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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1312838
審判番号 不服2015-5373  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-20 
確定日 2016-03-24 
事件の表示 特願2011-196948「デジタルデータの情報埋め込み装置及び埋込み情報検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日出願公開、特開2013- 58965〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1.手続
本願は、平成23年9月9日の出願であって、特許法第30条第2項新規性喪失の例外適用の申請を伴うものであり、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成26年 8月 5日(起案日)
手続補正 :平成26年 8月28日
拒絶査定 :平成26年12月16日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成27年 3月20日
手続補正 :平成27年 3月20日
前置審査報告 :平成27年 5月14日
上申書 :平成27年 6月19日

2.査定
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

本願の請求項1ないし請求項8に係る発明は、下記の刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


刊行物1:特開2001-94543号公報
刊行物2:特開2009-260717号公報

第2 審判請求時の補正の適否

《結論》
平成27年3月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を認める。

《理由》
1.補正の内容
平成27年3月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正として、次の補正事項1ないし5からなるものである。

補正事項1
請求項1の「前記誤り訂正符号化された原データに誤り訂正符号化された埋込み情報を誤りとして埋め込む」(補正前)とある記載を、「前記誤り訂正符号化された原データに前記誤り訂正符号化された埋込み情報を誤りとして埋め込む」(補正後)と補正する。

補正事項2
請求項3の「誤り訂正符号化された埋込み情報を埋め込む」(補正前)とある記載を、「前記誤り訂正符号化された埋込み情報を埋め込む」(補正後)と補正する。

補正事項3
請求項4の「復元された符号化埋込み情報に対して誤り訂正を行って前記埋込み情報を復元する」(補正前)とある記載を、「前記復元された符号化埋込み情報に対して誤り訂正を行って前記埋込み情報を復元する」(補正後)と補正する。

補正事項4
請求項7の「前記誤り訂正符号化された原データに誤り訂正符号化された埋込み情報を誤りとして埋め込む」(補正前)とある記載を、「前記誤り訂正符号化された原データに前記誤り訂正符号化された埋込み情報を誤りとして埋め込む」(補正後)と補正する。

補正事項5
請求項8の「復元された符号化埋込み情報に対して誤り訂正を行って前記埋込み情報を復元する」(補正前)とある記載を、「前記復元された符号化埋込み情報に対して誤り訂正を行って前記埋込み情報を復元する」(補正後)と補正する。

2.本件補正の適合性
(2-1)補正の範囲
上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書の記載に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

(2-2)補正の目的
(2-2-1)補正事項1、補正事項2、補正事項4について
上記補正事項は、上記補正事項に係る記載の前に、「埋込み情報に誤り訂正符号化(の処理)を遂行して出力する」の記載(以下、先の記載1という。)があるから、補正前の「前記誤り訂正符号化された原データに誤り訂正符号化された埋込み情報を誤りとして埋め込む」の記載の「誤り訂正符号化された埋込み情報」は、先の記載で特定された「埋込み情報に誤り訂正符号化(の処理)を遂行して出力」された「誤り訂正符号化された埋込み情報」であることは明白であり、これ以外の「誤り訂正符号化された埋込み情報」ではないから、補正後の「前記誤り訂正符号化された原データに前記誤り訂正符号化された埋込み情報を誤りとして埋め込む」の記載が正しい記載であるといえる。
したがって、上記補正事項は、誤記の訂正を目的とする補正に該当する。

(2-2-2)補正事項3、補正事項5について
上記補正事項は、上記補正事項に係る記載の前に、「符号化埋込み情報を復元する」の記載(以下、先の記載2という。)があるから、補正前の「復元された符号化埋込み情報に対して誤り訂正を行って前記埋込み情報を復元する」の記載の「復元された符号化埋込み情報」は、先の記載で特定された「復元された符号化埋込み情報」であることは明白であり、これ以外の「復元された符号化埋込み情報」ではないから、補正後の「前記復元された符号化埋込み情報」の記載が正しい記載であるといえる。
したがって、上記補正事項は、誤記の訂正を目的とする補正に該当する。

(2-2-3)まとめ(補正の目的)
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第3号で規定する誤記の訂正を目的とする補正に該当する。

