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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1311772
審判番号 不服2014-25759  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-17 
確定日 2016-03-03 
事件の表示 特願2011-547120「情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月30日国際公開、WO2011/077503〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2011年12月21日を国際出願日とする出願であって、平成26年2月14日付けで拒絶理由が通知され、平成26年4月21日付けで意見書、手続補正書が提出されたが、平成26年9月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成26年12月17日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正書が提出されたものである。
平成27年9月30日付けで当審より拒絶理由が通知され、平成27年11月30日付けで意見書、手続補正書が提出されたものである。


2.当審における拒絶理由
当審において通知した拒絶理由における理由は、以下のとおりである。
(理由)
「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。


・請求項1
(1)「取得手段」は、検査結果をデータとして受け取る手段であり、情報を取得するために何らかのコンピュータのハードウエア資源を利用した処理を具体的に記載していないから、自然法則を利用しているとはいえない。
(2)「演算手段」は、検査結果に対して、決められた演算処理を行うことを記載しているに過ぎず、コンピュータのハードウエア資源を利用した処理を具体的に記載していないから、自然法則を利用しているとはいえない。
(3)「表示制御手段」は、演算結果を表示のみを行うためのものであり、コンピュータのハードウエア資源を利用した処理を具体的に記載していないから、自然法則を利用しているとはいえない。
(4)「出荷前検査」「鮮度検査」「施設の衛生検査」の内容についても、何ら処理内容を規定するものではなく、コンピュータのハードウエア資源を利用した処理を具体的にするものでもないから、自然法則を利用しているとはいえない。
(5)「情報処理装置」は、いわゆる、コンピュータであるが、コンピュータのハードウエア資源を利用した処理については、何ら記載されておらず、総合的にみても、コンピュータのハードウエア資源を利用した処理を具体的に表していないから、自然法則を利用しているとはいえない。
・請求項3
(1)「演算手段」における演算の内容を記載しているものの、演算におけるコンピュータのハードウエア資源を利用した処理を具体的に記載していないから、自然法則を利用しているとはいえない。
・請求項4
(1)「表示制御手段」としては、コンピュータの一般的な表示制御について記載されているに過ぎず、コンピュータのハードウエア資源を利用した処理を具体的に記載していないから、自然法則を利用しているとはいえない。
・請求項5
(1)「取得手段」「「表示制御手段」については、一般的な処理を記載しているに過ぎず、「演算手段」についても決められた演算を行うことを記載しているに過ぎないから、コンピュータのハードウエア資源を利用した処理を具体的に記載していないから、自然法則を利用しているとはいえない。
・請求項6
(1)「検査の結果を昇順または降順に一覧表示」することは、計算ソフト等の一般的機能であり、そのために格別な処理を行っているわけではないから、自然法則利用しているとはいえない。
・請求項7
(1)「施設の衛生検査の結果を表すグラフを表示させる」ことは、計算ソフト等の一般的機能であり、そのために格別な処理を行っているわけではないから、自然法則利用しているとはいえない。
・請求項8,9
(1)「施設の衛生検査の結果を表すレーダーチャートを表示させる」ことは、計算ソフト等の一般的機能であり、そのために格別な処理を行っているわけではないから、自然法則利用しているとはいえない。
・請求項10,11
(1)「取得ステップ」「演算ステップ」「表示制御ステップ」はそれぞれ、コンピュータのハードウエア資源を利用した処理を具体的に記載していないから、自然法則を利用しているとはいえない。
(2)「出荷前検査」「鮮度検査」「施設の衛生検査」の内容についても、何ら処理内容を規定するものではなく、コンピュータのハードウエア資源を利用した処理を具体的にするものでもないから、自然法則を利用しているとはいえない。

