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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61L
管理番号 1312284
審判番号 不服2015-3584  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-25 
確定日 2016-03-10 
事件の表示 特願2013-510940「空気清浄機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月26日国際公開、WO2012/144336〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年4月5日(優先権主張2011年4月21日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 1月27日付け:拒絶理由の通知
同年 3月24日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月27日付け:拒絶査定
平成27年 2月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 5月25日 :上申書の提出

第2 平成27年2月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定

1.補正の却下の決定の結論
平成27年2月25日にされた手続補正を却下する。

2.理由
(1)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成26年3月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。

【請求項1】
外部に向けて開口する吸込口及び吹出口が形成され、該吸込口と該吹出口を連通する通風路を有する本体ケースと、
前記本体ケースに内蔵され、前記吸込口から前記吹出口に至る前記通風路に室内空気を導入する送風手段と、
前記通風路に設けられ、導入された空気が通過可能な脱臭エレメントと、
前記脱臭エレメントを局部的に加熱する加熱ユニットと、
該加熱ユニットと前記脱臭エレメントの相対的位置関係を変更する位置変更手段と、
前記送風手段と前記加熱ユニットと前記位置変更手段の通電を制御する制御手段と、
を備え、
前記脱臭エレメントは、前記加熱ユニットによって加熱されることで脱臭機能が回復し、
前記制御手段は、前記送風手段への通電を停止している期間に、前記加熱ユニットへの通電を行うことを特徴とする空気清浄機。

(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。)

【請求項1】
外部に向けて開口する吸込口及び吹出口が形成され、該吸込口と該吹出口を連通する通風路を有する本体ケースと、
前記本体ケースに内蔵され、前記吸込口から前記吹出口に至る前記通風路に室内空気を導入する送風手段と、
前記通風路に設けられ、導入された空気が通過可能な脱臭エレメントと、
前記脱臭エレメントを局部的に加熱する加熱ユニットと、
該加熱ユニットと前記脱臭エレメントの相対的位置関係を変更する位置変更手段と、
前記送風手段と前記加熱ユニットと前記位置変更手段の通電を制御する制御手段と、
を備え、
前記脱臭エレメントは、円板形状であり、前記本体ケースに回動可能に支持され、前記加熱ユニットによって加熱されることで脱臭機能が回復し、
前記加熱ユニットは、通電により発熱する扇形状を成したヒーターユニットを有し、該ヒーターユニットが前記脱臭エレメントの表面に近接した位置となるように、前記本体ケースに固定され、
前記制御手段は、前記位置変更手段を所定のタイミングで駆動して前記脱臭エレメントを前記ヒーターユニットの開角と同じか、又は、この開角より小さい角度だけ回動させる制御プログラムを内蔵し、前記送風手段への通電を停止している期間に、前記加熱ユニットへの通電を行うことを特徴とする空気清浄機。

(3)補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「脱臭エレメント」を、「円板形状であり、前記本体ケースに回動可能に支持され」たものであるという事項で限定し、「加熱ユニット」を、「通電により発熱する扇形状を成したヒーターユニットを有し、該ヒーターユニットが前記脱臭エレメントの表面に近接した位置となるように、前記本体ケースに固定され」たものであるという事項で限定し、「制御手段」を、「前記位置変更手段を所定のタイミングで駆動して前記脱臭エレメントを前記ヒーターユニットの開角と同じか、又は、この開角より小さい角度だけ回動させる制御プログラムを内蔵し」たものであるという事項で限定したものである。

そして、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)との産業上の利用分野、及び解決しようとする課題は同一であると認められるから、上記補正は、特許法第17条の2第5項2号に掲げる、いわゆる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記(2)に記載されたとおりのものである。

