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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1312912 |
審判番号 | 不服2015-5950 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-01 |
確定日 | 2016-04-19 |
事件の表示 | 特願2010-287440「カラーフィルタ及びそれを用いた液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月12日出願公開、特開2012-133293、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年12月24日に出願した特許出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 平成26年 8月20日:拒絶理由通知(同年同月26日発送) 平成26年10月24日:意見書 平成26年10月24日:手続補正書(以下、これによりなされた補正を「本件補正前の補正」という。) 平成26年12月24日:拒絶査定(平成27年1月6日送達) 平成27年 4月 1日:手続補正書(以下、これによりなされた補正を「本件補正」という。) 平成27年 4月 1日:審判請求 第2 本件補正の適否 1 補正の内容 本件補正は、本件補正前の補正によって補正された特許請求の範囲及び明細書についてするものであって、特許請求の範囲について、本件補正前の補正による請求項1が次の(1)アのとおりであったものを、次の(2)アのとおりとする補正(以下「補正事項1」という。)、本件補正前の補正による請求項5が次の(1)イのとおりであったものを、次の(2)イのとおりとする補正(以下「補正事項2」という。)、明細書について、本件補正前の補正による段落【0010】の「前記柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さが、0.35μm以上であり」との記載を、「前記柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さが、0.35μm以上0.49μm以下であり」との記載にする補正(以下「補正事項3」という。)、本件補正前の補正による段落【0017】の「前記柱状突起又は前記柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さが、0.35μm以上であり」との記載を、「前記柱状突起又は前記柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さが、0.35μm以上0.49μm以下であり」との記載にする補正(以下「補正事項4」という。)からなるものである(下線は当審で付したものである。以下同じ。「第2 1」においては補正箇所を示す。)。 (1)本件補正前の請求項1及び5 ア 「【請求項1】 透明基板と、 前記透明基板の一方の面上に、開口部を有する所定パターン状に形成されてなる遮光部と、 前記開口部に設けられた複数色の着色部と、 前記遮光部上に、前記複数色のうちの2色以上の着色部を構成する各材料からなる着色層が柱状に積層されてなる柱状積層部と、 少なくとも前記着色部及び前記柱状積層部を被覆する、透明樹脂からなる透明保護層と、 前記透明保護層を被覆するようにして設けられてなる配向膜と を備え、 前記柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さが、0.35μm以上であり、 前記柱状積層部、並びに当該柱状積層部の周囲を被覆する前記透明保護層及び前記配向膜により柱状凸部が構成され、 前記柱状凸部の頂部に9秒間で200mNまで前記透明基板に対して垂直方向に荷重をかけ、そのままの状態で5秒間保持したときに、荷重前後における前記頂部の位置の、前記透明基板に対して垂直方向における変位量が0.45μm以上であることを特徴とするカラーフィルタ。」 イ 「【請求項5】 透明基板と、 前記透明基板の一方の面上に設けられた、開口部を有する所定パターン状に形成されてなる遮光部と、 前記開口部に設けられた複数色の着色部と、 前記遮光部上に設けられた、前記複数色のうちの1色の着色部を構成する材料からなる柱状突起又は前記複数色のうちの2色以上の着色部を構成する各材料からなる着色層が柱状に積層されてなる柱状積層部と、 少なくとも前記着色部、及び前記柱状突起又は前記柱状積層部を被覆する、透明樹脂からなる透明保護層と、 前記透明保護層を被覆するようにして設けられてなる配向膜と を備え、 前記遮光部は、前記複数色の着色部のうちの2色以上が積層されて構成され、 前記柱状突起又は柱状積層部は、前記遮光部として積層されている着色部と異なる色により構成され、 前記柱状突起又は前記柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さが、0.35μm以上であり、 前記柱状突起並びに当該柱状突起の周囲を被覆する前記透明保護層及び前記配向膜、又は前記柱状積層部並びに当該柱状積層部の周囲を被覆する前記透明保護層及び前記配向膜により柱状凸部が構成され、 前記柱状凸部の頂部に9秒間で200mNまで前記透明基板に対して垂直方向に荷重をかけ、そのままの状態で5秒間保持したときに、荷重前後における前記頂部の位置の、前記透明基板に対して垂直方向における変位量が0.45μm以上であることを特徴とするカラーフィルタ。」 (2)本件補正後の請求項1及び5 ア 「【請求項1】 透明基板と、 前記透明基板の一方の面上に、開口部を有する所定パターン状に形成されてなる遮光部と、 前記開口部に設けられた複数色の着色部と、 前記遮光部上に、前記複数色のうちの2色以上の着色部を構成する各材料からなる着色層が柱状に積層されてなる柱状積層部と、 少なくとも前記着色部及び前記柱状積層部を被覆する、透明樹脂からなる透明保護層と、 前記透明保護層を被覆するようにして設けられてなる配向膜と を備え、 前記柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さが、0.35μm以上0.49μm以下であり、 前記柱状積層部、並びに当該柱状積層部の周囲を被覆する前記透明保護層及び前記配向膜により柱状凸部が構成され、 前記柱状凸部の頂部に9秒間で200mNまで前記透明基板に対して垂直方向に荷重をかけ、そのままの状態で5秒間保持したときに、荷重前後における前記頂部の位置の、前記透明基板に対して垂直方向における変位量が0.45μm以上であることを特徴とするカラーフィルタ。」 イ 「【請求項5】 透明基板と、 前記透明基板の一方の面上に設けられた、開口部を有する所定パターン状に形成されてなる遮光部と、 前記開口部に設けられた複数色の着色部と、 前記遮光部上に設けられた、前記複数色のうちの1色の着色部を構成する材料からなる柱状突起又は前記複数色のうちの2色以上の着色部を構成する各材料からなる着色層が柱状に積層されてなる柱状積層部と、 少なくとも前記着色部、及び前記柱状突起又は前記柱状積層部を被覆する、透明樹脂からなる透明保護層と、 前記透明保護層を被覆するようにして設けられてなる配向膜と を備え、 前記遮光部は、前記複数色の着色部のうちの2色以上が積層されて構成され、 前記柱状突起又は柱状積層部は、前記遮光部として積層されている着色部と異なる色により構成され、 前記柱状突起又は前記柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さが、0.35μm以上0.49μm以下であり、 前記柱状突起並びに当該柱状突起の周囲を被覆する前記透明保護層及び前記配向膜、又は前記柱状積層部並びに当該柱状積層部の周囲を被覆する前記透明保護層及び前記配向膜により柱状凸部が構成され、 前記柱状凸部の頂部に9秒間で200mNまで前記透明基板に対して垂直方向に荷重をかけ、そのままの状態で5秒間保持したときに、荷重前後における前記頂部の位置の、前記透明基板に対して垂直方向における変位量が0.45μm以上であることを特徴とするカラーフィルタ。」 2 新規事項の追加の有無について 前記1で述べた補正事項1?4について、本願の願書に最初に添付した明細書(以下、願書に最初に添付した明細書を「当初明細書」といい、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を総称して「当初明細書等」という。)の段落【0016】、【0018】、【0036】及び【0063】等には、柱状突起又は柱状積層部の上部における透明保護層の厚みT_(OC)を0.35μm以上としたカラーフィルタを用いた液晶表示装置では、透明保護層及び配向膜が欠けて剥がれ落ちるのが抑制され、振動や衝撃等に起因する輝点不良の発生を抑制できることが記載されており、段落【0103】及び【0108】?