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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  A63F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A63F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63F
管理番号 1311865
異議申立番号 異議2015-700095  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-10-15 
確定日 2016-02-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第5716204号「遊技媒体計数装置」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5716204号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5716204号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成21年10月26日に特許出願された特願2009-245646号の一部を、平成25年9月19日に特願2013-194558号として新たな特許出願とし、さらにその一部を平成26年2月12日に特願2014-24322号として新たな特許出願とし、さらにその一部を平成26年8月22日に新たな特許出願としたものであって、平成27年3月27日に特許の設定登録がされ、その後、平成27年10月15日に、その特許に対し、特許異議申立人糸井 正弘により特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1?7に係る発明(以下「本件特許発明1?本件特許発明7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである(A?Lは、請求人の異議申立書における本件特許の請求項の分説に従い、当審にて付与。)。

「【請求項1】
A.機内に流入する遊技媒体を所定の計数手段に誘導する誘導路と、
B.前記遊技媒体の計数を不可状態にする前記所定の計数手段の上流に設けられた計数不可手段と、
C.前記計数不可手段を駆動させる駆動手段と、
D.を備えた遊技媒体計数装置であって、
E.前記計数不可手段と前記誘導路とを分離可能、かつ、前記計数不可手段と前記駆動手段とを分離可能に構成し、
F.前記誘導路は、前記遊技媒体を一つずつ前記計数手段に誘導するように構成されること
H.を特徴とする遊技媒体計数装置。

【請求項2】
I.機内に流入する遊技媒体を所定の計数手段に誘導する誘導路と、
J.前記遊技媒体の計数を不可状態にする前記所定の計数手段の上流に設けられた計数不可手段と、
K.前記計数不可手段を駆動させる駆動手段と、
L.前記計数手段によって計数された遊技媒体の数を表示可能な表示部と、
M.を備えた遊技媒体計数装置であって、
N.前記表示部を取り外すことなく、前記計数不可手段と前記誘導路とを分離可能、かつ、
P.前記計数不可手段と前記駆動手段とを分離可能に構成したこと
Q.を特徴とする遊技媒体計数装置。

【請求項3】
R.前記計数不可手段と前記駆動手段を連結させる連結手段を備え、
S.前記連結手段を解除させることにより、前記計数不可手段と前記駆動手段が分離可能になる請求項1又は2記載の遊技媒体計数装置。

【請求項4】
T.電力が供給されないときに、前記計数不可手段を計数不可能状態とするように構成し、
U.電力が供給されるときに、前記計数不可手段を計数可能状態とするように構成した請求項1?3のいずれか一項に記載の遊技媒体計数装置。

【請求項5】
V.前記計数手段によって計数された遊技媒体の数を表示可能な表示部として、所定の入力操作が可能なタッチパネルを備える請求項1?4のいずれか一項に記載の遊技媒体計数装置。

【請求項6】
W.店員のID情報を受け付ける受付手段と、
X.受け付けた店員のID情報が登録されているID情報と一致するかを判定する判定手段と、を備え、
Y.前記判定手段によって受け付けた店員のID情報が登録されているID情報と一致するときに、前記計数不可手段を計数可能状態とするように構成した請求項1?5のいずれか一項に記載の遊技媒体計数装置。

【請求項7】
Z.前記計数手段はメダルを計数対象とするように構成した請求項2記載の遊技媒体計数装置。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として甲第1号証?甲第4号証を提出するとともに、本件特許発明1?7に係る特許は以下の理由により取り消すべきものである旨主張している。

1.本件特許発明1?4は甲第1号証に記載された発明と同一であるから、その特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるため、取り消すべきである。

2.本件特許発明5は甲1号証に記載された発明および甲第2号証に記載の事項に基づいて、本件特許発明6は甲1号証に記載された発明および甲第3号証に記載の事項に基づいて、本件特許発明7は甲1号証に記載された発明および甲第4号証に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるため、取り消すべきである。

3.本件特許発明1及び本件特許発明2における発明特定事項は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているため、特許法第36条第6項第1号に係るサポート要件を満たしていないため、その特許は取り消すべきである。

