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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1311452
審判番号 不服2015-5730  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-26 
確定日 2016-02-24 
事件の表示 特願2013-528686「ヘッドアップディスプレイ用投影スクリーンを動かすアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月22日国際公開、WO2012/035140、平成26年 1月 9日国内公表、特表2014-500170〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年9月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年9月17日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成25年3月14日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成25年4月9日に特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲及び要約書の翻訳文が提出され、平成26年3月3日付けで拒絶理由が通知され、平成26年6月2日に意見書及び誤訳訂正書が提出されたが、平成26年12月12日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年3月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成27年3月26日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲、平成26年6月2日提出の誤訳訂正書により補正された明細書及び国際出願時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
なお、平成27年3月26日提出の手続補正書による補正は、特許法第17条の2第5項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、平成25年4月9日提出の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものであって、同法第17条の2第3項に規定する要件を満たすので、適法にされたものである。

「【請求項1】
ヘッドアップディスプレイ用投影スクリーン(7)を動かすアセンブリであって、
前記投影スクリーン(7)を固定する台(6)を有し、
前記台(6)は、車両部分に固定され得るベース部材(1)を有する機械的カップラ機構に接続され、
前記機械的カップラ機構を構成する接続部材同士の継手が、前記接続部材同士の摩擦が生じないように前記接続部材と材料的に一体をなす継手として設計されるアセンブリ。」

第3 特許法第36条第6項第2号(明確性)について
1 拒絶査定の理由
平成26年12月12日付け拒絶査定における特許法第36条第6項第2号に関する理由は、以下のようなものである。
「【理由1】
請求項1には「前記機械的カップラ機構を構成する接続部材同士の継手が、材料的に一体の継手として設計される」という記載があるが、「接続部材同士の継手が材料的に一体の継手として設計される」とはどのような構成を特定しているのか明確でない(特に「材料的に一体の継手」が明確でない)。
よって、請求項1-7に係る発明は明確でない。」

また、平成26年3月3日付け拒絶理由通知に記載した理由」の概要は、以下のとおりである。

「理由1
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項2には「前記機械的機構」と記載されているが、「機械的機構」は前記されておらず、該記載は不明りょうである。
(2)上記(1)とも関連するが、請求項3には「前記機構」と記載されているが、該「前記機構」がどの機構を指しているのか不明りょうである。
(3)請求項3には「前記機構の接合部は実質的に一体の接合部として設計される」と記載されているが、「前記機構の接合部」が、何と「実質的に一体」なのか不明りょうである。
(4)請求項4には「2つの機構」と記載されているが、該「2つ」がそれぞれどの機構を指しているのか不明りょうである。
(5)請求項5には「前記2つの四軸アセンブリ」と記載されているが、「2つの四軸アセンブリ」は前記されておらず、該記載は不明りょうである。
(6)請求項7には「前記2つの四軸アセンブリは接続ロッド(5)に連結される」と記載されているが、該「接続ロッド」が何と何を接続するのか不明りょうである。(仮に、接続ロッドによって2つの四軸アセンブリが連結されるのであれば、「前記2つの四軸アセンブリは接続ロッド(5)によって連結される」等の記載を検討されたい。)
(7)請求項8には「前記台(6)を固定する設備が配列されたコンポーネントが、前記接続部に配列される」と記載されているが、日本語として記載が不明りょうである。また、発明の詳細な説明を参酌しても、該記載は理解できない。
よって、請求項2-8に係る発明は明確でない。

なお、請求項8は著しく不明りょうであるから、新規性進歩性の判断を行うことができなかった。

理由2
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由3
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・理由 2,3
・請求項 1-7
・引用例 1又は2
[備考]
引用例1(全文、全図。特に、第8-9頁、Fig5a,5b等を参照。)には、一対の四軸機構で構成されたリンク75でコンバーナ44を支持することが記載されている。
したがって、本願の請求項1-7に係る発明は、引用例1に記載されている又は引用例1に基づいて当業者が容易になし得るものである。
また、引用例2(全文、全図。特に、段落【0001】【0011】図1,5,7等を参照。)にも四軸機構で構成されたリンクで車載用モニタを支持することが記載されている。

引 用 文 献 等 一 覧
1.国際公開第98/20380号
2.特開平10-129363号公報

(以下略)」

2 審判請求時の補正
これに対し、審判請求人(以下、「請求人」という。)は、審判請求時に、明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲を上記本願発明とする手続補正を行った。

