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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1311136
審判番号 不服2014-21106  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-17 
確定日 2016-02-10 
事件の表示 特願2012-178662「次世代UTRANのサポートに関する方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日出願公開、特開2012-249325〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年7月17日を国際出願日とする出願である特願2008-522857号(パリ条約による優先権主張平成17年7月20日(米国)、平成18年5月31日(米国))の一部を新たな特許出願とした出願である特願2011-177666号の一部を、平成24年8月10日に新たな特許出願としたものであって、平成25年10月22日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して平成26年1月29日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月11日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年6月17日に請求人に送達された。これに対して、同年10月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、平成27年3月26日に上申書が提出されたものである。

第2 平成26年10月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の結論]
平成26年10月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成26年1月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は次のとおりのものである。(以下、「補正前発明」という。)

「【請求項1】
無線送受信ユニット(WTRU)における使用のための方法であって、
次世代ユニバーサル移動体通信システム(UMTS)地上波無線アクセスネットワーク(E-UTRAN)ケイパビリティ情報を示すメッセージを生成するステップであって、前記E-UTRANケイパビリティ情報は、直交周波数分割多重(OFDM)モードのサポート、および、UMTS地上波無線アクセスネットワーク(UTRAN)からE-UTRANへのハンドオーバのサポートの指示を含む、ステップと、
UTRANチャネル上で前記メッセージをUTRAN基地局へ送信するステップと、
前記メッセージに基づいて、E-UTRANサービスを受信するステップと
を備えることを特徴とする方法。」

本件補正により、平成26年1月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、前記手続補正書において請求人が示した補正箇所である。以下、本件補正後の請求項1に係る発明を「補正発明」という。)

「【請求項1】
無線送受信ユニット(WTRU)における使用のための方法であって、
マルチモード/マルチ無線アクセス技術(RAT)ケイパビリティ情報を示す第1のメッセージを生成するステップであって、前記マルチモード/マルチRATケイパビリティ情報は、次世代ユニバーサル移動体通信システム(UMTS)地上波無線アクセスネットワーク(E-UTRAN)に対するサポート、ならびに、UMTS地上波無線アクセスネットワーク(UTRAN)およびE-UTRANに関連付けられたハンドオーバに対するサポートの指示を含む、ステップと、
第1のUTRANチャネル上で前記第1のメッセージをUTRAN基地局へ送信するステップと、
第2のUTRANチャネルを介して、前記UTRAN基地局からハンドオーバメッセージを受信するステップと、
前記ハンドオーバメッセージから、前記E-UTRANに関連付けられた第1の情報を抽出するステップであって、前記第1の情報は、E-UTRANへのハンドオーバに関連付けられた周波数帯域および帯域幅を示す、ステップと、
前記ハンドオーバメッセージに基づいて、E-UTRANへのハンドオーバを開始するステップと
を備えることを特徴とする方法。」

そして、本件補正は、以下の5つの部分からなる。(以下、(1)?(5)の部分に対応する補正を「補正1」?「補正5」という。)

(1)補正前発明の「前記メッセージに基づいて、E-UTRANサービスを受信するステップと」を削除する。
(2)補正前発明の「前記メッセージをUTRAN基地局へ送信するステップと、」の後に「第2のUTRANチャネルを介して、前記UTRAN基地局からハンドオーバメッセージを受信するステップと、
前記ハンドオーバメッセージから、前記E-UTRANに関連付けられた第1の情報を抽出するステップであって、前記第1の情報は、E-UTRANへのハンドオーバに関連付けられた周波数帯域および帯域幅を示す、ステップと、
前記ハンドオーバメッセージに基づいて、E-UTRANへのハンドオーバを開始するステップと」を附す。
(3)補正前発明の「次世代ユニバーサル移動体通信システム(UMTS)地上波無線アクセスネットワーク(E-UTRAN)ケイパビリティ情報を示すメッセージ」及び「前記E-UTRANケイパビリティ情報」を、それぞれ「マルチモード/マルチ無線アクセス技術(RAT)ケイパビリティ情報を示す第1のメッセージ」及び「前記マルチモード/マルチRATケイパビリティ情報」に変更する。
(4)補正前発明の「直交周波数分割多重(OFDM)モードのサポート、および、」を「次世代ユニバーサル移動体通信システム(UMTS)地上波無線アクセスネットワーク(E-UTRAN)に対するサポート、ならびに、」に変更し、補正前発明の「UMTS地上波無線アクセスネットワーク(UTRAN)」と「E-UTRAN」の間の「から」を「および」に変更し、補正前発明の「E-UTRAN」と「ハンドオーバ」の間の「への」を「に関連付けられた」に変更し、補正前発明の「ハンドオーバ」と「サポート」の間の「の」を「に対する」に変更する。
(5)補正前発明の「UTRANチャネル上で」及び「メッセージをUTRAN基地局へ送信する」の前に、それぞれ「第1の」を附す。