・・・(以下略)・・・ 」

3.本願特許請求の範囲
当該拒絶理由通知に対して提出された平成27年11月30日付けの手続補正書に記載された特許請求の範囲は以下のとおりである。

「 【請求項1】
取得手段、演算手段、及び、表示制御手段として機能するCPUを備え、
前記取得手段は、食品を調理して提供する施設で扱う前記食品の産地検査、毒性検査、出荷前検査、鮮度検査、及び、成分検査、並びに、前記施設の衛生検査の結果を、それぞれ、所定の点数を満点としたときの点数として取得し、
前記演算手段は、前記産地検査、前記施設の衛生検査、前記成分検査、及び、前記鮮度検査の結果である各点数を所定の安心度加算割合で加算した加算結果を算出することにより、前記施設で提供される前記食品の安心度を演算するとともに、前記毒性検査、前記鮮度検査、前記出荷前検査、及び、前記施設の衛生検査の結果である各点数を所定の安全度加算割合で加算した加算結果を算出することにより、前記施設で提供される前記食品の安全度を演算し、
前記表示制御手段は、各点数の前記加算結果で表された前記食品の安心度および安全度を、予め設定された複数の評価値のなかの前記加算結果に対応する評価値で表示させ、
前記出荷前検査は、出荷前の前記食品から、毒素が検出されるかどうかの検査を含み、 前記鮮度検査は、K値若しくはヒスタミン量のいずれか一つを少なくとも測定する検査を含み、
前記施設の衛生検査には、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、及び、腸炎ビブリオのなかの少なくとも一つと一般生菌の検査と、前記施設のスタッフの検便提出率の検査とが含まれる
情報処理装置。
【請求項2】
前記検査の結果と、その結果を向上させるための行為のスケジュールとを記憶する記憶手段
をさらに備え、
前記表示制御手段はまた、前記取得手段により取得された前記検査の結果に対応して前記記憶手段に記憶されているスケジュールを表示させる
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記食品の安心度としての加算結果を算出する際の各検査項目の前記安心度加算割合と、前記食品の安全度としての加算結果を算出する際の各検査項目の前記安全度加算割合とを記憶する記憶手段をさらに備える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得手段は、複数の施設について、前記毒性検査、前記産地検査、前記鮮度検査、前記出荷前検査、及び、前記成分検査、並びに、前記施設の衛生検査の結果を取得し、
前記演算手段は、前記施設ごとに、前記食品の安心度および安全度を演算し、
前記表示制御手段はまた、前記複数の施設の前記検査の結果を一覧表示させる
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記複数の施設の前記検査の結果を昇順または降順に一覧表示させる
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記施設の衛生検査の結果を表すグラフを表示させる
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記施設の衛生検査の検査項目を項目として、前記施設の衛生検査の結果を表すレーダーチャートを表示させる
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、前記施設の衛生検査の検査項目を項目として、最新の前記施設の衛生検査の結果と最新より前の前記施設の衛生検査の結果を表すレーダーチャートを表示させる
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
情報処理装置のCPUが、
食品を調理して提供する施設で扱う前記食品の産地検査、毒性検査、出荷前検査、鮮度検査、及び、成分検査、並びに、前記施設の衛生検査の結果を、それぞれ、所定の点数を満点としたときの点数として取得する取得ステップと、
前記産地検査、前記施設の衛生検査、前記成分検査、及び、前記鮮度検査の結果である各点数を所定の安心度加算割合で加算した加算結果を算出することにより、前記施設で提供される前記食品の安心度を演算するとともに、前記毒性検査、前記鮮度検査、前記出荷前検査、及び、前記施設の衛生検査の結果である各点数を所定の安全度加算割合で加算した加算結果を算出することにより、前記施設で提供される前記食品の安全度を演算する演算ステップと、
各点数の前記加算結果で表された前記食品の安心度および安全度を、予め設定された複数の評価値のなかの前記加算結果に対応する評価値で表示させる表示制御ステップと
を実行し、
前記出荷前検査は、出荷前の前記食品から、毒素が検出されるかどうかの検査を含み、
前記鮮度検査は、K値若しくはヒスタミン量のいずれか一つを少なくとも測定する検査を含み、
前記施設の衛生検査には、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、及び、腸炎ビブリオのなかの少なくとも一つと一般生菌の検査と、前記施設のスタッフの検便提出率の検査とが含まれる
情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータのCPUに、
食品を調理して提供する施設で扱う前記食品の産地検査、毒性検査、出荷前検査、鮮度検査、及び、成分検査、並びに、前記施設の衛生検査の結果を、それぞれ、所定の点数を満点としたときの点数として取得する取得ステップと、
前記産地検査、前記施設の衛生検査、前記成分検査、及び、前記鮮度検査の結果である各点数を所定の安心度加算割合で加算した加算結果を算出することにより、前記施設で提供される前記食品の安心度を演算するとともに、前記毒性検査、前記鮮度検査、前記出荷前検査、及び、前記施設の衛生検査の結果である各点数を所定の安全度加算割合で加算した加算結果を算出することにより、前記施設で提供される前記食品の安全度を演算する演算ステップと、
各点数の前記加算結果で表された前記食品の安心度および安全度を、予め設定された複数の評価値のなかの前記加算結果に対応する評価値で表示させる表示制御ステップと
を含む処理を実行させ、
前記出荷前検査は、出荷前の前記食品から、毒素が検出されるかどうかの検査を含み、 前記鮮度検査は、K値若しくはヒスタミン量のいずれか一つを少なくとも測定する検査を含み、
前記施設の衛生検査には、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、及び、腸炎ビブリオのなかの少なくとも一つと一般生菌の検査と、前記施設のスタッフの検便提出率の検査とが含まれる
プログラム。」

