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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1311440
審判番号 不服2014-22395  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-04 
確定日 2016-02-24 
事件の表示 特願2011-514504「三次元ビデオ映像処理方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月30日国際公開、WO2009/157714、平成23年 9月22日国内公表、特表2011-525746〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2009年6月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年6月24日、米国、2008年9月23日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月23日付けの拒絶理由通知に対し、平成25年11月27日付けで手続補正書が提出され、平成26年1月9日付けの最後の拒絶理由通知に対し、平成26年5月21日付けで手続補正書が提出されたが、平成26年6月25日付けで、平成26年5月21日付けの手続補正が却下されるとともに、拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として、平成26年11月4日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成26年11月4日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年11月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容

上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成25年11月27日付け手続補正書(平成26年5月21日付けの手続補正はすでに却下されている)の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「ビデオ映像処理装置が、二次元ビデオデータの現在フレームをデコーディングする段階と、
前記ビデオ映像処理装置が、3D視聴用メガネを通してビューアーにイメージの明度がオリジナルイメージの明度よりさらに明るくなるように、前記デコーディングされた現在フレームの明度を増加させるために前記現在フレームの明度を変換する段階と、
前記明度が変換された現在フレームを左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換する段階と、
前記変換された三次元ビデオデータをディスプレイする段階と、を含むことを特徴とする前記ビデオ処理装置で行う映像処理方法。」

という発明を、平成26年11月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「ビデオ映像処理装置が、二次元ビデオデータの現在フレームをデコーディングする段階と、
前記ビデオ映像処理装置が、3D視聴用メガネを通してビューアーにイメージの明度がオリジナルイメージの明度よりさらに明るくなるように、前記デコーディングされた現在フレームの明度を増加させるために前記現在フレーム全体の明度を変換する段階と、
前記明度が変換された現在フレームを左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換する段階と、
前記変換された三次元ビデオデータをディスプレイする段階と、を含むことを特徴とする前記ビデオ処理装置で行う映像処理方法。」

という発明に補正することを含むものである。
なお、下線は補正箇所であり、当審で付したものである。

2.補正の適法性について

本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、平成25年11月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「前記現在フレームの明度を変換する」を、「前記現在フレーム全体の明度を変換する」ことに限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件について

上記2.のように、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)補正後発明

上記の本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正後発明」という。)は、平成26年11月4日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。
なお、A.?D.については、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成A」、・・・、「構成D」という。)

「A.ビデオ映像処理装置が、二次元ビデオデータの現在フレームをデコーディングする段階と、
B-1.前記ビデオ映像処理装置が、3D視聴用メガネを通してビューアーにイメージの明度がオリジナルイメージの明度よりさらに明るくなるように、前記デコーディングされた現在フレームの明度を増加させるために前記現在フレーム全体の明度を変換する段階と、
B-2.前記明度が変換された現在フレームを左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換する段階と、
C.前記変換された三次元ビデオデータをディスプレイする段階と、
D.を含むことを特徴とする前記ビデオ映像処理装置で行う映像処理方法。」

なお、請求項1には、「を含むことを特徴とする前記ビデオ処理装置で行う映像処理方法」と記載されているが、該記載の前に「ビデオ処理装置」という記載は無く、また、請求項1の他の記載「ビデオ映像処理装置が、・・・前記ビデオ映像処理装置が、・・・」からみて、「前記ビデオ処理装置」は、「前記ビデオ映像処理装置」の誤記と認め、上記のように認定した。

(2)刊行物1発明

原審の拒絶理由に引用された、特開平10-224822号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「映像表示方法および表示装置」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0008】この発明の一つの目的は、2次元の映像信号ソースを使用し、静止部分においても立体感を増強することが可能な映像表示方法および表示装置を提供することにある。」

イ.「【0014】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、この発明の第1の実施例を示す。第1の実施例は、二つのプロジェクタを使用した投射形ディスプレイに対してこの発明を適用した例である。
【0015】アンテナ11およびチューナ12により所望のチャンネルのテレビジョン信号が受信される。テレビジョン放送信号は、2次元映像信号ソースの一例であって、アナログ衛星放送、ディジタル放送、ディスク、テープ等の媒体を使用した映像信号再生装置から2次元映像信号を受けるようにしても良い。」

