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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1313073
異議申立番号 異議2016-700017  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-13 
確定日 2016-04-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第5757664号「ウレタン(メタ)アクリレート化合物及びそれを含有する樹脂組成物」の請求項1ないし21に係る特許に対する特許異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 特許第5757664号の請求項1ないし21に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5757664号(以下,「本件特許」という。)の請求項1ないし21についての出願は,国際出願日である平成22年 6月 9日(優先権主張 平成21年 6月17日)にされたものであって,平成27年 6月12日に特許権の設定の登録がなされ,その後,特許異議申立人 金澤 真紀(以下,「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし21に係る発明(以下,各々「本件発明1」ないし「本件発明21」という。)は,特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるとおりのものである。

第3 申立理由の概要
1 申立人は,次のとおり主張している。
(1) 本件発明1ないし5,8,9及び12ないし21は,本願優先日前に頒布された甲第1号証に記載された発明であるか,該発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下,「主張1」という。)。
(2) 本件発明1ないし21は,本願優先日前に頒布された甲第1号証ないし甲第2号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下,「主張2」という。)。
(3) そして,前記主張1,2はいずれも理由があるから,本件特許は特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立人が提出した証拠方法は次のとおりである。
・特開2008-248069号公報(甲第1号証)
・特開平9-68799号公報(甲第2号証)

第4 申立理由に対する判断
1(1) 本件発明1ないし21は,前記第2のとおりであるが,このうち,本件発明1は次のとおりのものである。
「【請求項1】
(I)下記(i),(ii)又は(iii),
(i)ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも2種を含み,水酸基価が80?120gKOH/gであるジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート混合物(a)(以下該混合物(a)という),又は
(ii)該混合物(a)及びグリセリンの両者,又は
(iii)該混合物(a),グリセリン及びC2?C5脂肪族ポリ(2?4)オールの(メタ)アクリレートの3者,
のいずれかと,
(II)ジイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート化合物(b),とを反応させて得られる,ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)及びウレタン化されていないアクリレートを含有するウレタンアクリレート組成物。」
(2) ア 甲第1号証には,以下の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性ハードコート樹脂組成物および該組成物を硬化させてなるハードコート膜を有するフィルムに関する。」
(イ)「【0007】
そこで、本発明の目的は、表面硬度が高く、耐擦傷性、耐クラック性に優れ、かつ硬化収縮が小さいため低カール性で、さらに光学部品として使用する際の高い透明性を有する活性エネルギー線硬化性ハードコート樹脂組成物を提供することにある。」
(ウ)「【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、硬化収縮が小さく、この組成物を硬化させてなるハードコート膜を有するフィルムは、下記の効果を奏する。
(1)表面硬度が高い。
(2)耐擦傷性に優れる。
(3)低カール性である。
(4)ハードコート膜にクラックが発生することがない。
(5)透明性および外観などの光学的特性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化性ハードコート用樹脂組成物は、ウレタン化反応生成物(A)と、下記の多官能アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)を必須成分とし、このウレタン化反応生成物(A)は、下記のイソシアヌレート化合物(a)と下記の多官能アクリレート化合物(b)との反応で得られるものである。
(a):ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体
(b):多価アルコール(c)とアクリル酸とのエステル化物であって、分子内に1個または2個の水酸基と3?11個のアクリロイル基を有する多官能アクリレート
(B):多価アルコール(d)のすべての水酸基がアクリル酸によりエステル化された4?12個のアクリロイル基を有する多官能アクリレート」
(エ)「【0060】
分子内に1または2個の水酸基と3?11価のアクリロイル基を有する多官能アクリレートを、以下の製造例1、2、および比較製造例1で製造した。
製造例1
撹拌装置、冷却管、温度計および生成水除去用のガラス管を備えたガラス製反応容器に、ペンタエリスリトール1.7%、ジペンタエリスリトール86.9%、トリペンタエリスリトール7.1%、その他組成物(トリペンタエリスリトールまたはそれ以上の多価アルコール)4.3%である混合物[商品名「ジペンタエリスリトール」、広栄化学工業(株)製、水酸基価39、以下同じ。]300部、アクリル酸510部、硫酸25部、ハイドロキノン5部、トルエン300部を仕込み、110℃で15時間加熱還流し反応させた。生成水は127部得られた。次いで、冷却しトルエン1,500部を追加し、15%NaOH水溶液で中和洗浄した。分液後、水層を除去し、さらに15%NaCl水溶液300mlで3回洗浄し、次いでp-メトキシフェノール0.25部をトルエン層に仕込み、トルエンを減圧留去することにより、多官能アクリレート混合物(P-1)586部を得た。
(P-1)は、粘度7,300mPa・s(25℃)、比重1.19(25℃)、水酸基価107m当量/gであった。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製、型式HCL-8120。以下GPC)、および質量分析計を付帯した液体クロマトグラフィー(島津製作所製、型式LCMS2010EV。以下LC/MS)を用いて、その成分を確認した。
成分としては、ジペンタエリスリトールのテトラアクリレートとペンタアクリレート、ペンタエリスリトールのトリアクリレートなどの本発明の(b)成分;ジペンタエリスリトールのヘキサアクリレートとペンタエリスリトールのテトラアクリレートなどの本発明の(B)成分;ペンタエリスリトールの3以上の多量体のアクリレートなどが確認できた。
その含有比率の結果を表1に示す。
【0061】
【表1】