4.本件特許発明1及び本件特許発明2における発明特定事項は、不明確なため、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていないため、その特許は取り消すべきである。

5.本件特許発明1及び本件特許発明2における発明特定事項は、明細書の記載の範囲を超えているため新規事項の追加に該当し、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、その特許は取り消すべきである。

6.本件特許は分割出願の要件に係る特許法第44条第1項に違反するから本件特許の出願日は平成26年8月22日となるため、原出願(特願2009-245646号)の公開公報である特開2011-87853号公報に基づいて本件特許発明1?7は特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項の要件を満たさないから、本件特許は取り消すべきである。

<証拠方法>
甲第1号証:特開平10-57609号公報
甲第2号証:特開2003-135831号公報
甲第3号証:特開2001-218973号公報
甲第4号証:特開2007-136100号公報

第4 甲第1号証?甲第4号証の記載事項
1.甲第1号証(特開平10-57609号公報 )には、以下の記載がある。(下線は当審で付与した。)

(ア)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば遊技ホールで遊技客が獲得したパチンコ玉やスロットマシンに使用するコインなどを計数する装置に関する。」
(イ)「【0006】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0007】50は、遊技客が獲得したパチンコ玉60を入れるための玉箱であり、底の両側には垂設された脚51を備えると共に、左右の2本の脚51の間にはシャッター52によって開閉される開口53が開設されている。
【0008】そして、2は図示しないパチンコ遊技機の膳台1の上面に設ける、位置決め用の凹部であり、玉箱50の脚51がそれぞれに差し込めるように離して形成する。また、少なくとも一方の凹部2の底には、所定の大きさを越えた圧力を受けたときに、所定の信号を出力することのできるマイクロスイッチ3を設ける。
【0009】また、凹部2に脚51を差し込んで固定した玉箱50の開口53に臨む位置の膳台1に、下端が図示しない島の玉回収部に連通しているパチンコ玉60の回収通路4の入口5を開設し、且つ、その入口5には例えば図示しないソレノイドへ通電することによって入口5を開口し、非通電時にはスプリング部材などによって入口5を閉鎖するように作動する、電動式のシャッター6を設ける。
【0010】なお、この電動式のシャッター6に、前記玉箱50のシャッター52が連動するように、両シャッターを図示しない係合手段などで係脱自在に係合させる。
【0011】さらに、回収通路4には、通過するパチンコ玉60の個数を計数することができる計数センサ7を設置する。」

(ウ)「【0013】上記構成の計数センサ7においては、LED9とフォトトランジスタ10との間をパチンコ玉60が通過する度に、LED9が発する光はパチンコ玉60によって遮断され、フォトトランジスタ10に届かなくなので、フォトトランジスタ10は間欠的に所定の起電力を発しなくなる。
【0014】そして、フォトトランジスタ10が出力する電圧変動が、入/出力インターフェース12を介して制御器11のマイコンなどからなる制御部13に入力され、この制御部13において電圧変動の回数を計数して、回収通路4を通過したパチンコ玉60の個数として記憶される。」

(エ)上記(イ)の記載を参考に【図1】を見ると、この計数装置は玉箱50と膳台1とからなり、玉箱50の底部にはシャッター52が設けられ、膳台1にパチンコ玉60の回収通路4が設けられ、その中には計数センサ7が設置され、その上流の入り口5には電動式のシャッター6が設けられている。また、ソレノイドは電動式のシャッター6を駆動するものであるから膳台1に設けられていることは明らかである。
そして、玉箱50と膳台1は差し込み固定され、分離可能な構成といえる。したがって、シャッター52は、回収通路4、ソレノイド、電動式のシャッター6と分離可能である。

(オ)上記(ウ)の記載より、計数センサ7は回収通路4を通過するパチンコ玉60を1個ずつ計数しているといえる。

上記の事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。a?qは、本件特許発明1の分説(A?Q)に対応させて、当審にて付与。以下同様。)

