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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1311262
審判番号 無効2015-800055  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-03-06 
確定日 2016-02-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第4641541号発明「スロットマシン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4641541号の出願についての手続の概要は、以下のとおりである。

平成19年11月 6日 特許出願(特願2007-288666号)
平成22年12月10日 特許権の設定登録(請求項の数2)
平成27年 3月 6日 本件無効審判の請求
平成27年 5月22日 審判事件答弁書
平成27年 7月15日 審理事項通知
平成27年 8月31日 口頭審理陳述要領書(請求人。以下「陳述要領書(請求人)」という。)
平成27年 8月31日 口頭審理陳述要領書(被請求人。以下「陳述要領書(被請求人)」という。)
平成27年 9月14日 口頭審理
平成27年 9月28日 上申書(被請求人。以下「上申書(被請求人)」という。)
平成27年10月13日 上申書(請求人。以下「上申書(請求人)」という。)

なお、平成27年9月14日の口頭審理について、調書に記載された「陳述要領」のうち請求人及び被請求人に関するものは以下の通りである。
「請求人
1 審判請求の趣旨及び理由は、審判請求書、平成27年8月31日付け口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述。
2 無効理由は、以下のとおりである。
(1)特許第4641541号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件発明の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(2)本件特許の特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件発明の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
被請求人
1 答弁の趣旨及び理由は、平成27年5月22日付け審判事件答弁書、平成27年8月31日付け口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述。
2 甲第1号証ないし甲第4号証の成立を認める。」

第2 本件審判事件にかかる両当事者の主張
請求人と被請求人の主張は以下のとおりである。
1 請求人の主張
1-1 概要
請求人は、審判請求書において、「特許第4641541号の請求項1及び2に係る特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、審判請求書、陳述要領書(請求人)、及び、上申書(請求人)を提出した。
そして、請求人が主張する無効理由は、調書における前記「請求人 2(1)?(2)」に記載したとおりのものである。
また、証拠方法として甲第1号証?甲第4号証を提出した。

[証拠方法]
甲第1号証:パチスロ必勝ガイド 2007年9月号 4?16頁 株式会社白夜書房 平成19年9月1日発行
甲第2号証:平成18年度標準技術集 遊技機及びその関連技術 第2部パチスロ(URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu.htm) 1?142頁 平成19年3月14日に公開
甲第3号証:パチスロ攻略マガジンドラゴン 2007年9月号 4?11頁 株式会社双葉社 平成19年8月21日発行
甲第4号証:平成22年8月11日付け提出の意見書

1-2 審判請求書における主張
請求人は、無効理由について、審判請求書において、具体的に以下のように主張する。

(1)本件特許の特許請求の範囲の請求項に記載された発明(3頁9行?8頁2行)
請求項1及び2に係る発明は、本件特許第4641541号の特許請求の範囲の各請求項に記載された、以下の通りのものである。
なお、記号(1A)?(1K)及び(2A)?(2K)は、分説のために請求人が便宜上付したものである。

(1-1) 本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)
(1A)各々が識別可能な複数種類の図柄を周期的に移動させることにより変動表示可能な複数の可変表示領域のそれぞれに表示結果を導出表示させることが可能な可変表示装置を備え、
(1B)遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、前記複数の可変表示領域の全てに表示結果が導出表示されたことにより1ゲームが終了し、前記複数の可変表示領域に導出表示された表示結果として第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインを含む複数の入賞ラインのうちいずれかの入賞ライン上に導出表示された図柄の組み合わせに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンであって、
(1C)少なくともいずれかの可変表示領域に表示結果が導出される前に、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別入賞及び該特別入賞以外の一般入賞を含む複数種類の入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
(1D) 前記複数の可変表示領域に表示結果をそれぞれ導出させるための導出操作手段と、
(1E) 前記導出操作手段が操作されたときに、該導出操作手段に対応する可変表示領域の表示結果として予め定められた引込範囲内に位置する表示位置からいずれかの表示位置を前記事前決定手段の決定結果に基づいて導出させる制御を行う導出制御手段と、
(1F) 前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該特別入賞が発生しなかった場合に当該特別入賞の発生を許容する旨の決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段と、
を備え、
(1G) 前記事前決定手段は、
同一ゲームにおける決定対象として、前記一般入賞のうち特定一般入賞の発生を許容する旨を単独で決定する第1の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特定一般入賞と異なる特別一般入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第2の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第3の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨、前記特別一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第4の決定を行うことが可能であり、
(1H) 同一ゲームにおいて前記第1の決定がなされる確率と前記第3の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第3の決定がなされる確率の比率、同一ゲームにおいて前記第2の決定がなされる確率と前記第4の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第4の決定がなされる確率の比率のうち一方が他方の比率よりも高くなる確率で前記第1?4の決定を行い、
(1I) 前記導出制御手段は、
前記第1の決定または前記第3の決定がなされた第1の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の入賞ラインに前記特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置及び前記第2の入賞ラインに前記特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置のうち前記第1の表示位置のみ位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第2の表示位置のみ位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行い、
(1J) 前記第2の決定または前記第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第1の表示位置のみ位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第2の表示位置のみ位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行う
(1K) ことを特徴とするスロットマシン。

(1-2) 本件特許の請求項2に係る発明(以下「本件発明2」という。)
(2A) 各々が識別可能な複数種類の図柄を周期的に移動させることにより変動表示可能な複数の可変表示領域のそれぞれに表示結果を導出表示させることが可能な可変表示装置を備え、
(2B) 遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、前記複数の可変表示領域の全てに表示結果が導出表示されたことにより1ゲームが終了し、前記複数の可変表示領域に導出表示された表示結果として第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインを含む複数の入賞ラインのうちいずれかの入賞ライン上に導出表示された図柄の組み合わせに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンであって、
(2C) 少なくともいずれかの可変表示領域に表示結果が導出される前に、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別入賞及び該特別入賞以外の一般入賞を含む複数種類の入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
(2D) 前記複数の可変表示領域に表示結果をそれぞれ導出させるための導出操作手段と、
(2E) 前記導出操作手段が操作されたときに、該導出操作手段に対応する可変表示領域の表示結果として予め定められた引込範囲内に位置する表示位置からいずれかの表示位置を前記事前決定手段の決定結果に基づいて導出させる制御を行う導出制御手段と、
(2F) 前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該特別入賞が発生しなかった場合に当該特別入賞の発生を許容する旨の決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段と、
を備え、
(2G) 前記事前決定手段は、
同一ゲームにおける決定対象として、前記一般入賞のうち特定一般入賞の発生を許容する旨を単独で決定する第1の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特定一般入賞と異なる特別一般入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第2の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第3の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨、前記特別一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第4の決定を行うことが可能であり、
(2H) 同一ゲームにおいて前記第1の決定がなされる確率と前記第4の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第4の決定がなされる確率の比率、同一ゲームにおいて前記第2の決定がなされる確率と前記第3の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第3の決定がなされる確率の比率のうち一方が他方の比率よりも高くなる確率で前記第1?4の決定を行い、
(2I) 前記導出制御手段は、
前記第1の決定または前記第4の決定がなされた第1の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の入賞ラインに前記特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置及び前記第2の入賞ラインに前記特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置のうち前記第1の表示位置のみ位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第2の表示位置のみ位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行い、
(2J) 前記第2の決定または前記第3の決定がなされた第2の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第1の表示位置のみ位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第2の表示位置のみ位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行う
(2K) ことを特徴とするスロットマシン。

なお、以下では、本件発明1及び2を総称して「本件発明」という。

(2)先行文献に記載された事実及びその説明
(2-1) パチスロ必勝ガイド 2007年9月号(甲第1号証)(8頁4行?16頁下1行)
「甲第1号証(以下「甲1」と記載する。)は、平成19年9月1日に発行された雑誌であるから、本件発明の出願前に日本国内で頒布された刊行物であり、その中には、以下の記載と図がある。」
a 4頁右側中段の「パチスロ」機の写真及び「5号機」の記載。
「この写真には、3つの表示窓と、各表示窓に対応する3つのストップボタン(3つのリールの下の赤丸)の記載がある。」

b 4頁右側下段の「各役払い出し」の欄
「この欄には、3種類の「BIG BONUS」役、1種類の「MIDDLE BONUS」役、「リプレイ」役、3種類の「1枚」役、4種類の「9枚」役、1種類の「6枚」役、2種類の「チェリー」役があること、役に応じた払い出しがあることの記載がある。」

c 4頁及び5頁に跨る「パチスロ北斗の拳2 乱世覇王伝 天覇の章」の記載。

d 5頁左側中段の「ボーナス後は必ずRTに突入!!」の欄
「この欄には、「純増約225枚」、「純増約104枚」、「コイン持ちが大幅アップ!」、「獲得枚数」等の記載があり、遊技用価値が「コイン」であることが示されている。また、3種類のビッグボーナス及び1種類のミドルボーナスの絵柄をそれぞれ表す写真からも明らかなように、回転表示されるリールの停止時に表示窓には1リールにつき3つの絵柄が表示されることが記載されている。」

e 7頁左側下段の「絵柄配列」の欄
「この欄には、各リールに複数種類の絵柄が21個ずつ配列されることが記載されている。以下、各種類の絵柄については、甲1の記載に沿って、左リールの[17]([17]は○内に数字「17」が配列されたものを表す。以下同様。)番の絵柄を「赤7」、[10]番の絵柄を「ユリア」または「ユリア絵柄」、[3]番の絵柄を「北斗」または「北斗絵柄」、[6]番の絵柄を「赤チェリー」、[13]番の絵柄を「黒チェリー」、[2]番、[9]番及び[16]番の絵柄を「スイカ」、[5]番、[12]番及び[19]番の絵柄を「ベル」と記載する。」

f 10頁右側下段の「各役の重複期待度」の欄
「この欄の左側には、ボーナスと重複して当選する小役に「角チェリー」、「スイカ」、「1枚役(チャンス目)」、「中段チェリー」があること、ボーナスとの重複期待度は「角チェリー」<「スイカ」<「1枚役(チャンス目)」<「中段チェリー」であることが記載されている。また、左リールが停止表示される一方で中リールと右リールが回転表示されている様子(角チェリーと中段チェリーの欄)、スイカ絵柄が斜め右下方向に揃いスイカ役が成立している様子(スイカの欄)、「ユリア絵柄-黒チェリー-黒チェリー」が下段横方向に揃い1枚役が成立している様子(1枚役の欄)、リール停止時において表示窓には1リールにつき3つの絵柄が表示されること(スイカと1枚役の欄)が記載されており、スイカと1枚役が成立している態様から、有効ラインには少なくとも「斜め右下方向」と「下段横方向」の2種類があることが示されている。」

g 10頁左側の「2種類のDDT打法手順」の欄
「この欄の「中押しDDT打法手順」には、(1) 回転中の3つのリールのうち最初に中リール枠2コマ上?枠上にユリア絵柄を狙う場合に4種類の停止パターンが想定され、停止パターンからどのような役(ハズレ、ボーナス、チェリー、ベル確定、リプレイ確定、スイカ、1枚役)が成立しているかを推測できること、(2) 1枚役もスイカも揃わない場合は赤7や北斗絵柄の1枚役の取りこぼしであること(すなわち、役が成立していても当該役が導出されるとは限らないこと)(「しっかりと狙おう」参照)、(3) 中リールが停止表示される一方で左リールと右リールが回転表示されている様子(最上段の写真)の記載がある。
また、この欄の「順押しDDT打法手順」には、(1) 回転中の3つのリールのうち最初に左リール中?下段にユリア絵柄を狙う場合に3種類の停止パターンが想定され、停止パターンからどのような役(スイカ)が成立しているかを推測できること、(2) 少なくとも1枚役については取りこぼしがあること(「1枚役の取りこぼしを気にしないなら順押しDDTでもOK」参照)、(3) 3つのリールが回転表示されている様子(最上段の写真)の記載がある。」

h 11頁上段の「ボーナスフラグ判定と小役チェック」の欄
「この欄の「ボーナスフラグ判別手順」には、中リールの下段に「赤7」絵柄又は「北斗」絵柄をビタ押しした場合に下段にボーナス絵柄が停止し、且つベルがハズレた時に「ボーナス(特別入賞に相当)」の当選が分かること、ボーナスフラグの当否の察知には2G(ゲーム)が必要であり、ボーナスフラグの種類の察知には3G(ゲーム)が必要であることが記載されている。すなわち、ボーナスフラグ成立後の次ゲーム以降、複数ゲームに亘って持ち越すことの記載がある。また、3つのリールが回転表示されている様子(「ボーナス確定後は小役チェック」の写真)、中リールが停止表示される一方で左リールと右リールが回転表示されている様子(「ボーナスフラグ判別手順」の写真)の記載がある。」

i 11頁下段の「ミドルボーナス中は2枚掛けで消化、全ての小役が15枚の払い出しとなるため」の記載。
「この記載は、遊技用価値を掛けて遊技を行うことを示している。」

j 16頁右側下段の「スイカと1枚役はボーナス重複に期待!!」の欄
「右上段には、「スイカ」と「1枚役」はそれぞれ単独成立だけでなく、ボーナスと重複成立する可能性(期待)があること、左下段の白色欄には「スイカ」と「1枚役(北斗or7頭)」がそれぞれ1/569.87の確率で重複成立すること及び「スイカ+1枚役(北斗or7頭)」は1/5.22?1/4.25の確率でボーナスと重複成立することが記載されている。また、右上段には、スイカ成立時の配列例(左上から斜め右下方向に3つのスイカ絵柄が並んだ状態)、1枚役成立時の配列例(下段横方向にユリア絵柄-黒チェリー-黒チェリーが並んだ状態)の記載がある。つまり、有効ラインには「斜め右下方向」と「下段横方向」の2種類があることが示されている。また、リールの停止時には表示窓に1リールにつき3つの絵柄が表示されること(右上段のスイカと1枚役の成立写真)が記載されている。さらに、スイカ役の払い出しは6枚、チェリー役の払い出しは2枚、ベル役の払い出しは9枚、「赤7/北斗/ユリア絵柄のいずれか-黒チェリー-黒チェリー」揃い(1枚役)の払い出しは1枚であることの記載がある。」

k 17頁左側の「単独フラグ&重複フラグ別・各役確率(解析値)」の欄
「この欄には、同一ゲームで発生する単独フラグと重複フラグのそれぞれが、各設定値についてどのような確率で成立するかの解析値が示されている。」

(2-2)平成18年度標準技術集 遊技機及びその関連技術 第2部パチスロ(甲第2号証)(17頁1行?25頁下1行)
「甲第2号証(以下「甲2」と記載する。)は、平成19年3月14日に、特許庁のウェブサイト「URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu.htm」に掲載された、パチスロ機における標準的な技術として収集した標準技術集(電子的技術情報)であるから、本件発明の出願前に日本国内において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった周知の電子的技術情報であり、その中には、以下の記載と図がある。」

a 1?2頁の「1-1-1-1 遊技フロー」の欄
この欄には、
「メダルの投入(例外としてパロット※1(3-1-1-1「筐体の種類」における「パロット」参照)は玉)枚数(ベット数)によって、予め機種ごとに定められた有効ライン数(2-2-2「リールの有効ライン」参照)が決定し、予め機種ごとに定められた「メダルの払い出しに係る絵柄(以降、「役」とする)」の成立(揃う)に対する有効なラインをとる。
その後、スタートレバーにて各リールが始動(この時に役の抽選が行なわれる(1-1-2-1「抽選・当選判定」参照)し、各リールに対応したストップボタンを押すことで、リールが停止する。最終リールが停止し、予め機種ごとに定められた図柄(リール上に配された絵柄)が有効ライン上に成立(入賞)した場合にのみ規定枚数のメダルが払い出される。」ことが記載されている。
また、この欄には、【図1】に遊技フローが図示され、【図2】にパチスロ各部の参考例が図示されている。
【図1】には、「遊技用価値であるメダルの投入から開始される遊技フローが記載され、スタートレバーの操作に伴うリールの回転と内部抽選、ストップボタンの操作とこれに伴うリールの停止、さらには揃った図柄に応じたメダルの払い出しまで」が図示されている。
そして、【図2】には、「水平方向の3本の有効ラインと斜め方向の2本の有効ラインがあること、各リールに対応して3つのストップボタンが設けられること、当該ストップボタンとは別にスタートレバーが設けられること」が図示されている。

b 3頁の「1-1-2-1 抽選・当選判定」の欄
この欄には、
「各「役」(役の種類については1-2-2「役の種類」参照)の抽選は、メイン基盤(3-2-5-1「メイン基盤」参照)と称される集積基盤で行なわれる。役の抽選はゲームごとに行なわれ、主な抽選タイミングはスタートレバーを始動させた時となっている(以降、メイン基盤内で行なわれる抽選を「内部抽選」とする)。
<当選判定>
予め機種ごとに定められた各「役」の判定は、2 段階で行なわれる。1 次判定は当選役の決定であり、上述の内部抽選によっていずれかの役が当選する(当選した役に対するフラグが成立した、と呼ばれることもある。)。そして、2 次判定として、当選した役に対応した図柄がリールの有効ライン上に成立(入賞)することで初めてメダルの払い出しが行なわれる。
よって、仮に内部当選をしたとしても、有効ライン上に内部当選した役に対応した図柄が成立しない、もしくは有効ライン上に役が成立したとしても、内部当選していない場合は、メダルの払い出しは行なわれない。」ことが記載されている。
また、この欄には、【図1】に抽選フローが図示されている。
「この図には、遊技の時系列に沿ってパチスロ機の内部で実行される処理動作の記載がある。また、各処理とリール動作との連動についての記載、「内部当選した役とストップボタンが押された箇所に応じ、最大4コマの範囲内で調整(スベリ)を行い出目を形成する」との記載もある。」

c 10頁の「1-2-1-3 抽選に関するルール」の欄
この欄には、
「パチスロにおける役の抽選は基本的に「完全確率抽選(1-4-1-1「完全確率抽選」参照)」で行なうこととなっている。抽選の仕組みとしては、スタートレバー始動時に並べられた数値の中からランダムに任意の数値を取り出すというもの。各数値は予め機種ごとに定められた役と対応しており、当否の判定を行なう。また各役の当選確率には規制(1-2-2「役の種類」内の各役を参照)が設けられ、設定(1-2-1-5「設定の概要」参照)によっても切り替えることが可能である。
なお、風適法第 20 条に基き国家公安委員会が定める「遊技機の認定及び型式の検定に関する規則」第 6 条 2 号の別表第 3(以下、「別表第 3」とする)内(2)主基盤に装着される電子部品に関する規格内「ハ」では周期に関して「1 周 0.5 秒以内」もしくは「規則的で当せん機械を容易に推定できない」と定められている。」ことが記載されている。
また、この欄には、【図1】に抽選の流れが図示されている。
「この図は、抽選の仕組みを表すイメージ図であり、内部抽選の対象として「ボーナス」、「小役」、「ハズレ」が設定されている。そして、レバー始動時などの抽選契機にこれらのうちの1つが取り出されることが記載されている。また、取り出された内容から当否が判定されることの記載もある。」

d 11?12頁の「1-2-1-4 リールに関するルール」の欄
この欄には、
「リールは3本以上搭載しなくてはならず、各リールの大きさは同一とされている。また、図柄に関しては縦25mm、横35mm以内とし、1 つのリール上に21個以内、且つ全てのリールに付き同一数とする。また、図柄の種類に関しては1 機種あたり10種類以内と定められている(以上、別表第5(2)構造に関する規格内「ロ」参照)。
<リールの始動に関するルール>
リールの回転は一定方向(主に手前下)のみとし、回転速度は1分間に80回転以内で一定の速度を保つものとする。ただし、リールが回転し始めてから、前述の一定の速度に達するまではこの限りではない(別表第5(1)内性能に関する規格内「イ」参照)。
<リールの停止に関するルール>
全てのリールが一定の速度に達するまでは全ての操作を行えないものとし、それ以降も任意にストップボタンを操作しない限り、リールが一定の速度に達した後、30秒以内に自動停止しないものとする。なお、ストップボタンを操作したのちには、0.19秒以内に停止するものとする(以上、別表第5(1)性能に関する規格内「イ」参照)。
※ 前頁の理由から、リールのスベリ(ストップボタンを押した箇所から実際に停止する箇所のズレ)は最大4コマとなる(最大1秒あたり約28コマ《60秒間80回転》回転でき、ストップボタンを操作した後、0.19秒以内に停止を行なうため、5コマ以内《0.19×28=5.32》の停止が余儀なくされる。よって、規則上、最大速度で回転を行なっていたとしても、停止図柄を含めて考えると4コマ以内に停止を行なわなければならない)。」と記載されている。
また、この欄には、【図1】にリールの仕組みが図示され、【図2】に図柄と配列が図示されている。
「この図には、各リールに複数種類の絵柄が21個配列されていること、操作位置(図柄番号の「2」)から最大4コマの範囲ですべって停止すること(図柄番号の「1」、「21」、「20」、「19」のいずれかに停止すること)の記載がある。」

e 16頁の「1-2-2-2 レギュラーボーナス」の欄
「この欄の「開始条件・終了条件・フラグに関するルール」には、以下の記載がある。
「なお、内部抽選当選時に図柄の成立がなされない場合は、次回ゲームにフラグの持越しを行なうことが可能とされる。」

f 18頁の「1-2-2-3 ビッグボーナス」の欄
「この欄の「開始条件・終了条件・フラグに関するルール」には、以下の記載がある。
「なお、内部抽選当選時に図柄の成立がなされない場合は、次ゲームにフラグの持越しを行なうことが可能(別表第5 内(1)性能に関する規格内「ト」参照)。」

g 34?35頁の「1-3-1-2 コントロール制御」の欄
この欄には、
「リールの制御方法の1つ。基本的には当該ゲーム時の成立フラグを判断し、フラグが成立している場合は最大限(4コマ)まで内部当選図柄を優先的に引き込む制御のこと。」と記載されている。
また、この欄には、【図1】にコントロール制御が図示されている。
また、この欄には、「Cの箇所で停止ボタンを押した場合に、「フラグ非成立」時と「H小役フラグ成立」時とで停止図柄(枠で囲んだ範囲に示される図柄)にどのような違いがあるかの記載がある。また、フラグ成立時には、最大限(4コマ)まで図柄を揃えようとするとの記載がある。」

h 47頁の「1-4-1-3 複合抽選」の欄
この欄には、
「複数の小役が同時に内部当選することを指す(ボーナスと小役の同時抽選も含む)。なお、ボーナス図柄が揃えられなかった場合は、ボーナスフラグのみ持ち越されることになる。」こと、
「<複合抽選(小役)>
複数の小役が同時抽選され、且つ同時に出現する。目押しをする箇所によって、入賞する役は異なり、概ね外見上の判断(内部の当選状況)は判別不可能となっている。」こと、
「<小役とボーナスの同時抽選>
小役とボーナスが同時抽選される。目押しをする箇所によって、出現する図柄は異なる。」ことが記載されている。