イ 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日(2011年4月21日)前に頒布された刊行物である、特開平11-178905号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

a 「【0055】図1に示すように、本実施形態1の空調機は、ケーシング(11)内にプレフィルタ(15)と空気浄化部(20)とファン(16)とが収納されて成り、室内空気の浄化を行う空気清浄機(10)に構成されている。
【0056】上記ケーシング(11)には吸込口(12)と吹出口(13)とが形成される一方、ケーシング(11)の内部には吸込口(12)から吹出口(13)へと連通する空気通路(14)が形成されている。また、該ケーシング(11)内部には、吸込口(12)から吹出口(13)へ向かって順に、プレフィルタ(15)と空気浄化部(20)とファン(16)とが配置されている。
【0057】上記ファン(16)はプロペラファンであって、図示しないが、ファンモータが連結されている。そして、該ファン(16)は、ケーシング(11)内部の空気通路(14)に配置され、該ファン(16)が回転して空気が吸込口(12)から空気通路(14)に流入し、吹出口(13)から吹き出される。」

b 「【0116】
【発明の実施の形態4】本実施形態4は、図8に示すように、上記実施形態1の空気清浄機(10)において空気浄化部(20)の構成を変更したものであって、空気浄化部(20)以外の構成は実施形態1と同様である。」

c 「【0117】本実施形態の空気浄化部(20)は、図9に示すように、円筒状の脱臭ロータ(51)と、駆動モータ(56)と、該脱臭ロータ(51)の一部を覆うように形成された再生部(27)とを備えている。
【0118】上記脱臭ロータ(51)は、・・・円筒状に形成されている。・・・」

d 「【0119】上記駆動モータ(56)は減速機付きのモータであって、該駆動モータ(56)の回転軸は上記脱臭ロータ(51)の心棒(52)に同軸に取り付けられて、回転駆動手段に構成されている。」

e 「【0120】上記再生部(27)は、脱臭ロータ(51)の前面の一部と背面の一部とを覆うように脱臭ロータ(51)の中心側から周辺に向かってそれぞれ扇形に広がり、前後の相対する位置に配置された扇形部(27a)と、該扇形部(27a)の先端同士をつないで脱臭ロータ(51)の側面の一部を覆う側壁部(27b)とを備えて成る断面コの字状に形成されている。また、上記扇形部(27a)及び側壁部(27b)は、断熱性を有する断熱壁に構成されている。また、上記再生部(27)の内壁面には、図示しないが電気ヒータが設けられ、該電気ヒータで再生部(27)に位置する脱臭ロータ(51)を加熱することによって、該脱臭ロータ(51)の脱臭シート(53)の吸着剤に吸着された臭気物質又は有害物質を脱離させると共に、脱臭ロータ(51)の触媒を活性化して該臭気物質又は有害物質を分解し無臭化又は無害化するように構成されている。」

f 「【0121】そして、上記空気浄化部(20)は、ケーシング(11)内の空気通路(14)において、該空気通路(14)を流通する室内空気が脱臭ロータ(51)に形成された浄化通路(55)を該脱臭ロータ(51)の前面側から背面側へと流通する姿勢で配置され、再生部(27)の側壁部(27b)が空気通路(14)の上壁に取り付けられる一方、駆動モータ(56)がブラケット(57)を介して空気通路(14)の上壁に取り付けられている。」

g 「【0122】-運転動作-
上記空気清浄機(10)の動作について説明すると、吸込口(12)から空気通路(14)へと流入した室内空気は、実施形態1と同様に流れて空気浄化部(20)へと流れる。該室内空気は、脱臭ロータ(51)の浄化通路(55)へと流入し、該浄化通路(55)を形成する脱臭シート(53)及び区画シート(54)と接触しつつ流通する。そして、浄化通路(55)を流通する際に、該室内空気に含まれる臭気物質又は有害物質が脱臭シート(53)及び区画シート(54)の吸着剤に吸着除去されて浄化空気となり、該浄化空気は、空気通路(14)を流れて吹出口(13)から再び室内へと吹き出され、室内空気の浄化が行われる。
【0123】一方、脱臭ロータ(51)は所定時間毎に所定角度ずつ回転しており、浄化通路(55)を室内空気が流通して室内空気の浄化を行った脱臭ロータ(51)の部分は、再生部(27)へと至る。該再生部(27)では電気ヒータによって再生部(27)に位置する脱臭ロータ(51)が加熱され、脱臭ロータ(51)の脱臭シート(53)及び区画シート(54)の吸着剤が再生される。即ち、加熱されることによって該脱臭シート(53)及び区画シート(54)の吸着剤に吸着された臭気物質又は有害物質が脱離し、該吸着剤が再生される。また、脱臭シート(53)及び区画シート(54)の触媒も加熱されて活性化されているため、吸着剤から脱離した臭気物質又は有害物質は該触媒によって分解されて無臭化又は無害化される。そして、吸着剤が再生された脱臭ロータ(51)の部分は、脱臭ロータ(51)の回転によって再び再生部(27)の外部へと移動し、浄化通路(55)を室内空気が流通して該室内空気の浄化を行う。従って、脱臭ロータ(51)による空気の浄化と、脱臭ロータ(51)の再生とが並行して行われるため、室内空気の浄化が連続して行われる。」

