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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A01G
管理番号 1309866
審判番号 無効2015-800003  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-12-29 
確定日 2015-12-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5538782号発明「直根性樹木の育苗方法、および直根性樹木の定植方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正請求書に添付された明細書又は特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
平成21年 9月 7日:出願(特願2009-205953号)
平成26年 5月 9日:設定登録(特許第5538782号)
平成26年12月29日:本件審判請求
平成27年 3月20日:被請求人より訂正請求書,審判事件答弁書提出
平成27年 5月 1日:請求人より審判事件弁駁書提出
平成27年 6月15日:審理事項通知書(起案日)
平成27年 7月29日:請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成27年 8月 7日:被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成27年 8月28日:口頭審理
平成27年10月29日:審理終結通知(起案日)

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
平成27年3月20日付け訂正請求は、本件設定登録時の特許第5538782号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであって、次の事項を訂正内容とするものである。(なお、下線は訂正箇所。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「縮径する、生分解性の不織布からなるポット」とあるのを、「縮径する二枚の重ねられた生分解性の不織布の左右縁部が溶着されたポット」に訂正する。
(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0009】に記載された「縮径する、生分解性の不織布からなるポット」とあるのを、「縮径する二枚の重ねられた生分解性の不織布の左右縁部が溶着されたポット」に訂正する。

2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「生分解性の不織布」について、「二枚の重ねられた」ものに限定し、同じく「不織布からなるポット」について、「不織布の左右の縁部が溶着された」ものに限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、願書に添付した明細書の段落【0033】に「本実施形態のポットは、この二枚の逆二等辺三角形状の不織布1を重ねた状態で、その左右縁部(11、12)を互いに熱溶着したものである。」と記載されていることからみて、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、特許明細書等に記載された事項の範囲内において訂正を行うものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

なお、請求人は、訂正の適否について争っていない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、請求項ごとに訂正の請求をするものであって、特許請求の範囲の減縮または明瞭でない記載の釈明を目的とし、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書に掲げるいずれかの事項を目的とするものであって、同条第9項において準用する第126条第4項?第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


第3 本件訂正後発明
上記第2のとおり訂正を認めるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」といい、全体を「本件発明」という。)は、本件訂正により訂正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
上方に向けて開口するとともに上端側から下端側に向かって徐々に縮径する二枚の重ねられた生分解性の不織布の左右縁部が溶着されたポットを用いて直根性樹木を育苗する方法であって、
前記ポットの下端部には、前記直根性樹木の成長に伴って下方に伸びた直根がポットから突出するように貫通孔が設けられており、
前記ポットを空中で支持して直根性樹木を高設栽培により育苗することによって、下方に伸びた直根のうち前記貫通孔から突出した部分を外気に接触させて水分供給を断ち枯死させることを特徴とする、
直根性樹木の育苗方法。
【請求項2】
ポットが、
概ね逆台形状に切り出された二枚の生分解性の熱可塑性樹脂からなる不織布を重ね、この状態で二枚の前記不織布の左右縁部及び下縁部を互いに溶着することで、直線状に下端部を閉じたものであり、
前記下縁部がミシン目状に不連続に溶着されていることで、隣り合う溶着部の間に複数個の貫通孔を設けたものである、
請求項1記載の直根性樹木の育苗方法。
【請求項3】
隣り合う溶着部の間の間隔が2?8mmである、
請求項2記載の直根性樹木の育苗方法。
【請求項4】
ポットの下端の長さが、2?10cmである、
請求項2又は3記載の直根性樹木の育苗方法。
【請求項5】
請求項1?4何れか記載の直根性樹木の育苗方法によって得られた苗を、ポットに入った状態のまま山の斜面に定植する、直根性樹木の定植方法。」


第4 当事者の主張
1 請求人の主張、及び提出した証拠の概要
請求人は、特許5538782号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として甲第1?4号証を提示し、以下の主張を行った。

[無効理由]
訂正後の本件請求項1ないし5に係る各特許発明は、本件特許出願前に当業者が甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(第1回口頭審理調書参照。)

[具体的理由]
(1)請求項1(訂正前)の進歩性の欠如について
本発明の部品名を甲第2号証に記載されている技術の該当する部品名と併記して立証する。

「A.上方に向けて開口するとともに上端側から下端側に向かって徐々に縮径する、生分解性の不織布からなる植物栽培用容器1(ポット)を用いて植物(直根性樹木)を育苗する方法であって、」については、甲第2号証の請求項1に、「上部に開口を有する略倒立錐体又は斜錐体形状の植物栽培用容器であって、前記植物栽培用容器の側面及び底面は生分解性繊維からなる不織布と紙とがら構成される」と記載されている。

「B.前記植物栽培用容器1(ポット)の下端部には、前記植物(直根性樹木)の成長に伴って下方に伸びた直根が植物栽培用容器1(ポット)から突出するように紙貫通部26(貫通孔)が設けられており、」の技術要素については、甲第2号証の段落0017に、「係る紙にあって、植物栽培用容器の底面を構成する紙にあっては、貫通部を有していても、有していなくても良いが、好ましくは貫通部を有する方が良い。例えば図2や図3の破線部が貫通部となる。」と記載され、図2と図3において、紙貫通部26(貫通孔)が破線部として明瞭に開示されている。

「C.前記植物栽培用容器1(ポット)を空中で支持して植物(直根性樹木)を露天育成(高設栽培)により育苗することによって、」の技術要素、及び、
「D.下方に伸びた直根のうち前記紙貫通部26(貫通孔)から突出した部分を外気に接触させて水分供給を断ち枯死させることを特徴とする、直根性樹木の育苗方法。」については、甲第2号証の段落0012に、「このことは、植物と育苗容器を植栽地に埋め込む前の段階での露天育成において、根が空気と接触しやすくなるが、根が十分な通気性と体積を持つ空気層に到達した場合、根端を機械的に剪定されたのと同様に、伸長を停止する、いわゆるエア・プルーニング(空気根切り)を利用することにより、著しい根系の変形を防ぐことが出来る。」と記載されている。
甲第2号証においては、「露天育成」と表現されており、本発明のように「高設栽培」とは記載されていないが、高い位置に「植物栽培用容器1(ポット)」を配置して、「根が十分な空気層に到達する」という「露天育成」は「高設栽培」に該当する。
そして、「露天育成」も、「高設栽培」も、「エア・プルーニング(空気根切り)」を行うことを作用・目的としている以上同じ技術である。
また、甲第1号証においては、明細書の段落0006に、「図6に示すポットで育成すると、図8に示すように、その生育に伴って側壁の内面に到達した根は、その先端が側壁の開口1から外に出て、空気に触れ成長を止める(エアプルーニング)。また、底壁に到達した根は底壁に沿って伸び、同じく側壁Aの開口1から出て空気に触れ成長を止める。」と記載されている。
また、甲第3号証として提示する「農学基礎セミナー 草花栽培の基礎 樋口春三ら著 第1刷発行日 2000年3月10日 発行所 社団法人 農山漁村文化協会)」の第8章 種苗生産 4 セル成型苗生産の337頁17-21行に、「なお、この状態ではセルの底穴から根が出て、仕上がり時に苗の抜き取りが困難になる。そこで、苗があるていど生育したらトレイを角材などでもち上げ、底を空気にさらして、穴から根が伸び出すのを防ぐ方法がある(エアープルーニング)。」との記載がなされているのである。
また、詳述することは控えるが甲第4号証においても、エア・プルーニング(空気根切り)の技術が公知とされているのである。
(口頭審理陳述要領書2頁末行?4頁10行)

(2)請求項2(訂正前)の進歩性の欠如について
本件発明は、平面的な「台形状の植物栽培用容器」とし、中に土壌を入れると「逆円錐台形状」となるので、「概ね逆台形状に切り出された二枚の生分解性の熱可塑性樹脂からなる不織布を重ね、」となるが、甲第2号証の如く、「逆三角錐台」や「逆四角錐台」に構成した植物栽培用容器1(ポット)の場合には、「概ね逆台形状部分が3枚または4枚突出された形状に切り出され、一枚の生分解性の熱可塑性樹脂からなる不織布12、及び紙11を重ね、この状態で二枚の前記不織布の左右縁部及び下縁部に該当する位置を、互いに溶着することで、直線状に下端部を閉じたものであり、」となるのである。
甲第2号証の実施例において記載されている「逆三角錐台」や「逆四角錐台」の「立体的な植物栽培用容器1(ポット)」の方が、より進化した技術であり、本発明のような「平明的な台形状の植物栽培用容器」を、内部に土壌を入れることにより「逆円錐台」形状とすることは、初期的な技術に過ぎないのである。
「家庭用のドリップコーヒーメーカ」に使用される「フィルター」の技術と同じである。
被請求人は、甲第2号証に記載されている立体的な「植物栽培用容器1(ポット)」から容易に推考可能である、平面的な「逆円錐台形状の植物栽培用容器I(ポット)」に技術的な限定をしたものであり、より簡単な技術への設計変更である。
(口頭審理陳述要領書4頁36行?5頁7行)

