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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1310250
審判番号 不服2015-8374  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-07 
確定日 2016-01-21 
事件の表示 特願2011- 84595「同軸ケーブル用のシールド端子」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月12日出願公開、特開2012-221661〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年4月6日の出願であって、平成26年12月1日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成27年2月9日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年2月20日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年2月24日)、これに対し、同年5月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成27年5月7日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成27年5月7日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 補正事項
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成27年2月9日付け手続補正書)の請求項1に、

「【請求項1】
芯線と、該芯線の外周を覆う絶縁体と、該絶縁体の外周を覆う編組と、該編組の外周を覆う外皮と、を備えた同軸ケーブルの端末部に接続される同軸ケーブル用のシールド端子であって、
前記同軸ケーブルの端末部の前記外皮を除去して前記編組を露出させた編組露出部に該編組露出部を外側から包み込むように圧着される編組圧着部を有し、
圧着前の前記編組圧着部は、前記編組の載置される底板と、該底板の幅方向両側から延出する一対の編組加締片とを有する断面U字状に形成され、
前記編組の載置される底板と、前記一対の編組加締片のうち少なくとも一方の編組加締片とに、それぞれ、前記編組圧着部を圧着したときに前記編組の一部の入り込む丸孔が設けられ、前記底板の丸孔と前記編組加締片の丸孔とが、前記編組圧着部を前記編組露出部に圧着した状態において前記編組露出部を挟む位置に配置され、前記底板の丸孔と前記編組加締片の丸孔を結ぶ方向が、圧着時に締付力を受ける方向と一致するようにされていることを特徴とする同軸ケーブル用のシールド端子。」
とあったものを、

「【請求項1】
芯線と、該芯線の外周を覆う絶縁体と、該絶縁体の外周を覆う編組と、該編組の外周を覆う外皮と、を備えた同軸ケーブルの端末部に接続される同軸ケーブル用のシールド端子であって、
前記同軸ケーブルの端末部の前記外皮を除去して前記編組を露出させた編組露出部に該編組露出部を外側から包み込むように圧着される編組圧着部を有し、
圧着前の前記編組圧着部は、前記編組の載置される底板と、該底板の幅方向両側から延出する一対の編組加締片とを有する断面U字状に形成され、
前記編組の載置される底板と、前記一対の編組加締片のうち少なくとも一方の編組加締片とに、それぞれ、前記編組圧着部を圧着したときに前記編組の一部の入り込む丸孔が設けられ、前記底板の丸孔と前記編組加締片の丸孔とが、前記編組圧着部を前記編組露出部に圧着した状態において前記編組露出部を挟む位置に配置され、前記底板の丸孔と前記編組加締片の丸孔を結ぶ方向が、圧着時に締付力を受ける方向と一致するようにされ、かつ、前記編組加締め片に形成される前記丸孔の大きさが、前記編組加締め片が前記締付力を前記丸孔がない場合と同等に発揮可能な機械的強度を保てる大きさに形成されていることを特徴とする同軸ケーブル用のシールド端子。」
と補正することを含むものである(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)。

