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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24C |
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管理番号 | 1313003 |
審判番号 | 不服2014-22653 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-11-06 |
確定日 | 2016-03-31 |
事件の表示 | 特願2012-232004「電磁放射によって加熱された単結晶炭化ケイ素を含む複合材料および機器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年3月14日出願公開,特開2013- 50301〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 経緯 本願は,2007年3月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年3月30日,米国)を国際出願日とする特願2009-503036号の一部を,平成24年10月19日に特許法44条1項の規定により新たな特許出願としたものであって,平成24年10月19日付けで手続補正がなされたところ,平成25年11月11日付けで拒絶の理由が通知され,平成26年1月22日付けで意見書の提出及び手続補正がなされたが,平成26年6月27日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成26年11月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明について 本願の請求項1?請求項13に係る発明は,平成26年1月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項13に記載された事項により特定されるとおりのものであるが,そのうち請求項9に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項9】 電磁放射へ曝露されると温度上昇する複合材料を含む,マイクロ波吸収性かつ加熱可能の食品加工用品であって,前記複合材料が,電磁放射に実質的に透過的なポリマーマトリクス材料において単結晶炭化ケイ素のホイスカ,繊維,またはこれらの混合物からなる,前記食品加工用品。」 第3 引用例及び引用例に記載された事項 1 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例のうち,引用例1?引用例3は次のとおりである。 引用例1:特開平2-217719号公報 引用例2:特公平6-68970号公報 引用例3:特開平3-215226号公報 2 引用例に記載された事項 (1) 引用例1 ア 引用例1には,次の事項が記載されている。 (ア) 「2,特許請求の範囲 (1) 電磁波エネルギー変換発熱体を具備した電子レンジ。」(1頁左下欄4?6行) (イ) 「作用 本発明では,電子レンジ内に電波で自己発熱する発熱体(ヒータ)を適切な位置・形態で設けるため,被加熱物(食物)は電子レンジの電波加熱と,ヒータ加熱を同時に受けることとなる。そのため,調理時間の短縮と,被加熱物の内外部均一加熱や,『こげめ』等の外部加熱の特長を付加できる利点がある。 さらに,発熱体を所定の形状,所定の位置に設定することにより被加熱物の局部加熱や,液体の高速加熱も可能となり,その用途は無限である。 次に電磁波エネルギー変換発熱体は電波(電磁波と同じ)を効率良く熱に変換する材料で構成する。この材料としては,セラミック系発熱体が安全性と耐久性の面で適している。すなわち,導電性あるいは半導電性セラミックの粉,繊維,ウイスカー,焼結体等が用いられ,材料としては,炭化けい素ウイスカー,導電処理したチタン酸カリウムウイスカー,酸化錫ウイスカー,導電処理した亜鉛華等も用いられ得るが,中でも特に発熱効率の点で酸化亜鉛ウイスカーが最適である。」(2頁左上欄13行?右上欄13行) (ウ) 「実施例 以下に実施例を用いて具体的に説明するが,本発明は以下の実施例に限られるものではない。 