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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E03D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 E03D
管理番号 1310184
審判番号 不服2013-24653  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-16 
確定日 2016-02-08 
事件の表示 特願2008-205432号「洋式便器」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月18日出願公開、特開2010- 37903号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成20年8月8日の出願であって、平成25年9月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年12月16日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。


第2.平成25年12月16日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年12月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項
平成25年12月16日の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
補正前の
「洋式便器本体の後部位置に、その前面の開口縁が洋式便器本体の上端開口部周縁の後部両側から連なって、この洋式便器本体の内部と連なる延長状態で上方に延びる小水受け用の立ち上がり部を設けて洋式便器が形成され、この立ち上がり部の上端部に、便器の前後方向に沿って起伏動自在となるよう取付けられ、伏倒位置で前記立ち上がり部の前面を閉鎖し、起立位置で立ち上がり部の前面を開放する蓋板を設け、この蓋板の先端部に、蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なる便座を、蓋板に対して便器の前後方向に対して起伏動自在に取付けた洋式便器。」
から、
補正後の
「洋式便器本体の後部位置に、その前面の開口縁が洋式便器本体の上端開口部周縁の後部両側から連なって、この洋式便器本体の内部と連なる延長状態で上方に延びる小水受け用の立ち上がり部を設けて洋式便器が形成され、
この立ち上がり部の上端部に、便器の前後方向に沿って起伏動自在となるよう取付けられ、伏倒位置で前記立ち上がり部の前面を閉鎖し、起立位置で立ち上がり部の前面を開放する蓋板を設け、
この蓋板の先端部に、蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり、蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する便座を、蓋板に対して便器の前後方向に対して起伏動自在に取付けた洋式便器。」
へ補正された。(下線部は、補正箇所である。)

2.補正の目的及び新規事項の追加の有無
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「便座」について、上記下線部のとおり限定を付加するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記補正は新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用例の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開2008-169680号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

(a)「【請求項1】
便器開口部(2、9、17、25、33、41、48、56、64)に、水平面からの傾斜部(3、10、18、26、34、42、49、57、65)を設け、便座(4、11、19、27、35、43、50、58、66)には前記傾斜部(3、10、18、26、34、42、49、57、65)を覆う開閉自在の閉部(5、12、20、28、36、44、51、59、67)を設けた立式座式兼用便器及びその便座。」

(b)「【0004】
本発明は座式大小便に対応し、立式小便時にも小便の飛散を防止し、衛生的で維持費用、清掃時の負担の軽減等、洋式大便器と小便器の両方の利点を合わせもち、さらに座式大小便時の安定感を提供することを目的としている。」

(c)「【0009】
発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。
図1、2、3において、便器本体1の開口部2に水平面からの傾斜部3を設け、便座4には傾斜部3を覆う閉部5を設け、閉部5の上端を便器本体1に取り付け部6によって取り付ける。
【0010】
図4、5、6に示される実施例では、便座11に折り畳み部13を設ける。」

(d)「【0019】
便器本体の開口部に水平面からの傾斜部を設けることにより、立式小便としての使用時には、閉部及び便座を開けると、小便器と同様の飛散防止及び水洗効果を得ることができる。
【0020】
また、便座に傾斜部を覆う閉部を設けることにより、座式大小便としての使用時には、閉部及び便座を閉めると、洋式大便器と同様に、傾斜部の衛生面等を気にすることなく使用でき、かつ同様の水洗効果を得ることができる。
【0021】
そして、便座に折り畳み部を設けることにより立式小便使用時に便座を開ける為のスペースを小さくすることができる」

(e)上記(c)の記載も考慮すると、図1には、「傾斜部3」の開口縁が「水平面」の周縁から後部に連なっていることが開示されている。

(f)図1、2には、「閉部5」の上端が「便器本体1」の上端部に「取り付け部6」によって取り付けられていることが開示されている。

(g)上記(d)の「便器本体の開口部に水平面からの傾斜部を設けることにより、立式小便としての使用時には、閉部及び便座を開けると」、「便座に傾斜部を覆う閉部を設けることにより、座式大小便としての使用時には、閉部及び便座を閉めると」という記載事項と、図1、2とから、「便器本体」内部の、「傾斜部」に対応する部分は、小水受け用であることは明らかである。
また、上記記載事項と、図1、2とから、「便座」を閉めると「水平面」の周縁に重なることも開示されている。