(2-3)まとめ(補正の適否)
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項の各規定に適合する。

よって、結論のとおり本件補正を認める。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成27年3月20日付けの手続補正は上記のとおり適法なものであるから、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成27年3月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明のとおりであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年3月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
((A)ないし(E)は合議体が付与した。以下、それぞれ、構成要件(A)、構成要件(B)・・・、という。)

【請求項1】
(A)情報埋め込み対象であるデジタルの原データに情報を埋め込むための装置であって、
(B)前記原データに誤り訂正符号化の処理を遂行する第1の誤り訂正符号化部と、
(C)埋込み情報に誤り訂正符号化の処理を遂行して出力する第2の誤り訂正符号化部と、
(D)前記誤り訂正符号化された原データに前記誤り訂正符号化された埋込み情報を誤りとして埋め込む情報埋込部と、
(E)を備えることを特徴とするデジタルデータの情報埋め込み装置。

2.刊行物の記載
(1)刊行物1(特開2001-94543号公報)の記載
審査官が拒絶の査定で引用した刊行物1には、以下のとおりの記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、暗号用キー情報、認証用キー情報、ID情報等のいわゆるキー情報を放送系のメディア(CS)のような通信媒体、伝送媒体を介して伝送したり、あるいはCD,MO,MD,DVD,DAT,FD,HD,半導体メモリ等の静的記録媒体に記録する際に、送信・記録されるデータと共にキー情報を同時に伝送又は記録するようにしたキー情報伝送・記録方式に関する。」

「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の方式のうち前者の方式は、キー情報Kの在処が簡単に分かってしまい、キー情報Kが解読され易いという問題がある。また後者の方式でも、キー情報Kの埋込位置がパリティ情報内の所定の位置に限定されているため、誤り訂正前の信号を解析すれば、キー情報Kを比較的抽出しやすいという問題がある。
【0006】この発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、キー情報の在処を明らかにすることなく、且つデータ品位も落とさずにデータと共にキー情報を伝送又は記録することができるキー情報伝送・記録方式を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明に係る第1のキー情報伝送・記録方式は、データの暗号化又は認証等に使用されるキー情報を前記データと共に伝送又は記録する際のキー情報伝送・記録方式において、送信・記録側で前記データの誤り訂正のための剰余を生成して前記データに付加すると共に、前記キー情報を復号可能な誤りとして前記データの任意の部分に付加して伝送又は記録し、受信・再生側で前記剰余を用いた前記データの誤り訂正により誤りの位置と値を計算して前記キー情報を分離するようにしたことを特徴とする。
【0008】この発明によれば、送信・記録側でデータの誤り訂正のための剰余を生成してデータに付加すると共に、暗号用キー情報を復元可能な誤りとして前記データに付加して伝送又は記録するようにしているので、受信・再生側では、誤り訂正処理の過程以外でキー情報を認識することはできない。また、キー情報は、データ中にエラーとして付加されているので、エラー訂正後のデータには現れない。このため、キー情報の在処を見つけ出すことは困難であり、キー情報の秘密性が高まる。また、この発明によれば、データ中に復元可能なエラーとしてキー情報が付加されているので、データ品位を些かも低下させることはない。」

