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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E04F
管理番号 1312899
審判番号 無効2015-800068  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-03-17 
確定日 2016-03-30 
事件の表示 上記当事者間の特許第5628405号発明「壁コーナ用下地材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件無効審判の請求に係る特許第5628405号(以下「本件特許」という。)の手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成25年11月28日:本件出願(特願2013-245931号)
平成26年10月10日:設定登録(特許第5628405号)
平成27年 3月17日:本件無効審判請求
平成27年 4月28日:手続補正(審判請求書)
平成27年 7月10日:審判事件答弁書提出
平成27年 8月24日:審理事項通知書(起案日)
平成27年10月13日:請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成27年10月16日:被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成27年10月19日:補正許否の決定(起案日)
平成27年10月30日:被請求人より上申書提出(10月23日付け)
平成27年10月30日:口頭審理
平成27年11月13日:請求人より上申書提出
平成27年11月27日:被請求人より上申書(第2回)提出


第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」といい、また全体を「本件発明」という。)は、本件特許公報の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
合成樹脂から成り、各一側部が互いに隣接して平行に延びる一対の帯状部と、
前記帯状部よりも軟質の合成樹脂から成り、厚みが前記帯状部の厚みよりも小さく形成され、前記各一側部を連結する連結部と、を含み、
前記連結部は、長手方向に垂直な幅方向両端部が前記一対の帯状部の隣接する前記各一側部に連結され、各帯状部を重ねた折畳み状態から、各帯状部が30°以上、120°以下の角度を成す拡開状態に復帰する弾性回復性を有し、
厚み方向の一方側において、前記帯状部の表面と前記連結部の表面とが段差なく連なっていることを特徴とする壁コーナ用下地材。
【請求項2】
前記連結部は、デュロメータ硬さがD30以上、D70以下であることを特徴とする請求項1に記載の壁コーナ用下地材。
【請求項3】
前記連結部は、折曲げ強さが25cN以上、200cN以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の壁コーナ用下地材。
【請求項4】
前記連結部は、50%歪み時応力が5MPa以上、25MPa以下であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載の壁コーナ用下材。」

なお、本件発明1において、「角度」とは、本件明細書段落【0042】及び【図13】を参照すると、「一対の帯状部2a,2bがなす内角」のことである。
「【0042】
(測定試験2)
図12は一方の帯状部2aの弾性回復力による経過時間tに対する角度θを示すグラフであり、図13は測定試験設備およびその測定手順を示す図である。本件発明者は、下地材1の連結部5による弾性回復力を確認するために、供試体1?10について、図13(1)に示すように、一方の帯状部2aと他方の帯状部2bとを重ねた状態で基台40の水平な載置面41上に載置し、錘42を乗載し、この錘42を取り除いた後、図13(2)に示すように、経過時間を5秒、10秒、15秒、20秒後の角度θを測定した。」
「【図13】




第3 当事者の主張
1 請求人の主張、及び提出した証拠の概要
請求人は、特許第5628405号の特許請求の範囲の請求項1,2,3及び4に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その無効理由として以下のとおり主張し(補正された審判請求書、平成27年10月13日付け口頭審理陳述要領書、平成27年11月13日付け上申書を参照。)、証拠方法として甲第1号証?甲第5号証を提出している。
なお、請求人が提出した甲第6号証については、平成27年10月19日付け補正許否の決定のとおり許可しないとの決定がなされた。

[無効理由]
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許出願前に当業者が甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。(第1回口頭審理調書を参照。)

(具体的理由)
(1)甲第1号証の明細書には、蝶番部2の肉厚を1mm以下にすること及び平板3,3の肉厚を1mm以下にすることが記載され、かつ、甲第1号証の明細書には蝶番部2の肉厚と平板3,3の肉厚を同じにしなければならない積極的理由が記載されていない。また、甲第1号証に記載された蝶番部2の肉厚と平板3,3の肉厚の組み合わせの中には、蝶番部2の肉厚を平板3,3の肉厚より小さくするものも含まれる。このことから、甲第1号証には、蝶番部2の肉厚を平板3,3の肉厚よりも小さく形成することについても示唆されていると言える。(審判請求書3頁18?25行)

(2)甲第2号証の図6には、折り目2部分の拡大断面図が示されており、折り目2が平板部3,4より薄肉に形成されている。段落0020の記載によれば、この折り目2は断面凹状の筋から形成されていて、断面凹状の折り目2は片面だけに形成してもよいことが記載されている。(審判請求書4頁1?6行)

(3)甲第3号証の図面には、連結部に相当する中央部分に溝22が形成され、当該溝22の底部の外側表面が本体部1の表面と段差なく連なっているコーナー部保護部材が開示されている。また、図3には、溝22の開口側をコーナー部に沿わせて、コーナー部保護部材が壁面出隅部に取り付けられる状態が示されている。(審判請求書4頁8?12行)

(4)甲第4号証の段落0022には、コーナーテープを2つ折りした後に開いた角度が8度以上、好ましくは20度以上、より好ましくは50度以上、さらに好ましくは70度以上、特に好ましくは80度以上であることが記載され、段落0047の表3の実施例1?5には2つ折りした後に開いた角度が11度?155度までのものが記載されている。(審判請求書4頁17?22行)

(5)甲第5号証には、第2板部材は、第1板部材が隅部における各壁面に倣う角度を成すように各第1板部材を角変位させる方向の弾性回復力を与えること(段落0009参照)、下地材は、各第1板部材が、隅部の壁面に倣う角度を成すように、たとえば直角を成すように変形させて装着されること(段落0016参照)が記載されている。(審判請求書4頁23?27行)

(6)コーナー材のような薄板状の樹脂製品においては、折り畳み状態から負荷を解除したときにある程度の角度まで弾性回復することは自明の事項である。また、折り畳み状態から負荷を除去して回復したときの角度をどの程度にするかは、連結部の材質や肉厚などの寸法によって決定されることも自明である。甲第1号証及び甲第2号証の段落0003に記載されているようなコーナー材も、本件特許発明と同様に軟質合成樹脂製の蝶番部(連結部)を有しているから、蝶番部の材質や肉厚を適宜に選択すれば、本件特許発明と同様の弾性回復性を有する。
弾性回復性をどの程度にするかは、甲第4号証の段落0022、0047及び甲第5号証の段落0009に記載されている。甲第4号証の段落0047には実施例として11°?155°(角度を逆からとった場合は25°?169゜)の範囲の弾性回復性が記載され、本件特許発明の30°?120°の範囲はこれに含まれる。
被請求人は効果として、30°?120°の弾性回復性を有することで、甲第5号証に比べて製造工程の大幅な簡素化を図ることができる旨を主張するが、折曲機、ヒータ、冷却手段が不要となることは、本件特許明細書のどこにも記載及び示唆が無い。従って、30°?120°なる弾性回復性は、本件特許明細書の段落0012に記載されているように、施工時における壁コーナー部への下地材の取り付け作業の作業性を向上させることを目的とするものである。
取り付け時の作業性を向上させるため、甲第4号証及び甲第5号証には弾性回復性をどの程度にするかが記載されており、本件特許発明の課題と共通する。甲第1号証及び甲第2号証の段落0003に記載のコーナー材においても弾性回復性が存在することは自明であるが、この弾性回復性をどの程度にするかについて、甲第4号証又は甲第5号証に記載の発明を適宜に適用することは、当業者が容易になしえたことである。(口頭審理陳述要領書4頁21行?5頁10行)

