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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63B
管理番号 1310223
審判番号 無効2015-800029  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-02-17 
確定日 2016-01-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第5473687号発明「トレーニング装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5473687号は、平成22年3月12日に出願され、平成26年2月14日に設定登録がなされたものである。
そして、本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
平成27年2月17日 無効審判請求書提出
平成27年5月8日 審判事件答弁書提出
平成27年7月15日 口頭審理陳述要領書、審判事件弁駁書提出(請求人)
平成27年7月15日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成27年7月29日 口頭審理
平成27年8月19日 上申書(1)、上申書(1)の追加、上申書( 2)提出(請求人)
平成27年8月19日 上申書提出(被請求人)


第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明5」という。また、これらを総称して「本件特許発明」という。)。
「【請求項1】
使用者が着座する座部と、
前記使用者の膝を伸ばした姿勢で開閉される脚部の裏面に当接する平坦な第1当接部と、前記使用者の前記脚部の内側面及び/または外側面に当接する第2当接部と、をそれぞれ含む第1,第2の可動案内部と、
前記座部の下方に配置され、前記第1,第2の可動案内部をそれぞれ回動可能に支持する第1,第2の回動軸と、
前記座部の下方に配置され、前記第1,第2の回動軸を互いに逆方向でかつ実質的に同一の回動量となるように同調させる同調機構と、
前記第1,第2の可動案内部の回動に抗して、前記第1,第2の回動軸の少なくとも一方に負荷を作用させる負荷作用部と、
前記座部と前記第1,第2の可動案内部との間の高さ変位を調整する高さ変位調整機構と、
基端が前記第1,第2の回動軸にそれぞれ連結され、自由端が前記座部の下方より前記座部の外側に向けて延びる第1,第2の連結部と、
前記第1,第2の連結部に対して前記第1,第2の可動案内部を揺動可能に支持し、前記第1,第2の可動案内部の揺動角をそれぞれ調整する第1,第2の揺動角調整機構と、を有することを特徴とするトレーニング装置。

【請求項2】
請求項1において、
前記高さ変位調整機構は、座部高さ調整機構を有し、
前記座部高さ調整機構は、
前記座部の下方にて、前記同調機構と干渉しない位置にて垂直に延びる固定支柱と、
前記座部が固定され、前記固定支柱にスライド案内される可動支柱と、
前記可動支柱を前記固定支柱に固定する第1の固定部と、
を有することを特徴とするトレーニング装置。

【請求項3】
請求項2において、
前記第1,第2の可動案内部により案内される両脚部が第1の開脚角度の時よりも、前記第1開脚角度よりも狭い第2開脚角度の時には、前記負荷作用部から前記第1,第2の回動軸の一方に作用させる負荷を減少させる負荷調整部をさらに有することを特徴とするトレーニング装置。

【請求項4】
請求項3において、
前記同調機構は、前記第1,第2の回動軸にそれぞれ固定されて、互いに噛み合う2つの同調ギアを含み、
前記負荷調整部は、基端が前記第1,第2の回動軸の一方に固定され、自由端が前記2つの同調ギアの外周半径を越えて半径方向に延びる回動アームを含み、
前記回動アームの前記自由端側に前記負荷作用部の負荷が作用されることを特徴とするトレーニング装置。

【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第1,第2の連結部に対して前記第1,第2の可動案内部を前記第1,第2方向に沿ってそれぞれスライド移動可能に支持し、前記第1,第2の可動案内部位置のスライド位置をそれぞれ調整する第1,第2のスライド位置調整機構と、
をさらに有することを特徴とするトレーニング装置。」


第3 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第5473687号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、無効理由の概要は以下の1ないし5のとおりであって、本件特許は無効とすべきである旨主張している。
1.本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とは、前者は、平坦な第1当接部31A、31Bに、使用者の膝を伸ばした姿勢で開閉された脚部の裏面が当接するのに対し、後者は、膝を直角に曲げて使用している点(以下「相違点イ」という。)、及び前者は、第1,第2の連結部に対して第1,第2の可動案内部を揺動可能に支持し、前記第1,第2の可動案内部の揺動角をそれぞれ調整する第1,第2の揺動角調整機構を有するのに対し、後者は、上記に相当する構成が存在しない点(以下「相違点ロ」という。)で相違する。
しかしながら、相違点イに係る本願特許発明1の構成は、甲第2、3、7号証記載の発明に示されており、相違点ロに係る本願特許発明1の構成は、甲第4号証記載の発明に示されている。また、甲第1号証記載の発明、及び甲第4号証記載の発明は、高齢者がトレーニングや介護のため着座して両足を開閉する装置で、しかも利用し易い着座や姿勢を取ることができる点において共通する技術を有している。以上のことから、本件特許発明1は、甲第1?4、7号証記載の発明に基づいて容易に発明できたものである。(審判請求書13頁5行?15頁10行、口頭審理陳述要領書7頁21?22行、上申書(1)の追加2頁3行?3頁末行)。