(3)請求項1の「直根性樹木」の用語について
被請求人は、答弁書における「相違点(1)」として、育苗する植物が「直根性樹木」であるのに対して、甲第1号証が「カーネーションや菊」等の分根性の草花である点を相違点として主張されている。
しかし、甲第2号証においては、明細書中において、また「発明の名称」から一貫して、「植物栽培用容器」として記載されている。甲第2号証においては、甲第1号証のように「カーネーションや菊」等の分根性の草花等の限定はなされていない。
そして、本件発明の名称、及び請求項においても記載されている「直根性樹木」は、当然のことながら、「植物」の範躊に入るものであり、「直根性樹木」という点が、甲第1号証の「草花」と相違するとしても、甲第2号証においては、「直根性樹木」と「植物」との範躊は相違していないのである。
そして「直根性樹木」も「植物栽培用容器1(ポット)」において育成されるものであり、「エア・プルーニング(空気根切り)」も同様に行われるのである。
故に、本発明の「直根性樹木」という技術が、甲第1号証の「草花」や、甲第2号証の「植物」との間に相違点を有するという主張は成立しない。
(口頭審理陳述要領書6頁下から7行?7頁7行)

[証拠方法]
甲第1号証:特開2000-270786号公報
甲第2号証:再公表2007/148376
甲第3号証:農学基礎セミナー 草花栽培の基礎、樋口春三 他、社団法人 農山漁村文化協会、2000年3月10日、335?338頁
甲第4号証:特開2001-61351号公報

なお、甲第5号証(特開2002-79593号公報)に係る書証の申出、及び甲第5号証に係る主張の追加(平成27年5月1日付け審判事件弁駁書、及び平成27年7月29日付け口頭審理陳述要領書による請求の理由の補正)は、許可しない旨の補正許否の決定を行った。
(第1回口頭審理調書参照。)

2 被請求人の主張、及び提出した証拠の概要
これに対して、被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として乙第1?6号証を提示し、以下の反論を行った。

[具体点反論]
(1)本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明との対比・検討
ア 第2号証の段落【0012】の記載は、甲第2号証に記載の植物栽培用容器を空中で支持して育苗された植物を高設栽培により育苗することによって通気性や透水性を有する伸びた根のうち側方及び下方に延びた根のうち突出した部分を外気に接触させて水分供給を断ち枯死させる、いわゆるエアープルーニング法によって育苗することを示しているものと認められる。
(口頭審理陳述要領書14頁17?21行)

イ 本件特許発明1と甲第2号証に記載されている植物栽培用容器とを対比すると、両者は
(一致点1)「ポットには育苗された植物の成長に伴ってポットの下方に伸びた根がポットから突出するようになされている」点、
(一致点2)「ポットを空中で支持して育苗された植物を高設栽培により育苗することによって、ポットから突出した部分を外気に接触させて水分供給を断ち枯死させる」点、
で一応一致しているが、少なくとも以下の点で相違している。
(相違点1)育苗する植物が、本件特許発明1では「直根性樹木」であるのに対し、甲第2号証には如何なる性質の根を有する植物であるかについての明示の記載がない点、
(相違点2)ポットとして、本件特許発明1では「上方に向けて開口するとともに上端側から下端側に向かって徐々に縮径する二枚の重ねられた生分解性の不織布の左右縁部が溶着された」ものを用いているのに対し、甲第2号証に記載の発明では「上部に開口を有する略倒立錐台又は斜錐台形状の植物栽培用容器であって、前記植物栽培用容器の側面及び底面は生分解性繊維からなる不織布と紙とから形成される」ものを用いている点、
(口頭審理陳述要領書15頁4?20行)

ウ まず、相違点1について検討する。
請求人は、甲第2号証においては、『直根性樹木』と『植物』との範躊は相違していないのであり、同一のものとして無効理由を述べている。
しかしながら、直根性樹木と分根性樹木ないし草花とは明白に根の成長形態が相違するものであり、分根性樹木ないし草花に対して好ましいポットが直ちに直根性樹木用に好適に用いることができるものではない。
(口頭審理陳述要領書15頁下から8行?16頁1行)

エ 次に上記相違点2について検討する。
甲第2号証に記載されているポットの「底壁」は、甲第2号証の各図面をも参照すれば、面状のものであることは明白である
それに対し、本件特許発明1におけるポットは、「上方に向けて開口するとともに上端側から下端側に向かって徐々に縮径する二枚の重ねられた生分解性の不織布の左右縁部が溶着された」ものであり、下端部に貫通孔が形成されているものであって、面状の底壁を有するものではない。
したがって、甲第2号証には上記相違点2については何も示唆されていないから、本願発明1は、甲第2号証に記載された発明とは別異のものであり、また、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(口頭審理陳述要領書19頁6?19行)

[証拠方法]
乙第1号証:特許第5538782号公報
乙第2号証:山寺喜成、「環境改善機能が高い緑の再生技術」、「道路と自然」、社団法人道路緑化保全協会、平成20年4月10日、第139号38?42頁
乙第3号証:池本省吾、竹本勘二郎、木村勝典、「生分解性不織布ロングポットを使用した緑化樹苗木の生長」、「日本緑化工学会誌」、2012年8月、38巻1号、184-187頁
乙第4号証:苅住【昇】、「最新樹木根系図説各論」、株式会社誠文堂新光社、2010年11月30日、第330、333、339、346及び356頁(審決注:【昇】は異体字。「升」ではなく「舛」。)
乙第5号証:特開2009-112307号公報
乙第6号証:特開2006-314280号公報


第5 無効理由についての当審の判断
1 各甲号証の記載事項について
(1)甲第1号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紙製筒とそれを載置するトレイからなる育苗器に関する。」

イ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】一方、本発明者らは、小さいポットでも根づまりを起こしにくく、特に営利栽培において移植までの育苗期間を長くでき、あるいは移植適期の期間を長くとれるようにし、さらに、必要に応じてポットごと移植できるようにしてゴミ問題等の発生を防止し、かつ移植後の順調な生長も確保できる育苗用ポットを開発し、先に特許出願(特願平11-76955号)した。この育苗用ポットは、例えば図6や図7に示すように、全体が土中に還元される紙等の有機質材料からなり、ポット側壁Aと必要に応じて底壁Bにも根が通過する大きさの開口1、2を多数有する紙コップ状のポットである。
【0006】図6に示すポットで育苗すると、図8に示すように、その生育に伴って側壁の内面に到達した根は、その先端が側壁の開口1から外に出て空気に触れ生長を止める(エアプルーニング)。また、底壁に到達した根は底壁Bに沿って伸び、同じく側壁Aの開口1から出て空気に触れ生長を止める。そのため、根の張りかたが従来と異なり、生長を止めた根の中間地点から新たに側根が生え出し、土の中に根を張り、さらにその根が開口1に到達し外に出て空気に触れ生長を止めると、その中間地点からまた新たに側根が生え出し、土の中に根を張る。これが繰り返されるため、常に新しい根が生え、かつ土中にまんべんなく分布し、水分や養分を吸収する。従って、従来のようにポットの内面(土の周囲)に根の分布が集中して根づまりを起こすことがない。また、図7に示すポットの場合、底壁Bに開口2が形成されているので、底壁Bに到達した根はその先端が開口2から外にでて空気に触れ生長を止める。つまり、この開口2が底壁Bにおいて開口1と同様の役割を果たす。
【0007】このポットは小さいサイズであっても、水分及び養分を補給するだけで苗を長い期間にわたり大きく生育させることができ、培土の量も少なくて済む利点がある。この点は特に営利栽培において重要である。そのほか、(1)育苗期間を延長することができるので苗移植適期の期間が延長される、(2)大きく生育した苗が栽培できるので、本圃に移植してから収穫までの期間が大幅に短縮できる、(3)潅水すると土にしみ込みながら開口1、2から外に流出し、過湿になることがない、(4)開口1、2から多量の空気(酸素)が根、土に触れるので生育が健全である、という作用効果をもっている。
【0008】また、上記ポットは、土中に還元される(土中で分解又は腐食する)紙等の有機質材料で構成されているため、育苗した苗をポットごとプランターや本圃に移植することができ、苗をポットから抜き取る手間がいらず、根鉢のくずれもなく活着がよい。・・・(以下、省略)・・・」