(7)被請求人から提出された平成27年10月23日付上申書の第3頁第2行目?第14行目を見ると、連結部の厚みは押出成形機によって調整が可能であり、連結部の厚み選択作業が容易である旨の記載がある。押出成形機の構成については、本件特許の明細書を見ても、本件特許発明にかかる壁コーナ用下地材を形成するための特別のものであるとは認められないから、本件特許発明1にかかる壁コーナ用下地材を製造する押出成形機は、壁コーナ用下地材の製造に一般的に用いられる公知の押出成形機であると認めることができる。とすれば、公知の押出成形機にはこのような連結部の厚み調整機構が備わっているのだから、連結部の厚みをどのようにするかは単なる設計事項であるとともに、製造現場における一般的な調整事項の範囲内でもある。従って、帯状部に対して連結部の厚みをどのようにするかは、本件特許の出願前から当業者にとって設計事項及び調整事項にすぎず、本件特許発明1の進歩性は否定されるべきである。(上申書1頁下から5行?2頁8行)

[証拠方法]
甲第1号証:実公昭62-40030号公報
甲第2号証:特開2009-41210号公報
甲第3号証:特開2006-177114号公報
甲第4号証:特開2012-246672号公報
甲第5号証:登録実用新案第3100004号公報

2 被請求人の主張、及び提出した証拠の概要
これに対して、被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張する無効理由に対して反論し(平成27年7月10日付け審判事件答弁書、平成27年10月16日付け口頭審理陳述要領書、平成27年10月23日付け(10月30日差出)上申書、平成27年11月27日付け上申書(第2回))、証拠方法として、乙第1?4号証を提出している。

[証拠方法]
乙第1号証:壁コーナ用下地材の施工現場における施工作業を撮影した写真1?19、撮影者 原謙一郎、撮影日 平成27年10月9日
乙第2号証:岩波国語辞典第3版、編者 西尾実 外、株式会社岩波書店 発行、1980年7月1日、第205頁
乙第3号証:学研漢和大字典、編者 藤堂明保、株式会社学習研究社 発行、1995年4月1日、第960頁
乙第4号証:弾性回復性を有する効果の実験およびその結果を撮影した写真20?24-4b、撮影者 原謙一郎、撮影日 平成27年11月20日


第4 無効理由についての当審の判断
1 甲第1?5号証の記載事項
(1)甲第1号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は審決において付与。以下同様。)
ア 「厚さ1ミリ以下、幅2ミリ以下の軟質合成樹脂製蝶番部2の長手方向左右両端に、1ミリ以下の肉厚を有する硬質合成樹脂製の平板3,3を一体に連結し、該平板に適数の孔4…を穿設すると共に平板3の長手方向左右両端にテーパー部7,7を設けたことを特徴とするコーナー材。」(実用新案登録請求の範囲)

イ 「この考案は、建物の壁面の出隅部分に取付け、該角部を凹凸のない平坦面に先仕上げし、壁面の出隅部分を衝撃から保護すると同時に壁装材の貼着を容易にし、壁仕上げを美麗化する目的で使用する薄い合成樹脂製のコーナー材に関する。」(1欄9?13行)

ウ 「この考案は上記欠点を除去することを目的としたもので、以下一実施例を図面につき詳述すると、コーナー材1は、可撓性に富む軟質合成樹脂製の厚さ1ミリ以下、幅2ミリ以下の蝶番部2の長手方向左右両端に、1ミリ以下、好ましくは0.5ミリ程度の肉厚を有する硬質合成樹脂製の平板3,3を一体に連結して蝶番部2から折曲げ自在に構成し、更に、前記平板に適数の孔4…を穿設すると共に、該平板の下面に必要に応じて感圧性接着剤層5を設け、この感圧性接着剤層5を被覆紙6でカバーしたものである。」(2欄18?28行)

ウ 「即ち、コーナー材1は中央の蝶番部2を厚さ1ミリ以下、幅2ミリ以下の軟質合成樹脂とし、その両端に1ミリ以下、好ましくは0.5ミリ程度の肉厚の硬質合成樹脂製平板3,3を連結させ、前記蝶番部から自由に折曲る様にしたので出隅部分に好都合に適合し、該角部を保護すると同時に仕上げ作業を省略して壁装材の施工が簡単確実に行えるばかりか、錆も生じないから接着不良や仕上り不良の事態を起すこともなく、施工中に怪我をするといつた危険性もない。
又、コーナー材全体が1mm以下に薄く形成され、しかも、平板3の辺端にテーパー部7を設けたので出隅部分とそれに続く隣接部分との間の段差が極めて小さくなつて壁装材の仕上り状態が美麗であり、更に平板3には孔4を多数設けたのでコーナー材取付け時或は壁装材貼着時に接着剤が該孔に喰込んで接着効果が向上するし、巻込めるから嵩張らず運搬に便利であり、施工箇所のサイズに合わせて簡単に切断できるから継目が発生せず、製作が容易であるから安価に提供できる等実用的効果が多大なものである。」(3欄18行?4欄14行)

エ 上記アないしウからみて、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「可撓性に富む軟質合成樹脂製の厚さ1ミリ以下、幅2ミリ以下の蝶番部2の長手方向左右両端に、1ミリ以下、好ましくは0.5ミリ程度の肉厚を有する硬質合成樹脂製の平板3,3を一体に連結して蝶番部2から折曲げ自在に構成した、建物の壁面の出隅部分に取付け、該角部を凹凸のない平坦面に先仕上げし、壁装材の貼着を容易にし、壁仕上げを美麗化するコーナー材1」