(2-3) パチスロ攻略マガジンドラゴン 2007年9月号(甲第3号証)(26頁1行?29頁下12行)
「甲第3号証(以下「甲3」と記載する。)は、平成19年8月21日に発行された雑誌であるから、本件発明の出願前に日本国内で頒布された刊行物であり、その中には、以下の記載と図がある。」

a 5頁左側上段の「パチスロ」機の写真

b 5頁中段の「パチスロ北斗の拳2 乱世覇王伝 天覇の章」の記載

c 5頁中央下段の「役の構成」の欄
「この欄には、3種類の「BIG BONUS」役、1種類の「MIDDLE BONUS」役、4種類の「9枚」役、3種類の「1枚」役、2種類の「チェリー」、1種類の「6枚」役、「リプレイ」役の記載と、掛け数に応じた各役の払い出し枚数の記載がある。」

d 8頁右側上段の「小役とボーナスの同時成立」の欄
「この欄には、スイカ役には、「チャンス目(1枚役)」と同時成立する「強スイカ」と、単独成立する「弱スイカ」があること、強スイカも弱スイカもボーナスと同時成立し得ることを示す記載がある。」

e 8頁中段の「暫定版 通常時の打ち方」の欄
「この欄には、左リールの下段に「スイカ」が停止している場合に、中リールの停止操作時に狙うべきスイカの位置(図中、[7]で示す位置)と、最終的に斜め右上方向にスイカが並んだ場合には「弱スイカ」の成立が確定すること、最終的に下段横方向にスイカが並んだ場合には「強スイカ」の成立が確定することを示す記載がある。」

f 8頁左側中段の「リール配列」の欄
「この欄には、各リールに複数種類の絵柄が21個ずつ配列されていることが記載されている。」

(2-4) 本件特許の審査過程で平成22年8月11日付に提出された意見書(甲第4号証)
「甲第4号証(以下「甲4」と記載する。)は、審査過程における請求項1に係る発明(本件発明1に対応)と請求項2(本件発明2に対応)に係る発明に対する特許権者の認識を説明する目的で提出する文献である。
甲4の7頁には、「尚、請求項2は、「第1の決定」と「第2の決定」、「第3の決定」と「第4の決定」の関係がそれぞれ異なる点で請求項1と相違しますが、その他の点は同一であり、請求項1と同じ点に技術的意義があります。」との記載がある(以下、「記載事項a」という。)。」

(3)本件発明1について
(3-1)本件発明1と甲第1号証との対比(29頁下1行?36頁8行)
以下、前述の分説に従って、本件発明1の構成と甲1の記載とを対比する。
ア 構成1Aについて
「甲1には、パチスロ機の正面に3つの表示窓が設けられること(前記(2)(2-1)の記載事項a)、各表示窓にはスイカ、赤7、ベル、赤チェリー等の複数種類の絵柄が配列されたリールが配置されること(前記(2)(2-1)の記載事項e)、各リールはそれぞれ回転表示されること(前記(2)(2-1)の記載事項f、g、h)、回転表示されるリールの停止時に表示窓には1リールにつき3つの絵柄が表示されること(前記(2)(2-1)の記載事項d、f、j)が記載されている。ここでの表示窓が、構成1Aの「可変表示領域」に相当する。なお、リールを駆動して表示窓の表示を行う装置がパチスロ機(前記(2)(2-1)の記載事項a、c)に搭載されていることは当業者にとって自明な事柄である。従って、甲1には、構成1Aに相当する構成が実質的に記載されている。
また、構成1Aは、当該技術分野において周知の技術でもある。例えば特許庁がパチスロ機における標準的な技術として収集した標準技術集(電子的技術情報)である甲2には、それぞれ複数種類の絵柄が21個ずつ配置された3つのリールが設けられること(前記(2)(2-2)の記載事項dの図1及び図2)、3つのリールに対応して3つの表示窓が設けられること(前記(2)(2-2)の記載事項aの図2)、3つのリールはレバー操作で回転を開始し、ボタン操作で停止すること(前記(2)(2-2)の記載事項aの図1)、リールの停止時に3つの表示窓にそれぞれ3つの図柄が表示されること(前記(2)(2-2)の記載事項aの図2)が記載されている。
この甲2を参酌すれば、構成1Aは、甲1に記載されているのに等しい事項でもあることは明らかである。また、甲2に記載されている事項を甲1に記載された事項に適用して構成1Aとすることも、当業者にはきわめて容易である。」

イ 構成1Bについて
「甲1には、複数枚のコインを掛けてゲームを行い(前記(2)(2-1)の記載事項d、i)、3つの表示窓のリールが停止した際の斜め右下方向と下段横方向に並ぶ絵柄の組み合わせが所定の役に該当するとき、所定枚数のコインが払い出されることが記載されている(前記(2)(2-1)の記載事項b、j)。また、甲1には、有効ラインとして少なくとも斜め右下方向と下段横方向の2種類があることが記載されている(前記(2)(2-1)の記載事項f、j)。これらの記載の内容は、本件発明1の構成1Bに相当する。従って、甲1には、構成1Bに相当する構成が記載されている。
また、構成1Bは、当該技術分野において周知の技術でもある。例えば甲2には、1?3枚のメダルを投入してスタートレバーを押すとリールが始動し、ストップボタンの操作により3つのリール全てが停止したときに5つの有効ライン(斜め方向に2つと横方向に3つ)上のいずれかに予め定めた図柄が成立すると、規定枚数のメダルが払い出されることが記載されている(前記(2)(2-2)の記載事項aの記載及び図1、図2)。
この甲2を参酌すれば、構成1Bは、甲1に記載されているのに等しい事項でもあることは明らかである。また、甲2に記載されている事項を甲1に記載された事項に適用して構成1Bとすることも、当業者にはきわめて容易である。」

ウ 構成1Cについて
「甲1には、まず(最初に)中リールの下段に「赤7」絵柄又は「北斗」絵柄をビタ押しした場合に下段にボーナス絵柄が停止し、且つベルがハズレた時に「ボーナス(特別入賞に相当)」の当選が分かること(前記(2)(2-1)の記載事項h)、3つのリールが回転している状態で中リール枠2コマ上?枠上に「ユリア」絵柄を狙った場合の中リールの停止パターンや3つのリールが回転している状態で左リール中?下段に「ユリア」絵柄を狙った場合の左リールの停止パターンによって「ハズレ」、「ボーナス(特別入賞に相当)」、「チェリー(一般入賞に相当)」、「ベル(一般入賞に相当)」、「リプレイ(一般入賞に相当)」、「スイカ(一般入賞に相当)」、「1枚役(一般入賞に相当)」の成立を推測できることの記載がある(前記(2)(2-1)の記載事項g)。
これらの記載は、いずれか1つのリールの回転が停止する前に(3つのリールが回転している状態で)、既に特別入賞や一般入賞が決定されていることを示唆するものである。従って、これらの記載の内容は、本件発明1の構成1Cに相当する。すなわち、甲1には、構成1Cに相当する構成が記載されている。
また、構成1Cは、当該技術分野において周知の技術でもある。例えば甲2には、スタートレバーによる各リールの始動と同時(すなわち、3つのリールが回転している間)に役の抽選が行われること、ボーナス遊技への移行を伴うボーナスやそれ以外の小役の当否を決定することが記載されている(前記(2)(2-2)の記載事項aの「スタートレバーにて各リールが始動(この時に役の抽選が行われる点)し、各リールに対応したストップボタンを押すことで、リールが停止する」との記載及びその図1、前記(2)(2-2)の記載事項bの「役の抽選はゲームごとに行なわれ、主な抽選タイミングはスタートレバーを始動させた時となっている」との記載及びその図1、「記載事項c」の「抽選の仕組みとしては、スタートレバー始動時に並べられた数値の中からランダムに任意の数値を取り出す」との記載及びその図1)。
この甲2を参酌すれば、構成1Cは、甲1に記載されているのに等しい事項でもあることは明らかである。また、甲2に記載されている事項を甲1に記載された事項に適用して構成1Cとすることも、当業者にはきわめて容易である。」

エ 構成1Dについて
「甲1には、回転している3つのリールを遊技者が個別に停止できることの記載(前記(2)(2-1)の記載事項f、g、h)に加え、3つのリール(表示窓)の下に配置された3つのストップボタンの記載がある(前記(2)(2-1)の記載事項a)。これらの記載の内容は、本件発明1の構成1Dに相当する。従って、甲1には、構成1Dに相当する構成が記載されている。
また、構成1Dは、当該技術分野において周知の技術でもある。例えば甲2には、左リール、中リール、右リールのそれぞれに対応するストップボタンが記載されている(前記(2)(2-2)の記載事項a」の「各リールに対応したストップボタンを押すことで、リールが停止する。」との記載及び図1、図2、前記(2)(2-2)の記載事項dの「ストップボタンを操作したのちには、0.19秒以内に停止するものとする」との記載)。
この甲2を参酌すれば、構成1Dは、甲1に記載されているのに等しい事項でもあることは明らかである。また、甲2に記載されている事項を甲1に記載された事項に適用して構成1Dとすることも、当業者にはきわめて容易である。」

オ 構成1Eについて
「構成1Eの記載によれば、本件発明1の導出制御手段は「予め定められた引込範囲内に位置する」表示結果を導出させる制御である。そして、予め定められた引込範囲とは停止操作が行われた図柄から4コマまでの範囲であることが明細書の段落【0317】及び【0318】に記載されている。一方、「構成1Cについて」の項で説明したように、甲1には、3つのリールが回転している状態で中リール枠2コマ上?枠上に「ユリア」絵柄を狙った場合でも成立している役に応じて中リールが停止すること、3つのリールが回転している状態で左リール中?下段に「ユリア」絵柄を狙った場合でも成立している役に応じて左リールが停止することを示す記載がある(前記(2)(2-1)の記載事項g)。
これらの記載は、ストップボタンの操作によるリールの停止時に表示窓に表示される絵柄の配列は、ストップボタンの操作の前に決定した抽選結果に基づいて導出されることを意味している。しかし、停止操作から「ユリア」絵柄が導出するまで数コマ変動するものの、本件発明と同様に「予め定められた引込範囲」の制御であるかは不明瞭である。よって、甲1には構成1Eの導出制御手段の一部が記載されている。」

カ 構成1Fについて
「甲1には、ボーナスフラグの当否の察知には2G(ゲーム)が必要であり、ボーナスフラグの種類の察知には3G(ゲーム)が必要であることの記載がある(前記(2)(2-1)の記載事項h)。この記載は、ボーナス(特別入賞に相当する)の成立を示すフラグ(すなわち「ボーナスフラグ」)が、ボーナスの導出がないまま次ゲーム以降に持ち越すことを示している。
いうまでもなく、ボーナスが導出されれば、その時点でボーナスの成立が分かるのであって、複数ゲームに亘ってボーナスフラグの成立や種類を察知する必要がないのであるから、この記載の内容は、本件発明1の構成1Fに記載されたボーナスフラグの持越手段の機能に実質的に相当する。従って、甲1には、構成1Fに相当する構成が記載されている。
また、構成1Fは、当該技術分野において周知の技術でもある。例えば甲2には、レギュラーボーナスについて「なお、内部抽選当選時に図柄の成立がなされない場合は、次回ゲームにフラグの持越しを行なうことが可能とされる。」(前記(2)(2-2)の記載事項e)、ビッグボーナスについて「なお、内部抽選当選時に図柄の成立がなされない場合は、次ゲームにフラグの持越しを行なうことが可能(別表第5 内(1)性能に関する規格内「ト」参照)。」(前記(2)(2-2)の記載事項f)との記載がある。
この甲2を参酌すれば、構成1Fは、甲1に記載されているのに等しい事項でもあることは明らかである。また、甲2に記載されている事項を甲1に記載された事項に適用して構成1Fとすることも、当業者にはきわめて容易である。」

キ 構成1Gについて
「構成1Gの記載によれば、「特定一般入賞」役とは、一般入賞のうち、(1) 単独でも、(2) 特別一般入賞と同時にも、(3) 特別入賞と同時にも、(4) 特別一般入賞及び特別入賞と同時にも、その発生を許容する旨が決定されるものである。また、「特別一般入賞役」とは、(1) 特定一般入賞と同時でも、(2) 特定一般入賞及び特別入賞と同時にも発生を許容する旨が決定されるものである。
一方、甲1の「記載事項j、k」(前記(2)(2-1))には、「スイカ」が、単独でも、他の小役である「1枚役」と同時にも、特別入賞としての「ボーナス」と同時にも、他の小役である「1枚役」と特別入賞としての「ボーナス」と同時にも成立する旨が記載されている。従って、甲1の「スイカ」が「特定一般入賞」役に相当する。
同じく、甲1の「記載事項j、k」(前記(2)(2-1))には、「1枚役」としての「北斗/赤7のいずれか-黒チェリー-黒チェリー」が、「スイカ」及び「ボーナス」と同時に成立する旨が記載されている。従って、甲1の「1枚役」が「特別一般入賞」に相当する。
なお、甲1の「ボーナス」である「赤7-赤7-赤7」、「赤7-赤7-北斗」、「北斗-北斗-赤7」が「特別入賞」に相当する。

そうすると、甲1には、(1)「スイカ」が単独で当選すること(第1の決定に相当する)(前記(2)(2-1)の記載事項j、k)、(2)「スイカ」と「1枚役」が同時当選すること(第2の決定に相当する)(前記(2)(2-1)の記載事項j、k)、(3)「スイカ」と「ボーナス」が同時当選すること(第3の決定に相当する)(前記(2)(2-1)の記載事項j、k)、(4)「スイカ」と「1枚役」と「ボーナス」が同時当選すること(第4の決定に相当する)(前記(2)(2-1)の記載事項j、k)が記載されている。
よって、甲1証には、構成1Gが実質的に記載されている。」

ク 構成1Hについて
「甲1には、以下の記載がある(前記(2)(2-1)の記載事項k)。
・第1の決定=スイカ単独(1/163.84)
・第2の決定=スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」(1/744.72)
・第3の決定=スイカ+「赤7-赤7-赤7」(1/5957.81)
・第4の決定=スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」+「赤7-赤7-赤7」(1/5957.81)

この場合、「スイカが単独で当選する確率」と「スイカ+「赤7-赤7-赤7」が同時当選する確率」との合算確率に占める「スイカ+「赤7-赤7-赤7」が同時当選する確率」の比率は、次式で計算することができる。
[1] 第1の決定と第3の決定の合成確率に占める第3の決定の確率の比率
100×1/5957.81/(1/163.84+1/5957.81)≒2.68%(値1)
一方、「スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」が同時当選する確率」と「スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」と「赤7-赤7-赤7」が同時当選する確率」との合算確率に占める「スイカと「赤7-黒チェリー-黒チェリー」と「赤7-赤7-赤7」が同時当選する確率」の比率は、次式で計算することができる。
[2] 第2の決定と第4の決定の合成確率に占める第4の決定の確率の比率
100×1/5957.81/(1/744.72+1/5957.81) ≒11.11%(値2)
以上より、甲1には、確率が、値1<値2の関係を満たすように、第1の決定?第4の決定が行われることが記載されている。
よって、甲1には、構成1Hが実質的に記載されている。」

ケ 構成1Kについて
「甲1には、スロットマシンについて記載されている(前記(2)(2-1)の記載事項a、c)。よって、甲1には、構成1Kが記載されている。

(3-2) 本件発明1と甲1に記載された発明との一致点及び相違点(36頁9行?38頁6行)
「以上の対比結果より、本件発明1と甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という)は、
「各々が識別可能な複数種類の図柄を周期的に移動させることにより変動表示可能な複数の可変表示領域のそれぞれに表示結果を導出表示させることが可能な可変表示装置を備え、
遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、前記複数の可変表示領域の全てに表示結果が導出表示されたことにより1ゲームが終了し、前記複数の可変表示領域に導出表示された表示結果として第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインを含む複数の入賞ラインのうちいずれかの入賞ライン上に導出表示された図柄の組み合わせに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンであって、
少なくともいずれかの可変表示領域に表示結果が導出される前に、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別入賞及び該特別入賞以外の一般入賞を含む複数種類の入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
前記複数の可変表示領域に表示結果をそれぞれ導出させるための導出操作手段と、
前記導出操作手段が操作されたときに、該導出操作手段に対応する可変表示領域の表示結果を前記事前決定手段の決定結果に基づいて導出させる制御を行う導出制御手段と、
前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該特別入賞が発生しなかった場合に当該特別入賞の発生を許容する旨の決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段と、
を備え、
前記事前決定手段は、
同一ゲームにおける決定対象として、前記一般入賞のうち特定一般入賞の発生を許容する旨を単独で決定する第1の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特定一般入賞と異なる特別一般入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第2の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第3の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨、前記特別一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第4の決定を行うことが可能であり、
同一ゲームにおいて前記第1の決定がなされる確率と前記第3の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第3の決定がなされる確率の比率、同一ゲームにおいて前記第2の決定がなされる確率と前記第4の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第4の決定がなされる確率の比率のうち一方が他方の比率よりも高くなる確率で前記第1?4の決定を行う、
スロットマシン。」
である点で一致し、以下の点で相違する。」

ア 相違点1
「甲1には、ゲーム開始後(リール回転後)に遊技者がストップボタンを操作すると、内部当選した役に基づいて絵柄を導出させたり又は取りこぼしたりするようにリールを停止制御する機能が記載されているものの(記載事項き)、その記載からは、構成1Eに対応する技術(「引込範囲」に基づいた制御)が不明である点。」

イ 相違点2
「甲1には、構成1Iに対応する導出制御技術が不明である点。」

ウ 相違点3
「甲1には、構成1Jに対応する導出制御技術が不明である点。」

(3-3) 相違点の判断(38頁7行?46頁13行)
ア 相違点1についての判断
「甲2の第11?12頁の「1-2-1-4 リールに関するルール」欄(前記(2)(2-2)の記載事項d)には、リールはストップボタンを操作してから0.19秒以内に停止するよう規則で決められていること(「リールの停止に関するルール」の項の3?4行目及び8行目)、リールのスベリ(ストップボタンを押した箇所から実際に停止する箇所のズレ)は最大4コマとなること(「リールの停止に関するルール」の6?7行目及び9?11行目)が記載され、同第34?35頁の「1-3-1-2 コントロール制御」欄(前記(2)(2-2)の記載事項g)には、該当ゲーム時の成立フラグを判断し、フラグが非成立の場合にはそのまま停止させる一方(スベリはなし)、フラグが成立している場合には最大限(4コマ)まで内部当選図柄を優先的に引き込む制御を行うとの記載がある。
すなわち、甲2には、ストップボタンが操作されると、その操作箇所と当該ゲームの成立フラグとの関係に基づいて、操作箇所から最大4コマの範囲で内部当選図柄を優先的に引き込むように停止制御する機能(すなわち、導出制御機能)の記載がある。この導出制御機能は、相違点1に係る構成1Eに相当する。
そして、甲2は、遊技機で一般に採用されている標準技術(周知の技術)をまとめたものであり、出願当時における当業者の技術常識に該当する。
従って、相違点1に係る本件発明1の構成1Eは、甲1発明に甲2に開示された発明を適用することにより当業者であれば容易に想到し得たものである。」

イ 相違点2についての判断
・周知の導出制御機能
「「相違点1の判断」の欄で述べたように、甲2の第11?12頁の「1-2-1-4 リールに関するルール」欄(前記(2)(2-2)の記載事項j)と、同第34?35頁の「1-3-1-2 コントロール制御」欄(前記(2)(2-2)の記載事項g)には、ストップボタンが操作されると、その操作箇所と当該ゲームの成立フラグとの関係に基づいて、操作箇所から最大4コマの範囲で内部当選図柄を優先的に引き込むように停止制御する機能(導出制御機能)の記載がある。
この記載は、有効ライン上の特定位置に対して内部当選図柄が4コマ以上離れている場合には、当該内部当選図柄を引き込むことができないことも意味している。
以下では、甲2に記載されている周知の導出制御機能の内容を、図1?図4を用いて具体的に説明する。なお、図1?図4は、スイカが当選した状態において、有効ライン上に「スイカ-スイカ-スイカ」を導出させる場合について表している。なお、甲2の導出制御機能では、内部当選絵柄の種類や組み合わせは問われていない。

以下に示す図1は、3つのリールの円周に沿って配列された絵柄のうち3つの絵柄が表示窓内に表示される場合に設けられる5本の有効ラインを示す。
[図1]
・・・
通常、リールの停止順序は任意であるものの、後述する甲第3号証との関係から、ここでは、左リール→中リール→右リールの順に停止操作が行われる場合について説明する。また、説明の前提として、図2に示すように、左リールの下段位置に既に「スイカ」が停止されているものとする。この状態を、以下の各図では、網掛け表示で示す。
[図2]
・・・
この場合、内部当選図柄が揃う可能性のある有効ラインは、図2に点線で示すように、最下段を横切る有効ラインと右斜め上に横切る有効ラインの2本である。そして、次に停止操作される中リールには、有効ライン上に位置する停止位置が2つある。つまり、中段位置と下段位置の2つである。
最初に、図3を用い、内部当選図柄が中リールの中段位置で停止する際の引き込み可能な位置範囲について説明する。
[図3]
・・・
図3からは、「0?3コマ」目に位置する「スイカ」絵柄は、最大4コマの引き込み(スライド)によって、斜め方向の有効ライン上にも横方向の有効ライン上にも停止できるのに対し、「4コマ」目に位置する「スイカ」絵柄は、最大4コマの引き込み(スライド)によっても、斜め方向の有効ライン上にしか停止できないことが分かる。
次に、図4を用い、内部当選図柄が中リールの下段位置で停止する際の引き込み可能な位置範囲について説明する。
[図4]
・・・
図4からは、「1?4コマ」目に位置する「スイカ」絵柄は、最大4コマの引き込み(スライド)によって、斜め方向の有効ライン上にも横方向の有効ライン上にも停止できるのに対し、「0コマ」目に位置する「スイカ」絵柄は、最大4コマの引き込み(スライド)によっても、横方向の有効ライン上にしか停止できないことが分かる。

