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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  G01D
審判 一部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  G01D
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01D
管理番号 1313282
審判番号 無効2012-800143  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-09-03 
確定日 2016-02-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3477995号「車両用指針装置」の特許無効審判事件についてされた平成26年9月30日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成26年(行ケ)第10236号 平成27年6月30日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
被請求人は,平成8年5月23日,名称を「車両用指針装置」とする発明について特許出願をし(特願平8-128704号,特開平9-311058号),平成15年10月3日に特許権の設定登録(特許第3477995号(以下「本件特許」という。))を受けた(以下,本件特許の明細書を「本件特許明細書」という。)。
これに対して,請求人は,平成24年9月3日,特許第3477995号の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求めることを請求の趣旨とする審判を請求した(以下「本件無効審判」という。)。
本件無効審判に関する,その後の手続の経緯は,概略,以下のとおりである。

平成24年11月21日:答弁書(以下「答弁書1」という。)
平成25年 2月27日:審理事項通知書
平成25年 3月15日:口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成25年 3月18日:口頭審理陳述要領書(請求人)
平成25年 3月27日:口頭審理
平成25年 4月11日:審理終結通知書
平成25年 4月26日:審決(以下「一次審決」という。)
平成25年 6月 4日:出訴(平成25年(行ケ)10154号)
平成25年12月24日:判決(以下「一次判決」という。)
平成26年 1月 9日:訂正請求申立書
平成26年 2月28日:訂正請求書
(以下,この訂正請求書による訂正を「訂正請求1」という。)
平成26年 4月10日:弁駁書
平成26年 4月22日:補正許否の決定
平成26年 5月22日:答弁書(以下「答弁書2」という。)
平成26年 5月22日:訂正請求書
(以下,この訂正請求書による訂正を「訂正請求2」という。)
平成26年 6月25日:審決の予告
平成26年 7月25日:訂正請求書
(以下,この訂正請求書を「本件訂正請求書」といい,この訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)
平成26年 9月12日:審理終結通知書
平成26年 9月30日:審決(以下「二次審決」という。)
平成26年10月30日:出訴(平成26年(行ケ)10236号)
平成27年6月30日:判決(以下「二次判決」という。)
平成27年7月24日:上申書(請求人)
平成27年11月24日:補正許否の決定
平成27年11月24日:審理終結通知書

なお,平成26年7月25日付けで本件訂正請求がなされたため,特許法第134条の2第6項の規定により,訂正請求1及び訂正請求2は取り下げられたものとみなされる。

第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
被請求人が平成26年7月25日付けの本件訂正請求書により請求する訂正(以下「本件訂正」という。)は,本件特許明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を,本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求めるものである。
訂正の内容は,以下のとおりである(下線は,訂正箇所を示す。)。

(1)請求項1及び4からなる一群の請求項についての訂正(以下「訂正事項1」という。)
ア 訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に,
「目盛り板(20)と,この目盛り板上にて指示表示する指針(30)と,前記目盛り板を光により照射する照射手段(50)とを備えた車両用指針装置において,
車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段(112,112A,113,113A,121乃至124,130,130A)を備えることを特徴とする車両用指針装置。」
とあるのを,
「目盛り板(20)と,この目盛り板上にて指示表示する指針(30)と,前記目盛り板を光により照射する照射手段(50)とを備えた車両用指針装置において,
車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を,前記キースイッチのオン状態の当該目盛り板照射手段の照射光の初期輝度から徐々に低下させるように制御し,前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし,このキースイッチがオンされるタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する制御手段(112,112A,113,113A,121乃至124,130,130A)を備えることを特徴とする車両用指針装置。」
と訂正する。

イ 訂正事項b
特許請求の範囲の請求項4に,
「車両の座席に乗員が着座していないときこれを検出する着座検出手段(SW)を備え,
前記制御手段が,その制御を,前記着座検出手段の検出に伴い停止することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つの記載の車両用指針装置。」 とあるのを,
「車両の座席に乗員が着座していないときこれを検出する着座検出手段(SW)を備え,
前記制御手段が,その制御を,前記着座検出手段の検出に伴い停止することを特徴とする請求項1に記載の車両用指針装置。」
と訂正する。

ウ 訂正事項c
願書に添付した明細書の段落【0004】に,
「【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため,請求項1,4に記載の発明によれば,制御手段が,キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する。これにより,目盛り板の明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するので,乗員に対し,この種指針装置におけるキースイッチのオフ後の斬新な視認性を提供できる。」
とあるのを,
「【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため,請求項1,4に記載の発明によれば,制御手段が,キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段の照射光の輝度を,キースイッチのオン状態の目盛り板照射手段の照射光の初期輝度から徐々に低下させるように制御し,キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態でキースイッチがオンされると,目盛り板照射手段の照射光の輝度をキースイッチがオンされるタイミングで零にし,このキースイッチがオンされるタイミングから遅延させて目盛り板照射手段の輝度を初期輝度に戻すように制御する。これにより,目盛り板の明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するので,乗員に対し,この種指針装置におけるキースイッチのオフ後の斬新な視認性を提供できる。」
と訂正する。

エ 訂正事項d
願書に添付した明細書の段落【0021】に,
「なお,上記第1実施の形態において,発光素子31及び光源50の各発光輝度が低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合には,図6にて示すように,光源50の発光輝度を初期輝度Aに戻すタイミングを,発光輝素子31の発光輝度に比べて,所定時間T2だけ遅延させて実施してもよい。この場合には,イグニッションスイッチIGのオン時にも自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を提供できる。」
とあるのを,
「なお,上記第1実施の形態において,発光素子31及び光源50の各発光輝度が低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合には,図6にて示すように,光源50の発光輝度を初期輝度Aに戻すタイミングを,発光素子31の発光輝度に比べて,所定時間T2だけ遅延させて実施してもよい。このように発光素子31及び光源50の各発光輝度が低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合には,イグニッションスイッチIGのオフ後のオン時にも自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を提供できる。」
と訂正する。

(2) 請求項2,3及び5からなる一群の請求項についての訂正(以下「訂正事項2」という。)
ア 訂正事項e
特許請求の範囲の請求項2に,
「目盛り板(20)と,この目盛り板上に指示表示する発光指針(30)と,前記目盛り板を光により照射する目盛り板照射手段(50)と,前記発光指針を光により照射して発光させる指針照射手段(31)とを備えた車両用指針装置において,
車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段(112,112A,113,113A,121乃至124,130,130A)を備えることを特徴とする車両用指針装置。」
とあるのを,
「目盛り板(20)と,この目盛り板上に指示表示する発光指針(30)と,前記目盛り板を光により照射する目盛り板照射手段(50)と,前記発光指針を光により照射して発光させる指針照射手段(31)とを備えた車両用指針装置において,
車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度を,前記キースイッチのオン状態の前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の初期輝度から徐々に低下させるように制御し,
前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,
前記指針照射手段の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで前記初期輝度に戻すと共に,
前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし前記指針照射手段の輝度が前記初期輝度に戻るタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する制御手段(112,112A,113,113A,121乃至124,130,130A)を備えることを特徴とする車両用指針装置。」
と訂正する。

イ 訂正事項f
特許請求の範囲に,次の請求項5を追加する。
「【請求項5】 車両の座席に乗員が着座していないときこれを検出する着座検出手段(SW)を備え,
前記制御手段が,その制御を,前記着座検出手段の検出に伴い停止することを特徴とする請求項2又は3のいずれか一つの記載の車両用指針装置。」

ウ 訂正事項g
願書に添付した明細書の段落【0006】に,
「また,請求項2乃至4に記載の発明によれば,制御手段が,キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する。
これにより,目盛り板及び発光指針の各明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するので,乗員に対し,この種指針装置におけるキースイッチのオフ後の斬新な視認性を提供できる。」
とあるのを,
「また,請求項2,3,5に記載の発明によれば,制御手段が,キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度を初期輝度から徐々に低下させるように制御し,キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度が徐々に低下している状態でキースイッチがオンされると,指針照射手段の輝度をキースイッチがオンされるタイミングで初期輝度に戻すと共に,目盛り板照射手段の照射光の輝度をキースイッチがオンされるタイミングで零にし指針照射手段の輝度が初期輝度に戻るタイミングから遅延させて目盛り板照射手段の輝度を初期輝度に戻すように制御する。これにより,目盛り板及び発光指針の各明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するので,乗員に対し,この種指針装置におけるキースイッチのオフ後の斬新な視認性を提供できる。」
と訂正する。

エ 訂正事項h
願書に添付した明細書の段落【0008】に,
「ここで,請求項3に記載の発明のように,制御手段が,その制御を,目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度低下度合を相互に異ならしめるように行えば,請求項2に記載の発明による斬新な視認性とは異なる斬新な視認性を提供できる。
また,請求項4に記載の発明のように,制御手段が,その制御を,着座検出手段の検出に伴い停止すれば,乗員が当該車両から離れた後にも上記輝度低下制御を行うというような無駄を防止できる。」
とあるのを,
「ここで,請求項3に記載の発明のように,制御手段が,その制御を,目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度低下度合を相互に異ならしめるように行えば,請求項2に記載の発明による斬新な視認性とは異なる斬新な視認性を提供できる。また,請求項4又は5に記載の発明のように,制御手段が,その制御を,着座検出手段の検出に伴い停止すれば,乗員が当該車両から離れた後にも上記輝度低下制御を行うというような無駄を防止できる。」
と訂正する。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項aについて
(ア)訂正事項aは,次の(訂正事項a-1)及び(訂正事項a-2)からなる訂正である。
(訂正事項a-1)
本件訂正前の請求項1の「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い」「徐々に低下させるように制御」する「目盛り板照射手段の照射光の輝度」について,「前記キースイッチのオン状態の当該目盛り板照射手段の照射光の初期輝度から」徐々に低下させるとの限定を付加する。
(訂正事項a-2)
本件訂正前の請求項1の「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段(112,112A,113,113A,121乃至124,130,130A)」について,「前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし,このキースイッチがオンされるタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する」との限定を付加する。
よって,訂正事項aは,特許法第134条の2第1項ただし書第1号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものである。

