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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E04B
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  E04B
管理番号 1312165
審判番号 無効2015-800127  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-05-26 
確定日 2016-03-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第4908098号発明「デッキ材の固定装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4908098号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明の特許を無効とすることを求める事件であって、手続の経緯は、以下のとおりである。

平成18年 7月31日 本件出願(特願2006-207495号)
平成24年 1月20日 設定登録(特許第4908098号)
平成27年 5月26日 本件無効審判請求
平成27年 6月27日付け(6月29日差出)
審判請求書に係る手続補正書(方式)
平成27年 9月 3日 被請求人より答弁書提出
平成27年10月 8日 審理事項通知書(起案日)
平成27年10月29日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成27年11月11日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成27年11月19日 口頭審理

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下「本件発明1」などといい、それらをまとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(請求項1における符号A.ないしD.は、請求人の主張に沿って審決にて付した。)。

「【請求項1】
A.平行に配列される両デッキ材の側面間に挟着されるネジホルダーと、このネジホルダーを根太上に固定するための止めネジとからなり、
B.ネジホルダーは、内部中央に、止めネジを遊挿し得る縦孔を有するとともに、両側に、両デッキ材の係止凹溝内へ挿入されるように延びる連結板をそれぞれ有し、
C.各連結板は、前縁に、デッキ材側面の係止凹溝と係合するフックをそれぞれ備えるとともに、連結板を前記係止凹溝内において支持させる弾性片を備え、
D.前記連結板のうち、先に配置されたデッキ材に挿着される第1連結板においては、前縁の上方と下方に前記フックが設けられ、次に配置されるデッキ材に挿着される第2連結板においては、前縁の下方に前記フックが設けられていることを特徴とするデッキ材の固定装置。
【請求項2】
ネジホルダーが、両デッキ材の側面間に挟着される肉厚の壁板からなっていて、この壁板の中央部肉厚内に上縁から下縁にかけて、止めネジのネジ溝を遊挿し得る内径の縦孔が設けられている請求項1のデッキ材の固定装置。
【請求項3】
ネジホルダーにおける縦孔内の上端内周面に、止めネジのネジ部上端と係合して、止めネジを縦孔内に仮止めする突起を備えている請求項1又は2のデッキ材の固定装置。
【請求項4】
前記弾性片が、連結板に開設された窓孔におけるフック寄りの一辺から窓孔の上方もしくは下方へ突出するように形成された板バネからなっている請求項1のデッキ材の固定装置。」

第3 請求人の主張
請求人は、本件発明1ないし4の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(平成27年6月27日付け手続補正書により補正された審判請求書、及び同年10月29日付け口頭審理陳述要領書を参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。

1 無効理由の概要
(1)無効理由1(29条2項違反)
本件発明1ないし4は、甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2(36条4項1号違反)
本件発明1ないし4は、本件明細書の発明の詳細な説明に、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないので、特許法第36条第4項第1号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(証拠方法)
提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2004-218311号公報
甲第2号証:登録実用新案第3120851号公報
甲第3号証:「広辞苑(岩波書店第5版第1刷)」(1998年11月11日発行)
甲第4号証:特開2006-193974号公報
甲第5号証:特開2003-213902号公報
甲第6号証:特開2002-206276号公報

2 具体的な主張
(1)無効理由1(29条2項違反)について
ア 本件発明1について
(ア)甲第1号証には、以下のとおり、本件発明1のほぼ全ての構成が開示されており、唯一開示されていない発明特定事項Dの「第2連結板においては、前縁の下方に前記フックが設けられ」の点については、甲第1号証の段落【0013】に「クランプ20は、押え材10の幅方向の少なくとも一端側に装着される。」との開示があり、一端のみならず両端に設けても良いことを示唆している。
a 発明特定事項Aについて
甲第1号証の図3(a)及び(b)には、本件発明1の「両デッキ材」に相当する「デッキ材2_(1)、デッキ材2_(2)」、及び、同「ネジホルダー」に相当する「クランプ付き押え材」がそれぞれ開示されており、「クランプ付き押え材」は「デッキ材2_(1)、デッキ材2_(2)」の側面間に挟着されている。
また、同図には、同「止めネジ」に相当する「ねじ5」が開示され、「クランプ付き押え材」を根太上に固定している。
b 発明特定事項Bについて
(a)甲第1号証の図2及び3には、本件発明1の「縦孔」に相当する「孔12」、同「両デッキ材の係止凹溝」に相当する「溝3_(1),溝3_(2)」、及び、同「連結板」に相当する「押え材10」がそれぞれ開示されている。
(b)甲第1号証の段落【0012】には、「ねじを貫通するための孔12が設けられている。」、「孔12に貫通されるねじの軸の外周の一部と螺合するように形成された円弧13が設けられている。従って、押え材10の上方からねじ5を孔12に向けて回転しながら押し下げると、そのねじは円弧13部分に軽くねじ込まれながら、孔に挿通された状態で円弧13部分に保持される(この状態を仮螺着という。)すなわち、ねじ5を脱落させずに保持することができるようになっている。」と記載されている。
「孔12」はねじを貫通させる孔であり、「円弧13」は、ねじが螺合する径としていると読める。そして、「ねじ5を孔12に向けて回転しながら押し下げると」・・・「円弧13」に「ねじ込まれながら、孔に挿通された状態で円弧13部分に保持される(この状態を仮螺着という。)」とあることから、これを当業者が読んだ時、「円弧13」には、「ねじ込まれ」との記載であり、「孔12」に対しては、「挿通された状態で」との記載であるという、わざわざ異なる表現をしていることから、「孔12」には、螺合で無く緩く挿通されると理解することが自然であると思われる。しかも、「円弧13」と「孔12」との2カ所の螺合であると、かなりしっかりと固定され、仮螺着とは言わないのが自然と思われる。さらに、「円弧13」が設けられている部位は、ねじ倒れ防止用突縁11と呼称されており、これにねじが螺合する「円弧13」を設けることにより、ねじ倒れを防止している。仮に「孔12」にねじが螺合しているならば、それだけでねじが倒れることはないので、「円弧13」にねじ止めすることは、仮螺着ために二重にねじ止め部を設けることになる。したがって、「ねじを貫通するための孔12」には、ねじが螺合で無く緩く挿通していると示唆されていると考えるのが自然である。
c 発明特定事項Cについて
(a)甲第1号証の図1ないし3には、本件発明1の「フック」に相当する「被係止部21,22」、及び、同「弾性片」に相当する「挟持部23,23」がそれぞれ開示されている。
(b)甲第1号証の段落【0013】には、「・・・クランプ自身の弾性を利用して嵌着することができ・・・」と記載されクランプ20が弾性を有することが記載されている。段落【0014】には、「・・・クランプ20は、・・・薄鋼板で作られ、・・・被係止部の間・・・コ字形の上下辺を水平に形成してなる挟持部23とを一体に有している。」と、「挟持部23」は、弾性を有する薄鋼板のクランプ20と同一材であると記載されている。すなわち、「挟持部23,23」は弾性体であることが明らかである。
(c)後記d(c)で説明するように、「被係止部21,22」、及び「挟持部23」は、少なくとも一端側の連結板に装着される実施例が開示されているが、一方のみならず両方に装着することもできる点が示唆されている。
(d)したがって、甲第1号証には、発明特定事項Cは開示ないしは示唆されている。
d 発明特定事項Dについて
(a)甲第1号証の図1ないし3には、本件発明1の「第1連結板に・・・、前縁の上方と下方に前記フックが設けられ」に相当する「被係止部21,22」が開示されている。
(b)甲第1号証の図1ないし3には、本件発明1の「第2連結板に・・・は、前縁の下方に前記フックが設けられ」に相当するフックは明記されていない。
(c)しかしながら、甲第1号証の段落【0013】には「クランプ20は、押え材10の幅方向の少なくとも一端側に装着される。このクランプ20は、根太1に隣接して固定されるデッキ材の端部に互いに対向して開口するように形成されている溝3_(1),3_(2)に、クランプ自身の弾性を利用して嵌着することができるものである。」との記載がある。「少なくとも一端側」とは、一端側のみならず両端に装着しても良いことを示唆する表現であり、発明特定事項Dの第2連結板に相当する「押え材10」の両側に「被係止部21,22」を有するクランプ20を設けた場合は、発明特定事項Dと同様な構成物となる。
(イ)甲第6号証の図1ないし3には、本件発明1の「第2連結板においては、前縁の下方に前記フック」に相当する「係止部25」が記載されている。
また、甲第6号証の段落【0021】?【0029】には、その構造の説明がなされている。段落【0023】に、デッキ材11の板傍17には、長手方向に溝状の連結溝18がある点、同【0024】に、連結溝18は、上縁部19と下縁部20とを有する点(図1及び3を参照。)、同【0025】に、下縁部20の内面には、長手方向に沿う複数条の凹凸20aがある点、同【0026】に、固定部材21(本件発明1の「ネジホルダー」に相当する。)は、図2に示すように取付板部22と、スペーサ部24と、係止部25(同「フック」に相当する。)とを有する点が記載されている。同【0029】に、係止部25は、下方に向いており、デッキ材11の連結溝18の下縁部20に設けられた凹凸20aに係合する点が記載されている(図1、図2(a)、図3を参照。)。
(ウ)被請求人(特許権者)が特有の効果と主張している「拝み入れ」が、甲第5号証の図6ないし8に開示されている。
(エ)被請求人(特許権者)は、意見書で、当該発明特定事項AないしCが甲第4号証に開示されていることを認めている。
(オ)したがって、本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明2について
(ア)甲第2号証の図1ないし4には、本件発明2で特定されている「ネジホルダーが、両デッキ材の側面間に挟着される肉厚の壁板」に相当する「横板3aと縦片3cとからなる固定金物3」が開示されている。
(イ)甲第2号証の図3(a)および(d)には、本件発明2で特定されている「中央部肉厚内に上縁から下縁にかけて、止めネジのネジ溝を遊挿し得る内径の縦孔」に相当する「ビス孔3bに遊挿したビス4」を根太5に螺合した状態が開示されている。そして、図3では、ビス4が遊挿する縦片3cの部分(図5(a),(b))が、切欠きなのか縦孔なのか判然としないが、実施例2を説明した段落【0021】ないし【0024】及び図5(c)には、縦片3cを更に肉厚にしてそこに縦孔を設けたことを示唆する記載がある。
(ウ)したがって、本件発明2は、甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件発明3について
(ア)甲第1号証の図1及び2には、本件発明3で特定されている「・・・縦孔内の上端内周面に、・・・ネジ部上端と係合して、・・・仮止めする突起」に相当する「クランプ付き押え材の「突縁11」に設けた「円弧13」」が開示されている。
(イ)甲第2号証の図3及び図5(c)には、前記イ(イ)の説明と同様に、縦片3cに、切欠きではなく、明らかな縦孔が形成されていることが開示されている。
(ウ)したがって、本件発明3は、甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件発明4について
(ア)甲第1号証には、本件発明4で特定されている「連結板」を「デッキ材側面の係止凹溝」内に係合させる「弾性片」に相当する挟持部23,23が開示されている。
(イ)したがって、本件発明4は、甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)無効理由2(36条4項1号違反)について
ア 「遊挿」の定義について
本件の請求項1には、「・・・止めネジを遊挿し得る縦孔・・・」と記載されており、所謂明細書用語と呼ばれる造語が用いられている。すなわち、「遊挿」は、日本の代表的な国語辞典である「広辞苑」(甲第3号証)には載っておらず、その他あらゆる国語辞典にも載っていない。
本件明細書は、世の中で熟語となっていない「遊挿」を、定義なしに用いている。
イ 「遊挿」の構造について
本件発明1の発明特定事項Bは、「ネジホルダーは、内部中央に、止めネジを遊挿し得る縦孔を有するとともに、両側に両デッキ材の係止凹溝内へ挿入されるように延びる連結板をそれぞれ有し、」であるから、本件発明1では、「内部中央にある縦孔には、止めネジが遊びのある状態で挿入可能になっている」筈である。
そこで、本件明細書中で遊挿し得る縦孔の具体的な開示を探すと、【発明の効果】を記載した段落【0018】に「・・・止めネジの上部を指で保持しながら頭部をカナヅチで軽く叩く・・・」とあるので、止めネジを遊挿し得る縦孔では、指で保持しないと止めネジが根太まで落下してしまうので、指で保持することが必須であると理解できる。
しかしながら、本件発明1の従属項である本件発明3は、「ネジホルダーにおける縦孔内の上端内周面に、止めネジのネジ部上端と係合して、止めネジを縦孔内に仮止めする突起を備えている請求項1又は2のデッキ材の固定装置。」であって、「縦孔内の上端内周面に、・・・止めネジを縦孔内に仮止めする突起・・・」を有するので、縦孔内で止めネジが遊挿できないと解釈せざるを得ない。すなわち、本件発明3は本件発明1の従属項にはなり得ないのである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論している(平成27年9月3日付け審判事件答弁書、及び同年11月11日付け口頭審理陳述要領書を参照。)。