ウ.「【0036】次に、この発明の第2の実施例について説明する。上述した第1の実施例は、2個のプロジェクタを使用しているのに対して、第2の実施例では、入力映像信号に対してフィールド倍速化の処理を施す。一例として、フィールド倍速した映像信号のペアとなる2個のフィールドの第1フィールドを左眼用の映像信号とし、フィールド倍速した第2フィールドを右眼用映像信号とする。
【0037】図5は、この発明の第2の実施例の構成を示す。アンテナ11、チューナ12、VIF回路13、Y/C分離回路14により受信されたテレビジョン信号に対応する輝度信号Yおよび色信号Cが得られる。輝度信号Yがフィールド倍速化回路51に供給され、色信号Cが色復調回路16に供給される。色復調回路16からの二つの色差信号がフィールド倍速化回路51に供給される。フィールド倍速化回路51は、入力映像信号からフィールド周波数が2倍とされた映像信号を生成する。
【0038】図6は、フィールド倍速化回路51による処理を示す。図6では、簡単のため色差信号については省略されている。フィールド周期Tv(NTSC方式であれば、1/60秒、CCIR方式であれば、1/50秒)の入力輝度信号Y(図6A)が供給されると、フィールド周期が1/2・Tvの出力輝度信号(図6B)が形成される。すなわち、入力輝度信号のフィールドAから2倍のフィールド周波数のフィールドA1およびA2のペアが形成され、そのフィールドBから2倍のフィールド周波数のフィールドB1およびB2のペアが形成される。図6Cは、倍速フィールド毎にレベルが反転するパルス信号2Vである。このような倍速化の処理は、映像信号をディジタル化し、ディジタルメモリにより時間軸圧縮する構成により行うことができる。
【0039】第2の実施例では、倍速フィールドと同期したパルス信号2Vがハイレベルである第1フィールド(A1、B1、・・・)を左眼用映像信号として用い、それがローレベルである第2フィールド(A2、B2、・・・)を右眼用映像信号として用いる。フィールド倍速化回路51からフィールド倍速輝度信号2Yおよびパルス信号2Vが信号処理部115に供給される。信号処理部115は、第1の実施例中の信号処理部15L、15Rと同様に、高輝度部を検出し、検出された高輝度部の輝度をさらに高くする構成とされている。
【0040】信号処理部115からの処理後の輝度信号2Y´および色差信号がマトリクス回路17に供給される。マトリクス回路回路17によって、フィールド倍速の三原色信号2R、2G、2Bが形成される。三原色信号がプリアンプおよびドライブ回路18を介してCRT200に供給される。CRT200は、フィールド倍速のカラー映像信号の表示が可能な構成とされる。すなわち、CRT200の垂直走査周波数および水平走査周波数は、倍速でない映像信号を表示する場合のこれらの周波数の2倍とされる。
【0041】CRT200により表示される映像は、信号処理部115によって、コントラストが強調されたものであり、従って、眼鏡を装着しないで観ても立体感が生じる。さらに、左右にシャッタ224L、224Rが設けられた眼鏡223を装着して見ることにより、光沢感も増強される。シャッタ224L、224Rとしては、電気的にON/OFFが可能なシャッタ例えば液晶シャッタを使用することができる。シャッタ224L、224Rは、パルス信号2Vと同期したパルス信号によってON/OFF動作をするように制御される。一例として、受信機側から赤外線伝送によってパルス信号2Vを受け取り、パルス信号2Vがハイレベルの期間で、シャッタ224LをONとすると共にシャッタ224RをOFFとし、パルス信号2Vがローレベルの期間では、ON/OFFの状態を反転させる。それによって、CRT200により表示される左眼用映像および右眼用映像をそれぞれ左眼および右眼が見るようにできる。左右映像を分離して見る時では、立体感に加えて光沢感を増強することができる。
【0042】図7は、信号処理部115の一例を示す。上述した一実施例中の信号処理部15L(図2参照)の構成と異なる点は、抵抗R4とトランジスタQ2のエミッタとの間にスイッチング回路35を挿入したことである。このスイッチング回路35は、倍速フィールドと同期したパルス信号2VによりON/OFFされる。すなわち、左眼用映像の期間と対応したパルス信号2Vがハイレベルの期間では、スイッチング回路35がONし、一方、右眼用映像の期間と対応したパルス信号2Vがローレベルの期間では、スイッチング回路35がOFFする。
【0043】このように、パルス信号2Vにより制御されるスイッチング回路35を備える信号処理部115は、上述した信号処理部15Lの説明から理解されるように、以下のように輝度信号を処理する。まず、左眼用(第1フィールド)の輝度信号および右眼用(第2フィールド)の輝度信号の輝度の高い部分(80IRE以上で、90IRE未満)の輝度をより高くする。さらに、90IRE以上の高い輝度の部分では、左眼用の輝度信号に関してのみ、より輝度を高くする。かかる信号処理部115を設けることによって、立体感および光沢感を増強することができる。
【0044】フィールド倍速化の処理を行う第2の実施例では、一方のフィールドの映像のみの輝度がより高くされるので、ビーム電流の平均値に応じてビーム電流を制限するABLの機能が第1の実施例と比して発揮される程度が少なく、陰の部分をより黒くする効果が弱まる。しかしながら、その反面、輝度の上昇を実現できるため、光沢部における輝度は十分に上がる。その結果、一方のフィールド(左眼用映像)の光っている領域は、CRTの蛍光面においてビームが飽和し、拡大する。その方向は、走査方向に拡大するため、左眼用映像信号の光沢部の輝度を高くしたとき、光沢部は走査方向、画面上では右方向にその中心が移動する。この左眼用映像を、右眼(飽和しない元の位置にある映像)と融像するには、この光沢部分が周囲より飛び出して見えることになる。これにより、左眼用映像信号の輝度を光沢部でより高くした場合には、その凹凸感が一層強まる。また、左眼用映像と右眼用映像とをシャッタを有する眼鏡により分離することにより、光沢感(光沢部がキラキラする感じ)を増強することができる。」