(イ)訂正事項aが,本件訂正前の本件特許明細書又は図面(以下,「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でしたものであるか否かについて判断する。
a (訂正事項a-1)について
本件特許明細書の段落【0014】には,「発光輝度Yは,発光素子31及び光源50の発光輝度を表す。」と記載され,本件特許明細書の段落【0015】には,「目盛り板20が,光源50の各発光ダイオード50aにより初期輝度Aにて照射される。」と記載され,本件特許明細書の段落【0016】?【0017】には,「このような状態において,イグニッションスイッチIGをオフ(図5参照)すると」,「時間データtがt=0とクリアされ」,「繰り返し加算更新される時間データt=t+1に応じ,ステップ112にて次の数1の式に基づき発光輝度Yが算出され,この発光輝度Yに基づきステップ130にて各発光ダイオード31a,50aの発光駆動処理がなされる。」
「【数1】 Y=A{1-(t/T)}
但し,この数1の式において,符号Tは,発光素子31及び光源50の各発光輝度の低下割合を特定する値に対応する。」,「また,光源50がステップ112における各算出輝度Yにて発光するように,各発光ダイオード50aが駆動回路90bにより発光駆動される。」と記載されている。さらに,本件特許明細書の段落【0018】には,「図5にて示すように,イグニッションスイッチIGのオフに伴い,発光素子31及び光源50の各発光輝度は,各直線L1,L2に沿い順次低下していく。」と記載されている。
これらの記載及び図5の記載より,本件明細書等には,イグニッションスイッチIGをオフすると,目盛り板20を照射する光源50の発光輝度を,初期輝度Aから,直線L1に沿い順次低下させること,つまり,「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い」「徐々に低下させるように制御」する「目盛り板照射手段の照射光の輝度」について,「前記キースイッチのオン状態の当該目盛り板照射手段の照射光の初期輝度から」徐々に低下させることが記載されているといえる。
よって,訂正事項a-1は,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。

b (訂正事項a-2)について
上記「(ア)」「(訂正事項a-2)」のとおり,訂正前の請求項1に対して「前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし,このキースイッチがオンされるタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する」との構成要件が付加されたが,二次判決において,「指針照射手段を構成に含まない本件発明1において,イグニッションスイッチのオンではなく,発光素子31の挙動に光源50の挙動タイミングを合わせるべき技術的意義を示す記載はない。」(二次判決の判決書第34頁第1?3行),「技術的に目盛り板の輝度制御が指針の輝度制御に連携して制御されているわけではないことが理解できる。」(二次判決の判決書第34頁第6?7行),「図6の記載に触れた当業者は,図5において目盛り板照射手段の発光輝度が徐々に低下するタイミングをイグニッションスイッチのオフにかからせたのと同様に,目盛り板照射手段のみを対象とした本件発明1の構成において,同照射手段の発光輝度が徐々に低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合,これを契機として,光源50の発光輝度が零となり,そこからT2時間経過した後に,その輝度が初期輝度Aに戻ることを読み取るものと認められる。」(二次判決の判決書第34頁第23行?第35頁第4行),「したがって,上記付加された構成要件は,図6の記載によって十分に裏付けられていると認められ,訂正事項aは,本件訂正前の本件明細書に記載した事項の範囲内でしたものと認められる。」(二次判決の判決書第35頁第5?7行)と判示されている(「第5 当裁判所の判断」「1 取消事由1(訂正事項1の判断の誤り)について」「(2) 本件訂正に関しての新規事項の追加の有無について」)。
そして,行政事件訴訟法第33条第1項の規定により,二次審決を取り消した二次判決は,当審を拘束する。
よって,訂正事項aは,本件訂正前の本件明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。

(ウ)以上のとおり,訂正事項aは,本件訂正前の本件明細書等に記載した事項の範囲内でした訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
よって,訂正事項aは,特許法第134条の2第1項ただし書第1号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とし,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

イ 訂正事項bについて
訂正事項bは,本件訂正前の請求項4が,請求項1ないし3を引用していたため,請求項1と請求項2及び3が一群の請求項として一体的に取り扱われる状態であったところ,一群の請求項として一体的に取り扱われないように,請求項2及び3との引用関係を解消することを目的とした訂正である。
また,訂正事項bは,本件訂正前の請求項4が引用する請求項を減らしたものを本件訂正後の請求項4とする訂正であるから,本件明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
よって,訂正事項bは,請求項2及び3との引用関係を解消することを目的としている点で,特許法第134条の2第1項ただし書第4号(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。)に掲げる目的に合致し,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
さらに,本件訂正後の請求項4に係る発明は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を訂正の目的とする本件訂正後の請求項1を引用しているから,実質的に本件訂正前の請求項4から減縮された発明である。そして,本件訂正後の請求項4は,本件無効審判の請求がされていない請求項であるから,本件訂正後の請求項4に係る発明が特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)を満たすか否か検討すると,「第6」「2」「(3)本件訂正後発明1について」にて述べるとおり,本件訂正後の請求項1に係る発明は,進歩性を有するものであるから,これに技術的限定を付加したものに相当する本件訂正後の請求項4に係る発明が進歩性を有することは明らかである。
加えて,本件訂正後の請求項4に係る発明が独立して特許を受けることができないとするその他の理由も見いだすことはできない。
よって,訂正事項bは,特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定にも適合する。

ウ 訂正事項cについて
訂正事項cは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図ることを目的とした訂正であるから,特許法第134条の2第1項ただし書第3号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的とする訂正である。
また,訂正事項cは,上記訂正事項aと同様の訂正をするものであるから,上記訂正事項aに対する判断と同様の理由により,本件明細書等に記載した事項の範囲内でした訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
よって,訂正事項cは,特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項dについて
訂正事項dは,本件特許明細書の段落【0021】に記載された「発光輝素子31」について,特許法第134条の2第1項ただし書第2号(誤記の訂正)に掲げる事項を目的として,「発光素子31」とし,さらに,同段落【0021】に記載された「この場合」について,特許法第134条の2第1項ただし書第3号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的として「発光素子31及び光源50の各発光輝度が低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合」と訂正し,同段落【0021】に記載された「イグニッションスイッチIGのオン時にも自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を提供できる。」について,特許法第134条の2第1項ただし書第3号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的として「イグニッションスイッチIGのオフ後のオン時にも自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を提供できる。」と訂正するものである。
そして,「発光輝素子31」が,「発光素子31」の誤記であること,及び同段落【0021】に記載された「この場合」が,その前文の「発光素子31及び光源50の各発光輝度が低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合」を受けた記載であること,及び同段落【0021】の「イグニッションスイッチIGのオン時にも自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を提供できる。」との記載中の「イグニッションスイッチIGのオン時」が,「イグニッションスイッチIGのオフ後のオン時」の意味であることは,本件特許明細書の段落【0021】及び図6の記載全体からみて明らかなことである。
よって,訂正事項dは,本件明細書等に記載した事項の範囲内でした訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,特許法第134条の2条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また,訂正事項dにより,本件特許明細書の段落【0021】に記載された「発光輝素子31」との誤記を「発光素子31」と訂正したことにより,(本件無効審判の請求がされていない請求項である)本件訂正後の請求項4に係る発明が独立して特許を受けることができなくなるとはいえないから,訂正事項dは,特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定にも適合する。

オ 小括
以上のとおりであるから,訂正事項aないしdは,いずれも特許法第134条の2第1項ただし書の規定に適合し,また,特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び6項の規定にも適合する(訂正事項b及び,訂正事項dの「誤記の訂正」を目的とする訂正事項については,加えて,特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定にも適合する)から,訂正を認める。

(2)訂正事項2について
ア 訂正事項eについて
(ア)訂正事項eは,次の(訂正事項e-1)及び(訂正事項e-2)からなる訂正である。
(訂正事項e-1)
本件訂正前の請求項2の「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い」「徐々に低下させるように制御」する「前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度」について,「前記キースイッチのオン状態の前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の初期輝度から」徐々に低下させるとの限定を付加する。
(訂正事項e-2)
本件訂正前の請求項2の「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段(112,112A,113,113A,121乃至124,130,130A)」について,「前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記指針照射手段の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで前記初期輝度に戻すと共に,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし前記指針照射手段の輝度が前記初期輝度に戻るタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する」との限定を付加する。
よって,訂正事項eは,特許法第134条の2第1項ただし書第1号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものである。

(イ)訂正事項eが,本件明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであるか否かについて判断する。
(訂正事項e-1)について
本件特許明細書の段落【0014】?【0018】の記載及び図5の記載より,本件明細書等には,イグニッションスイッチIGをオフすると,目盛り板20を照射する光源50の発光輝度,及び自発光指針30を照射する発光素子31の発光輝度を,初期輝度Aから,各直線L1,L2に沿い順次低下させること,つまり,「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い」「徐々に低下させるように制御」する「前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度」について,「前記キースイッチのオン状態の前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の初期輝度から」徐々に低下させることが記載されているといえる。
よって,訂正事項e-1は,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。

(訂正事項e-2)について
次に,本件特許明細書の段落【0021】には,「なお,上記第1実施の形態において,発光素子31及び光源50の各発光輝度が低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合には,図6にて示すように,光源50の発光輝度を初期輝度Aに戻すタイミングを,発光輝素子31の発光輝度に比べて,所定時間T2だけ遅延させて実施してもよい。」と記載されている。
そして,図6には,イグニッションスイッチIGのオフに伴い光源50(目盛り板照射手段)の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記イグニッションスイッチIGがオンされた時点で,発光素子31(指針照射手段)は直ちに初期輝度Aに復帰する一方,光源50(目盛り板照射手段)の照射光の輝度が零となり,その時点から所定時間T2だけ遅延して,光源50(目盛り板照射手段)の照射光の輝度が初期輝度Aに戻る態様が記載されているものと認められる。
よって,本件明細書等には,「前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記指針照射手段の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで前記初期輝度に戻すと共に,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし前記指針照射手段の輝度が前記初期輝度に戻るタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する」ことが記載されているから,訂正事項e-2は,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。

(ウ)以上のとおり,訂正事項eは,本件明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

イ 訂正事項fについて
訂正事項fは,本件訂正前の請求項4が,請求項1ないし3を引用していたため,請求項1と請求項2及び3が一群の請求項として一体的に取り扱われる状態であったところ,一群の請求項として一体的に取り扱われないように,請求項1との引用関係を解消することを目的として請求項5を新たに追加した訂正である。
また,訂正事項fは,本件訂正前の請求項4が引用する請求項を減らしたものを本件訂正後の請求項5とする訂正であるから,訂正事項fは,本件明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
したがって,訂正事項fは,請求項1との引用関係を解消することを目的としている点で,特許法第134条の2第1項第4号(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)に掲げる目的に合致し,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
さらに,本件訂正後の請求項5に係る発明は,特許法第134条の2第1項ただし書第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を訂正の目的とする本件訂正後の請求項2及び3を引用しているから,実質的に本件訂正前の請求項4から減縮された発明である。そして,本件訂正後の請求項5は,本件無効審判の請求がされていない請求項であるから,本件訂正後の請求項5に係る発明が特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)を満たすか否か検討すると,「第6」「2」「(4)本件訂正後発明2について」,及び「(5)本件訂正後発明3について)」にて述べるとおり,本件訂正後の請求項2及び3に係る発明は,いずれも進歩性を有するものであるから,本件訂正後の請求項2又は3のいずれか一つの請求項に係る発明に技術的限定を付加したものに相当する本件訂正後の請求項5に係る発明が進歩性を有することは明らかである。
加えて,本件訂正後の請求項5に係る発明が独立して特許を受けることができないとするその他の理由も見いだすことはできない。
よって,訂正事項fは,特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定にも適合する。

