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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1310123
審判番号 不服2014-10780  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-09 
確定日 2016-01-28 
事件の表示 特願2009-243596「水位警報制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月 6日出願公開、特開2011- 90506〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年10月22日の出願であって、平成26年2月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年6月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成26年6月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年6月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由1]
1.本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、
「 【請求項1】
水の流れに沿って配置された複数の警報局を介して前記水の流れの水位に応じた警報を送出する水位警報制御装置であって、
操作者によって操作され、前記警報の送出の開始に供される第一の操作手段と、
前記操作者によって操作される第二の操作手段と、
前記第一の操作手段が操作された後に、前記第二の操作手段が操作される度に、前記複数の警報局の内、前記警報が送出されるべき特定の警報局を既定の順序で選択し、または切り替える制御手段と
を備えたことを特徴とする水位警報制御装置。」(以下、「補正前の発明」という。)
とあったものを
「 【請求項1】
水の流れに沿って配置された複数の警報局に前記水の流れの水位に応じた警報の送出を指令する水位警報制御装置であって、
操作者によって操作され、新たなモードによる前記警報の送出の開始に供される第一の操作手段と、
前記新たなモードにおいて前記操作者によって操作される第二の操作手段と、
前記第一の操作手段が操作されたときに前記新たなモードに移行し、かつ時間に拘束されることなく前記第二の操作手段が操作される度に、前記複数の警報局の内、前記警報が送出されるべき特定の警報局を既定の順序で選択し、または切り替える制御手段と
を備えたことを特徴とする水位警報制御装置。」(以下、「補正後の発明」という。)
とする補正を含むものである。(下線は補正箇所を示すために審判請求人が付したものである。)

本件補正は、「第一の操作手段」に関し「操作者によって操作され、新たなモードによる前記警報の送出の開始に供される」と限定し、「第二の操作手段」に関し「前記新たなモードにおいて前記操作者によって操作される」と限定し、「制御手段」に関し、「前記第一の操作手段が操作されたときに前記新たなモードに移行し、かつ時間に拘束されることなく前記第二の操作手段が操作される度に、前記複数の警報局の内、前記警報が送出されるべき特定の警報局を既定の順序で選択し、または切り替える」と限定するものである。
「新たなモードによる」、「前記新たなモードにおいて」、「前記新たなモードに移行し、かつ時間に拘束されることなく」の限定がない補正前の発明は、技術常識的には、既存のモードにおける「操作者によって操作され、前記警報の送出の開始に供される」「第一の操作手段」、「前記操作者によって操作される」「第二の操作手段」、及び「前記第一の操作手段が操作された後に、前記第二の操作手段が操作される度に、前記複数の警報局の内、前記警報が送出されるべき特定の警報局を既定の順序で選択し、または切り替える」「制御手段」であるところ、補正後の発明では、「新たなモードによる」、「前記新たなモードにおいて」、「前記新たなモードに移行し、かつ時間に拘束されることなく」の限定が付加され、既存のモードとは明らかに異なる「新たなモード」における「第一の操作手段」、「第二の操作手段」、及び「制御手段」となっているので、補正前の発明と補正後の発明とは、「新たなモード」を有するか否かで発明の前提が異なるので異質なものであり、発明を変更するものであるから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当しない。
また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、あるいは明りょうでない記載の釈明の、いずれを目的とするものにも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由2]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に適合しないが、仮に、本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第17条の2第5項の規定に適合するとして、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

1.記載要件について(特許法第36条第6項第2号)
「新たなモード」の具体的内容が不明確である。すなわち、通常、「新たなモード」とは、既存のモードが特定され、該既存のモードとの差異を明確に特定してはじめて理解し得るものである。本件補正発明では、既存のモードでの「第一の操作手段」、「第二の操作手段」、及び「制御手段」の具体的役割及び制御内容を特定しないまま、単に「新たなモード」という限定を加えているため「新たなモード」の具体的内容が不明確となっている。また、明細書には「新たなモード」という用語は記載されておらず、 明細書全体をとおしてみても当該「新たなモード」を把握することができないから、「新たなモード」が如何なるものなのか不明確である。

したがって、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成25年8月23日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2.[理由1]1.」に記載した「補正前の発明」のとおりである。

2.引用文献の記載事項
(1)本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-246698号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「制御情報送出装置」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与、以下同様。)