このような事項を踏まえ、上記ア.?ウ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

(a)上記ウ.の段落【0036】?【0044】に記載された第2の実施例に基づいて、刊行物1に記載された発明を認定する。
ここで、上記ウ.の段落【0036】の「上述した第1の実施例は、2個のプロジェクタを使用しているのに対して、第2の実施例では、入力映像信号に対してフィールド倍速化の処理を施す。」との記載によれば、第2の実施例は、立体表示をするときに、第1の実施例の「2個のプロジェクタを使用している」ことを「入力映像信号に対してフィールド倍速化の処理を施す」ことに異ならせたものであり、第2の実施例は、第1の実施例をその基礎とするものである。

(b)上記ウ.の段落【0037】には、アンテナ11、チューナ12、VIF回路13、Y/C分離回路14により、受信されたテレビジョン信号に対応する輝度信号Yおよび色信号Cが得られる映像表示装置が、第2の実施例として記載されている。
ここで、上記イ.の段落【0015】には、第1の実施例の説明として、「テレビジョン放送信号は、2次元映像信号ソースの一例であって、アナログ衛星放送、ディジタル放送、ディスク、テープ等の媒体を使用した映像信号再生装置から2次元映像信号を受けるようにしても良い。」と記載されており、上記(a)に記載したように、第2の実施例は、第1の実施例をその基礎とするものであるから、第2の実施例である段落【0037】に記載された映像表示装置についても、ディスクを使用した映像信号再生装置から2次元映像信号を受信し、VIF回路13、Y/C分離回路14により受信された2次元映像信号を輝度信号Yおよび色信号Cにする構成を含むものといえる。
そして、映像表示装置は、ディジタル放送のようなディジタル映像信号を受信することも含むことから、ディスクは、ディジタル映像信号が書き込まれたディスクを含むものといえる。
したがって、刊行物1の映像表示装置は、ディジタル映像信号が書き込まれたディスクを使用した映像信号再生装置から2次元映像信号を受信し、受信された2次元映像信号を輝度信号Yおよび色信号Cにする段階を含むものである。