2 補正の適否
(1)補正1に関し、まずこれが、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(以下、「限定的減縮」という。)を目的とするものに該当するか否かを検討する。一般に、特許請求の範囲に直列的に記載された発明特定事項の一部を削除する補正をすると、当該補正後の特許請求の範囲によって特定される発明の範囲は、補正前より広くなる。そして、補正1は、補正前の請求項1に他のステップと直列的に記載された「前記メッセージに基づいて、E-UTRANサービスを受信するステップ」を削除するものであるから、補正1は、請求項1によって特定される発明の範囲を広げるものである。したがって、補正1は、限定的減縮を目的とするものには該当しない。また、補正1は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするもの、同第3号の誤記の訂正を目的とするもの、及び、同第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするもののいずれにも該当しない。

(2)補正2に関しても、まずこれが、限定的減縮を目的とするものに該当するか否かを検討する。特許請求の範囲の補正が限定的減縮を目的とするものに該当するためには、当該補正が特許請求の範囲の減縮であることに加え、補正前の請求項に記載された、発明特定事項を限定するものであることが必要である。しかしながら、本件補正後の請求項1に記載された「ハンドオーバメッセージを受信するステップ」、「第1の情報を抽出するステップ」及び「ハンドオーバを開始するステップ」は、補正前の請求項1には記載されておらず、それらの記載が補正前の請求項1に記載されたいずれかの事項を限定するものでもない。したがって、補正2は、限定的減縮を目的とするものには該当しない。また、補正2は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするもの、同第3号の誤記の訂正を目的とするもの、及び、同第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするもののいずれにも該当しない。

(3)補正3に関しても、まずこれが、限定的減縮を目的とするものに該当するか否かを検討する。本件補正後の請求項1に記載された「マルチモード/マルチ無線アクセス技術(RAT)ケイパビリティ情報」は、本件補正前の請求項1に記載された「次世代ユニバーサル移動体通信システム(UMTS)地上波無線アクセスネットワーク(E-UTRAN)ケイパビリティ情報」の下位概念ではないから、補正3は、限定的減縮を目的とするものには該当しない。また、補正3は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするもの、同第3号の誤記の訂正を目的とするもの、及び、同第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするもののいずれにも該当しない。

(4)補正2については、特許法第17条の2第3項の規定を満たしていない。理由は下記のとおり。

ア 願書に最初に添付した明細書の記載
願書に最初に添付した明細書には、ハンドオーバに関連してUTRANからWTRUに送信される情報に関し、以下の記載がある。

(ア)「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、E-UTRANをサポートする方法およびシステムに関する。本発明はUTMSベースの無線通信システム(即ち、UTRAN)内部のマルチモード動作をサポートする従来の方法および手続きを拡張して、新規技術(即ち、E-UTRAN)をシステムに追加することを支援する。従来の手続きは第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)の標準(例えば、TS25.331)に明記されている。システムは、本明細書ではWTRU、UTRAN、およびE-UTRANを含む。従来のUTRANは、UTRANのカバレッジエリア内で利用可能な無線アクセス技術(RAT:radio access technology)のリストをWTRUに送信する。リストには、技術の種別、ビット速度、帯域幅等のような既存のRAT属性に関する情報が含まれる。本発明はE-UTRANに関する情報を本リストに導入する。WTRUは、初期アクセス中またはハンドオフ手続き中に本リストを受信する。リストを受信すると、E-UTRAN可能なWTRUは、このWTRUを構成/再構成して、ハンドオフ手続きまたはシステム再選択手続きを通して、本リストに基づいてE-UTRANサービスを受信する。E-UTRAN可能なWTRUは、E-UTRANケイパビリティを含むそのマルチモード/マルチRATケイパビリティ情報を、初期アクセス(即ち、アタッチ手続き)中またはシステムによる要求時に、UTRANに送信することができる。通常のハンドオフ手続き中に、UTRANは測定ケイパビリティメッセージをWTRUに送信する。測定ケイパビリティメッセージには、E-UTRANチャネル上で測定を実施するための必要なパラメータが含まれる。WTRUは測定ケイパビリティメッセージに基づいて測定を実施し、測定結果をUTRANに報告する。UTRANは測定結果に基づいてE-UTRANへのハンドオフを開始することができる。アイドル動作中に、WTRUは以前にUTRANから受信したケイパビリティ情報に基づいて、E-UTRANへ再選択することを決定することができる。WTRUは本情報を使用して送信機および受信機の帯域幅、ビット速度、周波数帯等を構成する。」

