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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする H04L 審判 査定不服 5項独立特許用件 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする H04L |
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管理番号 | 1311194 |
審判番号 | 不服2015-13845 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-23 |
確定日 | 2016-03-01 |
事件の表示 | 特願2012- 96531「逆方向リンクデータに対する順方向リンク肯定応答チャネルの操作」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日出願公開,特開2012-182810,請求項の数(23)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2003年12月30日を国際出願日とする出願である特願2004-566625号(パリ条約による優先権主張 2003年1月10日 米国)の一部を,平成21年7月17日に新たな特許出願とした特願2009-168749号の一部を,平成24年4月20日に新たな特許出願としたものであって,平成25年8月12日付けで拒絶理由通知がなされ,同年12月4日付けで手続補正がなされ,平成26年3月27日付けで最後の拒絶理由通知がなされ,同年9月30日に手続補正がなされ,平成27年3月12日付けで平成26年9月30日になされた手続補正についての補正の却下の決定がなされると共に同日付で拒絶査定がなされ,これに対し,平成27年7月23日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。 第2 補正の却下の決定の当否について 請求人は,審判請求書の「(3-1-2.)補正の却下の理由iに対する意見」の項及び「(3-1-3.)補正の却下の理由ii(進歩性欠如)に対する意見」の項において,「補正の却下の決定は取り消されるべきことを主張します。」と主張しているので,平成27年3月12日付けの補正の却下の決定の当否について検討する。 [補正の却下の決定の当否の結論] 平成27年3月12日付けの補正の却下の決定を取り消す。 [理由] 1 本件補正 平成26年9月30日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,本件補正前の平成25年12月4日付けで手続補正された特許請求の範囲に記載された 「 【請求項1】 無線通信システムにおける方法であって, 移動端末から逆方向リンクトラヒックチャネルデータフレームを受信することと, 逆方向リンクパイロット信号が前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足るエネルギーを含む場合に,基地局によって肯定応答(ACK)信号を送信することと, 前記逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするには不十分なエネルギーを含むが,前記データフレームの再送信からのエネルギーと結合されれば前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足りそうな,十分なエネルギーを有する場合に,前記基地局によって否定応答(NAK)信号を送信することと を備える,方法。 【請求項2】 前記逆方向リンクトラヒックチャネルは,逆方向補足チャネル(R-SCH)である,請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記NAK信号とともにトラヒック対パイロット比(T/P)デルタを送信することをさらに備える,請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記T/Pデルタを用いて前記データフレームのエネルギーレベルを調整することをさらに備える,請求項3に記載の方法。 【請求項5】 前記NAK信号が示された場合,前記調整されたデータフレームを再送信することをさらに備える,請求項4に記載の方法。 【請求項6】 無線通信システムのための基地局であって, 移動端末から逆方向リンクトラヒックチャネルデータフレームを受信するための受信機と, 逆方向リンクパイロット信号が前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足るエネルギーを含む場合に,肯定応答(ACK)信号を送信し,前記逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするには不十分なエネルギーを含むが,前記データフレームの再送信からのエネルギーと結合されれば前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足りそうな,十分なエネルギーを有する場合に,否定応答(NAK)信号を送信するための送信機と を備える,基地局。 