(オ)「【0064】
イソシアヌレートと多官能ウレタンアクリレート有する多官能アクリレートを反応させたウレタン化反応生成物を、以下の製造例3、4、ならびに比較製造例2?4で製造した。
製造例3
製造例1と同様の反応容器に、製造例1で得られた多官能アクリレート混合物(P-1)100部、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体[商品名「ディユラネートTLA-100」、旭化成ケミカルズ(株)製、NCO22.5%。]35.6部を仕込み、80℃で2時間加熱し反応させた。次いで、ウレタン化触媒としてジラウリン酸ジブチルすず(IV)[試薬、和光純薬工業(株)製]0.5部仕込み、85℃で6時間反応させた。反応物のNCO%が0.1%以下になったことを確認後、p-メトキシフェノール0.25部を仕込み、多官能ウレタンアクリレート混合物(Q-1)132部を得た。
(Q-1)は、粘度54,500mPa・s(25℃)、比重1.20(25℃)であった。また、GPCおよびLC/MSを用いてその成分を確認した。
成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体とジペンタエリスリトールペンタアクリレートとのウレタン化反応生成物(多官能ウレタンアクリレート)などの本発明の(A)成分;ジペンタエリスリトールのヘキサアクリレートとペンタエリスリトールのテトラアクリレートなどの本発明の(B)成分;ペンタエリスリトールの3以上の多量体のアクリレートなどが確認できた。
その含有比率の結果を表2に示す。
【0065】
【表2】


(カ)「【0070】
比較製造例4
製造例1と同様の反応容器に、製造例1で得られた多官能アクリレート混合物(P-1)100部、ヘキサメチレンジイソシアネート[商品名「ディユラネートHDI」、旭化成ケミカルズ(株)製、NCO48.2%]16.6部を仕込み、80℃で2時間加熱し反応させた。次いで、ウレタン化触媒としてジラウリン酸ジブチルすず(IV)[試薬、和光純薬工業(株)製]0.5部仕込み、85℃で6時間反応させた。反応物のNCO%が0.1%以下になったことを確認後、p-メトキシフェノール0.25部を仕込み、多官能ウレタンアクリレート混合物(Q’-3)112部を得た。
(Q’-3)は、粘度35,700mPa・s(25℃)、比重1.05(25℃)であった。また、製造例3と同様に、GPCおよびLC/MSを用いてその成分を確認した結果を表2に示す。」
(キ)「【0071】
実施例1?7、比較例1?7
多官能ウレタンアクリレート(Q-1)、(Q-2)、(Q’-1)?(Q’-3)、
ならびに多官能アクリレート(P-1)、(P-2)、(P’-1)を用いて、活性エネ
ルギー線硬化性ハードコート用樹脂組成物を作成した。
【0072】
実施例1
撹拌装置、温度計を備えたガラス製容器に、(Q-1)100部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製。以下同じ。]10.0部、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン[商品名「BYK-333」、BYK Chemie(株)製]0.1部を入れ、ディスパーザーで混合撹拌して(温度50?60℃、撹拌時間30分)配合組成物(R-1)を得た。(R-1)は、粘度42,000mPa・s(25℃)であった。」
(ク)「【0081】
比較例3
実施例1において、(Q-1)100部に代えて、(Q’-3)100部を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、配合組成物(R’-3)を得た。(R’-3)は、粘度74,100mPa・s(25℃)であった。」
(ケ)「【0086】
本発明のハードコート用樹脂組成物(R-1)?(R-7)と、比較のための樹脂組成物(R’-1)?(R’-7)の各50部に、希釈有機溶剤として酢酸エチル50部を加え、ディスパーザーで均一撹拌したものを、タテ30cm、ヨコ30cm、厚さ80μmの酢酸セルロースフィルム[商品名「フジタック」、富士写真フィルム(株)製]の片面にバーコーターを用い、乾燥硬化後の厚みが10μmとなるように塗布して被膜層を形成させた。これを、60℃で3分間乾燥した後、該被膜層に紫外線照射装置[フュージョンUVシステムズ(株)製]により、照射強度200mW/cm2、搬送速度15m/sの条件で紫外線を照射し、硬化処理を行ってハードコートフィルムを作成した。
得られたハードコートフィルムについて、下記の方法で性能評価を行った。
評価結果を表3、4に示す。
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】


