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審決分類 |
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 C22C |
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管理番号 | 1311252 |
審判番号 | 無効2014-800154 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2014-09-11 |
確定日 | 2016-02-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3472284号発明「アルミニウム系軸受合金」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3472284号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許第3472284号の請求項1?4に係る発明は、平成13年10月10日に出願され、平成15年9月12日に特許の設定登録がなされたものである。 これに対して、大豊工業株式会社から平成26年9月11日けで請求項1?4に係る発明の特許について無効審判が請求され、被請求人に対して同年10月16日に無効審判請求書の副本送達がなされたが、指定期間内に被請求人から応答がされなかったものであって、その後の手続の経緯は、おおむね次のとおりである。 平成27年 2月19日 審尋(請求人に対して) 平成27年 3月25日 回答書(請求人) 上申書(請求人) 平成27年 5月14日 無効理由通知書(職権審理結果通知書) 平成27年 6月27日 意見書(請求人) 平成27年 9月10日 審決の予告 被請求人からは、無効理由通知書に対して応答がなく指定期間が経過し、審決の予告に対しても応答がなかった。 第2.本件特許発明 本件特許の請求項1?4に係る発明は、それぞれ、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 1.5?8質量%のSiを含み、残部が実質的にAlからなり、摺動表面に存在するSi粒子の総面積に対し、粒子径4μm未満のSi粒子の面積が20?60%を占め、粒子径4?20μmのSi粒子の面積が40%以上を占めることを特徴とするアルミニウム系軸受合金。 【請求項2】 3?40質量%のSnを含むことを特徴とする請求項1記載のアルミニウム系軸受合金。 【請求項3】 Cu、Zn、Mgのうちの1種以上を総量で0.1?6質量%含むことを特徴とする請求項1または2記載のアルミニウム系軸受合金。 【請求項4】 Mn、V、Mo、Cr、Ni、Co、Wのうちの1種以上を総量で0.01?3質量%含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のアルミニウム系軸受合金。 第3.請求人の主張との概要と証拠方法 1.請求人の主張の概要 請求人は、「特許第3472284号は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め」、審判請求書と共に証拠方法として甲第1?16号証を、回答書と共に甲第17?24号証、上申書と共に甲第10号証(「阪本真一郎の捺印があるもの」への差し替える補正をしたもの)を提出しており、審判請求書、回答書、上申書において主張したことを整理すると、概ね次のとおり主張している。 (1)無効理由1 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、特許出願前に頒布された甲第1号証、甲第2号証、及び甲第4号証のそれぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (2)無効理由2 本件特許の請求項3及び4に係る発明は、特許出願前に頒布された甲第1号証、及び甲第4号証のそれぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (3)無効理由3 本件特許の請求項3及び4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第5号証乃至甲第9号証に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (4)無効理由4 本件特許の請求項1に記載の発明特定事項のうち、「粒子径4μm未満のSi粒子の面積」については、その測定方法が記載されていない。すなわち、発明の詳細な説明には、請求項1に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 なお、甲第3号証に基づく無効理由は撤回された。 2.甲号証 (1)甲第1号証:INDUSTRIAL LUBRICATION AND TRIBOLOGY,November/December, 1986, p204-237 (2)甲第2号証:日本機械学会論文集(C編),日本機械学会,第53巻,第490号,p1237-1242 (3)甲第3号証:社団法人日本潤滑学会 東北大会(昭和57年度)研究発表会予稿集,昭和57年10月26日,27日,p321-324 (4)甲第4号証:社団法人日本トライボロジー学会編,「トライボロジー ハンドブック」,株式会社養賢堂,2001年3月30日,p424-432 (5)甲第5号証:特開平6-33175公報 (6)甲第6号証:特開2000-17363号公報 (7)甲第7号証:特開2000-119791号公報 (8)甲第8号証:特開2001-140890号公報 (9)甲第9号証:特開2001-153141号公報 (10)甲第10号証:阪本真一郎の実験報告書,平成26年2月13日 (11)甲第11号証:トライボロジスト,第48巻,第3号,2003年,p172-177 (12)甲第12号証:甲第4号証の図2.3.26の組織写真の原本の写し (13)甲第13号証:神谷荘司の宣誓書,平成26年4月10日 (14)甲第14号証:金武直幸の技術判断書,平成26年4月11日 (15)甲第15号証:依頼試験報告書(画像解析),名古屋市工業研究所,2014年3月18日 (16)甲第16号証:社団法人軽金属協会アルミニウム技術便覧編集委員会編,「新版/アルミニウム技術便覧」,カロス出版株式会社,1996年11月18日,p1253-1258 (17)甲第17号証:株式会社プランニングオフィスの報告書,2015年3月20日 (18)甲第18号証:社団法人日本トライボロジー学会編,「トライボロジー ハンドブック」,株式会社養賢堂,2001年3月30日,第iii-iv頁 (19)甲第19号証:神谷荘司の陳述書,平成27年3月19日 (20)甲第20号証:金武直幸の陳述書,平成27年3月19日 (21)甲第21号証:電子メール写し (22)甲第22号証:軽金属,第43巻,第4号,1993年,p193-198 (23)甲第23号証:軽金属,第43巻,第7号,1993年,p372-377 (24)甲第24号証:軽金属,第45巻,第11号,1995年,p649-653 第4.被請求人の主張 被請求人は、答弁書の提出や訂正請求によって応答することなく指定期間が経過し、審決の予告に対しても応答することがなかった。 第5.当審による無効理由通知及び職権審理結果通知 平成27年5月14日付けで当審による無効理由通知が被請求人に通知され、同日付けで同内容の職権審理結果が請求人に通知された。無効理由通知及び職権審理結果の内容は次のとおりである。 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。 記 1.Si粒子の面積%の測定方法に関し、本件特許明細書の【0020】には、「・・・摺動表面の顕微鏡写真を画像解析装置により解析し、0.0125mm2に存在する全Siの粒子径を測定し、その測定結果を基にして比率を算出する。Si粒子の径は、粒子の一つ一つについて面積を測定し、その面積と同一面積の円の径に換算したものをいう。」との記載がなされている。 2.そして、「鋳造後における軸受合金の顕微鏡写真の模式図」である【図1】をみると、Alマトリックス、Si、Snが模式的記載され、顕微鏡写真において、Alマトリックス、Si、Snはそれぞれ判別可能であると認められる。 3.一方、本件特許発明は、Al、Si、Snの他に、Cu、Zn、Mgのうちの1種以上を総量で0.1?6質量%及び/又はMn、V、Mo、Cr、Ni、Co、Wのうちの1種以上を総量で0.01?3質量%含む場合がある。 4.ここで、CrはAl-Cr金属間化合物を形成して析出するし(特開2000-17363号公報の【0013】)、CuはSn相中にCuAl_(2)化合物として晶出すること(特開2001-153141号公報の【0011】)、Mnを含む金属間化合物が生成すること(特開2001-140890号公報の【0007】)が知られている。 5.そうすると、本件特許発明では、Alマトリックス中にSi、Sn以外のAl-Cr金属間化合物、CuAl_(2)化合物、Mnを含む金属間化合物が生成する場合があるといえる。 6.しかしながら、本件特許明細書には、Alマトリックス中にSi、Snと、これら以外のAl-Cr金属間化合物、CuAl_(2)化合物、Mnを含む金属間化合物との区別をどのように行うのかが説明されておらず、また、この区別が当業者にとって自明なことともいえないから、全Siの粒子径をどのように測定しているのかが不明であり、同明細書は本件特許発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 第6.無効理由通知及び職権審理結果通知に対する当事者の応答、並びに、当審の判断 請求人は、平成27年6月17日に意見書を提出し、本件特許明細書においては、Alマトリックス中におけるSiと、Si以外の添加元素とAlとて形成される金属間化合物とをどのように区別するのか記載されておらず、職権審理結果通知書において指摘されているように、同明細書は本件特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない旨を主張して無効理由の妥当性を認める一方で、被請求人は、何らの応答をすることがなく、指定期間が経過した。 当審が被請求人に通知した無効理由通知は妥当なものであり、この無効理由は依然として解消していない。 すなわち、本件特許明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 第6.むすび 以上のとおりであるから、他の無効理由および証拠を検討するまでもなく、本件特許第3472284号の請求項1?4に係る発明の特許は、特許法第36条第4項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-12-10 |
結審通知日 | 2015-12-14 |
審決日 | 2016-01-05 |
出願番号 | 特願2001-312563(P2001-312563) |
審決分類 |
P
1
113・
536-
Z
(C22C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 毅 |
特許庁審判長 |
鈴木 正紀 |
特許庁審判官 |
木村 孔一 河野 一夫 |
登録日 | 2003-09-12 |
登録番号 | 特許第3472284号(P3472284) |
発明の名称 | アルミニウム系軸受合金 |
代理人 | 川▲崎▼ 研二 |
代理人 | 南島 昇 |
代理人 | 渡邉 浩 |
代理人 | 岡田 晃久 |