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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  E04G
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04G
管理番号 1313287
審判番号 無効2014-800122  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-07-22 
確定日 2016-02-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3851105号発明「仮設構造物の構築方法とこれに用いる手摺り筋交い」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3851105号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり請求項ごとに訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3851105号(以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2001-122147号)は、平成13年4月20日の出願であって、その特許権の設定登録は平成18年9月8日にされ、その後、請求人光洋機械産業株式会社から無効審判が請求されたものである。以下、審判請求以後の経緯を示す。

平成26年 7月22日 審判請求書の提出
平成26年10月20日 審判事件答弁書の提出
平成26年12月10日 審理事項通知書(起案日)
平成27年 1月16日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人より)
平成27年 1月23日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人より)
平成27年 1月30日 口頭審理の実施
平成27年 2月 6日 上申書の提出(請求人より)
平成27年 2月17日 上申書の提出(被請求人より)
平成27年 5月29日 審決の予告(起案日)
平成27年 7月31日 訂正請求書及び上申書の提出
平成27年 9月14日 審判事件弁駁書の提出
平成27年12月 2日 補正許否の決定(起案日)
平成27年12月 2日 審理終結通知(起案日)


第2 訂正請求について
1 訂正請求の内容
平成27年7月31日付け訂正請求は(以下「本件訂正」という。)は、本件設定登録時の特許第3851105号の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり請求項ごとに訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「水平材の両端をフランジの孔に結合し隣接する縦柱間に架設し」とあるのを、「水平材の両端をフランジの孔に結合し、水平材の一端は、該端部の係止フックに設けた縦柱に対する水平材の直交状態で孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状の差し込み爪をフランジの孔に差し込んだ後、該係止フックの先端を縦柱の外面に当接させ、該係止フックに設けた切り欠きをフランジの周縁に嵌合させることで、該係止フックをフランジの孔に対して上方に抜け止め状に結合して、隣接する縦柱間に架設し」に訂正する。

(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0006】に記載された「水平材の両端をフランジの孔に結合し隣接する縦柱間に架設し」とあるのを、「水平材の両端をフランジの孔に結合し、水平材の一端は、該端部の係止フックに設けた縦柱に対する水平材の直交状態で孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状の差し込み爪をフランジの孔に差し込んだ後、該係止フックの先端を縦柱の外面に当接させ、該係止フックに設けた切り欠きをフランジの周縁に嵌合させることで、該係止フックをフランジの孔に対して上方に抜け止め状に結合して、隣接する縦柱間に架設し」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「この係止フックに、上記孔への差し込み爪と、この差し込み爪の内側に位置して下縁が開放し、フランジ周縁に対して嵌合する切り欠きとを、縦柱に対する水平材の直交状態で差し込み爪が孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状に設けた」とあるのを、 「この係止フックに、上記孔への差し込み爪と、この差し込み爪の内側に位置して下縁が開放し、フランジ周縁に対して嵌合する切り欠きとを、縦柱に対する水平材の直交状態で差し込み爪が孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状に設け、上記切り欠きに縦柱に対する水平材の直交状態でフランジの板厚が嵌合する凹欠部を設け、上記係止フックの先端に縦柱に対する水平材の直交状態で縦柱の外面に当接する先端凸部を設けた、」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「縦柱と水平材の結合構造」とあるのを、「上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける仮設構造物の縦柱と水平材の結合構造」に訂正する。

(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0011】に記載された「縦柱に孔付きのフランジを固定し、水平材の端部にフランジの孔に上部から抜き差しが自在に係止する係止フックを固定し、この係止フックに、上記孔への差し込み爪と、この差し込み爪の内側に位置して下縁が開放し、フランジ周縁に対して嵌合する切り欠きとを、縦柱に対する水平材の直交状態で差し込み爪が孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状に設けた構成」とあるのを、「縦柱に孔付きのフランジを固定し、水平材の端部にフランジの孔に上部から抜き差しが自在に係止する係止フックを固定し、この係止フックに、上記孔への差し込み爪と、この差し込み爪の内側に位置して下縁が開放し、フランジ周縁に対して嵌合する切り欠きとを、縦柱に対する水平材の直交状態で差し込み爪が孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状に設け、上記切り欠きに縦柱に対する水平材の直交状態でフランジの板厚が嵌合する凹欠部を設け、上記係止フックの先端に縦柱に対する水平材の直交状態で縦柱の外面に当接する先端凸部を設けた、上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける仮設構造物の縦柱と水平材の結合構造の構成」に訂正する。