ウ 訂正事項gについて
訂正事項gは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図ることを目的とした訂正であるから,特許法第134条第1項ただし書第3号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的とする訂正である。
そして,訂正事項gは,本件明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項hについて
訂正事項hは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図ることを目的とした訂正であるから,特許法第134条第1項ただし書第3号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的とする訂正である。そして,訂正事項hは,本件明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

オ 小括
以上のとおりであるから,訂正事項eないしhは,いずれも特許法第134条の2第1項ただし書の規定に適合し,また,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び6項の規定にも適合する(訂正事項fについては,加えて,特許法134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定にも適合する)から,訂正を認める。

(3)訂正請求についてのまとめ
訂正事項1及び訂正事項2は,いずれも特許法に規定する要件に適合するから,本件訂正を認める。

3 請求人の主張について
請求人は,弁駁書において,平成26年2月28日付けの訂正請求書によりなされた訂正請求1における訂正事項f,及び同訂正請求1における訂正事項iが特許法第134条の2第1項ただし書の何れにも該当せず,また,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に違反する理由として,次の点を主張している。
(1)訂正請求1における訂正事項fについて,訂正請求1における訂正明細書の請求項2の「前記照射手段」に該当する記載が「目盛り板照射手段」と「指針照射手段」のどちらを意味するのか不明である。
仮に,訂正請求1における訂正明細書の請求項2の「前記照射手段」が「目盛り板照射手段」を意味するとしても,「光源50に相当する目盛り板照射手段の輝度を,発光素子31の発光輝度との関係で遅延させて直ちに初期輝度に戻すことは規定されておらず,また,照射光の輝度が徐々に低下している状態でキースイッチがオンされた場合に,指針照射手段の照射光の輝度がどのように制御されるかについては,全く記載されていないから,その制御は,明細書に記載されていない構成を含む。
(2)訂正請求1における訂正事項iについて,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための,本件特許明細書の段落【0006】における記載の訂正についても,上記(1)と同様である。

しかし,本件訂正請求により,本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2及び段落【0006】は,上記「1」「(2)」「ア 訂正事項e」及び「ウ 訂正事項g」のように訂正され,該訂正により,
ア 訂正事項eにより,本件訂正後の請求項2において「前記照射手段」との用語は用いられなくなった。また,本件訂正により,請求項2に「前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記指針照射手段の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで前記初期輝度に戻すと共に,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし前記指針照射手段の輝度が前記初期輝度に戻るタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する」との限定が付加されたから,請求人が(1)で指摘した点は,解消している。
イ 訂正事項gにより,本件特許明細書の段落【0006】も本件訂正後の請求項2の記載と整合するように訂正され,請求人が(2)で指摘した点は,解消している。

よって,請求人の上記(1)及び(2)の主張は,理由がないものとなった。

第3 本件特許発明
上記「第2」で示したとおり,本件訂正は認められるので,本件無効審判の請求がなされた本件特許の請求項1ないし3に係る発明は,本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件訂正後発明1」ないし「本件訂正後発明3」という。)。
「【請求項1】 目盛り板(20)と,この目盛り板上にて指示表示する指針(30)と,前記目盛り板を光により照射する照射手段(50)とを備えた車両用指針装置において,
車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を,前記キースイッチのオン状態の当該目盛り板照射手段の照射光の初期輝度から徐々に低下させるように制御し,前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし,このキースイッチがオンされるタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する制御手段(112,112A,113,113A,121乃至124,130,130A)を備えることを特徴とする車両用指針装置。
【請求項2】 目盛り板(20)と,この目盛り板上に指示表示する発光指針(30)と,前記目盛り板を光により照射する目盛り板照射手段(50)と,前記発光指針を光により照射して発光させる指針照射手段(31)とを備えた車両用指針装置において,
車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度を,前記キースイッチのオン状態の前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の初期輝度から徐々に低下させるように制御し,
前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記指針照射手段の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで前記初期輝度に戻すと共に,
前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし前記指針照射手段の輝度が前記初期輝度に戻るタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する制御手段(112,112A,113,113A,121乃至124,130,130A)を備えることを特徴とする車両用指針装置。
【請求項3】 前記制御手段が,その制御を,前記目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度低下度合を相互に異ならしめるように行うことを特徴とする請求項2に記載の車両用指針装置。」

第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
審判請求書,口頭審理陳述要領書(請求人),弁駁書及び上申書の記載内容を総合すると,請求人の主張は,以下の理由により,本件訂正後発明1ないし本件訂正後発明3についての特許を無効とすべきであるというものである(なお,次の(1)の無効理由1は弁駁書において追加され,平成26年4月22日付けの「補正許否の決定」により補正が許可された請求の理由である。また,平成27年7月24日付けの上申書においてなされた「5」「5-2」「(1)」「オ 追加的主張」については,平成27年11月24日付け「補正許否の決定」により,補正が許可されないものとなった。)。

(1)無効理由1
本件訂正後発明1ないし3は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,本件訂正後発明1ないし3についての特許は,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。

(2)無効理由2
ア 本件訂正後発明1及び2は,引用発明(甲1),周知技術1(甲2?甲7),公知技術1(甲8)及び周知技術2(甲9及び甲13)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって,本件訂正後発明1及び2についての特許は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
イ 本件訂正後発明3は,引用発明(甲1),周知技術1(甲2?甲7),公知技術1(甲8),公知技術2(甲9)及び周知技術2(甲9及び甲13)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって,本件訂正後発明3についての特許は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

2 証拠方法
請求人が提出した証拠は,以下のとおりである。
(審判請求書とともに提出された証拠)
甲第1号証:実願平3-81935号(実開平5-90323号)
のCD-ROM
甲第2号証:特開昭58-53535号公報
甲第3号証:実願平3-39144号(実開平6-25033号)
のCD-ROM
甲第4号証:実願平3-109047号(実開平5-49494号)
のCD-ROM
甲第5号証:特開平5-326182号公報
甲第6号証:特開平5-238309号公報
甲第7号証:特開平5-13176号公報
甲第8号証:実公平1-32592号公報
甲第9号証:特開平4-266536号公報

(口頭審理陳述要領書とともに提出された証拠)
甲第10号証:広辞苑第五版,1463頁及び1812頁
甲第11号証:特開平3-170816号公報
甲第12号証:無効2011-800163号審決

(弁駁書とともに提出された証拠)
甲第13号証:特開平6-201410号公報

第5 被請求人の主張
答弁書1,口頭審理陳述要領書(被請求人)及び答弁書2の記載内容を総合すると,被請求人の主張の概要は,以下のとおりである。
(1)無効理由1
本件訂正後の請求項1に係る発明は請求項1で規定された要件によって所期の作用効果を奏することが出来,特許法第36条第6項第1号の記載要件を満たすものである。
また,本件訂正後の請求項2,3に係る発明も,特許法第36条第6項第1号の記載要件を満たしている。

(2)無効理由2
本件訂正後の請求項1ないし3に係る発明は,引用発明(甲1)に周知技術1(甲第2号証乃至甲第7号証)や甲第8号証,甲第9号証及び甲第13号証の公知技術を組合せたとしても,容易に発明できたものではない。

第6 当審の判断
1 無効理由1について
1-1 本件訂正後の請求項1について
(1)請求人の主張(弁駁書第9頁第14行?第10頁第8行,上申書第13頁第27行?第17頁第1行)
請求人は,本件訂正後の請求項1の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとする理由について,次のとおり主張している。
ア 目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態でキースイッチがオンされた場合における目盛り板照射手段の照射光の輝度に関して,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているのは,段落【0021】の記載のみであるが,段落【0021】には,本件訂正後発明1の構成要件(本件訂正後の請求項1には,目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態でキースイッチがオンされた場合において,指針照射手段の照射光の輝度がどのように制御されるかについて全く記載されていないから,指針照射手段の照射光の輝度が目盛り板照射手段と同じタイミングで初期輝度となるものなどの制御を含む)による作用効果は全く記載されていない。

イ 本件訂正明細書の段落【0021】に記載されている「イグニッションスイッチIGのオフ後のオン時にも自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を提供できる」という課題を解決するためには,光源50と発光素子31の発光輝度が,初期輝度Aに戻るタイミングがずれていなければならず,そのためには,発光素子31の発光輝度は直ちに初期輝度に戻り,光源50の輝度を直ちに零にし,所定時間T2後に初期輝度に戻すことが必要であるが,本件訂正後発明1では,このことが特定されていない。

(2)当審の判断(本件訂正後の請求項1について)
ア 本件訂正後発明1の構成が本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていること
目盛り板照射手段の発光輝度が徐々に低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合,イグニッションスイッチIGのオンのタイミングに合わせて(つまり,発光素子31の挙動に光源50の挙動タイミングを合わせるべき技術的意義を持たせることなく,目盛り板の輝度制御を指針の輝度制御と連携させずに,イグニッションスイッチIGのオンを契機として),前記目盛り板照射手段の発光輝度を零にし,前記イグニッションスイッチIGがオンされるタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の発光輝度を初期輝度に戻すように制御すること,つまり,本件訂正後発明1の「前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし,このキースイッチがオンされるタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する」構成が,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていることは,前記「第2」「2」「(1)」「ア」「(イ)」「b」で述べたとおりである。
よって,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に,本件訂正後発明1の構成が記載されていることは,明らかである。

イ 本件訂正後の請求項1に,本件訂正後発明1の課題を解決するための手段が記載されていること
(ア)本件訂正明細書の発明の詳細な説明には,次の記載がある。
(a)「【0001】
本発明は,車両用指針装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,車両用指針装置においては,例えば,特開平6-201410号公報にて示されているように,当該車両のキースイッチのオンに伴い,指針を発光させた後所定時間の経過に伴い文字板を発光させて,乗員に対し視認性の斬新さを与えるようにしたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし,上記指針装置では,キースイッチのオン後における視認性の斬新さを与えることができるのみで,キースイッチのオフに伴う視認性の斬新さを与えることはできない。
そこで,本発明は,このようなことに対処するため,車両用指針装置において,そのキースイッチのオフに伴う指針や目盛り板の明るさの変化に工夫を凝らし,キースイッチのオフ後の視認性の斬新さを乗員に与えるようにすることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため,請求項1,4に記載の発明によれば,制御手段が,キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段の照射光の輝度を,キースイッチのオン状態の目盛り板照射手段の照射光の初期輝度から徐々に低下させるように制御し,キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態でキースイッチがオンされると,目盛り板照射手段の照射光の輝度をキースイッチがオンされるタイミングで零にし,このキースイッチがオンされるタイミングから遅延させて目盛り板照射手段の輝度を初期輝度に戻すように制御する。これにより,目盛り板の明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するので,乗員に対し,この種指針装置におけるキースイッチのオフ後の斬新な視認性を提供できる。」
(b)「【0021】
なお,上記第1実施の形態において,発光素子31及び光源50の各発光輝度が低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合には,図6にて示すように,光源50の発光輝度を初期輝度Aに戻すタイミングを,発光素子31の発光輝度に比べて,所定時間T2だけ遅延させて実施してもよい。このように発光素子31及び光源50の各発光輝度が低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合には,イグニッションスイッチIGのオフ後のオン時にも自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を提供できる。」