(2)甲第2号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の紙よりも強度が高く、水に濡れても変形しにくい紙材、及びこの紙材を材質とする壁面仕上げ用コーナー材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の壁面の仕上げは、石膏ボード等の壁材の表面に壁紙、布地、合成樹脂クロス等を張り付ける乾式仕上げ方法や、壁土、ケイソウ土、モルタル等を塗り付ける湿式仕上げ方法により行われている。この場合、壁材である石膏ボードの表面は凹凸が多いので、壁紙、布地、合成樹脂クロス等の壁装材を張り付ける場合は、予めパテ等で平坦な表面に仕上げてから貼着しているが、特に出隅部分や入隅部分等のコーナー部は、尖った稜線部分があるため、パテ等による先仕上げが困難であった。
【0003】
建物の壁面の出隅部分を平坦に先仕上げするために、厚さ1ミリメ-トル以下、幅2ミリメ-トル以下の軟質合成樹脂製蝶番部の長手方向左右両側に、1ミリメ-トル以下の肉厚を有する硬質合成樹脂製の平板を一体に連結し、該平板には適数の孔を穿設したコーナー材が開発されている。このコーナー材は、蝶番部を建物のコ-ナ-部に当てがい、この部分を直角に屈曲させて左右両側の平板をそれぞれ壁面に接着剤で貼りつけることにより、該コーナー部の壁面を平坦化するものである。
【0004】
上記従来のコーナー材は、出隅部分の凹凸の多い下地面を手軽に平坦化することができる便利なものであるが、折り曲げ用の蝶番部が薄くて柔らかい材質で作られているため、該蝶番部の強度が弱く、出隅に使用した時はコーナー部のエッジ部の強度が弱くなり、この部分に他の物体が衝突した時に容易に変形や損傷が生じるという問題点があった。また、これを入隅に使用した場合には、その上から壁装材を貼り着けた後、エッジ部にナイフで切り目を入れて壁装材の余分な部分を切り離す際に、軟弱な蝶番部自体が切り離されて、この部分に隙間ができてしまうという問題点があった。」

イ 「【0012】
また、本発明にかかるコーナー材は、所定の幅と厚みを有する紙シートの左右中央部に、該紙シートの中心線に沿って折り目を形成し、この折り目の左右両側の平板部には、表裏に貫通する複数の通孔をそれぞれ分散穿孔した壁面仕上げ用のコーナー材であって、前記紙シートとして、前記紙材を用いたことを特徴としている。」

ウ 「【0020】
つぎに、この紙材Pを使用して製作したコーナー材について説明する。このコーナー材1は、図3に示すように、全体が所定厚みの細長い紙材Pで作られており、その幅方向の中央部に、長手方向に沿って折り目2が形成されている。折り目2は、図4(審決注:「図4」は「図6」の誤記と認める。)に示すように、プレス成形により、断面凹状の筋として形成されている。図示例では、紙材Pの表裏両面に凹状の折り目2が形成されていて、いずれの側にも簡単に折り曲げることができるようになっているが、折り目2を片面だけに形成しておいてもよい。
【0021】
上記折り目2の左右両側は、2枚の平板部3,4となっており、これら平板部3、4には、表裏に貫通する多数の円形の通孔5,…が規則正しく分散穿孔されている。この通孔5は施工時に表裏に塗られたパテや壁土等が平板部を挟んで一体化するための流通孔で、直径3?5ミリメートル程度の円形孔とするのが好ましいが、角孔や異形の孔であってもよい。
【0022】
このコーナー材1の幅は数十mm(例えば、折り目によって区分される一方の平板部の幅が30?50mm程度)であり、厚みは0.5?2mm程度とするのが好ましい。この厚みが大き過ぎると、他の部分に比べて仕上げ表面が盛り上がるので好ましくない。逆に薄過ぎると、強度(いわゆる腰の強さ)が不十分となり、使い勝手が悪くなる。また、水分を吸収するためには、ある程度厚みのある方が好ましい。コーナー材1の外縁部6は、図5に示すように、外に向かって徐々に肉厚が薄くなる断面楔状に形成されている。このため、壁装材の表面に段差が生じないが、場合によっては、このような形状にしなくてもよい。」

エ 「【0024】
このコーナー材1は、長尺のベルト状に成形してロール状に巻いておき、現場で適当な長さに切り出して使用するのが便利である。」

オ 上記アないしエからみて、甲第2号証には、次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されている。
「その幅方向の中央部に、長手方向に沿って折り目2が形成され、折り目2は、表裏両面に断面凹状の筋として形成されていて、いずれの側にも簡単に折り曲げることができるようになっているが、折り目2を片面だけに形成しておいてもよい、コーナー材1。」

(3)甲第3号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、柱、壁などのコーナー部を損傷から保護するための保護部材に関する。
【背景技術】
【0002】
柱、壁などの出隅部は損傷を受け易い。このため、従来、それらの出隅部を損傷から保護するために、出隅部保護部材が提案されている。例えば、下記の特許文献1には、裏側略中央部に屈曲を容易にするための溝を有する断面L字状の出隅部保護部材が提案されている。確かに、この出隅部保護部材は、裏側略中央部に設けた溝において屈曲させることにより、簡単に、断面L字状の出隅部に装着することができる。」

