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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部無効 2項進歩性  C08L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  C08L
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1310940
審判番号 無効2013-800196  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-10-09 
確定日 2016-01-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5291294号「硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物およびそれを用いた硬質医療用部品」の特許無効審判事件についてされた平成26年4月14日付け審決について,知的財産高等裁判所において当該審決を取り消す旨の判決〔平成26年(行ケ)第10132号,平成27年3月26日判決言渡〕がされ,当該判決は確定したので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 
結論 1 訂正請求書に添付された訂正した明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める。 2 本件審判の請求は,成り立たない。 3 審判費用中,参加によって生じた費用は参加人の,その余の部分は請求人の各負担とする。 
理由 第1 請求
特許第5291294号の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする,審判費用は被請求人らの負担とする旨の審決を求める。

第2 主な手続の経緯等
1(1) 被請求人らは,発明の名称を「硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物およびそれを用いた硬質医療用部品」とする特許第5291294号(請求項の数は7。以下「本件特許」という。)の特許権者である。
(2) 本件特許は,平成19年2月15日にされた特許出願に係るものであって,平成25年6月14日に設定登録された。

2(1) 請求人は,平成25年10月9日,本件特許の全てである請求項1?7に係る発明についての特許を無効とする審決を求める本件審判を請求したところ,被請求人らは,同年12月26日,答弁書を提出した。
(2) 審判長は,平成26年1月20日付けで両当事者に対し口頭審理における審理事項を通知し(審理事項通知書),これに対して,請求人及び被請求人らは,同年2月20日,口頭審理陳述要領書をそれぞれ提出した。
(3) 平成26年3月6日,請求人代理人,被請求人ら代理人の出頭のもと,第1回口頭審理が行われた。

3 特許庁は,平成26年4月14日,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決(以下「第1審決」という。)をし,その謄本は同月24日,請求人に送達された。

4 請求人は,平成26年5月23日,第1審決を不服として知的財産高等裁判所に訴えを提起した(平成26年(行ケ)第10132号)。同裁判所は,平成27年3月26日,「特許庁が,無効2013-800196号事件について,平成26年4月14日にした審決を取り消す」旨の判決を言渡し,この判決(以下「取消判決」という。)は確定した。

5(1) 上記取消判決が確定したことから,特許法181条2項の規定によりさらに審理が行われることとなったところ,被請求人らは,平成27年4月16日,134条の3に基づく申立てをしたので,審判長は,被請求人らに対し,同年5月7日付けで同条に規定する訂正を請求するための期間(通知の発送の日から10日)を指定する通知をした。
(2) 被請求人らは,平成27年5月20日,上申書を提出するとともに訂正請求書を提出して,本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲の訂正(以下「本件訂正」という。)を請求した。
(3) 請求人は,平成27年7月2日,審判事件弁駁書を提出して請求の理由の補正をしたところ,審判長は,同月8日付けで当該補正を許可する旨の決定(以下「補正許可決定」という。)をした。
(4) 被請求人らは,平成27年8月7日,審判事件第2答弁書を提出した。

6 なお,件外砂山麗は,平成27年6月30日,参加申請書を提出し,本件審判について請求人側に参加する旨を申し出たところ,本件の審判官は,同年10月14日付けで上記参加の申請を許可する旨の決定をした。

第3 本件訂正の可否
1 被請求人らの請求の趣旨
結論第1項に同旨。すなわち,願書に添付した明細書及び特許請求の範囲について,訂正請求書に添付された訂正した明細書及び特許請求の範囲のとおりに一群の請求項ごとに訂正することを求める。

2 訂正の要旨
訂正請求書の記載によれば,被請求人らの求める訂正は,実質,以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
請求項1を以下のとおり訂正する。
・ 訂正前
「塩化ビニル系樹脂100重量部に対して,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる組成物であって,
JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上の硬質であることを特徴とする硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。」
・ 訂正後
「塩化ビニル系樹脂100重量部に対して,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる組成物であって,
JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上の硬質であることを特徴とする放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。」

(2) 訂正事項2
請求項2を以下のとおり訂正する。
・ 訂正前
「前記組成物は,さらにシラン化合物が0.2?7重量部配合されており,前記可塑剤がシクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤であり,前記シラン化合物が3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及びビニルトリエトキシシランから選択される少なくとも1つである請求項1に記載の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。」
・ 訂正後
「前記組成物は,さらにシラン化合物が0.2?7重量部配合されており,前記可塑剤がシクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤であり,前記シラン化合物が3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及びビニルトリエトキシシランから選択される少なくとも1つである請求項1に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。」

(3) 訂正事項3
請求項3を以下のとおり訂正する。
・ 訂正前
「前記可塑剤は,アルキルスルホン酸系可塑剤,又は,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤の両方である請求項1に記載の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。」
・ 訂正後
「前記可塑剤は,アルキルスルホン酸系可塑剤,又は,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤の両方である請求項1に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。」

(4) 訂正事項4
請求項4を以下のとおり訂正する。
・ 訂正前
「前記組成物は,さらにシラン化合物が0.2?7重量部配合されている請求項1又は3に記載の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。」
・ 訂正後
「前記組成物は,さらにシラン化合物が0.2?7重量部配合されている請求項1又は3に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。」

(5) 訂正事項5
請求項5を以下のとおり訂正する。
・ 訂正前
「前記シラン化合物は,モノアルコキシシラン化合物,ジアルコキシシラン化合物,トリアルコキシシラン化合物,及びテトラアルコキシシラン化合物から選択される少なくとも一種である請求項4に記載の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。」
・ 訂正後
「前記シラン化合物は,モノアルコキシシラン化合物,ジアルコキシシラン化合物,トリアルコキシシラン化合物,及びテトラアルコキシシラン化合物から選択される少なくとも一種である請求項4に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。」

(6) 訂正事項6
請求項6を以下のとおり訂正する。
・ 訂正前
「前記樹脂組成物は,γ線照射前後のΔYIが20以下である請求項1?5のいずれか1項に記載の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。」
・ 訂正後
「前記樹脂組成物は,γ線照射前後のΔYIが20以下である請求項1?5のいずれか1項に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。」

(7) 訂正事項7
請求項7を以下のとおり訂正する。
・ 訂正前
「請求項1?6のいずれか1項に記載の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工してなる硬質医療用部品。」
・ 訂正後
「請求項1?6のいずれか1項に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工してなる放射線滅菌用かつ硬質医療用部品。」

(8) 訂正事項8
明細書の【発明の名称】を以下のとおり訂正する。
・ 訂正前
「硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物およびそれを用いた硬質医療用部品」
・ 訂正後
「放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物およびそれを用いた放射線滅菌用かつ硬質医療用部品」

(9) 訂正事項9
明細書の段落【0013】を以下のとおり訂正する。
・ 訂正前
「本発明の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物は,塩化ビニル系樹脂100重量部に対して,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる組成物であって,JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上の硬質であることを特徴とする。」
・ 訂正後
「本発明の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物は,塩化ビニル系樹脂100重量部に対して,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる組成物であって,JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上の硬質であることを特徴とする。」

(10) 訂正事項10
明細書の段落【0014】を以下のとおり訂正する。
・ 訂正前
「本発明の硬質医療用部品は,前記の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工してなることを特徴とする。」
・ 訂正後
「本発明の放射線滅菌用かつ硬質医療用部品は,前記の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工してなることを特徴とする。」

(11) 訂正事項11
明細書の段落【0056】を以下のとおり訂正する。
・ 訂正前
「ΔYI値=(照射後YI)-(照射前YI)
3.硬さ測定
(1)ロックウェル硬さ
JIS K7202にJIS K7202に準拠して,ロックウェル硬さ試験機を用いて,試験温度23℃,測定直後のデータを採用。試験片は,ロール/プレス加工にて厚さ6mmのシートテストサンプルを作成し,23℃*50%RHの恒温恒湿室に一昼夜保持した後測定に供した。」
・ 訂正後
「ΔYI値=(照射後YI)-(照射前YI)
3.硬さ測定
(1)ロックウェル硬さ
JIS K7202に準拠して,ロックウェル硬さ試験機を用いて,試験温度23℃,測定直後のデータを採用。試験片は,ロール/プレス加工にて厚さ6mmのシートテストサンプルを作成し,23℃*50%RHの恒温恒湿室に一昼夜保持した後測定に供した。」

3 本件訂正の可否についての判断
(1) 訂正事項1について
ア この訂正は,請求項1に係る発明を特定する事項である「塩化ビニル系樹脂組成物」の用途について,訂正前において「硬質医療用」と特定していたものを「放射線滅菌用かつ硬質医療用」と特定することによって「放射線滅菌用」であることをさらに限定するものであるから,特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。しかも,この用途限定,すなわち上記組成物が「放射線滅菌用」に供されることについては,例えば願書に添付した明細書の【0001】,【0012】,【0015】などに記載がある。
イ よって,訂正事項1の訂正は,特許法134条の2第1項ただし書き1号に掲げる特許請求の範囲を減縮することを目的とし,また願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に違反するものでもないといえる。

(2) 訂正事項2?7について
上記(1)で検討したことと同様の理由により,この訂正は特許法134条の2第1項ただし書き1号に掲げる事項を目的とするものであり,しかも同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に違反するものでもないといえる。

(3) 訂正事項8?10について
この訂正は,明細書の【発明の名称】,【0013】及び【0014】の記載について,特許請求の範囲の記載との整合を図るためのものであり,特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。しかも,この訂正は,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり,また実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないのは明らかであるから,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に違反するものでもない。

(4) 訂正事項11について
この訂正は,明細書の【0056】の記載のうち,訂正前に「JIS K7202にJIS K7202に準拠して」とあったものを「JIS K7202に準拠して」と訂正するものであり,特許法134条の2第1項ただし書き2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。しかも,この訂正は,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり,また実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないのは明らかである。

(5) 小括
上記(1)?(4)のとおり,上記訂正事項1?11に係る訂正は,特許法134条の2第1項ただし書き1号,2号又は3号に掲げる事項を目的とするものであり,しかも同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に違反するものでもない。
よって,結論第1項のとおり,本件訂正を認める。

第4 本件各発明の要旨
上記第3のとおり本件訂正は認容されるから,審決が判断の対象とすべき特許に係る発明は本件訂正後のものである。そして,その要旨は,その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下,請求項の番号に応じて各発明を「本件訂正発明1」などといい,これらを併せて「本件訂正発明」という場合がある。)。
「【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100重量部に対して,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる組成物であって,
JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上の硬質であることを特徴とする放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
前記組成物は,さらにシラン化合物が0.2?7重量部配合されており,前記可塑剤がシクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤であり,前記シラン化合物が3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及びビニルトリエトキシシランから選択される少なくとも1つである請求項1に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
前記可塑剤は,アルキルスルホン酸系可塑剤,又は,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤の両方である請求項1に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項4】
前記組成物は,さらにシラン化合物が0.2?7重量部配合されている請求項1又は3に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項5】
前記シラン化合物は,モノアルコキシシラン化合物,ジアルコキシシラン化合物,トリアルコキシシラン化合物,及びテトラアルコキシシラン化合物から選択される少なくとも一種である請求項4に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物は,γ線照射前後のΔYIが20以下である請求項1?5のいずれか1項に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工してなる放射線滅菌用かつ硬質医療用部品。」

第5 当事者の主張
口頭審理調書及び主張の全趣旨から,当事者の主張は概ね以下のとおりである。

1 無効理由に係る請求人の主張
(1) 本件訂正発明1は,本件出願前に外国において頒布された甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)と同一であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない(以下,この主張を「無効理由1」という。),本件訂正発明は,甲1発明に甲2?9,10の1・2,甲11?16記載の事項を組み合わせることで当業者が容易に発明をすることができたものといえるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない(同「無効理由2」),本件訂正発明は,甲2に記載された発明(以下「甲2発明」という。)に甲1,3?9,10の1・2,甲11?17,18の1・2記載の事項を組み合わせることで当業者が容易に発明をすることができたものといえるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない(同「無効理由3」),本件訂正発明は,甲3に記載された発明(以下「甲3発明」という。)に甲1,2,4?9,10の1・2,甲11?17,18の1・2,甲19?22記載の事項を組み合わせることで当業者が容易に発明をすることができたものといえるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない(同「無効理由4」),本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4項1号に規定する要件(以下「実施可能要件」という場合がある。)に適合しないから,本件訂正発明は特許を受けることができない(同「無効理由5-1」),本件訂正後の本件特許に係る特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号に規定する要件(以下「サポート要件」という場合がある。)に適合しないから,本件訂正発明は特許を受けることができない(同「無効理由5-2」),また,本件訂正後の本件特許に係る特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号に規定する要件(以下「明確性要件」という場合がある。)に適合しないから,本件訂正発明は特許を受けることができない(同「無効理由5-3」)。(審決注:上記無効理由5-3は,補正許可決定により追加されたものである。なお,審判請求書における明確性要件違反の無効主張は,撤回されている(口頭審理調書)。)

(2) そして,上記無効理由1ないし無効理由5-3にはいずれも理由があるから,本件の請求項1?7に係る発明についての特許は,特許法123条1項2号又は4号に該当し,無効とすべきものである。