以上より、甲2には、
(1)引込範囲内に、斜め方向の有効ライン上の表示位置しか含まれない場合、当該位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、
(2)引込範囲内に、横方向の有効ライン上の表示位置しか含まれない場合、当該位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、
(3)引込範囲内に、斜め方向の有効ライン上の表示位置と横方向の有効ライン上の表示位置の両方が含まれる場合、いずれかの表示位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、
となる周知の導出制御機能が記載されている。

これらの記載は、本件発明1の構成1Iのうち「導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の入賞ラインに内部当選絵柄が停止する第1の表示位置及び第2の入賞ラインに内部当選絵柄が停止する第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第1の表示位置及び第2の表示位置のいずれかを導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い」に相当するものである。

・甲第3号証の導出制御機能
甲3には、「パチスロ北斗の拳2 乱世覇王伝 天覇の章」なるパチスロ機(前記(2)(2-3)の記載事項a、b)に関する事項が記載されている。このパチスロ機の名称は、甲1のパチスロ機の名称と同一である。このため、甲1と甲3は、「パチスロ北斗の拳2 乱世覇王伝 天覇の章」というスロットマシンについての刊行物であり、両刊行物は共に同一機種のスロットマシンについて記載されているものであるから、その記載内容は互いに同じ技術を前提とするものである。よって、甲1に甲3の技術を用いることは当業者にとって容易である。
ところで、甲3には、内部当選役としての「スイカ」には、1枚役と同時成立せずスイカ単独で成立するか、ボーナスと同時成立する可能性がある「弱スイカ」と、1枚役と同時成立するか、1枚役とボーナスと同時成立する可能性がある「強スイカ」の2種類があることが記載されている(前記(2)(2-3)の記載事項c、d)。
すなわち、甲3には、本件発明1の「第1の決定」に相当する「弱スイカ」と、本件発明1の「第2の決定」に相当する「強スイカ(=1枚役+スイカ)」と、本件発明1の「第3の決定」に相当する「弱スイカ」と「ボーナス」の同時成立と、本件発明1の「第4の決定」に相当する「強スイカ(=1枚役+スイカ)」と「ボーナス」の同時成立が記載されている。
図5に、甲3の第8頁中段に記載されている「暫定版 通常時の打ち方」欄(前記(2)(2-3)の記載事項e)の一部分を拡大して示す。
[図5]
・・・
この記載は、左リールの下段に「スイカ」が停止している場合に、中リールの停止操作時に狙うべきスイカの位置(図中、[7]で示す位置)と、導出されたスイカの並び方向と「弱スイカ」及び「強スイカ」の対応関係を示している。なお、中リールに示す3つのスイカ絵柄は狙うべきスイカの位置を表すイメージ図であり、図5の[7]番スイカとは、中リールの[7]番目に配置されているスイカ絵柄のことである(前記(2)(2-3)の記載事項f)。
図5の左側下段の図のうち[7]の符号に対応する位置は、前述の図3及び図4で説明したように、斜め方向の有効ラインにも横方向の有効ラインにも停止可能な位置に対応する。そして、図5は、「中リール枠上?中段に[7]番スイカ絵柄を狙い、右リールにもスイカを狙う」と、同図右側に示す2通りの停止態様のうちいずれかに遷移することを示している。
また、上段図(斜め方向の有効ライン上に「スイカ」絵柄が揃う図)には「弱スイカ確定」と記載され、下段図(横方向の有効ライン上に「スイカ」絵柄が揃う図)には「強スイカ確定」と記載されている。この記載は、斜め方向と横方向の有効ラインの両方に停止可能な位置で停止操作を行った場合に、「弱スイカ」が内部当選しているときは斜め方向に「スイカ」絵柄が並ぶように引き込み制御が実行され、「強スイカ」が内部当選しているときは横方向に「スイカ」絵柄が並ぶように引き込み制御が実行されることを表している。

ところで、「弱スイカ」が内部当選している状態とは、本件発明1の「第1の決定」又は「第3の決定」がなされた第1の条件が成立している状態を意味している。
それ故に、甲3には、「(前記第1の決定または前記第3の決定がなされた第1の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、)該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行(う)」ことが記載されている。

ここで、甲3には本件発明1の構成1Iのうち「導出操作手段が操作され該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲に第1の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置及び第2の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置に導出させる制御を行い、」及び「該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御行い、」についての記載は開示されていない。
しかし、前述した通り、上記した第1の表示位置のみ位置する場合と第2の表示位置のみ位置する場合にそれぞれ第1の表示位置及び第2の表示位置を導出させる制御は、例えば甲2に記載されているように周知の導出制御機能である。
よって、本件発明1の構成1Iの記載事項は、周知の技術を参酌して甲3に記載されているに等しい事項であるか、周知の技術を甲3に適用したものに過ぎない。
なお、図5には前述した図3の3コマ目及び図4の4コマ目のスイカの位置について開示されていないが、周知の導出制御機能を考慮すれば、図5の中リール枠上[7]より1コマ上にスイカが位置するタイミングで停止操作を行った際にも同様に、斜め方向の有効ラインにも横方向の有効ラインにも停止可能であることは自明な事柄である。
従って、相違点2に係る本件発明1の構成1Iは、甲1発明に甲2及び甲3に記載された発明を適用することにより当業者であれば容易に想到し得たものである。」

ウ 相違点3についての判断
「前述の図5に示したように、甲3には、斜め方向と横方向の有効ラインの両方に停止可能な位置で停止操作を行った場合に、「強スイカ」が内部当選しているときは横方向に「スイカ」絵柄が揃うように引き込み制御が実行されることが記載されている。ここで、「強スイカ」が内部当選している状態とは、本件発明1の「第2の決定」又は「第4の決定」がなされた第2の条件が成立している状態を意味している。
それ故に、甲3には、「(前記第2の決定または前記第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、)該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行(う)」ことが記載されている。
そして、相違点2ですでに述べたように、第1の表示位置のみ位置する場合と第2の表示位置のみ位置する場合にそれぞれ第1の表示位置及び第2の表示位置を導出させる制御は、例えば甲2に記載されているように周知の導出制御機能であるから、本件発明1の構成1Jの記載事項は、周知の技術を参酌して甲3に記載されているに等しい事項であるか、周知の技術を甲3に適用したものに過ぎない。

従って、相違点3に係る本件発明1の構成1Jは、甲1発明に甲2及び甲3に開示された発明を適用することにより当業者であれば容易に想到し得たものである。」

(3-4)小括
「以上の通り、本件発明1と甲1発明との相違点1?3に係る構成は、当該技術分野において周知の技術(甲2に記載の事項)、又は、当該周知の技術と甲3に記載の発明を甲1発明に組み合わせることによって実現される機能に過ぎない。従って、本件発明1は、当業者が甲1発明に対し、当該周知の技術と甲3に記載の発明とを組み合わせることにより容易に想到できたものである。なお、本件発明1によって奏される作用効果も、甲1?甲3に記載された技術の範囲を超えるものでない。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項によって特許を受けることができないものであって、同法第123条第1項第2号により無効とされるべきものである。」

(4)本件発明2について(46頁14行?51頁10行)
(4-1) 本件発明2と本件発明1の関係
「本件発明2は、構成2H、2I、2Jを除き、本件発明1と同一である。すなわち、構成2A?2Gは、本件発明1の構成1A?1Gと同一である。そこで、以下では、主に、本件発明2に固有の構成についてのみ検討する。
なお、構成2H?2Jと構成1H?1Jとの違いは、後者が「第1の決定と第3の決定」と「第2の決定と第4の決定」について規定した確率と導出制御機能を規定しているのに対し、前者は「第1の決定と第4の決定」と「第2の決定と第3の決定」について規定する点である。」

(4-2) 本件発明2と甲1との対比
ア 構成2Hについて
「甲1には、以下の記載がある(前記(2)(2-1)の記載事項k)。
・第1の決定=スイカ単独(1/163.84)
・第2の決定=スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」(1/744.72)
・第3の決定=スイカ+「赤7-赤7-赤7」(1/5957.81)
・第4の決定=スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」+「赤7-赤7-赤7」(1/5957.81)
この場合、「スイカが単独で当選する確率」と「スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」+「赤7-赤7-赤7」が同時当選する確率」との合算確率に占める「スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」+「赤7-赤7-赤7」が同時当選する確率」の比率は、次式で計算することができる。
[3] 第1の決定と第4の決定の合成確率に占める第4の決定の確率の比率
100×1/5957.81/(1/163.84+1/5957.81)≒2.68%(値3)
一方、「スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」が同時当選する確率」と「スイカ+「赤7-赤7-赤7」が同時当選する確率」との合算確率に占める「スイカ+「赤7-赤7-赤7」が同時当選する確率」の比率は、次式で計算することができる。
[4] 第2の決定と第3の決定の合成確率に占める第3の決定の確率の比率
100×1/5957.81/(1/744.72+1/5957.81) ≒11.11%(値4)
以上より、甲1には、確率が、値3<値4の関係を満たすように、第1の決定?第4の決定が行われることが記載されている。
よって、甲1には、構成2Hが実質的に記載されている。」

(4-3) 本件発明2と甲1に記載された発明との一致点及び相違点
「以上の対比結果より、本件発明2と甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)は、
「各々が識別可能な複数種類の図柄を周期的に移動させることにより変動表示可能な複数の可変表示領域のそれぞれに表示結果を導出表示させることが可能な可変表示装置を備え、
遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、前記複数の可変表示領域の全てに表示結果が導出表示されたことにより1ゲームが終了し、前記複数の可変表示領域に導出表示された表示結果として第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインを含む複数の入賞ラインのうちいずれかの入賞ライン上に導出表示された図柄の組み合わせに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンであって、
少なくともいずれかの可変表示領域に表示結果が導出される前に、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別入賞及び該特別入賞以外の一般入賞を含む複数種類の入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
前記複数の可変表示領域に表示結果をそれぞれ導出させるための導出操作手段と、
前記導出操作手段が操作されたときに、該導出操作手段に対応する可変表示領域の表示結果を前記事前決定手段の決定結果に基づいて導出させる制御を行う導出制御手段と、
前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該特別入賞が発生しなかった場合に当該特別入賞の発生を許容する旨の決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段と、
を備え、
前記事前決定手段は、
同一ゲームにおける決定対象として、前記一般入賞のうち特定一般入賞の発生を許容する旨を単独で決定する第1の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特定一般入賞と異なる特別一般入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第2の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第3の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨、前記特別一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第4の決定を行うことが可能であり、
同一ゲームにおいて前記第1の決定がなされる確率と前記第4の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第4の決定がなされる確率の比率、同一ゲームにおいて前記第2の決定がなされる確率と前記第3の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第3の決定がなされる確率の比率のうち一方が他方の比率よりも高くなる確率で前記第1?4の決定を行う、
ことを特徴とするスロットマシン。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

ア 相違点1
本件発明1と同様に、甲1の記載からは、構成2Eに対応する技術(「引込範囲」に基づいた制御)が不明である点。

イ 相違点4
甲1には、構成2Iに対応する導出制御技術が不明である点。

ウ 相違点5
甲1には、構成2Jに対応する導出制御技術が不明である点。」

(4-4) 相違点の判断
ア 相違点1についての判断
「本件発明1について説明したように、相違点1に係る構成1Eは、甲1発明に甲2に開示された発明を適用することにより当業者であれば容易に想到し得たものである。
そうすると、構成1Eと同一である構成2Eも同様に、甲1発明に甲2に開示された発明を適用することにより当業者であれば容易に想到し得たものである。」

イ 相違点4及び5についての判断
「相違点4及び5に係る構成2I及び2Jに規定された技術内容は、制御の前提となる決定の組み合わせ以外、本件発明1の構成1I及び1Jと同じである。すなわち、構成2I及び2Jも、引込範囲内に、第1の入賞ラインに特定図柄を停止可能な第1の表示位置のみ位置する場合には当該第1の表示位置のみを導出させる制御を行い、引込範囲内に、第2の入賞ラインに特定図柄を停止可能な第2の表示位置のみ位置する場合には当該第2の表示位置のみを導出させる制御を行い、引込範囲内に第1の表示位置と第2の表示位置が含まれる場合、第1の条件の成立時には第1の表示位置を導出させ、第2の条件の成立時には第2の表示位置を導出させるものである。
そして、前述したように、この第1の条件と第2の条件に対応する決定の組み合わせの違いを除き、本件発明2の導出制御機能は、本件発明1の導出制御機能と全く同一である。このため、相違点4及び5によって、本件発明2に特有の技術効果が生じることはない。
実際、平成22年8月11日付で特許権者が提出した意見書(前記(2)(2-4)の記載事項a)には、「尚、請求項2は、「第1の決定」と「第2の決定」、「第3の決定」と「第4の決定」の関係がそれぞれ異なる点で請求項1と相違するものの、その他の点は同一であり、請求項1と同じ点に技術的意義があります。」と記載されており、特許権者も本件発明1と本件発明2が同じ技術思想を有することを認めている。
以上によれば、相違点4及び5には、甲2及び甲3によって実現される導出制御機能に対して設計事項程度の違いしか認められず、しかも当該相違点には顕著な効果も認められない。
従って、相違点4及び相違点5に係る本件発明2の構成2I及び2Jは、甲1発明に甲2及び甲3に開示された発明を適用することにより当業者であれば容易に想到し得たものである。」

(4-5) 小括
「以上の通り、本件発明2と甲1発明との相違点1、4及び5に係る構成は、当該技術分野において周知の技術(甲2に記載の事項)、又は、当該周知の技術と甲3に記載の発明を甲1発明に組み合わせることによって実現される機能に過ぎない。従って、本件発明2は、当業者が甲1発明に対し、当該周知の技術と甲3に記載の発明とを組み合わせることにより容易に想到できたものである。なお、本件発明2によって奏される作用効果も、甲1?甲3に記載された技術の範囲を超えるものでない。
よって、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項によって特許を受けることができないものであって、同法第123条第1項第2号により無効とされるべきものである。」

(5)結論(51頁11?13行)
「以上の通り、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。」

1-3 陳述要領書(請求人)における主張
(1)事項(1)について(2頁下2行?8頁7行)
「この事項は、要するに、「スイカ以外の入賞」や「設定6以外の設定」を考慮しても、甲1に「構成1H」が記載されていることの説明を求めるものであります。」
請求人は、記載事項さの記載内容に基いて各種計算を行い、甲1には、「北斗-黒チェリー-黒チェリー」や「赤7-黒チェリー-黒チェリー」を第1の決定とみなす場合にも、他の当選役との組み合わせが構成1Hを満たすことが記載されていること、及び、「スイカ」単独を第1の決定とみなす場合において、「設定6以外の設定」(すなわち、「設定1」?「設定5」)においても、他の当選役との組み合わせが構成1Hを満たすことが記載されている旨、説明する。

(2)事項(2)について(8頁8行?17頁8行)
「この事項は、「前半部分の質問」と「後半部分の質問」で構成されております。「前半部分の質問」は、要するに、「スイカが当選すること」及び「有効ライン上に「スイカ-スイカ-スイカ」が導出されること」が甲2のどこに記載されているかの説明を求めるものであります。一方、「後半部分の質問」は、要するに、審判請求書の41頁に記載された周知の導出制御機能(同頁に(1)?(3)として記載した条件のうちの各場合分け)が甲2のどこに記載されているかの説明を求めるものであります。」
ア 「前半部分の質問」についての回答
「請求人は、当該「前半部分の質問」を、審判請求書の39頁13?16行における「以下では、甲2に記載されている周知の導出制御機能の内容を、図1?図4を用いて具体的に説明する。なお、図1?図4は、スイカが当選した状態において、有効ライン上に「スイカ-スイカ-スイカ」を導出させる場合について表している。」との記載と、これに後続する説明についての質問と解して回答いたします。
甲2には、「スイカが当選すること」及び「有効ライン上に「スイカ-スイカ-スイカ」が導出されること」を直接的に記載した箇所はありませんが、甲2には以下の事項が記載されております。
[1] 内部当選役には「ボーナス」と「小役」と「はずれ」が含まれること(前記(2)(2-2)の記載事項b、c)(19頁?21頁)
[図1]抽選の流れ
・・・
[2] メダルが3枚投入されると、5ライン(3本の水平ラインと2本の斜めライン)が有効になり、これらのライン(有効ライン)上に内部当選役に対応する図柄(予め機種ごとに定められた図柄)が成立(入賞)すること(前記(2)(2-2)の記載事項a、b)(17?20頁)
[図2]パチスロ各部の参考例
・・・
このように、甲2には、内部当選役が有効ライン上に導出されること、内部当選役に対応する図柄は機種ごとに定められることが記載されております(前記(2)(2-2)の記載事項a、b))(17?20頁)。これらの点については、すでに審判請求書の39頁16?17行において、「なお、甲2の導出制御機能では、内部当選絵柄の種類や組み合わせは問われていない。」(下線は請求人が今回追加。)と記載しております。そして、審判請求書の39?42頁における「・周知の導出制御機能」の説明は、機種ごとの定められる任意の内部当選役について成立する導出制御技術を、甲1及び甲3が前提とするパチスロ機「パチスロ北斗の拳2 乱世覇王伝 天覇の章」の小役「スイカ(スイカ-スイカ-スイカ)」(前記(2)(2-1)の記載事項c)(27頁)を例に説明したものであります。」

イ 「後半部分の質問」についての回答
「請求人は、前記1-2(2)(2-2)の記載事項a、b、d、gの記載事項から、甲2には、「引込範囲内に、斜め方向の有効ライン上に停止する表示位置しか含まれない場合」、「引込範囲内に、横方向の有効ライン上に停止する表示位置しか含まれない場合」、「引込範囲内に、斜め方向の有効ライン上に停止する表示位置と横方向の有効ライン上に停止する表示位置の両方が含まれる場合」が記載されている旨、説明する。」

(3)事項(3)について
ア 本件発明1の要旨の認定(「必ず」導出させる意味であるとの主張)について(17頁10行?19頁2行)
「被請求人は、平成27年5月22日付の審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)の9頁、12頁、15頁において、構成1I及び1Jにおける導出は「優先的に導出させる」とか「導出させることができる」などの記載を用いていないことを理由として「必ず導出させる」意味である等と主張し、甲2や甲3に記載された導出制御技術と相違する旨を主張しています(下線は出願人による)。

しかし、発明の要旨の認定については特許請求の範囲の記載に基づいて行われるべきであることは言うまでもないところ、本件発明1の構成1I及び1Jには「・・・第1(または第2)の表示位置を導出させる制御を行い(う)、」としか記載されておりません。少なくとも「(導出させる表示位置以外の表示位置を排除するものであって、)必ず導出させる制御を行う」とは記載されておりません。にもかかわらず、「必ず導出させる」を意味するという被請求人による構成1I及び1Jの認定は、特許請求の範囲には記載されていない「必ず」との限定を付加して発明の要旨を認定するものであります。」

イ 甲2記載事項の認定(周知の導出制御機能の認定)について(19頁3行?22頁下1行)
「被請求人は、答弁書の9頁その他において、甲2に記載された周知の導出制御機能が構成1I及び1Jと異なると主張していますが、以下に説明するように、被請求人の当該主張は失当であります。
・・・
甲2には、
(1)引込範囲内に内部当選絵柄が含まれる場合にあって、引込範囲内に斜め方向の有効ライン上に停止する表示位置しか含まれないとき、当該位置に内部当選絵柄が停止されること、
(2)引込範囲内に内部当選絵柄が含まれる場合にあって、引込範囲内に横方向の有効ライン上に停止可能な表示位置しか含まれないとき、当該位置に内部当選絵柄が停止されること、
(3)引込範囲内に内部当選絵柄が含まれる場合にあって、引込範囲内に斜め方向の有効ライン上に停止する表示位置と横方向の有効ライン上に停止する表示位置の両方が含まれるとき、いずれかの表示位置に内部当選絵柄が停止されること、
なる周知の導出制御機能が記載されているのであります。
・・・
以上のことから、甲2に記載された周知の導出制御機能の内容は、・・・構成1Iのように「該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行」うものでない点で相違いたします。
同様に、甲2に記載された周知の導出制御機能の内容は、・・・構成1Jのように「該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行」うものでない点で相違いたします。

ただし、これらの相違点に係る技術は、審判請求書において説明したように、甲3に記載されている技術事項であり、本件発明1の相違点2(構成1I)及び相違点3(相違点1J)に係る構成は甲1発明、甲2及び甲3に記載された発明から容易に想到し得るものであります。」

ウ 甲3記載事項の認定(「小役とボーナスの同時成立」)について
「前記(2)(2-3)の記載事項d(27?28頁)として抽出した図の下段には、「同時成立期待度」なるタイトルを付した両方向矢印が描かれており、左端には「弱」(つまり同時成立期待度が低い)、右端には「強」(つまり同時成立期待度が高い)ことが示されております。また、同図には「全小役にチャンスあり!」との表記の下、期待度の大きさを示す位置に小役を表す絵、文字、写真が対応付けられております。
したがって、前記(2)(2-3)の記載事項d(27?28頁)として抽出した図は、「リプレイ」、「ベル」、「角チェリー」のボーナスとの同時成立期待度が同程度に低いことを示し、この期待度よりも「チャンス目(1枚役)」の期待度が高いこと、この期待度よりも「弱スイカ」の期待度が高く、さらにこの期待度よりも「強スイカ」の期待度が高く、「中段チェリー」の期待度が最も高いことを表しております。
また、同図右端には「中段チェリーはボーナス確定!」と記載され、複数の小役のうち「中段チェリー」に限りボーナスと同時成立する決定しかないこと(すなわち、他の小役は単独成立の可能性もあること)が示されております。
さらに、上図のテキスト文には、「また、強スイカは1枚役との同時成立のため、弱(単独)スイカとは制御が異なる。」と記載されているように、弱スイカはスイカ単独の成立である点で、スイカと1枚役の同時成立である強スイカとは異なる成立であることも記載されております。
つまり、甲3には、本件発明1の「第1の決定」に相当する「弱スイカ(スイカ単独成立)」と、「第2の決定」に相当する「強スイカ(スイカと1枚役の同時成立)」と、「第3の決定」に相当する「弱スイカ(スイカ単独成立)」と「ボーナス」の同時成立と、「第4の決定」に相当する「強スイカ(スイカと1枚役の同時成立)」と「ボーナス」の同時成立が記載されているのであります。
よって、答弁書の「(2-3-1)「ア 甲3の導出制御機能の解釈は誤りであること」、「(3-2-2)ウ 相違点3についての判断」(審判請求書45頁ないし46頁)に対して」における被請求人の主張は失当であります。」

