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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A23G
審判 全部無効 1項2号公然実施  A23G
審判 全部無効 2項進歩性  A23G
管理番号 1311259
審判番号 無効2015-800033  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-02-20 
確定日 2016-02-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第5562171号発明「冷凍菓子用チョコレート」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5562171号(請求項の数[2]、以下「本件特許」という。)は、平成22年8月10日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明について、平成26年6月20日に特許権の設定登録がなされた。

これに対して、不二製油株式会社から平成27年2月20日に、本件特許の請求項1及び2に係る発明の特許について、無効審判が請求されたものであり、その後の手続は以下のとおりである。

平成27年 2月20日 審判請求書
平成27年 2月20日 営業秘密に関する申立書(請求人)
平成27年 3月12日 上申書(請求人)
平成27年 5月27日 審判事件答弁書
平成27年 6月26日 審理事項通知書
平成27年 9月 4日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成27年 9月 4日 営業秘密に関する申立書(請求人)
平成27年 9月25日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成27年10月 9日 口頭審理(特許庁審判廷)
平成27年10月21日 上申書(被請求人)
平成27年10月23日 上申書(請求人)

第2 審判請求人の主張
1 審判請求書における無効理由の概要
請求人は、「特許第5562171号発明の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、以下の無効理由を主張している。

<無効理由1>
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

<無効理由2>
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

<無効理由3>
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第10号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

<無効理由4>
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において公然実施された発明「アイスチョコレートコーチングSPD10」と同一の発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

<無効理由5>
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において公然実施された発明「チョコモナカジャンボのセンター板チョコ」と同一の発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

2 証拠方法
請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。

(1)甲第1号証:特開2006-280209号公報
(2-1)甲第2号証:「精製ヤシ油」の製品規格書の写し
(2-2)甲第2号証の2:「精製ヤシ油」の製品規格書の写し
(3)甲第3号証:実験成績証明書(2014年11月12日付け)
(4)甲第4号証:加藤秋男著、「パーム油・パーム核油の利用」、幸書房、1990年7月31日、116頁、奥付
(5)甲第5号証:特開平8-89172号公報
(6)甲第6号証:Ralph E.Timms著、「Confectionery Fats Handbook」、The Oily Press、2003、148?149頁、奥付
(7)甲第7号証:「最新食品標準成分表」、社団法人 全国調理師養成施設協会、平成14年1月8日、210?211頁
(8)甲第8号証:加藤秋男著、「パーム油・パーム核油の利用」、幸書房、1990年7月31日、114頁、奥付
(9)甲第9号証:国際公開第2010/070874号
(10)甲第10号証:特開平8-298934号公報
(11)甲第11号証:特開昭55-114261号公報
(12-1)甲第12号証:「アイスチョコレートコーチングSPD10」の製品規格書の写し
(12-2)甲第12号証の2:「アイスチョコレートコーチングSPD10」の製品規格書の写し
(13)甲第13号証:「パーメル26」の製品規格書の写し
(14)甲第14号証:「PMF-H」の製品規格書の写し
(15)甲第15号証:「PMF-H.G」の原材料品質保証書の写し
(16)甲第16号証:実験成績証明書(2014年9月4日付け)
(17)甲第17号証:MNICSPD10の配合指示書の写し
(18)甲第18号証:出荷データ(SPD10)の写し
(19)甲第19号証:森永製菓株式会社のホームページ
(www.morinaga.co.jp/ice/syouhin/jumbo/history/)
(20)甲第20号証:Mintel Group Ltd.が提供する消費者包装商品のデータ
(21)甲第21号証:森永製菓製の「チョコモナカジャンボ」の包装紙
(22)甲第22号証:実験成績証明書(2014年9月4日付け)
(23)甲第23号証:株式会社ロッテのホームページ
(http://www.lotte.co.jp/products/catalogue/ice/02.html)
(24)甲第24号証:コンビニPOSデータ
(25)甲第25号証:「チョコモナカジャンボ」センター板チョコに配合された油脂種、配合比の特定
(26)甲第26号証:「European Commission IRMM information REFERENCE MATERIALS」、2003、 1頁
(27)甲第27号証:「Review of cocoa butter and alternative fats for use in chocolate-PartA.Compositional data」、 Food Chemistry、Vol.62、 No.1、73?76頁
(28)甲第28号証:「JAOCS」、1999、 Vol.76、 No6、670頁
(29)甲第29号証:加藤秋男著、「パーム油・パーム核油の利用」、幸書房、1990年7月31日、169頁、奥付
(30)甲第30号証:「JAOCS」、1999、Vol.76、No9、1006-1007頁
(31)甲31号証:「植物油のトリアシルグリセリン組成の分析と油脂の配合推定への応用」、日本油脂化学会誌、1996、第45巻、第1号、29?36頁
(32)甲第32号証:コンビニPOSデータ
(33)甲第33号証:特開2008-263790号公報
(34)甲第34号証:特開2009-232738号公報
(35)甲第35号証:特開2008-271818号公報
(36)甲第36号証:不二製油株式会社「PMF-H」の製品規格書(2002年10月10日)の写し
(37)甲第37号証:不二製油株式会社「PMF-H」の製品規格書(2009年5月22日)の写し
(38)甲第38号証:不二製油株式会社「セイセイヤシユ」の製品規格書(1985年6月10日)の写し
(39)甲第39号証:「アイスチヨコレートコーチングSPD10」に配合された油脂種、配合比の特定(2015年7月24日付け)
(40)甲第40号証:「製品管理データ」(2015年9月2日付け)
(41)甲第41号証:特許第5562171号公報(本件特許公報)

甲第1号証、甲第3号証?甲第11号証、甲第16号証、甲第19号証?甲第35号証、甲第39号証?甲第41号証の成立につき当事者間に争いはない。
また、請求人より、甲第2号証、甲第2号証の2、甲第12号証、甲第12号証の2、甲第13号証?甲第18号証及び甲第36号証?甲第38号証及び甲第40号証には、営業秘密が記載された旨の申出がなされている。


第3 被請求人の主張
1 被請求人の主張の概要
被請求人は答弁書において、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、請求人の主張する上記無効理由はいずれも理由がない旨主張している。

2 証拠方法
被請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
(1)乙第1号証:特開平1-148190号公報
(2)乙第2号証:RalpaE.Timms著、「製菓用油脂ハンドブック」、幸書房、2010年2月14日、170頁、奥付
(3)乙第3号証:「油脂・脂質の基礎と応用」編集委員会、「油脂・脂質の基礎と応用 -栄養・健康から工業まで-」、社団法人日本油化学会、平成17年(2005年)4月1日、189頁、奥付
(4)乙第4号証:特開2008-113570号公報
(5)乙第5号証:RalpaE.Timms著、「製菓用油脂ハンドブック」、幸書房、2010年2月14日、1頁、奥付
(6)乙第6号証:藤田哲、「食用油脂‐その利用と油脂食品」、幸書房、2000年4月5日、226?228頁、奥付
(7)乙第7号証:東京地判平成17年2月10日(平成15年(ワ)第19324号)の判決文
(8)乙第8号証:RalpaE.Timms著、「製菓用油脂ハンドブック」、幸書房、2010年2月14日、166頁、奥付
(9)乙第9号証:RalpaE.Timms著、「製菓用油脂ハンドブック」、幸書房、2010年2月14日、238頁、奥付
(10)乙第10号証:藤田哲、「食用油脂-その利用と油脂食品」、幸書房、2000年4月5日、104?105頁、奥付
(11)乙第11号証:「食用植物油脂の日本農林規格」、平成16年9月28日農水告第1772号、1頁、8?9頁、11?12頁
(12)乙第12号証:「J.Trop.Agric.and Fd.Sc. 」36(2)、2008、239?248頁
(13)乙第13号証:「FUJI OIL CSR REPORT 2013」、2013年、表紙、5?6頁
(14)乙第14号証:小野哲夫、太田静行、「食用油脂製造技術」、ビジネスセンター社、平成21年7月14日、27頁、奥付
(15)乙第15号証:特開2009-17821号公報

乙第1号証?乙第15号証の成立につき当事者間に争いはない。


第4 本件発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、特許第5562171号の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
チョコレート中の油脂が、パーム油分別油及びラウリン脂を含み、P2XトリグリセリドとPX2トリグリセリドとを合計で35?75質量%、及びトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)を5?45質量%含有し、沃素価が25?45である冷凍菓子用チョコレートであって、該チョコレート中の油脂の80質量%以上が、沃素価が40?50であるパーム油中融点画分と、ラウリン酸含量が40質量%以上で沃素価が7.5?30であるラウリン脂とを、50:50?90:10の質量比で混合した混合油脂であることを特徴とする冷凍菓子用チョコレート。
ただし、Pはパルミチン酸、Xは炭素数18以上の不飽和脂肪酸であり、P2Xトリグリセリド/PX2トリグリセリド=1.5?5.0を満たし、且つ、トリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が36?40であるトリグリセリド(CN36?CN40)とトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)との質量比((CN36?CN40)/(CN32?CN44))が0.42?0.72を満たす。
【請求項2】
冷凍菓子のセンター用であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍菓子用チョコレート。」


第5 証拠方法の記載事項
(1)甲第1号証:特開2006-280209号公報
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスクリーム等の冷菓類と組み合わせて使用した際に、快い噛み出しの硬さと、良好な口どけ感を有する、冷菓用油性食品素材に関するものである。
【技術背景】
【0002】
アイスクリーム等に代表される冷菓類は、風味の付与、食感の改良、水分蒸散の防止等様々な目的でその表面を油性食品にて被覆されたり、油性食品を混合されたりすることがよくある。その冷菓類と組み合わせる油性食品(本発明においては以降「冷菓用油性食品素材」と記述する)はチョコレート類である場合が多い。
冷菓用油性食品素材は、最近の様々な嗜好の多様化に伴う市場の要求により、多種多様になっている。特に、冷菓単独では表現することのできない、特徴のある食感を付加することは、その冷菓の商品価値を高めることにつながり、冷菓用油性食品素材の果たす、大きな役割のひとつとなっている。

