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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1312286
審判番号 不服2015-4421  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-05 
確定日 2016-03-10 
事件の表示 特願2011- 96418「排他制御装置,マイコン」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日出願公開,特開2012-226709〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成23年4月22日の出願であって,
平成23年5月16日付けで新規性の喪失の例外証明書提出書の提出がなされ,平成25年11月22日付けで審査請求がなされ,平成26年6月10日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成26年8月7日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされ,同日付けで,証明願を添付した手続補足書が提出されたが,平成26年11月28日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成26年12月9日),これに対して平成27年3月5日付けで審判請求がなされたものである。

第2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成26年8月7日付けの手続補正により補正された,特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものである。

「複数のプロセッサエレメントに対応づけて配置された優先度レジスタと,
前記優先度レジスタ毎に配置されたフラグ状態保持手段と,
前記優先度レジスタに設定された優先度を比較し,最も高い優先度が設定された前記優先度レジスタに対応する前記フラグ状態保持手段にロック状態を設定する優先度比較回路と,
前記優先度レジスタに設定された優先度のうち最高の優先度を格納する最高優先度レジスタと,を有し,
前記最高優先度レジスタが格納する最高の優先度は,別の排他制御装置の,前記最高の優先度を設定したプロセッサエレメントに対応づけられた前記優先度レジスタに設定される,ことを特徴とする排他制御装置。」

第3.本願における新規性喪失の例外規定の適用について
審判請求人は,平成27年3月5日付けの審判請求書(以下,これを「審判請求書」という)において,本願発明は,特許法第30条第1項の適用を受けるものであるため,原審が平成26年6月10日付けの拒絶理由において引用した,「一場 利幸,「中断可能な優先度継承キューイングスピンロックのハードウェア実装と評価」,組込みシステムシンポジウム2010論文集,日本,一般社団法人情報処理学会,2010年10月20日,第2010巻,p.55-64」(以下,「論文集」という。)」は,特許法第29条第1項第3号にいう「特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物」に該当しない旨主張するので,特許法第30条第1項の適用について検討する。

1.適用法規
前記第1のとおり,本願は,その出願日が平成23年4月22日であるから,平成23年改正前の特許法が適用される。その特許法第30条は,次のとおりである。

第30条 特許を受ける権利を有する者が試験を行い,刊行物に発表し,電気通信回線を通じて発表し,又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表することにより,第二十9条第1項各号の一に該当するに至つた発明は,その該当するに至つた日から六月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第一項及び第二項の規定の適用については,同条第一項各号の一に該当するに至らなかつたものとみなす。
2,3(省略)
4 第一項又は前項の規定の適用を受けようとする者は,その旨を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出し,かつ,第二十9条第1項各号の一に該当するに至つた発明が第一項又は前項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面を特許出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

2.特許法第30条第1項の適用について
(1)本願の特許出願の日から30日以内に提出された「証明する書面」は,平成22年10月28日の「情報処理学会組込みシステム研究会主催,組込みシンポジウム2010におけるプレゼンテーション」に関するものである。
(2)これに対して,本願発明は,後記「第4.」で引用する刊行物である同月20日付けの「論文集」に記載された発明であって,同論文集は,請求人も,27日に配布され,公知となった旨主張するように,上記(1)以前である遅くとも平成22年10月27日までには特許法第29条第1項第3号に該当するに至った発明であるから,上記(1)の発表により「第二十9条第1項各号の一に該当するに至つた発明」とはいえない。
(3)すると,本願発明に関し,特許法第30条第4項にいう「証明する書面」は,上記「論文集」の配布日を証明する書面であることを要するところ,上記(1)の「証明する書面」は,特許法第30条第4項にいう「第二十9条第1項各号の一に該当するに至つた発明が第一項又は前項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面」とはいえないから,本願発明は,特許法第30条第1項の規定の適用を受けることができない。
(4)なお,審判請求人は,審判請求書において,「配布日が平成22年10月27日であったことを証明する証明願を情報処理学会から入手して手続補足書として平成26年8月7日に特許庁に提出しました。」とするが,平成26年8月7日に提出された上記証明書は,本願の特許出願の日から30日以内にされたものではないことは明らかである。

