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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60R
審判 全部申し立て 2項進歩性  B60R
管理番号 1311884
異議申立番号 異議2016-700003  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-07 
確定日 2016-03-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第5746649号「車両用表示装置」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5746649号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5746649号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、特許法第30条第2項新規性喪失の例外適用の申請を伴うものであり、平成24年2月22日に特許出願され、平成27年5月15日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人星野裕司により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第5746649号の請求項1ないし9に係る特許は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであり、 請求項1ないし9に係る特許発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明9」という。)は、以下のとおりである。

「 【請求項1】
車内の天井に装置本体が取り付けられ、その装置本体にモニタ部が回動支持部を介し開閉自在に取り付けられた車両用表示装置であって、
装置本体は、
モニタ部をそのモニタ面が対向するように格納するモニタ格納部と、
そのモニタ格納部の左右両側に設けられ、モニタ部を格納した際、モニタ部の表面とほぼ面一になる両側枠部と、
モニタ部を格納した際、モニタ部の表面および両側枠部の表面とほぼ面一になる表面を有する本体部とを有し、
その本体部に、所望の効果を有するイオンを発生し、そのイオンを車内へ放出するイオン放出機を設け、
そのイオン放出機は、所望の効果を有するイオンを、車内から取り入れた空気と共に車内へ放出するように構成されており、
本装置を車両の天井に装着した際、イオン放出機が発生した所望の効果を有するイオンの放出口は、本体部において後席側を向く後席側側面に設ける一方、車内から取り入れる空気の取り入れ口は、車両の左右両側を向く両側枠部の側面のうち助手席側の側面に設け、イオン放出機以外の本装置の機能の電源を少なくともオフする装置用電源スイッチは、
両側枠部の側面のうち運転席側の側面に設けることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用表示装置において、
イオン放出機の電源をオンまたはオフするイオン放出機用電源スイッチは、本体部の表面の中央より運転席側か、あるいは両側枠部の側面のうち運転席側の側面に設けることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置において、
イオンの放出口には、イオン放出機から空気と共に放出される所望の効果を有するイオンの流れが後席側側面に対し垂直方向になるようにその垂直方向に並んだ整流フィンが設けられていることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項4】
請求項1?請求項3のいずれか一の請求項に記載の車両用表示装置において、
イオンの放出口は、本装置を車両の天井に装着した際、イオン放出機から空気と共に放出される所望の効果を有するイオンの流れが下向きになるように傾斜面が設けられていることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項5】
請求項1?請求項4のいずれか一の請求項に記載の車両用表示装置において、
本体部の後席側側面におけるイオンの放出口の両側には、イオン放出機からイオンが放出されないダミー放出口が併設されていることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項6】
請求項1?請求項5のいずれか一の請求項に記載の車両用表示装置において、
空気の取り入れ口には、本装置を車両の天井に装着した際、後席側からの空気を取り入れるように後席側に傾斜したルーバーが設けられていることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項7】
請求項1?請求項6のいずれか一の請求項に記載の車両用表示装置において、
装置本体の両枠部には、ルームランプが設けられていることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項8】
請求項1?請求項7のいずれか一の請求項に記載の車両用表示装置において、
さらに、本装置に対し各種動作指令を送信するリモコン装置が設けられており、そのリモコン装置には、イオン放出機の電源をオンまたはオフするイオン放出機用電源ボタンが設けられていることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項9】
請求項1?請求項8のいずれか一の請求項に記載の車両用表示装置において、
イオン放出機が発生する所望の効果を有するイオンとは、少なくとも、車内を浮遊したり、車内のシート等に付着するカビ菌、または細菌、ウイルスに作用して除菌ないしはその発生を抑える除菌ないしは菌発生抑制効果、車内を脱臭する脱臭効果、花粉やダニ等のアレルギー物質のアレルギー抑制効果、髪や素肌を保湿させる保湿効果のいずれか一つ以上の効果を有することを特徴とする車両用表示装置。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、主たる証拠として下記の甲第1号証及び従たる証拠として下記の甲第2ないし4号証を提出し、請求項1ないし9に係る特許は、甲1、2号証に記載の発明及び甲第3号証に記載の周知技術、あるいは、甲1、2号証に記載の発明並びに甲第3号証に記載の周知技術及び慣用技術、あるいは、甲1、2、4号証に記載の発明並びに甲第3号証に記載の周知技術及び慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、請求項1ないし9に係る特許を取り消すべきものである旨主張している(以下、「異議理由1」という。)。
・甲第1号証:特開2006-192972号公報
・甲第2号証:特開2006-69427号公報
・甲第3号証:特開2009-298336号公報
・甲第4号証:特開2011-168141号公報
特に、本件特許発明1については、甲第1号証に記載の発明に、甲第2号証に記載の発明及び甲第3号証に記載の周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。