(ロ)「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、冷菓用油性食品素材に従来から多用されている液体油やラウリン脂での食感とは異なる新規な食感を有する冷菓用油性食品素材を開発することを目的とする。」

(ハ)「【0020】
冷菓用油性食品素材におけるPOP成分、ラウリン酸の上記規定を満たせば、特にその由来は限定されないが、一例としては当該冷菓用油性食品素材を構成する油脂の一部、または、全部をPOP成分またはラウリン酸に富む油脂に置換することで得られる。
POP成分に富む油脂は、パーム、南京ハゼ等の植物油脂を分別して入手する手法が公開されており、POP成分を65%重量以上含む油脂が発明されているが、このような油脂を当該冷菓用油性食品素材に使用することで、その構成油脂中のPOP成分を32重量%以上に設定するのが可能である。
また、ラウリン酸を多く含む油脂としては一例としてはヤシ油、パーム核油などが挙げられるが、特に限定はされない。
【0021】
冷菓用油性食品素材は油脂が連続相を為し、冷菓に組み合わせて用いられるものであれば特にその形状や用いられ方に限定はないが、一例を挙げると、融解した冷菓用油性食品素材をアイスクリームといった流動性を有する冷菓中に滴下・混合することで凝固させ、冷菓中に粒状ないしは破片状に存在させる「滴下用途」や、冷菓を融解した冷菓用油性食品素材に漬けることで、冷菓用油性食品素材を冷菓表面にコーティングさせた「被覆用途」などがあげられる。なお冷菓と冷菓用油性食品素材との組み合わせ形態も特に限定はされず、冷菓表面を均一に覆い尽くしている場合はもちろん、一部しか被覆されていないといった場合や冷菓用油性食品素材を冷菓の中に滴下して用いる場合に滴下量を増やしていくことで粒状ないしは破片状だった冷菓用油性食品素材が互いに分離しにくくなり、冷菓の中でマーブル状、あるいは薄板状になるような、局在的に組み合わされている場合も挙げられる。」

(ニ)「【0028】
表1 冷菓被覆用チョコレート類の配合

※ 評価基準:低評価→×→△→○→◎→高評価、△より上の評価は市場性かおり、×には市場性に乏しいと判断した。
スナップ感:パキッとした「割れる」堅さを有する食感
クリスピー感:噛んだ際に「砕ける」堅さを有する食感
ロどけ感:冷凍温度域にある冷菓用油性食品素材が口中にて速やかに溶ける食感
チューイー・ヌル感:口中にて溶ける際に解ける速度が遅く、あるいは軟化はするものの口中にて長時間咀嘔されるような食感(チューイ感)や軟化・融解しても粘度が高く口中にまとわりつく(ヌル感)ような食感。一般に悪食感とされる。」


(2)甲第4号証:加藤秋男著、「パーム油・パーム核油の利用」、幸書房、1990年7月31日、116頁
(イ)精製やし油の沃素価が示されている(表6.10)。

表6.10 バーム核油のヨウ素価、融点とAOM 安定性


(3)甲第5号証:特開平8-89172号公報
(イ)「【0004】チョコレート類は、また、板チョコレートや粒状チョコレート等、それ自体の風味的・物理的食感を味わう固形チョコレート単独菓子としての用途の他に、他の食品と複合して用いる製菓原料、より具体的には、冷菓や焼菓子に、コーティング材、エンローバ材、フィリング材、装飾材等としての用途、があるが、前者の固形チョコレート単独菓子の用途の場合は特にその風味的及び物理的食感の要求が一般にシビアーである。」

(ロ)「【0008】一方、非テンパリング型ハードバターは、トランス酸型とラウリン酸型が代表的である。トランス酸型ハードバターは、パーム油等の分画軟質部や大豆油等の液状油を異性化硬化して得られ、構成脂肪酸中にトランス酸を比較的多く含むトリグリセリドからなるのに対し、ラウリン酸型ハードバターは、ヤシ油、パーム核油、ババス油の様なラウリン酸基を多く含むグリセリドからなる油脂及びその分画油より得られ、構成脂肪酸中にラウリン酸を多く含むトリグリセリドからなる。これらの非テンパリング型ハードバターは、顕著な結晶多型現象を持たない為、そのチョコレート類の製造の際にはテンパリング処理は不要であるという利点があるが、ココアバターとの併用が、非常に限定された割合しか併用できないと一般に認識されており(例えば特開昭60─221035)、前記複合食品のチョコレート類の油脂としての用途が主流である。」

(ハ)「【0011】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、冷凍または冷蔵の温度域の品温で喫食し、良好な硬さと口溶けを有するチョコレート類を提供することを目的にしたものであり、特に従来の固形のチョコレート類単独菓子とは異なり、前記低品温で良好な物理的食感を有し、かつ従来の冷食複合食品が有していた製品流通上の制約が少なくかつもたつきの食感も改善されたチョコレート類菓子を指向するものである。」

(ニ)「【0018】ラウリン系油脂は、主要構成脂肪酸がラウリン酸であるヤシ油、パーム核油、ババス油等周知のラウリン系油脂、及びこれらのラウリン系油脂よりの分画油等が例示できる。」

(ホ)「【0025】
【実施例】以下に、実施例及び比較例を例示してこの発明の効果をより一層明瞭にするが、これらは例示であってこの発明の精神がこれらの例示に限定されるものではない。なお、以下に示す%及び部は何れも重量基準を意味する。
【0026】表1─1または表1─2に示す配合にて、先ずココアバター、パーム中融点画分(PMF:沃素価34.0、上昇融点30.0℃または沃素価45.0、上昇融点26.0℃のもの) 、ラウリン系油脂( パーム核低融点部で沃素価25.0、上昇融点21℃のパーム核オレイン、又は、沃素価8.5、上昇融点24.1℃のヤシ油)の油脂を融解混合し、これにレシチンを添加して油相を調整しておく。一方、カカオマス、全粉乳、砂糖を混合し、これに上記油相の一部を加えロールリファイニングし、約50℃にて加温しながらコンチング処理した後、残りの油相を加えて混合した。
【0027】
表1─1: 実施例のチョコレート類配合(部)
----------------------------------
実1 実2 実3 実4 実5 実6 実7
----------------------------------
カカオマス 15.0 15.0 15.0 15.0 15.0 0.0 15.0
全粉乳 20.0 20.0 15.0 20.0 10.0 30.0 20.0
砂 糖 40.0 35.0 35.0 45.0 25.0 35.0 34.0
ココアバター 0.0 10.0 15.0 0.0 20.0 0.0 12.0
PMF(IV34) 15.0 0.0 0.0 15.0 20.0 30.0 0.0
PMF(IV45) 0.0 10.0 16.0 0.0 0.0 0.0 9.0
パーム核オレイン 10.0 10.0 0.0 5.0 10.0 0.0 10.0
ヤシ油 0.0 0.0 4.0 0.0 0.0 5.0 0.0
レシチン 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4
香 料 適量 適量 適量 適量 適量 適量 適量
------------------------------ ---
表1─2:比較例のチョコレート類配合(部)
----------------------------------
比1 比2 比3 比4 比5
----------------------------------
カカオマス 15.0 15.0 15.0 15.0 15.0
全粉乳 20.0 20.0 15.0 15.0 20.0
砂 糖 40.0 40.0 35.0 35.0 45.0
ココアバター 25.0 15.0 15.0 5.0 9.0
PMF(IV45) 0.0 0.0 18.0 10.0 6.0
パーム核オレイン 0.0 10.0 0.0 20.0 5.0
ヤシ油 0.0 0.0 2.0 0.0 0.0
レシチン 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4
香 料 適量 適量 適量 適量 適量
---------------------------------
原料中の油脂の組成は表2に示した。表中、油分(%)はチョコレート生地中の量、SUSトリグリセリド及びラウリン系油脂の量はチョコレート油分に対する量で示した。SUSの組成分析は、高速液体クロマトグラフィーを用いて行い、またP/St比は、SUSトリグリセリドを構成する脂肪酸のそれである。
【0028】
表2:油脂組成
----------------------------------
油分(%) POP POS SOS P/St ラウリン系油脂
----------------------------------
実1 38.4 29.2 % 9.5 % 6.4 % 3.04 26.0%/油分
実2 43.5 18.8 18.7 11.0 1.38 23.0
実3 47.2 25.5 22.9 13.1 1.51 8.4
実4 33.5 33.5 15.4 7.0 2.80 14.9
実5 60.9 24.4 20.0 12.3 1.54 16.4
実6 42.8 45.6 9.9 1.3 8.14 11.7
実7 44.5 17.6 21.3 13.0 1.20 15.0
----------------------------------
比1 38.4 15.4 31.8 21.7 0.83 0.0
比2 38.4 11.0 22.2 15.0 0.81 26.0
比3 47.2 27.6 21.6 13.2 1.60 4.2
比4 47.2 15.4 12.2 7.5 1.58 42.4
比5 33.4 17.8 21.3 13.0 1.20 15.0
----------------------------------
上記のようにして得たチョコレート類生地はテンパリング処理したのち、モールド(型)に入れ、約5℃の冷温度域に30分冷却した後、モールドより外し、冷凍(-20℃)及び冷蔵(5℃)の温度域での硬さ、食感の比較を行った。結果を表─3に示した。
表3:評価結果
----------------------------------
軟化点 冷凍時の食感 冷蔵時の食感
----------------------------------
実1 27.0 ℃ ◎(非常に良好) ◎
実2 26.0 ◎ ◎
実3 27.2 ○(良好) ◎
実4 28.0 ○ ○
実5 26.0 ○(やや油っぽい) ○(左に同じ)
実6 27.0 ◎ ◎
実7 27.5 ◎ ◎
----------------------------------
比1 33.0 ×(硬い,口溶け悪い) ×(口溶け悪)
比2 27.0 ×(モタツキ) △(モタツキ)
比3 26.5 △(モタツキ) △(モタツキ)
比4 23.0 △(軟らかい) ×(軟らかい)
比5 27.5 △(硬い) △(硬い)
----------------------------------
注)食感:評価結果の◎、○、△、×は、この順に優─劣であることを示す。」