(3) また,証拠方法として書証を申出,以下の文書(甲1?41)を提出する。
・甲1:国際公開2003/029339号
・甲2:特開2001-207002号公報
・甲3:特開2007-2138号公報
・甲4:特開平7-102142号公報
・甲5:特開平2-43245号公報
・甲6:特表2006-508220号公報
・甲7:特公平5-75782号公報
・甲8:特公昭62-10535号公報
・甲9:「プラスチックス」,株式会社工業調査会,2004年5月号(Vol.55,No.5 第85-94頁)
・甲10の1・2:平成25年3月1日付けで特許庁に提出された刊行物等提出書及びその参考資料
・甲11:特開2004-323756号公報
・甲12:特開2004-131674号公報
・甲13:特開2000-302931号公報
・甲14:特公昭62-10257号公報
・甲15:特開平5-98109号公報
・甲16:特開昭59-8744号公報
・甲17:特開2005-40397号公報
・甲18の1・2:「Hexamoll DINCH(1,2-ジイソノニルシクロヘキサンジカボキシレート)」の製造・販売を行っているドイツのBASF社の2006年10月11日付けニュースリリース及びその日本語版
・甲19:「ふっ素樹脂ハンドブック」,日本弗素樹脂工業会,1980年6月初版,2011年11月改訂12版の抜粋
・甲20:「ふっ素樹脂ハンドブック」,日刊工業新聞社,1990年11月30日初版第1刷の抜粋
・甲21:1999年12月30日付け「欧米におけるフタル酸エステル使用削減の動き」と題するインターネット上のウェブサイトの記事
・甲22:「Technical Data Sheet Hexamoll(R) DINCH」と題する2005年12月にBASF社により発行されたDINCHの使用説明書
・甲23:「JISハンドブック プラスチックI試験 2007」,財団法人日本規格協会,2007年1月19日第1版第1刷の抜粋(K7202-2の項)
・甲24:「硬質塩化ビニル板加工技術便覧」,株式会社工業調査会,1962年4月25日の抜粋
・甲25:特開昭58-152040号公報
・甲26:特開昭61-73747号公報
・甲27:特開2000-94447号公報
・甲28:特開2012-167232号公報
・甲29:特開2004-331585号公報
・甲30:「Hexamoll(R) DINCH(R) 【BASF社製】 ?REACH規制対応 非フタル酸系可塑剤?」と題するインターネット上のウェブサイトの記事
・甲31:「やさしいプラスチック製医療器材」,株式会社三光出版社,平成14年2月12日第3版の抜粋
・甲32:平成14年10月17日付け「ポリ塩化ビニル製の医療用具から溶出する可塑剤(DEHP)について」と題するインターネット上のウェブサイトの記事
・甲33の1:2014年7月16日付け「結果報告書」,株式会社DJK横浜ラボラトリーズ作成
・甲33の2:平成26年7月31日付け「試験報告書」,一般財団法人化学研究評価機構高分子試験・評価センター作成,No.T-14002613-001-1
・甲33の3:平成26年7月31日付け「試験報告書」,一般財団法人化学研究評価機構高分子試験・評価センター作成,No.T-14002614-001
・甲33の4・5・6:2014年07月18日付け「放射線照射証明書」,ラジエ工業株式会社作成
・甲34:「医療用高分子材料の展開」,株式会社シーエムシー出版,2003年12月22日普及版第1刷発行の抜粋
・甲35:国際公開2008/032583号
・甲36:「可塑剤 -その理論と応用-」,株式会社幸書房,昭和48年3月1日初版第1刷発行の抜粋
・甲37:「放射線滅菌の現状と展望」,細渕和成,RADIOISOTOPES,46,859-877頁,1997年11月
・甲38:「MEDICAL DEVICES CATALOGUE 2014」の抜粋
・甲39:米国特許公開第2006/0270765号公報
・甲40:「ニプロ輸液セット」と題するインターネット上のウェブサイトの記事
・甲41:Rainer Otter博士作成の「The Choice of Prasticizer for Medical Applications」と題するMedical Plastics 2005における講演資料

2 被請求人らの主張
(1) 本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする旨の審決を求める。請求人主張の無効理由1ないし5-3は,いずれも理由がない。

(2) また,証拠方法として書証を申出,以下の文書(乙1?6)を提出する。
・乙1の1・2:特許庁作成の「特許・実用新案 審査基準」の抜粋
・乙2:「プラスチック製医療機器入門」,株式会社三光出版社,平成17年4月28日新版の抜粋
・乙3:平成15年5月付け「医薬品・医療用具等安全性情報189号」と題するインターネット上のウェブサイトの記事
・乙4:平成26年7月31日付け「試験報告書」,一般財団法人化学研究評価機構高分子試験・評価センター作成,No.T-14002613-001
・乙5:平成26年11月17日付け「陳述書」,一般財団法人化学研究評価機構 高分子試験・評価センター 高分子・製品安全試験課 岡田広毅作成
・乙6:特表2006-523737号公報

第6 当合議体の判断
当合議体は,本件特許に係る本件訂正発明について,以下述べるように,無効理由1?無効理由5-3にはいずれも理由はないと解する。

1 上記取消判決の拘束力について
(1) 審決を取り消す旨の判決の拘束力は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたる(最三小平成4年4月28日判決,民集46巻4号245頁)。
また,知的財産高等裁判所平成23年9月8日判決(平成22年(行ケ)第10404号)は,無効審判請求不成立審決の取消判決の確定後,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には,当該訂正によっても影響を受けない範囲における認定判断については格別という余地があるとしても,訂正前の特許請求の範囲に基づく発明の要旨を前提とした取消判決の拘束力は遮断され,再度の審決に当然に及ぶということはできないと判示する。

(2) 本件においては,無効審判請求不成立審決の取消判決の確定後の審判において,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正請求を認容する判断がされる場合における拘束力の範囲が問題となる。本件は,上記(1)の知的財産高等裁判所判決に係る事案のような訂正審決が確定した場合のものではなく,訂正請求を認容する判断がされる場合についてのものではあるが,本件のような場合,発明の進歩性についての審理が訂正後の特許請求の範囲の記載に基づいて認定される発明の要旨を前提に行われるものであることからすれば,その拘束力の範囲は,上記判示内容と同様に,当該訂正によっても影響を受けない範囲における認定判断については格別という余地があるとしても,訂正前の特許請求の範囲に基づく発明の要旨を前提とした取消判決の拘束力は遮断され,再度の審決に当然に及ぶということはできないとするのが相当である。
以下,上記を踏まえ判断する。

2 本件訂正発明について
(1) 本件訂正発明の要旨
上記第4で認定のとおりである。

(2) 本件訂正発明の解決課題や技術的意義など
ア 本件訂正発明について,本件訂正後の明細書(以下「本件訂正明細書」という。)には,次の記載がある。(下線は審決で付記。以下同じ。)
「【技術分野】
本発明は,γ線または電子線による放射線滅菌方法に対して優れた変色安定性を有する硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物,およびそれを用いた硬質医療用部品に関するものである。」(【0001】)
「【背景技術】
医療用部品は,(1)重金属等の溶出などによって人体に害を及ぼすことがないこと,(2)医療現場において使い勝手が良いこと,(3)使用時まで無菌性が保たれていること,(4)内部液の状況が確認できることなどが必要とされる。…
従来,これらの医療用部品は,高度に滅菌される必要性から,主にエチレンオキサイドガス(EOG)を用いて滅菌されてきた。しかしながら,滅菌後の残存EOGガスに発がん性があるために,安全性の観点からEOGガス滅菌に替えて,高圧蒸気滅菌へ移行している。これらEOG滅菌,高圧蒸気滅菌という滅菌方法では,包装品を一袋ごとに個々に滅菌する必要があり,滅菌作業に多大な手間と時間がかかるという問題があった。滅菌作業の迅速化を図るため,1980年以降,梱包後の滅菌が可能で,コスト低減につながるコバルト60-γ線滅菌(以下γ線滅菌)や,電子線滅菌といういわゆる放射線滅菌への転換が急速に進展してきている。放射線滅菌のうち,電子線滅菌は短時間に大量の部品を滅菌処理できるという利点があるが,透過力が小さく,滅菌が不均一になりがちであり,滅菌にロットぶれが発生し易いという問題がある。他方,γ線滅菌は照射時間が長いため,滅菌が均一に行われるという利点があるが,部品の色調変化が著しいという問題がある。
これら放射線滅菌による色調変化は,変色のために医療用部品の色調を識別できなくなり,部品間違いなどの医療事故を誘発する原因になる可能性がある。そのため,放射線滅菌によって変色する材料は,医療用部品として使用することができなかった。」(【0002】?【0006】)
「【発明が解決しようとする課題】
本発明は,前記従来の問題を解決するため,放射線照射滅菌処理,特にγ線照射滅菌しても変色を著しく低減し,耐放射線性に優れ,かつ硬さ,溶出性に優れた硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物,及び前記組成物を成形した硬質医療用部品を提供する。」(【0012】)
「【課題を解決するための手段】
本発明の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物は,塩化ビニル系樹脂100重量部に対して,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる組成物であって,JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上の硬質であることを特徴とする。
本発明の放射線滅菌用かつ硬質医療用部品は,前記の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工してなることを特徴とする。」(【0013】?【0014】)
「【発明の効果】
本発明の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物は,放射線滅菌(電子線滅菌,γ線滅菌)した際の変色が少なく,溶出性に優れ,前記組成物にて製品化された硬質医療用部品は,放射線滅菌(電子線滅菌,γ線滅菌)した際の変色が少なく,溶出性に優れた硬質医療用部品となる。」(【0015】)
「【発明を実施するための最良の形態】
本発明者らは,耐放射線性(特に,耐γ線性)と配合剤との関連を検討し,塩化ビニル系樹脂と特定の可塑剤を必須成分とした硬質組成物であって,ロックウェル硬さを特定の範囲に選択することにより,耐放射線性と溶出性のバランスに極めて優れた硬質医療用組成物が得られることを見出し本発明を完成したものである。
本発明は,塩化ビニル系樹脂100重量部に対して,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる組成物であって,JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物,及びこの樹脂組成物を成形加工した硬質医療用部品である。これにより,耐放射線性と溶出性のバランスに優れた硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を提供するものであり,滅菌時の変色がなく,溶出性,表面性,キンク性,耐薬品性などに優れた硬質医療用部品を提供できる。
前記において,JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上であれば,硬質を意味する。
可塑剤の中でもシクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤および/またはアルキルスルホン酸系可塑剤が極めて溶出性と耐γ線性のバランスが優れ,また特に,前記組成物にシラン化合物を0.2?7重量部配合することにより,滅菌時の変色に対して極めて優秀な抵抗性を有する硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物および硬質医療用部品を提供する。」(【0016】?【0019】)
「本発明に用いられる塩化ビニル系樹脂とは,従来の公知の塩化ビニル系樹脂であって,例えば,塩化ビニル単独重合体である塩化ビニル樹脂,塩化ビニルと共重合し得る他のモノマーとを共重合させた塩化ビニル系共重合樹脂,たとえば塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂,塩化ビニル-ステアリン酸ビニル共重合樹脂などの塩化ビニルとアルキルビニルエステルとの共重合樹脂,塩化ビニル-エチレン共重合樹脂,塩化ビニル-プロピレン共重合樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類との共重合樹脂,塩化ビニルと(メタ)アクリル酸またはそのエステルとの共重合樹脂,塩化ビニルとフマル酸エステルとの共重合樹脂,塩化ビニルとアルキルビニルエーテルとの共重合樹脂も用いる事ができ,これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。」(【0021】)
「本発明において使用する可塑剤は,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1?15重量部以下の範囲で配合する。この範囲であれば,硬質医療用部品に要望される硬さを確保できる。成形性とのバランスを考慮すると,8?15重量部の範囲がさらに好ましい。
中でも特に,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤が耐γ線性,溶出性のバランスの観点で極めて好適である。また,これを主たる可塑剤とし,他の可塑剤を従たる可塑剤にすることにより,耐放射線性と硬さと溶出性のバランスを優れた範囲にできる。ここで「主たる」とは,50重量%以上をいう。
本発明で使用できるアルキルスルホン酸系可塑剤としては,例えば,アルキルスルホン酸フェニルエステル,N,n-ブチルベンゼンスルホンアミドなどが例示される。中でも,アルキルスルホン酸フェニルエステルが好適である。
本発明に使用できるシクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤としては,ジイソノニルシクロヘキサンジカルボキシレート,ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート,ジエチルシクロヘキサンジカルボキシレート,ジ-2-エチルヘキシルシクロヘキサンジカルボキシレートなどが例示される。中でも,ジイソノニルシクロヘキサンジカルボキシレート,ジ-2-エチルヘキシルシクロヘキサンジカルボキシレートが好適である。」(【0023】?【0026】)
「本発明に於いては,シラン化合物を併用することにより,耐放射線性(耐γ線性)と溶出性とのバランスをさらに改善することができ,アルコキシシラン化合物,クロロシラン化合物,アセトキシシラン化合物,オルガノシラン化合物などのシラン化合物を使用できる。シラン化合物の添加量は,塩化ビニル系樹脂100重量部に対し,0.2?7重量部が良い。シラン化合物の添加量が0.2?7重量部の範囲であると耐放射線性(耐γ線性)の改善効果とロックウェル硬さ,溶出性,配合コストなどとのバランスが最適な領域を選択できる。シラン化合物のさらに好ましい添加量は,塩化ビニル系樹脂100重量部に対し,1.5?3.5重量部である。」(【0027】)
「本発明に規定するロックウェル硬さ(Rスケール)とは,JIS K7202に規定されている硬さであり,前記JISに準拠して23℃の温度で測定した値であるが,硬質医療用部品を製造するには,前記硬さが35°以上となる組成物を使用する。特に前記硬さが60°以上の範囲が好適である。
前記硬さが35°以上の組成物を硬質医療用部品に適用すると,部品が折れ曲がったりして,内容物の液流が妨げられるなどの不具合を発生することもなく,バルブ性能,チューブ連結作業性なども良好に維持される。
また,前記ロックウェル硬さは,γ線照射前の硬さもγ線照射後の硬さも35°以上に維持されるのが良い。また硬さの変化(Δ硬さ)は,あまり大きな変化がない方が好ましく,特に限定されるものではないが20°以下であることが特に好ましい。
本発明で耐放射線性の評価に用いたγ線照射前後のYI値の差(ΔYI)とは,実施例の「耐放射線性の評価」の項でさらに詳細に述べるが,シート状のテストサンプルにγ線を照射する前のYI値とγ線照射後のYI値の差を求めたもので,変色の程度を評価するパラメータとして定義したものである。」(【0033】?【0036】)
「本発明においては,配合剤として従来公知の液状配合剤を必要に応じて使用することができるが,その液状配合剤の使用量は,ロックウェル硬さの制限を考慮して塩化ビニル系樹脂100重量部に対して,15重量部以下が好ましい。15重量部を越えるとロックウェル硬さを35°以上に維持することが難しくなり,硬質医療用部品としての機能を損なう場合がある。液状配合剤の代表として例えば熱安定剤,安定化助剤などがあげられ,従来公知の液状配合剤を適宜選択して使用できる。」(【0038】)
「本発明における医療用部品とは,薬事法第2条第4項および薬事法施行令第1条に定義され,別表第1に定められている機械器具のうち,特に,17,18,19,20,47,48,51,56などに定義される機械器具の連結部材,バルブなどを示す。具体的には,血液バッグ,輸液バッグ,廃液バッグ,輸液セット,輸血セット,成分採血システム,白血球除去フィルター,血液回路システム,人工透析回路,人工心肺システム,翼付針などの機械器具の連結部品,バルブ,サイドキャップなどとして使用される部品,あるいは真空採血管,注射器などを意味する。本発明の硬質医療用塩化ビニル樹脂組成物は,特に,血液バッグ,輸液バッグ,輸液セット,輸血セット,血液回路システムの連結部品,バルブ,サイドキャップにおいて極めて好適に使用される。」(【0049】)
「…(実施例1?4,比較例1?7)
表1の配合処方に基づき,硬質配合系での可塑剤添加効果を調べた。各成分を計量し,全ての成分を一括してハンドミキシングし,このブレンド物を表面温度160℃に制御した2本ロールに投入して,5分間混練した。得られたロールシートを所定の大きさに切断して,プレス成形機にて,所定の厚さのシートを作成した。プレス条件は,170℃予熱2分,加熱2分後,冷却プレスにて5分とした。得られたシートを耐放射線性などの各測定に供した。
比較例1?2は,従来の硬質医療用塩化ビニル樹脂組成物として提案されているエポキシ系可塑剤を使用した配合系であるが,比較例1は,溶出性はギリギリ合格範囲であるが,ΔYIが不合格となり,比較例2は,ΔYIは合格,溶出性はギリギリ合格となるが,硬さが不合格となる。比較例3?5は,軟質医療部品に使用されている一般的な可塑剤であるDOPあるいはTOTMを各々10重量部,または可塑剤なし(無可塑)にした配合系であるが,ΔYI値が硬質用途範囲外となり不合格となった。
実施例1,2は,ジイソノニルシクロヘキシルジカルボキシレートを使用し,実施例3,4は,アルキルスルホン酸フェニルエステルを使用した配合系であるが,溶出性にも優れ,耐γ線性にも優れ,ロックウェル硬さも医療用組成物としての性能を具備している。中でも,実施例1,2に用いたジイソノニルシクロヘキシルジカルボキシレートは,溶出性が抜群に優れており医療用組成物として優れていることが判る。
また,比較例6,7は,ジイソノニルシクロヘキシルジカルボキシレートあるいはアルキルスルホン酸フェニルエステルを多量に添加した配合系であるが,19重量部以上添加すると,ロックウェル硬さを硬質組成物に要望される範囲を維持できなくなり不合格となった。
以上の実験結果から,硬質医療用途に必要とされるロックウェル硬さを具備するには,可塑剤量は19重量部未満であることが判り,これら可塑剤の中でも,ジイソノニルシクロヘキシルジカルボキシレートとアルキルスルホン酸フェニルエステルが医療用組成物として好適であることが判った。
以上の条件及び結果を表1にまとめて示す。表1中の材料の数値は重量部を示す。」(【0057】?【0062】)
「【表1】

