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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A01B
審判 全部無効 1項2号公然実施  A01B
審判 全部無効 2項進歩性  A01B
管理番号 1309863
審判番号 無効2013-800244  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-12-27 
確定日 2015-12-21 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5322598号発明「畦塗り機の整畦体用羽根板及びそれを使用した整畦体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正請求書に添付された明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の手続の経緯は以下のとおりである。
平成20年11月18日 本件出願(特願2008-294113号)
平成25年 7月26日 設定登録(特許第5322598号)
平成25年12月27日 本件無効審判請求
平成25年12月27日 請求人より検証申出書、証人尋問申出書、
尋問事項書提出
平成26年 4月 1日 被請求人より審判事件答弁書提出
平成26年 7月18日 審理事項通知
平成26年 9月 4日 請求人・被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成26年 9月12日 被請求人より上申書提出
平成26年 9月18日 口頭審理
平成26年 9月25日 被請求人より上申書提出
平成26年11月 7日 無効理由通知・職権審理結果通知
平成26年12月 4日 請求人より意見書提出
平成26年12月15日 被請求人より意見書提出
平成27年 4月 3日 審決の予告
平成27年 6月 5日 被請求人より訂正請求書、上申書提出
平成27年 7月30日 請求人より審判事件弁駁書提出


第2 訂正請求について
平成27年6月5日付け訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は、本件設定登録時の特許第5322598号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正を求めるものである(以下、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)。

1 請求項1?4及び7からなる一群の請求項に係る訂正
(1)訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記支持部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部が形成されていることを特徴とする」
とあるのを、
「前記支持部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部が形成されており、
前記上面整畦部は、前記移行部又は前記張出部から前記移行部へかけての部分が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている、」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2?4及び7も同様に訂正する。
(なお、下線は訂正箇所である。以下同様。)

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の複数枚の羽根板」とあるのを「請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の複数枚の羽根板」に訂正する。

(2)訂正の適否の判断
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、上面整畦部を「前記移行部又は前記張出部から前記移行部へかけての部分が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている」ものに特定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記特定は、本件特許明細書の段落【0015】に、「移行部が法面整畦部の表面との間に空隙を置いて重なることは、上記のように移行部が、もしくは張出部から移行部へかけての部分が湾曲した状態で羽根板が製作されることにより実現される。」と、同段落【0029】に、「移行部を法面整畦部の表面への接触時に湾曲させる上では、必ずしも移行部に湾曲可能な弾性を与える必要はなく、羽根板の成形(成型)時に移行部が法面整畦部の表面に接触した状況を想定した曲面を移行部に与えておくことによっても、張出部から移行部へかけての範囲を湾曲させることが可能である(図9、図11)。」と記載され、また、湾曲の向きについては、同段落【0020】、【0025】、【0062】に「畦側が凹となるように」と記載され、これらの段落で言及する各図面にも開示がある。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項5を独立請求項としたことに伴い、引用する請求項を訂正するものであり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

2 請求項5、6及び8?11からなる一群の請求項に係る訂正
(1)訂正事項
ア 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に
「前記張出部の周方向先端部における返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合いは前記上面整畦部の軸方向先端側から法面整畦部側へかけて次第に小さくなっていることを特徴とする請求項4に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。」
とあるのを、
「軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、本体となる支持部材とその周面に接続される複数枚の羽根板を有し、前記法面整畦部の軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを備え、畦塗り機に装着される整畦体の前記上面整畦部を構成する羽根板であり、
前記支持部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部が形成されており、前記張出部の周方向先端部に前記支持部材側へ湾曲、もしくは屈曲した返し部が形成されており、
前記張出部の周方向先端部における返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合いは前記上面整畦部の軸方向先端側から法面整畦部側へかけて次第に小さくなっている、畦塗り機の整畦体用羽根板。」
に訂正する。
請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。

イ 訂正事項4
請求項8に以下の記載を新設する。
「前記移行部は前記法面整畦部の表面に接触したときに、表面側へ湾曲可能な弾性を有している、請求項5に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。」

ウ 訂正事項5
請求項9に以下の記載を新設する。
「前記移行部は前記上面整畦部の軸方向に、少なくとも前記法面整畦部側の端部が前記法面整畦部の表面に接触可能な長さを有している、請求項5又は8に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。」

エ 訂正事項6
請求項10に以下の記載を新設する。
「前記張出部の周方向先端部における返し部は前記張出部から前記移行部付近まで形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。」

オ 訂正事項7
請求項11に以下の記載を新設する。
「請求項5、6、8、9又は10に記載の複数枚の羽根板が全体として前記支持部材の表面を覆う状態で、前記支持部材の表面にその周方向に間隔を置いて接続され、前記上面整畦部が構成されていることを特徴とする畦塗り機の整畦体。」

(2)訂正の適否の判断
ア 訂正事項3について
訂正事項3は、請求項5のうち請求項1及び4に従属していたものを、独立請求項としたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項3は、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

イ 訂正事項4について
訂正事項4は、請求項5のうち請求項1及び4に従属していたものを独立請求項としたことに伴い、請求項5のうち請求項2及び4に従属していたものを、請求項5の従属項として、請求項8に新設するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項4は、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

ウ 訂正事項5について
訂正事項5は、請求項5のうち請求項1及び4に従属していたものを独立請求項としたことに伴い、請求項5のうち請求項3及び4に従属していたものを、請求項5又は8の従属項として、請求項9に新設するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項5は、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

エ 訂正事項6について
訂正事項6は、請求項5のうち請求項1及び4に従属していたものを独立請求項としたことに伴い、請求項6のうち請求項2及び4、又は、請求項3及び4に従属していたものを、請求項8又は9の従属項として、請求項10に新設するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項6は、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

オ 訂正事項7について
訂正事項7は、請求項5のうち請求項1及び4に従属していたものを独立請求項としたことに伴い、請求項7のうち請求項5又は6を引用していたものを、請求項5、6、8、9又は10のいずれかを引用するものとして、請求項11に新設するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項7は、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3 まとめ
上記1及び2に記載したとおり、平成27年6月5日付け訂正請求による訂正は、特許請求の範囲の減縮、又は他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でなされ、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、一群の請求項ごとに請求するものである。
したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。


第3 本件訂正発明
上記第2のとおり本件訂正を認めるので、本件特許の請求項1ないし請求項11に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明11」という。)は、本件訂正請求により訂正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、本体となる支持部材とその周面に接続される複数枚の羽根板を有し、前記法面整畦部の軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを備え、畦塗り機に装着される整畦体の前記上面整畦部を構成する羽根板であり、
前記支持部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部が形成されており、
前記上面整畦部は、前記移行部又は前記張出部から前記移行部へかけての部分が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている、畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項2】
前記移行部は前記法面整畦部の表面に接触したときに、表面側へ湾曲可能な弾性を有していることを特徴とする請求項1に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項3】
前記移行部は前記上面整畦部の軸方向に、少なくとも前記法面整畦部側の端部が前記法面整畦部の表面に接触可能な長さを有していることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項4】
前記張出部の周方向先端部に前記支持部材側へ湾曲、もしくは屈曲した返し部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項5】
軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、本体となる支持部材とその周面に接続される複数枚の羽根板を有し、前記法面整畦部の軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを備え、畦塗り機に装着される整畦体の前記上面整畦部を構成する羽根板であり、
前記支持部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部が形成されており、
前記張出部の周方向先端部に前記支持部材側へ湾曲、もしくは屈曲した返し部が形成されており、
前記張出部の周方向先端部における返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合いは前記上面整畦部の軸方向先端側から法面整畦部側へかけて次第に小さくなっている、畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項6】
前記張出部の周方向先端部における返し部は前記張出部から前記移行部付近まで形成されていることを特徴とする請求項5に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の複数枚の羽根板が全体として前記支持部材の表面を覆う状態で、前記支持部材の表面にその周方向に間隔を置いて接続され、前記上面整畦部が構成されていることを特徴とする畦塗り機の整畦体。
【請求項8】
前記移行部は前記法面整畦部の表面に接触したときに、表面側へ湾曲可能な弾性を有している、請求項5に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項9】
前記移行部は前記上面整畦部の軸方向に、少なくとも前記法面整畦部側の端部が前記法面整畦部の表面に接触可能な長さを有している、請求項5又は8に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項10】
前記張出部の周方向先端部における返し部は前記張出部から前記移行部付近まで形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項11】
請求項5、6、8、9、又は10に記載の複数枚の羽根板が全体として前記支持部材の表面を覆う状態で、前記支持部材の表面にその周方向に間隔を置いて接続され、前記上面整畦部が構成されていることを特徴とする畦塗り機の整畦体。」


第4 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、特許第5322598号の請求項1ないし7(本件訂正後の請求項1ないし11)に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として、甲第1?13号証並びに検甲第1号証説明書を提出し、以下の主張を行った。

(1)審判請求書における主張(本件訂正前)
請求人は、特許第5322598号の請求項1ないし7に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、以下の無効理由を主張した。
[無効理由1]
本件請求項1ないし3および7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当して特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
なお、仮に同一でないとしても、本件請求項1ないし3および7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件請求項4ないし6に係る発明は、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
[無効理由2]
本件請求項1ないし4および7に係る発明は、検甲第1号証に係る発明と同一であるから、特許法第29条第1項第2号(審決注:審判請求書では、「第1項第3号」となっているが、請求書全体の記載を参酌すると、「第1項第2号」の誤記と認められる。)に該当して特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
なお、仮に同一でないとしても、本件請求項1ないし4および7に係る発明は、検甲第1号証に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件請求項5および6に係る発明は、検甲第1号証に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(6頁下から4行?7頁末行)

検甲第1号証の「171-M型の畦塗機(マンタミニ)」は、本件特許の出願前である平成17年(2005年)2月12日に有限会社小林機会から松山株式会社に販売(公然実施)されたものである。
(24頁10?14行)

なお、「171-M型の畦塗機(マンタミニ)」が、検甲第1号証説明書に記載されたとおりであることを立証するために、請求人から検証が申請されている。

(2)口頭審理陳述要領書における主張(本件訂正前)
ア 上記甲第2号証の図4からみて明らかなように、甲第2号証の「圧締板体E(羽根板)の凸条部E_(1)」は、本件発明4の「屈曲した返し部」、つまり「張出部32bの回転方向下流側の先端部32cとそれ以外の張出部32bとの境界部分に形成された返し部」(本件明細書[0101]を参照)に相当する。
また、甲第1号証においては、「圧締板体E(羽根板)」には「返し部」が形成されていないが、「圧締板主体L」の張出部の周方向先端部には「返し部」が形成されている(上記甲第1号証の図8および図9を参照)。
このため、甲第2号証の「圧締板体E(羽根板)の凸条部E_(1)(返し部)」を甲第1号証の「圧締板体E(羽根板)」に適用し、この適用の際に、圧締板体E(羽根板)に形成する返し部を、圧締板主体Lの返し部に対応させて張出部の周方向先端部に形成することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、上記のとおり、甲第1号証と甲第2号証との組み合わせの動機付けとしては、技術分野が同じであること以外に、「引用発明の内容中の示唆」として、甲第1号証中の記載(圧締板主体Lの張出部の周方向先端部に形成された返し部)が存在する。
また、本件発明4の作用効果、つまり、「返し部を形成することで(請求項4)、土の跳ね上げを抑制、もしくは防止することが可能である」(本件明細書[0033]を参照)という作用効果は、甲第1号証の「圧締板主体Lの返し部」でも同様の作用効果を奏し得るため、甲第1号証および甲第2号証から当業者が予測できる範囲内のものに過ぎない。
(4頁下から6行?5頁17行)

イ 畦塗り機の技術分野において、回転する畦形成体によって畦の上面と法面の境界部分(畦肩部)を曲面に仕上げることは、本件出願前における周知技術である。
例示するまでもないが、例えば甲第11号証(特開平9-327205号公報)には、「また、前記側面修復体33の縮径端部34に前記上面修復体35を一体に連設した縮径連設部が旧畦Aの肩部Dを弧状に修復する肩修復部36として形成されている。」([0024])との記載、「したがって、旧畦Aの肩部Dは固く締め固められて順次修復される。すなわち、側面修復体33に上面修復体35を連設した縮径連設部を旧畦Aの肩部Dを修復する肩修復部36として形成されているので、側面修復体33と上面修復体35との縮径連設部に集められる泥土は肩修復部36にて旧畦Aの肩部Dに順次塗り付けられ、旧畦Aの肩部Dは弧状に固く締め固められて順次修復される。」(「0038」)との記載等からみて、「畦の上面と法面の境界部分(畦肩部)を曲面に仕上げることが可能な畦形成体」が記載されている。
また、例えば甲第12号証(特開平10-150803号公報)には、「又、16の円筒回転体は畦形成部2の畦上面部と斜面部と結合する角部、所ゆる肩部34を断面円弧状に仕上げる末広がり円錐鍔を保有した構成であり、内側円錐回転体18の上面となめらかに連結するように形成される。」([0015])との記載等からみて、「畦の上面と法面の境界部分(畦肩部)を曲面に仕上げることが可能な畦形成体」が記載されている。
そして、上記周知技術の技術分野は、甲第1号証に記載された発明の技術分野と同じであるため、これら周知技術と甲第1号証記載の発明とを組み合わせる動機付けが存在する。
したがって、甲第1号証記載の発明に上記周知技術を適用して、畦の上面と法面の境界部分を曲面に仕上がるように、本件発明の上記相違点に係る構成にすることは、その適用を妨げる阻害要因もなく、当業者であれば容易に想到し得ることである。
また、本件発明の作用効果も、甲第1号証記載の発明および上記周知技術から当業者が予測できる範囲内のものに過ぎない。
(6頁7行?7頁8行)

ウ 板状部材に屈曲部分が形成されている場合に、その屈曲部分が板状部材の曲げ変形を阻害する要因となることや、その屈曲部分の屈曲の度合いが小さければ板状部材の曲げ変形に対する阻害も小さいことは、当業者にとって技術常識である。
このため、屈曲部分である返し部を甲第1号証の圧締板体E(羽根板)の張出部の周方向先端部に形成するときに、羽根板の重合部分E_(2)側(移行部)が法面整畦部の表面との接触により容易に曲げ変形するように、屈曲部分である返し部の屈曲の度合いを上面整畦部の軸方向先端側から法面整畦部側へかけて次第に小さくするようなことは、当業者が普通に採用する単なる設計事項に過ぎず、また、その作用効果も当業者の予測範囲内のものに過ぎない。
(7頁14?24行)

(3)審判事件弁駁書における主張(本件訂正後)
ア 甲第11,12号証に記載された前記構成は、甲第1号証に記載された発明と同じ「畦塗り機」の技術分野に属するものである。
このため、甲第11,12号証に記載された前記構成を甲第1号証に記載された発明に適用する動機付けがあり、その一方、その適用を妨げる阻害要因はない。
また、甲第1号証に記載された発明の重合部分E_(2)(本件訂正発明1の「移行部」に相当する部分)は、「僥み動作する」、つまり「湾曲する」ものであるから(審決の予告第28頁下から第5行を参照)、甲第1号証には、畦の上面と法面の境界部分を曲面に仕上げる重合部分E_(2)(移行部)を畦側が凹の湾曲状態に製作することが示唆されているといえる。さらにいえば、この重合部分E_(2)(移行部)は、繰り返しの使用により曲がり癖が付き、不可避的に畦側が凹の湾曲した形状となる場合もある。
以上のことから、甲第11,12号証に記載された「畦の上面と法面の境界部分を曲面に仕上げる部分(肩修復部36、円錐鍔)が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている」という構成を甲第1号証に記載された発明の移行部に適用して、本件訂正発明1の前記構成(訂正により追加された「前記上面整畦部は、前記移行部又は前記張出部から前記移行部へかけての部分が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている」という構成)とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(8頁1?18行)

イ なお付言すると、甲第13号証の【0042】には「また、本体板部25および突出板部26は、それぞれ回転方向に沿ってやや湾曲した曲面部に形成した構成について説明したが、本体板部25および突出板部26の少なくとも一方を湾曲させずに平面状に形成してもよい。」との記載があり、この甲第13号証には、畦塗り用の分割羽根板である作用板21の突出板部26について、湾曲した曲面状に形成したり、平面状に形成したりする技術事項が記載されている。
そして、この甲第13号証記載の技術事項を甲第1号証記載の発明の移行部に適用して本件訂正発明1の前記構成とすることは、当業者が容易に成し得ることであるということもできる。
(10頁9?17行)

ウ 甲第11,12号証には、「畦の上面と法面の境界部分を曲面に仕上げる部分が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている」という構成が記載されており、また、この構成を甲1,6号証に記載された発明に適用する動機付け等も存在する。
したがって、本件訂正発明1は、甲第6号証、甲第1号証、甲第11号証及び甲第12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(11頁7?16行)

[証拠方法]
甲第1号証:特開2001-211703号公報
甲第2号証:特開2003-304706号公報
甲第3号証:農機新聞,平成16年7月6日,株式会社新農林社発行
(株式会社農機産業調査研究所発行の縮刷版)
甲第4号証:農機新聞,平成17年3月15日,株式会社新農林社発行
(株式会社農機産業調査研究所発行の縮刷版)
甲第5号証:「マンタミニ-170」の商品カタログ
甲第6号証:「マンタミニ171、マンタサウスポー」の商品カタログ
甲第7号証:「アゼヌリキ M170-M」の納品・請求書
株式会社日立建機ティエラーより有限会社小林機械宛て
甲第8号証:「畦塗機マンタミニ 170-M」の請求書
有限会社小林機械より松山(株)宛て
甲第9号証:「畦塗機マンタミニ&サウスポー」の取扱説明書
甲第10号証:有限会社小林機械作成の証明書
甲第11号証:特開平9-327205号公報
甲第12号証:特開平10-150803号公報
甲第13号証:特開2003-70301号公報
検甲第1号証説明書:171-M型の畦塗機(マンタミニ)の説明

2 被請求人の主張
これに対し、被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として、乙第1?4号証を提出し、以下の主張を行った。

(1)審判事件答弁書における主張 (本件訂正前)
ア 本件特許発明1?7は、いずれも、甲1及び甲2の存在にかかわらず、新規性及び進歩性を有するのであって、無効理由1があるとする請求人の主張は失当である。
(18頁23?25行)

イ 本件特許発明は、検甲1の存在にかかわらず、新規性及び進歩性を有するのであって、無効理由2があるとする請求人の主張は、失当である。
(26頁22?24行)

ウ 本件特許発明1における「法面整畦部に重なる」とは、畦の上面と法面の境界部分を曲面に仕上げることが可能となるように、移行部が、整畦体の回転時に法面整畦部の羽根板から畦側へ押圧されることで、法面整畦部の表面に重なって面でもしくは線で接触することをいうと解されるところ、甲1においては、「重合部分E_(2)」が、畦の上面と法面の境界部分を曲面に仕上げることについて、何らの記載も示唆もされていないから、「重合部分E_(2)」は、「側面整畦部13aに重なる」ものということはできない。
この点、請求人は、「甲1発明では・・・畦の上面から法面にかけての範囲(畦肩部)を曲面に仕上げることができる(・・・甲第1号証の図6を参照)」(審判請求書17頁8行?12行)などと主張するが、甲1においては、「畦肩部」や「曲面」などの文言やこれらを示す示唆はなく、却って、「畦の上面W_(1)と一方側面W_(2)との畦角部を圧締板体Gの上面に重合部分E_(2)が位置して回転締圧するように構成している」([0012])、「畦の上面W_(1)と一方側面W_(2)との畦角部を良好に締圧することができ、良好な整畦作業を行うことができ、一層堅牢な畦を得ることができる」([0018])等、「畦角部」との文言が使用されており、畦の上面と側面との間には「角部」が形成されていることが明らかである。
(9頁1?21行)

