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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1312318
審判番号 不服2014-7991  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-30 
確定日 2016-03-09 
事件の表示 特願2008-553587「発光デバイス表示器のための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年8月16日国際公開,WO2007/090287,平成21年7月16日国内公表,特表2009-526248〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
本件出願は,特許法184条の3第1項の規定により,平成19年2月9日(優先権主張 平成18年2月10日 カナダ)にされたとみなされる特許出願であって,その後の手続の概要は,以下のとおりである。
平成24年 3月23日:拒絶理由通知(同年同月27日発送)
平成24年 8月31日:意見書
平成24年 8月31日:手続補正書
平成24年12月20日:拒絶理由通知(平成25年 1月 4日発送)
平成25年 6月12日:意見書
平成25年 6月12日:手続補正書
平成25年12月24日:補正の却下の決定
(平成25年6月12日の手続補正の却下)
平成25年12月24日:拒絶査定(平成26年 1月 6日送達)
平成26年 4月30日:手続補正書(以下「本件補正」という。)
平成26年 4月30日:審判請求
平成27年 1月30日:拒絶理由通知(同年2月3日発送)
平成27年 5月29日:意見書

2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は,本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりの,以下のものである(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。

「 【請求項1】
各ピクセルが,発光デバイス,該発光デバイスを駆動するための駆動トランジスタ及び当該ピクセルを選択するためのスイッチトランジスタを有するような,行および列のマトリクスに配置された複数のピクセルと,
ピクセルの複数の行の各々についての電源ラインであって,前記ピクセルの各々において前記駆動トランジスタに連結された電源ラインと,
前記マトリクスにおける前記ピクセルの前記行を選択する複数の選択ラインと,
前記マトリクスにおけるピクセルの前記列に,電圧および表示データを供給する複数のデータラインと,
前記電源ラインまたは前記データラインの一つを介して,選択されたピクセルの前記駆動トランジスタに電流を供給して,前記駆動トランジスタが電圧増幅器として機能して,ピクセルの経時変化とともに変化する前記選択されたピクセルの特性に対応する増幅された電圧を生成する電流源と,
を備え,
前記増幅された電圧が,前記選択されたピクセルの前記特性におけるどのようなずれも増幅し,
さらに,前記増幅された電圧を検出し,当該検出された増幅された電圧を用いて,前記選択されたピクセルに対して前記データラインにより供給された前記表示データの調整を決定する回路を備える表示システム。

【請求項2】
請求項1に記載の表示システムにおいて,
前記回路が,前記電源ライン又は前記データラインを前記選択されたピクセルの特性の検出に使用する感知回路を有しているような表示システム。」

3 当審判体の拒絶の理由
当審判体の拒絶の理由は,概略,(理由1)本願発明は,その優先権主張の日前日本国内又は外国において頒布された下記の引用例1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,(理由2)本件出願は,発明の詳細な説明の記載が,下記の点で特許請求の範囲の請求項1?12に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない,(理由3)本件出願は,特許請求の範囲の請求項1?12の記載が,特許法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たしていない(請求項1?12について,発明の詳細な説明には,「電圧」が「校正電圧」である発明しか記載されていない,請求項2?9について,発明の詳細な説明には,「感知回路」として,「前記データラインを前記選択されたピクセルの特性の検出に使用する感知回路」しか記載されていない。),というものである。

なお,電流源に関して,請求項1には,「前記電源ラインまたは前記データラインの一つを介して・・・電流源」というように,「前記電源ライン」と「前記データラインの一つ」が,「または」で接続された選択肢となっているところ,理由1は,選択肢が「前記電源ライン」の場合に対するものであり,理由2は,選択肢が「前記データライン」の場合に対するものである。

第2 当審判体の判断
1 理由1について
(1) 引用例1の記載
本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である,特開2002-229513号(【公開日】平成14年8月16日,【発明の名称】有機EL表示パネルの駆動装置,【出願番号】特願2001-29263号,【出願日】平成13年2月6日,【出願人】東北パイオニア株式会社,以下「引用例1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を駆動する技術に関し,特にEL素子の発光輝度を調整することができる有機EL表示パネルの駆動装置に関する。」

イ 「【0002】
【従来の技術】液晶表示装置に代わる低消費電力および高表示品質,並びに薄型化が可能な表示装置として,EL表示装置が注目されている。これはEL表示装置に用いられるEL素子の発光層に,良好な発光特性を期待することができる有機化合物を使用することによって,実用に耐えうる高効率化および長寿命化が進んだことも背景にある。
【0003】有機EL素子は,電気的には図8のような等価回路で表すことができる。すなわち,有機EL素子は,寄生容量成分Cと,この容量成分に並列に結合するダイオード成分Eとによる構成に置き換えることができ,有機EL素子は容量性の発光素子であると考えられている。この有機EL素子は,発光駆動電圧が印加されると,先ず,当該素子の電気容量に相当する電荷が電極に変位電流として流れ込み蓄積される。続いて当該素子固有の一定の電圧(発光閾値電圧=Vth)を越えると,電極(ダイオード成分Eのアノード側)から発光層を構成する有機層に電流が流れ初め,この電流に比例した強度で発光すると考えることができる。」

ウ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで,前記した有機EL素子は,長期の使用によって素子の物性が変化し,素子自身の抵抗値が大きくなるという特性も有している。このために,有機EL素子は図9(B)に示したように実使用時間によって,V-I特性が矢印に示した方向(破線で示した特性)に変化し,したがって,輝度特性も低下することになる。これにより,入力映像信号に忠実な輝度階調を表現することが困難になる。
【0006】例えば,有機EL素子によりフルカラーの表示画像を実現するための一つの手段として,赤(R),緑(G)および青(B)の発光をなすことのできる有機材料を,別々に成膜して配列させたパラレル型RGB法が提案されている。このようなRGB法を利用したフルカラー表示装置においては,R,G,Bの各素子の累積発光時間が異なること,およびR,G,Bの各発光画素を構成する各有機ELの発光材料によって,それぞれ輝度低下の速度が異なるために,結局使用時間の経過と共にカラーバランスがずれるという問題を抱えることになる。
【0007】さらに,有機EL素子の輝度特性は,概ね温度によって図9(C)に破線で示すように変化することも知られている。すなわちEL素子は,前記した発光閾値電圧より大なる発光可能領域においては,それに印加される電圧(V)の値が大きくなるほどその発光輝度(L)が大きくなる特性を有するが,高温になるほど発光閾値電圧が小さくなる。したがってEL素子は,高温になるほど小さい印加電圧で発光可能な状態となり,同じ発光可能な印加電圧を与えても,高温時は明るく低温時は暗いといった輝度の温度依存性を有している。
【0008】したがって,前記したパラレル型RGB法によるフルカラーの表示画像を実現させた場合,環境温度の変化によっても,同様に各R,G,Bによるカラーバランスがずれるという問題を抱えることになる。
【0009】本発明は,前記した技術的な課題に着目してなされたものであり,その目的とするところは,経時変化による輝度特性を一定に保つことができる有機EL表示パネルの駆動装置を提供することにある。また本発明は,これに加えて環境温度が変動しても実質的な発光輝度特性を一定に保つことのできる有機EL表示パネルの駆動装置を提供することにある。」

