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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21S |
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管理番号 | 1310602 |
審判番号 | 不服2014-8647 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-05-09 |
確定日 | 2016-02-04 |
事件の表示 | 特願2011-519424号「照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月29日国際公開、WO2010/150364〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2009年6月24日を国際出願日とする出願であって、平成25年4月22日付けで拒絶理由が通知され、同年6月26日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月10日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年11月14日に意見書が提出され、平成26年2月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後当審において、平成27年2月23日付けで拒絶理由が通知され、同年4月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月5日付けで拒絶理由が通知され、同年8月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月21日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月23日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?8に係る発明は、平成27年10月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである(なお、本願発明は、平成27年8月21日付けの最後の拒絶理由に対して、誤記の訂正を目的として補正されたものである。)。 「対向する一対の面と前記対向する一対の面を接続する端面とを有する透明材料で形成された導光板と、 前記導光板のいずれか一方の面のみに設けられ、特殊インクを用いて形成された光を拡散させるためのドット状のシルク印刷パターンと、 前記導光板の端面に対向する位置に設けられた光源とを含み、 前記光源からの光は、前記導光板に照射され、前記導光板の一方面および他方面で反射されるとともに、光のうち、前記ドット状のシルク印刷パターンに入射した光はその点で外部へ散乱され、 前記ドット状のシルク印刷パターンは前記光源が設けられた端面からその対向する端面に向かって相互に間隔を開けて設けられ、その間隔は、前記光源側の端面からその対向する端面に向かって小さくなるよう配置され、 前記シルク印刷パターンが設けられた導光板の一方面は、その上に他の部材を設けることなく、そのまま導光板の一方面側および他方面側において発光面として作用し、 且つ、光が前記導光板の全面を透過可能である、照明装置。」 第3 当審が通知した拒絶の理由 当審が通知した平成27年6月5日付けの拒絶の理由は、以下の理由1を含むものである。 [理由1]この出願の請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2008-24592号(特開2009-187718号公報参照)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 第4 当審の判断 1.先願明細書の記載事項 本願の出願日前の特許出願であって、本願の出願日後に公開された特願2008-24592号(特開2009-187718号公報参照)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下それらを併せて「先願明細書」という。)には、次の事項が記載されている。 ア.「【0001】 本発明は、導光板を用いた線状光源装置に関するものである。」(下線は、当審で付与。以下同様。) イ.「【0019】 本例の導光板3は、例えば透光性樹脂部材により構成することができ、・・・」 ウ.「【0025】 図4は、導光板に乱反射機構として平面的パターンを形成した場合の例を示す図である。本例では、平面的パターンは白色シルク印刷10で構成されているが、これに限定されず、他の印刷または塗布でもよい。導光板3とシルク印刷10の間には空気層が介在しないため、導光板3内の光がシルク印刷10に当たった場合、導光板3と空気間の屈折率差は存在しない。したがって、導光板3内からの光がシルク印刷10に当たった場合は、シルク印刷が白色であることから、散乱反射が生じる。よってシルク印刷10が施された面28と対向する側面26の方向に反射された光は、側面26において臨界角以下で入射するため、全反射が生じず側面26より光が射出されることとなる。一方面28に印刷されたシルク印刷に透過性を持つインクを使用すれば、印刷部に当たった光の一部は、シルク印刷を透過することとなり、シルク印刷と空気の屈折率差に支配されて、シルク印刷を透過し面28方向にも光を射出することとなる。