また、請求項5及びその従属請求項である請求項6ないし9に係る特許発明は、いずれも技術的意味を当業者が理解することができず、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、請求項5及びその従属請求項である請求項6ないし9に係る特許を取り消すべきものである旨も主張している(以下、「異議理由2」という。)。

第4 特許異議申立理由についての検討
1 異議理由1(特許法第29条第2項違反)について
(1) 刊行物の記載
ア 甲第1号証について
本件の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証の【請求項1】、段落【0009】、【0023】、【0025】、【0027】及び【図1】?【図4】の記載によれば、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「車室の天井部54にハウジング12が取り付けられ、そのハウジング12に表示パネル10が回動軸部14を介し開閉自在に取り付けられた後部ディスプレイ装置1であって、
ハウジング12は、
表示パネル10をその裏面が天井部に対面する水平近傍状態に折り畳まれるように回動して表示パネル10の表示画面11が下側を向く天井部折り畳み位置で収容し、閉の状態では、ハウジング12の下端面と前記表示パネル10の表面10aとがほぼ面一となるように収容する収容部13と、
表示パネル10がその天井部側折り畳み位置にある状態で、下側を向く表示画面11を所定のタイミングで発光させて下方発光部として機能させる発光制御手段と、
表示パネル10には、操作部15を設け、操作部15は、映像を表示させるときの電源のオン/オフボタン15a、表示パネル10の開閉を行うパネル開閉ボタン15a’、表示パネル10が吊り下げ位置の状態でテレビチャンネルを切り替える切替ボタン15b、音声の調整などをする調整ボタン15c等の操作ボタンを備えた後部ディスプレイ装置1。」

イ 甲第2号証について
本件の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証の【請求項9】、段落【0038】?【0040】及び【図2】?【図4】の記載によれば、甲第2号証には次の発明が記載されている。
「前後に並ぶ複数の椅子70と、
前記複数の椅子70のうち前の椅子の背面に設けた液晶モニタ62を含むパネル60に、イオン発生器40を固定し、椅子70の背面からイオンを放出するイオン制御車輌。」

ウ 甲第3号証について
本件の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証の【請求項1】、段落【0004】、【0035】?【0036】、【0038】?【0040】及び【図2】?【図3】の記載によれば、甲第3号証には次の事項が記載されている。
「車両天井中央部付近に設置される車載用イオン発生装置6であって、
ハウジング7と、
前記ハウジング7の長手方向をなす対向する一対の側面の一方または両方に設けた吸込口8と、
前記ハウジング7の前部に開口形成された前席用吹出口9、10と、
前記ハウジング7の後部に開口形成された後席用吹出口11、12と、
前記ハウジング7内に配置され、前記吸込口8から吸い込まれる車室内の空気を前記前席用吹出口9、10に導く前席用ダクト13、14と、
前記ハウジング7内に配置され、前記吸込口8から吸い込まれる車室内の空気を前記後席用吹出口11、12に導く後席用ダクト15、16と、
前記ハウジング7内に設けられ、前記吸込口8から吸い込んだ車室内の空気を、前記前席用ダクト13、14内を通って前記前席用吹出口9、10から車室内に吹き出す前席用送風機17、18と、
前記ハウジング7内に設けられ、前記吸込口8から吸い込んだ車室内の空気を、前記後席用ダクト15、16内を通って前記後席用吹出口11、12から車室内に吹き出す後席用送風機19、20と、
前記ハウジング7内に設けられ、前記前席用ダクト13、14内でプラスイオンとマイナスイオンを発生する前席用イオン発生素子31、32と、
前記ハウジング7内に設けられ、前記後席用ダクト15、16内でプラスイオンとマイナスイオンを発生する後席用イオン発生素子33、34と、
を有する車載用イオン発生装置6。」