「【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施例に係るキー情報伝送・記録方式を適用したディジタルデータの符号化復号システムの構成を示すブロック図である。このシステムは、ディジタルデータを符号化する符号化装置1と、符号化されたディジタルデータを復号する復号装置2と、両者の間でディジタルデータを受け渡すメディア3とにより構成されている。ここでメディア3は、無線通信網、有線通信ケーブル等の通信媒体、伝送媒体であるか、又はCD,MO,MD,DVD,DAT,FD,HD,半導体メモリ等の記録媒体である。メディア3が、通信媒体、伝送媒体の場合、符号化装置1は送信装置、復号装置2は受信装置に備えられる。また、メディア3が記録媒体の場合、符号化装置1は記録装置、復号装置2は再生装置に備えられる。すなわち、符号化装置1はこの発明における送信・記録側に相当し、復号装置2は受信・再生側に相当する。
【0014】符号化装置1に入力されたディジタルデータD(x)及び伝送用キー情報は、ECC付加部13及びキー情報記憶部12にそれぞれ供給される。ECC付加部13は、入力データから後述する演算により剰余データR(x)を求め、これをエラー訂正用の誤り訂正符号としてデータに付加する。剰余データR(x)が付加されたディジタルデータF(x)は、キー情報付加部14に供給されている。キー情報付加部14では、ディジタルデータF(x)のデータD(x)の任意の部分にキー情報記憶部12からのキー情報K1,K2を付加して誤りを含んだディジタルデータF′(x)を生成し、これをメディア3を介して伝送するか、又はメディア3に記録する。
【0015】一方、復号装置2では、メディア3を介して受信された、又はメディア3から読み出されたディジタルデータF′(x)がエラー訂正部21に供給されてエラー訂正処理により元のデータD(x)が求められる。このエラー訂正の過程で、データD(x)のエラー発生箇所が明らかになる。このエラー発生の位置と値のデータからキー情報K1,K2が分離抽出されて出力される。
【0016】次に、このように構成された符号化復号化システムにおけるキー情報の伝送・記録方法について更に詳しく説明する。エラー訂正は、1byteのデータを元として扱う、8bits、256元(0,α,α^(2),…,α^(255))(α:原始元)のガロア体GF(2^(8))において、剰余(Parity)生成のための生成多項式Gp(x)を
【0017】
【数1】(略)
【0018】とする、リードソロモン符号によって行われる。すなわち、図2に示すように、データD(x)を、128Bytes毎に区切り、各128Bytesのデータを剰余の生成多項式Gp(x)で割り、その剰余データR(x)として4Bytesを付加することによって、132Bytesのデータを伝送データF(x)とするリードソロモン符号RS(132,128,5)を例にとる。
【0019】データD(x)及びこのデータD(x)からECC付加部13で生成される剰余データR(x)は、それぞれ次のような多項式で表される。
【0020】
【数2】(略)
【0021】また、ECC付加部13から出力されるデータF(x)の多項式は、
【0022】
【数3】F(x)=D(x)*x^(4)+R(x)
【0023】となる。このリードソロモン符号は、距離5の符号であるため、最大2個までのエラー(消失)を検出訂正することができる。このため、2BytesのキーデータK1,K2をエラーとしてデータD(x)に加算可能となる。従って、データF(x)の中の128BytesのデータD(x)の部分のうち前半の64Bytesの任意データに1ByteのキーデータK1を加算し、後半64Bytesの任意データに1ByteのキーデータK2を加算して、F′(x)とする。キーデータK1,K2の多項式をK(x)とすると、次のようになる。
【0024】
【数4】K(x)=K1*x^(n)+K2*x^(m)
F′(x)=F(x)+K(x)
【0025】このF′(x)を伝送データとして送信する。なお、キーデータK1,K2を前半、後半に分けて加算する理由は、キーデータが0元の場合、1重エラーとなり、K1が0元か、K2が0元か区別が付かなくなるので、これを防止するためである。K1,K2共に0元の場合は、エラー訂正計算時、エラー無しとなり、K1,K2共に0元と分かる。
【0026】復号装置2側では、エラー訂正部21において、所定の誤り訂正手法によって、キーデータK(x)の載っている場所と、キーデータK(x)とを計算によって求める。いま、受信データ又は読出データを、
【0027】
【数5】(略)
【0028】とし、X=1,x=α,x=α^(2),x=α^(3)を代入した計算値を、シンドロームs0,s1,s2,s3とすると、、
【0029】
【数6】s0=K1+K2
s1=K1*α^(n)+K2*α^(m)
s2=K1*α^(2n)+K2*α^(2m)
s3=K1*α^(3n)+K2*α^(3m)
【0030】この連立方程式を解くことによって、ロケーションデータn,m及びキーデータK1,K2を求めることができる。また、キーデータを加算した、元データDn,Dmは、次のようにキーデータを減算(加算)することによって元に戻すことができる。
【0031】
【数7】Dn=Sn+K1
Dm=Sm+K2
【0032】このように、この実施例によれば、データ上の任意の箇所に付加されたキーデータK1,K2を、受信したデータだけからその位置と値を特定することができる。図2に示すように、キーデータK1,K2は、データD(x)の部分の第nバイト目と第mバイト目にエラーとして付加されており、このエラーの部分はエラー訂正で復元されるので、データD(x)の部分が欠落することはなく、データ品位を些かも落とさない。」

「【0045】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、受信・再生側では、誤り訂正処理の過程以外でキー情報の位置および値を認識することはできず、キー情報の秘密性が高まる。また、この発明によれば、データ中に復元可能なエラーとしてキー情報が付加されているので、データ品位を些かも低下させることはない。」