(イ)「【0013】
WTRU250は、少なくとも2つの異なるRATとの通信をサポートするよう構成した少なくとも2つの無線ユニットを具備したマルチモードWTRUである。例えば、WTRU250は、E-UTRANと通信する一方の無線ユニットと、I-WLANと通信する他方の無線ユニットとを含むことができる。WTRU250はRANの1つと接続を確立し、ハンドオフ基準がターゲットRANにより満たされる場合にターゲットRANへのハンドオフを実施することができる。
【0014】
ハンドオフをシステム200内で手動的または自動的に開始することができる。WTRU250のユーザによって開始される手動ハンドオフプロセスでは、ユーザはその現在の地理的位置にある、(E-UTRANのような)代替RATの存在を知っており、それらの間(例えば、UTRANとE-UTRANの間)で交換する。自動ハンドオフプロセスは、WTRU250によって開始されるか、あるいはRAN210a、210bまたはコアネットワーク220によって開始されることができる。
【0015】
WTRUが開始したハンドオフでは、WTRU250は、(E-UTRANのような)代替RATの存在を検出し、(例えば、E-UTRANに対する)ハンドオフプロセスをWTRU250のユーザの選択に基づいて開始する。WTRU250は、(ハンドオフポリシー、リソース状態等のような)必要情報を、ネットワーク(例えば、RAN210bまたはコアネットワーク220)から受信する。WTRU250は、RAN210a、210bのカバレッジエリアの位置を追跡し、所定のハンドオフ基準に基づいてハンドオフプロセスを開始する。
【0016】
システムが開始したハンドオフでは、コアネットワーク220(またはRAN210a、210b)は、WTRU250が、(E-UTRANを含む)複数のRATをサポート可能であることを認識し、(電力測定値のような)必要情報をそのWTRU250から要求する。WTRU250がターゲットRANのカバレッジエリア内部に入ると、コアネットワーク220(またはRAN210a、210b)は、WTRU250の位置を追跡して、(WTRU250の移動性、要求帯域幅、アプリケーション、負荷分散、加入者のプロフィール、WTRU250が与える測定レポート等のような)一連の基準に基づいてハンドオフ手続きを開始する。」

(ウ)「【0035】
図3を再度参照する。WTRU352は測定ケイパビリティメッセージを受信する。WTRU352は次いで、測定ケイパビリティメッセージ内で示されるE-UTRANチャネルにおいてE-UTRAN信号315上で測定を実施し、測定結果をUTRAN354に報告する(ステップ314)。UTRAN354はE-UTRAN356に対するハンドオフを、測定報告に基づいて開始することができる。」

イ 審査官の主張
審査官の、平成27年1月9日付け前置報告書における主張は、以下のとおりである。

「1.拒絶査定時の請求項1の『前記メッセージに基づいて、E-UTRANサービスを受信するステップ』を、審判請求時の補正によって『第2のUTRANチャネルを介して、前記UTRAN基地局からハンドオーバメッセージを受信するステップ』と補正した。
発明の詳細な説明を参酌すると、拒絶査定時の『E-UTRANサービスを受信する』とは発明の詳細な説明に記載された『測定ケイパビリティメッセージ』を受信することに対応する。『ハンドオーバメッセージを受信する』ことではない。
また本願の発明の詳細な説明には『ハンドオーバメッセージ』は記載されておらず、『ハンドオーバメッセージ』にどのような情報が含まれているかも記載されていない。
したがって、この補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
補正後の請求項4も、同様である。」

