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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B29C 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B29C |
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管理番号 | 1313074 |
異議申立番号 | 異議2016-700026 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-01-15 |
確定日 | 2016-04-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5747412号「ブロー成形装置及び容器の製造方法」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5747412号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 主な手続の経緯等 特許第5747412号(設定登録時の請求項の数は6。以下「本件特許」という。)は,平成23年12月27日にされた特許出願に係るものであって,平成27年5月22日にその特許権が設定登録されたものである。 特許異議申立人小坂美智子(以下,単に「異議申立人」という。)は,平成28年1月15日,本件特許の請求項1?6に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。 2 本件発明 本件特許の請求項1?6に係る発明は,その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下,請求項の番号に応じて各発明を「本件発明1」などといい,これらを併せて「本件発明」という場合がある。なお,請求項2?6の記載は,これを省略する。)。 「上端に口筒部(32)を起立設した有底筒状のプリフォーム(31)のブロー成形装置であって,前記プリフォーム(31)が口筒部(32)を外部に突出させた状態で型内に装着するブロー成形用の金型(1)と,前記プリフォーム(31)を金型(1)に装着した状態で前記口筒部(32)に密に連通して該プリフォーム(31)内に第1の加圧流体(Fp1)を供給するブローノズル(4)と,前記ブローノズル(4)に第1の加圧流体(Fp1)を供給する加圧装置(21)と,前記ブローノズル(4)と共に金型(1)から突出したプリフォーム(31)の口筒部(32)の外周面を,空間(S)を介して密に囲繞する隔壁部材(11)を有し,ブロー成形時に前記空間(S)に第2の加圧流体(Fp2)を供給する加圧流体供給部(22)を配設し,前記加圧装置(21)からブローノズル(4)への第1の加圧流体(Fp1)の配管(P1)を分岐し,該第1の加圧流体(Fp1)の一部を前記加圧流体供給部(22)の加圧手段として使用する構成としたことを特徴とするブロー成形装置。」 3 申立理由の概要 異議申立人の主張は,概略,次のとおりである。 (1) 本件発明1?6は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明である(以下「取消理由1」という。)。すなわち,本件発明1?6は,甲1に記載された発明を主たる引用発明としたとき,この主たる引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。 (2) 本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法36条4項1号に規定する要件に適合しないから(以下「取消理由2」という。なお,当該要件を「実施可能要件」という場合がある。),本件発明は特許を受けることができない。 (3) そして,上記取消理由1?2にはいずれも理由があるから,本件の請求項1?6に係る発明についての特許は,113条2号及び4号に該当し,取り消されるべきものである。 (4) また,証拠方法として書証を申出,以下の文書(甲1?5)を提出する。 ・甲1: 特開2009-166482号公報 ・甲2: 特開平6-238741号公報 ・甲3: 特開2005-297467号公報(決定注:異議申立書21頁の「証拠方法」の欄にある「特開平2005-297467号公報」の記載は誤記と認める。) ・甲4: 「図解 油・空圧用語辞典」,日刊工業新聞社,昭和55年12月25日初版6刷の抜粋 ・甲5: 特開2000-43129号公報 4 当合議体の判断 当合議体は,以下述べるように,取消理由1?2にはいずれも理由はないと解する。 (1) 取消理由1について ア 本件発明1について (ア) 甲1に記載された発明 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲1には,特に【特許請求の範囲】の請求項4,8?10並びに【0023】,【0026】などの記載からみて,次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「有底筒状に形成されたプリフォームを所定の容器形状にブロー成形するためのブロー成形型であって,前記プリフォームの開口端となる口部が外部に配置されるように,前記プリフォームを収容するブロー成形型と, ブローエアーの吹き出し口となるブロー成形ノズルであって,ブローエアーが吹き出す開口部を前記口部に気密下に連通させて,前記プリフォーム内に前記ブローエアーを供給するブロー成形ノズルと, 前記口部の外周面側に冷却媒体を供給する冷却機構であって,前記ブロー成形ノズルの開口部を前記口部に気密下に連通させたときに,前記口部の外周面側を囲繞する空間を形成し,前記空間内に前記冷却媒体を前記ブローエアと同じ又はほぼ同じ圧力で供給する冷却機構とを備え, 前記ブロー成形ノズルには,前記口部の外周面側を囲繞する空間を形成する隔壁部を設けたブロー成形装置。」 (イ) 一致点及び相違点 本件発明1と甲1発明とを対比するに,甲1発明の「ブローエアー」は本件発明1の「第1の加圧流体(Fp1)」に,「冷却媒体」は「第2の加圧流体(Fp2)」に,「冷却機構」は「加圧流体供給部」に,「隔壁部」は「隔壁部材」にそれぞれ相当する。 また,甲1発明は,「ブローエアー」をブロー成形ノズルに供給するための手段についての特定はないが,ブローエアーを供給するための何らかの供給手段を設けることは技術常識であり,そしてそのような供給手段は本件発明1の「加圧装置」に相当する。 