3 審判請求書
さらに、請求人は、審判請求書において、次のように主張している。
「4.特許法第36条第6項第2号に係る拒絶理由への対処
上記拒絶理由における「請求項1には「前記機械的カップラ機構を構成する接続部材同士の継手が、材料的に一体の継手として設計される」という記載があるが、「接続部材同士の継手が材料的に一体の継手として設計される」とはどのような構成を特定しているのか明確でない(特に「材料的に一体の継手」が明確でない)。」との指摘に対応して、上記補正により、請求項1には「前記機械的カップラ機構を構成する接続部材同士の継手が、前記接続部材同士の摩擦が生じないように前記接続部材と材料的に一体をなす継手として設計される」と記載されることとなった。
すなわち、例えば2つの接続部材が本願発明に係る「継手」を介して接続される場合、当該2つの接続部材及び当該継手が、当該2つの接続部材間の摩擦が生じないように、かつ、当該2つの接続部材と当該継手とが材料的に一体をなすように構成されることが明確となった。
この構成は例えば、継手部分によって直列に接続される2つの接続部材の、下図のような構成である。
(図(省略))
なお、上図の構成において、当該継手部分は、同図中央において樹脂膜で被覆されたばね部分として構成されている。

したがって、上記補正によって本願発明が明確となり、特許法第36条第6項第2号に係る拒絶理由は解消した。」

4 判断
請求人は、上記審判請求時の補正をしたが、本願発明は、「材料的に一体をなす継手」という発明特定事項を含んでいる。
そして、本願の明細書及び図面並びに審判請求書における請求人の主張をみても、「材料的に一体をなす継手」とは、材料に関してどのような特徴を有する継手であるのか、明確でない。
すなわち、「材料的に一体をなす継手」とは、材料という観点からみて、接続部材と継手の材料が同じ材料からなるということなのか、接続部材と継手が一体的に連結されているということなのか、接続部材と継手の材料が同じ材料からなりかつ接続部材と継手が一体的に連結されているという意味なのか、その他の意味なのか、明確に把握できない。
また、請求人が審判請求書において図に示したものは、2つの接続部材を継手部分によって接続したものと認められるが、図を参照しても、接続部材と継手の材料が同じ材料からなるのか、接続部材と継手が一体的に連結されているのか、接続部材と継手の材料が同じ材料からなりかつ接続部材と継手が一体的に連結されているのか、明らかでない。
さらに、「材料的に一体をなす」と、「前記接続部材同士の摩擦が生じないように」との関係も明らかでない。
したがって、本願発明における「前記機械的カップラ機構を構成する接続部材同士の継手が、前記接続部材同士の摩擦が生じないように前記接続部材と材料的に一体をなす継手として設計される」という記載は明確でない。
よって、本願発明は、明確でない。
したがって、本願発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 特許法第29条2項(進歩性)について
1 引用文献
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平10-129363号公報(以下、「引用文献」という。)には図面とともに次の記載がある。

(1)引用文献の記載
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両に搭載されたナビゲーターやテレビジョン、車載パソコンのディスプレイ、携帯電話等を載置して簡単な操作で載台部分の位置を変更可能とした載置装置に関する。」(段落【0001】)

イ 「【0002】
【従来の技術】回動可能なモニターとして、従来、特開平7-52720号公報に開示したものが知られている。この公知の取付機構は、自動車内にモニターパネルを回動可能に取り付けるものである。これを図18でもって説明すると、モニター本体1の側面にステー2をねじ3で固定し、該ステー2にモニターパネル4を装着している。モニターパネル4は脱着ねじ5を緩めて回転できるようになっている。
【0003】その作用を説明すると、次のとおりである。今、モニターパネル4の角度を、観察する人の方向に変更しようとする場合には、モニターパネル4の脱着ねじ5を緩め、その後にモニターパネル4を手で回転させる。モニターパネル4の方向が定まったところで脱着ねじ5を回転させて固定する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図18に示したモニターの取付機構によると、モニターパネル4やステー2の裏側にエアコンやオーディオ機器の操作スイッチを取り付けている場合には、ねじ3を外してステー2を取り外したり、あるいは脱着ねじ5を緩めてモニターパネル4を一旦取り外し、その後に操作スイッチを操作し、再度ステー2やモニターパネル4を取り付ける操作をしなければならない。このため、車両の運転者が簡単に操作することが困難であり、特に自動車を運転をしながら操作することは不可能であった。
【0005】そこで、本発明の目的は、前記欠点を改善し、モニターパネル等の載台の位置を変更できると同時に、載台の水平を維持できるようにし、更には載台の位置変更及び所望位置に固定することをワンタッチで行えるようにした載置装置を提供することにある。」(段落【0002】ないし【0005】)