「a.玉箱50に流入するパチンコ玉60を計数センサ7に回収する回収通路4と、
b.前記パチンコ玉60の計数をする前記計数センサ7の上流に設けられた電動式のシャッター6及びシャッター52と、
c.前記電動式のシャッター6を駆動させるソレノイドと、
d.を備えたパチンコ玉計数装置であって、
e.前記シャッター52は膳台1に設けられた前記回収通路4、前記ソレノイド、前記電動式のシャッター6と分離可能とし、前記シャッター52は電動式のシャッター6と係合自在にし、
f.前記回収通路4は、前記パチンコ玉60を一つずつ前記計数センサ7に誘導するように構成される
h.パチンコ玉計数装置。」

2.甲第2号証(特開2003-135831号公報)には、以下の記載がある。

「【0010】本体ケース2における後方部右側には、表示ユニット7が立設状に設けられており、この表示ユニット7には、タッチパネル(図1に符号8を付して示す)を備えた表示部9及びカード挿入口10aを備えたカードリーダ10などが設けられている。
【0011】表示部9には、計数部4による計数値(つまり、玉受容器3内に投入されたパチンコ玉数)、そのパチンコ玉により交換可能な特定景品の個数、上記パチンコ玉を特定景品と交換した場合に生ずる余りパチンコ玉数を表示するという周知の表示機能が付与されている。また、本体ケース2における玉受容器3の前方位置には、表示部9に表示された余りパチンコ玉数に応じた数のパチンコ玉を放出する動作を行うための玉返却部11が設けられている。」
すなわち、甲第2号証には、「計数手段によって計数された遊技媒体の数を表示可能な表示部として、所定の入力操作が可能なタッチパネルを備える」ことが記載されている。

3.甲第3号証(特開2001-218973号公報)には、以下の記載がある。

「【0013】図6に示す他の実施形態では、操作制御部22に発信コード受信識別装置25を具備させ、予め個別の発信コードが登録されたリモコン発信器26から発信される発信コードを識別したときにのみ、計数制御部21のシャッター4を第1状態に開成させる開成指令信号を出力するようにしてある。この場合にも遊技客がパチンコ球計数装置を使用することは不可能となり、遊技客による不正を防止できる。上記した各実施形態におけるシステム構成を図7に示す。」
すなわち、甲第3号証には、「店員のID情報を受け付ける受付手段(発信コード受信識別装置55 )と、受け付けた店員のID情報が登録されているID情報と一致するかを判定する判定手段(操作制御部22)と、を備え、判定手段によって受け付けた店員のID情報が登録されているID情報と一致するときに、計数不可手段を計数可能状態とするようにした」ことが記載されている。

4.甲第4号証(特開2007-136100号公報)には、以下の記載がある。

「【0056】
計数部23は、メダル通路22cを搬送されて計数部23を通過する際に通過したメダルをカウントする。従って、メダルが通過するたびにカウントして計数可能である。このカウントは、計数部23がカウントするたびにカウント信号を出力し、別途設ける制御部14がこのカウント信号を入力して積算計数してもよいが、この実施例では計数部23が積算計数する。尚、制御部14は、ホッパー部2が備えるエラーセンサー(図示せず)等が出力するエラー信号を入力し該エラー信号によって適宜エラー処理を行う。例えば、ホッパー本体21bがメダル詰まりを起こし、ホッパー本体21b内にメダルがあることを関知していながら所定時間計数部23が計数しなかった場合には異常が発生していると判断し、係員に通知したり、あるいは引違戸3に開閉手段を設けた場合には左ホッパー本体21bの左引き戸3bを閉じて鍵を掛ける等の所定の処置をとらせる。・・・」

第5 当審の判断
上記第3で示した異議申立人の主張する申立理由について、以下1.?6.において検討する。
1.理由1について
(1)本件特許発明1
(対比)
本件特許発明1と甲1発明を対比する。

(ア)甲1発明における「玉箱50」、「パチンコ玉60」、「計数センサ7」、「回収通路4」、「パチンコ玉計数装置」は、それぞれ本件特許発明1の「機内」、「遊技媒体」、「計数手段」、「誘導路」、「遊技媒体計数装置」に相当する。