(4)甲第6号証:Ralph E.Timms著、「Confectionery Fats Handbook」、The Oily Press、2003、148?149頁
(イ)「Cocoa liquor contains 54-56% fat.」(148頁の下から4行目)。

(5)甲第7号証:「最新食品標準成分表」、社団法人 全国調理師養成施設協会、平成14年1月8日、210?211頁
(イ)全粉乳の脂質が26.2g/100g と示されている(中段)。

(6)甲第8号証:加藤秋男著、「パーム油・パーム核油の利用」、幸書房、1990年7月31日、114頁
(イ):精製やし油の脂肪酸組成及びトリグリセリド組成(%)が示されている(表6.8及び6.9)。

表6.8 各種油脂のトリグリセリド組成(%)


*パ?ム核油を分別して碍たヨウ素価7.0の製品。

表6.9 各種油脂の脂肪酸組成(%)

*パ?ム核油を分別して得たヨウ素価7.0の製品。

(7)甲第9号証:国際公開第2010/070874号
(イ)「また、チョコレートの物性改良や製造コストの節約の目的にて、ココアバターの一部又は全部に代えて他の油脂(ハードバター)がしばしば使用され、ハードバターは主としてCBEと称される1,3位飽和、2位不飽和の対称型トリアシルグリセロールに富むものと、CBRと称されるラウリン系もしくは高エライジン酸タイプのものがある。」(段落【0002】)

(8)甲第10号証:特開平8-298934号公報
(イ)「【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例および比較例を例示する。なお、アイスクリーム類の製造は先に示した一般的な公知方法で実施した。また、例中、部および%は何れも重量基準を意味する。」

(ロ)「【0026】実施例4
○油脂配合
カカオバター 注1) 50.0 %
パーム核硬化油 注2) 50.0 %
○冷菓配合
上記配合油脂 8.0 部
脱脂粉乳 8.0 部
粉末水飴 5.0 部
グラニュー糖 13.0 部
水 66.0 部
安定剤 注3) 0.4 部
乳化剤 注4) 0.3 部
────────────────────────────
注1)沃素価34.5,上昇融点33.8℃,SUS型トリグリセリド含量:80.6%
注2)沃素価6.0,上昇融点34.0℃
注3)エマルジーMS:理研ビタミン(株)製
注4)サンベストNN-305:三栄源(株)製
────────────────────────────」

(ハ)「【0028】実施例5
○油脂配合
パーム中融点画分 注1) 50.0 %
ヤシ油 注2) 33.3 %
菜種硬化油 注3) 16.7 %
○冷菓配合
上記配合油脂 6.0 部
脱脂粉乳 8.0 部
粉末水飴 5.0 部
グラニュー糖 13.0 部
水 68.0 部
安定剤 注4) 0.4 部
乳化剤 注5) 0.3 部
────────────────────────────
注1)沃素価50,上昇融点25.0℃,SUS型トリグリセリド含量:48.0%
注2)沃素価8.5,上昇融点24.0
注3)沃素価72.8℃,上昇融点24.0℃
注4)エマルジーMS:理研ビタミン(株)製
注5)サンベストNN-305:三栄源(株)製
────────────────────────────」

(ニ)「【0038】
【発明の効果】以上、本発明における冷菓練込み用油脂を使用してアイスクリーム類を製造したとき、ミックス及びフリージング時の物性が極めて安定しており、口溶けがシャープで且つコクのある風味食感を呈した冷菓を得ることができた。」

(9)甲第11号証:特開昭55-114261号公報
(イ):「(1)主としてココアおよび/またはカカオマス、砂糖及び油脂から構成されたチョコレートであって、該チョコレートを構成する油脂は、2-不飽和-1, 3-ジ飽和グリセリドが60好ましくは70%(重量基準、以下同じ)以上であるパーム油中融点画分からなる油脂30?100%とその他の油脂0?70%とからなり、該チョコレートがテンパリング処理されていない冷食用チョコレート。
(2)その他の油脂が任意の液体油およびまたはラウリン系油脂から成る特許請求の範囲第1項に記載の冷食用チョコレート。」(特許請求の範囲)

(ロ)「本発明は冷食用チョコレートに関し、更に詳しくは常法どおりロール掛けしコンチング処理した後、テンパリング処理することなく直ちに冷凍したチョコレートを、そのままで又はアイスクリーム、シャーベット、カキ氷等の氷菓類中に粒状、チップ状等適宜の形状で含ませたとき、或いは氷菓類のコーティング用として使用したとき、若しくは天然および/または合成クリーム類と加温混合し冷凍固化して得られる氷菓類をそのまま、またはセンター物として使用したとき、優れた特性を現わす冷食用チョコレートに関する。このチョコレートは特に硬さ、口溶け及び口溶け時の清涼感において優れた特性を有するものである。」(1頁右欄8行?2頁1行)

(10)甲第19号証:森永製菓株式会社のホームページ
(www.morinaga.co.jp/ice/syouhin/jumbo/history/)
(イ)「チョコモナカジャンボの歴史」と記載されている。
(ロ)各包装紙の絵からアイスモナカのセンターにチョコレートが配置されていることが看取できる。
(ハ)2006年には「センターチョコの品質を改良」と記載されている。2009年春には「センターチョコの品質を改良」と記載されている。そしてセンターチョコの品質改良に関しては2006年及び2009年春以降には記載がない。

(11)甲第20号証:Mintel Group Ltd.が提供する消費者包装商品のデータ
(イ)掲載時期として、2009年1月と記載されている。
(ロ)包装紙裏面の原材料表示に「チョコレートコーチング」と記載されている。
(ハ)包装用紙表面の絵から、チョコレートがアイスモナカのセンターに配置されていることが看取できる。

(12)甲第21号証:森永製菓製の「チョコモナカジャンボ」の包装紙
(イ)包装紙の絵から、アイスモナカのセンターにチョコレートが配置されていることが看取できる。
(ロ)原材料名表示に「チョコレートコーチング」と記載されている。

(13)甲第22号証:実験成績証明書(2014年9月4日付け作成)
(イ)「チョコモナカジャンボ」のセンター板チョコについて、本件特許の請求項に係るトリグリセリド組成パラメーター及びヨウ素価を測定した結果が記載されている。

(14)甲第23号証:株式会社ロッテのホームページ
(http://www.lotte.co.jp/products/catalogue/ice/02.html)
(イ)商品情報として、「モナ王 バニラ」について「さっぱりとしたアイスと口どけの良いモナカが一体となった定番モナカ。」と記載されている。

(15)甲第24号証:コンビニPOSデータ
(イ)氷・アイスクリーム類における売上ランキング30位までの商品がリストされている。
(口)2014年第49週のデータとして、ランキング1位に「森永 チョコモナカ ジャンボ」が記載されている。

(16)甲第25号証:「チョコモナカジャンボ」センター板チョコに配合された油脂種、配合比の特定
(イ)甲第22号証の分析値から「チョコモナカジャンボ」センター板チョコの配合油脂種、及び配合比の特定結果が記載されている。

(17)甲第26号証:「European Commission IRMM information REFERENCE MATERIALS」
2003、1頁
(イ)ココアバターのトリグリセリド組成が記載されている。

(18)甲第27号証:「Review of cocoa butter and alternative fats for use inchocolate-PartA.Compositional data」、Food Chemistry、Vol.62、 No.1、76頁
(イ)ココアバターの脂肪酸組成が記載されている(Table4 Fatty acid composition of cocoa butter for Some countries of origin)。(代表値としてGhanaを選択)

(19)甲第28号証:「JAOCS」、Vol.76、 No6(1999)670、頁
(イ)ココアバターのヨウ素価(Iodine value)が36.6と記載されている(Table2 Cocoa Butter Composition)。

(20)甲第29号証:加藤秋男著、「パーム油・パーム核油の利用」、幸書房、1990年7月31日、169頁
(イ)PMF-1(ソフトPMF)及び)PMF-2(ハードPMF)の分析例が記載されている(表10.1)。

(21)甲第30号証:「JAOCS」、Vol.76、No9(1999)、1006?1007頁
(イ)パーム核オレインのトリグリセリド組成(%),脂肪酸組成(wt%)が記載されている(TABLE1及びTABLE3)

(22)甲31号証:「植物油のトリアシルグリセリン組成の分析と油脂の配合推定への応用」、日本油脂化学会誌、1996、第45巻、第1号、29?36頁
(イ):「食用油脂は単独で用いられるだけでなく、物性調節等を目的として性質の異なる油脂を混合(配合油)して使用されることが多い。 したがって配合油を構成する油脂の種類と割合を分析から推定する(配合推定)ことは、油脂の物性研究や品質管理において広く用いられる応用技術のひとつである。」(第29頁左欄2?7行)

(23)甲第32号証:コンビニPOSデータ
(イ)2010年第1週のデータとして「25.30」(来店客1万人当たりの販売数)と記載されている。
(ロ)2014年第49週のデータとして「14.84」と記載されている。

(24)甲第33号証:特開2008-263790号公報
(イ)「【0025】
本発明の水中油型乳化物用油脂組成物の原料油脂である油脂Aとしては、10℃でのSFC(固体脂含量)が60%以上100%未満、20℃でのSFCが30%以上90%未満、35℃でのSFCが5%未満であるパーム油の中融点分別油(パームミッドフラクション、PMFと呼ばれることもある)が使用される。
パーム油の中融点分別油とは、パーム油に分別処理(自然分別、溶剤分別、界面活性剤分別等)を施して得られる軟質部を、さらに分別処理を施して得られる硬質部のことを意味する。」