ウ 請求人の主張
前記前置報告書における審査官の主張に対し、請求人は、平成27年3月26日付け上申書にて、以下のとおり主張する。

「3.前置報告書に対する意見
3-1 指摘事項aについて
審判請求人は、上記指摘事項aにおいて指摘された補正事項が、本願明細書の第0006段落、及び第0013段落乃至第0015段落の記載によってサポートされていると思料します。具体的には、第0010段落の『従来のUTRANは、UTRANのカバレッジエリア内で利用可能な無線アクセス技術(RAT:radio access technology)のリストをWTRUに送信する。リストには、技術の種別、ビット速度、帯域幅等のような既存のRAT属性に関する情報が含まれる。本発明はE-UTRANに関する情報を本リストに導入する。WTRUは、初期アクセス中またはハンドオフ手続き中に本リストを受信する。』の記載に基づいて、WTRUがハンドオーバメッセージを受信することを導くことができると思料します。
また、第0015段落の『WTRUが開始したハンドオフでは、WTRU250は、(E-UTRANのような)代替RATの存在を検出し、(例えば、E-UTRANに対する)ハンドオフプロセスをWTRU250のユーザの選択に基づいて開始する。WTRU250は、(ハンドオフポリシー、リソース状態等のような)必要情報を、ネットワーク(例えば、RAN210bまたはコアネットワーク220)から受信する。』の記載から、上記ハンドオーバメッセージが第2のUTRANチャネルを介して受信されることを導くことができると思料します。
以上のことから、指摘事項aで示されたような不備はないものと思料いたします。」

エ 当審の判断
(ア)補正2が特許法第17条の2第3項の規定を満たしているというためには、少なくとも、願書に最初に添付された明細書、請求の範囲及び図面(以下、「明細書等」という。)に、(a)「UTRAN基地局からハンドオーバメッセージを受信し」、(b)「ハンドオーバメッセージからE-UTRANに関連付けられた」、「E-UTRANへのハンドオーバに関連付けられた周波数帯域および帯域幅を示す」、「第1の情報を抽出し」、(c)「ハンドオーバメッセージに基づいて、E-UTRANへのハンドオーバを開始する」、という(a)?(c)の全ての部分に対応する「ハンドオーバメッセージ」が記載されていなければならない。

(イ)しかしながら、明細書等には「ハンドオーバメッセージ」という用語そのものは記載されておらず、前記(ア)の(a)?(c)の全ての部分に対応するものも記載されていない。また、前記ウで示した「請求人の主張」で指摘されている段落【0006】及び【0013】?【0015】を参照しても、明細書等に「ハンドオーバメッセージ」に対応するものが記載されているとすることはできない。

(ウ)したがって、明細書等には、補正2に対応するものが記載されていない。よって、補正2は、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものではない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正のうち、少なくとも、補正1?3は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反し、補正2は、同第3項の規定にも違反するので、その余の部分について言及するまでもなく、本件補正は同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成26年10月17日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年1月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(「第2」[理由]1で示した補正前発明を参照。)

第4 当審の判断
1 引用例
(1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特表2002-541747号公報(平成14年12月3日国内公表)(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動通信システムに関連し、更に詳細には移動通信ハンドオフ手順に関連する。」

イ 「【0010】
本発明の実施形態として、第3世代システムとあらゆるタイプのシステムを含む第2世代システムとの間のシステム間ハンドオーバへ適応する包括的なメカニズムを与える。その包括的なメカニズムは、隣接したセルシステムの通信言語(共通でも異種のものでも)によって隣接セルシステムとの通信を示すために必要な情報をすべて含むような、標準化データの"コンテナ"の構造になっている。たとえば、隣接GSMセルとのハンドオーバを行なうとき、コンテナはGSM伝送のための通信パラメータを示す。一方、隣接セルがPDCを示していた場合、コンテナはPDC伝送のための通信パラメータを示す。第3、第2、第1または他のタイプのどんな通信パラメータも、コンテナによって示すことができる。コンテナを用いることで、ハンドオーバで受け取る側は移動無線機に通信パラメータを示すことができ、そして、移動無線機は、固有のパラメータを用いる隣接セルへその特性を示すことができる。重要なのは、現在のセル(たとえば第3世代)は、コンテナの中にある特定の第2世代パラメータの中身を読んだり解釈したりする必要がなく、単に、評価のために隣接セルへコンテナを届ければよいという点である。この方法では、第3世代システムは全ての前の世代のプロトコルを理解する必要がなく、受け取る側の第2(または)第1世代システムをだまして、他の第2(または)第1世代システムと通信していると信じさせている。次の、図と関連させた本発明の実施形態の詳細な説明により、本発明の他の目的や利点はさらに完全に理解、認識される。」