(h)図6には、「閉部12」及び「便座11」を開けたとき、「閉部12」が起立し、「閉部12」の先端から後面側に「便座11」が垂れ下がることが開示されている。

(i)図1、2、6から、「閉部5、12」及び「便座4、11」が「立式座式兼用便器」の前後方向に起伏動自在となるよう取付けられていることは明らかである。

したがって、上記記載事項を総合すれば、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「便器本体の開口部に水平面からの傾斜部を設け、傾斜部に対応する便器本体内部が小水受け用である立式座式兼用便器において、傾斜部の開口縁が水平面の周縁から後部に連なっており、傾斜部を覆う閉部の上端は便器本体の上端部に取り付け部によって取り付けられて、閉部が立式座式兼用便器の前後方向に起伏動自在であり、傾斜部を覆う閉部は便座に設けられ、便座に折り畳み部を設けて便座を立式座式兼用便器の前後方向に起伏動自在とし、閉部及び便座を開けると、起立した閉部の先端から後面側に便座が垂れ下がり、閉部及び便座を閉めると、便座は水平面の周縁に重なることができる立式座式兼用便器。」

(イ)本願出願前に頒布された実願平1-145078号(実開平3-85991号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(a)「通常の洋式便器1の端部には小便用立ち上がり部2を上方に突設し、洋式便器1の便器ボウル3に連続するように小便用立ち上がり部2に小便受け凹部4を設けて形成されている。」(第4頁第1?4行目)

(b)「男子の小便の使用時は第3図に示すように小便受け用蓋板5を便座6や便蓋8と一緒に上方に回動して便器ボウル3及び小便受け凹部4の開口を開放する。この状態で使い勝手よく男子の小便ができる。」(第4頁第18行目?第5頁第2行目)

(c)「本実施例の場合小便受け用蓋板5に便座6を蝶番10にて回転自在に連結してあり、小便受け用蓋板5の長さAと便座6の長さBとを等しくしてある。・・・男子の小便の使用時は第4図(b)に示すように小便受け用蓋板5が水平になるように回動し、小便受け用蓋板5の下面に重ねるように便座6を回動する。・・・この状態で男子の小便がたやすくできる。」(第5頁第3?15行目)

(2)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
上記(1)(ア)(b)の「洋式大便器と小便器の両方の利点を合わせもち」という記載事項や、上記(1)(ア)(d)の「洋式大便器と同様に」という記載事項から、引用発明1の「立式座式兼用便器」は洋式便器であることは明らかであるので、引用発明1の「立式座式兼用便器」の「便器本体」は、本件補正発明の「洋式便器本体」に相当する。

以下同様にして、
「開口部」に「設けた」「傾斜部」は、「その前面」、及び、「立ち上がり部の前面」に、
「開口部」の「水平面」は、「洋式便器本体の上端開口部」に、
「小水受け用」である「傾斜部に対応する便器本体内部」は、「この洋式便器本体の内部と連なる延長状態で上方に延びる小水受け用の立ち上がり部」に、
「閉部」は、「蓋板」に、
「便座」は、「便座」に相当する。

また、引用発明1において、傾斜部の開口縁が水平面の周縁から後部に連なっているので、「傾斜部」及び「傾斜部に対応する便器本体内部」は「便器本体」の後部位置に設けられるといえる。

そうすると、両者は、
「洋式便器本体の後部位置に、その前面の開口縁が洋式便器本体の上端開口部周縁の後部両側から連なって、この洋式便器本体の内部と連なる延長状態で上方に延びる小水受け用の立ち上がり部を設けて洋式便器が形成され、
この立ち上がり部の上端部に、便器の前後方向に沿って起伏動自在となるよう取付けられ、伏倒位置で前記立ち上がり部の前面を閉鎖し、起立位置で立ち上がり部の前面を開放する蓋板を設け、
この蓋板の先端部に、蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり、蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する便座を、蓋板に対して便器の前後方向に対して起伏動自在に取付けた洋式便器。」
である点で一致しており、次の点で相違する。