2.本件特許発明2について
本件特許発明2において特定されている座部高さ調整機構は、甲第1、及び5号証記載の発明に示されている。以上のことから、本件特許発明2は、甲第1?5、7号証記載の発明に基づいて容易に発明できたものである。(審判請求書15頁11?末行、口頭審理陳述要領書7頁下から4行?8頁18行)。

3.本件特許発明3について
本件特許発明3において特定されている負荷調整部は、甲第6号証記載の発明に示されている。以上のことから、本件特許発明3は、甲第1?6、7号証記載の発明に基づいて容易に発明できたものである。(審判請求書4頁、16頁1?21行、口頭審理陳述要領書8頁19行?9頁3行)。

4.本件特許発明4について
本件特許発明4において、「同調機構は?負荷が作用されること」は、甲第1号証記載の発明に示されている。以上のことから、本件特許発明4は、甲第1?4、7号証記載の発明に基づいて容易に発明できたものである。(審判請求書16頁22行?17頁9行、口頭審理陳述要領書9頁4?14行)。

5.本件特許発明5について
本件特許発明5の「可動案内部30A、30Bがスライドする連結部91A、91B」と甲第5号証記載の発明の「クッション56がスライドする旋回アーム36、38」との位置を使用者の状態に合わせて調整することは同じである。以上のことから、本件特許発明5は、甲第1?5、7号証記載の発明に基づいて容易に発明できたものである。(審判請求書17頁10?末行、口頭審理陳述要領書9頁15?19行)。

また、上記無効理由を立証するための証拠方法は、以下のとおりである。
(証拠方法)
[書証]
甲第1号証:特開2008-35927号公報
甲第2号証:新潮45 4月号別冊 イチロー総監督インパクト、株式会社 新潮社、平成12年4月1日発行、127?129頁
甲第3号証:Tarzan No.465 5月24日号、株式会社マガジ ンハウス、2006年5月24日発行、17頁、22頁
甲第4号証:特開平9-154897号公報
甲第5号証:特開2007-89601号公報
甲第6号証:特開2007-195783号公報
甲第7号証:スポーツ報知 1998年12月19日発行 7版 24頁
甲第8号証:(株)ワールド・ウィング・エンタープライズのトレーニング ジムの研修予約表
(以上、審判請求書に添付して提出された。)
甲第9号証:2005年2月8日の午前4時30時?8時00分の間に放映 されたNHK「おはよう日本」の中で紹介された「介護予防ト レーニング」の様子を録画したDVD
甲第10号証の1:「介護予防市町村モデル事業」第2回介護予防重点推進 ・評価委員会の資料(介護予防重点推進・評価委員会 委員名簿、鳥取市筋力向上トレーニングモデル事業報告 )
甲第10号証の2:「介護予防市町村モデル事業」総合評価
甲第10号証の3:「介護予防市町村モデル事業」個人評価
甲第11号証:医療法人社団大須賀医院の医院長である大須賀友晃の作成し た「証明書」
(以上、平成27年7月15日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出された。)
なお、被請求人は、甲第1ないし11号証の成立を認めている。


第4 被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、上記請求人の主張に対し、概略、以下のとおり主張して、本件特許を無効とすべき理由はない旨の主張をしている。
本件特許発明と同じ技術分野である「身体の鍛錬装置」に係る発明を開示した甲第1?3号証、甲第5?7号証の発明に、「高齢者や身体障碍者を介護する場合に便利な人体姿勢保持装置」を開示した甲第4号証の発明を組み合わせる動機付けは存在しない。
また、仮に甲第4号証の発明が甲第1?3号証、甲第5?7号証の発明と組み合わせ可能であったとしても、それらを如何に組み合わせても本件特許発明を想起できない(審判事件答弁書8頁17?23行)。

また、上記無効理由に反論するための証拠方法は、以下のとおりである。
(証拠方法)
[書証]
乙第1号証:米国特許第4240627号
(以上、審判事件答弁書に添付して提出された。)
なお、請求人は、乙第1号証の成立を認めている。