4.当審の判断
(1)特許法第2条第1項には、「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものをいう。」と規定され、同法第29条第1項柱書には、「産業上利用することができる発明をしたものは、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と規定されている。
したがって、請求項に係る発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」でないときは、その発明は特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
また、『審査基準 第III部 第1章 2.1発明に該当しないものの類型 2.1.4自然法則を利用していないもの』には、
『請求項に係る発明が以下の(i)から(v)までのいずれかに該当する場合は、その請求項に係る発明は、自然法則を利用したものとはいえず、「発明」に該当しない(例1 及び例2 参照)。
(i) 自然法則以外の法則(例:経済法則)
(ii) 人為的な取決め(例:ゲームのルールそれ自体)
(iii) 数学上の公式
(iv) 人間の精神活動
(v) 上記(i)から(iv)までのみを利用しているもの(例:ビジネスを行う方法それ自体)』
と記載されており、
『審査基準 第III部 第1章 2-1発明に該当しないものの類型 2.2コンピュータソフトウエアを利用するものの審査に当たっての留意事項』には、
『(1) ビジネスを行う方法、ゲームを行う方法又は数式を演算する方法に関連するものは、物品、器具、装置、システム、コンピュータソフトウエア等を利用している部分があっても、全体として自然法則を利用していない場合があるので、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かを慎重に検討する必要がある。
他方、ビジネスを行う方法、ゲームを行う方法又は数式を演算する方法に関連するものであっても、ビジネス用コンピュータソフトウエア、ゲーム用コンピュータソフトウエア又は数式演算用コンピュータソフトウエアというように、全体としてみると、コンピュータソフトウエアを利用するものとして創作されたものは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当する可能性がある。そのようなものについては、審査官は、ビジネスを行う方法等といった形式にとらわれることなく、コンピュータソフトウエアを利用するものという観点から「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かを検討する。
(2) 以下の(i)又は(ii)のように、全体として自然法則を利用しており、コンピュータソフトウエアを利用しているか否かに関係なく、「自然法則を利用した技術的思想の創作」と認められるものは、コンピュータソフトウエアという観点から検討されるまでもなく、「発明」に該当する。
なお、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であることから「発明」に該当する方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータソフトウエア又はその方法を実行するコンピュータ若しくはシステムは、通常、全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であるため、「発明」に該当する。
(i) 機器等(例:炊飯器、洗濯機、エンジン、ハードディスク装置、化学反応装置、核酸増幅装置)に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの
(ii) 対象の物理的性質、化学的性質、生物学的性質、電気的性質等の技術的性質(例:エンジン回転数、圧延温度、生体の遺伝子配列と形質発現との関係、物質同士の物理的又は化学的な結合関係)に基づく情報処理を具体的に行うもの』
と記載されている。


(2)そこで、請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)が特許法第2条第1項で規定する「発明」に該当するものであるのか、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるのかについて検討する。