h 「【0124】-実施形態4の効果-
・・・
【0125】また、再生部(27)では脱臭ロータ(51)の浄化通路(55)内部と脱臭ロータ(51)の外部との空気の流通が遮断されているため、吸着剤から脱離した臭気物質又は有害物質が浄化通路(55)から外部へと流出するのを防ぐことができ、この結果、吸着剤の再生を確実に行うことができる。
【0126】また、脱臭ロータ(51)の脱臭シート(53)及び区画シート(54)の吸着剤による空気の浄化と、該吸着剤の再生とが同時に並行して行うことができ、この結果、空気の浄化を連続して行うことができる。
【0127】また、再生部(27)の扇形部(27a)及び側壁部(27b)を断熱壁に構成しているため、脱臭ロータ(51)の吸着剤の再生を行う際における再生部(27)の内部から外部への放熱量を削減することができ、吸着剤の再生に要するエネルギーを削減することができる。また、脱臭ロータ(51)を高温に維持するため、脱臭ロータ(51)の脱臭シート(53)及び区画シート(54)に捕捉した雑菌を殺菌することができる。」

i 「



j 「



k 「



引用発明の認定
(ア)引用例は、空気清浄機に関する。(摘示箇所a、b)

(イ)引用例には、内部に、吸込口から吹出口へと連通する空気通路が形成されたケーシングが記載されている。(摘示箇所a、b、i、j)

(ウ)引用例には、ケーシングの空気通路に配置されたファンにより、空気が吸込口から空気通路に流入し、吹出口から吹き出されることが記載されている。(摘示箇所a、b、i、j)

(エ)引用例には、ファンに、ファンモータが連結されていることが記載されている。(摘示箇所a、b)

(オ)引用例には、ケーシング内の空気通路に、円筒状の脱臭ロータが配置され、室内空気が、該脱臭ロータに形成された浄化通路を、脱臭ロータの前面側から背面側へと流通することが記載されている。(摘示箇所c、f、j、k)

(カ)引用例には、脱臭ロータの前面の一部と背面の一部とを覆うように、前後の相対する位置に配置された扇形部と、該扇形部の先端同士をつないで脱臭ロータの側面の一部を覆う側壁部とを備え、内壁面には電気ヒータが設けられた、再生部が記載されている。(摘示箇所e、j、k)

(キ)引用例には、上記再生部の側壁部が、空気通路の上壁に取り付けられていることが記載されている。(摘示箇所f、j)

(ク)引用例には、上記電気ヒータで、再生部に位置する脱臭ロータを加熱することで、該脱臭ロータに吸着された臭気物質又は有害物質を脱離させると共に、該臭気物質又は有害物質を分解し、吸着剤を再生することが記載されている。(摘示箇所g)

(ケ)引用例には、上記脱臭ロータが、駆動モータにより、所定時間毎に所定角度ずつ回転していることが記載されている。(摘示箇所g)

(コ)引用例には、上記駆動モータの回転軸が、上記脱臭ロータの心棒に同軸に取り付けられ、該駆動モータは、ブラケットを介して空気通路の上壁に取り付けられていることが記載されている。(摘示箇所d、f、j)

(サ)引用例には、脱臭ロータの吸着剤による空気の浄化と、該吸着剤の再生とを同時に並行して行うことができる旨記載されている。(摘示箇所g)