本発明で用いる電磁波エネルギー変換発熱体(以下単に発熱体と称す)は電子レンジの電波(2.45GHz)を効率良く熱に変換する材料で構成される。この材料としてカーボン系は発熱体とはなり得るが,酸化や燃焼が進むため,安全性と耐久性の点で好ましくない。その意味で,セラミック系発熱体が適していることとなる。すなわち,導電性あるいは,半導電性セラミックの粉,繊維,ウイスカー,焼結体等が用いられ,材料としては,炭化けい素ウイスカー,導電処理したチタン酸カリウムウイスカー,酸化錫ウイスカー,導電処理した亜鉛華等が発熱体となり,用途を限定すれば使用に耐える場合もあるが,電子レンジ内の調理に使用するには発熱効率が不十分と云わざるを得ない。 その点で酸化亜鉛(以下ZnOと略記する)ウイスカーが最も好ましい材料である。とりわけ,テトラポット構造の酸化亜鉛ウイスカーが好ましい。」(2頁左下欄2行?右下欄2行) (エ) 「次に,電子レンジ用発熱体としては,ZnOウィスカーを各種形態において用いることができる。 すなわち,粉体状態,圧粉状態,ろ過(審決:原文は,(さんずいに戸)過)堆積状態,あるいは焼結状態,セラミックやガラス・ほうろう等のマトリックス中への分散状態において用いることができ,各種バインダーや,焼結助剤,各種添加剤等を用いることができるのは勿論である。」(3頁左上欄15行?右上欄1行)) イ 以上の記載及び図面の記載からみて,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 (引用発明) 「被加熱物(食物)を電子レンジ内で加熱する電磁波エネルギー変換発熱体であって,酸化亜鉛ウイスカー,炭化けい素ウイスカー,導電処理したチタン酸カリウムウイスカー,酸化錫ウイスカー,導電処理した亜鉛華等の,電磁波を効率良く熱に変換する材料で構成された,前記電磁波エネルギー変換発熱体。」 (2) 引用例2 引用例2には,以下の事項が記載されている。 ア 「本発明は『ウイスカー』として知られる単結晶繊維からなる電灯フィラメントを提供する。」(2頁3欄35?36行) イ 「ウイスカーは微細で高純度の単結晶繊維である。」(2頁4欄7行) (3) 引用例3 引用例3には,以下の事項が記載されている。 ア 「2.特許請求の範囲 (1) 耐熱性・耐圧性を有するマイクロ波透過性樹脂と,前記マイクロ波透過性樹脂の内部に分散されたマイクロ波吸収発熱物質とから成る電子レンジ用圧力調理容器。」(1頁左下欄4?8行) イ 「作用 本発明による電子レンジ用圧力調理容器は,耐熱性・耐圧性を有するマイクロ波透過性樹脂と少なくともこの内部にマイクロ波吸収発熱物質が分散された構造体であるので圧力調理中前記マイクロ波吸収発熱物質が発熱することにより容器全体の温度分布を改善するとともに調理物(特に水分)の侵入による前記樹脂の機械的強度の低下を著しく阻害するという作用を有する。」(2頁左上欄10?18行) ウ 「なお,マイクロ波吸収発熱物質としては誘電体損失電カの大きいものであれば特に限定しない。」(2頁左下欄9?11行) 第4 対比及び判断 1 対比 (1) 引用発明の「電磁波エネルギー変換発熱体」は,被加熱物(食物)を電子レンジ内で加熱するものであるから,食品を加工するための手段であって,本願明細書の記載(【0053】)に照らしても,本願発明の「食品加工用品」に相当する。 引用発明は電子レンジ内で使用するものであるから,引用発明の「電磁波を効率良く熱に変換する材料」である「酸化亜鉛ウイスカー,炭化けい素ウイスカー,導電処理したチタン酸カリウムウイスカー,酸化錫ウイスカー,導電処理した亜鉛華等」と,本願発明の「単結晶炭化ケイ素のホイスカ,繊維,またはこれらの混合物」とは,「マイクロ波エネルギーを吸収する材料」である限りで一致する。 そして,「ウイスカー」(whisker,ホイスカ)とは単結晶繊維のことをいうから(引用例2(前記第3・2(2)),JIS工業大辞典 第4版),引用発明の「炭化けい素ウイスカー」とは炭化ケイ素の単結晶繊維であって,本願発明の「単結晶炭化ケイ素のホイスカ」に相当する。 また,引用発明の「酸化亜鉛ウイスカー,炭化けい素ウイスカー,導電処理したチタン酸カリウムウイスカー,酸化錫ウイスカー,導電処理した亜鉛華等」は「電磁波を効率良く熱に変換する材料である」から,「電磁放射へ曝露されると温度上昇する・・・材料」である限りで,本願発明の「複合材料」と一致するとともに,引用発明の「電磁波エネルギー変換発熱体」は,本願発明の「マイクロ波吸収性かつ加熱可能の食品加工用品」に相当する。 (2) そうすると,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,相違する。 (一致点) 「電磁放射へ曝露されると温度上昇する材料を含む,マイクロ波吸収性かつ加熱可能の食品加工用品であって,前記材料が,マイクロ波エネルギーを吸収する材料からなる,前記食品加工用品。」 (相違点) 本願発明は「電磁放射へ曝露されると温度上昇する材料」が「複合材料」であって,当該「複合材料が,電磁放射に実質的に透過的なポリマーマトリクス材料において単結晶炭化ケイ素のホイスカ,繊維,またはこれらの混合物からなる」のに対し,引用発明は,マイクロ波エネルギーを吸収する材料として炭化ケイ素ウイスカー(単結晶炭化ケイ素のホイスカ)は例示されているものの,それに特定されおらず,電磁波エネルギー変換発熱体がそのような「材料」を含む「複合材料」とされていない点 2 判断 (1) 上記相違点について検討する。 ア 引用例1の記載からすると,以下の点がわかる。 すなわち,引用例1に係る当該「電磁波エネルギー変換発熱体を具備した電子レンジ」は「電子レンジ内に電波で自己発熱する発熱体(ヒータ)を適切な位置・形態で設ける」ことにより,「被加熱物(食物)は電子レンジの電波加熱と,ヒータ加熱を同時に受けることとなる。そのため,調理時間の短縮と,被加熱物の内外部均一加熱や,『こげめ』等の外部加熱の特長を付加できる利点がある。」ものであるが,そのためには「電磁波エネルギー変換発熱体は・・・電磁波・・・を効率良く熱に変換する材料で構成する」必要があり,「この材料としては,・・・導電性あるいは半導電性セラミックの粉,繊維,ウイスカー,焼結体等が用いられ,材料としては,炭化けい素ウイスカー,導電処理したチタン酸カリウムウイスカー,酸化錫ウイスカー,導電処理した亜鉛華等も用いられ得る」ものである(前記第3・2(1)ア)。 つまり,引用例1に係る当該電子レンジは,例示されたもののうち,炭化ケイ素ウイスカーを材料として電磁波エネルギー変換発熱体を構成することにより,当該所定の機能を発揮し得るものである。 引用例1には,「酸化亜鉛ウイスカー」が最適である旨,「炭化けい素ウイスカー,導電処理したチタン酸カリウムウイスカー,酸化錫ウイスカー,導電処理した亜鉛華等」は電子レンジ内の調理に使用するには発熱効率が不十分である旨の記載があるが,「炭化けい素ウイスカー・・・等」に関し「酸化亜鉛ウイスカー」との相対的な関係で述べているのにとどまり,技術的に利用不可能であるとか,これらの利用を排除している旨述べているものではない。 引用例1では,当該電子レンジが「電磁波エネルギー変換発熱体を具備した電子レンジ」(前記第3・2(1)ア(ア)「特許請求の範囲」)であると,酸化亜鉛ウイスカーの限定なく記載され,「炭化けい素ウイスカー・・・等も用いられ得る」(前記第3・2(1)ア(イ))と明記され,「用途を限定すれば使用に耐える場合もある」(前記第3・2(1)ア(ウ))と記載されていることからしても,「炭化けい素ウイスカー」を利用することができることは,当業者であればその記載から十分に理解することができる。 そして,「本発明は以下の実施例に限られるものではない。」(前記第3・2(1)ア(ウ))とされ,炭化ケイ素を電子レンジ用食品加工用品のマイクロ波発熱体として利用すること(特開平6-124767号公報,特開平1-95228号公報)や,炭化ケイ素のウイスカーが電磁波の照射により発熱する機能を有すること(特開平6-248935号公報,特開平7-158858号公報)が,本願優先日前の周知の事項であって技術常識であることに照らしても,引用発明において,例示されたもののうち,炭化ケイ素ウイスカーを電磁波エネルギー変換発熱体の材料として選択することは,当業者にとって格別困難なことではない。 イ また,引用例1には,電子レンジ用発熱体として,ZnOウイスカーに関して,各種の形態を取りうる点,セラミックやガラス・ほうろう等のマトリックス中への分散状態において用いる点が記載され(前記第3・2(1)ア(エ)),炭化けい素ウイスカーであっても同様であることは技術的に明らかであるから,引用例1には,炭化けい素ウイスカーをマトリックスに分散させることの示唆が十分にある。 