イ 「【0021】
図1は本発明に係るコーナー部保護部材C1の断面図である。図示のコーナー部保護部材C1は、幅、高さ、厚みがそれぞれ100mm、2000mm、6mmの板状の部材であり、本体部1と、高さ方向(図面に垂直の方向)に沿って両端縁まで延びる8個の溝部21,22,…,28とからなる。同図において、コーナー部保護部材C1の紙面上方側が表面側であり、コーナー部保護部材C1の図面下方側が裏面側である。
【0022】
本体部1は塩化ビニル系樹脂を押出成形して作製されている。ロール成形、射出成形等の他の方法により作製してもよい。本体部1の材料も、各溝部において屈曲させることが可能な材料であれば特に制限されない。塩化ビニル系樹脂以外の材料としては、オレフィン系樹脂、ゴム等の伸縮性を有する材料が例示される。アルミニウム等の展延性を有する金属材料も、各溝部において屈曲可能なものであれば、使用することができる。中でも、塩化ビニル系樹脂が、曲げ加工が容易で、衝撃強度が高い点で、好ましい。塩化ビニル系樹脂としては、曲げ加工性と表面強度との物性バランスの点で、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して可塑剤20?60重量部及び充填剤0?70重量部を配合したものが好ましく、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して可塑剤30?50重量部及び充填剤0?50重量部を配合したものがより好ましい。図示の本体部1は単一の材料で作製されているが、これを、衝撃強度が高い比較的硬質の表面層と衝撃吸収性に優れる比較的軟質の内部層との2層構造としてもよい。また、装飾性などを高める目的で、表面に印刷シートの貼着や異色チップ混入による模様の付与などを行ってもよい。
【0023】
溝部は、押出成形時に形成されており、本体部1の表面及び裏面にそれぞれ4個設けられている。裏面に設けられた4個の溝部21,22,23,24のうち、図中左から2番目の溝部22は、断面L字状のコーナー部等の面取りが施されていないコーナー部に装着する場合に屈曲部として用いる溝部(以下、「非面取り部用溝部」と記すことがある)であり、裏面に設けられた他の3個の溝部21,23,24と表面に設けられた4個の溝部25,26,27,28は、面取りが施されたコーナー部に装着する場合に屈曲部として用いる溝部(以下、「面取り部用溝部」と記すことがある)である。溝部22は、断面L字状のコーナー部などに対応可能なように、裏面の他の溝部21,23,24に比べて、溝幅を大きくしてある。裏面の面取り部用溝部21,23,24の溝幅を非面取り部用溝部22のそれと同じくらいに大きくしてもよいが、面取り部用溝部21,23,24の溝幅を必要以上に大きくするとコーナー部との接着面積が減少して接着強度が低下するので
、図1に示す如く、裏面の面取り部用溝部21,23,24の溝幅は、屈曲させるのに必要な程度の大きさにとどめることが好ましい。図示の本体部1では、7個の面取り部用溝部21,23,24,25,26,27,28の溝幅が全て同じ大きさであるが、溝部を広げて屈曲する表面の4個の面取り部用溝部25,26,27,28の溝幅は、裏面の3個の面取り部用溝部21,23,24のそれらに比べて小さくてもよい。例えば、表面の4個の溝部は、切り込み状としてもよい。また、表面の4個の面取り部用溝部25,26,27,28を、装飾目的で壁面などに設けられる底目地として利用してもよい。」

ウ 上記アないしイからみて、甲第3号証には、次の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されている。
「本体部1と、高さ方向に沿って両端縁まで延びる8個の溝部21,22,…,28とからなり、裏面に設けられた4個の溝部21,22,23,24のうち、左から2番目の溝部22は、断面L字状のコーナー部等の面取りが施されていないコーナー部に装着する場合に屈曲部として用いる溝部であり、裏面に設けられた他の3個の溝部21,23,24と表面に設けられた4個の溝部25,26,27,28は、面取りが施されたコーナー部に装着する場合に屈曲部として用いる溝部であって、溝部22は、断面L字状のコーナー部などに対応可能なように、裏面の他の溝部21,23,24に比べて、溝幅を大きくしてある、柱、壁などのコーナー部を損傷から保護するための、コーナー部保護部材C1。」

(4)甲第4号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、コーナーテープに関し、詳しくは内装下地の入隅もしくは出隅に貼り付けて使用されるコーナーテープに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装の壁面は、石膏ボード等の壁材の表面をパテ等で平坦な表面に仕上げてから壁紙、布地、合成樹脂クロス等を貼着して仕上げているが、2つの壁面がほぼ直角に隣接する隈部(出隅、入隅)等のコーナー部は、角が尖っているためパテによる仕上げが困難であった。
【0003】
コーナー部のパテ仕上げを可能にするために、粘着層と複数の孔を有するコーナーテープが提案されている(特許文献1?4)。複数の孔は、パテがその内部に入り込み、パテとコーナーテープの密着性を向上させる。
【0004】
前記コーナーテープは、断面L字状の形状にして隅部に貼着するが、輸送、保管時は平面であって、貼付前に隅部の形状に合わせて直角に折り曲げて使用される。
【0005】
コーナーテープは、床から天井まで、2メートル以上の高さで貼着されることも多く、まっすぐに伸ばすと先端が曲がったり、いったん折り目を付けて直角に近い形状にした場合でも、手で持っている部分はほぼ直角の形状を保持できるが、そこから離れるに従って平面に近い形状に広がるため、先端で離型層を剥がしてコーナーテープを貼着する作業は、作業性の低いものであり、複数の孔があるため壁紙への移り込みなどがあった。また、厚みも600μm以上あり、壁紙への移り込みをなくすためのパテ仕上げに手間がかかっている。樹脂製のものでは、パテの密着度も低く、弱い衝撃で脱落することも起こっている。
【0006】
特許文献5は、直角に近い形状に成形されたコーナーテープが開示されているが、このような硬質のテープは、隅部の形状に追従性を有さないために、コーナー形状と適合しない場合に浮き、剥離などの原因となり、かつ、作業性が劣り、輸送・保管の効率も悪いものであった。」

イ 「【0008】
本発明の目的は、建物の隅部(出隅、入隅)への貼着の作業性、パテの付き、軽量性、輸送・保管の効率に優れたコーナーテープを提供することである。」

ウ 「【発明の効果】
【0010】
本発明のコーナーテープは、折り目を付けることで直角の形状を長く保持できる。また、パテのアンカー性、石膏ボードへの密着力などに優れており、もとの平面形状に戻ろうとする反発性が低いため、隅部に貼着した場合に浮き、やり直しが減少して作業性が向上する。」

