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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1312842
審判番号 不服2015-7235  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-17 
確定日 2016-03-24 
事件の表示 特願2011- 34146「熱処理装置および熱処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月10日出願公開、特開2012-174819〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成23年2月21日の出願であって、平成26年6月20日付けで拒絶理由が通知され、同年8月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年1月8日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年4月17日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正がされたものである。

2.平成27年4月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
本件補正は、本件補正により補正される前の特許請求の範囲について、下記(1)を、下記(2)と補正するものを含む。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
表面に膜形成がなされた基板の熱処理を行う熱処理装置であって、
表面に所定の膜が形成された基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された前記基板の裏面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、
を備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記保持手段に保持された前記基板の表面に近接して配置され、前記基板を冷却する冷却プレートをさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
表面に膜形成がなされた基板の熱処理を行う熱処理方法であって、
表面に所定の膜が形成された基板をチャンバー内に収容して保持する保持工程と、
前記チャンバー内に保持された前記基板の裏面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射して前記膜を加熱するフラッシュ照射工程と、
を備えることを特徴とする熱処理方法。
【請求項4】
請求項3記載の熱処理方法において、
前記基板の表面に近接して配置された冷却プレートによって前記基板を冷却しつつフラッシュ光の照射を行うことを特徴とする熱処理方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4記載の熱処理方法において、
前記フラッシュ照射工程でのフラッシュ光照射による加熱処理時間は1秒以下であることを特徴とする熱処理方法。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれかに記載の熱処理方法において、
前記フラッシュ照射工程では、前記フラッシュランプに印加する電圧を制御することによって前記膜の処理温度を変更することを特徴とする熱処理方法。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
表面に膜形成がなされた基板の熱処理を行う熱処理装置であって、
表面に所定の膜が形成された基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された前記基板の裏面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、
前記保持手段に保持された前記基板の表面に近接して配置され、前記基板を冷却する冷却プレートと、
を備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
表面に膜形成がなされた基板の熱処理を行う熱処理方法であって、
表面に所定の膜が形成された基板をチャンバー内に収容して保持する保持工程と、
前記チャンバー内に保持された前記基板の裏面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射して前記膜を加熱するフラッシュ照射工程と、
を備え、
前記基板の表面に近接して配置された冷却プレートによって前記基板を冷却しつつフラッシュ光の照射を行うことを特徴とする熱処理方法。
【請求項3】
請求項2記載の熱処理方法において、
前記フラッシュ照射工程でのフラッシュ光照射による加熱処理時間は1秒以下であることを特徴とする熱処理方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の熱処理方法において、
前記フラッシュ照射工程では、前記フラッシュランプに印加する電圧を制御することによって前記膜の処理温度を変更することを特徴とする熱処理方法。」

3.補正の目的要件及び本願発明
本件補正後の請求項(新請求項)1は、本件補正前の請求項(旧請求項)1を引用する形式で記載されていた請求項2を、当該引用部分を具体的に記載することにより引用形式でない独立の請求項としたものと認められる。
そうすると、新請求項1は、旧請求項1を削除して、旧請求項2を新請求項1にしたものであるから、旧請求項1の補正という観点から見れば、同請求項の削除を目的とした補正であって、新請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的としたものに該当する。
また、本件補正後の請求項(新請求項)2は、本件補正前の請求項(旧請求項)3を引用する形式で記載されていた請求項4を、当該引用部分を具体的に記載することにより引用形式でない独立の請求項としたものと認められる。
そうすると、新請求項2は、旧請求項3を削除して、旧請求項4を新請求項2にしたものであるから、旧請求項3の補正という観点から見れば、同請求項の削除を目的とした補正であって、新請求項2に係る補正も、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的としたものに該当する。
そこで、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年4月17日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