1-4 上申書(請求人)における主張
本件特許発明1及び2の「第1の条件が成立したときに、・・・該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い」(1I、2I)という発明特定事項、「第2の条件が成立したときに、・・・該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行い」(1J、2J)という発明特定事項における「導出させる制御」の解釈について

(1)「本件特許明細書の【0319】の記載事項から、本件特許の「構成1I(2I)における「第1の条件が成立したとき」は、「特別役と小役を同時に引き込める場合」と「特別役を引き込めない場合」の両方を含んでおり、「第1の条件が成立したとき」であったとしても、適切な動作条件、及び、技術構成が追加されない限り、「特定一般入賞」を「必ず導出させる」ことはできない。」(3頁2?22行)。
同じく、本件特許明細書の【0322】の記載事項から、本件特許の構成1J(2J)において、「「第2の条件が成立したとき」であったとしても、適切な動作条件、及び、技術構成が追加されない限り、「特定一般入賞」を「必ず導出させる」ことはできない。」(4頁1?22行)。

(2)「被請求人の主張は、以下に示す条件の少なくとも1つを満たすことを前提として、【0331】には、「必ず導出させる」動作が記載されているというものである。
・特別役の構成図柄と小役の構成図柄が4コマを超えて配置されること
・同時に狙える停止操作位置が存在しない特別役と小役同士のみそれぞれ同時当選可能とされること
・同時に狙える停止操作位置が存在する特別役と小役同士は同時に当選しないこと
しかし、これらの条件をどのように用いれば(1つの条件のみで良いのか、全ての条件が必要なのか)、構成1I及び1J(構成2I及び2J)における「導出させる」を「必ず導出させる」の意味と解することができるのか、依然として解釈の根拠が不明である」(5頁23行?6頁11行)。

(3)「「優先的に導出させるように制御すること」、「導出させることができるように制御すること」、及び、被請求人が主張する「必ず導出させるように制御すること」は、共に、技術的に可能なものであって、技術レベルにおいて、格別な差異はないものと思われる。・・・
したがって、これらの制御は、技術レベルにほとんど差異がなくても、互いが異なる発明である以上、特許請求の範囲において、明確に区別して記載する必要がある。
そして、本件の場合、特許請求の範囲において、単に「導出させる」と記載されていて、「優先的に」も「必ず」をも含みうるものであって、その発明の詳細な説明中に実施例として、その双方が記載されているものであるから、実施例を参酌して解釈する特段な事情があるといえる。」(6頁14行?8頁10行)。

2 被請求人の主張
2-1 概要
被請求人は、審判事件答弁書において、「本件の審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、審判事件答弁書、陳述要領書(被請求人)、及び、上申書(請求人)を提出した。

2-2 審判事件答弁書における主張
(1)請求の理由に対する認否
「本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件発明の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである、及び本件特許の特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件発明の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである、とする請求人の主張に対しては全て争う。」(2頁11?21行)

(2)本件発明
(2-1)本件発明の要旨(2頁23行?6頁10行)
被請求人は、本件発明1及び本件発明2は、本件特許第4641541号の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載されたとおりであるとし、請求項を請求人と同一となるように、記号(1A)?(2K)を用いて分節した。

(2-2)本件発明の特徴点(6頁11行?7頁29行)
「本件発明1は、特定一般入賞の発生が許容される第1の決定または第3の決定がなされている場合と、第2の決定または第4の決定がなされている場合と、で特別入賞の発生が同時に許容される比率が異なること(構成1G及び構成1H)を前提に、第1の決定または第3の決定がなされた第1の条件が成立している場合には、特定一般入賞の構成図柄を第1の入賞ラインと第2の入賞ラインの双方に引込可能なタイミングで停止操作がされた場合に特定一般入賞の構成図柄を第1の入賞ラインに導出させる制御が行われる(構成1I)一方で、第2の決定または第4の決定がなされた第2の条件が成立している場合には、特定一般入賞の構成図柄を第1の入賞ラインと第2の入賞ラインの双方に引込可能なタイミングで停止操作がされた場合に特定一般入賞の構成図柄を第2の入賞ラインに導出させる制御が行われる(構成1J)、すなわち第1の条件が成立しているか、第2の条件が成立しているか、によって特定一般入賞の構成図柄を引き込む入賞ラインが異なるように制御することで、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ラインまたは第2の入賞ラインに揃ったときに、第1の入賞ラインに揃ったか、第2の入賞ラインに揃ったか、によって特別入賞が許容されている可能性が異なる。
そして、これらの構成において、第1の条件が成立している場合に、特定一般入賞の構成図柄を第1の入賞ラインに引き込めないタイミングで停止操作がされた場合でも第2の入賞ラインに引込可能なタイミングであれば特定一般入賞の構成図柄を第2の入賞ラインに導出させる制御が行われ(構成1I)、第2の条件が成立している場合に、特定一般入賞の構成図柄を第2の入賞ラインに引き込めないタイミングで停止操作がされた場合でも第1の入賞ラインに引込可能なタイミングであれば特定一般入賞の構成図柄を第1の入賞ラインに導出させる制御が行われる(構成1J)といった特徴を有するのである。
本件発明1は、このような特徴構成を有することにより、特別入賞の比率の高い条件であっても、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインのうち特別入賞の比率が低い条件に対応する入賞ラインに導出されることがあり、特別入賞の比率の低い条件であっても、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインのうち特別入賞の比率が高い条件に対応する入賞ラインに導出されることがあり、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ラインに導出されたか、第2の入賞ラインに導出されたか、によって特別入賞の比率の高い条件が成立しているか、特別入賞の比率の低い条件が成立しているか、を推測できる一方で、特定一般入賞の構成図柄がどちらの入賞ラインに導出された場合であっても、他方の条件が成立している可能性が残り、必ずしも特定一般入賞の構成図柄が導出された入賞ラインの違いにより示唆される内容が確定することなくその内容が曖昧となることで、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ラインまたは第2の入賞ラインに導出されたときの興趣を高めることができるという効果を奏するのである。
加えて、第1の入賞ラインまたは第2の入賞ラインのうち成立している条件に対応する一方の入賞ラインに対して特定一般入賞の構成図柄を引き込めない場合でも、他方の入賞ラインに対して特定一般入賞の構成図柄を引込可能であれば、他方の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が導出されるので、第1の条件が成立しているか、第2の条件が成立しているか、に対応して特定一般入賞の構成図柄を引き込む入賞ラインが異なるように制御する構成でも、特定一般入賞を取りこぼすことによる遊技者の損失を最低限に抑えることができるという効果を奏するのである(アンダーラインは被請求人代理人が付記)。

本件発明2においては、構成2Hにおいて特定一般入賞の発生が許容される第1の決定または第4の決定がなされている場合と、第2の決定または第3の決定がなされている場合と、で特別入賞の発生が同時に許容される比率が異なる点、構成2Iにおいて第1の決定または第4の決定がなされた場合に第1の条件が成立し、構成2Jにおいて第2の決定または第3の決定がなされた場合に第2の条件が成立する点が本件発明1と異なっており、本件発明2は上記した本件発明1と同様な特徴及び効果を奏するのである。」

(3)請求人が主張する無効理由が失当である理由
「甲第1号証ないし甲第3号証には本件発明1ないし本件発明2の特徴を導き出すための構成は何ら開示されていないので、本件発明1ないし本件発明2は甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく進歩性を有するものである。」(7頁30?34行)
(3-1)「(3)本件発明1」の「(3-1)本件発明1と甲第1号証との対比」(審判請求書第29頁ないし36頁)に対して
ア 「カ 構成1Fについて」(審判請求書第33頁ないし34頁)に対して
「甲1の11頁上段「ボーナスフラグ判別と小役チェック」の欄には「ボーナスの当否は2G、フラグの種類は最大3Gで察知」としか記載されておらず、構成1Fの「特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該特別入賞が発生しなかった場合に当該特別入賞の発生を許容する旨の決定を次ゲーム以降に持ち越す」ことに関して何ら記載されていないのであるから、甲1の11頁上段の「ボーナスの当否は2G、フラグの種類は最大3Gで察知」なる記載から直ちに構成1Fに関する「持越手段」の構成が開示されているとすることはできない。
したがって、請求人の上記主張は失当である。」(8頁12?20行)

(3-2)「(3)本件発明1」の「(3-3)相違点の判断」(審判請求書第38頁ないし46頁)に対して
イ 「イ 相違点2についての判断」(審判請求書39頁ないし45頁)に対して
(ア)請求人が主張する甲2の周知の導出制御機能は本件発明1の構成1Iを開示するものではないこと
「本件発明1の構成1Iでは「予め定められた引込範囲内に第1の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置及び第2の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、」「予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、」「予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い、」(アンダーラインは被請求人代理人が付記)と記載されているように、本件発明1には「優先的に導出させる」とか「導出させることができる」などの記載を用いておらず、「・・・導出させる制御を行い、」との記載を用いることにより、予め定められた引込範囲内に第1の表示位置のみ位置する場合には第1の表示位置以外の表示位置を排除するものであって、必ず第1の表示位置を導出させることを意味するものであり、同様に予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合には第1の表示位置以外の表示位置を排除するものであって、必ず第1の表示位置を導出させることを意味するものであり、予め定められた引込範囲内に第2の表示位置のみ位置する場合には第2の表示位置以外の表示位置を排除するものであって、必ず第2の表示位置を導出させることを意味するものである。
一方、請求人は審判請求書第41頁において「甲2には、
(1)引込範囲内に、斜め方向の有効ライン上の表示位置しか含まれない場合、当該位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、
(2)引込範囲内に、横方向の有効ライン上の表示位置しか含まない場合、当該位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、
(3)引込範囲内に、斜め方向の有効ライン上の表示位置と横方向の有効ライン上の表示位置の両方が含まれる場合、いずれかの表示位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、
となる周知の導出制御機能が記載されている。」と主張している。
請求人はこの主張の根拠として、甲2の34頁?35頁「1-3-1-2 コントロール制御」における「基本的には当該ゲーム時の成立フラグを判断し、フラグが成立している場合は最大限(4コマ)まで内部当選図柄を優先的に引き込む制御のこと」なる記載を挙げているが、ここで、「内部当選図柄を優先的に引き込む」とは、内部当選図柄を優先的に最大限4コマまで引き込むことができるという意味であって、内部当選図柄を必ず最大限4コマまで引き込むということを意味するものではない。
それゆえ、請求人が主張する上記「(1)」「(2)」の「当該位置に内部当選絵柄が優先的に停止される」とは、停止可能な範囲内に内部当選絵柄が含まれる場合に、停止可能な範囲内の内部当選絵柄を高確率で引き込むものであれば、内部当選絵柄を引き込まないことも許容することを意味するものであって、停止可能な範囲内の内部当選絵柄を必ず引き込むということを意味するものではない。
また、請求人が主張する上記(3)の「いずれかの表示位置に内部当選絵柄が優先的に停止される」とは、いずれかの表示位置に内部当選絵柄を停止させることができるという意味であって、いずれかの表示位置を優先させて内部当選絵柄を停止させるものでもない(アンダーラインは被請求人代理人が付記)。
請求人は、上記(3)の「引込範囲内に、斜め方向の有効ライン上の表示位置と横方向の有効ライン上の表示位置の両方が含まれる場合、いずれかの表示位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、」は甲2に記載されていると主張しているが、甲2には内部当選絵柄がいずれかの表示位置のうち特定の表示位置に優先的に停止されることについては何ら記載されていない。
したがって、請求人が審判請求書第41頁ないし42頁において「これらの記載は、本件発明1の構成1Iのうち「導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の入賞ラインに内部当選絵柄が停止する第1の表示位置及び第2の入賞ラインに内部当選絵柄が停止する第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第1の表示位置及び第2の表示位置のいずれかを導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い」に相当するものである。」とする主張は失当であり、請求人が主張する甲2の周知の導出制御機能は、本件発明1の構成1Iを何ら開示するものではない。」(8頁25行?10頁17行)
(イ)甲第3号証の導出制御機能の解釈は誤りであること
「請求人は、審判請求書第42頁17行ないし25行において「ところで、甲3には、内部当選役として「スイカ」には、1枚役と同時成立せずスイカ単独で成立するか、ボーナスと同時成立する可能性がある「弱スイカ」と、1枚役と同時成立するか、1枚役とボーナスと同時成立する可能性がある「強スイカ」の2種類があることが記載されている(前記(2)(2-3)の記載事項c、d)。
すなわち、甲3には、本件発明1の「第1の決定」に相当する「弱スイカ」と、本件発明1の「第2の決定」に相当する「強スイカ(=1枚役+スイカ)」と、本件発明1の「第3の決定」に相当する「弱スイカ」と「ボーナス」の同時成立と、本件発明1の「第4の決定」に相当する「強スイカ(=1枚役+スイカ)」と「ボーナス」の同時成立が記載されている。」と主張している。
しかしながら、甲3の8頁右側上段の「小役とボーナスの同時成立」の欄には「また、強スイカは1枚役との同時成立のため、弱(単独)スイカとは制御が異なる。」としか記載されておらず、弱スイカがボーナスと同時成立する旨、あるいは強スイカがボーナスと同時成立する旨の記載はない。
すなわち、甲3には内部当選役の「スイカ」として、1枚役と同時成立せずスイカ単独で成立する「弱スイカ」と、1枚役と同時成立する「強スイカ」の記載はあるとしても、ボーナスと同時成立する可能性がある「弱スイカ」と、1枚役とボーナスと同時成立する可能性がある「強スイカ」の記載はない。
したがって、甲3には、本件発明1の「第1の決定」に相当する「弱スイカ」と、本件発明1の「第2の決定」に相当する「強スイカ(=1枚役+スイカ)」の記載はあるとしても、本件発明1の「第3の決定」に相当する「弱スイカ」と「ボーナス」の同時成立と、本件発明1の「第4の決定」に相当する「強スイカ(=1枚役+スイカ)」と「ボーナス」の同時成立の記載はない。
したがって、請求人の上記主張は失当である。
同様に請求人は、審判請求書第44頁5行ないし7行において「ところで、「弱スイカ」が内部当選している状態とは、本件発明1の「第1の決定」又は「第3の決定」がなされた第1の条件が成立している状態を意味している。」と主張しているが、上記した如く、甲3には本件発明1の「第3の決定」に相当する「弱スイカ」と「ボーナス」の同時成立の記載はないのであるから、請求人の上記主張は失当である。」(10頁19行?11頁13行)

(ウ)相違点2に係る構成1Iは甲1発明、甲2及び甲3に記載された発明からは導き出せない理由
「以下に記す上段、中段、下段とはリールを視認する窓枠内でリールの図柄がそれぞれ表示される位置を示し、枠上1コマ目、枠上2コマ目、枠上3コマ目とはそれぞれ窓枠上段よりも1図柄分上の位置、窓枠上段よりも2図柄分上の位置、窓枠上段よりも3図柄分上の位置を示すものとする。」(11頁16?19行)
(ウ-1)「請求人は、審判請求書第44頁8行ないし12行において「それ故に、甲3には、「(前記第1の決定または前記第3の決定がなされた第1の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、)該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行(う)」ことが記載されている。」と主張している。
しかしながら、甲3には全リール回転中に左リール上段?中段に[3]番「BAR」が位置するタイミングで操作を行った結果、左リール下段に[2]番「スイカ」が停止した状態で、中リール枠上1コマ目?中段に[7]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合に、斜め上がりラインに「スイカ」が揃うことで「弱スイカ」が確定し、下段横ラインに「スイカ」が揃うことで「強スイカ」が確定するという一の現象が開示されているだけである。
すなわち中リール枠上1コマ目?中段に[7]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合に、斜め上がりラインに「スイカ」が揃うことで「弱スイカ」が確定し、下段横ラインに「スイカ」が揃うことで「強スイカ」が確定することから、「弱スイカ」当選時に、中リール枠上1コマ目?中段に[7]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合に、斜め上がりラインに「スイカ」が揃う可能性があり、下段横ラインに「スイカ」が揃う可能性がないことが開示されているだけであって、斜め上がりラインにも下段横ラインにも「スイカ」が揃わない可能性もあり、「弱スイカ」当選時に、「スイカ」を中段(斜め上がりライン)にも下段(下段横ライン)にも停止可能なタイミングで操作された場合に必ず中段(斜め上がりライン)に「スイカ」を揃える制御を行うことを開示したものではない。
これに対し、本件発明1の構成1Iは「第1の決定または第3の決定がなされた第1の条件が成立したときに、・・・導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、」なる構成を有しており、第1の決定または第3の決定がなされたときに、予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合には必ず第1の表示位置を導出させるものであるので、甲3は本件発明1の構成1Iの上記構成を開示するものではない。また、甲1発明及び甲2に記載された発明も本件発明1の構成1Iの上記構成を何ら開示するものではない。
したがって、甲1発明、甲2及び甲3に記載された発明から本件発明1の構成1Iの「第1の決定または第3の決定がなされた第1の条件が成立したときに、・・・導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、」なる構成には到達し得ない(アンダーラインは被請求人代理人が付記)。
よって、請求人の上記主張は失当である。」(11頁20行?12頁24行)

(ウ-2)「請求人は審判請求書第44頁22行ないし45頁4行において「しかし、前述したとおり、上記した第1の表示位置のみ位置する場合と第2の表示位置のみ位置する場合にそれぞれ第1の表示位置及び第2の表示位置を導出させる制御は、例えば甲2に記載されているように周知の導出制御機能である。
よって、本件発明1の構成1Iの記載事項は、周知の技術を参酌して甲3に記載されているに等しい事項であるか、周知の技術を甲3に適用したものに過ぎない。
なお、図5には前述した図3の3コマ目及び図4の4コマ目のスイカの位置について開示されていないが、周知の導出制御機能を考慮すれば、図5の中リール枠上[7]より1コマ上にスイカが位置するタイミングで停止操作を行った際にも同様に、斜め方向の有効ラインにも横方向の有効ラインにも停止可能であることは自明な事項である。」と主張している。
しかしながら、甲2は停止可能な範囲内の内部当選図柄を優先的に停止させることができる機能が開示されているにすぎず、本件発明1の如く第1の決定ないし第4の決定を行う構成において、第1の決定または第3の決定がなされた第1の条件が成立したとき、または第2の決定または第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに異なる制御を行うことを前提とするものではない。
また請求人が主張する甲2の周知の導出制御機能が本件発明1の構成1Iを何ら開示するものではないことは、上記イ「(ア)」で述べたとおりである。
上記「イ」「(ウ-1)」で述べたように、甲3には全リール回転中に左リール上段?中段に[3]番「BAR」が位置するタイミングで操作を行った結果、左リール下段に[2]番「スイカ」が停止した状態で、中リール枠上1コマ目?中段に[7]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合に、斜め上がりラインに「スイカ」が揃うことで「弱スイカ」が確定し、下段横ラインに「スイカ」が揃うことで「強スイカ」が確定するという一の現象が開示されている。
すなわち中リール枠上1コマ目?中段に[7]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合に、斜め上がりラインに「スイカ」が揃うことで「弱スイカ」が確定し、下段横ラインに「スイカ」が揃うことで「強スイカ」が確定することから、「弱スイカ」当選時に、中リール枠上1コマ目?中段に[7]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合に、斜め上がりラインに「スイカ」が揃う可能性があり、さらに斜め上がりラインにも下段横ラインにも「スイカ」が揃わない可能性があることが開示されている。
しかしながら、中リール枠上3コマ目に[7]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合(「スイカ」を中段及び下段のうち中段(斜め上がりライン)にのみ停止可能なタイミングで操作された場合)の現象についての開示はなく、「弱スイカ」または「強スイカ」の当選時に「スイカ」を中段(斜め上がりライン)及び下段(下段横ライン)のうち中段(斜め上がりライン)にのみ停止可能なタイミングで操作された場合の制御についての開示もない。
また、甲3において中リールの下段に[7]番「スイカ」が位置するタイミングは、[7]番「スイカ」をそのまま下段(下段横ライン)に停止させることも[12]番「スイカ」を4コマ引き込んで中段(斜め上がりライン)に停止させることも可能なタイミングであり、中リール枠上3コマ目?下段に[7]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合に「スイカ」を中段(斜め上がりライン)及び下段(下段横ライン)のうち下段(下段横ライン)にのみ停止可能となるタイミングは存在しない。
また、甲3において中リールの下段に[7]番以外の[12]番「スイカ」または[20]番「スイカ」が位置するタイミングは、「スイカ」を中段(斜め上がりライン)及び下段(下段横ライン)のうち下段(下段横ライン)にのみ停止可能となるタイミングとなるが、中リール枠上3コマ目?下段に[12]番「スイカ」、[20]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合の現象についての開示はなく、「弱スイカ」または「強スイカ」の当選時に中リール枠上3コマ目?下段に[12]番「スイカ」、[20]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合に、「強スイカ」と「弱スイカ」で異なる制御が行われるか否かについての開示もない。
以上の点を総合すると、甲2は停止可能な範囲内に位置する内部当選図柄を優先的に停止させることができる機能が開示されているにすぎず、本件発明1の如く第1の決定ないし第4の決定を行う構成において、第1の決定または第3の決定がなされた第1の条件が成立したとき、または第2の決定または第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに異なる制御を行うことを前提とするものではなく、甲3には、「弱スイカ」または「強スイカ」の当選時に「スイカ」を中段(斜め上がりライン)及び下段(下段横ライン)のうち中段(斜め上がりライン)にのみ停止可能なタイミングで操作された場合の制御、「弱スイカ」または「強スイカ」の当選時に「スイカ」を中段(斜め上がりライン)及び下段(下段横ライン)のうち下段(下段横ライン)にのみ停止可能なタイミングで操作された場合の制御については何ら開示されていないので、甲2及び甲3に記載された発明から、本件発明1に係る相違点2(構成1I)の「第1の決定または第3の決定がなされた第1の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示装置及び第2の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、・・・該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い、」なる構成には到達し得ない。
したがって、請求人の上記主張は失当である。」(12頁25行?14頁29行)