ウ 「【0021】
図2における通信ステップ1は、UMTSシステムからアイドルモードの移動局、すなわちマルチモード移動局やシングルモード移動局への、システム情報のブロードキャストである。この通信ステップ1において、ネットワークはアイドルモード(すなわち、セルのコントロールチャネル上のブロードキャスト情報の受信を除いては、ネットワークと通信していない)の移動局に隣接セルの情報、少なくとも図2の左側の第2世代基地局によってサービスされるセルのための情報を供給する。ステップ1に示すように、第3世代UTRANからブロードキャストされるシステム情報は、いわゆる"コンテナ"(詳細は後ほど述べる)という情報を含むことができ、それは、CDMAモード(第3世代)、または、どんな第2世代モード(GSM/PDC)においてもハンドオフ性能を利用可能であることを示す。もちろんUTRANは、デュアルモード移動局と第3世代ワイドバンドCDMAモード(WCDMA)で通信し、GSM/PDC/他のプロトコルでは通信しないが、他の第3世代システムへハンドオフするためにUTRANを介してコンテナ性能が利用可能なデュアルモード移動端末であることを単に識別する。
【0022】
ステップ1においてブロードキャストシステム情報を送信した後、ステップ2において、UTRANと移動局の間で接続セットアップ手続が実行される。これは、ネットワークと移動局の間の標準的な接続セットアップ手続に従う。
【0023】
ステップ3では、移動局はネットワークに対し、その無線性能に関する通知を与える。移動局は、第3世代UTRANとのこの通信を、この例ではWCDMAモードで行なう。その性能情報の一部として、移動局はGSM/PDC/他のモードで同様に通信可能なネットワークとも通信してもよい。以下に詳細に示すように、移動局のデュアルモード側面を含むこの情報は、移動局からネットワークへ返される“コンテナ”に含まれる。
【0024】
図2のステップ4では、ステップ3で与えられる性能によって、移動局がデュアルモードで動作可能なことを知っているネットワークは、移動局へ隣接セル情報を与える。移動局へのこの伝送には、それらのシステムが同じ世代であっても異なる世代であっても、隣接セルのコンテナ情報が含まれる。
【0025】
ステップ5では、ネットワークは移動局へ測定制御の情報及び指示を与える。さらに、以下に詳細に述べるように、この情報は異種セルの測定制御情報のコンテナを含んでいる。
【0026】
その後、移動局は指示された測定を隣接セルに対して行う。測定結果はステップ6においてネットワークへ報告される。以下に詳細に述べるように、これらの隣接セルの測定報告は、異種の隣接セルの測定コンテナを含んでいる。
【0027】
ステップ7では、ネットワークは異種の隣接セルへ移動局をハンドオフするかどうかを決定する。ハンドオフの決定がされると、第3世代ネットワークUTRANは、ステップ8において適切なコアネットワークを通して、ステップ9において異種の隣接セル基地局へハンドオフコマンドを発する。図2の場合、異種の隣接セルは第2世代基地局であり、ステップ10においてコアネットワークへハンドオフコマンドを返す。コアネットワークは、"ハンドオフコマンドB"として第3世代ネットワークUTRANへハンドオフコマンドを中継し、移動局へは"ハンドオフコマンドC"として送る。
【0028】
ステップ9と10は、同じかまたは異なるネットワーク上の別のMSCを経由する。本発明は、たとえば、MSCとBSsを伴うアーキテクチャのような特定のネットワークアーキテクチャに限定されない。これらのアーキテクチャは例としてここで用いているだけである。
【0029】
その後、ステップ11において、移動局は第2世代基地局に渡され、第2世代プロトコル(たとえばGSMやPDC)で通信を始める。最後に、第2世代基地局(または、特定の第2世代システムアーキテクチャを用いる別の第2世代ノード)は、ステップ12において、ハンドオフ手順が完了したことをコアネットワークへ通知し、ステップ13において、コアネットワークは第3世代システムのリソースを解放する。」