(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア)
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「車室」は本件特許発明1の「車内」に相当し、以下同様に、「天井部54」は「天井」に、「表示パネル10」は「モニタ部」に、「回動軸部14」は「回動支持部」に、「後部ディスプレイ装置」は「車両用表示装置」に、「表示画面11」は「モニタ面」に、「収容部13」は「モニタ格納部」に相当する。

(イ)
甲1発明における「ハウジング12」には、少なくとも「表示パネル10」を除いた車両後部座席用ディスプレイ装置としての各種部品が内蔵されているのは自明のことであるから、「ハウジング12」及びそれに内蔵される各種部品を含めたものは、本件特許発明1における「装置本体」に相当するといえる。

(ウ)
甲1発明における「表示パネル10をその裏面が天井部に対面する水平近傍状態に折り畳まれるように回動して表示パネル10の表示画面11が下側を向く天井部折り畳み位置で収容」する「収容部13」と、本件特許発明1における「モニタ部をそのモニタ面が対向するように格納するモニタ格納部」とは、「モニタ部を格納するモニタ格納部」という限度で一致するといえる。

(エ)
甲第1号証の【図1】、【図4】の記載より、「ハウジング12」における「収容部13」に対する左右両側の箇所は「両側枠部」といえるものであり、「収容部13」に対する後方の箇所は「本体部」といえるものである。
したがって、甲1発明における「閉の状態では、ハウジング12の下端面と前記表示パネル10の表面10aとがほぼ面一となるように収容する収容部13」は、本件特許発明1における「そのモニタ格納部の左右両側に設けられ、モニタ部を格納した際、モニタ部の表面とほぼ面一になる両側枠部と、モニタ部を格納した際、モニタ部の表面および両側枠部の表面とほぼ面一になる表面を有する本体部とを有し」に相当するといえる。

(オ)
甲1発明における「表示パネル10には、操作部15を設け、操作部15は、映像を表示させるときの電源のオン/オフボタン15a、表示パネル10の開閉を行うパネル開閉ボタン15a’、表示パネル10が吊り下げ位置の状態でテレビチャンネルを切り替える切替ボタン15b、音声の調整などをする調整ボタン15c等の操作ボタンを備えた」と、本件特許発明1における「イオン放出機以外の本装置の機能の電源を少なくともオフする装置用電源スイッチは、両側枠部の側面のうち運転席側の側面に設ける」とは、「本装置の機能の電源を少なくともオフする装置用電源スイッチを設ける」という限度で一致するといえる。

(カ)
以上のことから、本件特許発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「車内の天井に装置本体が取り付けられ、その装置本体にモニタ部が回動支持部を介し開閉自在に取り付けられた車両用表示装置であって、
装置本体は、
モニタ部を格納するモニタ格納部と、
そのモニタ格納部の左右両側に設けられ、モニタ部を格納した際、モニタ部の表面とほぼ面一になる両側枠部と、
モニタ部を格納した際、モニタ部の表面および両側枠部の表面とほぼ面一になる表面を有する本体部とを有し、
本装置の機能の電源を少なくともオフする装置用電源スイッチを設ける車両用表示装置。」