(2)意見書における主張(本件訂正前)
ア 甲第6号証の頒布性について
仮に、甲6が2005年10月に作成されたとの間接事実、及び、甲6が頒布されたとの間接事実が認定できるとしても、これらの間接事実に基づき、経験則に照らして、本件特許の出願前に甲6が頒布された事実を推認することはできない。なぜならば、甲6を本件特許に係る出願後に、請求人が手に入れた可能性は十分にあるからである。例えば、カタログを作成しても頒布せずにお蔵入りさせることはよくあることであるし、甲6がカタログでない可能性(例えば、カタログの試し刷りであること)も考えられる。そして、例えば、請求人が、本件審判のために、甲6の元の保有者に協力を仰いで甲6を入手した可能性は十分に考えられる。
したがって、甲6が「出願前に頒布された」ものであるということが、「通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる」ものであるということは到底できない。よって、本件審判における全証拠に基づいても、甲6が「本件特許に係る出願の出願前に頒布された刊行物」であるとの事実認定をすることができないことは明らかである。
(4頁14行?5頁3行)

イ 甲第1号証の畦角部について
仮に、甲1図6及び甲1の各段落の記載から、重合部分E_(2)が側面整畦部13a側に撓むことが可能なことが理解できるとしても、それが本件特許発明における「法面整畦部に重なる」に相当するものでないことは、明らかである。
甲1においては、「畦肩部」や「曲面」などの文言やこれらを示す示唆はなく、却って、「畦の上面W_(1)と一方側面W_(2)との畦角部を圧締板体Gの上面に重合部分E_(2)が位置して回転締圧するように構成している」([0012])、「畦の上面W_(1)と一方側面W_(2)との畦角部を良好に締圧することができ、良好な整畦作業を行うことができ、一層堅牢な畦を得ることができる」([0018])等、「畦角部」との文言が使用されており、畦の上面と側面との間には「角部」が形成されていることが明らかである。また、甲1図4及び図3においては、畦の上面と側面との間に角部が形成されていることが明らかに読み取れる。特に、甲1図3においては、畦の上面と側面との間が直線で画されていることから、角部が形成されていることが読み取れる。
(7頁下から2行?8頁17行)

ウ 甲第6号証の写真から読み取れる事項について
(ア)同写真においては、上面と法面との間に、明確に、明るさのはっきり変わる直線状の部分が写っている(次頁写真中、矢印の先に示される部分)。これが上面と法面とを画する角部であることは明らかである。つまり、本件特許発明のように、畦の上面と法面の境界部分が曲面(崩壊しにくい程度の曲面)に仕上げられている場合、境界部分にシャープな直線は現れないから(本件特許の図8参照)、角部であることは明白である。
(11頁下から4行?12頁4行)

エ 動機付けについて
そうすると、仮に、本件無効理由が述べるように、甲11及び甲12に基づき、「畦の肩部が崩れ易いという課題を解決するために、当該肩部を締め固める必要があること」が周知な課題であると認定できるとしても、甲6発明も、甲1も、肩部を弧状に又は断面円弧状に締め固めることとは無関係であるから、甲6発明に甲1を適用する動機付けとはならない。
(14頁17?22行)

(3)平成27年6月5日付け上申書における主張
ア 甲1に記載された発明との相違点
「前記上面整畦部は、前記移行部又は前記張出部から前記移行部にかけての部分が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている」との事項は、甲1に開示がなく、相違点となる。
また、上記相違点は、甲2?甲12に開示がなく、また当業者が適宜設計し得る事項でもない。
(3頁13行?4頁4行)

イ 甲6に記載された発明との相違点
「前記上面整畦部は、前記移行部又は前記張出部から前記移行部にかけての部分が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている」との事項は、甲1に開示がなく、相違点となる。
また、上記相違点は、甲2?甲12に開示がなく、また当業者が適宜設計し得る事項でもない。
(4頁23行?5頁3行)

[証拠方法]
乙第1号証:特許第3997473号公報
乙第2号証:特開2000-37106号公報
乙第3号証:2006-55121号公報
乙第4号証:塩月秀平「特許出願に係る発明の要旨の認定」「最高裁判所判例解説民事篇平成3年度」28頁?50頁 の写し


第5 当審無効理由について(本件訂正前)
当審において、平成26年11月7日付けで、無効理由(以下「当審無効理由」という。)を被請求人に通知し、同内容の職権審理結果通知を請求人に通知したところ、請求人より平成26年12月4日に意見書が提出され、被請求人より平成26年12月15日に意見書が提出された。(なお、当審において無効理由を通知することについて、被請求人より平成26年9月25日に上申書が提出されている。)
当審無効理由の概要は以下のとおりである。

[当審無効理由]
本件特許の請求項1?4,7に係る発明は、甲第6号証に記載された甲6発明及び甲第1号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。


第6 当審の判断
1 各甲号証の記載事項
(1)甲第1号証
本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同様。)
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行機体に連結機構により機枠を連結し、該機枠に旧畦上に土を盛り上げる盛土機構を設け、該盛土機構の進行方向後方位置に畦面を圧接回転により回転整畦可能な回転整畦体からなる整畦機構を設けてなり、上記回転整畦体は畦の一方側面を回転整畦可能な側面整畦部及び畦の上面を回転整畦可能な上面整畦部とからなり、該側面整畦部及び上面整畦部の外周面部分に圧締面部を間隔を置いて複数個形成すると共に該側面整畦部及び上面整畦部に回転方向前方位置の圧締面部側から隣り合う後方位置の圧締面部の圧締面に至る可撓性板材からなる圧締板体を配設し、該側面整畦部及び上面整畦部の隣り合う圧締面部の間に通穴を形成し、該側面整畦部の圧締板体を金属からなる可撓性板材により形成し、該上面整畦部の圧締板体を合成樹脂からなる可撓性板材により形成し、該上面整畦部の圧締板体に締圧通穴部を形成すると共に該締圧通穴部に金属製の可撓性板材からなる圧締板主体を配設して構成したことを特徴とする整畦機。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は例えば畦の造成作業や修復作業等に用いられる整畦機に関するものである。」

ウ 「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、走行機体に連結機構により機枠を連結し、該機枠に旧畦上に土を盛り上げる盛土機構を設け、該盛土機構の進行方向後方位置に畦面を圧接回転により回転整畦可能な回転整畦体からなる整畦機構を設けてなり、上記回転整畦体は畦の一方側面を回転整畦可能な側面整畦部及び畦の上面を回転整畦可能な上面整畦部とからなり、該側面整畦部及び上面整畦部の外周面部分に圧締面部を間隔を置いて複数個形成すると共に該側面整畦部及び上面整畦部に回転方向前方位置の圧締面部側から隣り合う後方位置の圧締面部の圧締面に至る可撓性板材からなる圧締板体を配設し、該側面整畦部及び上面整畦部の隣り合う圧締面部の間に通穴を形成し、該側面整畦部の圧締板体を金属からなる可撓性板材により形成し、該上面整畦部の圧締板体を合成樹脂からなる可撓性板材により形成し、該上面整畦部の圧締板体に締圧通穴部を形成すると共に該締圧通穴部に金属製の可撓性板材からなる圧締板主体を配設して構成したことを特徴とする整畦機にある。」

エ 「【0008】
【発明の実施の形態】図1乃至図9は本発明の実施の形態例を示し、1は走行機体であって、この場合トラクタが用いられ、走行機体1の後部に三点リンク式の連結機構2により機枠3を上下動可能に連結している。
【0009】4は盛土機構であって、この場合回転ロータからなる盛土体5から構成され、この盛土体5はロータ胴5aの外周に複数個の掻上刃5bを突設すると共にロータ胴5aに取付軸5cを突設してなり、上記機枠3に盛土体5をその回転軸線を畦造成方向と平行にして回転自在に取付け、機枠3に走行機体1に設けられた動力取出軸6により回転する主軸7を軸受し、盛土体5を主軸7より変向用ギヤ列8及びチェーン機構9を介して回転させ、この盛土体5の回転により畦際の圃場面Mの土を削出軌跡Nをもって削出して旧畦に向けて跳ね上げて盛り上げるように構成している。
【0010】10はカバー部材であって、この場合上記機枠3に取り付けられ、上記盛土体5の上方及び畦Wの上方を覆う形状に形成され、カバー部材10の畦側に側部カバー部材11が上下動自在に取り付けられている。
【0011】12は整畦機構であって、この場合畦W面を外周面部分の圧接回転により回転整畦可能な回転整畦体13と回転機構14とからなり、回転整畦体13は畦Wの一方側面W_(2)を整畦可能な側面整畦部13a及び畦Wの上面W_(1)を整畦可能な上面整畦部13bとを着脱自在に設け、回転軸線Pを畦Wの一方側面W_(2)の側方から畦W側へ斜め上方に向かう所定角度θの上向き方向に配置され、回転整畦体13は回転機構14により回転軸線Pを中心として図中矢印方向に強制回転するように構成している。
【0012】この場合、回転整畦体13としての側面整畦部13a及び上面整畦部13bの外周面部分に圧締面部K・Dを間隔を置いて複数個、この場合八個形成すると共に側面整畦部13a及び上面整畦部13bの回転方向前方位置の圧締面部K・D側から隣り合う後方位置の圧締面部K・Dの外面としての圧締面K_(1)・D_(1)に至る可撓性板材からなる圧締板体G・Eを配設し、隣り合う圧締面部K・Dの間に通穴F・Cを形成し、側面整畦部13aの圧締板体Gをステンレス等の金属からなる可撓性板材により形成し、上面整畦部13bの圧締板体Eを合成樹脂からなる可撓性板材により形成し、圧締板体Eに締圧通穴部E_(1)を形成すると共に締圧通穴部E_(1)にステンレス等の金属製の可撓性板材からなる圧締板主体Lを配設し、圧締板体Eの圧締板体G側に圧締板体Gの上面に重合接触する重合部分E_(2)を形成し、畦の上面W_(1)と一方側面W_(2)との畦角部を圧締板体Gの上面に重合部分E_(2)が位置して回転締圧するように構成している。
【0013】この場合、上記機枠3に取付枠15を取付け、取付枠15にブラケット16を突設し、ブラケット16に軸受筒17を取付け、この軸受筒17に駆動軸18を回転自在に横設し、上記機枠3の後部側面に枠体19を設け、枠体19内に歯車機構20及びチェーン機構21を内装し、枠体19の下部に伝導軸22を横設し、伝導軸22と主軸7とを歯車機構20とチェーン機構21とにより伝導連結すると共に駆動軸18と伝導軸22とを伸縮自在な自在継手23により連結し、この駆動軸18に回転整畦体13の中心に配置したロータ軸13cを連結し、しかして、主軸7の回転により回転整畦体13を図中矢印方向に回転させ、回転整畦体13の側面整畦部13a及び上面整畦部13bの外周面部分の回転接触により畦Wの一方側面W_(2)を締圧整畦すると共に畦Wの上面W_(1)を締圧整畦するように構成している。
【0014】又、上記回転整畦体13としての側面整畦部13aは大径リング材24aと小径リング材24bとの間に複数個の板状の桟材24cを間隔を置いて放射状に溶接固着し、かつ、側面整畦部13aの中心に六角軸状のロータ軸13cに挿通固定される連結軸24eを配置し、連結軸24eと大径リング材24a及び小径リング材24bとの間に複数個の連結杆24fを溶接連結してなり、又、上面整畦部13bは、同径のリング材25aとリング材25bとの間に複数個の板状の桟材25cを間隔を置いて放射状に溶接固着し、かつ、側面整畦部13aの中心に六角軸状のロータ軸13cに挿通固定される連結軸25dを配置し、連結軸25dとリング材25a及びリング材25bとの間に複数個の連結杆25eを溶接連結してなり、この複数個の桟材24c・25cを圧締面部K・Dに形成すると共に隣り合う圧締面部K・Dの間を通穴F・Cとして形成し、圧締面部K・Dの外面を圧締面K_(1)・D_(1)とし、圧締面部K・Dに取付片K_(2)・D_(2)を取付け、この取付片K_(2)・D_(2)にボルトナットからなる取付部K_(3)・D_(3)により圧締板体G・E及び圧締板主体Lを配設し、ロータ軸13cから連結軸25dを挿脱することにより上面整畦部13bを側面整畦部13aに対して着脱自在に設けて構成している。
【0015】この場合、圧締板体K及び圧締板主体Lは可撓性を有するステンレスやバネ鋼等の金属により製作され、圧締板体D(当審注:「D」は「E」の誤記である。)は可撓性を有するナイロン樹脂や塩化ビニール樹脂等の合成樹脂板により製作され、いずれも外的負荷により弾性的に撓み得る材質が用いられている。
【0016】・・・(省略)・・・
【0017】・・・(省略)・・・
【0018】この実施の形態例は上記構成であるから、走行機体1を旧畦に沿って走行し、動力取出軸6を回転すると一方では盛土体5としての回転ロータが畦際の圃場泥土を旧畦上に連続的に跳ね上げて盛り上げ、カバー部材10は盛土体5の上方及び畦側方への泥土飛散を防止し、跳ね上げられた泥土は外方飛散を防がれて自重落下し、他方では走行機体1の動力取出軸6を駆動源として整畦機構12が駆動され、回転整畦体13は回転機構14により回転し、回転整畦体13は畦Wの一方側面W_(2)を回転整畦可能な側面整畦部13a及び畦Wの上面W_(1)を回転整畦可能な上面整畦部13bとからなり、側面整畦部13a及び上面整畦部13bの外周面部分に圧締面部K・Dを間隔を置いて複数個形成すると共に側面整畦部13a及び上面整畦部13bに回転方向前方位置の圧締面部K・D側から隣り合う後方位置の圧締面部K・Dの圧締面K_(1)・D_(1)に至る可撓性板材からなる圧締板体G・Eを配設し、側面整畦部13a及び上面整畦部13bの隣り合う圧締面部K・Dの間に通穴F・Cを形成しているので、図2、図7の如く、回転整畦体13の図中矢印方向としての走行機体1の前進を助長する方向の回転に伴い圧締板体G・Eは徐々に盛土を締圧すると共に圧締面部K・Dにより圧締板体G・Eを介して強く締圧され、この複数個の圧締面部K・Dの存在により断続的に締圧され、複数個の圧締面部K・Dの存在により、回転整畦体13の全外周面で締圧する構造に比べて締圧面積が小さくなることにより締圧力を大きくすることができ、それだけ強固に畦を締め付けることができ、走行機体1の走行速度に対して回転整畦体13の回転速度を高めることにより回転整畦体13の圧締板体Gは畦面に回転滑り接触し、この回転すべり接触により畦Wの一方側面W_(2)及び畦Wの上面W_(1)を円滑かつ強固に締圧整畦することができ、かつ、上記隣り合う圧締面部K・K、D・Dの間に通穴F・Cを形成しているので、通穴F・Cにより一層断続的に畦面を締圧することになり、それだけ強固に締圧することができ、しかも、側面整畦部13aの圧締板体Gを金属からなる可撓性板材により形成し、上面整畦部13bの圧締板体Eを合成樹脂からなる可撓性板材により形成し、上面整畦部13bの圧締板体Eに締圧通穴部E_(1)を形成すると共に締圧通穴部E_(1)に金属製の可撓性板材からなる圧締板主体Lを配設しているから、圧締板体G・E及び圧締板主体Lは撓み動作しつつ盛土を徐々に締圧することができ、回転整畦体13の外周面部分への土の付着現象を抑制することができ、側面整畦部13aの圧締板体G及び圧締板主体Lは金属からなるので耐久性を高めることができると共に上面整畦部13bの圧締板体Eは合成樹脂からなるため金属に比べて圧締板体Eの可撓性を高めることができ、撓み動作しつつ側面整畦部13aの圧締板体Gに接触する上面整畦部13bの圧締板体Eの重合部分E_(2)は良好に撓み動作する共に側面整畦部13bの圧締板体Gの表面の傷付きも抑制することができ、側面整畦部13aの圧締板体Gと上面整畦部13bの圧締板体Eとの接触を良好にすることができ、畦の上面W_(1)と一方側面W_(2)との畦角部を良好に締圧することができ、良好な整畦作業を行うことができ、一層堅牢な畦を得ることができる。」

オ (a)【図6】をみると、回転軸線Pの基端側に側面整畦部13aが、先端側に上面整畦部13bが配置されていることが理解できる。
(b)同じく【図6】をみると、畦の上面W_(1)と側面W_(2)との交差部分は、湾曲しているかどうかまでは分からないものの、側面W_(2)の傾斜と上面W_(1)の水平との間の傾斜角度であるので、上記ウの【0012】,【0015】,【0018】段落の記載を合わせると、重合部分E_(2)は側面整畦部13a側に撓むことが可能なことが理解できる。
(c)上記ウの「圧締面部Dの外面としての圧締面D_(1)に至る可撓性板材からなる圧締板体E」(【0012】)及び「圧締面部K・Dの外面を圧締面K_(1)・D_(1)とし、圧締面部K・Dに取付片K_(2)・D_(2)を取付け、この取付片K_(2)・D_(2)にボルトナットからなる取付部K_(3)・D_(3)により圧締板体G・E及び圧締板主体Lを配設し」(【0014】)を参照しながら【図8】及び【図9】をみると、取付片D_(2)は、圧締面部Dに取付けられる圧締板体Eの一部であることが理解できる。
(d)【図9】並びに【図3】等をみると、圧縮板体Eの重合部分E_(2)は、上面整畦部13bの回転方向上流側から下流側にかけて上面整畦部13b側から側面整畦部13a側へ接近する形状をしていることが理解できる。

カ 以上のことからみて、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「走行機体1に連結機構2により機枠3を連結し、該機枠3に旧畦上に土を盛り上げる盛土機構4を設け、該盛土機構の進行方向後方位置に畦面を圧接回転により回転整畦可能な回転整畦体13からなる整畦機構12を設けてなる整畦機であって、
整畦機構12は回転整畦体13と回転機構14とからなり、
回転整畦体13は畦Wの一方側面W_(2)を整畦可能な側面整畦部13a及び畦Wの上面W_(1)を整畦可能な上面整畦部13bとを設け、回転軸線Pの基端側に側面整畦部13aが、先端側に上面整畦部13bが配置され、回転機構14により回転軸線Pを中心としてに強制回転するように構成し、
側面整畦部13a及び上面整畦部13bの外周面部分に圧締面部K・Dを間隔を置いて複数個形成すると共に、回転方向前方位置の圧締面部K・D側から隣り合う後方位置の圧締面部K・Dの外面としての圧締面K_(1)・D_(1)に至る可撓性板材からなる圧締板体G・Eを配設し、圧締板体Eを合成樹脂からなる可撓性板材により形成し、圧締板体Eに締圧通穴部E_(1)を形成すると共に締圧通穴部E_(1)に金属製の可撓性板材からなる圧締板主体Lを配設し、圧締板体Eの圧締板体G側に圧締板体Gの上面に重合接触する重合部分E_(2)を形成し、畦の上面W_(1)と一方側面W_(2)との畦角部を圧締板体Gの上面に重合部分E_(2)が位置して回転締圧するように構成し、重合部分E_(2)は、上面整畦部13bの回転方向上流側から下流側にかけて上面整畦部13b側から側面整畦部13a側へ接近する形状をしており、
上面整畦部13bは、同径のリング材25aとリング材25bとの間に複数個の板状の桟材25cを間隔を置いて放射状に溶接固着し、かつ、中心に六角軸状のロータ軸13cに挿通固定される連結軸25dを配置し、連結軸25dとリング材25a及びリング材25bとの間に複数個の連結杆25eを溶接連結してなり、この複数個の桟材25cを圧締面部Dに形成すると共に隣り合う圧締面部Dの間を通穴Cとして形成し、圧締面部Dの外面を圧締面D_(1)とし、圧締面部Dに圧締板体Eの一部である取付片D_(2)を取付けており、
上面整畦部13bの圧締板体Eは合成樹脂からなるため金属に比べて圧締板体Eの可撓性を高めることができ、外的負荷により弾性的に撓み得る材質が用いられて、撓み動作しつつ側面整畦部13aの圧締板体Gに接触する上面整畦部13bの圧締板体Eの重合部分E_(2)は良好に撓み動作することにより、側面整畦部13aの圧締板体Gと上面整畦部13bの圧締板体Eとの接触を良好にすることができ、畦の上面W_(1)と一方側面W_(2)との畦角部を良好に締圧することができ、良好な整畦作業を行うことができ、一層堅牢な畦を得ることができる、整畦機。」