ウ 「ウ 相違点3についての判断」(審判請求書45頁ないし46頁)に対して
(ア)甲第3号証の導出制御機能の解釈は誤りであること
「請求人は審判請求書第45頁13行ないし15行において「ここで、「強スイカ」が内部当選している状態とは、本件発明1の「第2の決定」又は「第4の決定」がなされた第2の条件が成立している状態を意味している。」と主張している。
しかしながら、上記「3-2-1」「イ」で述べた如く、甲3には本件発明1の「第4の決定」に相当する「強スイカ(=1枚役+スイカ)」と「ボーナス」の同時成立の記載はないのであるから、請求人の上記主張は失当である。」(14頁33行?15頁4行)

(イ)相違点3に係る構成1Jは甲1発明、甲2及び甲3に記載された発明からは導き出せない理由
(イ-1)「請求人は、審判請求書第45頁16行ないし20行において「それ故に、甲3には、「(前記第2の決定または前記第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、)該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行(う)」ことが記載されている。」と主張している。
しかしながら、甲3には全リール回転中に左リール上段?中段に[3]番「BAR」が位置するタイミングで操作を行った結果、左リール下段に[2]番「スイカ」が停止した状態で、中リール枠上1コマ目?中段に[7]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合に、斜め上がりラインに「スイカ」が揃うことで「弱スイカ」が確定し、下段横ラインに「スイカ」が揃うことで「強スイカ」が確定するという一の現象が開示されているだけである。
すなわち中リール枠上1コマ目?中段に[7]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合に、斜め上がりラインに「スイカ」が揃うことで「弱スイカ」が確定し、下段横ラインに「スイカ」が揃うことで「強スイカ」が確定することから、「強スイカ」当選時に、中リール枠上1コマ目?中段に[7]番「スイカ」が位置するタイミングで操作を行った場合に、下段横ラインに「スイカ」が揃う可能性があり、斜め上がりラインに「スイカ」が揃う可能性がないことが開示されているだけであって、斜め上がりラインにも下段横ラインにも「スイカ」が揃わない可能性もあり、「強スイカ」当選時に、「スイカ」を中段(斜め上がりライン)にも下段(下段横ライン)にも停止可能なタイミングで操作された場合に必ず下段(下段横ライン)に「スイカ」を揃える制御を行うことを開示したものではない。
これに対し、本件発明1の構成1Jは「第2の決定または第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに、・・・導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い、」なる構成を有しており、第2の決定または第4の決定がなされたときに、予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合には必ず第2の表示位置を導出させるものであるので、甲3は本件発明1の構成1Jの上記構成を開示するものではない。また、甲1発明及び甲2に記載された発明も本件発明1の構成1Jの上記構成を何ら開示するものではない。
したがって、甲1発明、甲2及び甲3に記載された発明から本件発明1の構成1Jの「第2の決定または第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに、・・・導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い、」なる構成には到達し得ない(アンダーラインは被請求人代理人が付記)。
よって、請求人の上記主張は失当である。」(15頁7行?16頁10行)

(イ-2)「請求人は審判請求書45頁21行ないし26行において「そして、相違点2ですでに述べたように、第1の表示位置のみ位置する場合と第2の表示位置のみ位置する場合にそれぞれ第1の表示位置及び第2の表示位置を導出させる制御は、例えば甲2に記載されているように周知の導出制御機能であるから、本件発明1の構成1Jの記載事項は、周知の技術を甲3に適用したものに過ぎない。」と主張している。
しかしながら、上記「3-2-1」「(ウー2)」でも述べた如く、甲2は停止可能な範囲内に位置する内部当選図柄を優先的に停止させることができる機能が開示されているにすぎず、本件発明1の如く第1の決定ないし第4の決定を行う構成において、第1の決定または第3の決定がなされた第1の条件が成立したとき、または第2の決定または第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに異なる制御を行うことを前提とするものではなく、「弱スイカ」または「強スイカ」の当選時に「スイカ」を中段(斜め上がりライン)及び下段(下段横ライン)のうち中段(斜め上がりライン)にのみ停止可能なタイミングで操作された場合の制御、「弱スイカ」または「強スイカ」の当選時に「スイカ」を中段(斜め上がりライン)及び下段(下段横ライン)のうち下段(下段横ライン)にのみ停止可能なタイミングで操作された場合の制御については何ら開示されていないので、甲2及び甲3に記載された発明から、本件発明1に係る相違点3(構成1J)の「第2の決定または第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、・・・該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行う」なる構成には到達し得ない。」(16頁11行?17頁1行)

エ 「(3-4)小括」(審判請求書46頁)に対して
「請求人は審判請求書第46頁7行ないし11行において「従って、本件発明1は、当業者が甲1発明に対し、当該周知の技術と甲3に記載の発明とを組み合わせることにより容易に想到できたものである。なお、本件発明1によって奏される効果も、甲1?甲3に記載された技術の範囲を超えるものではない。」と主張している。
甲1発明、甲2及び甲3に記載された発明から本件発明1の相違点2(構成1I)及び相違点3(構成1J)に係る構成に到達し得ないことは上記したとおりである。
そして本件発明1は、特定一般入賞の発生が許容される第1の決定または第3の決定がなされている場合と、第2の決定または第4の決定がなされている場合と、で特別入賞の発生が同時に許容される比率が異なること(構成1G及び構成1H)を前提に、第1の決定または第3の決定がなされた第1の条件が成立している場合には、特定一般入賞の構成図柄を第1の入賞ラインと第2の入賞ラインの双方に引込可能なタイミングで停止操作がされた場合に特定一般入賞の構成図柄を第1の入賞ラインに導出させる制御が行われる(構成1I)一方で、第2の決定または第4の決定がなされた第2の条件が成立している場合には、特定一般入賞の構成図柄を第1の入賞ラインと第2の入賞ラインの双方に引込可能なタイミングで停止操作がされた場合に特定一般入賞の構成図柄を第2の入賞ラインに導出させる制御が行われる(構成1J)、すなわち第1の条件が成立しているか、第2の条件が成立しているか、によって特定一般入賞の構成図柄を引き込む入賞ラインが異なるように制御することで、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ラインまたは第2の入賞ラインに揃ったときに、第1の入賞ラインに揃ったか、第2の入賞ラインに揃ったか、によって特別入賞が許容されている可能性が異なる。
そして、これらの構成において、第1の条件が成立している場合に、特定一般入賞の構成図柄を第1の入賞ラインに引き込めないタイミングで停止操作がされた場合でも第2の入賞ラインに引込可能なタイミングであれば特定一般入賞の構成図柄を第2の入賞ラインに導出させる制御が行われ(構成1I)、第2の条件が成立している場合に、特定一般入賞の構成図柄を第2の入賞ラインに引き込めないタイミングで停止操作がされた場合でも第1の入賞ラインに引込可能なタイミングであれば特定一般入賞の構成図柄を第1の入賞ラインに導出させる制御が行われる(構成1J)といった特徴を有するのである。
本件発明1は、このような特徴構成を有することにより、特別入賞の比率の高い条件であっても、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインのうち特別入賞の比率が低い条件に対応する入賞ラインに導出されることがあり、特別入賞の比率の低い条件であっても、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインのうち特別入賞の比率が高い条件に対応する入賞ラインに導出されることがあり、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ラインに導出されたか、第2の入賞ラインに導出されたか、によって特別入賞の比率の高い条件が成立しているか、特別入賞の比率の低い条件が成立しているか、を推測できる一方で、特定一般入賞の構成図柄がどちらの入賞ラインに導出された場合であっても、他方の条件が成立している可能性が残り、必ずしも特定一般入賞の構成図柄が導出された入賞ラインの違いにより示唆される内容が確定することなくその内容が曖昧となることで、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ラインまたは第2の入賞ラインに導出されたときの興趣を高めることができるという、甲1ないし甲3に記載された発明からは予測し難い特有の効果を奏するのである。
加えて、第1の入賞ラインまたは第2の入賞ラインのうち成立している条件に対応する一方の入賞ラインに対して特定一般入賞の構成図柄を引き込めない場合でも、他方の入賞ラインに対して特定一般入賞の構成図柄を引込可能であれば、他方の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が導出されるので、第1の条件が成立しているか、第2の条件が成立しているか、に対応して特定一般入賞の構成図柄を引き込む入賞ラインが異なるように制御する構成でも、特定一般入賞を取りこぼすことによる遊技者の損失を最低限に抑えることができるという、甲1ないし甲3に記載された発明からは予測し難い特有の効果を奏するのである(アンダーラインは被請求人代理人が付記)。
したがって、請求人の上記主張は失当である。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項によって特許を受けることができないものではなく、同法第123条第1項第2号により無効とされるべきものではない。」(17頁3行?18頁27行)

(3-3)「(4)本件発明2」の「(4-4)相違点の判断」(49頁ないし50頁)
ア 「イ 相違点4及び5についての判断」(50頁)に対して
「請求人は審判請求書第50頁23行ないし25行において「以上によれば、相違点4及び相違点5には、甲2及び甲3によって実現される導出制御機能に対して設計事項程度の違いしか認められず、しかも当該相違点には顕著な効果も認められない。」と主張している。
しかしながら、請求人が提出した甲第4号証にも「尚、請求項2は、「第1の決定」と「第2の決定」、「第3の決定」と「第4の決定」の関係がそれぞれ異なる点で請求項1と相違しますが、その他の点は同一であり、請求項1と同じ点に技術的意義があります。」と記載されているように、本件発明2の技術的意義は本件発明1の技術的意義と同じである。
そして、上記「(3-1)」「(3-2)」でも述べた如く、本件発明1が甲1ないし甲3に記載された発明から導き出せないことは明らかであるので、本件発明2も甲1ないし甲3に記載された発明から導き出せないことは明らかである。」(18頁31行?19頁7行)

イ 「(4-5)小括」(審判請求書50頁ないし51頁)に対して
「請求人は審判請求書第51頁4行ないし7行において「従って、本件発明2は、当業者が甲1発明に対し、当該周知の技術と甲3に記載の発明とを組み合わせることにより容易に想到できたものである。なお、本件発明2によって奏される効果も、甲1?甲3に記載された技術の範囲を超えるものではない。」と主張している。
しかしながら、本件発明2の構成が甲1ないし甲3に記載された発明から導き出せないことは上記したとおりである。
そして本件発明2においては、構成2Hにおいて特定一般入賞の発生が許容される第1の決定または第4の決定がなされている場合と、第2の決定または第3の決定がなされている場合と、で特別入賞の発生が同時に許容される比率が異なる点、構成2Iにおいて第1の決定または第4の決定がなされた場合に第1の条件が成立し、構成2Jにおいて第2の決定または第3の決定がなされた場合に第2の条件が成立する点が本件発明1と異なっており、本件発明2は上記した本件発明1と同様な特徴及び効果を奏するのである。
よって、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項によって特許を受けることができないものではなく、同法第123条第1項第2号により無効とされるべきものではない。」(19頁9?25行)

(4)むすび
「上記のとおり、本件発明1ないし本件発明2は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づき、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく進歩性を有するものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではないので、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすべきではない。」(19頁27?31行)

2-3 陳述要領書(被請求人)における主張
「仮に弱スイカがボーナスと同時成立する旨、あるいは強スイカがボーナスと同時成立する旨が甲3に記載されているとした場合でも、請求人の主張に対しては既に、答弁書(3-2-1)「イ 相違点2についての判断」に対して:ウ 相違点2に係る構成1Iは甲1発明、甲2及び甲3に記載された発明からは導き出せない理由(11頁乃至14頁)、及び(3-2-2)「ウ 相違点3についての判断」に対して:イ 相違点3に係る構成1Jは甲1発明、甲2及び甲3に記載された発明からは導き出せない理由(15頁乃至17頁)において、構成1I、1Jが甲第1乃至3号証から導き出せないことを主張しており、被請求人が主張する本件発明1、2は進歩性を有するとの結論に何ら影響を及ぼすものではありません。」(2頁12?21行)。

2-4 上申書(被請求人)における主張
(1)被請求人の「特許請求の範囲に記載の「導出させる」を必ず導出させることの意味に解することは、明細書のどの箇所を根拠とするのか回答されたい。」との質問に対して以下の如く回答する。
審判事件答弁書8頁ないし9頁に記載の如く、「本件発明1の構成1Iでは・・・必ず第2の表示位置を導出させることを意味するものである。」(前記2 2-2(3)(3-2)イ(ア))と回答する。
「したがって、明細書を参酌することなく特許請求の範囲の記載から上記のように解されることは明白であり、請求人の主張する如く、明細書の一部の記載から各表示位置を必ず導出させることの意味に解することはできないとの主張は恣意的なものであり当を得ないものである。
尚、明細書の段落[0324][0326][0327]において、特別入賞と特定一般入賞が同時当選した場合に、特別入賞の構成図柄が特定一般入賞の構成図柄よりも優先して引き込まれることがない旨が記載されており、これらの記載に加えて段落[0331]の記載から第1の条件または第2の条件が成立したときに、それぞれの場合に各表示位置を必ず導出させることが明細書に記載されていることは明らかである。
よって、この点からも請求人の主張する如く、明細書の記載から各表示位置を必ず導出させるとの意味に解することはできないとの主張は当を得ないものである。」(2頁33行?3頁10行)

第3 本件特許発明
本件特許の請求項1?2に係る発明(以下「本件発明1?2」という。)は,本件特許の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
各々が識別可能な複数種類の図柄を周期的に移動させることにより変動表示可能な複数の可変表示領域のそれぞれに表示結果を導出表示させることが可能な可変表示装置を備え、
遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、前記複数の可変表示領域の全てに表示結果が導出表示されたことにより1ゲームが終了し、前記複数の可変表示領域に導出表示された表示結果として第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインを含む複数の入賞ラインのうちいずれかの入賞ライン上に導出表示された図柄の組み合わせに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンであって、
少なくともいずれかの可変表示領域に表示結果が導出される前に、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別入賞及び該特別入賞以外の一般入賞を含む複数種類の入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
前記複数の可変表示領域に表示結果をそれぞれ導出させるための導出操作手段と、
前記導出操作手段が操作されたときに、該導出操作手段に対応する可変表示領域の表示結果として予め定められた引込範囲内に位置する表示位置からいずれかの表示位置を前記事前決定手段の決定結果に基づいて導出させる制御を行う導出制御手段と、
前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該特別入賞が発生しなかった場合に当該特別入賞の発生を許容する旨の決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段と、
を備え、
前記事前決定手段は、
同一ゲームにおける決定対象として、前記一般入賞のうち特定一般入賞の発生を許容する旨を単独で決定する第1の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特定一般入賞と異なる特別一般入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第2の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第3の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨、前記特別一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第4の決定を行うことが可能であり、
同一ゲームにおいて前記第1の決定がなされる確率と前記第3の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第3の決定がなされる確率の比率、同一ゲームにおいて前記第2の決定がなされる確率と前記第4の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第4の決定がなされる確率の比率のうち一方が他方の比率よりも高くなる確率で前記第1?4の決定を行い、
前記導出制御手段は、
前記第1の決定または前記第3の決定がなされた第1の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の入賞ラインに前記特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置及び前記第2の入賞ラインに前記特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置のうち前記第1の表示位置のみ位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第2の表示位置のみ位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行い、
前記第2の決定または前記第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第1の表示位置のみ位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第2の表示位置のみ位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行う
ことを特徴とするスロットマシン。

【請求項2】
各々が識別可能な複数種類の図柄を周期的に移動させることにより変動表示可能な複数の可変表示領域のそれぞれに表示結果を導出表示させることが可能な可変表示装置を備え、
遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、前記複数の可変表示領域の全てに表示結果が導出表示されたことにより1ゲームが終了し、前記複数の可変表示領域に導出表示された表示結果として第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインを含む複数の入賞ラインのうちいずれかの入賞ライン上に導出表示された図柄の組み合わせに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンであって、
少なくともいずれかの可変表示領域に表示結果が導出される前に、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別入賞及び該特別入賞以外の一般入賞を含む複数種類の入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
前記複数の可変表示領域に表示結果をそれぞれ導出させるための導出操作手段と、
前記導出操作手段が操作されたときに、該導出操作手段に対応する可変表示領域の表示結果として予め定められた引込範囲内に位置する表示位置からいずれかの表示位置を前記事前決定手段の決定結果に基づいて導出させる制御を行う導出制御手段と、
前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該特別入賞が発生しなかった場合に当該特別入賞の発生を許容する旨の決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段と、
を備え、
前記事前決定手段は、
同一ゲームにおける決定対象として、前記一般入賞のうち特定一般入賞の発生を許容する旨を単独で決定する第1の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特定一般入賞と異なる特別一般入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第2の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第3の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨、前記特別一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第4の決定を行うことが可能であり、
同一ゲームにおいて前記第1の決定がなされる確率と前記第4の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第4の決定がなされる確率の比率、同一ゲームにおいて前記第2の決定がなされる確率と前記第3の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第3の決定がなされる確率の比率のうち一方が他方の比率よりも高くなる確率で前記第1?4の決定を行い、
前記導出制御手段は、
前記第1の決定または前記第4の決定がなされた第1の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の入賞ラインに前記特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置及び前記第2の入賞ラインに前記特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置のうち前記第1の表示位置のみ位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第2の表示位置のみ位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行い、
前記第2の決定または前記第3の決定がなされた第2の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第1の表示位置のみ位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第2の表示位置のみ位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行う
ことを特徴とするスロットマシン。」

第4 甲各号証の記載事項
請求人の提出した甲各号証には、以下の事項が記載され、ないし、示されているものと認められる(なお、下線は当審で付した。)。
1 甲第1号証(パチスロ必勝ガイド 2007年9月号)について
甲第1号証には、図面とともに以下の記載がある。
ア 4頁右側中段の「パチスロ機」の写真には、「パチスロ機」が「5号機」であることが示されると共に、写真中央に、「パチスロ機」が絵柄を表示するリールのための3つの表示領域を有する表示装置を備えることが示され、表示装置の下方には、各表示領域に対応して3つのストップボタン(赤丸)を備えることが示されている。

イ 4頁右側下段の「各役払い出し」と題する表には、役には、「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」の3種類の「BIG BONUS」役、「北斗・北斗・7」の1種類の「MIDDLE BONUS」役、「リプレイ」役、「7頭」(「7・黒チェリー・黒チェリー」)、「北斗頭」(「北斗・黒チェリー・黒チェリー」)、「ユリア頭」(「ユリア・黒チェリー・黒チェリー」)の3種類の「1枚」役、「7・ベル・ベル」「北斗・ベル・ベル」「ユリア・ベル・ベル」「ベル・ベル・ベル」の4種類の「9枚」役、「スイカ揃い」の1種類の「6枚」役、「赤チェリー・any・any」「黒チェリー・any・any」の2種類の「チェリー」役があること、及び、役毎の遊技媒体の払い出しに関しては、「BIG BONUS」役が345枚を超える払い出しで終了し、純増が約225枚であること、「MIDDLE BONUS」役が105枚を超える払い出しで終了し、純増が約104枚であること、小役が小役の種類に応じて、所定枚数の払い出しを行うことが示されている。

ウ 4頁及び5頁に「パチスロ北斗の拳2 乱世覇王伝 天覇の章」という機種名が記載されている。

エ 5頁左側中段の「ボーナス後は必ずRTに突入!!」と題する表に、中程に「ビッグボーナスは「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」の3種類。組み合わせの違いこそあれど、獲得枚数は共通(純増約225枚)。対するミドルボーナスは「北斗・北斗・7」で1種類(純増約104枚)。種類で2種類、組み合わせで4種類となるボーナス役が「覇王モード」を激しく盛り上げる。」ことが記載され、下方に「RT「覇王モード」中はリプレイ確率が上がりコイン持ちが大幅アップ!」することが記載されている。
また、3種類あるビッグボーナス及び1種類のミドルボーナスの停止絵柄を表す写真には、リールの停止時に、3つの表示領域に1リールにつき3つの絵柄が停止表示され、中段横ラインに「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」のいずれかの絵柄の組み合わせが停止表示されるとビッグボーナスが成立し、中段横ラインに「北斗・北斗・7」の組み合わせが停止表示されるとミドルボーナスが成立することが示されている。

オ 7頁下段左側の「絵柄配列」と題する表には、複数種類の絵柄が21個ずつ配列された3つの絵柄配列が示されている。
そして、3つの絵柄配列が3つのリールに対応するものであることは当業者に自明である。
以下、各種類の絵柄については、甲1の記載に沿って、左リールの[17]番の絵柄を「7」、[10]番の絵柄を「ユリア」、[3]番の絵柄を「北斗」、[6]番の絵柄を「赤チェリー」、[13]番及び[20]番の絵柄を「黒チェリー」、[2]番、[9]番及び[16]番の絵柄を「スイカ」、[5]番、[12]番及び[19]番の絵柄を「ベル」とする。

カ 10頁右側下段の「各役の重複期待度」と題する表には、左側にボーナスと重複して当選する小役に「角チェリー」、「スイカ」、「1枚役(チャンス目)」、「中段チェリー」があること、ボーナスとの重複期待度が「角チェリー」、「スイカ」、「1枚役(チャンス目)」、「中段チェリー」の順に大きくなることが示されている。
そして、左リールが停止表示される一方で中リールと右リールが回転表示されていること(角チェリーと中段チェリーの欄)が示されている。
また、斜め右下方向ラインに「スイカ揃い」の組み合わせが停止表示されるとスイカが成立し、下段横ラインに、1枚役である「ユリア・黒チェリー・黒チェリー」の組み合わせが停止表示されると1枚役が成立することが示されている。

キ 10頁左側の「2種類のDDT打法手順」と題する表には、「中押しDDT打法手順」に関する説明、及び「順押しDDT打法手順」に関する説明として、表の右欄に「成立した小役を迅速に察知するために、通常時は当然の如くDDT打法での消化が必須となるわけだが、本機も前作までと同様に中押しでの消化がベストとなる。
詳しい手順は、まず中リール枠2コマ上?枠上にユリア絵柄を狙い、その後は基本的に左→右リールの順でフリー打ち消化。ただし、中段にスイカが停止した場合はスイカor1枚役となるため、左、右リールにもユリア絵柄を狙い両小役をしっかりとフォローしたい。この際、1枚役もスイカも揃わなければチャンス目となり、赤7or北斗絵柄頭の1枚役の取りこぼしと判断することが可能だ。
1枚役を取りこぼしても時間効率を重視したいプレイヤーには順押しDDT打法がオススメである。手順はいたって簡単で左リール中?下段にユリア絵柄を狙い、枠内にスイカが停止した場合のみ残りのリールにもスイカを狙う(スイカが揃わなければチャンス目)。ただし、完全にチャンス目を見抜くことはできないため、万全を期すならやはり中押しDDT打法が理想となる。」と記載されている。
また、「中押しDDT打法手順」として、変動中の3つのリールを中→左→右の順に止め、全てのリール停止時に1枚役が揃うか、スイカが揃うか、あるいは、1枚役もスイカも揃わないチャンス目となることが示されている。