第5 主な各甲号証に記載されている事項
1.甲第1号証
甲第1号証には、以下のとおり記載されている(なお、下線は審決で付した。以下同じ。)。
(1)「【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、シートを上下動可能にせしめ、特に高齢者がトレーニングを行う際にシートへ着座する際の危険性を解消することが出来る様な鍛練装置の提供を目的としている。」
(2)「【0040】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1?図10は、本発明の第1実施形態を示している。ここで、図1?図10の第1実施形態は、本発明の鍛練装置をヒップアブダクションに応用した実施形態である。
ここで、ヒップアブダクションは、中殿筋を強化することが出来る鍛練装置である。高齢者の中殿筋を強化すれば、骨盤の安定性を向上させることが出来るため、歩行時において、左右方向(横方向)にふらつくことが改善される。
【0041】
図1は、ヒップアブダクションの概要を示している。図1では、トレーニングを行う者(トレーニング者:例えば高齢者)Pが、全体を符号10で示すヒップアブダクションのシート12に座った状態が示されている。
シート12の下方には、後述する様に、トレーニング者に対して適度に負荷を掛ける為の負荷装置20が配置されている。
【0042】
ここで、ヒップアブダクションで行われるトレーニングは、トレーニング者が両脚を拡げる(開脚)する方向へ同時に移動する際に、両脚に対して、拡がらない方向(開脚を妨げる方向)の負荷を作用することにより行われる。
係る負荷(開脚を妨げる方向の負荷)を作用するため、ヒップアブダクション10には、一対の操作レバー22、22が設けられている。操作レバー22、22の各々は、その一端は負荷装置20の2本の出力軸(図1では明確には図示せず)に接続されており、他端は、トレーニング者Pの足を載置するための台部24、24に接続されている。
台部24、24の各々はロッド26と接続されており、ロッド26の先端には、トレーニング者Pの両脚LR、LLの大腿部下方あるいは膝部近傍の外側に当接するパッド28、28が設けられている。
【0043】
図1の状態で、トレーニング者Pが両脚LR、LLを開脚する様に動くと、係る動きはパッド28、ロッド26、台部24を介して操作レバー22に伝達され、操作レバー22を矢印R1方向へ回動しようとする。
なお、図1において、トレーニング者Pが開脚した際における操作レバー22の回動方向を示す矢印R1は、左脚LL側にしか示されていない。図1は斜視図であり、右脚LRの回動方向を矢印で表示するのが難しいからである。
【0044】
操作レバー22の(矢印R1方向への)回動により、モータ30が作動して、操作レバー22が接続された出力軸(図1では明確には図示せず)に負荷が伝達される。
モータ30から、操作レバー22に接続した出力軸への負荷或いは回転力の伝達については、図7?図10を参照して後述する。」
(3)「【0049】
ここで、トレーニング者P、特に高齢者であるトレーニング者Pの場合には、ヒップアブダクション10のシート12の位置がトレーニング者Pの臀部の位置に比較して低位置であり、且つ、シート12の位置とトレーニング者Pの臀部の位置との高低差が大きいと、「シート12に座る」という行為が大変な労力を必要とし、転倒事故に起因する恐れも存在する。また、シート12の位置がトレーニング者Pの臀部の位置に比較して高すぎた場合にも、特に高齢者にとってはシート12に座ることが困難である。
これに対して、第1実施形態に係るヒップアブダクションにおいては、図1の上下方向(垂直方向)におけるシート12の位置(シート12の高さ)を調節可能に構成されている。
【0050】
次に、図3及び図4を参照して、上下方向のシート12の位置(シート12の高さ)を調節するシート高さ調節装置13について説明する。
図3及び図4において、シート高さ調節装置13は、4本の上下動するネジ軸110が4角に配列されている。ネジ軸110のそれぞれにはブッシュ112が螺合しており、ブッシュ112の内周面にはメスネジが形成されている。ここで、ネジ軸110及びブッシュ112において、形成されたネジは、バックラッシュの少ない角ネジを使用している。
ブッシュ112のそれぞれには、スプロケット106が固定されている。スプロケット106の各々には、両面コグ付きの非金属伝動ベルト108が噛合っており、全てのスプロケット106が、同時に且つ同方向へ回転する様に、構成されている。」
(4)「【0060】
図7?図10は、負荷装置20を構成する主要部材を示しており、モータ30と、各種ギヤ及び軸によって、負荷装置20は概略構成されている。
なお、図7?図10は、同一の構造を示しているが、ギヤ同士の噛合状態を明確に表示するため、異なる角度から見た状態を示している。
ヒップアブダクションの場合は、人体の構造上、開脚する力はさほど大きくはないので、負荷を発生するモータも、比較的小さな出力で足りる。図1?図10の第1実施形態では、例えば、定格出力が200Wのモータが使用される。
【0061】
なお、図示の実施形態において使用されるモータ30は、ACサーボモータあるいはDCブラシレスモータが好適である。そして、インクリメンタル或いはアブソリュートの回転位置検出機構を有するもの、若しくは同様な検出機構を備えたモータが用いられる。
【0062】
特に図7、図8で示されているように、モータ30のモータ出力軸32には、ピニオン34が設けられている。
明確には図示されていないが、図示の実施形態(第1実施形態?第4実施形態)において、モータ出力軸32に、ピニオン34を構成したロッドが接続されており、モータ出力軸32と当該ロッドは、キーを用いること無く、摩擦力を利用して接合される様に構成されている。ヒップアブダクションの負荷を伝達するモータ出力軸32は、正転、逆転を繰り返すので、キーを用いて接合すると、いわゆる「ガタツキ」が発生してしまうからである。
モータ出力軸32の端部は軸受36により支持され、軸受36は、負荷装置20のケーシング(図7?図10では図示せず)に固定されている。
【0063】
図7で示されている様に、モータ出力軸32のピニオン34は第2軸大ギヤ38と噛合しており、第2軸大ギヤ38は第2軸40に固定されている。ここで、第2軸40の一端部は、図7では図示しないケーシングに固定された軸受42で支持されており、第2軸40の他端部は部材44で支持されている。
第2軸40には、第2軸小ギヤ(ピニオン)46が形成されている。そして、第2軸小ギヤ46には、最終段出力軸ギヤ48が噛合している。
【0064】
最終段出力軸ギヤ48は最終段出力軸50に固定されており、最終段出力軸50の一端は軸受52で支持されている。
最終段出力軸ギヤ48は最終段第2出力軸ギヤ54と噛合しており、最終段第2出力軸ギヤ54は最終段第2出力軸56に固定されている。そして、最終段第2出力軸56の一端は軸受58で支持されている。
ここで、最終段第2出力軸ギヤ54は最終段出力軸ギヤ48のみと噛合しており、第2軸小ギヤ(ピニオン)46とは噛合していない。
【0065】
最終段出力軸ギヤ48と最終段第2出力軸ギヤ54とが噛合することにより、最終段出力軸50と最終段第2出力軸56とは、反対方向に回転することとなる。
これは、最終段出力軸ギヤ48と最終段第2出力軸ギヤ54とは、各々が図1で示す操作レバー22、22に固定されていることに起因する。
図1を参照すれば明らかな様に、ヒップアブダクションにおける開脚動作では操作レバー22、22は相互に離隔するように図1の矢印R1方向に移動し、開脚と反対の動作(「閉脚動作」)では操作レバー22、22は相互に接近するように矢印R1とは逆方向に移動する。操作レバー22、22に係る動作を行わせるためには、操作レバー22に接続している2つの出力軸、すなわち最終段出力軸ギヤ48と最終段第2出力軸ギヤ54とは、反対方向に回転する必要がある。
【0066】
ここで、軸受52及び軸受58は、図7?図10では図示しないケーシングに固定されている。
【0069】
ヒップアブダクションによるトレーニングでは、トレーニング者Pは脚LL、LRを開脚して、図1において矢印R方向に操作レバー22、22を移動する。
トレーニング者Pが開脚を開始すると、開脚しようとする力(始動時の力)が、操作レバー22、22を介して最終段出力軸50及び最終段第2出力軸56(図7?図9)に伝達され、最終段出力軸ギヤ48及び最終段第2出力軸ギヤ54、第2軸小ギヤ(ピニオン)46、第2軸40、第2軸大ギヤ38、ピニオン34を介してモータ出力軸32に伝達される。
開脚しようとする力(始動時の力)は、モータ出力軸32に伝達される際には、モータ30の逆方向の回転力として伝達される。
【0070】
モータ30は、静止状態(待機状態)から逆方向の回転が伝達されると、正方向の回転を開始するように構成されている。
従って、ヒップアブダクションによるトレーニングが開始されて、開脚しようとする力(始動時の力)が作用すると、モータ30は開脚使用とする力を妨げる方向(負荷をかける方向:正方向)に回転するのである。
そしてモータ30の正方向の回転は、モータ出力軸32、ピニオン34、第2軸大ギヤ38、第2軸40、第2軸小ギヤ(ピニオン)46、最終段出力軸ギヤ48及び最終段第2出力軸ギヤ54を介して最終段出力軸50及び最終段第2出力軸56に伝達され、操作レバー22、22を介してトレーニング者に伝達される。
【0071】
ここで、モータ30が発生するトルク、換言すればヒップアブダクションによる負荷は、トレーニング者Pの個人データや各種設定値に基づいて、図示しない制御機構により、適宜、設定或いは制御されるように構成される。」
(5)図1、2から、「パッドは平坦な部位を形成している」こと、及び「操作レバー22、22、及び台部24、24はシート12の下方よりシート12の外側に向けて延びている」ことが看取できる。