(2)甲第2号証
本件出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行機体と、該走行機体に連結される機枠と、該機枠に設けられ、旧畦上に土を盛り上げる盛土機構と、該盛土機構の進行方向後方位置に設けられ、外周面部分に圧締面部を間隔を置いて複数個形成され、回転方向前方位置の圧締面部から隣る後方位置の圧締面部の圧締面に至る圧締板体が配設され、畦面を回転整畦可能な回転整畦体をもつ回転整畦機構とを備えてなり、上記圧締板体の表面に回転方向に対して交差する方向に延びる凸条部を設けてなることを特徴とする整畦機。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は例えば畦の造成作業や修復作業等に用いられる整畦機に関するものである。」

ウ 「【課題を解決するための手段】本発明はこのような不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、走行機体と、該走行機体に連結される機枠と、該機枠に設けられ、旧畦上に土を盛り上げる盛土機構と、該盛土機構の進行方向後方位置に設けられ、外周面部分に圧締面部を間隔を置いて複数個形成され、回転方向前方位置の圧締面部から隣る後方位置の圧締面部の圧締面に至る圧締板体が配設され、畦面を回転整畦可能な回転整畦体をもつ回転整畦機構とを備えてなり、上記圧締板体の表面に回転方向に対して交差する方向に延びる凸条部を設けてなることを特徴とする整畦機にある。
【0005】又、請求項2記載の発明は、上記凸条部は上記圧締板体に折曲により形成されていることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明にあっては、上記圧締板体は可撓性板材により形成されていることを特徴とするものである。」

エ 「【0006】
【発明の実施の形態】図1乃至図6は本発明の実施の形態例を示し、1は走行機体であって、この場合トラクタが用いられ、走行機体1の後部に三点リンク式の連結機構2により機枠3を上下動可能に連結して構成している。
【0007】4は回転整畦機構であって、この場合、上記機枠3に支持ブラケット5を突設し、支持ブラケット5に軸受筒部6を設け、軸受筒部6の後部に軸受部7を設け、軸受部7に駆動軸8を軸受し、一方、機枠3に走行機体1に設けられた動力取出軸9により自在継手10を介して回転する主軸11を軸受すると共に主軸11により伝導機構12を介して回転する伝達軸13を横設し、上記駆動軸8の一方端部と伝達軸13との間に自在継手14を架設し、駆動軸8の他方端部に畦W面を回転整畦可能な回転整畦体15を配設して構成している。
【0008】この場合、上記回転整畦体15は、畦Wの上面W_(1)を整畦可能な上面整畦部15a及び畦Wの一方側面W_(2)を整畦可能な側面整畦部15bからなり、この上面整畦部15a及び側面整畦部15bは、互いに結合されて鼓状をなすローター枠体16aの外周面部に間隔置いて圧締面部K・Dを形成すると共に隣り合う圧締面部K・Dの間を通穴F・Cとして形成し、上面整畦部15a及び側面整畦部15bの回転方向前方位置の圧締面部K・D側から隣り合う後方位置の圧締面部K・Dの外面に至る長さの圧締板体G・Eをボルト等の取付体Qにより配設し、この圧締板体G・Eは可撓性を有するナイロン樹脂や塩化ビニール樹脂等の合成樹脂やステンレスやバネ鋼等の等の金属からなる外的負荷により弾性的に撓み得る材質の可撓性板材により形成され、かつ、圧締板体G・Eの表面に回転方向に対して交差する方向に延びる凸条部G_(1)・E_(1)を圧締板体G・Eの折曲により形成し、ローター枠体16aの中心軸筒16bを駆動軸8に挿通固定し、しかして、主軸11の回転により回転整畦体15を図6中矢印方向に回転させ、回転整畦体15の上面整畦部15a及び側面整畦部15bの外周面の圧締板体G・Eの回転接触により畦Wの上面W_(1)及び一方側面W_(2)を締圧整畦するように構成している。」

オ 「【0012】この実施の形態例は上記構成であるから、走行機体1を旧畦に沿って走行し、動力取出軸9を回転すると、一方では盛土機構17の盛土ローター19が畦際のほ場M土や旧畦Wの泥土を旧畦上に連続的に跳ね上げて盛り上げ、他方では走行機体1の動力取出軸9を駆動源として回転整畦機構4が駆動され、回転整畦体15は畦面に回転接触して畦W面を回転整畦により締め付けることができ、走行機体1の走行速度に対して回転整畦体15の回転速度を高めることにより回転整畦体15は畦W面に回転滑り接触し、この回転すべり接触により畦W面を円滑かつ強固に締圧整畦することができ、この回転整畦体15に圧締面部K・Dを通穴F・Cを存して間隔を置いて複数個形成すると共に側面整畦部15b及び上面整畦部15aに回転方向前方位置の圧締面部K・D側から隣り合う後方位置の圧締面部K・Dに至る長さの圧締板体G・Eを配設して構成しているから、回転整畦体15の図中矢印方向としての走行機体1の前進を助長する方向の回転に伴い圧締板体G・Eは徐々に盛土を締圧すると共に圧締面部K・Dにより圧締板体G・Eを介して強く締圧され、この複数個の圧締面部K・Dの存在により断続的に締圧され、複数個の圧締面部K・Dの存在により、回転整畦体15の全外周面で締圧する構造に比べて締圧面積が小さくなることにより締圧力を大きくすることができ、それだけ強固に畦を締め付けることができ、この際、上記圧締板体G・Eの表面に回転方向に対して交差する方向に延びる凸条部G_(1)・E_(1)を設けてなるから、この凸条部G_(1)・E_(1)の存在により圧締板体G・Eによる締圧力が部分的に増加することになり、それだけ良好な整畦を行うことができる。
【0013】かつ、この場合、上記隣り合う圧締面部K・K、D・Dの間に通穴F・Cを形成しているので、通穴F・Cにより一層断続的に畦面を締圧することになり、それだけ強固に締圧することができ、又、この場合、上記凸条部G_(1)・E_(1)は上記圧締板体G・Eに折曲により形成されているので、容易に製作することができ、又、この場合、上記圧締板体G・Eは可撓性を有する金属や合成樹脂等の可撓性板材により形成されているので、圧締板体G・Eは撓み動作しつつ盛土を徐々に締圧することができ、回転整畦体15への土の付着現象を抑制することができ、良好な整畦作業を行うことができる。」

カ 【図6】をみると、圧縮板体Eの円周方向中間付近に、凸状部E_(1)が配設されていることが理解できる。

キ 以上のことから、甲第2号証には、次の技術事項(以下「技術事項2」という。)が記載されている。
「畦Wの上面W_(1)を整畦可能な上面整畦部15aの圧締板体Eは、可撓性を有するナイロン樹脂や塩化ビニール樹脂等の合成樹脂やステンレスやバネ鋼等の等の金属からなる外的負荷により弾性的に撓み得る材質の可撓性板材により形成され、かつ、圧締板体Eの表面に回転方向に対して交差する方向に延びる凸条部E_(1)を圧締板体Eの折曲により形成することにより、凸条部E_(1)の存在により圧締板体G・Eによる締圧力が部分的に増加することになり、それだけ良好な整畦を行うことができる。」

(3)甲第3号証
本件出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、写真とともに以下の事項が記載されている。
「畦塗機「マンタミニ」好調
冨士トレーラー 左右塗りが前進作業で
(株)冨士トレーラー製作所=新潟県西蒲原郡弥彦村美山6606=畦塗機、整地キャリア等のトラクター用作業機の他、大型運搬トレーラーなど数々の製品を開発。
今年は、ほ場の四隅まで塗れる新型畦塗機「マンタミニ170-M」(写真)を本格的に発売し、好調な出荷で販売目標を早々とクリアした。
27馬力以上のトラクターに適応でき、前進で畦塗作業ができるので、「使い易く、作業能率が良い」と、農家からの評価は非常に高い。土質に合わせて交換ディスクも各種用意している。」(10頁上段2欄)

(4)甲第4号証
本件出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、写真とともに以下の事項が記載されている。
「冨士トレーラー
左右前進塗り好評
畦塗機マンタ・ミニ171M
(株)冨士トレーラー製作所=新潟県西蒲原郡弥彦村美山6606・TEL0256(94)5551=では、畦塗機「マンタ・ミニ-171-M」が3月に入り荷動きが活発になってきた。同機は昨春から本格発売した最新機種だが、トラクター適応馬力を普及機種の27馬力以上にしたため農家に大変好評で、昨年は計画販売台数を早々と達成した。今年は更に注力し、昨年以上の販売台数アップを目指している。
同機の特徴は、左右に畦塗り装置が付いているため、隅から隅まで前進作業で楽々畦塗りができる。また、左右の畦塗り装置を乾田用・湿田用と別々に搭載しておけば、ほ場の状況に応じて使い分けることもできる。適応トラクターは27馬力以上(タイヤ幅1700ミリメートル以下)で、電動オフセットと畦上面削り装置を標準装備した。機械重量は350キログラム。
今年は19年ぶりとなる大雪の影響により田植の送れも予想され、畦塗機の出荷も例年より動きはやや遅くれていたが、早めのセールスが功を奏し、今年に入り荷動きが活発化してきた。
同社では「畦の左右を前進作業で行え、トラクタの普及機種に合わせ小型化したのが好評であり、今年は昨年以上に期待が持てる」と話している。」(14頁下段2欄)

(5)甲第5号証
本件出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
ア 最上段に、「冨士 畦塗機 MANTA MINI」と、最下段に、「株式会社 冨士トレーラー製作所 ※改良のため予告なく仕様変更することもあります。 2004.2」と記載されている。

イ 下段の表には、機種が「マンタミニ-170」であること、重量が「350kg」であること、適応トラクターが「27ps以上(タイヤ幅1700mm以下)」であることが、記載されている。

(6)甲第6号証
甲第6号証(出願前に頒布された刊行物であることについては、後で検討する。)には、以下の事項が記載されている。
なお、甲第6号証の最上段に「業界初新機構」と記載されたページを1頁、同じく「上面削り装置」と記載された頁を2頁、同じく「前進作業で、作業能率UP!!」と記載されたページを3頁、「MANTA SOUTHPAW」と記載されたページを4頁というものとする。

ア 1頁上段に「冨士 ダブル畦塗機 MANTA MINI」と、1頁最下段に「冨士トレーラー製作所」と、3頁上段に「二つの畦整形部・・・マンタは、右側・左側の畦整形部が、2カ所あり、」と、3頁中段左側「乾田用」の欄に「樹脂の弾力を生かした樹脂ディスク8枚、樹脂上面ドラム8枚、計16枚の羽根が畦の側面はもちろん上面もきめ細かく「叩き効果」で、硬く丈夫な畦を築くことができます。」と、4頁2段目「オプション」欄の「乾田用」に「円錐ディスク」及び「上面ドラム」と、4頁最下段に「※改良のため予告なく仕様変更することもあります。 2005.10作成」と、それぞれ記載されている。

イ 上記アの「整畦機」,「畦整形部」,「羽根」等の用語を参照して、1頁下段の写真、3頁中段左側「乾田用」の写真、4頁2段目「オプション」欄の「乾田用」の「円錐ディスク」及び「上面ドラム」の写真をみると、
・畦整形部は、円錐ディスクと上面ドラムとが一体となっていること、
・円錐ディスクは、畦の法面を整形すること、
・上面ドラムは、棒材で形成された円柱枠状の部材と、円柱枠状の部材の周面にその周方向に間隔を置いて接続される複数枚の羽根を有し、複数枚の羽根が全体として円柱枠状の部材の表面を覆う状態となっており、円錐ディスクの軸方向先端側に位置して、畦の上面を整形すること、
・上面ドラムの羽根は、円柱枠状の部材に接続される接続部と、この接続部に連続して外周側に伸びる部分とを有し、この外周側に伸びる部分の円錐ディスク側には、接続部側から外周側に向かって徐々に円錐ディスク側に接近する形状をした部分が形成され、また外周側に伸びる部分の先端部には円柱枠状の部材側に屈曲した屈曲部が形成されていること、
が理解できる。

ウ 同じく3頁中段左側「乾田用」の写真をみると、畦の上面と法面の交差部には、ある程度湾曲している部分があることが、見てとれる。

エ 上記アの「計16枚の羽根が畦の側面はもちろん上面もきめ細かく『叩き効果』で、硬く丈夫な畦を築く」との記載からみて、円錐ディスク及び上面ドラムは、軸回りに回転すること、及び上面ドラムの羽根の接続部側が回転方向上流側で、先端部側(屈曲部側)が回転方向下流側であることは、明らかである。

オ そうすると、甲第6号証には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されている。
「軸回りの回転により畦の法面を整形する円錐ディスクと、棒材で形成された円柱枠状の部材と、その周面に接続される複数枚の羽根を有し、円錐ディスクの軸方向先端側に位置して円錐ディスクと共に回転し、畦の上面を整形する上面ドラムとを備え、整畦機に装着される畦整形部の上面ドラムを構成する羽根であり、
円柱枠状の部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、上面ドラムの回転方向下流側に伸びる部分とを有し、この下流側に伸びる部分の円錐ディスク側には、回転方向上流側から下流側に向かって徐々に円錐ディスク側へ接近する形状をした部分が形成され、また回転方向下流側に伸びる部分の先端部に円柱枠状の部材側に屈曲した屈曲部が形成されている整畦機の畦整形部用の羽根を、
複数枚のその羽根が全体として円柱枠状の部材の表面を覆う状態で、円柱枠状の部材の表面にその周方向に間隔を置いて接続され、上面ドラムが構成される、
整畦機の畦整形部。」

カ 甲第6号証の頒布性について、当審無効理由において、「下記4頁右下欄には「2005.10作成」と記載され、株式会社富士トレーラー製作所によって作成されたカタログを、ユーザーである請求人が所有していることからみて、本件特許出願前に頒布されていると言える。」と判断したことに対し、被請求人は、平成26年12月15日付け意見書において、上記「第4 2(2)ア」に記載したとおりの主張を行っているので、この主張について検討する。

被請求人が主張するように、試し刷りであったり、また何かの都合により作成済みのカタログが頒布されないことは起こり得る。しかし、商品の販売前に作成したカタログや、初版のカタログであればあり得るとしても、商品の販売開始から既に数ヶ月も経った後に作成されたカタログであれば、試し刷りとは考え難い。また、初版のカタログでの不都合な点も解消されていること、頒布が必要であるからこそ数ヶ月後に作成されたものとも考えられることから、販売開始数ヶ月後に作成されたカタログであれば、作成後まもなく頒布されたとみるのが自然かつ合理的である。

平成17年(2005年)3月15日に発行された甲第4号証に「畦塗機「マンタ・ミニ-171-M」が3月に入り荷動きが活発になってきた。」と、さらに「早めのセールスが功を奏し、今月に入り荷動きが活発化してきた。」と記載されている様に、「マンタ・ミニ-171-M」は、平成17年(2005年)3月以前に販売が開始され、しかも早めにセールスを行っていることからみて、一般的な販売活動を考慮すれば、「マンタ・ミニ-171-M」の商品カタログは、平成17年(2006年)3月よりも早い段階で、初版が既に作成済みであって、かつ頒布されていたとみることができる。

そして、甲第6号証の「2005.10作成」との記載からみて、甲第6号証は、2005年10月に作成されたものであるから、上記初版のカタログよりも数ヶ月後に作成されたものであり、また上記初版のカタログと同内容もしくは若干の修正が加えられた程度のものであると推察できる。
そうすると、「マンタ・ミニ-171-M」の販売開始時期、一般的な販売活動、甲第6号証の作成日等を勘案すれば、甲第6号証は、被請求人が主張するような、試し刷りやお蔵入りしたものではなく、2005年10月から遅滞なく、つまり本件特許の出願日(2008年11月18日)より早い時期に頒布された刊行物と認められる。

(7)甲第11号証
本件出願前に頒布された刊行物である甲第11号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は畦塗り機に係り、主として水田を区画する旧畦を畦塗り修復して水漏れを防ぐものに関する。」

イ 「【0024】前記畦塗り体30は、前記伝動ケース26とブラケット27との下端部間に前記第2の伝動ケース22と平行にかつ前記旧畦Aに対して所定の角度に傾斜して軸架された回転自在の回転軸31と、この回転軸31を回転中心としてこの回転軸31に支持板32を介して固着され前記旧畦Aの側部Bを下方に向かって拡開した傾斜面に修復する円錐形状の側面修復体33と、この側面修復体33の縮径端部34に一体に連設されこの縮径端部34から外方に向かって拡開して突出し前記旧畦Aの上部Cを水平状面に修復する円錐形状の上面修復体35とを有している。また、前記側面修復体33の縮径端部34に前記上面修復体35を一体に連設した縮径連設部が旧畦Aの肩部Dを弧状に修復する肩修復部36として形成されている。」

ウ 「【0038】したがって、旧畦Aの肩部Dは固く締め固められて順次修復される。すなわち、側面修復体33に上面修復体35を連設した縮径連設部を旧畦Aの肩部Dを修復する肩修復部36として形成されているので、側面修復体33と上面修復体35との縮径連設部に集められる泥土は肩修復部36にて旧畦Aの肩部Dに順次塗り付けられ、旧畦Aの肩部Dは弧状に固く締め固められて順次修復される。」

エ 「【0046】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、側面修復体にて旧畦の側部を傾斜面に修復可能にかつ上面修復体にて旧畦の上部を水平状面に修復可能に畦塗り体を旧畦に対して所定の角度に傾斜して配設するので、側面修復体にて旧畦の側部を修復する際の泥土は側面修復体の縮径側の旧畦の肩部に向かって押し上げ誘導できるとともに、上面修復体にて旧畦の上部を修復する際の泥土は上面修復体の縮径側の旧畦の肩部に向かって誘導でき、これらの泥土は側面修復体に上面修復体を連設した相互の縮径端部にて旧畦の肩部に順次塗り付け旧畦の肩部を固く締め固めることができ、したがって、旧畦は側部及び上部はもとより肩部を十分に締め固めて修復することができ、肩部から畦が崩れ難く旧畦を長期に耐え得る畦に確実に修復することができる畦塗り機を提供できる。
【0047】請求項2の発明によれば、側面修復体に上面修復体を連設した縮径連設部を旧畦の肩部を修復する肩修復部としたので、この肩修復部にて泥土を旧畦の肩部に順次塗り付け旧畦の肩部を弧状に固く締め固めて修復することができる。」