(25)甲第34号証:特開2009-232738号公報
(イ)「【0009】
本発明を構成するトリグリセリドであるPOPは、1,3パルミトイル-2オレイルグリセロールのことである。当トリグリセリドは化学合成によっても得られるが、より経済的にはパーム油を分別して得られる中融点部(パームミッドフラクション、以下PMF)に濃縮して得られるので、これを使用することが好ましい。PMFとしては、代表的なものとしてソフトパームミッドフラクション(以下、ソフトPMFとする)とハードパームミッドフラクション(以下、ハードPMFとする)が挙げられる。
ソフトPMFは、パーム油を分別処理して得られる軟質部(パームオレインと呼ばれることもある)を、更に分別処理して得られる硬質部のことあり、ヨウ素価は約40?50である。
ハードPMFは、ソフトPMFを分別処理して得られる硬質部のことであり、ヨウ素価は約30?40である。本発明の油脂組成物には、POP含量が30質量%以上であるPMFを使用することが好ましい。
また、本発明の油脂組成物には、トランス酸が過度に生成しない程度にヨウ素価を0.5?6程度下げる軽微な水素添加を施したPMFも好適に使用できる。本発明の油脂組成物は、適当なPOP含量を有するPMFを適宜選択し、後述するPPOを含有する油脂と混合することが好ましい。」

(26)甲第35号証:特開2008-271818号公報
(イ)「【0018】
パーム油の分別硬質油の具体例としては、パームミッドフラクション(以下、PMFとする)(パーム油の中融点部、パーム油の中融点分別油と呼ばれることもある)、パームステアリン、ハードステアリンが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特にパーム油の分別硬質油としては、PMFとパームステアリンとを併用したものであることが好ましい。なお、パームミッドフラクション、パームステアリン、ハードステアリンは、実質的にトランス脂肪酸を含まないものである。」


第6 無効理由1について
1 甲第1号証に記載された発明
上記第5(1)(ニ)の甲第1号証の比較例2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「カカオマス(油分55%)3.3%、ココア(油分11%、pH7.0)16.0%、砂糖28.7%、油脂C(POP45%)PMF 36.0%、及び油脂D(ラウリン酸48%)CW16.0%、レシチン適量、バニラ香料適量を配合した冷菓被覆用チョコレート類。」(以下「甲1発明」ともいう。)

2 本件発明と甲第1号証に記載された発明との対比
(1)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「油脂C(POP45%)PMF」を含むことは、油脂において「PMF」がパーム油中融点画分(パームミッドフラクション)を表すことが、甲第5号証の段落【0026】、甲第33号証の段落【0025】、甲第34号証の段落【0009】、甲第35号証の段落【0018】に照らして明らかであるから、本件発明1の「パーム油分別油」を含むこと及び「パーム油中融点画分」を含むことに相当する。

(2)甲1発明の「油脂D(ラウリン酸48%)CW16.0%」はラウリン酸を48%含む油脂であるから、本件発明1の「ラウリン酸含量が40質量%以上で」ある「ラウリン脂」に相当する。

(3)甲1発明の「油脂C(POP45%)PMF 36.0%、及び油脂D(ラウリン酸48%)CW16.0%」を含むことは、2種の油脂を混合しているから、本件発明1の「混合油脂」であることに相当する。

(4)甲1発明の「冷菓被覆用チョコレート類」は、甲第1号証の段落【0001】にアイスクリームに用いることが記載されているから、本件発明1の「冷凍菓子用チョコレート」に相当する。

(5)そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点A>
「チョコレート中の油脂が、パーム油分別油及びラウリン脂を含む冷凍菓子用チョコレートであって、該チョコレート中の油脂が、パーム油中融点画分と、ラウリン酸含量が40質量%以上であるラウリン脂とを、混合した混合油脂である冷凍菓子用チョコレート。」

<相違点A>
チョコレート中の油脂が、本件発明1では、P2XトリグリセリドとPX2トリグリセリドとを合計で35?75質量%、及びトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)を5?45質量%含有し、沃素価が25?45であり、該チョコレート中の油脂の80質量%以上が、沃素価が40?50であるパーム油中融点画分と、沃素価が7.5?30であるラウリン脂とを、50:50?90:10の質量比で混合した混合油脂であり、
ただし、Pはパルミチン酸、Xは炭素数18以上の不飽和脂肪酸であり、P2Xトリグリセリド/PX2トリグリセリド=1.5?5.0を満たし、且つ、トリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が36?40であるトリグリセリド(CN36?CN40)とトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)との質量比((CN36?CN40)/(CN32?CN44))が0.42?0.72を満たすと特定されているのに対して、甲1発明では、そのような特定がない点。

3 本件発明1の判断
そこで、相違点Aにつき検討する。
まず、請求人は、甲1発明の「油脂C(POP45%)PMF」及び「油脂D(ラウリン酸48%)CW」が、それぞれ、本件発明1の「沃素価が40?50であるパーム油中融点画分」及び「沃素価が7.5?30であるラウリン脂」に相当する旨主張する(請求書の第3?4頁、第26頁19?23行、口頭審理陳述要領書(請求人)の第4頁下から5行?第5頁14行)。
しかし、請求人が「油脂C(POP45%)PMF」の沃素価を示す証拠として挙げる甲第36号証及び甲第37号証の各「製品企画書」は、請求人の社内資料であって、そこに記載された事項は、営業秘密に関する申立書が提出されていることからも明らかなように一般に知られていた事実であるとはいえないから、当該証拠をもって、甲第1号証に「油脂C(POP45%)PMF」の沃素価が示されているとはいえない。また、甲第3号証の5.分析サンプルのb)に「*POP含量が45%のPMFを使用した。当該PMFのヨウ素価は45.9であった。」と記載されているが、当該記載は,POP含量が45%のPMFとして、甲第3号証の5.分析サンプルのb)で使用した油脂以外油脂が存在しないことについては証されておらず、一般に、甲第29号証に記載されているようにPOP含量及び沃素価の異なるPMFが存在するから、「油脂C(POP45%)PMF」の沃素価が40?50であるとはいえない。
また、請求人は、甲1発明の「油脂D(ラウリン酸48%)CW」が「ヤシ油(商品名「精製ヤシ油」)」であることから、その沃素価が7.5?30の範囲内であると主張する。しかし、「油脂D(ラウリン酸48%)CW」の「CW」が「ヤシ油(商品名「精製ヤシ油」)」であるとする根拠として挙げられている甲第2号証、甲第2号証の2及び甲第38号証の各「製品企画書」は、社内資料であって、そこに記載された事項は、営業秘密に関する申立書が提出されていることからも明らかなように一般に知られていた事実であるとはいえないから、当該証拠をもって「CW」が「ヤシ油(商品名「精製ヤシ油」)」であるとはいえない。また、他に「CW」が「ヤシ油(商品名「精製ヤシ油」)」であることを示す証拠はない。
さらに、請求人は、甲第8号証の記載から、「ラウリン酸48%」の油脂は「精製ヤシ油」である旨主張する。しかし、甲1発明の「油脂D(ラウリン酸48%)CW」の記載からは、ラウリン酸が48%であること以外は特定しえない。そして、ラウリン酸が48%である油脂として、ヤシ油以外にパーム核油、極度硬化ヤシ油や極度硬化パーム核油が存在し(乙第8号証の表5.13のC12:0(ラウリン酸)及び乙第9号証参照。)、ラウリン酸が48%である油脂は、ヤシ油以外の油脂も存在すること、及びヤシ油のラウリン酸含有量は、45.9?50.3%の範囲(乙第10号証の表12.1参照。)であって、48%であるとまではいえないことから、「油脂D(ラウリン酸48%)CW」が「精製ヤシ油」であるとはいえない。
そうすると、甲1号証の段落【0020】に「また、ラウリン酸を多く含む油脂としては一例としてはヤシ油、パーム核油などが挙げられるが、特に限定はされない。」との記載があっても、当該記載は、比較例2の「油脂D(ラウリン酸48%)CW」がヤシ油であることを示しているとは必ずしもいえなく、上記のとおり、その他に「油脂D(ラウリン酸48%)CW」が「ヤシ油(商品名「精製ヤシ油」)」であることを示す証拠はない。
また、仮に請求人が主張するように「CW」が「精製ヤシ油」を示すとしても、ヤシ油は天然の油脂であり、その沃素価は品種、生産地、生産年によって変動するものであり、乙第10号証の表12.2に「やし油」の沃素価として、「FAO/WHO国際規格」の欄に「6-11」、「日本農林規格」の欄に「7-11」と記載されており、沃素価が7.5?30でないヤシ油が存在することは明らかであるから、甲1発明の「油脂D(ラウリン酸48%)CW」の沃素価が7.5?30であるとはいえない。
よって、甲1発明の「油脂D(ラウリン酸48%)CW」が「精製ヤシ油」であるとはいえず、ひいては、本件発明の「沃素価が7.5?30であるラウリン脂」に相当するということはできない。
また、甲1発明において、他に「沃素価が7.5?30であるラウリン脂」に相当するものはない。
したがって、甲1発明は、チョコレート中の油脂が、「沃素価が40?50であるパーム油中融点画分」と「沃素価が7.5?30であるラウリン脂」を含むものといえず、相違点Aは実質的な相違点であるから、本件発明が甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

4 本件発明2と甲1発明との対比・判断
本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記2の一致点Aで一致し、相違点Aに加え、以下の点で相違する。

<相違点B>
冷凍菓子用チョコレートが、本件発明2では、冷凍菓子のセンター用であるのに対して、甲2発明は、被覆用チョコレートである点。

5 本件発明2の判断
そこで、相違点Aについて検討するに、上記3のとおり甲1発明は、チョコレート中の油脂が、「沃素価が40?50であるパーム油中融点画分」と「沃素価が7.5?30であるラウリン脂」を含むものとはいえないから、相違点Aは、実質的な相違点である。
また、相違点Bについて検討する。
甲第1号証の段落【0021】には、「なお冷菓と冷菓用油性食品素材との組み合わせ形態も特に限定はされず、冷菓表面を均一に覆い尽くしている場合はもちろん、一部しか被覆されていないといった場合や冷菓用油性食品素材を冷菓の中に滴下して用いる場合に滴下量を増やしていくことで粒状ないしは破片状だった冷菓用油性食品素材が互いに分離しにくくなり、冷菓の中でマーブル状、あるいは薄板状になるような、局在的に組み合わされている場合も挙げられる。」と、チョコレート類を様々な形態で用いることが記載されているが、冷凍菓子のセンターに用いることの記載はないから、相違点Bは、実質的な相違点である。
そうすると、本件発明2は甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