(1)無効理由1(29条2項違反)について
ア 本件発明1について
(ア)請求人は、当業者が甲第1号証に記載されている発明等に基づいて本件発明1を想到することが、何故「容易である」と言えるのかについて、何ら論理的な説明をしていない。
したがって、本件発明1が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとの請求人の主張は、「理由が無い」と言わざるを得ない。
(イ)本件発明1の発明特定事項A?Dのうち、B?Dについては、以下のとおり甲第1号証において開示されているとは言えない。
a 本件発明1の発明特定事項Bは、「ネジホルダーは、内部中央に、止めネジを遊挿し得る縦孔を有するとともに、両側に、両デッキ材の係止凹溝内へ挿入されるように延びる連結板をそれぞれ有し」というものであるところ、甲第1号証に開示されている「孔12」は、「止めネジを遊挿し得る」という構成を備えていないと認められる。
したがって、本件発明1の発明特定事項Bは、甲第1号証に開示されていない。
b 本件発明1の発明特定事項Cは、「各連結板は、前縁に、デッキ材側面の係止凹溝と係合するフックをそれぞれ備えるとともに、連結板を前記係止凹溝内において支持させる弾性片を備え」というものであるところ、甲第1号証に開示されている「挟持部23」は、「弾性力」を発揮できるようには構成されていないため、「弾性片」に相当するものではない。
また、本件発明1の発明特定事項Cは、「各連結板は、・・・」と記載されており、フック及び弾性片は、「一方の連結板」のみならず、「両側の連結板」において備えられるものであるのに対し、甲第1号証に開示されている「被係止部21,22、及び、挟持部23」は、一方の連結板にのみ存在し、他方の連結板においては存在していない。
したがって、本件発明1の発明特定事項Cは、甲第1号証に開示されていない。
c 請求人も認めるように、本件発明1の発明特定事項Dは、甲第1号証に開示されていない。
請求人は、甲第1号証の段落【0013】に「クランプ20は、押え材10の幅方向の少なくとも一端側に装着される。」との開示があり、一端のみならず両端に設けても良いことを示唆していると主張しているが、甲第1号証の段落【0013】においては、「クランプ20を、押え材10の一端のみならず両端に設けても良いこと」が示唆されているとは到底言い難い。すなわち、甲第1号証に開示されているクランプは、押え材によって最終的に固定されることになる二つのデッキ材のうち、「一方のデッキ材に対して」押え材を「予め装着する」ためのものであると認められ、そうであるとすれば、クランプは、予め装着しようとするデッキ材の溝に嵌合する側にのみ取り付けておけば十分であり、後に配置するデッキ材の溝に嵌合する側に、この「押え材を予め装着するためのクランプ」を取り付けるべき必然性があるとは到底認められない。現に、甲第1号証においては、クランプを押え材の両側に取り付けることによって期待できる効果等に関する説明は一切見あたらない。したがって、甲第1号証の段落【0013】において「クランプ20は、押え材10の幅方向の少なくとも一端側に装着される。」と記載されていたとしても、クランプ20の目的及び機能に鑑みると、「クランプ20を押え材10の一端のみならず両端に設けても良いことが示唆されている」とは言えない。
また、請求人は、甲第6号証の図1ないし3に「下方に前記フック」に相当する係止部25が記載されていると主張しているが、甲第6号証において「係止部25」が開示されていたとしても、本件発明1の解決課題に直面した当業者が、甲第6号証に開示されている事項から「係止部25」を抽出して、甲第1号証に記載の発明と組み合わせるべき理由は何ら見あたらないし、また、たとえ当業者が甲第1号証の発明と甲第6号証の「係止部25」とを組み合わせることができたとしても、甲第6号証の「係止部25」は、甲第1号証に記載の発明と本件発明1との構成上の差異を補うことができるものではない。
(ウ)請求人は、「拝み入れ」が、甲第5号証の図6なしい8に開示されていると主張しているが、甲第5号証に開示されている「拝み入れ」は、フローリング材14(デッキ材)の中央に設けられている飾り溝140を中心として、フローリング材14(デッキ材)を「く」の字状に屈曲できるように構成することによって実現が可能となるものであって、本件発明1によって実行できる「拝み入れ」とは全く異なる態様であるから、甲第5号証の図6ないし8において「拝み入れ」の一態様が開示されていることは、本件発明1の進歩性を否定する根拠とはなり得ない。
(エ)以上のとおりであるから、本件発明1が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとの請求人の主張は、理由が無い。
イ 本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4はいずれも、本件発明1を引用する形式で記載されている。そして、本件発明1は、上述のとおり、甲第1号証等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは言えない。
したがって、本件発明2ないし4も、本件発明1と全く同一の理由から、甲第1号証等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは言えない。
よって、本件発明2ないし4が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとの請求人の主張は、理由が無い。

(2)無効理由2(36条4項1号違反)について
請求人は、「縦孔内の上端内周面に、・・・止めネジを縦孔内に仮止めする突起・・・」を有することは、縦孔内で止めネジが遊挿できないと解釈せざるを得ないと主張しているが、「止めネジを遊挿し得る縦孔を形成すること」と、「縦孔の上端内周面に止めネジを仮止めする突起を形成すること」は、何ら矛盾を生じさせるものではなく、問題なく両立させることができ、実施することができる。止めネジを遊挿し得る大きさの縦孔の上端内周面に、止めネジを仮止めする突起を形成したとしても、「縦孔」自体は、止めネジを遊挿し得る大きさであることに変わりはないからである。
尚、本件特許明細書の「発明の詳細な説明」の段落【0039】には、「このように、止めネジ7の頭を叩いて尖状部13を根太2内へ打ち込むと、図4に示した、止めネジ7のネジ溝9上端部と縦孔10の上端の突起11との係合が外されることで、ネジホルダー1と止めネジ7との連結状態が解かれ、ネジホルダー1は止めネジ7に対してフリーの状態となる。」という記載があるが、ここでネジホルダーを止めネジに対して「フリーの状態」とすることができるのは、縦孔が「止めネジを遊挿し得る大きさ」に形成されているからにほかならない。「止めネジを遊挿し得る縦孔」と「縦孔の上端内周面に止めネジを仮止めする突起」が、何らの矛盾もなく両立できるものであることは、上記段落【0039】の記載から明らかである。
このように、本件特許の「発明の詳細な説明」には、「止めネジを遊挿し得る縦孔」を形成するとともに「縦孔の上端内周面に止めネジを仮止めする突起」を形成したデッキ材固定装置についての実施例が記載されており、この実施例は、当業者において実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる。
したがって、本件特許の「発明の詳細な説明」の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に違反するものではない。
また、請求人は、本件特許明細書は、世の中で述語となっていない「遊挿」を、定義なしに用いていると主張しているが、「遊挿」という言葉を定義せずに用いたとしても、上述の通り、何ら矛盾が生じることはなく、本件特許の「発明の詳細な説明」の記載は、当業者が実施できる程度に明確に記載されていると認められる。