エ 「【0012】
本発明のコーナーテープ1は、図1、3に示されるように、テープ本体5と、フィルム基材4,4‘と、粘着層3,3’と、離型層2,2‘とがこの順に積層されたものである。テープ本体5と、フィルム基材4,4‘は融着、熱圧着などにより一体化してもよく、図4に示すように、テープ本体5と、フィルム基材4,4‘の間に、各々粘着層7,7’を形成してもよい。
【0013】
前記フィルム基材4,4‘は、テープ本体5の仮想中心線6に対して略対称位置に配置され、仮想中心線6に沿って折り目をつけたときにフィルム基材4,4‘がコーナーテープの両側の強度を保持するように構成されている。
【0014】
テープ本体5の厚さは、70?180μm程度、好ましくは70?150μm程度、より好ましくは100?130μm程度である。
【0015】
フィルム基材4,4‘の厚さは、各々60?300 μm程度、好ましくは75?150μm程度である。
【0016】
粘着層3,3‘の厚さは、20?70 μm程度、好ましくは30?60μm程度である。
【0017】
離型層2,2‘以外のコーナーテープの全厚は、200?400μm程度、好ましくは250?350μm程度である。
【0018】
ここで、離型層2,2‘以外のコーナーテープの全厚は、例えば図3の構成の場合には、テープ本体5、フィルム基材4、粘着層3の合計の厚みであり、図4の構成の場合には、テープ本体5、粘着層7,フィルム基材4、粘着層3の合計の厚みである。
【0019】
テープ本体5、フィルム基材4,4‘、粘着層3,3’の各厚さ、コーナーテープの全厚が上記の範囲内にあれば、仮想中心線6で折り目を付けたときに直角の形状を保持し、もとの平面形状に戻ろうとする反発性が低いため、好ましい。
【0020】
コーナーテープ1のテープ本体5は柔軟性を有し、隅部の形状に対する追従性を有する。テープ本体5は、フィルム基材4,4‘とで挟まれた領域Aに折り目を付けたとき、折り目を保持可能であることが好ましい。このため、コーナーテープ1は、コーナーテープを外径6インチの紙芯に常温で2週間巻き付け、30cmの長さに切断し、重りを載せた部分が水平台に着く重さ(反発性)が50g以下、好ましくは40g以下である。前記重さ(反発性)が50g以下、特に40g以下であれば、製品ロールから引き出し使用する際に一定反りが発生するが反発力が弱いため、コーナーテープを隅部に貼着後浮きなどが発生し、手直しする作業性が大幅に削減される。
【0021】
仮想中心線6とは、コーナーテープの長手方向に沿う線であってコーナーテープの両端の幅方向中心を結ぶ線を意味する。仮想中心線6は、フィルム基材4,4‘とで挟まれた領域Aに含まれる。
【0022】
また、本発明のコーナーテープ1は、20mm×20mmのサンプルを対称に2つ折りしたものに500gの重りを30秒間載せた後、1分間放置したときに開いた角度が8度以上、好ましくは20度以上、より好ましくは50度以上、さらに好ましくは70度以上、特に好ましくは80度以上(上限は180度)である。折れ戻り度が上記範囲であれば、隅部にコーナーテープを貼着したあとに剥離することがなく、施工後にクロス、壁紙等に皺が形成される等の不具合がなく、手直しがなくなり好ましい。
【0023】
さらに、好ましい実施形態において、本発明のコーナーテープ1は、石膏ボードへの密着力が4N/25mm以上、好ましくは6N/25mm以上であり、これにより、コーナーテープとパテ(石膏パテ)や石膏ボードから剥離することがなくなる。
【0024】
本発明のコーナーテープ1では、フィルム基材4は一定の剛性を有しており、コーナーテープ1を真っ直ぐに立てて下部を手で支えたときに、先端部分の曲がりが少なく、隅部への貼着が行いやすいものである。このようなフィルム基材4の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、ポリウレタンなどが挙げられ、好ましくはPETなどのポリエステル、OPPなどのポリプロピレンである。フィルム基材の厚みは50?300μm、好ましくは75?150μmである。本発明のテープ本体5は柔軟性の材料であり、コーナーテープ1の剛性ないし折り目を付けたときの形状保持性は、フィルム基材4がその主な役割を担っている。」

オ 「【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づきより詳細に説明する。
【0038】
実施例及び比較例で、以下の略語を使用する。
PE:ポリエチレン
PET:ポリエチレンテレフタレート
ラミ:ラミネート
MD:マシンディレクション(フィルムの押し出し方向)
PVC:ポリ塩化ビニル
【0039】
実施例1?5及び比較例1?2
以下の表1に示すコーナーテープを作製し、(1)立ち高さ性、(2)折れ戻り度、(3)応力歪み度・反発性、(4)石膏パテ接着力について評価した。なお、表1の全厚(mm)は、離型層を除くコーナーテープの全厚を意味する。
実施例1 PETフィルム(東洋紡、E5000)の両面に、アクリル系粘着材、日本触媒、HS-51を、片面の厚さが40μmの厚さとなるように積層し、更に、離型紙(シリコーン処理されたクラフト紙、厚さ60μm)を片面に積層した積層フィルムTを作成した。積層フィルムTを15mm幅に切断し、離型層が積層されたフィルム基材を作成した。
【0040】
フィルム基材を、領域Aが1.2mmとなるように、テープ本体の仮想中心線から対象となるように積層し、離型層が積層されたテープ本体を作成した。
【0041】
実施例2?5は、実施例1と同様に離型層が積層されたテープ本体を作成した。
【0042】
【表1】

【0043】
(1)立ち高さ性
長さ60cmのコーナーテープのサンプルの端部から10cmの部位を指で挟み、最高高さを計測した。
【0044】
測定の結果を説明図と合わせて表2に示す。
【0045】
【表2】(省略)
【0046】
(2)折れ戻り度
20mm×20mmのサンプルを対称に2つ折りしたものを500gの重りを30秒間のせた後、1分間放置したとき開いた角度と水平面からの高さを計測した。結果を角度の説明図と合わせて表3に示す。本発明のコーナーテープは、100μm厚のPETフィルムの剛性で、軽いテープ本体を支えているため、折れ戻りがほとんどない。
【0047】
【表3】

【0048】
比較例2のコーナーテープは、PETフィルムの代わりに薄鋼板を使用しており、巻物から展開した時に巻ぐせが残っており、この反発により折り曲げても平面に戻ることで0度になっている。」

