性喪失事由)
ア 甲4発明との対比・判断
本件特許発明1と甲4発明とを対比すると,その作用,機能,構成からみて,後者の「給湯管路7から浴槽1への配管の途中に設けられて前記浴槽1から給湯器側への逆流を防止する逆流防止装置」は,前者の「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置」に相当し,以下同様に,
「前記給湯管路7から前記浴槽1へ向かう水の流れを開閉する」「電磁弁10」は,「前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する」「電磁弁」に,
「開弁方向に付勢するためのスプリング29を有し,給湯管路7内の圧力が負圧化したような場合,前記電磁弁10より前記浴槽1の側の第2作動室17内の水をオーバーフロー管24から排水する一方,第1の作動室16の圧力と第2の作動室17の圧力が等圧になるまでは閉じた状態を保つ」「負圧作動弁28」は,「開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ」「大気開放弁」に,
「前記負圧作動弁28から前記浴槽1へ向かう前記配管内に一つ配置されて前記浴槽1から前記負圧作動弁28の方向への流れを阻止する」「第2の逆止弁12」は,「前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する」「第1の逆止弁」に,それぞれ,相当する。
そして,甲4発明の「前記電磁弁10の上流側に一つ配置された」「第1の逆止弁13」と,本件特許発明1の「前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」「第2の逆止弁」は,「第2の逆止弁」という限りで共通する。

そうすると,本件特許発明1と甲4発明とは,次の点で一致する。
「給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって,
前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と,
開弁方向に付勢するためのスプリングを有し,前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方,前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁と,
を備えた逆流防止装置において,
前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と,
第2の逆止弁を備えている逆流防止装置。」

一方で,両者は,次の点で相違する。
[相違点9]
「第2の逆止弁」について,本件特許発明1は,「前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され,前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに,前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する」のに対し,甲4発明は,前記電磁弁10の上流側に配置されたものであり,上記のような動作をするものではない点。

上記相違点9について検討する。
甲第4号証に記載された電磁弁10(電磁弁)の上流側に配置された第1の逆止弁13(第2の逆止弁)は,第1の逆止弁13と電磁弁10と第2の逆止弁12とを備えて一体として把握される弁直列接続体の内の第1の逆止弁13と電磁弁10に相当するものであるので,その一部である第1の逆止弁13と電磁弁10の配置関係を異なるものとすることは,各要素の配置関係は当該技術分野における技術の特徴であることからみて,当業者が容易に想到し得たことということはできない。
したがって,甲4発明の第1の逆止弁13を電磁弁10の下流側に配置することは,その動機付けがない以上,当業者が容易に想到し得たことではない。
請求人は,第1の逆止弁13の配置を変えても同一の作用を発揮し,同一の目的を達成することができるのであるから,第1の逆止弁13の配置の相違は単なる選択の問題に過ぎず,いずれの配置を選択するかは設計事項というべきである旨主張しているが,本件特許発明において第2の逆止弁は,電磁弁が給湯管側の負圧に対して全閉状態を維持できないことに対応して設けたものであり,第2の逆止弁は水密不良でもオリフィスとして機能させて利用するものであるので,甲4発明において,そのような意図で用いられていない第1の逆止弁13を本件特許発明のように配置することを設計事項ということはできない。すなわち,甲4発明における電磁弁10と第1の逆止弁13は,圧力損失を生じさせるものであるが,第1の逆止弁13を水密不良でオリフィスとして機能させることを意図したものではない。