第5 当審の判断
1 無効理由1(29条2項違反)について
(1)証拠について
ア 甲第1号証について
(ア)甲第1号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同様。)。

a 発明の詳細な説明
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばガーデンデッキ等において用いられるデッキ材固定装置、さらに詳しくは、根太の上にデッキ材を載置し、隣接するデッキ材の対向面に形成してある溝に押え材を掛け渡し、前記隣接するデッキ材の間からねじを前記押え材に貫通して前記根太にねじ込むことによりデッキ材を根太に固定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は、比較的最近実施されているデッキ材固定装置の工程図である。
このデッキ材固定装置は、図4(a)に示すように、根太1の上に先に固定されたデッキ材2_(1)に後のデッキ材2_(2)の一端側を近接し、その際に、先のデッキ材2_(1)の溝3_(1)に押え材4の一端部を嵌合しながら、その押え材4の他端部を後のデッキ材2_(2)の溝3_(2)に嵌合し、後のデッキ材2_(2)を根太1の上面に載置した状態で図4(b)に示すように先のデッキ材2_(1)方向に寄せて、押え材4によりそれ以上の移動を阻止することにより、隣接するデッキ材2_(1),2_(2)間に所定間隔を確保し、両デッキ材2_(1),2_(2)の間からねじ5を押え材4に貫通し根太1にねじ込むことにより、デッキ材2_(1),2_(2)…を順次根太に固定するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記先行技術による場合は、押え材4を単にデッキ材の溝に緩く嵌合するだけで装着するため、先のデッキ材2_(1)の溝3_(1)に押え材4の一端部を嵌合しながら、その押え材の他端部を後のデッキ材2_(2)の溝3_(2)に嵌合する際に、後のデッキ材に僅かのふらつきが生じても、押え材の両端部を隣接するデッキ材の溝に適切に嵌合することができないので、デッキ材の近接作業及び押え材の装着作業に慎重さと熟練が要求され、施工能率の向上に限界があった。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、熟練者でなくても簡単な作業により押え材の装着ができ、デッキ材の根太に対する固定作業が能率的にできるデッキ材固定装置を提供することにある。
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、根太の上にデッキ材を載置し、隣接するデッキ材の対向面に形成してある溝に押え材を掛け渡し、前記隣接するデッキ材の間からねじを前記押え材に貫通して前記根太にねじ込むことによりデッキ材を根太に固定する装置において、前記押え材は、その少なくとも一方のデッキ材側の一端部に弾性を有するクランプが装着されているものであり、かつ、先に前記根太に載置されるデッキ材の溝に前記弾性を用いて前記一端部を嵌合して前記デッキ材に予め取付けられ、又は根太に固定したデッキ材の溝に押え材を取付けた後、後に前記根太に載置されるデッキ材の溝に前記押え材の他端部が嵌合された状態で前記ねじが前記根太にねじ込まれることを特徴としている。
上記構成により、押え材は、隣接して固定されるデッキ材のうち、一方のデッキ材の溝に予め取付けて置くことができ、その一方のデッキ材を根太の上に載置した後、又は、一方のデッキ材を根太の上に載置して、そのデッキ材の溝に押え材を嵌着した後、隣接して固定されるデッキ材のうち、他方のデッキ材を根太の上に載置して一方のデッキ材に近接して、その溝に前記押え材の他端部を嵌合して両デッキ材の間に所定間隔を確保し、その間隙からねじを押え材に貫通して根太にねじ込むことにより、デッキ材を順次固定することができる。
【0006】
クランプは、デッキ材の溝に弾力的に嵌合して係止される被係止部と、その被係止部に一体に成形され、押え材の端部を挟持する挟持部とを有するものであることが望ましい。
このような構成とした場合は、構造が簡単であるので、押え材を低コストで製造することができる。
【0007】
デッキ材の溝の開口を形成する上面と下面の少なくとも一方に、クランプの被係止部の先端を係止する係止部が形成されていることが望ましい。
このような構成を備えた場合は、押え材のデッキ材の溝に対する装着を簡単確実に行うことができ、後のデッキ材の近接時に容易に脱落することを防止することができる。
【0008】
押え材の幅方向中央にねじ貫通孔が形成され、前記押え材の上面に、前記ねじ貫通孔の両側においてねじ倒れ防止用突縁が形成されていることが望ましい。
上記構成により、デッキ材の間からねじを押え材にねじ込む際に倒れ易いねじの倒れがねじ倒れ防止用突縁により有効に防止されるため、デッキ固定能率が向上する。
【0009】
押え材には、これをデッキ材に取付ける前からねじが仮螺着されていることが望ましい。とくに、ねじ倒れ防止用突縁が形成されている押え材に仮螺着されていることが望ましい。
上記構成により、押え材を取付けたデッキ材に後のデッキ材を近接した後、直ちにねじを根太にねじ込んで、隣接するデッキ材を簡単迅速に固定することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1は本発明において用いられるクランプ付き押え材の正面図、図2はクランブ(審決注:「クランプ」の誤記である。)付き押え材の分解斜視図、図3は図1のクランプ付き押え材を用いてデッキ材を根太に固定する過程を示す正面図であり、(a)はねじを根太にねじ込む前、(b)はねじ込んだ後の状態を示す。図4の構成部材と共通の構成部材には同一の符号を用いる。
【0011】
図1において、Aは本発明において用いられるクランプ付き押え材の一例であり、少なくとも押え材10とこれに装着されるクランプ20とからなっている。
【0012】
押え材10は、好ましくはアルニウム等の金属押出し形材を根太1の幅とほぼ等しい長さ寸法に切断して作られている。そして、押え材10の幅方向中央に平行に起立する一対のねじ倒れ防止用突縁(以下、単に突縁という。)11が設けられており、その突縁の間で突縁の長手方向中央において押え材を上下方向に貫通して、ねじを貫通するための孔12が設けられている。突縁11は好ましくは、倒立L字形に形成されて水平部を対向させてあり、孔12の上方部分において、孔12に貫通されるねじの軸の外周の一部と螺合するように形成された円弧13が設けられている。従って、押え材10の上方からねじ5を孔12に向けて回転しながら押し下げると、そのねじは円弧13部分に軽くねじ込まれながら、孔に挿通された状態で円弧13部分に保持される(この状態を仮螺着という。)すなわち、ねじ5を脱落させずに保持することができるようになっている。
なお、ねじ5を仮螺着するためには、突縁11の断面形状は任意である。
【0013】
クランプ20は、押え材10の幅方向の少なくとも一端側に装着される。このクランプ20は、根太1に隣接して固定されるデッキ材の端部に互いに対向して開口するように形成されている溝3_(1),3_(2)に、クランプ自身の弾性を利用して嵌着することができるものである。
【0014】
クランプ20を押え材10に装着するための構造は、とくに制限されない。ねじ止めも可能である。図示の好ましい実施の形態の場合は、装着作業の簡易化及び製造コスト低減のため、クランプ20は、一例として、図2に良く示されているように、断面形状がほぼコ字形の薄鋼板で作られ、両端部の斜め上方と斜め下方に延びる被係止部21,22と、それらの被係止部の間の部分のコ字形の上下辺を水平に形成してなる挟持部23とを一体に有している。
【0015】
本発明によるデッキ材固定装置においては、押え材10を用いてデッキ材を根太に固定するには、図1に示すように、予めクランプ20の挟持部23に押え材10の幅方向一端部を押入することにより、押え材10にクランプ20を嵌着して、クランプ付き押え材Aを構成して置く。また、好ましくは、押え材10にねじ5を仮螺着しておく。
【0016】
上記のクランプ付き押え材Aを用いて、デッキ材を根太に固定するには、図3(a)に示すように、先に固定されるデッキ材2_(1 )の溝3_(1 )にクランプ20の被係止部21,22をその弾性を利用して嵌着して、押え材10をデッキ材2_(1)に取付け、そのデッキ材2_(1)を根太1の上面の所定位置に静置する。デッキ材2_(1)を根太1の所定位置に静置した後、そのデッキ材の溝3_(1)にクランプ20の被係止部21,22を嵌着して、クランプ付き押え材Aをデッキ材2_(1)に取付けるようにしてもよい。
この時、必要により、ねじ5を僅かに右又は左に回して、押え材10が水平になるように高さ調整を行う。根太1に載置された時のデッキ材の溝3を形成する下壁の上面からデッキ材の上面までの距離を知っている場合は、ねじ5の仮螺着の際に、そのねじの押え材の下面からの突出量を前記距離と一致させておけば、デッキ材載置後の押え材の高さ調整は不要である。
【0017】
各デッキ材の溝3の上壁と下壁に、クランプの背面が溝3の内端に当接するまで押入された時に被係止部21,22の先端を係止させる係止部6_(1),6_(2)が形成してある場合は、クランプ20をデッキ材2の溝3に嵌着した後は、デッキ材の取扱中に又はねじ5の高さ調整中に、クランプ20が溝3から容易に脱出することを防止することができるので、望ましい。
【0018】
続いて、隣のデッキ材2_(2)を根太1の上面に載せ、先のデッキ材2_(1)に取付けてあるクランプ付き押え材Aの押え材10の他端部がデッキ材2_(2)の溝3_(2)の内端に当たって止められるまで、後のデッキ材2_(2)を先のデッキ材2_(1)方向に摺動する(図3(a))。こうして、押え材の両端部が隣接するデッキ材に当たって互いにそれ以上接近できない状態となるので、隣接するデッキ材2_(1),2_(2)の間には所定間隔が確保される。
【0019】
この所定間隔が確保された状態で、両デッキ材2_(1),2_(2)の間から工具を挿入して仮螺着されているねじ5を図3(b)に示すように根太1にねじ込むことにより、デッキ材2_(1),2_(2)が根太1に固定される。
デッキ材22に続く他のデッキ材も他のクランプ付き押え材を用いて同様にして順次固定して、デッキを構成することができる。
【0020】
【発明の効果】
上述のように、本発明によれば、押え材の装着作業及びねじのねじ込み作業が、熟練者でなくても簡単にでき、デッキの施工能率が向上する。」