」(【0063】)
「(実施例5?18,比較例8)
表2?3の配合処方に基づき,硬質配合系でのシラン化合物の種類,添加量効果を調べた。各成分を計量し,全ての成分を一括してハンドミキシングし,このブレンド物を表面温度160℃に制御した2本ロールに投入して,5分間混練した。得られたロールシートを所定の大きさに切断して,プレス成形機にて,所定の厚さのシートを作成した。プレス条件は,170℃予熱2分,加熱2分後,冷却プレスにて5分とした。得られたシートを耐放射線性などの各測定に供した。
比較例8は,軟質樹脂の例である。シラン化合物(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)の添加量を18重量部と大巾に増やした配合系であるが,ΔYIは極めて小さくなって耐放射線性が改善されるものの,ロックウェル硬さが35°以下となり硬質ではなくなるうえ,溶出性が不合格となって硬質組成物として使用できないことが判る。
3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランの添加量を変化させた実施例5?14から,ロックウェル硬さと耐γ線性,溶出性のバランスを考慮し,シラン化合物の最適な添加範囲は0.2?7重量部であることが判る。
実施例7,10,12の比較から,ロックウェル硬さはいずれも合格範囲で,耐γ線性,溶出性の観点で,ビニルトリエトキシシラン,テトラエトキシシランが優れ,特にビニルトリエトキシシランがこれらの性能バランス的に極めて優れていることが判る。
実施例13?14は,可塑剤の配合を1重量%まで下げてもロックウェル硬さはいずれも合格範囲で,耐γ線性,溶出性を満足することが確認できた。
実施例15?16は可塑剤の混合系,実施例17?18はさらにシラン化合物の混合系の配合を調べたが,いずれもロックウェル硬さはいずれも合格範囲で,耐γ線性,溶出性を満足することが確認できた。
以上の条件及び結果を表2?3にまとめて示す。表2?3中の材料の数値は重量部を示す。」(【0064】?【0070】)
「【表2】

」(【0071】)
「【表3】

」(【0072】)
イ 上記アの摘記から,本件訂正発明(特に,硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物)について,概ね次のことがいえる。
(ア) 医療用部品は,重金属等の溶出などによって人体に害を及ぼすことがないこと,医療現場において使い勝手が良いこと,使用時まで無菌性が保たれていること,内部液の状況が確認できることなどが必要とされる。そして,医療用部品は,高度に滅菌される必要性から,滅菌作業の迅速化を図るため,従来,梱包後の滅菌が可能でコスト低減につながるコバルト60-γ線滅菌や電子線滅菌といういわゆる放射線滅菌が急速に普及してきているが,当該放射線滅菌には照射後の医療用部品の色調変化が著しいという問題があった。
(イ) 本件訂正発明の樹脂組成物は,放射線照射滅菌処理,特にγ線照射滅菌しても変色を著しく低減し,耐放射線性に優れかつ硬さ,溶出性に優れた放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を提供することを解決課題とするものであり,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤および/またはアルキルスルホン酸系可塑剤が溶出性と耐γ線性のバランスに優れた可塑剤であること,上記可塑剤を塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1?15重量部以下の範囲で配合すれば硬質医療用部品に要望される硬さを確保できるが,15重量部を超えるとロックウェル硬さを35°以上に維持することが難しくなることといった知見のもと,塩化ビニル系樹脂100重量部に特定の可塑剤(シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤)を1重量部以上15重量部以下配合することで,上記課題を解決するものである。
そして,特に実施例1?4と比較例1,3?4との対比からみて,本件訂正発明は,上記特定の可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなることで,その他の可塑剤(エポキシ化大豆油など)を配合したものに比し,少なくともγ線照射に対し変色を低く抑えることができるといった耐放射線性の点で有利な効果を奏するものであるといえる。
(ウ) なお,本件訂正明細書には,シラン化合物の添加量が18重量部のとき(比較例8),ロックウェル硬さが35°以下となり硬質ではなくなるうえ,溶出性が不合格となって硬質組成物として使用できなくなる旨の記載(【0065】)があることから,本件訂正後の請求項1に記載の「塩化ビニル系樹脂100重量部に対して,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる組成物」が,直ちに「JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上の硬質」という性状を呈することにはならず,また溶出性に優れたものであるとはいえないものの,実施例5?12と比較例8との対比ならびに【0027】などの記載を併せ総合すると,当該組成物を「ロックウェル硬さ35°以上の硬質」とし,また溶出性に優れたものとするにあたっては,シラン化合物の配合量を0.2?7重量部の範囲で適宜調整すればよいことを当業者は容易に理解するといえる。

3 証拠について
(1)ア 甲1の記載
本件特許に係る出願前に外国において頒布された刊行物である甲1には,概ね,次の記載がある(以下の適示は,審判請求書の日本語訳による。)。
「今般,我々は,ポリ塩化ビニル組成物においてシクロヘキサン酸エステルを可塑剤として使用することにより,フタル酸エステルを可塑剤として使用する際に得られる機械的性質と同等の機械的性質を有する組成物を生成するのに必要なポリ塩化ビニルの量を削減し得ることを見出した。」(11頁22?26行)
「本発明は,可塑化ポリ塩化ビニル材料の範囲にわたって適用可能である。本発明は,ポリ塩化ビニル100部につき10?40部,好ましくは15?35部,より好ましくは20?30部の可塑剤を典型的に含有する半硬質ポリ塩化ビニル組成物の生成に適用可能である。本発明はまた,ポリ塩化ビニル100部につき40?60部,好ましくは44?56部,より好ましくは48?52部の可塑剤を典型的に含有する軟質ポリ塩化ビニル組成物,および,ポリ塩化ビニル100部につき70?110部,好ましくは80?100部,より好ましくは90?100部の可塑剤を典型的に含有する高軟質組成物にも適用可能である。部は重量部である。」(13頁10?19行)
「半硬質組成物は,典型的には,パイプ,幾つかのワイヤおよびケーブルコーティング,床タイル,ブラインド,フィルム,血液バッグならびに医療用チューブの製造用に使用される。軟質組成物は,典型的には,シート,椅子張り,医療用チューブ,庭用ホース,プールライナー,ウォーターベッドなどの製造用に使用される。高軟質組成物は,張地,おもちゃ,靴底などの製造に使用される。シクロヘキサンポリカルボン酸エステルは,血液バッグおよび医療用チューブなどの医療用物品の製造,ならびにおもちゃおよびボトルキャップやフィルムなどの食品接触用材料において特に有用であり,これらにはフタル酸ジー2-エチルヘキシルが伝統的に使用されており,その毒性に関していくつかの懸念事項がある。」(14頁2?11行)
「我々はまた,シクロヘキサンポリカルボン酸エステルが,ポリ塩化ビニル組成物中で可塑剤として使用される際に,紫外線安定性の向上をもたらすことを見出した。この安定性の向上は,特に日光に曝される環境下でのポリ塩化ビニル製材料の長寿命化につながる。本出願全体にわたって,紫外線安定性は,ASTM G53-84であるQUV試験において測定される。これは,可塑化ポリ塩化ビニル組成物が屋外用途に用いられる場合にとりわけ有用である。具体的に,これは,屋根材,ターポリンおよびテント,接着テープや農業用フィルムなどのフィルム類,靴ならびに自動車内装などの用途に有用である。故に,更なる実施形態において,本発明は,1以上のシクロヘキサンポリカルボン酸エステルを可塑剤として含有する可塑剤組成物を,ポリ塩化ビニル100部につき20?100重量部,好ましくは30?90重量部,より好ましくは40?80重量部,より好ましくは50?70重量部含有する可塑化ポリ塩化ビニル組成物を提供するものであり,前記組成物は,QUV試験において,SOLVIC367ポリ塩化ビニル100部,可塑剤50部,Durca1炭酸カルシウム充填剤5部およびLZB320安定剤2部を含有する処方物中で456時間にわたり発色性が低いことによって表される紫外線安定性を有する。」(15頁5?21行)
「BASFが最近発表したHexamo11DINCH製品は,本発明において使用可能なシクロヘキサンジカルボン酸エステルの一例である。米国特許第6,284,917号(BASF)は,これら材料を調製し得る1つの方法を例証している。」(15頁26行?16頁2行)
「紫外線に対するフィルムの安定性をQUV(サイクル:UV(60℃×4時間),凝縮(50℃×4時間))において試験した。安定性の欠如は,フィルムサンプルの暗色化により表される。サンプルの色の評価は,試験の220時間後,456時間後,626時間後,794時間後および1056時間後に行った。」(16頁11?15行)
「サンプルの色を表3に示す。シクロヘキサン酸エステルをベースとする処方物の方が,相当するフタル酸エステルをベースとする処方物よりも,経時的に暗色化しなかったことが分かる。」(16頁下から2行?17頁1行)


」(17頁)
「794時間後,フタル酸エステルとシクロヘキサン酸エステルとの差がなくなり始めるが,その試験時間の後でも,DEHCHおよびDINCHを含有するサンプルは,相当するフタル酸エステルを含有するフィルムよりも性能が優れていた。」(17頁下から2行?18頁2行)
イ 甲1に記載された発明
上記アにおける摘記から,甲1には,次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める(上記取消判決の拘束力)。
「可塑剤としてのシクロヘキサンポリカルボン酸エステルをベースとするポリ塩化ビニル組成物であって,
フタル酸エステル可塑剤をベースとする組成物と同等のショア硬度および引張強度を有し,
フタル酸エステル可塑剤を使用する場合よりも必要とするポリ塩化ビニルの量が少なく,
ポリ塩化ビニル100部につき10?40部の可塑剤を含有し,
典型的には,パイプ,幾つかのワイヤおよびケーブルコーティング,床タイル,ブラインド,フィルム,血液バッグならびに医療用チューブの製造用に使用される,
半硬質ポリ塩化ビニル樹脂組成物。」