エ 「【0037】図1は本発明をアクティブ駆動型表示パネルの駆動装置に採用した場合の基本構成を示したブロック図である。
【図1】

図1において,符号1はA/D変換回路であり,このA/D変換回路1は,アナログ映像信号の入力を受けてデジタル映像信号データに変換する。このA/D変換回路1によって変換されたデジタル映像信号データは,A/D変換回路1からフレームメモリ2に供給され,発光制御回路3の制御により書き込まれ蓄積される。前記発光制御回路3は入力映像信号の水平および垂直同期信号に同期して,フレームメモリ2よりデジタル映像信号を読み出して,書き込み回路4に当該読み出し信号を送り出すように機能する。また,発光制御回路3は,走査回路5を制御して書き込み回路4に書き込まれた画像データに対応して,表示パネル6に配列された各有機EL素子の発光を制御するように機能する。
【0038】前記表示パネル6は,図2に基づいて後述するように,多数の発光素子としての有機EL素子を,マトリックス状に配列して構成されている。そして各有機EL素子を駆動するための駆動用TFT(Thin Film Transistor)と,駆動用TFTを制御するための制御用TFTがそれぞれの有機EL素子に対応して配置されている。また,前記書き込み回路4には,表示パネル6に配列された多数のデータ電極線7が接続されており,また前記走査回路5にも,表示パネル6に配列された多数の走査電極線8が接続されている。
【0039】一方,この実施の形態においては前記発光制御回路3からの指令により動作する輝度制御回路9が備えられており,後述するように好ましい実施の形態においては,輝度制御回路9より電源回路10に対して輝度制御信号が送られるように構成されている。そして,電源回路10には,表示パネル6に配列された多数の電源制御線11が接続されている。また,後述するように輝度制御回路9より書き込み回路4に対して輝度制御信号が送られるように構成される場合もあり,さらに,輝度制御回路9より主走査回路5に対して輝度制御信号が送られるように構成される場合もある。」

オ 「【0040】図2はアクティブ駆動型表示パネルの基本構成の一部を示したものである。
【図2】

表示パネル6には,前記したように多数のデータ電極線7-_(1),7-_(2),……が列方向に配列されており,また,前記データ電極線に平行して多数の電源制御線11-_(1),11-_(2),……も配列されている。さらに多数の走査電極線8-_(1),8-_(2),……が行方向に配列されている。そして,単位発光画素に対応する有機EL素子を含む回路構成においては,制御用TFT21,駆動用TFT22,キャパシタC1,および有機EL素子E1が具備されている。
【0041】すなわち,図2に示されたように制御用TFT21のゲートGは,走査回路5からの行を走査するための走査信号が供給される走査電極線8-_(1)に接続され,一方TFT21のソースSは,書き込み回路4からの映像データに対応した信号が供給されるデータ電極線7-_(1)に接続されている。さらに制御用TFT21のドレインDは,駆動用TFT22の制御用電極子であるゲートGに接続されると共に,キャパシタC1の一端に接続されている。また,駆動用TFT22のドレインDは電源制御線11-_(1)に接続されており,前記キャパシタC1の他端も電源制御線11-_(1)に接続されている。さらに,駆動用TFT22の駆動用電極子であるソースSは,有機EL素子E1のアノード電極端子に接続されている。そして,有機EL素子E1のカソード電極端子はアースに接続されている。以上の構成は,表示パネル6に配列された各有機EL素子に対応してそれぞれ同様に構成されている。
【0042】このような回路が行および列方向に複数配列された表示パネル6の単位画素の発光制御動作は,制御用TFT21のゲートGにオン電圧が供給されると,TFT21はソースSに供給される映像データの電圧に対応した電流をソースSからドレインDへ流す。このTFT21のゲートGがオン電圧の期間に,ソースSの電圧に基づいた電流でキャパシタC1が充電される。そして,その充電電圧が駆動用TFT22のゲートGに供給されて,TFT22はそのゲート電圧と電源制御線11-_(1)からの電圧に基づいた電流を有機EL素子E1に流し,これにより有機EL素子E1は発光する。
【0043】一方,制御用TFT21のゲートGがオフ電圧となると,TFT21はいわゆるカットオフとなり,TFT21のドレインDはオープン状態となる。したがって,駆動用TFT22はキャパシタC1に蓄積された電荷により,ゲートGの電圧が保持される。そして,次の走査まで駆動用TFT22による有機EL素子E1への駆動電流を維持し,これにより有機EL素子E1の発光も維持される。
【0044】なお,図2における符号Exは,表示パネル6の一部に形成され,表示機能として利用しない有機EL素子であり,これは,後述するように表示パネル6内に形成された多数の有機EL素子の動作温度を検出するために利用される。」

カ 「【0045】図3は図2に示したアクティブ駆動型有機EL素子の発光輝度を個々に制御できるように構成した駆動装置の第1の実施の形態を示したものである。
【図3】

なお,図3においては,有機EL素子E1を代表としてその駆動回路のみが示されている。ここで,有機EL素子は前記したように長期の使用によって素子の物性が変化し,素子自身の抵抗値が大きくなるという特性を有している。一方,有機EL素子は電流制御発光素子,すなわち前記したように電流値にほぼ比例した発光強度を示す特性を有している。
【0046】このために,有機EL素子のアノード電極に終始同一の駆動電圧を供給した場合においては,経年変化により素子自身の抵抗値が大きくなるにしたがって,発光輝度が低下するという特性を呈する。したがって,以下に示す実施の形態においては,有機EL素子の抵抗値を測定し,この抵抗値の情報に基づいて,経年変化によるEL素子の発光輝度の低下を補償するように構成されている。
【0047】図3に示すように駆動用TFT22のドレインが接続される電源制御線11-_(1)には,切り換えスイッチ31が接続されている。なお,図において切り換えスイッチ31の概ね左側が電源回路10として機能するブロックを示し,切り換えスイッチ31の右側が概ね輝度制御回路9として機能するブロックを示している。したがって,表示パネル6が発光駆動される場合においては,この切り換えスイッチ31は端子a側に接続され,電源回路10から駆動電圧が供給されるようになされる。
【0048】一方,スイッチ31を端子b側に接続する場合は,各EL素子の抵抗値,換言すれば各EL素子の経年変化に基づく発光輝度の低下状態を測定するモードになされる。この切り換えスイッチ31の端子b側には定電流回路32が接続されており,図に示すようにスイッチ31が端子b側に接続された状態で,駆動用TFT22がオン動作された場合には,EL素子E1には前記定電流回路32より,所定の電流が流れる。したがって,この測定モードを実行する場合においては,駆動用TFT22をオン動作させる際して,走査回路5からもたらされる制御用TFT21のゲートGに供給される電圧,および書き込み回路4からもたらされるソースSに供給される電圧は,常に一定の条件になされ,これにより制御用TFT21のソースSからドレインDへ流れる電流が一定となるように制御される。
【0049】前記定電流回路32の電流出力側,すなわち前記スイッチ31の端子b側には,A/D変換回路33が接続されており,したがって,A/D変換回路33には,EL素子E1のアノード側に対応した電圧が印加されることになる。なお,この実施の形態においては,A/D変換回路33に入力される電圧値は,前記駆動用TFT22のオン抵抗,すなわち駆動用TFT22のドレイン・ソース間のインピーダンスと,EL素子E1のアノード・カソード間の抵抗値とが加算された合成インピーダンスに対応する電圧値となる。前記した構成からも理解できるように,これら定電流源32およびA/D変換回路33はEL素子に生成されるアノード電圧値に関する情報を測定する計測手段を構成している。
【0050】ここで,駆動用TFT22のドレイン・ソース間のインピーダンスは,予め判明しており,したがって,EL素子E1のアノード電圧値に関する情報,換言すれば個々のEL素子の抵抗値に関する情報は,A/D変換回路33によってデジタルデータに変換され,このデジタルデータは輝度補正回路34を介して記憶手段としての輝度情報メモリ35に書き込まれる。この場合,輝度情報メモリ35にはEL素子のアドレスに対応してそれぞれのアノード電圧値に関する情報が書き込まれる。
【0051】以上のようにして,例えば列に沿った各EL素子のアノード電圧値に関する情報がA/D変換回路33によって順次測定され,それぞれのアドレスに対応してアノード電圧値に関する情報が前記輝度情報メモリ35書き込まれる。また,同様に次の列に沿った各EL素子のアノード電圧値に関する情報も同様に輝度情報メモリ35書き込まれる。このようにして,表示パネル6に配列された全てのEL素子のアノード電圧値に関する情報が輝度情報メモリ35に書き込まれることで,計測動作が終了する。
【0052】次に表示パネル6を発光駆動させる場合には,前記した切り換えスイッチ31は端子a側に接続される。そして,各データ電極線7-_(1),7-_(2),……には,書き込み回路4からの映像データに対応した信号が供給され,また走査電極線8-_(1),8-_(2),……には走査回路5からの行を走査するための走査信号が供給される。そして,輝度補正回路34は発光制御回路3からの映像信号の同期信号に基づいて,輝度情報メモリ35より,各EL素子に対応したアノード電圧値に関する情報を読み出す。
【0053】輝度補正回路34によって読み出されたEL素子に対応したアノード電圧値に関する情報は,電源回路10を構成するD/A変換器36に供給されて,このD/A変換器36においてアナログ電圧値に変換される。この場合のアナログ電圧値は,それぞれのEL素子の前記アノード電圧値に対応しており,アノード電圧値の大小に応じた電圧値として生成される。このD/A変換器36によって生成されたアナログ電圧値は,アナログ増幅回路37によって増幅およびインピーダンス変換され,切り換えスイッチ31を介して電源供給線11-_(1)に供給される。
【0054】これにより,駆動用TFT22のドレインには,駆動用TFT22によって駆動されるEL素子E1における前記アノード電圧に対応した電圧値が印加される。すなわち,EL素子E1における測定時におけるアノード電圧値が大きい場合には,経年変化により素子の抵抗値が大きくなり,発光輝度が低下するものの,アナログ増幅回路37より供給される電圧値は,それに対応して大きくなるように制御され,この結果,EL素子E1に流れる駆動電流が増大されて発光輝度の低下が補償される。
【0055】前記と同様に他のEL素子に対しても,映像信号における同期信号に基づいて各EL素子のアノード電圧値に対応した電圧値が,アナログ増幅回路37より供給されるので,それぞれのEL素子も同様に発光輝度の低下が補償される。この結果,各EL素子はそれぞれにおいて発光輝度の低下が補償され,入力映像信号に忠実な輝度階調を表現することができる。また,前記したようなRGB法を利用したフルカラー表示装置においては,R,G,Bの各素子の累積発光時間に応じた輝度低下がそれぞれ補償されるので,使用時間の経過と共にカラーバランスがずれるという問題を回避することができる。」

キ 「【0061】次に図4は,図2に示したアクティブ駆動型有機EL素子の発光輝度を個々に制御できるように構成した駆動装置の第2の実施の形態を示したものである。
【図4】

なお,図4においては,図3で説明した構成におけるそれぞれ相当する部分を同一符号で示しており,したがって,重複する説明は省略する。この図4に示した構成における切替えスイッチ31は,前記と同様に各EL素子の経年変化に基づく発光輝度の低下状態を測定するモードにおいて端子b側に接続される。また,表示パネル6を発光駆動させる場合においては,端子a側に接続されて電源回路10からの定電圧V_(COM) が印加される。
【0062】一方,D/A変換回路36から得られるアナログ電圧値は,電圧制御増幅回路(VCA)41に対して制御信号として供給される。この電圧制御増幅回路41には,被制御信号として書き込み回路4から供給される映像データに対応した信号が供給される。したがって,書き込み回路4から供給される映像データに対応した信号は,D/A変換回路36から得られるアナログ電圧値に応じて出力レベルが可変され,データ電極線7-_(1),7-_(2),……を介して制御用TFT21のソースに供給される。
【0063】そして,走査回路5の動作によって制御用TFT21のゲートGにオン電圧が供給されると,可変増幅回路41によって出力レベルが調整された映像データの電圧値に対応した電流を,ソースSからドレインDへ流す。これによりソースの電圧に基づいた電流でキャパシタC1が充電され,駆動用TFT22は,そのゲート電圧と電源制御線11-_(1)からの定電圧V_(COM) に基づいた電流を,有機EL素子E1に流し,有機EL素子E1は発光輝度が調整される。
【0064】この図4に示した構成においても,輝度情報メモリ35から読み出したデータにより各EL素子の経時変化による輝度特性の低下を補償することができる。また,これに加えてEL素子Exにより得られる温度情報も利用することにより,EL素子における経時変化に基づく輝度特性および温度情報に基づく輝度特性が補償された発光制御を実現することができる。」

(2) 引用発明
引用例1には,図4に対応する発明として,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。なお,段落番号は,引用発明の認定に活用した引用例1の記載箇所を示すために併記したものである。また,引用例1において「重複する説明は省略」(段落【0061】)されているので,必要に応じて,図1?3に関する記載等を参照する。)。

「 【0038】表示パネル6は,多数の発光素子としての有機EL素子を,マトリックス状に配列して構成され,各有機EL素子を駆動するための駆動用TFTと,駆動用TFTを制御するための制御用TFTがそれぞれの有機EL素子に対応して配置され,書き込み回路4には,表示パネル6に配列された多数のデータ電極線7が接続され,走査回路5には,表示パネル6に配列された多数の走査電極線8が接続され,
【0040】表示パネル6には,多数のデータ電極線が列方向に配列され,前記データ電極線に平行して多数の電源制御線が配列され,多数の走査電極線が行方向に配列され,単位発光画素に対応する有機EL素子を含む回路構成においては,制御用TFT21,駆動用TFT22,キャパシタC1,および有機EL素子E1が具備され,
【0047】駆動用TFT22のドレインが接続される電源制御線には,切り換えスイッチ31が接続され,【0061】表示パネル6を発光駆動させる場合においては,端子a側に接続されて電源回路10からの定電圧V_(COM)が印加され,【0048】スイッチ31を端子b側に接続する場合は,各EL素子の抵抗値,換言すれば各EL素子の経年変化に基づく発光輝度の低下状態を測定するモードになされ,切り換えスイッチ31の端子b側には定電流回路32が接続されており,スイッチ31が端子b側に接続された状態で,駆動用TFT22がオン動作された場合には,EL素子E1には前記定電流回路32より,所定の電流が流れ,測定モードを実行する場合においては,駆動用TFT22をオン動作させる際して,走査回路5からもたらされる制御用TFT21のゲートGに供給される電圧,および書き込み回路4からもたらされるソースSに供給される電圧は,常に一定の条件になされ,これにより制御用TFT21のソースSからドレインDへ流れる電流が一定となるように制御され,
【0049】定電流回路32の電流出力側,すなわち前記スイッチ31の端子b側には,A/D変換回路33が接続されており,したがって,A/D変換回路33には,EL素子E1のアノード側に対応した電圧が印加され,A/D変換回路33に入力される電圧値は,前記駆動用TFT22のオン抵抗,すなわち駆動用TFT22のドレイン・ソース間のインピーダンスと,EL素子E1のアノード・カソード間の抵抗値とが加算された合成インピーダンスに対応する電圧値となり,【0050】駆動用TFT22のドレイン・ソース間のインピーダンスは,予め判明しており,
【0051】列に沿った各EL素子のアノード電圧値に関する情報がA/D変換回路33によって順次測定され,それぞれのアドレスに対応してアノード電圧値に関する情報が輝度情報メモリ35書き込まれ,
【0052】表示パネル6を発光駆動させる場合には,切り換えスイッチ31は端子a側に接続され,各データ電極線には,書き込み回路4からの映像データに対応した信号が供給され,走査電極線には走査回路5からの行を走査するための走査信号が供給され,輝度補正回路34は発光制御回路3からの映像信号の同期信号に基づいて,輝度情報メモリ35より,各EL素子に対応したアノード電圧値に関する情報を読み出し,【0053】輝度補正回路34によって読み出されたEL素子に対応したアノード電圧値に関する情報は,電源回路10を構成するD/A変換器36に供給されて,このD/A変換器36においてアナログ電圧値に変換され,【0062】D/A変換回路36から得られるアナログ電圧値は,電圧制御増幅回路41に対して制御信号として供給され,電圧制御増幅回路41には,被制御信号として書き込み回路4から供給される映像データに対応した信号が供給され,書き込み回路4から供給される映像データに対応した信号は,D/A変換回路36から得られるアナログ電圧値に応じて出力レベルが可変され,データ電極線を介して制御用TFT21のソースに供給され,
【0063】走査回路5の動作によって制御用TFT21のゲートGにオン電圧が供給されると,可変増幅回路41によって出力レベルが調整された映像データの電圧値に対応した電流を,ソースSからドレインDへ流し,ソースの電圧に基づいた電流でキャパシタC1が充電され,駆動用TFT22は,そのゲート電圧と電源制御線からの定電圧V_(COM) に基づいた電流を,有機EL素子E1に流し,有機EL素子E1は発光輝度が調整される,
【0002】アクティブ駆動型表示パネルの駆動装置。」

(3) 対比
本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 複数のピクセル
引用発明の「表示パネル6は,多数の発光素子としての有機EL素子を,マトリックス状に配列して構成され,各有機EL素子を駆動するための駆動用TFTと,駆動用TFTを制御するための制御用TFTがそれぞれの有機EL素子に対応して配置され」ているところ,「単位発光画素に対応する有機EL素子を含む回路構成においては,制御用TFT21,駆動用TFT22,キャパシタC1,および有機EL素子E1が具備され」,「走査回路5の動作によって制御用TFT21のゲートGにオン電圧が供給されると,可変増幅回路41によって出力レベルが調整された映像データの電圧値に対応した電流を,ソースSからドレインDへ流し,ソースの電圧に基づいた電流でキャパシタC1が充電され,駆動用TFT22は,そのゲート電圧と電源制御線からの定電圧V_(COM) に基づいた電流を,有機EL素子E1に流し,有機EL素子E1は発光輝度が調整される」。
ここで,引用発明の「有機EL素子E1」,「駆動用TFT22」,「制御用TFT21」,「マトリックス」及び「単位発光画素」は,それぞれ,本願発明の「発光デバイス」,「該発光デバイスを駆動するための駆動トランジスタ」,「当該ピクセルを選択するためのスイッチトランジスタ」,「マトリクス」及び「ピクセル」に相当する。また,引用発明の「表示パネル6は,多数の発光素子としての有機EL素子を,マトリックス状に配列して構成され」ているから,引用発明の「単位発光画素」は複数であり,行および列のマトリクスに配置されたものである。
したがって,引用発明の,複数の「単位発光画素」は,本願発明の「各ピクセルが,発光デバイス,該発光デバイスを駆動するための駆動トランジスタ及び当該ピクセルを選択するためのスイッチトランジスタを有するような,行および列のマトリクスに配置された複数のピクセル」に相当する。

イ 電源ライン
引用発明の「単位発光画素に対応する有機EL素子を含む回路構成においては,制御用TFT21,駆動用TFT22,キャパシタC1,および有機EL素子E1が具備され」るところ,引用発明は,「駆動用TFT22のドレインが接続される電源制御線」を具備する。
したがって,引用発明の「電源制御線」と本願発明の「ピクセルの複数の行の各々についての電源ラインであって,前記ピクセルの各々において前記駆動トランジスタに連結された電源ライン」は,「前記ピクセルの各々において前記駆動トランジスタに連結された電源ライン」の点で共通する。

ウ 選択ライン
引用発明の「走査回路5には,表示パネル6に配列された多数の走査電極線8が接続され」,表示パネル6には,「多数の走査電極線が行方向に配列され」,「走査回路5の動作によって制御用TFT21のゲートGにオン電圧が供給されると,可変増幅回路41によって出力レベルが調整された映像データの電圧値に対応した電流を,ソースSからドレインDへ流し」ている。
したがって,引用発明の「走査電極線8」は,本願発明の「前記マトリクスにおける前記ピクセルの前記行を選択する複数の選択ライン」に相当する。

エ データライン
引用発明の「書き込み回路4には,表示パネル6に配列された多数のデータ電極線7が接続され」,「表示パネル6には,多数のデータ電極線が列方向に配列され」ているところ,「表示パネル6を発光駆動させる場合には,切り換えスイッチ31は端子a側に接続され,各データ電極線には,書き込み回路4からの映像データに対応した信号が供給され」,また,「測定モードを実行する場合においては,駆動用TFT22をオン動作させるに際して,走査回路5からもたらされる制御用TFT21のゲートGに供給される電圧,および書き込み回路4からもたらされるソースSに供給される電圧は,常に一定の条件になされ,これにより制御用TFT21のソースSからドレインDへ流れる電流が一定となるように制御され」る。
したがって,引用発明の「データ電極線7」は,本願発明の「前記マトリクスにおけるピクセルの前記列に,電圧および表示データを供給する複数のデータライン」に相当する。

オ 電流源
引用発明の「駆動用TFT22のドレインが接続される電源制御線には,切り換えスイッチ31が接続され」ているところ,「スイッチ31を端子b側に接続する場合は,各EL素子の抵抗値,換言すれば各EL素子の経年変化に基づく発光輝度の低下状態を測定するモードになされ,切り換えスイッチ31の端子b側には定電流回路32が接続されており,スイッチ31が端子b側に接続された状態で,駆動用TFT22がオン動作された場合には,EL素子E1には前記定電流回路32より,所定の電流が流れ,測定モードを実行する場合においては,駆動用TFT22をオン動作させる際して,走査回路5からもたらされる制御用TFT21のゲートGに供給される電圧,および書き込み回路4からもたらされるソースSに供給される電圧は,常に一定の条件になされ,これにより制御用TFT21のソースSからドレインDへ流れる電流が一定となるように制御され」る。
したがって,引用発明の「定電流回路32」は,本願発明の「電流源」に相当する。そして,引用発明の「定電流回路32」は,本願発明の「前記電源ラインまたは前記データラインの一つを介して,選択されたピクセルの前記駆動トランジスタに電流を供給して,前記駆動トランジスタが電圧増幅器として機能して,ピクセルの経時変化とともに変化する前記選択されたピクセルの特性に対応する増幅された電圧を生成する電流源」の構成のうち,「前記電源ラインまたは前記データラインの一つを介して,選択されたピクセルの前記駆動トランジスタに電流を供給して」,「ピクセルの経時変化とともに変化する前記選択されたピクセルの特性に対応する」「電圧を生成する電流源」の要件を満たす。

カ 表示データの調整を決定する回路
引用発明の「定電流回路32の電流出力側,すなわち前記スイッチ31の端子b側には,A/D変換回路33が接続されており,したがって,A/D変換回路33には,EL素子E1のアノード側に対応した電圧が印加され」,「列に沿った各EL素子のアノード電圧値に関する情報がA/D変換回路33によって順次測定され,それぞれのアドレスに対応してアノード電圧値に関する情報が輝度情報メモリ35書き込まれ」る。そして,「表示パネル6を発光駆動させる場合には,切り換えスイッチ31は端子a側に接続され,各データ電極線には,書き込み回路4からの映像データに対応した信号が供給され,走査電極線には走査回路5からの行を走査するための走査信号が供給され,輝度補正回路34は発光制御回路3からの映像信号の同期信号に基づいて,輝度情報メモリ35より,各EL素子に対応したアノード電圧値に関する情報を読み出し,輝度補正回路34によって読み出されたEL素子に対応したアノード電圧値に関する情報は,電源回路10を構成するD/A変換器36に供給されて,このD/A変換器36においてアナログ電圧値に変換され,D/A変換回路36から得られるアナログ電圧値は,電圧制御増幅回路41に対して制御信号として供給され,電圧制御増幅回路41には,被制御信号として書き込み回路4から供給される映像データに対応した信号が供給され,書き込み回路4から供給される映像データに対応した信号は,D/A変換回路36から得られるアナログ電圧値に応じて出力レベルが可変され,データ電極線を介して制御用TFT21のソースに供給され」る。
したがって,引用発明の「A/D変換回路33」,「輝度情報メモリ35」,「輝度補正回路34」,「D/A変換器36」及び「電圧制御増幅回路41」を併せてなる構成(以下「輝度制御手段」と略称する。)は,本願発明の「表示データの調整を決定する回路」に相当する。そして,引用発明の「輝度制御手段」は,本願発明の「さらに,前記増幅された電圧を検出し,当該検出された増幅された電圧を用いて,前記選択されたピクセルに対して前記データラインにより供給された前記表示データの調整を決定する回路」の構成のうち,「さらに,前記」「電圧を検出し,当該検出された」「電圧を用いて,前記選択されたピクセルに対して」「供給された前記表示データの調整を決定する回路」の要件を満たす。

キ 表示システム
以上の対比結果を考慮すると,引用発明の「アクティブ駆動型表示パネルの駆動装置」(表示パネル6を含めたもの)は,本願発明の「表示システム」に相当する。

(4) 一致点
本願発明と引用発明は,以下の構成において一致する。
「 各ピクセルが,発光デバイス,該発光デバイスを駆動するための駆動トランジスタ及び当該ピクセルを選択するためのスイッチトランジスタを有するような,行および列のマトリクスに配置された複数のピクセルと,
前記ピクセルの各々において前記駆動トランジスタに連結された電源ラインと,
前記マトリクスにおける前記ピクセルの前記行を選択する複数の選択ラインと,
前記マトリクスにおけるピクセルの前記列に,電圧および表示データを供給する複数のデータラインと,
前記電源ラインまたは前記データラインの一つを介して,選択されたピクセルの前記駆動トランジスタに電流を供給して,ピクセルの経時変化とともに変化する前記選択されたピクセルの特性に対応する電圧を生成する電流源と,
を備え,
さらに,前記電圧を検出し,当該検出された電圧を用いて,前記選択されたピクセルに対して供給された前記表示データの調整を決定する回路を備える表示システム。」

(5) 相違点
本願発明と引用発明の(一応の)相違点は,以下のとおりである。
ア 相違点1
本願発明の「電源ライン」は,「ピクセルの複数の行の各々についての電源ライン」であるのに対し,引用発明の「表示パネル6には,多数のデータ電極線が列方向に配列され,前記データ電極線に平行して多数の電源制御線が配列され」ているから,引用発明の「電源制御線」は,ピクセルの複数の列の各々についての電源ラインである点。

イ 相違点2
本願発明は,「前記駆動トランジスタが電圧増幅器として機能して」おり,したがって,本願発明の「電流源」は,前記電源ラインまたは前記データラインの一つを介して,選択されたピクセルの前記駆動トランジスタに電流を供給して,「前記駆動トランジスタが電圧増幅器として機能して,」ピクセルの経時変化とともに変化する前記選択されたピクセルの特性に対応する増幅された電圧を生成する電流源であって「前記増幅された電圧が,前記選択されたピクセルの前記特性におけるどのようなずれも増幅し」ており,これに伴い,本願発明の「表示データの調整を決定する回路」は,前記「増幅された」電圧を検出し,当該検出された「増幅された」電圧を用いて,前記表示データの調整を決定する回路であるのに対し,引用発明は,一応,これが明らかではない点。

ウ 相違点3
本願発明の「表示データの調整を決定する回路」は,前記選択されたピクセルに対して「前記データラインにより」供給された前記表示データの調整を決定する回路であるのに対して,引用発明の「書き込み回路4から供給される映像データに対応した信号は,D/A変換回路36から得られるアナログ電圧値に応じて出力レベルが可変され,データ電極線を介して制御用TFT21のソースに供給され」るから,前記選択されたピクセルに対して前記データラインにより供給され「る」前記表示データの調整を決定する回路である点。

(6) 判断
ア 相違点1について
有機EL表示装置において,電源ラインを,「ピクセルの複数の行の各々についての電源ライン」として構成することは,例示するまでもなく周知慣用されている。また,電源ラインを縦方向とするか横方向とするかは,当業者が,有機EL表示装置のピクセルレイアウトを設計するに際し,縦方向及び横方向のライン密度等の諸条件を勘案して,適宜選択しうる構成である。
本願発明は,引用発明及び周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。

イ 相違点2について
引用発明の「駆動用TFT22」は薄膜トランジスタであるところ,定電流源や抵抗等の負荷が接続された薄膜トランジスタにおいてゲート電圧を変化させたとき,ゲート電圧の変化量を所定倍率で増幅した電圧の変化が負荷と薄膜トランジスタの接続点に検出されることは,技術常識である(通常,閾電圧近傍以下では所定倍率<1であり,閾電圧近傍を超えた領域(線形領域等と呼ばれる領域)では所定倍率>1である。また,駆動用TFT22の閾電圧が画素毎のずれや経年変化によるずれによって変化すれば,その変化量も所定倍率で増幅されてソース電圧の変化量として検出される。)。
技術常識を考慮すると,相違点2に係る構成は,引用発明も具備する構成である。
念のために,本件出願の発明の詳細な説明を参照すると,段落【0016】には「図3Aは,抽出動作の間において図1及び2のピクセル回路に供給される信号波形の一例を示している。」,「図3Aにおいて,VDD(i)は図1のVDD(i)に対応する電源ライン/信号であり」,「“I_(C)”は,校正されている位置(i,j)のピクセルのVDD(i)に供給される一定電流である。該電流I_(C)の結果としてVDD(i)上に発生される電圧は,(V_(CD)+ΔV_(CD))となり,ここで,V_(CD)は当該回路のDCバイアス点であり,ΔV_(CD)はOLED電圧及び駆動トランジスタ(図1の20又は図2の40)の閾電圧の増幅されたずれである。」と記載されている。ここで,図1の回路の接続関係からみて,ΔV_(CD)はOLED電圧の(増幅率1で)増幅されたずれと駆動トランジスタの閾電圧の(所定倍率で)増幅されたずれを加算したものである。
ここで,引用発明においても,その回路の接続関係からみて,EL素子E1の発光閾値電圧の(増幅率1で)増幅されたずれと駆動用TFT22の閾電圧の(所定倍率で)増幅されたずれを加算したものが検出される。
本件出願の発明の詳細な説明を参照しても,相違点2に係る構成は,引用発明も具備する構成である。
なお,引用例1には,EL素子E1の発光閾値電圧のずれに関する記載は存在するものの,駆動用TFT22の閾電圧のずれに関する記載は存在しない。しかしながら,ずれに関して,請求項1には,「前記選択されたピクセルの前記特性におけるどのようなずれ」と記載され,例えば,「OLED電圧のずれ及び駆動トランジスタの閾電圧のずれ」とは記載されていない。あるいは,引用発明の駆動用TFT22は薄膜トランジスタであるから,その閾電圧が画素間でずれること,経年変化によりずれることは技術常識であるところ,引用発明において,「駆動用TFT22のドレイン・ソース間のインピーダンスは,予め判明して」いるから,引用発明において駆動用TFT22の特性を取得し較正しておくプロセスを設けることは当業者が普通になし得る事項であり,少なくとも,引用発明に接した当業者ならば必要と理解する事項である。また,引用発明の構成を前提に駆動用TFT22の特性を取得し較正する場合は,引用発明の回路において駆動用TFT22のゲート電圧を変化させたときの定電流回路32の電流出力側の電圧変化をA/D変換回路33により検出するのが一般的であると認められるから,いずれにせよ,相違点2に係る構成は,引用発明において普通に採用し得る構成であるか,少なくとも,当業者ならば必要と理解し克服できる構成にすぎない。

ウ 相違点3について
本件の出願の発明の詳細な説明には,「前記選択されたピクセルに対して前記データラインにより供給」する前の表示データの調整を決定する回路は記載されているけれども,「前記選択されたピクセルに対して前記データラインにより供給された」後の表示データの調整を決定する回路は記載されていない。
請求項1の「前記選択されたピクセルに対して前記データラインにより供給された前記表示データの調整を決定する回路」の記載は,「前記選択されたピクセルに対して前記データラインにより供給される前記表示データの調整を決定する回路」の意味と解するのが妥当である(言葉遣いに関する軽微な誤記と思われる。)。
相違点3に係る構成は,引用発明も具備する構成である。

(7) 効果について
本件出願の発明の詳細な説明には,以下のとおり記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】高い精度で一定の輝度を供給することができるような方法及びシステムを提供したいという要求が存在する。
【0005】本発明の目的は,既存のシステムの欠点の少なくとも1つを除去又は軽減するような方法及びシステムを提供することにある。」
引用発明は,高い精度で一定の輝度を供給することができるものであり,また,既存のシステムの欠点の少なくとも1つを除去又は軽減するものであるから,本願発明の効果は,引用発明も奏する効果であり,少なくとも,引用発明から予測し得ないような顕著な効果であるということはできない。

(8) 請求人の主張について
請求人は,意見書において,以下のとおり主張する。
「 引用文献1の図3を参照すると,ライン11-_(1)の電圧はピクセルの特性の変化を増幅したものではない。さらに,E1に印加されるEL電圧は,トランジスタ22がオンの間にライン11-_(1)に印加される。すなわち,トランジスタ22は,E1に印加される電圧をライン11-_(1)に伝えるためのみに用いられ,E1に印加される電圧はライン11-_(1)に印加される電圧と同じとなる。事実,回路の右側では,参照ダイオードE_(X)はほぼ同様の構成を備え,輝度補正回路34においてE1の電圧と比較されるときに,E_(X)に印加される電圧は増幅されていない。もしトランジスタ22が増幅器として機能しているとすると,E_(X)に印加される電圧は増幅されていないので,輝度補正回路34での比較結果は意味を持たないものとなる。
このように,本願請求項1では,とても小さな閾値電圧の変化を増幅することにより検出できるのに対して,引用文献1に記載の技術では,トランジスタ22は増幅に利用されていないのでそのような効果は得られない。」
しかしながら,前記(6)イで判断したとおり,請求人が主張する構成は,引用発明も具備する構成であり,あるいは,引用発明において普通に採用し得る構成か,少なくとも,当業者ならば必要と理解し克服できる構成に過ぎず,また,請求人の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。
なお,請求人は,「トランジスタ22は,E1に印加される電圧をライン11-_(1)に伝えるためのみに用いられ,E1に印加される電圧はライン11-_(1)に印加される電圧と同じとなる」と主張するが,引用発明は,「駆動用TFT22のドレイン・ソース間のインピーダンスは,予め判明して」いるとの構成からみて,引用発明において,「E1に印加される電圧」と「ライン11-_(1)に印加される電圧」は同じではない。引用発明において「スイッチ31が端子b側に接続された状態で,駆動用TFT22がオン動作された場合には,EL素子E1には前記定電流回路32より,所定の電流が流れ,測定モードを実行する場合においては,駆動用TFT22をオン動作させる際して,走査回路5からもたらされる制御用TFT21のゲートGに供給される電圧,および書き込み回路4からもたらされるソースSに供給される電圧は,常に一定の条件になされ,これにより制御用TFT21のソースSからドレインDへ流れる電流が一定となるように制御され」ており,この構成に接した当業者ならば,測定モードを実行する場合には定電流回路32の所定の電流に対応する一定の電流を流すよう,制御用TFT21のゲートGに供給される電圧を制御する態様を,容易に想到しうるものである。

(9) 小括
以上のとおりであるから,本件出願の請求項1に係る発明は,その優先権主張の日前に日本国内または外国において頒布された引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


2 理由2について
(1) 図1の実施例について
図1の実施例に関して,発明の詳細な説明の段落【0016】?【0018】には,以下のとおり記載されている。
「【0016】図3Aは,抽出動作の間において図1及び2のピクセル回路に供給される信号波形の一例を示している。図3Bは,通常動作の間において図1及び2のピクセル回路に供給される信号波形の一例を示している。図3Aにおいて,VDD(i)は図1のVDD(i)に対応する電源ライン/信号であり,VSS(i)は図2のVSS(i)に対応する電源ライン/信号である。“I_(C)”は,校正されている位置(i,j)のピクセルのVDD(i)に供給される一定電流である。該電流I_(C)の結果としてVDD(i)上に発生される電圧は,(V_(CD)+ΔV_(CD))となり,ここで,V_(CD)は当該回路のDCバイアス点であり,ΔV_(CD)はOLED電圧及び駆動トランジスタ(図1の20又は図2の40)の閾電圧の増幅されたずれである。
【0017】図1,2及び3Aを参照して,位置(i,j)におけるピクセルの経時変化(エージング)は,電源ラインの電圧(図1のVDD(i)又は図2のVSS(i))を監視することにより抽出される。位置(i,j)のピクセルに関する図3Aの動作は,第1及び第2抽出サイクル50及び52を含んでいる。第1抽出サイクル50の間において,位置(i,j)のピクセルにおける駆動トランジスタ(図1の20又は図2の40)のゲート端子は,校正電圧V_(CG)に充電される。この校正電圧V_(CG)は,前のエージングデータに基づいて計算されたエージング予測及びバイアス電圧を含んでいる。また,第1抽出サイクルの間において当該i番目の行における他のピクセル回路はゼロにプログラミングされる。
【0018】第2抽出サイクル52の間において,SEL(i)はゼロとなり,従って,位置(i,j)のピクセルにおける駆動トランジスタ(図1の20又は図2の40)のゲート電圧は,電荷注入及びクロックフィードスルー等の動的効果による影響を受ける。このサイクルの間において,該駆動トランジスタ(図1の20又は図2の40)は増幅器として作用する。何故なら,該トランジスタはi番目の行の電源ライン(図1のVDD(i)又は図2のVSS(i))を介する一定電流によりバイアスされるからである。従って,位置(i,j)のピクセルにおける駆動トランジスタ(図1の20又は図2の40)の閾電圧(VT)のずれの影響は増幅され,それに応じて,電源ラインの電圧(図1のVDD(i)又は図2のVSS(i))が変化する。従って,この方法は,非常に小さな量のVTのずれの抽出を可能にし,結果的に高精度の校正が得られる。VDD(i)又はVSS(i)の該変化が監視される。次いで,VDD(i)又VSS(i)の該変化(又は複数の変化)は,プログラミングデータの校正に使用される。」

すなわち,図1に開示された回路においては,以下のようにしてプログラミングデータの校正が行われると考えられる。
ア 抽出動作(図3A)の期間50において,選択ラインSEL(i)がハイにされる。したがって,その行のすべてのスイッチングトランジスタT2(i,k)(k=1,2,・・・,m)がオンする。
イ 期間50において,データラインVDATA(k)のうち,校正対象であるピクセル(i,j)に対応するデータラインVDATA(j)に対しては校正電圧V_(CG)が印加され,他のデータラインVDATA(k),ただし,k≠jに対してはゼロ電圧が印加される。
ウ 期間52において,選択ラインSEL(i)がローにされる。ここで,校正対象であるピクセル(i,j)の記憶キャパシタCSには,校正電圧V_(CG)が記憶されており,他のピクセル(i,k),ただしk≠jには,ゼロ電圧が記憶されている。
エ 期間52において,電源ラインVDD(i)に対して一定電流I_(C)が印加される。ここで,一定電流I_(C)と校正電圧V_(CG)は,「駆動トランジスタ及びOLEDの劣化状態が前回校正時と同じであるならば,電源ラインVDD(i)の電位は,DCバイアスV_(CD),すなわち,通常動作(図3B)において電源ラインVDD(i)に印加される電圧となる」関係にある。
すなわち,発明の詳細な説明には記載がないが,期間52においては,電源ラインVDDに印加される電源が,電圧V_(CD)の直流電源から一定電流I_(C)の電流源に切り替えられるものと推察される。
オ 期間52において,電源ラインVDD(i)の電圧を測定する。
カ ここで,測定電圧が,V_(CD)であるならば,劣化状態に変化はなく,したがって,通常動作において校正対象のピクセル(i,j)に供給する表示データ(VDATA(j)の電圧)は,再調整不要である。
キ また,測定電圧が,V_(CD)+ΔV_(CD)(ΔV_(CD)>0)であるならば,劣化が進んだと考えられるから,通常動作において校正対象のピクセル(i,j)に供給する表示データ(VDATA(j)の電圧)の調整を行う。

図1の実施例については,以上のとおり理解可能であり,したがって,図1?6及び段落【0011】?【0024】の記載については,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

(2) 図7等の実施例について
図7の実施例に関して,発明の詳細な説明の段落【0033】?【0035】には,以下のとおり記載されている。また,図21の実施例については,段落【0073】?【0075】に同様の記載があり,図26の実施例についても,段落【0089】?【0091】に同様の記載がある。
「【0033】図9Aは,抽出動作の間に図7及び8のピクセル回路に供給される信号波形の一例を示している。また,図9Bは,通常動作の間に図7及び8のピクセル回路に供給される信号波形の一例を示している。
【0034】図7,8及び9Aを参照して,位置(i,j)におけるピクセルに対する抽出動作は,第1及び第2の抽出サイクル110及び112を含んでいる。第1抽出サイクル110の間において,駆動トランジスタ(図7の78又は図8の98)のゲート端子は校正電圧V_(CG)に充電される。この校正電圧V_(CG)は,前のエージングデータに基づいて計算されたエージング予測を含んでいる。第2抽出サイクル112の間において,第1選択ラインSEL1はゼロとなり,従って,駆動トランジスタ(図7の78又は図8の98)のゲート電圧は,電荷注入及びクロックフィードスルーを含む動的効果により影響を受ける。第2抽出サイクル112の間において,駆動トランジスタ(図7の78又は図8の98)は増幅器として作用する。何故なら,該トランジスタはVOUTを介して一定電流によりバイアスされるからである。該トランジスタに供給される電流ICの結果としてVOUT上に発生される電圧は,(V_(CD)+ΔV_(CD))である。かくして,当該ピクセルの経時変化は増幅され,VOUTの電圧は,それに応じて変化する。従って,この方法は非常に少ない量の電圧閾値(VT)のずれの抽出を可能にし,結果として高精度の校正が得られる。VOUTの変化は,監視される。次いで,VOUTの変化(又は複数の変化)は,プログラミングデータの校正のために使用される。
【0035】また,上記抽出サイクル中にOLEDに電流/電圧を供給して,OLEDの電圧/電流を抽出することができ,当該システムは,該OLEDの経時変化ファクタを決定し,該経時変化ファクタを一層正確な輝度データの校正のために使用することができる。」

しかしながら,図7,21及び26に開示された回路は,その回路動作が不明であり,例えば,図7では,以下のとおりである(図21及び26についても同様である。)。
ア 抽出動作(図9A)の期間110において,選択ラインSEL1がハイにされる。
イ 期間110において,データラインVDATAに対して校正電圧V_(CG)が印加される。
ウ 期間112において,選択ラインSEL1がローにされる。ここで,記憶キャパシタ74には,校正電圧V_(CG)が記憶されている。
エ 期間112において,SEL2がハイにされ,出力ラインVOUT(隣接する列に対するデータラインVDATA)に対して一定電流I_(C)が印加される。

ここで,期間112において一定電流I_(C)の結果としてVOUT上に発生される電圧は,(V_(CD)+ΔV_(CD))であるとされている。
しかしながら,VOUT上に発生される電圧をDCバイアス点の電圧V_(CD)(+ΔV_(CD)),すなわち,電源ラインVDDに通常印加される電圧とするためには,例えば,駆動トランジスタ78が導通し,かつ,駆動トランジスタ78に流れる電流がゼロ(+ΔV_(CD)が発生する電流)となる状態とすることが考えられるが,出力ラインVOUTには一定電流I_(C)が印加され,また,駆動トランジスタ78のソース端子にはOLED72が接続されているから,このような状態に設定できない。
また,駆動トランジスタ78の劣化の程度を検出するためには,駆動トランジスタ78を流れる電流値(並びにゲート及びソースの電圧)を知ることが必要と考えられるが,駆動トランジスタ78を流れる電流は,OLEDとVOUTへ分岐するから,VOUTに印加する電流を一定電流I_(C)としても,駆動トランジスタ78を流れる電流値を知ることができない。OLED72についても,同様である。
以上のとおり,図7の実施例については,どのようにして高精度の校正が得られ,プログラミングデータの校正のために使用されて通常動作において供給する表示データの調整が行われるのかが不明である。また,図21及び26の実施例についても,同様である。
したがって,図7?20及び段落【0025】?【0064】の記載については,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。また,図21?25及び段落【0065】?【0080】,並びに,図26?30及び段落【0081】?【0097】についても同様である。
さらに,図31A?35及び段落【0098】?【0115】についても,校正のための具体的回路構成及び動作が不明であるから,同様に,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(3) 請求人の主張について
請求人は,意見書において,以下のとおり主張する。
「OLEDがオフ状態を維持するように電圧を調整することによって駆動トランジスタの劣化を測定することは可能である。当業者であれば,V_(CD)+ΔV_(CD)がOLEDのオン電圧より小さくなるように駆動トランジスタのゲート電圧をどのように選択すればよいかは理解できるものである。この場合,増幅された電圧は,駆動トランジスタの劣化を示すものとなる。」
しかしながら,発明の詳細な説明には,「OLEDがオフ状態を維持するように電圧を調整すること」について,記載がない。VDATAに与えられる電圧は,校正電圧V_(CG)として記載されており,OLEDのオフ電圧としては記載されていない。むしろ,発明の詳細な説明には,抽出サイクル中,すなわち,図9Aの110,112の期間,図23Aの230の期間等にOLEDに電流/電圧を供給することが記載されており(段落【0035】,【0075】等),請求人の主張は,発明の詳細な説明の記載に反する。
OLEDをオフ状態に維持するという知見を前提とするならば,例えば,(A)駆動トランジスタがオフとなるようにゲート電圧を制御する,(B)OLEDのアノード電位をOLEDの発光閾値電圧未満に制御する,(C)OLEDのカソード電位をハイに制御する等の手段を設けることは,当業者が容易に想到しうる事項である。
しかしながら,発明の詳細な説明には,OLEDをオフ状態に維持するという知見自体が記載されていない。また,(A)駆動トランジスタがオフとなるようにゲート電圧を制御したのでは一定電流I_(C)を流すことができず,(B)OLEDの発光閾値電圧は回路のDCバイアスV_(CD)とは異なる電位であるから発明の詳細な説明の記載に反することとなり,(C)OLEDのカソード電位はグランドとして表記されておりこれをハイに制御することは記載されていない。

請求人は,意見書において,「本願請求項1における「電源ラインを介して電流を供給する電流源」と「データラインを介して電流を供給する電流源」はそれぞれ分けて理解すべきである。前者の場合,駆動トランジスタ及びOLEDの劣化はVOUTにより示される。後者の場合,選択されたピクセルの駆動トランジスタの特性は増幅電圧により示される。」とも主張する。
しかしながら,「電源ラインを介して電流を供給する電流源」の場合は,図1の実施例であるから,駆動トランジスタ及びOLEDの劣化はVOUTにより示されない。「データラインを介して電流を供給する電流源」の場合は,図7等の場合であるから,出力ラインVOUTの電圧を監視することにより抽出されると思われるが,その動作は不明である。

(4) 小括
以上のとおり,本件出願は,発明の詳細な説明の記載が,特許請求の範囲の請求項1?12に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

3 理由3について
(1) 請求項1について
データラインについて,請求項1には「前記マトリクスにおけるピクセルの前記列に,電圧および表示データを供給する複数のデータライン」と記載されている。
しかしながら,発明の詳細な説明には,「電圧」が「校正電圧」である発明しか記載されていない。
したがって,「電圧」が「校正電圧」ではない「電圧」,例えば,「電圧」が記憶キャパシタをリセットする電圧やOLEDのオフ電圧であるような発明は,発明の詳細な説明に記載されていない。発明の詳細な説明に記載された発明は,OLEDにも電流を供給してOLED電圧のずれを検出する発明である。

請求人は,意見書において,「データラインの電圧は「校正電圧」のみであるという指摘ですが,検出時には確かに「校正電圧」となりますが,通常の動作時にはプログラミング電圧V_(CP)がデータラインに印加されます。したがって,データラインの電圧は「校正電圧」に限定されるものではありません。」と主張する。
しかしながら,請求項1には,単に「電圧」と記載されているから,「校正電圧」及び「プログラミング電圧」に限られない「電圧」をデータラインに供給する発明が含まれている。また,請求項1には,「前記マトリクスにおけるピクセルの前記列に,電圧および表示データを供給する複数のデータライン」と記載されており,通常の動作時にプログラミング電圧V_(CP)をデータラインに印加することについては,「表示データを供給する」として,請求項1に既に記載されているから,この点からみても,請求人の主張は採用できない。

(2) 請求項2について
感知回路について,請求項2には「前記電源ライン又は前記データラインを前記選択されたピクセルの特性の検出に使用する感知回路」と記載されている。
しかしながら,発明の詳細な説明には,「感知回路」として,図31Aのような,「前記データラインを前記選択されたピクセルの特性の検出に使用する感知回路」しか記載されていない。
したがって,感知回路が「前記電源ラインを前記選択されたピクセルの特性の検出に使用する感知回路」の場合の発明は,発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

請求人は,意見書において,以下のとおり主張する。
「拒絶理由通知において,「期間52において,電源ラインVDD(i)に対して一定電流I_(C)が印加される。ここで,一定電流I_(C)と校正電圧V_(CG)は,「駆動トランジスタ及びOLEDの劣化状態が前回校正時と同じであるならば,電源ラインVDD(i)の電位は,DCバイアスV_(CD),すなわち,通常動作(図3B)において電源ラインVDD(i)に印加される電圧となる」関係にある。」と指摘された。すなわち,一定電流ICが電源ラインVDD(i)に印加されたときに,当該ラインは選択されたピクセルの特性を検出するために使用されることになる。
すなわち,本願請求項2において「前記電源ラインを前記選択されたピクセルの特性の検出に使用する感知回路」とすることは本願明細書に記載されたものである。」
しかしながら,図1の実施例において電源ラインの電圧は,DCバイアスV_(CD)すなわち,通常動作(図3B)において電源ラインVDD(i)に印加される電圧と一致しているか否か監視されるものであり,感知回路として記載されていない。また,発明の詳細な説明に記載された感知回路は,その出力を読み出しラインに出力するものでもあるが,図1の実施例において,読み出しラインに相当するライン(例:出力ラインVOUT)は存在しない。

(3) 小括
以上のとおり,本件出願は,特許請求の範囲の請求項1?12の記載が,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。

第3 まとめ
以上のとおりであるから,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-25 
結審通知日 2015-09-29 
審決日 2015-10-16 
出願番号 特願2008-553587(P2008-553587)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G09G)
P 1 8・ 536- WZ (G09G)
P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 樋口 信宏
森 竜介
発明の名称 発光デバイス表示器のための方法及びシステム  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
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