b 図面
(a)図1には、クランプ付き押え材の正面図が図示されており、また、図2にはクランプ付き押え材の分解斜視図が図示されており、上記aの段落【0013】ないし【0015】の摘記事項を踏まえてこれらの図を見ると、押え材10の幅方向一端側にクランプ20が装着されていること、及び、押え材10の内部中央にねじ5を貫通する孔12を有することが見てとれる。
(b)図3には、クランプ付き押え材を用いてデッキ材を根太に固定する過程を示す正面図であって、(a)はねじを根太にねじ込む前、(b)はねじ込んだ後の状態が図示されており、上記aの段落【0016】ないし【0019】の摘記事項を踏まえてこれらの図を見ると、押え材10の両側が隣接するデッキ材2_(1),2_(2)の溝3_(1),3_(2)内へ挿入されること、押え材10の幅方向一端側である先に配置されたデッキ材2_(1)に挿着される側には、クランプ20が取り付けられているが、押え材10の幅方向他端側である次に配置されたデッキ材2_(2)に挿着される側には、クランプ20が取り付けられていないこと、クランプ付き押え材Aが隣接するデッキ材2_(1),2_(2) の側面間に挟着されていること、及び、ねじ5によりクランプ付き押え材Aが根太1上に固定されていることが見てとれる。

(イ)甲第1号証に記載の発明の認定
甲第1号証には、上記(ア)で摘記した事項及び図示内容からみて、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「隣接するデッキ材2_(1),2_(2)の側面間に挟着されるクランプ付き押え材Aと、このクランプ付き押え材Aを根太1上に固定するためのねじ5とからなり、
クランプ付き押え材Aは、押え材10と、その幅方向一端側に装着されるクランプ20とからなり、
押え材10は、その内部中央にねじ5を貫通するための孔12を有するとともに、押え材10の両側が隣接するデッキ材2_(1),2_(2)の溝3_(1),3_(2)内へ挿入されるものであり、
クランプ20は、断面形状がほぼコ字形の薄鋼板で作られ、両端部の斜め上方と斜め下方に延びる被係止部21,22と、それらの被係止部の間の部分のコ字形の上下辺を水平に形成してなる挟持部23,23とを一体に有しており、挟持部23,23に押え材10の端部を押入することにより押え材10にクランプ20を嵌着するとともに、デッキ材2_(1)の溝3_(1)にクランプ20の被係止部21,22をその弾性を利用して嵌着するものであり、被係止部21,22の先端は、デッキ材2_(1)の溝3_(1)内に形成された係止部6_(1),6_(2)に係止されるものであり、
押え材10の幅方向一端側である先に配置されたデッキ材2_(1)に挿着される側には、クランプ20が取り付けられているが、押え材10の幅方向他端側である次に配置されるデッキ材2_(2)に挿着される側には、クランプ20が取り付けられていない、
デッキ材の固定装置。」

イ 甲第2号証について
(ア)甲第2号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第2号証には、次の事項が記載されている。

a 考案の名称
「床板設置装置及び固定金物」
b 技術分野
「【0001】
この考案は、隙間を有する床(デッキ)の床板の固定に関し、任意の場所の床板を取外すことができるようにすることを目的とした床板設置装置及び床板の固定金物に関する。」
c 考案が解決しようとする課題
「【0008】
即ち床板相互の間隙幅は自由に選択できるようにして、かつ締付力は十分保ち、その上、任意の位置の床板を取外すことができるようにしたいという相矛盾した要請がある。」
d 課題を解決するための手段
「【0009】
この考案は、組立済の床板の相互間隙を少なくともビス頭直径より小さくしてあるに拘らず、床板の取外しを必要とした場合には、当該取外しを要する床板の隣接床板との間隙を大きくできるようにして、前記従来の問題点を解決したのである。
【0010】
即ちこの考案は、両側溝付の床板を、ビス頭の直径より小さい間隙を保って並列し、前記隣接床板の対向する溝に、固定金物の両側部を夫々挿入すると共に、前記固定金物をビスで根太へ固定して、前記床板を固定する装置において、前記溝の深さは、前記固定金物を挿入し得る深さとし、隣接床板の相互間隙を、少なくともビス頭の直径より大きくできるように移動可能にしたことを特徴とする床板設置装置であり、両側溝付の床板を、ビス頭の直径より小さい間隙を保って並列し、前記隣接床板の対向する溝に、断面T型又は平板状の固定金物の一面又は両面を粗面にした両側部を夫々挿入すると共に、前記固定金物の中央部に挿通したビスで根太へ固定して、前記床板を固定する装置において、前記溝の深さは、前記断面T型又は平板状の固定金物の挿入長さより深くし、隣接床板の相互間隙を、少なくともビス頭が全部露出できる大きさに移動可能にしたことを特徴とする床板設置装置である。また、断面T型又は平板状の金物であって、その中央部に少なくとも1個のビス孔を設け、平板部又は床板の溝に挿入できる厚さであって、その一面又は両面を粗面としたことを特徴とする請求項1又は2記載の装置に用いる床板固定金物であり、平板の中央下面に、床板の間隙に相当する突条を有し、中央部に、ビスの頭部の下降できる孔を設け、前記平板の一面又は両面を粗面としたことを特徴とする請求項1又は2記載の装置に用いる床板固定金物である。」
e 考案の効果
「【0014】
この考案によれば、設置状態の床板を若干移動させ、固定金物を固定したビス頭を全部露出させることができる間隙とするので、各床板間隙よりドライバーを挿し入れて、ビスを抜き取ることができる。ビスを抜き取れば、固定金物を横移動させることができるので、所定の床板のみを取外すことができる効果がある。」
f 実施例1
「【0017】
この考案の実施例を図1、2、3、4について説明すると、両側壁の中央部に夫々溝2、2を設けた床板1、1を根太5上に置き、前記溝2、2へT型の固定金物3の横板3a、3aを挿入すると共に、前記固定金物3のビス孔3bへビス4を挿入し、ビス4を前記根太5に螺入して床板1、1を適所に固定する(図1、2、3)。図中3cは突条(粗面の為)である。」
g 実施例2
「【0023】
前記において、ビス4の頭部4aの下面は、ビス孔3bの底部3dに当接し、固定金物3を、床板1へ加圧締付けることになる。
【0024】
前記隣接床板1の間隙Sは、ビスの頭部の直径dより小さいけれども、ビス4を螺入することにより、床板の側面が削られるので、ビス4の下降に支障はない。図5(c)は、金物の他の実施例で、固定金物3の縦材を有底溝3eとしたものである。」

ウ 甲第4号証について
(ア)甲第4号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第4号証には、次の事項が記載されている。