(イ)上記記載より,本件訂正後発明1は,本件訂正明細書の段落【0003】【発明が解決しようとする課題】に記載されているとおり,「キースイッチのオフに伴う視認性の斬新さを与えること」を,発明が解決しようとする課題としている。
そして,上記発明が解決しようとする課題は,本件訂正明細書の段落【0004】に記載されているとおり,「キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段の照射光の輝度を,キースイッチのオン状態の目盛り板照射手段の照射光の初期輝度から徐々に低下させるように制御」することで解決されるが,該解決手段は,本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に発明特定事項として記載されている。

(ウ)さらに,本件訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0021】及び図6の記載を検討すると,光源50の発光輝度については,光源50の発光輝度が徐々に低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合には,光源50の発光輝度をイグニッションスイッチIGがオンされるタイミングでいったん,零にし,所定時間T2だけ遅延してから光源50の発光輝度が初期輝度Aに戻るように工夫が凝らされているのであるから,イグニッションスイッチをオフした後,目盛り板の照度が徐々に低下している途中で運転を再開するためスイッチをオンにした乗員は,瞬時に目盛り板が明るく照らされるか,あるいは,目盛り板の照度が徐々に低下する傾向がしばらく続いた後に目盛り板が明るくなるであろうとの予想に反して,目盛り板がいったん完全に暗くなり,所定時間T2だけ遅延して,目盛り板が初期輝度で明るく照らされるという,予想外の明るさの変化を視認することになり,運転再開にあたり,目盛り板の明るさの変化に新鮮な驚きを覚えることは,当業者にとって自ずと明らかである。
そして,「斬新」とは,「趣向のきわだって新しいこと。」(新村 出,広辞苑,第四版,株式会社岩波書店,1992年10月9日,第四版第二刷,第1073頁)を意味するから,本件訂正後の請求項1に記載されたように,「前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし,このキースイッチがオンされるタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御」することによって,キースイッチをオフした後のキースイッチのオンに伴う目盛り板の明るさの変化について,自然であるとは考え難いような,趣向のきわだって新しい変化を乗員の「視覚に訴え」,乗員に新鮮な驚き(心理的効果)を与えることは,とりもなおさず「斬新な視認性」であるといえる。よって,本件訂正後の請求項1には,光源50の発光輝度が徐々に低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合にも,目盛り板20の斬新な視認性を提供するための手段が記載されているといえる。

ウ まとめ
以上のとおり,本件訂正後発明1の構成は,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されており,しかも本件訂正後の請求項1には,課題解決のための手段が記載されているから,本件訂正後の請求項1の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

(3)請求人の主張(弁駁書第9頁第14行?第10頁第8行,上申書第13頁第27行?第17頁第1行)について
上記「(2)」「イ」で述べたとおり,本件訂正後の請求項1には,本件訂正後発明1の課題を解決するための手段が記載されているから,請求人の主張「(1)」「ア」,「イ」は何れも理由がない。

1-2 本件訂正後の請求項2,3について
(1)請求人の主張
請求人は,平成26年2月28日付けの訂正請求書によりなされた訂正請求1に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2,3の記載について,次のとおり主張している(弁駁書第10頁第9行ないし第11頁第4行)。
ア 光源50に相当する目盛り板の照射手段の輝度を初期輝度に戻す際に,発光素子31の発光輝度との関係で遅延させることが規定されていない。
イ 照射光の輝度が徐々に低下している状態でキースイッチがオンされた場合に,指針照射手段の照射光の輝度がどのように制御されるかについて,規定されていない。
ウ 光源50の発光輝度を初期輝度Aに戻すタイミングを,イグニッションスイッチIGのオンと同時に初期輝度Aに戻る発光素子31の発光輝度に比べて,所定時間T2だけ遅延させ,光源50と発光素子31の発光輝度が初期輝度Aに戻るタイミングがずれている構成が特定されていないから,斬新な視認性を提供するという課題を解決することはできない。

(2)当審の判断
ア 本件訂正により,本件訂正後発明2は,「前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を・・・前記指針照射手段の輝度が前記初期輝度に戻るタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する」構成を具備するものとなった。
イ 本件訂正により,本件訂正後発明2は,「前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記指針照射手段の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで前記初期輝度に戻す」構成を具備するものとなった。
ウ 本件訂正により,本件訂正後発明2は,「前記指針照射手段の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで前記初期輝度に戻すと共に・・・前記指針照射手段の輝度が前記初期輝度に戻るタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する」構成を具備するものとなった。

本件訂正後発明3についても同様である。
また,本件訂正後発明2は,図面とともに,本件訂正明細書の発明の詳細な説明の(第1実施の形態)及び段落【0021】に記載されている。
本件訂正後発明3についても,図面とともに,本件訂正明細書の発明の詳細な説明の(第1実施の形態),(第2実施の形態)及び段落【0008】,【0021】に記載されている。
したがって,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2及び3の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

(3)請求人の主張について
上記「(2)当審の判断」で述べたとおり,本件訂正により,「(1)請求人の主張」は,何れも理由のないものとなった。

1-3 無効理由1についてのまとめ
本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
よって,本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許は,特許法第123条第1項第4号の規定に該当しないから,無効とすべきものではない。

2 無効理由2について
(1)本件訂正後発明1ないし3
本件訂正後発明1ないし3は,本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものである(前記「第3 本件特許発明」参照。)。

(2)引用発明等
ア 引用発明
行政事件訴訟法第33条第1項の規定により,一次審決を取り消した一次判決及び二次審決を取り消した二次判決は,当審を拘束する。
よって,甲1に記載された発明(引用発明)は,一次判決及び二次判決で判示された次のとおりのものであると認める。
「引用発明は,走行速度,エンジン回転数などを表示するための車両用計器に関するものであり,詳細には車両を使用しないとき,すなわち,イグニッションキーが投入されていないときには全面が暗黒となる,いわゆるブラックアウト型とした車両用計器に係るものである(【0001】)。
従来の車両用計器においては,目盛り板に対する目盛り板照明装置は透過照明とする直接照明が可能であるが,指針に対する指針照明装置は,この指針自体をライトガイドとして指針の背面に例えば白色塗料などで形成された反射塗膜に反射させる間接照明となり,前記目盛り板照明装置と比較して効率の低い暗いものとなることは避けられないものであった(【0004】)。そのため,目盛り板と指針を覆うスモーク板で形成された窓ガラスの透過率を設定するときには指針側が読取り可能な程度に透過率を高いものとしなければならず,これによりイグニッションキーのオフ時においても車両用計器に直射日光が照射したときには前記指針,特に白色皮膜が前記窓ガラスを透過して観視されるものとなり,使用者に甚だしく違和感を与える問題点を生じていた(【0002】,【0005】)。
そこで,イグニッションキーのオフ時には内部照明の消灯と窓ガラスとして採用されたスモーク板とによりブラックアウトする構成とした車両用計器において,前記車両用計器の目盛り板のゼロ目盛り以下で,かつ,前記窓ガラスと指針との間となる位置には少なくとも前記窓ガラス側を暗色とした不透明部材により指針マスク板を設け,前記イグニッションキーのオフ時には前記指針をゼロ目盛り以下に旋回させて前記指針マスク板内に収納することを特徴とする車両用計器を提供することで,直射日光が照射したときにも指針が観視されることを防止してブラックアウト効果が保たれるようにし,もって,観者に違和感を与えるのを防止するとの効果を奏するようにしたものである(【0006】,【0014】)。」(一次判決の判決書第14頁第9行?第15頁第6行,二次判決の判決書第37頁第16行?第38頁第12行)

イ 周知技術1(甲2?7)について
行政事件訴訟法第33条第1項の規定により,一次審決を取り消した一次判決で示された裁判所の判断は,当審を拘束する。
よって,甲2?7に記載された技術事項より,周知技術1について,一次判決で判示された次のとおりのものと認定する。
「「車両に関する照明である室内灯,キーシリンダ照明灯,足下照明灯,ヘッドライトや住宅用照明灯を消灯する際に,照射光の輝度を徐々に低下させるように制御すること」は,一般にフェードアウトと呼ばれる周知技術であると認められる。」(一次判決の判決書第25頁第16?19行)

ウ 公知技術1(甲8)について
甲8に記載された公知技術1は,「メータ類の照明(目盛り板の照明)において,消灯に際し明るさを徐々に低下させること」(一次判決の判決書第27頁第24?25行)であり,甲8は,「メータ類の照明(目盛り板の照明)において徐々に減光することが技術的に困難でないことを例示したもの」(一次判決の判決書第28頁第26行?第29頁第1行)である。

エ 甲9(【従来の技術】欄)及び甲13に記載された技術的事項について
行政事件訴訟法第33条第1項の規定により,二次審決を取り消した二次判決で示された次の裁判所の判断は,当審を拘束する。
(ア)甲9の【従来の技術】欄に記載された技術事項については,「使用者に指針を鮮明に認識させるとの技術的意義を読み取ることはできない。」(二次判決の判決書第40頁第9?10行)ので,「「周知技術2」を基礎付けるものとはなり得ない。」(二次判決の判決書第41頁第23行)。
(イ)甲13には,「車両用のキースイッチのオンにより,指針計器用発光体及び計器板用発光体へ電力を供給する際に,指針計器用発光体への電力供給時期に対して計器板用発光体への電力供給時期を遅延させる遅延手段を備えることで,目盛りや記号等の表示部分が発光していない時に指針が発光するため,指針を鮮明に認識させて,使用者に高精度感を与える」(二次判決の判決書第41頁第12?16行)との技術事項が記載されていると認められるが,「当該技術事項が,車両用指針装置の技術分野において,当業者に一般に知られている技術であると認めることはできない。」(二次判決の判決書第41頁第20?21行)。
よって,周知技術2については,公知技術として,次のとおりに認定する(以下,便宜のため,「周知技術2(公知技術)(甲13)」という。)。
「キースイッチがオンされたときに目盛り板照射手段は発光せずに照射光の輝度は零のままであり,キースイッチがオンされてから一定の遅延時間後に目盛り板照射手段の輝度を所定輝度とするように制御すること。」