本願発明の記載事項を便宜的に、以下のとおりに分けて検討する。

(a)「情報処理装置のCPUが、」
(b)「食品を調理して提供する施設で扱う前記食品の産地検査、毒性検査、出荷前検査、鮮度検査、及び、成分検査、並びに、前記施設の衛生検査の結果を、それぞれ、所定の点数を満点としたときの点数として取得する取得ステップ」
(b)「 前記産地検査、前記施設の衛生検査、前記成分検査、及び、前記鮮度検査の結果である各点数を所定の安心度加算割合で加算した加算結果を算出することにより、前記施設で提供される前記食品の安心度を演算するとともに、前記毒性検査、前記鮮度検査、前記出荷前検査、及び、前記施設の衛生検査の結果である各点数を所定の安全度加算割合で加算した加算結果を算出することにより、前記施設で提供される前記食品の安全度を演算する演算ステップ」
(c)「各点数の前記加算結果で表された前記食品の安心度および安全度を、予め設定された複数の評価値のなかの前記加算結果に対応する評価値で表示させる表示制御ステップ」
(d)「実行し」
(e)「前記出荷前検査は、出荷前の前記食品から、毒素が検出されるかどうかの検査を含み、
前記鮮度検査は、K値若しくはヒスタミン量のいずれか一つを少なくとも測定する検査を含み、
前記施設の衛生検査には、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、及び、腸炎ビブリオのなかの少なくとも一つと一般生菌の検査と、前記施設のスタッフの検便提出率の検査とが含まれる」
(f)「情報処理方法。」
(2-1)記載事項(a)、(d)、(f)について
本願が解決しようとする課題は、明細書の段落番号0007に「消費者や食品提供者が食品の安心度および安全度を容易に認識することができるようにするものである。」と記載されているように、消費者や食品提供者が食品の安心度および安全度を容易に認識するための方法である。

そこで、記載事項(a)、(d)、(f)は、課題解決を実現するために、情報処理装置がCPUを備えていて、そのCPUを利用して方法を実現しているという前提を記載しているもので、課題解決のための具体的処理を規定しているものではないことから、記載事項(a、(d)、(f)の構成は、自然法則を利用しているとはいえない。

(2-2)記載事項(b)について
「食品を調理して提供する施設で扱う前記食品の産地検査、毒性検査、出荷前検査、鮮度検査、及び、成分検査、並びに、前記施設の衛生検査の結果を、それぞれ、所定の点数を満点としたときの点数として取得する取得ステップ」は、明細書段落番号0034に「取得部51は、ユーザの入力部26の操作により入力された食品関連検査の検査結果等を取得し」と記載されていて、ユーザ入力部26の操作によって、それぞれの検査結果を点数として受け取ることであるから、自然法則を利用しているとはいえない。
また、「食品を調理して提供する施設で扱う前記食品の産地検査、毒性検査、出荷前検査、鮮度検査、及び、成分検査、並びに、前記施設の衛生検査の結果」は、単なる検査内容であって、自然法則を利用しているとはいえない。
「それぞれ、所定の点数を満点としたときの点数として」は、点数に関する取り決め事項を記載しているに過ぎないから、自然法則を利用したものではない。
記載事項(b)を総合してみても、単に、CPUを道具として情報を取得することを規定しているに過ぎず、自然法則を利用しているとはいえない。

(2-3)記載事項(c)について

「前記産地検査、前記施設の衛生検査、前記成分検査、及び、前記鮮度検査の結果である各点数を所定の安心度加算割合で加算した加算結果を算出することにより、前記施設で提供される前記食品の安心度を演算するとともに、前記毒性検査、前記鮮度検査、前記出荷前検査、及び、前記施設の衛生検査の結果である各点数を所定の安全度加算割合で加算した加算結果を算出することにより、前記施設で提供される前記食品の安全度を演算する演算ステップ」は、単に、「安全度」、「安心度」の計算手法を定義しているに過ぎず、人為的取り決め事項であるから、自然法則を利用しているとはいえない。

(2-4)記載事項(d)について
「各点数の前記加算結果で表された前記食品の安心度および安全度を、予め設定された複数の評価値のなかの前記加算結果に対応する評価値で表示させる表示制御ステップ」は、表示のための取り決め事項を記載していて、情報処理装置のCPUは、取り決め事項に基づいた表示のための道具として使用しているに過ぎないから、自然法則を利用しているとはいえない。

(2-5)記載事項(e)
「前記出荷前検査は、出荷前の前記食品から、毒素が検出されるかどうかの検査を含み、 前記鮮度検査は、K値若しくはヒスタミン量のいずれか一つを少なくとも測定する検査を含み、
前記施設の衛生検査には、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、及び、腸炎ビブリオのなかの少なくとも一つと一般生菌の検査と、前記施設のスタッフの検便提出率の検査とが含まれる」と記載されているが、「出荷前検査」「施設の衛生検査」の検査内容が何であるかは、任意の事項であり、検査内容とCPUの処理とは無関係であるから、検査内容によって自然法則を利用したものであるとはいえない。