6 まとめ
したがって、本件発明1及び2は、甲1発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当せず、上記第2 1の無効理由1は理由がない。

第7 無効理由2について
1 甲第5号証に記載された発明
上記第5(3)(イ)に、「チョコレート類」を冷菓のコーティング材として用いることが記載されていることに着目すると、上記第5(3)(ホ)の甲第5号証の実施例3には、以下の発明が記載されていると認められる。
「カカオマス15.0%、全粉乳15.0 %、砂糖35.0%、ココアバター15.0%、PMF(IV45)16.0%、沃素価8.5のヤシ油4.0%、レシチン0.4%及び香料適量を配合した油分47.2%である冷菓のコーティング材用チョコレート。」(以下「甲5発明」ともいう。)

2 本件発明1と甲第5号証に記載された発明との対比
(1)本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明の「PMF」を含むことは、甲第5号証の段落【0026】の「パーム中融点画分(PMF:沃素価34.0、上昇融点30.0℃または沃素価45.0、上昇融点26.0℃のもの)」の記載を参酌すると PFMがパーム油中融点画分を表すことが明らかであるから、本件発明の「パーム油分別油」を含むこと及び「パーム油中融点画分」を含むことに相当する。また、甲5発明の「PMF(IV45)」は、IVが沃素価を表すから、本件発明1の「沃素価が40?50であるパーム油中融点画分」に相当する。

(2)甲5発明の「沃素価8.5のヤシ油」を含むことは、甲第5号証の段落【0018】にも記載されているように、ヤシ油はラウリン系油脂であるから、本件発明の「ラウリン脂」を含むことに相当する。また、甲第8号証には、精製ヤシ油がラウリン酸(C12:0)を48.0%含むことが示されているから、甲5発明の「沃素価8.5のヤシ油」は、成分に多少のバラツキがあったとしても40%以上のラウリン酸を含むと認められ、本件発明1の「ラウリン酸含量が40質量%以上で沃素価が7.5?30であるラウリン脂」に相当する。

(3)甲5発明の「PMF(IV45)16.0%、ヤシ油4.0%」を含むことは、本件発明1の「パーム油分別油及びラウリン脂を含」むことに相当する。

(4)甲5発明は、「油分47.2%」を含んでおり、その内「PMF(IV45)16.0%、ヤシ油4.0%」を含んでいるから、PMF(IV45)とヤシ油の混合油脂は、油分中の42.4%に相当し、PMF(IV45):ヤシ油は80:20の比で含んでいる。
したがって、甲5発明の「PMF(IV45)16.0%、沃素価8.5のヤシ油4.0%」を含むことは、本件発明の「チョコレート中の油脂」として、「沃素価が40?50であるパーム油中融点画分と、ラウリン酸含量が40質量%以上で沃素価が7.5?30であるラウリン脂とを、50:50?90:10の質量比で混合した混合油脂」を含んでいることに相当する。

(5)甲5発明の「冷菓のコーティング材用チョコレート」は、本件発明1の「冷凍菓子用チョコレート」に相当する。

(6)そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点B>
「チョコレート中の油脂が、パーム油分別油及びラウリン脂を含む冷凍菓子用チョコレートであって、該チョコレート中の油脂が、沃素価が40?50であるパーム油中融点画分と、ラウリン酸含量が40質量%以上で沃素価が7.5?30であるラウリン脂とを、50:50?90:10の質量比で混合した混合油脂を含んでいる冷凍菓子用チョコレート。」

<相違点C>
チョコレート中の油脂について、本件発明1では、P2XトリグリセリドとPX2トリグリセリドとを合計で35?75質量%、及びトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)を5?45質量%含有し、沃素価が25?45であり、該チョコレート中の油脂の80質量%以上が、パーム油中融点画分と、ラウリン脂とを、混合した混合油脂であって、
ただし、Pはパルミチン酸、Xは炭素数18以上の不飽和脂肪酸であり、P2Xトリグリセリド/PX2トリグリセリド=1.5?5.0を満たし、且つ、トリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が36?40であるトリグリセリド(CN36?CN40)とトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)との質量比((CN36?CN40)/(CN32?CN44))が0.42?0.72を満たすと特定されているのに対して、甲5発明では、PMF(IV45)16.0%とヤシ油4.0%の混合油脂は、油分中に42.4%含まれると特定されている点。

3 本件発明1の判断
そこで、相違点Cについて検討する。
請求人は、甲5発明の「カカオマス15.0%、」中のココアバター及び「ココアバター15.0%」を、チョコレートの物性改良や製造コストの節約を目的として、一部又は全部に代えてパーム油中融点画分とラウリン脂との混合油脂を使用することは当業者が容易に想到し得たことである旨主張する(請求書の第5頁?第7頁6行、第30頁下から2?第31頁25行、口頭審理陳述要領書(請求人)の第10頁3行?第15頁17行)。
ここで、まず、「ココアバター15.0%」をパーム油中融点画分とラウリン脂との混合油脂に置き換えた場合について検討する。
甲5発明の「ココアバター15.0%」をパーム油中融点画分とラウリン脂との混合油脂に置き換えたものは、パーム油中融点画分とラウリン脂との混合油脂を35.0%(15.0+16.0+4.0)含むこととなり、油分中の74.2%(35.0/47.2)となる。そうすると、本件発明1の「80質量%以上」を充足するためには、「ココアバター15.0%」に加え、「カカオマス15.0%、」中のココアバターをパーム油中融点画分とラウリン脂との混合油脂に置き換えることが必要である。
しかし、甲5発明は、「この発明は、冷凍または冷蔵の温度域の品温で喫食し、良好な硬さと口溶けを有するチョコレート類を提供することを目的にしたものであり、特に従来の固形のチョコレート類単独菓子とは異なり、前記低品温で良好な物理的食感を有し、かつ従来の冷食複合食品が有していた製品流通上の制約が少なくかつもたつきの食感も改善されたチョコレート類菓子を指向するものである。」(【0011】)を課題とするものの一実施例であるから、さらにチョコレートの物性の改良や製造コストの節約を目的として、チョコレートの味に影響を与えることが明らかであるカカオマス中のココアバターまでも他の油脂に置き換えることの動機付けがあるとはいえない。
また、仮に請求人が主張するように、ココアバターをパーム油中融点画分とラウリン脂との混合油脂に置き換えたとしても、用いる混合油脂によってトリグセリド組成が異なるから、パーム油中融点画分とラウリン脂との混合油脂に置き換えたチョコレートのトリグセリド組成等(P2XとPX2の合計量、(CN32?CN44)のトリグセリド含有量、(CN36?CN40)/(CN32?CN44)比、沃素価)は、一律に特定できない。したがって、甲5発明において、ココアバターをパーム油中融点画分とラウリン脂との混合油脂に置き換えたものは、本件発明1の「P2XトリグリセリドとPX2トリグリセリドとを合計で35?75質量%、及びトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)を5?45質量%含有し、沃素価が25?45であり、」「P2Xトリグリセリド/PX2トリグリセリド=1.5?5.0を満たし、且つ、トリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が36?40であるトリグリセリド(CN36?CN40)とトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)との質量比((CN36?CN40)/(CN32?CN44))が0.42?0.72を満たす」との構成を備えているとすることはできない。
なお、甲第3号証の「実験成績証明書」では、甲5発明の油脂に相当する油分について、トリグリセリド組成の分析結果が示されているが、ココアバターをパーム油中融点画分とラウリン脂との混合油脂に置き換えたもののトリグリド組成は示されていない。
したがって、甲5発明において、上記相違点Cに係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

4 本件発明2と甲5発明との対比・判断
本件発明2と甲5発明とを対比すると、上記2の一致点Bで一致し、相違点Cに加え、以下の点で相違する。

<相違点D>
冷凍菓子用チョコレートが、本件発明2では、冷凍菓子のセンター用であるのに対して、甲5発明は、そのように特定されていない点。

5 本件発明2の判断
そこで、相違点Cについて検討するに、相違点Cは、上記3のとおり甲5発明において、上記相違点Cに係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、相違点Dについて検討する。
甲第1号証に「冷菓の中でマーブル状、あるいは薄板状になるような、局在的に組み合わされている場合も挙げられる。」(【0021】)と記載されているが、コーティング材用チョコレートを冷凍菓子のセンターに用いることが周知であるとする証拠がなく、甲5発明の冷菓のコーティング材用チョコレートを冷凍菓子のセンターに用いることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。

6 まとめ
したがって、本件発明1及び2は、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、上記第2 1の無効理由2は理由がない。


第8 無効理由3について
1 甲第10号証に記載された発明
上記第5(8)(ハ)の甲第10号証の実施例5には、以下の発明が記載されていると認められる。
「アイスクリーム類に練り込まれた油脂が、沃素価50のパーム中融点画分50.0%、沃素価8.5のヤシ油33.3%及び沃素価72.8の菜種硬化油16.7%からなるアイスクリーム類。」(以下「甲10発明」ともいう。)

2 本件発明1と甲第10号証に記載された発明との対比
(1)本件発明1と甲10発明とを対比すると、甲10発明の「沃素価50のパーム中融点画分」は、本件発明1の「パーム油分別油」及び「沃素価が40?50であるパーム油中融点画分」に相当する。

(2)甲10発明の「沃素価8.5のヤシ油」は、ヤシ油がラウリン系油脂であり(甲第1号証の【0020】、甲第5号証の【0018】参照。)、甲第8号証には精製ヤシ油がラウリン酸(C12:0)を48.0%含むことが示されており、成分に多少のバラツキがあったとしても40%以上のラウリン酸を含むと認められるから、本件発明の「ラウリン酸含量が40質量%以上で沃素価が7.5?30であるラウリン脂」に相当する。