(8)甲第12号証
本件出願前に頒布された刊行物である甲第12号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は走行車に付設されてその進行方向に順次畦を形成する畦形成機に関するものである。」

イ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる従来の畦形成機による時は、圃場の旧畦形状や風化状態によって制約が大きい等の問題があった。即ち、簡易な中畦の形成時は制約は少ないが、旧畦の上面と側面では、側面部の崩壊が大きく上面は比較的固く風化も少ない。従って、このような旧畦に従来の内側円錐状の回転体を導入した時、内側円錐状の回転体側の適正な周速設定によって、畦上面の小径な円筒回転体がその周速に制約があり、畦上面の練り込みと締め込み作用も制限され、仕上げが不安定という問題があった。特に、成形された畦の上面と内側斜面と結合する角部、所ゆる肩部は緩やかに成形されて、接触や衝撃によって崩れやすいという課題があった。」

ウ 「【0009】5は畦形成装置を示し、畦の内側面17を形成する内側円錐回転体18、畦上面を形成する円筒回転体16が分割して独立回転に構成される。」

エ 「【0015】図6は内側円錐回転体の外周縁に取り付ける延長部材として補助フィン31を設けた実施例である。補助フィン31は巾広の水平面を有して、本実施例で6個程度が適当であり、円錐回転体18の回転によって畦の裾部コーナで水田床の上面を締め固めることによって漏水効果を高めるものである。又、16の円筒回転体は畦形成部2の畦上面部と斜面部と結合する角部、所ゆる肩部34を断面円弧状に仕上げる末広がり円錐鍔を保有した構成であり、内側円錐回転体18の上面となめらかに連結するように形成される。33はゴム垂れ示し、盛土装置ではね上げられた盛土の全部を遮蔽して、畦形成装置の前面に案内する作用をするものである。」

オ 「【0017】
【発明の効果】以上のように構成したので、簡単な構成にも係わらず、盛土成形した畦は、上面部、肩部、斜面部、裾部ともに全体的に強固な畦が形成されたので、長期に亘って頑丈で、衝撃にも耐えられることができるという特有の効果がある。」

(8)甲第13号証
本件出願前に頒布された刊行物である甲第13号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0023】そして、側面塗り体19は、畦側面A2を断続的に叩くような土塗り作業を行えるように段差を有して連設された状態で回転中心軸線Xを中心として放射状に位置する複数枚(例えば6枚)のウイングディスク等の分割羽根板である作用板21を備えている。
【0024】各作用板21は、例えば、ステンレス等の金属板或いは弾性変形可能な合成樹脂板等を用いて略扇形状等の所定形状をなすように一体に形成されたもので、円錐台形状の板支持体であるベース22にこのベース22の外周面に沿って位置するように取付具すなわち例えばボルト23およびナット(図示せず)によって着脱可能に取り付けられている。
【0025】ここで、各作用板21は、図2および図3に示すように、回転方向後端側で押し込むように土を畦側面A2に塗り付ける略扇板状の本体板部25を有している。この本体板部25の回転方向後端面全体からは、本体板部25と同じ厚さの略細長板状の鋭利エッジ形成防止用の突出板部26が、回転方向反対側および回転中心軸線X側、すなわち押し込み解除方向である逃げ方向(畦側面A2に対する離反方向成分を有する方向)に向って突出しており、この突出板部26の存在によって本体板部25の回転方向後端に磨耗により鋭利なエッジが形成されることが防止されるようになっている。」

イ 「【0042】また、本体板部25および突出板部26は、それぞれ回転方向に沿ってやや湾曲した曲面部に形成した構成について説明したが、本体板部25および突出板部26の少なくとも一方を湾曲させずに平面状に形成してもよい。」

2 無効理由1
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「側面整畦部13a」,「圧締板体E」,「上面整畦部13b」,「回転整畦体13」及び「整畦機」は、それぞれ本件発明1の「法面整畦部」,「羽根板」,「上面整畦部」,「整畦体」及び「畦塗り機」に相当する。

(イ)甲1発明の「同径のリング材25aとリング材25bとの間に複数個の板状の桟材25cを間隔を置いて放射状に溶接固着し、かつ、中心に六角軸状のロータ軸13cに挿通固定される連結軸25dを配置し、連結軸25dとリング材25a及びリング材25bとの間に複数個の連結杆25eを溶接連結してなり、この複数個の桟材25cを圧締面部Dに形成すると共に隣り合う圧締面部Dの間を通穴Cとして形成し、圧締面部Dの外面を圧締面D_(1)とし」た構成は、本件発明1の「本体となる支持部材」に相当し、甲1発明の「圧締面部Dに圧締板体Eの一部である取付片D_(2)を取付け」た構成は、本件発明1の「その周面に接続される複数枚の羽根板」に相当する。

(ウ)甲1発明の「畦Wの一方側面W_(2)を整畦可能な側面整畦部13a及び畦Wの上面W_(1)を整畦可能な上面整畦部13bとを設け、回転軸線Pの基端側に側面整畦部13aが、先端側に上面整畦部13bが配置され、回転機構14により回転軸線Pを中心として強制回転するように構成し」た「回転整畦体13」は、本件発明1の「軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、」「法面整畦部の軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを備え」た「畦塗り機に装着される整畦体」に相当する。

(エ)上記(イ)で述べた本件発明1の支持部材の相当関係からみて、甲1発明の「圧締面部Dに」取り付けた「圧締板体Eの一部である取付片D_(2)」は、本件発明1の「支持部材に接続される接続部」に相当する。

(オ)上記(エ)で述べたとおり、甲1発明の取付片D_(2)は、本件発明1の「接続部」に相当し、かつ「圧締板体E」は、「回転方向前方位置の圧締面部D側から隣り合う後方位置の圧締面部Dの外面としての圧締面D_(1)に至る」ので、甲1発明の圧締板体Eのうち取付片D_(2)以外の部分は、本件発明1の「接続部に連続し、上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部」に相当する。

(カ)甲1発明の「上面整畦部13bの回転方向上流側から下流側にかけて上面整畦部13b側から側面整畦部13a側へ接近する形状」であって、「圧締板体Eの圧締板体G側に圧締板体Gの上面に重合接触する重合部分E_(2)」は、本件発明1の「少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部」に相当する。

(キ)以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致している。
(一致点)軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、本体となる支持部材とその周面に接続される複数枚の羽根板を有し、前記法面整畦部の軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを備え、畦塗り機に装着される整畦体の前記上面整畦部を構成する羽根板であり、
前記支持部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部が形成されている、畦塗り機の整畦体用羽根板。

そして、次の点で相違している。
(相違点1)上面整畦部において、移行部又は張出部から移行部にかけての部分が、本件発明1は、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されているのに対し、甲1発明は、その様に製作されているかどうか不明な点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
まず、請求人は、上記「第4 1(3)ア」に記載したとおり、甲第11号証及び甲第12号証に記載された構成を、甲第1号証に記載された移行部に適用して、当業者が容易に想到し得ることと主張しているので、当該主張について検討する。
(ア)まず、甲第11号証には、「旧畦Aの側部Bを下方に向かって拡開した傾斜面に修復する円錐形状の側面修復体33と、この側面修復体33の縮径端部34に一体に連設されこの縮径端部34から外方に向かって拡開して突出し旧畦Aの上部Cを水平状面に修復する円錐形状の上面修復体35とを有し」た「畦塗り体30」、及び「この側面修復体33の縮径端部34に上面修復体35を一体に連設した縮径連設部が旧畦Aの肩部Dを弧状に修復する肩修復部36として形成されている」ことが記載されている。
次に、甲第12号証には、「畦の内側面17を形成する内側円錐回転体18、畦上面を形成する円筒回転体16が分割して構成され」、「円筒回転体16は畦形成部2の畦上面部と斜面部と結合する角部、所ゆる肩部34を断面円弧状に仕上げる末広がり円錐鍔を保有した構成であり、内側円錐回転体18の上面となめらかに連結するように形成される」「畦形成装置5」が記載されている。

(イ)上記(ア)のとおり、畦の上面と法面の境界部分を曲面に仕上げるものであって、弧状に形成した部分を設けているものの、甲第11号証及び甲第12号証に記載された上記畦塗り体30や畦形成装置5は、あくまで円錐や円筒を基本形状とし、畦の上面と法面及びその境界部分を整形する各部材が一体となるものであり、それに対し、甲1発明の回転整畦体13は、畦の上面を整形する複数の圧縮板体Eと、同じく側面を整形する複数の圧縮板体Gを配設したものであるから、甲1発明と甲第11,12号証に記載されたものとは、基本的な形状及び全体構造が相違している。したがって、甲1発明の回転整畦体13の圧縮板体Eの移行部E_(2)に、その基本的形状及び全体構造が相違する甲第11号証や甲第12号証に記載される弧状に形成した部分を適用して、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(ウ)また、新たに甲第13号証を提示し、上記「第4 1(3)イ」に記載したとおり、甲第13号証記載の「畦塗り用の分割羽根板である作用板21の突出板部26について、湾曲した曲面に形成したり、平面状に形成したりする技術事項」を甲第1号証記載の発明の移行部に適用する」ことも主張している。
しかしながら、甲第13号証に記載された作用板21の突出板部26とは、側面塗り体19の作用板21の本体板部25の回転方向後端側外面とこれに連続した部分をいうのであるから、上面塗り体18の構成要素ではなく、しかも畦の肩部を修復するものでもない。よって、甲第13号証の突出板部26が、湾曲した曲面に形成されることがあるとしても、それをもって、甲1発明の回転整畦体13の圧縮板体Eの移行部E_(2)に適用するとは考え難く、当該移行部E_(2)を湾曲した曲面とすることが容易に想到し得たとはいえない。

(エ)また、請求人が提示するその他の証拠方法をみても、甲1発明の回転整畦体13の圧縮板体Eの移行部E_(2)を、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されるものとすることを、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

ウ まとめ
以上のとおり、上記相違点1は、実質的な相違点であるので、本件発明1は、甲1発明と同一ではなく、つまり甲第1号証に記載された発明ではない。
また、本件発明1は、また甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)本件発明2
本件発明2は本件発明1の構成をすべて含み、さらに「前記移行部は前記法面整畦部の表面に接触したときに、表面側へ湾曲可能な弾性を有している」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明1が、上記(1)のとおり、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、本件発明2も同様に、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明3
本件発明3は、少なくとも本件発明1の構成をすべて含み、さらに「前記移行部は前記上面整畦部の軸方向に、少なくとも前記法面整畦部側の端部が前記法面整畦部の表面に接触可能な長さを有している」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明1が、上記(1)のとおり、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、本件発明3も同様に、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)本件発明4
本件発明4は、少なくとも本件発明1の構成をすべて含み、さらに「前記張出部の周方向先端部に前記支持部材側へ湾曲、もしくは屈曲した返し部が形成されていること」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明1が、上記(1)のとおり、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、上記「1(2)キ」に記載した発明が甲第2号証に記載されているとしても、本件発明4も同様に、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明5
ア 対比
本件発明5は、実質的に、本件発明1を引用する本件発明4から「前記上面整畦部は、前記移行部又は前記張出部から前記移行部にかけての部分が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている」発明特定事項を省き、さらに「前記張出部の周方向先端部における返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合いは前記上面整畦部の軸方向先端側から法面整畦部側へかけて次第に小さくなっている」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明5と甲1発明とは、本件発明1を本件発明5と読み替えた上で、上記(1)アに記載した相当関係を有している。

したがって、本件発明5と甲1発明とは、次の点で一致している。
(一致点)軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、本体となる支持部材とその周面に接続される複数枚の羽根板を有し、前記法面整畦部の軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを備え、畦塗り機に装着される整畦体の前記上面整畦部を構成する羽根板であり、
前記支持部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部が形成されている、畦塗り機の整畦体用羽根板。

そして、次の点で相違している。
(相違点2)本件発明5の張出部には、「張出部の周方向先端部に支持部材側へ湾曲、もしくは屈曲した返し部が形成されており、張出部の周方向先端部における返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合いは上面整畦部の軸方向先端側から法面整畦部側へかけて次第に小さくなっている」のに対し、甲1発明の張出部は、返し部が形成されているかどうか不明であり、返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合いも不明である点。

イ 判断
上記相違点2について検討する。
まず、請求人は、(a)「返し部」に関して、上記「第4 1(2)ア」に記載したとおりの主張を行い、また(b)「返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合い」に関して、上記「第4 1(2)ウ」に記載したとおりの主張を行っている。
(ア)上記(a)の主張について検討する。
甲第2号証をみると、上記「1(2)カ」に記載した技術事項2が記載されており、請求人が主張するように、当該技術事項2の「圧縮板体Eの表面に回転方向に対して交差する方向に延びる凸条部E_(1)」が、その形状においては、本件発明5の「張出部に支持部材側へ屈曲した返し部」に相当するかもしれない。しかし、技術事項2の「凸条部E_(1)」は、圧縮板体Eの周方向中間付近に形成されているので、仮に甲1発明の圧縮板体Eに技術事項2の「突条部E_(1)」を適用したとしても、「突条部E_(1)」は甲1発明の「圧縮板体E」の周方向中間付近に形成することとなり、上記相違点2の「張出部の周方向先端部に支持部材側へ湾曲、もしくは屈曲した返し部」とはならない。
さらに、技術事項2の「凸条部E_(1)」は、その存在により、締圧力が部分的に増加するものであるので、仮に甲1発明の圧縮板体Eのどこかに技術事項2の凸条部E_(1)を適用したとしても、「上面整畦部の回転に伴う畦上面からの離脱時には返し部の畦側の表面が畦上面に接触したまま、あるいは畦上面上を滑りながら畦上面から浮上しようとするため、土を弾くことなく均すことが可能である」(本件明細書段落【0036】)という本件発明特有の作用効果を奏するものとはならない。

また、甲第1号証の【図8】や【図9】を参照すると、圧縮板主体Lの先端に屈曲した様な部分がみられるが、当該屈曲した様な部分が、どの様な名称であって、どの様な機能を有するものであるかについて、甲第1号証には何ら記載されていない。
そうすると、甲1発明の圧縮板主体Lの先端に屈曲した様な部分がみられたとしても、どのような機能を有するかどうか不明な当該屈曲したような部分に、甲1発明の圧縮板体Eの周方向先端に適用する動機付けが存在せず、しかも本件発明の作用効果も予測できない。

(イ)続いて、上記(b)の主張について検討する。
請求人が主張する技術常識に関し、証拠が示されておらず、「板状部材に屈曲部分が形成されている場合に、その屈曲部分が板状部材の曲げ変形を阻害する要因となることや、その屈曲部分の屈曲の度合いが小さければ板状部材の曲げ変形に対する阻害も小さいこと」が、当業者にとって技術常識であるとは認められない。
また、上記(ア)で検討したとおり、甲1発明の張出部の周方向先端部に返し部を形成することは、容易に想到し得たことではなく、仮に容易に想到し得たとしても、返し部の屈曲度合いを上面整畦部の軸方向先端側から法面整畦部側へかけて次第に小さくすることが、適宜なし得る設計上の事項であるともいえない。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明6
本件発明6は、本件発明5の構成をすべて含み、さらに「前記張出部の周方向先端部における返し部は前記張出部から前記移行部付近まで形成されている」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明5が、上記(5)のとおり、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件発明6も同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件発明7
本件発明7は、少なくとも本件発明1の構成をすべて含み、さらに「複数枚の羽根板が全体として前記支持部材の表面を覆う状態で、前記支持部材の表面にその周方向に間隔を置いて接続され、前記上面整畦部が構成されていることを特徴とする畦塗り機の整畦体」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明1が、上記(1)のとおり、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、本件発明7も同様に、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項(引用する本件発明4に対して)及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(8)本件発明8
本件発明8は、本件発明5の構成をすべて含み、さらに「前記移行部は前記法面整畦部の表面に接触したときに、表面側へ湾曲可能な弾性を有している」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明5が、上記(5)のとおり、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件発明6も同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)本件発明9
本件発明9は、少なくとも本件発明5の構成をすべて含み、さらに「前記移行部は前記上面整畦部の軸方向に、少なくとも前記法面整畦部側の端部が前記法面整畦部の表面に接触可能な長さを有している」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明5が、上記(5)のとおり、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件発明9も同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(10)本件発明10
本件発明10は、少なくとも本件発明8の構成をすべて含み、さらに「前記張出部の周方向先端部における返し部は前記張出部から前記移行部付近まで形成されている」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明8が、上記(8)のとおり、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件発明10も同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(11)本件発明11
本件発明11は、少なくとも本件発明5の構成をすべて含み、さらに「複数枚の羽根板が全体として前記支持部材の表面を覆う状態で、前記支持部材の表面にその周方向に間隔を置いて接続され、前記上面整畦部が構成されていることを特徴とする畦塗り機の整畦体」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明5が、上記(5)のとおり、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件発明11も同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(12)無効理由1のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3及び7は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また本件発明1ないし3は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて、本件発明4及び7は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて、本件発明5,6,8?11は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

3 当審無効理由
無効理由2について検討する前に、当審無効理由について判断する。
なお当審無効理由は、訂正前の請求項1?4,7に係る発明に対するものであるが、ここでは訂正後の請求項1?11に係る発明である本件発明1?11について検討する。
(1)本件発明1
ア 対比
まず、本件発明1と、甲6発明を対比する。
(ア)甲6発明の「円錐ディスク」,「上面ドラム」,「畦整形部」,「整畦機」,「棒材で形成された円柱枠状の部材」,「上面ドラム」の「羽根」及び「接続部に連続し、上面ドラムの回転方向下流側に伸びる部分」は、それぞれ本件発明1の「法面整畦部」,「上面整畦部」,「整畦体」,「畦塗り機」,「本体となる支持部材」,「羽根板」及び「上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部」に相当する。
また、甲6発明の「整畦機に装着される畦整形部の上面ドラムを構成する羽根」は、本件発明1の「畦塗り機の整畦体用羽根板」に相当する。

(イ)甲6発明の「接続部に連続し、上面ドラムの回転方向下流側に伸びる部分とを有し、この下流側に伸びる部分の円錐ディスク側には、回転方向上流側から下流側に向かって徐々に円錐ディスク側へ接近する形状をした部分」と、本件発明1の「張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部」とは、「張出部の法面整畦部側の端部に、上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて上面整畦部側から法面整畦部側へ接近する形状をした移行部」で共通している。

(ウ)そうすると、本件発明1と甲6発明とは、以下の点で一致している。
(一致点)軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、本体となる支持部材とその周面に接続される複数枚の羽根板を有し、前記法面整畦部の軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを備え、畦塗り機に装着される整畦体の前記上面整畦部を構成する羽根板であり、
前記支持部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をした移行部が形成されている畦塗り機の整畦体用羽根板。

そして、以下の点で相違している。
(相違点3)移行部が、本件発明1は、法面整畦部に重なるのに対し、甲6発明はその様なものかどうか不明な点。
(相違点4)上面整畦部において、移行部又は張出部から移行部にかけての部分が、本件発明1は、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されているのに対し、甲6発明は、その様に製作されているかどうか不明な点。