2 新規事項
本件補正によって請求項1に追加された「前記編組加締め片に形成される前記丸孔の大きさが、前記編組加締め片が前記締付力を前記丸孔がない場合と同等に発揮可能な機械的強度を保てる大きさに形成されている」との事項について、請求人は、補正の根拠を明細書の段落【0012】及び段落【0022】に基づくと述べるところ(審判請求書「(2)補正の根拠の明示」の欄)、当該段落には、「【0012】上記(1)の構成のシールド端子によれば、編組圧着部の編組に直接接する壁部に丸孔(形状が円形の孔)を設け、編組圧着部を圧着したときにその丸孔の中に編組の一部が入り込むようにしたので、編組の入り込みの際に規制作用を生じる角部が丸孔には全くない分だけ、全周において均等に編組が丸孔の中に入り込むようになる。従って、丸孔の中に十分に編組を入り込ませることができるようになり、その結果、圧着の際の締付力を特別に増大させずに、芯線の断線のおそれなく、同軸ケーブルに対する固着力のアップを図ることができる。また、編組圧着部の底板と編組加締片の両方に編組の入り込む丸孔を設け、それら丸孔を、編組圧着部を同軸ケーブルの編組露出部に圧着した状態において編組露出部を挟む位置に配置し、底板の丸孔と編組加締片の丸孔を結ぶ方向を圧着時に締付力を受ける方向に設定したので、圧着時に編組を確実に両方の丸孔に入り込ませることができる。つまり、圧着時に圧迫力をいちばん強く受ける位置に丸孔が存在するので、編組が確実に丸孔の中に入り込むようになり、その結果、編組に対するシールド端子の固着力のアップを図ることができる。」(平成27年2月9日付け手続補正書)及び「【0022】このシールド端子30は、編組圧着部36を同軸ケーブル20の編組露出部23Aに圧着し、外皮加締部37を同軸ケーブル20の外皮24の付いた部分に加締めることで、同軸ケーブル20に取り付けられる。その場合、編組圧着部36を編組露出部23Aに圧着した際に、編組23の一部が、図3および図4に示すように丸孔38の中に入り込む。特に、編組23の入り込みの際に規制作用を生じる角部を有する角孔でなくて、角部のない丸孔38が形成されていることにより、全周において均等に編組23が丸孔38の中に入り込む(食い込む)ようになる。従って、丸孔38の中に十分に編組23が入り込むことにより、圧着時の締付力を特別に増大させずに、芯線21の断線のおそれなく、同軸ケーブル20に対する固着力のアップを図ることができる。」と記載されるに止まり、請求項1の上記事項が記載も示唆もされていない。
また、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、丸孔が形成された編組加締片と丸孔がない編組加締片との締付力、機械的強度及び丸孔の大きさを比較する内容が記載されていないから、請求項1の上記事項は、当初明細書等に記載されておらず、しかも、当初明細書等に記載された事項から自明でもない。
そうすると、本件補正は、新たな技術的事項を導入しないということができないから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しない。

3 独立特許要件
次に、本件補正が、特許法第17条の2第3項の規定に適合する場合を予備的に検討する。

本件補正は、発明を特定するために必要な事項である「編組加締片」について「前記編組加締め片に形成される前記丸孔の大きさが、前記編組加締め片が前記締付力を前記丸孔がない場合と同等に発揮可能な機械的強度を保てる大きさに形成されている」ことを限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

請求項1の上記事項について、発明の詳細な説明には、丸孔が形成された編組加締片と丸孔がない編組加締片との締付力、機械的強度及び丸孔の大きさを比較する内容は記載されていない。

そうすると、請求項1の上記事項は、発明の詳細な説明に記載されていないから、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

したがって、本件補正により補正された特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するから、請求項1に記載される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しておらず、仮に適合するとしても、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成27年2月9日付けの手続補正書の請求項1に記載された事項により特定されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2008-287899号公報(以下「刊行物1」という。)には、「外導体端子」に関して、図面(特に、図1ないし図4参照。)と共に次の事項が記載されている。

ア 「【0019】
図1は本発明に係る外導体端子を備えたシールドコネクタ1と同軸ケーブルWのカシメ加工前の外観斜視図を示している。図1(a)はシールドコネクタ1を右斜め後方から見た外観斜視図、図1(b)はシールドコネクタ1を左斜め後方から見た外観斜視図を示している。
【0020】
図示されるように同軸ケーブルWの端末部分に接続されるシールドコネクタ1は、内導体端子2、誘電体3、外導体端子4とで構成される。尚、同軸ケーブルWは、電気信号の伝送路として金属製の複数の素線を撚り束ねた芯線Waと同じく複数の素線を編んだ編組線よりなるシールド導体Wdとの間に絶縁体Wbが介在され、その外周を同じく絶縁性のシースWeで覆った同軸の構造になっている。
【0021】
内導体端子2は、上述した同軸ケーブルWの芯線Waに接続されて高周波信号を伝達するもので、いわゆるメス型と呼ばれる端子形状を有している。この内導体端子2を収容する誘電体3は、所定の誘電率を有する樹脂製の絶縁部材により形成されており、内導体端子2と外導体端子4の導体端子間を絶縁状態にする。図示されるように内導体端子2は、この誘電体3の後方から挿入されて固定される。
【0022】
外導体端子4は、導電性板材の折り曲げ加工により略筒状に形成されており、同軸ケーブルWのシールド導体Wdに接続されて内導体端子2を電磁的にシールドする。この導体端子4の筒状の本体部4a内には、誘電体3が収容可能になっている。そして、外導体端子4の本体部4aの後方には、カシメ加工が施される圧着部5が設けられている。この圧着部5には、上方に開いた一対のシールド導体圧着片6,7と、同じく上方に開いた一対のシース圧着片8,9が設けられている。
【0023】
図示されるようにシールド導体圧着片6,7は圧着部5の下部から上方に向かって延設された帯形状を有している。この場合、左のシールド導体圧着片6の中央には圧着片の長手方向に沿って開口された長孔6aが形成されている。また先端の内側の面にはV溝6bが形成されている。このように左のシールド導体圧着片6に長孔6aとV溝6bを形成することで、シールド導体圧着片6の屈曲に対する機械的強度が右のシールド導体圧着片7の屈曲に対する機械的強度よりも小さくされる。これによりカシメ加工の際に左のシールド導体圧着片6が右のシールド導体圧着片7と突き当たったときにシールド導体圧着片7の内側に折れ曲がるようになる。尚、シールド導体圧着片6に形成された長孔6aは、カシメ加工の際にシールド導体Wdがこの長孔6aに入り込むことで、シールド導体Wdとの固着力を向上させる機能も有している。
【0024】
また、シールド導体圧着片6の先端の外側の面にはテーパ面6cが形成されている。このテーパ面6cは、図4(a),(b)に示すようにカシメ加工の際にシールド導体圧着片7のテーパ面7aに沿ってスライドするためのものである。これによりカシメ加工の際に左のシールド導体圧着片6が右のシールド導体圧着片7と突き当たったときにシールド導体圧着片6が容易に内側に案内される。
【0025】
更に、右のシール導体圧着片7の先端の内側の面にはテーパ面7aが形成されている。
このテーパ面7aは、図4(a),(b)に示すようにカシメ加工の際にシールド導体圧着片7がシールド導体圧着片6のテーパ面6cに沿ってスライドするためのものである。これによりカシメ加工の際にシールド導体圧着片7がシールド導体圧着片6に突き当たったときにシールド導体圧着片7が容易に外側に案内される。
【0026】
尚、シールド導体圧着片6,7の中央位置の圧着部5には、圧着片の長手方向に沿って開口された長孔5aが形成されている。カシメ加工の際にシールド導体Wdがこの長孔5aに入り込むことで、シールド導体Wdとの固着力が向上する。」

