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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  B25J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  B25J
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  B25J
管理番号 1311510
審判番号 不服2014-18112  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-10 
確定日 2016-03-22 
事件の表示 特願2012-163888「ロボット」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月18日出願公開、特開2012-196766、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成22年10月5日に出願した特願2010-225443号の一部を平成24年7月24日(優先権主張平成13年10月22日)に新たな特許出願としたものである。また、上記特願2010-225443号は、平成19年7月19日に出願した特願2007-188710号の一部を平成22年10月5日に新たな特許出願としたものである。そして、上記特願2007-188710号は、平成14年2月14日に出願した特願2002-37386号の一部を平成19年7月19日に新たな特許出願としたものである。
本件出願の手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年5月22日付け 拒絶理由通知
平成25年7月24日 意見書及び手続補正書提出
平成26年1月21日付け 拒絶理由通知(最後)
平成26年3月11日 意見書及び手続補正書提出
平成26年6月5日付け 補正の却下の決定
平成26年6月5日付け 拒絶査定
平成26年9月10日 本件審判請求

第2 平成26年6月5日付け補正の却下の決定について
請求人は、本件審判請求書において、「【請求の趣旨】特願2012-163888号について、平成26年6月10日になされた補正却下決定ならびに原査定を取り消す。本願発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」(1ページ19ないし22行)と、原審の上記平成26年6月5日付け(発送日:平成26年6月10日)補正の却下の決定が取り消されるべきである旨主張しているから、まず、当該補正の却下の決定の適否について検討する(以下、平成26年3月11日付け手続補正書による補正を「本件補正」いい、当該平成26年6月5日付けの補正の却下の決定を「本件補正の却下の決定」という。)。

1. 本件補正の概要
本件補正は、平成25年7月24日付け手続補正書により補正された本願明細書、特許請求の範囲を、さらに補正するものであって、以下の補正事項からなるものである(下線は補正箇所である。)。

(1) 補正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前の

ア.
「【請求項1】
基台と、
前記基台に設けられたアームと、
前記アームに対して第1軸回りに回転するように前記アームに連結される胴体底部、前記胴体底部から延設された第1延在部、および、前記第1延在部と間隙を有して配設される第2延在部を有する胴体と、
前記第1軸の延長線上に前記胴体底部に設けられ、ケーブルを挿通可能な通過口と、
前記第1延在部と前記第2延在部との少なくともいずれかの先端側に取り付けられて前記第1軸に直交する第2軸回りに揺動する揺動体と、
前記第1軸の延長線上に対してオフセットした位置で前記胴体に支持され、前記第2軸回りに前記揺動体を揺動させるモータと、
前記第2軸に直交する第3軸周りに回転するように前記揺動体に支持されケーブルが接続されるエンドエフェクタを保持可能な回転体と、を有している
ことを特徴とする、ロボット。」
とあるのを、

イ.
「【請求項1】
基台と、
前記基台に設けられたアームと、
前記アームに対して第1軸回りに回転するように前記アームに連結される胴体底部、前記胴体底部から延設された第1延在部、および、前記第1延在部と間隙を有して配設される第2延在部を有する胴体と、
前記第1軸の延長線上に前記胴体底部に設けられ、ケーブルを挿通可能な通過口と、
前記第1延在部と前記第2延在部との少なくともいずれかの先端側に取り付けられて前記第1軸に直交する第2軸回りに揺動する揺動体と、
前記第1軸の延長線上に対してオフセットした位置であって前記第1延在部および前記第2延在部の先端と前記胴体底部との間における前記胴体底部寄りの位置で前記胴体に支持され、前記第2軸回りに前記揺動体を揺動させるモータと、
前記第2軸に直交する第3軸周りに回転するように前記揺動体に支持されケーブルが接続されるエンドエフェクタを保持可能な回転体と、を有している
ことを特徴とする、ロボット。」
と補正する。