【0109】には、実施例として、柱状凸部の上部における透明保護層の厚みT_(OC)を0.49μmとしたカラーフィルタ(試料7)を用いた液晶表示装置では、耐振動試験において輝点不良が確認されなかったことが記載されていることから、カラーフィルタにおける柱状突起又は柱状積層部の上部における透明保護層の厚みT_(OC)を0.35μm以上0.49μm以下とすることは当初明細書等に記載されているといえ、前記補正事項1?4は当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 したがって、請求項1及び5並びに明細書の段落【0010】及び【0017】についてする本件補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 3 補正の目的について 前記1で述べた補正事項1は、本件補正前の請求項1について、その発明特定事項である「前記柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さ」を「0.35μm以上」から「0.35μm以上0.49μm以下」に限定するものであり、本件補正の前後において、請求項1に係る発明の産業上の利用分野は、ともにカラーフィルタ(段落【0001】参照。)であって同一であり、解決しようとする課題は、ともに液晶表示装置の輸送時等における振動や衝撃等に起因する表示ムラの発生を防止することができるとともに、保護層の剥がれ落ちを原因とする輝点不良の発生を防止することのできるカラーフィルタを提供すること(段落【0009】参照。)であって同一である。 また、前記1で述べた補正事項2は、本件補正前の請求項5について、その発明特定事項である「前記柱状突起又は前記柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さ」を「0.35μm以上」から「0.35μm以上0.49μm以下」に限定するものであり、請求項1と同様に、本件補正の前後において、請求項5に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 よって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 4 独立特許要件について 前記3で述べたように、請求項1及び5についての本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1及び5に係る発明(以下、それぞれ「本件補正発明1」及び「本件補正発明5」という。)について、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。 (1)本件補正発明1及び本件補正発明5 本件補正発明1は、前記1(2)アにて、本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。 また、本件補正発明5は、前記1(2)イにて、本件補正後の請求項5として記載したとおりのものである。 (2)引用例の記載事項及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-210935号公報(以下、「引用例」という。)には、「横電界液晶駆動方式用カラーフィルタ」(発明の名称)に関して以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 基板と、前記基板上にパターン状に形成され、短辺および長辺を有する長方形状の開口部を備える遮光部と、前記開口部に形成された複数色の画素部着色部、および、前記遮光部上に形成され、前記複数色の画素部着色部と同色の複数色の非画素部着色部を有し、前記開口部の長辺方向に隣接する前記画素部着色部の色が同色である着色層と、表示領域内の前記遮光部上に形成され、前記各色の非画素部着色部が2層以上積層された複数の積層柱と、前記着色層および前記積層柱を覆うように形成された透明保護層とを有する横電界液晶駆動方式用カラーフィルタであって、 前記積層柱が、長辺方向に隣接する前記開口部に挟まれる積層柱形成領域に形成され、 前記積層柱を構成する前記非画素部着色部のうち、最上層の前記非画素部着色部の厚みが0.4μm?2.0μmの範囲内であり、 前記積層柱を構成する前記非画素部着色部のうち、最下層の前記非画素部着色部の前記積層柱形成領域での前記開口部の長辺方向の幅をw_(1)、前記積層柱を構成する前記非画素部着色部のうち、最上層の前記非画素部着色部の前記積層柱形成領域での前記開口部の長辺方向の幅をw_(z)としたとき、0.2<w_(z)/w_(1)<0.6の関係を満たすことを特徴とする横電界液晶駆動方式用カラーフィルタ。」 イ 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、スペーサとして複数色の着色部が積層された積層柱を有する横電界液晶駆動方式用カラーフィルタに関するものである。 【背景技術】 【0002】 一般に、液晶表示装置の動作モードには、対向する一対の透明基材に平行に配向した液晶分子を透明基材に対して垂直な方向に電界をかけ駆動するツイステッド・ネマティック(Twisted Nematic:TN)方式や、透明基材に対して平行な方向に電界をかける横電界駆動(In Plain Switching:IPS)方式等がある。このような液晶表示装置の動作モードの中でも、近年、液晶ディスプレイとした際に視野角が広いといった利点から液晶表示装置の動作モードとして、IPS方式が普及してきている。 【0003】 一般に、IPS方式用カラーフィルタは、基板上に遮光部、着色層、透明保護層およびスペーサが形成されたものである。このIPS方式用カラーフィルタでは、着色層の表面を平坦化するため、かつ、着色層から液晶層への汚染物質の溶出を防ぐため、通常、着色層上に透明保護層(オーバーコート層とも称する。)が形成される。 【0004】 従来、スペーサの形成方法としては、ガラス、アルミナ又はプラスチック等からなる一定サイズの球状又は棒状粒子を多数散在させる方法が用いられてきたが、スペーサとして粒子を散在させる方法では、スペーサの分布が偏り易い等の種々の問題点があった。 これら粒子状スペーサの問題点を解消する方法として、フォトレジストを用いてフォトリソグラフィー法によりフォトスペーサを形成する方法が開示されている。 また、スペーサとして、複数色の着色部が積層された積層柱を用いる方法も開示されている(例えば特許文献1および特許文献2参照)。 【0005】 ここで、スペーサには、微小な荷重に対して容易に変形する特性が要求される。これは以下の理由によるものである。 例えば液晶が低温に置かれた場合、液晶表示装置を構成する部材はすべて収縮しようとし、構成する部材の中では液晶材料の収縮率が最も大きいため、基板間のギャップが狭くなる方向に収縮することとなる。このとき、スペーサの変形がギャップの狭まりに追従できなくなると、液晶表示装置内部に負圧が生じ、その結果液晶表示装置内に真空気泡(低温発泡)が発生し易くなるからである。 また、例えば液晶表示装置が用いられる際、バックライトから発せられる熱によって、液晶表示装置に熱がかかる。この場合、液晶表示装置を構成する部材は全て膨張しようとし、この場合においても、構成する部材の中で、液晶材料の膨張率が最も大きいことから、基板間のギャップが広くなる方向に膨張することとなる。このとき、上記と同様に、スペーサの変形が、ギャップの広がりに追従できなくなると、液晶セル内部に圧力が生じ、その結果、基板と液晶層との間に隙間ができる。これにより、隙間から液晶材料が溢れ出すこととなり、その溢れ出した液晶材料が重力によって液晶セルから流れ落ち、むら(重力むら)が生じることとなるからである。 【0006】 また近年、液晶表示装置の大画面化が進み、特に液晶テレビに適用される液晶表示装置では大画面化の傾向が強くなっており、広い基板の全域にわたってセルギャップを均一に維持する必要性が高くなってきた。 さらに近年、液晶表示装置の製造工程を簡素化し生産性を向上させるために、室温下でセル圧着を行う方法が提案されており、中でも、ワンドロップフィル(One Drop Fill:ODF)法が主流になりつつなる。ODF法は、カラーフィルタまたは対向基板のような液晶パネル基板に所定量の液晶を滴下し、もう一方の液晶パネル基板を真空下で所定のセルギャップを維持できる状態で対峙させ、貼り合せる方法である。このようなセル圧着法(特にODF法)の場合、セル圧着時に塑性変形を起こさず、均一なセルギャップを形成できるスペーサが求められている。 【0007】 一方、スペーサには、強い力を加え、その後力を除去した後の変位量が小さいことも要求される。これは、局所的に液晶セルに荷重が加えられた場合、例えば指押し試験等の耐圧試験等において、力が除去された後の変位量が大きい場合には、表示不良が発生する可能性があるからである。 【0008】 上記の微小な荷重に対して容易に変形する特性および局所的な荷重に対して変形しにくい特性の2つの特性は相反するものであることから、それぞれの特性を有するスペーサを形成することが困難であり、微小な荷重に対して変形が大きく、強い力に対する変位量の小さい液晶表示装置を形成することが困難であった。 特に、上記フォトスペーサの場合、一般的にはその形状がフォトスペーサの厚み方向に連続的に変化するものとなり、形成可能な形状が制限されるため、得られる変形特性も制限されることとなり、上記2つの特性を両立するのが困難であった。 ・・・(中略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 ・・・(中略)・・・ 【0012】 本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、スペーサとして積層柱を用いたものであり、微小荷重域での変位量が大きく、また局所的な荷重に対しても十分な耐性を有し、さらにセルギャップを一定に保つことが可能である、高品質な横電界液晶駆動方式用カラーフィルタを提供することを主目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0013】 上記目的を達成するために、本発明は、基板と、上記基板上にパターン状に形成され、短辺および長辺を有する長方形状の開口部を備える遮光部と、上記開口部に形成された複数色の画素部着色部、および、上記遮光部上に形成され、上記複数色の画素部着色部と同色の複数色の非画素部着色部を有し、上記開口部の長辺方向に隣接する上記画素部着色部の色が同色である着色層と、表示領域内の上記遮光部上に形成され、上記各色の非画素部着色部が2層以上積層された複数の積層柱と、上記着色層および上記積層柱を覆うように形成された透明保護層とを有する横電界液晶駆動方式用カラーフィルタであって、上記積層柱が、長辺方向に隣接する上記開口部に挟まれる積層柱形成領域に形成され、上記積層柱を構成する上記非画素部着色部のうち、最上層の上記非画素部着色部の厚みが0.4μm?2.0μmの範囲内であり、上記積層柱を構成する上記非画素部着色部のうち、最下層の上記非画素部着色部の上記積層柱形成領域での上記開口部の長辺方向の幅をw_(1)、上記積層柱を構成する上記非画素部着色部のうち、最上層の上記非画素部着色部の上記積層柱形成領域での上記開口部の長辺方向の幅をw_(z)としたとき、0.2<w_(z)/w_(1)<0.6の関係を満たすことを特徴とする横電界液晶駆動方式用カラーフィルタを提供する。 【0014】 本発明においては、積層柱を構成する非画素部着色部のうち、最上層の非画素部着色部の厚みが所定の範囲であり、比較的厚いといえる。また、積層柱形成領域内における開口部の長辺方向の幅について、積層柱を構成する非画素部着色部のうち、最下層の非画素部着色部の幅に対する最上層の非画素部着色部の幅の比が所定の範囲であり、最上層の非画素部着色部の幅が比較的狭く、最下層の非画素部着色部の幅が比較的広いといえる。したがって、本発明の横電界液晶駆動方式用カラーフィルタを液晶表示装置に用いた際には、最上層の非画素部着色部によって、その荷重が支えられることとなり、積層柱の変形をより生じやすくすることができる。これにより、例えば重力むらや低温発泡等が生じるのを抑制することができる。一方、液晶表示装置に大きな荷重がかけられた場合には、最下層の非画素部着色部によっても、加えられた荷重を支えることとなることから、積層柱がその荷重に対して大きな抗力を有する。したがって、液晶表示装置に用いた際には局所的な荷重に対しても十分な耐性を有するものとすることができ、またセルギャップを一定にすることが可能な横電界液晶駆動方式用カラーフィルタとすることが可能である。 ・・・(中略)・・・ 【発明の効果】 【0017】 本発明においては、微小荷重域での変位量が大きく、重力むらや低温発泡等の発生が抑制され、また局所的な荷重に対しても十分な耐性を有し、さらにはセルギャップを一定に保つことが可能であるという効果を奏する。」 ウ 「【0019】 本発明の横電界液晶駆動方式用カラーフィルタについて図面を参照しながら説明する。図1は本発明の横電界液晶駆動方式用カラーフィルタの一例を示す概略平面図であり、図2は図1におけるA-A線断面図、図3は図1におけるB-B線断面図である。なお、図1において、透明保護層は省略されている。 【0020】 図1?図3に例示する横電界液晶駆動方式用カラーフィルタ1は、基板2と、基板2上に形成され、短辺および長辺を有する長方形状の開口部12を備える遮光部3と、開口部12に形成された赤、緑および青の3色の画素部着色部(4R,4G,4B)および遮光部3上に形成された赤、緑および青の3色の非画素部着色部(5R,5G,5B)を有し、開口部12の長辺方向mに隣接する画素部着色部(4R,4G,4B)の色が同色である着色層と、遮光部3上に形成され、赤、緑および青の3色の非画素部着色部(5R,5G,5B)が積層された積層柱6と、着色層および積層柱を覆うように形成された透明保護層7とを有している。また、積層柱6は、長辺方向mに隣接する開口部12に挟まれる積層柱形成領域13に形成されている。 【0021】 また、積層柱6を構成する非画素部着色部のうち、最上層(3層目)の緑色非画素部着色部5Gの厚み(t)が所定の範囲内となり、積層柱6を構成する非画素部着色部のうち、最下層(1層目)の赤色非画素部着色部5Rの積層柱形成領域13での開口部の長辺方向mの幅(w_(1))に対する最上層(3層目)の緑色非画素部着色部5Gの積層柱形成領域13での開口部の長辺方向mの幅(w_(z))の比(w_(z)/w_(1))が所定の範囲内となっている。 【0022】 図1?図3に例示するような本発明の横電界液晶駆動方式用カラーフィルタを用いた液晶表示装置において、微小な荷重がかけられた場合、積層柱6上の透明保護層7と、積層柱6を構成する非画素部着色部のうち、最上層(3層目)の緑色非画素部着色部5Gとに荷重がかかることとなる。ここで、本発明においては、最上層の非画素部着色部の厚みが所定の範囲内であり、比較的厚いといえる。また、最下層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅に対する最上層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅の比が所定の範囲内であり、一般に積層柱が形成される遮光部の幅等は所定の範囲内であるので、最下層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅も自ずと所定の範囲内となり、最上層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅は比較的狭いといえる。すなわち、最上層の非画素部着色部の平面視面積は比較的小さいといえる。したがって、最上層の非画素部着色部の厚みが所定の範囲内であり、最下層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅に対する最上層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅の比が所定の範囲内であることにより、上記荷重に対する抗力を小さくすることができる。そのため、微小な荷重がかけられた場合、最上層の緑色非画素部着色部5Gは変形しやすく、液晶表示装置の変位量を大きなものとすることができる。 【0023】 さらに、積層柱6を覆うように透明保護層7が形成されている。この透明保護層の形成方法としては、透明保護層用感光性樹脂組成物を塗布する方法が一般的である。透明保護層の形成時において、遮光部、着色層および積層柱が形成された基板上に透明保護層用感光性樹脂組成物を塗布すると、透明保護層用感光性樹脂組成物が、積層柱の頂部から画素部着色部上に流れ落ちるレベリングが生じる。そのため、積層柱6が形成されている部位の透明保護層7の上底面積を、積層柱6を構成する最上層の緑色非画素部着色部5Gの平面視面積よりも、小さくすることができる。これにより、微小な荷重がかけられた場合に、この荷重に対する抗力をより小さくすることができ、積層柱6が形成されている部位の変形を生じやすくすることができる。 【0024】 一方、上記液晶表示装置において、大きな荷重がかけられた場合、その荷重は、積層柱6上の透明保護層7と、積層柱6を構成する非画素部着色部のうち、最上層(3層目)の緑色非画素部着色部5G、2層目の青色非画素部着色部5Bおよび最下層(1層目)の赤色非画素部着色部5Rとによって、支えられることとなる。したがって、液晶表示装置にかかる荷重は分散される。ここで、本発明においては、最下層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅に対する最上層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅の比が所定の範囲内であり、一般に積層柱が形成される遮光部の幅等は所定の範囲内であるので、最下層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅も自ずと所定の範囲内となり、最上層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅は比較的狭く、最下層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅は比較的広いといえる。すなわち、最上層の非画素部着色部の平面視面積は比較的小さく、最下層の非画素部着色部の平面視面積は比較的大きいといえる。