3.審判請求人の主張について
審判請求人は,審判請求書において,「引用文献1は平成22年10月28日に行われた発表の予稿集ですので,引用文献1と研究集会における発表には密接不可分の関係がございます」,「予稿集の公開と発表との間に密接不可分の関係があれば,平成22年10月27日に配布された予稿集について新規性喪失の例外規定の適用を受けていなくても,(c)の条件を満たすと考えられる理由について説明します」として,本願は新規性喪失の例外の規定の適用を受けるための要件を満たしている旨主張している。
特許法第30条第1項の規定は「・・該当するに至った発明」であるところ,本願発明は上記(1)の発表により「第二十9条第1項各号の一に該当するに至つた発明」とはいえないから,特許法第30条第1項の規定の適用を受けることができないことは,上記2.(1)?(4)のとおりである。

なお,「権利者が発明を複数の異なる雑誌に掲載した場合等,権利者の行為に起因して公開された発明が複数存在する場合において,第2項の規定の適用を受けるためには,原則として,それぞれの「公開された発明」について「証明する書面」が提出されていなければならない。しかし,「公開された発明」が以下の条件(i)から(iii)までの全てを満たすことが出願人によって証明された場合は,その「証明する書面」が提出されていなくても第2項の規定の適用を受けることができる。」(特許・実用新案審査基準 第III 部 第2 章 第5 節 「4.2 権利者の行為に起因して公開された発明が複数存在する場合に,『証明する書面』が提出されていなくても第2項の規定の適用を受けることができる発明について」)において,
「(i) 「証明する書面」に基づいて第2 項の規定の適用が認められた発明(以下この節において,単に「第2 項の規定の適用が認められた発明」という。)と同一であるか,又は同一とみなすことができること。
(ii) 「第2項の規定の適用が認められた発明」の公開行為と密接に関連する公開行為によって公開された発明であること,又は権利者若しくは権利者が公開を依頼した者のいずれでもない者によって公開された発明であること。
(iii) 「第2項の規定の適用が認められた発明」の公開以降に公開された発明であること。(審決注:上記審査基準の記載は平成23年改正法に基づいくものであるため「特許法第30条第2項」とされているが、本願発明において適用される旧特許法第30条第1項に対応するものである。)」としているのは,
ア 「権利者の行為に起因して公開された発明が複数存在する場合」には,「原則として,それぞれの「公開された発明」について「証明する書面」が提出されていなければならない」ところ
イ 最先の公開行為について「証明する書面」が提出されることにより,平成23年改正の特許法第30条第2項の規定の適用が認められた発明について,最先の公開行為と密接に関連する公開行為についてまで,「証明する書面」の提出を求めることは出願人に煩雑な手続を強いることになるとともに,出願人が意見書・上申書等において最先の公開行為と密接に関連する公開行為であることを証明することにより,第2項の適用を認めるとしても,第三者における特許を受ける権利を不当に損なうことはないとの判断に基づくものである。

第4.引用刊行物に記載の事項
上記「第3.本願における新規性喪失の例外規定の適用について」のおいて,「論文集」として引用した,原審が平成26年6月10日付けの拒絶理由において引用した,『一場 利幸,「中断可能な優先度継承キューイングスピンロックのハードウェア実装と評価」,組込みシステムシンポジウム2010論文集,日本,一般社団法人情報処理学会,2010年10月20日,第2010巻,p.55-64』(以下,これを「引用刊行物」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「4.1 ハードウェアの概要
まず,PPIQLアルゴリズムを実現するためのハードウェアについて述べ,これを利用したロック取得と解放処理のソフトウェアについて述べる.
提案ハードウェアは,優先度発行ユニットと優先度順スピンロックユニットで構成される.優先度発行ユニットはシステムに1つ必要で,優先度順スピンロックユニットはロック個数と同数だけ必要である.」(59頁右欄34行?41行)