オ 公知技術2(甲9)について
一次判決では,甲第9号証より,次の公知技術2(甲9)が認定された。
「キーオフ時に,まず,指針の照明を消灯し,次いで,計器板の照明を消灯すること」,すなわち,「指針の照明の消灯と計器板の照明の消灯とのタイミングをずらすようにした車両用計器類照明装置」(一次判決の判決書第30頁第17?19行)

カ 甲第11号証には,車両用メータの照明に,白熱電球が使用されていたことが記載されている。

(3)本件訂正後発明1について
ア 本件訂正後発明1と引用発明との対比
本件訂正後発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明において「指針」が「目盛り板」上にて指示表示するものであることは明らかであるから,引用発明における「車両用計器の目盛り板」と「指針」とが,本件訂正後発明1の「車両用指針装置」における「目盛り板(20)」と「この目盛り板上にて指示表示する指針(30)」とに相当する。
(イ)引用発明の「目盛り板に対する目盛り板照明装置」が,本件訂正後発明1の「目盛り板を光により照射する照射手段(50)」に相当する。
(ウ)引用発明の「イグニッションキーのオフ」が,本件訂正後発明1の「車両のキースイッチ(IG)のオフ」に相当する。
(エ)引用発明の「イグニッションキーのオフ時には内部照明の消灯」を行うことと,本件訂正後発明1の「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を,前記キースイッチのオン状態の当該目盛り板照射手段の照射光の初期輝度から徐々に低下させる」こととは,「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段を消灯させる」点で共通する。
また,引用発明が,目盛り板照明装置の制御手段を備えていることは明らかである。

すると,本件訂正後発明1と引用発明との一致点,相違点は次のとおりのものである。
【一致点】
「目盛り板(20)と,この目盛り板上にて指示表示する指針(30)と,前記目盛り板を光により照射する照射手段(50)とを備えた車両用指針装置において,
車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段を消灯させるように制御する制御手段を備えることを特徴とする車両用指針装置。」

【相違点1】
目盛り板照射手段の制御手段について,本件訂正後発明1では,「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を,前記キースイッチのオン状態の当該目盛り板照射手段の照射光の初期輝度から徐々に低下させるように制御」するのに対し,引用発明では,単に,消灯させるように制御するにとどまる点。

【相違点2】
本件訂正後発明1では,「前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし,このキースイッチがオンされるタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する」のに対し,引用発明では,イグニッションキーのオン時に点灯させる具体的制御について特定されていない点。

イ 相違点についての判断
(ア)【相違点1】について
一次判決では,一次審決における「(相違点1)」(車両のキースイッチのオフに伴い消灯させるように制御する制御手段について,本件発明1では,その照射光の輝度を徐々に低下させるように制御するのに対し,引用発明では,単に,消灯させるように制御するにとどまる点。)について,「引用発明に,本件発明1と技術的意義を同じくする周知技術1を適用して,相違点1に係る構成をとることは,当業者が容易に発明できたことである」(一次判決の判決書第29頁第6?8行)と判示されている。
そして,行政事件訴訟法第33条第1項の規定により,一次審決を取り消した一次判決で示された裁判所の判断は,当審を拘束する。
よって,引用発明に,相違点1に係る本件訂正後発明1と技術的意義を同じくする周知技術1を適用して,車両のイグニッションキーのオフに伴い消灯を行う際,車両のイグニッションキーのオフに伴い目盛り板照明装置の照射光の輝度を「徐々に低下させるように制御する」こと,すなわち本件訂正後発明1の相違点1に係る構成をとることは,当業者が容易に発明できたことである。
また,その際,照射光の輝度の低下を,イグニッションキーのオン状態の目盛り板照明装置の照射光の「初期輝度」からとすることも当業者が容易になし得たことである。

(イ)【相違点2】について
上記相違点2について検討するにあたっては,引用発明に周知技術1を適用し,イグニッションキーのオフに伴い目盛り板照明装置の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記イグニッションキーがオンされると,前記目盛り板照明装置の照射光の輝度を前記イグニッションキーがオンされるタイミングで零にした上で,周知技術2(公知技術)(甲13)を適用することが当業者にとって容易であることを明らかにする必要がある。

ところで,二次判決では,本件訂正後発明2の容易性の判断に関し,「2 取消事由2-1(訂正発明2の進歩性判断の誤り)について」において,次のとおり判示されている。

a 「審決の認定した「周知技術2」が周知の技術であると認めることはできない」(二次判決の判決書第41頁第23?24行)

b 「(4) 周知技術2の適用について
ア 仮に,審決の認定した「周知技術2」の事項が周知であるとしても,以下のとおり,本件において,引用発明に周知技術1を適用して,指針照射手段(発光素子31)及び目盛り板照射手段(光源50)の各発光輝度が徐々に低下している状態で,更に周知技術2を適用することは,容易といえないと解される。・・・
したがって,引用発明に周知技術1を適用した場合に想定される「照射手段の輝度が徐々に低下している状態」と,周知技術2の前提となる「指針及び目盛り板がともに発光していない状態」は,その態様が相違するものであるから,上記周知技術2を適用することは,当業者が容易に想到するものではない。」(二次判決の判決書第42頁第6行?第43頁第12行)

c 「仮に,周知技術2に代えて,指針の照明の消灯と計器板の照明の消灯とのタイミングをずらすようにした公知技術2を考慮し,照明装置を用いた意匠演出において,複数の照明灯についてタイミングをずらして消点灯ないし減増光して一定の演出効果を得ることを併せて考慮したとしても,スイッチキーのオン時に目盛り板照射手段の輝度をあえて零にする構成を容易に想到するとは認め難い。すなわち,上記の各照明装置のタイミングをずらす演出について,スイッチがオンされれば,各照明装置の点灯のタイミングないし増光の程度を,スイッチがオフされた場合には,各照明装置の消灯のタイミングないし減光の程度を,それぞれ制御することが想到可能な演出と考えられるとしても,これとは異なり,スイッチがオンされたにもかかわらず,そのオンのタイミングで発光輝度を零にして消灯するという構成が容易想到とはいえず,また,本件における全証拠においても,キースイッチのオンされるタイミングで目盛り板照射手段の輝度を零にして消灯する構成は記載されていない。」(二次判決の判決書第44頁第12?23行)

d 「(5) 小括
以上によれば,当業者が,「キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし」た構成を容易に想到するとは認め難い。」(二次判決の判決書第44頁第24行?第45頁第2行)

また,二次判決では,「3 取消事由2-2(訂正発明3及び1の進歩性判断の誤り)について」において,
e 「前記2と同様の理由により,訂正発明1が容易に想到できたとする審決の進歩性判断は誤りである。」(二次判決の判決書第45頁第5?6行)
とも判示されている。
そして,行政事件訴訟法第33条第1項の規定により,二次審決を取り消した二次判決で示された裁判所の判断は,当審を拘束するから,本件訂正後発明1における進歩性の判断についても,二次判決で判示された上記a?eの判断事項を基礎とすべきである。
よって,引用発明において,イグニッションキーのオフに伴い目盛り板照明装置の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記イグニッションキーがオンされると,前記目盛り板照明装置の照射光の輝度を前記イグニッションキーがオンされるタイミングで零にした上で,周知技術2(公知技術)(甲13)を適用すること(イグニッションキーがオンされてから一定の遅延時間後に目盛り板照明装置の輝度を所定輝度とするように制御すること)は,当業者が容易に想到し得ることではない。
したがって,本件訂正後発明1の相違点2に係る構成(「キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし,このキースイッチがオンされるタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する」構成)は,当業者が容易に想到し得ることではない。

ウ 本件訂正後発明1についての請求人の主張について
請求人は,上申書(第10頁第13行?第13頁第1行)において,「(目盛り板照射手段の)照射光の輝度が徐々に低下している状態でキースイッチがオンされると(前記目盛り板)照射手段の照射光の輝度を(キースイッチがオンされるタイミングで)零にし,キースイッチがオンされてから遅延させて(前記目盛り板)照射手段の輝度を初期輝度に戻すように制御する」ことによる作用効果や,何らかの技術的な意義があることが本件訂正明細書に記載されていないことを根拠として,本件訂正後の請求項1に係る発明についても,本件訂正前の本件発明1と同じ無効理由が妥当するとし,本件訂正後発明1は,引用発明,周知技術1(甲第2号証から甲第7号証)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。
しかし,本件訂正後発明1の相違点2に係る構成は,「車両用指針装置」の発明を特定するために必要な事項として請求項1に記載された事項であって,これによる作用効果や技術的な意義が本件訂正明細書に明記されていないとしても,相違点2に係る構成が本件訂正後発明1にとって直ちに無意味な構成となるものではない。
また,前記「1」「1-1」「(2)」「イ」「(ウ)」において述べたとおり,相違点2に係る構成により,キースイッチをオフした後のキースイッチのオンに伴う目盛り板の明るさの変化について,自然であるとは考え難いような,趣向のきわだって新しい変化を乗員の「視覚に訴え」,乗員に新鮮な驚き(心理的効果)を与えていること,つまりキースイッチをオフした後のキースイッチのオンに伴って,乗員に「斬新な視認性」を与えていることは,本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載から明らかであるといえる。

よって,本件訂正後発明1の相違点2に係る構成は,無意味な構成とはいえないから,請求人の主張は採用できない。

エ 本件訂正後発明1についてのまとめ
本件訂正後発明1は,引用発明(甲1),周知技術1(甲2?7),公知技術1(甲8)及び周知技術2(公知技術)(甲13)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
仮に,上記周知技術2が周知技術(甲9,甲13)であったとしても、結論に影響を及ぼすものではない。
よって,本件訂正後発明1についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから,特許法第123条第1項第2号に該当せず,無効とすべきものではない。

(4)本件訂正後発明2について
ア 本件訂正後発明2と引用発明との対比
本件訂正後発明2は,二次判決において「訂正発明2は,照射手段として目盛り板照射手段及び指針照射手段の両方を有する発明である本件発明2において,特に,キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段及び指針照射手段の照射光の輝度を初期輝度から徐々に低下させるように制御し,そのような状態でキースイッチがオンされた場合に着目し,この場合に,指針照射手段の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで初期輝度に戻すとともに,目盛り板照射手段の照射光の輝度をキースイッチがオンされるタイミングで零にし,指針照射手段の輝度が前記初期輝度に戻るタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御することにより,目盛り板及び発光指針の各明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下している状態でオンされた場合に,乗員に対し,この種指針装置におけるキースイッチのオフ後のオン時にも斬新な視認性を提供できるようにしたものである(【0006】,【0021】)。」(二次判決の判決書第37頁第3?13行)と判示されているとおりのものである。