以上を総合し、本件補正発明の記載に即して整理すると、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「内部に、吸込口から吹出口へと連通する空気通路が形成されたケーシング、
ケーシングの空気通路に配置され、空気が吸込口から空気通路に流入し、吹出口から吹き出されるための、ファンモータが連結されたファン、
空気通路に配置され、室内空気が、前面側から背面側へと流通する浄化通路が形成された円筒状の脱臭ロータ、
脱臭ロータの前面の一部と背面の一部とを覆うように、前後の相対する位置に配置された扇形部と、該扇形部の先端同士をつないで脱臭ロータの側面の一部を覆う側壁部とを備え、該側壁部が、空気通路の上壁に取り付けられており、内壁面には電気ヒータが設けられた、再生部、
脱臭ロータを、所定時間毎に所定角度ずつ回転させる、駆動モータ、
を備え、
前記脱臭ロータの心棒は、前記駆動モータの回転軸に取り付けられ、該駆動モータは、ブラケットを介して空気通路の上壁に取り付けられており、
前記脱臭ロータは、再生部で加熱されることで、吸着剤が再生されるものであり、
前記脱臭ロータの吸着剤による空気の浄化と、該吸着剤の再生とを同時に並行して行うことができる、
空気清浄機。」

エ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「吸込口」、「吹出口」、「空気通路」は、それぞれ本件補正発明の「吸込口」、「吹出口」、「通風路」に相当し、これらを有する引用発明の「ケーシング」は、本件補正発明の「本体ケース」に相当する。
そして、引用発明の、「吸込口」、「吹出口」が外部に向けて開口していることは、引用例1の摘示箇所j(図8)からも明らかである。
したがって、引用発明の、「内部に、吸込口から吹出口へと連通する空気通路が形成されたケーシング」は、本件補正発明の、「外部に向けて開口する吸込口及び吹出口が形成され、該吸込口と該吹出口を連通する通風路を有する本体ケース」に相当する。

(イ)引用発明の「ファン」は、「空気」を「吸込口から空気通路に流入」させ、「吹出口から吹き出さ」せるためのものであるから、本件補正発明の「送風手段」に相当し、該「ファン」は、「空気通路」に配置されたものであるから、「ケーシング」に内蔵されていることは明らかである。
したがって、引用発明の、「ケーシングの空気通路に配置され、空気が吸込口から空気通路に流入し、吹出口から吹き出されるための、ファンモータが連結されたファン」は、本件補正発明の、「前記本体ケースに内蔵され、前記吸込口から前記吹出口に至る前記通風路に室内空気を導入する送風手段」に相当する。

(ウ)引用発明の「脱臭ロータ」は、本件補正発明の「脱臭エレメント」に相当し、該「脱臭ロータ」に「形成」された「浄化通路」は、「空気通路」に流入した「室内空気が、前面側から背面側へと流通する」、すなわち、空気が通過可能なものである。
したがって、引用発明の、「空気通路に配置され、室内空気が、前面側から背面側へと流通する浄化通路が形成された円筒状の脱臭ロータ」は、本件補正発明の、「前記通風路に設けられ、導入された空気が通過可能な脱臭エレメント」に相当する。

(エ)引用例の摘示箇所k(図9)から、引用発明の「再生部」は、「脱臭ロータ」の「一部」を「覆う」ものであることを見てとることができる。
また、該「再生部」の「内壁面には電気ヒータが設けら」れ、該「電気ヒータ」は、「再生部」に位置する「脱臭ロータ」を加熱するものである。
したがって、引用発明の「電気ヒータが設けられた、再生部」は、本件補正発明の、「前記脱臭エレメントを局部的に加熱する加熱ユニット」に相当する。

(オ)引用発明の「駆動モータ」は、「脱臭ロータを、所定時間毎に所定角度ずつ回転させる」ものであり、その一方で、「再生部」は、「空気通路の上壁に取り付けられて」おり、固定されたものであることは明らかである。
したがって、引用発明の「脱臭ロータを、所定時間毎に所定角度ずつ回転させる、駆動モータ」は、本件補正発明の、「該加熱ユニットと前記脱臭エレメントの相対的位置関係を変更する位置変更手段」に相当する。