(2)ア 甲2の記載
本件特許に係る出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲2には,次の記載がある。
「…【請求項5】 1,2-シクロヘキサンジカルボン酸若しくはその無水物と,炭素数9の分岐鎖のアルコールを必須成分とする炭素数4?13の脂肪族一価混合アルコールとをエステル化反応して得られる1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルであって,前記脂肪族一価混合アルコール中の炭素数9の分岐鎖のアルコールの含有率が70?97重量%であり,炭素数9の分岐鎖のアルコール以外のアルコールの含有率が3?30重量%である1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルを含有する塩化ビニル系樹脂組成物。…
【請求項9】 請求項5?8のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物を含んでなる成形体。」(【特許請求の範囲】)
「【従来の技術】塩化ビニル系樹脂には,その加工性の改良及び製品に柔軟性その他性能を付与する目的で,例えばフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)及びフタル酸ジイソノニル(DINP)に代表されるフタル酸エステル系の塩化ビニル用可塑剤が汎用的に使用されている。
最近,化学物質の環境問題がクローズアップされている中で,可塑剤分野においては非フタル酸エステル系可塑剤(以下,非PAE系可塑剤という)が市場で望まれる傾向になってきた。これまで,非PAE系可塑剤としては,アセチルクエン酸トリブチル(以下,「ATBC」という)やアジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(以下,「DOA」という),トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル(以下,「TOTM」という)等の塩化ビニル用可塑剤が知られているが,これらの可塑剤の性能をフタル酸エステル類の性能と比較した場合,ATBCは耐熱性が不足しており,DOAは耐寒性に優れるものの相溶性が悪く,また,TOTMは耐熱性は良いが可塑化効率に劣るという問題があった。
一方,シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル系の可塑剤は,過去に文献に記載されているが(例えば,「可塑剤」,村井孝一編,幸書房出版,245頁,昭和48年),該可塑剤は,塩化ビニル系樹脂との相溶性,塩化ビニル系樹脂組成物としたときの樹脂の耐熱性,耐揮発性,相溶性及び塩化ビニル樹脂ペーストとしたときの長期保存安定性等の欠点を有し,可塑剤としての総合バランスに欠けることから実用化には至っていなかった。」(【0002】?【0004】)
「【発明が解決しようとする課題】本発明は,上記の従来の問題点を解決し,塩化ビニル系樹脂用可塑剤に必要とされる諸特性を具備し,且つ,耐熱性,耐揮発性,耐寒性,樹脂への相溶性等の可塑剤としての総合バランスに優れたシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル系可塑剤を提供するとともに当該可塑剤を配合して得られる塩化ビニル系樹脂組成物,更には塩化ビニル系樹脂成形体を提供することを目的とする。」(【0005】)
「【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記の実状に鑑み鋭意検討を行った結果,シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルのなかでもそのエステルの構成アルコールとして炭素数9の分岐鎖のアルコールを必須成分とし,炭素数9の分岐鎖アルコール以外のアルコールを特定の範囲で組み合わせて調製したシクロヘキサンジカルボン酸混基エステル化合物を可塑剤として用いた場合,得られた塩化ビニル系樹脂組成物は耐揮発性,耐寒性,耐熱性及び相溶性に優れることを見いだした。更に,炭素数9の分岐鎖のアルコールにおいて,メチル分岐鎖の数及び分布を特定の範囲で選択したエステルが,塩化ビニル樹脂ペーストゾルとしたときの粘度が低く,樹脂の加工性に優れ,又,且つ経時的な粘度上昇が少なく,よって長期保存安定性に優れ,又,耐揮発性,耐寒性,耐熱性,相溶性等を兼ね合わせた可塑剤として,性能バランスにより優れた可塑剤となりうることを見いだし,係る知見に基づいて本発明を完成するに至った。」(【0006】)
「本発明の塩化ビニル系樹脂組成物における本エステル類の含有量としては,その用途に応じて適宜選択されるが,通常,塩化ビニル系樹脂100重量部に対し,1?100重量部であり,好ましくは5?50重量部である。1重量部未満では所定の可塑化効果が得られにくく,100重量部を越えて配合した場合には,成形品表面へのブリードが激しく,いずれの場合も好ましくない。但し,上記の塩化ビニル系樹脂組成物に対して充填剤などを添加する場合は,充填剤自身が吸油するために上記の範囲を超えて当該可塑剤を配合することができる。例えば,塩化ビニル系樹脂100重量部に対し,充填剤として炭酸カルシウムを100重量部配合した場合には,当該可塑剤を1?500重量部程度配合することができる。」(【0057】)
「当該可塑剤と併用することができる公知のエステルとしては,例えば,フタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP),フタル酸ジイソノニル(DINP),フタル酸ジイソデシル(DIDP),フタル酸ジウンデシル(DUP)等のフタル酸エステル類,アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA),アジピン酸ジイソノニル(DINA),アジピン酸ジイソデシル(DIDA)等のアジピン酸エステル類,トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル(TOTM),トリメリット酸トリイソデシル(TITM)等のトリメリット酸エステル類,リン酸トリ-2-エチルヘキシル(TOP),リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル類が挙げられる。上記可塑剤の使用量は,可塑剤全体量の5重量%以内が好ましい。」(【0059】)
「塩化ビニル系樹脂成形体
前記方法で得た塩化ビニル系樹脂組成物の配合粉あるいはペレットを,押出成形,射出成形,カレンダ成形,プレス成形,ブロー成形等の従来公知の方法を用いて溶融成形加工することにより,所望の形状に成形できる。」(【0069】)
「かくして得られた成形体は,水道管などのパイプ類,自動車アンダーボディコート,各種レザー類,農業用透明フィルム,食品包装用フィルム,電線被覆,各種発泡製品,一般透明ホース,冷蔵庫用ガスケット,パッキン類,壁紙,床材,ブーツ,玩具,字消し等に有用である。」(【0072】)
イ 甲2に記載された発明
上記アにおける摘記から,甲2には,次のとおりの発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
「1,2-シクロヘキサンジカルボン酸若しくはその無水物と,炭素数9の分岐鎖のアルコールを必須成分とする炭素数4?13の脂肪族一価混合アルコールとをエステル化反応して得られる1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル系可塑剤であって,前記脂肪族一価混合アルコール中の炭素数9の分岐鎖のアルコールの含有率が70?97重量%であり,炭素数9の分岐鎖のアルコール以外のアルコールの含有率が3?30重量%である1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル系可塑剤を含有する塩化ビニル系樹脂組成物において,
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルの含有量は塩化ビニル系樹脂100重量部に対し1?100重量部であり,また該樹脂組成物が成形体用である塩化ビニル系樹脂組成物。」

(3)ア 甲3の記載
本件特許に係る出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲3には,次の記載がある。
「【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100重量部およびエチレン-不飽和エステル-一酸化炭素共重合樹脂1?40重量部を含有し,JIS K7215で規定されるショアーD硬度が75°以上であることを特徴とする耐放射線性に優れた硬質塩化ビニル系樹脂組成物。…
【請求項4】
請求項1,2または3記載の硬質塩化ビニル系樹脂組成物を押出成形して得られる成形部品。
【請求項5】
請求項1,2または3記載の硬質塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形して得られる成形部品。」(【特許請求の範囲】)
「本発明は,γ線または電子線による放射線滅菌方法に対して優れた抵抗安定性(耐放射線性)を有する硬質塩化ビニル系樹脂組成物,およびそれを用いた成形部品に関する。特に,人工透析回路,人工心肺回路,血液回路,廃液バッグ回路など医療用の回路において,分岐,連結用に用いる医療用硬質部品,およびこの部品に好適に使用できる医療用硬質塩化ビニル系樹脂組成物に関する。」(【0001】)
「【背景技術】
医療用部品には,(1)重金属等の溶出などによって人体に害を及ぼすことがない,(2)医療現場において使い勝手が良い,(3)使用時まで無菌性が保たれている,(4)内部液の状況が確認できることなどが必要とされる。…
これら従来の滅菌方法の問題点を解決する方法として,1980年以降,コバルト60-γ線滅菌法(以下,γ線滅菌法という)や,電子線滅菌法といういわゆる放射線滅菌法への転換が急速に進展している。この方法は,梱包後に滅菌が可能で,滅菌作業が簡易で,滅菌コストの低減につながるという大きなメリットがある。
放射線滅菌法のうち,電子線滅菌法は短時間に大量の部品を滅菌処理できるという利点があるが,透過力が小さく,滅菌が不均一になりがちであり,滅菌による色ブレが発生し易いという欠点がある。他方,γ線滅菌法は照射時間が長いため,滅菌が均一に行なわれるという利点があるが,部品の色調変化が著しいという欠点がある。
該放射線滅菌による色調変化は,程度に差があるとはいえ,変色のために医療用部品の色を識別できなくなり,部品間違いなどの医療事故を誘発する原因になる可能性がある。そのため,放射線滅菌によって変色する材料は,医療用部品として使用することに制約があった。
前記のように,該医療用部品の材料劣化による変色は,当業界の重大な技術課題であり,いろいろな取り組みがなされている。
軟質塩化ビニル系樹脂組成物は,放射線滅菌に伴うこれらの変色問題を解決でき,耐放射線性に優れた素材として現在好適に使用されている。しかしながら,硬質塩化ビニル系樹脂組成物は,放射線滅菌に伴う変色課題を充分には解決できておらず,コストが高くなっても高圧蒸気滅菌をさぜるを得ない状況にあり,耐放射線性に優れ,変色の少ない医療用硬質塩化ビニル系樹脂組成物が強く要望されてきた。」(【0002】?【0009】)
「【発明が解決しようとする課題】
本発明は,軟質塩化ビニル系樹脂組成物と同様,放射線照射滅菌処理の際の変色を低減した硬質塩化ビニル系樹脂組成物を提供することを目的とする。…
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる実情に鑑み,耐放射線性(特に,耐γ線性)とポリマー素材との関連を精査し,硬質組成物においては,一酸化炭素を共重合して分子中にカルボニル構造を有するポリマーを添加すると顕著に放射線による変色を抑制するということを見出し本発明を完成した。」(【0012】?【0013】)
「本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は,その硬度をJIS K7215で規定されるショアーD硬度で,75°以上の硬さとすることが必要であり,80°以上がより好ましい。ショアーD硬度が75°以上であることにより,例えば,バルブとして機能が充分となり,チューブ連結の際の作業性が良好なものとなる傾向がある。
本発明においては,ショアーD硬度を75°以上を維持する範囲で,少量の可塑剤を使用することができる。可塑剤としては,耐放射線性に有効であることが知られており,少量の可塑剤と組み合わせることにより,高度にバランスのとれた組成物とすることが可能となる。
本発明に使用できる可塑剤の添加量は,液状安定剤など硬度を低下する液状物の添加量にもよるが,塩化ビニル系樹脂100重量部に対して,15重量部以下が好ましく,10重量部以下がより好ましい。可塑剤の添加量を15重量部以下とすることにより,ショアーD硬度が75°未満になることを防止することができる。
本発明に使用できる可塑剤の種類としては,本発明の目的を奏する範囲のものを使用できるが,例えば,フタル酸ジ-n-ブチル,フタル酸ジ-n-オクチル,フタル酸ジ-2-エチルヘキシル,フタル酸ジイソオクチル,フタル酸ジオクチルデシル,フタル酸ジイソデシル,フタル酸ブチルベンジル,イソフタル酸ジ-2-エチルヘキシルなどのフタル酸系可塑剤,アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル,アジピン酸ジ-n-デシル,アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル,セバチン酸ジブチル,セバチン酸ジ-2-エチルヘキシルなどの脂肪酸エステル系可塑剤,リン酸トリブチル,リン酸トリ-2-エチルヘキシル,リン酸トリ-2-エチルヘキシルジフェニル,リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル系可塑剤,エポキシ化大豆油,エポキシ化アマニ油,エポキシ化トール油脂肪酸-2-エチルヘキシルなどのエポキシ系可塑剤,トリメリット酸トリ2-エチルヘキシル,トリメリット酸トリオクチルなどのトリメリット酸エステル系可塑剤,クエン酸エステル系可塑剤,グルコール酸エステル系可塑剤をあげることができ,好ましくは,従来医療用途に好適に使用されている可塑剤という観点,耐放射線性を向上するという観点から,フタル酸ジ-2-エチルヘキシル,トリメリット酸トリ2-エチルヘキシル,トリメリット酸トリオクチルが特に好ましい。特に,可塑剤としての機能と熱安定化助剤としての機能を併有するエポキシ化大豆油,エポキシ化アマニ油などのエポキシ化合物は,本発明に特に好適に使用できる。」(【0027】?【0030】)
「本願発明における医療用部品とは,薬事法第2条第4項および薬事法施行令第1条に定義され,別表第1に定められている機械器具のうち,特に,17,18,19,20,47,48,51,56などに定義される機械器具の連結部材,バルブなどを示す。具体的には,血液バッグ,輸液バッグ,廃液バッグ,輸液セット,輸血セット,成分採血システム,白血球除去フィルター,血液回路システム,人工透析回路,人工心肺システム,翼付針などの機械器具の連結部品,バルブ,サイドキャップなどとして使用される部品,あるいは真空採血管,注射器などを意味する。本願発明の硬質塩化ビニル系樹脂組成物は,特に,血液バッグ,輸液バッグ,輸液セット,輸血セット,血液回路システムの連結部分,バルブ,サイドキャップにおいては極めて好適に使用される。
これらの部品は,形状も多種多様であり,複雑な形状であるため,大部分は射出成形にて製造される。例えば,T字管,Y字管,サイドキャップなどは好適に射出成形が適用される。また,比較的長尺の連結管,硬質チャンバーチューブなどは,押出成形が好適に適用される。」(【0046】?【0047】)
イ 甲3に記載された発明
上記アにおける摘記から,甲3には,次のとおりの発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認める。
「塩化ビニル系樹脂100重量部及びエチレン-不飽和エステル-一酸化炭素共重合樹脂1?40重量部を含有し,JIS K7215で規定されるショアーD硬度が75°以上である耐放射線性に優れた硬質塩化ビニル系樹脂組成物において,
ショアーD硬度75°以上を維持する範囲で可塑剤を塩化ビニル系樹脂100重量部に対して15重量部以下含有し,該樹脂組成物は特に,血液バッグ,輸液バッグ,輸液セット,輸血セット,血液回路システムの連結部分,バルブ,サイドキャップに使用される硬質塩化ビニル系樹脂組成物。」

4 無効理由1(いわゆる新規性の欠如)について
(1) 本件訂正発明1と甲1発明との対比
本件訂正発明1と甲1発明との一致点及び相違点は,それぞれ次のとおりである。なお,後記10で認定・判断するように,本件訂正発明1が明確でないとする理由はみあたらない。
・ 一致点(上記取消判決の拘束力)
「塩化ビニル系樹脂100重量部に対して,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を10重量部以上15重量部以下配合してなる組成物である,塩化ビニル系樹脂組成物。」
・ 相違点1
本件訂正発明1は,「放射線滅菌用かつ硬質医療用」と特定しているのに対し,甲1発明は,「半硬質ポリ塩化ビニル樹脂組成物」であって,「典型的には,パイプ,幾つかのワイヤおよびケーブルコーティング,床タイル,ブラインド,フィルム,血液バッグならびに医療用チューブの製造用」である点。
・ 相違点2(上記取消判決の拘束力)
本件訂正発明1は,「JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上の硬質である」と特定しているのに対し,甲1発明は,そのような特定事項を有していない点。