(イ)甲1発明における「電動式のシャッター6及びシャッター52」は「パチンコ玉60」の計数を不可状態にするものであるから、本件特許発明1の「計数不可手段」に相当する。そして、玉箱50が膳台1に固定された状態でシャッター52は電動式のシャッター6と係合自在であるから、甲1発明の「ソレノイド」が駆動すれば、シャッター52は電動式のシャッター6と連動して駆動することになる。したがって、甲1発明の「ソレノイド」は本件特許発明の計数不可手段を駆動させる「駆動手段」に相当する。

(ウ)しかし、一方の計数不可手段である「シャッター52」は「回収通路4」(誘導路)と「ソレノイド」(駆動手段)と分離可能であるが、他方の計数不可手段である「電動式のシャッター6」は膳台1に設けられているため「回収通路4」(誘導路)と「ソレノイド」(駆動手段)とは分離できない

したがって、本件特許発明1と甲1発明は、
「A.機内に流入する遊技媒体を所定の計数手段に誘導する誘導路と、
B.前記遊技媒体の計数を不可状態にする前記所定の計数手段の上流に設けられた計数不可手段と、
C.前記計数不可手段を駆動させる駆動手段と、
D.を備えた遊技媒体計数装置であって、
F.前記誘導路は、前記遊技媒体を一つずつ前記計数手段に誘導するように構成されること
H.を特徴とする遊技媒体計数装置。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本件特許発明1は、「前記計数不可手段と前記誘導路とを分離可能、かつ、前記計数不可手段と前記駆動手段とを分離可能に構成」したのに対し、甲1発明は、一方の計数不可手段である「シャッター52」は誘導路、駆動手段と分離可能に構成したが、他方の計数不可手段である「電動式のシャッター6」は誘導路、駆動手段と分離できない構成とした点。

(判断)
前記相違点について検討する。
本件特許発明1は、計数不可手段と誘導路とを分離可能、かつ、計数不可手段と駆動手段とを分離可能に構成したため、本件特許明細書の【0026】の記載の「本実施形態に係る計数装置1によれば、配線やコネクタを脱抜せずに、シャッター部4を取り外すことができ、レーン部31に対する清掃作業などのメンテナンス時の作業性を向上させることができる。」という効果を奏している。
しかし、甲1発明の一方の計数不可手段である「シャッター52」は誘導路、駆動手段と分離可能であるが、他方の計数不可手段である「電動式のシャッター6」は誘導路、駆動手段と分離できないため、上記のような本件特許発明1の効果は期待できない。
したがって、前記相違点に係る本件特許発明1の構成は技術的意義を有しており、本件特許発明1と甲1発明を同一のものとすることはできず、本件特許発明1は特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

(2)本件特許発明2
本件特許発明2は独立請求項であるが、実質的に本件特許発明1に対し、「L.前記計数手段によって計数された遊技媒体の数を表示可能な表示部と、N.前記表示部を取り外すことなく、」という構成を付加するとともに「F.前記誘導路は、前記遊技媒体を一つずつ前記計数手段に誘導するように構成されること」という構成を削除したものである。

そうすると、本件特許発明2と甲1発明を対比すると、少なく前記相違点はそのまま存在することになる。前記相違点についての検討は前述(1)のとおりであるから、同様理由により本件特許発明2と甲1発明を同一のものとすることはできず、本件特許発明2は特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

(3)本件特許発明3
本件特許発明3は本件特許発明1又本件特許発明2に、「R.前記計数不可手段と前記駆動手段を連結させる連結手段を備え、S.前記連結手段を解除させることにより、前記計数不可手段と前記駆動手段が分離可能になる」という構成を付加したものである。
そうすると、前述のように本件特許発明1又本件特許発明2が甲1発明と同一とすることができない以上、本件特許発明3も同様に甲1発明と同一とすることができず、本件特許発明3は特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

(4)本件特許発明4
本件特許発明4は本件特許発明1?3に、「T.電力が供給されないときに、前記計数不可手段を計数不可能状態とするように構成し、U.電力が供給されるときに、前記計数不可手段を計数可能状態とするように構成した」という構成を付加したものである。
そうすると、前述のように本件特許発明1?3が甲1発明と同一とすることができない以上、本件特許発明4も同様に甲1発明と同一とすることができず、本件特許発明4は特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