(カ)引用発明は、「ファンモータ」が連結された「ファン」、「内壁面」に「電気ヒータ」が設けられた「再生部」、そして「駆動モータ」を有し、これらはいずれも通電により作動するものである。
そして、通電により作動する装置であれば、電源のオン-オフをはじめとした制御手段を有することは、技術常識からみて明らかであるから、引用発明も「制御手段」を有するといえる。
したがって、引用発明の、「ファンモータが連結されたファン・・・電気ヒータが設けられた、再生部・・・脱臭ロータを、所定時間毎に所定角度ずつ回転させる、駆動モータ」は、本件補正発明の、「前記送風手段と前記加熱ユニットと前記位置変更手段の通電を制御する制御手段と、を備え」に相当する。

(キ)引用発明の「脱臭ロータ」は、「駆動モータ」により「回転」するものであるから、「回動可能」であるといえる。
また、該「脱臭ロータ」は、上記「駆動モータの回転軸」、そして、該「駆動モータ」が取り付けられた「ブラケット」を介して、「空気通路の上壁」、すなわち「ケーシング」に取り付けられている。
したがって、引用発明において、「前記脱臭ロータの心棒は、前記駆動モータの回転軸に取り付けられ、該駆動モータは、ブラケットを介して空気通路の上壁に取り付けられて」いることは、本件補正発明の、「脱臭エレメント」は「本体ケースに回動可能に支持され」ていることに相当する。

(ク)引用発明の「脱臭ロータ」は、「再生部」で加熱されることで、「吸着剤が再生されるもの」であり、「吸着剤が再生される」ことは、本件補正発明の「脱臭機能が回復する」ことに相当することは明らかである。
したがって、引用発明において、「前記脱臭ロータは、再生部で加熱されることで、吸着剤が再生されるものである」ことは、本件補正発明の、「加熱ユニットによって加熱されることで脱臭機能が回復」することに相当する。

(ケ)引用発明の「再生部」の「内壁部」に設けられた「電気ヒータ」は、本件補正発明の「通電により発熱するヒーターユニット」に相当する。
そして、引用例の摘示箇所j、k(図8、9)からも、上記「再生部」が、「脱臭ロータ」の表面に近接して設けられていることを見てとれるから、該「再生部」の「内壁部」に設けられた「電気ヒータ」も、「脱臭ロータ」の表面に近接しているものといえる。
また、上記「再生部」は、「空気通路の上壁」、すなわち「ケーシング」に取り付けられている。
したがって、引用発明の「・・・側壁部とを備え、該側壁部が、空気通路の上壁に取り付けられており、内壁面には電気ヒータが設けられた、再生部」は、本件補正発明の、「前記加熱ユニットは、通電により発熱」する「ヒーターユニットを有し、該ヒーターユニットが前記脱臭エレメントの表面に近接した位置となるように、前記本体ケースに固定され」ていることに相当する。

(コ)引用発明は、「脱臭ロータを、所定時間毎に所定角度ずつ回転させる」ものであり、該「回転」は、本件補正発明の「回動」に相当する。
そして、「駆動モータ」により、「脱臭ロータを、所定時間毎に所定角度ずつ回転させる」ために、「駆動モータ」を所定時間毎に駆動する何らかの「制御手段」が存在することは、技術常識からみて明らかである。
したがって、上記(カ)で説示した引用発明の「制御手段」は、本件補正発明の、「前記位置変更手段を所定のタイミングで駆動」して、前記「脱臭エレメント」を所定角度ずつ回動させるものを含むといえる。

以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、下記の点で一致し、下記の点で相違する。

・一致点
「外部に向けて開口する吸込口及び吹出口が形成され、該吸込口と該吹出口を連通する通風路を有する本体ケースと、
前記本体ケースに内蔵され、前記吸込口から前記吹出口に至る前記通風路に室内空気を導入する送風手段と、
前記通風路に設けられ、導入された空気が通過可能な脱臭エレメントと、
前記脱臭エレメントを局部的に加熱する加熱ユニットと、
該加熱ユニットと前記脱臭エレメントの相対的位置関係を変更する位置変更手段と、
前記送風手段と前記加熱ユニットと前記位置変更手段の通電を制御する制御手段と、
を備え、
前記脱臭エレメントは、前記本体ケースに回動可能に支持され、前記加熱ユニットによって加熱されることで脱臭機能が回復し、
前記加熱ユニットは、通電により発熱するヒーターユニットを有し、該ヒーターユニットが前記脱臭エレメントの表面に近接した位置となるように、前記本体ケースに固定され、
前記制御手段は、前記位置変更手段を所定のタイミングで駆動して前記脱臭エレメントを回動させるものを含む、空気清浄機。」