このように、最下層の非画素部着色部の平面視面積が比較的大きいので、最下層(1層目)の赤色非画素部着色部5Rの高さ(厚み)より下方への液晶表示装置の変位が起こりづらく、それ以上の液晶表示装置の変位を少ないものとすることができる。 【0025】 したがって、本発明の横電界液晶駆動方式用カラーフィルタを用いることにより、低温発泡や重力むら等のないものとすることができ、かつ、局所的な荷重がかけられた場合であっても、変形等のない、高品質な液晶表示装置を得ることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0034】 なお、「画素部着色部」とは、基板上の遮光部の開口部に形成されるものであり、基板上の遮光部の開口部に配置された着色部の部分をいう。また、「非画素部着色部」とは、遮光部上に形成されるものであり、遮光部上に配置された着色部の部分をいう。複数色の画素部着色部の色と複数色の非画素部着色部の色とはそれぞれ同色である。 ・・・(中略)・・・ 【0036】 「表示領域」とは、図1に例示するように、開口部12に形成される画素部着色部(4R、4G、4B)とこれらの画素部着色部(4R、4G、4B)間に形成された遮光部3(画素間遮光部)とで画定される領域をいう。画素部着色部(4R、4G、4B)が配列された着色層の外周を囲むように形成された遮光部(額縁遮光部)が設けられている領域は表示領域ではないとする。本発明において、積層柱は、表示領域内の遮光部、すなわち画素間遮光部上に形成されている。 【0037】 「積層柱形成領域」とは、長辺方向に隣接する開口部に挟まれる領域であり、かつ、積層柱が形成される領域である。また、「長辺方向に隣接する開口部に挟まれる領域」とは、長辺方向に隣接する開口部にのみ挟まれ、開口部の短辺に隣接する領域をいう。例えば図1においては、積層柱形成領域13は、長辺方向mに隣接する開口部12にのみ挟まれ、開口部12の短辺に隣接する領域であり、積層柱6が形成される領域となる。 また、「積層柱が、積層柱形成領域に形成されている」とは、積層柱を構成する各非画素部着色部が、平面視上、積層柱形成領域で重なるように形成されることをいう。 【0038】 また、「積層柱を構成する非画素部着色部のうち、最上層の非画素部着色部の厚み」とは、積層柱を構成する非画素部着色部のうち、最上層の非画素部着色部の厚みであって、最上層の非画素部着色部の厚みのうち最大の厚みをいう。例えば図3において、最上層の非画素部着色部の厚みはtである。 ・・・(中略)・・・ 【0041】 「積層柱または第2の積層柱の高さ」とは、遮光部の表面から垂直方向に、積層柱または第2の積層柱の頂部までの距離のうち最長の距離をいう。例えば図1?図9において、積層柱6の高さはd1である。また例えば図4?図6において、第2の積層柱8の高さはd2である。 また、「積層柱または第2の積層柱が形成されている部位のスペーサ高さ」とは、画素部着色部上に形成された透明保護層の表面から垂直方向に、積層柱上に形成された透明保護層の頂部までの距離のうち最長の距離をいう。例えば図1?図9において、積層柱6が形成されている部位のスペーサ高さはh1である。また例えば図4?図6において、第2の積層柱8が形成されている部位のスペーサ高さはh2である。 【0042】 以下、本発明の横電界液晶駆動方式用カラーフィルタの各構成について説明する。 【0043】 1.積層柱 本発明における積層柱は、表示領域内の遮光部上に複数形成され、各色の非画素部着色部が2層以上積層されたものである。 【0044】 積層柱を構成する非画素部着色部のうち、最上層の非画素部着色部の厚みは、0.4μm?2.0μmの範囲内であり、好ましくは0.5μm?1.5μmの範囲内、さらに好ましくは0.5μm?1.0μmの範囲内である。上記最上層の非画素部着色部の厚みが厚いほど、低荷重条件下での変形量を大きくすることができると考えられる。しかしながら、最上層の非画素部着色部の厚みが厚いと、着色層を構成する画素部着色部の厚みも厚くなることから、最上層の非画素部着色部の厚みの上限は、着色層を構成する画素部着色部の厚みに応じて決定される。また、着色層を構成する画素部着色部は、各着色部用感光性樹脂組成物を塗布し、露光および現像することにより形成されるので、着色部用感光性樹脂組成物のレベリング作用によって、最上層の非画素部着色部の厚みは着色層を構成する画素部着色部の厚みよりも薄くなる傾向にある。そのため、最上層の非画素部着色部の厚みの上限は、着色層を構成する画素部着色部の厚みの上限よりも薄くなる傾向にある。したがって、最上層の非画素部着色部の厚みの上限は上記の値程度とされる。また、最上層の非画素部着色部の厚みが上記範囲よりも厚いと、着色層を構成する画素部着色部と同時に最上層の非画素部着色部を形成するのが困難となる場合があるともいえる。さらに、最上層の非画素部着色部の厚みが厚すぎると、例えば配向膜形成時にラビング処理を行う場合には、積層柱上に透明保護層が形成されていても、最上層の非画素部着色部が剥がれるおそれがある。一方、最上層の非画素部着色部の厚みが上記範囲よりも薄いと、低荷重条件下での変形量を大きくすることが困難となる場合がある。 【0045】 また、積層柱を構成する非画素部着色部のうち、最下層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅をw_(1)、最上層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅をw_(z)としたとき、0.2<w_(z)/w_(1)<0.6の関係が成立している。一般に、積層柱が形成される遮光部の幅等は所定の範囲内であり、最下層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅は、開口部の長辺方向の遮光部の幅以下となるように設計されるため、最下層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅も自ずと所定の範囲内となるように制限される。そのため、上記の幅の比が大きいと、最上層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅が比較的広くなり、上記の幅の比が小さいと、最上層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅が比較的狭くなるといえる。よって、上記の幅の比が上記範囲よりも大きい場合には、最上層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅が比較的広くなり、低荷重条件下での変形量を大きくすることが困難となる場合がある。一方、上記の幅の比が上記範囲よりも小さい場合には、最上層の非画素部着色部の積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅が比較的狭くなり、パターニングが困難となる場合がある。 ・・・(中略)・・・ 【0054】 積層柱の高さとしては、各色の非画素部着色部の厚みや積層数に応じて異なるものであるが、2.0μm?10.0μm程度で設定され、好ましくは2.5μm?8.5μmの範囲内、より好ましくは3.5μm?7.5μmの範囲内である。 【0055】 また、積層柱が形成されている部位の遮光部の表面から透明保護層の頂部までの高さとしては、各色の非画素部着色部および透明保護層の厚みや非画素部着色部の積層数に応じて異なるものであるが、2.0μm?10.0μm程度で設定され、好ましくは2.5μm?8.5μmの範囲内、より好ましくは3.5μm?7.5μmの範囲内である。 なお、「積層柱が形成されている部位の遮光部の表面から透明保護層の頂部までの高さ」とは、積層柱が形成されている部位の遮光部の表面から垂直方向に、透明保護層の頂部までの距離のうち最長の距離をいう。 【0056】 積層柱が形成されている部位のスペーサ高さとしては、所望のセルギャップを形成することができるものであればよいが、具体的には、2.5μm?5.0μmの範囲内であることが好ましく、なかでも2.5μm?4.5μmの範囲内であることが好ましく、特に3.0μm?4.0μmの範囲内であることが好ましい。上記スペーサ高さが上記範囲よりも低いと、セルギャップの制御が困難であり、また上記スペーサ高さが上記範囲よりも高いと、積層柱の形成が困難になるからである。 ・・・(中略)・・・ 【0059】 一方、「非画素部着色部が、この非画素部着色部と同色の画素部着色部と非連続的に形成されている」とは、非画素部着色部が、同色の画素部着色部と分離して形成されていることをいう。例えば図10および図11において、積層柱6を構成する非画素部着色部のうち、1層目の赤色非画素部着色部5Rが、赤色画素部着色部4Rと接していなく分離して形成されており、2層目の青色非画素部着色部5Bが、青色画素部着色部4Bと接していなく分離して形成されている。 なお、図11は図10におけるH-H線断面図であり、図10において透明保護層は省略されている。 ・・・(中略)・・・ 【0066】 最上層の非画素部着色部以外の非画素部着色部の形成位置としては、これらの非画素部着色部が、積層柱形成領域内のみに形成されていてもよい。例えば図10および図11において、積層柱6を構成する非画素部着色部のうち、1層目の赤色非画素部着色部5Rおよび2層目の青色非画素部着色部5Bが、積層柱形成領域13内のみに形成されている。 ・・・(中略)・・・ 【0094】 3.着色層 本発明における着色層は、後述する遮光部が備える開口部に形成された複数色の画素部着色部と、遮光部上に形成され、画素部着色部と同色の複数色の非画素部着色部とを有するものである。また、着色層において、画素部着色部は、長辺方向に隣接する画素部着色部の色が同色となるように、配置されている。 【0095】 さらに、画素部着色部および非画素部着色部の色としては、複数色であればよく、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色、赤(R)、緑(G)、青(B)、黄(Y)の4色、赤(R)、緑(G)、青(B)、黄(Y)、シアン(C)の5色等とすることができる。 【0096】 各色の画素部着色部および非画素部着色部は、各色の顔料や染料等の着色剤をバインダ樹脂中に分散または溶解させたものであり、フォトリソグラフィー法により形成されるものである。 ・・・(中略)・・・ 【0100】 各色の画素部着色部の厚みは、通常、1μm?5μm程度で設定される。 【0101】 積層柱を構成する非画素部着色部のうち、最上層の非画素部着色部の厚みを所定の範囲とするためには、最上層の非画素部着色部および同色の画素部着色部を形成するための着色部用感光性樹脂組成物を塗布するのが完了した後、減圧により乾燥を開始するまでの時間を、比較的短くすることが好ましい。具体的には、上記の時間を60秒以下とすることが好ましい。これにより、着色部用感光性樹脂組成物のレベリングを抑制し、最上層の非画素部着色部の厚みを所定の範囲とすることが容易となる。 【0102】 4.遮光部 本発明における遮光部は、基板上にパターン状に形成され、短辺および長辺を有する長方形状の開口部を備えるものである。 【0103】 遮光部の開口部の形状は、短辺および長辺を有する長方形状であればよく、例えば長方形であってもよく、長方形と接するように囲まれる形状であってもよい。長方形と接するように囲まれる形状としては、具体的には、図15(a)および(b)に例示するような長方形の角部に切り欠きを有する形状の開口部12、図15(c)に例示するような楕円形の開口部12、図15(d)に例示するような多角形の開口部12を挙げることができる。 【0104】 遮光部としては、例えば、黒色着色剤をバインダ樹脂中に分散または溶解させたものや、クロム、酸化クロム等の金属薄膜等が挙げられる。この金属薄膜は、CrO_(x)膜(xは任意の数)およびCr膜が2層積層されたものであってもよく、また、より反射率を低減させたCrO_(x)膜(xは任意の数)、CrN_(y)膜(yは任意の数)およびCr膜が3層積層されたものであってもよい。中でも、遮光部の膜厚を比較的厚くすることができるという点で、遮光部は黒色着色剤をバインダ樹脂中に分散または溶解させたものであることが好ましい。 ・・・(中略)・・・ 【0108】 遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2μm?0.4μm程度で設定され、黒色着色剤をバインダ樹脂中に分散または溶解させたものである場合は0.5μm?2μm程度で設定される。 【0109】 5.透明保護層 本発明に用いられる透明保護層は、上記着色層および積層柱を覆うように形成されるものである。 【0110】 透明保護層に用いられる材料としては、上記着色層、積層柱および遮光部から、液晶層への汚染物質の溶出の防止することができ、上記着色層表面を平坦性に優れたものとすることができるものであればよい。このような材料としては、カラーフィルタの透明保護層として一般的に使用されるものを用いることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0113】 透明保護層の厚みとしては、0.1μm?10μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.1μm?5μmの範囲内とすることが好ましい。上記範囲内であることにより、上記遮光部、着色層および積層柱から、液晶層への汚染物質の溶出を抑制することができるからである。 【0114】 積層柱上に形成された透明保護層の厚みを比較的厚くするためには、透明保護層用感光性樹脂組成物を塗布するのが完了した後、減圧により乾燥を開始するまでの時間を、比較的短くすることが好ましい。具体的には、上記の時間を60秒以下とすることが好ましい。これにより、透明保護層用感光性樹脂組成物のレベリングを抑制し、積層柱上に形成された透明保護層の厚みを所定の範囲とすることが容易となる。 【0115】 6.基板 本発明に用いられる基板の材料としては、従来からカラーフィルタに用いられているものを用いることができる。このような材料としては、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明な無機基板、および、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明な樹脂基板等を挙げることができる。なかでも本工程において無機基板を用いることが好ましく、無機材料のなかでもガラス基板を用いることが好ましい。さらには、上記ガラス基板のなかでも無アルカリタイプのガラス基板を用いることが好ましい。上記無アルカリタイプのガラス基板は寸度安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、かつ、ガラス中にアルカリ成分を含まないことから、液晶表示装置用のカラーフィルタに好適に用いることができるからである。 【0116】 基板は、透明な基板であってもよく、または、反射性の基板や白色に着色したものであってもよいが、本発明においては通常透明なものが用いられる。 【0117】 7.その他の構成 本発明の横電界液晶駆動方式用カラーフィルタは、上記の基板、遮光部、着色層、積層柱および透明保護層を有するものであればよく、必要に応じて透明電極層、配向膜、表示領域外積層柱等の他の構成を有していてもよい。 ・・・(中略)・・・ 【0119】 また、本発明においては、透明保護層上に配向膜が形成されていてもよい。 配向膜としては、液晶分子を配向させる配向機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光配向膜、ラビング配向膜などが挙げられる。 本発明においては、透明保護層が形成されていることにより、ラビング処理の際の積層柱の剥がれを抑制することが可能である。」 エ 「【実施例】 【0127】 以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。 [実施例1] (硬化性樹脂組成物の調製) 重合槽中にメタクリル酸メチル(MMA)を63重量部、アクリル酸(AA)を12重量部、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル(HEMA)を6重量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を88重量部仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2´-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を7重量部添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下、85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。得られた溶液に、さらにメタクリル酸グリシジル(GMA)を7重量部、トリエチルアミンを0.4重量部、およびハイドロキノンを0.2重量部添加し、100℃で5時間攪拌し、共重合樹脂溶液(固形分50%)を得た。 次に下記の材料を室温で攪拌、混合して硬化性樹脂組成物とした。 【0128】 <硬化性樹脂組成物の組成> ・上記共重合樹脂溶液(固形分50%):16重量部 ・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社 SR399):24重量部 ・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社 エピコート180S70):4重量部 ・2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン:4重量部 ・ジエチレングリコールジメチルエーテル:52重量部 【0129】 (遮光部の形成) まず、下記分量の成分を混合し、サンドミルにて十分に分散し、黒色顔料分散液を調製した。 ・黒色顔料:23重量部 ・高分子分散材(ビックケミー・ジャパン(株) Disperbyk111):2重量部 ・溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル):75重量部 次に、下記分量の成分を十分混合して、遮光部用組成物を得た。 