(2) 補正事項2
本願明細書段落【0005】について、本件補正前の
「【0005】
上記課題を解決するため、本発明のロボットは、基台と、前記基台に設けられたアームと、前記アームに対して第1軸回りに回転するように前記アームに連結される胴体底部、前記胴体底部から延設された第1延在部、および、前記第1延在部と間隙を有して配設される第2延在部を有する胴体と、前記第1軸の延長線上に前記胴体底部に設けられ、ケーブルを挿通可能な通過口と、前記第1延在部と前記第2延在部との少なくともいずれかの先端側に取り付けられて前記第1軸に直交する第2軸回りに揺動する揺動体と、前記第1軸の延長線上に対してオフセットした位置で前記胴体に支持され、前記第2軸回りに前記揺動体を揺動させるモータと、前記第2軸に直交する第3軸周りに回転するように前記揺動体に支持されケーブルが接続されるエンドエフェクタを保持可能な回転体と、を有していることを特徴としている。」とあるのを
「【0005】
上記課題を解決するため、本発明のロボットは、基台と、前記基台に設けられたアームと、前記アームに対して第1軸回りに回転するように前記アームに連結される胴体底部、前記胴体底部から延設された第1延在部、および、前記第1延在部と間隙を有して配設される第2延在部を有する胴体と、前記第1軸の延長線上に前記胴体底部に設けられ、ケーブルを挿通可能な通過口と、前記第1延在部と前記第2延在部との少なくともいずれかの先端側に取り付けられて前記第1軸に直交する第2軸回りに揺動する揺動体と、前記第1軸の延長線上に対してオフセットした位置であって前記第1延在部および前記第2延在部の先端と前記胴体底部との間における前記胴体底部寄りの位置で前記胴体に支持され、前記第2軸回りに前記揺動体を揺動させるモータと、前記第2軸に直交する第3軸周りに回転するように前記揺動体に支持されケーブルが接続されるエンドエフェクタを保持可能な回転体と、を有していることを特徴としている。」
と補正する。

2. 本件補正の却下の決定の理由の概要
原審の本件補正の却下の決定の理由の概要は、以下のとおりである。

(1)
本件補正により付加された「胴体底部」なる語句の定義が明らかでない点、及び、明細書において、モータ51がどの部材にどのように内包された状態で支持されているのか具体的に明らかでない点を勘案すると、「前記第2軸回りに前記揺動体を揺動させるモータ」が、胴体に支持されていること自体は明らかであるとしても、胴体底部に支持されているとも、胴体底部以外の部材に支持されているとも、言いがたい状態であると言わざるを得ない。したがって、本件補正により付加された事項である「前記第2軸回りに前記揺動体を揺動させるモータ」が「前記第1延在部および前記第2延在部の先端と前記胴体底部との間における前記胴体底部よりの位置で前記胴体に支持」されている点は、本願出願当初の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲であるとはいえず、よって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同第53条第1項の規定により却下されるべきものである(以下、「新規事項に係る理由」という。)。

(2)
上記新規事項に係る理由が仮に失当であったとしても、本件補正のうち上記補正事項1は、本件補正前の「第2軸回りに前記揺動体を揺動させるモータ」を胴体に支持される位置として、本件補正前の「第1軸の延長線上に対してオフセットした位置」に加えて、さらに、「前記第1延在部および前記第2延在部の先端と前記胴体底部との間における前記胴体底部寄りの位置」でもあるとの事項を付加するものであるから、上記補正事項1は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。しかし、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、以下に示すとおり、本件の特許出願の際独立して特許を受けることができず、特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第53条第1項の規定により却下すべきである。

ア.本件補正後の特許請求の範囲の請求項1で特定された「胴体底部」が、「部材22」と「部材23」とを接続している部位のうちどこからどこまでであり、「部材22」と「部材23」とを接続している部位のうちどの部部(当審注:「部分」の誤記であると認める。)が「胴体底部」ではないのかが、明らかではない。したがって、「胴体底部」なる語句について、定義及び技術的範囲が不明確であるから、特許法第36条第6項第2項の規定により本件の特許出願の際独立して特許を受けることができない(以下、「明確性に係る理由1」という。)。