ウ 「【0010】本発明はこのような育苗用ポットの問題点に鑑みてなされたもので、前記先願発明の利点を全て備えると同時に、コップ状紙ポットの上記問題点を解決した育苗器を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる育苗器は、紙製筒とその紙製筒を載置するカップ状部を多数備えるトレイからなり、前記紙製筒の側壁に根が通過する大きさの開口が多数形成され、かつ前記トレイのカップ状部の底壁に根が通過する大きさの開口が多数形成されていることを特徴とする。また、本発明にかかる育苗器は、紙製筒とその紙製筒を載置するカップ状部を多数備えるトレイからなり、前記紙製筒の側壁に根が通過する大きさの開口が多数形成され、かつ前記カップ状部の側壁及び底壁に根が通過する大きさの開口が多数形成されていることを特徴とする。これらの望ましい形態として、トレイの隣接するカップ状部の側壁同士の間に隙間が形成されていること、又は/及びカップ状部の側壁と紙製筒の側壁との間に隙間が形成されていることが挙げられる。

エ 「【0013】
【発明の実施の形態】以下、図1?図5を参照し、本発明に係る育苗器についてより具体的に説明する。図1及び図2に示す育苗器は紙製筒11とトレイ12からなり、紙製筒11にはその側壁に根が通過する大きさの開口13がほぼ均等に多数形成され、その上端にはつまみとなる突起14が形成され、一方、トレイ12には紙製筒11を載置するカップ状部15が多数形成され、そのカップ状部15の側壁及び底壁には根が通過する大きさの開口16、17がほぼ均等に多数形成され、トレイの両端には支持体18に引っかけてこのトレイを浮かせた状態で支持するための受け部19が形成されている。この育苗器では、紙製筒11の側壁の周囲に隙間23が形成され、隣接するカップ状部15の側壁同士の間に隙間24が形成されている。また、紙製筒11の開口13は、ポット側壁の上端から下に筒高さHの半分弱の範囲Sには形成されていない。
【0014】この紙製筒11は、図6、図7に示すポットのように底壁を持たないので、図3に示すように略矩形に切断した紙を筒状に成形し側壁を止めるだけで容易に製造でき、ロット数が少なくても低コストで製造できる。このとき、下すぼまりの紙製筒を製造するのであれば紙を扇型に切断すればよい。この紙製筒の紙としては、防腐処理などによるかびの発生を抑制した紙(抗菌紙)を用いるのが望ましい。側壁の止め方としては、例えば両端近傍に舌片状の切込み21と筋状の切込み22を入れ、前者を後者に差入れる方法が考えられる。そのほか、接着剤による貼り付け、ホッチキス止めなど、適宜の手段が採用できる。また、トレイ12は例えばプラスチックの射出成形で製造することが考えられる。
【0015】図1に示す育苗器で育苗すると、先に図8を用いて説明したと同様に、その生育に伴って紙製筒11の側壁の内面に到達した根は、その先端が開口13から外の隙間23に出て空気に触れて乾燥し、生長を止める(エアプルーニング)。しかし、この隙間23の狭い箇所では、カップ状部15の開口16の大きさ及び開口の占有面積率等にもよるが、空気の流通が少なく湿度が高くなり、ここで根の生長が止まらない場合があり得る。その場合は根が隙間23を通り開口16から出て空気に触れて乾燥し、生長を止めることになる。従って、図1に示すトレイ12のように紙製筒11の開口13の全部がカップ状部15の中に入っているような場合(一部のみが入っている場合も同じであるが)、隙間23か隙間24のいずれかが、根の生長が止まるだけの大きさの幅を持つ必要がある。その条件を満たせば、隙間23又は隙間24のいずれかがなくてもよい。一方、カップ状部15の底壁に到達した根は、そこに形成された開口17から出て空気に触れて乾燥し、生長を止める。そのためには、トレイ12はそのカップ状部15の底壁が地表G(又は棚などの設置面)との間に隙間25がある状態で支持されている必要がある。また、紙製筒11が底壁に置かれたとき、紙製筒11の側壁下端全周のどこかに1又は複数個の開口(図1に17aで示す)が位置するようにしておけば、底壁に到達した根が紙製筒11の側壁下端内面に沿って巻きかけても、途中で当該開口から外に出るので、紙製筒11の側壁下端内面において根巻きするのを防止できる。
【0016】これにより、先に説明したと同様に、生長を止めた根の中間地点から新たに側根が生え出し、土の中に根を張り、さらにその根が開口13、16、17に到達し外に出て空気に触れて乾燥し、生長を止めると、その中間地点からまた新たに側根が生え出し、土の中に根を張る。これが繰り返されるため、常に新しい根が生え、かつ土中にまんべんなく分布し、水分や養分を吸収する。従って、従来のようにポットの内面(土の周囲)に根の分布が集中して根づまりを起こすことがない。苗の根は開口13、16、17から外に出て生長を止めるため、その開口13、16、17は少なくとも苗の根が通過する幅を持たなくてはならない。具体的には、少なくとも2mm、さらに3mm以上の幅とするのが望ましい。上限は収容する培土がこぼれたりせず、紙製筒11の形状が保持できる幅という観点で決めるとよい。」

オ 「【0020】図5に示す育苗器は紙製筒41とそれを載置するトレイ42からなり、紙製筒41はその側壁が上方向に広がっているタイプで、先に示した紙製筒11と同様に根が通過する大きさの開口43が多数形成され、その上端にはつまみとなる突起44が形成されている。紙製筒41の側壁が下すぼまりであるため、紙製筒41を持って苗を持ち上げても落下しない。一方、トレイ42はその底壁45が全体的に平坦で、紙製筒41が載置される箇所には根が通過する大きさの開口46が多数形成され、その周囲上側には紙製筒41の載置箇所を画定する低い環状突起47が形成されている。この環状突起47により、隣接する紙製筒41の側壁同士の間に隙間48が画定される。また、トレイ42の足49が底壁45を地表G(又は棚などの設置面)との間に隙間50がある状態で支持している。この育苗器は、機能的には図1及び図2に記載された育苗器とほぼ同じである。
【0021】次にカーネーションや菊の営利栽培を例にとり、本発明に係る育苗用ポットの効果についてさらに具体的に説明する。これまでのカーネーションの栽培は、ポリポット等で育苗した苗を5月下旬から6月上旬にかけて本圃に移植し、10月から次の年の5月中下旬(次の移植直前まで)にかけて花を収穫している。つまり、収穫期間は8カ月である。これに対し本発明に係る育苗器を用いると、これまでのポットと同じ大きさの紙製筒でも老化(根づまり)が起きずに苗が生育するため、育苗期間を長くとることができ、本圃への移植時期を例えば7中旬?8月下旬まで遅らせることができる。苗が大きく生育した分、移植後収穫までの期間が短くて済むため、収穫開始期は同じ10月であり、次の年の7月上旬?8月中旬(次の移植直前まで)にかけて収穫できる。つまり、収穫期間を10カ月程度まで増やすことができ、本圃の利用効率が高くなる。また、苗の老化が起きずに生育するため、移植適期が長く、状況に応じて移植時期を選択できるようになる。しかも、紙製筒ごと本圃に移植できるので、紙製筒から苗を1本ずつ引き抜く手間が省ける。
【0021】次にカーネーションや菊の営利栽培を例にとり、本発明に係る育苗用ポットの効果についてさらに具体的に説明する。・・・(以下、省略)・・・」

カ 「【0023】
【発明の効果】本発明の育苗器は、苗が根づまりを起こしにくく、大きく生育させることができ、必要な培土の量が少なくて済む。また、特に営利栽培において、移植までの育苗期間を長くでき、あるいは移植適期の期間を長くとれるので、植物の種類によっては収穫期間が長くなったり、電照を育苗器のまま行うことができ、生産効率の向上、コストダウンを図ることができる。また、移植時期を選択することもできるようになる。紙製筒は低コストで製造でき、トレイと組み合わせて育苗器を構成することで、搬送が容易となる。また、紙製筒ごとプランターや本圃に移植できるので、苗を紙製筒から抜き取る手間がいらず、根鉢のくずれもない。そして、この紙製筒には根が通過できる開口が形成され、特に底壁を持たないので植物の根が下方へ自由に伸び、移植後の植物の活着がよい。さらに、紙製筒として本質的に全て土中に還元される材料からなる紙を用いれば、移植後速やかに土中に還元されて根部周囲を拘束せず、かつプラスチックフィルムの残留もない。」

(2)甲第2号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は審決で付与した。)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、播種から定植後の育成まで用いられる植物栽培用容器に関する。」