イ 「【0032】
図2(a)は、外導体端子4の折り曲げ加工前の展開状態の圧着部5を示しており、外導体端子4は、同軸ケーブルWへのカシメ加工が完了するまで図2(a)に示されるようなリードフレーム20に複数連結された連鎖状端子という状態となっており、カシメ加工後は連結部20aを切断して切り離される。尚、リードフレーム10に穿設された位置決め孔20bは、外導体端子4の折り曲げ加工や同軸ケーブルWへのカシメ加工時の順送りに用いられるものである。」

ウ 「図4は、図3のA-A断面におけるシールド導体圧着片6,7のカシメ加工の工程を順に示している。また、図5は、図3のB-B断面におけるシース圧着片8,9のカシメ加工の工程を順に示している。
【0041】
図4(a)に示されるように、シールド導体圧着片用クリンパ13は、高さの異なる山を2つ連ねたような左右非対称の型内壁面形状を有している。このクリンパ13には、左に深い窪み13a、中央付近に2つの窪みが繋がる突出部13b、その右に浅い窪み13cが形成されている。このようなクリンパ13によって、左右対をなすシールド導体圧着片6,7のそれぞれが屈曲するタイミングをずらされている。これにより、カシメ加工時にそれぞれの先端同士が突き当たってカシメ加工不良となってしまうことが防止されている。」

エ 「【0043】
この場合図4(b)に示されるように、シールド導体圧着片6,7とその上に載置された同軸ケーブルWのシールド導体Wdの上方からクリンパ13が下降し、最初にクリンパ13の浅い窪み13cに、右のシールド導体圧着片6が接触し、浅い窪み13cに沿って内側に屈曲し始める。更にクリンパ13が下降を続けると、クリンパ13の深い窪み13aに左のシールド導体圧着片7が接触し、深い窪み13aに沿って内側に屈曲し始める。このとき、左のシールド導体圧着片7の先端の内側の面にはテーパ面7aが形成され、右のシール導体圧着片6の先端の外側の面にはテーパ面6cが形成されているので、それぞれの先端が突き当たった際には、シールド導体圧着片6が内側に案内され、シールド導体圧着片7が外側に案内される。」

オ 「【0045】
次に図4(c)に示されるように、先に屈曲を始めた右のシールド導体圧着片6の先端は、クリンパ13の中央付近にある突出部13bに案内されて下方に導かれる。更に、遅れて屈曲を始めた左のシールド導体圧着片7の先端は、右のシールド導体圧着片6の上に重なるように屈曲する。そして図4(d)に示されるように、右のシールド導体圧着片6の先端は左のシールド導体圧着片7の下側に、左のシールド導体圧着片7の先端は右のシールド導体圧着片6の上側に、それぞれ左右両方から均等に重なり合ってカシメ加工が完了する。」