a 発明の名称
「デッキ材の固定構造及びデッキ材固定具」
b 技術分野
「【0001】
本発明は、デッキ材を根太に固定するための構造及びそれに用いられる固定具に関する。」
c 発明が解決しようとする課題
「【0004】
こうして、本発明が解決しようとする第1の課題は、固定具を低コストで製造でき、固定具の根太に対する取付安定性が高められ、デッキ完成後に任意の位置のデッキ材を容易に取り外すことができるデッキ材固定構造を提供することにある。
本発明の第2の課題は、上記デッキ材固定構造に用いられ、デッキ材の連続的設置が円滑に行うことができるデッキ材固定具(以下、単に固定具という場合がある。)を提供することにある。」
d 課題を解決するための手段
「【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るデッキ材固定構造は、次のデッキ材と固定具とから構成されることを特徴している。すなわち、デッキ材は、その幅方向両端の側壁の下部が底面壁に向かって凹ませてあるとともに、その底面壁がその側壁の下端部からデッキ材の幅方向両端部付近まで突出されて、先端に係止部を有する固定縁が形成され、その固定縁と前記側壁の下部との間に固定具の昇降が可能な凹部が形成されているものである。また、固定具は、根太に載せられてビスでその根太に固定される固定部と、その固定部の幅方向一端部にほぼ下向きコ字形に形成され、デッキ材の係止部を下側に係合させる第1係合部と、前記固定部の幅方向他端部に、ほぼへ字形に形成され、デッキ材の係止部を下側に係合させる第2係合部とを有している。」
e 発明を実施するための最良の形態
「【0018】
固定具2は、鋼板のプレス加工又はローラフォーミング加工により作られ、図1?図3に例示するように、固定部16と、その固定部の一端部に断面下向きコ字形に形成された第1係合部17と、固定部16の他端部に断面へ字形に形成された第2係合部18とを有する。固定部16のほぼ中央部にビス貫通用孔16aが設けられている。また、第1係合部の先端から固定部16の底面の延長線までの距離は、デッキ材の固定縁13の厚みとほぼ等しくされている。さらに、第2係合部18の先端部には、好ましくは、先端に向けて上り傾斜するように屈曲されてテーパーを有するガイド部18aが備えてあるとともに、前記屈曲部から固定部16の底面の延長線までの距離は、デッキ材の固定縁13の厚みとほぼ等しくされている。
【0019】
上記のデッキ材1と固定具2の構成により、デッキ材1は次のようにして根太4に取り付けることができる。
すなわち、まず、図1の左側に示す最初のデッキ材1(E)を位置決めし、上記固定具2又は固定具2の一方の係止部を削除したものと同様の形状を有する固定具をビスで根太4に固定して、その固定具で最初のデッキ材1(E)の幅方向一端(図1では左端)の係止部14を係合して固定する。
【0020】
次に、最初のデッキ材1(E)の幅方向他端(図1では右端)至近の所定位置における根太4の上に固定具2の固定部16を載せ、図3に詳しく示すように、第1係合部17に最初のデッキ材1(E)の幅方向他端の係止部14を係合させた後、固定部16に貫通したビス3を根太4にねじ込んで固定する。
【0021】
続いて、図1の右側に示す二番目のデッキ材1(L)を根太4の上に載せて先のデッキ材1(E)の方向に摺動して、そのデッキ材1(L)の幅方向一端(図1では左端)の係止部14を固定具2の第2係合部18に係合させて固定する。この場合、第2係合部18の先端にテーパー付きガイド部18aが設けてある場合は、後のデッキ材を根太の上で先のデッキ材の方向に摺動する際に、そのデッキ材の係止部14は、そのテーパー部がガイド部に案内されて円滑に、すなわち、少ない抵抗で第2係合部18の下面に沿って押し入り、その第2係合部を弾性変形させながらガイド部の最下位の屈曲部を通過する。そして、通過後の第2係合部18の弾性復元により係止部14は第2係合部に係合するため、デッキ材は幅方向の移動を阻止されて、仮固定される。」

エ 甲第5号証について
(ア)甲第5号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第5号証には、次の事項が記載されている。

a 発明の名称
「床構造及び床の補修方法」
b 発明の属する技術分野
「【0001】
この発明は、住宅等に設けられている床材を貼り替えるのに好適な床構造及び床の補修方法に関する。」
c 発明が解決しようとする課題
「【0004】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、所望のフローリング材のみを交換して床の補修を簡単に行うことができ、廃材処理が小規模で済む床構造及び床の補修方法を提供することにある。
d 課題を解決するための手段
「【0005】
上記目的を達成するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、両側面に凹条部を有する床材を、床下地の上に固定する床構造であって、床下地の上に、床材を互いに隣接した状態で固定する固定部品を複数有し、かつ複数の固定部品の各々は、一方の床材の一側面に設けられた凹条部と他方の床材の他側面に設けられた凹条部とそれぞれ嵌合して、双方の床材を互いに隣接して連結すると共に床下地に対して固定することを特徴とする。
【0006】
この発明の床構造によれば、固定部品により、一方の床材と他方の床材とそれぞれ嵌合して双方の床材を互いに隣接して連結すると共に床材に対して固定するので、所望の床材を固定部品から取り外すだけで、その床材を、連結されている両側の床材から分離させることができ、所望のフローリング材のみを容易に交換することができる。」
e 発明の実施の形態
「【0033】
このようにして床構造10が構成され、かつ使用された場合、フローリング材14のいずれかに傷等が付くことによってフローリング材14を交換することがある。
その場合、例えば、図8のように、第2フローリング材14Bに傷が付いていてこれを交換するには、まず、第2フローリング材14Bの中央に設けられている飾り溝140を中心として、第2フローリング材14Bがくの字状になるように持ち上げられて第2フローリング材14Bの幅を徐々に狭めると、第2フローリング材14Bの他側面に設けられている凹条部14bと、固定部材20の第2凸条部22との嵌合が解除されると共に、その第2フローリング材14Bの一側面の凹条部14aと固定部材20の第1凸条部21との嵌合も解除されることにより、第2フローリング材14Bを取り外すことができる。
【0034】
この場合、第2フローリング材14Bは、両側に配列されている固定部材20,20によって固定されているので、浮かした状態でくの字状に折り曲げられるだけで双方の固定部材20,20との嵌合が解除されることにより、第1,第3フローリング材14A,14C及び床下地板13から容易に外される。
【0035】
その後、新規のフローリング材14を用意し、そのフローリング材14の他側面の凹条部14bを固定部材20の第2凸条部22に押し付けて嵌合し、またフローリング材14が平らになるようにのばしながら、かつフローリング材14の一側面の凹条部14aを固定部材20の第1凸条部21に押し付けて嵌合することによりフローリング材14を両固定部材20,20間に入れ、これによって新規のフローリング材14のみが床下地板2上に敷設されることとなる。」
f 図6ないし8
上記eで摘記した事項を踏まえて図6ないし8を見ると、フローリング材14が、その中央に設けられている飾り溝140を中心としてくの字状に折り曲げられる状態から、平らになるようにのばされ、両側に配置されている固定部材20,20と嵌合されて取り付けられること(請求人が主張する「拝み入れ」の取付方法)が見てとれる。

オ 甲第6号証について
(ア)甲第6号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第6号証には、次の事項が記載されている。

a 発明の名称
「デッキ」
b 発明の属する技術分野
「【0001】
この発明は、建築物、特に住宅のテラスやバルコニーに好適なデッキに関する。」
c 発明が解決しようとする課題
「【0008】
本発明は以上のような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、木材を使用したデッキにあったような、歩行の際に危険箇所となる、止着具のデッキ表面への突出を排除したデッキの実現にある。加えて、作業性及び施工性に優れ、デッキ面上に溜まる水の排水性及び防汚性をも高めたデッキを提供することにある。」
d 課題を解決するための手段
「【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、スラブ上に並設された根太上に、床面を形成する複数のデッキ材が所定間隔を隔てて敷設され、各デッキ材はデッキ材間において固定部材により連結されるとともに根太に固定されたデッキであって、前記デッキ材にはその板傍に上縁部と下縁部とを有する連結溝が設けられ、前記固定部材は、根太と接合される取付板部と、この取付板部の両端から立ち上げ形成されたスペーサ部と、これらスペーサ部の先端からそれぞれ延設され、デッキ材の前記上縁部又は下縁部と先端縁で係合する係止部とを有し、固定部材の係止部が連結溝に挿入されるとともに係止部の先端縁が連結溝の上縁部又は下縁部の内面と係合され、且つ、固定部材のスペーサ部にデッキ材の下縁部が当接された状態で取付板部が根太に止着具にて取り付けられることによりデッキ材が所定間隔を隔てて根太上に固定されてなることを特徴としている。
【0010】
この発明によれば、デッキ材の表面に止着具が一切現れないため、止着具の頭部でけがをするといった事故は発生しない。デッキ材は固定部材と係合され、この固定部材を介して根太に固定されるので、デッキ材の固定作業が容易である。しかも固定部材のスペーサ部によりデッキ材同士の間に所定間隔の隙間が形成されるので、デッキ材上の雨水はこの隙間を通じて速やかにデッキ材下方に排出される。」
e 発明の実施の形態
「【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係るデッキのうち第1の実施形態を示す斜視図である。また図2(a)は、固定部材の底面側を、同図(b)は同上面をそれぞれ示す斜視図、図3は本実施形態のデッキを示す断面図である。
【0022】
デッキ材11は、その内部に複数本の中空部15を有する長尺体であり、前述したように合成木材を素材とした成形部材である。図1において、符号12は表面板、13は底面板、14は隔壁を示す。
【0023】
デッキ材11の側面のうち小口16は、デッキ材11断面として内部の中空部15が露出している。一方、デッキ材11の板傍17には、その長手方向に沿って溝状の連結溝18が形成されている。
【0024】
連結溝18は、上縁部19と下縁部20とを有し、図1及び図3に示されるように、上縁部19の方が下縁部20より水平方向への突出長さが長く設定されている。このように上縁部19と下縁部20の突出長さを異ならせることにより、デッキ材11を根太8上に敷設したとき、隣接するデッキ材11の表面板12同士の間隔を雨水の排水を妨げない範囲で狭くすることができるように図られている。
【0025】
下縁部20には、その内面に、デッキ材11の長手方向に沿う複数条の凹凸20aが設けられている。この凹凸20aの本数は任意である。
【0026】
固定部材21は、デッキ材11同士を連結するとともにデッキ材11を根太8に固定するためのものである。この固定部材21は、図2に示すように、根太8の幅寸法に対応した長さを有しており、取付板部22と、スペーサ部24と、係止部25とを有している。
【0027】
取付板部22は、根太8と接合される部分であり、固定部材21の底面を形成している。この取付板部22には、その長手方向中央部にビス孔23が設けられている。
【0028】
スペーサ部24は、隣接するデッキ材11間にあって、下縁部20の端面と当接し、デッキ材11の相互間隔を保持させるためのものである。このスペーサ部24は、取付板部22の両端から立ち上げ形成されている。スペーサ部24の立ち上げ長さは、デッキ材11の厚み分から上縁部19の厚み分を除いた寸法よりやや短い寸法に設定されている。
【0029】
係止部25は、その先端縁においてデッキ材11の上記凹凸20aと係合されるものである。この係止部25は、スペーサ部24の先端部をそれぞれ外方に向け水平に折曲するとともに、さらにその先端をスペーサ部24側に向けて斜め下方に折り返すことにより形成されている。」
f 図1ないし3
上記eで摘記した事項を踏まえて図1ないし3を見ると、固定部材21は、取付板部22と、スペーサ部24と、下方に向いており、デッキ材11の連結溝18の下縁部20に設けられた凹凸20aに係合する係止部25を有していることが見てとれる。