(相違点)
本件補正発明において、蓋板が起立した際に、便座が蓋板の先端から前面側に垂れ下がるのに対し、引用発明1においては、後面側に垂れ下がる点。

(3)判断
上記(相違点)について検討する。

(a)引用例2には、上記(1)(イ)(b)の「小便受け用蓋板5を・・・上方に回動して便器ボウル3及び小便受け凹部4の開口を開放する。この状態で使い勝手よく男子の小便ができる。」という記載事項、及び、上記(1)(イ)(c)の、「小便受け用蓋板5の下面に重ねるように便座6を回動する」という記載事項から、小便受け用蓋板5が起立した状態で、小便受け用蓋板5の下面と便座6の下面とが対向することで、男子の小便をたやすくできるようにすることが開示されている。
したがって、引用例2には、蓋板が起立した際に、便座が蓋板の前面側に位置することが開示されているといえる。

(b)一方、引用例1の上記(1)(ア)(d)には、「立式小便としての使用時には、閉部及び便座を開けると、小便器と同様の飛散防止及び水洗効果を得ることができる。」と記載されており、本件補正発明の蓋板及び便座と目的が共通する。

(c)そうすると、引用発明1及び引用例2の(1)(イ)(a)に記載された事項は、洋式便器において小便器のように小便を受ける立ち上がり部を設けるという共通した構成を有しているから、引用発明1において、小便器と同様の飛散防止及び水洗効果を得るための閉部及び便座の配置として、引用例2の記載事項を採用し、起立した閉部の先端から、閉部の下面と便座の下面とが対向するように前面側に便座を垂れ下がらせて、本件補正発明の相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(d)また、本件補正発明の作用効果は、引用発明1及び引用例2の記載事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものではない。

(e)したがって、本件補正発明は、引用発明1及び引用例2の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成25年12月16日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、出願時の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「洋式便器本体の後部位置に、その前面の開口縁が洋式便器本体の上端開口部周縁の後部両側から連なって、この洋式便器本体の内部と連なる延長状態で上方に延びる小水受け用の立ち上がり部を設けて洋式便器が形成され、この立ち上がり部の上端部に、便器の前後方向に沿って起伏動自在となるよう取付けられ、伏倒位置で前記立ち上がり部の前面を閉鎖し、起立位置で立ち上がり部の前面を開放する蓋板を設け、この蓋板の先端部に、蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なる便座を、蓋板に対して便器の前後方向に対して起伏動自在に取付けた洋式便器。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1の記載事項は、上記第2の3.(1)(ア)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2の2.で検討した本件補正発明の「便座」の限定事項である「蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する」との構成を省いたものである。

そうすると、上記第2の3.(2)で検討したとおり、本願発明と引用発明1は、
「洋式便器本体の後部位置に、その前面の開口縁が洋式便器本体の上端開口部周縁の後部両側から連なって、この洋式便器本体の内部と連なる延長状態で上方に延びる小水受け用の立ち上がり部を設けて洋式便器が形成され、
この立ち上がり部の上端部に、便器の前後方向に沿って起伏動自在となるよう取付けられ、伏倒位置で前記立ち上がり部の前面を閉鎖し、起立位置で立ち上がり部の前面を開放する蓋板を設け、
この蓋板の先端部に、蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり、蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する便座を、蓋板に対して便器の前後方向に対して起伏動自在に取付けた洋式便器。」
である点で一致しており、相違しない。

したがって、本願発明は引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4. むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-18 
結審通知日 2015-01-06 
審決日 2015-01-21 
出願番号 特願2008-205432(P2008-205432)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E03D)
P 1 8・ 113- Z (E03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 七字 ひろみ湊 和也  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 門 良成
住田 秀弘
発明の名称 洋式便器  
代理人 鎌田 文二  
代理人 鎌田 直也  

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