(3)甲10発明のアイスクリーム類に練り込まれた油脂が「沃素価50のパーム中融点画分50.0%、沃素価8.5のヤシ油33.3%」を含むことは、本件発明1のチョコレート中の油脂が「パーム油分別油及びラウリン脂を含」むことに相当する。

(4)甲10発明のアイスクリーム類に練り込まれた油脂が「沃素価50のパーム中融点画分50.0%、沃素価8.5のヤシ油33.3%」を含んでいることは、パーム中融点画分とヤシ油とを、50:33.3の比で混合した混合油脂をアイスクリーム類に練り込まれた油脂中に83.3%含んでいることであるから、本件発明1の「油脂の80質量%以上が、沃素価が40?50であるパーム油中融点画分と、ラウリン酸含量が40質量%以上で沃素価が7.5?30であるラウリン脂とを、50:50?90:10の質量比で混合した混合油脂である」ことに相当する。

(5)甲10発明の「アイスクリーム類」と本件発明1の「冷凍菓子用チョコレート」とは、「菓子」の点で共通する。

(6)そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点C>
「菓子中の油脂が、パーム油分別油及びラウリン脂を含む菓子であって、該菓子中の油脂の80質量%以上が、沃素価が40?50であるパーム油中融点画分と、ラウリン酸含量が40質量%以上で沃素価が7.5?30であるラウリン脂とを、50:50?90:10の質量比で混合した混合油脂である菓子。」

<相違点E>
本件発明1では、菓子が、冷凍菓子用チョコレートであって、その菓子中の油脂が、P2XトリグリセリドとPX2トリグリセリドとを合計で35?75質量%、及びトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)を5?45質量%含有し、沃素価が25?45であって、
ただし、Pはパルミチン酸、Xは炭素数18以上の不飽和脂肪酸であり、P2Xトリグリセリド/PX2トリグリセリド=1.5?5.0を満たし、且つ、トリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が36?40であるトリグリセリド(CN36?CN40)とトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)との質量比((CN36?CN40)/(CN32?CN44))が0.42?0.72を満たすと特定されているのに対して、甲5発明では、菓子が、アイスクリーム類であって、その菓子中の油脂のトリグリセリド組成が特定されていない点。

3 本件発明1の判断
そこで、相違点Eについて検討する。
請求人は、パーム油中融点画分とラウリン脂の混合油脂を使用した冷食用チョコレートが知られていること(甲第11号証参照。)、甲10発明と本件発明1とは技術分野が同じであること、及び甲10発明と本件発明1とは、口溶けの点で課題が共通していることから、同じく冷凍下で食する冷菓用チョコレートに使用する油脂として、同様にパーム中融点画分とラウリン脂の混合油脂である冷菓練込み用油脂を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである旨主張する(請求書の第7頁7行?第9頁18行、第33頁1行?第35頁末行、口頭審理陳述要領書(請求人)の第17頁2行?第19頁11行)。
しかし、チョコレートは、油脂が連続層で、チョコレートの特性は主に油脂で決定され、一般に油脂は26?35%配合されるものであるのに対して(乙第5号証1頁下から9?6行参照。)、アイスクリームは、凍結・起泡した食品であって、水中油滴形エマルションで、気泡は凝集した脂肪球と氷の結晶で保持され、油脂は10%前後である(乙第6号証)。ゆえに、チョコレートとアイスクリームとは、油脂含量及び油脂の構造が異なるものであるといえる。
また、本件発明1の課題である「口溶け」についても、チョコレートの口溶けとアイスクリームの口溶けとは、その意味するところが異なることは明らかである。
そうすると、チョコレートとアイスクリームとは、油脂含量及び油脂の構造が異なるものであるから、甲10発明のアイスクリーム類に用いる油脂を、冷菓用チョコレートに適用することが当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

さらに、請求人は、甲10発明の油脂が、本件発明1のトリグリセリド組成等を満たすことを、甲第3号証の実験成績証明書によって主張する。
しかし、甲第3号証における「5.分析サンプル a)甲第10号証の実施例5に係る冷菓中の油脂」に用いた「菜種硬化油」は、甲10発明の「菜種硬化油」の「沃素価72.8(当審注:「℃」は誤記である。)、上昇融点24.0℃」と沃素価及び上昇融点が、明らかに異なるものであるから、甲第3号証は甲10発明を忠実に再現したものとはいえない。そして、甲第3号証のa)のサンプルのトリグリセリド組成等から、甲10発明のトリグリセリド組成等が類推できるとの技術常識が存在するとはいえないこと、甲第3号証の「6.結果」の数値が、P2X+PX2、P2X/PX2比、(CN36?CN40)/(CN32?CN44)において、本件発明1の当該数値範囲の下限に近いこと、及び甲10発明で用いられている天然の油脂が、品種、生産地、生産年によってバラツキを有するものであること等から、甲10発明の油脂が、本件発明のトリグリセリド組成等を満たしているとはいえない。
そして、甲10発明の油脂を、本件発明のトリグリセリド組成等を満たすように調整する動機付けも存在しない。

したがって、相違点Eに係る本件発明1の構成は、甲10発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

4 本件発明2と甲10発明との対比・判断
本件発明2と甲10発明とを対比すると、上記2の一致点Cで一致し、相違点Eに加え、以下の点で相違する。

<相違点F>
冷菓用油脂が、本件発明2では、冷凍菓子のセンター用であるのに対して、甲10発明は、アイスクリーム類に練り込まれた油脂である点。

5 本件発明2の判断
そこで、相違点Eについて検討するに、相違点Eは、上記3のとおり甲10発明に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、相違点Fについて検討する。
甲第1号証に「冷菓の中でマーブル状、あるいは薄板状になるような、局在的に組み合わされている場合も挙げられる。」(【0021】)と記載されているが、アイスクリームに練り込まれた油脂を冷凍菓子のセンターに用いることが周知であるとする証拠がなく、甲10発明のアイスクリームに練り込まれた油脂を冷凍菓子のセンターに用いることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。

6 まとめ
したがって、本件発明1及び2は、甲10発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、上記第2 1の無効理由3は理由がない。


第9 無効理由4について
1 特許法第29条第1項第2号における「公然実施された発明」であるかについて
特許法第29条第1項第2号における、「公然実施された発明」とは、その内容が公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で実施された発明を意味すると解される。

請求人は、アイスチョコレートコーチングSPD10について、甲第18号証の出荷データにおいて2008年11月3日?2014年12月9日の期間に出荷されていることをもって、本件特許の出願日前にアイスチョコレートコーチングSPD10が公然実施された発明となった旨主張する。
しかし、甲第18号証には、「出荷データ(SPD10)」との記載があり、「納入日」が「2008年11月4日」からであることの記載は認められるが、「納入先コード」及び「納入先名称」の欄が黒塗りとなっており、どこに納入されたものであるのかを確認できない。
そうすると、納入先が明らかでないことから、一般に販売されていたという事実は証されておらず、アイスチョコレートコーチングSPD10が公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況であったとはいえない。したがって、アイスチョコレートコーチングSPD10が本件特許発明の出願前に公然実施されたものであるとはいえない。

2 本件発明1及び2が「アイスチョコレートコーチングSPD10」と同一の発明であるかについて
さらに、仮に「アイスチョコレートコーチングSPD10」が公然実施された発明であるとした場合、本件発明1及び2が「アイスチョコレートコーチングSPD10」と同一であるかについて検討する。

(1)公用発明1
請求人が、アイスチョコレートコーチングSPD10の配合を証するものとして挙げる甲第12号証、甲第12号証の2、甲第13?15号証、甲第17号証、甲第2号証及び甲第2号証の2は、請求人の社内資料であって、営業秘密に関する申立がされていることからも明らかなように、これらに記載された事項は、いずれも一般に知られた事実でないから、アイスチョコレートコーチングSPD10の配合を示すものとして採用することはできない。
また、甲第16号証の実験成績証明書は、アイスチョコレートコーチングSPD10の成分を分析した結果を示すものであるが、「5.分析サンプル アイスチョコレートコーチングSPD10(製造lot 140710)からの抽出油脂」と記載されており、2014年7月10日製造のアイスチョコレートコーチングSPD10を分析したものである。そして、請求人は、現在まで当該油脂配合に変更がない旨主張するが(審判請求書36頁16?19行、口頭審理陳述要領書22頁18行?24頁22行)、現在まで当該油脂配合に変更がないことを認めるに足る証拠はなく、甲第16号証のアイスチョコレートコーチングSPD10(製造lot 140710)が、本件特許の出願前に公然実施されたと主張する「アイスチョコレートコーチングSPD10」と油脂配合が同じであるとはいえない。

さらに、甲第16号証のアイスチョコレートコーチングSPD10(製造lot 140710)が本件特許の出願前に公然実施されたと主張する「アイスチョコレートコーチングSPD10」と油脂配合が同じであるとした場合について検討する。

甲第16号証には、分析結果として、P2X+PX2(重量%)42.8、CN32?CN44(重量%)28.3、ヨウ素価34.6、P2X/PX2比2.3、CN36?CN40(重量%)15.8、(CN36?CN40)/(CN32?CN44)比0.6と記載されていることから、「アイスチョコレートコーチングSPD10」は以下の発明であると認める。
「チョコレート中の油脂が、P2X+PX2(重量%)42.8、CN32?CN44(重量%)28.3、ヨウ素価34.6、P2X/PX2比2.3、CN36?CN40(重量%)15.8、(CN36?CN40)/(CN32?CN44)比0.6であるアイスコーチング用チョコレート。」(以下「公用発明1」という。)

(2)本件発明1と公用発明1との対比
ア 本件発明1と公用発明1とを対比すると、公用発明1の「P2X」は、本件発明1の「P2Xトリグリセリド」に相当し、同様に「PX2」は「PX2トリグリセリド」に、「ヨウ素価」は「沃素価」に相当する。また、Pはパルミチン酸、Xは炭素数18以上の不飽和脂肪酸を意味している。