(2) 相違点についての検討
まず,上記相違点1について検討する。
本件訂正発明1の用途は「放射線滅菌用かつ硬質医療用」である。そして,本件訂正明細書には,「硬質」について,「JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上であれば,硬質を意味する。」(段落【0018】),「本発明において…可塑剤を塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1?15重量部以下の範囲で配合する。この範囲であれば,硬質医療用部品に要望される硬さを確保できる。」(段落【0023】)と記載され,「硬質医療用」部品の例としては,「注射器,チューブ連結部材,分岐バルブ,速度調節部品など」(段落【0004】)が記載されている。
これに対して,甲1発明は,塩化ビニル系樹脂100重量部に対してシクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤を10?40部配合した「半硬質ポリ塩化ビニル樹脂組成物」であって,その典型的な用途として挙げられたもののうち医療用である「血液バッグ」及び「医療用チューブ」は,本件訂正明細書の段落【0003】に記載されているように,通常,「軟質」塩化ビニル樹脂組成物と称される,柔軟性に富んだものであることから,可塑剤を上記配合量範囲の上限である40部に近い量を配合したものであると認められ,また,「パイプ」,「床タイル」及び「ブラインド」は,一定程度の硬度を有し,可塑剤を上記配合量範囲の下限である10部程度配合したものであると認められる。
また,塩化ビニル系樹脂の硬度に関する「硬質」,「半硬質」,「軟質」の用語例には明確かつ画一的な定義があるわけでなく,塩化ビニル系樹脂100重量部に配合する可塑剤が10?20重量部程度のものは「硬質」及び「半硬質」のいずれに表現されることもあることが認められる(上記取消判決の拘束力)。
そこで,「放射線滅菌用」についてはとりあえずおき,甲1に「硬質医療用」が記載されているか,又は記載されているに等しいとまでいえるかどうかについて検討すると,甲1には,甲1発明の用途として,「硬質医療用」については記載されているとも記載されているに等しいということはできない(上記取消判決の拘束力)。

(3) 小括
以上のとおりであるから,甲1に「放射線滅菌用」が記載されているか又は記載されているに等しいとまでいえるかについて,また,上記相違点2について検討するまでもなく,本件訂正発明1は甲1発明と同一であるということはできない。
よって,本件訂正発明1は甲1に記載された発明であるから特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないとする無効理由1には,理由がない。

5 無効理由2(甲1からのいわゆる進歩性の欠如)について
(1) 発明の進歩性について
いわゆる進歩性有無の判断は,通常,特許発明と,先行技術のうち特許発明の構成に近似する特定の先行技術(主たる引用発明)とを対比して,両者の相違する構成を認定し,主たる引用発明に,それ以外の先行技術(従たる引用発明),技術常識ないし周知技術を組み合わせ,特許発明と主たる引用発明との相違する構成を補完ないし代替させることによって特許発明に到達することが容易であったか否かを基準として行われる。
また,上述の判断は,進歩性が否定される方向に働く要素(例えば,主たる引用発明に従たる引用発明を適用する動機付けがあるか)と,進歩性が肯定される方向に働く要素(例えば,特許発明が奏する引用発明と比較した有利な効果)とを比較衡量し総合的に評価した上で行われるべきものである。
上で述べるところを踏まえ,以下検討する。

(2) 本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と甲1発明との一致点及び相違点は,上記4(1)で認定のとおりである。
イ 相違点1について検討する。
(ア) まず,硬質塩化ビニル系樹脂を,放射線滅菌用かつ硬質医療用として使用することについては,甲3の段落【0001】には,放射線滅菌方法に対して優れた抵抗安定性(耐放射線性)を有し,医療用の回路において分岐,連結用に用いる医療用硬質部品に硬質塩化ビニル系樹脂を用いることが,甲5(特開平2-43245号公報)の請求項1?2及び2頁右下欄2?4行には,可撓性管材料用の硬質Y字管にγ線の暴露により滅菌しても透明であり硬質のプラスチック(ポリ塩化ビニル)を用いることが,それぞれ記載されているように,従来から硬質塩化ビニル系樹脂によって各種放射線滅菌用かつ医療用部品が製造されてきていることは本件の出願当時の技術常識である。
そして,甲3の段落【0028】及び【0029】には,硬質塩化ビニル樹脂として用いる場合,塩化ビニル系樹脂100重量部に可塑剤1?15重量部以下であることが必要とし,甲5では,Y字管のような医療用硬質構成部品に用いる場合,可塑剤は,約2?20phr(重量部)とすることが開示されているところ,これら甲3及び甲5においては,10?15重量部の範囲の可塑剤を配合する塩化ビニル樹脂を放射線滅菌用かつ硬質医療用に用いている。
(イ) もっとも,上記2(2)アの本件訂正明細書の記載によれば,本件訂正発明の用途は「放射線滅菌用かつ硬質医療用」であって(段落【0001】,【0013】など),具体的に「注射器,チューブ連結部材,分岐バルブ,速度調節部品など」が例示され(段落【0004】),これらは高度に滅菌される必要性から,主にエチレンオキサイドガスによる滅菌がされていたが,残存エチレンオキサイドガスの発がん性のため,高圧蒸気滅菌に移行しているものの滅菌作業に多大な手間と時間がかかり,滅菌作業の迅速化のため導入されたγ線滅菌や電子線滅菌といった放射線滅菌では部品の変色という問題が知られていたことから(段落【0005】,【0006】),本件訂正発明は,可塑剤としてシクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上を用いることにより,放射線滅菌による変色を著しく低減し,溶出性に優れた硬質医療用部品を提供するものであること(段落【0012】)が認められる(上記2(2)イも併せ参照。)。
他方で,甲1には,甲1発明のシクロヘキサンポリカルボン酸エステル(本件訂正発明1の「シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤」に相当。)は,ポリ塩化ビニル組成物中で可塑剤として使用されることで紫外線安定性の向上をもたらす旨の開示はあるものの,当該可塑剤が,ポリ塩化ビニル組成物の放射線滅菌による変色を抑制するという効果を奏するものである旨の記載はない。また,上記可塑剤がそのような効果を奏することが,本件の出願前に公知であると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,放射線滅菌されることが必須である旨の特定がされた本件訂正発明1が奏するところの放射線滅菌による変色の抑制という効果は,甲1発明からは当業者が予期し得ない優れた効果であると認められる。
(ウ) そして,上記(1)で述べた見地を踏まえ総合判断すると,当業者として甲1発明を放射線滅菌用であることを含めた「放射線滅菌用かつ硬質医療用」に適用することは,もはや容易であるということはできない。
(エ)a 相違点1についての判断に関連して,請求人は,甲33の1?甲33の6の証拠を根拠に,本件訂正発明1の構成のみでは上述の技術的課題を解決し得ない(所望の作用効果を奏さない)などと主張する(平成27年7月2日付け審判事件弁駁書16頁など)。
しかし,以下述べるように,上記証拠に基づく主張は採用することができない。
b 上記証拠から,概ね次の事実を認めることができる。
(a) 株式会社DJK横浜ラボラトリーズ(以下「株式会社DJK」という。)は,平成26年7月2日から同8日の間において,塩化ビニル樹脂,ジオクチル錫ジメルカプト安定剤,ジオクチル錫マレエート安定剤,トリス(ノニルフェニル)ホスファイト,ポリエチレンwax,ジ-2-エチルヘキシルフタレート,ジイソノニルシクロヘキサンジカルボキシレート,アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル),3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランを主な使用材料として,本件訂正明細書の実施例に則した塩化ビニル樹脂組成物の混練物を15個調製し(実験番号1?15。以下「本件サンプル」という。),同8日,協和特許法律事務所宛に本件サンプルを発送した(甲33の1)。
(b) 一般財団法人化学研究評価機構 高分子試験・評価センター(以下「評価機構」という。)の大阪事業所は,平成26年7月14日,協和特許法律事務所より本件サンプルを受領し(審決注:なお,評価機構が受領した本件サンプルと株式会社DJKが調製した本件サンプルとの同一性について,当事者間に争いがある。),同日,本件サンプルのロックウェル硬さ,デュロメータ硬さ及び黄色度を測定した。また,評価機構は,同月16日,本件サンプルをラジエ工業株式会社(以下「ラジエ」という。)に発送した(甲33の2,乙5)。
(c) ラジエは,平成26年7月17日,本件サンプルにγ線を照射した(甲33の4?甲33の6)。また,ラジエがγ線照射後の本件サンプルを評価機構大阪事業所に発送した日及びその輸送手段を直接立証する証拠はないものの(審決注:乙5は評価機構の職員である岡田の陳述書である。),同月19日が土曜日,同月21日が祝日であることなどから,その発送日はγ線照射をした日の翌日の金曜日である同月18日であり,その輸送手段は郵便もしくは宅配便であったと推認される。
(d) 評価機構大阪事業所は,平成26年7月22日,本件サンプルを受領し,同日,本件サンプルのロックウェル硬さ,デュロメータ硬さ及び黄色度を測定し,色差(黄変度ΔYI)を算出した(甲33の2,乙5)。また,同月28日,本件サンプルの溶出物試験を行った(甲33の3,乙5)。
c 上記bから,本件サンプルは平成26年7月17日にγ線が照射され,同月22日にγ線照射後のロックウェル硬さ,デュロメータ硬さ及び黄色度が測定され,同月28日に溶出物試験が行われた事実が認められる。
ところで,耐放射線の評価すなわちγ線照射による黄色度(YI値)の変化(ΔYI値)について,本件訂正明細書には,「照射後のテストサンプルは着色黄変が徐々に進行する為,安定化するまで照射後サンプルを恒温恒湿の条件下(23℃,50%相対湿度)で3日間静置」した後に「照射後サンプルのYI値を上記測定器にて測定して,照射後YI値を求め」ること,「変色度の評価指標として,下記式で定義した黄変度(ΔYI値)を計算し,ΔYI値が20以下を合格範囲と判定した。ΔYI値=(照射後YI)-(照射前YI)」との記載がある(【0054】?【0056】)。すなわち,本件訂正発明の耐放射線の評価について,γ線照射後の黄色度(YI値)は,γ線照射したサンプルを恒温恒湿の条件下(23℃,50%相対湿度)で3日間静置したときの値として測定されるものである。
他方,上述のとおり,本件サンプルにおけるγ線照射後の黄色度は,γ線照射(7月17日)から5日後の7月22日に測定されたものである。また上記のとおり,γ線照射後の本件サンプルは,黄色度が測定されるまでの間において郵便もしくは宅配便で輸送されたと推認されることからすれば,その間,恒温恒湿(23℃,50%相対湿度)の条件下で本件サンプルが静置されていたということはできない。
そうすると,本件サンプルのγ線照射後の黄色度(甲33の2に記載のある本件サンプルについての黄変度(ΔYI))は本件訂正明細書に記載されている条件に則して測定されたものと認めることができない。甲33の1?甲33の6の証拠に基づいて本件訂正発明1の構成のみでは課題を解決できない(所望の作用効果を奏さない)とする請求人の主張は,採用できない。
ウ 次に,相違点2について検討する。
上記イで検討のとおり,当業者が甲1発明を「放射線滅菌用かつ硬質医療用」に適用することは想到容易であるということはできないと判断される。
他方,従来から硬質塩化ビニル系樹脂によって各種医療用部品が製造されてきていることは本件の出願当時の技術常識であり,そして,甲3及び甲5においては,10?15重量部の範囲の可塑剤を配合する塩化ビニル樹脂を硬質医療用に用いているのであるから,当業者として甲1発明を「硬質医療用」に適用することまでは容易である(上記取消判決の拘束力)。
以上を踏まえて検討するに,甲3には,JIS K7215で規定されるショアーD硬度が75°以上である硬質塩化ビニル系樹脂組成物が記載されているのであるから,甲1発明を硬質医療用に適用するにあたり,その硬度の程度を「ショアーD硬度が75°以上」とすることもまた当業者であれば想到容易であるといえる。
そして,甲19?甲20からみて,「ショアーD硬度が75°以上」は「JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上」を満たすといえることからすれば,相違点2に係る構成は,甲1発明の硬度の程度について,「ショアーD硬度」に代えて「ロックウェル硬さ」を指標として持ち出し,その値を「35°以上」としたにすぎない。
エ 以上のとおり,相違点2については当業者であれば想到容易であるといえるものの,相違点1については想到容易とはいえないから,本件訂正発明1は,甲1に記載された発明(甲1発明)を主たる引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3) 本件訂正発明2?7について
請求項2?7の記載は,請求項1を直接又は間接的に引用するものである。そして,請求項1に係る本件訂正発明1が甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのは上述のとおりであるから,請求項2?7に係る本件訂正発明2?7についても同様に,甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。