(c)上記ウ.の段落【0036】?【0039】の記載から、刊行物1の映像表示装置は、輝度信号Yと、色信号Cが色復調回路16に供給されることにより得られた二つの色差信号が、フィールド倍速化回路51に供給され、2倍のフィールド周波数のフィールドのペアが形成され、第1フィールドを左目用映像信号、第2フィールドを右目用映像信号とする段階を含むものである。

(d)上記ウ.の段落【0039】、【0042】?【0044】の記載から、刊行物1の映像表示装置は、立体感および光沢感を増強するために、フィールド倍速化回路51から出力された輝度信号を、信号処理部115で、80IRE以上の高輝度部の輝度をさらに高くし、90IRE以上の高輝度部の輝度を左眼用の輝度信号のみ、より高くする段階を含むものである。

(e)上記ウ.の段落【0040】?【0041】の記載から、刊行物1の映像表示装置は、左右に液晶シャッタが設けられた眼鏡を装着して見るために、信号処理部115からの処理後の輝度信号及び色差信号から、マトリクス回路117によって三原色信号を形成してCRT200に供給する段階を含むものである。

そして、刊行物1の映像表示装置は、上記(b)?(e)のような段階の映像処理を行っているから、刊行物1の第2の実施例には、以下のような、映像処理装置で行う映像処理方法の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されているものといえる。

なお、a.?d.については、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成a」、・・・、「構成d」という。)

[刊行物1発明]

「a.映像処理装置が、ディジタル映像信号が書き込まれたディスクを使用した映像信号再生装置から2次元映像信号を受信し、受信された2次元映像信号を輝度信号Yおよび色信号Cにする段階と、
b-1.輝度信号Yと、色信号Cが色復調回路16に供給されることにより得られた二つの色差信号が、フィールド倍速化回路51に供給され、2倍のフィールド周波数のフィールドのペアが形成され、第1フィールドを左目用映像信号、第2フィールドを右目用映像信号とする段階と、
b-2.前記映像処理装置が、立体感および光沢感を増強するために、フィールド倍速化回路51から出力された輝度信号を、信号処理部115で、80IRE以上の高輝度部の輝度をさらに高くし、左目用の輝度信号のみ、90IRE以上の高輝度部の輝度をより高くする段階と、
c.左右に液晶シャッタが設けられた眼鏡を装着して見るために、信号処理部115からの処理後の輝度信号及び色差信号から、マトリクス回路117によって三原色信号を形成してCRT200に供給する段階と、
d.を含むことを特徴とする前記映像処理装置で行う映像処理方法。」

(3)補正後発明と刊行物1発明との対比と、一致点・相違点の認定

ア.対比

(ア-1)構成Aと構成aの対比

刊行物1発明の「映像処理装置」は、「ディジタル映像信号が書き込まれたディスクを使用した映像信号再生装置から」の2次元映像信号を処理する装置であるから、ビデオ映像を処理する装置といえ、補正後発明の「ビデオ映像処理装置」に相当する。
刊行物1発明の「2次元映像信号」は、「二次元ビデオデータ」に相当する。
刊行物1発明は、「受信された2次元映像信号を輝度信号Yおよび色信号Cにする」ものであり、2次元映像信号は、ディジタル映像信号であるから、2次元映像信号をデコーディングするものといえ、2次元映像信号は、フレームから成るものであるから、刊行物1発明の「受信された2次元映像信号を輝度信号Yおよび色信号Cにする」ことは、補正後発明の「二次元ビデオデータの現在フレームをデコーディングする」ことに相当する。
したがって、刊行物1発明の構成aは、補正後発明の構成Aに相当する。

(ア-2)構成B-1、B-2と構成b-1、b-2の対比

刊行物1発明の構成b-1の、「輝度信号Y」と「色信号Cが色復調回路16に供給されることにより得られた二つの色差信号」は、現在のフレームに含まれるものであり、「フィールド倍速化回路」にて、「左目用映像信号」と「右目用映像信号」に変換されるものといえる。
そして、刊行物1の構成b-2は、構成b-1で形成された「左目用映像信号」と「右目用映像信号」の各輝度信号を制御することにより、立体感および光沢感を増強する構成であり、輝度信号が制御された「左目用映像信号」と「右目用映像信号」は、左右に液晶シャッタが設けられた眼鏡を装着して見ることにより、三次元の画像となるものである。
そうすると、刊行物1発明の構成b-1、b-2により、「輝度信号Y」と「色信号Cが色復調回路16に供給されることにより得られた二つの色差信号」を含む現在フレームが、「左目用映像信号」と「右目用映像信号」を含む三次元の画像となるものである。
したがって、刊行物1発明の構成b-1、b-2と、補正後発明の構成B-2は、「現在フレームを左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換する」という点で共通する。