【請求項7】 前記逆方向リンクトラヒックチャネルは,逆方向補足チャネル(R-SCH)である,請求項6に記載の基地局。 【請求項8】 前記送信機は,前記NAK信号とともにトラヒック対パイロット比(T/P)デルタを送信する,請求項6に記載の基地局。 【請求項9】 通信システムのための無線遠隔端末であって, 基地局に逆方向リンクトラヒックチャネルデータフレームを送信するための送信機と, 逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足るエネルギーを含む場合に,前記基地局から肯定応答(ACK)信号を受信し,前記逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするには不十分なエネルギーを含むが,前記データフレームの再送信からのエネルギーと結合されれば前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足りそうな,十分なエネルギーを有する場合に,前記基地局から否定応答(NAK)信号を受信するための受信機と を備える無線遠隔端末。 【請求項10】 前記逆方向リンクトラヒックチャネルは,逆方向補足チャネル(R-SCH)である,請求項9に記載の端末。 【請求項11】 前記受信機は,前記NAK信号とともにトラヒック対パイロット比(T/P)デルタを受信する,請求項9に記載の端末。 【請求項12】 前記T/Pデルタを用いて前記データフレームのエネルギーレベルを調整するためのコントローラをさらに備える,請求項11に記載の端末。 【請求項13】 前記送信機は,前記NAK信号が示された場合,前記調整されたデータフレームを再送信する,請求項12に記載の端末。 【請求項14】 無線通信システムにおける装置であって, 移動端末から逆方向リンクトラヒックチャネルデータフレームを受信するための手段と, 逆方向リンクパイロット信号が前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足るエネルギーを含む場合に,基地局によって肯定応答(ACK)信号を送信するための手段と, 前記逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするには不十分なエネルギーを含むが,前記データフレームの再送信からのエネルギーと結合されれば前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足りそうな,十分なエネルギーを有する場合に,前記基地局によって否定応答(NAK)信号を送信するための手段と を備える装置。 【請求項15】 前記逆方向リンクトラヒックチャネルは,逆方向補足チャネル(R-SCH)である,請求項14に記載の装置。 【請求項16】 前記NAK信号とともにトラヒック対パイロット比(T/P)デルタを送信するための手段をさらに備える,請求項14に記載の装置。 【請求項17】 前記T/Pデルタを用いて前記データフレームのエネルギーレベルを調整するための手段をさらに備える,請求項16に記載の装置。 【請求項18】 前記NAK信号が示された場合,前記調整されたデータフレームを再送信するための手段をさらに備える,請求項17に記載の装置。 【請求項19】 コンピュータ実行可能な命令を備えるコンピュータ読み取り可能な媒体であって,前記コンピュータ実行可能な命令は, 移動端末から逆方向リンクトラヒックチャネルデータフレームを受信し, 逆方向リンクパイロット信号が前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足るエネルギーを含む場合に,基地局によって肯定応答(ACK)信号を送信し, 前記逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするには不十分なエネルギーを含むが,前記データフレームの再送信からのエネルギーと結合されれば前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足りそうな,十分なエネルギーを有する場合に,前記基地局によって否定応答(NAK)信号を送信する ためのものである,コンピュータ読み取り可能な媒体。 【請求項20】 前記逆方向リンクトラヒックチャネルは,逆方向補足チャネル(R-SCH)である,請求項19に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。 【請求項21】 前記NAK信号とともにトラヒック対パイロット比(T/P)デルタを送信するための命令をさらに備える,請求項19に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。 【請求項22】 前記T/Pデルタを用いて前記データフレームのエネルギーレベルを調整するための命令をさらに備える,請求項21に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。 