エ 「【0040】
図3と4では、ステップ1において移動局のコントロールチャネル上にブロードキャストされる隣接セル情報は、異種の隣接セルのコンテナを含み、図3では"隣接セルデータ(個々のシステムの仕様によって特定される)"として、図4では"隣接セルデータ(異種システムによって特定される)"として示される。コンテナ構造は、報告される隣接セルそれぞれについて、データマップ中に作られる。このコンテナは、あらゆる通信プロトコルに対し構造的に汎用性があり、報告される個々のセルの通信プロトコルに対しコンテンツ特有である。
【0041】
図5と6において、図2のステップ3における移動局性能の送信は、異種システムに関する性能のコンテナを含んでいる。これは、図5においては"MS性能データ(個々のシステムの仕様によって特定される)"として、また、図6においては"MS性能データ(異種システムによって特定される)"として示される。1つのコンテナは、ネットワークへ報告される各々の移動体無線性能を与える。
【0042】
図7と8において、隣接セル情報は第3世代ネットワークによって移動局へ与えられ、異種の隣接セルのコンテナを含んでいる。これは、図7においては"隣接セルデータ(個々のシステムの仕様によって特定される)"として、また、図8においては"隣接セルデータ(異種システムによって特定される)"として示される。汎用コンテナは、各隣接セルのシステムタイプに特有の全てのコンテンツ固有のプロトコルデータ含むように、報告される各隣接セルへ与えられる。」

オ 「【0048】
上記の実施形態において、UMTS、GSM、PDCシステムは例として用いただけである。このコンテナ構造は、これらのシステムのいずれかに限定されるものではなく、現在のあらゆるタイプのシステムや将来の移動体無線システムにおいても用いることができる。」

(2)これらのことから、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる

移動通信ハンドオフ手順に関連し、
実施形態として第3世代システムとあらゆるタイプのシステムを含む第2世代システムとの間のシステム間ハンドオーバへ適応する包括的なメカニズムであって、
ステップ1は、UMTSシステムからアイドルモードの移動局、すなわちマルチモード移動局やシングルモード移動局への、システム情報のブロードキャストであり、ステップ1において、ネットワークはアイドルモードの移動局に隣接セルの情報、少なくとも第2世代基地局によってサービスされるセルのための情報を供給し、第3世代UTRANからブロードキャストされるシステム情報は、いわゆる"コンテナ"という情報を含むことができ、UTRANは、デュアルモード移動局と第3世代ワイドバンドCDMAモード(WCDMA)で通信し、GSM/PDC/他のプロトコルでは通信しないが、他の第3世代システムへハンドオフするためにUTRANを介してコンテナ性能が利用可能なデュアルモード移動端末であることを単に識別し、
ステップ2において、UTRANと移動局の間で接続セットアップ手続が実行され、
ステップ3では、移動局はネットワークに対し、その無線性能に関する通知をWCDMAモードで行ない、
ステップ4では、ステップ3で与えられる性能によって、移動局がデュアルモードで動作可能なことを知っているネットワークは、移動局へ隣接セル情報を与え、
ステップ5では、ネットワークは移動局へ測定制御の情報及び指示を与え、
移動局は指示された測定を隣接セルに対して行い、測定結果はステップ6においてネットワークへ報告され、
ステップ7では、ネットワークは異種の隣接セルへ移動局をハンドオフするかどうかを決定し、
ハンドオフの決定がされると、第3世代ネットワークUTRANは、ステップ8において適切なコアネットワークを通して、ステップ9において異種の隣接セル基地局へハンドオフコマンドを発し、異種の隣接セルは第2世代基地局であり、
ステップ10においてコアネットワークへハンドオフコマンドを返し、コアネットワークは、"ハンドオフコマンドB"として第3世代ネットワークUTRANへハンドオフコマンドを中継し、移動局へは"ハンドオフコマンドC"として送り、
ステップ11において、移動局は第2世代基地局に渡され、第2世代プロトコルで通信を始め、
最後に、第2世代基地局は、ステップ12において、ハンドオフ手順が完了したことをコアネットワークへ通知し、
ステップ13において、コアネットワークは第3世代システムのリソースを解放し、
ステップ1において移動局のコントロールチャネル上にブロードキャストされる隣接セル情報は、異種の隣接セルのコンテナを含み、コンテナ構造は、報告される隣接セルそれぞれについて、データマップ中に作られ、
ステップ3における移動局性能の送信は、異種システムに関する性能のコンテナを含み、1つのコンテナは、ネットワークへ報告される各々の移動体無線性能を与え、
隣接セル情報は第3世代ネットワークによって移動局へ与えられ、異種の隣接セルのコンテナを含み、汎用コンテナは、各隣接セルのシステムタイプに特有の全てのコンテンツ固有のプロトコルデータ含むように、報告される各隣接セルへ与えられ、
コンテナ構造は、UMTS、GSM、PDCシステムは例として用いただけであり、これらのシステムのいずれかに限定されるものではなく、現在のあらゆるタイプのシステムや将来の移動体無線システムにおいても用いることができる方法。