<相違点1>
モニタ部の格納に関し、本件特許発明1は「モニタ格納部」に対し「モニタ部をそのモニタ面が対向するように格納する」のに対し、甲1発明は「収容部13」に対し「表示画面11が下側を向く天井部折り畳み位置で収容する」ものであり、「表示パネル10がその天井部側折り畳み位置にある状態で、下側を向く表示画面11を所定のタイミングで発光させて下方発光部として機能させる発光制御手段」を備えるものである点。

<相違点2>
本件特許発明1が、
「その本体部に、所望の効果を有するイオンを発生し、そのイオンを車内へ放出するイオン放出機を設け、そのイオン放出機は、所望の効果を有するイオンを、車内から取り入れた空気と共に車内へ放出するように構成されており、
本装置を車両の天井に装着した際、イオン放出機が発生した所望の効果を有するイオンの放出口は、本体部において後席側を向く後席側側面に設ける一方、車内から取り入れる空気の取り入れ口は、車両の左右両側を向く両側枠部の側面のうち助手席側の側面に設け、イオン放出機以外の本装置の機能の電源を少なくともオフする装置用電源スイッチは、両側枠部の側面のうち運転席側の側面に設ける」
ものであるのに対し、甲1発明は、「イオン放出機」に相当する事項を有しておらず、「電源のオン/オフボタン15a」は「表示パネル10」に配置されるものである点。

(キ)
上記<相違点1>について検討する。
a
甲1発明は、甲第1号証の段落【0005】に記載の「図14は、車内天井の車両後部座席用ディスプレイ装置101の設置周辺部の拡大図を示しており、室内灯103が車両後部座席用ディスプレイ装置101の後部座席方向に設置されるのが普通である。図14(a)に示すように、ディスプレイ102が天井から吊り下げられ下に開いた開状態で、室内灯103が照射されるとディスプレイ102にその光が入って視認の妨げとなる。また、図14(b)に示すように、ディスプレイ102を使用していない場合は、天井に沿った閉の状態となるが、室内灯103も設置されているため、天井のデザインが煩雑なものになるとともに、室内灯103と後部座席用ディスプレイ101との干渉を避けて両方を配置しなければならないため、一方を最適な位置に設ければ、他方の設置の自由度が阻害される不都合がある。」という従来技術の問題に鑑み発明されたものである。

b
そして、その問題を解決するために「表示画面11が下側を向く天井部折り畳み位置で収容する」という事項及び「表示パネル10がその天井部側折り畳み位置にある状態で、下側を向く表示画面11を所定のタイミングで発光させて下方発光部として機能させる発光制御手段」を備えるという事項を採用することにより、段落【0009】に記載の「以上の構成により、表示パネルが天井部側折り畳み位置にある場合に、下側を向く発光表示画面を例えば室内灯等の下方発光部として機能させて、後部座席用ディスプレイ装置と室内灯等の下方発光部を兼用することができるため、別の位置に室内灯等を設置する必要がなくなり、室内の天井部を簡単な構造にとすることができる。また、室内灯等が省略されれば、後部座席用ディスプレイ装置の画面に室内灯の光が当たって視認性が悪くなることも回避できる。」という効果を得ているものである。

c
すなわち、甲1発明において「表示画面11が下側を向く天井部折り畳み位置で収容する」という事項は必須のものであり、収容時の上下関係を逆に「表示画面11」(「モニタ面」に相当。)を「収容部13」(「モニタ格納部」に相当。)に対向するように収容する構成に変更することは、上記bの効果を失わせるものであって、阻害要因があるといえる。
したがって、甲1発明において上記相違点1に係る本件特許発明1の事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たこととはいえない。