イ 判断
そこで上記相違点3,4について検討する。
(ア)相違点3
a 甲第1号証には、上記「1(1)カ」に記載した甲1発明が記載されている。
甲1発明の「重合部分E_(2)」,「側面整畦部13a」及び「上面整畦部13b」は、本件発明の「移行部」,「法面整畦部」及び「上面整畦部」に相当する。
そうすると、甲1発明の「圧締板体Eの圧締板体G側に圧締板体Gの上面に重合接触する重合部分E_(2)を形成」した構成は、本件発明1の用語で言えば、「移行部」が、「法面整畦部に重な」る構成に相当する。
また、甲1発明は、「撓み動作しつつ側面整畦部13aの圧締板体Gに接触する上面整畦部13bの圧締板体Eの重合部分E_(2)は良好に撓み動作する」ものであって、かつ「撓む」ことは一般的に弓状になることを意味するので、甲1発明の「撓み動作する」ことは「湾曲(変形)する」ことといえる。
そこで、甲第6号証の写真をみると、畦の上面と法面の交差部は、ある程度湾曲している部分もあるから(上記1(6)ウ)、甲6発明の畦の上面と法面の交差部を湾曲させるために、同じく撓み動作している(湾曲させている)甲1発明の重合接触することを適用して、上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に成し得たことである。

b また、上記aとは別の検討についても述べておく。
畦の肩部が崩れ易いという課題を解決するために、当該肩部を締め固める必要があることは、甲第11号証や甲第12号証に記載されているように、従来より周知な課題であって、甲第1号証にも堅牢な畦を得るために畦角部を締圧することが記載されている(上記1(1)エ)から、甲6発明の移行部を、周知の課題に基づいて、甲1発明を適用して、上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に成し得たことである。

c 被請求人は、(a)甲第1号証の「畦角部」、(b)甲第6号証の写真から読み取れる事項、(c)動機付けに関し、それぞれ上記「第4 2(2)」のイ,ウ,エに記載したとおりの主張を行っており、これら主張について検討する。
(a)まず、甲第1号証の畦角部に関し、被請求人は、甲第1号証の「畦角部」との文言をもって、完全な「角部」が形成されたものとの主張もあるが、重合部分E_(2)が側面整畦部13a側に撓むことが可能であれば、当該「畦角部」が完全に円弧を形成するとまでは言えないまでも、ある程度の湾曲部分が形成されることは、当業者ならば当然読み取るものと認められる。

(b)甲第6号証の写真に関し、畦の上面と法面との境界部分に、光によるものとみられる直線状の部分も見受けられ、仮に、当該直線状の部分が角部であったとしても、当該境界部分には少なくとも曲面も形成されているとみるのが自然である。

(c)動機付けについては、上記(a)及び(b)で述べた様に、甲第1号証及び甲第6号証に記載された畦の上面と法面の境界には、少なくとも湾曲した部分が形成されていると認められるので、甲第11号証及び甲第12号証から導かれた周知の課題等と併せて検討すると、上記bで述べた判断とならざるを得ない。

(イ)相違点4
上記相違点4については、実質的に上記相違点1と同様である。
そして、相違点1についての判断は、上記「2(1)イ」に記載したとおりであるので、相違点4についても、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に成し得たこととはいえない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)本件発明2
本件発明2は本件発明1の構成をすべて含み、さらに「前記移行部は前記法面整畦部の表面に接触したときに、表面側へ湾曲可能な弾性を有している」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明1が上記(1)のとおり、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、本件発明2も同様に、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明3
本件発明3は、少なくとも本件発明1の構成をすべて含み、さらに「前記移行部は前記上面整畦部の軸方向に、少なくとも前記法面整畦部側の端部が前記法面整畦部の表面に接触可能な長さを有している」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明1が上記(1)のとおり、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、本件発明4も同様に、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)本件発明4
本件発明4は、少なくとも本件発明1の構成をすべて含み、さらに「前記張出部の周方向先端部に前記支持部材側へ湾曲、もしくは屈曲した返し部が形成されていること」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明1が上記(1)のとおり、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、本件発明4も同様に、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11?13号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5)本件発明5
ア 対比
本件発明5は、実質的に、本件発明1を引用する本件発明4から「前記上面整畦部は、前記移行部又は前記張出部から前記移行部にかけての部分が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている」発明特定事項を省き、さらに「前記張出部の周方向先端部における返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合いは前記上面整畦部の軸方向先端側から法面整畦部側へかけて次第に小さくなっている」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明5と甲6発明とは、本件発明1を本件発明5と読み替えた上で、上記(1)アに記載した相当関係を有している。

したがって、本件発明5と甲6発明とは、次の点で一致している。
(一致点)軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、本体となる支持部材とその周面に接続される複数枚の羽根板を有し、前記法面整畦部の軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを備え、畦塗り機に装着される整畦体の前記上面整畦部を構成する羽根板であり、
前記支持部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部が形成されており、
前記張出部の周方向先端部に前記支持部材側へ湾曲、もしくは屈曲した返し部が形成されている、畦塗り機の整畦体用羽根板。

そして、次の点で相違している。
(相違点5)張出部の周方向先端部における返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合いが、本件発明5は、上面整畦部の軸方向先端側から法面整畦部側へかけて次第に小さくなっている」のに対し、甲6発明は、湾曲、もしくは屈曲の度合いが不明である点。

イ 判断
上記相違点5について検討する。
まず、請求人は、「返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合い」に関して、上記「第4 1(2)ウ」に記載したとおりの主張を行っており、当該主張ついて検討する。
請求人が主張する技術常識に関し、証拠が示されておらず、「板状部材に屈曲部分が形成されている場合に、その屈曲部分が板状部材の曲げ変形を阻害する要因となることや、その屈曲部分の屈曲の度合いが小さければ板状部材の曲げ変形に対する阻害も小さいこと」が、当業者にとって技術常識であるかどうか、不明である。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明5は、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明6
本件発明6は、本件発明5の構成をすべて含み、さらに「前記張出部の周方向先端部における返し部は前記張出部から前記移行部付近まで形成されている」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明5が上記(5)のとおり、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件発明6も同様に理由により、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件発明7
本件発明7は、少なくとも本件発明1の構成をすべて含み、さらに「複数枚の羽根板が全体として前記支持部材の表面を覆う状態で、前記支持部材の表面にその周方向に間隔を置いて接続され、前記上面整畦部が構成されていることを特徴とする畦塗り機の整畦体」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明1が上記(1)のとおり、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11号証及び甲第12号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、本件発明7も同様に、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11号証及び甲第12号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(8)本件発明8
本件発明8は、本件発明5の構成をすべて含み、さらに「前記移行部は前記法面整畦部の表面に接触したときに、表面側へ湾曲可能な弾性を有している」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明5が上記(5)のとおり、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件発明8も同様に、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件発明9
本件発明9は、少なくとも本件発明5の構成をすべて含み、さらに「前記移行部は前記上面整畦部の軸方向に、少なくとも前記法面整畦部側の端部が前記法面整畦部の表面に接触可能な長さを有している」との限定を加えた発明」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明5が上記(5)のとおり、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件発明9も同様に、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(10)本件発明10
本件発明10は、少なくとも本件発明8の構成をすべて含み、さらに「前記張出部の周方向先端部における返し部は前記張出部から前記移行部付近まで形成されている」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明8が上記(8)のとおり、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件発明10も同様に、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(11)本件発明11
本件発明11は、少なくとも本件発明5の構成をすべて含み、さらに「複数枚の羽根板が全体として前記支持部材の表面を覆う状態で、前記支持部材の表面にその周方向に間隔を置いて接続され、前記上面整畦部が構成されていることを特徴とする畦塗り機の整畦体」との限定を加えたものである。
そうすると、本件発明5が上記(5)のとおり、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件発明11も同様に、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(12)当審無効理由についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし4,7は、甲第6号証に記載された発明ではなく、また本件発明1ないし4,7は、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明、及び甲第11号証及び甲第12号証に記載された事項に基いて、本件発明5,6,8ないし11は、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 無効理由2
(1)本件特許の出願前に販売(公然実施)された「171-M型の畦塗機(マンタミニ)」に係る検甲第1号証で示された発明(以下「検甲1発明」という。)を、請求人は以下のとおり認定した上で、無効理由2を主張している。
「【検甲1発明】
1A 軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、本体となる支持部材とその周面に接続される弾性変形可能な合成樹脂製の複数枚の羽根板を有し、前記法面整畦部の軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを備え、畦塗り機に装着される整畦体の前記上面整畦部を構成する羽根板であり、
1B 前記支持部材に接続される接続部と、
1C この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、
1D この張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部が形成されている
1E 畦塗り機の整畦体用羽根板。」(請求書24頁17行?25頁5行)と認定し、無効理由2を主張している。

(2)ここで、検甲第1号証説明書で示される「畦塗機 マンタミニ171」の羽根板の移行部が、湾曲した状態で製造されたものかどうか、検討する。
ア 検甲第1号証説明書の写真9及び写真10をみると、羽根板の移行部は、湾曲していることが分かるものの、当該羽根板は、製造時の状態を維持しているかどうか不明である。
これに対し、検甲第1号証説明書で示される「畦塗機 マンタミニ171」の取扱説明書である甲第9号証の1及び7頁の写真をみると、羽根板の移行部は、湾曲しておらず、まっすぐ延びていることが看取され、同「畦塗機 マンタミニ171」の商品カタログである甲第6号証の写真からも、羽根板の移行部は、湾曲しておらず、まっすぐ延びていることが理解できる。これら取扱説明書並びに商品カタログの写真に写っている羽根板は、製造時(販売時)の状態であると推認できるから、「畦塗機 マンタミニ171」の羽根板の移行部は、本来、製造時点では、湾曲しているのではなく、平板状になっているものと認められる。

イ また、請求人は、検甲第1号証説明書に記載されている羽根板について、
(ア)「なお、松山株式会社は、自社製品との比較検討のために、検甲第1号証を何度か使用したが、改良は一切しておらず、検甲第1号証の構成は販売時のままである。ただし、例えば羽根板には、使用による不可避的な摩耗および変形等はある。」(審判請求書22頁11?14行)、
(イ)「なお、検甲第1号証の合成樹脂製の羽根板は、繰り返し使用による塑性変形等によって、返し部の度合いが法面整畦部側に向かって次第に小さくなるものであるといえる。」(審判請求書27頁17?20行)と主張し、
(ウ)「検甲第1号証説明書の写真9および10(下記参照)からみて明らかなように、検甲1発明が「法面整畦部に重なる移行部」を有するため、使用に基づく羽根板の繰り返し変形によって、羽根板に不可避的な「変形」が生じるのであって、被請求人の上記主張は明らかに失当である。」(口頭審理陳述要領書9頁下から5?末行)、
と主張しているように、使用に基づく繰り返し変形によって、羽根板に不可避的な「変形」が生じていることを自白している。

なお、請求人からは、検甲第1号証に係る「畦塗機 マンタミニ171」が、本件訂正後の本件発明1の発明特定事項である「上面整畦部は、移行部又は張り出し部から移行部にかけての部分が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている」構成を有しているとの主張はなく、また、上記構成が、検甲第1号証に係る「畦塗機 マンタミニ171」の商品カタログである甲第6号証に記載されていない(審判事件弁駁書11頁3?6行)と、主張している。

(3)以上のことから、本件特許の出願前に公然実施された検甲1発明は、上記(1)に記載したとおりであって、本件訂正後の本件発明1の発明特定事項である「上面整畦部は、移行部又は張り出し部から移行部にかけての部分が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている」構成を有していない。