(2-6)小括
記載事項(a)?(f)を総合的にみても、食品の安心度および安全度の評価手順を人為的に取り決めたものに過ぎないから、そもそも自然法則を利用したものではない。
また、情報処理装置のCPUを使用したとしても、単なる計算処理の道具として使用したという程度のものであって、CPUを道具として利用した取り決め事項を記載しているに過ぎないから、全体として自然法則を利用しているとはいえない。

したがって、本願発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」にあたらない。

(3)コンピュータ・ソフトウェア関連発明としての判断について
(3-1)本願発明は、上記のように、コンピュータを使用した「システム」であると一応認められるので、コンピュータ・ソフトウェア関連発明としても検討する。

コンピュータ・ソフトウエア関連発明については、審査基準の付属書B『第1章 コンピュータ・ソフトウエア関連発明 2.1 発明該当性(第29条第1項柱書)』に、以下のように記載されている。
『2.1.1.2 ソフトウエアの観点に基づく考え方
請求項に係るソフトウエア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かが、審査基準「第III 部第1 章 発明該当性及び産業上利附属書B 第1章 コンピュータソフトウエア関連発明用可能性」により判断されない場合は、審査官は、以下に示された基本的な考え方に基づいて判断する。
(1) 基本的な考え方
ソフトウエア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」となる基本的な考え方は以下のとおりである。
(i) ソフトウエア関連発明のうちソフトウエアについては、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合は、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。
「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とは、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することによって、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されることをいう。
(ii) ソフトウエア関連発明のうち、ソフトウエアと協働して動作する情報処理装置及びその動作方法及びソフトウエアを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体については、当該ソフトウエアが上記(i)を満たす場合、「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。』

(3-2)本願発明が、上記ソフトウエア関連発明として「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるか、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」か、を検討する。

ア.記載事項(a)、(d)、(f)は、(2-1)でも述べたように、CPUを利用して方法を実現しているという前提を記載しているに過ぎず、ソフトウエアによる情報処理が,ハードウエア資源を用いて具体的に記載されていないから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とはいえない。

イ.記載事項(b)は、検査結果データの取得においてCPUを利用していると考えられるが、検査データを取得するために、どの様なハードウエア資源を利用した処理によって実現しているのか具体的に記載されていないから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とはいえない。

ウ.記載事項(c)は、演算にCPUを利用していると考えられるが、安心度、安全度を演算するために、どの様なハードウエア資源を利用して、どの様に処理しているのか具体的に記載されていないから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とはいえない。

エ.記載事項(d)は、表示制御にCPUを使用していると考えられるが、安心度、安全度を表示するために、どの様なハードウエア資源を利用して、どの様に処理しているのか具体的に記載されていないから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とはいえない。

オ.記載事項(e)は、CPUを用いた処理に無関係の事項であるから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」ものではない。

カ.記載事項(a)?(f)を全体としてみても、CPUを使用していることは記載されているものの、CPUがどの様なハードウエア資源を利用して、どの様に情報処理を行っているのかについては具体的に記載されていないから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とはいえない。

(3-3)小括
以上のように、コンピュータ・ソフトウェア関連発明であるとしても、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とはいえないから、この点でも「自然法則を利用した技術的思想の創作」といえないものである。

(4)総括
(2)?(3)で述べたとおり、本願発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえないから、特許法第2条でいう「発明」に該当しない。
したがって、本願請求項1記載の発明は、特許法第29条第1項柱書きの規定を満たしていない。


5.むすび
以上のとおりであるから、平成27年11月30日付けの手続補正書、意見書によって平成27年9月30日付けの拒絶理由の理由1を解消することはできず、他の請求項を検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2015-12-25 
結審通知日 2016-01-05 
審決日 2016-01-19 
出願番号 特願2011-547120(P2011-547120)
審決分類 P 1 8・ 1- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮地 匡人  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 石川 正二
小田 浩
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム  
代理人 西川 孝  
代理人 稲本 義雄  

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