カ 【表3】をみると、角度とは、対照に2つ折りした一方のものと、当該一方側の水平面との角度を示していることが分かる。

(5)甲第5号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本考案は、建物などの構造物において、その隅部、すなわち出隅部および入隅部に取り付ける下地材に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、従来の技術の下地材50を示す斜視図である。建物壁面に凹凸があると、布または合成樹脂シートなどの壁装材を貼り付けるに先立って、凹凸のある下地面を平坦に仕上げておかなければならない。この壁面の仕上げ作業は、壁の出隅部および入隅部である隅部においても同様に必要である。このような隅部を仕上げるために、硬質構成樹脂から成る一対の第1板部材51を軟質合成樹脂から成る第2板部材52で連結して構成される下地材50が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実公平5-13855号公報
【考案の開示】
【考案が解決しようとする課題】
【0004】
図13は、下地材50の製造装置55を示す系統図である。図14は、下地材50を折り曲げた状態で示す斜視図である。従来の技術の下地材50は、一対の第1板部材51,51を、一仮想平面に沿う状態で幅方向に間隔をあけて並べ、これらを第2板部材52で連結するように、押出機56で押し出して一体に成形し、そのまま形状を保ったまま冷却手段57で冷却しながら、引取機58で引き取るようにして、製造される。
【0005】
このようにして、各第1板部材51が同一仮想平面に沿って配置されるように、下地材50が製造される。このような下地材50は、壁の隅部の壁面を仕上げるにあたって、図14(1)に示すように、各第1板部材51が直角を成すように、第2板部材52で折り曲げられて用いられる。ところが、下地材50は、第2板部材52のいわゆる「くせ」によって、外力を取り除くと、図14(2)に示すように、平坦な状態に戻ろうとする。したがって隅部の形状に倣うように変形させることが困難であり、作業性が悪いという問題がある。
本考案の目的は、作業性の良好な隅部の下地材を提供することである。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0006】
本考案は、構造物の隅部に装着される隅部の下地材であって、
硬質合成樹脂から成り、一仮想平面に沿ってそれぞれ配置され、幅方向に間隔をあけて略平行に並べられる一対の第1板部材と、
軟質合成樹脂から成り、変形することによって各第1板部材を角変位可能に連結する第2板部材であり、各第1板部材が隅部の壁面に倣う角度を成すように角変位させる方向の弾性回復力が与えられている第2板部材とを含むことを特徴とする隅部の下地材である。
【0007】
本考案に従えば、下地材を、第2板部材で変形させて、各第1板部材が壁の出隅部および入隅部などの隅部に倣う角度を成すように角変位させ、この状態でその隅部に固定する。このように下地材を隅部に装着することによって、隅部における屈曲して連なる各壁面を平坦にそれぞれ仕上げることができる。
【0008】
この下地材は、第2板部材を変形させる前の状態では、各第1板部材が同一仮想平面に沿うように配置され、全体として、略平坦状である。これによって1つの下地材の嵩をできるだけ小さくするとともに、複数の下地材の積重ねを容易にして、運搬などを含む取扱を容易にすることができる。
【0009】
また第2板部材には、各第1板部材が隅部における各壁面に倣う角度を成すように各第1板部材を角変位させる方向の弾性回復力が与えられている。下地材を隅部へ装着するために、下地材を変形させるにあたって、隅部の壁面に倣うように容易に変形させることができる。
【考案の効果】
【0010】
本考案によれば、第2板部材に与えられる弾性回復力を利用して、隅部の壁面に倣うように、下地材を容易に変形させることができる。したがって取扱が容易であり、かつ装着作業の作業性が良好な下地材を実現することができる。」

ウ 「【考案を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本考案の実施の一形態の隅部の下地材8を示す断面図である。図2は、下地材8を示す平面図である。下地材8は、建物の室内において、壁における隅部の壁面を仕上げるために用いられる下地材であり、一対の第1板部材1,2と、第2板部材3とを含んで構成され、各第1板部材1,2と、第2板部材3とは、一体成形される。壁の隅部は、出隅部および入隅部を含む。
【0012】
各第1板部材1,2は、硬質塩化ビニルなどの硬質合成樹脂製であり、その厚みdは一定であり、たとえばd=0.5mmである。各第1板部材1,2は、長手板状であり、一仮想面に沿って配置され、幅方向に相互に間隔d1をあけて、略平行に並べて設けられる。
【0013】
第2板部材3は、長手板状であり、軟質塩化ビニルなどの軟質合成樹脂製である。この第2板部材3は、幅方向両側に設けられて、各第1板部材1,2の表面に積層されるように形成される傾斜部4,5と、各第1板部材1,2の間となる位置に配置され、各傾斜部4,5を連結する連結部6とを有する。
【0014】
各傾斜部4,5は、第2板部材3の幅方向両側部になるにつれて、除々に厚みが小さくなるように、傾斜して形成される。各傾斜部4,5の連結部6寄りの端部の厚みである最大厚みd2は、連結部6の厚みと同一であり、たとえば0.3mmである。各傾斜部4,5の第2板部材3における幅方向両側部の厚みは、零である。各傾斜部4,5の傾斜状態はこれに限定されることはなく、たとえば他の実施の形態では、第2板部材3における幅方向両側部付近だけが、厚みを小さくするように傾斜して形成されてもよい。
【0015】
各第1板部材1,2および第2板部材3の各傾斜部4,5には、複数の透孔7が点在して形成される。これらの透孔7は、互いに同一の内径を有している。
【0016】
図3は、下地材8を変形させた状態で示す斜視図である。図4は、下地材8を出隅部9aに装着した状態で示す断面図である。本実施の形態では、下地材8は、建物の壁9の出隅部9aに装着される。下地材8は、図3に示すように、各第1板部材1,2が、各第1板部材が隅部の壁面に倣う角度を成すように、たとえば直角を成すように変形させて、壁9の出隅部9aに装着される。
【0017】
下地材8では、軟質合成樹脂製の第2板部材3が変形することによって、各第1板部材1,2が角変位できるように、各第1板部材1,2が第2板部材3によって連結されている。この第2板部材3には、各第1板部材1,2が装着対象となる隅部、ここでは出隅部9aの壁面に倣う角度である直角を成すように角変位させる方向の弾性回復力が与えられている。つまり図3に矢符Aで示すように、一方の第1板部材1が、他方の第1板部材2に対して、仮想線で示す位置から実線で示す位置へ角変位する方向の弾性回復力が与えられている。
【0018】
下地材8は、図3に示すように変形された後、出隅部の壁面に塗布される接着剤10によって、出隅部9aに接着固定される。このとき各第1部材1,2の第2板部材3が設けられる側と反対側の表面を、出隅部9aの壁面に対向させて、下地材8が装着される。このように接着剤を用いて固定するにあたって、接着剤が多量に塗布されていても、余分な接着剤は各透孔7に入り込ませることができる。これによって、下地材8を、出隅部9aに平坦に貼着することができる。
【0019】
このように下地材8を装着することによって、出隅部9aにおける壁面を仕上げることができる。出隅部9aが仕上げられた後、たとえば下地材8における壁9の壁面と反対側の表面および下地材8が設けられていない壁9における壁面とに接着剤を塗布し、布または合成樹脂シートなどの壁装材28が貼着される。
【0020】
本実施の形態の下地材8によれば、たとえばモルタルなどから成る壁9の出隅部9aに、凹凸があったとしても、この下地材8を装着することによって壁面を平坦に仕上げることができる。さらに第2板部材3が傾斜して形成されているので、下地材8の幅方向両端部における段差をできるだけ小さくすることができる。
【0021】
また硬質合成樹脂製の第1板部材1,2を、軟質合成樹脂製の第2板部材3によって覆う構造であり、第1板部材1,2の割れおよびひびを防ぐこととができる。また壁装材は、軟質合成樹脂製の第2板部材3上に接着されるので、壁装材の皺の発生を防止することができる。
【0022】
さらに下地材は、第2板部材3を変形させる前の状態では、図1に示すように、各第1板部材1,2が同一仮想平面に沿うように配置され、全体として、略平坦状である。これによって1つの下地材8の嵩をできるだけ小さくするとともに、複数の下地材8の積重ねを容易にして、運搬などを含む取扱を容易にすることができる。
【0023】
その上、第2板部材3には、各第1板部材1,2が出隅部9aにおける各壁面に倣う角度を成すように各第1板部材1,2を角変位させる方向の弾性回復力が与えられている。したがって下地材8を出隅部9aへ装着するために、下地材8を変形させるにあたって、出隅部9aの壁面に倣うように容易に変形させることができる。このように下地材8は、取扱が容易であり、かつ装着作業の作業性が良好である。
【0024】
図5は、下地材8を製造する製造装置40を示す系統図である。まず一対の第1板部材1,2を、一仮想平面に沿う状態で幅方向に間隔をあけて並べ、これらを第2板部材3で連結するように、押出機41で押し出して一体に成形し、折曲機42によって、想定される装着対象の壁の隅部、つまり出隅部9aに倣う形状となるように、第2板部材3を折り曲げる。このように折り曲げた状態で、加熱手段であるヒータ43で第2板部材3を加熱した後、冷却手段44で第2板部材3を急冷して、この折り曲げられた状態での形状、つまり図3に示す形状を安定化させる。そして、引取機45によって、折り曲げ前の平坦な状態に戻しながら引取り、下地材8が製造される。
【0025】
このような手順で製造することによって、前述のように、第2板部材3に弾性回復力が与えられた下地材8を得ることができる。この下地材8は、いわゆる曲り癖を有し、各第1板部材1,2が内側に倒れ易く、出隅部9aになじみやすい、下地材となる。」