【0130】 <遮光部用組成物の組成> ・上記黒色顔料分散液:61重量部 ・上記硬化性樹脂組成物:20重量部 ・ジエチレングリコールジメチルエーテル:30重量部 【0131】 そして、厚み1.1mmのガラス基板(旭硝子(株) AN材)上に上記遮光層用組成物をスピンコーターで塗布し、100℃で3分間乾燥させ、遮光層を形成した。この遮光層を、超高圧水銀ランプで遮光パターンに露光した後、0.05wt%水酸化カリウム水溶液で現像し、その後、基板を180℃の雰囲気下に30分間放置することにより加熱処理を施して遮光部を形成すべき領域に膜厚1.5μmの遮光部を形成した。得られた遮光部は、開口部の長辺方向の幅が100μmであった。 【0132】 (着色層および積層柱の形成) 上記のようにして遮光部を形成した基板上に、下記組成の赤色硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布し、その後、70℃のオーブン中で3分間乾燥した。次いで、赤色硬化性樹脂組成物の塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて着色層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、赤色硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を180℃の雰囲気下に30分間放置することにより、加熱処理を施して、赤色画素を形成すべき開口部および積層柱形成に必要な領域に赤色のレリーフパターンを形成した。この赤色のパターンは、積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅が80μmであった。 【0133】 次に、下記組成の緑色硬化性樹脂組成物を用いて、赤色のレリーフパターン形成と同様の工程で、緑色画素を形成すべき開口部および積層柱形成に必要な領域に緑色のレリーフパターンを形成した。この緑色のパターンは、積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅が75μmであった。さらに、下記組成の青色硬化性樹脂組成物を用いて、赤色のレリーフパターン形成と同様の工程で、青色画素を形成すべき開口部および積層柱形成に必要な領域に青色のレリーフパターンを形成した。この青色のパターンは、積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅が34μmであった。これにより、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色からなる着色層を形成した。 【0134】 <赤色硬化性樹脂組成物の組成> ・C.I.ピグメントレッド177:10重量部 ・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部 ・上記硬化性樹脂組成物:5重量部 ・酢酸-3-メトキシブチル:82重量部 【0135】 <緑色硬化性樹脂組成物の組成> ・C.I.ピグメントグリーン36:10重量部 ・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部 ・上記硬化性樹脂組成物:5重量部 ・酢酸-3-メトキシブチル:82重量部 【0136】 <青色硬化性樹脂組成物の組成> ・C.I.ピグメントブルー15:6:10重量部 ・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部 ・上記硬化性樹脂組成物:5重量部 ・酢酸-3-メトキシブチル:82重量部 【0137】 (透明保護層の形成) 上記のようにして着色層および積層柱を形成した基板上に、上記硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布を行った後に、減圧による乾燥を行い、乾燥塗膜2μmの塗布膜を形成した。この硬化性樹脂組成物の塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて透明保護層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して透明保護層を形成した。 【0138】 (評価) 得られたカラーフィルタにおいて、積層柱を構成する非画素部着色部のうち、最上層の非画素部着色部の厚みは1.4μmであり、w_(z)/w_(1)は0.43であった。また、遮光部の表面から積層柱上の透明保護層の頂部までの高さは6.4μmであり、着色層上の透明保護層の表面から積層柱上の透明保護層の頂部までの高さ(スペーサ高さ)は3.5μmであった。 【0139】 上記のようにして得られたカラーフィルタの積層柱の圧縮特性を微小硬度計(フィッシャー社製H100-V)を用い、下記の2つの条件にて測定し、最大の変形量を測定した。 <低荷重条件> ・平面圧子:100μm角 ・荷重:9秒間で0mNから20mNまで荷重を高くし、その後5秒間保持を行った。 <高荷重条件> ・平面圧子:100μm角 ・荷重:90秒間で0mNから200mNまで荷重を高くし、その後5秒間保持を行った。 【0140】 上記のようにして得られたカラーフィルタの透明保護層上にポリイミドよりなる配向膜を形成した。次いで、TFTを形成したガラス基板上にIPS液晶を必要量滴下し、上記カラーフィルタを重ね合わせ、UV硬化性樹脂をシール材として用い、常温で0.3kgf/cm^(2)の圧力をかけながら400mJ/cm^(2)の照射量で露光することにより接合して、セル組みし、液晶表示装置を得た。 得られた液晶表示装置において画面表示を行い、セルギャップばらつきによるムラの判定を行った。さらに、液晶表示装置上に10mmφの金属片を置き、金属片の上から20kgf/cm^(2)の荷重を1分間加えた後に荷重を除去し、1分後のムラを観察した。 【0141】 [実施例2] 積層柱を構成する非画素部着色部のうち、最上層の非画素部着色部の厚みを0.5μmとし、積層柱形成領域での開口部の長辺方向の幅について、最下層(1層目)の非画素部着色部の幅w_(1)を72μm、2層目の非画素部着色部の幅を68μm、最上層(3層目)の非画素部着色部の幅w_(z)を16μmとした。w_(z)/w_(1)=0.22であった。また、遮光部の表面から積層柱上の透明保護層の頂部までの高さを6.0μm、着色層上の透明保護層の表面から積層柱上の透明保護層の頂部までの高さ(スペーサ高さ)を3.3μmとした。上記以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。 得られたカラーフィルタについて、積層柱の圧縮特性を実施例1に記載の方法により測定した。 【0142】 次に、実施例1と同様にして液晶表示装置を作製した。 得られた液晶表示装置について、実施例1に記載の方法により、セルギャップばらつきによるムラの判定および観察を行った。 ・・・(中略)・・・ 【0151】 [評価] 実施例1,2および比較例1?4の評価結果を表1に示す。 【0152】 【表1】 」 オ 「【図面の簡単な説明】 【0153】 【図1】本発明の横電界液晶駆動方式用カラーフィルタの一例を示す概略平面図である。 【図2】図1におけるA-A線断面図である。 【図3】図1におけるB-B線断面図および図4におけるD-D線断面図である。 ・・・(中略)・・・ 【図10】本発明の横電界液晶駆動方式用カラーフィルタの他の例を示す概略平面図である。 【図11】図10におけるH-H線断面図である。 ・・・(中略)・・・ 【図15】本発明における開口部を説明する説明図である。 ・・・(中略)・・・ 【図1】 【図2】 【図3】 ・・・(中略)・・・ 【図10】 【図11】 ・・・(中略)・・・ 【図15】 」 カ 上記ア?オから、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、段落の番号は、引用発明の認定の際に活用した引用例の記載箇所を示すために併記したものである。 