上記(1)?(5)の開示事項を総合すると、甲第1号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第1号証発明」という。)。
「中殿筋を強化することが出来る鍛練装置であるヒップアブダクションであって、ヒップアブダクション10には、トレーニング者Pが座るシート12と、上下方向のシート12の位置(シート12の高さ)を調節するシート高さ調節装置13と、開脚を妨げる方向の負荷を作用するため、一対の操作レバー22、22が設けられ、操作レバー22、22の各々は、その一端は負荷装置20の2本の出力軸に接続されており、他端は、トレーニング者Pの足を載置するための台部24、24に接続されて、シート12の下方よりシート12の外側に向けて延びており、台部24、24の各々はロッド26と接続されており、ロッド26の先端には、トレーニング者Pの両脚LR、LLの大腿部下方、膝部近傍の外側に当接し、平坦な部位を形成しているパッド28、28が設けられており、シート12の下方には、トレーニング者に対して適度に負荷を掛ける為の負荷装置20が配置され、負荷装置20は、モータ30のモータ出力軸32のピニオン34が第2軸大ギヤ38と噛合しており、第2軸大ギヤ38が第2軸40に固定され、第2軸40には、第2軸小ギヤ(ピニオン)46が形成され、第2軸小ギヤ46には、最終段出力軸ギヤ48が噛合しており、最終段出力軸ギヤ48が最終段出力軸50に固定されており、また最終段出力軸ギヤ48が最終段第2出力軸ギヤ54と噛合しており、最終段第2出力軸ギヤ54が最終段第2出力軸56に固定されているものであって、最終段出力軸ギヤ48と最終段第2出力軸ギヤ54とが噛合することにより、最終段出力軸50と最終段第2出力軸56とは、反対方向に回転することとなり、これは、最終段出力軸ギヤ48と最終段第2出力軸ギヤ54とは、各々が操作レバー22、22に固定されていることに起因するものであるヒップアブダクション10。」