エ 【図3】をみると、仮想線で示す位置は、一方の第1板部材1と他方の第1の板部材とが水平状態となっていることが分かるので、上記ウの【0017】に記載された「弾性回復力」とは、「一方の第1板部材1と他方の第1の板部材とが水平状態から直角を成すように角変位させる方向の弾性回復力」といえる。


2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「平板3,3」は、その機能及び構造からみて、本件発明1の「帯状部」に相当し、以下同様に、甲1発明の「蝶番部2」が「連結部」に、「建物の壁面の出隅部分に取付け、該角部を凹凸のない平坦面に先仕上げし、壁装材の貼着を容易にし、壁仕上げを美麗化するコーナー材1」が「壁コーナ用下地材」に、それぞれ相当する。

イ 甲1発明の「軟質合成樹脂製の」「蝶番部2の長手方向左右両端に」「一体に連結し」た「硬質合成樹脂製の平板3,3」は、本件発明1の「合成樹脂から成り、各一側部が互いに隣接して平行に延びる一対の帯状部」に相当する。

ウ 甲1発明は、「可撓性に富む軟質合成樹脂製の」「蝶番部2の長手方向左右両端に、」「硬質合成樹脂製の平板3,3を一体に連結し」ていることからみて、「平板3,3」の一側部を「蝶番部2」に連結していること、及び、「蝶番部2」の合成樹脂は「平板3,3」の合成樹脂よりも軟質であることが明らかである。
そうすると、甲1発明の「硬質合成樹脂製の平板3,3を」「長手方向左右両端に」「一体に連結して」「折曲げ自在に構成した」「可撓性に富む軟質合成樹脂製の」「蝶番部2」と、本件発明1の「前記帯状部よりも軟質の合成樹脂から成り、厚みが前記帯状部の厚みよりも小さく形成され、前記各一側部を連結する連結部」とは、「帯状部よりも軟質の合成樹脂から成り、各一側部を連結する連結部」で共通する。

エ 甲1発明の「蝶番部2の長手方向左右両端に、」「平板3,3を一体に連結し」たことは、本件発明1の「前記連結部は長手方向に垂直な幅方向両端部が前記一対の帯状部の隣接する前記各一側部に連結され」たことに相当する。

オ したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致する。
一致点:合成樹脂から成り、各一側部が互いに隣接して平行に延びる一対の帯状部と、
前記帯状部よりも軟質の合成樹脂から成り、前記各一側部を連結する連結部と、を含み、
前記連結部は長手方向に垂直な幅方向両端部が前記一対の帯状部の隣接する前記各一側部に連結された、壁コーナ用下地材。

また、以下の点で相違している。
相違点1:本件発明1は、連結部の厚みが帯状部の厚みより小さく形成され、厚み方向の一方側において、前記帯状部の表面と前記連結部の表面とが段差なく連なっているのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
相違点2:本件発明1は、連結部が各帯状部を重ねた折畳み状態から、各帯状部が30°以上、120°以下の角度を成す拡開状態に復帰する弾性回復性を有しているのに対し、甲1発明の蝶番部2は、そのような特定がない点。

(2)判断
上記相違点1,2について検討する。
ア 相違点1について
相違点1について、請求人は甲第1号証?甲第3号証に記載されている旨主張している(上記「第3 1(1)?(3)」参照。)ので、当該主張について検討する。
a まず、甲第1号証に記載された甲1発明において、蝶番部2は厚さ1ミリ以下との限定があるのに対し、平板3,3も同じく厚さ1ミリ以下との限定が一応あるものの、その厚さの限定に加え、さらに望ましくは0.5ミリ程度の肉厚が求められることから、平板3,3の厚さは、蝶番部2の厚さと同等であるか、もしくは蝶番部の厚さよりも薄い程度のものが理解でき、請求人が言うように、蝶番部2と平板部3,3の厚さにおいて、蝶番部の厚さを平板3,3の厚さよりも薄いものとすることが示唆されてるとはいえない。
b 次に、甲第2号証には、上記「1(2)オ」で認定した甲2技術事項が記載されている。
甲2技術事項のコーナー材1は、幅方向の中央部に形成される折り目2(断面凹状の筋)は、片面だけに形成しておいても良いものであるが、そのどちら側に設けるのか、さらにその位置に設けることによって、どの方向にコーナー材1が曲げ易くなるのか示唆されていない。したがって、片面だけに形成しても良いとしても、甲1発明のコーナー材の裏面側に甲2技術事項の断面凹状の筋を設けること、つまり甲1発明の蝶番部2の厚みが平板3,3の厚みより小さく形成し、厚み方向の一方側において、平板3,3の表面と蝶番部2の表面とが段差なく連なっているものに代えることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
さらに、甲2技術事項の解決すべき課題の一つとして、「従来のコーナー材は、・・・折り曲げ用の蝶番部が柔らかい材質で作られているため、該蝶番部の強度が弱く、出隅に使用した時はコーナー部のエッジ部の強度が弱くなり、この部分に他の物体が衝突した時には容易に変形や損傷が生じるという問題点」(上記「1(2)ア」参照。)があり、それを解決するために、甲2技術事項は折り目2を凹状に設けたことを考慮すれば、仮に、甲1発明の蝶番部2に甲2技術事項を適用したとしても、軟質合成樹脂という材質に代えて凹状という形状を適用することが自然であって、軟質合成樹脂製かつ凹状とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
c また、甲第3号証には、上記「1(3)ウ」で認定した甲3技術事項が記載されている。
甲3技術事項のコーナー部保護部材1Cは、表面及び裏面に4個ずつの溝部を備えるものであって、そのうち、裏面の左から2番目の溝部22は、断面L字状のコーナー部に対応するものであるから、当該溝部22は、本件発明1の連結部と同様の構成を有しているともいえる。そして、甲3技術事項のコーナー部保護部材1Cは、その技術分野を参酌すると、甲1発明のコーナー材1と同様に、壁面のコーナーに設ける部材である。
しかしながら、甲3技術事項は、壁、柱などのコーナー部を損傷から保護するためのものであって、その溝部22は、裏面の他の3個の溝部21,23,24に比べて、溝幅を大きくしてあることから、コーナー部を綺麗に仕上げるものではない。したがって、角部を凹凸のない平坦面に先仕上げする甲1発明のコーナー材1に、上記目的の甲3技術事項を適用する動機付けが存在しない。
d 上記a?cのとおりであるから、甲1発明のコーナー材1に、甲第1号証に記載された事項、甲2技術事項又は甲3技術事項を適用して、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