【請求項23】 前記NAK信号が示された場合,前記調整されたデータフレームを再送信するための命令をさらに備える,請求項22に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。」 を, 「【請求項1】 無線通信システムにおける方法であって, (a1) 移動端末から逆方向リンクトラヒックチャネルデータフレームを受信することと, (a2) 逆方向リンクパイロット信号が前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足るエネルギーを含む場合に,基地局によって肯定応答(ACK)信号を送信することと, (a3) 前記逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするには不十分なエネルギーを含むが,前記データフレームの再送信からのエネルギーと結合されれば前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足りそうな,十分なエネルギーを有する場合にのみ,前記基地局によって否定応答(NAK)信号を送信することと, (a4)ここにおいて,ACK又はNAK信号が送信されない場合,基地局で受信された不良なフレームはフレームの正しい復号化を可能とするに十分なエネルギーを有していなかったものとみなされる, を備える,方法。 【請求項2】 前記逆方向リンクトラヒックチャネルは,逆方向補足チャネル(R-SCH)である,請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記NAK信号とともにトラヒック対パイロット比(T/P)デルタを送信することをさらに備える,請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記T/Pデルタを用いて前記データフレームのエネルギーレベルを調整することをさらに備える,請求項3に記載の方法。 【請求項5】 前記NAK信号が示された場合,前記調整されたデータフレームを再送信することをさらに備える,請求項4に記載の方法。 【請求項6】 無線通信システムのための基地局であって, 移動端末から逆方向リンクトラヒックチャネルデータフレームを受信するための受信機と, 逆方向リンクパイロット信号が前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足るエネルギーを含む場合に,肯定応答(ACK)信号を送信し,前記逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするには不十分なエネルギーを含むが,前記データフレームの再送信からのエネルギーと結合されれば前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足りそうな,十分なエネルギーを有する場合に,否定応答(NAK)信号を送信するための送信機と, ここにおいて,ACK又はNAK信号が送信されない場合,基地局で受信された不良なフレームはフレームの正しい復号化を可能とするに十分なエネルギーを有していなかったものとみなされる, を備える,基地局。 【請求項7】 前記逆方向リンクトラヒックチャネルは,逆方向補足チャネル(R-SCH)である,請求項6に記載の基地局。 【請求項8】 前記送信機は,前記NAK信号とともにトラヒック対パイロット比(T/P)デルタを送信する,請求項6に記載の基地局。 【請求項9】 通信システムのための無線遠隔端末であって, 基地局に逆方向リンクトラヒックチャネルデータフレームを送信するための送信機と, 逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足るエネルギーを含む場合にのみ,前記基地局から肯定応答(ACK)信号を受信し,前記逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするには不十分なエネルギーを含むが,前記データフレームの再送信からのエネルギーと結合されれば前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足りそうな,十分なエネルギーを有する場合に,前記基地局から否定応答(NAK)信号を受信するための受信機と, ここにおいて,ACK又はNAK信号が送信されない場合,基地局で受信された不良なフレームはフレームの正しい復号化を可能とするに十分なエネルギーを有していなかったものとみなされる, を備える無線遠隔端末。 【請求項10】 前記逆方向リンクトラヒックチャネルは,逆方向補足チャネル(R-SCH)である,請求項9に記載の端末。 【請求項11】 前記受信機は,前記NAK信号とともにトラヒック対パイロット比(T/P)デルタを受信する,請求項9に記載の端末。 【請求項12】 前記T/Pデルタを用いて前記データフレームのエネルギーレベルを調整するためのコントローラをさらに備える,請求項11に記載の端末。 【請求項13】 前記送信機は,前記NAK信号が示された場合,前記調整されたデータフレームを再送信する,請求項12に記載の端末。 