しかし、刊行物1発明の構成b-1、b-2は、補正後発明の構成B-1のように、シャッタ・メガネを介して入力される映像の明度が暗いという課題を解決するために、「3D視聴用メガネを通してビューアーにイメージの明度がオリジナルイメージの明度よりさらに明るくなるように、前記デコーディングされた現在フレームの明度を増加させるために前記現在フレーム全体の明度を変換する段階」を有しておらず、結果として、「明度が変換された現在フレームを左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換」するものではない点で、補正後発明の構成B-1、B-2と相違する。

(ア-3)構成Cと構成cの対比

刊行物1発明の「信号処理部115からの処理後の輝度信号及び色差信号」は、「受信された2次元映像信号」を、「左目用映像信号」と「右目用映像信号」という三次元の画像に変換した結果のデータであり、補正後発明の「前記変換された三次元ビデオデータ」は、「二次元ビデオデータ」を「現在フレーム全体の明度を変換」して、「左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換」した結果のデータである点で、両者は相違するものの、どちらも「三次元ビデオデータ」である点で共通する。
また、刊行物1発明の「三原色信号を形成してCRT200に供給する」ことは、CRTで表示するために行われることであるから、補正後発明の「ディスプレイする」ことに対応する。
そうすると、刊行物1発明の構成cと、補正後発明の構成Cは、「三次元ビデオデータをディスプレイする段階」である点で共通する。

(ア-4)構成Dと構成dの対比

上記(ア-1)で検討したように、刊行物1発明の「映像処理装置」は、補正後発明の「ビデオ映像処理装置」に相当するので、刊行物1発明の構成dは、補正後発明の構成Dに相当する。

イ.一致点・相違点

したがって、刊行物1発明と補正後発明は、以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]

「ビデオ映像処理装置が、二次元ビデオデータの現在フレームをデコーディングする段階と、
現在フレームを左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換する段階と、
三次元ビデオデータをディスプレイする段階と、を含むことを特徴とする前記ビデオ処理装置で行う映像処理方法。」

[相違点]

相違点1
「現在フレームを左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換する」ことに関して、補正後発明は、シャッタ・メガネを介して入力される映像の明度が暗いという課題を解決するために、「3D視聴用メガネを通してビューアーにイメージの明度がオリジナルイメージの明度よりさらに明るくなるように、前記デコーディングされた現在フレームの明度を増加させるために前記現在フレーム全体の明度を変換する段階」を有し、「明度が変換された現在フレームを左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換」しているのに対し、刊行物1発明は、「現在フレーム全体の明度を変換する段階」を有するものではなく、「現在フレームを左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換」の「現在フレーム」は、「明度が変換された現在フレーム」ではない点。

相違点2
「三次元ビデオデータをディスプレイする段階」における「三次元ビデオデータ」に関して、上記相違点1が存在することに起因して、補正後発明は、「二次元ビデオデータ」を「現在フレーム全体の明度を変換」して、「左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換」したデータであるのに対し、刊行物1発明は、そのようなことについて記載されていない点。