イ 甲第2号証には,以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】 少なくともエチレン性不飽和結合を有する化合物及び光重合開始剤を含有してなる光重合性組成物において、上記エチレン性不飽和結合を有する化合物が、1分子中にイソシアネート基を少なくとも3個以上有する化合物と、1分子中に1つの水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応生成物を含有してなることを特徴とする光重合性組成物。」
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光重合性組成物に関するものであり、詳しくは高感度で、基材との密着が良好で耐薬品性に優れた、高耐刷力を有する高品位の平版印刷版に好適に用いられる光重合性組成物に関し、更に詳しくはレーザー露光感度を有する高耐刷、高品位のダイレクト製版に対応可能な光重合性組成物に関する。」
(ウ)「【0010】
1分子中にイソシアネート基を少なくとも3個以上有する化合物とは、
(1).ジイソシアネート3分子以上の反応生成物、
(2).従来公知のジイソシアネート化合物と3価以上の多価アルコールとの反応生成物
により形成される。上記の反応に好適に用いられるジイソシアネート化合物としては、従来公知のジイソシアネート化合物が特に制限なく使用できる。具体的には、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、1,3-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。これらの化合物を単独で、又は2種以上を混合した3分子以上の反応生成物でも好適に使用できるが、合成の容易さ等から脂肪族ジイソシアネート化合物が好ましく、中でもより好ましくは、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートの単独又は混合による3分子以上の反応生成物が好ましい。
【0011】
又一方、(2)の様な、ジイソシアネート化合物と3価以上のアルコールとの反応生成物も好適に利用できる。このような3価以上のアルコールとしては、従来公知の化合物が特に制限なく使用できる。このような化合物の例としては、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖等が挙げられる。これらの化合物のアルコール価数に応じ、水酸基1モルに対しイソシアネート基2モルの比率で添加し、反応させることで目的の反応生成物を得ることができる。この反応の際にジイソシアネート化合物と多価アルコールの相溶性が重要となり、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等が好適で、中でもより好ましくはトリメチロールプロパンである。」

(3) ア(ア) 上記(2)アより,甲第1号証には,申立人が特許異議申立書で「甲1発明」と称する,以下の発明が記載されているといえる。
「多価アルコール(c)とアクリル酸とのエステル化物であって,分子内に1個または2個の水酸基と3?11個のアクリロイル基を有する多官能アクリレート(b)と
ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体との反応で得られるウレタン化反応生成物(A)と
多価アルコール(d)のすべての水酸基がアクリル酸によりエステル化された4?12個のアクリロイル基を有する多官能アクリレート(B)と
光重合開始剤(C)を必須成分とする
活性エネルギー線硬化性ハードコート用樹脂組成物」