・相違点
[相違点1]本件補正発明は、「脱臭エレメント」が、「円板形状」であるのに対し、引用発明は、「円筒状」である点。

[相違点2]本件補正発明は、「扇形状を成したヒーターユニットを有し」ているのに対し、引用発明は、「ヒーターユニット(電気ヒータ)」の形状が特定されていない点。

[相違点3]本件補正発明は、「位置変更手段」が、前記「脱臭エレメント」を「前記ヒーターユニットの開角と同じか、又は、この開角より小さい角度だけ回動させる」のに対し、引用発明は、「所定角度ずつ回転させる」ものである点。

[相違点4]本件補正発明は、「制御手段」が、「制御プログラムを内蔵し」たものであるのに対し、引用発明は、そのことが特定されていない点。

[相違点5]本件補正発明は、「前記送風手段への通電を停止している期間に、前記加熱ユニットへの通電を行う」のに対し、引用発明は、「脱臭エレメント(脱臭ローラ)の吸着剤による空気の浄化と、該吸着剤の再生とを同時に並行して行う」ものである点。

オ 判断
以下、上記相違点1?5について検討する。

(ア)相違点1について
本件補正発明の「円板形状」と、引用発明の「円筒状」との差異は、厚さの差異、すなわち、空気が通過する長さの差異といえる。
してみれば、要求される脱臭能力と、許容される空気通路のスペースとを勘案し、「脱臭ロータ」の単位長さあたりの表面積を大きくするなどの当業者に周知の手段により、引用発明の「脱臭ロータ」における空気の通過長さを短く、すなわち、「脱臭ロータ」の厚さを薄くし、その結果「円板形状」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、「脱臭ロータ」の断面積が大きくなったり、単位長さあたりの表面積が大きくなったりすれば、より短い空気の通過長さで同程度の脱臭能力が得られることは、当業者に明らかであり、「円板形状」とすることにより、当業者に予測し得ない効果が奏されるともいえない。

(イ)相違点2について
引用例の摘示箇所e、j(図8)、k(図9)に記載のとおり、引用発明の「再生部」は、「脱臭ロータの前面の一部と背面の一部とを覆うように、前後の相対する位置に配置された扇形部」を有するものである。
そして、該「再生部」は、「脱臭ロータ」の吸着剤を、加熱により再生する部位であるから、該「再生部」全体が加熱されるように電気ヒータを設けることは、当業者に当然のことである。
してみれば、上記扇形部に対応して設けられた電気ヒータの形状は、扇形状であるといえるから、相違点2は、実質的な相違点ではない。

(ウ)相違点3について
本願【0028】の、「中央支持体65bを中心に、左右に等しく広がる所定の開角により形成される扇形の領域・・・」、同【0064】の、「扇形状であるヒーターユニット63aの開角」、及び図7、10の記載からみて、本件補正発明における「ヒーターユニットの開角」とは、扇形状を成したヒーターユニットの、扇形の中心角を意味するものと解される。
そして、引用発明における「所定角度」が、「再生部」に設けられた「電気ヒータ」の中心角(開角)より大きくなれば、加熱により吸着剤が再生される部分の間に、加熱されず吸着剤が再生されない部分が形成されることになるから、かかる非再生部分が形成されないよう、引用発明における「所定角度」を、電気ヒータの中心角(開角)と同じか、それよりも小さい角度とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、上記相違点3について、請求人は、審判請求書において、引用発明は、脱臭ロータを所定時間毎に所定角度ずつ回転させる制御については、具体的な思想が開示されていない旨、そして上申書において、このことから、引用発明は、脱臭ロータの加熱をむらなく十分に行うという課題は重要でない旨主張している。
しかしながら、脱臭ロータが加熱により再生されなければ、その部分の脱臭能力は低下したままであるから、引用発明において、脱臭ロータの全ての部分を加熱により再生しようとすることは、当業者に自明のことであって、引用発明において、脱臭ロータの加熱をむらなく十分に行うことが重要でないとはいえない。
よって、請求人の上記主張は、採用できない。