2 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「移動局」は、本願発明の「無線送受信ユニット(WTRU)」に相当する。

イ 引用発明の「無線性能」は、本願発明の「ケイパビリティ情報」に相当する。

ウ 引用発明は、UTRANから「第2世代システム」へ移動通信ハンドオフを行うものであり、本願発明は、UTRANから「E-UTRAN」へのハンドオーバを行うものである。そして、「第2世代システム」も「E-UTRAN」もUTRANとは異なるシステムであるから、「ハンドオーバ」と「ハンドオフ」とが同じ意味で用いられることが技術常識であることも考慮すると、引用発明と本願発明は、共にUTRANから異種システムにハンドオーバするものであるといえる。

エ 引用発明の「異種システムに関する性能のコンテナ」は、「無線性能」(本願発明の「ケイパビリティ情報」に相当)を与えるものであり、ネットワークに送信されるものであるから、本願発明の「ケイパビリティ情報を示すメッセージ」に相当する。また、引用発明の「無線性能に関する通知をWCDMAモードで行」うことは、本願発明の「UTRANチャネル上で前記メッセージをUTRAN基地局へ送信する」ことに相当する。

オ 引用発明は「異種システムに関する性能のコンテナ」(本願発明の「ケイパビリティ情報を示すメッセージ」に相当)を送信することで、異種システムである「第2世代プロトコル」で「通信を始め」るものであるから、「ケイパビリティ情報を示すメッセージに基づいて、異種システムサービスを受信する」ものであるといえる。

カ 引用発明では、ネットワークが「ステップ3で与えられる性能によって、移動局がデュアルモードで動作可能なことを知っている」状態となるから、ステップ3で送信する「異種システムに関する性能のコンテナ」(本願発明の「ケイパビリティ情報を示すメッセージ」に相当)に、「移動局がデュアルモードで動作可能」であることを知ることができる情報、すなわち、移動局が「異種システム」を「サポート」しているか否かに関する情報を含むことは明らかである。したがって、引用発明の「異種システムに関する性能のコンテナ」は「異種システムのサポートの指示を含む」といえる。また、引用発明は、ネットワークが異種システムへのハンドオーバを行うか否かを決定するものであるが、ステップ3で送信する「異種システムに関する性能のコンテナ」に、当該決定のために必要となる、移動局が異種システムへのハンドオーバを行うことができるか否かの情報、すなわち、「異種システムへのハンドオーバのサポートの指示」を含むことも明らかである。

(2)以上から、本願発明と引用発明は、次の点で一致、相違する。

[一致点]
無線送受信ユニット(WTRU)における使用のための方法であって、
異種システムケイパビリティ情報を示すメッセージを生成するステップであって、前記異種システムケイパビリティ情報は、異種システムのサポート、および、UMTS地上波無線アクセスネットワーク(UTRAN)から異種システムへのハンドオーバのサポートの指示を含む、ステップと、
UTRANチャネル上で前記メッセージをUTRAN基地局へ送信するステップと、
前記メッセージに基づいて、異種システムサービスを受信するステップと
を備えることを特徴とする方法。