イ.
本件補正後の請求項1の記載は、第1延在部および第2延在部の間の空間について、通過口から第1延在部の先端において、第1軸および第2軸に直交する方向が両方とも閉鎖されていること、および、通過口から揺動体に至るまでの間で、ケーブルが拘束される箇所があること、を排除しておらず、通過口の位置を胴体底部としたことや、モータの配置位置を「前記第1延在部および前記第2延在部の先端と前記胴体底部との間における前記胴体底部寄りの位置」としたことの、技術的意義が不明である。したがって、特許法第36条第6項第2項の規定により本件の特許出願の際独立して特許を受けることができない(以下、「明確性に係る理由2」という。)。

ウ.
本願特許請求の範囲の請求項1に係る発明を、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。そうすると、請求項1に係る発明に、本願実施例における部材22および部材23の上面及び下面に板状の部材を渡しかけるとともに、部材22および部材23の間の揺動体近傍に、コンジットケーブルを通す開口を設けた部材を設けて、揺動体の近くでコンジットケーブルを拘束しているようなものが含まれるから、本願請求項1に係る発明は、引用文献1の特開平5-131388号公報に記載された事項及び従来周知の技術事項から当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により本件の特許出願の際独立して特許を受けることができない。(以下、「進歩性に係る理由」という。)

3. 上記理由についての検討

(1) 新規事項に係る理由について
本願出願当初の願書に添付された明細書及び図面(以下、それぞれ「当初明細書」及び「当初図面」という。)には以下の事項が記載されている。