「(【0131】)ガラス基板上に遮光層用組成物を塗布し、乾燥させて遮光層を形成し、この遮光層を、超高圧水銀ランプで遮光パターンに露光した後、現像し、その後、加熱処理を施して、遮光部を形成し、 (【0132】)前記遮光部を形成した前記基板上に、赤色硬化性樹脂組成物を用いて、赤色画素を形成すべき開口部および積層柱形成に必要な領域に赤色のレリーフパターンを形成し、 (【0133】)次に、緑色硬化性樹脂組成物を用いて、緑色画素を形成すべき開口部および積層柱形成に必要な領域に緑色のレリーフパターンを形成し、さらに、青色硬化性樹脂組成物を用いて、青色画素を形成すべき開口部および積層柱形成に必要な領域に青色のレリーフパターンを形成し、これにより、赤、緑、青の3色からなる着色層を形成し、 (【0137】)前記着色層および積層柱を形成した基板上に、硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布を行った後に、減圧による乾燥を行い、乾燥塗膜2μmの塗布膜を形成し、この硬化性樹脂組成物の塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより超高圧水銀ランプを用いて透明保護層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射し、次いで、アルカリ現像し、硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去し、その後基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して透明保護層を形成し、 (【0140】)TFTを形成したガラス基板上にIPS液晶を必要量滴下したものに重ね合わせて液晶表示装置を得るために用いられ、前記透明保護層上にポリイミドよりなる配向膜を形成して得られたカラーフィルタであって、 (【0102】)前記遮光部は、前記ガラス基板上にパターン状に形成され、長方形状の開口部を備えるものであり、 (【0043】)前記積層柱は、前記遮光部上に形成され、各色の非画素部着色部が積層されたものであり、 (【0109】)前記透明保護層は、前記着色層および前記積層柱を覆うように形成されたものであって、(【0113】)前記遮光部、前記着色層および前記積層柱から、液晶層への汚染物質の溶出を抑制するものであり、 (【0138】、【0141】)前記積層柱を構成する非画素部着色部のうち、最上層の非画素部着色部の厚みは1.4μm又は0.5μmであり、前記遮光部の表面から前記積層柱上の前記透明保護層の頂部までの高さは6.4μm又は6.0μmであり、前記着色層上の前記透明保護層の表面から前記積層柱上の前記透明保護層の頂部までの高さ(スペーサ高さ)は3.5μm又は3.3μmであり、 (【0139】)微小硬度計(フィッシャー社製H100-V)を用い、90秒間で0mNから200mNまで荷重を高くし、その後5秒間保持を行 う条件で測定した前記積層柱の最大の変形量は(【0152】)1.12μm又は1.28μmである、 カラーフィルタ。」 (3)本件補正発明1と引用発明との対比及び判断 ア 対比 本件補正発明1と、引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 (ア)引用発明の「ガラス基板」は、本件補正発明1の「透明基板」に相当する。 (イ)引用発明の「遮光部」及び「開口部」は、それぞれ本件補正発明1の「遮光部」及び「開口部」に相当する。また、引用発明の「遮光部」は、「ガラス基板上に遮光層用組成物を塗布し、乾燥させて遮光層を形成し、この遮光層を」「遮光パターンに露光した後、現像し、その後、加熱処理を施して」「形成」することで、「ガラス基板上にパターン状に形成され」たものであるから、ガラス基板の一方の面上にパターン状に形成されたものであるといえる。また、引用発明の「遮光部」は、「長方形状の開口部を備える」ものである。よって、引用発明の「遮光部」と、本件補正発明1の「遮光部」は、「前記透明基板の一方の面上に、開口部を有する所定パターン状に形成されてなる」点で共通する。 (ウ)引用発明の「赤色画素を形成すべき開口部」に「形成」された「赤色のレリーフパターン」、「緑色画素を形成すべき開口部」に「形成」された「緑色のレリーフパターン」、及び「青色画素を形成すべき開口部」に「形成」された「青色のレリーフパターン」は、いずれも本件補正発明1の「開口部に設けられた」「着色部」に相当する。また、引用発明の「『赤色』、『緑色』及び『青色』」は、本件補正発明1の「複数色」に相当する。よって、引用発明の「『赤色画素を形成すべき開口部』に『形成』された『赤色のレリーフパターン』、『緑色画素を形成すべき開口部』に『形成』された『緑色のレリーフパターン』、及び『青色画素を形成すべき開口部』に『形成』された『青色のレリーフパターン』」は、本件補正発明1の「開口部に設けられた複数色の着色部」に相当する。 (エ)引用発明の「積層柱」は、本件補正発明1の「柱状積層部」に相当する。引用発明の「積層柱形成に必要な領域に」「形成」された「赤色のレリーフパターン」、「積層柱形成に必要な領域に」「形成」された「緑色のレリーフパターン」、及び「積層柱形成に必要な領域に」「形成」された「青色のレリーフパターン」は、それぞれ「赤色画素を形成すべき開口部」に「形成」された「赤色のレリーフパターン」、「緑色画素を形成すべき開口部」に「形成」された「緑色のレリーフパターン」、及び「青色画素を形成すべき開口部」に「形成」された「青色のレリーフパターン」と同じ「赤色硬化性樹脂組成物」、「緑色硬化性樹脂組成物」及び「青色硬化性樹脂組成物」を用いて形成されるものであるから、前記(ウ)から、「『積層柱形成に必要な領域に』『形成』された『赤色のレリーフパターン』、『積層柱形成に必要な領域に』『形成』された『緑色のレリーフパターン』、及び『積層柱形成に必要な領域に』『形成』された『青色のレリーフパターン』」は、本件補正発明1の「前記複数色のうちの2色以上の着色部を構成する各材料からなる着色層」に相当する。また、引用発明の「積層柱」は、「遮光部上に形成され、各色の非画素部着色部が積層されたもの」であり、「積層柱形成に必要な領域に赤色のレリーフパターンを形成し」、「次に」、「積層柱形成に必要な領域に緑色のレリーフパターンを形成し」、「さらに」、「積層柱形成に必要な領域に青色のレリーフパターンを形成し」て形成されたものであるから、引用発明の「『積層柱形成に必要な領域に』『形成』された『赤色のレリーフパターン』、『積層柱形成に必要な領域に』『形成』された『緑色のレリーフパターン』、及び『積層柱形成に必要な領域に』『形成』された『青色のレリーフパターン』」が「各色の非画素部着色部」であり、引用発明の「積層柱」と、本件補正発明1の「柱状積層部」とは、「前記遮光部上に、前記複数色のうちの2色以上の着色部を構成する各材料からなる着色層が柱状に積層されてなる」点で共通する。 (オ)引用発明の「透明保護層」は、本件補正発明1の「透明保護層」に相当する。また、引用発明の「透明保護層」は、「硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布を行った後に、減圧による乾燥を行い、乾燥塗膜2μmの塗布膜を形成し」、「透明保護層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射し、次いで、アルカリ現像し、硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去し、その後基板を」「加熱処理を施して」「形成」したものであるから、引用発明の「透明保護層」と、本件補正発明1の「透明保護層」は、「透明樹脂からなる」点で共通する。また、引用発明の「透明保護層」は、「着色層および前記積層柱を覆うように形成された」ものであり、「着色層」は、「赤色画素を形成すべき開口部および積層柱形成に必要な領域に」「形成」した「赤色のレリーフパターン」、「緑色画素を形成すべき開口部および積層柱形成に必要な領域に」「形成」した「緑色のレリーフパターン」、及び「青色画素を形成すべき開口部および積層柱形成に必要な領域に」「形成」した「青色のレリーフパターン」により形成されるものであるから、上記(ウ)及び(エ)から、引用発明の「透明保護層」と、本件補正発明1の「透明保護層」は、「少なくとも前記着色部及び前記柱状積層部を被覆する、透明樹脂からなる」点で共通する。 (カ)引用発明の「配向膜」は、本件補正発明1の「配向膜」に相当する。引用発明の「配向膜」は、「透明保護層上に」「形成」されるものであるところ、一般に、配向膜は、液晶分子群を一定方向に配列させるための膜であり液晶層全体にわたって設けられるものであるから、引用発明の「配向膜」と、本件補正発明1の「配向膜」は、「前記透明保護層を被覆するようにして設けられてなる」点で共通する。 (キ)引用発明の「カラーフィルタ」は、本件補正発明1の「カラーフィルタ」に相当する。また、引用発明において、「透明保護層」は、「着色層および前記積層柱を覆うように形成されたもの」であり、「遮光部、前記着色層および前記積層柱から、液晶層への汚染物質の溶出を抑制する」ためのものであるから、「積層柱」だけでなくその周囲も含めて覆うように形成されているものと認められ、引用発明の「透明保護層」と、本件補正発明1の「透明保護層」は、「前記柱状積層部、並びに当該柱状積層部の周囲を被覆する」点で共通する。また、引用発明において、「着色層上の前記透明保護層の表面から前記積層柱上の前記透明保護層の頂部までの高さ(スペーサ高さ)は3.5μm」であることから、「積層柱」とその上の「透明保護層」とで、スペーサとして機能する凸部が形成されていると認められるところ、 スペーサは、TFTを形成したガラス基板と、カラーフィルタとの間に一定の間隔をもたらすためのものであるから、「透明保護層上に」「配向膜を形成」しても前記凸部はスペーサとして機能するものである。よって、引用発明の「カラーフィルタ」と、本件補正発明1の「カラーフィルタ」は、「前記柱状積層部、並びに当該柱状積層部の周囲を被覆する前記透明保護層及び前記配向膜により柱状凸部が構成され」ている点で共通する。 