【請求項14】 無線通信システムにおける装置であって, 移動端末から逆方向リンクトラヒックチャネルデータフレームを受信するための手段と, 逆方向リンクパイロット信号が前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足るエネルギーを含む場合にのみ,基地局によって肯定応答(ACK)信号を送信するための手段と, 前記逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするには不十分なエネルギーを含むが,前記データフレームの再送信からのエネルギーと結合されれば前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足りそうな,十分なエネルギーを有する場合に,前記基地局によって否定応答(NAK)信号を送信するための手段と, ここにおいて,ACK又はNAK信号が送信されない場合,基地局で受信された不良なフレームはフレームの正しい復号化を可能とするに十分なエネルギーを有していなかったものとみなされる, を備える装置。 【請求項15】 前記逆方向リンクトラヒックチャネルは,逆方向補足チャネル(R-SCH)である,請求項14に記載の装置。 【請求項16】 前記NAK信号とともにトラヒック対パイロット比(T/P)デルタを送信するための手段をさらに備える,請求項14に記載の装置。 【請求項17】 前記T/Pデルタを用いて前記データフレームのエネルギーレベルを調整するための手段をさらに備える,請求項16に記載の装置。 【請求項18】 前記NAK信号が示された場合,前記調整されたデータフレームを再送信するための手段をさらに備える,請求項17に記載の装置。 【請求項19】 コンピュータ実行可能な命令を備えるコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって, 前記コンピュータ実行可能な命令は, 移動端末から逆方向リンクトラヒックチャネルデータフレームを受信し, 逆方向リンクパイロット信号が前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足るエネルギーを含む場合に,基地局によって肯定応答(ACK)信号を送信し, 前記逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするには不十分なエネルギーを含むが,前記データフレームの再送信からのエネルギーと結合されれば前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足りそうな,十分なエネルギーを有する場合にのみ,前記基地局によって否定応答(NAK)信号を送信する, ここにおいて,ACK又はNAK信号が送信されない場合,基地局で受信された不良なフレームはフレームの正しい復号化を可能とするに十分なエネルギーを有していなかったものとみなされる, ためのものである,コンピュータ読み取り可能な記録媒体。 【請求項20】 前記逆方向リンクトラヒックチャネルは,逆方向補足チャネル(R-SCH)である,請求項19に記載のコンピュータ読み取り記録可能な媒体。 【請求項21】 前記NAK信号とともにトラヒック対パイロット比(T/P)デルタを送信するための命令をさらに備える,請求項19に記載のコンピュータ読み取り記録可能な媒体。 【請求項22】 前記T/Pデルタを用いて前記データフレームのエネルギーレベルを調整するための命令をさらに備える,請求項21に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。 【請求項23】 前記NAK信号が示された場合,前記調整されたデータフレームを再送信するための命令をさらに備える,請求項22に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」 に変更する補正を含むものである。 本件補正により請求項1に付加された「(a1)」ないし「(a4)」は,単なる項番にすぎず,発明の解釈に影響を与えないので,検討の対象とはしない。 また,以降,本件補正前の特許請求の範囲の請求項を「補正前の請求項」と称し,本件補正後の特許請求の範囲の請求項を「補正後の請求項」と称する。 2 補正の適否の検討 (1)新規事項の有無 本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許法第17条の2第3項の規定(新規事項)に適合する。 (2)補正の目的要件 本件補正は, ア 補正前の請求項1及び19の「十分なエネルギーを有する場合に」を,「十分なエネルギーを有する場合にのみ」とする補正,並びに,補正前の請求項9及び14の「エネルギーを含む場合に」を,「エネルギーを含む場合にのみ」とする補正。 イ 「ACK又はNAK信号」の送信に関し,補正前の請求項1,6,9,14及び19に「ここにおいて,ACK又はNAK信号が送信されない場合,基地局で受信された不良なフレームはフレームの正しい復号化を可能とするに十分なエネルギーを有していなかったものとみなされる」を付加する補正。 ウ 補正前の請求項19ないし23の「媒体」を,「記録媒体」とする補正。 