本構成によれば面26のみでなく面28にも光を出射する両面発光の光源装置を実現することが可能となる。 ここでシルク印刷10は、背面全面に印刷するものでなく、ドットや線などによって印刷する部分としない部分を存在させる必要がある。印刷がされた部分に当たった光は、前述のように散乱して側面26および面28より射出され、印刷されていない部分に当たった光は全反射が維持され、光源より遠方方向に光が導光されることとなる。入光部(端面25)近傍での印刷面積は少なめにし、徐々に遠方になるにつれ、印刷面積の割合を多めにすることで、すなわち、平面的パターンの面積を端面25から離れるに従って乱反射性を上げるために、例えば粗から密にパターンを配置することで、導光距離に対して均一性の高い発光を得ることが可能となる。」 エ.図4には、以下の図が示されている。 2.先願発明 先願明細書には、段落【0001】(摘示ア)に記載のとおり、「導光板を用いた線状光源装置」について開示されているところ、段落【0025】(摘示ウ)及び図4(摘示エ)の記載によれば、上記「線状光源装置」の構成(一実施の形態)として、 ・導光板3に乱反射機構としての平面的パターンを形成し、該平面的パターンはシルク印刷で構成されていること、 ・前記シルク印刷は、導光板3の一方面28に印刷され、透過性を持つインクを使用することで、側面26とともに側面26と対向する一方面28にも光を射出する両面発光をなすこと、 ・前記シルク印刷は、ドットによって印刷する部分としない部分を存在させること、 ・前記平面的パターンの面積を端面25から離れるに従って乱反射性を上げるために、例えば粗から密にパターンを配置すること、 ・前記導光板3は、対向する一対の面と前記対向する一対の面を接続する端面とを有すること、及び、 ・前記導光板3の端面に対向する位置に光源1が設けられていること、が明らかである。 さらに、先願明細書の段落【0019】(摘示イ)の記載によれば、導光板3は、例えば透光性樹脂部材で形成されるものであるところ、そのような部材を透明材料とすることはかかる技術分野の技術常識であるから(必要ならば、先願明細書の段落【0005】等参照)、 ・導光板3は透明材料で形成されている、と理解することもできる。 以上によれば、先願明細書には、 「導光板3を用いた線状光源装置であって、 前記導光板3に乱反射機構としての平面的パターンを形成し、該平面的パターンはシルク印刷で構成され、 前記シルク印刷は、導光板3の一方面28に印刷され、透過性を持つインクを使用することで、側面26とともに側面26と対向する一方面28にも光を射出する両面発光をなし、 前記シルク印刷は、ドットによって印刷する部分としない部分を存在させ、 前記平面的パターンの面積を端面25から離れるに従って乱反射性を上げるために、例えば粗から密にパターンを配置し、 前記導光板3は、対向する一対の面と前記対向する一対の面を接続する端面とを有し、 前記導光板3の端面に対向する位置に光源1が設けられ、 前記導光板3は、透明材料で形成されている、 導光板3を用いた線状光源装置。」の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているといえる。 3.対比 本願発明と先願発明とを対比する。 ア.先願発明の「導光板3」は、「対向する一対の面と前記対向する一対の面を接続する端面とを有」するものであって、「透明材料で形成されている」ことから、かかる導光板3は、本願発明の「対向する一対の面と前記対向する一対の面を接続する端面とを有する透明材料で形成された導光板」に相当する。 イ.先願発明の「乱反射機構としての平面的パターン」は、「シルク印刷で構成され」、「導光板3の一方面28に印刷され、透過性を持つインクを使用する」ものであり、「ドットによって印刷する部分としない部分を存在させ」て構成されるものであるから、かかる乱反射機構としての平面的パターンは、本願発明の「前記導光板のいずれか一方の面のみに設けられ、特殊インクを用いて形成された光を拡散させるためのドット状のシルク印刷パターン」に相当する。 ウ.先願発明の「光源1」は、「導光板3の端面に対向する位置」に設けられるものであるから、本願発明の「前記導光板の端面に対向する位置に設けられた光源」に相当する。 エ.上記ア?ウを踏まえると、先願発明の「側面26とともに側面26と対向する一方面28にも光を射出する両面発光をなし」とする構成は、その作用、機能に照らして、光源からの光が、導光板3に照射され、導光板3の側面26および一方面28で反射されるとともに、光のうち、乱反射機構としての平面的パターンに入射した光がその点で外部へ散乱され、前記平面的パターンが設けられた導光板の一方面28は、その上に他の部材を設けることなく、そのまま導光板3の一方面28側および側面26において発光面として作用し、且つ、光が前記導光板3の全面を透過可能であることといえるから、本願発明の「前記光源からの光は、前記導光板に照射され、前記導光板の一方面および他方面で反射されるとともに、光のうち、前記ドット状のシルク印刷パターンに入射した光はその点で外部へ散乱され」、「前記シルク印刷パターンが設けられた導光板の一方面は、その上に他の部材を設けることなく、そのまま導光板の一方面側および他方面側において発光面として作用し、且つ、光が前記導光板の全面を透過可能である」ことに相当する。 オ.先願発明の「導光板3を用いた線状光源装置」は、本願発明の「照明装置」に相当する。 