イ 一致点及び相違点 上記アからみて、本件補正発明1と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「透明基板と、 前記透明基板の一方の面上に、開口部を有する所定パターン状に形成されてなる遮光部と、 前記開口部に設けられた複数色の着色部と、 前記遮光部上に、前記複数色のうちの2色以上の着色部を構成する各材料からなる着色層が柱状に積層されてなる柱状積層部と、 少なくとも前記着色部及び前記柱状積層部を被覆する、透明樹脂からなる透明保護層と、 前記透明保護層を被覆するようにして設けられてなる配向膜と を備え、 前記柱状積層部、並びに当該柱状積層部の周囲を被覆する前記透明保護層及び前記配向膜により柱状凸部が構成されるカラーフィルタ。」 (相違点) 本件補正発明1では、「柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さ」が「0.35μm以上0.49μm以下」であり、「柱状凸部の頂部に9秒間で200mNまで前記透明基板に対して垂直方向に荷重をかけ、そのままの状態で5秒間保持したときに、荷重前後における前記頂部の位置の、前記透明基板に対して垂直方向における変位量が0.45μm以上である」のに対し、引用発明では、「積層柱」の上部における「透明保護層」の厚さが特定されておらず、「積層柱」について「90秒間で0mNから200mNまで荷重を高くし、その後5秒間保持を行う条件で測定した」ときの「積層柱の最大の変形量」が「1.12μm又は1.28μmである」点。 ウ 相違点についての判断 (ア)引用発明において、「遮光部の表面から前記積層柱上の前記透明保護層の頂部までの高さは6.4μm又は6.0μm」であり、「積層柱を構成する前記非画素部着色部のうち、最上層の非画素部着色部の厚みは1.4μm又は0.5μm」であり、その差は5.0μm又は5.5μmであるが、遮光部の表面から積層柱上の透明保護層の頂部までには、「積層柱形成に必要な領域に」「形成」された「赤色のレリーフパターン」、「積層柱形成に必要な領域に」「形成」された「緑色のレリーフパターン」、「積層柱形成に必要な領域に」「形成」された「青色のレリーフパターン」及び「透明保護層」が存在するところ、下層及び中層の非画素着色部である前記「積層柱形成に必要な領域に」「形成」された「赤色のレリーフパターン」及び「緑色のレリーフパターン」の厚さは不明であるから、「積層柱」上部の「透明保護層」の厚さは5.0μm又は5.5μm以下であるといえるものの、その具体的な値は不明である。 (イ)また、引用発明において、「透明保護層」は、「前記着色層および積層柱を形成した基板上に、硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布を行った後に、減圧による乾燥を行い、乾燥塗膜2μmの塗布膜を形成し、この硬化性樹脂組成物の塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより超高圧水銀ランプを用いて透明保護層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射し、次いで、アルカリ現像し、硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去し、その後基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して」形成したものであるから、「透明保護層」の厚さは2.0μm以下である。しかし、引用例の段落【0023】(上記(2)ウ参照。)の「透明保護層の形成時において、遮光部、着色層および積層柱が形成された基板上に透明保護層用感光性樹脂組成物を塗布すると、透明保護層用感光性樹脂組成物が、積層柱の頂部から画素部着色部上に流れ落ちるレベリングが生じる。」との記載、及び段落【0114】(上記(2)ウ参照。)の「積層柱上に形成された透明保護層の厚みを比較的厚くするためには、透明保護層用感光性樹脂組成物を塗布するのが完了した後、減圧により乾燥を開始するまでの時間を、比較的短くすることが好ましい。具体的には、上記の時間を60秒以下とすることが好ましい。これにより、透明保護層用感光性樹脂組成物のレベリングを抑制し、積層柱上に形成された透明保護層の厚みを所定の範囲とすることが容易となる。」との記載から、透明保護層用感光性樹脂組成物のレベリングにより、「透明保護層」の厚さは「積層柱」の領域とそれ以外の領域で異なるものといえ、引用発明には、「硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布を行った後に、減圧による乾燥」を開始するまでの時間も特定されていないことから、「積層柱」上部の「透明保護層」の厚さは2.0μm以下であるとはいえるものの、その具体的な値は不明である。 (ウ)また、引用例の段落【0113】(上記(2)ウ参照。)には、「透明保護層の厚みとしては、0.1μm?10μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.1μm?5μmの範囲内とすることが好ましい。」との記載があり、引用発明における「透明保護層」の厚みがこの範囲を満たすものだとしても、上記(ア)?(イ)から、引用発明における「透明保護層」の厚みは0.1μm?2.0μmの範囲内であるといえるにとどまるから、引用発明において、「積層柱」上部の「透明保護層」の厚さが「0.35μm以上0.49μm以下」の範囲内である蓋然性が高いとはいえない。 (エ)また、引用例の段落【0113】(上記(2)ウ参照。)には、「透明保護層の厚み」を「0.1μm?5μmの範囲内」とすることで、「上記遮光部、着色層および積層柱から、液晶層への汚染物質の溶出を抑制することができる」ことが記載されているが、引用発明における透明保護層の厚みを、上記範囲のうち特に「0.35μm以上0.49μm以下」とし、それを前提として「柱状凸部の頂部に9秒間で200mNまで前記透明基板に対して垂直方向に荷重をかけ、そのままの状態で5秒間保持したときに、荷重前後における前記頂部の位置の、前記透明基板に対して垂直方向における変位量が0.45μm以上である」ようにすることが、当業者が容易に想到しえた事項であるとはいえない。 (オ)そして、本件補正発明1は、「柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さ」を「0.35μm以上0.49μm以下」とし、「柱状凸部の頂部に9秒間で200mNまで前記透明基板に対して垂直方向に荷重をかけ、そのままの状態で5秒間保持したときに、荷重前後における前記頂部の位置の、前記透明基板に対して垂直方向における変位量が0.45μm以上である」とすることにより、本願の明細書の段落【0107】?【0111】の記載等から、振動や衝撃等に起因する表示ムラ及び輝点不良の発生を抑制できるという顕著な効果を奏するものと認められる。 (カ)したがって、本件補正発明1が、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (キ)よって、本件補正の補正事項1は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合する。 (4)本件補正発明5について 本件補正発明5は「前記柱状突起又は前記柱状積層部の上部における前記透明保護層の厚さが、0.35μm以上0.49μm以下であり」及び「前記柱状凸部の頂部に9秒間で200mNまで前記透明基板に対して垂直方向に荷重をかけ、そのままの状態で5秒間保持したときに、荷重前後における前記頂部の位置の、前記透明基板に対して垂直方向における変位量が0.45μm以上である」との発明特定事項を有していることから、上記(3)ウと同様、本件補正発明5が、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。よって、本件補正の補正事項2は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合する。 (5)本件補正後の請求項2?4、6?9に係る発明について 本件補正後の請求項2?4に係る発明は、本件補正発明1にさらに発明特定事項を加えたものであり、請求項6?8に係る発明は、本件補正発明5にさらに発明特定事項を加えたものであり、請求項9に係る発明は、請求項1?8に係る発明にさらに発明特定事項を加えた発明であることから、上記(3)及び(4)から、本件補正後の請求項2?4、6?9に係る発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (6)独立特許要件のまとめ 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合する。 5 むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?9に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-04-05 |
出願番号 | 特願2010-287440(P2010-287440) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大竹 秀紀 |
特許庁審判長 |
鉄 豊郎 |
特許庁審判官 |
佐竹 政彦 樋口 信宏 |
発明の名称 | カラーフィルタ及びそれを用いた液晶表示装置 |
代理人 | 米田 潤三 |