さらに,請求人は,甲第1,2,5,6号証を示し,大気開放機能を有する弁装置と電磁弁の間に逆止弁を設けることは,出願前に周知である旨主張しているが,周知の構成としている甲第1,2,5,6号証は,それぞれの大気開放弁と関連した構成を前提としているので,それらから逆止弁の配置のみを甲4発明に適用する動機付けがあるとはいえず,甲4発明の第1の逆止弁13の位置を変更することは当業者にとって容易ということはできない。
したがって,当業者が甲4発明を起点として相違点9に係る構成に至ることは容易とはいえない。

イ まとめ
以上のとおり,本件特許発明1は,甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたとはいえないので,特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
したがって,無効理由4によって,本件特許発明1についての特許を無効とすることはできない。

第6 むすび
以上のとおり,請求人の主張する理由及び証拠方法によっては,本件特許発明1ないし2についての特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
逆流防止装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって、
前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と、
開弁方向に付勢するためのスプリングを有し、前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方、前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁と、
を備えた逆流防止装置において、
前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と、
前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され、前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに、前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する第2の逆止弁と、
を備えていることを特徴とする逆流防止装置。
【請求項2】 前記電磁弁と前記給湯管との間に配置され、前記給湯管の側の配管内の負圧を感知して前記配管内に大気を導入する負圧破壊装置を備えていることを特徴とする請求項1記載の逆流防止装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は逆流防止装置に関し、特に給湯装置からの温水を浴槽に導く配管の途中に設けられて浴槽の汚水が上水道へ逆流してしまうのを防止する逆流防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は従来の給湯システムの構成例を示す図である。
従来の給湯システムにおいて、上水道の給水管101は、流量センサ102を介して熱交換器103および水バイパス弁104の上流側に接続されており、熱交換器103および水バイパス弁104の下流側は合流した後、水比例弁105に接続されている。この水比例弁105の下流側は、たとえば台所の蛇口などへ出湯する給湯管106に接続される。
【0003】
また、水比例弁105の下流側は、流量センサ107、電磁弁108、および直列に2つ配置した逆止弁109を介して風呂の浴槽110に配管されており、電磁弁108と逆止弁109との間の配管には大気開放弁111が配置されている。
【0004】
大気開放弁111は、配管の中継部を構成するボディ112を有し、このボディ112は、電磁弁108からの配管に接続される接続部113と、逆止弁10が装着された配管に接続される接続部114と、オーバフロー口115とを有している。接続部114の開口中心と同軸上に、ピストン116が軸線方向に進退自在に配置され、その進退移動によってピストン116に嵌着された環状の弁体117がピストン116の接続部113,114側の空間とオーバフロー口115との間の通路を開閉するよう構成されている。ピストン116の接続部113,114側と反対側には、ダイヤフラム118の中心部がリテーナ119およびねじ120によって固定され、ダイヤフラム118の外周部は、ボディ121,122によって挾持固定されている。ボディ122には、検圧管123を介して給水管101に接続される接続部124を有し、ダイヤフラム118とボディ122とによって形成される空間は、給水管101の元圧を検知する部屋を構成している。また、ピストン116は、スプリング125によって、接続部113,114側の空間とオーバフロー口115との間の通路を開く方向に付勢するように構成されている。
【0005】
以上の構成要素の中で、電磁弁108、大気開放弁111および逆止弁109が浴槽110から上水道への逆流を防止する逆流防止装置を構成している。