(エ)相違点4について
装置の制御を制御プログラムにより行うことは、文献を挙げるまでもなく、技術分野によらない周知慣用技術である。
したがって、当該周知慣用技術を引用発明に適用し、その制御手段を、制御プログラムを内蔵したものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(オ)相違点5について
上記「イ」に示した、引用例の摘示箇所gに記載のとおり、引用発明は、脱臭ロータの吸着剤による空気の浄化と、該吸着剤の再生とを同時に並行して行うことができるものではあるが、室内空気の浄化を必要としない時に、ファンへの通電を停止し、吸着剤の再生のみを行うことを排除するものではない。
そして、室内空気の浄化は、必ずしも常時必要とされるものではないから、引用発明において、室内空気の浄化を必要としない時に、ファンへの通電を停止し、再生部の電気ヒータへ通電することにより、吸着剤の再生のみを行うような制御手段を付加することは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、上記相違点5について、請求人は、上申書において、本件補正発明は、ヒーターユニットが脱臭エレメントを加熱している期間は送風手段への通電が停止されているので、脱臭エレメントの温度が低下し難く、脱臭エレメントをより少ないエネルギで効率よく加熱することができるという効果を奏する旨主張し、また、意見書においても、同様の主張をしている。
上記主張についても検討するに、本願【0043】、同【0062】、同【0084】には、加熱ユニット63と蓋体65dが向かい合って配置され、ヒーターユニット63aの熱を留める空間が形成されるから、脱臭エレメント62の部位を効率よく加熱できる旨記載されているものの、上記請求人が主張する作用を裏付ける技術的な記載は、本願明細書中に見出せない。
また、本件補正発明において、加熱される脱臭エレメントの部位は、加熱ユニット63と蓋体65dにより前後を挟まれているのだから、かかる構造によって、当該加熱される部位には空気が流通し難いものであり、送風手段への通電が停止されているか否かによらず、当該加熱される部位の温度は低下し難いものと推認される。
そして、本件補正発明が、かかる構造によって、加熱される部位の温度が低下し難いものであるならば、引用発明も、「脱臭ロータの前面の一部と背面の一部とを覆うように、前後の相対する位置に配置された扇形部」を有し、上記「イ」に示した、引用例の摘示箇所hにも記載のとおり、「再生部(27)では脱臭ロータ(51)の浄化通路(55)内部と脱臭ロータ(51)の外部との空気の流通が遮断されている」ものであるから、脱臭ロータによる空気の浄化を同時に並行して行っているか否かによらず、再生部の温度は低下し難いものといえる。
よって、本件補正発明は、送風手段への通電が停止されているので、脱臭エレメントの温度が低下し難い、とする請求人の主張は、採用できない。

上記のとおりであるから、相違点5に関し、請求人の主張する本件補正発明の効果は、引用発明の奏する効果から予測される範囲内のものである。

(カ)本件補正発明の奏する作用効果について
請求人は、審判請求書において、本件補正発明は、「脱臭エレメントが1周回転する内に、脱臭エレメントのいずれの部位も加熱ユニットの前に留まることとなるので、脱臭エレメントの加熱処理をむらなく行うことができる」という特有の効果を奏する旨、そして、上申書において、「脱臭エレメントの全体をより少ないエネルギで効率よく加熱する」という特有の効果を奏する旨主張している。
しかしながら、上記効果については、上記(ウ)、(オ)において検討したとおり、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(キ)本件補正発明の進歩性についてのむすび
したがって、本件補正発明は、引用例に記載された発明及び当業者の周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができないものである。

カ 本件補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?17に係る発明は、平成26年3月24日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。

【請求項1】
外部に向けて開口する吸込口及び吹出口が形成され、該吸込口と該吹出口を連通する通風路を有する本体ケースと、
前記本体ケースに内蔵され、前記吸込口から前記吹出口に至る前記通風路に室内空気を導入する送風手段と、
前記通風路に設けられ、導入された空気が通過可能な脱臭エレメントと、
前記脱臭エレメントを局部的に加熱する加熱ユニットと、
該加熱ユニットと前記脱臭エレメントの相対的位置関係を変更する位置変更手段と、
前記送風手段と前記加熱ユニットと前記位置変更手段の通電を制御する制御手段と、
を備え、
前記脱臭エレメントは、前記加熱ユニットによって加熱されることで脱臭機能が回復し、
前記制御手段は、前記送風手段への通電を停止している期間に、前記加熱ユニットへの通電を行うことを特徴とする空気清浄機。」