(イ)相違点2について
請求人は、弾性回復性をどの程度にするかについて、甲第4号証又は甲第5号証に記載の発明を適宜に適用することは、当業者が容易になしえたことである旨主張している(上記「第3 1(6)」参照。)ので、当該主張について検討する。
a 甲第4号証(上記「1(4)」の「エ」の段落【0022】、同じく「オ」の段落【0046】及び【0047】参照。)には、コーナーテープの20mm×20mmのサンプルを対称に2つ折りしたものを500gの重りを30秒間のせた後、1分間放置したとき開いた角度が8度以上、好ましくは20度以上、より好ましくは50度以上、さらに好ましくは70度以上、特に好ましくは80度以上であって、実施例1?実施例5の角度が、それぞれ11度、24度、108度、163度、155度であることが記載されている。
ここで、甲第4号証における角度は、「対照に2つ折りした一方のものと、当該一方側の水平面と角度」(上記「1(4)カ」参照。)であるから、当該角度を、本件発明1における「角度」の意義(「一対の帯状部2a,2bがなす内角」)に照らせば、172度以下、好ましくは160度以下、より好ましくは130度以下、さらに好ましくは110度以下、特に好ましくは100度以下であって、実施例1?実施例5の角度は、それぞれ169度、156度、72度、17度、25度である。
しかしながら、甲第4号証に記載された上記角度の範囲は、本件発明1の角度の範囲と比較して広いものであり、そして、本件発明1は、当該角度を、30°以上120°以下とすることにより、本件特許明細書に記載された「角度θが30°であれば、・・・十分指を入れて広げることができ、作業性の低下を招かない。また角度θが120°を越えると、剛性が低下し、ロール状の巻き癖に負けてしまう。」(段落【0044】)との作用効果、及び審判事件答弁書記載の「この30°以上、120°以下の範囲では、壁コーナ部に接着された施工後の壁コーナ用下地剤が、剥離するおそれがない。」(6頁12?14行)との作用効果を奏することができるものである。
b また、甲第5号証をみると、「下地材8は、・・・直角を成すよう変形させて、壁9の出隅部9aに装着される。」(上記「1(5)ウ」の段落【0016】参照。)ことが記載されており、当該直角は本件発明1の30°以上120°以下の範囲に含まれる。
しかしながら、甲第5号証に記載の下地材8は、「一方の第1板部材1と他方の第1の板部材とが水平状態から直角を成すように角変位させる方向の弾性回復力」(上記「1(5)エ」参照。)であって、本件発明1のように、「各帯状部を重ねた状態から、各帯状部が30°以上、120°以下の角度を成す拡開状態に復帰する弾性回復性を有」するものではない。
加えて、甲第5号証に「下地材8を製造する製造装置40・・・。まず一対の第1板部材1,2を、一仮想平面に沿う状態で幅方向に間隔をあけて並べ、これらを第2板部材3で連結するように、押出機41で押し出して一体に成形し、折曲機42によって、想定される装着対象の壁の隅部、つまり出隅部9aに倣う形状となるように、第2板部材3を折り曲げる。このように折り曲げた状態で、加熱手段であるヒータ43で第2板部材3を加熱した後、冷却手段44で第2板部材3を急冷して、この折り曲げられた状態での形状、つまり図3に示す形状を安定化させる。そして、引取機45によって、折り曲げ前の平坦な状態に戻しながら引取り、下地材8が製造される。」(上記「1(5)ウ」の段落【0024】参照。)と記載されているように、弾性回復力を与えるために、甲第5号証に記載の製造装置40には、押出機41の下流に、折曲機42、ヒータ43、冷却手段44、引取機45が必要となることから、「押出成形され、各帯状部2a,2bが連結部5を挟んで平行に展開された状態で巻取り機によってロール状に捲回され、円筒状の巻回ロールRとして製造される。」(本件明細書の段落【0028】参照。)との本件発明1に係る下地材の製造と比較して、甲第5号証に記載の下地材8は、より多くの手順及び装置を必要とするものである。
c したがって、甲第4号証又は甲第5号証の記載に基いて、甲1発明の蝶番部2を、相違点2に係る角度の弾性回復性を有するものとすることは、当業者が容易になし得たものではない。

ウ 小括
以上のことから、本件発明1は、当業者が、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに請求の範囲2ないし4に記載された構成で限定するものである。
そうすると、本件発明1が上記(1)で検討したとおりであるから、本件発明1の構成要件をすべて含み、さらに限定を加えたものである本件発明2ないし4も、同様の理由により、当業者が、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。


第5 むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によって、本件発明1ないし本件発明4に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-28 
結審通知日 2016-02-01 
審決日 2016-02-18 
出願番号 特願2013-245931(P2013-245931)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多田 春奈  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
小野 忠悦
登録日 2014-10-10 
登録番号 特許第5628405号(P5628405)
発明の名称 壁コーナ用下地材  
代理人 西教 圭一郎  
代理人 高島 敏郎  
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