(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「デッキ材2_(1),2_(2)」は、その構造及び機能からみて、本件発明1の「デッキ材」に相当し、以下同様に、「(デッキ材2_(1),2_(2)の)溝3_(1),3_(2)」は「(デッキ材の)係止凹溝」に、「クランプ付き押え材A」は「ネジホルダー」に、「ねじ5」は「止めネジ」に、それぞれ相当する。
(イ)甲1発明の「ねじ5を貫通するための孔12」と本件発明1の「止めネジを遊挿し得る縦孔」とは、「止めネジを貫通し得る縦孔」である点で共通する。
(ウ)甲1発明の「押え材10」は、「押え材10の両側が隣接するデッキ材2_(1),2_(2)の溝3_(1),3_(2)内へ挿入されるもの」であるから、本件発明1の「両デッキ材の係止凹溝内へ挿入されるように延びる連結板」に相当し、同様に、「押え材10」のうち、「幅方向一端側である先に配置されたデッキ材21に挿着される側」は、「先に配置されたデッキ材に挿着される第1連結板」に、また、「幅方向他端側である次に配置されるデッキ材22に挿着される側」は、「次に配置されるデッキ材に挿着される第2連結板」にそれぞれ相当する。
(エ)甲1発明の「クランプ付き押え材A」は、「押え材10と、その幅方向一端側に装着されるクランプ20とからなり、」「押え材10の両側が隣接するデッキ材2_(1),2_(2)の溝3_(1),3_(2)内へ挿入されるものであり、」「クランプ20は、断面形状がほぼコ字形の薄鋼板で作られ、両端部の斜め上方と斜め下方に延びる被係止部21,22と、それらの被係止部の間の部分のコ字形の上下辺を水平に形成してなる挟持部23,23とを一体に有しており、挟持部23,23に押え材10の端部を押入することにより押え材10にクランプ20を嵌着する」ものであるから、甲1発明の「(斜め上方と斜め下方に延びる)被係止部21,22」は、「押え材10」(連結板)の「前縁の上方と下方」に備えられているといえる。
(オ)甲1発明も「ガーデンデッキ等において用いられる」(上記1(1)ア(ア)aの段落【0001】を参照。)ことを前提とするものであるから、甲1発明の「デッキ材2_(1),2_(2)」も本件発明1と同様に平行に配列されているものと解される。
(カ)したがって、両者は、次の一致点で一致し、相違点1ないし3で相違する。

(一致点)
「平行に配列される両デッキ材の側面間に挟着されるネジホルダーと、このネジホルダーを根太上に固定するための止めネジとからなり、
ネジホルダーは、内部中央に、止めネジを貫通し得る縦孔を有するとともに、両側に、両デッキ材の係止凹溝内へ挿入されるように延びる連結板をそれぞれ有している、デッキ材の固定装置。」

(相違点1)
縦孔について、
本件発明1は、「止めネジを遊挿し得る」ものであるのに対し、
甲1発明は、ねじ5(止めネジ)を貫通し得るが、遊挿し得るとは特定されていない点。

(相違点2)
先に配置されたデッキ材に挿着される第1連結板について、
本件発明1は、第1連結板の前縁の上方と下方に「デッキ材側面の係止凹溝と係合するフック」を備えるとともに、第1連結板を「係止凹溝内において支持させる弾性片」を備えているのに対し、
甲1発明は、第1連結板の前縁の上方と下方に被係止部21,22を備えている点。

(相違点3)
次に配置されたデッキ材に挿着される第2連結板について、
本件発明1は、第2連結板の前縁の下方に「デッキ材側面の係止凹溝と係合するフック」を備えるとともに、第2連結板を「係止凹溝内において支持させる弾性片」を備えているのに対し、
甲1発明は、第2連結板にクランプ20が取り付けられておらず、そのような構成を有していない点。

イ 相違点1について
(ア)当審の判断
a 本件発明1の「止めネジ」と「縦孔」の構成について
本件明細書には、「止めネジ」と「縦孔」の構成について、以下のとおり記載されている(下線は審決で付した。)。
「【0025】
ネジホルダー1は、先に取付けられるデッキ材3aと、後から取付けられるデッキ材3bの側面4、4の間に挟着される肉厚を有するものであれば、外形は筒状であっても板状であってもよいが、この実施例では、壁板8からなっていて、この壁板8の中央部肉厚内に上縁から下縁にかけて、止めネジ7のネジ溝9を遊挿し得る内径の縦孔10が設けられている。
【0026】
なお、図4に示したように、縦孔10の上端内周面には、止めネジ7におけるネジ溝9の上部に係合して、止めネジ7を縦孔10内の所定の高さ位置に仮保持しておくための突起11が設けられている。
」、
「【0039】
このように、止めネジ7の頭を叩いて尖状部13を根太2内へ打ち込むと、図4に示した、止めネジ7のネジ溝9上端部と縦孔10の上端の突起11との係合が外されることで、ネジホルダー1と止めネジ7との連結状態が解かれ、ネジホルダー1は止めネジ7に対してフリーの状態となる。
【0040】
ネジホルダー1が止めネジ7に対してフリーの状態になると、ネジホルダー1は、自重により、図13に示した高さ位置より下方へ落下することになる。その時、図14に示すように、第1連結板14の上面に向けて設けられた弾性片17が、デッキ材3aの係止凹溝6の上面を反力面として、連結板14を下方へ押し下げるように突出するとともに、第1連結板14の下面に向けて設けられた弾性片17が、係止凹溝6の下面に接触して連結板14の押し下げ力を吸収するように屈曲し、上下の弾性片17、17の弾力により連結板14を係止凹溝6内の中間位置に水平に配置される。」
そして、本件明細書の上記事項から、「止めネジ7」は「縦孔10」にねじ螺合されているのではなく、係合されていない状態(遊びのある状態)で挿入可能であることが理解でき、「止めネジ7」が「縦孔10」に対してそのような関係であることを、「遊挿」し得るとの表現で特定するものであると解される。
b 甲1発明の「ねじ5」と「孔12」の構成について
甲第1号証の段落【0012】には、「押え材10の幅方向中央に平行に起立する一対のねじ倒れ防止用突縁(以下、単に突縁という。)11が設けられており、その突縁の間で突縁の長手方向中央において押え材を上下方向に貫通して、ねじを貫通するための孔12が設けられている。突縁11は好ましくは、倒立L字形に形成されて水平部を対向させてあり、孔12の上方部分において、孔12に貫通されるねじの軸の外周の一部と螺合するように形成された円弧13が設けられている。従って、押え材10の上方からねじ5を孔12に向けて回転しながら押し下げると、そのねじは円弧13部分に軽くねじ込まれながら、孔に挿通された状態で円弧13部分に保持される(この状態を仮螺着という。)すなわち、ねじ5を脱落させずに保持することができるようになっている。」と記載されているが、「ねじ5」が「孔12」に係合されていない状態(遊びのある状態)で挿入可能であるとは明記されていない。
しかしながら、「ねじ5」が突縁11の円弧13部分に脱落させず保持されているとの構成からは、突縁11の円弧13部分が無ければ「ねじ5」は脱落するともいえるので、甲第1号証には、「ねじ5」が「孔12」に係合されていない状態(遊びのある状態)で挿入可能であること、すなわち、「孔12」は「ねじ5」を「遊挿」し得ることが示唆されているといえる。
c まとめ
以上のとおりであるから、相違点1は、実質的なものではないといえる。

(イ)被請求人の主張について
a 被請求人は、甲第1号証に開示されている「孔12」は、「止めネジを遊挿し得る」という構成を備えていないと主張している。
b しかしながら、上記(ア)で説示したように、甲第1号証には、「孔12」は「ねじ5」を「遊挿」し得ることが示唆されているといえるので、被請求人の上記主張は採用できない。