(2)刊行物2(特開2009-260717号公報)の記載
審査官が拒絶の査定で引用した刊行物2には、以下のとおりの記載がある。

「【0002】
地紋電子透かしとは、文書に細かな幾何学的な図形を重畳することで、人間の目には分からない情報を埋め込む技術である。例えば、秘密文書が流出したとき、流出した秘密文書の印刷者等の特定に用いることができる。また、地紋電子透かしを施しても、品質の悪いプリンタからの出力文書や、コピーを繰り返して品質が劣化した文書である場合、地紋電子透かしの情報を完全な情報として復元できないことが多い。このため、誤り訂正符号を用いて誤検出率を低下させる手法が用いられる(例えば、特許文献1参照)。」

「【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、白黒等の文書においても地紋電子透かしデータを正確に検出することができる電子透かし埋め込み装置、電子透かし検出装置及び方法並びに上記装置としてコンピュータを機能させるプログラムを得ることを目的とする。」

「【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による電子透かし埋め込み装置及び電子透かし検出装置の各構成とその周辺機器を示す図である。地紋電子透かしの埋め込み側となる電子透かし埋め込み装置1は、誤り訂正符号化部2、地紋データ埋め込み部3、埋め込み位置決定部4、ブロック分割部5及び原文書領域検出部6を備える。なお、以降では、原文書として白黒2色の文書を扱う場合を例に挙げて説明する。
【0011】
誤り訂正符号化部2は、地紋電子透かしとして原文書に埋め込みたい埋め込み情報aを入力し、埋め込み情報aに誤り訂正符号化による冗長ビットを付加して埋め込みデータbを生成する。埋め込み情報aとしては、原文書の著作権者、配布先、作成日等の原文書を取り扱う権限のある者を特定する情報などが挙げられる。
【0012】
地紋データ埋め込み部(埋め込み部)3は、原文書をビットマップ画像とした原文書ビットマップeに対し、埋め込み位置決定部4で決定された埋め込み位置dに、埋め込みデータbを構成するビットデータを地紋として埋め込む。埋め込み位置決定部4は、例えば地紋電子透かしを埋め込む権限がある者により決定された鍵情報cに基づいて、埋め込みデータbを構成するビットデータの並び順を変更し、地紋としてどのブロックにどのビットデータを埋め込むのかの埋め込み位置dを決定する。」

「【0016】
実施の形態1による電子透かし検出装置10は、攻撃後地紋文書hをスキャナ9で読み取って得られる地紋電子透かし検出用の検出文書ビットマップiを入力し、地紋電子透かしデータを検出する。電子透かし検出装置10は、その構成として、位置合わせ部11、地紋検出部12及び誤り訂正復号部13を備える。」

「【0024】
次に動作について説明する。
先ず、電子透かし埋め込み装置1による地紋電子透かしの埋め込み動作を説明する。
電子透かし埋め込み装置1に入力された埋め込み情報aは、装置1内の誤り訂正符号化部2に入力される。誤り訂正符号化部2は、埋め込み情報aに誤り訂正符号化による冗長ビットを付加して埋め込みデータbを生成する。」

「【0073】
また、地紋検出部12には、電子透かし埋め込み装置1の埋め込み位置決定部4で決定された埋め込み位置dが登録されている。地紋検出部12は、埋め込み位置dに従って、各ブロックで検出したデジタルデータの並べて埋め込みデータbを復元し、検出データjとして誤り訂正復号部13へ出力する。誤り訂正復号部13では、地紋検出部12からの検出データjを誤り訂正復号して地紋電子透かしデータの検出情報kを出力する。」

3.刊行物に記載された発明
以上の記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。

(1)刊行物1の段落【0013】,【0014】,図1,2等の記載によれば、符号化装置1に入力されたディジタルデータD(x)は、符号化装置で各種の処理が行われ、最終的に、キー情報K1,K2を付加して誤りを含んだディジタルデータF′(x)を生成しているから、刊行物1には、「ディジタルの入力データD(x)にキー情報K1,K2を付加する符号化装置1」が記載されている。