ウ 「【0006】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため本発明の載置装置は次のように構成されている。
【0007】(1)水平に配置された第1のリンクと、該第1のリンクと平行に配置された第3のリンクと、第1のリンクと第3のリンクに結合された第2のリンクと、第1のリンクと第3のリンクに連結された第4のリンクと、前記第1のリンクに設けられた載台と、前記第3のリンクに設けられた取り付けアームと、からなり、前記第1のリンクないし第4のリンクによって4節平行リンク機構を構成して前記第1のリンクに設けられた載台を水平移動させるようにし、前記第1のリンクに固定された係止歯部材と、該係止歯部材の内周面に形成された係止歯と、前記第2のリンクに固定された2本の突出部材と、係止爪部材と、該係止爪部材に設けられ、前記係止歯と噛合する係止爪と、前記係止爪部材に設けられ、前記突出部材が案内されることによって前記係止爪部材が摺動自在となっている案内部と、前記係止歯が係止爪に噛合する方向に付勢するバネ部材と、前記係止爪部材から長く伸びだして設けられ、摘むことによって前記係止歯と係止爪との噛合が解除される摘み部と、からなるロック機構によって、前記載台の移動を固定させ、もって、載台を水平移動させて所望の移動位置に固定して成る載台装置。
【0008】(2)水平に配置された第1のリンクと、該第1のリンクと平行に配置された第3のリンクと、第1のリンクと第3のリンクに結合された第2のリンクと、第1のリンクと第3のリンクに連結された第4のリンクと、前記第1のリンクに設けられた載台と、前記第3のリンクに設けられた取り付けアームと、からなり、前記第1のリンクないし第4のリンクによって4節平行リンク機構を構成して前記第1のリンクに設けられた載台を水平移動させるようにし、前記第1のリンクに固定された係止歯部材と、該係止歯部材の外周面に形成された係止歯と、前記第2のリンクに揺動自在に設けられた2本の係止爪部材と、該係止爪部材に設けられ、前記係止歯と噛合する係止爪と、前記係止歯が係止爪に噛合する方向に付勢するバネ部材と、前記係止爪部材から長く伸びだして設けられ、摘むことによって前記係止歯と係止爪との噛合が解除される摘み部と、からなるロック機構によって、前記載台の移動を固定させ、もって、載台を水平移動させて所望の移動位置に固定して成る載台装置。
【0009】(3)取付アームと、該取り付けアームに固定して設けられた下部ローラーと、載台に固定して設けられた上部ローラーと、前記下部ローラーの中心軸と上部ローラーの中心軸にそれぞれ回転自在に設けられた前板と、前記下部ローラーと上部ローラーとに巻回された巻掛け体と、からなり、前板を左右に傾倒させることによって載台を水平移動させるようにし、前板の裏面に摺動自在に設けられたロックピンと、該ロックピンの先端が上部ローラーに圧接される方向に付勢するバネ部材と、前記ロックピンの一方の端部に設けられ、指で押すことによって前記ロックピンの先端と上部ローラーとの接触が解除される押しレバーと、からなるロック機構によって、前記載台の移動を固定させ、もって、載台を水平移動させて所望の移動位置に固定して成る載台装置。」(段落【0006】ないし【0009】)

エ 「【0010】
【発明の実施の形態】以下、図によって本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の一実施例からなる載置装置を示す正面図であり、図2は、図1の側面図である。図3は図1のAーA断面図である。
【0011】本発明では、平行四辺形からなる4節平行リンク機構によって載台を常時平行に移動させるものであり、図の4本のリンク1、2、3、4をピン5で連結し、もってリンク1に固定された載台6を平行に移動させるようにしたものである。リンク3には取付アーム7が固定されている。
(中略)
【0015】載台6にはモニターパネル14が止めねじ15によって固定されている。尚、載台6にはカーナビゲーターのモニターパネル14の他、カーテレビ、車載用パソコン、携帯電話等が載せられるものである。載台6は、回転軸16を中心として図2のPで示す方向に傾倒可能となっている。ロックレバー17は回転軸16による載台6の回転をロックするものであり、これによって載台6を回転角度に保持させるものである。
(中略)
【0017】上記図1ないし図6に示す本発明の一実施例になる載台装置の作用を図7をも用いて説明すると、次のとおりである。リンク2とリンク4が直立状態では図1の状態となっている。この状態において、モニターパネル14を図の左方に移動させる場合には、摘み部9Bを指で摘んでバネ部材11に抗して係止爪部材9を互いに接近する方向に摺動させる。すると、係止爪9Aと係止歯8Aとの係合が解除され、リンク2及びリンク4が傾倒する。その結果、図7に示すようなリンク2及びリンク4が傾倒し、かつ載台6が符合Q方向に移動した状態となる。この状態となっても、載台6の水平状態は維持され、モニターパネル14が左右に傾くことはない。」(段落【0010】ないし【0017】)