ア.「(産業上の利用分野)
本発明はダムからの放流警報を与えるシステムのように、制御局から順次に複数の制御対象局へ制御情報を送出する場合に用いられる制御情報送出装置に関するものである。」
(公報1ページ右下欄6行?同欄10行)

イ.「この種の装置は、第2図に示されるようなダムの制御局201に設けられる。即ち、制御局201には制御情報送出装置202と、通信装置203とが備えられる。また、川沿いに設けられた制御対象局204には、通信装置205と処理装置206とが備えられている。制御情報送出装置202から制御対象局204を指定して制御情報が通信装置203へ与えると、通信装置203は、対応する制御対象局204の通信装置205へ制御情報を送信し、通信装置205は受信した制御情報を処理装置206へ与える。ここで、制御情報が放水の警報発生要求であれば、警報の発生が処理装置206においてなされる。また制御局201においては制御対象局204_(1)?204_(4)を順次に指定して制御情報の送出を行う必要があり、そのため、制御情報送出装置202は第3図のように構成されていた。」(公報1ページ右下欄12行?2ページ左上欄7行)

ウ.「(発明が解決しようとする課題)
上記のように従来の制御情報送出装置では、制御対象局へ順次に制御情報を送出する場合の時間管理を人手により行っていたために煩しく、信頼性に欠ける問題点があり、操作性がよく高信頼性を有しながら、人による点検によって制御情報の送出を行い得る制御情報送出装置が求められていた。
本発明はこのような従来の制御情報送出装置に対する要望に基づいてなされたもので、その目的は、操作制が優れ高信頼性を有しながら人による点検により制御情報の送出が行われ得る制御情報送出装置を提供することである。」(公報2ページ右上欄12行?同ページ左下欄4行)

エ.「この制御情報送出装置は制御決定手段11、送出処理手段12、警報手段13、入力手段14を備える。」(公報2ページ右下欄17行?同欄19行)

オ.「第2図のシステムで放水を行うと、制御対象局204_(1)?204_(4)の順に放水に係る水が到来し、この間隔はそれぞれが固有の時間帯を有するので、これを時刻のデータとする。また、放水量によっては、緊急非難、警戒などのレベルが異なり、制御対象局204_(1)?204_(4)の相当する地域の地形によってもこれらが異なり、場合によっては制御情報を与えなくともよい。そこで、放水量毎に、制御対象局とその制御対象局に対する制御情報の項目(上記のレベルに対応する項目)とをアレンジし、これに上記時刻データを付加した制御情報セットを用意し、制御決定手段11に持たせておく。制御決定手段11は開始指示(実際には入力手段14からの入力による)を受けて動作を開始し、制御情報セットの正しい指定があったとき、制御決定信号を送出処理手段12内の対象局決定部15へ与え、制御情報セット中の最初の制御対象局のデータ、項目のデータ、及び次の制御対象局へ送出を行うまでの間隔である時刻データを、夫々、対象局決定部15、送出制御部16、時間管理部17へ与える。対象局決定部15は制御決定信号と制御対象局のデータとを受け取っているときであって、入力手段14から許可/不許可情報が許可として与えられているとき送出制御部16へ該当制御対象局への発信制御及び通信の制御を指示し、上記以外のとき「終了」となる。」(公報3ページ左上欄9行?同ページ右上欄14行)

カ.「一方、制御決定手段11は制御情報セットに基づき、所定のタイミングで制御決定信号、制御対象局のデータ、項目のデータ、時刻データを出力する。」(公報3ページ左下欄20行?同ページ右下欄2行)

キ.「以上のように構成された制御情報送出装置では、オペレータが放水量に応じて制御情報セットを指示し、開始指示を与えることにより、自動的に初めの制御対象局204への制御情報の送出がなされ、次の制御対象局204からは警報発生を行って、オペレータの介入を待ち、続けて制御情報を送出するか否かが決定されて処理が続く。このため、オペレータは時間監視をせずともよく、所定の放水量に応じた制御情報の送出がなされる。」
(公報3ページ右下欄9行?同欄17行)

ク.記載事項イ.の記載内容から、制御情報送出装置は制御対象局204_(1)?204_(4)から警報を発生させるものであり、記載事項キ.の記載内容から放水量に応じた警報であることが理解できる。