そして,引用例3には,マイクロ波を吸収し発熱する物質をマイクロ波透過性のある耐熱性樹脂に分散させた電子レンジ用圧力調理容器が記載されており(前記第3・2(3)),マイクロ波透過性のある耐熱性樹脂は電子レンジ用食品加工用品の素材として広く利用されている。 そうすると,引用発明において電磁波エネルギー変換発熱体を構成するに当たり,炭化けい素ウイスカーをマイクロ波透過性のある樹脂,すなわち「電磁放射に実質的に透過的なポリマーマトリクス材料」に分散させた「複合材料」の態様とすることは,引用例3に記載の技術事項を参酌して,当業者が適宜なし得ることである。 なお,引用例1には,電子レンジにこげめ等の外部加熱の特長を付加できる旨記載されているが,当該電子レンジはこげめをつけることに用途が限定されているものではないし,耐熱性樹脂コーティングが施されたフライパン等が広く知られていることからしても,上記態様とすることを妨げる格別の事情はない。 ウ したがって,引用発明において,相違点に係る本願発明の特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたことである。 エ 本願発明の奏する効果をみても,引用発明,引用例2,引用例3に記載された事項から予測し得る範囲内のものであって,格別ではない。 (2) 請求人は,審判請求書において,引用例1で具体的に開示されている事項は,酸化亜鉛ウイスカーを電磁波エネルギー変換発熱体とする発明に過ぎない,引用例1は,炭化けい素ウイスカーを,電磁波エネルギー変換発熱体の単なる可能性として例示しているに過ぎず,その詳細については何ら具体的な記載がされていない,当業者においても個々の電磁放射吸収材料の特性を具体的に予測するのが困難であるところ,引用例1が,炭化けい素ウイスカーに関して具体的に開示している事項は,「用途を限定すれば使用に耐える場合もあるが,実際の使用には不十分である」ことであり,当該不十分な材料を実際に使用できる具体的な態様については,何ら開示も教示もない,などと主張している。 しかし,すでに述べたとおり,引用例1には,炭化けい素ウイスカーに関し酸化亜鉛ウイスカーとの相対的な関係で記載されているにとどまり,技術的に利用不可能であるとか,利用を排除する旨の記載はない。また,「炭化けい素ウイスカー・・・等も用いられ得る」と明記され,酸化亜鉛ウイスカーに係る実施例に限られない旨の記載や,技術常識に照らしても,炭化けい素ウイスカーを電磁波エネルギー変換発熱体の材料として利用することが,その記載から十分に理解することができる。さらに,引用例1の記載から,当該電子レンジの所定の機能との関係で,炭化けい素ウイスカーの特性を具体的に予測することに特段の困難性は認められず,引用例1にはその利用に関する具体的な開示があるといえる。 よって,請求人の主張は採用することができない。 3 以上を総合すると,本願発明は,引用発明及び引用例2,引用例3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり,本願発明(請求項9に係る発明)は,引用発明及び引用例2,引用例3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。 そして,本願発明(請求項9に係る発明)が特許を受けることができない以上,本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-11-04 |
結審通知日 | 2015-11-09 |
審決日 | 2015-11-20 |
出願番号 | 特願2012-232004(P2012-232004) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F24C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長浜 義憲 |
特許庁審判長 |
紀本 孝 |
特許庁審判官 |
山崎 勝司 窪田 治彦 |
発明の名称 | 電磁放射によって加熱された単結晶炭化ケイ素を含む複合材料および機器 |
代理人 | 山口 裕孝 |
代理人 | 井上 隆一 |
代理人 | 佐藤 利光 |
代理人 | 大関 雅人 |
代理人 | 清水 初志 |
代理人 | 五十嵐 義弘 |
代理人 | 小林 智彦 |
代理人 | 新見 浩一 |
代理人 | 春名 雅夫 |
代理人 | 川本 和弥 |
代理人 | 刑部 俊 |