ここに例示した浴槽110は、図の左上に示しているが、これは浴槽110が給水管101の導入位置よりも高い位置、たとえば一戸建の住宅であれば、2階あるいは3階にあったり、集合住宅であれば、2階以上の高層階にある場合をイメージしている。
【0006】
このような給湯システムにおいて、給水管101から給水された上水は、流量センサ102を通り、一部が熱交換器103にて加熱されて湯になり、一部は水バイパス弁104を通って熱交換器103から出てきた湯と混合される。このとき、水バイパス弁104により熱交換器103をバイパスする流量を制御することにより、湯水の混合比が変えられて出湯温度が制御される。所望の温度に制御された湯は、さらに、水比例弁105により出湯流量が制御されて給湯管106より給湯される。
【0007】
また、浴槽110に湯張りを行う時には、電磁弁108を開けることにより、水比例弁105を出た湯が流量センサ107、電磁弁108および逆止弁109を介して風呂の浴槽110へ供給される。
【0008】
このとき大気開放弁111は、検圧管123を介して上水道の元圧(1次圧)が導入されている。この1次圧は、電磁弁108から逆止弁109へ通過する配管内の通水圧(2次圧)より大きいため、ピストン116は弁体117を着座させる方向に付勢しているため、オーバフロー口115への通路は閉じた状態にある。
【0009】
停電により上水を汲み上げているポンプが停止したり、断水が発生するなどして給水管101内に負圧が発生した場合には、大気開放弁111は、1次圧の低下を感知したダイヤフラム118がピストン116を弁開方向に付勢し、電磁弁108から逆止弁109へ至る配管をオーバフロー口115と連通させて、配管内の水を大気に放出する。
【0010】
もし、逆止弁109が異物の噛み込みなどにより水密不良となっていた場合には、高所にある浴槽110内の汚水がその水頭圧により逆止弁109を介して大気開放弁111まで逆流してくるが、その汚水は大気開放弁111により大気に放出されるため、浴槽内の汚水が給湯管106の方まで逆流することはない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の給湯システムでは、大気開放弁の上流側にある電磁弁が給湯管側から通水圧を受けている状態で使用している場合には、その配管を通水圧によって有効に全閉状態に維持することができるが、給湯管側が負圧になっている状態では全閉状態を維持できない特性を有していることから、給湯管側が負圧になった場合には、大気開放弁のオーバフロー口から勢いよく大気を吸い込むことになり、このとき、浴槽に近い側に安全のために2個直列に配置してある逆止弁がいずれも水密不良になっていると、浴槽の汚水が大気開放弁まで逆流してオーバフロー口から大気に放出されるが、その一部は吸い込まれてきた大気とともに電磁弁を通って給湯管の方へ逆流してしまうことがあるという問題点があった。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、逆止弁が異物の噛み込みなどで水密不良になっても浴槽内の汚水が上水道の側へ逆流するのを完全に防止することができる逆流防止装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記問題を解決するために、給湯管から浴槽への配管の途中に設けられて前記浴槽から上水道への汚水の逆流を防止する逆流防止装置であって、前記給湯管から前記浴槽へ向かう水の流れを開放または遮断する電磁弁と、開弁方向に付勢するためのスプリングを有し、前記上水道の圧力低下に応動して前記電磁弁より前記浴槽の側の前記配管内の水を大気に放出するよう開閉動作する一方、前記上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つ大気開放弁と、を備えた逆流防止装置において、前記大気開放弁から前記浴槽へ向かう前記配管内に一つのみ配置されて前記浴槽から前記大気開放弁の方向への流れを阻止する第1の逆止弁と、前記電磁弁と前記大気開放弁との間に一つのみ配置され、前記大気開放弁が前記上水道の圧力低下に応動して大気開放したときに、前記大気開放弁を介して大気に放出される水および吸い込まれた大気が前記上水道の圧力低下によって前記電磁弁の方向に流れてしまうのを阻止する第2の逆止弁と、を備えていることを特徴とする逆流防止装置が提供される。
【0014】