2.甲第2号証
甲第2号証には、以下のとおり開示されている。
甲第2号証の127頁の写真、128頁の左中段の写真、及び129頁の左下段の写真から、トレーニング装置は、座部と、平坦な第1当接部と第2当接部とからなる第1、第2の可動案内部と、左右の第1当接部を下方から支持している第1、第2の連結部を備えており、使用者が、トレーニング装置の座部に着座し、使用者がほぼ膝を伸ばした姿勢で左右の脚部の裏面を第1当接部に当接させると共に、左右の脚部の内側面を第2当接部に当接させて、トレーニングをしている様子が看取できる。

上記の開示事項を総合すると、甲第2号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第2号証発明」という。)。
「使用者が着座する座部と、前記使用者の膝を伸ばした姿勢で開閉される脚部の裏面に当接する平坦な第1当接部と、前記使用者の前記脚部の内側面に当接する第2当接部と、をそれぞれ含む第1,第2の可動案内部とを有するトレーニング装置。」

3.甲第3号証
甲第3号証には、以下のとおり開示されている。
(1)甲第3号証の22頁には、「インナーサイ 太腿内側 1○(審決注:甲第2号証には黒丸に白抜きの数字1が記載されているが、このように表示できないので上記のように記載する。以下、同じ。)シートに深く腰掛け、両脚を左右のパッドの上に乗せる。2○マシンの負荷で両脚が外側に開かれ、太腿内側の筋肉が伸ばされる。3○伸ばされた筋肉の弾力性により、動作が切り替わり、両脚を閉じる際に、徐々に力が抜ける。両手はパッドに添えて、上体を少し前傾させてトレーニング。」と記載されている。
(2)甲第3号証の17頁の写真、及び22頁の上段の写真から、トレーニング装置は、シートと、平坦な第1当接部と第2当接部とからなる第1、第2のパッドと、左右の第1当接部を下方から支持している第1、第2の連結部を備えており、使用者が、トレーニング装置のシートに着座し、使用者がほぼ膝を伸ばした姿勢で左右の脚部の裏面を第1当接部に当接させると共に、左右の脚部の内側面を第2当接部に当接させて、トレーニングをしている様子が看取できる。

上記の開示事項を総合すると、甲第3号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第3号証発明」という。)。
「使用者が着座するシート(座部)と、前記使用者の膝を伸ばした姿勢で開閉される脚部の裏面に当接する平坦な第1当接部と、前記使用者の前記脚部の内側面に当接する第2当接部と、をそれぞれ含む第1,第2のパッド(第1,第2の可動案内部)とを有するインナーサイのトレーニング装置。」

4.甲第4号証
甲第4号証には、以下のとおり開示されている。
(1)「【請求項1】 人体の背部を支持するために、フレームに傾動可能に支持された背もたれと、その背もたれに配設され、人体の上半身を保持するための上体保持体を有する上体保持機構とを備えた人体姿勢保持装置。
【請求項5】 前記フレームには、人体の下肢を保持するための一対の下肢保持体を有する下肢保持機構を配設した請求項1?4のいずれかに記載の人体姿勢保持装置。
【請求項21】 前記上体保持機構の上体保持体、臀部保持機構の臀部保持体もしくは下肢保持機構の下肢保持体の作動位置を、使用者の個人情報に基づいて制御するようにした請求項1?請求項20のいずれかに記載の人体姿勢保持装置。」
(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、高齢者や身体障害者を介護する場合に便利な人体姿勢保持装置に関するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、このような要望に対処するためになされたものである。その目的とするところは、被保持者の身体を排泄等の介護作業や診断に適した状態に、安定して姿勢変更することができて、介護作業や姿勢保持を容易に行うことができる人体姿勢保持装置を提供することにある。」
(3)「【0042】
【発明の実施の形態】以下、この発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。はじめに、構成を概略的に説明する。図1?図3に示すように、人体姿勢保持装置21のフレーム22の上面には一対の側板22aが立設されている。背もたれ24は両側板22a間に支持体34を介して傾動可能に支持されている。
【0045】図1?図3及び図6に示すように、下肢保持機構30は前記フレーム22の両側壁22a上に配設され、一対の下肢保持体としての下肢保持パッド31を備えている。また、これらの下肢保持パッド31は左右一対の保持エアバッグ31a,31bから構成されている。そして、背もたれ24上に被保持者が移載された状態で、この下肢保持機構30の各下肢保持パッド31を被保持者の腿に下方から当接させて、被保持者の下肢を保持するようになっている。」
(4)「【0054】図1?図3及び図6に示すように、前記下肢保持機構30における左右一対のサドル94は両側壁22aの左右外面のガイドレール95にそれぞれ昇降可能に支持され、図6に示すエアシリンダ60により昇降される。取付枠53はサドル94に取り付けられている。一対の支持アーム54は各取付枠53の外面に回動可能に支持され、それらの先端内側には支持片54aが突設されている。一対の支持台55は各支持アーム54の支持片54aにガイド56を介して左右移動可能に支持され、これらの支持台55上にエアバッグよりなる下肢保持パッド31が支軸57を介して回転自在に支持されている。
【0055】ブレーキ装置付きサーボモータよりなる一対の回動用モータ58は前記取付板53上に配設され、これらのモータ58により図示しないスプロケット及びチェーンを介して支持アーム54が上下に回動されて、各下肢保持パッド31が図2及び図8に示す下方位置と、図10に示す上方位置とに回動配置される。そして、図2及び図8に示す下方位置において、各下肢保持パッド31がエアの供給により膨脹されて、被保持者の左右の腿を保持する。
【0056】下肢の開脚機構を構成する一対の開脚用モータ59は前記各支持片54a54上に配設され、これらのモータ59により図示しないボールねじ等を介して各支持台55が左右に移動される。これにより、図9に示すように、各下肢保持パッド31が被保持者の下肢を保持した状態で、支軸57を中心に回動しながら離間移動され、これによって被保持者の両下肢が開脚される。」
(5)「【0118】請求項5に記載の発明によれば、下肢保持機構により被保持者の下肢を保持することもできて、被保持者の身体を介護作業に適した姿勢に、より安定した状態で保持することができる。
【0129】請求項21においては、上体保持体、臀部保持体もしくは下肢保持体の作動位置を、被保持者の個人情報に基づいて適正に制御することができる。このため、被保持者の姿勢変更や姿勢保持を、各個人の身体状況等に応じて的確に行うことができる。」