(イ) 本件発明1と甲1発明とを対比すると,ウレタン(メタ)アクリレート化合物を得るためのポリイソシアネート化合物(b)として,本件発明1は「ジイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート化合物」を用いるのに対し,甲1発明は「ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体」を用いる点で相違する。

(ウ) 前記相違点について検討するに,本件発明1は「ジイソシアネート化合物を含むことが必須」(本件特許明細書の段落【0032】)であるところ,「ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体」は,「ポリイソシアネート化合物」ではあるが「ヘキサメチレンジイソシアネート」とは異なる化合物であるから,本件発明1は,甲1発明に対して新規性を有する。
なお,申立人は,本件特許明細書の段落【0033】にポリイソシアネート化合物(b)の具体例としてヘキサメチレンジイソシアネートの3量体が記載されており,甲1発明における多官能アクリレート(b)とヘキサメチレンジイソシアネートの3量体との反応で得られるウレタン化反応生成物(A)は,本件特許発明のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)に相当するから,甲1発明が本件発明1の構成要件を備えている旨を説明する(特許異議申立書第15頁1?6行。)。しかしながら,前記のとおり,ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体は,本件発明1が必須とするヘキサメチレンジイソシアネートとは異なる化合物であるから,申立人の前記説明は採用できない。

(エ) 次に,前記相違点に係る進歩性について検討するに,甲1発明においてジイソシアネート化合物を用いることは,前記(2)ア(ア)?(キ)をみても示されていない。また,前記(2)ア(ク)によれば,ヘキサメチレンジイソシアネートを用いて製造した組成物は,カール性の評価が×である(比較製造例4に基づく比較例3。)。すると,甲1発明に対して,ジイソシアネート化合物を用いることの動機づけがあるということはできない。そして,本件発明1は,ウレタンアクリレート組成物において,ジイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート化合物を用いることにより,本件特許明細書に記載のとおりの効果を奏するものであるから,本件発明1は,甲1発明に基いて当業者が容易に発明できたものということはできず,進歩性を有する。

(オ) 本件発明2ないし5,8,9及び12ないし21は,いずれも本件発明1を引用して本件発明1の発明特定事項をさらに特定したものである。そして,本件発明1が,前記(ウ)及び(エ)のとおり新規性及び進歩性を有するものであるから,本件発明2ないし5,8,9及び12ないし21も,同様の理由により,新規性及び進歩性を有するものである。よって,申立人の主張1は,理由がない。

イ(ア) また,甲第2号証には,前記(2)イ(ウ)のとおり,1分子中にイソシアネート基を少なくとも3個以上有する化合物がジイソシアネートを用いた反応により形成される旨が記載されている。しかしながら,イソシアネート基を少なくとも3個以上有する化合物を形成する際に,ジイソシアネート化合物も必ず含むことについては,甲第2号証の記載によっても明らかでない。そして,前記ア(エ)のとおり,甲1発明に対してジイソシアネート化合物を用いることの動機づけがあるということはできず,また本件発明1は,ウレタンアクリレート組成物において,ジイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート化合物を用いることにより,本件特許明細書に記載のとおりの効果を奏するものであることに鑑みると,本件発明1は,甲1発明及び甲第2号証の記載に基いて当業者が容易に発明できたものということはできず,進歩性を有する。

(イ) 本件発明2ないし21は,いずれも本件発明1を引用して本件発明1の発明特定事項をさらに特定したものである。そして,本件発明1は,前記(ア)のとおり進歩性を有するものであるから,本件発明2ないし21も,同様の理由により,進歩性を有するものである。よって,申立人の主張2も,理由がない。

第5 むすび
以上のとおり,申立人が主張する特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては,請求項1ないし21に係る特許を取り消すことはできない。
また,その他に請求項1ないし21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-03-29 
出願番号 特願2011-519522(P2011-519522)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08G)
P 1 651・ 113- Y (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 久保田 英樹  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 前田 寛之
平塚 政宏
登録日 2015-06-12 
登録番号 特許第5757664号(P5757664)
権利者 日本化薬株式会社
発明の名称 ウレタン(メタ)アクリレート化合物及びそれを含有する樹脂組成物  
代理人 小笠原 亜子佳  

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