このような逆流防止装置によれば、第1の逆止弁および第2の逆止弁が異物の噛み込みなどで水密不良になっているときに、断水などで上水道が負圧になると、浴槽の汚水がその水頭圧により第1の逆止弁を介して大気開放弁まで逆流し、その汚水は上水道の負圧を受けて開弁した大気開放弁を介して大気に放出される。このとき、異物を噛み込んだ第2の逆止弁は、流れ絞り装置あるいはオリフィスとして働き、上水道の負圧によって大気開放弁まで逆流してきた汚水に対して給湯管側の方へ吸引するだけの吸引力は発生せず、実質的に、浴槽の汚水が上水道まで逆流することはない。このように、電磁弁と大気開放弁との間に第2の逆止弁を配置するだけで、給湯管側への汚水の逆流を実質的に完全に防止することができ、この逆流防止装置を適用した給湯システムの信頼性を大幅に向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、給湯システムに適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は第1の実施の形態に係る給湯システムの構成例を示す図である。
本発明による逆流防止装置を適用した給湯システムにおいて、上水道の給水管1は、流量センサ2を介して熱交換器3および水バイパス弁4の上流側に接続されており、熱交換器3および水バイパス弁4の下流側は合流した後、水比例弁5に接続されている。この水比例弁5の下流側は、たとえば台所の蛇口などへ出湯する給湯管6に接続される。
【0017】
水比例弁5の下流側は、また、流量センサ7、電磁弁8、2つの逆止弁9,10を介して風呂の浴槽11に配管されており、逆止弁9と逆止弁10との間の配管には、大気開放弁12が配置されている。この大気開放弁12は、検圧管13を介して流量センサ2の下流側の給水管1に接続されている。この逆流防止装置の特徴的なところは、電磁弁8と大気開放弁12との間に逆止弁9を配置したことであり、この逆止弁9は、従来、浴槽11側に安全のために2個直列に配置した1個を利用することができ、これにより、この逆流防止装置を使用したことによるコスト上昇はない。なお、大気開放弁12の構成および動作原理は、図4を参照して詳述した大気開放弁と同じであるため、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0018】
給水管1から給水された上水は、流量センサ2を通り、一部が熱交換器3にて加熱されて湯になり、一部は水バイパス弁4を通って熱交換器3から出てきた湯と混合される。このとき、水バイパス弁4により熱交換器3をバイパスする流量を制御することにより、湯水の混合比が変えられて出湯温度が制御される。所望の温度に制御された湯は、さらに、水比例弁5により出湯流量が制御されて給湯管6より給湯される。
【0019】
また、浴槽11に湯張りを行う時には、電磁弁8を開けることにより、水比例弁5を出た湯が流量センサ7、電磁弁8、逆止弁9,10を介して風呂の浴槽11へ供給される。このとき、大気開放弁12は、検圧管13を介して上水道の1次圧が導入されているため、そのオーバフロー口は閉じていて、単なる配管として機能しているだけである。
【0020】
断水などが発生して給水管1内に負圧が発生したときには、大気開放弁12は、上水道の1次圧の低下を感知して大気開放し、逆止弁9と逆止弁10との間の配管内の水を大気に放出する。
【0021】
もし、浴槽11が高所にあり、逆止弁10が異物の噛み込みなどにより水密不良となっていた場合には、浴槽11内の汚水がその水頭圧により逆止弁10を介して大気開放弁12まで逆流してくるが、その汚水は大気開放弁12により大気に放出されるため、浴槽内の汚水が給湯管6の方まで逆流することはない。また、たとえ逆止弁9についても異物の噛み込みなどによる水密不良が発生していたとしても、この場合、逆止弁9は開口面積の小さなオリフィスとして機能するため、給湯管6の側の負圧によって大気開放弁12から大気を吸い込もうとしてもその空気の流量は少ないため、オーバフロー口へ流れる汚水を吸引するまでには至らず、浴槽内の汚水が給湯管6まで逆流してしまうことはない。
【0022】
図2は第2の実施の形態に係る給湯システムの構成例を示す図である。この図に置いて、図1に示した構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0023】
この第2の実施の形態に係る給湯システムでは、大気開放弁12と浴槽11との間の配管に2つの逆止弁10a,10bを直列に配置している。これにより、浴槽11から大気開放弁12へ逆流する可能性をさらに低減させている。
【0024】
この構成において、逆流防止装置の動作は、図1に示した第1の実施の形態の場合と同じである。
図3は第3の実施の形態に係る給湯システムの構成例を示す図である。この図に置いて、図1に示した構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0025】
この第3の実施の形態に係る給湯システムは、第1の実施の形態に係る給湯システムと比較して、電磁弁8の上流側に負圧破壊装置(バキュームブレーカ)14を追加配置している点で異なる。
【0026】
この負圧破壊装置14は、大気に開口した逆止弁の構成を有しており、通常は、配管内の通水圧により閉じていて、断水などにより、給湯管6に負圧が発生した場合には、その負圧で開いて、その配管内に大気を導入して、配管内の負圧状態をなくす働きをするものである。