イ 公用発明1の「P2X+PX2(重量%)42.8」含むことは、本件発明1の「P2XトリグリセリドとPX2トリグリセリドとを合計で35?75質量%」含むことに相当する。

ウ 公用発明1の「CN32?CN44(重量%)28.3」を含んでいることは、本件発明1の「トリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)を5?45質量%含有」することに相当する。

エ 公用発明1の「ヨウ素価34.6」であることは、本件発明1の「沃素価が25?45である」ことに相当する。

オ 公用発明1の「P2X/PX2比2.3」であることは、本件発明1の「P2Xトリグリセリド/PX2トリグリセリド=1.5?5.0を満た」すことに相当する。

カ 公用発明1の「(CN36?CN40)/(CN32?CN44)比0.6」であることは、本件発明1の「トリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が36?40であるトリグリセリド(CN36?CN40)とトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)との質量比((CN36?CN40)/(CN32?CN44))が0.42?0.72を満たす」ことに相当する。

キ 公用発明1の「アイスコーチング用チョコレート」は、アイスのコーチングに用いるチョコレートであるから、本件発明1の「冷凍菓子用チョコレート」に相当する。

ク そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点D>
「チョコレート中の油脂が、P2XトリグリセリドとPX2トリグリセリドとを合計で35?75質量%、及びトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)を5?45質量%含有し、沃素価が25?45である冷凍菓子用チョコレート。
ただし、Pはパルミチン酸、Xは炭素数18以上の不飽和脂肪酸であり、P2Xトリグリセリド/PX2トリグリセリド=1.5?5.0を満たし、且つ、トリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が36?40であるトリグリセリド(CN36?CN40)とトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)との質量比((CN36?CN40)/(CN32?CN44))が0.42?0.72を満たす。」

<相違点G>
チョコレート中の油脂について、本件発明1では、パーム油分別油及びラウリン脂を含み、チョコレート中の油脂の80質量%以上が、沃素価が40?50であるパーム油中融点画分と、ラウリン酸含量が40質量%以上で沃素価が7.5?30であるラウリン脂とを、50:50?90:10の質量比で混合した混合油脂であるのに対して、公用発明1では、パーム油分別油及びラウリン脂を含んでいるか不明である点。

(3)本件発明1の判断
そこで、相違点Gについて検討する。
請求人は、公用発明1が、パーム油分別油及びラウリン脂を含むことについて、甲第12号証、甲第12号証の2、甲第13?15号証、甲第2号証及び第2号証の2を挙げているが、上記(1)のとおり、甲第12号証、甲第12号証の2、甲第13?15号証、甲第2号証及び第2号証の2はいずれも一般に知られた事実でないから、公用発明1の配合について採用することができない。
また、請求人は、甲第39号証を提出し、甲第16号証に示される公用発明1の油脂の分析結果より、原料油脂の種類及び配合量が特定できる旨主張する。
しかし、後述の第10 2(3)の(原料油脂の種類及び原料油脂の配合量についての当審の判断)で説示するのと同様に、チョコレートの油脂として、ココアやカカオマスを除いて3種以上の混合油脂を用いることは、本件特許出願前に周知であって、POPに富む油脂としてパーム油やその分別油以外の油脂が存在すること、及びラウリン酸に富む油脂としてヤシ油、パーム核油又はパーム核オレイン以外の油脂が存在することから、公用発明1の油脂として種々の油脂の組合せが想定される。そうすると、公用発明1の油脂中のココアバター以外の残余の部分の油脂の種類及び配合量が、請求人の主張するとおりであることを認めることはできない。
そして、他にパーム油分別油及びラウリン脂を含むことを証するものはない。
したがって、公用発明1がパーム油分別油及びラウリン脂を含んでいるとはいえず、相違点Gは実質的な相違点であるから、本件発明1が公用発明1であるとはいえない。

(4)本件発明2と公用発明1との対比・判断
本件発明2と公用発明1とを対比すると、上記(2)の一致点Dで一致し、相違点Gに加え、以下の点で相違する。

<相違点H>
冷凍菓子用チョコレートが、本件発明2では、冷凍菓子のセンター用であるのに対して、公用発明1は、アイスコーチング用チョコレートである点。

(5)本件発明2の判断
そこで、相違点Gについて検討するに、相違点Gは、上記(3)のとおり実質的な相違点である。
また、相違点Hについて検討するに、公用発明1がセンター用である旨の証拠はないから、実質的な相違点である。

3 まとめ
したがって、本件発明1及び2は、公用発明1であるとはいえないから、特許法第29条第1項第2号の規定に該当せず、上記第2 1の無効理由4は理由がない。


第10 無効理由5について
1 特許法第29条第1項第2号における「公然実施された発明」であるかについて
森永製菓株式会社製「チョコモナカジャンボ」は、甲第19号証に「2006年」として「チョコモナカジャンボ 100円 センターチョコの品質を改良」と記載されていることから、2006年時点でセンターチョコを有する「チョコモナカジャンボ」が発売されていたといえる。また、甲第32号証には、「森永 チョコモナカジャンボ 100」の販売数が2010年第1週より記載されており、本件特許の出願日(平成22年8月10日)前に販売されてたことが看取できる。
したがって、森永製菓株式会社製「チョコモナカジャンボ」は、本件特許の出願日前に公然実施されたものであるといえる。

2 本件発明1及び2が「チョコモナカジャンボ」と同一の発明であるかについて
(1)公用発明2
請求人は、森永製菓株式会社製「チョコモナカジャンボ」のセンター板チョコの成分を証するものとして、甲第22号証の実験成績証明書を挙げている。
しかし、甲第22号証は、「5.分析サンプル 「チョコモナカジャンボ」(森永製菓製)を市場より入手し、同「チョコモナカジャンボ」のセンター板チョコ部から油脂を抽出し分析に供した。サンプル入手日:2014年8月11日 サンプル入手場所:アピタ守谷店」と記載されており、サンプル入手日が2014年8月11日であることから、本件特許の出願日前のものでないことは明らかである。
これに対して、請求人は、甲第19号証に記載された「チョコモナカジャンボの歴史には、センターチョコの改良に関して、2006年と2009年春に行われたことが記載されており、2009年春以降はセンターチョコの品質改良が記載されていないから、品質改良は行われていない。ゆえに、チョコモナカジャンボ」のセンターチョコは本件特許の出願日前から現在に亘りその品質改良は行われておらず、甲第22号証で分析した「チョコモナカジャンボ」のセンターチョコは、本件特許の出願日前のものと同じである旨主張する。
しかし、甲第19号証は、「チョコモナカジャンボの歴史」と題するものであるが、センターチョコの改良の歴史であるとまではいえず、センターチョコが改良された際は、必ず掲載されているとする根拠がないのであるから、2009年春以降センターチョコの品質改良が行われていないとはいえない。よって、甲第22号証で分析した「チョコモナカジャンボ」のセンターチョコは、本件特許の出願日前のものと同じであるとはいえない。

ここでさらに、甲第22号証の「チョコモナカジャンボ」のセンターチョコが、本件特許の出願日前のものと同じであるとした場合について検討する。

甲第22号証には、「チョコモナカジャンボ」のセンターチョコの分析結果として、P2X+PX2(重量%)43.5、CN32?CN44(重量%)29.3、ヨウ素価34.1、P2X/PX2比2.3、CN36?CN40(重量%)16.1、(CN36?CN40)/(CN32?CN44)比0.5であることが記載されているから、「チョコモナカジャンボ」のセンターチョコは以下の発明であると認める。
「チョコレート中の油脂が、P2X+PX2(重量%)43.5、CN32?CN44(重量%)29.3、ヨウ素価34.1、P2X/PX2比2.3、CN36?CN40(重量%)16.1、(CN36?CN40)/(CN32?CN44)比0.5であるアイス用センターチョコレート。」(以下「公用発明2」という。)

(2)本件発明1と公用発明2との対比
ア 本件発明1と公用発明2とを対比すると、公用発明2の「P2X」は、本件発明1の「P2Xトリグリセリド」に相当し、同様に「PX2」は「PX2トリグリセリド」に、「ヨウ素価」は「沃素価」に相当する。また、Pはパルミチン酸、Xは炭素数18以上の不飽和脂肪酸を意味している。

イ 公用発明2の「P2X+PX2(重量%)43.5」含むことは、本件発明1の「P2XトリグリセリドとPX2トリグリセリドとを合計で35?75質量%」含むことに相当する。

ウ 公用発明2の「CN32?CN44(重量%)29.3」を含んでいることは、本件発明1の「トリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)を5?45質量%含有」することに相当する。

エ 公用発明2の「ヨウ素価34.1」であることは、本件発明1の「沃素価が25?45である」ことに相当する。

オ 公用発明2の「P2X/PX2比2.3」であることは、本件発明1の「P2Xトリグリセリド/PX2トリグリセリド=1.5?5.0を満た」すことに相当する。

カ 公用発明2の「(CN36?CN40)/(CN32?CN44)比0.5」であることは、本件発明1の「トリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が36?40であるトリグリセリド(CN36?CN40)とトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)との質量比((CN36?CN40)/(CN32?CN44))が0.42?0.72を満たす」ことに相当する。

キ 公用発明2の「アイス用センターチョコレート」は、アイス用のチョコレートであるから、本件発明1の「冷凍菓子用チョコレート」に相当する。

ク そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点E>
「チョコレート中の油脂が、P2XトリグリセリドとPX2トリグリセリドとを合計で35?75質量%、及びトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)を5?45質量%含有し、沃素価が25?45である冷凍菓子用チョコレート。
ただし、Pはパルミチン酸、Xは炭素数18以上の不飽和脂肪酸であり、P2Xトリグリセリド/PX2トリグリセリド=1.5?5.0を満たし、且つ、トリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が36?40であるトリグリセリド(CN36?CN40)とトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数の合計が32?44であるトリグリセリド(CN32?CN44)との質量比((CN36?CN40)/(CN32?CN44))が0.42?0.72を満たす。」