ク 11頁上段の「ボーナスフラグ判定と小役チェック」と題する表には、「ボーナスフラグ判別手順」の欄に、「まず中リール下段に赤7or北斗絵柄をビタ押し!下段にボーナス絵柄が停止した場合はベルハズレでボーナス」という記載、また、「ボーナスの当否は2G、フラグの種類は最大3Gで察知」という見出しに続いて、「連続演出を経由し確定告知が発生するまでには数ゲームを要するため、重複対象役成立後は、上記の手順を実践すれば早期でのフラグ判別が可能。手順をしっかりと把握して少しでもロスを防ぐよう心掛けておきたい。」という記載がある。
そして、「ボーナス確定後は小役チェック」の欄に、「フラグ告知はボーナス確定画面後3G目のレバーON時に告知」と記載されている。
また、表の下方に「本機は確定告知が発生した3G後のレバーONで、成立したボーナスの種類が液晶画面に表示されることとなる。だが、その時をのんびりと待ち続ける必要はない。重複役や演出からボーナス成立を悟ったならば、まずは中リールに下段に赤7or北斗絵柄をビタ押し。停止型に応じてボーナスの当否や成立したボーナスを特定することが可能となる。
成立ボーナスの判断ができたなら、続いてはベル成立の有無を見極めながらボーナスを狙いたい。中リール上or中段に揃えるべきボーナス絵柄を狙い、ベル成立時はあえてボーナスを揃えずにベルを奪取。そのままボーナスを揃えるよりも断然お得となることは言うまでもなかろう。」と記載されている。

ケ 11頁最下段に「ミドルボーナス中は2枚掛けで消化、全ての小役が15枚の払い出しとなるため、フリー打ちで問題ない。」と記載されている。

コ 16頁右側下段の「スイカと1枚役はボーナス重複に期待!!」と題する表の右段には、スイカ成立時のボーナス重複割合が設定1?設定6毎に記載され、また、1枚役成立時のボーナス重複割合が設定1?設定6毎に記載されている。
また、表の左中段には、「スイカ+1枚役(北斗or7頭)」の重複フラグもあり、確率はそれぞれ1/569.87であり、ボーナス重複割合は1/5.22?1/4.25であることが記載され、表の右上段には、スイカ成立時にスイカの絵柄が斜め右下方向(右下がり)に整列すること、1枚役成立時にユリア・黒チェリー・黒チェリーが下段横方向に整列することが示されると共に、リールの停止時に表示窓に1リールにつき3つの絵柄が表示されることが記載されている。
さらに、表の左上段には、スイカ役の払い出し枚数が6枚であり、チェリー役の払い出し枚数が2枚であり、ベル役の払い出し枚数が9枚であり、赤7or北斗orユリア頭の1枚役の払い出し枚数が1枚であることが示されている。

サ 17頁左欄の「単独フラグ&重複フラグ別・各役確率(解析値)」の表には、単独当選と重複当選を含めて、各種当選役について、設定値毎の発生確率が示されている。
また、「6枚」役である「スイカ揃い」が単独当選可能であり、同「スイカ揃い」が「1枚」役である「7頭」「北斗頭」と重複当選可能であり、同「スイカ揃い」が「ボーナス役」である「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であり、同「スイカ揃い」が「1枚」役である「北斗頭」と「ボーナス役」である「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であり、同「スイカ揃い」が、「1枚」役である「7頭」と「ボーナス役」である「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であることが示されている。
さらに、例えば、設定6の場合、「スイカ揃い」が単独当選する確率は、(1/163.84)であり、「スイカ揃い」と「1枚」役である「7頭」とが重複当選する確率は、(1/744.72)であり、「スイカ揃い」と「7揃い」とが重複当選する確率は、(1/5957.81)であり、「スイカ揃い」と「7頭」と「7揃い」とが重複当選する確率は、(1/5957.81)であることが示されている。

シ 上記ア、エ、オに示された技術事項からみて、甲1発明には、絵柄が21個ずつ配列されたリールが表示される3つの表示領域を有し、3つの表示領域に絵柄の組み合わせを停止表示させる可変表示装置を備えることが示されている。

ス 上記エ、カに示された技術事項からみて、甲1発明には、リールの停止時に、3つの表示領域に1リールにつき3つの絵柄が停止表示され、中段横ラインに「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」のいずれかの組み合わせが停止表示されるとビッグボーナスが成立し、中段横ラインに「北斗・北斗・7」の組み合わせが停止表示されるとミドルボーナスが成立し、斜め右下方向ラインに「スイカ揃い」の組み合わせが停止表示されるとスイカが成立し、下段横ラインに、「1枚役」の組み合わせが停止表示されると1枚役が成立することが示されている。

上記記載事項ア?スによると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数種類の絵柄が21個ずつ配列されたリールが表示される3つの表示領域を有し、3つの表示領域に絵柄の組み合わせを停止表示させる可変表示装置を備え、
役には、3種類の「BIG BONUS」役、1種類の「MIDDLE BONUS」役、「リプレイ」役、3種類の「1枚」役、4種類の「9枚」役、1種類の「6枚」役、2種類の「チェリー」役があり、ボーナスと重複して当選する小役に「角チェリー」、「スイカ」、「1枚役(チャンス目)」、「中段チェリー」があり、
ミドルボーナス中は2枚掛けで消化、全ての小役が15枚の払い出しとなり、
リールの停止時に、3つの表示領域に1リールにつき3つの絵柄が停止表示され、中段横ラインに「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」のいずれかの組み合わせが停止表示されるとビッグボーナスが成立し、中段横ラインに「北斗・北斗・7」の組み合わせが停止表示されるとミドルボーナスが成立し、斜め右下方向ラインに「スイカ揃い」の組み合わせが停止表示されるとスイカが成立し、下段横ラインに、「1枚役」の組み合わせが停止表示されると1枚役が成立する
パチスロ機であって、
重複対象役成立後は、中リールの下段に7or北斗絵柄をビタ押し、下段にボーナス絵柄が停止した場合は、ベルハズレでボーナスの当否が分かり、ボーナスの当否は2Gで察知でき、
フラグ告知はボーナス確定画面後3G目のレバーON時に行い、
また、1枚役もスイカも揃わなければチャンス目となり、7or北斗絵柄頭の1枚役の取りこぼしと判断することが可能であり、
3つの表示領域に対応して3つのストップボタンを備え、
「6枚」役である「スイカ揃い」が単独当選可能であり、同「スイカ揃い」が「1枚」役である、「7頭」「北斗頭」と重複当選可能であり、同「スイカ揃い」が「ボーナス役」である「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であり、同「スイカ揃い」が「1枚」役である「北斗頭」と「ボーナス役」である「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であり、同「スイカ揃い」が、「1枚」役である「7頭」と「ボーナス役」である「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であり、
例えば、設定6の場合、「スイカ揃い」が単独当選する確率は、(1/163.84)であり、「スイカ揃い」と「7頭」とが重複当選する確率は、(1/744.72)であり、「スイカ揃い」と「7揃い」とが重複当選する確率は、(1/5957.81)であり、「スイカ揃い」と「7頭」と「7揃い」とが重複当選する確率は、(1/5957.81)である
パチスロ機。」

2 甲第2号証(平成18年度標準技術集 遊技機及びその関連技術 第2部パチスロ)について
甲第2号証には、図面とともに以下の記載がある。
セ 「1-1-1-1 遊技フロー」について(1?2頁)
「メダルの投入(例外としてパロット※1(3-1-1-1「筐体の種類」における「パロット」参照)は玉)枚数(ベット数)によって、予め機種ごとに定められた有効ライン数(2-2-2「リールの有効ライン」参照)が決定し、予め機種ごとに定められた「メダルの払い出しに係る絵柄(以降、「役」とする)」の成立(揃う)に対する有効なラインをとる。
その後、スタートレバーにて各リールが始動(この時に役の抽選が行なわれる(1-1-2-1「抽選・当選判定」参照)し、各リールに対応したストップボタンを押すことで、リールが停止する。最終リールが停止し、予め機種ごとに定められた図柄(リール上に配された絵柄)が有効ライン上に成立(入賞)した場合にのみ規定枚数のメダルが払い出される。」ことが記載されている。
そして、【図1】(出典:本標準技術集のために作成)には、遊技用価値であるメダルの投入から開始される「遊技フロー」について、メダルを投入することにより有効ラインが設定され、スタートレバーを押すことによりリールが始動するとともに、内部抽選が行われ、ストップボタンを押すことによりリールが停止するとともに、揃った図柄によりメダルが払い出され、1ゲームが終了することが図示されている。
また、【図2】には、3つのリール表示部分を備え、水平方向の3本の有効ラインと斜め方向の2本の有効ラインがあること、各リール部分に対応して3つのストップボタンが設けられること、当該ストップボタンとは別に1つのスタートレバーが設けられることが図示されている。

ソ 「1-2-1-4 リールに関するルール」について(11?12頁)
「リールは3本以上搭載しなくてはならず、各リールの大きさは同一とされている。また、図柄に関しては縦25mm、横35mm以内とし、1 つのリール上に21個以内、且つ全てのリールに付き同一数とする。また、図柄の種類に関しては1 機種あたり10種類以内と定められている(以上、別表第5(2)構造に関する規格内「ロ」参照)。
<リールの始動に関するルール>
リールの回転は一定方向(主に手前下)のみとし、回転速度は1分間に80回転以内で一定の速度を保つものとする。ただし、リールが回転し始めてから、前述の一定の速度に達するまではこの限りではない(別表第5(1)内性能に関する規格内「イ」参照)。
<リールの停止に関するルール>
全てのリールが一定の速度に達するまでは全ての操作を行えないものとし、それ以降も任意にストップボタンを操作しない限り、リールが一定の速度に達した後、30秒以内に自動停止しないものとする。なお、ストップボタンを操作したのちには、0.19秒以内に停止するものとする(以上、別表第5(1)性能に関する規格内「イ」参照)。
※ 前頁の理由から、リールのスベリ(ストップボタンを押した箇所から実際に停止する箇所のズレ)は最大4コマとなる(最大1秒あたり約28コマ《60秒間80回転》回転でき、ストップボタンを操作した後、0.19秒以内に停止を行なうため、5コマ以内《0.19×28=5.32》の停止が余儀なくされる。よって、規則上、最大速度で回転を行なっていたとしても、停止図柄を含めて考えると4コマ以内に停止を行なわなければならない)。」ことが記載されている。
また、【図1】(出典:本標準技術集のために作成)には、リールの仕組みについて図示され、【図2】(出典:刊行物名:「パチスロ必勝ガイドMAX2月号増刊、パチスロ必勝攻略年鑑2006」、発行年月日:2006年2月1日、編集人:吉良誠二、発行人:末井昭、発行所:株式会社白夜書房発行、出典箇所124?125頁)には、図柄と配列について、最大スベリ時に4コマすべって停止することが図示されている。

タ 「1-3-1-2 コントロール制御」について(34?35頁)
「リールの制御方法の1つ。基本的には当該ゲーム時の成立フラグを判断し、フラグが成立している場合は最大限(4コマ)まで内部当選図柄を優先的に引き込む制御のこと。」という記載がある。
また、【図1】(出典:本標準技術集のために作成)には、コントロール制御について、Cの箇所で停止ボタンを押した場合、フラグ非成立時とH小役フラグ成立時とで停止箇所がどの位置になるかについて図示されるとともに、「フラグ非成立の場合はそのまま停止(スベリはなし)」、「フラグ成立時は最大限(4コマ)までスベリ、図柄を揃えようとする」ことが記載されている。

3 甲第3号証(パチスロ攻略マガジンドラゴン 2007年9月号)について
甲第3号証には、図面とともに以下の記載がある。
チ 5頁左側上段の「パチスロ」機の写真中央に、「パチスロ機」が絵柄を表示するリールのための3つの表示領域を有する表示装置を備えることが示され、表示装置の下方には、各表示領域に対応して3つのストップボタン(赤丸)を備えることが示されている。
また、5頁左側下段の「5号機北斗の伝説が始まる・・・」と題する欄に「・・・旧作の最大の売りであったBB連チャンは5号機である本機には存在しない。」

ツ 5頁中段に「パチスロ北斗の拳2 乱世覇王伝 天覇の章」という機種名が記載されている。

テ 5頁中央下段の「役の構成」の欄
「この欄には、3種類の「BIG BONUS」役、1種類の「MIDDLE BONUS」役、「リプレイ」役、3枚掛けの場合における、4種類の「9枚」役、5種類の「1枚」役、「スイカ揃い」の1種類の「6枚」役があることが示されている。

ト 8頁右側上段の「小役とボーナスの同時成立」と題する表には、「1枚役の取りこぼしでチャンス目が出現。そして、強スイカは1枚役との同時成立のため、弱(単独)スイカとは制御が異なる。」ことが記載され、また、ボーナスとの同時成立する期待度が、強スイカの方が弱スイカよりも高いことが示されている。
また、ボーナスと同時当選する小役に「角チェリー」、「スイカ」、「1枚役(チャンス目)」、「中段チェリー」があることが示されている。

ナ 8頁中段左側の「リール配列」と題する表には、複数種類の絵柄が21個ずつ配列された3つのリールの絵柄配列が示されている。以下、各種類の絵柄については、甲3の記載に沿って、左リールの[17]番の絵柄を「7」、[10]番の絵柄を「ユリア」、[3]番の絵柄を「北斗」、[6]番の絵柄を「赤チェリー」、[13]番及び[20]番の絵柄を「黒チェリー」、[2]番、[9]番及び[16]番の絵柄を「スイカ」、[5]番、[12]番及び[19]番の絵柄を「ベル」とすることが示されている。

ニ 8頁中段の「暫定版 通常時の打ち方」と題する表には、左リールの下段に「スイカ」が停止している場合に、中リールの停止操作時に[7]番「スイカ」を中リール枠上?中段に狙うと、「スイカ」役のうち弱スイカの単独当選時にスイカの絵柄が斜め右上方向のラインに整列して停止表示されることで弱スイカが入賞し、一方、小役である「スイカ」役のうち強スイカの1枚役との同時当選時にスイカの絵柄が下段横ラインに整列して停止表示されることで強スイカが入賞することが示されている。

上記記載事項チ?ニによると、甲第3号証には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数種類の絵柄が21個ずつ配列されたリールが表示される3つの表示領域を有し、3つの表示領域に絵柄の組み合わせを停止表示させる表示装置を備え、
役には、3種類の「BIG BONUS」役、1種類の「MIDDLE BONUS」役、「リプレイ」役、3種類の「1枚」役、4種類の「9枚」役、1種類の「6枚」役、2種類の「チェリー」役があり、ボーナスと同時当選する小役に「角チェリー」、「スイカ」、「1枚役(チャンス目)」、「中段チェリー」があり、
左リールの下段に「スイカ」が停止している場合に、中リールの停止操作時に[7]番「スイカ」を中リール枠上?中段に狙うと、「スイカ」役のうち弱スイカの単独当選時にスイカの絵柄が斜め右上方向のラインに整列して停止表示されることで弱スイカが入賞し、一方、小役である「スイカ」役のうち強スイカの1枚役との同時当選時にスイカの絵柄が下段横ラインに整列して停止表示されることで強スイカが入賞するパチスロ機であって、
3つの表示領域に対応して3つのストップボタンを備え、
強スイカは1枚役との同時成立のため、弱(単独)スイカとは制御が異なり、
ボーナスとの同時成立する期待度が、強スイカの方が弱スイカよりも高い
パチスロ機。」

第5 本件審判請求についての判断(29条2項)
1 本件発明1について(無効理由(1)について)
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「複数種類の絵柄が21個ずつ配列されたリールが表示される3つの表示領域を有し、3つの表示領域に絵柄の組み合わせを停止表示させる可変表示装置」と、
本件発明1の「各々が識別可能な複数種類の図柄を周期的に移動させることにより変動表示可能な複数の可変表示領域のそれぞれに表示結果を導出表示させることが可能な可変表示装置」とを対比する。

甲1発明の「複数種類の絵柄」、「3つの表示領域」、「3つの表示領域に絵柄の組み合わせを停止表示させる」ことは、それぞれ、本件発明1の「各々が識別可能な複数種類の図柄」、「複数の可変表示領域」、「複数の可変表示領域のそれぞれに表示結果を導出表示させる」ことに相当する。
そして、甲1発明において、メダルを掛け、スタートレバーを操作することにより、リールによる変動表示を開始し、リールを周期的に回転させ、ストップボタンを操作することにより、3つのリール表示領域にいずれかの絵柄の組み合わせが停止表示されることにより、1ゲームを行うことは、スロットマシンの技術分野において従来から慣用的に行われていることであり、当業者にとって自明である(例えば、甲2の前記第4 2 セの記載事項を参照のこと。)。

したがって、甲1発明の「表示装置」は、本件発明1の「可変表示装置」に相当する。

イ 甲1発明の「ミドルボーナス中は2枚掛けで消化」することと、
本件発明1の「遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となる」こととを対比する。

甲1発明の「2枚掛け」は、1回の変動表示につき2枚のコインを掛けることであるから、本件発明1の「遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定すること」に相当する。
また、甲1発明において、メダルを「2枚掛け」た後、スタートレバーを操作することによりリールによる変動表示を開始することにより、1ゲームを開始することは、当業者にとって自明である(例えば、甲2の前記第4 2 セの記載事項を参照のこと。)。

したがって、甲1発明の「ミドルボーナス中は2枚掛けで消化」することは、本件発明1の「遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となる」ことに相当する。

ウ 甲1発明の「リールの停止時に、3つの表示領域に1リールにつき3つの絵柄が停止表示され、中段横ラインに「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」のいずれかの組み合わせが停止表示されるとビッグボーナスが成立し、中段横ラインに「北斗・北斗・7」の組み合わせが停止表示されるとミドルボーナスが成立し、斜め右下方向ラインに「スイカ揃い」の組み合わせが停止表示されるとスイカが成立し、下段横ラインに、「1枚役」の組み合わせが停止表示されると1枚役が成立するパチスロ機」と、
本件発明1の「複数の可変表示領域の全てに表示結果が導出表示されたことにより1ゲームが終了し、複数の可変表示領域に導出表示された表示結果として第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインを含む複数の入賞ラインのうちいずれかの入賞ライン上に導出表示された図柄の組み合わせに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン」とを対比する。

甲1発明において、3つの表示領域に絵柄の組み合わせを停止表示されることにより、1ゲームを終了することは、当業者にとって自明である(上記アを参照のこと。)。
そして、甲1発明の「中段横ラインに「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」のいずれかの組み合わせが停止表示されるとビッグボーナスが成立し、中段横ラインに「北斗・北斗・7」の組み合わせが停止表示されるとミドルボーナスが成立し、斜め右下方向ラインに「スイカ揃い」の組み合わせが停止表示されるとスイカが成立し、下段横ラインに、「1枚役」の組み合わせが停止表示されると1枚役が成立する」ことは、中段横ラインに「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」のいずれかの絵柄の組み合わせが停止表示されるとビッグボーナスが入賞し、同じく、中段横ラインに「北斗・北斗・7」の絵柄の組み合わせが停止表示されると ミドルボーナスが入賞し、また、斜め右下方向ラインに「スイカ揃い」の組み合わせが停止表示されるとスイカが入賞し、さらに、下段横ラインに、「1枚役」の組み合わせが停止表示されると1枚役が入賞することであり、特定の入賞ラインに停止表示された絵柄の組み合わせに応じて、ビッグボーナス、ミドルボーナス、スイカ、あるいは、1枚役の入賞が発生するものである。
そして、甲1発明の「中段横ライン」、「斜め右下方向ライン」、「下段横ライン」は、本件発明1の「複数の入賞ラインのうちいずれかの入賞ライン」に相当する。

したがって、甲1発明の「リールの停止時に、3つの表示領域に1リールにつき3つの絵柄が停止表示され、中段横ラインに「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」のいずれかの組み合わせが停止表示されるとビッグボーナスが成立し、中段横ラインに「北斗・北斗・7」の組み合わせが停止表示されるとミドルボーナスが成立し、斜め右下方向ラインに「スイカ揃い」の組み合わせが停止表示されるとスイカが成立し、下段横ラインに、「1枚役」の組み合わせが停止表示されると1枚役が成立するパチスロ機」は、本件発明1の「複数の可変表示領域の全てに表示結果が導出表示されたことにより1ゲームが終了し、複数の可変表示領域に導出表示された表示結果として第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインを含む複数の入賞ラインのうちいずれかの入賞ライン上に導出表示された図柄の組み合わせに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン」に相当する。

エ 甲1発明の「中リールの下段に7or北斗絵柄をビタ押し、下段にボーナス絵柄が停止した場合は、ベルハズレでボーナスの当否が分かり、ボーナスの当否は2Gで察知でき、また、1枚役、又は、スイカが当選している場合、1枚役もスイカも揃わなければチャンス目となり、7or北斗絵柄頭の1枚役の取りこぼしと判断することが可能であ」ることは、3つの表示領域にベルはずれの絵柄の組み合わせが停止表示される前に、既に、パチスロ機において、ボーナスの当否が決定済みであったことを示すと共に、チャンス目が停止表示される前に、既に、パチスロ機において、7頭or北斗絵柄頭の1枚役に当選したことが決定済みであったことを示すものである。

したがって、甲1発明の「中リールの下段に7or北斗絵柄をビタ押し、下段にボーナス絵柄が停止した場合は、ベルハズレでボーナスの当否が分かり、ボーナスの当否は2Gで察知でき、また、1枚役、又は、スイカが当選している場合、1枚役もスイカも揃わなければチャンス目となり、7or北斗絵柄頭の1枚役の取りこぼしと判断することが可能であ」ることは、本件発明1の「少なくともいずれかの可変表示領域に表示結果が導出される前に、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別入賞及び該特別入賞以外の一般入賞を含む複数種類の入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段」を備えることに相当する。