そして、この請求人が認定する検甲1発明は、検甲第1号証説明書で示された「畦塗機 マンタミニ171」の商品カタログである甲第6号証に記載された甲6発明と実質的に同一であるから、仮に、検甲第1号証説明書で示された「畦塗機 マンタミニ171」を検証を行い、検甲1発明を請求人が主張するとおりに認定することができたとしても、無効理由2の判断は、甲6発明を主引用発明とした当審無効理由の判断と同様のものとなるものと認められる。
そして、当審無効理由の判断は、上記3において既に検討したとおり、本件発明1?11は、甲第6号証に記載された発明、及び甲第11号証及び甲第12号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、無効理由2は理由がないことは明らかであるから、請求人が申し立てた検証及び証人尋問を行うことに合理性は認められない。したがって、無効理由2についての判断は行わない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし11に係る発明の特許は、請求人が主張する無効理由及び提示する証拠方法、並びに当審無効理由によって、無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
畦塗り機の整畦体用羽根板及びそれを使用した整畦体
【技術分野】
【0001】
本発明は畦を整形する整畦体を有する畦塗り機において、整畦体の内、畦の上面を整形する上面整畦部に、畦上面から法面へかけての表面を連続的に仕上げる機能を持たせた整畦体用羽根板、及びそれを使用した整畦体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畦塗り機の整畦体は円錐台形状の法面整畦部とその軸方向先端に連結される円筒形状の上面整畦部を持ち、畦塗り機の走行時に軸回りに回転することにより前処理体が先行して緩めた旧畦の土を新たに法面と上面を有する畦として整形する。整畦体は畦塗り機の走行速度より速い速度で転動し得る回転速度が与えられ、スリップ回転することで、畦の法面と上面を転圧し、表層土を圧密させる機能を発揮する(特許文献1参照)。
【0003】
整畦体がスリップ回転することで、法面整畦部と上面整畦部が畦の法面と上面の双方に圧力を加えるため、引き締まった畦を整形することができる。土は上面から作用する圧力によって法面側へ滑ろうとし、そのときの反力を法面整畦部が受けることができるため、上面整畦部によって上面から圧力を与えるだけでも畦に対する一定の締め固め効果を得ることはできる(特許文献2参照)。
【0004】
但し、特許文献1、2では、整畦体が回転するときの落差や段差を利用して畦上面を叩くことにより土に動的な圧力を与えるため、表層土を乱す、あるいは飛散させる可能性がある。
【0005】
これに対し、上面整畦部の外周に接続される、特許文献1のような複数枚の羽根板を屈曲させ、1枚の羽根板が2段階に畦上面に接触する形状にすることで、円筒面を有する羽根板を畦上面に接触させる場合より羽根板による土への加圧効果を高める方法がある(特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000-37106号公報(請求項1、段落0013、0019、図3、図4、図7?図9)
【特許文献2】特開2006-55121号公報(請求項1、段落0021?0022、図2、図3)
【特許文献3】特許第3997473号公報(請求項1、段落0008、0012?0014、図3、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3のように屈曲した羽根板を畦上面に接触させる方法によれば、上面整畦部の軸方向を向いた凸条部を挟んで羽根板表面の向きが相違することで、凸条部がない連続した平面、もしくは曲面を有する羽根板を用いる場合より、軸回りの回転時に畦上面に接触する面積が小さくなる。この結果、畦上面に接触するときに土に与える圧力が大きくなり、加圧効果が高まる利点を有するとされている(段落0012)。
【0008】
特許文献3では法面(側面)整畦部にも周方向に互いに重なり、放射方向に凸条部が形成された羽根板を接続しているが、上面整畦部から法面整畦部へ移行する境界部分では双方の羽根板が不連続になるため、上面整畦部の羽根板と法面整畦部の羽根板のいずれかが畦上面と畦法面に同時に跨ることはない。従っていずれかの羽根板によって畦の上面と法面を同時に押圧することができず、畦上面と法面(側面)の境界部分を畦の幅方向に連続した表面に仕上げることが難しい。
【0009】
特に上面整畦部の羽根板は法面整畦部より畦側に位置する関係で、畦上面への接触時には法面整畦部から畦法面側へ押圧されようとするが、上面整畦部の羽根板に軸方向の全長に亘って凸条部が形成されているため、法面整畦部から押圧されたときに曲面をなすように湾曲することはできない。
【0010】
上面整畦部の羽根板が法面整畦部に押圧され、強制的に畦側へ湾曲しようとすれば、上面整畦部から法面整畦部までの範囲で、凸条部の角度が広がり、凸条部がなくなろうとする結果、羽根板の周方向下流側の縁が畦の表面(上面と法面)に接触するときに畦側を向く。このため、上面整畦部の転動に伴い、縁が畦表面から離脱しようとするときに、畦表面を蹴り、畦表面にその幅方向を向く線状の痕跡を残す可能性がある。また羽根板が軸方向の不特定の位置で屈曲することが想定されるため、その屈曲した部分が畦上面を押圧する結果、畦の表面に平面状の痕跡を残す可能性がある。
【0011】
本発明は上記背景より、畦上面から法面へかけての表面を連続的に仕上げることを可能にする上面整畦部の羽根板とそれを使用した上面整畦部を有する整畦体を提案するものである。
【0012】
請求項1に記載の発明の畦塗り機の整畦体用羽根板は、軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、本体となる支持部材とその周面に接続される複数枚の羽根板を有し、前記法面整畦部の軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを備え、畦塗り機に装着される整畦体の前記上面整畦部を構成する羽根板であり、
前記支持部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部が形成されていることを構成要件とする。
【0013】
「本体となる支持部材」とは、上面整畦部の本体を構成する支持部材のことを言う。支持部材自体は円柱状、多角柱状、円錐台状、角錐台状等に形成され、支持部材の周面(表面)が閉塞した形状であるか、開放した形状であるかは問われない。支持部材が開口のない板から構成される場合には周面が閉塞した形状になり、枠材から構成される場合には開放した形状になる。
【0014】
「回転方向上流側」とは、上面整畦部が軸回りに回転するときに回転の向きの前方側(畦表面に先行して接触する側)を指す。「移行部が回転方向上流側から下流側へかけて上面整畦部側から法面整畦部側へ接近する形状をする」とは、回転方向上流側から下流側へかけて上面整畦部の軸方向の長さが大きくなる形状を成すことを言い、この形状から移行部は例えば三角形状や台形状等に形成され、少なくとも法面整畦部側の一部は法面整畦部の表面に畦側から重なる。法面整畦部が複数枚の羽根板から構成される場合には、移行部は羽根板に重なる。移行部の軸方向の長さは回転方向上流側から下流側へかけて次第に大きくなる(漸増する)場合と、段階的に大きくなる場合がある。
【0015】
「法面整畦部に重なる」とは、移行部が法面整畦部の表面に直接重なる(接触する)場合と、空隙を置いて重なる場合があることを言う。移行部が法面整畦部の表面との間に空隙を置いて重なることは、上記のように移行部が、もしくは張出部から移行部へかけての部分が湾曲した状態で羽根板が製作されることにより実現される。この場合、上面整畦部の羽根板は整畦体の回転時に法面整畦部の羽根板から畦側へ押圧されることで、法面整畦部(の羽根板)の表面に重なって面で、もしくは線で接触する。従って整畦体が回転していない状態では、必ずしも上面整畦部の羽根板が法面整畦部の羽根板に接触している必要はない。
【0016】
「少なくとも張出部の法面整畦部側の端部に移行部が形成される」とは、移行部が張出部の範囲に形成される場合と、接続部から張出部に亘って形成される場合があることを言う。上記のように移行部は回転方向上流側から下流側へかけて法面整畦部側へ接近する形状を成すから、全体的には張出部の範囲に占める割合が大きい。
【0017】
法面整畦部が複数枚の羽根板から構成される場合には、その複数枚の羽根板は上面整畦部と同じく、回転に伴って畦上面に与える押圧力を増大させるために、回転方向上流側に位置する羽根板が下流側に位置する羽根板の上流側の端部を覆うように組み合わせられるから、2枚の羽根板が周方向に隣接する部分では、上流側に位置する羽根板が下流側に位置する羽根板の表面側に重なる。すなわち、上流側に位置する羽根板の表面が下流側に位置する羽根板の表面より上面整畦部側に位置し、上流側の羽根板の表面と下流側の羽根板の表面との間には段差が生ずる。この関係で、法面整畦部の上流側に位置する羽根板との干渉を回避する上では、上面整畦部の羽根板の移行部は張出部の範囲から法面整畦部側へ張り出すように形成されることが合理的である。
【0018】
図1等に示すように上面整畦部を構成する1枚の羽根板の移行部が例えば法面整畦部を構成する2枚の羽根板に跨る場合には、移行部は法面整畦部の上流側の羽根板から下流側の羽根板に重なることになる。上記のように法面整畦部の2枚の羽根板間には段差があるから、移行部の法面整畦部側の縁(端部)が法面整畦部の上流側の羽根板表面上の点と下流側の羽根板表面上の点を結ぶ(通る)曲線を描くような形状をしていれば、移行部の法面整畦部側の縁(端部)は法面整畦部の2枚の羽根板の表面に同時に接触する状態になる。上面整畦部の法面整畦部側の縁(端部)が法面整畦部の表面に接触しながら、移行部の軸方向の長さが上流側から下流側へかけて次第に大きくなる場合には、移行部は三角形状になり、移行部の軸方向の長さが途中から一定になれば、移行部は台形状になる。
【0019】
移行部はそれがない場合の、例えば長方形状の羽根板に付加的に接続されるか、一体となった形で連続し、上面整畦部から法面整畦部に跨ることで、畦に対しては上面から法面に跨り、連続して接触する。移行部が、整形状態が不連続になり易い畦上面から法面までの範囲に連続して接触することで、畦上面から法面へかけて表面を平滑に、連続的に仕上げることが可能になる。
【0020】
特に移行部は整畦体の回転時に、法面整畦部の表面への接触により上面整畦部の軸方向の先端側から法面整畦部へかけての範囲で、法面整畦部の表面に沿い、上面整畦部の軸側が凸となり、畦側が凹となるように湾曲するため(図1、図6?図8-(a))、畦の整形時には上面整畦部の羽根板は畦の上面から法面にかけての範囲を曲面に仕上げることになる(図8-(b))。上面整畦部の支持部材に接続される接続部と移行部を除いた部分である張出部は上面整畦部の軸に対して軸側が凹となる曲面を形成するのに対し、張出部から移行部へかけての部分は上面整畦部の周方向を向いた平面に対して軸側が凸となる曲面を形成する(図6?図11)。
【0021】
移行部を持たない羽根板の場合には、上面整畦部と法面整畦部が独立してそれぞれ畦の上面と法面を整形することから、完成する畦の上面と法面がそれぞれ平面になるため、その境界部分が多角柱状になり、境界部分に角が出ることになる。上面と法面の境界部分に突出した角部は農作業中に外力を受け易い上、上面からの荷重により、または角部への衝撃力の作用により崩壊し易い難点がある。これに対し、本発明では上面整畦部の移行部が法面整畦部に跨り、畦の上面と法面の境界部分を曲面に仕上げることで、角部の突出がなくなるため、崩壊に対する安定性が格段に向上する利点がある。
【0022】
また移行部は法面整畦部の表面に重なることで、分離している上面整畦部と法面整畦部との境界部分の空隙を移行部が表面側から閉塞するため、この部分から上面整畦部の本体部である支持部材の内部、あるいは上面整畦部と法面整畦部との接続部分に土砂が進入することを抑制する働きをする。
【0023】
移行部はまた、上面整畦部の一部であることで、上面整畦部の回転に伴って畦上面に接近し、接触するときに支持部材の周面に重なろうとするため、法面整畦部の羽根板に重なることと併せて、畦上面上の土を法面整畦部側へ流す働きをする。加えて法面整畦部の羽根板と共に、あるいは法面整畦部の羽根板の一部として畦上面と法面の境界部分における土を均し、畦の内部側へ圧密させる働きをする。結果的に畦上面と畦法面の境界部分における土が連続的に、均等に押圧されるため、不連続になる事態が回避される。
【0024】
特許文献3では上面整畦部の羽根板の法面整畦部側の端部が上流側から下流側へかけて上面整畦部側から法面整畦部側へ接近する形状をしているようにも見えるが、上面整畦部の羽根板は法面整畦部の表面には重なっていないため、上面整畦部の羽根板が畦の上面から法面へかけての範囲で連続した曲面を形成することは困難である。仮に上面整畦部の羽根板端部の一部が法面整畦部の表面に接触することがあるとしても、畦の整形時(整畦体の回転時)に一部のみ、例えば下流側の一部のみが接触し、他の部分が接触しないとすれば、その一部に法面整畦部から過大な圧力が集中するため、羽根板の一部が早期に損傷し易い不利益がある。
【0025】
これに対し、本発明の移行部は前記のように整畦体の回転時に、法面整畦部表面への接触により上面整畦部の軸方向中途位置から法面整畦部へかけての範囲で、法面整畦部の表面に沿い、上面整畦部の軸側が凸となり、畦側が凹となるように湾曲する(図9、図11)。このことから、移行部における法面整畦部側の縁の全長において法面整畦部に接触可能であるため、移行部の縁の一部への過大な圧力の作用はなく、羽根板の損傷を早める要因は排除されている。
【0026】
前記の通り、上面整畦部の羽根板が法面整畦部の表面に面で、もしくは線で接触することは、整畦体が回転している状態で得られればよく、少なくとも線で接触することで、移行部が法面整畦部に接触することにより法面整畦部から受ける反力は分散されるため、縁に圧力が集中することは回避され、損傷の可能性も低下している。
【0027】
支持部材に接続される接続部から回転方向下流側に張り出す張出部は支持部材の表面形状に倣い、全体として表面側に凸(支持部材側に凹)の曲面(湾曲面)、もしくは屈曲面を形成するが、移行部は法面整畦部の表面に接触することで、張出部に対して逆向きに、すなわち支持部材とは反対側に湾曲、もしくは屈曲しようとする。この関係で、移行部と張出部の境界部分の曲げ剛性がその境界部分における湾曲を阻害しない程度でなければ、特許文献3と同様に羽根板軸方向の不特定の位置が屈曲する可能性がある。
【0028】
羽根板がその材料特性や肉厚等に起因して張出部との境界位置で屈曲する可能性がある場合には、例えば移行部に、法面整畦部の表面に接触したときに、表面側へ湾曲可能な弾性を与えることで(請求項2)、移行部と張出部の境界部分における曲げ剛性を緩和することができる。ここでの「表面」は羽根板自身の表面を指し、上面整畦部の軸(支持部材)の反対側を指す。この結果、不特定位置での屈曲を回避し、屈曲した部分が畦上面を押圧し、畦表面に痕跡を残す事態の発生を回避することが可能になる。羽根板自体に例えば薄肉の鋼板その他の金属板、あるいは合成樹脂板等、曲げ剛性の低い材料を使用すれば、羽根板自身が表面側へ湾曲可能な弾性を保有する。
【0029】
移行部を法面整畦部の表面への接触時に湾曲させる上では、必ずしも移行部に湾曲可能な弾性を与える必要はなく、羽根板の成形(成型)時に移行部が法面整畦部の表面に接触した状況を想定した曲面を移行部に与えておくことによっても、張出部から移行部へかけての範囲を湾曲させることが可能である(図9、図11)。
【0030】
「表面側へ湾曲可能な弾性」とは、羽根板の法面整畦部への接触によりその表面形状に倣って支持部材の反対側へ弾性変形し、その変形状態で、法面整畦部側へ復元しようとする復元力により法面整畦部の表面に密着している状態を言う。上面整畦部の羽根板は前記のように支持部材に重なる範囲では支持部材側が凹の曲面を形成するが、張出部と移行部を羽根板の周方向に見れば、張出部から移行部へかけての範囲は支持部材側に凸の曲面になる。
【0031】
移行部に「表面側へ湾曲可能な弾性」を与えることは、具体的には移行部に、上面整畦部の軸方向に少なくとも法面整畦部側の端部が法面整畦部の表面に接触可能な長さを与えることで可能になる(請求項3)。移行部がその表面側へ湾曲可能な弾性を有することは、回転時の法面整畦部への接触により湾曲する場合と、羽根板の成型時に予め湾曲している場合を含む。
【0032】
前記のように移行部は整畦体が回転していない状態で、法面整畦部の表面に接触する場合と接触しない場合があるが、移行部に法面整畦部の表面に接触可能な長さを与え、羽根板の軸方向の長さを大きくすることで、移行部を含めた羽根板全体の曲げ剛性が低下し、法面整畦部への接触により容易に曲げ変形することが可能であるため、強制的に曲げ変形させる場合のような不連続な屈曲部分の発生が回避される。
【0033】
上面整畦部を構成する複数枚の羽根板は全体として支持部材の表面を覆う状態で、支持部材の表面にその周方向に間隔を置いて接続されるため(請求項7)、羽根板の張出部は支持部材の表面に接続される接続部から回転方向下流側へ周面の接線方向に張り出し、上面整畦部を軸方向に見れば、複数枚の羽根板は巴状に配列する。このため、上面整畦部の回転に伴い、羽根板が畦上面から離脱しようとするときには、羽根板が弾性を有することで、復元力によって畦上面の土を跳ね上げることが想定されるが、羽根板の張出部の周方向先端部に支持部材側へ湾曲、もしくは屈曲した返し部を形成することで(請求項4)、土の跳ね上げを抑制、もしくは防止することが可能である。
【0034】
張出部の周方向先端部は上面整畦部の回転方向下流側の端部であり、張出部は支持部材側へ凹の曲面を形成し得ることから、「支持部材側へ湾曲、もしくは屈曲する」とは、周方向先端部をそれ以外の張出部の部分より大きい曲率で湾曲させる、もしくは屈曲させることを言い、返し部の形成によって周方向先端部は支持部材側を向く(図9、図10)。
【0035】
例えば羽根板の張出部の先端部がそれ以外の部分と同一の曲率である(羽根の張出部が先端部まで一様の曲面、もしくは平面である)場合、先端部が畦上面から離脱するときに、弾性変形状態から急激に復元するときの反力により畦上面の土を畦側へ弾くことが考えられる。
【0036】
これに対し、張出部の周方向先端部に支持部材側へ湾曲等した返し部が形成されていることで、図5に鎖線で示すように先端部が離脱するまで畦上面に接触した状態を維持することができる。特に返し部の畦上面側の表面が凸の曲面を形成していることで、上面整畦部の回転に伴う畦上面からの離脱時には返し部の畦側の表面が畦上面に接触したまま、あるいは畦上面上を滑りながら畦上面から浮上しようとするため、土を弾くことなく均すことが可能である。
【0037】
前記の通り、上面整畦部の羽根板は移行部において法面整畦部の表面に重なることで、畦上面から法面へかけて表面を平滑に、連続的に仕上げる働きをするため、法面整畦部に接触した状態にあるときには移行部、もしくは移行部から張出部へかけての部分が法面整畦部の表面に沿って一様に湾曲することが望ましい。従って張出部の周方向先端部に形成される返し部は移行部の湾曲状態への弾性変形を阻害しない形態に形成されることが適切である。一方、張出部の周方向先端部に返し部を形成した場合には、その先端部の周方向を向いた軸線回りの曲げ剛性が高まるため、周方向の軸線回りには羽根板を曲げ変形させにくくなる。
【0038】
そこで、張出部の周方向先端部における返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合いを上面整畦部の軸方向先端側から法面整畦部側へかけて次第に小さくすることにより(請求項5)、更には張出部の周方向先端部における返し部を張出部から移行部付近までに形成することにより(請求項6)、張出部先端部で土の均し効果を維持しながら、移行部を法面整畦部の表面に沿って自然に曲げ変形させることが可能になる。「軸方向先端側」とは、上面整畦部の軸方向両端部の内、法面整畦部に接続されない側の端部を指す。
【0039】
「返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合い」とは、返し部の曲率、もしくは張出部の表面(畦に接触する側の面)と返し部の表面(畦に接触する側の面)とのなす角度のことを言い、「度合いが小さくなる」とは、図9、図10に示すように曲率、もしくは角度が次第に小さくなり、0に近づくことを言う。
【0040】
返し部の湾曲等の度合いが上面整畦部の軸方向先端側から法面整畦部側へかけて次第に小さくなることで、移行部、または張出部の途中から移行部までの範囲で羽根板が曲げ変形を阻害する要因がなくなるため、移行部、または張出部から移行部にかけての範囲は法面整畦部の表面への接触によってその表面の曲面に沿って曲げ変形し易くなる。張出部から移行部までの中途位置で返し部の曲率等が0に近づけば、返し部の湾曲等による曲げ変形への影響が出なくなり、その範囲で羽根板が曲げ変形可能であるから、「移行部付近」とは、羽根板を軸方向に見たときの張出部の中途から移行部の中途までの区間を指す。
【0041】
前記のように上面整畦部の複数枚の羽根板は全体として支持部材の表面を覆う状態で、支持部材の表面にその周方向に間隔を置いて接続されることにより上面整畦部を構成する。複数枚の羽根板が全体として支持部材を覆うとは、上面整畦部が回転するときに、常にいずれかの羽根板が畦上面に接触する状態になるように複数枚の羽根板が支持部材を覆うことを言う。支持部材が例えば多角柱状である場合には、支持部材の側面部分が畦上面に対向するときと稜線部分が畦上面に対向するときのいずれも、支持部材と畦上面との間に羽根板が介在する状態になることを言う。
【0042】
具体的には羽根板が、多角柱状の場合の支持部材のいずれかの側面に重なって接続される接続部と、この接続部に連続し、上面整畦部の回転方向下流側に隣接する側面側へ張り出す張出部からなり、この張出部が上面整畦部の回転方向下流側に位置する羽根板の接続部を覆う状態になることにより、複数枚の羽根板が全体として支持部材を覆う形になる。回転方向下流側は上面整畦部が軸回りに回転するときに回転の向きの後方側であり、回転方向下流側の羽根板は畦上面には、相対的に上流側である回転の向きの前方側に位置する羽根板の後に接触する。前記の通り、支持部材は多角柱状である必要はないが、多角柱状の場合には、羽根板の接続部を支持部材に安定して接続し易い相性の良さがある。
【0043】
支持部材が多角柱状の場合、いずれかの羽根板が畦上面に接触する状態となるように、羽根板が支持部材の表面を覆うことで、多角柱状の支持部材の稜線部分が畦上面を押圧するときと、側面部分が畦上面を押圧するときのいずれのときにも直接的には羽根板を介して畦上面を押圧することになる。
【0044】