2.理由2について
本件特許発明5は本件特許発明1?4を従属した発明であり、本件特許発明6は本件特許発明1?5を従属した発明であり、本件特許発明7は本件特許発明2を従属した発明である。
本件特許発明1と本件特許発明2は甲1発明に対し、1.(1)で示した相違点を有しているので、本件特許発明5?7についても、少なくとも上記相違点を有することになる。
そこで、まずその相違点の容易想到性について検討する。
甲1発明1の「シャッター52」は誘導路、駆動手段と分離可能であるが、「電動式のシャッター6」は誘導路、駆動手段と分離できないため、「電動式のシャッター6」が誘導路、駆動手段と分離可能か否かについて検討する。
甲1発明における電動式のシャッター6は膳台1に備えられており、誘導路、駆動手段と分離するためには、電動式のシャッター6と駆動手段の構成について設計変更が必要となる。しかし、甲1号証には、本件特許発明のような「配線やコネクタを脱抜せずに、シャッター部4を取り外すことができ、レーン部31に対する清掃作業などのメンテナンス時の作業性を向上させることができる。」という作用効果に関する記載がないため、上記のような設計変更をする動機付けが存在しない。
次に、上記第4において記載した甲2第号証?甲第4号証をみても、「電動式のシャッター6」が誘導路、駆動手段と分離可能な構成について記載も示唆もされていない。
したがって、前記相違点に係る本件特許発明1又は本件特許発明2の構成は甲1発明と甲第2号証?甲第4号証に記載された事項から当業者が容易になし得るものではない。
よって、本件特許発明5は、その他の相違点について検討するまでもなく甲1発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許発明5は特許法第29条第2項の規定により特許を受けられないものではない。本件特許発明6、7についても同様であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けられないものではない。

3.理由3について
(1)本件特許発明1において「計数不可手段と誘導路とを分離可能、かつ、計数不可手段と駆動手段とを分離可能に構成した」という発明特定事項が含まれている。そして、この点について本件特許明細書の【0019】には、「このようにシャッター部4は、電気部品を設けずに、係合凹部411を係合凸部334に係合させることで、シャッター41の開閉動作が確保されるように構成してある。言い換えれば、何らハーネスやコネクタを脱抜することなく、ロックピン418のロックを解除するとともに、係合凹部411と係合凸部334との係合を解除させるだけで、シャッター部4とシャッター駆動部33とが分離される。
また、シャッター駆動部33を計数部3に設けたため、シャッター部4とシャッター駆動部33とが分離されることで、同時にシャッター部4と計数部3とが分離されることになる。」と記載されている。また、【0019】にはシャッター部4と計数部3の装着について記載されている。
したがって、本件特許発明1の分離可能な構成について、本件特許明細書にはロックピン418のロック解除、係合凹部411と係合凸部334との係合の解除等の構成が示されている。そして、本件特許明細書は分離可能な構成として係合手段が十分に開示されており、係合以外の固着手段が記載されていないからといって、サポートされていないということはできない。

(2)また、本件特許発明2において「表示部を取り外すことなく、計数不可手段と前記誘導路とを分離可能、かつ、計数不可手段と駆動手段とを分離可能に構成した」という発明特定事項が含まれている。
表示部について本件特許明細書【0009】には、計数装置1に設けられることが記載されており、また、【図1】、【図3】より、表示部は、装置本体2に設けられていることがわかる。したがって、表示部は計数不可手段が分離されるときに、誘導路や駆動手段と分離されないこと、すなわち、取り外すことができない構成について本件特許明細書及び図面に記載ないし開示されているといえる。

(3)したがって、本件特許発明1、2は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているとはいえないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていないということはできない。

4.理由4について
本件特許発明1及び本件特許発明2の「計数不可手段と誘導路とを分離可能、かつ、計数不可手段と駆動手段とを分離可能に構成した」という発明特定事項の「分離可能」について、当業者なら「着脱可能」、「着脱自在」と同等の構成を想起、想定することは明らかである。そして、「分離可能」や「着脱可能」の構成が、特別な道具を用いることなく、係合手段等によることは一般的であり、広く知られていることである。したがって、本件特許発明1の発明特定事項である「分離可能」という構成が不明確ということはできない。
また、「表示部」は装置本体2に設けられていることは上記3.(2)のとおりであるから、「表示部」は誘導路や駆動手段から取り外すことができないことは明らかである。したがって、本件特許発明1の発明特定事項である「表示部を取り外すことなく」という構成が不明確ということはできない。
よって、本件特許発明1および本件特許発明2は、発明が不明確であるとはいえないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていないということはできない。