ウ.当審の判断

上記相違点について検討する。

(ウ-1)相違点1について

原審の拒絶理由に引用された、特開2002-125246号公報(以下、「刊行物2」という。)の段落【0098】の「液晶シャッタメガネは光の透過率が低いため、液晶シャッタメガネのモードが選択された場合にはディスプレイの輝度を若干高くする自動処理を行ってもよい。」との記載、特開2000-275575号公報(以下、「刊行物3」という。)の段落【0009】?【0011】の「液晶シャッターメガネの透過率は30%程度となる。液晶シャッターメガネの透過率が30%程度になると、メガネをかけていないときと比較して、格段に表示画像及び周りの景色が暗くなる。・・・液晶シャッタ眼鏡を装着し液晶シャッタを通じて見るときの画像が暗くなる(輝度レベルが低く再現される)と、特に色に関して色彩が損なわれるという課題も生じる。・・・画像の輝度が低いことに対して、立体映像モニタの輝度を高くすることも考えられる・・・」との記載のように、シャッタメガネのような3D視聴用メガネを使用して三次元映像をみると、全体的に明度が暗くなるので、予め全体の明度を明るくしようとすることは、当業者が通常に行っていることである。
そして、明るさを調整する場合に、表示装置の明るさを明るくすること、入力信号のレベルを大きくすることのいずれもが周知技術である(例えば、特開2004-23578号公報の段落【0013】や特開2007-47733号公報の段落【0017】等)。
そうすると、刊行物1発明においても、「左右に液晶シャッタが設けられた眼鏡を装着して見るため」のものであるから、刊行物2,3に記載されたように、シャッタメガネのような3D視聴用メガネを使用すると明度が暗くなるので、明度を明るくしようとすることを、当業者は容易に想到し得るものであり、その際に、上記周知技術を勘案することにより、補正後発明のように、「3D視聴用メガネを通してビューアーにイメージの明度がオリジナルイメージの明度よりさらに明るくなるように、前記デコーディングされた現在フレームの明度を増加させるために前記現在フレーム全体の明度を変換する段階」を含むようにすることは、当業者が適宜なし得るものである。

(ウ-2)相違点2について

上記(ウ-1)で検討したように、「3D視聴用メガネを通してビューアーにイメージの明度がオリジナルイメージの明度よりさらに明るくなるように、前記デコーディングされた現在フレームの明度を増加させるために前記現在フレーム全体の明度を変換する段階と、前記明度が変換された現在フレームを左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換する段階」とすることは、当業者において容易に想到し得るものであるから、そのように構成した場合には、刊行物1発明の「受信された2次元映像信号」を、「左目用映像信号」と「右目用映像信号」という三次元の画像に変換したデータは、補正後発明のように「二次元ビデオデータ」を「現在フレーム全体の明度を変換」して、「左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換」したデータになることを、当業者は適宜実施し得るものである。

よって、各相違点については、格別のものではなく、補正後発明に関する作用・効果も、その容易想到である構成から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、補正後発明は、刊行物1発明、刊行物2,3に記載された技術事項、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明

1.本願発明

平成26年11月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年11月27日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。

「ビデオ映像処理装置が、二次元ビデオデータの現在フレームをデコーディングする段階と、
前記ビデオ映像処理装置が、3D視聴用メガネを通してビューアーにイメージの明度がオリジナルイメージの明度よりさらに明るくなるように、前記デコーディングされた現在フレームの明度を増加させるために前記現在フレームの明度を変換する段階と、
前記明度が変換された現在フレームを左眼イメージと右眼イメージを含む三次元ビデオデータに変換する段階と、
前記変換された三次元ビデオデータをディスプレイする段階と、を含むことを特徴とする前記ビデオ映像処理装置で行う映像処理方法。」

なお、請求項1には、「を含むことを特徴とする前記ビデオ処理装置で行う映像処理方法」と記載されているが、該記載の前に「ビデオ処理装置」という記載は無く、また、請求項1の他の記載「ビデオ映像処理装置が、・・・前記ビデオ映像処理装置が、・・・」からみて、「前記ビデオ処理装置」は、「前記ビデオ映像処理装置」の誤記と認め、上記のように認定した。

2.刊行物1発明

原審の拒絶理由に引用された刊行物1、および、その記載事項は、前記第2 3.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記第2 3.で検討した補正後発明における限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する補正後発明が前記第2 3.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、刊行物2,3に記載された技術事項、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明、刊行物2,3に記載された技術事項、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.まとめ

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2,3に記載された技術事項、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2015-09-17 
結審通知日 2015-09-29 
審決日 2015-10-13 
出願番号 特願2011-514504(P2011-514504)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 572- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 明  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 渡辺 努
清水 正一
発明の名称 三次元ビデオ映像処理方法及びその装置  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
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