(ク)
上記<相違点2>について検討する。
a
甲第2号証には、上記(1)イで述べた発明が記載されていると認められるが、「複数の椅子70のうち前の椅子の背面」からイオンを放出する理由は、段落【0013】に記載されるように「座席ごとにイオンの発生を制御できる」ようにするためである。
したがって、そもそも座席ごとに設けられるものではない甲1発明に適用する動機付けは見当たらない。また、甲1発明が有する「車内から取り入れる空気の取り入れ口」については、そのような事項を有しているかどうかも明らかでない。

b
甲第3号証には、上記(1)ウで述べた事項が記載されていると認められ、【図2】、【図3】等の記載より「吸込口8」が車両進行方向に対し右側の側面(右ハンドル車であるなら運転席側、左ハンドル車であるなら助手席側。)に配置されていることが把握できる。しかしながら、「吸込口8」(「車内から取り入れる空気の取り入れ口」に相当。)と「運転席」や「助手席」との配置関係についての記載はなく、選択的事項として「一対の側面の一方または両方」に設けるものであることから、「吸込口8」の配置に関し、甲第3号証に開示されるのは、単に「側面」に配置するということにとどまり、「助手席」との配置関係を特定する技術思想はそもそもないものと解される。

c
ここで、本件特許発明1において、「イオン放出機以外の本装置の機能の電源を少なくともオフする装置用電源スイッチ」を「運転席側の側面」に設けた理由は、本件特許明細書の段落【0020】に記載されるように「本装置1の映像再生をオン・オフする後述するリモコン装置6(図11参照)を使用しないでも、運転席93側からドライバーが手を伸ばして装置用電源スイッチ15cを操作することにより、簡単に本装置1の映像再生を終了させることができる。その結果、夜間の走行時に、後席94?97やその乗員が就寝しても、運転席93側から装置用電源スイッチ15cを押すことにより、簡単に本装置1の映像再生をオフさせることができ、使い勝手が良い。」ということのためであり、「車内から取り入れる空気の取り入れ口」を「助手席側の側面」に設けた理由は、本件特許明細書の段落【0019】に記載されるように「左側枠部14Lに空気取り入れ口17を設ける当たって、装置用電源スイッチ15cからの制約を受けることがなくなる。」ということのためであるが、このように、いわば運転席側と助手席側とで、装置用電源スイッチと空気取り入れ口とを振り分けて側面に配置して、装置用電源スイッチのドライバーによる操作性と空気取り入れ口の配置のし易さを両立させる技術思想は、甲第1ないし3号証のいずれにも開示されていない。

d
ところで、特許異議申立人は、周知技術を示す一例として甲第3号証を捉えているようである。しかしながら、特許異議申立書の甲第3号証に関する主張は、甲第3号証の記載事項が周知技術と認めるに足りるものではない。

e
そして、特許異議申立人は、特許異議申立書の第19ページ末行?第20ページ第4行で「一般的なイオン発生装置において、電源スイッチ、吸入口、吹出し口等の各部品を、その他の部品から制約を受けることがない位置に設計すること」及び第20ページ第15?16行で「車両用表示装置に限らず、車両用装置の電源スイッチを運転席側に設けること」が周知技術であると主張するが、その証拠はない。なお、仮にそれらが個別に周知技術であったとしても、上記cの技術思想は周知とはいえない。

f
したがって、甲第3号証の記載事項を周知技術とし、かつ、上記eの事項を周知技術とすることを前提とする、特許異議申立人主張の容易想到の理由は、その前提自体が失当であり、甲1発明において上記相違点2に係る本件特許発明1の事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たこととはいえない。

g
また、甲第3号証の記載事項が公知技術であり、上記eの事項が個別に周知技術であるとしても、上記c及びeのなお書きで述べた理由により、上記相違点2に係る本件特許発明1の事項に含まれる「本装置を車両の天井に装着した際、イオン放出機が発生した所望の効果を有するイオンの放出口は、本体部において後席側を向く後席側側面に設ける一方、車内から取り入れる空気の取り入れ口は、車両の左右両側を向く両側枠部の側面のうち助手席側の側面に設け、イオン放出機以外の本装置の機能の電源を少なくともオフする装置用電源スイッチは、両側枠部の側面のうち運転席側の側面に設ける」という事項を有するものとすることは、そもそも「イオン放出機」に相当する事項を有していない甲1発明において、当業者が容易になし得たことということはできない。