ア.
「【0009】
図1は本発明の第1の実施例を示す産業用ロボットの側面図である。図において1は産業用ロボットの基台である。基台1の上には垂直軸(S軸)回りに旋回自在に旋回ベース2が取り付けられ、旋回ベース2には下部アーム3が水平軸(L軸)回りに軸支され、前後方向に揺動する。下部アーム3の上端には上部アーム4が水平軸(U軸)回りに軸支され、上下方向に揺動する。5は上部アーム4の先端に取り付けられた手首部である。手首部5は、上部アーム4の長さ方向の中心軸(R軸:手首第1軸)回りに回転自在に取り付けられた胴体6と、胴体6の先端でR軸に直交する軸(B軸:手首第2軸)回りに軸支されて揺動する揺動体7と、揺動体7の先端で回転軸(T軸:手首第3軸)回りに回転する回転体8からなる。
【0010】
9は、回転体8に取り付けられた溶接トーチであり、11は上部アーム4の後端に固定されたワイヤ送給装置である。ワイヤ送給装置11には図示しないワイヤリールから溶接ワイヤが供給され、コンジットケーブル12を通して溶接ワイヤを溶接トーチ9まで送給する。コンジットケーブル12は上部アーム4の側面を、R軸に平行に伸びて、上部アーム4の側面に開口した進入口21から上部アーム4の内部に引き込まれる。なお、上部アーム4の内部から溶接トーチ9に至るコンジットケーブル12の経路は後述する。また、コンジットケーブル12は、コイルバネを樹脂で被覆した保護チューブの中に通されて保護されている。
【0011】
図2は図1に示した産業用ロボットの立体図である。手首部5の胴体6は、平面形において略U字形の二股状をなし、R軸に平行に伸びる2つの部材22、23を備えている。揺動体7は部材22、23に挟まれて、両持ちで支持されている。進入口21から上部アーム4の中に入ったコンジットケーブル12は、胴体6のU字形の底部24に開口した通過口25から再び外部にでて、部材22と23の間の空間を通って、揺動体7に伸びている。通過口25はR軸を中心とする開口であり、コンジットケーブル12は通過口25から揺動体7に向けて、R軸に沿って(コンジットケーブル12の中心とR軸が一致するように)配設される。
【0012】
図3は図1に示した産業用ロボットの上部アーム4を図1のAA'線で切断した平断面図である。図において、31は上部アーム4の内部にその回転軸の中心をR軸に一致させて、つまりR軸と同心に取り付けられたモータであり、モータ31は減速機32、中間軸33を介して手首部5の胴体6をR軸回りに回転駆動する。中間軸33はベアリング34とベアリング35で上部アーム4に回転自在に支持されている。また中間軸33は、ベアリング34に支持されて減速機32に連結される円輪部36と、ベアリング35に支持されて胴体6に連結される中空円筒部37と、回転中心(R軸)からオフセットした位置で円輪部36と中空円筒部37を接続する接続部38からなり、全体としてクランクシャフト状をなしている(図4参照)。
【0013】
39は機内配線である。機内配線39は胴体6内に装備されて揺動体7および回転体8を駆動するモータ(後述)を駆動するための動力線であり、下部アーム3から上部アーム4の内部に引き込まれて、点39aで上部アーム4にクランプされる。機内配線39は点39aから、R軸回りに円弧を描いて円環状部を形成して点39bまで伸び、さらに点39bから点39cまでの間はU字状の折り曲げ部を形成し、点39cから再びR軸回りに円環状部を形成して点39dで中間軸33の円輪部36にクランプされる。なお、39aから39dに至る機内配線39の保持構造は、登録実用新案第2117576号(実公平7-39575)として本願出願人が権利を保有している。
【0014】
機内配線39は点39dから中間軸33の接続部38に沿って伸び(図示を省略したが、機内配線39は接続部38に適宜、固縛される)、中間軸33の中空円筒部37の中心(R軸)を避けて、前記中空部の外周に設けた溝を通って胴体6の中に入る。コンジットケーブル12は、上部アーム4の側面に開口した進入口21から上部アーム4の中に入り、中間軸33の中空円筒部37の中心の中空部と、胴体6の通過口25を通って外部に出る。前期中空部と通過口はR軸を中心とする円筒であり、コンジットケーブル12はR軸に沿って真っ直ぐ外部に引き出される。コンジットケーブル12はR軸の中心にあって、機内配線39はR軸の中心から離れた位置にあるので、胴体6がR軸まわりに回転するとき、機内配線39はコンジットケーブル12の回りを、衛星のように周回する。このため、機内配線39とコンジットケーブル12の干渉は生じない。ここで、中間軸33をR軸回りに回転させた時の、コンジットケーブル12と中間軸33の接続部38の干渉が問題になるが、コンジットケーブル12が接続部38に接触したときの多少の曲げは許容されるから、図示した位置から中間軸33をR軸回りに±180°回転可能である。したがって、この干渉は実用上の問題にはならない。
【0015】
図5は本発明の第2の実施例を示す産業用ロボットの手首部の側面図であり、説明の便宜のため、手首部5の胴体6の右側面のカバーを取り除いて、内部機構が見えるように描いている。図において、51は揺動体7を駆動するモータであり、胴体6の内部に横向き、つまりR軸に対して直角、B軸に対して平行に取り付けられている。モータ51の出力軸にはプーリ52が取り付けられている。53は揺動体7に連結される減速機であり、胴体6の先端に取り付けられている。減速機53の入力軸にはプーリ54が取り付けられ、プーリ54とプーリ52の間にはタイミングベルト55が巻き掛けられている。つまりモータ51の動力はベルトプーリ機構を介して減速機53に伝えられて、揺動体7をB軸回りに回転駆動する。56は回転体8を駆動するモータであり、モータ51と同様に胴体6の内部に横向きに取り付けられている。モータ56の動力は胴体6の左側(紙面の裏側)に配置される別のベルトプーリ機構(図示せず)を介して回転体8を駆動する。また、モータ51とモータ56はR軸の中心から下にオフセットした位置に取り付けられている。これはR軸に沿って延びるコンジットケーブル12との干渉を避けるためである。
【0016】
図6は、図5に示した産業用ロボットの手首部の先端の内部機構を示す平断面図であり、図6においては、揺動体7をB軸まわりに90°回転させて、揺動体7を水平つまり、R軸とT軸が重なるような姿勢を取っている。なお、図5と共通する構成要素は同一の符号を付したので、説明を省略する。61はベルトであり回転体駆動用モータ(図5のモータ56に相当するが、図示していない)の動力をプーリ62に伝える。プーリ62には傘歯車63が取り付けられている。64は揺動体7にT軸に平行に軸支された伝動軸であり、伝動軸64の両端には傘歯車65、66が取り付けられ、傘歯車65は傘歯車63と噛み合っている。67は回転体8に取り付けられた傘歯車である。傘歯車67は傘歯車66と噛み合っている。このようにして前記回転体駆動用モータの動力は回転体8に伝えられる。回転体8には、T軸を中心とする円筒状の中空部があり、溶接トーチ9は前記中空部を貫通している。回転体8を貫通した溶接トーチ9の端部にはコンジットケーブル12が接続されている。コンジットケーブル12は二股状になった胴体6の部材22、23の間の空間に、R軸と同心に配設されている。また揺動体駆動用のベルトプーリ機構は部材22の内部に、回転体駆動用のベルトプーリ機構は部材23の内部にそれぞれ配置されている。」