(4) 小括
以上のとおりであるから,請求人が主張する無効理由2には理由がない。

6 無効理由3(甲2からの進歩性の欠如)について
(1) 本件訂正発明1について
ア 一致点及び相違点
本件訂正発明1と甲2発明とを対比すると,甲2発明の「1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル系可塑剤」は,本件訂正発明1の「シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤」に相当する。
また,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤(1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル系可塑剤)の塩化ビニル系樹脂に対する含有量について,甲2発明は「1?100重量部」と特定するのに対し,本件訂正発明1は「1重量部以上15重量部以下」と特定するから,両発明は「1重量部以上15重量部以下配合してなる」点で重複一致する。
そうすると,本件訂正発明1と甲2発明との一致点及び相違点は,それぞれ次のとおりである。
・ 一致点
塩化ビニル系樹脂100重量部に対して,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物
・ 相違点3
本件訂正発明1は,「放射線滅菌用かつ硬質医療用」と特定しているのに対し,甲2発明は,そのような特定事項を有していない点。
・ 相違点4
本件訂正発明1は,「JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上の硬質である」と特定しているのに対し,甲2発明は,そのような特定事項を有していない点。
イ 相違点3について検討する。
甲2発明の組成物を成形して得られた成形体の用途について,甲2には,【0072】にその記載があるものの,「放射線滅菌用かつ硬質医療用」であることについての記載はない。
そうすると,仮に主たる引用発明である甲2発明に従たる引用発明(甲1,3?9,10の1・2,甲11?17,18の1・2記載の事項)を適用する動機付けがあるといえたとしても,甲2には,甲2発明の1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル系可塑剤(シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤)が塩化ビニル組成物の放射線滅菌による変色を抑制するという効果を奏するものである旨の記載はないし,当該可塑剤がそのような効果を奏することが本件の出願前に公知であると認めるに足りる証拠もない。そして,放射線滅菌されることが必須である旨の特定がされた本件訂正発明1が奏するところの放射線滅菌による変色の抑制という効果は,甲2発明からは当業者が予期し得ない優れた効果であると認められる。
しかも,従たる引用発明に係る証拠(甲1,3?9,10の1・2,甲11?17,18の1・2)に記載の事項から,塩化ビニル系樹脂によって各種放射線滅菌用かつ硬質医療用部品が製造されてきていることが本件の出願当時の技術常識であるといえたからといって,甲2発明の塩化ビニル系樹脂組成物を放射線滅菌用かつ硬質医療用とすることについての動機付けをそもそも見いだすことができない。
さすれば,当業者として甲2発明を「放射線滅菌用かつ硬質医療用」に適用することは容易であるということはできない。
ウ 次に,相違点4について検討する。
上記4(2)で述べたように,塩化ビニル系樹脂の硬度に関する「硬質」,「半硬質」,「軟質」の用語例には明確かつ画一的な定義があるわけでなく,塩化ビニル系樹脂100重量部に配合する可塑剤が10?20重量部程度のものは「硬質」及び「半硬質」のいずれに表現されることもあることが認められる。また,塩化ビニル系樹脂の硬度は基本的に可塑剤の量に依存して変化するというのが本件の出願日当時の技術常識である(上記取消判決の拘束力)。
そして,甲2発明は,その成形体の用途として,例えば水道管などのパイプ類,電線被覆,冷蔵庫用ガスケットなどが想定されていること(甲2の【0072】),本件訂正発明1と甲2発明とは,塩化ビニル系樹脂100重量部に対して配合する可塑剤の量が1?15重量部の範囲で重複していること,甲3には,1?15重量部の範囲の可塑剤を配合する塩化ビニル樹脂を硬質の成形体に用いる技術が開示されていること,甲24及び甲27から,塩化ビニル系樹脂100重量部に配合する可塑剤が1?10重量部程度のものを「硬質」と表現しうること,本件訂正明細書には,「JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上であれば,硬質を意味する。」(【0018】),「本発明において…可塑剤を塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1?15重量部以下の範囲で配合する。この範囲であれば,硬質医療用部品に要望される硬さを確保できる。」(【0023】)との記載があることなどを総合すると,甲2発明をその用途を踏まえて「硬質」とし,その具体的な硬度として「JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上」を設定する程度のことは,当業者であれば想到容易であるといえる。
エ 以上のとおり,相違点4については当業者であれば想到容易であるといえるものの,相違点3については想到容易とはいえないから,本件訂正発明1は,甲2に記載された発明(甲2発明)を主たる引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3) 本件訂正発明2?7について
上記5(3)で検討したことと同様の理由により,請求項2?7に係る本件訂正発明2?7についても,甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。

(4) 小括
以上のとおりであるから,請求人が主張する無効理由3には理由がない。

7 無効理由4(甲3からの進歩性の欠如)について
(1) 本件訂正発明1について
ア 一致点及び相違点
本件訂正発明1と甲3発明とを対比すると,可塑剤の塩化ビニル系樹脂に対する含有量について,甲3発明は「15重量部以下」と特定するのに対し,本件訂正発明1は「1重量部以上15重量部以下」と特定するから,両発明は「1重量部以上15重量部以下配合してなる」点で重複一致する。
また,甲3発明は「耐放射線性に優れた」硬質塩化ビニル系樹脂組成物であり,甲3の【0001】などには,放射線滅菌方法に対して優れた耐放射線性を有する旨の記載があるから,「放射線滅菌用」であるということができる。
そうすると,本件訂正発明1と甲3発明との一致点及び相違点は,それぞれ次のとおりである。
・ 一致点
塩化ビニル系樹脂100重量部に対して可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる組成物である放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
・ 相違点5
可塑剤について,本件訂正発明1は,「シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤」と特定しているのに対し,甲3発明は,そのような特定事項を有していない点。
・ 相違点6
本件訂正発明1は,「JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上の硬質である」と特定しているのに対し,甲3発明は,そのような特定事項を有していない点。
イ 相違点5について検討する。
(ア) 上述のとおり,本件訂正発明の用途は「放射線滅菌用かつ硬質医療用」であって,注射器,チューブ連結部材,分岐バルブ,速度調節部品などの硬質医療用部品を高度に滅菌するために導入される放射線滅菌では部品の変色という問題が知られていたところ,本件訂正発明は,可塑剤としてシクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上を用いることにより,放射線滅菌による変色を著しく低減し,溶出性に優れた放射線滅菌用かつ硬質医療用部品を提供するものである。
他方,甲3についての上記3(3)アの適示によれば,甲3発明は,放射線照射滅菌処理の際の変色を低減した硬質塩化ビニル系樹脂組成物を提供するといった解決課題(【0001】など)の点で本件訂正発明1と同じであるといえるものの,その課題解決手段については,一酸化炭素を共重合して分子中にカルボニル構造を有するポリマーを添加すると放射線による変色を抑制できることに着目して(【0013】など),塩化ビニル系樹脂100重量部に対しエチレン-不飽和エステル-一酸化炭素共重合樹脂を1?40重量部含有させることで課題を解決するものである点で本件訂正発明1と異なるといえる。
(イ) そして,従たる引用発明に係る証拠(甲1,2,4?9,10の1・2,甲11?17,18の1・2,甲19?22)には,「シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤」が塩化ビニル系樹脂に添加されることで放射線滅菌による変色を低減できる旨の開示はなく,また,上記可塑剤がそのような効果を奏することが,本件の出願前に公知であると認めるに足りる証拠もない。
そうすると,仮に主たる引用発明である甲3発明の可塑剤として,従たる引用発明に係る証拠に記載される「シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤」を採用する動機付けがあるといえたとしても,放射線滅菌されることが必須である旨の特定がされた本件訂正発明1が奏するところの放射線滅菌による変色の抑制という効果が,甲3発明で特定するところの「エチレン-不飽和エステル-一酸化炭素共重合樹脂」を添加せずとも奏するという点で,甲3発明からは当業者が予期し得ない優れた効果であると認められる。
しかも,従たる引用発明に係る証拠に記載の事項から,塩化ビニル系樹脂に添加される可塑剤として「シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤」が本件の出願当時に公知であるといえたからといって,甲3発明の可塑剤として上記した公知の可塑剤を採用することについての動機付けをそもそも見いだすことができない。
さすれば,当業者であっても,甲3発明の可塑剤として「シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤」を採用することは想到容易であるということはできない。
(ウ) 請求人は,医療分野を含めたあらゆる分野における塩化ビニル系樹脂用の可塑剤について,DOPなどのフタル酸エステル系可塑剤からDINCH(1,2-ジイソノニルシクロヘキサンジカルボキシレート)に置き換わっていくのは世界的な趨勢であるから,甲3発明の可塑剤(甲3にはフタル酸エステル系可塑剤の例示がある。【0030】)としてDINCHを用いるようにすることは必然の流れである旨主張する(平成27年7月2日付け審判事件弁駁書63頁など)。
しかし,上記(イ)で述べたように,本件訂正発明1が奏する作用効果は,甲3発明からは当業者が予期し得ない優れたものであるといえるのであるから,請求人が主張するように,仮にDOPからDINCHに置き換わっていくことが世界的な趨勢であるといえるとしても,甲3発明の可塑剤としてただちにDINCHを適用することが容易であることにはならない。
請求人の上記主張は,採用できない。
ウ 次に,相違点6について検討する。
甲3発明は,「JIS K7215で規定されるショアーD硬度が75°以上」である硬質塩化ビニル系樹脂組成物である。そして,甲19?甲20からみて,「ショアーD硬度が75°以上」は「JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが,35°以上」を満たすといえること,本件訂正明細書(【0018】)によればJIS K7202で規定されるロックウェル硬さが35°以上であれば「硬質」といえることからすれば,相違点6は実質的な相違点であるとはいえない。
エ 以上のとおり,相違点6は実質的な相違点ではないが,相違点5については想到容易とはいえないから,本件訂正発明1は,甲3に記載された発明(甲3発明)を主たる引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3) 本件訂正発明2?7について
上記5(3)で検討したことと同様の理由により,請求項2?7に係る本件訂正発明2?7についても,甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。

(4) 小括
以上のとおりであるから,請求人が主張する無効理由4には理由がない。

8 無効理由5-1(実施可能要件違反)について
(1) 本件訂正発明に適用される実施可能要件について
物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることをいうから(特許法2条3項1号),物の発明については,例えば明細書にその物を製造することができ,使用することができることの具体的な記載があるか,そのような記載がなくても,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造し,使用することができるのであれば,実施可能要件を満たすということができる。

(2) 本件訂正発明に係る実施可能要件の有無について
ア これを本件訂正発明についてみると,本件訂正発明はいずれも物の発明であり,本件訂正明細書から,上記2(2)で認定のとおり,医療用部品を高度に滅菌する手段としていわゆる放射線滅菌が急速に普及してきているが,当該放射線滅菌には照射後の医療用部品の色調変化が著しいという問題があったところ,本件訂正発明の樹脂組成物は,放射線照射滅菌処理,特にγ線照射滅菌しても変色を著しく低減し,耐放射線性に優れかつ硬さ,溶出性に優れた放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を提供することを解決課題とし,シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤および/またはアルキルスルホン酸系可塑剤が溶出性と耐γ線性のバランスに優れた可塑剤であること,上記可塑剤を塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1?15重量部以下の範囲で配合すれば硬質医療用部品に要望される硬さを確保できるが,15重量部を超えるとロックウェル硬さを35°以上に維持することが難しくなることといった知見のもと,塩化ビニル系樹脂100重量部に特定の可塑剤(シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤)を1重量部以上15重量部以下配合することで課題の解決を図るものであると理解できる。
したがって,本件訂正明細書には,当業者が本件訂正発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているといえる。
イ そして,本件訂正発明が実施可能であるというためには,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に本件訂正発明のものを製造する方法についての具体的な記載があるか,あるいはそのような記載がなくても,技術常識に基づき当業者が本件訂正発明のものを製造することができる必要があるというべきであるところ,発明の詳細な説明には,上記樹脂組成物の具体例として,本件訂正発明1で特定する可塑剤(シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上)を,特定する割合(塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1重量部?15重量部)で含有する実施例が複数記載されているし,また,実施例5?12と比較例8との対比ならびに【0027】などの記載から,「ロックウェル硬さ35°以上の硬質」とし溶出性に優れたものとするにあたっては,シラン化合物の配合量を0.2?7重量部の範囲で適宜調整すればよいことを当業者は容易に理解することができる。本件訂正明細書には,本件訂正発明を製造(実施)できる程度に具体的な記載がないということはできない。
ウ したがって,本件訂正明細書の記載は,本件訂正発明について,実施可能要件を満たすものである。請求人が主張する無効理由5-1には理由がない。

9 無効理由5-2(サポート要件違反)について
(1) 本件訂正発明に適用されるサポート要件について
特許請求の範囲の記載が,サポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と明細書の発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断される。

(2) 本件訂正発明に係るサポート要件の充足の有無について
これを本件訂正発明についてみると,本件訂正明細書の記載から,上記2(2)や上記8(2)で認定のとおり,医療用部品を高度に滅菌する手段としての放射線滅菌には照射後の医療用部品の色調変化が著しいという問題があったところ,本件訂正発明の樹脂組成物は,放射線照射滅菌処理をしても変色を著しく低減し,耐放射線性に優れかつ硬さ,溶出性に優れた放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を提供することを解決課題とするものであり,塩化ビニル系樹脂100重量部に特定の可塑剤(シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤)を1重量部以上15重量部以下配合することで課題の解決を図るものであることを当業者は認識できるといえる。
したがって,本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は,当業者が本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえるから,サポート要件を満たすものである。請求人が主張する無効理由5-2には理由がない。

10 無効理由5-3(明確性要件違反)について
(1) 本件訂正発明に適用される明確性要件について
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであり,特許請求の範囲の記載に,発明に係る機能,特性,解決課題ないし作用効果との関係での技術的意味が示されているかどうかとは直接関係がない。

(2) 本件訂正発明に係る明確性要件の充足の有無について
これを本件訂正発明についてみると,本件訂正発明の「放射線滅菌用」とは,本件訂正明細書の【0001】,【0012】,【0015】などの記載からみて,本件訂正発明の「塩化ビニル系樹脂組成物」がその用途として放射線滅菌処理の用に供されるものであることを意味すると解される。そして,そのように解することによって,本件訂正後の請求項1?7に係る発明の技術的範囲(特許請求の範囲の記載)が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはできない。
したがって,本件訂正発明は明確性要件を満たすものである。請求人が主張する無効理由5-3には理由がない。

(3) 請求人の主張に対し
ア 請求人は,甲33の1?甲33の6の証拠を根拠に,本件訂正発明1の構成要件を全て充足する場合であっても技術的課題を解決できない態様が存在するから,請求項1の記載は明確性要件を満たさない旨主張する(平成27年7月2日付け審判事件弁駁書13頁など)。
しかし,上記5(2)イ(エ)で述べたように,上記証拠に基づく主張は採用することができない。
イ また請求人は,「放射線滅菌用」との用語は,放射線滅菌の用に供しても変色が少ないという特性を備えている塩化ビニル系樹脂組成物を規定する趣旨と解釈できるところ,どの程度変色が少なければ当該組成物が「放射線滅菌用」という要件を充足するか明確でない旨主張する(同弁駁書14頁など)。
しかし,放射線の照射による組成物の変色の程度(例えば黄変度(ΔYI))を基準に放射線滅菌用であるか否かを決定しなければならない理由はない。請求人の主張は,独自の解釈であって採用できない。