複数枚の羽根板が全体として支持部材を覆う状態は、上面整畦部が回転し、少なくとも1枚の羽根板が畦上面に接触しているときに得られればよいが、例えば羽根板が支持部材の外周側へ凸となる曲面を形成していれば、上面整畦部の回転中に羽根板が支持部材を覆う状態を得易い。羽根板が接続部と張出部からなる場合には、張出部が支持部材の外周側へ凸となる曲面を形成していればよい。
【0045】
羽根板の張出部が接続部と同一の平面をなして張り出す場合には、上面整畦部の回転中に羽根板の全面がほぼ同時に畦上面に接触し易く、羽根板の一部が土と接触している時間が長くなるため、平面が畦上面の土を引き摺る可能性がある。これに対し、張出部が支持部材の外周側へ凸の曲面をなすことで、各羽根板が円筒面の一部に近い形状を形成し、羽根板の一部が土と接触している時間が短くなるため、羽根板は土を引き摺ることなく、スリップ回転により同一箇所を曲面によって連続的に均すことができることになる。
【0046】
上面整畦部が例えば多角柱状の支持部材と支持部材の側面に重なって接続される弾性を有する羽根板から構成される場合には、畦上面に直接、接触する羽根板は支持部材の形状に倣って変形しながら畦上面を押圧する。一方、支持部材は断面上の中心位置を一定にしたまま回転するから、中心から多角柱の稜線までの距離と側面までの距離が相違するため、稜線部分が押圧するときと、側面部分が押圧するときとでは圧力に差が生じ、稜線部分から押圧するときに圧力が大きくなる。
【0047】
従って上面整畦部は支持部材の稜線部分の外周側に位置する羽根板から畦上面を押圧するときと、側面部分の外周側に位置する羽根板から畦上面を押圧するときとで異なる圧力で畦上面を押圧するため、多角柱状の支持部材と組み合わせられることで、スリップ回転することにより同一地点を羽根板から2通りの圧力で加圧することが可能である。
【0048】
同一地点を2通りの圧力で加圧できることで、畦上面を締め固める効果と畦を長さ方向に均等に仕上げる効果が得られ、土質、あるいは土の含水量の差異に関係なく、畦上面の表層土を適度に圧密させながら、均質に仕上げることが可能になる。含水量が多ければ、圧密により余剰水は自然に土から排除される。
【0049】
ここで、多角柱状の支持部材の稜線部分(角部分)が直接、畦上面に接触する場合には、稜線部分から畦上面に与える圧力が側面部分からの圧力より大きいため、羽根板が均した土を稜線部分の両側に押し出すように作用し、畦上面に稜線部分の痕跡として溝が形成されることが想定される。このことは多角形状の表面を形成する特許文献3の凸条部にも言える。
【0050】
これに対し、請求項7では多角柱状の支持部材と組み合わせられることで、複数枚の羽根板が全体として支持部材の表面を覆うことで、支持部材の稜線部分から畦上面を押圧するときに羽根板が圧力を分散させる作用を果たすため、稜線部分から畦上面を押圧し、締め固めながらその圧力を分散させ、土を均等に均すことが可能になっている。
【0051】
特に上面整畦部の本体である支持部材が多角柱状の多面体である場合には、支持部材自体が半径方向及び周方向に高い剛性を有し、ねじり剛性も高く、半径方向と周方向への圧力に対して変形しにくい性質を有するため、支持部材自体が反力に対して高い安定性を保有する。このため、畦上面の押圧時に羽根板から十分な反力を与えることができる上、支持部材自体が変形しにくいことで、羽根板からの加圧効果が確実に発揮され、想定通りの圧力を与えることが可能である。
【0052】
支持部材に必要とされる曲げ剛性とねじり剛性はそれを構成する板(プレート)の板厚を一定以上に設定することで確保されるが、支持部材の端面を閉塞する板や内接する板を付加することで剛性は格段に向上する。
【0053】
更に多角柱状の場合、支持部材が多面体であることで、ボルト等を用いて羽根板を支持部材に接合する上で、支持部材との十分な接触面積を確保することができるため、羽根板自体の変形に対する安定性が向上し、損傷に対する耐久性が高まる。
【0054】
特に羽根板の張出部がその周方向に、その羽根板が接続されている支持部材の側面から回転方向下流側の側面を超える長さを有している場合には、支持部材の稜線部分に2枚の羽根板が重なるため、羽根板が畦上面を均す上で、支持部材の稜線部分に1枚の羽根板が位置する場合より羽根板による畦上面への圧力を分散させることが可能であり、畦上面を平滑に仕上げる効果が向上する。
【0055】
例えば多角柱状の支持部材の稜線部分が直接、畦上面に接触する場合には、稜線部分からの圧力が集中的に畦上面に作用するが、支持部材の稜線部分に2枚の羽根板が重なることで、稜線部分から畦上面に与える圧力の分散効果が増すことになる。また羽根板は弾性を有する(曲げ変形可能な)板であるから、2枚の羽根板が重なる場合には、畦上面に直接、接触する上面整畦部の表面の曲率が羽根板が1枚の場合より小さくなり、曲面が緩やかになるため、畦上面の均し効果も向上し、より平滑に仕上げることが可能である。
【0056】
また複数枚の羽根板が全体として支持部材の表面を覆う状態にあることで、あるいは羽根板の張出部が上面整畦部の回転方向下流側に位置する羽根板の表面を覆う状態にあることで、上流側に位置する羽根板の下流側の部分が下流側に位置する羽根板の接合部を覆う(被覆する)状態が得られるため、羽根板の接合部分に土が入り込み、接合部分の損傷を早める可能性が低下し、損傷が抑制される。
【0057】
羽根板は上面整畦部の使用状態では支持部材の外周に固定された状態にあるが、支持部材に対して着脱自在に接続されていれば、上面整畦部の清掃に加え、損傷、もしくは摩耗した羽根板の交換に対応可能になる。具体的には羽根板と支持部材のいずれか一方に係合部が突設され、他方にこの係合部が係合可能な被係合部が形成され、係合部と被係合部が互いに係合することにより、羽根板は支持部材の側面に着脱自在に接続される。
【0058】
係合部は羽根板の支持部材側の面と、支持部材の羽根板側の面のいずれかに形成され、被係合部は係合部に対向する側の面に形成される。係合部と被係合部は互いに係合したときに、羽根板を支持部材に接続した状態を維持できる関係を持てばよく、例えば係合部が被係合部に係合したときに、係合部が羽根板の離脱の向き、すなわち支持部材の軸方向、もしくは径方向に被係合部に係合すればよい。係合部は後述の、羽根板を支持部材に押さえ付けるための接合部材に形成されることもあり、その場合、係合部は羽根板を貫通して支持部材側へ突出することにより羽根板に突設されることになる。この場合、係合部は支持部材に形成される被係合部に係合する。
【0059】
羽根板の支持部材への接続が係合部と被係合部の係合によって行われることで、羽根板の支持部材への接続作業と分離作業が単純化され、上面整畦部の清掃や羽根板の交換作業の効率が向上する。
【0060】
係合部が被係合部に係合するのみで、羽根板が支持部材への接合状態での安定性を確保できない場合には、羽根板は係合部において被係合部に係合した状態で、羽根板のいずれかの部分において直接、もしくは間接的に支持部材にボルト等により接合されることにより支持部材への接合状態での安定性が向上する。羽根板の支持部材への接合に上記した接合部材が使用される場合には、羽根板は間接的に支持部材にボルト等により接合されることになる。
【0061】
係合部が被係合部に係合したときには、係合の離脱の向きに羽根板が支持部材から分離する可能性があるから、係合の離脱を拘束するように、例えば羽根板をその外周側からプレート等の接合部材により支持部材側へ押さえ付けた状態で、接合部材を支持部材にボルト接合すれば、係合の離脱が確実に防止される。接合部材は支持部材の側面に当接、もしくは側面と端面に当接する形をし、支持部材に対しては側面、もしくは端面にボルトが螺入することにより着脱自在に接合される。
【発明の効果】
【0062】
上面整畦部の本体となる支持部材に接続される接続部と、接続部から回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくとも張出部の法面整畦部側の端部に、回転方向上流側から下流側へかけての範囲に上面整畦部側から法面整畦部側へ接近し、法面整畦部に重なる移行部を形成するため、移行部が整畦体の回転時に、法面整畦部の表面への接触により畦側が凹となるように羽根板が湾曲することができる。この結果、畦の上面から法面にかけての範囲を曲面に仕上げることができ、畦の上面から法面までの範囲に角部を突出させることがないため、崩壊に対する安定性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0064】
図1-(a)?(d)は軸回りの回転により、図4、図5に示す畦70の法面を整形する円錐台形状の法面整畦部2と、本体となる支持部材31とその周面に接続される複数枚の羽根板32を有し、法面整畦部2の軸方向先端部に連結されて法面整畦部2と共に回転し、畦70の上面(以下、畦上面)70aを整形する上面整畦部3とを備え、畦塗り機10に装着される整畦体1の構成例を示す。
【0065】
上面整畦部3を構成する羽根板32は支持部材31に接続される接続部32aと、この接続部32aに連続し、上面整畦部3の回転方向下流側に張り出す張出部32bとを有し、少なくともこの張出部32bの法面整畦部2側の端部に、上面整畦部3の回転方向上流側から下流側へかけて上面整畦部3側から法面整畦部2側へ接近する形状をし、法面整畦部2に重なる移行部32dが形成される。羽根板32は接続部32aと張出部32bと移行部32dの3領域に区分される。羽根板32の詳細は後述する。
【0066】
畦塗り機10は基本的に図13に示すようにトラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して連結される、並列する連結フレーム11、11と、並列する連結フレーム11、11を互いに畦塗り機10の幅方向に連結するヒッチフレーム12と、ヒッチフレーム12の後方に鉛直軸回りに揺動自在に連結されるオフセットフレーム13から構成される。
【0067】
オフセットフレーム13の前進方向後方側の先端位置からは畦塗り機10の幅方向に連結材14が張り出し、この連結材14とヒッチフレーム12との間に、オフセットフレーム13と平行にリンクフレーム15が架設され、双方に回動自在に連結される。オフセットフレーム13はこのリンクフレーム15とヒッチフレーム12、及び連結材14によって平行リンクを構成し、ヒッチフレーム12とオフセットフレーム13の先端位置との間に架設され、双方に連結されるシリンダ16の伸縮によってヒッチフレーム12に対してオフセット自在になる。
【0068】
ヒッチフレーム12のトラクタ側にはトラクタのPTO軸にユニバーサルジョイント等を介して連結されるギアボックス17が固定され、PTO軸からの動力はギアボックス17の入力軸に伝達され、入力軸からギアボックス17内の駆動軸を経てオフセットフレーム13の内部を通じ、オフセットフレーム13の先端に軸支された従動軸18に伝達される。
【0069】
畦塗り機10の作業機50は図14に示すように主にオフセットフレーム13先端の従動軸18と同軸で、従動軸18から動力を伝達される伝動軸55を有する駆動ボックス51に連結される整畦体1と、駆動ボックス51から整畦体1に対して進行方向前方側へ張り出し、整畦体1の整形に先だって旧畦の土砂を緩める前処理体52から構成される。前処理体52は駆動ボックス51から動力を受けて回転する畦切り爪52aを有し、作業機50の走行中、整畦体1の前方位置で畦切り爪52aが旧畦の土砂を切り崩して緩めることで、整畦体1による整形の準備をする。
【0070】
図13に示すように連結材14の、リンクフレーム15との連結部分には整畦体1側へ張り出すアーム53が連結され、このアーム53と、駆動ボックス51との間に、作業機50を畦塗り機10に対して揺動させる作業機用シリンダ54が架設され、双方に連結される。作業機50はこの作業機用シリンダ54の伸縮によって作業姿勢の制御を行う。
【0071】
駆動ボックス41内には前記伝動軸55から動力が伝達される回転軸が配置され、この回転軸に整畦体1の法面整畦部2が連結される。法面整畦部2は回転軸の回転によって回転し、同時に上面整畦部3が回転する。
【0072】
法面整畦部2は例えば図2に示すように複数枚の扇形をした羽根板21を半径方向の直線部分で互いに連結することにより全体として円錐台形状に形成され、その先端位置である中心部には複数枚の羽根板21を連結する際の位置決めの基準になり、上面整畦部3と連結されるための連結部22が配置される。連結部22は法面整畦部2から上面整畦部3側へ突出した状態にある。
【0073】
図面では図4、図5に示すように法面整畦部2の回転に伴い、回転方向上流側から下流側へかけて畦70の法面(以下、畦法面)70bを押圧する力が次第に増加するよう、相対的に上流側に位置する羽根板21の、下流側の羽根板21側の端部を下流側に位置する羽根板21に上面整畦部3側から重ねて複数枚の羽根板21を組み合わせているが、必ずしもその必要はない。畦70の断面形状を図8-(b)に示す。隣接する羽根板21、21が重なる場合も、重ならない場合も隣接する羽根板21、21間には段差が形成されない場合もある。隣接する羽根板21、21間に段差が形成される場合は、後述のように移行部32dの形状に関係(影響)する。
【0074】
図示する場合、隣接する羽根板21、21は連結部22の羽根板21側に形成されている保持部22bに重なって支持され、両羽根板21、21間に段差が形成された状態で、互いに溶接等により接合される。この場合、両羽根板21、21間に段差が形成されることで、各羽根板21の表面と畦法面70bとの間の距離は上流側から下流側へかけて次第に小さくなるため、各羽根板21の畦側の表面が畦法面70bを押圧する力は法面整畦部2の回転により上流側から下流側へかけて次第に大きくなり、畦法面70bを締め固める効果がある。
【0075】
連結部22の上面整畦部3側の端面には上面整畦部3とのボルト7等による連結のためのねじ孔22aが形成されており、上面整畦部3は図3-(a)に示すようにそれを軸方向に貫通するボルト7がねじ孔22aに螺入することによって連結部22に連結される。ボルト7は上面整畦部3の全長を貫通する必要はなく、上面整畦部3の先端側の端面からボルト7が単に挿通する挿通孔を形成し、その先の法面整畦部2寄りにボルト7が螺合するねじ孔を形成しておくことで、ボルト7の長さを短縮することができる。
【0076】
上面整畦部3の連結部22への連結にボルト7を使用する場合には、上面整畦部3を交換可能に連結することができる利点があるが、上面整畦部3と連結部22との連結はこの他、上面整畦部3と連結部22のいずれか一方の外周面に雄ねじを形成し、他方の内周面に雌ねじを形成しておくことで、上面整畦部3を軸回りに回転させ、直接、連結部22に交換可能に連結することもできる。
【0077】
図1-(a)?(d)は前記の通り、法面整畦部2と上面整畦部3を連結して構成され、畦塗り機10に装着される整畦体1の構成例を、図4は上面整畦部3の軸方向先端側の端面を示す。上面整畦部3は法面整畦部2の連結部22に連結される支持部材31と、支持部材31の周方向(回転方向)に間隔を置いて接続される複数枚の羽根板32から構成される。図1-(a)、(b)の一点鎖線は上面整畦部3、すなわち整畦体1の回転中心を示し、その回りの矢印は回転の向きを示す。
【0078】
図4に示すように上面整畦部3の本体を構成する支持部材31の本体部31aは基本的に1枚の、もしくは複数枚のプレートを折り曲げ加工することにより、あるいは複数枚のプレートを組み立て、互いに溶接することにより多角柱状、円柱状、角錐台状、円錐台状等の形状に形成される。この他、多角柱、多角錐台の稜線、または円柱、円錐台の母線に相当する部位に枠材を配置する骨組み構造により支持部材31の本体部31aが形成される場合もある。これらの場合、軸方向両端の底面に相当する部分には、面材が配置されることもあれば、角錐台形の場合に、底面の各辺に相当する部分に枠材が配置されることもある。
【0079】
本体部31aの軸方向両側の端部、または端部と軸方向中間部には本体部31aが中空であることによる剛性不足を補うためと、羽根板32を接合するための補剛板31bが配置され、本体部31aに接合される。図面では図3-(a)に示すように上面整畦部3の軸方向先端側の端面と法面整畦部2寄りの中間部に補剛板31bを配置し、端面に配置された補剛板31bを、羽根板32を固定するために利用している。
【0080】
補剛板31bは本体部31aに内接した状態で、または本体部31aの端面に接触した状態で、溶接やボルト接合等の手段により本体部31aに接合される。プレートからなる本体部31aの側面部分は剛性を確保する上では盲板が望ましいが、軽量化を図る目的で側面部分の一部に開口が形成されることもある。
【0081】
補剛板31bには上面整畦部3を法面整畦部2の連結部22に連結するためのボルト7が挿通する挿通孔31cが形成される。補剛板31bにはまた、接合部材4を用いて羽根板32を補剛板31bに当接させ、その状態で接合部材4を貫通するボルト5により補剛板31b接合するためのねじ孔31dが形成されている。図4ではねじ孔31dを断面上の中心に関して円弧状の長孔に形成することで、ボルト7の、連結部22のねじ孔22aへの位置調整を行えるようにしている。
【0082】
図4は上面整畦部3の支持部材31の断面が正八角形である場合を示しているが、支持部材31の断面形状は必ずしも正多角形である必要はない。支持部材31の断面が多角形状であれば、支持部材31(多角形)の稜線部分と側面部分で畦上面70aを押圧することができるから、図5に示すように各側面の幅が相違する多角形であることもある。但し、支持部材31が正多角形であれば、上面整畦部3の回転時に一定の時間的間隔で稜線部分と側面部分から畦上面70aを押圧することができる。
【0083】
羽根板32は畦上面70aに接触したときに支持部材31の外形に沿って弾性変形し、畦上面70aから離脱するにつれて元の形状に復元する弾性を有するポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂や鋼板等の金属材料等から成形され、支持部材31の側面部分に着脱自在に接合される。羽根板32は予め支持部材31の外周に接続された状態で、支持部材31の外周面に沿って表面側に凸となる曲面を形成するように成型されている場合もあり、その場合は畦上面70aに接触したときの弾性変形量は僅かになる。
【0084】
図面では羽根板32の支持部材31への接続状態での安定性を確保する(羽根板32を支持部材31から離脱させない)ために、羽根板32の外周側に上記した接合部材4を配置し、接合部材4を支持部材31に接合することにより羽根板32を支持部材31に着脱自在に接続している。図面では特に接合部材4に、羽根板32を支持部材31(本体部31a)の側面に押さえ付けた状態で、支持部材31に接続しながら、支持部材31の端面に接合されている補剛板31bに接合する機能を持たせている。
【0085】
図面ではまた、羽根板32と支持部材31との着脱自在な接続作業を単純にするために、いずれか一方に、他方に係合する係合部を形成し、他方に係合部が係合する被係合部を形成している。上記のように図面では羽根板32の支持部材31への接続を補うために接合部材4を使用していることから、接合部材4に係合部43を形成し、支持部材31に被係合部33を形成しているが、接合部材4の係合部43が羽根板32を貫通し、支持部材31側へ突出することで、羽根板32に係合部43を突設したことと同等になる。
【0086】
接合部材4に係合部43を形成した場合、図3-(a)に示すように接合部材4は羽根板32の表面に重なる当接部41と、支持部材31の端面に接合されている補剛板31bに重なる接合部42の2部分からなり、当接部41の羽根板32側の面と、支持部材31(本体部31a)の側面のいずれか一方に、他方に係合する係合部43が突設される。図3-(b)は(a)の係合部43部分の拡大図である。ここでは上記のように接合部材4の当接部41に係合部43を形成し、支持部材31の側面に被係合部33を形成しているが、逆の場合もある。
【0087】
接合部材4に係合部43を形成したことに伴い、支持部材31(本体部31a)の側面には係合部43が係合する被係合部33が形成される。係合部を支持部材31に形成した場合には、羽根板32、もしくは接合部材4に被係合部が形成される。また接合部材4に係合部43を形成したことに伴い、図3-(b)に示すように羽根板32の接続部32aには係合部43が挿通する挿通孔32fが形成されるが、係合部43は羽根板32の支持部材31側の面に突設されることもあり、その場合には、接合部材4の当接部41は羽根板32を単純に支持部材31に押さえ付ける働きをする。
【0088】
係合部43は軸部43aの先端側(支持部材31側)に頭部43bを有するピン形の形状をし、被係合部33は係合部43の頭部43bが挿通可能な挿通孔33aと、この挿通孔33aに連続し、係合部43の軸部43aが移動(スライド)自在な長孔状の溝33bを有する開口状の形状を有する。係合部43には頭部43bを有するピンやボルト等が使用される。
【0089】
接合部材4の支持部材31(本体部31a)への装着時には、係合部43の頭部43bが羽根板32に形成されている挿通孔32fを貫通し、被係合部33の挿通孔33aを貫通して軸部43aまで挿通する。その状態で軸部43aが被係合部33の溝33bに沿って移動(スライド)することで、頭部43bが溝33bに、軸方向一方側と径方向外周側へ係合した状態になり、接合部材4が支持部材31に接続された状態になる。接合部材4の離脱時には、接続時とは逆に、軸部43aを溝33bに沿って移動(スライド)させ、頭部43bを挿通孔33aから抜き出すことにより支持部材31から外される。
【0090】
接合部材4の接合部42には接合部材4を補剛板31bに接合するためのボルト5が挿通する挿通孔42aが形成され、接合部材4はこの接合部42の挿通孔42aを貫通し、補剛板31bに螺入するボルト5によって補剛板31bに接合される。
【0091】
接合部材4の当接部41が羽根板32を支持部材31の側面に押さえ付けた状態で、接合部42が支持部材31の補剛板31bに接合されることで、羽根板32が支持部材331に一体化し、上面整畦部3が形成される。支持部材31に羽根板32が一体化した上面整畦部3は図3-(a)に示すように前記した法面整畦部2の連結部22に直接、連結される芯材6にボルト7により接合されることにより法面整畦部2と一体化する。
【0092】
芯材6は円筒形の本体61の内周側に軸方向に間隔を置いて配置された、剛性を確保するための複数枚の、挿通孔を有するフランジ62が接合されて形成される。土質条件によってはこの芯材6を上面整畦部3として使用することも可能である。上面整畦部3は支持部材31の端面に接合されている補剛板31bと芯材6のフランジ62を貫通し、法面整畦部2の連結部22に形成されているねじ孔22aに到達するボルト7がねじ孔22aに螺入することにより芯材6に接合される。図3-(c)は図3-(a)に示す上面整畦部3の補剛板313b側の端面を示す。図1-(a)?(d)は法面整畦部2に上面整畦部3が一体化した整畦体1の外観を示している。
【0093】
上面整畦部3の羽根板32は図4に示すように支持部材31のいずれかの側面に重なって接続される接続部32aと、これに連続し、支持部材31の回転方向下流側に隣接する側面(羽根板32)側へ張り出す張出部32bからなり、張出部32bはその幅方向に上面整畦部3の回転方向下流側に位置する羽根板32の接続部32aを覆う長さを有する。