<相違点I>
チョコレート中の油脂について、本件発明1では、パーム油分別油及びラウリン脂を含み、チョコレート中の油脂の80質量%以上が、沃素価が40?50であるパーム油中融点画分と、ラウリン酸含量が40質量%以上で沃素価が7.5?30であるラウリン脂とを、50:50?90:10の質量比で混合した混合油脂であるのに対して、公用発明2では、パーム油分別油及びラウリン脂を含んでいるか不明である点。

(3)本件発明1の判断
そこで、相違点Iにつき検討する。
請求人は、公用発明2において、パーム油分別油及びラウリン脂を含むことについて、以下の旨主張する(請求書の第第40頁19行?第42頁8行、口頭審理陳述要領書(請求人)の第31頁7行?第34頁17行)。

(原料油脂の種類及び原料油脂の配合量についての請求人の主張)
甲第22号証の表1のトリグリセリド組成及び表3の脂肪酸組成より、公用発明2は、POP及びラウリン酸などの中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドに富んでいるといえる。
そして、一般に市場に流通し多用されている油脂のうち、POPに富む油脂はパーム油やその分別油(以下「パーム油部分」という。)であり、またラウリン酸に富む油脂(ラウリン脂)はヤシ油、パーム核油又はパ-ム核オレイン(以下「ラウリン脂部分」という。)である。
そうすると、チョコレートには一般的にココアやカカオマスが配合されているので、これらに由来するココアバターの含量は、ココアバター由来と考えられるSOS含量からココアバターの含量を算出すると、5.7%となり、ココアバター以外の残余部分94.3%は、パーム油部分とラウリン脂部分由来であると考えられる。
また、ココアバターのトリグリセリド組成、脂肪酸組成及び沃素価は、甲第26?28号証によると甲第25号証の表1?4のとおりであるから、甲第22号証のトリグリセリド組成、脂肪酸組成及び沃素価からココアバター以外の混合油脂のトリグリセリド組成、脂肪酸組成及び沃素価を計算すると、甲第25号証の表5?8のとおりである(以下表5?8のココアバター以外の混合油脂のトリグリセリド組成、脂肪酸組成及び沃素価を「抽出油脂補正値」という。)。
そして、原料油脂の配合量は、ヤシ油、パーム核油又はパ-ム核オレインであるラウリン脂部分のP2X及びPX2成分は計算上無視できるほど少ないから(甲第25号証、表12参照。)、抽出油脂補正値のP2X及びPX2成分は実質的にパーム油部分由来である。パーム油、パームオレイン、パーム油中融点画分のそれぞれのP2X/PX2比(甲第25号証、表9参照。)と抽出油脂補正値のP2X/PX2比2.3(甲第25号証、表5において(PLP5.9+POP52.3)/(POL3.9+POO9.7)で算出。)とを比較すると、パーム油部分は、P2X/PX2比が2.292であるパーム油中融点画分であると特定できる。
抽出油脂補正値のうち、C34、C36成分は実質的にラウリン脂部分由来である。ヤシ油、パーム核油又はパ-ム核オレインのそれぞれのC34/C36比(甲第25号証、表12参照。)と抽出油脂補正値のC34/C36比0.8(甲第25号証、表6参照。)とを比較すると、ラウリン脂部分は、C34/C36比が0.8であるヤシ油であると特定できる。

(原料油脂の沃素価についての請求人の主張)
パーム油中融点画分と沃素価の関係は、本件特許の段落【0021】の表1、甲第29号証を整理すると甲第25号証の表10のとおりの関係であることから、パーム油中融点画分の沃素価=-0.4352(P2X/PX2比)+46.212)の関係が得られた。そして、パーム油部分の抽出油脂補正値のP2X/PX2比は、2.3であるから、沃素価は45.2となる。
ラウリン脂部分はヤシ油であって、甲第4号証表6.10及び甲第8号証表6.9より、ヤシ油の沃素価は8.5、ラウリン酸含量は48.0%である。

(原料油脂の種類及び原料油脂の配合量についての当審の判断)
チョコレートの油脂として、ココアやカカオマスを除いて3種以上の混合油脂を用いることは、本件特許出願前に周知(乙第15号証【0027】の実施例1?5、【0034】の実施例6、8、10参照。)である。
そうすると、一般に市場に流通し多用されている油脂のうち、POPに富む油脂はパーム油やその分別油であり、またラウリン酸に富む油脂はヤシ油、パーム核油又はパ-ム核オレインであったとしても、公用発明2が、ココアやカカオマスを除いた油脂として、パーム油部分として1種、ラウリン脂部分として1種を用いたものであると認めるべき合理的な根拠はない。
また、抽出油脂補正値から、原料油脂を特定するとしても、パーム油部分としては、ヤシ油、パーム核油又はパ-ム核オレインの他、チョコレートに用いるPOPに富む油脂として周知である南京ハゼ(チャイニーズタロー)を用いることも考えられるし(甲第1号証【0020】)、また、ラウリン脂部分としてヤシ油、パーム核油又はパ-ム核オレインの他に、製菓用油脂として周知であるヤシステアリン、ヤシオレイン、ヤシステアリンの水素添加油、極度硬化ヤシ油、パーム核ステアリン、パーム核ステアリンの水素添加油、極度硬化パーム核油、極度硬化パーム核オレイン、極度硬化パーム核ステアリンを用いることも考えられる(乙第8号証の表5.1、乙第9号証の表6.23参照。)。
そうすると、上記製菓に用いられる油脂は、それぞれ特定のトリグリセリド組成、脂肪酸組成及び沃素価を有するところ、公用発明2の抽出油脂補正値を満たす油脂の組合せとしては、上記製菓に用いられる油脂の種々の組合せが想定されるから、公用発明2の原料油脂の配合が、請求人が主張するとおりであると認めることはできない。また、現に請求人が主張する原料油脂の配合以外にも、被請求人が主張する配合(答弁書37頁下から9行?39頁2行)によって、公用発明2とほぼ同じ抽出油脂補正値のものとすることが可能である。よって、公用発明2において、請求人が主張するように、ココアやカカオマス以外の油脂がパーム油中融点画分とヤシ油であるとは特定できないし、原料油脂の配合量も特定できない。

なお、請求人は、パーム油部分として南京ハゼ(チャイニーズタロー)を用いることは、乙第2号証の表5.14の「南京ハゼ脂」の解説の欄に「中国で広く栽培され、欧州に輸入されている。SSSとPOP濃度が高いので関心が薄く、製菓用油脂での利用もない。POPはパーム油から容易に入手できる。」と記載されているから、製菓であるチョコレートの油脂に使用する理由がない旨主張する。
しかし、甲第1号証の段落【0020】にPOP成分に富む油脂として、南京ハゼの植物油脂を分別して冷菓用油性食品素材に使用することが記載されており、冷菓用油性食品素材はチョコレートであるから(【0002】参照。)、チョコレートの油脂として南京ハゼを使用することは周知であったといえ、請求人の当該主張は採用できない。

(原料油脂の沃素価についての当審の判断)
仮に、原料油脂の種類及び原料油脂の配合量が、請求人の主張するとおりであるとして、以下、原料油脂の沃素価について検討する。
パーム油中融点画分の沃素価について、請求人が主張する「パーム油中融点画分の沃素価=-0.4352(P2X/PX2比)+46.212)」の関係は、本件特許の段落【0021】の表1及び甲第29号証に記載のパーム油中融点画分のP2X/PX2比と沃素価を整理した甲第25号証の表10の各パーム油中融点画分のP2X/PX2比と沃素価の関係より求めたものである。しかし、当該関係をプロットした陳述要領書(被請求人)の41頁の図1を参照すると、パーム油中融点画分のP2X/PX2比と沃素価との間に直線の関係が成立するとはいえず、パーム油中融点画分の沃素価が「パーム油中融点画分の沃素価=-0.4352(P2X/PX2比)+46.212)」の関係にあるとはいえない。
よって、パーム油中融点画分の沃素価については、請求人の主張する45.2とすることはできない

なお、請求人は、平成27年10月23日の上申書において、「データのサンプル数が増えると誤差が小さくなるのは統計学の常識である。請求人はヨウ素価の特定にできるだけ誤差が小さくなるように、表10において5点のパーム中融点のデータを用いて沃素価とP2X/PX2比の関係式を導き出し、その関係式からパーム中融点画分の沃素価を計算しています。」と主張する。
しかし、そもそも、P2X/PX2比と沃素価との間に直線の関係があることは化学的に何ら明らかでなく、甲第25号証の表10から各P2X/PX2比と沃素価とが直線の関係にあるとは認められないから、請求人の主張は採用できない。

したがって、相違点Iは実質的な相違点であるから、本件発明1が公用発明2であるとはいえない。

(4)本件発明2と公用発明2との対比・判断
本件発明2と公用発明2とを対比すると、公用発明2はセンターチョコであるから、上記(2)の相違点Iの点で相違し、その余の点で一致する。

(5)本件発明2の判断
そこで、相違点Iについて検討するに、相違点Iは、上記(3)のとおり実質的な相違点である。

3 まとめ
したがって、本件発明1及び2は、公用発明2であるとはいえないから、特許法第29条第1項第2号の規定に該当せず、上記第2 1の無効理由5は理由がない。


第10 むすび
以上のとおり、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、本件請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とすることができない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-16 
結審通知日 2015-12-18 
審決日 2016-01-06 
出願番号 特願2010-179374(P2010-179374)
審決分類 P 1 113・ 113- Y (A23G)
P 1 113・ 121- Y (A23G)
P 1 113・ 112- Y (A23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 芳子川合 理恵  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 鳥居 稔
佐々木 正章
登録日 2014-06-20 
登録番号 特許第5562171号(P5562171)
発明の名称 冷凍菓子用チョコレート  
代理人 清水 義憲  
代理人 木元 克輔  
代理人 佐々木 善紀  
代理人 吉住 和之  
代理人 引地 進  
代理人 長谷川 芳樹  
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