上記(1)?(5)の開示事項を総合すると、甲第4号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第4号証発明」という。)。
「背もたれと、人体の上半身を保持するための上体保持体を有する上体保持機構とを備え、人体の下肢を保持するための一対の下肢保持体を有する下肢保持機構を配設した人体姿勢保持装置であって、人体姿勢保持装置21のフレーム22の上面には一対の側板22aが立設され、下肢保持機構30は前記フレーム22の両側壁22a上に配設され、一対の下肢保持体としての被保持者の腿に下方から保持する下肢保持パッド31を備えており、背もたれ24上に被保持者が移載された状態で、この下肢保持機構30の各下肢保持パッド31を被保持者の腿に下方から当接させて、被保持者の下肢を保持するようになっており、前記下肢保持機構30におけるサドル94に取り付けられている取付枠53の外面に回動可能に支持される一対の支持アーム54は各取付枠53の外面に回動可能に支持され、それらの先端内側には支持片54aが突設され、一対の支持台55は各支持アーム54の支持片54aに支持され、これらの支持台55上に下肢保持パッド31が回転自在に支持されており、支持アーム54が上下に回動されて、各下肢保持パッド31が下方位置と、上方位置とに回動配置されて、下肢保持機構の下肢保持体の作動位置を、使用者の個人情報に基づいて制御する人体姿勢保持装置。」

5.甲第7号証
甲第7号証には、以下のとおり開示されている。
甲第7号証の写真から、トレーニング装置は、座部と、平坦な第1当接部と第2当接部とからなる第1、第2の可動案内部と、左右の第1当接部を下方から支持している第1、第2の連結部を備えており、使用者が、トレーニング装置の座部に着座し、使用者がほぼ膝を伸ばした姿勢で左右の脚部の裏面を第1当接部に当接させると共に、左右の脚部の内側面を第2当接部に当接させて、トレーニングをしている様子が看取できる。

上記の開示事項を総合すると、甲第2号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第7号証発明」という。)。
「使用者が着座する座部と、前記使用者の膝を伸ばした姿勢で開閉される脚部の裏面に当接する平坦な第1当接部と、前記使用者の前記脚部の内側面に当接する第2当接部と、をそれぞれ含む第1,第2の可動案内部とを有するトレーニング装置。」