ウ 相違点2について
(ア)当審の判断
a フックと弾性片について
本件発明は、「デッキ材の固定装置を構成するネジホルダーを、隣接する、先に取付けられたデッキ材と次の取付けられるデッキ材との間の正確な位置へ取付けるに際し、止めネジによって簡単な手法で迅速に仮固定することができ、工事に際して、作業者が常に所定の間隔を置いて配置された止めネジによる仮固定状況を看取して、隣接するデッキ材との配列が適正に維持された、仕上がり状態の美麗な施工を期待できるデッキ材固定装置の提供を目的としたもの」(本件特許明細書の段落【0012】)である。
そして、本件発明の「フック」と「弾性片」について、本件特許明細書には、
「本発明の固定装置では、図13のように、ネジホルダー1の第1連結板14の挿着を終えた後に、その場で、図14に示すように、直ちに止めネジ7の頭をカナヅチで軽く叩いて、下端の尖状部13を根太2内へ打ち込んで、止めネジ7を根太2に仮固定する。」(段落【0038】)、
「図14に示すように、第1連結板14の上面に向けて設けられた弾性片17が、デッキ材3aの係止凹溝6の上面を反力面として、連結板14を下方へ押し下げるように突出するとともに、第1連結板14の下面に向けて設けられた弾性片17が、係止凹溝6の下面に接触して連結板14の押し下げ力を吸収するように屈曲し、上下の弾性片17、17の弾力により連結板14を係止凹溝6内の中間位置に水平に配置される。」(段落【0040】)、
「このように、第1連結板14がデッキ材側面の係止凹溝6内の中間位置に水平に配置されると、第1連結板14の前縁の上方フック16a及び下方フック16bが、僅かではあるが、デッキ材3の鉤形係止部5と係合されることと、第1連結板14の上面及び下面に設けられた弾性片17が、係止凹溝6の上面及び下面に圧着されることで、ネジホルダー1がデッキ材3aに対し適正、かつ、確実な状態で仮固定されることになる。」(段落【0041】)、
「ネジホルダー1の仮固定が完了した後は、図15に示すように、先に固定されたデッキ材3aの側面に、隣接するデッキ材3bの側面を接続する。」(段落【0044】)、
「次のデッキ材3bが水平に配置された後は、図16に示すように、ドライバーにより止めネジ7を回転して根太2内へねじ込む。止めネジ7が根太2内へねじ込まれて、ネジの頭部が縦孔10の上端へ押し付けられることで、ネジホルダー1の下端が根太2上へ圧着される。同時に、第1連結板14及び第2連結板15の下面がそれぞれの係止凹溝6,6の下面へ接した状態で、下側フック16b,16cが鉤形係止部5,5と係合し、ネジホルダー1により先のデッキ材3aと次のデッキ材3bとが確実に接続される。」(段落【0047】)、
「図17は、施工床面の最終取付け位置にデッキ材3nを配置するときの、拝み入れと呼ばれる方法を示すものである。」(段落【0048】)、
「このようにして、両デッキ材3b及び3nとが、中間にネジホルダー1を介して山形に組み合わされた状態で、両デッキ材を、水平となるように根太2の上面へ押し下げると、最終デッキ材3nは、左端がネジホルダー1を介して先デッキ材3bに接続され、右端が根太に取付けた固定フック21に係合されて、頭の見えるネジ止めによることなく正確に固定することができる。」(段落【0051】)、
と記載されている。
このような記載からみて、「弾性片」は、その弾力により連結板を係止凹溝内の中間位置に水平に配置させるものであり、また、上方と下方の「フック」は、デッキ材の鉤形係止部と係合されるものであって、「弾性片」と「フック」とを別体として備えることにより、止めネジを根太に仮固定するときに、弾性片の弾力により第1連結板がデッキ材側面の係止凹溝内の中間位置に水平に配置されると、第1連結板の前縁の上方フック及び下方フックが、僅かではあるが、デッキ材の鉤形係止部と係合されることと、第1連結板の上面及び下面に設けられた弾性片が、係止凹溝の上面及び下面に圧着されることで、ネジホルダーはデッキ材に対し適正、かつ、確実な状態で仮固定されるものといえる。また、相違点3にも関係するが、第1連結板と第2連結板に備えたそれぞれの下方「フック」は、先のデッキ材と次のデッキ材とを確実に接続させることに寄与し、さらに、最終取付け位置のデッキ材は、拝み入れという方法を採用して、正確に固定することができるものといえる。
これに対して、甲1発明は、第1連結板の前縁の上方と下方に被係止部21,22を備えることにより、その弾性を利用してデッキ材2_(1)の溝3_(1)に嵌着するとともに(この点では、本件発明の「弾性片」と弾性を有する点で共通しているといえる。)、その先端をデッキ材2_(1)の溝3_(1)内に形成された係止部6_(1),6_(2)に係止させて(この点では、請求人が主張するように、本件発明の「フック」に相当するといえる。)、「デッキ材の取扱中に又はねじ5の高さ調整中に、クランプ20が溝3から容易に脱出することを防止することができる」(甲第1号証の段落【0017】)ものであるが、「デッキ材側面の係止凹溝と係合するフック」と「係止凹溝内において支持させる弾性片」とを別体としてともに備えるものではないので、上記のような本件発明の作用効果は奏しないといえる。
なお、甲1発明の「挟持部23,23」は、「押え材10の端部を押入することにより押え材10にクランプ20を嵌着する」するものであるから、本件発明1の連結板を「係止凹溝内において支持させる弾性片」には相当しない。仮に、上方と下方に備えた被係止部21,22を、本件発明1の「弾性片」に相当するとした場合には、本件発明1の「フック」に相当する構成を甲1発明は備えていないことになる。

b 甲第2号証について
甲第2号証には、上記1(1)イで摘記したように、
「隙間を有する床(デッキ)の床板の固定に関し、任意の場所の床板を取外すことができるようにすることを目的とした床板設置装置及び床板の固定金物」(段落【0001】)に関して、
「床板相互の間隙幅は自由に選択できるようにして、かつ締付力は十分保ち、その上、任意の位置の床板を取外すことができるようにしたいという相矛盾した」(段落【0008】)課題を解決するために、
「両側溝付の床板を、ビス頭の直径より小さい間隙を保って並列し、前記隣接床板の対向する溝に、固定金物の両側部を夫々挿入すると共に、前記固定金物をビスで根太へ固定して、前記床板を固定する装置において、前記溝の深さは、前記固定金物を挿入し得る深さとし、隣接床板の相互間隙を、少なくともビス頭の直径より大きくできるように移動可能にしたことを特徴とする床板設置装置」(段落【0010】)
の発明が記載されている。
しかしながら、甲第2号証には、デッキ材の溝内に挿入される連結板に、デッキ材側面の溝と係合する「フック」と、連結板を溝内において支持させる「弾性片」をともに備えることは、記載されていない。すなわち、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項に相当する構成は記載されていない。

c 甲第4号証について
甲第4号証には、上記1(1)ウで摘記したように、
「デッキ材を根太に固定するための構造及びそれに用いられる固定具」(段落【0001】)に関して、
「固定具を低コストで製造でき、固定具の根太に対する取付安定性が高められ、デッキ完成後に任意の位置のデッキ材を容易に取り外すことができるデッキ材固定構造を提供する」とともに「上記デッキ材固定構造に用いられ、デッキ材の連続的設置が円滑に行うことができるデッキ材固定具(以下、単に固定具という場合がある。)を提供する」(段落【0004】)ために、
「固定具は、根太に載せられてビスでその根太に固定される固定部と、その固定部の幅方向一端部にほぼ下向きコ字形に形成され、デッキ材の係止部を下側に係合させる第1係合部と、前記固定部の幅方向他端部に、ほぼへ字形に形成され、デッキ材の係止部を下側に係合させる第2係合部とを有している」(段落【0005】)
発明が記載されている。
また、その使い方として、「最初のデッキ材1(E)の幅方向他端・・・至近の所定位置における根太4の上に固定具2の固定部16を載せ、・・・第1係合部17に最初のデッキ材1(E)の幅方向他端の係止部14を係合させた後、固定部16に貫通したビス3を根太4にねじ込んで固定」(段落【0020】)し、続いて、・・・二番目のデッキ材1(L)を根太4の上に載せて先のデッキ材1(E)の方向に摺動して、そのデッキ材1(L)の幅方向一端・・・の係止部14を固定具2の第2係合部18に係合させて固定する」(段落【0021】)ことも記載されている。
したがって、甲第4号証には、固定具2(本件発明1の「ネジホルダー」に相当する。以下同様。)に、その幅方向一端部(「第1連結板」)に、ほぼ下向きコ字形に形成され、デッキ材の係止部を下側に係合させる第1係合部(「フック」)と、固定部の幅方向他端部(「第2連結板」)に、ほぼへ字形に形成され、デッキ材の係止部を下側に係合させる第2係合部(「フック」)を備えることが開示されているといえる。
しかしながら、甲第4号証には、デッキ材の溝内に挿入される連結板に、デッキ材側面の溝と係合する「フック」と、連結板を溝内において支持させる「弾性片」をともに備えることは、記載されていない。すなわち、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項に相当する構成は記載されていない。

d 甲第5号証について
甲第5号証には、上記1(1)エで摘記したように、
「住宅等に設けられている床材を貼り替えるのに好適な床構造及び床の補修方法」(段落【0001】)に関して、
「所望のフローリング材のみを交換して床の補修を簡単に行うことができ、廃材処理が小規模で済む床構造及び床の補修方法を提供する」(段落【0004】)ために、
「両側面に凹条部を有する床材を、床下地の上に固定する床構造であって、床下地の上に、床材を互いに隣接した状態で固定する固定部品を複数有し、かつ複数の固定部品の各々は、一方の床材の一側面に設けられた凹条部と他方の床材の他側面に設けられた凹条部とそれぞれ嵌合して、双方の床材を互いに隣接して連結すると共に床下地に対して固定する」(段落【0005】)
発明が記載されている。
また、甲第5号証の図6ないし8には、フローリング材が、その中央に設けられている飾り溝を中心としてくの字状に折り曲げられる状態から、平らになるようにのばされ、両側に配置されている固定部材と嵌合されて取り付けられること(請求人が主張する「拝み入れ」の取付方法)も開示されている。
しかしながら、甲第5号証には、デッキ材の溝内に挿入される連結板に、デッキ材側面の溝と係合する「フック」と、連結板を溝内において支持させる「弾性片」をともに備えることは、記載されていない。すなわち、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項に相当する構成は記載されていない。