(ケ)
よって、本件特許発明1は、特許異議申立人主張の容易想到の理由によっては、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
また、甲第3号証の記載事項が公知技術であり、上記(ク)eの事項が個別に周知技術であるとしても、本件特許発明1は、甲1発明、甲第2号証に記載の発明及び甲第3号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 本件特許発明2ないし9について
本件特許発明2ないし9は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むのであるので、上記ア(キ)c及び(ク)fと同様の理由により、特許異議申立人主張の容易想到の理由によっては、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
また、甲第3号証の記載事項が公知技術であり、上記ア(ク)eの事項が個別に周知技術であるとしても、甲第4号証に記載の発明も上記相違点1、2に係る本件特許発明1の発明特定事項を示唆するものではないから、上記ア(キ)c及び(ク)gと同様の理由により、本件特許発明2ないし9は、甲1発明、甲第2号証に記載の発明及び甲第3号証の記載事項、あるいは、甲1発明、甲第2、4号証に記載の発明及び甲第3号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3) 小活
上記のとおり、本件特許発明1ないし9は、特許異議申立人主張の容易想到の理由によって、本件特許発明1は当業者が容易に発明をすることができたものということはできず、また、甲第3号証の記載事項が公知技術であり、上記(2)ア(ク)eの事項が個別に周知技術であるとしても、本件特許発明1ないし9は、いずれも、甲1発明、甲第2号証に記載の発明及び甲第3号証の記載事項、あるいは、甲1発明、甲第2、4号証に記載の発明及び甲第3号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、異議理由1の理由及び証拠によっては、本件特許発明1ないし9を取り消すことはできない。

2 異議理由2(特許法第36条第6項第2号違反)について
(1) 主張の概要
特許異議申立人は、本件特許発明5の「車両用表示装置において、本体部の後席側側面におけるイオンの放出口の両側には、イオン放出機からイオンが放出されないダミー放出口が併設されている」という発明特定事項について、本件特許明細書の段落【0031】の「ダミーのダミー放出口161,162もイオン発生器31が発生した所望の効果を有するイオンを含む空気が流れてくる放出口に見えるので、後席94?97側やその乗員などに対し放出口が広いという心理的な効果も与えることができる。」という記載をもってしても、ダミー放出口と心理的な効果の関連性を見出すことができず、技術的意味を当業者が理解することができないことから、特許を受けようとする発明が明確でなく、本件特許発明5及びそれに従属する本件特許発明6ないし9は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨主張している。

(2) 当審の判断
上記の発明特定事項について検討するに、「ダミー放出口」が「イオン放出機からイオンが放出されない」ものであるということが特定されており、その配置位置も「本体部の後席側側面におけるイオンの放出口の両側」と特定されていることから、記載自体が不明確とはいえず、また、技術的な不備があるともいえないことから、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえない。
なお、特許異議申立人は、ダミー放出口と心理的な効果の関連性を見出すことができないと主張するが、機能部材が大きく見える、あるいは、自分の方にも配置されているように見えると、心理的にその機能部材の大きな効果が期待されることはある程度推認できることであって、本件特許発明5においても、ダミー放出口を設けることによる効果は、当業者にとって理解不可能なこととはいえない。
よって、本件特許発明5は、明確でないとはいえず、従属する本件特許発明6ないし9についても、同様の理由により、明確でないとはいえない。

(3) 小活
以上のとおり、本件特許発明5の「車両用表示装置において、本体部の後席側側面におけるイオンの放出口の両側には、イオン放出機からイオンが放出されないダミー放出口が併設されている」という発明特定事項は、明確で
ないとはいえないので、異議理由2の理由によって、本件特許発明5ないし9を取り消すことはできない。

第5 むすび
以上検討したとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-03-04 
出願番号 特願2012-36533(P2012-36533)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B60R)
P 1 651・ 537- Y (B60R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岸 智章  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 平田 信勝
一ノ瀬 覚
登録日 2015-05-15 
登録番号 特許第5746649号(P5746649)
権利者 アルパインマーケティング株式会社
発明の名称 車両用表示装置  
代理人 中島 重雄  
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