5.理由5について
請求項1および請求項2における「機内に流入する遊技媒体を所定の計数手段に誘導する誘導路」という記載事項は、平成26年11月28日付けの手続補正書による補正において「機内に流入する」という文言が追加されたものである。
一方、本件特許に関する特願2014-169602号の願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の段落【0012】には、「・・すり鉢形状のホッパー5に投入された遊技球が・・投入口41aから機内に流入するとともに、複数の誘導路(レーン部31)により分流・整流されつつ、遊技球を検出する複数のセンサ(計数センサ部32)に誘導されて計数されるように構成されている。」と記載されている。
したがって、「投入口41aから機内に流入する」という記載が当初明細書にある以上、請求項の記載に「機内に流入する」という文言が追加されたところで、その補正が当初明細書の範囲を超えたものとはいえない。
よって、平成26年11月28日付けの手続補正書による請求項1および請求項2に関する補正は、願書に最初に記載した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないということはできない。

6.理由6について
異議申立人は以下のような主張をしている。
「本件特許の原出願である特願2009-245646号の明細書には、ごみの付着した遊技媒体がそのまま遊技媒体計数装置に投入されることがあり、そうすると、そのごみがレーン(誘導路)に付着し、遊技媒体詰まりが発生するため、このような遊技媒体詰まりの発生を抑えるために、レーンに対する清掃作業を頻繁に行う必要があり、この際にレーンを覆うシャターを取り外さなければならいことが開示されている。また、上記の原出願の明細書には、シャッターを取り外すには、駆動源ごとと取り外さなければならず、そのためには、駆動源に電源や信号を伝送する配線やコネクタを脱抜しなければならないが、本発明は、駆動源に電源や信号を伝送する配線やコネクタを脱抜せずに、シャッターを取り外すことができ、清掃作業などのメンテナンス時の作業性を向上させたことが開示されている。しかしながら、本件特許の明細書には、原出願の明細書における上記の記載事項が何ら記載されていない。とりわけ、原出願の明細書における上記事項は、原出願の発明の作用効果に相当し、極めて重要度が高いにもかかわらず、本件特許の明細書ではこのような記載が削除されている。このため、分割出願の明細書に記載された事項が原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるとはいえず、分割の実体的要件を満たさないため、本件特許に係る出願は適法になされていない。
したがって、本件特許の出願日は平成26年8月22日となるため、本件特許発明1?7は原出願の公開公報である特開2011-087853号公報に基づき、特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項の要件を満たさない。」
そこで、検討すると、確かに本件特許明細書には、【発明が解決しようとする課題】については欠落している。しかし、本件特許明細書の【0026】には、「 以上説明したように、本実施形態に係る計数装置1によれば、配線やコネクタを脱抜せずに、シャッター部4を取り外すことができ、レーン部31に対する清掃作業などのメンテナンス時の作業性を向上させることができる。」と記載されており、原出願の発明と同様の作用効果が記載されている。
したがって、異議申立人の主張のように、分割の実体的要件を満たさないため、本件特許に係る出願は適法になされていないということはできずない。
よって、本件特許発明1?7は、その出願の出願日は原出願の出願日に遡及するから、特許法第29条第1項第3号に該当することはなく、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けられないものではない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件特許発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する
 
異議決定日 2016-02-01 
出願番号 特願2014-169602(P2014-169602)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A63F)
P 1 651・ 121- Y (A63F)
P 1 651・ 537- Y (A63F)
P 1 651・ 55- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田畑 覚士  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 長崎 洋一
本郷 徹
登録日 2015-03-27 
登録番号 特許第5716204号(P5716204)
権利者 株式会社北電子
発明の名称 遊技媒体計数装置  
代理人 渡辺 喜平  
代理人 岡野 功  
代理人 今井 哲也  
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