(2)刊行物1の段落【0014】,図1,2等の記載によれば、上記符号化装置1は、ECC付加部13で、入力データを演算することにより剰余データR(x)を求め、これをエラー訂正用の誤り訂正符号としてデータに付加し、剰余データR(x)が付加されたディジタルデータF(x)としているから、刊行物1の符号化装置1は「入力データD(x)から演算により剰余データR(x)を求め、これをエラー訂正用の誤り訂正符号として入力データD(x)に付加し、ディジタルデータF(x)を生成するECC付加部13」を備えることが記載されている。

(3)刊行物1の段落【0008】,【0014】,図1,2等の記載によれば、刊行物1の符号化装置1は、キー情報付加部14で、ディジタルデータF(x)のデータD(x)の任意の部分にキー情報記憶部12からのキー情報K1,K2を付加して誤りを含んだディジタルデータF′(x)を生成しているから、刊行物1の符号化装置1は「ディジタルデータF(x)の入力データD(x)の任意の部分に誤りとしてキー情報K1,K2を付加して誤りを含んだディジタルデータF′(x)を生成するキー情報付加部14」を備えることが記載されている。

(4)まとめ
上記(1)ないし(3)によると、刊行物1発明として、以下のとおりのものを認定することができる。
((ア)ないし(エ)は合議体が付与した。以下、それぞれ、構成要件(ア)、構成要件(イ)・・・、という。)

(ア)ディジタルの入力データD(x)にキー情報K1,K2を付加する符号化装置1であって、
(イ)ディジタルの入力データD(x)から演算により剰余データR(x)を求め、これをエラー訂正用の誤り訂正符号として入力データD(x)に付加してディジタルデータF(x)とするECC付加部13と、
(ウ)誤り訂正符号が付加されたディジタルデータF(x)の入力データD(x)の任意の部分に誤りとしてキー情報K1,K2を付加して誤りを含んだディジタルデータF′(x)を生成するキー情報付加部14と、
(エ)を備えたディジタルデータを符号化する符号化装置1。

4.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(1)本願発明の構成要件(A)と刊行物1発明の構成要件(ア)とを対比する。
刊行物1発明の「ディジタルの入力データD(x)にキー情報K1,K2を付加する符号化装置1」は、ディジタルの入力データD(x)の任意の部分に誤りとしてキー情報K1,K2を付加して誤りを含んだディジタルデータF′(x)を生成するものであり、これは、ディジタルの入力データD(x)の任意の部分に誤りとしてキー情報K1,K2を埋め込んでいるといえるから、その「ディジタルの入力データD(x)」は、本願発明の「情報埋め込み対象であるデジタルの原データ」に対応する。
そうすると、刊行物1発明は、本願発明の「情報埋め込み対象であるデジタルの原データに情報を埋め込むための装置」と相違しない。

(2)本願発明の構成要件(B)と刊行物1発明の構成要件(イ)とを対比する。
刊行物1発明の「ディジタルの入力データD(x)から演算により剰余データR(x)を求め、これをエラー訂正用の誤り訂正符号として入力データD(x)に付加してディジタルデータF(x)とするECC付加部13」は、入力データD(x)に誤り訂正符号化の処理を遂行するものといえ、本願発明の「前記原データに誤り訂正符号化の処理を遂行する第1の誤り訂正符号化部」に対応する。

(3)本願発明の構成要件(C)と刊行物1発明とを対比する。
上記(1)で検討したように、刊行物1発明のキー情報K1、K2は、ディジタルの入力データD(x)に埋め込む情報(埋込み情報)といえるが、キー情報K1,K2に誤り訂正符号化の処理を遂行するものではなく、「埋込み情報に誤り訂正符号化の処理を遂行して出力する第2の誤り訂正符号化部」を備えていない点で、本願発明と相違する。

(4)本願発明の構成要件(D)と刊行物1発明の構成要件(ウ)とを対比する。
刊行物1発明の「誤り訂正符号が付加されたディジタルデータF(x)の入力データD(x)の任意の部分に誤りとしてキー情報K1,K2を付加して誤りを含んだディジタルデータF′(x)を生成するキー情報付加部14」は、誤り訂正符号が付加されたディジタルデータF(x)の入力データD(x)に、キー情報K1,K2を誤りとして埋め込むものといえ、その点で、本願発明の「前記誤り訂正符号化された原データに埋込み情報を誤りとして埋め込む情報埋込部」と相違しない。
もっとも、本願発明では、埋込み情報が、「前記誤り訂正符号化された埋込み情報」であるのに対し、刊行物1発明では、埋込み情報に対して誤り訂正をしていないからこの点で相違する。