オ 甲1発明の「3つの表示領域に対応して3つのストップボタンを備え」ることは、ストップボタンを操作することにより、3つの表示領域にいずれかの絵柄の組み合わせが停止表示させることであるから、本件発明1の「複数の可変表示領域に表示結果をそれぞれ導出させるための導出操作手段」に相当する。

カ 甲1発明の「フラグ告知はボーナス確定画面後3G目のレバーON時に行」うことは、ボーナス当選していることを3G持ち越すことが可能であることを示すものであるから、本件発明1の「特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該特別入賞が発生しなかった場合に当該特別入賞の発生を許容する旨の決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段」を備えることに相当する。

この点に関して、被請求人は、審判事件答弁書において、「甲1の11頁上段の「ボーナスの当否は2G、フラグの種類は最大3Gで察知」なる記載から直ちに構成1Fに関する「持越手段」の構成が開示されているとすることはできない。」(8頁12?20行、(3-1)アを参照。)と主張する。しかしながら、上記したように、甲1発明は、ボーナスに当選している権利を持ち越す持越手段を有するものであるから、被請求人の上記主張は採用できない。

キ 甲1発明の「「6枚」役である「スイカ揃い」が単独当選可能であり、同「スイカ揃い」が「1枚」役である、「7頭」「北斗頭」と重複当選可能であり、同「スイカ揃い」が「ボーナス役」である「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であり、同「スイカ揃い」が「1枚」役である「北斗頭」と「ボーナス役」である「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であり、同「スイカ揃い」が、「1枚」役である「7頭」と「ボーナス役」である「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であ」ることと、本件発明1の「事前決定手段は、同一ゲームにおける決定対象として、一般入賞のうち特定一般入賞の発生を許容する旨を単独で決定する第1の決定、特定一般入賞の発生を許容する旨及び特定一般入賞と異なる特別一般入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第2の決定、特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第3の決定、特定一般入賞の発生を許容する旨、特別一般入賞の発生を許容する旨及び特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第4の決定を行うことが可能であ」ることとを対比する。

甲1発明の「「スイカ揃い」が単独当選可能であ」ることは、本件発明1の「一般入賞のうち特定一般入賞の発生を許容する旨を単独で決定する第1の決定」「を行うことが可能であ」ることに相当する。
そして、甲1発明の「「スイカ揃い」が「1枚」役である、「7頭」「北斗頭」と重複当選可能であ」ることは、本件発明1の「特定一般入賞の発生を許容する旨及び特定一般入賞と異なる特別一般入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第2の決定」「を行うことが可能であ」ることに相当する。
また、甲1発明の「「スイカ揃い」が「ボーナス役」である「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であ」ることは、本件発明1の「特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第3の決定」「を行うことが可能であ」ることに相当する。
さらに、甲1発明の「スイカ揃い」が「1枚」役である「北斗頭」と「ボーナス役」である「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であ」ること、及び、「スイカ揃い」が、「1枚」役である「7頭」と「ボーナス役」である「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であ」ることは、本件発明1の「特定一般入賞の発生を許容する旨、特別一般入賞の発生を許容する旨及び特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第4の決定を行うことが可能であ」ることに相当する。

したがって、甲1発明の「「6枚」役である「スイカ揃い」が単独当選可能であり、同「スイカ揃い」が「1枚」役である、「7頭」「北斗頭」と重複当選可能であり、同「スイカ揃い」が「ボーナス役」である「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であり、同「スイカ揃い」が「1枚」役である「北斗頭」と「ボーナス役」である「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であり、同「スイカ揃い」が、「1枚」役である「7頭」と「ボーナス役」である「北斗揃い」「7揃い」「7・7・北斗」「北斗・北斗・7」と重複当選可能であ」ることは、本件発明1の「事前決定手段は、同一ゲームにおける決定対象として、一般入賞のうち特定一般入賞の発生を許容する旨を単独で決定する第1の決定、特定一般入賞の発生を許容する旨及び特定一般入賞と異なる特別一般入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第2の決定、特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第3の決定、特定一般入賞の発生を許容する旨、特別一般入賞の発生を許容する旨及び特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第4の決定を行うことが可能であ」ることに相当する。

ク 甲1発明の「例えば、設定6の場合、「スイカ揃い」が単独当選する確率は、(1/163.84)であり、「スイカ揃い」と「7頭」とが重複当選する確率は、(1/744.72)であり、「スイカ揃い」と「7揃い」とが重複当選する確率は、(1/5957.81)であり、「スイカ揃い」と「7頭」と「7揃い」とが重複当選する確率は、(1/5957.81)である」ことについて検討する。
ここで、「スイカ揃い」が単独当選する確率と「スイカ揃い」と「7揃い」とが重複当選する確率との合計に対する、「スイカ揃い」と「7揃い」とが重複当選する確率の比率は、100×1/5957.81/(1/163.84+1/5957.81)≒2.68%と計算できる。
一方、「スイカ揃い」と「7頭」とが重複当選する確率と「スイカ揃い」と「7頭」と「7揃い」とが重複当選する確率との合計に対する「スイカ揃い」と「7頭」と「7揃い」とが重複当選する確率の比率は、100×1/5957.81/(1/744.72+1/5957.81) ≒11.11%と計算できる。

したがって、甲1発明の「例えば、設定6の場合、「スイカ揃い」が単独当選する確率は、(1/163.84)であり、「スイカ揃い」と「7頭」とが重複当選する確率は、(1/744.72)であり、「スイカ揃い」と「7揃い」とが重複当選する確率は、(1/5957.81)であり、「スイカ揃い」と「7頭」と「7揃い」とが重複当選する確率は、(1/5957.81)である」ことは、本件発明1の「同一ゲームにおいて第1の決定がなされる確率と第3の決定がなされる確率との合算確率に占める第3の決定がなされる確率の比率、同一ゲームにおいて第2の決定がなされる確率と第4の決定がなされる確率との合算確率に占める第4の決定がなされる確率の比率のうち一方が他方の比率よりも高くなる確率で第1?4の決定を行」うことに相当する。

なお、甲1発明として、第1の決定が「スイカ揃い」で設定6の場合を例示して本件発明1と対比したが、第1の決定が「スイカ揃い」で設定1?5の場合、第1の決定が「北斗頭」で設定6の場合、及び、第1の決定が「7頭」で設定6の場合を例にしたとしても、同様に、本件発明1の「同一ゲームにおいて第1の決定がなされる確率と第3の決定がなされる確率との合算確率に占める第3の決定がなされる確率の比率、同一ゲームにおいて第2の決定がなされる確率と第4の決定がなされる確率との合算確率に占める第4の決定がなされる確率の比率のうち一方が他方の比率よりも高くなる確率で第1?4の決定を行」うことに相当するものであることは、陳述要領書(請求人)における主張のとおりである(2頁下2行?8頁7行。前記第2 1 1-3(1)を参照のこと。)。

ケ 上記ア?クのとおりであるから、甲1発明と本件発明1とは、
「各々が識別可能な複数種類の図柄を周期的に移動させることにより変動表示可能な複数の可変表示領域のそれぞれに表示結果を導出表示させることが可能な可変表示装置を備え、
遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、前記複数の可変表示領域の全てに表示結果が導出表示されたことにより1ゲームが終了し、前記複数の可変表示領域に導出表示された表示結果として第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインを含む複数の入賞ラインのうちいずれかの入賞ライン上に導出表示された図柄の組み合わせに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンであって、
少なくともいずれかの可変表示領域に表示結果が導出される前に、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別入賞及び該特別入賞以外の一般入賞を含む複数種類の入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
前記複数の可変表示領域に表示結果をそれぞれ導出させるための導出操作手段と、
前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該特別入賞が発生しなかった場合に当該特別入賞の発生を許容する旨の決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段と、
を備え、
前記事前決定手段は、
同一ゲームにおける決定対象として、前記一般入賞のうち特定一般入賞の発生を許容する旨を単独で決定する第1の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特定一般入賞と異なる特別一般入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第2の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第3の決定、前記特定一般入賞の発生を許容する旨、前記特別一般入賞の発生を許容する旨及び前記特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第4の決定を行うことが可能であり、
同一ゲームにおいて前記第1の決定がなされる確率と前記第3の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第3の決定がなされる確率の比率、同一ゲームにおいて前記第2の決定がなされる確率と前記第4の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第4の決定がなされる確率の比率のうち一方が他方の比率よりも高くなる確率で前記第1?4の決定を行う
スロットマシン。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本件発明1が、導出操作手段が操作されたときに、該導出操作手段に対応する可変表示領域の表示結果として予め定められた引込範囲内に位置する表示位置からいずれかの表示位置を事前決定手段の決定結果に基づいて導出させる制御を行う導出制御手段を備えるのに対して、
甲1発明は、本件発明1の導出制御手段を備えるか否か明らかでない点。

[相違点2]
導出制御手段に関して、
本件発明1が、第1の決定または第3の決定がなされた第1の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に前記第1の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置及び第2の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い、
第2の決定または前記第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行うのに対して、
甲1発明は、本件発明1の上記構成を備えない点。

ここで、導出制御手段に関する相違点の抽出に関して、請求人は、第1の条件が成立したときの導出制御手段(構成1I)と第2の条件が成立したときの導出制御手段(構成1J)とを分離して、相違点2、3として抽出しているが、本件発明1が「可変表示装置の表示態様に応じて特別入賞に対する期待感を高めることができるスロットマシンを提供する」(【0007】)という目的を解決ものであること、及び、本件発明1により奏される効果(後記(2)(2-2)アを参照。)を考慮して、構成1Iと構成1Jとを一体として扱い、相違点2として抽出することとした。

(2)判断
(2-1)相違点1について
スロットマシンの技術分野において、リールのスベリが最大4コマとすること、及び、小役フラグ成立時に最大4コマまでリールをすべらせ、事前決定された小役に関する内部当選図柄を優先的に引き込み図柄を揃えるように制御することは、本願出願前に周知の技術事項、あるいは、従来から慣用的に用いられた技術事項である(それぞれ、例えば、甲第2号証のソ、タを参照のこと。)。
したがって、甲1発明に、上記周知の技術事項あるいは慣用手段を適用して、上記相違点1に係る本件発明1の構成にすることは、当業者が容易になし得たものである。

(2-2)相違点2について
次のア?エの観点について検討する。
ア 本件発明1の奏する効果
まず、導出制御手段に関して、本件発明1が備える構成について検討する。
本件発明1において、事前決定手段は、「一般入賞のうち特定一般入賞の発生を許容する旨を単独で決定する第1の決定、特定一般入賞の発生を許容する旨及び特定一般入賞と異なる特別一般入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第2の決定、特定一般入賞の発生を許容する旨及び特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第3の決定、特定一般入賞の発生を許容する旨、特別一般入賞の発生を許容する旨及び特別入賞の発生を許容する旨を同時に決定する第4の決定を行うことが可能であり」(構成1G)、第1?4の決定を「同一ゲームにおいて第1の決定がなされる確率と第3の決定がなされる確率との合算確率に占める第3の決定がなされる確率の比率、同一ゲームにおいて第2の決定がなされる確率と第4の決定がなされる確率との合算確率に占める第4の決定がなされる確率の比率のうち一方が他方の比率よりも高くなる確率」(構成1H)となるように行うものであり、当該前提構成の下、導出制御手段は、「第1の決定または第3の決定がなされた第1の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に前記第1の入賞ラインに前記特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置及び前記第2の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い」(構成1I)、かつ、「第2の決定または第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行う」(構成1J)ものである。
このように、本件発明1は、構成1I及び構成1Jを備えることの前提構成として、事前決定手段に関する構成1G及び構成1Hを備える、すなわち、「第1の決定ないし第4の決定を行う構成において、第1の決定または第3の決定がなされた第1の条件が成立したとき、または第2の決定または第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに異なる制御を行うことを前提とするものである。
また、本件発明1の構成1I及び構成1Jは、第1の決定と第3の決定がなされたとき(第1の条件が成立したとき)と、第2の決定と第4の決定がなされたとき(第2の条件が成立したとき)とにおいて導出制御を行うために、導出操作手段が操作された場合、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に、「第1の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置」と「第2の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置」というの2つの入賞ラインに対応した表示位置を導出可能であること、すなわち、第1の入賞ラインと第2の入賞ラインとに表示結果を導出表示可能とすることが、構成1I及び構成1Jの前提条件であることを特定するものである。

次に、本件発明1が奏する効果について検討する。
本件発明1は、上記構成を採用することにより、「第1の決定または第3の決定がなされている場合には、第1の入賞ラインに特定一般入賞を発生させるための図柄の組み合わせが導出される可能性が高く、第2の決定または第4の決定がなされている場合には、第2の入賞ラインに特定一般入賞を発生させるための図柄の組み合わせが導出される可能性が高い。すなわち第1の決定または第3の決定がなされている場合に特定一般入賞が発生した場合と、第2の決定または第4の決定がなされている場合に特定一般入賞が発生した場合と、で特定一般入賞を発生させるための図柄の組み合わせが導出されやすい入賞ラインが異なる。そして、第1の決定がなされる確率と第3の決定がなされる確率との合算確率に占める第3の決定がなされる確率の比率、第2の決定がなされる確率と第4の決定がなされる確率との合算確率に占める第4の決定がなされる確率の比率のうち一方が他方の比率よりも高いため、特定一般入賞が発生した際に、特定一般入賞を発生させるための図柄の組み合わせが第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインのうちの一方の入賞ラインに導出された場合に他方の入賞ラインに導出された場合よりも特別入賞の発生が許容されていることに対する期待度が高くなる。さらに、第1の決定または第3の決定がなされている場合に特定一般入賞が発生した場合であっても、導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第2の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する表示位置が位置するものの、第1の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する表示位置が位置しない場合には、特定一般入賞を発生させるための図柄の組み合わせが第2の入賞ラインに導出される一方で、第2の決定または第4の決定がなされている場合に特定一般入賞が発生した場合であっても、導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第2の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する表示位置が位置するものの、第1の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する表示位置が位置しない場合には、特定一般入賞を発生させるための図柄の組み合わせが第2の入賞ラインに導出されるので、特定一般入賞を発生させるための図柄の組み合わせが第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインのうち特別入賞の発生が許容されていることに対する期待度の低い入賞ラインに導出された場合でも、特別入賞の発生が許容されていることに対する遊技者の期待感が損なわれてしまうことがない。」(【0008】)という作用ないし効果を奏するものである。
また、審判事件答弁書において主張する「特別入賞の比率の高い条件であっても、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインのうち特別入賞の比率が低い条件に対応する入賞ラインに導出されることがあり、特別入賞の比率の低い条件であっても、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ライン及び第2の入賞ラインのうち特別入賞の比率が高い条件に対応する入賞ラインに導出されることがあり、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ラインに導出されたか、第2の入賞ラインに導出されたか、によって特別入賞の比率の高い条件が成立しているか、特別入賞の比率の低い条件が成立しているか、を推測できる一方で、特定一般入賞の構成図柄がどちらの入賞ラインに導出された場合であっても、他方の条件が成立している可能性が残り、必ずしも特定一般入賞の構成図柄が導出された入賞ラインの違いにより示唆される内容が確定することなくその内容が曖昧となることで、特定一般入賞の構成図柄が第1の入賞ラインまたは第2の入賞ラインに導出されたときの興趣を高めることができる」(答弁書7頁1?14行)という効果、及び、「第1の入賞ラインまたは第2の入賞ラインのうち成立している条件に対応する一方の入賞ラインに対して特定一般入賞の構成図柄を引き込めない場合でも、他方の入賞ラインに対して特定一般入賞の構成図柄を引込可能であれば、他方の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が導出されるので、第1の条件が成立しているか、第2の条件が成立しているか、に対応して特定一般入賞の構成図柄を引き込む入賞ラインが異なるように制御する構成でも、特定一般入賞を取りこぼすことによる遊技者の損失を最低限に抑えることができる」という効果を奏するのである(審判事件答弁書7頁15?22行。前記第2 2 2-2(2)(2-2)を参照。)。

イ 本件特許発明1の構成1I及び構成1Jにおける「導出させる制御」の解釈について

・被請求人の主張
被請求人は、審判事件答弁書において「本件発明1の構成1Iでは「予め定められた引込範囲内に第1の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置及び第2の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、」「予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、」「予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い、」(アンダーラインは被請求人代理人が付記)と記載されているように、本件発明1には「優先的に導出させる」とか「導出させることができる」などの記載を用いておらず、「・・・導出させる制御を行い、」との記載を用いることにより、予め定められた引込範囲内に第1の表示位置のみ位置する場合には第1の表示位置以外の表示位置を排除するものであって、必ず第1の表示位置を導出させることを意味するものであり、同様に予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合には第1の表示位置以外の表示位置を排除するものであって、必ず第1の表示位置を導出させることを意味するものであり、予め定められた引込範囲内に第2の表示位置のみ位置する場合には第2の表示位置以外の表示位置を排除するものであって、必ず第2の表示位置を導出させることを意味するものである。」(前記第2 2 2-2(3)(3-2)イ(ア)を参照。)と主張する。

・請求人の主張
請求人は、上申書(請求人)において、本件特許明細書の【0319】の記載事項から、本件発明1の「構成1I(2I)における「第1の条件が成立したとき」は、「特別役と小役を同時に引き込める場合」と「特別役を引き込めない場合」の両方を含んでおり、「第1の条件が成立したとき」であったとしても、適切な動作条件、及び、技術構成が追加されない限り、「特定一般入賞」を「必ず導出させる」ことはできない。」(3頁2?22行。前記第2 1 1-4(1)を参照。)と主張し、また、本件特許明細書の【0322】の記載事項から、本件特許の構成1J(2J)において、「「第2の条件が成立したとき」であったとしても、適切な動作条件、及び、技術構成が追加されない限り、「特定一般入賞」を「必ず導出させる」ことはできない。」(4頁1?22行。前記第2 1 1-4(1)を参照。)と主張する。
そして、「被請求人の主張は、以下に示す条件の少なくとも1つを満たすことを前提として、【0331】には、「必ず導出させる」動作が記載されているというものである。
・特別役の構成図柄と小役の構成図柄が4コマを超えて配置されること
・同時に狙える停止操作位置が存在しない特別役と小役同士のみそれぞれ同時当選可能とされること
・同時に狙える停止操作位置が存在する特別役と小役同士は同時に当選しないこと
しかし、これらの条件をどのように用いれば(1つの条件のみで良いのか、全ての条件が必要なのか)、構成1I及び1J(構成2I及び2J)における「導出させる」を「必ず導出させる」の意味と解することができるのか、依然として解釈の根拠が不明である」
(5頁23行?6頁11行。前記第2 1 1-4(2)を参照。)と主張する。

・当審の判断
まず、本件特許の請求項1に係る記載について検討する。
本件特許の請求項1には、「事前決定手段」について特定するに際し、一方では、「・・・を行うことが可能であり」という表現を用い、他方では、「・・・決定を行い」という表現を用いている。この記載にみられるように、行うことも行わないこともできる場合に「行うことが可能であ」ると表現し、必ず行う場合は、「可能である」という表現を用いずに「行い」という表現を用いることが一般的である。
このことを基に、「第1の条件が成立したときに、・・・前記第1の表示位置を導出させる制御を行い」(構成1I)という発明特定事項、「第2の条件が成立したときに、・・・前記第2の表示位置を導出させる制御を行い」(構成1J)という発明特定事項は、「制御を行い」は、必ず制御を行うことと解される。

次に、本件特許の発明の詳細な説明の記載を検討する。
本件特許の発明の詳細な説明の【0319】には、「特別役と小役を同時に引き込める場合には、特別役のみを引き込み、特別役と同時に小役が入賞ライン上に揃わないようになっている。」ことが記載され、【0322】には、「特別役と小役を同時に引き込める場合には、特別役のみを引き込み、特別役と同時に小役が入賞ライン上に揃わないようになっており、複数種類の小役を同時に引き込める場合には、払出枚数の多い小役のみを引き込み、複数種類の小役が同時に入賞ライン上に揃わないようになっている。」ことが記載されている。
また、これらの記載を受け、【0323】には、「特別役と小役が同時当選した場合には、特別役の構成図柄が小役の構成図柄よりも優先して引き込まれることにより、当選した小役を取りこぼしてしまい、遊技者に不利益が生じてしまうという問題がある。」と、特別役と小役が同時当選した場合の問題点について指摘されている。
そして、当選した小役を取りこぼすという問題点を解決するために、【0324】には、「これに対して本実施例では、図3に示すように、全てのリールについて、「オレンジ」図柄がいずれかの入賞ライン上に停止する表示態様と「黒7」図柄がいずれかの入賞ライン上に停止する表示態様、「プラム」図柄がいずれかの入賞ライン上に停止する表示態様と「網7」図柄が左リールのいずれかの入賞ライン上に停止する表示態様、「スイカ」図柄がいずれかの入賞ライン上に停止する表示態様と「白7」図柄がいずれかの入賞ライン上に停止する表示態様がそれぞれ最大引込範囲である4コマを超えて配置されており、「オレンジ」図柄と「黒7」図柄を同時に狙える停止操作位置、「プラム」図柄と「網7」図柄を同時に狙える停止操作位置、「スイカ」図柄と「白7」図柄を同時に狙える停止操作位置が存在しない配列となっている。」というように図柄の配置に工夫をしたことについて記載され、さらに、【0326】には、「そして内部抽選において、BB(1)+オレンジ、BB(1)+オレンジ+1枚(1)、BB(2)+プラム、BB(2)+プラム+1枚(2)、BB(3)+スイカ、BB(3)+スイカ+1枚(3)、すなわち同時に狙える停止操作位置が存在しない特別役と小役同士のみそれぞれ同時当選可能とされており、同時に狙える停止操作位置が存在する特別役と小役同士は同時に当選しないようになっている。」というように、同時当選可能とされる特別役と小役についての制限を設けたことが記載され、【0327】には、「このため、同時に当選する可能性のある小役が入賞した場合でも、それによって特別役の当選が否定されてしまうことがなく、同時に当選する可能性のある小役が入賞した際に、特別役の当選に対する期待感を確実に高めることができる。さらに、同時に狙える停止操作位置が存在する特別役と小役同士は同時に当選しないので、特別役と小役が同時当選した場合でも、特別役の構成図柄が小役の構成図柄よりも優先して引き込まれることに起因して当選した小役を取りこぼすことはなく、特別役と小役が同時当選したことにより遊技者に不利益が生じてしまうことを防止できる。」ことが記載されている。
このように、本件特許の発明の詳細な説明には、特別役と小役が同時当選しても、同時に狙える停止操作位置が存在する特別役と小役同士は同時に当選していないので、当選した小役を取りこぼすことはないようにしたことが記載されている。
そして、これら【0323】、【0324】、【0326】の記載内容を受け、【0331】では、「そこで本実施例では、オレンジ、BB(1)+オレンジ、オレンジ+1枚(1)、BB(1)+オレンジ+1枚(1)が当選しており、「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインに引き込むことが可能な停止操作位置で停止操作がなされた場合に、入賞ラインに「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを揃える制御を行うが、オレンジ、BB(1)+オレンジが当選している場合には、「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインに引き込むことが可能な停止操作位置のうち、「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインL1、L2、L3にのみ揃えることが可能な停止操作位置及び入賞ラインL1?L5のいずれにも揃えることが可能な停止操作位置で停止操作がなされた場合には、「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインL1、L2、L3に揃える制御を行い、「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインL4、L5にのみ揃えることが可能であり、入賞ラインL1、L2、L3に揃えることができない停止操作位置で停止操作がなされたときのみ「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインL4、L5に揃える制御を行うのに対して、オレンジ+1枚(1)、BB(1)+オレンジ+1枚(1)が当選している場合には、「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインに引き込むことが可能な停止操作位置のうち、「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインL4、L5にのみ揃えることが可能な停止操作位置及び入賞ラインL1?L5のいずれにも揃えることが可能な停止操作位置で停止操作がなされた場合には、「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインL4、L5に揃える制御を行い、「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインL1、L2、L3にのみ揃えることが可能であり、入賞ラインL4、L5に揃えることができない停止操作位置で停止操作がなされたときのみ「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインL1、L2、L3に揃える制御を行うようになっている。」ことが記載されている。
この記載から、「オレンジ、BB(1)+オレンジが当選している場合」であって、かつ、「入賞ラインL1?L5のいずれにも揃えることが可能な停止操作位置で停止操作がなされた場合」には、「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインL1、L2、L3に揃える制御を行わないことはなく、必ず、「「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインL1、L2、L3に揃える制御を行」うことが記載され、また、「オレンジ+1枚(1)、BB(1)+オレンジ+1枚(1)が当選している場合」であって、かつ、「入賞ラインL1?L5のいずれにも揃えることが可能な停止操作位置で停止操作がなされた場合」には、「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインL4、L5に揃える制御を行わないことはなく、必ず、「「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを入賞ラインL4、L5に揃える制御を行」うことが記載され、他の入賞ラインに「オレンジ-オレンジ-オレンジ」の組み合わせを揃えるという選択肢がないことが示されている。