カ 図4(a)ないし(d)には、上記ウないしオと合わせみると、シールド導体圧着片6,7及び圧着部5の下部がシールド導体Wdを露出させた露出部に該露出部を外側から包み込むように圧着されることが示されている。

キ 図2(a)及び図4(d)からみて、圧着部5の下部の長孔5aとシールド導体圧着片6の長孔6aとが、シールド導体圧着片6,7及び圧着部5の下部をシールド導体Wdの露出部に圧着した状態において前記露出部を挟む位置に配置され、前記圧着部5の下部の長孔5aと前記シールド導体圧着片6の長孔6aを結ぶ方向が、圧着時に締付力を受ける方向と一致するようにされていることが理解できる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「芯線Waと、該芯線Waの外周を覆う絶縁体Wbと、該絶縁体Wbの外周を覆う編組線よりなるシールド導体Wdと、該シールド導体Wdの外周を覆うシースWeと、を備えた同軸ケーブルWの端末部に接続される外導体端子4であって、
前記同軸ケーブルWの端末部の前記シースWeを除去して前記シールド導体Wdを露出させた露出部に該露出部を外側から包み込むように圧着されるシールド導体圧着片6,7及び圧着部5の下部を有し、
圧着前の前記シールド導体圧着片6,7及び圧着部5の下部は、前記シールド導体Wdの載置される圧着部5の下部と、該圧着部5の下部の幅方向両側から延出する一対のシールド導体圧着片6,7とを有する断面U字状に形成され、
前記シールド導体Wdの載置される圧着部5の下部と、前記一対のシールド導体圧着片6,7のうち一方のシールド導体圧着片6とに、それぞれ、前記シールド導体圧着片6,7及び圧着部5の下部を圧着したときに前記シールド導体Wdの一部の入り込む長孔5a,6aが設けられ、前記圧着部5の下部の長孔5aと前記シールド導体圧着片6の長孔6aとが、前記シールド導体圧着片6,7及び圧着部5の下部を前記露出部に圧着した状態において前記露出部を挟む位置に配置され、前記圧着部5の下部の長孔5aと前記シールド導体圧着片6の長孔6aを結ぶ方向が、圧着時に締付力を受ける方向と一致するようにされている外導体端子4。」

(2)刊行物2
また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2010-61870号公報(以下「刊行物2」という。)には、「端子金具」に関して、図面(特に、図2、図5、図8参照)と共に次の事項が記載されている。

ア 「【0026】
図2に示すように、芯線10に圧着する前の状態においては、ワイヤーバレル17は概ね矩形状をなしている。電線11は、ワイヤーバレル17が芯線10に圧着された状態では、図2における左右方向(矢線Aで示す方向)に延びて配されるようになっている。このときの電線11の延びる方向を第1方向とする。また、ワイヤーバレル17が芯線10に圧着される前の状態において、上記の第1方向と交差する方向を、第2方向とし、図2において矢線Bで示す。
【0027】
ワイヤーバレル17には、芯線10と接触する接触面22が形成されている。ワイヤーバレル17の接触面22には、第1方向(図2において矢線Aで示す方向)と交差する第2方向(図2において矢線Bで示す方向)に延びると共にワイヤーバレル17を貫通する3つの貫通孔23が、第1方向に間隔を空けて並んで形成されている。本実施形態においては、第2方向は、第1方向と直交している。
【0028】
貫通孔23は、ワイヤーバレル17に対して接触面22と反対側(図2における紙面を貫通する方向奥側)から打抜き加工することにより形成される。図3に示すように、貫通孔23の接触面22側の孔縁部には、バリ(エッジに相当)30が突出して形成されている。バリ30の先端縁は鋭く尖った形状をなしている。図2には詳細に示さないが、バリ30は、貫通孔23の孔縁の略全周に亘って形成されている。」

イ 「【0031】
また、図5に示すように、ワイヤーバレル17から圧力が加えられることにより、芯線10が塑性変形し、ワイヤーバレル17の接触面22に形成された貫通孔23内に入り込む。すると、貫通孔23の孔縁に形成されたバリ30と、芯線10の表面と、が摺接することにより、芯線10の酸化膜が剥ぎ取られて芯線10の新生面が露出する。この新生面と、ワイヤーバレル17の接触面22と、が接触することにより、電線11と雌端子金具12との電気的接続を確実なものとなっている。」