イ 「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、植物栽培用土壌の注入を容易にし、使用不織布の目付けを大きくすることなく、支根の成長を促進させ、根が捲回伸張することなく、コストを低減し、生分解性ゆえの環境に優しい植物栽培用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、上部に開口を有する略倒立錐台又は斜錐台形状の植物栽培用容器であって、植物栽培用容器の側面及び底面は生分解性繊維からなる不織布と紙とから形成されることを特徴とする、植物栽培用容器である。
請求項2に記載の発明は、上記生分解性繊維からなる不織布の目付けが10グラム/平方メートル以上であり、70グラム/平方メートル以下であることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培用容器である。
請求項3に記載の発明は、前記紙は、サイジング剤の使用量が少ない紙又はノンサイズ紙であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の植物栽培用容器である。
請求項4に記載の発明は、植物栽培用容器の側面の接合が高周波融着によりなされていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の植物栽培用容器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の植物栽培用容器は、略倒立錐台又は斜錐台形状の側面が生分解性繊維からなる不織布と紙とから形成されていることから、不織布単独より、当該容器側面の剛性が大きくなり、植物栽培用土壌を手作業や機械で注入しても、当該容器の側面での変形は少なく、効率よく植物栽培用容器に栽培用土壌を注入することができる。
そして、生分解性繊維からなる不織布の目付が10グラム/平方メートル以上であり、70グラム/平方メートル以下であることから、コスト的に低廉な植物栽培用容器を提供することができる。
また、前記紙は、サイジング剤の使用量が少ない紙又はノンサイズ紙であることから、紙の繊維自体の親水性を阻害することはない。
なお、植物栽培用容器の側面の接合部が高周波融着によりなされていることから、該容器を地中に埋設前は適度な接合強度を有し、地中に埋設後においては、植物の根は隙間を探し成長していくことから、植物の根による該容器の破壊が促進される。
本発明の植物栽培用容器は、総て自然界において容易に分解されるもので構成されていることから、該容器の回収及び廃棄処分の手間が不用であるとともに、自然環境を害することはない。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明にいう、略倒立錐台又は斜錐台は、角錐台又は斜角錐台か曲面錐台又は斜曲面錐台であるかは問わないが、一般的には、三角、四角、五角、六角錐台又は円錐台或はこれらの斜錐台が用いられる。これらのうちでも、三角錐台、四角錐台、斜三角錐台、斜四角錐台、円錐台や斜円錐台が該容器を製造する工程上、工程数を少なくできることから好ましい。
これらの錐台は図1に示されるように略倒立状で用いられる。すなわち、通常の錐台の底面が上方開口部となる。また、略倒立状とするのは、栽培用土壌を該容器に注入した場合に、剛体の倒立状錐台と同一形状とはならないからである。
係る略倒立錐台又は斜錐台は、その安定性の点から、上部開口部と底面との面積比が、
3:1以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の植物栽培用容器の側面及び底面は、生分解性不織布と紙より構成される。
容器の側面及び底面の生分解性繊維からなる不織布と紙は積層されていても、積層されていなくてもよい。
積層されている場合には、接着剤は生分解性のある接着剤、例えば、デンプンを用いることができる。
なお、生分解性繊維からなる不織布と紙は積層されていないほうが好ましい。接着剤を使用しなくてよいからである。
また、植物栽培用容器の側面及び底面が不織布と紙とより構成されることから、紙にフィルムをラミネートした場合のように、通気性や透水性が阻害されることがない。このことは、植物と育苗容器を植栽地に埋め込む前の段階での露天育成において、根が空気と接触しやすくなるが、根が十分な通気性と体積をもつ空気層に到達した場合、根端を機械的に剪定されたのと同様に、伸張を停止する、いわゆるエア・プルーニング(空気根切り)を利用することにより、著しい根系の変形を防ぐことができる。
また、夏のように高温の場合には、不織布、紙ともに適度な透水性を有することから、容器及び容器内の土壌の過度な温度上昇を防ぐことができる。水の蒸発時に気化熱により容器内の熱を奪うからである。
このことも植物の根の生育によい影響、即ち、低温となることによりハードニング効果(耐凍性向上)も期待される。また、苗の品質維持期間が長くなっていると考えられる。
なお、水分の蒸発や、容器外への透過による土壌水分の制限は、徒長抑制とハードニング効果をもたらす。
【0013】
本発明にいう生分解性繊維は、育苗期間中に著しく劣化して強度を失わないものであれば用いることができる。例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコールおよびそれらの共重合体などを単独または2種以上用いた繊維が挙げられる。この他、木綿等のセルロース繊維、羊毛等の獣毛繊維等であってもよい。
なお、ポリ乳酸は木綿や絹のような天然生分解性ポリマー同様、通常の使用条件下では分解しがたく、高温・高多湿下では加速度的に分解が進むことから、植物栽培用容器に用いることは好ましい。該容器は植栽地に埋設するまでの露天に設置されている状況下では分解せず、植栽地に埋設後分解がはじまることが期待されるからである。」

エ 「【0017】
係る紙にあって、植物栽培用容器の底面を構成する紙にあっては、貫通部を有していても、有していなくても良いが、好ましくは貫通部を有する方がよい。例えば、図2や図3の破線部が貫通部の形状となる。
該容器の底面を構成する紙が貫通部を有さない場合は、保水性は貫通部を有するよりも優れる。特に、サイジング剤の使用量が多い場合にはその傾向が強い。しかし、該容器の底面を構成する紙の崩壊性が劣ることも考えられる。このことは植物が栽培されている該容器を持上げる等しても底が抜けることなく、注入土壌の保持力が向上する効果がある。
【0018】
植物栽培用容器の底面の紙に貫通部を有する場合には、種々の紙が使用できる。すなわち、紙のサイズ度によらず、貫通部の面積を小さくすることにより保水性に優れることとなり、貫通部の面積を大きくすれば、通水性に優れることとなる。
例えば、サイジング剤の使用量が多くても、植物栽培用容器の底面の貫通孔の面積を大きくすれば通水性に優れ、貫通部の面積を小さくすれば保水性に優れるからである。
また、サイジング剤が多いと紙の疎水性が強くなることから、湿潤状態による崩壊を遅延させることもできる。
しかし、サイジング剤の使用量の少ない紙が好ましい。紙繊維のもつ吸水性・保水性を阻害しないからである。例えば、ざら紙、新聞紙、再生紙等である。
より好ましくはノンサイジングの紙である。例えば、濾紙、吸取紙等である。
場合によっては、湿潤状態での崩壊が早いほうが良いこともあるからである。早く崩壊することにより、根の張りを良くすることができるからである。
【0019】
紙の貫通部の形状は特に限定されるものではない。
貫通部の形状として孔があいていても良く、十字状や平行線状等の切り込みがある場合でも良い。
貫通部を設けることにより、栽培圃場の潅水設備、植物の特性を考慮することができ、とりわけ乾湿度の調整を容易にすることができる。
また、貫通部の面積は、紙のサイジング剤使用量、植物の根の必要水量等により適宜選択される。例えば、根腐れを起こしやすいような植物の場合には、通水性を考慮して、貫通部の孔の面積は大きめのほうがよい。
【0020】
本発明における各錐台の隣り合う各辺は接合されることにより立体形状を形成する。接合は、例えば、縫製、接着、融着等で行われる。
これらの接合方法のうち、縫製、融着によることが好ましい。接着剤による場合は、可塑剤等の添加剤の移行の問題や環境への問題を生ずることがあるからである。
縫製による場合、用いられる糸は生分解性を有する糸であることが好ましい。例えば、ポリ乳酸製の糸である。植物栽培用容器と共に崩壊していくからであり、該容器と強度的にほぼ等しいからである。
【0021】
融着には熱融着、高周波融着、超音波融着等が行われるが、高周波融着が好ましい。内部加熱方法である故に、融着効率がよいからである。
融着する部分は線状であっても、点状(ドット状)であってもよいが、支根の成長を考慮すると、点状(ドット状)が好ましい。根は成長する際に通過できるところを探りながら成長するからである。
融着が線状で行われると、接合部の強度は向上する。この場合、播種後から該容器を地中に埋設することもできる。
融着が点(ドット状)で行われると、ドット間は植物の支根が成長する場合の通り道となりうることから、植物の成長が促進される。この場合、播種後は地中に埋設せず、発芽後地中に埋設するほうが好ましい。地中埋設後の根の成長を阻害しないからである。
なお、ドットが形成される形状は、特に限定されず、直線状に形成されていてもよく、千鳥格子状等に形成されていてもよいが、強度保持の点からは千鳥格子状等にドットが形成されることが好ましい。
また、植物栽培用容器の融着部がドット状であれば、該容器が地中に埋設された場合に、植物の支根が成長するにつれ、該容器形状を崩壊しやすいことから、植物の根の発育を阻害せず、根の張りが良くなる。
【0022】
植物栽培用容器の側面の融着は1箇所とすることも可能であるが、該容器側面の融着部は複数のほうが好ましい。該容器側面の融着部が2箇所となる場合は、容器底面の面積を確保するのに困難が生じることから(理論上は線であり面とはならないが、土壌注入により該容器側面の形状が変化し、実質上の底面は生じる)、該容器側面の融着部は3箇所以上であることがより好ましい。安定な底面を形成するためである。
【0023】
融着を行うにあたっては、生分解性不織布どおしが重なるようにして融着する。即ち、紙層、生分解性不織布層、生分解性不織布層、紙層となるように融着する辺を積み重ね、紙層の外部から高周波を線状或はドット状に照射することにより、融着を行う。生分解性不織布が高周波照射により融解し、該不織布どうしが相互に溶け合うとともに、融解した生分解性不織布が紙繊維間にも浸透して、アンカー効果により接合強度の強化が図られるからである。
【0024】
本発明の植物栽培用容器は、容器側面、底面とも生分解性不織布と紙とから構成されており、折り畳むことが可能であり、また、紙に剛性がある故に、立体的形状のまま積み重ねることも可能であることから、該容器の包装や運搬を効率よく行うこともできる。
なお、立体的形状のまま積み重ねる場合には、芯となるもの、例えば、円筒形の硬質ポリポットを用いることが好ましい。芯を入れることにより立体的形状を保持しうるからである。
また、該容器を折り畳んだ場合には、折り目の部分、特にポリ乳酸製スパンボンド不織布は劣化しやすくなることから、立体的形状として保管、運搬等行うことが好ましい。
そして、立体的形状のまま積み重ねておくと、その形状を保持させることもでき、土壌注入の際に、立体形状にするための手間を省くこともできることから、効率よく土壌注入を行うことが可能となる。
【0025】
以下、実施例において、さらに本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
なお、図1は、本発明に係る倒立四角錐台の斜視図であり、他の倒立角錐台や倒立円錐台等も同様の形状となる。」