イ. 【図1】、【図2】、【図3】及び【図5】
【図1】

【図2】

【図3】

【図5】

上記摘記事項ア.の「【0011】・・・手首部5の胴体6は、平面形において略U字形の二股状をなし、R軸に平行に伸びる2つの部材22、23を備えている。揺動体7は部材22、23に挟まれて、両持ちで支持されている。進入口21から上部アーム4の中に入ったコンジットケーブル12は、胴体6のU字形の底部24に開口した通過口25から再び外部にでて、部材22と23の間の空間を通って、揺動体7に伸びている。通過口25はR軸を中心とする開口であり、コンジットケーブル12は通過口25から揺動体7に向けて、R軸に沿って(コンジットケーブル12の中心とR軸が一致するように)配設される。」との記載から、当初明細書記載の「胴体6」は、「平面形において略U字形の二股状」の形状であって、「U字形の底部24」と「R軸に平行に伸びる2つの部材22、23」を備えたものである。また、上記摘記事項ア.の「【0015】図5は本発明の第2の実施例を示す産業用ロボットの手首部の側面図であり、・・・図において、51は揺動体7を駆動するモータであり、胴体6の内部に横向き、つまりR軸に対して直角、B軸に対して平行に取り付けられている。モータ51の出力軸にはプーリ52が取り付けられている。・・・53は揺動体7に連結される減速機であり、胴体6の先端に取り付けられている。・・・つまりモータ51の動力はベルトプーリ機構を介して減速機53に伝えられて、揺動体7をB軸回りに回転駆動する。」との記載と、【図5】の「減速機53」が、「胴体6」を構成する「部材22」の一方の端に設けられていて、そして、「揺動体7」を駆動する「モータ51」が、「部材22」の他方の端寄りの位置に設けられていることの図示及び【図2】の「部材22」の一方の端部が「揺動体7」に接続され、他方の端部が「底部24」に接続されていることの図示を勘案すると、「揺動体7」を手首第2軸回りに駆動すなわち揺動させる「モータ51」が、「部材22」及び「部材23」の先端と「胴体6」の「底部24」との間における「底部24」寄りの位置で「胴体6」に支持されるものであることが理解できる。
そうすると、「前記第2軸回りに前記揺動体を揺動させるモータ」が「前記第1延在部および前記第2延在部の先端と前記胴体底部との間における前記胴体底部よりの位置で前記胴体に支持」されている点は、当初明細書及び当初図面に添付された明細書及び図面に記載されたものであるといえるから、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるとはいえない。

(2) 明確性に係る理由1について
本件補正後の請求項1には、「胴体底部」について、「前記アームに対して第1軸回りに回転するように前記アームに連結される胴体底部、前記胴体底部から延設された第1延在部、および、前記第1延在部と間隙を有して配設される第2延在部を有する胴体と、」及び「前記第1軸の延長線上に前記胴体底部に設けられ、ケーブルを挿通可能な通過口と、」との記載がある。そうすると、当該「胴体底部」は、「第1延在部」及び「第2延在部」が延設されたものであって、「ケーブル」が挿通可能な通過口が設けられたものであることが明確である。
確かに本件補正後の請求項1には、「胴体底部」と「第1延在部」及び「第2延在部」の境界についての記載はない。また、明細書にも「底部24」と「部材22」及び「部材23」の境界についての記載はない。しかし、境界についての記載はなくとも、「胴体」において、「ケーブルを挿通可能な通過口」が設けられた部分は明確に把握できるし、当該部分から「延設」された2つの部材である「第1延在部」及び「第2延設部」も明確に把握できるから、たとえ上記境界が明記されていないからといって、ただちに、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載が不明確であるとまではいえない。
そうすると、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を不明確とすることはできず、特許法第36条第6項第2号の規定により本件の特許出願の際独立して特許を受けることができないということはできない。