B.「4.1.3 優先度順スピンロックユニット
優先度順スピンロックユニットは,ロック取得可能なコアを決定するユニットである.内部には,最高優先度レジスタと,コアごとに優先度レジスタとロック取得フラグの組を持つ.優先度順スピンロックユニットを図6に示す.
優先度順スピンロックユニットの状態遷移を図7に示す.状態はアンロック状態とロック状態の2状態を持ち,リセット時にはアンロック状態となる.アンロック状態の時は,有効値を保持している優先度レジスタの値を比較し,最も高い優先度を持つ優先度レジスタに対応するロック取得フラグをセットし,ロック状態に遷移する.全ての優先度レジスタの値が無効値である場合はアンロック状態のまま遷移しない.ロック状態の時は,セットされているロック取得フラグに対応する優先度レジスタに無効値が書込まれると,ロック取得フラグをクリアして,アンロック状態に遷移する.最高優先度レジスタには,状態に関係なく,有効値の中で最高の優先度が設定される.
ロックを取得したいコアは,まず,優先度の有効値を優先度レジスタに設定する.ロック取得フラグをチェックし,セットされていれば,ロック取得に成功する.ロック取得フラグがセットされていないときは,ロック取得に成功するまでロック取得フラグをチェックする.クリティカルセクション実行後は,優先度レジスタに無効値を書込むことでロック解放を行う.」(60頁左欄27行?右欄14行)

C.「4.2.1 ロック取得・解放
提案ハードウェアを利用したロック取得・解放のルーチンを図8,図9に示す.図8では,全ての処理をまとめて記述しているが,1段目と2段目のロック取得と解放処理をそれぞれ関数化することでドライバとして利用できる.図8では19,20行目が1段目のロック取得と2段目のロック取得の間の処理に相当する.
ロックを取得する際には,pri配列は無効値(INVALID)で初期化されているため,優先度発行ユニットからget_priority()関数により優先度を読み出す.読み出した優先度はenter_spinlock()関数により優先度レジスタに設定する.優先度順スピンロックユニットは,有効値の優先度を比較し,最高優先度のコアに対応するロック取得フラグをセットする.ロックが取得できたかどうかをtry_spinlock()関数によりチェックを行い,取得できていれば,クリティカルセクションの実行に移る.取得できていないときは,割込み処理を行うことで割込み応答性を向上させる.割込み応答性に関しては後述する.
ネストロックを取得する際には,2段目のロックについて同様の処理を行う.ただし,Totally FIFOアプローチと同様に1段目の優先度で2段目のロックを取得する.また,優先度継承するため,2段目のロック取得待ち時に1段目のロックの最高優先度レジスタをget_high_pri_on_spinlock()関数により読み出す.読み出した優先度がそのコアが設定した優先度より高い場合は,優先度を継承し2段目のロック取得を行う.」(60頁右欄19行?61頁左欄22行)

D.「



第5.引用刊行物に記載の発明
1.上記Aの「提案ハードウェアは,優先度発行ユニットと優先度順スピンロックユニットで構成される」という記載から,引用刊行物に記載の「優先度順スピンロックユニット」が,「ハードウェア」であることが読み取れる。

2.上記Bの「優先度順スピンロックユニットは,ロック取得可能なコアを決定するユニットである.内部には,最高優先度レジスタと,コアごとに優先度レジスタとロック取得フラグの組を持つ」という記載から,引用刊行物に記載の「優先度順スピンロックユニット」は,「最高優先度レジスタ」,“コアごとの優先度レジスタ”,及び,“優先度レジスタの組になる,コアごとのロック取得フラグ”を有するものであることが読み取れる。

3.上記2.において検討した事項と,上記Bの「アンロック状態の時は,有効値を保持している優先度レジスタの値を比較し,最も高い優先度を持つ優先度レジスタに対応するロック取得フラグをセットし」という記載,上記Cの「優先度順スピンロックユニットは,有効値の優先度を比較し,最高優先度のコアに対応するロック取得フラグをセットする」という記載,及び,上記Dに引用した「図6 優先度順スピンロックユニット」に開示されている事項から,引用刊行物に記載の「ロック取得フラグ」とは,「フラグ」をセットするための“手段”,即ち,「ロック取得フラグ部」と言うべきものであるから,引用刊行物に記載の「優先度順スピンロックユニット」は,“優先度レジスタに設定されている優先度を比較し,最も高い優先度を持つ優先度レジスタに対するロック取得フラグを,ロック取得フラグ部にセットする優先度比較部”と,“優先度フラグが設定される,優先度レジスタの組になる,ロック取得フラグ部”とを有していることが読み取れる。