オ 「【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明における植物栽培用容器はハウス栽培等の植物栽培に適用することができる。」

カ アないしオからみて、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。

「植物栽培に適用され、播種から定植後の育成まで用いられる植物栽培用容器であって、
上部に開口を有する略倒立錐台又は斜錐台形状であって、植物栽培用容器の側面及び底面は生分解性繊維からなる不織布と紙とから形成され、
側面の接合が高周波融着によりなされており、融着する部分は点状(ドット状)が好ましく、
底面を構成する紙にあっては、栽培圃場の潅水設備、植物の特性を考慮することができ、とりわけ乾湿度の調整を容易にすることができる貫通部を有する方がよく、
植物と育苗容器を植栽地に埋め込む前の段階での露天育成において、根が空気と接触しやすくなるが、根が十分な通気性と体積をもつ空気層に到達した場合、根端を機械的に剪定されたのと同様に、伸張を停止する、いわゆるエア・プルーニング(空気根切り)を利用することにより、著しい根系の変形を防ぐことができる、
植物栽培用容器。」

(3)甲第3号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「かん水 かん水はミスト装置(→p.108)でおこなう。育苗前半は多めに,後半は少なめに施す。ミスト装置がないばあいは,ベンチにビニルフィルムを敷き,その上に不織布などを敷いて水を張り,その上にトレイをのせて底面から吸水させる。なお,この状態ではセルの底穴から根が出て,仕上がり時に苗の抜き取りが困難になる。そこで,苗があるていど生育したらトレイを角材などでもち上げ,底を空気にさらして,穴から根が伸び出すのを防ぐ方法がある(エアープルーニング)。育苗後半には上部から手かん水してもよい。」(337頁14?21行)

(4)甲第4号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は果菜苗、葉菜苗、草花、樹木等を育苗する時に使用する育苗装置に関するものである。」

イ 「【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明にかかる育苗装置は、少なくとも1つのポット収納部を設けてなるポットケースと、該ポットケースに収納され、内方に栽培用土が充填されるポットとを備えてなる育苗装置であって、ポットケースの内周面の一部にポット受け部を形成し、該ポット受け部にポットを載置した時にそのポットの底部とポットケースの底面との間に空間を形成する高さとしたことを特徴とするものである。
【0007】また、ポットが通気性並びに通水性を有する板状部材と、この板状部材に載置される筒状部材とからなり、板状部材がポット受け部に固定するようにしたことや、生分解性プラスチック及び生分解性プラスチック製製繊維若しくは腐食性繊維でシート状素材により、筒状部材を形成するようにしたことも特徴の一つである。
【0008】そして、本発明にかかる育苗方法は、ポットケースのポット収納部の中間高さ位置に固定されたポットの底部とその上方に挿抜自在に設置された生分解性プラスチック繊維若しくは腐食性を有する繊維からなるポット側壁部とで育苗用ポットを形成し、ポットケースのポット収納部の中間高さ位置に設置された育苗用ポットで育苗することにより、ポット内での植物の根回りを防止し、育苗時ポット下に根が出なく、細根の多い植物を育苗するようにしたことを特徴とするものである。」

ウ 「【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の育苗装置及び育苗方法にかかる実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は育苗装置の分解斜視図を示し、図中符号1は育苗装置を全体的に示す。この育苗装置1は、平面視で矩形に形成されたポットケース2と、このポットケース2内に形成された複数のポット収納部3・3・3・・・に収納されて後述する底板部材8とともにポット4を形成するポット側壁部材(筒状部材)5とからなる。上記ポット収納部2は図2及び図3に示すように、ポットケース2の表面側から等間隔で垂下した例えば4本より10本までの側壁形成用板材6と、この側壁形成用板材6の下端を連結する環状部材部分7とを一体に形成して構成されており、側壁形成用板材6の中間高さ位置にはポット4の底板部材(板状部材)8を受け止めるポット受け部9が形成されている。
【0010】このポット受け部9は図2乃至図4に示すように、側壁形成用板材6の中間高さ位置に底板受け用突出部10と、その上方の底板押さえ用突出部11とで形成されており、底板受け用突出部10と底板押さえ用突出部11との間に上記のポット4の底板部材8が嵌合固定されている。本例ではポット受け部9の高さ位置をポットケース2の底部から5センチメートル開くようにしてあるが、これは2?10センチメートルの範囲で任意に設定できる。これは2センチメートル以下にするとポット4の底部の空間が少なく空気層が無いに等しくなること、10センチメートルにすると全体が嵩高くなり、実用上望ましくないことによるものである。ポット4の底板部材8は、比較的硬質の合成樹脂製の板状網を底板受け用突出部10部分の内径と略同径に形成されており、この編目の荒さは栽培用土12が漏れ出ない大きさとなっている。
【0011】上記底板部材8とともにポット4を形成するポット側壁部材5は、腐食性を有する目の粗い麻布をポリビニルアルコール(PVA)等でシート状に固結してシート素材を形成し、このシート素材を扇形に形成するとともに、扇形の重ね合わせた端部同士をステップル(例えばホッチキス(マックス社登録商標)等)14で固定してポット収納部2に挿入可能な下窄まりテーパー状の筒体に形成してある(図1及び図6参照)。尚、ポット側壁部材5は上記の粗い麻布のものに限られず、腐食性繊維や、例えば、生分解性プラスチックを繊維に紡出し、これをラップ状にして固結し目付が約60g?150g/m2 にした不織布からなるシート素材を扇形に形成したり、更には和紙や洋紙、無数の孔を設けた生分解性プラスチックシート等もシート素材として使用することができる。この場合、通気性及び通水性を保つために10000?50000個/1平米の孔を開けることが望ましい。また、ステップル14は接着剤による接合や縫製さらには溶着することにより縫着に代えることもできる。
【0012】上記のように構成される育苗装置1を用いて植物の育成から植栽に至るまでを次に説明する。図1に示すように、先ず、上記のようにして形成された下窄まりテーパー状のポット側壁部材5を底板部材8に載置してポット4を形成する。ポット4が形成されると、このポット4に栽培用土12を充填し、この栽培用土12に例えば果菜苗の種を播種し、または植物の小苗を植付けして灌水し、育苗する。この時、ポット4はポットケース2内のポット収納部3の中間高さ位置に位置していることから、灌水された余分の水はポット4の周囲から外方に流れ出てポット4内に溜まったり結露することがない。
【0013】これにより、育苗される果菜苗15の根がポット4の周壁にそって回る所謂“根回り”が発生しない上に主根より細根が多くなる。また、底板部材分8の下方に空間16が形成されていることから、果菜苗15の根がポット4の底板部材分8から下方に伸びることがなくなる。しかして図5に示すように、果菜苗15が所定の大きさに生育した後、これを移植する場合、育苗した果菜苗15を入れたポット4をポット収納部3に入れた状態のまま、移植する所望の場所に運ぶ。所望の場所に運ばれた後、果菜苗15を入れたポット4を上方に引き抜く。すると、ポット4の底板部材8はポット収納部3の中間高さ位置にとり残された状態で果菜苗15がポット側壁部材5と、育苗した栽培用土12とともにポット収納部3から取り出される。
【0014】こうしてポット収納部3から取り出された果菜苗15のポット4部分の底部は育苗用土12が露出した状態になっている(図6参照)。従って、この状態で果菜苗15をポット側壁部材5とともに所望の場所に埋設すると、ポット4部分の底部は開放された状態であるので、果菜苗15の根はストレス無く伸びるので、移植後の活着が良く、根が深く侵入するので、樹勢が旺盛となる。因みに、本発明の育苗装置で育苗した植物は主根のポット4内での根回りがなく、主根より細根が従来のポリポットで育苗したものに比べて、2?3倍出ており、活着の良いものになったのが確認できた。また、一緒に植栽されたポット側壁部材5は、徐々に腐食して消滅するので、根の発達を阻害することはない。」