上記ア及びウは,特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものであることが明らかである。 また,上記イは,「ACK信号」と「NAK信号」のいずれも送信されない場合について限定をするものであるから,特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものである。 よって,上記アないしウからなる本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものに該当する。 (3)独立特許要件 本件補正は,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正を含むから,本件補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。 ア 引用発明 (ア)引用発明1 平成27年3月12日付けの補正の却下の決定及び原査定の拒絶の理由において引用された,引用文献1(国際公開第02/023792号)には,第10ページ第28?29行,Fig.3,Fig.7,Fig.9,Fig.13等の記載からみて,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認める。 「増加的冗長性(IR)を利用したハイブリッドARQ方式による無線通信システムにおける方法であって,基地局(BS)が, 無線ユーザ装置(WUE)からデータパケットを受信することと, 前記データパケットのデコード出力にエラーがない場合にACK信号を送信することと, 受信したデータパケットのデコード出力にエラーがあるが,前記データパケットのデコード出力が有益(useful)又は受理可能(acceptable)であり,追加の非重要ビット(less important bits)により利益を受ける場合には,NACKを送信して追加の非重要ビットの送信を要求することと, 受信したデータパケットのデコード出力にエラーがあり,当該データパケットのデコード出力が有益(useful)又は受理可能(acceptable)ではないか,追加の非重要ビット(less important bits)により利益を受けない場合には,何も送信しない(receiver may be complete silence)ことにより,重要ビット(important bits)の再送信を要求する, を備える方法。」 (イ)引用発明2 補正の却下の決定及び原査定の拒絶の理由において引用された,引用文献2(米国特許出願公開第2002/0018446号明細書)には,[0012],[0035]?[0041],Fig.5等の記載からして,次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認める。 「 現在のパケットを繰り返し送受信するハイブリッドARQ方式の通信システムにおいて,端末機が, 受信した現在のパケットのパイロットC/I値(受信電力値)が,第1のしきい値(パケットエラー率を所定の値以下に保証する下限値)より大きい場合に,現在のパケットを復号化してエラー検査を行い,エラーがない場合にACK信号を送信し, 受信した現在のパケットのパイロットC/I値(受信電力値)が,第1のしきい値(パケットエラー率を所定の値以下に保証する下限値)より大きい場合に,現在のパケットを復号化してエラー検査を行い,エラーがある場合と,前記パイロットC/I値が前記第1のしきい値より小さくかつ第2のしきい値(現在のデータ伝送率に対応するC/I値を所定の余裕間隔で除算して現在のパケットに対して既に伝送されたスロットの数を乗ずることによって得られる。)より大きい場合には,データ伝送率情報(DRC)を送信することにより,当該データ伝送率で現在のパケットの再伝送を要求し, 前記パイロットC/I値が前記第2のしきい値より小さい場合には,NACK信号を送信して現在のパケットの再伝送を中止させること。」 イ 対比 引用発明1と,補正との請求項1に係る発明(以下,「補正後の発明」という。)とを対比すると, 引用発明1の「基地局(BS)」,「無線ユーザ装置(WUE)」,「データパケット」はそれぞれ,補正後の発明の「基地局」,「移動端末」,「逆方向リンクトラフィックデータフレーム」に相当する。 よって,引用発明1の「無線ユーザ装置(WUE)からデータパケットを受信すること」は,補正後の発明の「移動端末から逆方向リントラフィックチャネルデータフレームを受信すること」に相当する。 また,引用発明1の「ACK信号」は,後述する相違点を除いて,補正後の発明の「肯定信号(ACK)信号」に相当する。 引用発明1の「基地局(BS)」が「ACK信号を送信すること」は,後述する相違点を除いて,補正後の発明の「基地局によって肯定応答(ACK)信号を送信すること」に相当する。そうすると,引用発明1と補正後の発明とは,「所定の場合に,基地局によって肯定応答(ACK)信号を送信すること」において共通する。 また,引用発明1の「NACK」は,後述する相違点を除いて,補正後の発明の「否定応答(NAK)信号」に相当する。 補正後の発明において,「否定応答(NAK)信号を送信すること」は,「前記データフレームの正しい復号化を可能とする」ためである。