【0027】
これは、電磁弁8と大気開放弁12との間に配置した逆止弁9が堆積した異物によって弁閉時の開口面積が大きくなってしまった場合、オリフィスの減圧効果が小さくなることによる吸引力増加が生じるが、それを、負圧破壊装置14で防止することを意図している。
【0028】
以上の構成において、断水などが発生して給水管1内に負圧が発生したときには、大気開放弁12は、上水道の1次圧の低下を感知して大気開放し、逆止弁9と逆止弁10との間の配管内の水を大気に放出する。このとき、給湯管6側の負圧で負圧破壊装置14が開き、その配管内に大気を導入して、配管内の負圧状態を解消する。
【0029】
もし、浴槽11が高所にあり、逆止弁10が異物の噛み込みなどにより水密不良となっていた場合には、浴槽11内の汚水がその水頭圧により逆止弁10を介して大気開放弁12まで逆流してくるが、その汚水は大気開放弁12により大気に放出されるため、浴槽内の汚水が給湯管6の方まで逆流することはない。また、逆止弁9も異物の噛み込みが発生していた場合でも、給湯管6の側の負圧によって負圧破壊装置14がその負圧を破壊してくれるので、給湯管6の側への吸い込み力がなくなり、オーバフロー口へ流れる汚水を吸引するまでには至らない。これにより、汚水が上水側へ逆流することを完全に防止することができる。
【0030】
なお、上記の第1ないし第3の実施の形態では、電磁弁8と大気開放弁12との間に配置した逆止弁9を1個で構成したが、複数個直列に配置した構成でもよい。また、浴槽側への流量を検知する流量センサ7は、給湯管6と電磁弁8との間に配置したが、電磁弁8と逆止弁9との間に配置してもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、電磁弁と大気開放弁との間に逆止弁を配置する構成にした。これにより、たとえ、浴槽側に設けた逆止弁および電磁弁と大気開放弁との間に設けた逆止弁がともに水密不良になって、給水側の水圧が負圧になることで浴槽の汚水がその水頭圧により大気開放弁まで逆流してきたとしても、電磁弁と大気開放弁との間に設けた逆止弁がオリフィスのように機能するため、給水側の負圧が汚水を大気開放弁から給水側へ吸引する力が非常に弱くなり、汚水が給水側の方まで逆流することがなくなり、この逆流防止装置を適用した給湯システムの信頼性を向上させることができる。
【0032】
また、従来、浴槽側にて安全のために2個設けていた逆止弁の1個を電磁弁と大気開放弁との間に配置するようにすれば、コスト上昇を伴わずに、逆流防止装置を実現することができる。
【0033】
さらに、電磁弁の上流側に比較的安価な負圧破壊装置を配置することで、大気開放弁にある汚水を給水側へ吸引する力を実質的になくすことができ、大幅にコストを上昇させることなく、実質的に汚水の逆流を完全に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係る給湯システムの構成例を示す図である。
【図2】第2の実施の形態に係る給湯システムの構成例を示す図である。
【図3】第3の実施の形態に係る給湯システムの構成例を示す図である。
【図4】従来の給湯システムの構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 給水管
2 流量センサ
3 熱交換器
4 水バイパス弁
5 水比例弁
6 給湯管
7 流量センサ
8 電磁弁
9,10,10a,10b 逆止弁
11 浴槽
12 大気開放弁
13 検圧管
14 負圧破壊装置
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2014-05-13 
結審通知日 2014-05-19 
審決日 2014-05-30 
出願番号 特願2002-54751(P2002-54751)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (F24H)
P 1 113・ 841- YAA (F24H)
P 1 113・ 16- YAA (F24H)
P 1 113・ 537- YAA (F24H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川端 修  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 山崎 勝司
竹之内 秀明
登録日 2006-08-25 
登録番号 特許第3845031号(P3845031)
発明の名称 逆流防止装置  
代理人 三木 友由  
代理人 森下 賢樹  
代理人 特許業務法人グランダム特許事務所  
代理人 松尾 卓哉  
代理人 植村 元雄  
復代理人 横井 康真  
代理人 三木 友由  
代理人 森下 賢樹  
代理人 横井 康真  
代理人 松尾 卓哉  

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