そこで,本件訂正後発明2と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明において「指針」が「目盛り板」上に指示表示するものであることは明らかであるから,引用発明における「車両用計器の目盛り板」と,「指針照明装置」により照明される「指針」とが,本件訂正後発明2の「車両用指針装置」における「目盛り板(20)」と,「この目盛り板上に指示表示する発光指針(30)」とに相当する。
(イ)引用発明の「目盛り板に対する目盛り板照明装置」が,本件訂正後発明2の「目盛り板を光により照射する目盛り板照射手段(50)」に相当する。
(ウ)引用発明の「指針に対する指針照明装置」が,本件訂正後発明2の「前記発光指針を光により照射して発光させる指針照射手段(31)」に相当する。
(エ)引用発明の「イグニッションキーのオフ」が,本件訂正後発明2の「車両のキースイッチ(IG)のオフ」に相当する。
(オ)引用発明の「イグニッションキーのオフ時には内部照明の消灯」を行うことと,本件訂正後発明2の「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度を,前記キースイッチのオン状態の前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の初期輝度から徐々に低下させる」こととは,「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段を消灯させる」点で共通する。
また,引用発明が,目盛り板照明装置と指針照明装置の制御手段を備えていることは明らかである。

よって,本件訂正後発明2と引用発明との一致点,相違点は次のとおりのものである。
【一致点】
「目盛り板(20)と,この目盛り板上に指示表示する発光指針(30)と,前記目盛り板を光により照射する目盛り板照射手段(50)と,前記発光指針を光により照射して発光させる指針照射手段(31)とを備えた車両用指針装置において,
車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段を消灯させるように制御する制御手段を備えることを特徴とする車両用指針装置。」

【相違点1】
目盛り板照射手段及び指針照射手段の制御手段について,本件訂正後発明2では,「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度を,前記キースイッチのオン状態の前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の初期輝度から徐々に低下させるように制御」するのに対し,引用発明では,単に,消灯させるように制御するにとどまる点。

【相違点2】
本件訂正後発明2では,「前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記指針照射手段の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで前記初期輝度に戻すと共に,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし前記指針照射手段の輝度が前記初期輝度に戻るタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する」のに対し,引用発明では,イグニッションキーのオン時に点灯させる具体的制御について特定されていない点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
一次判決では,一次審決における「(相違点2)」(車両のキースイッチのオフに伴い消灯させるように制御する制御手段について,本件発明2では,その照射光の輝度を徐々に低下させるように制御するのに対し,引用発明では,単に,消灯させるように制御するにとどまる点。)について,
「4 取消事由2(本件発明2と引用発明との相違点2の判断の誤り)について
本件発明1と本件発明2は,照射光の輝度を制御する対象が,本件発明1が目盛り板照射手段であるのに対して,本件発明2は,目盛り板照射手段及び指針照射手段であるというものにすぎないのであるから,前記1と同様,引用発明の目盛り板照明装置と指針照明装置の制御手段として周知技術1を適用して,照射光の輝度を徐々に低下させるように制御すること,すなわち,本件発明2の相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到できたものであるといえる。」(一次判決の判決書第29頁第10?16行)と判示されている。
そして,行政事件訴訟法第33条第1項の規定により,一次審決を取り消した一次判決で示された裁判所の判断は,当審を拘束する。
したがって,引用発明に周知技術1(甲2?7)を適用して,車両のイグニッションキーのオフに伴い消灯を行う際,車両のイグニッションキーのオフに伴い目盛り板照明装置及び指針照射装置の各照射光の輝度を「徐々に低下させるように制御する」こと,すなわち本件訂正後発明2の相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到できたことである。
また,その際,照射光の輝度の低下を,イグニッションキーのオン状態の目盛り板照明装置及び指針照明装置の各照射光の「初期輝度」からとすることも当業者が容易に想到できたことである。

(イ)相違点2について
二次判決では,「2 取消事由2-1(訂正発明2の進歩性判断の誤り)について」において,次のとおり判示されている。
a 「審決の認定した「周知技術2」が周知の技術であると認めることはできない」(二次判決の判決書第41頁第23?24行)

b 「(4) 周知技術2の適用について
ア 仮に,審決の認定した「周知技術2」の事項が周知であるとしても,以下のとおり,本件において,引用発明に周知技術1を適用して,指針照射手段(発光素子31)及び目盛り板照射手段(光源50)の各発光輝度が徐々に低下している状態で,更に周知技術2を適用することは,容易といえないと解される。・・・
したがって,引用発明に周知技術1を適用した場合に想定される「照射手段の輝度が徐々に低下している状態」と,周知技術2の前提となる「指針及び目盛り板がともに発光していない状態」は,その態様が相違するものであるから,上記周知技術2を適用することは,当業者が容易に想到するものではない。
イ ・・・イグニッションスイッチをオフした後,運転を再開するためスイッチをオンにした場合,運転に向けてすべての照明手段を点灯させる必要がある中で,徐々に輝度を低下させている照明手段のうち一方をいったん完全に消灯させることが自然であるとは考え難い。また,周知技術2の適用の前提となる,「指針及び目盛り板がともに発光していない状態」を作出しようとするならば,いったん目盛り板照明手段及び指針照明手段のいずれも消灯させた上で,指針照明手段を先に点灯させるなどの構成を採り得るのであるから,上記の構成を必然であるとした審決の判断は採用できない。
ウ ・・・訂正発明2は,引用発明に対して,キースイッチのオフ時に周知技術1を適用して各照明手段が消灯した後に,キースイッチをオンする際に単純に周知技術2を適用する場面とは異なっており,引用発明に周知技術1を適用したとしても,その輝度を低下している状態でオンする場合に,周知技術2を適用することが容易に想到し得ることではないことは,前記のとおりである。
仮に,周知技術2に代えて,指針の照明の消灯と計器板の照明の消灯とのタイミングをずらすようにした公知技術2を考慮し,照明装置を用いた意匠演出において,複数の照明灯についてタイミングをずらして消点灯ないし減増光して一定の演出効果を得ることを併せて考慮したとしても,スイッチキーのオン時に目盛り板照射手段の輝度をあえて零にする構成を容易に想到するとは認め難い。すなわち,上記の各照明装置のタイミングをずらす演出について,スイッチがオンされれば,各照明装置の点灯のタイミングないし増光の程度を,スイッチがオフされた場合には,各照明装置の消灯のタイミングないし減光の程度を,それぞれ制御することが想到可能な演出と考えられるとしても,これとは異なり,スイッチがオンされたにもかかわらず,そのオンのタイミングで発光輝度を零にして消灯するという構成が容易想到とはいえず,また,本件における全証拠においても,キースイッチのオンされるタイミングで目盛り板照射手段の輝度を零にして消灯する構成は記載されていない。」(二次判決の判決書第42頁第6行?第44頁第23行)

c 「(5) 小括
以上によれば,当業者が,「キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし」た構成を容易に想到するとは認め難い。」(二次判決の判決書第44頁第24行?第45頁第2行)

よって,
(a)引用発明に周知技術1(甲2?7)を適用して,指針照射装置及び目盛り板照射手段の各発光輝度が徐々に低下している状態で,更に周知技術2(公知技術)(甲13)を適用することは,容易に想到し得ることといえず,
(b)周知技術2(公知技術)(甲13)の適用に際し,イグニッションスイッチをオフした後,運転を再開するためスイッチをオンにした場合,運転に向けてすべての照明手段を点灯させる必要がある中で,徐々に輝度を低下させている照明手段のうち一方をいったん完全に消灯させることは,自然でも必然の構成でも無く,
(c)引用発明に周知技術1(甲2?7)を適用したとしても,その輝度を低下している状態でオンする場合に,周知技術2(公知技術)(甲13)を適用することが容易に想到し得ることではなく,
(d)スイッチキーのオン時に目盛り板照射手段の輝度をあえて零にする構成を容易に想到するとは認め難く,スイッチがオンされたにもかかわらず,そのオンのタイミングで発光輝度を零にして消灯するという構成が容易想到とはいえず,また,本件における全証拠においても,キースイッチのオンされるタイミングで目盛り板照射手段の輝度を零にして消灯する構成は記載されていない。

したがって,本件訂正後発明2の相違点2に係る構成(「キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると,前記指針照射手段の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで前記初期輝度に戻すと共に,前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし前記指針照射手段の輝度が前記初期輝度に戻るタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する」構成)は,当業者が容易に想到し得ることではない。

ウ 本件訂正後発明2についてのまとめ
以上のとおり,本件訂正後発明2は,引用発明(甲1),周知技術1(甲2?7),公知技術1(甲8)及び周知技術2(公知技術)(甲13)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
仮に,上記周知技術2が周知技術(甲9,甲13)であったとしても、結論に影響を及ぼすものではない。
よって,本件訂正後発明2についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから,特許法第123条第1項第2号に該当せず,無効とすべきものではない。

(5)本件訂正後発明3について
二次判決の「3 取消事由2-2(訂正発明3及び1の進歩性判断の誤り)について」において,「また,訂正発明3は,訂正発明2を技術的に限定したものであるから,訂正発明2が容易に想到できたとする審決の進歩性判断に誤りがある以上,訂正発明3に係る判断(の一部)にも誤りがあることが明らかである。」(二次判決の判決書第45頁第6?8行)と判示されている。
そして,行政事件訴訟法第33条第1項の規定により,二次審決を取り消した二次判決で示された裁判所の判断は,当審を拘束するから,本件訂正後発明3に対する進歩性の判断についても,上記「(4)」「イ」で述べたとおりのことがあてはまる。
よって,本件訂正後発明2が,上記「(4)」「ウ」で述べたとおり,容易に想到できたものではない以上,本件訂正後発明2を技術的に限定した本件訂正後発明3も,当業者が容易に想到できたものではない。
また,公知技術2(甲9)(「キーオフ時に,まず,指針の照明を消灯し,次いで,計器板の照明を消灯すること」,すなわち,「指針の照明の消灯と計器板の照明の消灯とのタイミングをずらすようにした車両用計器類照明装置」)を考慮しても,本件訂正後発明3を当業者が容易に想到することは困難である。
よって,本件訂正後発明3は,引用発明(甲1),周知技術1(甲2?7),公知技術1(甲8),公知技術2(甲9)及び周知技術2(公知技術)(甲13)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
仮に,上記周知技術2が周知技術(甲9,甲13)であったとしても、結論に影響を及ぼすものではない。
したがって,本件訂正後発明3についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから,特許法第123条第1項第2号に該当せず,無効とすべきものではない。