ケ.記載事項ア.の「制御局から順次に複数の制御対象局へ制御情報を送出する」との記載、記載事項オの「制御決定手段11は開始指示(実際には入力手段14からの入力による)を受けて動作を開始し、制御情報セットの正しい指定があったとき、制御決定信号を送出処理手段12内の対象局決定部15へ与え、制御情報セット中の最初の制御対象局のデータ・・・を、・・・対象局決定部15・・・へ与える。対象局決定部15は制御決定信号と制御対象局のデータとを受け取っているときであって、入力手段14から許可/不許可情報が許可として与えられているとき送出制御部16へ該当制御対象局への発信制御及び通信の制御を指示し」との記載、及び記載事項キの「開始指示を与えることにより、自動的に初めの制御対象局204への制御情報の送出がなされ、次の制御対象局204からは・・・、オペレータの介入を待ち、続けて制御情報を送出するか否かが決定されて処理が続く。」との記載から、対象局決定部15は、前記開始指示の入力手段14から入力を受けた後に、前記許可/不可情報の入力手段14からの入力を受ける度に、前記複数の制御対象局204_(1)?204_(4)の内、前記警報が発生されるべき特定の制御対象局204_(1)?204_(4)を順次に指定していることが理解できる。

以上の記載事項、図示内容及び認定事項からみて、本願発明の記載ぶりに倣って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。
「川沿いに設けられた複数の制御対象局204_(1)?204_(4)から放水量に応じた警報を発生させる制御情報送出装置であって、
オペレータによって入力され、前記警報の発生の開始に供される開始指示の入力手段14と、
前記オペレータによって入力される許可/不可情報の入力手段14と、
前記開始指示の入力手段14から入力を受けた後に、前記許可/不可情報の入力手段14からの入力を受ける度に、前記複数の制御対象局204_(1)?204_(4)の内、前記警報が発生されるべき特定の制御対象局204_(1)?204_(4)を順次に指定する対象局決定部15と
を備えた制御情報送出装置。」

3.対比
本願発明と刊行物発明を対比すると、その意味、機能または構造からみて、
後者の「川沿いに設けられた複数の」「制御対象局204_(1)?204_(4)」は前者の「水の流れに沿って配置された複数の」「警報局」に相当し、後者の「放水量に応じた」は、放水による水の流れの水位に応じることに他ならないから、後者の「放水量に応じた」「警報」は前者の「水の流れの水位に応じた」「警報」に相当し、後者の「川沿いに設けられた複数の制御対象局204_(1)?204_(4)から放水量に応じた警報を発生させる」「制御情報送出装置」は前者の「水の流れに沿って配置された複数の警報局を介して前記水の流れの水位に応じた警報を送出する」「水位警報制御装置」に相当する。
後者の「オペレータ」は前者の「操作者」に相当し、後者の「オペレータによって入力され、前記警報の発生の開始に供される」「開始指示の入力手段14」は前者の「操作者によって操作され、前記警報の送出の開始に供される」「第一の操作手段」に相当する。
後者の「オペレータによって入力される」「許可/不可情報の入力手段14」は前者の「操作者によって操作される」「第二の操作手段」に相当する。
後者の「開始指示の入力手段14から入力を受けた後に、許可/不可情報の入力手段14からの入力を受ける度に、複数の制御対象局204_(1)?204_(4)の内、警報が発生されるべき特定の制御対象局204_(1)?204_(4)を順次に指定する」「対象局決定部15」は前者の「第一の操作手段が操作された後に、第二の操作手段が操作される度に、複数の警報局の内、警報が送出されるべき特定の警報局を既定の順序で選択し、または切り替える」「制御手段」に相当する。

したがって、本願発明と刊行物発明は、
「水の流れに沿って配置された複数の警報局を介して前記水の流れの水位に応じた警報を送出する水位警報制御装置であって、
操作者によって操作され、前記警報の送出の開始に供される第一の操作手段と、
前記操作者によって操作される第二の操作手段と、
前記第一の操作手段が操作された後に、前記第二の操作手段が操作される度に、前記複数の警報局の内、前記警報が送出されるべき特定の警報局を既定の順序で選択する制御手段と
を備えた水位警報制御装置。」
の点で一致し、両者に差異はない。

よって、本願発明は、刊行物発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-30 
結審通知日 2015-02-24 
審決日 2015-03-09 
出願番号 特願2009-243596(P2009-243596)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G08B)
P 1 8・ 121- Z (G08B)
P 1 8・ 113- Z (G08B)
P 1 8・ 537- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤間 充  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 島田 信一
中川 隆司
発明の名称 水位警報制御装置  

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