4.引用例・周知例
(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-135508号公報(以下、「引用例」という。)には、「基板加熱装置、基板加熱方法及び記憶媒体」(発明の名称)について、次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下、同じ。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)等の基板を当該基板に対向する加熱源により加熱する基板加熱装置に関する。」
イ 「【背景技術】
【0002】
ウエハやフラットパネル用のガラス基板等の基板は、薬液処理をした後、或いは処理前に熱板により加熱処理が行われる。具体的にはレジストパターン形成システムにおいて、レジスト液を塗布した後や、露光後現像処理前の基板を加熱する場合、或いは絶縁膜形成装置において、絶縁膜の前駆物質を含む薬液を塗布した後の基板を加熱する場合などが挙げられる。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板に対向する加熱源により当該基板を加熱する基板加熱装置において、加熱制御領域の配置パターンを自由に設定、或いは変更することができ、基板の加熱処理の面内均一性を向上させることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の基板加熱装置では、
基板を保持する基板保持部と、
この基板保持部に保持された基板と対向するように配置され、当該基板を加熱するための光源と、
この光源と前記基板との間に介在して設けられ、光透過状態と遮光状態との間で切り替わる光シャッタセルが基板の対向領域全体に亘って多数配列された光シャッタ板と、
前記光シャッタセルの各々に対して光透過状態と遮光状態との切り替え制御を行うための制御部と、
を備えたことを特徴としている。」
エ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態の係る基板加熱装置について、図1ないし図11を参照して説明する。本実施形態の基板加熱装置は、図1、図2に示すように筐体1を備えており、筐体1は仕切り壁11によって仕切られて上部領域12と下部領域13とに分離されており、上部領域12側の側壁にはウエハWの搬入出口14が設けられている。搬入出口14が形成されている領域を装置手前側とすると、筐体1の装置奥手側内部には、ウエハWを加熱する熱板2(基板保持部)が設けられており、装置手前側には、加熱されたウエハWの粗熱取り(冷却)を行うと共に、搬入出口14から搬入されるウエハWの受け渡しを行う待機位置から熱板2の上方領域までの間を移動する冷却板3が配設されている。」
オ 「【0021】
また図1及び図3に示すように、熱板2の下方には加熱部5が配設されている。加熱部5は、熱板2を加熱するための加熱源となる光源5aと、光源5aの光を遮ることが可能な光シャッタ板5bとを備えており、熱板2の下面全面には光源5aから照射される光を吸収する光吸収層20が成膜されている。また図中パージガス供給菅(審決注:「管」の誤記と認める。)7は、熱板2を冷却する際に熱板2に向けてパージガスを供給するための図示しないガス供給源に接続されている。」
カ 「【0023】
光源5aは、例えばフラッシュランプやキセノンランプ、若しくはYAGレーザーなどからなり、加熱部5は、光源5aを複数、例えば図4に示すように計29個備えている。光源5aは、図1に示すように熱板2の裏面全域に対して光を照射できるように熱板2の投影領域(熱板2の光吸収層20と対向する領域)に配設されている。そして熱板2は、光源5aから照射された光を光吸収層20で吸収することによって、間接的に加熱される。また熱板2と光吸収層20との間には、熱板2の温度を計測するための本発明の温度検出部に相当する温度センサ8が、熱板2の下面に一定の間隔をあけて複数設けられている。」
キ 図1

ク 図3


(2)引用発明の認定
ア (1)アの【0001】から、引用例には、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)をウエハに対向する加熱源により加熱するウエハ加熱装置が記載されている。
イ (1)イの【0002】から、ウエハは、レジスト液を塗布した後に加熱されるものであり、技術常識に照らせば、レジスト液の塗布によって、ウエハには、レジスト液の膜が形成されているのは明らかである。
ウ (1)ウの【0010】から、ウエハ加熱装置は、
ウエハを保持するウエハ保持部と、
このウエハ保持部に保持されたウエハ板と対向するように配置され、当該ウエハを加熱するための光源と、
この光源と前記ウエハとの間に介在して設けられ、光透過状態と遮光状態との間で切り替わる光シャッタセルがウエハの対向領域全体に亘って多数配列された光シャッタ板と、
前記光シャッタセルの各々に対して光透過状態と遮光状態との切り替え制御を行うための制御部とを備えている。
エ (1)エの【0018】から、実施形態では、ウエハ加熱装置は、筐体1を備えていて、筐体1の装置奥手側内部には、ウエハを保持し、加熱する熱板2であるウエハ保持部が設けられている。
オ (1)オの【0021】から、実施形態では、熱板2の下方には加熱部5が配設されていて、加熱部5は、熱板2を加熱するための加熱源となる光源5aと、光源5aの光を遮ることが可能な光シャッタ板5bとが備えられ、熱板2の下面全面には光源5aから照射される光を吸収する光吸収層20が成膜されていて、さらに、熱板2を冷却するパージガス供給管7が備えられている。
そして、キの図1からみて、このパージガス供給管7は、熱板2の下方に設けられていることが看取される。
また、熱板2が冷却されることで、熱板2に保持されたウエハも冷却されることは明らかである。
カ (1)カの【0023】から、光源5aは、フラッシュランプからなり、加熱部5は、光源5aを29個備えていて、光源5aは、熱板2の裏面の光吸収層20の全域に対して光を照射できるようになっていて、熱板2は、光源5aから照射された光を光吸収層20で吸収することによって、間接的に加熱されるものである。
キ 技術常識に照らして、レジスト液が塗布された直後のウエハを他の部材と直接させることはないから、ウエハ保持部に保持されたウエハにおいて、ウエハの上面(熱板2とは反対側)にレジストが塗布され、ウエハはその下面を熱板2によって、保持されていて、ウエハはその下面側から、熱板2によって加熱されるということができる。
また、パージガス供給管7は、熱板2の下方に設けられていることから、パージガス供給管7は、ウエハの下面側に設けられているということができる。