(5)本願発明の構成要件(E)と刊行物1発明の構成要件(エ)とを対比する。
刊行物1発明の「ディジタルデータを符号化する符号化装置1」は、ディジタルデータD(x)の任意の部分にキー情報K1,K2を付加して埋め込むものといえ、本願発明の「デジタルデータの情報埋め込み装置」と相違しない。

(6)まとめ(一致点・相違点)
以上(1)ないし(5)の対比結果を踏まえると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の一致点で一致し相違点で相違する。

(一致点)
情報埋め込み対象であるデジタルの原データに情報を埋め込むための装置であって、
前記原データに誤り訂正符号化の処理を遂行する第1の誤り訂正符号化部と、
前記誤り訂正符号化された原データに埋込み情報を誤りとして埋め込む情報埋込部と、
を備えることを特徴とするデジタルデータの情報埋め込み装置。

(相違点)
本願発明では、「埋込み情報に誤り訂正符号化の処理を遂行して出力する第2の誤り訂正符号化部」を備え、埋込み情報は「前記誤り訂正符号化された埋込み情報」であるのに対し、刊行物1発明では、「埋込み情報に誤り訂正符号化の処理を遂行して出力する第2の誤り訂正符号化部」を備えず、埋込み情報は、「前記誤り訂正符号化された埋込み情報」ではない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
上記刊行物2(特開2009-260717号公報)の段落【0002】,【0010】,【0011】,【0012】,【0016】,【0024】,【0073】,図1等の記載によれば、刊行物2には、電子透かし埋め込み装置1では、地紋電子透かしの情報を完全な情報として復元できるように、誤り訂正符号化部2において、埋め込み情報aに誤り訂正符号化による冗長ビットを付加して埋め込みデータbを生成し、その埋め込みデータbを原文書に埋め込み、電子透かし検出装置10では、地紋検出部12で誤り訂正符号化された埋め込みデータbを復元し、検出データjとして誤り訂正復号部13へ出力し、検出データjを誤り訂正復号して完全な地紋電子透かしデータkを復元することが記載されている。
このように、ディジタルデータの情報埋め込み装置において、埋め込み情報に誤り訂正符号化の処理を遂行する誤り訂正符号部を設け、その誤り訂正符号化された埋め込み情報を原データに埋め込み、検出装置で、その誤り訂正符号化された埋め込み情報を取り出し、その取り出された誤り訂正符号化された埋め込み情報から誤り訂正復号部で誤りを訂正し完全な情報として復元する技術は、本願出願前の周知技術といえる(さらに必要ならば、特表2010-507109公報の段落【0017】等、特開2004-282677号公報の段落【0058】等、特開2000-106624の段落【0078】等参照)。
そうすると、刊行物1発明において、埋込み情報を完全な情報として復元するために、埋込み情報(キー情報K1,K2)に誤り訂正符号化の処理を遂行して、その誤り訂正符号化された埋込み情報(キー情報K1,K2)を、誤り訂正符号化された原データに誤りとして埋め込むことによって、検出装置で取り出された誤り訂正符号化された埋込み情報から誤り訂正復号部で誤りを訂正し完全な情報として復元することは当業者が容易に想到できることである。
すなわち、刊行物1発明において、「埋込み情報に誤り訂正符号化の処理を遂行して出力する第2の誤り訂正符号化部」を備え、埋込み情報を「前記誤り訂正符号化された埋込み情報」とすることは当業者が容易に想到しえたことである。

(請求書に記載された請求人の意見に対する見解)
請求人は、請求書にて、概略以下のとおりの主張をしている。
ア.「すなわち、情報埋め込み対象の原データの欠損を必然的に生じさせる地紋電子透かしデータの正確な検出を課題とする引用文献2に記載された発明は、情報埋め込み対象の原データを欠損させることなく埋込み情報を埋込及び抽出することを課題とする本願の請求項1及び4に係る発明とは課題が異なるばかりか、逆のものであることから、引用文献2に記載の「地紋電子透かしデータ」から、本願の請求項1及び4に係る発明の誤り訂正符号化された原データに「誤り」として埋め込まれる、誤り訂正符号化された埋込み情報を想到することには阻害要因が在するというべきです。」