4.上記2.において引用した上記Bの記載内容,及び,上記Bの「最高優先度レジスタには,状態に関係なく,有効値の中で最高の優先度が設定される」という記載から,引用刊行物に記載の「優先度順スピンロックユニット」は,“最高の優先度が設定される,最高優先度レジスタ”を有することが読み取れる。

5.上記Aの「優先度順スピンロックユニットはロック個数と同数だけ必要である」という記載と,上記Cの「ネストロックを取得する際には,2段目のロックについて同様の処理を行う.ただし,Totally FIFOアプローチと同様に1段目の優先度で2段目のロックを取得する.また,優先度継承するため,2段目のロック取得待ち時に1段目のロックの最高優先度レジスタをget_high_pri_on_spinlock()関数により読み出す.読み出した優先度がそのコアが設定した優先度より高い場合は,優先度を継承し2段目のロック取得を行う」という記載から,引用刊行物に記載の「優先度順スピンロックユニット」は,ロックが,「1段目のロック」,「2段目のロック」と複数存在する場合に,該「1段目のロック」用,及び,「2段目のロック」用にそれぞれ,該「優先度順スピンロックユニット」が存在するものであることが読み取れ,
上で引用した上記Cの記載内容と,上において検討した事項,及び,上記Cの「ロックを取得する際には,pri配列は無効値(INVALID)で初期化されているため,優先度発行ユニットからget_priority()関数により優先度を読み出す.読み出した優先度はenter_spinlock()関数により優先度レジスタに設定する」という記載から,引用刊行物においては,
“1段目のロック,2段目のロックが存在する場合において,前記2段目のロックを取得する際には,優先度を継承するため,前記1段目のロック用の優先度順スピンロックユニットの最高優先度レジスタから,最高優先度が読み出され,前記2段目のロックを取得するために,前記2段目のロック用の優先度順スピンロックユニットの優先度レジスタに,前記読み出された最高優先度が設定される”ことが読み取れる。

6.以上,1.?5.において検討した事項から,引用刊行物には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されていると認める。

コアごとの優先度レジスタと,
優先度フラグが設定される,前記優先度レジスタの組になる,コアごとのロック取得フラグ部と,
前記優先度レジスタに設定されている優先度を比較し,最も高い優先度を持つ前記優先度レジスタに対するロック取得フラグを,前記ロック取得フラグ部にセットする優先度比較部と,
最高の優先度が設定される,最高優先度レジスタとを有し,
1段目のロック,2段目のロックが存在する場合において,前記2段目のロックを取得する際には,優先度を継承するため,前記1段目のロック用の優先度順スピンロックユニットの最高優先度レジスタから,最高優先度が読み出され,前記2段目のロックを取得するために,前記2段目のロック用の優先度順スピンロックユニットの優先度レジスタに,前記読み出された最高優先度が設定される,ハードウェアである優先度順スピンロックユニット。

第6.本願発明と引用発明との対比および判断
1.引用発明における「コア」とは,“プロセッサコア”であることは,明らかであり,引用発明における「コアごと」から,引用発明において,“プロセッサコア”が複数存在していることも,明らかであって,引用発明における「コア」が,本願発明における「プロセッサエレメント」に相当するものであるから,
引用発明における「コアごとの優先度レジスタ」が,
本願発明における「複数のプロセッサエレメントに対応づけて配置された優先度レジスタ」に相当する。

2.引用発明における「優先度フラグが設定される,前記優先度レジスタの組になる,コアごとのロック取得フラグ部」は,上記1.において検討した「優先度レジスタ」と組になっているものであって,引用発明において,「コアごとの優先度レジスタ」に対応して存在していることは明らかであり,引用発明における「ロック取得フラグ部」は,“ロックが取得できたか否かの状態”を示すものであるから,
本願発明における「優先度レジスタ毎に配置されたフラグ状態保持手段」に相当する。