第7 むすび
以上のとおり,請求人の主張する無効理由1?無効理由5-3にはいずれも理由がないから,本件特許の請求項1?7に係る発明についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法169条2項で準用する民事訴訟法61条及び66条の規定により,参加によって生じた費用は参加人が,その余の部分は請求人がそれぞれ負担すべきものである。
よって,結論のとおり,審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物およびそれを用いた放射線滅菌用かつ硬質医療用部品
【技術分野】
【0001】
本発明は、γ線または電子線による放射線滅菌方法に対して優れた変色安定性を有する硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物、およびそれを用いた硬質医療用部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用部品は、(1)重金属等の溶出などによって人体に害を及ぼすことがないこと、(2)医療現場において使い勝手が良いこと、(3)使用時まで無菌性が保たれていること、(4)内部液の状況が確認できることなどが必要とされる。
【0003】
これらの性能を高度に満足する素材として軟質塩化ビニル系樹脂組成物が使用され、軟質医療部品、例えば、血液バッグ、輸液バッグ、透析回路チューブなどに塩化ビニル樹脂と可塑剤からなる軟質塩化ビニル系樹脂組成物が好適に使用されている。
【0004】
また、これらの軟質医療部品に接続される各種の部品、例えば、注射器、チューブ連結部材、分岐バルブ、速度調節部品などの硬質医療用部品には、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどの硬質素材が使用されている。
【0005】
従来、これらの医療用部品は、高度に滅菌される必要性から、主にエチレンオキサイドガス(EOG)を用いて滅菌されてきた。しかしながら、滅菌後の残存EOGガスに発がん性があるために、安全性の観点からEOGガス滅菌に替えて、高圧蒸気滅菌へ移行している。これらEOG滅菌、高圧蒸気滅菌という滅菌方法では、包装品を一袋ごとに個々に滅菌する必要があり、滅菌作業に多大な手間と時間がかかるという問題があった。滅菌作業の迅速化を図るため、1980年以降、梱包後の滅菌が可能で、コスト低減につながるコバルト60-γ線滅菌(以下γ線滅菌)や、電子線滅菌といういわゆる放射線滅菌への転換が急速に進展してきている。放射線滅菌のうち、電子線滅菌は短時間に大量の部品を滅菌処理できるという利点があるが、透過力が小さく、滅菌が不均一になりがちであり、滅菌にロットぶれが発生し易いという問題がある。他方、γ線滅菌は照射時間が長いため、滅菌が均一に行われるという利点があるが、部品の色調変化が著しいという問題がある。
【0006】
これら放射線滅菌による色調変化は、変色のために医療用部品の色調を識別できなくなり、部品間違いなどの医療事故を誘発する原因になる可能性がある。そのため、放射線滅菌によって変色する材料は、医療用部品として使用することができなかった。
【0007】
前記のように、前記硬質医療用部品の材料劣化による色調変化は、当業界の重大な技術課題であり、この課題解決のためにいろいろな取組みがなされてきている。
【0008】
軟質塩化ビニル系樹脂組成物は、これらの変色問題を解決でき、耐放射線性に優れた素材として、現在好適に使用されている。しかしながら、硬質塩化ビニル系樹脂組成物は、変色課題を解決できておらず、硬質医療用部品には、耐γ線性が比較的良好なポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂などが使用されている。
【0009】
ポリカーボネート樹脂は、γ線に対し比較的安定で、γ線滅菌用途では主流になりつつある。しかしながら、麻酔薬の作用によって割れるなど耐薬品性が劣り、ビスフェノールAの残存モノマーの影響が懸念され、また成形加工性が塩化ビニル系樹脂組成物に比較して劣る、さらに回路の大部分を占める(主に軟質)ポリ塩化ビニルとの接着性が劣るなどの難点がある。
【0010】
また、これらの課題解決の為に、α-オレフィンなどの樹脂を使用する提案もある(特許文献1)。しかし、前記方法は、耐キンク性(耐折性)が劣るなどの難点がある為、市場での長期的な安全性実績があり、成形性、耐薬品性、耐折性などに優れ、かつ耐放射線性に優れて変色の少ない硬質塩化ビニル系樹脂組成物が強く要望されてきた。
【0011】
この様な医療現場の要望に応えるべく、例えば、特許文献2?3のように、安定剤、エポキシ化植物油を添加することで、着色を抑えるという提案、例えば、特許文献4?5のように、アルキルメルカプタンやアジピン酸のアルキルエステルを添加する方法が提案されているが、電子線滅菌法にはある程度改良効果が認められるものの、γ線滅菌法に対する効果は不十分であり、更なる改善が緊急の課題となっている。
【特許文献1】特開2003-3026号公報
【特許文献2】特開平8-73619号公報
【特許文献3】特開平8-176383号公報
【特許文献4】特開平7-102142号公報
【特許文献5】特表平11-510854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、放射線照射滅菌処理、特にγ線照射滅菌しても変色を著しく低減し、耐放射線性に優れ、かつ硬さ、溶出性に優れた硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物、及び前記組成物を成形した硬質医療用部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる組成物であって、JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが、35°以上の硬質であることを特徴とする。
【0014】
本発明の放射線滅菌用かつ硬質医療用部品は、前記の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物は、放射線滅菌(電子線滅菌、γ線滅菌)した際の変色が少なく、溶出性に優れ、前記組成物にて製品化された硬質医療用部品は、放射線滅菌(電子線滅菌、γ線滅菌)した際の変色が少なく、溶出性に優れた硬質医療用部品となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明者らは、耐放射線性(特に、耐γ線性)と配合剤との関連を検討し、塩化ビニル系樹脂と特定の可塑剤を必須成分とした硬質組成物であって、ロックウェル硬さを特定の範囲に選択することにより、耐放射線性と溶出性のバランスに極めて優れた硬質医療用組成物が得られることを見出し本発明を完成したものである。
【0017】
本発明は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる組成物であって、JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが、35°以上の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を成形加工した硬質医療用部品である。これにより、耐放射線性と溶出性のバランスに優れた硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を提供するものであり、滅菌時の変色がなく、溶出性、表面性、キンク性、耐薬品性などに優れた硬質医療用部品を提供できる。
【0018】
前記において、JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが、35°以上であれば、硬質を意味する。
【0019】
可塑剤の中でもシクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤および/またはアルキルスルホン酸系可塑剤が極めて溶出性と耐γ線性のバランスが優れ、また特に、前記組成物にシラン化合物を0.2?7重量部配合することにより、滅菌時の変色に対して極めて優秀な抵抗性を有する硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物および硬質医療用部品を提供する。
【0020】
シラン化合物としては、アルコキシシラン化合物が特に好ましく、モノアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物、トリアルコキシシラン化合物、テトラアルコキシシラン化合物から選択される一種以上のシラン化合物を配合することにより特に優れた硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物にできる。とくに、シラン化合物として3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランまたはビニルトリエトキシシランを選択した場合に、医療用組成物として特に優秀な硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物が得られ、γ線滅菌による変色がなく溶出性の良好な硬質医療用部品を得ることができる。
【0021】
本発明に用いられる塩化ビニル系樹脂とは、従来の公知の塩化ビニル系樹脂であって、例えば、塩化ビニル単独重合体である塩化ビニル樹脂、塩化ビニルと共重合し得る他のモノマーとを共重合させた塩化ビニル系共重合樹脂、たとえば塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-ステアリン酸ビニル共重合樹脂などの塩化ビニルとアルキルビニルエステルとの共重合樹脂、塩化ビニル-エチレン共重合樹脂、塩化ビニル-プロピレン共重合樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類との共重合樹脂、塩化ビニルと(メタ)アクリル酸またはそのエステルとの共重合樹脂、塩化ビニルとフマル酸エステルとの共重合樹脂、塩化ビニルとアルキルビニルエーテルとの共重合樹脂も用いる事ができ、これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明に使用する塩化ビニル系樹脂の平均重合度は特に限定されないが、加工性と性能のバランスから、平均重合度400?1300の範囲が好ましく、650?1100の範囲がさらに好ましい。
【0023】
本発明において使用する可塑剤は、シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1?15重量部以下の範囲で配合する。この範囲であれば、硬質医療用部品に要望される硬さを確保できる。成形性とのバランスを考慮すると、8?15重量部の範囲がさらに好ましい。
【0024】
中でも特に、シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤が耐γ線性、溶出性のバランスの観点で極めて好適である。また、これを主たる可塑剤とし、他の可塑剤を従たる可塑剤にすることにより、耐放射線性と硬さと溶出性のバランスを優れた範囲にできる。ここで「主たる」とは、50重量%以上をいう。
【0025】
本発明で使用できるアルキルスルホン酸系可塑剤としては、例えば、アルキルスルホン酸フェニルエステル、N,n-ブチルベンゼンスルホンアミドなどが例示される。中でも、アルキルスルホン酸フェニルエステルが好適である。
【0026】
本発明に使用できるシクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤としては、ジイソノニルシクロヘキサンジカルボキシレート、ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート、ジエチルシクロヘキサンジカルボキシレート、ジ-2-エチルヘキシルシクロヘキサンジカルボキシレートなどが例示される。中でも、ジイソノニルシクロヘキサンジカルボキシレート、ジ-2-エチルヘキシルシクロヘキサンジカルボキシレートが好適である。
【0027】
本発明に於いては、シラン化合物を併用することにより、耐放射線性(耐γ線性)と溶出性とのバランスをさらに改善することができ、アルコキシシラン化合物、クロロシラン化合物、アセトキシシラン化合物、オルガノシラン化合物などのシラン化合物を使用できる。シラン化合物の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、0.2?7重量部が良い。シラン化合物の添加量が0.2?7重量部の範囲であると耐放射線性(耐γ線性)の改善効果とロックウェル硬さ、溶出性、配合コストなどとのバランスが最適な領域を選択できる。シラン化合物のさらに好ましい添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1.5?3.5重量部である。
【0028】
本発明では、これらのシラン化合物の中でも、モノアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシシラン化合物、トリアルコキシシラン化合物、テトラアルコキシシラン化合物から選択される一種以上のシラン化合物であることが特に好ましい。
【0029】
本発明に使用できるモノアルコキシシラン化合物としては、例えばトリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシランなどが例示される。
【0030】
本発明に使用できるジアルコキシシラン化合物としては、例えばメチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルアミノエトキシプロピルジアルコキシシラン、N(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどが例示される。
【0031】
本発明に使用できるトリアルコキシシラン化合物としては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N(フェニル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-(ポリエチレンアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ビニルトリスビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが例示される。
【0032】
本発明に使用できるテトラアルコキシシラン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが例示される。特に、耐γ線性と他の特性、コストなどとのバランスから、トリアルコキシシラン化合物が好適であり、中でも、溶出性に特に優れるという観点から、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが特に好適である。
また、本発明においては、これらのシラン化合物を二種以上併用することも自在に可能であり、特に限定されるものではない。
【0033】
本発明に規定するロックウェル硬さ(Rスケール)とは、JIS K7202に規定されている硬さであり、前記JISに準拠して23℃の温度で測定した値であるが、硬質医療用部品を製造するには、前記硬さが35°以上となる組成物を使用する。特に前記硬さが60°以上の範囲が好適である。
【0034】
前記硬さが35°以上の組成物を硬質医療用部品に適用すると、部品が折れ曲がったりして、内容物の液流が妨げられるなどの不具合を発生することもなく、バルブ性能、チューブ連結作業性なども良好に維持される。
【0035】
また、前記ロックウェル硬さは、γ線照射前の硬さもγ線照射後の硬さも35°以上に維持されるのが良い。また硬さの変化(Δ硬さ)は、あまり大きな変化がない方が好ましく、特に限定されるものではないが20°以下であることが特に好ましい。
【0036】
本発明で耐放射線性の評価に用いたγ線照射前後のYI値の差(ΔYI)とは、実施例の「耐放射線性の評価」の項でさらに詳細に述べるが、シート状のテストサンプルにγ線を照射する前のYI値とγ線照射後のYI値の差を求めたもので、変色の程度を評価するパラメータとして定義したものである。
【0037】
ΔYIはできる限り小さい値であることが好ましく、硬質医療用途に使用する為には、20以下であることが好ましい。20以下であれば、医療用部品の滅菌時の変色が許容範囲に抑制でき、前記用途に好適に使用できる。
【0038】
本発明においては、配合剤として従来公知の液状配合剤を必要に応じて使用することができるが、その液状配合剤の使用量は、ロックウェル硬さの制限を考慮して塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、15重量部以下が好ましい。15重量部を越えるとロックウェル硬さを35°以上に維持することが難しくなり、硬質医療用部品としての機能を損なう場合がある。液状配合剤の代表として例えば熱安定剤、安定化助剤などがあげられ、従来公知の液状配合剤を適宜選択して使用できる。
【0039】
本発明の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物には、従来公知の熱安定剤を適宜使用することができる。熱安定剤は、成形加工時など熱が加わった際の着色を抑制する目的で使用するものであり各種の安定剤を適宜選択できる。
【0040】
本発明に添加し得る安定剤としては、従来医療用途に使用されている公知の安定剤を使用することができるが、特に好ましくは、有機錫安定剤が良く、中でも例えばメチル錫メルカプト、ブチル錫メルカプト、オクチル錫メルカプトなどの錫メルカプト系安定剤、オクチル錫マレエートなどの錫マレエート系安定剤などを好適に使用できる。特に、放射線滅菌時の変色をおさえる効果が顕著であるという観点から、オクチル錫メルカプト系安定剤が格段に好ましい。
【0041】
また、安全性、衛生性の観点から、従来医療用途に使用されているステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸も好適に使用できる。さらに、硬質医療用組成物としての各種の性能バランスという観点から、メチル錫メルカプト系安定剤とステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムを組み合わせた組成物は、特に有用である。
【0042】
これら安定剤の添加量は、塩化ビニル樹脂100重量部に対し2?6重量部の範囲に設定することが特に好ましく、この範囲であれば、耐放射線性、熱安定性と錫の溶出性、コストなどの性能を最適領域に維持できる。前記添加量が6重量部を超えると、医療用組成物に適用される抽出テストにおいて、錫の溶出量がやや多くなり好ましい範囲を超える傾向がある。耐放射線性、熱安定性と錫の溶出性のバランスから2?4重量部の範囲が特に好ましい。
【0043】
また、安定化助剤としては従来公知の助剤を使用でき、例えば、ジオクチルホスァイト、ジフェニルノニルフェニルホスファィト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイトなどのホスファイト類、トリアリルホスフェートなどのホスフェート類、ステアロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタンなどのβジケトン類などを使用できる。中でも、ステアロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタンなどのβジケトン類は好適であり耐γ線による変色抑制に好適である。
【0044】
本発明においては、従来医療用途に使用されている滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの配合剤を必要に応じて公知の範囲で適宜使用することができる。
【0045】
本発明の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を用いて硬質医療用部品を製造する場合、特別な限定はなく従来公知の方法で製造することができる。例えば、所定の配合にてブレンドしたポリ塩化ビニル系樹脂組成物をロール、バンバリー、押出機などで混練してペレット化し、次いで、得られたペレットを各種の成形機、例えば押出機、射出成形機、カレンダー成形機などで成形加工することができる。
【0046】
ブレンドする方法としては、従来公知の方法を適用でき、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどを用いてホットブレンドまたはコールドブレンドにて各成分を混合する。混練する方法としては、従来公知の方法を適用でき、例えば単軸押出機、異方向ニ軸押出機、同方向二軸押出機、加圧ニーダー、遊星ギア多軸押出機などを用いてペレットを作成する。ペレット化の条件としてはシリンダー温度を100?160℃、ダイ温度を130?170℃に設定した混練り機を使用するのが好ましい。
【0047】
さらに、前記ペレットを二次成形する場合、シリンダー温度、ダイ温度を130?200℃に設定した成形機を使用するのが好ましい。
【0048】
本発明になる硬質医療用部品の成形には、細かくまた複雑な形状を有する部品が多い為、従来から射出成形機を用いた成形加工が適用されているが、本発明の硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物は、射出成形性などにも優れる為、射出成形に特に好適に使用でき、実用的に非常に有用である。
従来の配合系では、射出成形後滅菌することにより、寸法変化を起こしやすかった。本発明の樹脂組成物では、従来品より放射線滅菌前後による寸法安定性が優れている。
【0049】
本発明における医療用部品とは、薬事法第2条第4項および薬事法施行令第1条に定義され、別表第1に定められている機械器具のうち、特に、17,18,19,20,47,48,51,56などに定義される機械器具の連結部材、バルブなどを示す。具体的には、血液バッグ、輸液バッグ、廃液バッグ、輸液セット、輸血セット、成分採血システム、白血球除去フィルター、血液回路システム、人工透析回路、人工心肺システム、翼付針などの機械器具の連結部品、バルブ、サイドキャップなどとして使用される部品、あるいは真空採血管、注射器などを意味する。本発明の硬質医療用塩化ビニル樹脂組成物は、特に、血液バッグ、輸液バッグ、輸液セット、輸血セット、血液回路システムの連結部品、バルブ、サイドキャップにおいて極めて好適に使用される。
【0050】
これらの部品は、形状も多種多様であり、複雑な形状である為、大部分は射出成形にて製造される。例えば、T字管、Y字管、サイドキャップなどは好適に射出成形が適用される。また、比較的長尺の連結管、硬質チャンバーチューブなどは押出成形が好適に適用される。
【0051】
また、本発明になる硬質医療用塩化ビニル樹脂組成物は、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂に比較し、樹脂の初期着色性に優れると共に、射出成形する際、成形温度を低く抑えることができ生産性に優れ、また、PVCとの接着性が優れる。本発明になる硬質医療用塩化ビニル樹脂組成物の射出成形条件は、シリンダー温度170℃?190℃、射出圧800?1200Kg/cm^(2)で射出成形するのが特に好ましい。
【0052】
本発明になる硬質医療用塩化ビニル樹脂製部品は、従来医療用途に使用されている軟質部品と同一素材を組み合わせた医療用部品にでき、塩ビ系素材のみで回路などを製造することが可能であり、他素材との組合せで発生する接着不良などの不具合を回避でき、部品外れなどの医療トラブルを低減することに貢献できる。
【実施例】
【0053】
つぎに、実施例および比較例に基づき、本発明の態様をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものでない。
【0054】
以下に、実施例および比較例で用いる原材料および評価方法を示す。
1.使用材料の説明
(1)樹脂成分
塩化ビニル樹脂:カネビニールS1007:(株)カネカ製
(2)シラン化合物
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:信越化学(株)製
テトラエトキシシラン:信越化学(株)製
ビニルトリエトキシシラン:東芝シリコーン(株)
(3)可塑剤成分
フタル酸エステル可塑剤:(株)ADEKA製
トリメリット酸ジ-2-エチルヘキシル:(株)ADEKA製
エポキシ化大豆油:(株)ADEKA製
ジイソノニルシクロヘキサンジカルボキシレート:(株)BASF製
アルキルスルホン酸フェニルエステル:(株)ADEKA製(炭素数10?20の混合アルキル)
(4)安定剤、安定化助剤成分
有機錫系安定剤:ジオクチル錫ジメルカプタイド
有機錫系安定剤:ジオクチル錫マレエート
安定化助剤:トリス(ノニルフェニル)ホスファイト
(5)滑剤成分
滑剤:ポリエチレンWax
2.耐放射線の評価
耐放射線性については、まずロール/プレス加工にて作成したシート状のテストサンプルに対し、照射前の黄色度(YI値)をJISK7105に準拠しているコンピュータカラーマッチングシステム〔大日精化工業(株)製〕により測定した。次いで、そのテストサンプルに25KGyのγ線を照射した。照射後のテストサンプルは着色黄変が徐々に進行する為、安定化するまで照射後サンプルを恒温恒湿の条件下(23℃、50%相対湿度)で3日間静置した。その後、照射後サンプルのYI値を上記測定器にて測定して、照射後YI値を求めた。
【0055】
変色度の評価指標として、下記式で定義した黄変度(ΔYI値)を計算し、ΔYI値が20以下を合格範囲と判定した。
【0056】
ΔYI値=(照射後YI)-(照射前YI)
3.硬さ測定
(1)ロックウェル硬さ
JIS K7202に準拠して、ロックウェル硬さ試験機を用いて、試験温度23℃、測定直後のデータを採用。試験片は、ロール/プレス加工にて厚さ6mmのシートテストサンプルを作成し、23℃*50%RHの恒温恒湿室に一昼夜保持した後測定に供した。
【0057】
硬質医療用部品に要求される硬さを考慮して、γ線照射前ロックウェル硬さは35°以上が合格範囲であり、また、照射によって大きく硬さ変化が起きると部品としての性能異常に繋がる為、硬さ変化(Δ硬さ)の合格範囲を20°以下とした。
4.溶出性
日本医療器材協会が定めた医療用プラスチック試験規格の塩化ビニル樹脂コンパウンドI規格に準拠し、紫外吸収スペクトルを測定した。ロール/プレス加工にて作成した約2mm厚シートを約3mm四方に裁断し、試験用ペレットとした。前記ペレットを所定量精秤して硬質ガラス製容器に投入し、121℃で1時間加熱抽出した。前記抽出液を所定量精秤し、試験液を作成した。前記試験液と空試験液を波長220?350nmにおける吸光度の差ΔUVを測定した。吸光度差の範囲を4段階に分類し、A?Dで評価した。評価基準は、以下のように行ない、0.10未満を合格とした。
A:合格 :吸光度差:0.04未満
B:合格 :吸光度差:0.04以上?0.07未満
C:合格 :吸光度差:0.07以上?0.10未満
D:不合格:吸光度差:0.10以上
(実施例1?4、比較例1?7)
表1の配合処方に基づき、硬質配合系での可塑剤添加効果を調べた。各成分を計量し、全ての成分を一括してハンドミキシングし、このブレンド物を表面温度160℃に制御した2本ロールに投入して、5分間混練した。得られたロールシートを所定の大きさに切断して、プレス成形機にて、所定の厚さのシートを作成した。プレス条件は、170℃予熱2分、加熱2分後、冷却プレスにて5分とした。得られたシートを耐放射線性などの各測定に供した。
【0058】
比較例1?2は、従来の硬質医療用塩化ビニル樹脂組成物として提案されているエポキシ系可塑剤を使用した配合系であるが、比較例1は、溶出性はギリギリ合格範囲であるが、ΔYIが不合格となり、比較例2は、ΔYIは合格、溶出性はギリギリ合格となるが、硬さが不合格となる。比較例3?5は、軟質医療部品に使用されている一般的な可塑剤であるDOPあるいはTOTMを各々10重量部、または可塑剤なし(無可塑)にした配合系であるが、ΔYI値が硬質用途範囲外となり不合格となった。
【0059】
実施例1、2は、ジイソノニルシクロヘキシルジカルボキシレートを使用し、実施例3、4は、アルキルスルホン酸フェニルエステルを使用した配合系であるが、溶出性にも優れ、耐γ線性にも優れ、ロックウェル硬さも医療用組成物としての性能を具備している。中でも、実施例1,2に用いたジイソノニルシクロヘキシルジカルボキシレートは、溶出性が抜群に優れており医療用組成物として優れていることが判る。
【0060】
また、比較例6,7は、ジイソノニルシクロヘキシルジカルボキシレートあるいはアルキルスルホン酸フェニルエステルを多量に添加した配合系であるが、19重量部以上添加すると、ロックウェル硬さを硬質組成物に要望される範囲を維持できなくなり不合格となった。
【0061】
以上の実験結果から、硬質医療用途に必要とされるロックウェル硬さを具備するには、可塑剤量は19重量部未満であることが判り、これら可塑剤の中でも、ジイソノニルシクロヘキシルジカルボキシレートとアルキルスルホン酸フェニルエステルが医療用組成物として好適であることが判った。
【0062】
以上の条件及び結果を表1にまとめて示す。表1中の材料の数値は重量部を示す。
【0063】
【表1】