エ 「【0016】
【発明の効果】本発明によれば、ポットケースのポット収納部の中間高さ位置に固定されたポットの底部とその上方に挿抜自在に設置された生分解性プラスチック若しくは腐食性を有する繊維からなるポット側壁部材とで育苗用ポットを形成し、ポットケースのポット収納部の中間高さ位置に設置された育苗用ポットで育苗することにより、ポット内での植物の根回りを防止して主根より細根を多くすることができるとともに、植物を移植する場合にはポット側壁部材を栽培用土とともに埋設するようにしてあるので、従来の小径の鉢やポリポットで育苗した果菜苗を、植栽の際にはその小径の鉢やポリポットから取り出されて移植する手間を無くして短時間で且つ簡単に移植することができるだけでなく、取り外したポリポットの回収の手間をなくせるとともに、ポリポットを産業廃棄物として処理することに伴う諸々の問題、例え運搬や焼却の手間や費用、焼却時のダイオキシンの公害の発生等の問題をなくすことが出来る利点がある。
【0017】また、植物を育苗する場合、ポットの周囲に空間が形成されていることから、ポット内の結露が無く、ポット内の結露による根回りを防止し、主根より細根が多く、活着のよい植物にする事が出来るという利点もある。更に、移植時にはポットの底部が開放された状態で埋設されるために、その移植後の根の発達もよくなる。更に、ポットの底部は繰り返し使用することができ、消耗品はポット側壁部材だけなので、経済的であり、育苗費用も安価にすることができるという利点もある。」

2 当審の判断
(1)対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
ア 甲2発明の「植物栽培に適用され、播種から定植後の育成まで用い」ることと、本件発明1の「直根性樹木の育苗方法」とは、植物の育苗方法で共通している。

イ 甲2発明の「植物栽培用容器」は、本件発明1の「ポット」に相当し、以下同様に、「上部に開口を有する略倒立錐台又は斜錐台形状であ」ることは、「上方に向けて開口するとともに上端側から下端側に向かって徐々に縮径する」ことに、「生分解性繊維からなる不織布」は、「生分解性の不織布」に、それぞれ相当する。

ウ 甲2発明の「側面の接合が高周波融着によりなされており、融着する部分は点状(ドット状)が好まし」い「植物栽培用容器」と、本件発明1の「二枚の重ねられた生分解性の不織布の左右縁部が溶着されたポット」とは、「生分解性の不織布の縁部が溶着されたポット」で共通している。

エ 甲2発明の「植物と育苗容器を植栽地に埋め込む前の段階での露天育成において、根が空気と接触しやすくなるが、根が十分な通気性と体積をもつ空気層に到達した場合、根端を機械的に剪定されたのと同様に、伸張を停止する、いわゆるエア・プルーニング(空気根切り)を利用することにより、著しい根系の変形を防ぐことができる」ことは、本件発明1の「ポットを空中で支持して直根性樹木を高設栽培により育苗することによって、下方に伸びた直根のうち前記貫通孔から突出した部分を外気に接触させて水分供給を断ち枯死させること」とは、「ポットを空中で支持して植物を高設栽培により育苗することによって、根を外気に接触させて水分供給を断ち枯死させること」で共通している。(この一致点については、両者ともに同意している。上記「第4 1(1)」及び「第4 2(1)ア」参照。)

オ 上記アないしエからみて、本件発明1と甲2発明とは、次の点で一致している。
一致点:上方に向けて開口するとともに上端側から下端側に向かって徐々に縮径する生分解性の不織布の縁部が溶着されたポットを用いて植物を育苗する方法であって、
前記ポットを空中で支持して植物を高設栽培により育苗することによって、根を外気に接触させて水分供給を断ち枯死させる、
植物の育苗方法。

そして次の点で相違している。
相違点1:育苗する植物が、本件発明1は直根性樹木であるのに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。
相違点2:ポットが、本件発明1は、2枚の重ねられた生分解性の不織布の左右縁部が融着されたものであるのに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。
相違点3:ポットの下端部には、本件発明1では、直根性樹木の成長に伴って下方に伸びた直根がポットから突出するように設けられ、下方に伸びた直根のうち貫通孔から突出した部分を外気に接触させて水分補給を断ち枯死させるのに対し、甲2発明では、底面を構成する紙は貫通部を有しているが、不織布に貫通部を有しておらず、さらに「植物の成長に伴って下方に伸びた根のうち貫通孔から突出した部分を外気に接触させている」との特定がない点。

(2)判断
そこで、上記相違点1?3について検討する。
ア 相違点1
甲第2号証には、「直根性樹木の育苗」についての記載はなく、また甲第1,3,4及び5号証にも「直根性樹木の育苗」を示唆する記載はないから、技術常識を考慮しても、甲2発明の植物栽培用容器を、植物という一般的、総称的なもののうち、直根性樹木の育苗に適用する動機付けは見いだせない。そして「直根性樹木」に適用することにより、育苗の際に根(直根)がルーピングしにくい直根性樹木の育苗方法を提供することができる(特許明細書段落【0020】)という効果を奏するものである。
したがって、甲2発明の植物栽培用容器を直根性樹木に適用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
請求人は、「直根性樹木」は「植物」の範疇に入るものであって、相違点ではない、と主張しているが、「直根性樹木」は「植物」の範疇に入るとしても、「植物」の中の特定の下位概念に属するものであるから、相違点であることに変わりはない。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

イ 相違点2
甲2発明の植物栽培容器の全体形状は、側面と底面を有する「略倒立錐台又は斜錐台形状」、つまり3次元の立体形状であって、甲第2号証をみても、2枚の重ねられたものを示唆する記載は無い。また、請求人が提示する甲第3号証(336頁、図8-5)に記載された容器も、略錐台形状であって、同じく甲第1,4号証に記載された容器は、略円筒形状をなしていることから、甲第1,3,4号証に記載された容器の形状に基づいて、2枚の重ねられたものに代えることは容易に想到し得たとはいえない。
したがって、甲2発明の植物栽培用容器を、不織布を2枚重ねたものとし、左右縁部を融着するものに代えることは、当業者が容易になし得たことではない。
なお、訂正前の請求項2に対する主張ではあるが、請求人は、
「甲第2号証の実施例において記載されている「逆三角錐台」や「逆四角錐台」の「立体的な植物栽培用容器1(ポット)」の方が、より進化した技術であり、本発明のような「平明的な台形状の植物栽培用容器」を、内部に土壌を入れることにより「逆円錐台」形状とすることは、初期的な技術に過ぎないのである。
「家庭用のドリップコーヒーメーカ」に使用される「フィルター」の技術と同じである。
被請求人は、甲第2号証に記載されている立体的な「植物栽培用容器1(ポット)」から容易に推考可能である、平面的な「逆円錐台形状の植物栽培用容器I(ポット)」に技術的な限定をしたものであり、より簡単な技術への設計変更である。」(上記「第4 1(2)」参照。」、と主張している。
しかしながら、立体的な形状と平面的な形状とを比較して、どちらが進化したとか初歩的だとかは、皮相的で説得力に欠ける主張であって、植物栽培用容器においては、少なくとも2枚で平面的に作成した方が、その作業が容易であることは明らかである。よって、請求人の主張は採用することはできない。