(6)無効理由2についてのまとめ
本件訂正後の請求項1ないし2に係る発明は,引用発明(甲1),周知技術1(甲2?7),公知技術1(甲8)及び周知技術2(公知技術)(甲13)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,また,本件訂正後の請求項3に係る発明は,引用発明(甲1),周知技術1(甲2?7),公知技術1(甲8),公知技術2(甲9)及び周知技術2(公知技術)(甲13)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件訂正後の請求項1ないし3に係る発明についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
仮に,上記周知技術2が周知技術(甲9,甲13)であったとしても、結論に影響を及ぼすものではない。
なお,甲第11号証をみても,上記判断に影響を及ぼすものではない。
よって,本件訂正後の請求項1ないし3に係る発明についての特許は,特許法第123条第1項第2号に該当せず,無効とすべきものではない。

第7 結び
以上のとおり,本件特許の請求項1ないし3に係る発明についての特許は,無効とすべきものではない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人の負担とする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
車両用指針装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 目盛り板(20)と、この目盛り板上にて指示表示する指針(30)と、前記目盛り板を光により照射する照射手段(50)とを備えた車両用指針装置において、
車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を、前記キースイッチのオン状態の当該目盛り板照射手段の照射光の初期輝度から徐々に低下させるように制御し、前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると、前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし、このキースイッチがオンされるタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する制御手段(112、112A、113、113A、121乃至124、130、130A)を備えることを特徴とする車両用指針装置。
【請求項2】 目盛り板(20)と、この目盛り板上に指示表示する発光指針(30)と、前記目盛り板を光により照射する目盛り板照射手段(50)と、前記発光指針を光により照射して発光させる指針照射手段(31)とを備えた車両用指針装置において、
車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度を、前記キースイッチのオン状態の前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の初期輝度から徐々に低下させるように制御し、
前記キースイッチのオフに伴い前記目盛り板照射手段及び前記指針照射手段の各照射光の輝度が徐々に低下している状態で前記キースイッチがオンされると、前記指針照射手段の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで前記初期輝度に戻すと共に、
前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を前記キースイッチがオンされるタイミングで零にし前記指針照射手段の輝度が前記初期輝度に戻るタイミングから遅延させて前記目盛り板照射手段の輝度を前記初期輝度に戻すように制御する制御手段(112、112A、113、113A、121乃至124、130、130A)を備えることを特徴とする車両用指針装置。
【請求項3】 前記制御手段が、その制御を、前記目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度低下度合を相互に異ならしめるように行うことを特徴とする請求項2に記載の車両用指針装置。
【請求項4】 車両の座席に乗員が着座していないときこれを検出する着座検出手段(SW)を備え、
前記制御手段が、その制御を、前記着座検出手段の検出に伴い停止することを特徴とする請求項1に記載の車両用指針装置。
【請求項5】 車両の座席に乗員が着座していないときこれを検出する着座検出手段(SW)を備え、
前記制御手段が、その制御を、前記着座検出手段の検出に伴い停止することを特徴とする請求項2又は3のいずれか一つの記載の車両用指針装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、車両用指針装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用指針装置においては、例えば、特開平6-201410号公報にて示されているように、当該車両のキースイッチのオンに伴い、指針を発光させた後所定時間の経過に伴い文字板を発光させて、乗員に対し視認性の斬新さを与えるようにしたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記指針装置では、キースイッチのオン後における視認性の斬新さを与えることができるのみで、キースイッチのオフに伴う視認性の斬新さを与えることはできない。
そこで、本発明は、このようなことに対処するため、車両用指針装置において、そのキースイッチのオフに伴う指針や目盛り板の明るさの変化に工夫を凝らし、キースイッチのオフ後の視認性の斬新さを乗員に与えるようにすることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1、4に記載の発明によれば、制御手段が、キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段の照射光の輝度を、キースイッチのオン状態の目盛り板照射手段の照射光の初期輝度から徐々に低下させるように制御し、キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段の照射光の輝度が徐々に低下している状態でキースイッチがオンされると、目盛り板照射手段の照射光の輝度をキースイッチがオンされるタイミングで零にし、このキースイッチがオンされるタイミングから遅延させて目盛り板照射手段の輝度を初期輝度に戻すように制御する。これにより、目盛り板の明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するので、乗員に対し、この種指針装置におけるキースイッチのオフ後の斬新な視認性を提供できる。
【0005】
この場合、目盛り板照射手段として発光ダイオードを用いれば、照射光がその輝度の低下過程において色変化を生ずることがなく、その結果、乗員に対し違和感を与えることがない。
また、目盛り板及び指針をスモーク材料からなるカバーで覆蓋すれば、目盛り板の明るさの上記低下に伴う斬新な視認性を乗員に対し昼夜を問わず提供できる。
【0006】
また、請求項2、3、5に記載の発明によれば、制御手段が、キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度を初期輝度から徐々に低下させるように制御し、キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度が徐々に低下している状態でキースイッチがオンされると、指針照射手段の輝度をキースイッチがオンされるタイミングで初期輝度に戻すと共に、目盛り板照射手段の照射光の輝度をキースイッチがオンされるタイミングで零にし指針照射手段の輝度が初期輝度に戻るタイミングから遅延させて目盛り板照射手段の輝度を初期輝度に戻すように制御する。これにより、目盛り板及び発光指針の各明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するので、乗員に対し、この種指針装置におけるキースイッチのオフ後の斬新な視認性を提供できる。
【0007】
この場合、目盛り板照射手段及び指針照射手段として発光ダイオードを用いれば、各照射光がその輝度の低下過程において色変化を生ずることがなく、その結果、乗員に対し違和感を与えることがない。
また、目盛り板及び発光指針をスモーク材料からなるカバーで覆蓋すれば、目盛り板及び発光指針の各明るさの上記低下に伴う斬新な視認性を乗員に対し昼夜を問わず提供できる。
【0008】
ここで、請求項3に記載の発明のように、制御手段が、その制御を、目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度低下度合を相互に異ならしめるように行えば、請求項2に記載の発明による斬新な視認性とは異なる斬新な視認性を提供できる。また、請求項4又は5に記載の発明のように、制御手段が、その制御を、着座検出手段の検出に伴い停止すれば、乗員が当該車両から離れた後にも上記輝度低下制御を行うというような無駄を防止できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施の形態)
図1乃至図5は、本発明に係る車両用指針装置の第1実施の形態を示しており、この指針装置は、当該車両のインストルパネルに配設されている。
【0010】
当該指針装置は、図1にて示すごとく、装置本体10を備えており、この装置本体10は、その駆動部11により指針軸12を回動させるようになっている。また、指針装置は、指針軸12に同軸的に嵌装した目盛り板20と、指針軸12の先端に軸支した自発光指針30とを備えており、自発光指針30は、指針軸12の回動に応じて目盛り板20上にて指針表示する(図2参照)。
【0011】
ここで、目盛り板20は、透明樹脂板の表面に目盛りを印刷して構成されており、この目盛り板20は、断面コ字状のケーシング40の底壁に設けた光源50により下方から投光されて目盛り表示機能を発揮する。光源50は、図3にて示すごとく、複数の発光ダイオード50aの並列回路により構成されている。
また、自発光指針30は、透明のアクリル樹脂からなる指針本体内に発光素子31を配設してなるもので、この自発光指針30は、発光素子31の発光により発光機能を発揮する。発光素子31は、図3にて示すごとく、複数の発光ダイオード31aに並列回路により構成されている。なお、図1にて符号32は、指針カバーを示す。
【0012】
上記ケーシング40は、駆動部11に嵌着されて目盛り板20を下方から覆蓋しており、このケーシング40の上端開口部には、断面コ字状のフロントカバー70(透明なアクリル樹脂からなる)が、環状の見返し板60を介し、目盛り板20の上面及び自発光指針30を覆蓋するように装着されている。なお、フロントカバー70は、透過率20%程度のスモーク材料により形成してもよい。
【0013】
次に、発光素子31及び光源50の駆動回路構成につき図3を参照して説明する。
マイクロコンピュータ80は、図4にて示すフローチャートに従いコンピュータプログラムを実行し、この実行中において、当該車両のイグニッションスイッチIGの操作に基づき、発光素子31及び光源50に接続した各駆動回路90a、90bの駆動処理を行う。なお、マイクロコンピュータ80は、当該車両に搭載したバッテリBaから常時給電されて作動している。また、上記コンピュータプログラムは、マイクロコンピュータ80のROMに予め記憶されている。
【0014】
駆動回路90aは、マイクロコンピュータ80による制御のもと、各発光ダイオード31aを発光駆動させる。また、駆動回路90bは、マイクロコンピュータ80による制御のもと、各発光ダイオード50aを発光駆動させる。
このように構成した本第1実施の形態において、イグニッションスイッチIGのオン状態では、マイクロコンピュータ80は、図4のフローチャートに従うコンピュータプログラムの実行のもと、ステップ100にて、発光輝度Yを初期輝度Aとセットし、ステップ110にてNOとの判定をし、ステップ120にて各発光ダイオード31a、50aの発光駆動処理をしている。なお、発光輝度Yは、発光素子31及び光源50の発光輝度を表す。
【0015】
しかして、上記発光駆動処理に伴い、駆動回路90aが、発光素子31の発光輝度をY=Aとするように各発光ダイオード31aを発光駆動し、また、駆動回路90bが、発光素子50の発光輝度をY=Aとするように各発光ダイオード50aを発光駆動する。
これにより、目盛り板20が、光源50の各発光ダイオード50aにより初期輝度Aにて照射される。また、自発光指針30が発光素子31の各発光ダイオード31aにより初期輝度Aにて照射されて発光する。
【0016】
このような状態において、イグニッションスイッチIGをオフ(図5参照)すると、ステップ110にてYESと判定され、ステップ111にて時間データtがt=0とクリアされる。
以後、ステップ112、113、120、130を循環する処理において、ステップ113にて繰り返し加算更新される時間データt=t+1に応じ、ステップ112にて次の数1の式に基づき発光輝度Yが算出され、この発光輝度Yに基づきステップ130にて各発光ダイオード31a、50aの発光駆動処理がなされる。