【0064】
(実施例5?18、比較例8)
表2?3の配合処方に基づき、硬質配合系でのシラン化合物の種類、添加量効果を調べた。各成分を計量し、全ての成分を一括してハンドミキシングし、このブレンド物を表面温度160℃に制御した2本ロールに投入して、5分間混練した。得られたロールシートを所定の大きさに切断して、プレス成形機にて、所定の厚さのシートを作成した。プレス条件は、170℃予熱2分、加熱2分後、冷却プレスにて5分とした。得られたシートを耐放射線性などの各測定に供した。
【0065】
比較例8は、軟質樹脂の例である。シラン化合物(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)の添加量を18重量部と大巾に増やした配合系であるが、ΔYIは極めて小さくなって耐放射線性が改善されるものの、ロックウェル硬さが35°以下となり硬質ではなくなるうえ、溶出性が不合格となって硬質組成物として使用できないことが判る。
【0066】
3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランの添加量を変化させた実施例5?14から、ロックウェル硬さと耐γ線性、溶出性のバランスを考慮し、シラン化合物の最適な添加範囲は0.2?7重量部であることが判る。
【0067】
実施例7,10,12の比較から、ロックウェル硬さはいずれも合格範囲で、耐γ線性、溶出性の観点で、ビニルトリエトキシシラン、テトラエトキシシランが優れ、特にビニルトリエトキシシランがこれらの性能バランス的に極めて優れていることが判る。
【0068】
実施例13?14は、可塑剤の配合を1重量%まで下げてもロックウェル硬さはいずれも合格範囲で、耐γ線性、溶出性を満足することが確認できた。
【0069】
実施例15?16は可塑剤の混合系、実施例17?18はさらにシラン化合物の混合系の配合を調べたが、いずれもロックウェル硬さはいずれも合格範囲で、耐γ線性、溶出性を満足することが確認できた。
【0070】
以上の条件及び結果を表2?3にまとめて示す。表2?3中の材料の数値は重量部を示す。
【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤から選択される1種以上の可塑剤を1重量部以上15重量部以下配合してなる組成物であって、
JIS K7202で規定されるロックウェル硬さが、35°以上の硬質であることを特徴とする放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
前記組成物は、さらにシラン化合物が0.2?7重量部配合されており、前記可塑剤がシクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤であり、前記シラン化合物が3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及びビニルトリエトキシシランから選択される少なくとも1つである請求項1に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
前記可塑剤は、アルキルスルホン酸系可塑剤、又は、シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤及びアルキルスルホン酸系可塑剤の両方である請求項1に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項4】
前記組成物は、さらにシラン化合物が0.2?7重量部配合されている請求項1又は3に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項5】
前記シラン化合物は、モノアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物、トリアルコキシシラン化合物、及びテトラアルコキシシラン化合物から選択される少なくとも一種である請求項4に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、γ線照射前後のΔYIが20以下である請求項1?5のいずれか1項に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載の放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物を成形加工してなる放射線滅菌用かつ硬質医療用部品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-11-24 
結審通知日 2015-11-27 
審決日 2015-12-08 
出願番号 特願2007-35201(P2007-35201)
審決分類 P 1 113・ 113- YAA (C08L)
P 1 113・ 832- YAA (C08L)
P 1 113・ 121- YAA (C08L)
P 1 113・ 536- YAA (C08L)
P 1 113・ 537- YAA (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 周平  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 前田 寛之
須藤 康洋
登録日 2013-06-14 
登録番号 特許第5291294号(P5291294)
発明の名称 放射線滅菌用かつ硬質医療用塩化ビニル系樹脂組成物およびそれを用いた放射線滅菌用かつ硬質医療用部品  
代理人 宮嶋 学  
代理人 小島 一真  
代理人 柏 延之  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  
代理人 森本 祐介  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 浅野 真理  
代理人 高田 泰彦  
代理人 横田 修孝  
代理人 柏 延之  
代理人 浅野 真理  
代理人 森本 祐介  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  
代理人 平野 惠稔  
代理人 平野 惠稔  
代理人 大野 浩之  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 宮嶋 学  
代理人 平野 惠稔  
代理人 高田 泰彦  
代理人 森本 祐介  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  
代理人 中村 行孝  
代理人 中村 行孝  
代理人 小島 一真  
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