他方,引用発明1において,「追加の非重要ビット(less important bits)により利益を受ける場合」に「NAKを送信」している。そして,「追加の非重要ビット」を送信することは,データパケットを正しくデコード(復号)することを可能とするためと解するのが自然である。そうすると,引用発明1と,補正後の発明とは,「前記データフレームの正しい復号化を可能とする場合に,前記基地局において否定応答(NAK)信号を送信すること」において共通する。 引用発明1の「増加的冗長性(IR)を利用したハイブリッドARQ方式」では,最初に送信される重要ビットと,続いて送信される非重要ビットとを結合することにより,データパケットを正しく復号し得るだけのエネルギーを補強していくものであることを考慮すると,引用発明1の「受信したデータパケットのデコード出力にエラーがあり,当該データパケットのデコード出力が有益(useful)又は受理可能(acceptable)ではないか,追加の非重要ビット(less important bits)により利益を受けない場合には,何も送信しない(receiver may be complete silence)ことにより,重要ビット(important bits)の再送信を要求する」ことは,「追加の非重要ビット」を受信してもデータパケットを正しく復号できないと判断して,送信をやり直すことに等しいから,補正後の発明の「ここにおいて,ACK又はNAK信号が送信されない場合,基地局で受信された不良なフレームはフレームの正しい復号化を可能とするに十分なエネルギーを有していなかったものとみなされる」ことに相当する。 ウ 一致点・相違点 以上より,引用発明1とは,以下の点で一致ないし相違する。 (ア)一致点 「 無線通信システムにおける方法であって, 移動端末から逆方向リンクトラヒックチャネルデータフレームを受信することと, 所定の場合に,基地局によって肯定応答(ACK)信号を送信することと, 前記データフレームの正しい復号化を可能とする場合に,前記基地局によって否定応答(NAK)信号を送信することと, ここにおいて,ACK又はNAK信号が送信されない場合,基地局で受信された不良なフレームはフレームの正しい復号化を可能とするに十分なエネルギーを有していなかったものとみなされる, を備える,方法。」 (イ)相違点 a.相違点1 「肯定応答(ACK)信号を送信」の条件が,補正後の発明は,「逆方向リンクパイロット信号」が「データフレームの正しい復号化を可能とするに足るエネルギーを含む場合」であるのに対し,引用発明1は,「データパケットのデコード出力にエラーがない場合」である点。 b.相違点2 「否定応答(NAK)信号を送信」する条件である「前記データフレームの正しい復号化を可能とする場合」が,補正後の発明は,「前記逆方向リンクパイロット信号」が,「前記データフレームの再送信からのエネルギーと結合されれば前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足りそうな,十分なエネルギーを有する場合」であるのに対し,引用発明1は「当該データパケットのデコード出力が有益(useful)又は受理可能(acceptable)であり,追加の非重要ビット(less important bits)により利益を受ける場合」である点。更に,「前記データフレームの正しい復号化を可能とする場合」に再送信する信号が,補正後の発明は,「前記データフレーム」であるのに対し,引用発明1では,「追加の非重要性ビット」である点。 エ 判断 引用発明1と引用発明2とは,ハイブリッドARQ方式の通信システムである点において共通する。また,アップ(逆方向)リンクとダウン(順方向)リンクとは,データの送信主体(基地局/端末)の違いにより相対的な関係にあることから,アップリンクの送信手法を,ダウンプリンクの送信手法に適用することも当業者が適宜なし得ることである。よって,引用発明1に,引用発明2の技術思想を適用することに技術上の阻害要因はない。 したがって,引用発明1に,引用発明2の技術思想を適用することにより上記相違点1及び相違点2を克服し得るかどうかについて検討する。 (ア)相違点1について 引用発明2において,「ACK信号」を送信する条件は,「受信した現在のパケットのパイロットC/I値(受信電力値)が,第1のしきい値(パケットエラー率を所定の値以下に保証する下限値)より大きい場合に,現在のパケットを復号化してエラー検査を行い,エラーがない場合」である。 ここで,「ACK信号」は,現在のパケットの復号化にエラーがない場合に送信される信号であるから,引用発明1の「ACK信号」に相当する。そこで,引用発明1の「ACK信号」を送信する条件に替えて,引用発明2における「ACK信号」を送信する条件を採用すると,「受信したデータパケットのパイロットC/I値(受信電力値)が,第1のしきい値(パケットエラー率を所定の値以下に保証する下限値)より大きい場合に,データパケットを復号化してエラー検査を行い,エラーがない場合」に「ACK信号を送信する」こととなり,補正後の発明の「逆方向リンクパイロット信号が前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足るエネルギーを含む場合に,基地局によって肯定応答(ACK)信号を送信すること」との構成とはならない。 