3.引用発明において,「最も高い優先度を持つ前記優先度レジスタに対するロック取得フラグを,前記ロック取得フラグ部にセットする」ことは,「ロック取得フラグ部」に,“ロックが取れた状態”を設定することに他ならないので,
引用発明における「優先度レジスタに設定されている優先度を比較し,最も高い優先度を持つ前記優先度レジスタに対するロック取得フラグを,前記ロック取得フラグ部にセットする優先度比較部」が,
本願発明における「優先度レジスタに設定された優先度を比較し,最も高い優先度が設定された前記優先度レジスタに対応する前記フラグ状態保持手段にロック状態を設定する優先度比較回路」に相当する。

4.引用発明において,「最高の優先度」とは,上記1.において検討した,“プロセッサコアごとの優先度レジスタ”に設定された「優先度」のうちで「最高の優先度」を意味するものであるから,
引用発明における「最高の優先度が設定される,最高優先度レジスタ」が,
本願発明における「優先度レジスタに設定された優先度のうち最高の優先度を格納する最高優先度レジスタ」に相当する。

5.引用発明における「スピンロック」が,“排他制御”の一種であることは,当業者にとって周知の技術事項であり,引用発明における「優先度順スピンロックユニット」は,「ハードウェア」であるから,“優先度順スピンロック装置”と言い得るものである。
引用発明における,“優先度順スピンロック装置”は,「1段目のロック用」と,「2段目のロック用」では,異なる“装置”であり,「1段目のロック用」の“優先度順スピンロック装置”の「最高優先度レジスタ」の値,即ち,「最高の優先度」が,「2段目のロック用」の“優先度順スピンロック装置”の2段目のロックを取得するため,関連する「プロセッサコア」に対応する「優先度レジスタ」に設定されるものであるから,別の“優先度順スピンロック装置”の「優先度レジスタ」に設定されると言い得るものである。
よって,引用発明における「1段目のロック,2段目のロックが存在する場合において,前記2段目のロックを取得する際には,優先度を継承するため,前記1段目のロック用の優先度順スピンロックユニットの最高優先度レジスタから,最高優先度が読み出され,前記2段目のロックを取得するために,前記2段目のロック用の優先度順スピンロックユニットの優先度レジスタに,前記読み出された最高優先度が設定される」ことが,
本願発明における「最高優先度レジスタが格納する最高の優先度は,別の排他制御装置の,前記最高の優先度を設定したプロセッサエレメントに対応づけられた前記優先度レジスタに設定される」ことに相当し,上記において検討した事項から,
引用発明における「優先度順スピンロックユニット」が,本願発明における「排他制御装置」に相当する。

6.以上1.?5.において検討した事項から,本願発明と,引用発明とは,

複数のプロセッサエレメントに対応づけて配置された優先度レジスタと,
前記優先度レジスタ毎に配置されたフラグ状態保持手段と,
前記優先度レジスタに設定された優先度を比較し,最も高い優先度が設定された前記優先度レジスタに対応する前記フラグ状態保持手段にロック状態を設定する優先度比較回路と,
前記優先度レジスタに設定された優先度のうち最高の優先度を格納する最高優先度レジスタと,を有し,
前記最高優先度レジスタが格納する最高の優先度は,別の排他制御装置の,前記最高の優先度を設定したプロセッサエレメントに対応づけられた前記優先度レジスタに設定される,ことを特徴とする排他制御装置。

である点で一致し,相違点は存在しない。

よって,本願発明は,引用発明と同じものである。
それ故,本願発明は,引用発明の基づいて,当業者が容易になし得たものである。

第7.むすび
したがって,本願発明は,引用刊行物1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
および,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-24 
結審通知日 2016-01-05 
審決日 2016-01-26 
出願番号 特願2011-96418(P2011-96418)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 漆原 孝治  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 浜岸 広明
石井 茂和
発明の名称 排他制御装置、マイコン  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
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