ウ 相違点3
甲2発明の植物栽培用容器は、その底面が不織布と紙より構成されているものであって、紙に貫通部が設けられていても、不織布には貫通孔が設けられていない。したがって、甲2発明において、植物の下方に伸びた根は、紙の貫通部を通過する可能性はあるものの、不織布に遮られて、植物栽培用容器の底面から下方に突出しないから、貫通部から突出した部分を外気に接触させて水分供給を断って枯死させるという「エア・プルーニング」を行うものではない。
また、当該貫通部は、栽培圃場の灌水設備、植物の特性を考慮することができ、とりわけ乾湿度の調整を容易にすることができるものであるが、底面の不織布の通気性等の性質からみて、不織布に貫通孔を設けなくとも乾湿度の調整に悪影響を与えるものでもないから、不織布にさらに貫通孔を設ける動機付けは存在しない。
したがって、甲2発明の植物栽培容器の底面の不織布にも貫通部を設けて、成長に伴って下方に伸びた根が貫通孔から突出して、ポットから突出するように設けるものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

エ 甲第1号証を主引例とした検討
請求人は、甲第2号証を主引例として主張している(平成27年7月29日付け口頭審理陳述要領書)ので、上記のとおり検討したが、審判請求書に記載されたように甲第1号証を主引用例としても、直根性樹木の育苗方法であること、及び2枚の重ねられた生分解性の不織布の左右縁部が融着されたポットを用いたことについて、甲第1号証?甲第4号証に何ら記載されておらず、またそれらを示唆する記載もないことから、本件発明1は当業者が容易に発明することができたとはいえない。