[相違点]
異種システムについて、引用発明は「第2世代システム」を対象とするのに対し、本願発明は「直交周波数分割多重(OFDM)モード」を用いる「次世代ユニバーサル移動体通信システム(UMTS)地上波無線アクセスネットワーク(E-UTRAN)」を対象としているため、引用発明においては「ケイパビリティ情報」が「異種システムのサポート」及び「UMTS地上波無線アクセスネットワーク(UTRAN)から異種システムへのハンドオーバのサポート」の指示を含み、受信するサービスが「異種システムサービス」であるのに対し、本願発明においては「ケイパビリティ情報」が「直交周波数分割多重(OFDM)モードのサポート、および、UMTS地上波無線アクセスネットワーク(UTRAN)からE-UTRANへのハンドオーバのサポートの指示を含」み、受信するサービスが「E-UTRANサービス」である点。

3 判断
上記相違点について判断する。

(1)平成26年6月11日付け拒絶査定にて周知例として引用されたTSG-RAN WG1 Ad Hoc on LTE R1-050622, Alcatel et.al."Principles for the Evolved UTRA radio-access concept"(2005年6月20日発行。以下「周知例」という。下線は当審が付与。)には、 以下の事項が記載されている。

ア 「1. Introduction
This paper outlines the principles for an Evolved UTRA radio-access concept in support of the “Evolved UTRA and UTRAN” Study Item (SI). It is proposed that the below described basic principles are captured in the RAN1 TR [1].」
(当審訳:
1. 導入
本論文は、"Evolved UTRAとUTRAN"の研究項目(SI)をサポートするEvolved UTRAにおける無線アクセス概念のための原則を概説する。下記に記載される基本原則をRAN TR[1]に含めることを提案する。)

イ 「3. Downlink concept
3.1. Basic downlink transmission scheme
The downlink transmission scheme is based on conventional OFDM using a cyclic prefix, with a sub-carrier spacing ΔF=15kHz, a sub-frame duration Tsub-frame=0.5ms, and a cyclic-prefix(CP) duration TCP≒4.7/16.7μs(short/long CP). The basic transmission parameters are specified in more detail in Table 1 below.」
(当審訳:
3. ダウンリンク概念
3.1. 基本的なダウンリンク伝送方式
ダウンリンク伝送方式は、サイクリックプレフィックスを用いた従来のOFDMに基づき、サブキャリア間隔ΔF=15kHzを有し、サブフレーム持続時間Tsub-frame=0.5msであり、サイクリックプレフィックス(CP)継続時間TCP≒4.7/16.7μs(ショート/ロングCP)を有するものである。基本的な伝送パラメータを以下の表1に、より詳細に示す。)

(2)上記のとおり、周知例には、Evolved UTRAにおける無線アクセス概念のための原則として、ダウンリンク伝送方式は、サイクリックプレフィックスを用いた従来のOFDMに基づいていることが記載されており、「Evolved UTRAにおける無線アクセス」は「Evolved UTRAN」すなわち「次世代ユニバーサル移動体通信システム(UMTS)地上波無線アクセスネットワーク(E-UTRAN)」のことであるから、「伝送方式がOFDMに基づいているEvolved UTRAN」は周知である。(以下「周知技術」という)

(3)そして、引用例では、引用発明の「コンテナ構造」が、「これらのシステムのいずれかに限定されるものではなく、現在のあらゆるタイプのシステムや将来の移動体無線システムにおいても用いることができる」ものであることが示唆されているから、引用発明において、異種システムである「第2世代システム」に代えて、「将来の移動体無線システム」であり、本願優先権主張の日前に周知技術である「伝送方式がOFDMに基づいているE-UTRAN」へのハンドオーバを行うようにし、本願発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。また、本願発明のように構成したことによる効果も、引用発明及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。

(4)したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願優先権主張の日前に頒布された引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-09 
結審通知日 2015-09-15 
審決日 2015-09-28 
出願番号 特願2012-178662(P2012-178662)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 561- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 則之伊東 和重  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 清水 祐樹
吉田 隆之
発明の名称 次世代UTRANのサポートに関する方法およびシステム  
復代理人 濱中 淳宏  
復代理人 竹内 明  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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