(3) 明確性に係る理由2について
本件補正後の請求項1の記載は、第1延在部及び第2延在部の間の空間について、通過口から第1延在部の先端において、第1軸及び第2軸に直交する方向が両方とも閉鎖されているもの、及び、通過口から揺動体に至るまでの間で、ケーブルが拘束される箇所があることが含まれないことが明確に記載されていない。しかし、本件補正後の請求項1に係る発明の記載が、そうした事項を備えたものを包含し得るものであったとしても、それだけで本件補正後の請求項1の記載自体が明確ではない、ということはできない。
そうすると、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を不明確とすることはできず、特許法第36条第6項第2号の規定により本件の特許出願の際独立して特許を受けることができないということはできない。

(4) 進歩性に係る理由について

ア. 補正発明
本願特許請求の範囲の請求項1ないし2に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されたとおりのものであると認めるところ、本願特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記1.(1)のイ.に示したとおりである。

イ. 引用文献
原審の補正の却下の決定において引用された、本願遡及出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-131388号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)
「【0005】本発明の目的は、手首部の小型・軽量化さらには動作の高速・高精度化を確保しつつ、先端に取付けられたエンドエフェクタ用の動力線,信号線,エアー配管等を内部に通すのに好適な工業用ロボットの手首装置を提供することにある。」

(イ)
「【0009】
【実施例】以下、本発明を添付図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
【0010】図7は本発明による手首装置の一実施例を適用した多関節形工業用ロボットの全体構成を示す斜視図、図8は同手首装置への動力伝達手段を示す一部断面図である。図7において、工業用ロボットは基台10上に旋回台1が軸心A周りに旋回可能に取付けられている。旋回台1は基台10に取付けられた図示しない駆動モータM_(1)から基台10の内部に設けられた動力伝達手段及び減速手段を介して旋回駆動されるよう構成されている。旋回台1の上方端には上腕2の下端が枢着取付けられており、旋回台1上に設けられた駆動モータM_(2) 、及び内部に組み込まれた減速機構(図示せず)を介して軸心B周りに揺動駆動される。この上腕2の上端には前腕基部9に保持された前腕3が軸心C周りに起伏可能に取付けられている。前腕基部9及び前腕3は旋回台1上に設けられた駆動モータM_(3) 、内部に組み込まれた減速機構(図示せず)、図示しないレバー,リンク31を介して動力が伝達されることにより起伏動作する。また、前腕3の前方延長部には手首部8が取付けられている。手首部8は手首基部4と、この手首基部4に保持された中ケーシング5と、さらにこの中ケーシング5に保持された手先ケーシング6と、エンドエフェクタを取付ける手先フランジ7を具備し、前腕3及び手首部8は前腕基部9に対して軸心D周りに旋回自由に、中ケーシング5は手首基部4に対して軸心E周りに揺動自由に、手先ケーシング6及び手先フランジ7は中ケーシング5に対して軸心F周りに回転自由に形成されている。前腕3及び手首部8の旋回手段、中ケーシング5の揺動手段、手先ケーシング6及び手先フランジ7の回転手段については図8を用いてさらに詳述する。図8において、前腕基部9内の軸方向には前腕3に固着された中空の筒状体80が軸受81,82を介して旋回可能に保持されている。この筒状体80を包括するステージ90の上方部には駆動モータM_(4)が取り付けられており、減速機91,一対の平歯車92,93へ動力を伝達することで軸心D周りに旋回動作する。なお、筒状体80に固着された平歯車93も中空となっており、上腕2の内部、ステージ90の下方空間部を経由して導かれた各種動力線,信号線、さらには図示しないエンドエフェクタ用の配線,配管を先に位置する前腕3,手首基部4へ通すことが可能なように構成されている。また、ステージ90には隔壁94が歯車対92,93を包囲し、上述の配線,配管と接触して破断事故等が生じないよう取付けられている。前腕3及び手首基部4の内部には二つの駆動モータM_(5),M_(6) が組み込まれている。傘歯車対等で構成されたギヤボックス31,32、歯付ベルト33,34を介して、手首基部4,中ケーシング5及び手先ケーシング6に組み込まれた図示しない減速機,動力伝達要素に伝えられ、それぞれ軸心E周りに揺動,軸心F周りに回転動作するよう構成されている。」