ク 上記ア?キから、引用例の実施形態には、
「上面にレジスト液の膜が形成された半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」ということがある。)の加熱装置において、
筐体1と、
筐体1の装置奥手側内部に設けられた、ウエハの下面を保持し、加熱する熱板2であるウエハ保持部と、
裏面に光吸収層20が成膜された熱板2の下方に、このウエハ保持部に保持されたウエハ板と対向するように配置され、光吸収層20の全域に対して光を照射できるようになっていて、熱板2は、光源5aから照射された光を光吸収層20で吸収することによって、ウエハをその下面側から間接的に加熱する、29個のフラッシュランプからなる光源5aからなる加熱部5と、
熱板2の下方であって、ウエハの下面側に設けられた、熱板2及びウエハを冷却するパージガス供給管7と、
光源5aと前記ウエハとの間に介在して設けられ、光透過状態と遮光状態との間で切り替わる光シャッタセルがウエハの対向領域全体に亘って多数配列された光シャッタ板と、
前記光シャッタセルの各々に対して光透過状態と遮光状態との切り替え制御を行うための制御部とを備えたウエハ加熱装置。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)周知例の記載事項
ア 周知例1:特開2006-183934号公報
周知例1には、次の記載がある。
(ア)「【0020】
これらの図に示すように、溶媒除去装置1は、ワークとしての基板3を支持する基板支持具(ワーク支持手段)4と、基板支持具4に支持された基板3を加熱する赤外線(IR)ランプ(加熱手段)5と、基板3の表面の温度がその面内において略均一(略一定)になるように基板3から熱を吸収(基板3を冷却)して、基板3の温度分布を調整する吸熱ブロック(冷却部)61を有する温度均一化手段6と、チャンバ2内にガス(処理ガス)を供給(導入)するガス供給手段(ガス導入手段)7と、チャンバ2内からガスを排気するガス排気手段8と、溶媒除去装置1の各部の駆動(作動)を制御する制御手段9とを備えている。基板支持具4、赤外線ランプ5および吸熱ブロック61(温度均一化手段6の一部)は、内部の雰囲気の条件(例えば、温度、湿度、圧力(気圧)等)が管理されるチャンバ2内に設けられている(収容されている)。以下、これらの各構成要素について順次説明する。・・・(略)・・・
【0025】
吸熱ブロック61、基板支持具4および赤外線ランプ5は、それぞれ、チャンバ2内に設置(固定)されている。この場合、吸熱ブロック61、基板支持具4および赤外線ランプ5は、チャンバ2内の下側から上側に向って、この順序で配置されている。すなわち、吸熱ブロック61は、基板支持具4(基板支持具4に支持された基板3)を介して赤外線ランプ5と反対側に配置されている。」
(イ)「【0052】
図4に示すように、第2実施形態の溶媒除去装置1では、温度均一化手段として、基板3に対して冷却用のガス(以下、単に「ガス」と言う)を吹き付ける冷却用ガス吹き付け手段64aが設けられている。」

イ 周知例2:特開2000-40698号公報
周知例2には、次の記載がある。
(ア)「【0024】図1は、実施例に係る基板熱処理装置を示す概略縦断面図である。この基板熱処理装置は、半導体ウエハなどの基板Wを低酸素雰囲気で熱処理を行なうための処理空間1aを形成するチャンバ1と、チャンバ1を開閉するチャンバ開閉機構11と、チャンバ1内の底部に配備された、基板Wを加熱する加熱プレート4と、加熱プレート4の加熱温度を調節する温度調節部10と、加熱プレート4に対向する位置に配備された冷却プレート5と、冷却プレート5を冷却する冷却部9と、冷却プレート5と加熱プレート4との間で基板Wを昇降させる基板昇降機構6と、チャンバ1の開放や、基板Wの昇降などの制御をする制御部7と、制御部7の制御によって所定時間をカウントするタイマー部8とを備えて構成されている。なお、加熱プレート4は本発明における基板加熱手段に、冷却プレート5は本発明における冷却手段に、基板W昇降機構6は本発明における基板移動手段に、制御部7は本発明における制御手段および開放手段に、それぞれ相当する。」
(イ)図1