(2)引用例の記載事項、引用発明の認定
原査定の拒絶の理由で引用された引用例(特開平11-178905号公報)の記載事項は、前記「第2の2.(3)イ」に記載したとおりであり、該引用例に記載された発明、すなわち引用発明は、同「第2の2.(3)ウ」に記載したとおりである。

(3)対比、判断
ア 本件補正発明は、前記「第2の2.(3)」で検討したとおり、本願発明1を特定するために必要な事項を減縮したものであるから、本願発明1は、本件補正発明を包含するものである。
そして、前記「第2の2.(3)エ、オ」で検討したとおり、本願発明1の特定事項を全て含み、更に他の特定事項により本願発明を限定したものである本件補正発明は、引用例に記載された発明及び当業者の周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明1も、引用例に記載された発明及び当業者の周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)上申書に記載された補正案について
請求人は上申書において、請求項1を下記のとおり補正する(下線部は、本件補正発明からの補正箇所である。)用意があり、下記補正案に係る発明(以下、「補正案発明」という。)によれば、熱伝導性が低いセラミックを含む脱臭エレメントであっても、当該脱臭エレメントの内部まで高温にして脱臭能力を効果的に回復させることができる旨主張している。

[請求項1]
外部に向けて開口する吸込口及び吹出口が形成され、該吸込口と該吹出口を連通する通風路を有する本体ケースと、
前記本体ケースに内蔵され、前記吸込口から前記吹出口に至る前記通風路に室内空気を導入する送風手段と、
前記通風路に設けられ、導入された空気が通過可能な脱臭エレメントと、
前記脱臭エレメントを局部的に加熱する加熱ユニットと、
該加熱ユニットと前記脱臭エレメントの相対的位置関係を変更する位置変更手段と、
前記送風手段と前記加熱ユニットと前記位置変更手段の通電を制御する制御手段と、
を備え、
前記脱臭エレメントは、円板形状であり、セラミックにより形成された複数の開口が形成されたハニカムコアに触媒が塗布又は含浸されたもので、前記本体ケースに回動可能に支持され、前記加熱ユニットによって加熱されることで脱臭機能が回復し、
前記加熱ユニットは、通電により発熱する扇形状を成したヒーターユニットを有し、該ヒーターユニットが前記脱臭エレメントの表面に近接した位置となるように、前記本体ケースに固定され、
前記制御手段は、前記位置変更手段を所定のタイミングで駆動して前記脱臭エレメントを前記ヒーターユニットの開角と同じか、又は、この開角より小さい角度だけ回動させる制御プログラムを内蔵し、前記送風手段への通電を停止している期間に、前記加熱ユニットへの通電を行うことを特徴とする空気清浄機。

しかしながら、セラミックハニカムからなる基材に、脱臭触媒を含む添着液を塗布したものは、当業者に周知である(要すれば、特開2004-298696号公報の【0001】、【0027】?【0029】を参照。)。
また、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平10-277365号公報には、引用発明の「脱臭ロータ」にかえて、触媒成分を坦持した「吸着板」を用いた以外は、引用発明と略同一の構成を有する空気清浄機が記載されており、上記「吸着板」にかえて、上記当業者に周知の、脱臭触媒を含む添着液を塗布したセラミックハニカムを採用して補正案発明に想到することは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、補正案発明も、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-05 
結審通知日 2016-01-12 
審決日 2016-01-25 
出願番号 特願2013-510940(P2013-510940)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61L)
P 1 8・ 575- Z (A61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡谷 祐哉  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 中澤 登
永田 史泰
発明の名称 空気清浄機  
代理人 高田 守  
代理人 小泉 康男  
代理人 小泉 康男  
代理人 高田 守  
代理人 高橋 英樹  
代理人 高橋 英樹  
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