イ.「引用文献1に記載された発明に、引用文献2に記載の「地紋電子透かし」を適用すれば、幾何学的な図形が重畳されることにより、埋め込み対称のデータ品位が落ちてしまい、引用文献1に記載された発明の本来の目的を実現できなくなることは明らかであることから、引用文献1に記載された発明に、引用文献2に記載の「地紋電子透かし」を適用することには、阻害要因があるというべきです」、

ウ.「符号化埋込み情報を正しく復号できれば、符号化埋込み情報付きデータに符号化埋込み情報を加算することで、符号化埋込み情報が除去された誤り訂正符号化データを得ることができます。そして、符号化埋込み情報が除去された誤り訂正符号化データに含まれる誤り、すなわち符号化埋込み情報以外の誤りが2個以下であれば、原データの持つ誤り訂正能力を利用することにより、埋込み情報のみならず、原データをも正しく復号することができます。」

(ア.、イ.に対する見解)
刊行物1発明では、キー情報(埋込み情報)を復号化側で抽出することが行われており、一方各種の情報埋め込み手法において、上記抽出すべきキー情報に対して、伝送過程で生じる誤りを訂正する構成を付加することは、刊行物2ないし刊行物4に記載されるとおり本願出願前周知の事項であるから、刊行物1発明における情報埋め込みを行う符号化装置においても、上記抽出すべきキー情報について誤りがないように、誤り訂正を行おうとすることは当業者が容易に想起しえたことであり、上記主張は失当である。

(ウ.に対する見解)
まず、埋込み情報がビット列のどの位置にあるか特定することができなければ、どのビットが埋込み情報が埋め込まれたビットであるか判定できない。したがって、任意の位置に埋込み情報を埋め込んだ「埋込み情報付きデータ」を単に誤り訂正したのみでは、仮に、埋込み情報に誤り訂正がなされていたとしても、上記埋込み情報を特定することができないのであるから、上記誤り訂正の能力以上の誤り訂正は不可能である。
この点、本願発明の実施例では、「次に、情報埋込部2は、原データの13ビットのBCH符号すなわち符号化データブロック(2)(3) 1011001111010 0110101001101・・・の各ブロックの所定の位置(3ビット目と8ビット目)を識別し(ステップS4)、かかる位置に埋込み情報ビットを加えることで(ステップS5)、第1の実施形態と同様に埋込み情報の埋込み処理を行う。」(【0047】)との記載からわかるように、符号化時に埋込み情報の埋め込み位置を所定の位置に特定することを前提とし、復号化時には、上記所定の位置の埋込み情報を抽出し、上記埋込み情報の誤り訂正を行うことで、埋込み情報が埋め込まれた位置のビットについて正しいビットを再現し、その上で「埋込み情報付きデータ」を誤り訂正することで、「埋込み情報付きデータ」を単に誤り訂正したときの誤り訂正の能力以上の誤り訂正を実現していることは明らかである。
一方、特許請求の範囲の記載をみると、上記「埋込み情報付きデータ」を単に誤り訂正したときの誤り訂正の能力以上の誤り訂正を実現するための必須の構成である、上記埋め込み位置を特定する構成を有していないのであるから、請求項の構成では、上記ウ.の効果を得ることができず、上記主張は特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。
なお仮に、本願発明が、「埋込み情報付きデータ」に対して、上記埋込み情報についても誤り訂正を行うことで、上記埋込み情報について誤り訂正を行わずに符号化した場合と比較して、誤り訂正の能力以上の誤り訂正を実現できることを主張するものであったとしても、埋込み情報についても誤り訂正を行うことは、本願出願前周知の事項であり、埋込み情報について、上記誤り訂正を行うことで正しく復号できれば、埋込み情報と原データ(を符号化したビット列)とからなる「埋込み情報付きデータ」についてもより正しく復号できることは、当業者であれば当然予測しうることである。

以上のように、上記相違点は当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

第4 むすび
以上、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1記載の発明、及び本願出願前周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-20 
結審通知日 2016-01-26 
審決日 2016-02-08 
出願番号 特願2011-196948(P2011-196948)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 573- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白石 圭吾石田 信行木方 庸輔粕谷 満成  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 渡邊 聡
渡辺 努
発明の名称 デジタルデータの情報埋め込み装置及び埋込み情報検出装置  
代理人 木村 満  
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