第6 当審の判断
1.本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比すると、
後者における「トレーニング者P」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「使用者」に相当し、以下同様に、「シート12」は「座部」に、「『両脚LR、LL』、『大腿部』、及び『膝部』」は「脚部」に、「パッド28、28」は「第1、第2の可動案内部」に、「『出力軸』、『最終段出力軸50』、及び『最終段出力軸56』」は「第1、第2の回動軸」に、「負荷装置20」は「負荷作用部」に、「シート高さ調節装置13」は「高さ変位調整機構」に、「操作レバー22、22、及び台部24、24からなるもの」は「第1、第2の連結部」に、「『鍛錬装置』、及び『ヒップアブダクション』」は「トレーニング装置」に、それぞれ相当する。
また、後者における「パッド28、28(第1、第2の可動案内部)」は、トレーニング者Pの両脚LR、LLの大腿部下方、膝部近傍の外側に当接し、平坦な部位を形成しているものであるから、「使用者の脚部の裏面に当接する平坦な第1当接部と、前記使用者の前記脚部のは外側面に当接する第2当接部とをそれぞれ含んでいる」ものといえる。
また、後者における「『出力軸』、『最終段出力軸50』、及び『最終段出力軸56』(第1、第2の回動軸)」は、負荷装置20を構成するものであって、当該負荷装置20はシート12の下方に配置されており、また、操作レバー22、台部24、及びロッド26を介してパッド28を支持しているから、「座部の下方に配置され、第1、第2の可動案内部をそれぞれ回動可能に支持する」ものといえる。
また、後者における「最終段出力軸ギヤ48と最終段第2出力軸ギヤ54」は、互いに噛合して反対方向に回転するものであり、また、負荷装置20を構成するものであって、当該負荷装置20はシート12の下方に配置されているから、前者における「同調機構」に相当し、「座部の下方に配置され、第1、第2の回動軸を互いに逆方向でかつ実質的に同一の回動量となるように同調させる」ものといえる。
また、後者における「負荷装置20(負荷作用部)」は、開脚を妨げる方向の負荷を作用させるもので、一対の操作レバー22が設けられ、操作レバー22の各々は、その一端が負荷装置20に接続され、他端が台部24、及びロッド26を介して、トレーニング者Pの両脚LR、LLの大腿部下方、膝部近傍の外側に当接するパッド28に接続されているから、「第1,第2の可動案内部の回動に抗して、第1、第2の回動軸の少なくとも一方に負荷を作用させる」ものといえる。
また、後者における「シート高さ調節装置13(高さ変位調整機構)」は、上下方向のシート12の位置(シート12の高さ)を調節するものであるから、結果として「シート12とパッド28との間の高さ変位を調整することになり、つまり「座部と第1、第2の可動案内部との間の高さ変位を調整する」ものといえる。
また、後者における「操作レバー22、22、及び台部24、24からなるもの」は、操作レバー22、22の各々の一端は負荷装置20の2本の出力軸に接続されており、他端は台部24、24に接続されて、シート12の下方よりシート12の外側に向けて延びているから、「基端が前記第1,第2の回動軸にそれぞれ連結され、自由端が前記座部の下方より座部の外側に向けて延びる」ものといえる。
したがって、両者は、
「使用者が着座する座部と、
前記使用者の脚部の裏面に当接する平坦な第1当接部と、前記使用者の前記脚部の内側面及び/または外側面に当接する第2当接部と、をそれぞれ含む第1,第2の可動案内部と、
前記座部の下方に配置され、前記第1,第2の可動案内部をそれぞれ回動可能に支持する第1,第2の回動軸と、
前記座部の下方に配置され、前記第1,第2の回動軸を互いに逆方向でかつ実質的に同一の回動量となるように同調させる同調機構と、
前記第1,第2の可動案内部の回動に抗して、前記第1,第2の回動軸の少なくとも一方に負荷を作用させる負荷作用部と、
前記座部と前記第1,第2の可動案内部との間の高さ変位を調整する高さ変位調整機構と、
基端が前記第1,第2の回動軸にそれぞれ連結され、自由端が前記座部の下方より前記座部の外側に向けて延びる第1,第2の連結部と、
を有するトレーニング装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本件特許発明1は、第1,第2の可動案内部が、使用者の「膝を伸ばした姿勢で開閉される」脚部の裏面に当接しているのに対し、甲第1号証発明は、パッド28、28が、トレーニング者Pの両脚LR、LLの大腿部下方に当接している点。
[相違点2]
本件特許発明1は、「第1,第2の連結部に対して第1,第2の可動案内部を揺動可能に支持し、前記第1,第2の可動案内部の揺動角をそれぞれ調整する第1,第2の揺動角調整機構」を有しているのに対し、甲第1号証発明は、そのような機構を有していない点。

(2)判断
上記相違点について以下検討する。
ア.相違点1について
甲第2、3、及び7号証発明は、それぞれ上記「第5」の「2.」、「3.」、及び「5.」のとおりであるから、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲第2、3、及び7号証発明に示されているといえる。なお、甲第2、及び7号証発明もインナーサイ(太腿内側)をトレーニングするものと推認される。
ところで、甲第2、3、及び7号証発明のトレーニング装置は、膝を伸ばした姿勢で脚部を開閉されることにより、インナーサイ(太腿内側)をトレーニングするものである。
一方、甲第1号証発明の鍛練装置であるヒップアブダクション(トレーニング装置)は、中殿筋を強化するトレーニングを行うものである。
また、甲第1号証発明は、上記「第5 1.(1)」に示したように、「高齢者がトレーニングを行う際にシートへ着座する際の危険性を解消すること」を目的としており、また、ヒップアブダクション(トレーニング装置)の使用者は、主に高齢者を想定しているといえる。
そして、甲第1号証発明は、「トレーニング者Pの足を載置するための台部24、24に接続されて・・・トレーニング者Pの両脚LR、LLの大腿部下方、膝部近傍の外側に当接し、平坦な部位を形成しているパッド28、28が設けられており」と特定され、つまり使用者(高齢者)は、膝を折り曲げた姿勢でトレーニングを行うものである。
してみると、甲第1号証発明のトレーニング装置は、中殿筋をトレーニングするためのものであって、高齢者がトレーニングを行う際にシートへ着座する際の危険性を解消することを目的とし、甲第2、3、及び7号証発明のトレーニング装置は、インナーサイ(太腿内側)をトレーニングするためのものであって、インナーサイ(太腿内側)の強化を図るものであるから、両者は、トレーニングを行う部位やその目的が異なる。また、甲第1号証発明は、膝を折り曲げた姿勢でトレーニングを行って中殿筋を強化するものであって、膝を伸ばした姿勢でのトレーニングを想定しておらず、また、膝を伸ばした姿勢でのトレーニングを行うことを導き出す根拠も見いだすことはできない。
したがって、甲第1号証発明に甲第2、3、及び7号証発明を適用することは、当業者が容易に想到し得るものではない。
そして、甲第1号証発明において、他に上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとなすことを、当業者が容易に想到し得たといえる根拠も見当たらない。
したがって、甲第1号証発明において、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることについて、当業者が容易に想到し得るものではない。