(ウ)【図7】及び【図8】

そうすると、上記摘記事項(ア)及び(イ)並びに(ウ)の図示から、技術常識を踏まえて整理すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「基台10と、
前記基台10に旋回台1を介して設けられた上腕2と上腕2に取り付けられた前腕基部9と、
前記前腕基部9に対してD軸回りに回転するように前記前腕基部9に連結される前腕3、前記前腕3から延設された手首基部4と
前記D軸の延長線上に前記前腕3に設けられ、各種動力線,信号線、さらには図示しないエンドエフェクタ用の配線,配管を挿通可能な開口部と、
手首基部4の先端側に取り付けられて前記D軸に直交するE軸回りに揺動する中ケーシング5と、
前腕3に組み込まれた、前記E軸回りに前記中ケーシング5を揺動させるモータM_(5)と、
前記E軸に直交するF軸回りに回転するように前記ケーシング5に支持され各種動力線,信号線、さらには図示しないエンドエフェクタ用の配線,配管のいくつかが接続されるエンドエフェクタを保持可能な手先ケーシング6と、を有している
ことを特徴とする、ロボット。」

ウ. 対比・検討
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「基台10」は、補正発明の「基台」に相当する。
引用発明の「上腕2と上腕2に取り付けられた前腕基部9」は、補正発明の「アーム」に相当する。
補正発明の「基台に設けられたアーム」の実施例として、本願明細書の段落【0009】には、「基台1の上には垂直軸(S軸)回りに旋回自在に旋回ベース2が取り付けられ、旋回ベース2には下部アーム3が水平軸(L軸)回りに軸支され」との記載から、補正発明の「基台に設けられたアーム」は、「旋回ベース2」を介して設けられたものも包含するから、引用発明の「基台10に旋回台1を介して設けられた上腕2と上腕2に取り付けられた前腕基部9」は、補正発明の「前記基台に設けられたアーム」に相当する。
引用発明の「各種動力線,信号線、さらには図示しないエンドエフェクタ用の配線,配管」は、補正発明の「ケーブル」に相当し、引用発明の「開口部」は、補正発明の「通過口」に相当する。
引用発明の「D軸」、「E軸」及び「F軸」は、補正発明の「第1軸」、「第2軸」及び「第3軸」に相当する。
引用発明の「中ケーシング5」及び「手先ケーシング6」は、補正発明の「揺動体」及び「回転体」に、それぞれ相当する。
引用発明の「前腕3」は、補正発明の「胴体底部」と、「上腕2と上腕2に取り付けられた前腕基部9」(上記相当関係に照らして、補正発明は「アーム」。以下同様。)に対して、「軸心D」(「第1軸」)回りに回転するものであって、かつ「各種動力線,信号線、さらには図示しないエンドエフェクタ用の配線,配管」(「ケーブル」)を挿通可能な「開口部」(「通過口」)を有するものである限りにおいて共通する。
引用発明の「手首基部4」は、補正発明の「第1延在部」と「第2延在部」とが組み合わされたものと、「前腕3」(「胴体底部」)から延設され、「前腕3」と「中ケーシング5」(「揺動体」)との間を連結部材である限りにおいて共通する。
引用発明の「モータM_(5)」は、補正発明の「モータ」に相当する。