【0094】
具体的には羽根板32の張出部32bはその周方向に、その羽根板32が接続されている支持部材31の側面から回転方向下流側に隣接する側面を超える長さを有している。すなわち羽根板32の張出部32bの下流側の端部はその側に隣接する側面の稜線部分を超え、更に隣接する側面にまで跨る長さを有し、上面整畦部3の転動時には図5に示すように2枚の羽根板32が重なった状態で、進行方向前方に存在する畦上面70a上の土を羽根板32の下に巻き込みながら、スリップ回転する。
【0095】
図5は正多角形でない支持部材31を持つ上面整畦部3が畦上面70a上を転動しているときの様子を示す。羽根板32の張出部32bの下流側の端部がその側に隣接する側面の稜線部分を超える長さを有することで、羽根板32が畦上面70aを押圧するときには、複数枚の、図面では2枚の羽根板32が重なった状態になり、支持部材31からの圧力は複数枚の羽根板32を介して畦上面70aに伝達されることになる。
【0096】
羽根板32は接続部32aにおいて上記した接合部材4によって支持部材31の側面に重なり、断面上の中心側へ押し付けられた状態で支持部材31に接合される。接続部32aは面で支持部材31の平面をなす側面に重なった状態で接合されることで、接合部材4によって支持部材31に拘束された状態にある。この状態で、張出部32bは支持部材31の外周側へ凸となる円筒面等の曲面を形成し、支持部材31に対して曲げ(弾性)変形可能な状態にある。
【0097】
張出部32bが支持部材31の外周側へ凸となる曲面を形成することで、張出部32bは畦上面70aに接触したときに、支持部材31の中心からその稜線までの距離を半径とする円弧面を有する円筒に近い形状になる。
【0098】
前記のように張出部32bが周方向に回転方向下流側に隣接する側面を超える長さを有することと、支持部材31の外周側へ凸となって湾曲することで、上面整畦部3の転動時には2枚の羽根板32が重なって土を羽根板32の下に巻き込み始め、羽根板32の回転方向下流側に先端部32cが畦上面70aから離脱するまで、土を曲面で均すことになる。このとき、上面整畦部3はスリップ回転するため、畦上面70aは圧密され、表面は平滑に仕上げられる。
【0099】
上面整畦部3の転動時には上面整畦部3の断面上の中心位置が一定に保たれることで、支持部材31の稜線部分が畦上面70aに接近し、押圧しようとするときと、側面部分が接近し、押圧しようとするときとでは、羽根板32からの押圧力に差が生じ、稜線部分が押圧しようとするときの圧力が大きくなる。
【0100】
この関係で、支持部材31の稜線部分から羽根板32を介して畦上面70aを押圧するときに土をより大きい圧力で加圧し、側面部分から羽根板32を介して押圧するときにはそれより小さい圧力で加圧するため、上面整畦部3は2通りの圧力で畦上面70aを圧密することができる。また上面整畦部3は移動速度より大きい速度で畦上面70a上を転動(スリップ回転)するため、畦上面70aを下方へ加圧しながら、表面を均質に均すことになる。
【0101】
図面ではまた、羽根板32の張出部32bの周方向先端部32c、すなわち回転方向下流側の先端部32cとそれ以外の張出部32bと境界部分に返し部32eを形成し、この返し部32eを張出部32bより大きい曲率で支持部材31側へ湾曲、もしくは屈曲させることで、図5に示すように張出部32bの周方向先端部32cが畦上面70aから離脱するときに、この先端部32cが土を跳ね上げないようにしている。
【0102】
張出部32bは畦上面70aから離脱する直前には強制的に曲げ変形しているから、例えば張出部32bが周方向に一様の曲率を有している場合には、離脱しようとするときに、先端部32cが復元力によって急激に畦上面70aから跳ね上がることが想定される。これに対し、返し部32eの形成により張出部32bの先端部32cが他の部分より大きい曲率で湾曲等することで、先端部32cが畦上面70aに接触したまま、あるいは畦上面上を滑りながら畦上面から浮上しようとするため、土を跳ね上げることがなくなる。
【0103】
羽根板32の張出部32bの法面整畦部2側の端部には、図1に示すように上面整畦部3の回転方向上流側から下流側へかけて上面整畦部3側から法面整畦部2側へ接近する形状をした移行部32dが形成されている。移行部32dは主に張出部32bの端部位置から形成されるが、接続部32aと張出部32bに亘って形成されることもある。
【0104】
法面整畦部2を構成する複数枚の羽根板21はその回転方向下流側に位置する羽根板21が上流側に位置する羽根板21の背面に重なって組み合わせられることから、相対的に上流側に位置する羽根板21が上面整畦部3寄りに位置する。この関係で、法面整畦部2の相対的に上流側に位置する羽根板21との衝突を回避するために、移行部32dは上面整畦部3の回転方向上流側から下流側へかけて上面整畦部3の軸方向の長さが大きくなり、図1-(a)?(d)に示すように三角形状、台形状、もしくは翼状、あるいはこれらに近い形状に形成される。
【0105】
図1-(a)、(b)、(d)中の破線は羽根板32の張出部32bと移行部32dの境界位置を示すが、移行部32dが張出部32bに連続し、張出部32bの一部として一体的に形成されている場合には、破線は実際には表れない。移行部32dは張出部32bとは別体の部品を張出部32bに連結することによっても形成される。移行部32dは図示するように法面整畦部2の羽根板21に上面整畦部3側、すなわち畦70側から重なり、例えば三角形状、もしくは台形状等の場合には、めくれを防止するために角部が落とされ、移行部32dの外形線は曲線状になる。
【0106】
上面整畦部3の回転に伴って羽根板32の張出部32bが畦上面70aに接触し、畦上面70aに押されて支持部材31の周面(側面部分と稜線部分)に重なるときに、移行部32dも畦上面70aに押されるため、法面整畦部2の羽根板21の表面に重なろうとする。この結果、図8-(a)に示すように張出部32bから移行部32dへかけての範囲が羽根板21の表面に倣って湾曲しようとするため、湾曲した張出部32bから移行部32dへかけての範囲が畦法面70bと畦上面70aを畦70の内部側へ押圧し、畦法面70bから畦上面70aへかけての部分が(b)に示すように曲面状に整形される。
【0107】
このとき、畦上面70a上の土は法面整畦部2側へ流されるため、畦上面70aと法面の境界部分における土は均等な圧力で均され、畦70の内部側へ圧密させられることになる。畦上面70aと法面の境界部分における土が均されることで、畦70の上面70aと法面との境界(面)が不連続になることがなくなる。図8-(a)は図6、図7に示す上面整畦部3の羽根板31と同じく、張出部32bから移行部32dへかけての範囲が予め湾曲している羽根板31を示しているが、弾性変形によって湾曲する場合も図8-(a)と同様の形状に湾曲し、図8-(b)に示す畦70を整形する。
【0108】
図6は図1-(a)に示す整畦体1を上面整畦部3の中心寄りの位置から見た様子を、図7は図6における上面整畦部3と法面整畦部2との境界部分を拡大した様子を示す。ここに示すように上面整畦部3の羽根板32は法面整畦部2の2枚の羽根板21、21に跨った状態で、移行部32dにおいて羽根板21に重なるから、移行部32dの法面整畦部2側の縁(端部)は上流側の羽根板21の表面と下流側の羽根板21の表面に接触するか、接触し得る状態になる。
【0109】
移行部32dの縁が羽根板21の表面に接触し得る状態は、移行部32dが法面整畦部2の表面に沿った曲面形状に形成された状態で、羽根板32が成型されている場合に得られる。移行部32dは法面整畦部2への接触によって曲面形状に弾性変形することもあり、その場合、羽根板32は必ずしも曲面を形成した状態で成型される必要はなく、平坦な板状に成型されていればよい。
【0110】
羽根板32は少なくとも移行部32dが整畦体1の回転時(使用時)に、畦70と法面整畦部2との間に挟まれることで、法面整畦部2の表面に接触すればよく、そのときに張出部32cから移行部32dへかけての範囲が畦70側へ凹の曲面を形成すればよい。張出部32cから移行部32dへかけての範囲が畦70を押圧するときの状態を図8-(a)に示す。
【0111】
ここに示すように羽根板32の移行部32dは整畦体1の回転に伴う法面整畦部2への接触により畦70側が凹となる曲面を形成するため、図8-(b)に示すように畦70の上面70aから法面70bにかけての範囲(肩部)は曲面になる。この曲面は上面整畦部3の周方向に配列する複数枚の羽根板32が連続的に畦70を押圧することで、畦70の長さ方向に連続することになる。
【0112】
図9、図11はそれぞれ一枚の羽根板32の表面(畦70側の面)と背面(支持部材31側の面)の様子を示す。ここでは支持部材31の軸方向の長さと同等程度の長さを有する平坦な接続部32aと、接続部32aから周方向に張り出し、支持部材31側へ湾曲した張出部32bと、張出部32b、もしくは接続部32aと張出部32bから法面整畦部2側へ突出する移行部32dを有する形態で、例えばポリエチレン等から射出成型等によって製作された羽根板32を示す。移行部32dは上面整畦部3側が凸(畦70側が凹)となる曲面を形成している。
【0113】
図9中、移行部32d側にある、支持部材31の周方向の破線は移行部32dとそれ以外の部分との境界を便宜的に示しているが、ここでは移行部32dを接続部32aから張出部32bまでの範囲に亘って法面整畦部2側へ形成している。接続部32aの周方向の幅は支持部材31の表面に重なって接続されるのに十分な大きさを持てばよいため、張出部32bの幅より小さいが、接続部32aの幅の範囲から移行部32dを形成することで、法面整畦部2との接触面積を稼ぎ、変形時に法面整畦部2から受ける反力を分散させる結果、移行部32dの曲げ変形を生じさせ易くする利点を有する。
【0114】
図9では特に、接続部32aから張出部32bの周方向中途までの区間における移行部32dの法面整畦部2側の縁を平面上、直線状に形成し、張出部32bの周方向中途から先端部32cまでの区間の縁を法面整畦部2の羽根板21の表面形状(曲面)に沿った曲線状に形成することにより、移行部32dの縁が全長に亘って法面整畦部2の羽根板21の表面に接触し得るようにしている。
【0115】
図9の例では張出部32bの回転方向下流側の先端部に支持部材31側へ湾曲、もしくは屈曲した返し部32eが形成されているが、この返し部32eの湾曲、もしくは屈曲の度合い(曲率、もしくは角度)は上面整畦部3の軸方向先端側から法面整畦部2側へかけて次第に小さくなっており、張出部32bから移行部32d付近まで形成されている。図9のC-C線、B-B線、A-A線の断面を図10-(a)?(c)に示すが、返し部32eの曲率、もしくは角度は上面整畦部3の軸方向先端寄りで大きく、法面整畦部2寄りで小さくなり、移行部32dの範囲ではその範囲で移行部32dが支持部材31の反対側へ湾曲可能なように、ほとんど0に近い大きさになっている。
【0116】
移行部32dの範囲において返し部32eの曲率、もしくは角度が0に近いことで、その範囲では返し部32dの存在が張出部32bから移行部32dへかけての範囲の曲げ変形を阻害する要因になることがないため、羽根板32が法面整畦部2への接触により弾性変形する場合には、その変形箇所に弾性変形が抵抗なく生ずることが可能になっている。
【0117】
図12-(a)?(e)は図1に示す上面整畦部3が畦上面70a上を転動し、1回転するときの様子を示す。上面整畦部3は畦上面70aから断面上の中心までの高さを一定に保持したまま回転する。上面整畦部3の断面上の中心位置は図1、図5に示すように支持部材31の稜線部分と畦上面70aとの間に2枚の羽根板32が挟み込まれる程度の高さに設定される。
【0118】
図12-(a)は上面整畦部3を構成する支持部材31の側面部分が畦上面70a側を向いている状況を示す。このとき、支持部材31の側面部分は畦上面70aから浮いた状態にあり、その側面部分に固定された羽根板32の接続部32aの外周側に、その上流側の側面に固定された羽根板32の張出部32bが重なり、畦上面70aを適度の圧力で押圧する。
【0119】
支持部材31の側面部分と畦上面70aとの間には間隔があるから、支持部材31に関して外周側に位置する羽根板32の張出部32bは畦上面70aとの間で外周側へ凸の曲面状に弾性変形しながら土を押圧する。この状況では畦上面70a側を向いた支持部材31の側面部分の外周側に張出部32bが位置する羽根板32の先端部32cは下流側の羽根板32の張出部32bに接触している。このとき、先端部32cは湾曲等していることで、先端が下流側の羽根板32の張出部32bに当接し、その先端部32cを有する羽根板32自身を下流側の羽根板32から突き放そうとするため、その先端部32cを有する羽根板32の張出部32bが円弧面等、外周側へ凸の曲面状に弾性変形させることに寄与している。
【0120】
図12-(b)は(a)から10°上面整畦部3が回転した状況を示す。このとき、支持部材31の稜線部分が畦上面70aを押圧し始め、この稜線部分に押されて下流側の羽根板32を介して上流側の羽根板32の張出部32bが押し潰され、畦上面70aを(a)の状況より大きい圧力で押圧する。この状況では張出部32bにおいて畦上面70aに接触している羽根板32の上流側に位置する羽根板32の先端部32cが畦上面70aから離脱しようとしている。
【0121】
図12-(c)は(b)から更に10°上面整畦部3が回転し、支持部材31の稜線部分が支持部材31の中心のほぼ真下に位置し、稜線部分が畦上面70a側に最も接近した状況を示す。このときには支持部材31の稜線部分が畦上面70aに最も接近しているから、(b)に続いて畦上面70aを最も大きい圧力で押圧する。(b)から(c)へ移行する過程で、畦上面70aに接触している羽根板32の上流側にある羽根板32の先端部32cは畦上面70aから離脱しているが、上記の通り、張出部32bの周方向の先端部32cは畦上面70a上を滑りながら離脱している。
【0122】
図12-(d)は(c)から更に10°上面整畦部3が回転し、支持部材31の稜線部分が支持部材31の中心の真下を通過し、稜線部分が畦上面70aを押圧し続けている状況を示す。(c)から(d)へ移行する間が最も畦上面70aに大きい圧力を与えるときになる。
【0123】
図12-(e)は(d)から更に10°上面整畦部3が回転し、(a)の状態から累積で40°回転し、(a)の直前の状況に至った様子を示す。このときには、支持部材31の稜線部分が畦上面70aから離れ、側面部分が羽根板32を介して畦上面70aを押圧する状況へ移行しつつある。図5に示す上面整畦部3の支持部材31は正八角形状であり、内角が135°で、外角が45°であるから、上面整畦部3は中心の回りに45°回転すれば、(a)の状態に復帰する。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】(a)、(b)は法面整畦体に上面整畦部を接合して製作された整畦体を示した斜視図、(c)は(a)、もしくは(b)の端面図、(d)は側面図である。
【図2】整畦体の法面整畦部の例を示した斜視図である。
【図3】(a)は上面整畦部と法面整畦部との接合例を示した断面図、(b)は(a)の鎖線円部分の拡大図、(c)は(a)の端面図である。
【図4】正多角柱状の支持部材に羽根板を接合した上面整畦部の構成例を示した端面図である。
【図5】正多角柱状でない支持部材に羽根板を接合した上面整畦部の構成例と畦上面との関係を示した端面図である。
【図6】図1-(a)を上面整畦部の中心寄りの位置から見た様子を示した斜視図である。
【図7】図6における上面整畦部と法面整畦部との境界部分を拡大した様子を示した斜視図である。
【図8】(a)は上面整畦部の羽根板が畦側に回り込んだときの様子を示した斜視図、(b)は上面整畦部の羽根板によって整形された畦の断面を示した斜視図である。
【図9】上面整畦部の羽根板の表面(畦側の面)を示した斜視図である。
【図10】(a)?(c)は図7-(a)のそれぞれC-C線、B-B線、A-A線の断面図である。
【図11】上面整畦部の羽根板の背面(支持部材側の面)を示した斜視図である。
【図12】(a)?(e)は図1に示す上面整畦部が畦上面上を転動し、1回転するときの様子を示した端面図である。
【図13】畦塗り機全体の構成例を示した平面図である。
【図14】畦塗り機の作業機を示した平面図である。
【符号の説明】
【0125】
1……整畦体、
2……法面整畦部、21……羽根板、22……連結部、22a……ねじ孔(ボルト7用)、22b……保持部(羽根板用)、
3……上面整畦部、31……支持部材、31a……本体部、31b……補剛板、31c……挿通孔(ボルト7用)、31d……ねじ孔(ボルト5用)、
32……羽根板、32a……接続部、32b……張出部、32c……先端部、32d……移行部、32e……返し部、32f……挿通孔、
33……被係合部、33a……挿通孔、33b……溝、
4……接合部材、41……当接部、42……接合部、42a……挿通孔(ボルト5用)、43……係合部、43a……軸部、43b……頭部、
5……ボルト(接合部材4と補剛板31bとの接合用)、
6……芯材、
7……ボルト(上面整畦部3と法面整畦部2の接合用)、
10……畦塗り機、11……連結フレーム、12……ヒッチフレーム、13……オフセットフレーム、14……連結材、15……リンクフレーム、16……シリンダ、17……ギアボックス、18……従動軸、
50……作業機、51……駆動ボックス、52……前処理体、52a……畦切り爪、53……アーム、54……作業機用シリンダ、55……伝動軸、
70……畦、70a……上面、70b……法面。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、本体となる支持部材とその周面に接続される複数枚の羽根板を有し、前記法面整畦部の軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを備え、畦塗り機に装着される整畦体の前記上面整畦部を構成する羽根板であり、
前記支持部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部が形成されており、
前記上面整畦部は、前記移行部又は前記張出部から前記移行部へかけての部分が、畦側が凹となるように湾曲した状態で製作されている、畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項2】
前記移行部は前記法面整畦部の表面に接触したときに、表面側へ湾曲可能な弾性を有していることを特徴とする請求項1に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項3】
前記移行部は前記上面整畦部の軸方向に、少なくとも前記法面整畦部側の端部が前記法面整畦部の表面に接触可能な長さを有していることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項4】
前記張出部の周方向先端部に前記支持部材側へ湾曲、もしくは屈曲した返し部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項5】
軸回りの回転により畦の法面を整形する法面整畦部と、本体となる支持部材とその周面に接続される複数枚の羽根板を有し、前記法面整畦部の軸方向先端部に連結されて法面整畦部と共に回転し、畦の上面を整形する上面整畦部とを備え、畦塗り機に装着される整畦体の前記上面整畦部を構成する羽根板であり、
前記支持部材に接続される接続部と、この接続部に連続し、前記上面整畦部の回転方向下流側に張り出す張出部とを有し、少なくともこの張出部の前記法面整畦部側の端部に、前記上面整畦部の回転方向上流側から下流側へかけて前記上面整畦部側から前記法面整畦部側へ接近する形状をし、前記法面整畦部に重なる移行部が形成されており、
前記張出部の周方向先端部に前記支持部材側へ湾曲、もしくは屈曲した返し部が形成されており、
前記張出部の周方向先端部における返し部の湾曲、もしくは屈曲の度合いは前記上面整畦部の軸方向先端側から法面整畦部側へかけて次第に小さくなっている、畦塗り機の整畦体用羽根板。」
【請求項6】
前記張出部の周方向先端部における返し部は前記張出部から前記移行部付近まで形成されていることを特徴とする請求項5に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の複数枚の羽根板が全体として前記支持部材の表面を覆う状態で、前記支持部材の表面にその周方向に間隔を置いて接続され、前記上面整畦部が構成されていることを特徴とする畦塗り機の整畦体。
【請求項8】
前記移行部は前記法面整畦部の表面に接触したときに、表面側へ湾曲可能な弾性を有している、請求項5に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項9】
前記移行部は前記上面整畦部の軸方向に、少なくとも前記法面整畦部側の端部が前記法面整畦部の表面に接触可能な長さを有している、請求項5又は8に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項10】
前記張出部の周方向先端部における返し部は前記張出部から前記移行部付近まで形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の畦塗り機の整畦体用羽根板。
【請求項11】
請求項5、6、8、9又は10に記載の複数枚の羽根板が全体として前記支持部材の表面を覆う状態で、前記支持部材の表面にその周方向に間隔を置いて接続され、前記上面整畦部が構成されていることを特徴とする畦塗り機の整畦体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-10-15 
結審通知日 2015-10-20 
審決日 2015-11-09 
出願番号 特願2008-294113(P2008-294113)
審決分類 P 1 113・ 113- YAA (A01B)
P 1 113・ 121- YAA (A01B)
P 1 113・ 112- YAA (A01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 信也  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 小野 忠悦
住田 秀弘
登録日 2013-07-26 
登録番号 特許第5322598号(P5322598)
発明の名称 畦塗り機の整畦体用羽根板及びそれを使用した整畦体  
代理人 幸谷 泰造  
代理人 高見 憲  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 山田 哲也  
代理人 高見 憲  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺澤 襄  
代理人 幸谷 泰造  
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