オ まとめ
以上のとおり、本件発明1は、当業者が甲第1号証?甲第4号証に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2?5は、本件発明1を直接または間接的に引用するものであるから、本件発明1の構成をすべて含み、さらに限定を加えた発明である。
そうすると、本件発明1が、上記のとおり当業者が甲第1号証?甲第4号証に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものではないので、本件発明2?5も同様に、当業者が甲第1号証?甲第4号証に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものではない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
直根性樹木の育苗方法、および直根性樹木の定植方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、直根性樹木の育苗方法、直根性樹木の定植方法およびこの育苗方法に用いるポットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
直根性樹木をポリポットを用いた従来方法で育成すると、高い確率で根にルーピング(根巻現象、旋回現象、サークル現象とも称される)が発生する。このルーピングが発生した苗を土壌に定植させると倒伏して育成不良になるため、ルーピングした箇所を切断してから苗を定植する必要があった。
【0003】
しかし、ルーピングした箇所を切断するのは手間と時間がかかり作業者に大きな負担となっていた。また、根を切断することによって土壌に定植させた苗が成長しにくくなり定植後の枯死率が高くなっていた。
【0004】
ここで、下記特許文献1には、「中央部に排水孔を有する底壁と、該底壁の周端縁部に連続して上方に立ち上がる側壁によって単一の鉢体として形成されており、前記側壁と前記底壁に対して、前記側壁から前記排水孔にまで至る連続してのびる複数のリブを形成した育苗用栽培容器」が記載され、これによって、「側壁には複数の上下方向のリブが設けられているから、栽培植物の側根を、周壁内側のリブに沿って下方へ誘導でき、ついで、底壁のリブに沿って排水孔に向け(径内方向に)誘導できる。すなわち、分根が螺旋状に伸長してその内部が空洞化状態となり難く(いわゆるルーピング現象を生じ難く)、根切りする作業が不必要となり、植物の栄養摂取に不可欠な吸収根の損傷が少なくなる。すなわち、これらが相まって、定着後の活着に優れた苗を育成できる。」とある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-201544号公報(請求項1、段落0035)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載された育苗用栽培容器は「分根」のルーピングを防止するためのものであり、本願発明のように直根性樹木における「直根」のルーピングを抑制するためのものではなかった。
【0007】
一方、近年、降雨等によって山の斜面が崩壊しやすくなってきているという課題がある。このような、降雨等による山の崩壊を防止するという観点からは、直根性樹木を山の斜面に定植(植林)することが好ましいと考えられる。しかし、直根性樹木を定植した場合であっても、根がしっかりと下方に向けて成長していないと、山の崩壊を防止する効果が低くなってしまう。さらに、植林となれば厳しい地形の山地における作業となるが、これを楽に行うことも必要である。
【0008】
本発明は、上述の事柄に留意してなされたものであって、直根性樹木において、育苗の際に根(直根)がルーピングしにくい直根性樹木の育苗方法を提供することを目的とする。また、降雨等による山の崩壊を発生しにくくすることができるとともに定植作業が容易な直根性樹木の定植方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の直根性樹木の育苗方法は、上方に向けて開口するとともに上端側から下端側に向かって徐々に縮径する二枚の重ねられた生分解性の不織布の左右縁部が溶着されたポットを用いて直根性樹木を育苗する方法であって、ポットの下端部には、直根性樹木の成長に伴って下方に伸びた直根がポットから突出するように貫通孔が設けられており、ポットを空中で支持して直根性樹木を高設栽培により育苗することによって、下方に伸びた直根のうち貫通孔から突出した部分を外気に接触させて水分供給を断ち枯死させることを特徴とする。
【0010】
この直根性樹木の育苗方法は、上記構成のポットを空中で支持して、直根性樹木を高設栽培により育苗することによって、下方に伸びた直根のうち貫通孔から突出した部分を外気に接触させて水分供給を断ち枯死させるため、根がルーピングしにくくなる。
また、生分解性の不織布からなるポットを用いるため、苗をポットから取り外すことなくポットに入った状態で、ポットごと定植できるため、定植作業が楽になる。
【0011】
このとき、ポットが、概ね逆台形状に切り出された二枚の生分解性の熱可塑性樹脂からなる不織布を重ね、この状態で二枚の不織布の左右縁部及び下縁部を互いに溶着することで、直線状に下端部を閉じたものであり、下縁部がミシン目状に不連続に溶着されていることで、隣り合う溶着部の間に複数個の貫通孔を設けたものである、直根性樹木の育苗方法とすることができる。
【0012】
この直根性樹木の育苗方法は、ポットが直線状に下端を閉じたものであるため、ポットを定植するための植穴がスコップ等で形成しやすいばかりか定植の際に植穴に投入しやすい。また、用土を入れた際にポットの下端部が側面視においてシャープな形状となりやすく、これによって、下方に伸びた直根が貫通孔から突出しやすくなる。さらに、下縁部が、熱可塑性樹脂からなる不織布をミシン目状に不連続に溶着することで貫通孔を設けたものであるため、使用するポットの製造が容易である。左右縁部についても、下縁部と同様に、熱可塑性樹脂からなる不織布をミシン目状に不連続に溶着してもよい。加えて、ポットの貫通孔が複数個であるため、下方に伸びた直根が貫通孔からより突出しやすくなる。
【0013】
このとき、隣り合う溶着部の間の間隔が2?8mmである、直根性樹木の育苗方法とすることができる。
【0014】
隣り合う溶着部の間の間隔が2mm以上であると根が貫通孔から突出しやすくなる。一方、隣り合う溶着部の間の間隔が8mm以下であると、ポットに入れる用土が落下しにくくなる。隣り合う溶着部の間の間隔は、3?7mmであることが更に好ましく、4?6mmであることが最も好ましい。貫通孔の数は、2?10個であることが好ましく、3?8個であることが更に好ましく、3?5個であることが最も好ましい。
【0015】
ポットの下端の長さ(ポットの下端の幅)が、2?10cmである、直根性樹木の育苗方法とすることもできる。
【0016】
ポットの下端の長さが2cm以上であると、貫通孔を複数個設けやすくなる。一方、ポットの下端の長さが10cm以下であると、用土を入れた際にポットの下端部が側面視においてよりシャープな形状となりやすく、これによって、下方に伸びた直根が貫通孔からより突出しやすくなる。ポットの下端の長さが10cmを超えると、用土を入れた際にポットの下端部が側面視において丸みを帯びた形状になりやすい。
【0017】
直根性樹木の定植方法として、上記何れか記載の直根性樹木の育苗方法によって得られた苗を、ポットに入った状態のまま山の斜面に定植することができる。
【0018】
この直根性樹木の定植方法は、得られた苗を、ポットに入った状態のまま山の斜面に定植するため、定植作業が容易である。苗は、ポットに入った状態のまま、山の斜面に形成された植穴に定植される。
【0019】
また、上記課題は、上記何れか記載の直根性樹木の育苗方法に用いられる、ポットを提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、育苗の際に根(直根)がルーピングしにくい直根性樹木の育苗方法を提供することができる。また、降雨等による山の崩壊を発生しにくくすることができるとともに定植作業が容易な直根性樹木の定植方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】直根性樹木の育苗方法に用いる第一実施形態のポットを示す斜視図である。
【図2】図1のポットの正面図である。
【図3】図2のA部の拡大図である。
【図4】図1のポットを用いて高設栽培する様子を示す図である。
【図5】直根性樹木の育苗方法に用いる第二実施形態のポットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図を用いて本発明の直根性樹木の育苗方法及びポットを例示説明する。本育苗方法に用いられるポットは、生分解性の不織布で構成され、上方に向けて開口するとともに上端側から下端側に向かって徐々に縮径する形状であり、また、ポットの下端部には、貫通孔が設けられているという点で共通する。
【0023】
まず、図1?図3を用いて、第一実施形態のポットを説明し、次にこれを用いた直根性樹木の育苗方法を説明する(図4)。なお、図1のポットは、上方に向けて開口する開口部を開いた状態である。また、溶着部は、二枚の不織布の左右縁部及び下縁部に複数個が形成されているが、便宜上一箇所の溶着部にのみ符号を付してある。
また、以下の実施形態はあくまで本発明を例示説明するものであって、本発明は、以下の具体的な実施形態に限定されるものではない。
【0024】
[第一実施形態のポット]
本第一実施形態のポットPは、概ね逆台形状に切り出された二枚の生分解性の熱可塑性樹脂からなる不織布1を用いて構成されたものである。具体的には、この二枚の不織布1を重ねた状態で、その左右縁部(11,12)及び下縁部13を互いに熱溶着してある。このよう
にポットPを構成する二枚の不織布1の下縁部13を熱溶着してあることによって、ポットPの下端部が直線状に閉じられている。下縁部13は、ミシン目状に不連続に熱溶着され、複数個の溶着部2が所定間隔を開けて下縁部13に沿って並んでおり、これによって、隣り合う溶着部2の間に複数個の貫通孔3を設けたものとなっている。本実施形態では、下縁部13に沿って並んだ4個の溶着部2の間に3個の貫通孔3を設けてある。概ね逆台形状に切り出された不織布1の上端辺はなだらかな円弧状とした。なお、本実施形態では、重ねた状態の不織布1の下縁部13だけでなく、左右縁部(11,12)についてもミシン目状に不連続に熱溶着してある。
【0025】
本実施形態では、ポットPを構成する生分解性の熱可塑性樹脂からなる不織布1として、株式会社三井化学製のポリ乳酸製不織布を用いた。
【0026】
また、逆台形状に切り出された不織布1の下端の長さ(下端の幅)Lを概ね63mmとすることで、複数個の溶着部2によって直線状に閉じられたポットの下端の長さも概ね63mmとした。本実施形態では図3に示すようにポットの下端が四個の溶着部2によって直線状に閉じられている。さらに、溶着部2の長さL2を概ね10mm、隣り合う溶着部の間の間隔L3を概ね5mmとした。隣り合う溶着部の間は二枚の不織布1が溶着されていないため、この非溶着部の二枚の不織布1に挟まれた部分が、ポットの下端部の貫通孔を構成する。
【0027】
[直根性樹木の育苗方法]
上記第一実施形態のポットPを用いて直根性樹木を育苗する方法を以下に説明する。まず、ポットPの開口部を拡げて、その内部に用土Mと直根性樹木の種子を入れる。直根性樹木としては、コナラ、ミズナラ、カシワ、クヌギ、アベマキ等の直根性の強い樹種を挙げることができる。本実施形態では、ブナ科コナラ属のカシワ(槲)の種子を用いた。
【0028】
次に、この用土M及び種子入りのポットPを空中で支持して直根性樹木を高設栽培により育苗する。具体的には、図4に示すように、ポットPを上下方向の途中で支えることができるような大きさの円形孔50が多数個形成された脚付きのパレット5を準備し、これら円形孔50に、用土M及び種子入りのポットPを上方から貫入させ、ポットPの下端が地面に接触しないようにして高設栽培することができる。
【0029】
高設栽培することによって、ポットP中で下方に伸びた直根のうちポットPの貫通孔3から突出した部分を外気に接触させて水分供給を断ち枯死させることでルーピングを防止することができる。
【0030】
上記脚付きのパレット5を用いて屋外で1?2年高設栽培したところ、30?80cm程度に苗が育った。ポットPから苗を抜いて直根を確認したところ、ルーピングは発生していなかった。
【0031】
このようにして得られた苗は、用土MとともにポットPに入った状態のまま、山の斜面に定植することができるのである。これからの造林及び治山を考えれば、これまでの植林をして山野の緑化という考えから、地中に根を張らせて山の崩壊を防ぐ植林に変えるため、上記方法で得られたルーピングしていない苗を山の斜面に定植することには大きな価値がある。また、機械で植穴を掘って苗を植え込めば作業効率を上げることができるのである。
【0032】
[第二実施形態のポット]
次に、図5を用いて、第二実施形態のポットPを例示説明する。本実施形態のポットPは、前記第一実施形態のポットとは形状が大きく異なる。なお、本第二実施形態のポットは、請求項1記載の発明の技術的範囲に属するものであるが、請求項2記載の発明の技術的範囲に属するものではない。
【0033】
具体的には、概ね逆二等辺三角形状に切り出された不織布1を用いて円錐状に構成されている点で、概ね逆台形状に切り出された不織布を用いてある第一実施形態のポットとは大きく異なる。本実施形態のポットは、この二枚の逆二等辺三角形状の不織布1を重ねた状態で、その左右縁部(11,12)を互いに熱溶着したものである。左右縁部(11,12)は、ミシン目状に不連続に熱溶着されており、また、下端部には、貫通孔3が一つ設けられている。概ね逆二等辺三角形状に切り出された不織布の上端辺はなだらかな円弧状とした。
【0034】
本第二実施形態のポットPについても、前記第一実施形態のポットを用いた場合と同様の手順で直根性樹木を育苗し、得られた苗を、用土とともにポットPに入った状態のまま、山の斜面に定植することができるのである。
【0035】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
【0036】
例えば、第一実施形態のポットは、概ね逆台形状に切り出された二枚の不織布を重ねた状態で左右縁部(11,12)及び下縁部13をミシン目状に熱溶着して構成したが、これに限定されず、二枚の不織布の下縁部13のみをミシン目状に熱溶着し、左右縁部(11,12)については直線状に熱溶着してもよい。
【符号の説明】
【0037】
P ポット
1 不織布
11 左縁部
12 右縁部
13 下縁部
2 溶着部
3 貫通孔
5 パレット
50 円形孔
L 下端の長さ
L2 溶着部の長さ
L3 隣り合う溶着部の間の間隔
M 用土
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向けて開口するとともに上端側から下端側に向かって徐々に縮径する二枚の重ねられた生分解性の不織布の左右縁部が溶着されたポットを用いて直根性樹木を育苗する方法であって、
前記ポットの下端部には、前記直根性樹木の成長に伴って下方に伸びた直根がポットから突出するように貫通孔が設けられており、
前記ポットを空中で支持して直根性樹木を高設栽培により育苗することによって、下方に伸びた直根のうち前記貫通孔から突出した部分を外気に接触させて水分供給を断ち枯死させることを特徴とする、
直根性樹木の育苗方法。
【請求項2】
ポットが、
概ね逆台形状に切り出された二枚の生分解性の熱可塑性樹脂からなる不織布を重ね、この状態で二枚の前記不織布の左右縁部及び下縁部を互いに溶着することで、直線状に下端部を閉じたものであり、
前記下縁部がミシン目状に不連続に溶着されていることで、隣り合う溶着部の間に複数個の貫通孔を設けたものである、
請求項1記載の直根性樹木の育苗方法。
【請求項3】
隣り合う溶着部の間の間隔が2?8mmである、
請求項2記載の直根性樹木の育苗方法。
【請求項4】
ポットの下端の長さが、2?10cmである、
請求項2又は3記載の直根性樹木の育苗方法。
【請求項5】
請求項1?4何れか記載の直根性樹木の育苗方法によって得られた苗を、ポットに入った状態のまま山の斜面に定植する、直根性樹木の定植方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-10-29 
結審通知日 2015-11-02 
審決日 2015-11-18 
出願番号 特願2009-205953(P2009-205953)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹中 靖典  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
小野 忠悦
登録日 2014-05-09 
登録番号 特許第5538782号(P5538782)
発明の名称 直根性樹木の育苗方法、および直根性樹木の定植方法  
代理人 能美 知康  
代理人 能美 知康  
代理人 小田 富士雄  
代理人 矢野 寿一郎  
代理人 上田 雅稔  
代理人 小田 富士雄  
代理人 上田 雅稔  
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