オ 「【0027】
【発明の効果】以上説明した本発明によると、次のような効果を奏する。載台の水平を維持した状態で移動させることができ、更にその移動操作及び固定がワンタッチで行えるので、車両の運転者が簡単かつ容易に載台の移動を行えるものとなり、車両に搭載される種々の装置、例えばカーナビゲーターのモニターパネルやカーテレビ、車載用パソコン、携帯電話等の載せ台に最適である。」(段落【0027】)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること

カ 上記(1)アないしオ及び図面(特に図1ないし7)の記載から、引用文献には、モニターパネル14を載置する載台6の位置を変更できる載台装置が記載されていることが分かる。

キ 上記(1)エ(特に段落【0015】)の記載から、引用文献に記載された載台装置は、モニターパネル14を固定する載台6を有するものであることが分かる。

ク 上記(1)ウ、エ(特に段落【0011】及び【0017】)及び図面(特に図1ないし7)の記載から、引用文献に記載された載台装置において、載台6は、車両部分に固定され得る取り付けアーム7を有するリンク機構に接続されることが分かる。

(3)引用発明
以上の(1)及び(2)並びに図1ないし7の記載を総合すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「モニターパネル14を動かす載台装置であって、
前記モニターパネル14を固定する載台6を有し、
前記載台6は、車両部分に固定され得る取り付けアーム7を有するリンク機構に接続される、載台装置。」

2 対比・検討
本願発明と、引用発明とを対比する。
引用発明における「モニターパネル14」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明における「ヘッドアップディスプレイ用投影スクリーン(7)」及び「投影スクリーン(7)」に相当し、以下同様に、「載台装置」は「アセンブリ」に、「載台6」は「台(6)」に、「取り付けアーム7」は「ベース部材(1)」に、「リンク機構」は「機械的カップラ機構」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明と、引用発明とは、
「ヘッドアップディスプレイ用投影スクリーンを動かすアセンブリであって、
前記投影スクリーンを固定する台を有し、
前記台は、車両部分に固定され得るベース部材を有する機械的カップラ機構に接続される、アセンブリ。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明においては、「機械的カップラ機構を構成する接続部材同士の継手が、前記接続部材同士の摩擦が生じないように前記接続部材と材料的に一体をなす継手として設計される」のに対し、引用発明においては、「リンク機構」は「機械的カップラ機構」であるものの、本願発明のように設計されるかどうか明らかでない点(以下、「相違点」という。)。

3 判断
本願発明の相違点に係る発明特定事項のうち、「接続部材同士の継手が、前記接続部材同士の摩擦が生じないように」、「継手として設計される」点は、本願の優先日前に周知の技術的事項(以下、「周知技術1」という。例えば、特開2001-304284号公報[例えば【特許請求の範囲】の請求項1ないし8及び図1ないし8等の記載を参照。]及び実願平5-11659号(実開平6-59628号)のCD-ROM[例えば【実用新案登録請求の範囲】の請求項1及び図1ないし3等の記載を参照。]を参照。)である。
また、「材料的に一体をなす」という事項が、「一体的に連結される」という意味だとすると、そのような事項は本願の優先日前に周知の技術的事項(以下、「周知技術2」という。例えば、上記特開2001-304284号公報[例えば段落【0028】、【0032】及び【0038】等の記載を参照。]及び実願平5-11659号(実開平6-59628号)のCD-ROM[例えば段落【0004】及び図1ないし3等の記載を参照。]を参照。)である。
また、「材料的に一体をなす」という事項が、「接続部材と継手の材料が同じ材料からなる」という意味だとしても、接続部材と継手の材料として同じ材料を選択することは、当業者が必要に応じ選択する事項にすぎない。
また、「材料的に一体をなす」という事項が、「接続部材と継手の材料が同じ材料からなりかつ接続部材と継手が一体的に連結されている」という意味だとしても、そのような事項は、上記周知事項1及び2において、当業者が必要に応じて同じ材料を選択したものにすぎない。
また、「材料的に一体をなす」という事項が、「一つの材料から製造されている」という意味だとしても、同様に、上記周知事項1及び2において、当業者が、接続部材及び継手の材料として、一つの材料を選択して製造したものにすぎない。

そうすると、いずれにしても、引用発明における「リンク機構」の継手として、上記で検討した周知技術1及び2による接続部材の継手を採用して、相違点に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到できたことである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術1から、又は、引用発明並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

4 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、又は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび
上記第3のとおり、本願発明は明確でないから、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、上記第4のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、又は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2015-09-28 
結審通知日 2015-09-29 
審決日 2015-10-13 
出願番号 特願2013-528686(P2013-528686)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (B60K)
P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大山 健山村 和人  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 金澤 俊郎
松下 聡
発明の名称 ヘッドアップディスプレイ用投影スクリーンを動かすアセンブリ  
代理人 原 裕子  
代理人 三好 秀和  
代理人 伊藤 正和  

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