e 甲第6号証について
甲第6号証には、上記1(1)オで摘記したように、
「建築物、特に住宅のテラスやバルコニーに好適なデッキ」(段落【0001】)に関して、
「木材を使用したデッキにあったような、歩行の際に危険箇所となる、止着具のデッキ表面への突出を排除したデッキの実現にある。加えて、作業性及び施工性に優れ、デッキ面上に溜まる水の排水性及び防汚性をも高めたデッキを提供する」(段落【0008】)ために、
「スラブ上に並設された根太上に、床面を形成する複数のデッキ材が所定間隔を隔てて敷設され、各デッキ材はデッキ材間において固定部材により連結されるとともに根太に固定されたデッキであって、前記デッキ材にはその板傍に上縁部と下縁部とを有する連結溝が設けられ、前記固定部材は、根太と接合される取付板部と、この取付板部の両端から立ち上げ形成されたスペーサ部と、これらスペーサ部の先端からそれぞれ延設され、デッキ材の前記上縁部又は下縁部と先端縁で係合する係止部とを有し、固定部材の係止部が連結溝に挿入されるとともに係止部の先端縁が連結溝の上縁部又は下縁部の内面と係合され、且つ、固定部材のスペーサ部にデッキ材の下縁部が当接された状態で取付板部が根太に止着具にて取り付けられることによりデッキ材が所定間隔を隔てて根太上に固定されてなる」(段落【0009】)発明が記載されている。
また、甲第6号証の段落【0021】?【0029】、及び図1ないし3には、固定部材21(本件発明1の「ネジホルダー」に相当する。)に、取付板部22と、スペーサ部24と、下方に向いており、デッキ材11の連結溝18の下縁部20に設けられた凹凸20aに係合する係止部25(同「(下方に設けられた)フック」に相当する。)を有することが記載されている。
しかしながら、甲第6号証には、デッキ材の溝内に挿入される連結板に、デッキ材側面の溝と係合する「フック」と、連結板を溝内において支持させる「弾性片」をともに備えることは、記載されていない。すなわち、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項に相当する構成は記載されていない。

f まとめ
以上のとおり、甲第2号証、及び、甲第4号証ないし甲第6号証には、デッキ材の溝内に挿入される連結板に、デッキ材側面の溝と係合する「フック」と、連結板を溝内において支持させる「弾性片」をともに備えること、すなわち、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項に相当する構成は記載されていないから、甲1発明において、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(イ)請求人の主張について
a 請求人は、甲第1号証の図1ないし図3には、本件発明1の「フック」に相当する「被系止部21,22」、及び、同「弾性片」に相当する「挟持部23,23」がそれぞれ開示されており、また、甲第1号証の段落【0013】には、「・・・クランプ自身の弾性を利用して嵌着することができ・・・」と記載されているとともに、段落【0014】には、「・・・クランプ20は、・・・薄鋼板で作られ、・・・被係止部の間・・・コ字形の上下辺を水平に形成してなる挟持部23とを一体に有している。」と記載されているから、「挟持部23,23」は弾性体であることが明らかである旨を主張している。
b しかしながら、請求人の上記主張は、以下のとおり採用できない。
本件発明1において、「各連結板は、前縁に、デッキ材側面の係止凹溝と係合するフックをそれぞれ備えるとともに、連結板を前記係止凹溝内において支持させる弾性片を備え、」と特定されているように、「弾性片」は「連結板を前記係止凹溝内において支持させる」ものである。
これに対して、甲1発明の「挟持部23,23」は、「押え材10の端部を押入することにより押え材10にクランプ20を嵌着する」するものであるから、本件発明1の「ネジホルダー」の「連結板」に相当する「押え材10」を挟持するものである。
よって、甲1発明の「挟持部23,23」は、本件発明1の「連結板を前記係止凹溝内において支持させる弾性片」には相当しない。

エ 相違点3について
(ア)甲第1号証の段落【0013】には、「クランプ20は、押え材10の幅方向の少なくとも一端側に装着される。このクランプ20は、根太1に隣接して固定されるデッキ材の端部に互いに対向して開口するように形成されている溝31,32に、クランプ自身の弾性を利用して嵌着することができるものである。」との記載があり、「少なくとも一端側」とは、一端側のみならず両端に装着しても良いことを示唆する表現であるともいえるので、「押え材10」の両側に「被係止部21,22」を有する「クランプ20」を設けることが示唆されている。
(イ)しかしながら、上記ウで検討したとおり、甲1発明は「フック」と「弾性片」とを別体としてともに備えるものではなく、また、甲1発明において、「押え材10」(連結板)に「フック」と「弾性片」とを別体としてともに備えることが、当業者にとって容易に想到できたものともいえない。
(ウ)よって、甲1発明において、本件発明1の相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

オ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、本件発明1についての特許は、無効とすべきものではない。

(3)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、同様の理由により、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
よって、本件発明2ないし4は、甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、本件発明2ないし4についての特許は、無効とすべきものではない。

2 無効理由2について
(1)当審の判断
本件明細書の発明の詳細な説明における段落【0024】ないし【0051】には、本件発明1ないし4に係る実施例が記載されており、デッキ材の固定装置の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)であれば、その記載から本件発明1ないし4を容易に実施可能であるといえる。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1ないし4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしている。

(2)請求人の主張について
ア 「遊挿」の定義について
(ア)請求人は、「遊挿」は、日本の代表的な国語辞典である「広辞苑」(甲第3号証)、及びその他あらゆる国語辞典にも載っていないところ、本件明細書では、定義なしに用いていると主張している。
(イ)本件明細書には、「遊挿」に係る構成である「止めネジ7」と「縦孔10」の構成について、以下のとおり記載されている。
「【0025】
ネジホルダー1は、先に取付けられるデッキ材3aと、後から取付けられるデッキ材3bの側面4、4の間に挟着される肉厚を有するものであれば、外形は筒状であっても板状であってもよいが、この実施例では、壁板8からなっていて、この壁板8の中央部肉厚内に上縁から下縁にかけて、止めネジ7のネジ溝9を遊挿し得る内径の縦孔10が設けられている。
【0026】
なお、図4に示したように、縦孔10の上端内周面には、止めネジ7におけるネジ溝9の上部に係合して、止めネジ7を縦孔10内の所定の高さ位置に仮保持しておくための突起11が設けられている。
」、
「【0039】
このように、止めネジ7の頭を叩いて尖状部13を根太2内へ打ち込むと、図4に示した、止めネジ7のネジ溝9上端部と縦孔10の上端の突起11との係合が外されることで、ネジホルダー1と止めネジ7との連結状態が解かれ、ネジホルダー1は止めネジ7に対してフリーの状態となる。
【0040】
ネジホルダー1が止めネジ7に対してフリーの状態になると、ネジホルダー1は、自重により、図13に示した高さ位置より下方へ落下することになる。その時、図14に示すように、第1連結板14の上面に向けて設けられた弾性片17が、デッキ材3aの係止凹溝6の上面を反力面として、連結板14を下方へ押し下げるように突出するとともに、第1連結板14の下面に向けて設けられた弾性片17が、係止凹溝6の下面に接触して連結板14の押し下げ力を吸収するように屈曲し、上下の弾性片17、17の弾力により連結板14を係止凹溝6内の中間位置に水平に配置される。」
そして、本件明細書の上記事項から、「止めネジ7」は「縦孔10」にねじ螺合されているのではなく、係合されていない状態(遊びのある状態)で挿入可能であることが理解でき、「止めネジ7」が「縦孔10」に対してそのような関係であることを、「遊挿」し得るとの表現で特定していることも理解できる。
よって、「遊挿」が「広辞苑」(甲第3号証)に載っておらず、本件明細書で明確な定義がないとしても、「遊挿」、及びそれに係る構成である「止めネジ7」と「縦孔10」の構成は、本件明細書にその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
イ 「遊挿」の構造について
(ア)請求人は、本件発明1は、「ネジホルダーは、内部中央に、止めネジを遊挿し得る縦孔を有する」もので、内部中央にある縦孔には、止めネジが遊びのある状態で挿入可能になっているが、本件発明1の従属項である本件発明3は、「縦孔内の上端内周面に、」「止めネジを縦孔内に仮止めする突起」を有するので、縦孔内で止めネジが遊挿できないと解釈せざるを得ない、すなわち、本件発明3は本件発明1の従属項にはなり得ない旨を主張している。
(イ)しかしながら、止めネジを遊挿し得る大きさの縦孔の上端内周面に、止めネジを仮止めする突起を形成したとしても、「縦孔」自体は、止めネジを遊挿し得る大きさであることに変わりはないから、「止めネジを遊挿し得る縦孔を形成すること」と、「縦孔の上端内周面に止めネジを仮止めする突起を形成すること」は、何ら矛盾を生じさせるものではないといえる。
そして、上記ア(ア)で摘記した本件明細書の段落【0039】の記載事項から、ネジホルダーを止めネジに対して「フリーの状態」とすることができるのは、縦孔が「止めネジを遊挿し得る大きさ」に形成されているからにほかならず、「止めネジを遊挿し得る縦孔」と「縦孔の上端内周面に止めネジを仮止めする突起」が、何らの矛盾もなく両立できるものであることは明らかである。
よって、本件明細書には、「止めネジを遊挿し得る縦孔」を形成するとともに「縦孔の上端内周面に止めネジを仮止めする突起」を形成したデッキ材固定装置についての実施例が記載されており、この実施例は、当業者において実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

(3)まとめ
以上のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしているから、本件発明1ないし4についての特許は、請求人の主張する無効理由2によっては無効とすることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし4は、請求人が提出した証拠に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものではなく、また、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているから、本件発明1ないし4に係る特許は、無効とすべきものではない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-13 
結審通知日 2016-01-15 
審決日 2016-01-26 
出願番号 特願2006-207495(P2006-207495)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (E04B)
P 1 113・ 536- Y (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 聡志  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
小野 忠悦
登録日 2012-01-20 
登録番号 特許第4908098号(P4908098)
発明の名称 デッキ材の固定装置  
代理人 武田 明広  
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