そうすると,本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「上端に口筒部を起立設した有底筒状のプリフォームのブロー成形装置であって, 前記プリフォームが口筒部を外部に突出させた状態で型内に装着するブロー成形用の金型と, 前記プリフォームを金型に装着した状態で前記口筒部に密に連通して該プリフォーム内に第1の加圧流体(Fp1)を供給するブローノズルと, 前記ブローノズルに第1の加圧流体(Fp1)を供給する加圧装置と, 前記ブローノズルと共に金型から突出したプリフォームの口筒部の外周面を,空間を介して密に囲繞する隔壁部材を有し, ブロー成形時に前記空間に第2の加圧流体を供給する加圧流体供給部を配設するブロー成形装置」である点 ・ 相違点1 加圧流体供給部(冷却機構)の構成について,本件発明1は「加圧装置(21)からブローノズル(4)への第1の加圧流体(Fp1)の配管(P1)を分岐し,該第1の加圧流体(Fp1)の一部を前記加圧流体供給部(22)の加圧手段として使用する構成とした」と特定するのに対し,甲1発明はそのような特定事項を有しない点 (ウ) 相違点1についての検討 a 本件発明1は,本件明細書の記載によれば,ブロー成形する際における第1の加圧流体によるブロー圧力に起因するプリフォームの口筒部の拡径変形を効果的に防止することを一義的な解決課題とするものと認められるところ(【0011】),さらに本件発明1は上記相違点1に係る構成を有することで,第2の加圧流体の供給部について,コンプレッサーやポンプ等の大型の動力源を必要とする別途の加圧手段(第2の加圧装置)を設置することなく,すなわち従来の装置の構成を大きく変更することなく,第2の加圧流体を供給することができるといった効果も併せて奏するものである(【0012】)。 b 他方,甲1並びに異議申立人が提出した証拠には,上記相違点1に係る構成の開示はない。 異議申立人は,甲2及び甲3を挙げて,甲1発明と同一のブロー成形分野において,同じ圧力のエアーを一つの加圧源から複数の配管に分岐して供給することは周知技術である旨主張するが(異議申立書16頁),証拠からは,異議申立人も主張するような,同じ圧力のエアーを一つの加圧源から複数の配管に分岐して供給するとの構成,すなわち,本件発明1に則していえば「加圧装置(21)からブローノズル(4)への第1の加圧流体(Fp1)の配管(P1)を分岐」するとの構成が周知であることが認定できるにとどまるといわざるを得ない。本件発明1の上記相違点に係る構成のうち「第1の加圧流体(Fp1)の一部を前記加圧流体供給部(22)の加圧手段として使用する構成」が周知であると認めるに足りる証拠はない。 そして,本件発明1は,上述の構成を有することで,上記aで述べたような効果を奏するものである。 c 以上のとおり,上記相違点1は想到容易でない。 (エ) 小括 以上のとおりであるから,本件発明1は甲1発明から想到容易であるということはできない。 イ 本件発明2?5について 請求項2?5の記載は,請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。そして,本件発明1が甲1発明から想到容易であるということはできないのは上記アで検討のとおりであるから,本件発明2?5も同様の理由により,想到容易であるということはできない。 ウ 本件発明6について (ア) 甲1に記載された発明 甲1には,特に【特許請求の範囲】の請求項1?4並びに【0023】,【0026】などの記載からみて,次のとおりの物を生産する方法の発明(以下「甲1’発明」という。)が記載されていると認める。 「有底筒状に形成されたプリフォームの開口端となる口部が外部に配置されるように,前記プリフォームをブロー成形型に収容し, 前記口部からブローエアーを供給して,前記プリフォームの胴部を膨らませて所定の容器形状にブロー成形するにあたり, 前記ブローエアーの吹き出し口となるブロー成形ノズルの開口部を前記口部に気密下に連通させて,前記プリフォーム内に前記ブローエアーを供給するとともに, 前記口部の外周面側を囲繞する空間を前記ブロー成形ノズルに設けられた隔壁部により形成して,前記空間内に冷却媒体を前記ブローエアーと同じ又はほぼ同じ圧力で供給する樹脂製容器の製造方法。」 (イ) 一致点及び相違点 本件発明6と甲1’発明とを対比すると,両発明の相違点は次のとおりであると認められる。 ・ 相違点2 本件発明6は「前記第1の加圧流体(Fp1)の一部を加圧手段とした加圧流体供給部(22)により,前記口筒部(32)の外周面に第2の加圧流体(Fp2)を供給して該外周面側からも加圧した状態でブロー成形する」との構成を有するのに対し,甲1’発明はそのような構成を有しない点 (ウ) 相違点2についての検討 相違点2は,上記相違点1(上記ア(イ))と概ね同様の構成からなるものである。さすれば,上記アでの検討と同様の理由により,上記相違点2は想到容易であるということはできない。 よって,本件発明6は甲1’発明からその進歩性を否定できない。 エ まとめ 以上のとおりであるから,異議申立人が主張する取消理由1には理由がない。 (2) 取消理由2について 異議申立人は,本件発明の「加圧流体供給部(22)」について,本件の明細書をみても,その構成が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから,本件の発明の詳細な説明は実施可能要件を満足しない旨主張する。 しかし,「加圧流体供給部(22)」について明細書に具体的な記載がなくとも,技術常識を有する当業者であれば,ポンプとしての吸い込み機構・吐き出し機構を設けるなど,その実施をすることに格別な困難性を伴うものとは認められない。異議申立人の上記主張は採用できない。 以上のとおり,異議申立人が主張する取消理由2には理由がない。 5 むすび したがって,異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠によっては,特許異議の申立てに係る特許を取り消すことはできない。また,他に当該特許が113条各号のいずれかに該当すると認めうる理由もない。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-03-23 |
出願番号 | 特願2011-285564(P2011-285564) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
Y
(B29C)
P 1 651・ 121- Y (B29C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 長谷部 智寿 |
特許庁審判長 |
田口 昌浩 |
特許庁審判官 |
須藤 康洋 大島 祥吾 |
登録日 | 2015-05-22 |
登録番号 | 特許第5747412号(P5747412) |
権利者 | 株式会社吉野工業所 |
発明の名称 | ブロー成形装置及び容器の製造方法 |