以上によれば、本願発明と先願発明とは、 「対向する一対の面と前記対向する一対の面を接続する端面とを有する透明材料で形成された導光板と、 前記導光板のいずれか一方の面のみに設けられ、特殊インクを用いて形成された光を拡散させるためのドット状のシルク印刷パターンと、 前記導光板の端面に対向する位置に設けられた光源とを含み、 前記光源からの光は、前記導光板に照射され、前記導光板の一方面および他方面で反射されるとともに、光のうち、前記ドット状のシルク印刷パターンに入射した光はその点で外部へ散乱され、 前記シルク印刷パターンが設けられた導光板の一方面は、その上に他の部材を設けることなく、そのまま導光板の一方面側および他方面側において発光面として作用し、 且つ、光が前記導光板の全面を透過可能である、照明装置。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。 (相違点) シルク印刷パターンの配設態様について、本願発明は、「前記ドット状のシルク印刷パターンは前記光源が設けられた端面からその対向する端面に向かって相互に間隔を開けて設けられ、その間隔は、前記光源側の端面からその対向する端面に向かって小さくなるよう配置され」ているのに対して、先願発明は、「前記シルク印刷は、ドットによって印刷する部分としない部分を存在させ、 前記平面的パターンの面積を端面25から離れるに従って乱反射性を上げるために、例えば粗から密にパターンを配置し」て構成する点。 4.判断 上記相違点について検討する。 ア.本願発明において、ドット状のシルク印刷パターンを、その間隔が、光源側の端面からその対向する端面に向かって小さくなるよう配置することの意義は、本願明細書の段落【0024】に記載のとおり、光源から離れた位置まで、導光板の両面において均一な光量での照射を可能とするためのものと理解することができる。 イ.他方、先願発明は、「前記シルク印刷は、ドットによって印刷する部分としない部分を存在させ、前記平面的パターンの面積を端面25から離れるに従って乱反射性を上げるために、例えば粗から密にパターンを配置し」て構成されているところ、かかる構成の意義とは、先願明細書の段落【0025】(摘示ウ)に記載のとおり、「導光距離に対して均一性の高い発光を得ること」と理解することができるから、本願発明における「光源から離れた位置まで、導光板の両面において均一な光量での照射を可能とする」という意義と変わるものではない。 ウ.そして、先願発明において、「前記平面的パターンの面積を端面25から離れるに従って乱反射性を上げるために、例えば粗から密にパターンを配置」することとは、言い換えれば、シルク印刷により印刷されるドットを端面25から離れるに従って粗から密に配置すること、すなわち、ドット状のシルク印刷パターンを、その間隔が、光源側の端面からその対向する端面に向かって小さくなるよう配置することと解釈することもできるから、上記相違点は相違点とはならず、したがって、本願発明と先願発明とは同一ということができる。 エ.また、仮にそのように解釈できないとしても、光の分布を均一化するための導光板への模様(ドット)の配設態様として、光源が位置する側の模様(ドット)の間隔を広くしてその面積密度を粗とするとともに、光源から遠くなるほど模様(ドット)の間隔を狭くしてその面積密度が密となるように配設することは、かかる技術分野の周知・慣用の技術であって(必要ならば、特開2001-23422号公報:段落【0025】?段落【0028】、図8Cなど参照)、当業者が技術常識として認知するところの技術ということができるから、先願発明において、「前記平面的パターンの面積を端面25から離れるに従って乱反射性を上げるために、例えば粗から密にパターンを配置」するに際し、ドット状のシルク印刷パターンを、その間隔が、光源側の端面からその対向する端面に向かって小さくなるよう配置することは、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加であって、新たな効果を奏するものではないもの)といえ、したがって、上記相違点は、実質的な相違点ということはできず、本願発明と先願発明とは実質的に同一といえる。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一または実質同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願発明を発明した者と同一ではなく、また本件出願の出願時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-11-24 |
結審通知日 | 2015-12-01 |
審決日 | 2015-12-14 |
出願番号 | 特願2011-519424(P2011-519424) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
WZ
(F21S)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 塚本 英隆 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
平田 信勝 氏原 康宏 |
発明の名称 | 照明装置 |
代理人 | 森下 八郎 |
代理人 | 伊藤 英彦 |
代理人 | 伊藤 英彦 |
代理人 | 吉田 博由 |
代理人 | 吉田 博由 |
代理人 | 森下 八郎 |