そうすると、補正発明と引用発明は、以下の点で一致し、かつ相違する。

<一致点>
「基台と、
前記基台に設けられたアームと、
前記アームに対して第1軸回りに回転するように前記アームに連結される胴体底部、前記胴体底部から延設された連結部材と、
前記第1軸の延長線上に前記胴体底部に設けられ、ケーブルを挿通可能な通過口と、
前記連結部材第1延在部と前記第2延在部との少なくともいずれかの先端側に取り付けられて前記第1軸に直交する第2軸回りに揺動する揺動体と、
前記第2軸回りに前記揺動体を揺動させるモータと、
前記第2軸に直交する第3軸周りに回転するように前記揺動体に支持されケーブルが接続されるエンドエフェクタを保持可能な回転体と、を有している
ことを特徴とする、ロボット。」

<相違点1>
補正発明の「連結部材」は、「胴体底部」から延設された「第1延在部」及び「第1延在部」と間隙を有して配設された「第2延在部」とからなるものであって、「モータ」を、第1軸の延長線上に対してオフセットした位置であって第1延在部および第2延在部の先端と前記胴体底部との間における前記胴体底部寄りの位置で胴体に支持」するものであるのに対し、引用発明のものは、「前腕3」から延びる「手首基部4」は、補正発明のような間隙を有して配設された二つの部材ではなく、「モータM_(5)」は、「前腕3」に取り付けられるものであって、「手首基部4」に取り付けられるものではない点。

<相違点2>
補正発明の「胴体底部」、「第1延在部」及び「第2延在部」は、「胴体」が有するものであるのに対し、引用発明は、「前腕3」及び「手首基部4」を有するような補正発明の上記「胴体」のような構成を備えたものではない点。

エ. 相違点に対する判断

相違点1について
上記(4)のイ.の摘記事項(ア)の「本発明の目的は、手首部の小型・軽量化さらには動作の高速・高精度化を確保しつつ、先端に取付けられたエンドエフェクタ用の動力線,信号線,エアー配管等を内部に通すのに好適な工業用ロボットの手首装置を提供すること」との記載から、及び同摘記事項(イ)の「前腕3の前方延長部には手首部8が取付けられている。手首部8は手首基部4と、この手首基部4に保持された中ケーシング5と、さらにこの中ケーシング5に保持された手先ケーシング6と、エンドエフェクタを取付ける手先フランジ7を具備し」の記載から、引用発明の目的は、「手首基部4」を含む「手首部8」の小型・軽量化である。
ここで、引用発明の「手首基部4」を補正発明のように間隙を有して配設された二つの部材と置換することは、当該置換によって、「手首基部4」の太さが増大すると解される。加えて、「前腕3」に取り付けられている「モータM_(5)」を設ける位置を、補正発明の「第1延在部および第2延在部の先端と前記胴体底部との間」に倣って取り付けようとすれば、当然に、上記二つの部材に置換された「手首基部4」に取り付けられることとなるが、その結果、「手首基部4」の重量が増えることになる。
そうすると、引用発明に対して、「手首基部4」の構成として、上記補正発明のものを採用しようと試みることは、上記引用発明の目的である「手首部の小型・軽量化」を妨げるものであるといえ、その動機に欠けるものである。
以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点1に係る構成を備えることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
また、他に相違点1に係る構成を想到する文献を発見しない。
したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、補正発明は、引用発明及び従来周知の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

(5) むすび
上記(1)で検討したように、本件補正は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるということはできず、上記(2)ないし(4)で検討したように、補正発明が本件の特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるともいえない。そして、他に本件補正を却下すべき理由はないから、原審における平成26年6月5日付け補正の却下の決定を取り消す。

第3 本願発明についての判断
以上のとおり、上記補正の却下の決定は取り消されたから、本願特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成26年3月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
そして、本願については、原査定の拒絶の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり、審決する。
 
審決日 2016-03-07 
出願番号 特願2012-163888(P2012-163888)
審決分類 P 1 8・ 121- WYA (B25J)
P 1 8・ 561- WYA (B25J)
P 1 8・ 537- WYA (B25J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松浦 陽  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 栗田 雅弘
久保 克彦
発明の名称 ロボット  
代理人 酒井 宏明  
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