よって,引用発明1に,引用発明2の技術思想を適用しても,上記相違点1を克服することはできない。 (イ)相違点2について 引用発明1において,再送信する信号を「追加の非重要ビット」に替えて,引用発明2の「現在のパケット」すなわち引用発明1の「データパケット」とすることは当業者にとって容易に想到し得ることである。 また,引用発明1の「NACK」と,引用発明2の「データ伝送率情報(DRC)」とは,再送信を要求するものである点において共通する。以上を踏まえて,引用発明1の「NACK」を送信する条件に替えて,引用発明2の「データ伝送率情報(DRC)」を送信する条件を採用すると,「受信したデータパケットのパイロットC/I値(受信電力値)が,第1のしきい値(パケットエラー率を所定の値以下に保証する下限値)より大きい場合に,データパケットを復号化してエラー検査を行い,エラーがある場合と,前記パイロットC/I値が前記第1のしきい値より小さくかつ第2のしきい値(現在のデータ伝送率に対応するC/I値を所定の余裕間隔で除算してデータパケットに対して既に伝送されたスロットの数を乗ずることによって得られる。)より大きい場合」に「NACK」を送信することとなり,補正後の発明の「前記逆方向リンクパイロット信号が,前記データフレームの正しい復号化を可能とするには不十分なエネルギーを含むが,前記データフレームの再送信からのエネルギーと結合されれば前記データフレームの正しい復号化を可能とするに足りそうな,十分なエネルギーを有する場合にのみ,前記基地局によって否定応答(NAK)信号を送信すること」との構成とはならない。 よって,引用発明1に,引用発明2の技術思想を適用しても,上記相違点2を克服することはできない。 したがって,引用発明1に,引用発明2の技術思想を適用しても,上記相違点1及び相違点2に係る補正後の発明を想到することは当業者が容易になし得たものではない。 また,上記補正の却下の決定又は拒絶査定において引用された,引用文献3(国際公開第02/065664号),引用文献4(欧州特許出願公開第1168703号明細書)及び引用文献5(米国特許出願公開第2002/0168945号明細書)のいずれにも,当業者が上記相違点1及び相違点2を克服し得ることの根拠となる記載はない。 よって,補正後の発明は,上記引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。 補正後の請求項1を引用する,補正後の請求項2ないし5に係る発明,補正後の請求項1ないし5とカテゴリが異なるにすぎない請求項6ないし8,請求項14ないし23に係る発明,さらに,補正後の請求項1ないし5に係る発明を「無線遠隔端末」として特定した補正後の請求項9ないし13に係る発明についても同様に,上記引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。 また,補正後の請求項1ないし23に係る発明について,他の拒絶すべき理由を発見しない。 よって,本件補正後の請求項1ないし23に係る発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項(独立特許要件)に適合する。 第3 本願の請求項1ないし23に係る発明について 1 本願の請求項1ないし23に係る発明 上記のとおり,平成27年3月12日付けの補正の却下の決定は取り消されたので,本願の請求項1ないし23に係る発明は,「第2 補正の却下の決定の当否について」の「[理由]」の「1 本件補正」の項に挙げた,補正後の請求項1ないし23に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 2 判断 そうすると,上記「第2」の「2 補正の適否の検討」で挙げた理由と同様の理由により,本願の請求項1ないし23に係る発明は,原査定の拒絶の理由において示された引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 3 むすび 以上のとおり,本願の請求項1ないし23に係る発明は,いずれも引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-02-15 |
出願番号 | 特願2012-96531(P2012-96531) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WYA
(H04L)
P 1 8・ 575- WYA (H04L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 谷岡 佳彦 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
林 毅 ▲高▼橋 真之 |
発明の名称 | 逆方向リンクデータに対する順方向リンク肯定応答チャネルの操作 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 奥村 元宏 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |