• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1312743
審判番号 無効2015-800077  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-03-27 
確定日 2016-03-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第5584336号発明「防腐剤及びこれを含有する水性組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5584336号の請求項1ないし18に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5584336号に係る出願(特願2013-160896号)は、平成17年4月22日(優先日 平成16年4月23日)に出願した特願2005-125544号(以下、「原原出願」という。)の一部を平成23年5月12日に新たな特許出願(特願2011-106770号、以下、「原出願」という。)としたものの一部を、更に、平成25年8月2日に新たな特許出願としたものであって、平成26年7月25日に特許権の設定登録がされたものである。
これに対し、請求人から、本件特許無効審判が請求され、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成27年 3月27日 本件無効審判請求
同年 4月24日 被請求人へ請求書副本の送達通知の送達
同年10月23日付け 審決の予告

第2 本件発明
本件特許第5584336号の請求項1?18に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明18」といい、これらをまとめて、「本件特許発明」ともいうことがある。)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?18に記載された次のとおりのものである。
(なお、本件特許無効審判事件において、被請求人から、明細書又は特許請求の範囲の訂正は、請求されていない。)

「【請求項1】
(A)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の化合物0.0001?0.1w/v%と、
(B)ホウ酸及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物と、
(C)塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリン、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも4種の化合物とを含有する、眼科用水性組成物(但し、さらに、トロメタモール、トラニラストあるいはその薬理学的に許容される塩、のいずれかを含有する眼科用水性組成物を除く)。

【請求項2】
マルチドーズ型容器に収納されている、請求項1に記載の眼科用水性組成物。

【請求項3】
(A)成分として、ジフェンヒドラミン及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物の含有量が0.005?0.05w/v%である、請求項1又は2に記載の水性組成物。

【請求項4】
(A)成分として、クロルフェニラミン及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物の含有量が0.003?0.03w/v%である、請求項1又は2に記載の水性組成物。

【請求項5】
(B)成分として、ホウ酸とホウ砂を含有してなる、請求項1?4のいずれかに記載の水性組成物。

【請求項6】
(C)成分として、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリン、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも6種を含有してなる、請求項1?5のいずれかに記載の水性組成物。

【請求項7】
さらに、アルキルポリアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ポリヘキサメチレンビグアニド、グローキルからなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる、請求項1?6のいずれかに記載の水性組成物。

【請求項8】
点眼剤又は洗眼剤である、請求項1?7のいずれかに記載の水性組成物。

【請求項9】
コンタクトレンズ装用中に使用できる点眼剤又は洗眼剤である、請求項8に記載の水性組成物。

【請求項10】
(C)成分の含有量が0.001?10w/v%である、請求項1?9のいずれかに記載の水性組成物。

【請求項11】
さらに、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる、請求項1?10のいずれかに記載の水性組成物。

【請求項12】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80からなる群から選択される少なくとも1種の含有量が0.05w/v%以上である、請求項11に記載の水性組成物。

【請求項13】
さらに、l-メントール、d-カンフル、メントン、クールミント、ハッカ油、ペパーミント油、d-ボルネオール、ゲラニオール、ユーカリ油、ベルガモット油及びエデト酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる、請求項1?12のいずれかに記載の水性組成物。

【請求項14】
(A)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の化合物0.0001?0.1w/v%と、
(B)ホウ酸及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物と、
(C)塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリン、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも4種の化合物とを含有させることを特徴とする、眼科用水性組成物の防腐効果を増強する方法(但し、さらに、トロメタモール、トラニラストあるいはその薬理学的に許容される塩、のいずれかを含有する眼科用水性組成物である場合を除く)。

【請求項15】
眼科用水性組成物がマルチドーズ型容器に収納されている、請求項14に記載の眼科用水性組成物の防腐効果を増強する方法。

【請求項16】
眼科用水性組成物に、さらに、アルキルポリアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ポリヘキサメチレンビグアニド、グローキルからなる群から選択される少なくとも1種を含有させる、請求項14又は15に記載の眼科用水性組成物の防腐効果を増強する方法。

【請求項17】
眼科用水性組成物に、さらに、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80からなる群から選択される少なくとも1種を含有させる、請求項14?16のいずれかに記載の眼科用水性組成物の防腐効果を増強する方法。

【請求項18】
眼科用水性組成物に、さらに、l-メントール、d-カンフル、メントン、クールミント、ハッカ油、ペパーミント油、d-ボルネオール、ゲラニオール、ユーカリ油、ベルガモット油及びエデト酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有させる、請求項14?17のいずれかに記載の眼科用水性組成物の防腐効果を増強する方法。」

第3 請求人の主張及び提出した証拠方法、被請求人の主張
1 請求人の主張の概要
請求人は、「特許第5584336号の請求項1?18にかかる発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」(請求の趣旨)との審決を求め、証拠方法として後記2の甲第1?51号証を提出し、無効とすべき理由を次のように主張している。

(1)無効理由1
本件特許に係る出願は、原出願および原原出願に対する分割要件に違反するため、判断基準となる日は現実の出願日である平成25年8月2日となるから、本件特許発明1?18は、原出願の公開公報(甲第3号証)または原原出願の公開公報(甲第4号証)もしくは特許公報(甲第2号証)に対して、新規性または進歩性を有しないため、本件特許は、特許法第29条第1項第3号または同条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)無効理由2
本件特許の原出願は、原原出願に対して分割要件に違反するため、本件特許に係る出願も原出願の出願日にまでしか遡及しない。したがって、本件特許発明1?18は、原原出願の公開公報(甲第4号証)に対して、新規性または進歩性を有しないため、本件特許は、特許法第29条第1項第3号または同条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)無効理由3
本件特許発明1?18は、甲第24、27、29、45?51号証に記載された公知発明および一般医薬品集(甲第18号証)に掲載される公然実施品から新規性を欠如し、仮に相違があったとしても、周知慣用技術において通常当業者がなし得る範囲の改変にすぎないから進歩性を欠如する。したがって、本件特許発明1?18に係る特許は、特許法第29条第1項第2号、第3号または同条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(4)無効理由4
(4-1)甲第12号証および甲第26号証に基づく進歩性欠如
(4-1-1)本件特許発明1および14は、甲第12号証および/または甲第26号証、ならびに甲第33号証の記載から、容易に想到し得た発明であり、本件特許発明1および14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(4-1-2)本件特許発明2?18に係る特許は、下記ア?コのとおり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

ア 本件特許発明2および15は、甲第12号証および/または甲第26号証、ならびに甲第33号証の記載から、甲第18、20、43、44号証等の記載に照らし、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。

イ 本件特許発明3は、甲第12号証および/または甲第26号証、ならびに甲第33号証の記載から、甲第36?38号証および甲第18、19、43、44号証等の記載に照らし、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。

ウ 本件特許発明4は、甲第12号証および/または甲第26号証、ならびに甲第33号証の記載から、甲第36?38、40号証および甲第18?20、43、44号証等の記載に照らし、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。

エ 本件特許発明5は、甲第12号証および/または甲第26号証、ならびに甲第33号証の記載から、甲第18、36?38、40号証の記載に照らし、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。

オ 本件特許発明6は、甲第12号証および/または甲第26号証、ならびに甲第18、33号証の記載から、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。

カ 本件特許発明7および16は、甲第12号証および/または甲第26号証、ならびに甲第33号証の記載から、甲第36?38号証の記載に照らし、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。

キ 本件特許発明8は、甲第12号証、甲第26号証に基づいて、甲第33、41および42号証から、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。

ク 本件特許発明9は、甲第12号証および/または甲第26号証に基づいて、甲第26および33号証を参酌して、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。

ケ 本件特許発明10は、甲第12号証、甲第26号証に基づいて、甲第33、19号証から、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。

コ 本件特許発明11?13、17および18は、甲第12号証および/または甲第26号証に基づいて、甲第33号証を参酌して、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。

(4-2)甲第12号証および甲第26号証以外の文献に基づく進歩性欠如
(4-2-1)本件特許発明1および14は、甲第38号証に基づいて甲第33号証の記載に照らし、容易に想到し得たものであり、また、甲第36号証または甲37号証に基づいても甲第33号証の記載に照らし、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。
よって、本件特許発明1および14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(4-2-2)本件特許発明2?18に係る特許は、下記ア?オのとおり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
ア 本件特許発明2、3、5?7、11、12および15?17は、甲第38号証に基づいて甲第33号証に照らし、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。
甲第36号証または甲37号証に基づいた場合も同様である。

イ 本件特許発明4および10は、甲第38号証に基づいて甲第33、19号証に照らし、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。
甲第36号証または甲37号証に基づいた場合も同様である。

ウ 本件特許発明8は、甲第38号証に基づいて甲第33号証および甲第41、42号証に照らし、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。
甲第36号証または甲37号証に基づいた場合も同様である。

エ 本件特許発明9は、甲第38号証に基づいて甲第33号証および甲第42号証に照らし、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。
甲第36号証または甲37号証に基づいた場合も同様である。

オ 本件特許発明13および18は、甲第38号証に基づいて甲第33号証および甲第36?38、12、26号証に照らし、容易に想到し得たものであり、進歩性を欠如する。
甲第36号証または甲37号証に基づいた場合も同様である。

(5)無効理由5
特許発明1?18について、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、これを実施可能に記載しておらず、実質的なサポートもされていないから、実施可能要件およびサポート要件を満たしていない。したがって、本件特許発明1?18について、本件特許は、特許法第36条第4項第1号および同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願について特許されたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(6)無効理由6
本件特許発明12および14?18には、下記(6-1)、(6-2)の点で記載不備があり、明確性要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願について特許されたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(6-1)本件特許発明14?18は「眼科用水性組成物の防腐効果を増強する方法」に関するものであるが、(A)?(C)成分を含有させることを特徴とする、「眼科用水性組成物の防腐効果を増強する方法」と記載されているため、「眼科用水性組成物」にもともと備わる「防腐効果」を増強する方法と解釈されるが、一方、(A)?(C)成分が「眼科用水性組成物」の成分として存在し、いずれかの成分が他の成分の「防腐効果」を増強するとも解釈され、その技術的意義が多義的なものであり、また、「眼科用水性組成物」にもともと備わる「防腐効果」が不明であるから明確性要件を満たさない。

(6-2)本件特許発明12は、含有量が下限しか定められておらず、上限が不明であるから明確性要件を満たさない。

(7)無効理由7
本件特許発明1?18は、本件の原出願に係る特許(甲第1号証)と同一の発明に係るものであり、本件の原原出願に係る特許(甲第2号証)と同一の発明に係るものであるから、本件特許は、特許法第39条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
また、本件特許の出願日が遡及せず、原出願の特許の出願日が遡及しない場合、本件特許は、甲第1号証に対し特許法第39条第1項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(8)無効理由8
本件特許は、本件特許の出願当初明細書等に対し新規事項を追加するものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対して特許されたものであるから、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

2 証拠方法
甲第1号証:特許第5379186号公報(本件の原出願の特許公報)
甲第2号証:特許第4856392号公報(本件の原原出願の特許公報)
甲第3号証:特開2011-184452号公報(本件の原出願の公開公報)
甲第4号証:特開2005-330276号公報(本件の原原出願の公開公報)
甲第5号証:特許庁発行「特許・実用新案審査基準」「分割出願」および「第III部I節 新規事項」
甲第6号証:本件における平成26年6月10日付提出の手続補正書
甲第7号証:本件における平成26年6月10日付提出の意見書
甲第8号証:本件における平成25年8月2日付提出の特許請求の範囲
甲第9号証:本件における平成25年11月29日付提出の上申書
甲第10号証:吉田耕作、高橋昌巳 編著、「新微生物学入門」、初版、医学出版社、1988年4月30日、17?19頁(甲第7号証において提出された参考文献1)
甲第11号証:畑中正一、嶋田甚五郎 編著、「微生物学」、第1版、文光堂、1999年11月30日、14頁(甲第7号証において提出された参考文献2)
甲第12号証:特開2004-2364号公報
甲第13号証:特開平11-292793号公報
甲第14号証:特開2002-80314号公報
甲第15号証:「第十四改正日本薬局方解説書 2001」、初版、広川書店、平成13年6月27日、保存効果試験法 F-131?140
甲第16号証:(社)東京医薬品工業協会、大阪医薬品協会、点眼剤委員会技術部会、「保存効力試験法 業界技術書」、2004年4月、表紙、目次、1?12頁、18頁、業界技術書説明4
甲第17号証:日本薬局方 保存効力試験法の改正(172-1412.pdf)(2014年12月)
http://www.pmda.go.jp/public/pubcome_201412_1/file/172-1412.pdfから平成27年3月4日ダウンロード
甲第18号証:「一般薬 日本医薬品集2004-05」、14版、株式会社じほう、平成15年7月30日、675?716頁、奥付、表紙
甲第19号証:「医薬品製造指針別冊 一般用医薬品製造(輸入)承認基準2000年版」株式会社じほう、平成12年4月25日、93?104頁
甲第20号証:「ロートキュアラ アイドロップス」についての販売促進資料
甲第21号証:特開平8-27624号公報
甲第22号証:特開2003-34628号公報
甲第23号証:特開2002-302440号公報
甲第24号証:特開2003-128585号公報
甲第25号証:特開昭62-198601号公報
甲第26号証:特開2003-252800号公報
甲第27号証:特開2002-265357号公報
甲第28号証:特開2001-242428号公報
甲第29号証:特開2003-2837号公報
甲第30号証:実験成績証明書(平成27年3月18日)
甲第31号証:特開2003-104870号公報
甲第32号証:日本医薬品添加剤協会編集、「医薬品添加物事典 2000」、薬事日報社、2000年4月28日、12頁
甲第33号証:米国特許第4873265号明細書および抄訳文
甲第34号証:特開2001-97890号公報
甲第35号証:日本医薬品添加剤協会編集、「医薬品添加物事典 2000」、薬事日報社、2000年4月28日、235-236頁
甲第36号証:特開平9-322928号公報
甲第37号証:特開平10-71190号公報
甲第38号証:特開平10-155880号公報
甲第39号証:原原出願の平成23年5月12日付提出の意見書
甲第40号証:日本医薬品添加剤協会編集、「医薬品添加物事典 2000」、薬事日報社、2000年4月28日、243-257頁 (ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリソルベート80)
甲第41号証:特表2000-513001号公報
甲第42号証:特許第3073020号公報
甲第43号証:公知発明および公然実施品のまとめ(甲第18号証、甲第24、27、29、45?51号証に基づいて作成)
甲第44号証:「ロートキュアラ アイドロップス」の発売時期を示すウェブサイト(http://www.rohto.co.jp/news/release/2014/0612_01/、平成27年3月24日ダウンロード)の写し
甲第45号証:特開2004-2358号公報
甲第46号証:特開2003-55258号公報
甲第47号証:特開2001-302518号公報
甲第48号証:特開2003-146891号公報
甲第49号証:特開2003-146892号公報
甲第50号証:特開2003-201241号公報
甲第51号証:特開2003-137781号公報

3 被請求人の主張
請求書の副本を被請求人に送達し(送達日 平成27年4月24日)、相当の期間を指定して、答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人からは何らの応答もなく、請求人の無効とする理由に対して何も主張、立証をしていない。
さらに、平成27年10月23日付け審決の予告に対しても、被請求人からは何らの応答がない。

第4 甲各号証の記載事項
1 本件の原原出願の優先日前に頒布された甲第24号証には、次の事項が記載されている。
(甲24a)「【0002】
【従来の技術】眼科用液剤や眼科用軟膏剤は、通常、製造工程においては無菌組成物として調製されるが、開封後、1?数ヶ月間で使い切るまでは、複数回、開閉を繰り返して使用されるため、その都度、環境中または人体に常在する微生物による汚染の危険にさらされている。
……
【0005】そこで、最近ではユニットドーズ(密封無菌製剤とし、開封後1回で使いきる)として防腐剤を配合しない医薬品(例えば、点眼剤)や化粧料が知られるようになっている。しかしながら、ユニットドーズは製造コストが高く、消費者に安価に提供することができない。」

(甲24b)「【0078】……従って、本発明の外用組成物は外皮組成物、特に刺激性が問題となり得る、口唇または粘膜(角膜及び結膜などの眼粘膜、口腔粘膜、鼻腔粘膜、咽頭部粘膜など)に適用される組成物として好適に使用できる。なお、ここで粘膜適用組成物には、直接粘膜に適用される、例えば眼科用組成物(点眼薬(コンタクトレンズ(CL)装用中にも使用できる点眼薬を含む)、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬(コンタクトレンズ(CL)装用中にも使用できるCL用洗眼薬を含む))……などが含まれる。」

(甲24c)「【0114】
【発明の効果】本発明の外用組成物は、……安全でかつ優れた防腐力を発揮するという効果を有する。よって本発明の外用組成物は、医薬品、医薬部外品、香粧品などの各種の分野において、安全で保存性に優れた外用目的の製品として有用である。」

(甲24d)「【0137】【表8】
配合量(g/100ml) 実施例41点眼薬:塩酸テトラヒドロゾリン0.05、マレイン酸クロルフェニラミン0.01、塩酸ピリドキシン0.05、シアノコバラミン0.006、L-アスバラギン酸カリウム1.0、アミノエチルスルホン酸0.5、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.1、ホウ酸1.00、ホウ砂0.05、クロロブタノール0.15、l-メントール0.020、d-カンフル0.005、d-ボルネオール0.001、エデト酸ナトリウム0.010、無水カフェイン0.5、ポリソルベート800.1、塩酸適量、水酸化ナトリウム適量、精製水適量、pH(20℃)6.0」

1-1 甲第24号証に記載された発明
上記(甲24d)によれば、甲第24号証には、次の発明(以下、「甲24発明」という。)が記載されているといえる。
「配合量(g/100ml)が、 塩酸テトラヒドロゾリン0.05、マレイン酸クロルフェニラミン0.01、塩酸ピリドキシン0.05、シアノコバラミン0.006、L-アスバラギン酸カリウム1.0、アミノエチルスルホン酸0.5、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.1、ホウ酸1.00、ホウ砂0.05、クロロブタノール0.15、l-メントール0.020、d-カンフル0.005、d-ボルネオール0.001、エデト酸ナトリウム0.010、無水カフェイン0.5、ポリソルベート800.1、塩酸適量、水酸化ナトリウム適量、精製水適量であり、pH(20℃)6.0である点眼薬。」

2 本件の原原出願の優先日前に頒布された甲第46号証には、次の事項が記載されている。
(甲46a)「【0002】
【従来の技術】……
……
【0005】このような点から、例えばリゾチームを含有する点眼薬では、スクイズ性が良好で点眼しやすく、携帯しやすい透明プラスチック製容器を用いているため、流通過程においては製剤を充填した容器を紙箱に納めて遮光している。さらに開封後は使用者が1ヶ月?数ヶ月にわたり継続的に使用する場合もあるため、プラスチック製遮光袋の補助的使用を推奨することで、光安定性の維持に努めている。しかし、このような包装材料による遮光手段は製造工程での安定性を担保できないのみならず、開封後の製剤適用部位での光分解、使用者の遮光袋の不使用や紛失の可能性もあり、必ずしも効果的な方法とはいえない。」

(甲46b)「【0023】さらに、本発明の水性組成物は、刺激が全く又はほとんどなく安全であることから、刺激を感じやすい粘膜(角膜及び結膜などの眼粘膜、歯茎、舌、口唇、口腔粘膜、鼻腔粘膜、咽頭部粘膜など)への適用に有用である。このような粘膜適用組成物(又は粘膜適用製剤)としては、例えば、眼科用組成物(点眼薬(コンタクトレンズ装用中に使用できる点眼薬を含む)、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬(コンタクトレンズ装用中に使用できる洗眼薬を含む)、コンタクトレンズ用剤(洗浄液、保存液、殺菌液、マルチパーパスソリューションなど)など)、耳鼻科用組成物(点鼻薬、点耳薬、鼻洗浄液など)、口腔用組成物(口腔咽頭薬、含嗽薬など)などが例示できる。なお、本明細書においてコンタクトレンズとはハード、ソフト等のあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する。」

(甲46c)「【0039】本発明の組成物は、前記のようにリゾチーム又はその塩の光安定性を大きく向上できる。そのため、種々の包装形態で使用でき、透明または薄い有色の透明容器に収容しても長期間にわたりリゾチーム又はその塩を安定化できる。本発明の効果は、例えば、スクイズ性及び携帯性に優れるプラスチック製容器のように、繰り返し使用可能な形態で容器に包装又は収容する組成物において有効である。……」

(甲46d)「【0047】【表3】
配合量(g/100mL) 実施例12洗眼薬:塩化リゾチーム(力価)0.05、塩酸ナファゾリン0.0003、イプシロン-アミノカプロン酸0.05、アラントイン0.03、グリチルリチン酸二カリウム0.025、塩酸ジフェンヒドラミン0.005、シアノコバラミン0.002、塩酸ピリドキシン0.01、アミノエチルスルホン酸0.1、コンドロイチン硫酸ナトリウム0.05、ホウ酸1.3、ホウ砂0.05、塩酸適量、水酸化ナトリウム適量、ウイキョウ油0.001、ゲラニオール0.002、ユーカリ油0.002、濃塩化ベンザルコニウム液500.010、アルキルジアミノエチルグリシン0.01、無水カフェイン1.0、ポリソルベート800.10、精製水適量、pH6.0」

2-1 甲第46号証に記載された発明
上記(甲46d)によれば、甲第46号証には、次の発明(以下、「甲46発明」という。)が記載されているといえる。
「配合量(g/100ml)が、 塩化リゾチーム(力価)0.05、塩酸ナファゾリン0.0003、イプシロン-アミノカプロン酸0.05、アラントイン0.03、グリチルリチン酸二カリウム0.025、塩酸ジフェンヒドラミン0.005、シアノコバラミン0.002、塩酸ピリドキシン0.01、アミノエチルスルホン酸0.1、コンドロイチン硫酸ナトリウム0.05、ホウ酸1.3、ホウ砂0.05、塩酸適量、水酸化ナトリウム適量、ウイキョウ油0.001、ゲラニオール0.002、ユーカリ油0.002、濃塩化ベンザルコニウム液500.010、アルキルジアミノエチルグリシン0.01、無水カフェイン1.0、ポリソルベート800.10、精製水適量であり、pH6.0である洗眼薬。」

第5 当審の判断
1 無効理由3に関して
(1)甲第24号証に基づいて
ア 本件特許発明1について
(ア-1)本件特許発明1と甲24発明との対比・判断
本件特許発明1と甲24発明とを対比すると、甲24発明の点眼薬が眼科用水性組成物に該当することは明かであり、単位としてg/100mlとw/v%とは同等であるから、甲24発明の「マレイン酸クロルフェニラミン0.01(g/100ml)」及び「ホウ酸」、「ホウ砂」は、本件特許発明1の「(A)クロルフェニラミン0.0001?0.1w/v%」及び「(B)ホウ酸及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物」に相当し、甲24発明の「塩酸テトラヒドロゾリン」、「シアノコバラミン」、「塩酸ピリドキシン」、「L-アスバラギン酸カリウム」、「アミノエチルスルホン酸」、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」の6種の成分は、いずれも本件特許発明1の(C)成分に該当し、甲24発明は(C)成分に該当する化合物を4種以上含有しているといえる。
そして、甲24発明の点眼薬には、トロメタモール、トラニラストあるいはその薬理学的に許容される塩、のいずれも含有されていないことは明かである。

そうすると、本件特許発明1と甲24発明は、本件特許発明1の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。

(一致点)
「(A)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の化合物0.0001?0.1w/v%と、
(B)ホウ酸及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物と、
(C)塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリン、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも4種の化合物とを含有する、眼科用水性組成物(但し、さらに、トロメタモール、トラニラストあるいはその薬理学的に許容される塩、のいずれかを含有する眼科用水性組成物を除く)。」

してみると、両者に相違点はない。

(ア-2)小括
したがって、本件特許発明1は、甲第24号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

イ 本件特許発明2について
(イ-1)本件特許発明2と甲24発明との対比・判断
上記(ア-1)の検討を踏まえて、本件特許発明2と甲24発明とを対比すると、両者は、上記(ア-1)の一致点で一致し、次の点で一応相違する。

(相違点1)
本件特許発明2は「マルチドーズ型容器に収納されている」と特定されているのに対して、甲24発明は容器についての特定がない点。

相違点1について検討する。
甲第24号証((甲24a))に記載される「開封後、1?数ヶ月間で使い切るまでは、複数回、開閉を繰り返して使用されるため、その都度、環境中または人体に常在する微生物による汚染の危険にさらされている。」、「ユニットドーズは製造コストが高く、消費者に安価に提供することができない。」との従来技術の問題点、及び、「【発明の効果】本発明の外用組成物は、……安全でかつ優れた防腐力を発揮するという効果を有する。よって本発明の外用組成物は、医薬品、医薬部外品、香粧品などの各種の分野において、安全で保存性に優れた外用目的の製品として有用である。」((甲24c))との記載からみて、甲24発明が、ユニットドーズではない、すなわち、マルチドーズの点眼薬を目指していることは明かであり、その場合、使用する容器は当然マルチドーズ用の容器となることは自明であり、甲24発明の点眼薬も、実際の使用に供する際にはマルチドーズ型容器に収納されるものである。
よって、相違点1は実質的な相違点ではない。

(イ-2)小括
したがって、本件特許発明2は、甲第24号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

ウ 本件特許発明4について
(ウ-1)本件特許発明4と甲24発明との対比・判断
上記(ア-1)の検討を踏まえて、本件特許発明4と甲24発明とを対比すると、甲24発明の「マレイン酸クロルフェニラミン0.01(g/100ml)」は、本件特許発明4の「(A)成分として、クロルフェニラミン及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物の含有量が0.003?0.03w/v%」であることに相当するので、本件特許発明4と甲24発明とは、次の点で一致し、
(一致点)
「(A)成分として、クロルフェニラミン及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物0.003?0.03w/v%と、
(B)ホウ酸及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物と、
(C)塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリン、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも4種の化合物とを含有する、眼科用水性組成物(但し、さらに、トロメタモール、トラニラストあるいはその薬理学的に許容される塩、のいずれかを含有する眼科用水性組成物を除く)。」
相違点はない。

(ウ-2)小括
したがって、本件特許発明4は、甲第24号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

エ 本件特許発明5について
(エ-1)本件特許発明5と甲24発明との対比・判断
上記(ア-1)の検討を踏まえて、本件特許発明5と甲24発明とを対比すると、甲24発明は「ホウ酸」及び「ホウ砂」を含有するので、本件特許発明5と甲24発明とは、次の点で一致し、
(一致点)
「(A)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の化合物0.0001?0.1w/v%と、
(B)成分として、ホウ酸とホウ砂と、
(C)塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリン、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも4種の化合物とを含有する、眼科用水性組成物(但し、さらに、トロメタモール、トラニラストあるいはその薬理学的に許容される塩、のいずれかを含有する眼科用水性組成物を除く)。」
相違点はない。

(エ-2)小括
したがって、本件特許発明5は、甲第24号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

オ 本件特許発明6について
(オ-1)本件特許発明6と甲24発明との対比・判断
上記(ア-1)の検討を踏まえて、本件特許発明6と甲24発明とを対比すると、甲24発明は(C)成分に該当する化合物を6種含有するので、本件特許発明6と甲24発明とは、次の点で一致し、
(一致点)
「(A)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の化合物0.0001?0.1w/v%と、
(B)ホウ酸及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物と、
(C)成分として、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリン、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも6種を含有する、眼科用水性組成物(但し、さらに、トロメタモール、トラニラストあるいはその薬理学的に許容される塩、のいずれかを含有する眼科用水性組成物を除く)。」
相違点はない。

(オ-2)小括
したがって、本件特許発明6は、甲第24号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

カ 本件特許発明8について
(カ-1)本件特許発明8と甲24発明との対比・判断
上記(ア-1)の検討を踏まえて、本件特許発明8と甲24発明とを対比すると、甲24発明は点眼薬であるから、本件特許発明8と甲24発明とは、上記(ア-1)の一致点で一致し、相違点はない。

(カ-2)小括
したがって、本件特許発明8は、甲第24号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

キ 本件特許発明9について
(キ-1)本件特許発明9と甲24発明との対比・判断
両者は、上記(ア-1)の一致点で一致し、次の点で一応相違する。

(相違点2)
本件特許発明9は「コンタクトレンズ装用中に使用できる点眼剤または洗眼剤」と特定されているのに対して、甲24発明はそのような特定のない「点眼薬」である点。

相違点2について検討する。
甲第24号証((甲24b))の「本発明の外用組成物は……眼科用組成物(点眼薬(コンタクトレンズ(CL)装用中にも使用できる点眼薬を含む)、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬(コンタクトレンズ(CL)装用中にも使用できるCL用洗眼薬を含む))……などが含まれる」との記載によれば、甲24発明の点眼薬もコンタクトレンズ(CL)装用中にも使用できることは明かである。
よって、相違点2は実質的な相違点ではない。

(キ-2)小括
したがって、本件特許発明9は、甲第24号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

ク 本件特許発明10について
(ク-1)本件特許発明10と甲24発明との対比・判断
上記(ア-1)の検討を踏まえて、本件特許発明10と甲24発明とを対比すると、甲24発明は(C)成分に該当する化合物である「塩酸テトラヒドロゾリン0.05」、「シアノコバラミン0.006」、「塩酸ピリドキシン0.05」、「L-アスバラギン酸カリウム1.0」、「アミノエチルスルホン酸0.5」及び「ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.1」を含有し、それらの合計は、0.05+0.006+0.05+1.0+0.5+0.1=1.706となり、甲24発明における(C)成分に該当する化合物の含有量の合計は1.706g/100mlであるから、本件特許発明10の「(C)成分の含有量が0.001?10w/v%である」ことに相当する。
そうすると、本件特許発明10と甲24発明とは、上記(ア-1)の一致点に加えて、「(C)成分の含有量が0.001?10w/v%である」点でも一致し、相違点はない。

(ク-2)小括
したがって、本件特許発明10は、甲第24号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

ケ 本件特許発明11、12について
(ケ-1)本件特許発明11、12と甲24発明との対比・判断
上記(ア-1)の検討を踏まえて、本件特許発明11、12と甲24発明とを対比すると、甲24発明がポリソルベート80を0.1g/100ml含有することは、本件特許発明11の「さらに、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる」こと、または、本件特許発明12の「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80からなる群から選択される少なくとも1種の含有量が0.05w/v%以上である」ことに相当する。
そうすると、本件特許発明11、12と甲24発明とは、上記(ア-1)の一致点に加えて、
「さらに、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる」点
または
「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80からなる群から選択される少なくとも1種の含有量が0.05w/v%以上である」点でも一致し、相違点はない。

(ケ-2)小括
したがって、本件特許発明11、12は、甲第24号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

コ 本件特許発明13について
(コ-1)本件特許発明13と甲24発明との対比・判断
上記(ア-1)の検討を踏まえて、本件特許発明13と甲24発明とを対比すると、甲24発明が「l-メントール」、「d-カンフル」、「d-ボルネオール」及び「エデト酸ナトリウム」を含有することは、本件特許発明13の「さらに、l-メントール、d-カンフル、メントン、クールミント、ハッカ油、ペパーミント油、d-ボルネオール、ゲラニオール、ユーカリ油、ベルガモット油及びエデト酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる」ことに相当する。
そうすると、本件特許発明13と甲24発明とは、上記(ア-1)の一致点に加えて、
「さらに、l-メントール、d-カンフル、メントン、クールミント、ハッカ油、ペパーミント油、d-ボルネオール、ゲラニオール、ユーカリ油、ベルガモット油及びエデト酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる」点
でも一致し、相違点はない。

(コ-2)小括
したがって、本件特許発明13は、甲第24号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)甲第46号証に基づいて
サ 本件特許発明1について
(サ-1)本件特許発明1と甲46発明との対比・判断
本件特許発明1と甲46発明とを対比すると、甲46発明の洗眼薬が眼科用水性組成物に該当することは明かであり、単位としてg/100mlとw/v%とは同等であるから、甲46発明の「塩酸ジフェンヒドラミン0.005(g/100ml)」及び「ホウ酸」、「ホウ砂」は、本件特許発明1の「(A)ジフェンヒドラミン0.0001?0.1w/v%」及び「(B)ホウ酸及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物」に相当し、甲46発明の「塩酸ナファゾリン」、「イプシロン-アミノカプロン酸」、「アラントイン」、「グリチルリチン酸二カリウム」、「シアノコバラミン」、「塩酸ピリドキシン」、「アミノエチルスルホン酸」、「コンドロイチン硫酸ナトリウム」の8種の成分は、いずれも本件特許発明1の(C)成分に該当し、甲46発明は(C)成分に該当する化合物を4種以上含有しているといえる。
そして、甲46発明の洗眼薬には、トロメタモール、トラニラストあるいはその薬理学的に許容される塩、のいずれも含有されていないことは明かである。

そうすると、本件特許発明1と甲46発明は、本件特許発明1の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。

(一致点)
「(A)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の化合物0.0001?0.1w/v%と、
(B)ホウ酸及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物と、
(C)塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリン、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも4種の化合物とを含有する、眼科用水性組成物(但し、さらに、トロメタモール、トラニラストあるいはその薬理学的に許容される塩、のいずれかを含有する眼科用水性組成物を除く)。」

してみると、両者に相違点はない。

(サ-2)小括
したがって、本件特許発明1は、甲第46号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

シ 本件特許発明2について
(シ-1)本件特許発明2と甲46発明との対比・判断
上記(サ-1)の検討を踏まえて、本件特許発明2と甲46発明とを対比すると、両者は、上記(サ-1)の一致点で一致し、次の点で一応相違する。

(相違点3)
本件特許発明2は「マルチドーズ型容器に収納されている」と特定されているのに対して、甲46発明は容器についての特定がない点。

相違点3について検討する。
甲第46号証((甲46a))に記載される「例えばリゾチームを含有する点眼薬では、……開封後は使用者が1ヶ月?数ヶ月にわたり継続的に使用する場合もあるため、プラスチック製遮光袋の補助的使用を推奨することで、光安定性の維持に努めている。しかし、このような包装材料による遮光手段は製造工程での安定性を担保できないのみならず、開封後の製剤適用部位での光分解、使用者の遮光袋の不使用や紛失の可能性もあり、必ずしも効果的な方法とはいえない。」との従来技術の問題点からみて、甲46発明が、開封後に継続的に使用する場合(すなわちマルチドーズ)を包含していることは明らかであり、甲46号証には「スクイズ性及び携帯性に優れるプラスチック製容器のように、繰り返し使用可能な形態で容器に包装又は収容する」((甲46c))なる記載もあることから、甲46発明の洗眼薬は繰り返し使用可能な容器(すなわちマルチドーズ型容器)に収納される態様を包含しているといえる。
よって、相違点3は実質的な相違点ではない。

(シ-2)小括
したがって、本件特許発明2は、甲第46号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

ス 本件特許発明3について
(ス-1)本件特許発明3と甲46発明との対比・判断
上記(サ-1)の検討を踏まえて、本件特許発明3と甲46発明とを対比すると、甲46発明の「塩酸ジフェンヒドラミン0.005(g/100ml)」は、本件特許発明3の「(A)成分として、ジフェンヒドラミン及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物の含有量が0.005?0.05w/v%」であることに相当するので、本件特許発明4と甲46発明とは、次の点で一致し、
(一致点)
「(A)成分として、ジフェンヒドラミン及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物の含有量が0.005?0.05w/v%と、
(B)ホウ酸及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物と、
(C)塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリン、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも4種の化合物とを含有する、眼科用水性組成物(但し、さらに、トロメタモール、トラニラストあるいはその薬理学的に許容される塩、のいずれかを含有する眼科用水性組成物を除く)。」
相違点はない。

(ス-2)小括
したがって、本件特許発明3は、甲第46号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

セ 本件特許発明5について
(セ-1)本件特許発明5と甲46発明との対比・判断
上記(サ-1)の検討を踏まえて、本件特許発明5と甲46発明とを対比すると、甲46発明は「ホウ酸」及び「ホウ砂」を含有するので、本件特許発明5と甲46発明とは、次の点で一致し、
(一致点)
「(A)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の化合物0.0001?0.1w/v%と、
(B)成分として、ホウ酸とホウ砂と、
(C)塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリン、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも4種の化合物とを含有する、眼科用水性組成物(但し、さらに、トロメタモール、トラニラストあるいはその薬理学的に許容される塩、のいずれかを含有する眼科用水性組成物を除く)。」
相違点はない。

(セ-2)小括
したがって、本件特許発明5は、甲第46号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

ソ 本件特許発明6について
(ソ-1)本件特許発明6と甲46発明との対比・判断
上記(サ-1)の検討を踏まえて、本件特許発明6と甲46発明とを対比すると、甲46発明は(C)成分に該当する化合物を8種含有するので、本件特許発明6と甲46発明とは、次の点で一致し、
(一致点)
「(A)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の化合物0.0001?0.1w/v%と、
(B)ホウ酸及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物と、
(C)成分として、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリン、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも6種を含有する、眼科用水性組成物(但し、さらに、トロメタモール、トラニラストあるいはその薬理学的に許容される塩、のいずれかを含有する眼科用水性組成物を除く)。」
相違点はない。

(ソ-2)小括
したがって、本件特許発明6は、甲第46号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

タ 本件特許発明7について
(タ-1)本件特許発明7と甲46発明との対比・判断
上記(サ-1)の検討を踏まえて、本件特許発明7と甲46発明とを対比すると、「アルキルジアミノエチルグリシン」はアルキルポリアミノエチルグリシンの一種であり、「濃塩化ベンザルコニウム液50」は塩化ベンザルコニウムであるから、甲46発明が「アルキルジアミノエチルグリシン」と「濃塩化ベンザルコニウム液50」を含有することは、本件特許発明7の「さらに、アルキルポリアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ポリヘキサメチレンビグアニド、グローキルからなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる」ことに相当する。
そうすると、本件特許発明7と甲46発明とは、上記(サ-1)の一致点に加えて、
「さらに、アルキルポリアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ポリヘキサメチレンビグアニド、グローキルからなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる」点でも一致し、相違点はない。

(タ-2)小括
したがって、本件特許発明7は、甲第46号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

チ 本件特許発明8について
(チ-1)本件特許発明8と甲46発明との対比・判断
上記(サ-1)の検討を踏まえて、本件特許発明8と甲46発明とを対比すると、甲46発明は洗眼薬であるから、本件特許発明8と甲46発明とは、上記(サ-1)の一致点で一致し、相違点はない。

(チ-2)小括
したがって、本件特許発明8は、甲第46号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

ツ 本件特許発明9について
(ツ-1)本件特許発明9と甲46発明との対比・判断
上記(サ-1)の検討を踏まえて、本件特許発明9と甲46発明とを対比すると両者は、上記(サ-1)の一致点で一致し、次の点で一応相違する。

(相違点4)
本件特許発明9は「コンタクトレンズ装用中に使用できる点眼剤または洗眼剤」と特定されているのに対して、甲46発明はそのような特定のない「洗眼薬」である点。

相違点4について検討する。
甲第46号証((甲46b))の「本発明の水性組成物は、……例えば、眼科用組成物(点眼薬(コンタクトレンズ装用中に使用できる点眼薬を含む)、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬(コンタクトレンズ装用中に使用できる洗眼薬を含む)、コンタクトレンズ用剤(洗浄液、保存液、殺菌液、マルチパーパスソリューションなど)など)……が例示できる。」との記載によれば、甲46発明の洗眼薬もコンタクトレンズ装用中にも使用できることは明かである。
よって、相違点4は実質的な相違点ではない。

(ツ-2)小括
したがって、本件特許発明9は、甲第46号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

テ 本件特許発明10について
(テ-1)本件特許発明10と甲46発明との対比・判断
上記(サ-1)の検討を踏まえて、本件特許発明10と甲46発明とを対比すると、甲46発明は(C)成分に該当する化合物である「塩酸ナファゾリン0.0003」、「イプシロン-アミノカプロン酸0.05」、「アラントイン0.03」、「グリチルリチン酸二カリウム0.025」、「シアノコバラミン0.002」、「塩酸ピリドキシン0.01」、「アミノエチルスルホン酸0.1」及び「コンドロイチン硫酸ナトリウム0.05」を含有し、それらの合計は、0.0003+0.05+0.03+0.025+0.002+0.1+0.05=0.2723となり、甲24発明における(C)成分に該当する化合物の含有量の合計は0.2723g/100mlであるから、本件特許発明10の「(C)成分の含有量が0.001?10w/v%である」ことに相当する。
そうすると、本件特許発明10と甲46発明とは、上記(サ-1)の一致点に加えて、「(C)成分の含有量が0.001?10w/v%である」点でも一致し、相違点はない。

(テ-2)小括
したがって、本件特許発明10は、甲第46号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

ト 本件特許発明11、12について
(ト-1)本件特許発明11、12と甲46発明との対比・判断
上記(サ-1)の検討を踏まえて、本件特許発明11、12と甲46発明とを対比すると、甲46発明がポリソルベート80を0.10g/100ml含有することは、本件特許発明11の「さらに、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる」こと、または、本件特許発明12の「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80からなる群から選択される少なくとも1種の含有量が0.05w/v%以上である」ことに相当する。
そうすると、本件特許発明11、12と甲46発明とは、上記(サ-1)の一致点に加えて、
「さらに、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる」点
または
「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80からなる群から選択される少なくとも1種の含有量が0.05w/v%以上である」点でも一致し、相違点はない。

(ト-2)小括
したがって、本件特許発明11、12は、甲第46号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

ナ 本件特許発明13について
(ナ-1)本件特許発明13と甲46発明との対比・判断
上記(サ-1)の検討を踏まえて、本件特許発明13と甲46発明とを対比すると、甲46発明が「ゲラニオール」及び「ユーカリ油」を含有することは、本件特許発明13の「さらに、l-メントール、d-カンフル、メントン、クールミント、ハッカ油、ペパーミント油、d-ボルネオール、ゲラニオール、ユーカリ油、ベルガモット油及びエデト酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる」ことに相当する。
そうすると、本件特許発明13と甲46発明とは、上記(サ-1)の一致点に加えて、
「さらに、l-メントール、d-カンフル、メントン、クールミント、ハッカ油、ペパーミント油、d-ボルネオール、ゲラニオール、ユーカリ油、ベルガモット油及びエデト酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる」点
でも一致し、相違点はない。

(ナ-2)小括
したがって、本件特許発明13は、甲第46号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(3)無効理由3についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1、2、4?6、8?13は、甲第24号証に記載された発明であり、本件特許発明1?3、5?13は、甲第46号証に記載された発明であるから、いずれも特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるので、本件特許発明1?13に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

2 無効理由6に関して
(1)本件特許発明14について
本件特許発明14は「眼科用水性組成物の防腐効果を増強する方法」に関するものであるが、請求項14には、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを含有させることを特徴とする、「眼科用水性組成物の防腐効果を増強する方法」と記載されているため、請求項14の記載を字句どおり解釈すると、(A)?(C)成分を含有させる、すなわち、(A)?(C)成分を「眼科用水性組成物」に加える、ことにより「眼科用水性組成物」にもともと備わる「防腐効果」を増強する方法と解釈される。
しかしながら、「眼科用水性組成物」にもともと備わる「防腐効果」とはどのようなものか不明であり、何を基準にして増強させるのか不明である。
そこで、本願特許明細書をみると、
「【0012】
本発明の防腐剤は、(A)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン又はこれらの塩から選択される少なくとも1種の化合物と、(B)ホウ酸及び/またはホウ酸の塩を有効成分とするものであり、安全性が高く、優れた防腐作用を発揮することができ、従来の眼科用剤に用いられている防腐剤の代替品として有用である。
「【0013】
本発明の防腐剤は、(A)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン又はこれらの塩から選択される少なくとも1種の化合物を必須成分とするものである。……また、かかる防腐剤を配合した水性組成物は、安全性が高く、しかも効果的に、微生物の繁殖が抑制され、腐敗が防止されている。特に本発明の防腐剤を配合した眼科用剤は、コンタクトレンズに対して防腐剤が吸着することもなく、酸素透過性ハードコンタクトレンズ又はソフトコンタクトレンズに使用される眼科用剤に有用である。」
「【0016】
本発明の防腐剤は、(B)ホウ酸及び/またはホウ酸の塩を必須成分とするものである。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。」
「【0020】
本発明の防腐剤は、水性組成物用の防腐剤として水性組成物に配合されて、それによって該水性組成物に防腐作用を備えさせることができる。」
なる記載があり、
(C)成分については、【0033】?【0043】に、眼科用組成物に一般的に配合される各種成分として記載されている。
かかる記載によれば、(A)成分と(B)成分とを組み合わせることにより防腐効果を得るものと理解され、そして、本件特許明細書全体をみても、(C)成分は眼科用組成物に一般的に配合される各種成分を列記したものであって、(C)成分として挙げられている物質を添加することにより、(A)成分および(B)成分を含む眼科用水性組成物の防腐効果を増強させる機能を有するものとはいえない。
そうすると、(C)成分を含有させることを特徴とする、眼科用水性組成物の防腐効果を増強する方法との特定の技術的意義が理解できず、請求項14の記載は明確であるとはいえない。
したがって、本件特許発明14は明確であるとはいえない。

(2)本件特許発明15?18について、
本件特許発明15?18は、請求項14を直接的または間接的に引用することにより特定されるものであるから、上記(1)で指摘したのと同様の理由で明確であるとはいえない。

(3)無効理由6についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明14?18は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、本件特許発明14?18に係る特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

第6 結び
以上のとおり、本件特許発明1?13に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであり、本件特許発明14?18に係る特許は、同第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものであるから、本件特許発明1?18についての特許は、同法第123条第1項第2号および第4号に該当し、その余の無効理由について検討するまでもなく、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-22 
結審通知日 2016-01-26 
審決日 2016-02-08 
出願番号 特願2013-160896(P2013-160896)
審決分類 P 1 113・ 537- Z (A61K)
P 1 113・ 113- Z (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 文彦  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 小川 慶子
齊藤 光子
登録日 2014-07-25 
登録番号 特許第5584336号(P5584336)
発明の名称 防腐剤及びこれを含有する水性組成物  
代理人 細田 芳徳  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