イ.相違点2について
甲第4号証発明は、それぞれ上記「第5 4.」のとおりであって、甲第4号証発明における「『下肢保持体』、及び『下肢保持パッド31』」は、本件特許発明1における「第1,第2の可動案内部」に、相当し、また、甲第4号証発明における「『下肢保持体』、及び『下肢保持パッド31』」は、支持片54aや支持台55等を介して支持アーム54に接続されて、フレーム22,及び側板22aに対して、回動する、つまり揺動するものである。
また、甲第4号証発明における「下肢保持機構」は、「支持アーム54が上下に回動されて、各下肢保持パッド31が下方位置と、上方位置とに回動配置されて、」「下肢保持体の作動位置を、使用者の個人情報に基づいて制御する」から、下肢保持体の揺動角をそれぞれ調整する第1,第2の揺動角調整機構」といえる。
しかしながら、甲第4号証発明には、本件特許発明1における「第1,第2の連結部」に相当する部材は示されていない。
してみると、甲第4号証発明は、上記相違点2に係る本件特許発明1の「第1,第2の連結部に対して」第1,第2の可動案内部を揺動可能に支持するとの発明特定事項を備えるものではない。
また、甲第1号証発明は、上記「ア.」のとおり、膝を折り曲げた姿勢でトレーニングを行って中殿筋を強化するヒップアブダクション(トレーニング装置)であるのに対し、甲第4号証発明は、被保持者の身体を排泄等の介護作業や診断に適した状態に、安定して姿勢変更することができて、介護作業や姿勢保持を容易に行うことができる人体姿勢保持装置であるから、両者は、その技術分野や目的が異なるものである。そして、甲第1号証には、ヒップアブダクション(トレーニング装置)を介護等の作業に使用できるといった記載や示唆もなく、また、甲第4号証には、人体姿勢保持装置をヒップアブダクション(トレーニング装置)として使用できるといった記載や示唆もない。
してみると、甲第1号証発明に甲第4号証発明を適用することは、当業者が容易に想到し得るものではない。
そして、甲第1号証発明において、他に上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとなすことを、当業者が容易に想到し得たといえる根拠も見当たらない。
したがって、甲第1号証発明において、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることについて、当業者が容易に想到し得るものではない。

なお、請求人は、「甲第4号証において、この発明は、高齢者や身体障害者を介護する場合に必要な人体姿勢保持装置に関するものと記載されている。また、甲第9?11号証に示されているように、本件特許発明のトレーニング装置と同じ技術内容の請求人の製造販売等に係るインナーサイが、高齢者、要介護者、身体障害者用のリハビリ用、治療用マシンとして使用されている。これらのことから、大きくは他の甲号証と同じ技術分野に属する発明である。又、逆に、甲第4号証の発明においても、高齢者、要介護者、身体障害者等の方々のリハビリ用の身体鍛錬装置として使用可能である。」旨主張している(弁駁書3頁12?23行))が、仮に、甲第2、3、及び7号証に示されたトレーニング装置が、高齢者等のリハビリや介護予防を目的として使用していたとしても、このことをもって、甲第2、3、及び7号証に示されたトレーニング装置とは何ら関係がなく、その目的も上記のように異なり、リハビリや介護予防のトレーニング装置として使用できるといった記載や示唆もない甲第4号証に示された人体姿勢保持装置を高齢者等のリハビリや介護予防に使用するという根拠にはならない。また、本件特許明細書にも介護等の作業に使用できるといった記載や示唆もなく、本件特許発明1のトレーニング装置は、甲第2、3、及び7号証に示されたトレーニング装置とは何ら関係のないものであるから、本件特許発明1を高齢者等のリハビリや介護予防に使用するという根拠にはならない。

(2)小括
よって、本件特許発明1についての特許は、無効理由により無効とすることはできない。

2.本件特許発明2ないし5について
(1)本件特許発明2ないし5について検討すると、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1の発明特定事項をその発明特定事項の一部とするものであって、上記「1.」のとおり、本件特許発明1が、当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に本件特許発明2ないし5は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(2)小括
よって、本件特許発明2ないし5についての特許は、無効理由により無効とすることはできない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許発明1ないし5についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-19 
結審通知日 2015-11-24 
審決日 2015-12-07 
出願番号 特願2010-55758(P2010-55758)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
畑井 順一
登録日 2014-02-14 
登録番号 特許第5473687号(P5473687)
発明の名称 トレーニング装置  
代理人 水内 龍介  
代理人 井上 一  
代理人 渡辺 三彦  
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