【0017】
【数1】
Y=A{1-(t/T)}
但し、この数1の式において、符号Tは、発光素子31及び光源50の各発光輝度の低下割合を特定する値に対応する。
しかして、このような発光駆動処理に伴い、発光素子31がステップ112における各算出輝度Yにて発光するように、各発光ダイオード31aが駆動回路90aにより発光駆動される。また、光源50がステップ112における各算出輝度Yにて発光するように、各発光ダイオード50aが駆動回路90bにより発光駆動される。
【0018】
このため、図5にて示すように、イグニッションスイッチIGのオフに伴い、発光素子31及び光源50の各発光輝度は、各直線L1、L2に沿い順次低下していく。従って、自発光指針30の明るさ及び目盛り板20の明るさも共に同様に低下していく。
このように、イグニッションスイッチIGオフ後には、自発光指針30及び目盛り板20が瞬時に暗くなることなく時間データtの増大に比例して暗くなっていくので、イグニッションスイッチIGオフ後の自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を乗員に提供できる。
【0019】
この場合、自発光指針30及び目盛り板20には発光ダイオードが採用してあるので、自発光指針30及び目盛り板20の各発光輝度の低下過程において発光色が変化することない。このため、乗員の違和感を与えることもない。
また、上述のようにフロントカバー70がスモーク材料からなれば、上述のようなイグニッションスイッチIGオフ後の自発光指針30及び目盛り板20の各明るさの低下過程が昼夜を問わず視認され得るので、上記斬新な視認性の提供が昼夜を問わず可能となる。
【0020】
なお、t=Tとなりステップ120における判定がYESになると、ステップ121において、Y=0に基づき上記発光駆動処理が停止される。これにより、発光素子31及び光源50の各発光輝度が零となる。このとき、上述のようにフロントカバー70がスモーク材料からなれば、その内部は全く見えない状態になる。
【0021】
なお、上記第1実施の形態において、発光素子31及び光源50の各発光輝度が低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合には、図6にて示すように、光源50の発光輝度を初期輝度Aに戻すタイミングを、発光素子31の発光輝度に比べて、所定時間T2だけ遅延させて実施してもよい。このように発光素子31及び光源50の各発光輝度が低下している状態でイグニッションスイッチIGがオンされた場合には、イグニッションスイッチIGのオフ後のオン時にも自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を提供できる。
(第2実施の形態)
図7は、本発明の第2実施の形態の要部を示している。
【0022】
この第2実施の形態では、上記第1実施の形態におけるフローチャートにおいてステップ111以後のフローチャート部分が図7にて示すように変形されている。その他の構成は上記第1実施の形態と同様である。
このように構成した本第2実施の形態において、上記第1実施の形態にて述べたと同様にステップ111にて時間データtがt=0とクリアされると、次のステップ111aにおいて、光源50の発光輝度(以下、発光輝度Y1という)が、上記第1実施の形態にて述べた初期輝度Aよりも低い所定輝度B(図8参照)にセットされる。
【0023】
以後、ステップ112A、113、113A、130Aを循環する処理がなされる。この処理においては、ステップ113にて繰り返し加算更新される時間データt=t+1に応じ、ステップ112Aにて発光輝度Yが上記数1の式に基づき算出されるとともに、発光輝度Y1が次の数2の式に基づき算出される。なお、本第2実施の形態では、ステップ112A以後における発光輝度Yは、発光素子31のみの発光輝度として処理される。従って、数1の式における値Tは、発光素子31のみに対応する。
【0024】
【数2】
Y1=B{1-(t/T1)}
但し、この数2の式において、符号T1は、上記値Tよりも短い値(図8参照)で、光源50の発光輝度の低下割合を特定する値に対応する。
しかして、ステップ130Aでは、発光輝度Yに基づき発光素子31の各発光ダイオードの発光駆動処理がなされるとともに、発光輝度Y1に基づき光源50の各発光ダイオードの発光駆動処理がなされる。
【0025】
このような発光駆動処理に伴い、発光素子31がステップ112Aにおける各算出輝度Yにて発光するように、各発光ダイオード31aが駆動回路90aにより発光駆動される。また、光源50がステップ112Aにおける各算出輝度Y1にて発光するように、各発光ダイオード50aが駆動回路90bにより発光駆動される。
【0026】
このため、t=T1に達する前は、図8にて示すように、イグニッションスイッチIGのオフに伴い、発光素子31及び光源50の各発光輝度は、各直線L3、L2に沿い順次低下していく。従って、自発光指針30は、目盛り板20より明るい状態を維持しつつ、自発光指針30及び目盛り板20の各明るさが共に同様に低下していく。
【0027】
然る後、t=T1となりステップ113Aにおける判定がYESになると、ステップ113Bにおいて、Y1=0に基づき光源50の発光駆動処理が停止される。これにより、光源50の発光輝度が零となる。
その後、ステップ120、122、123、124を循環する処理において、ステップ123にて加算更新される時間データtに応じ、ステップ122にて発光素子31の発光輝度Yが数1の式に基づき算出され、この各算出発光輝度Yに基づきステップ124において発光素子31の各発光ダイオードの発光駆動処理がなされる。
【0028】
このような発光駆動処理に伴い、光源50の発光停止のもと、発光素子31がステップ122における各算出輝度Yにて発光するように、各発光ダイオード31aが駆動回路90aにより発光駆動される。
このため、t=T1後t=Tに達するまで、図8にて示すように、発光素子31の発光輝度のみが、直線L3に沿い順次低下していく。従って、自発光指針30の明るさも同様に低下していく。
【0029】
以上述べたように、本第2実施の形態では、イグニッションスイッチIGオフ後には、自発光指針30が日盛り板20よりも明るい状態を維持しつつ、自発光指針30及び目盛り板20の各明るさが時間データtの増大に応じ暗くなっていくので、イグニッションスイッチIGオフ後の自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を上記第1実施の形態とは異なる斬新な視認性を乗員に提供できる。
【0030】
なお、t=Tとなりステップ120における判定がYESになると、ステップ121において、Y=0に基づき発光素子31の発光駆動処理が停止される。これにより、発光素子31の発光輝度が零となる。
また、上記第2実施の形態では、イグニッションスイッチIGのオフ後、発光素子31の発光輝度を光源50の発光輝度よりも高い状態を維持しつつ両者の輝度を順次低下させるようにしたが、これに限ることなく、イグニッションスイッチIGのオフ後の発光素子31及び光源50の各発光輝度の変化を上記第2実施の形態とは逆にしてもよく、また、発光素子31及び光源50の一方の発光輝度をイグニッションスイッチIGのオフに伴い零とし、他方の発光輝度を順次低下させるようにして実施してもよい。
(第3実施の形態)
図9及び図10は、本発明の第3実施の形態の要部を示している。
【0031】
この第3実施の形態では、上記第1実施の形態にて述べたマイクロコンピュータ80に着座スイッチSWが接続されており、この着座スイッチSWは、当該車両の車室内の座席に乗員が着座したときオンする。
また、本第3実施の形態では、上記第1実施の形態にて述べたフローチャートの一部を図10のように変更してある。その他の構成は上記第1実施の形態と同様である。
【0032】
このように構成した本第3実施の形態では、着座スイッチSWがオンしておれば、ステップ113CにおけるYESとの判定後、ステップ112、113、120、130における処理が上記第1実施の形態と同様になされる。
一方、着座スイッチSWがオンしていなければ、ステップ113Cにおける判定がNOとなり、ステップ113Dにおいて、発光輝度YがY=0とクリアされ、ステップ121において、Y=0に基づき発光素子31及び光源50の各発光駆動処理が停止される。
【0033】
これにより、当該車両の座席から乗員が離れると、発光素子31及び光源50の各発光駆動が即座に停止して、自発光指針30及び目盛り板20が瞬時に暗くなる(図11参照)。その結果、乗員が当該車両内にいないにもかかわらず、イグニッションスイッチIGのオフ後における発光素子31及び光源50の発光輝度の低下処理を行うというような無駄が防止され得る。その他の作用効果は上記第1実施の形態と同様である。
【0034】
なお、本発明に実施にあたっては、上記第1実施の形態にて述べたようにイグニッションスイッチIGのオフ後発光素子31及び光源50の各発光輝度が低下したとき、図12にて示すごとく、当該車両のドアが開状態にあったり、或いはイグニッションキーの抜き忘れやライトスイッチ、ヘッドライト、スモールライトのオンのままでドアを開いた場合には、発光素子31及び光源50の各発光輝度を交互にパルス状に変化させることで乗員に注意を促すように実施してもよい。この場合、ドアの開状態をドアスイッチのオフにより検出する。
【0035】
また、ドアの開状態に代えて、着座スイッチによる乗員の座席からの離席検出を利用してもよい。また、ライトスイッチのオンに代えて、イグニッションキーの抜き忘れやヘッドライト、スモールライトのオン状態を利用するようにしてもよい。
また、本発明の実施にあたっては、光源50は電球や冷陰極管でもあってもよく、また、自発光指針30に代えて、適宜な光源からの光を導入して発光する発光指針を採用してもよい。この場合、この光源には光源50の役割をも兼用させ得る。
【0036】
また、本発明の実施にあたっては、車両用コンビネーションメータ、スピードメータ等の各種指針装置に本発明を適用して実施してもよい。また、上記各実施の形態の各フローチャートにおける各ステップは、それぞれ、機能実行手段としてハードロジック構成により実現するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る車両用指針装置の第1実施の形態を示す概略断面図である。
【図2】
図1の指針装置の部分破断平面図である。
【図3】
図1の指針装置の電気回路構成図である。
【図4】
図3のマイクロコンピュータの作用を示すフローチャートである。
【図5】
上記第1実施の形態における光源50及び発光素子31の各発光輝度の変化を、イグニッションスイッチIGのオフ後において示すタイミングチャートである。
【図6】
上記第1実施の形態における変形例を示すタイミングチャートである。
【図7】
本発明の第2実施の形態を示す要部フローチャートである。
【図8】
上記第2実施の形態における光源50及び発光素子31の各発光輝度の変化を、イグニッションスイッチIGのオフ後において示すタイミングチャートである。
【図9】
本発明の第3実施の形態を示す電気回路図である。
【図10】
図9のマイクロコンピュータの作用を示す要部フローチャートである。
【図11】
上記第3実施の形態における光源50及び発光素子31の各発光輝度の変化を、イグニッションスイッチIGのオフ後着座スイッチSWのオフとの関連で示すタイミングチャートである。
【図12】
上記第1実施の形態の他の変形例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
IG…イグニッションスイッチ、SW…着座スイッチ、20…目盛り板、30…発光指針、31…発光素子、31a、50a…発光ダイオード、50…光源、80…マイクロコンピュータ、90a、90b…駆動回路。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-11-24 
結審通知日 2015-11-26 
審決日 2015-12-17 
出願番号 特願平8-128704
審決分類 P 1 123・ 841- YAA (G01D)
P 1 123・ 537- YAA (G01D)
P 1 123・ 121- YAA (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 仁  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 堀 圭史
清水 稔
登録日 2003-10-03 
登録番号 特許第3477995号(P3477995)
発明の名称 車両用指針装置  
代理人 井口 亮祉  
代理人 伊藤 高順  
代理人 井口 亮祉  
代理人 中村 広希  
代理人 ▲廣▼瀬 文雄  
代理人 中村 広希  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 伊藤 高順  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 豊岡 静男  
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