ウ 「【0047】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態においては、貫通孔の孔縁にはバリが形成される構成としたが、貫通孔の接触面22側の孔縁に、丸みを帯びてないエッジが形成されていれば、必ずしもバリは必要ではない。
(2)実施形態1においては、ワイヤーバレル17には3つの貫通孔23が形成される構成としたが、これに限られず、貫通孔23は、1つ、2つ、又は4つ以上の複数であってもよい。
(3)実施形態1においては、第2方向は第1方向と直交する形態としたが、これに限られず、第1方向と交差する方向であれば、第2方向は任意の方向としてよい。
(4)貫通孔の形状は、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状等、必要に応じて任意の多角形状としてもよく、また、円形状、楕円形状、長円形状、星形状等、必要に応じて任意の形状としてもよい。図7には、貫通孔54が四角形状をなし、第1方向(図7における矢線Aで示す方向)について間隔を空けて並んで配されると共に、第2方向(図7における矢線Bで示す方向)について間隔を空けて並んで配される構成を示す。また、図8には、貫通孔64が円形状をなし、第1方向及び第2方向についてそれぞれ間隔を空けて並んで配される構成を示す。(省略)」

エ 上記アないしウからみて、刊行物2には、ワイヤーバレルに形成された貫通孔の形状は、任意の多角形状としてもよく、また、円形状、楕円形状、長円形状、星形状等、必要に応じて任意の形状としてもよいことが記載されている(以下「刊行物2に記載された事項」という。)。

3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「芯線Wa」は前者の「芯線」に相当し、以下同様に、「絶縁体Wb」は「絶縁体」に、「編組線よりなるシールド導体Wd」は「編組」に、「シースWe」は「外皮」に、「同軸ケーブルW」は「同軸ケーブル」に、「外導体端子4」は「同軸ケーブル用のシールド端子」に、「前記シールド導体Wdを露出させた露出部」は「前記編組を露出させた編組露出部」に、「シールド導体圧着片6,7及び圧着部5の下部」は「編組圧着部」に、「シールド導体Wdの載置される圧着部5の下部」は「編組の載置される底板」に、「シールド導体圧着片6,7」は「編組加締片」にそれぞれ相当する。

また、後者の「圧着部5の下部の長孔5a」及び「シールド導体圧着片6の長孔6a」と前者の「底板の丸孔」及び「前記編組加締片の丸孔」とは、「底板の孔」及び「編組加締片の孔」という限りで共通する。

したがって、両者は、
「芯線と、該芯線の外周を覆う絶縁体と、該絶縁体の外周を覆う編組と、該編組の外周を覆う外皮と、を備えた同軸ケーブルの端末部に接続される同軸ケーブル用のシールド端子であって、
前記同軸ケーブルの端末部の前記外皮を除去して前記編組を露出させた編組露出部に該編組露出部を外側から包み込むように圧着される編組圧着部を有し、
圧着前の前記編組圧着部は、前記編組の載置される底板と、該底板の幅方向両側から延出する一対の編組加締片とを有する断面U字状に形成され、
前記編組の載置される底板と、前記一対の編組加締片のうち少なくとも一方の編組加締片とに、それぞれ、前記編組圧着部を圧着したときに前記編組の一部の入り込む孔が設けられ、前記底板の孔と前記編組加締片の孔とが、前記編組圧着部を前記編組露出部に圧着した状態において前記編組露出部を挟む位置に配置され、前記底板の孔と前記編組加締片の孔を結ぶ方向が、圧着時に締付力を受ける方向と一致するようにされている同軸ケーブル用のシールド端子。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
「底板の孔」及び「編組加締片の孔」について、本願発明は、それぞれ「丸孔」であるのに対し、引用発明は、それぞれ「長孔」である点。

4 当審の判断
そこで、相違点を検討する。
刊行物2の「ワイヤーバレル17から圧力が加えられることにより、芯線10が塑性変形し、ワイヤーバレル17の接触面22に形成された貫通孔23内に入り込む」(段落【0031】)との記載からみて、刊行物2に記載された事項の「貫通孔」と引用発明の「長孔5a,長孔6a」とは、加締めた際に導体が塑性変形して入り込むという点で共通する。

そうすると、引用発明の「長孔」を刊行物2に記載された事項を参酌して、「丸孔」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明が奏する効果は、引用発明及び刊行物2に記載された事項から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-20 
結審通知日 2015-11-24 
審決日 2015-12-08 
出願番号 特願2011-84595(P2011-84595)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 537- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 内田 博之
冨岡 和人
発明の名称 同軸ケーブル用のシールド端子  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
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