5.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「半導体ウエハ」及び「半導体ウエハ」の「加熱」は、本願発明の「基板」及び「基板」の「熱処理」にそれぞれ相当する。
イ 引用発明の「半導体ウエハ」の「上面」は、本願発明の「基板」の「表面」に相当し、引用発明の「レジスト液の膜」は、本願発明の「膜」に相当し、引用発明の「上面にレジスト液の膜が形成された半導体ウエハ」は、本願発明の「表面に膜形成がなされた基板」及び「表面に所定の膜が形成された基板」に相当する。
ウ ア、イから、引用発明の「上面にレジスト液の膜が形成された半導体ウエハの加熱装置」は、本願発明の「表面に膜形成がなされた基板の熱処理を行う熱処理装置」に相当する。
エ 引用発明の「筐体1」の内部の「ウエハ保持部」で「ウエハ」は保持されるから、引用発明の「筐体1」は、本願発明の「表面に所定の膜が形成された基板を収容するチャンバー」に相当する。
オ 引用発明の「筐体1の装置奥手側内部に設けられた、ウエハの下面を保持し、加熱する熱板2であるウエハ保持部」は、本願発明の「チャンバー内にて前記基板を保持する保持手段」に相当する。
カ 引用発明の「ウエハ」の「下面」は、本願発明の「基板」の「裏面」に相当し、引用発明の「ウエハ保持部に保持されたウエハ板と対向するように配置され」た「ウエハをその下面側から間接的に加熱する、29個のフラッシュランプからなる光源5aからなる加熱部5」は、本願発明の「保持手段に保持された基板の裏面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプ」に相当する。
また、引用発明の「熱板2の下方であって、ウエハの下面側に設けられた、熱板2及びウエハを冷却するパージガス供給管7」は、本願発明の「保持手段に保持された基板の表面に近接して配置され、前記基板を冷却する冷却プレート」と「保持手段に保持された基板を冷却する手段」である点で共通する。

キ そうすると、本願発明と引用発明とは、
「表面に膜形成がなされた基板の熱処理を行う熱処理装置であって、
表面に所定の膜が形成された基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された前記基板の裏面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、
前記保持手段に保持された前記基板を冷却する冷却手段と、
を備える熱処理装置。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。

(相違点)
基板を冷却する冷却手段が、本願発明においては、「基板の表面に近接して配置され」た「冷却プレート」であるのに対し、引用発明においては、「ウエハ」の「下面側」に配置された「パージガス供給管7」である点。

(2)判断
ここで、上記相違点について検討する。
基板をチャンバ内で加熱処理する装置において、冷却プレート(吸熱ブロック)で基板を冷却することは周知であり、チャンバ内に冷却プレートを配置するに当たり、その位置が順に、加熱手段、基板及び冷却プレートとなるように設けることは、周知例1、2に示されるように周知である。ここで、「冷却プレート」は、加熱手段に対して障害とならないように、基板に対して加熱手段と反対側の位置に設ける必要があることは明らかである。
また、基板を裏面から加熱するものにおいて、冷却手段として、「基板の表面に近接して配置され」た「冷却プレート」を設けることは、周知例2に示されるように周知である。

そして、引用発明において、「熱板2」の冷却手段の実施に当たっては、「パージガス供給管」に限らず、「冷却プレート」や「冷却ブロック」のような冷却手段が採用されることは、上記「4.(3)ア(イ)」の周知例1の第2実施形態に「冷却ブロック」に代えて「冷却用ガス吹き付け手段64a」が用いられていることが記載されていることからも明らかである。
すなわち、熱板2の冷却手段として、「パージガス供給管」を用いるものも、「冷却プレート」や「冷却ブロック」を用いるものも、ともに周知の技術であり、どちらを用いるかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項にすぎない。

そうすると、引用発明において、「パージガス供給管7」に代えて、冷却手段として当業者が必要に応じて適宜採用し得る周知の「冷却プレート」を用い、しかも、その配置を、周知の、「熱板2」による加熱の障害とならない、基板に対して加熱手段と反対側の位置となる、「基板の表面に近接して配置」することは、当業者が容易に想到し得たことである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-15 
結審通知日 2016-01-19 
審決日 2016-02-10 
出願番号 特願2011-34146(P2011-34146)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 英樹  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 川端 修
土屋 知久
発明の名称 熱処理装置および熱処理方法  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 有田 貴弘  

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