したがって、本件特許の請求項1に係る記載をみても、本件特許の発明の詳細な説明の記載を参酌してみても、本件特許発明1の「第1の条件が成立したときに、・・・該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い」(1I)という発明特定事項、「第2の条件が成立したときに、・・・該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行い」(1J)という発明特定事項における「導出させる制御」は、「必ず導出させる制御」のことであることは明らかである。

そして、請求人は、上申書(請求人)において、本件特許明細書の【0319】、【0322】の記載事項を基に、本件特許発明1の構成1I及び構成1Jにおける「導出させる制御」は、「必ず導出させる」ことはできない旨、主張するが、本件特許発明1の構成1I及び構成1Jに対応する本件特許の明細書の記載の根拠は、上記において検討したように、発明の詳細な説明の【0319】、【0322】の記載にあるのではなく、発明の詳細な説明の【0323】、【0324】、【0326】、【0331】の記載にあるものであり、後者の記載によると、「導出させる制御」は「必ず導出させる制御」のことであるといえる。

よって、請求人の上申書(請求人)における主張を採用することはできない。

ウ 甲第2号証に示された技術事項
次に、甲第2号証に示された技術事項について検討する。
甲第2号証の記載事項タ(「1-3-1-2 コントロール制御」について)には、小役フラグ成立時に最大4コマまでリールをすべらせ、事前決定された小役に関する内部当選図柄を優先的に引き込み図柄を揃えるようにコントロール制御することが記載されている。
この記載事項から、請求人は、審判請求書において
「甲2には、
(1)引込範囲内に、斜め方向の有効ライン上の表示位置しか含まれない場合、当該位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、
(2)引込範囲内に、横方向の有効ライン上の表示位置しか含まれない場合、当該位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、
(3)引込範囲内に、斜め方向の有効ライン上の表示位置と横方向の有効ライン上の表示位置の両方が含まれる場合、いずれかの表示位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、
となる周知の導出制御機能が記載されている。」(41頁下12?4行。前記第2 1 1-2(3)(3-3)イを参照。)と主張する。

そこで、甲第2号証の記載事項タについてみると、記載事項タには、小役フラグが成立している場合は、操作箇所から最大4コマまでリールをすべらせることにより、内部当選図柄を優先的に引き込み図柄を揃えようとする制御を行うという、スロットマシンの技術分野における標準的な技術について記載されているいえる。

しかしながら、甲第2号証の記載事項タには、
小役を構成する内部当選絵柄にはどのような種類の絵柄があるのかについて、
小役以外の内部当選絵柄にはどのような種類があるのか具体的に示すものではなく、また、決定された小役にどの入賞ラインが対応しているのか(対応する入賞ラインは1ラインであるのか、2ラインであるのか、あるいは全ラインであるのか等)について、何ら具体的に特定するものではなく、
同様に、
決定された小役の他に重複した内部当選絵柄が決定されるのかについて、
入賞ラインが複数ある場合に、対応する入賞ラインに応じてどのように引き込む制御を行うのかについて、
「内部当選絵柄がいずれかの表示位置のうち特定の表示位置に優先的に停止されることについて」(審判事件答弁書10頁3?4行。前記第2 2(3)(3-2)イ(ア)を参照。。)、
重複する内部当選が有る場合に、内部当選の種類毎にどのような優先度を設けてあることを前提条件として引き込み制御を行うのかについて、
コントロール制御には、一般的に引き込み制御以外にも蹴飛ばし制御があるが、蹴飛ばし制御がどのように行われるのか等について、
何ら具体的に説明するものではない。
また、甲第2号証の記載事項タには、「斜め方向の有効ライン上の表示位置しか含まれない場合」、「横方向の有効ライン上の表示位置しか含まれない場合」、「斜め方向の有効ライン上の表示位置と横方向の有効ライン上の表示位置の両方が含まれる場合」といった条件分けを行ったうえで、それぞれの場合にどのような引き込み制御が行われるのかについて説明するものではない。

・請求人の主張
請求人は、審判請求書において、
「・周知の導出制御機能
「「相違点1の判断」の欄で述べたように、甲2の第11?12頁の「1-2-1-4 リールに関するルール」欄(記載事項そ)と、同第34?35頁の「1-3-1-2 コントロール制御」欄(記載事項つ)には、ストップボタンが操作されると、その操作箇所と当該ゲームの成立フラグとの関係に基づいて、操作箇所から最大4コマの範囲で内部当選図柄を優先的に引き込むように停止制御する機能(導出制御機能)の記載がある。
この記載は、有効ライン上の特定位置に対して内部当選図柄が4コマ以上離れている場合には、当該内部当選図柄を引き込むことができないことも意味している。
以下では、甲2に記載されている周知の導出制御機能の内容を、図1?図4を用いて具体的に説明する。なお、図1?図4は、スイカが当選した状態において、有効ライン上に「スイカ-スイカ-スイカ」を導出させる場合について表している。なお、甲2の導出制御機能では、内部当選絵柄の種類や組み合わせは問われていない。

以下に示す図1は、3つのリールの円周に沿って配列された絵柄のうち3つの絵柄が表示窓内に表示される場合に設けられる5本の有効ラインを示す。
[図1]
・・・
通常、リールの停止順序は任意であるものの、後述する甲第3号証との関係から、ここでは、左リール→中リール→右リールの順に停止操作が行われる場合について説明する。また、説明の前提として、図2に示すように、左リールの下段位置に既に「スイカ」が停止されているものとする。この状態を、以下の各図では、網掛け表示で示す。」(前記第2 1 1-2(3)(3-3)イを参照。)という説明を行って、周知の導出機能を認定している。

・当審の判断
上記請求人の説明において、「スイカが当選した状態において、有効ライン上に「スイカ-スイカ-スイカ」を導出させる場合」とあるが、甲第2号証の記載事項タには、小役にどのような種類があるのか特定するものではないため、スイカが小役に含まれるか否か不明であるとともに、小役の種類に対応する入賞ラインがどのラインであるのかについても特定するものではないため、有効ラインがどのラインであるのかについても不明である。
そして、「甲2の導出制御機能では、内部当選絵柄の種類や組み合わせは問われていない。」と認定するが、甲2の記載事項タには、小役にどのような種類があるのか不明であることに加えて、小役以外にどのような役があるのか不明であり、小役が小役以外の役と重複当選するのか、その場合に、どの種類の小役とどの種類の小役以外の役が重複当選するのか、重複当選する小役と小役以外の役との停止制御において、小役と小役以外の役のどちらの停止を優先して行うのか、といったことについて一切説明するものではないため、「甲2の導出制御機能では、内部当選絵柄の種類や組み合わせは問われていない。」とする根拠が不明である。
また、この説明において、「通常、リールの停止順序は任意であるものの、後述する甲第3号証との関係から、ここでは、左リール→中リール→右リールの順に停止操作が行われる場合について説明する。」とあるが、甲第2号証の記載事項タには、リールが何個あるか、リールの停止順序をどのように規定するのか、リールの停止順序を考慮してリールの停止制御を行うのか、といったことについて一切説明するものではないため、甲第2号証のどこから「左リール→中リール→右リールの順に停止操作が行われる」とすることができるのか、その根拠が不明である。この説明中に記載されているように、請求人は、単に「後述する甲第3号証との関係から、」「左リール→中リール→右リールの順に停止操作が行われる」としたものであり、甲第3号証との相性を考慮して、停止順序についての技術事項を創作したものであるといえる。
さらに、「説明の前提として、図2に示すように、左リールの下段位置に既に「スイカ」が停止されているものとする。」といった仮定を加えて説明を行うものである。しかしながら、小役に「スイカ」が含まれることが不明であることは上記したが、左リールの下段位置に小役が停止した際の他のリールの停止制御がどのように行われるかについても、甲第2号証の記載事項タには記載されていない。
そして、甲第2号証の記載事項タに示されたコントロール制御において、小役に関して「H小役」があることしか記載されていないため、そもそも、「H小役」が本件発明1における「特定一般入賞」、「特別一般入賞」のいずれに対応するのか、あるいは、それ以外のものであるのか特定することができないばかりか、「特定一般入賞」と「特別一般入賞」とを重複して備えることは記載も示唆もされていない。

これらのことからみて、甲第2号証の記載事項タに示されたコントロール制御は、本件発明1が備える相違点2に係る構成の前提となる構成1G及び構成1Hを備えること、すなわち、「第1の決定ないし第4の決定を行う構成において、第1の決定または第3の決定がなされた第1の条件が成立したとき、または第2の決定または第4の決定がなされた第2の条件が成立したときに異なる制御を行うことを前提とする」(前記第2 2 2-2(3)(3-2)イ(ウ)(ウ-2)を参照。)ことが記載も示唆もされていないばかりか、本件発明1が備える相違点2に係る構成の前提条件となる、導出操作手段が操作された場合、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に、「第1の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置」と「第2の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置」というの2つの表示位置を導出可能であることについても何ら記載も示唆もされていない。
さらに、上記相違点2に係る本件発明1の「第1の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、」「該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行」う構成(構成1I)、
「第1の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、」「該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行」う構成(構成1I)、
「第2の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、」「該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行」う構成(構成1J)、
及び、「第2の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、」「該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行」う構成(構成1J)が記載されていないことは明らかである。

したがって、請求人の「甲2には、
(1)引込範囲内に、斜め方向の有効ライン上の表示位置しか含まれない場合、当該位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、
(2)引込範囲内に、横方向の有効ライン上の表示位置しか含まれない場合、当該位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、
(3)引込範囲内に、斜め方向の有効ライン上の表示位置と横方向の有効ライン上の表示位置の両方が含まれる場合、いずれかの表示位置に内部当選絵柄が優先的に停止されること、
となる周知の導出制御機能が記載されている。」という主張は根拠のないものである。

以上を踏まえると、甲1発明に甲第2号証に示された技術事項セ?タ(前記第4 2を参照。)を適用して、上記相違点2に係る本願発明1の構成に到達することは、当業者が容易に想到し得たものではない。

エ 甲3発明
上記ウにおいて検討したように、本件発明1は、構成1I及び構成1Jを備えることの前提構成として、事前決定手段に関する構成1G及び構成1Hを特定するものである。
また、本件発明1は、第1の入賞ラインと第2の入賞ラインとに表示結果を導出表示可能とすることが、構成1I及び構成1Jの前提条件であることを特定するものである。

一方、甲3発明は、「斜め右上方向のラインに整列して弱スイカが入賞」可能なもの、「下段横ラインに整列して強スイカが入賞」可能なものである。
一方、甲3発明は、本件発明1の「特定一般入賞」に相当する役として、「弱スイカ」と「強スイカ」とを設け、「弱スイカ」は単独当選し、ボーナス(本件発明1の「特別入賞」に相当する。)と同時成立可能であり、「強スイカ」は1枚役(本件発明1の「特別一般入賞」に相当する。)と同時当選し、ボーナスと同時成立可能である点で本件発明1と共通するものである。

しかしながら、甲3発明において、単独当選する「弱スイカ」が停止表示される入賞ラインは、「斜め右上方向のライン」が示されているのみであるから、本件発明1の前提条件(上記ウにおける記載事項を参照のこと。)である、第1の決定がなされた第1の条件が成立するときに、第1の入賞ラインと第2の入賞ラインとに表示結果を導出表示可能とする条件を満たすものではない。
同様に、甲3発明において、1枚役と同時当選する「強スイカ」が停止表示される入賞ラインは、「下段横ライン」が示されているのみであるから、本件発明1の前提条件である、第2の決定がなされた第2の条件が成立するときに、第1の入賞ラインと第2の入賞ラインとに表示結果を導出表示可能とする条件を満たすものではない。
そして、甲3発明が、本件発明1の前提条件を満たすものでないことから、上記相違点2に係る本件発明1の「第1の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、」「該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行」う構成(構成1I)、
「第1の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、」「該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行」う構成(構成1I)、
「第2の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、」「該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行」う構成(構成1J)、
及び、「第2の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、」「該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行」う構成(構成1J)を備えるものでないことは明らかである。
また、甲第3号証には、請求人が審判事件答弁書で主張するように「「弱スイカ」または「強スイカ」の当選時に「スイカ」を中段(斜め上がりライン)及び下段(下段横ライン)のうち中段(斜め上がりライン)にのみ停止可能なタイミングで操作された場合の制御、「弱スイカ」または「強スイカ」の当選時に「スイカ」を中段(斜め上がりライン)及び下段(下段横ライン)のうち下段(下段横ライン)にのみ停止可能なタイミングで操作された場合の制御について」(前記第2 2 2-2(3)(3-2)イ(ウ)(ウ-2))何ら記載されていないことは明らかである。
さらに、甲第3号証には、左リールの下段に「スイカ」が停止している場合について説明するものであり、左リールの中段、あるいは、上段に「スイカ」が停止している場合についての「弱スイカ」、「強スイカ」の停止位置を説明するものではないため、甲第3号証が、左リールの中段、あるいは、上段に「スイカ」が停止している場合に、上記相違点2に係る本件発明1の構成を備えるか否かについては不明である。

したがって、請求人の審判請求書における「甲3には、本件発明1の「第1の決定」に相当する「弱スイカ」と、本件発明1の「第2の決定」に相当する「強スイカ(=1枚役+スイカ)」と、本件発明1の「第3の決定」に相当する「弱スイカ」と「ボーナス」の同時成立と、本件発明1の「第4の決定」に相当する「強スイカ(=1枚役+スイカ)」と「ボーナス」の同時成立が記載されている。」という主張、及び、それに続く主張(42頁20行?44頁11行。前記1 1-2(3)(3-3)イを参照。)を採用することはできない。

以上を踏まえると、甲1発明に甲3発明を適用して、上記相違点2に係る本願発明1の構成に到達することは、当業者が容易に想到し得たものではない。

オ 小括
上記ウにおいては、甲1発明に甲第2号証に示された技術事項を適用することについて検討し、上記エにおいては、甲1発明に甲3発明を適用することについて検討したが、甲第2号証に示された技術事項、及び、甲3発明を併せてみても、上記相違点2に係る本件発明の構成を導き出すことはできない。

よって、本件発明1は、甲1発明に甲第2号証に示された技術事項、及び、甲3発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

2 本件発明2について(無効理由(2)について)
本件発明2は、本件発明1における事前決定手段による決定に関する構成(1H)を「同一ゲームにおいて前記第1の決定がなされる確率と前記第4の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第4の決定がなされる確率の比率、同一ゲームにおいて前記第2の決定がなされる確率と前記第3の決定がなされる確率との合算確率に占める前記第3の決定がなされる確率の比率のうち一方が他方の比率よりも高くなる確率で前記第1?4の決定を行い」(構成2H)と変更するとともに、導出制御手段に関する構成1I及び構成1Jを、「前記導出制御手段は、前記第1の決定または前記第4の決定がなされた第1の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の入賞ラインに前記特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置及び前記第2の入賞ラインに前記特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置のうち前記第1の表示位置のみ位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第2の表示位置のみ位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行い」(構成2I)及び「前記第2の決定または前記第3の決定がなされた第2の条件が成立したときに、前記導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第1の表示位置のみ位置する場合に前記第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置の双方が位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において前記予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び前記第2の表示位置のうち前記第2の表示位置のみ位置する場合に前記第2の表示位置を導出させる制御を行う」(構成2J)と変更するものである。

そして、本件発明2の構成2Hは、請求人が審判請求書において、
「甲1には、以下の記載がある(記載事項さ)。
・第1の決定=スイカ単独(1/163.84)
・第2の決定=スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」(1/744.72)
・第3の決定=スイカ+「赤7-赤7-赤7」(1/5957.81)
・第4の決定=スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」+「赤7-赤7-赤7」(1/5957.81)
この場合、「スイカが単独で当選する確率」と「スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」+「赤7-赤7-赤7」が同時当選する確率」との合算確率に占める「スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」+「赤7-赤7-赤7」が同時当選する確率」の比率は、次式で計算することができる。
[3] 第1の決定と第4の決定の合成確率に占める第4の決定の確率の比率
100×1/5957.81/(1/163.84+1/5957.81)≒2.68%(値3)
一方、「スイカ+「赤7-黒チェリー-黒チェリー」が同時当選する確率」と「スイカ+「赤7-赤7-赤7」が同時当選する確率」との合算確率に占める「スイカ+「赤7-赤7-赤7」が同時当選する確率」の比率は、次式で計算することができる。
[4] 第2の決定と第3の決定の合成確率に占める第3の決定の確率の比率
100×1/5957.81/(1/744.72+1/5957.81) ≒11.11%(値4)
以上より、甲1には、確率が、値3<値4の関係を満たすように、第1の決定?第4の決定が行われることが記載されている。
よって、甲1には、構成2Hが実質的に記載されている。」(前記第2 1 1-2(4)(4-2)ア)と主張するように、甲1に実質的に記載されているものである。ここで、甲1発明に当該技術事項を含めたものを甲1’発明として認定し直す。
そうすると、本件発明2と甲1’発明とは、本件発明1と同様に、甲1発明と、相違点1及び3の点で異なり、その余の点で一致する。
[相違点1]
本件発明2が、導出操作手段が操作されたときに、該導出操作手段に対応する可変表示領域の表示結果として予め定められた引込範囲内に位置する表示位置からいずれかの表示位置を事前決定手段の決定結果に基づいて導出させる制御を行う導出制御手段を備えるのに対して、
甲1’発明は、本件発明2の導出制御手段を備えるか否か明らかでない点。

[相違点3]
導出制御手段に関して、
本件発明2が、第1の決定または第4の決定がなされた第1の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に前記第1の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第1の表示位置及び第2の入賞ラインに特定一般入賞の構成図柄が停止する第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に前記第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い、
第2の決定または前記第3の決定がなされた第2の条件が成立したときに、導出操作手段が操作され、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第1の表示位置のみ位置する場合に第1の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置の双方が位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行い、該導出操作手段に対応する可変表示領域において予め定められた引込範囲内に第1の表示位置及び第2の表示位置のうち第2の表示位置のみ位置する場合に第2の表示位置を導出させる制御を行うのに対して、
甲1’発明は、本件発明2の上記構成を備えない点。

相違点1に関しては、上記1(2)(2-1)において検討したと同様にして、甲1’発明に、上記周知の技術事項あるいは慣用手段を適用することにより、当業者が容易になし得たものである。

そこで、相違点3に関して検討する。
相違点3に係る構成2I及び構成2Jにより規定される技術内容は、制御の前提となる決定の組み合わせ以外、本件発明1の構成1I及び1Jと同じである。すなわち、構成2I及び2Jも、引込範囲内に、第1の入賞ラインに特定図柄を停止可能な第1の表示位置のみ位置する場合には当該第1の表示位置のみを導出させる制御を行い、引込範囲内に、第2の入賞ラインに特定図柄を停止可能な第2の表示位置のみ位置する場合には当該第2の表示位置のみを導出させる制御を行い、引込範囲内に第1の表示位置と第2の表示位置が含まれる場合、第1の条件の成立時には第1の表示位置を導出させ、第2の条件の成立時には第2の表示位置を導出させるものである。

そして、上記1(2)(2-2)ウ?オにおいて検討したと同様にして、本件発明2は、甲1発明に甲第2号証に示された技術事項、及び、甲3発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明1及び2に係る特許については、請求人の主張する理由及び提示した証拠方法によっては無効とすることはできない。

審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により,全額を請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-21 
結審通知日 2015-12-25 
審決日 2016-01-06 
出願番号 特願2007-288666(P2007-288666)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 祐介  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 長崎 洋一
平城 俊雅
登録日 2010-12-10 
登録番号 特許第4641541号(P4641541)
発明の名称 スロットマシン  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 平木 祐輔  
代理人 頭師 教文  
代理人 石川 好文  
代理人 関谷 三男  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 重信 和男  
代理人 溝渕 良一  
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