2 訂正の適否の判断
以下、「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」を「本件明細書等」という。
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
上記訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「水平材の両端をフランジの孔に結合し隣接する縦柱間に架設」することに関し、「水平材の一端は、該端部の係止フックに設けた縦柱に対する水平材の直交状態で孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状の差し込み爪をフランジの孔に差し込んだ後、該係止フックの先端を縦柱の外面に当接させ、該係止フックに設けた切り欠きをフランジの周縁に嵌合させることで、該係止フックをフランジの孔に対して上方に抜け止め状に結合」するものに限定していることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、上記訂正事項1は、発明特定事項を付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)本件明細書等には以下の記載がある。
a 「また、係止フック11は、図5と図8のように、先端下部に上記孔6への差し込み爪14と、この差し込み爪14の内側に位置して下縁が開放し、フランジ5の周縁に対して嵌合する切り欠き15とを、縦柱1に対する水平材7の直交状態で差し込み爪14が孔6に対して抜け止め状に係合する傾斜状に設けて形成され、切り欠き15の上部外コーナ部分には、縦柱1に対する水平材7の直交状態でフランジ5の板厚が嵌合する凹欠部16が設けられている。」(段落【0024】)
b 「図8(A)のように、上記係止フック11のフランジ5の孔6に対する挿入は、差し込み爪14が垂直になるよう水平材7を傾斜状に保持し、この差し込み爪14をフランジ5の孔6に差し込んだ後、図8(B)のように、水平材7を水平にすると、係止フック11の先端凸部11aが縦柱1の外面に当接し、凹欠部16がフランジ5の外周部に嵌まり、係止フック11は上方への抜け止め状態になる。」との記載がなされており、段落【0032】には、「係止フック11の差し込み爪14が垂直になるよう水平材7を傾斜状にし、上位に架設せんとする足場板3よりも上位の位置にあるフランジ5の孔6に差し込み爪14を上から差し込み」(段落【0024】)
c 「水平の架設状態となる水平材7は、図8(B)のように、係止フック11がフランジ5の孔6に対して上方に抜け止め状となり」(段落【0034】)
(イ)上記(ア)a?cの記載事項からみて、上記訂正事項1は、本件明細書等に記載に基づき導き出される構成であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(2)訂正事項2について
上記訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、段落【0006】の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
上記訂正事項3は、本件訂正前の請求項5に記載された「切り欠き」に関し、「上記切り欠きに縦柱に対する水平材の直交状態でフランジの板厚が嵌合する凹欠部を設け」たものに限定していることから、特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、上記訂正事項3は、発明特定事項を付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)本件明細書等には、以下の記載がある。
a 「また、係止フック11は、図5と図8のように、先端下部に上記孔6への差し込み爪14と、この差し込み爪14の内側に位置して下縁が開放し、フランジ5の周縁に対して嵌合する切り欠き15とを、縦柱1に対する水平材7の直交状態で差し込み爪14が孔6に対して抜け止め状に係合する傾斜状に設けて形成され、切り欠き15の上部外コーナ部分には、縦柱1に対する水平材7の直交状態でフランジ5の板厚が嵌合する凹欠部16が設けられている。」(段落【0022】)
b 「図8(A)のように、上記係止フック11のフランジ5の孔6に対する挿入は、差し込み爪14が垂直になるよう水平材7を傾斜状に保持し、この差し込み爪14をフランジ5の孔6に差し込んだ後、図8(B)のように、水平材7を水平にすると、係止フック11の先端凸部11aが縦柱1の外面に当接し、凹欠部16がフランジ5の外周部に嵌まり、係止フック11は上方への抜け止め状態になる。」(段落【0024】)
(イ)上記(ア)a,bの記載事項からみて、上記訂正事項3は、本件明細書等に記載に基づき導き出される構成であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
上記訂正事項4は、本件訂正前の請求項5に記載された「縦柱と水平材の結合構造」に関し、「上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける仮設構造物の縦柱と水平材の結合構造」に限定していることから、特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、上記訂正事項4は、発明特定事項を付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)本件明細書等には以下の記載がある。
a 「そこで、この発明の課題は、足場板の上部周囲に先行して安全手摺り枠を配置することができ、高所作業となる足場板上での組み立て作業の安全確保が実現できる仮設構造物の構築方法と、これに用いる手摺り筋交い及び縦柱と水平材の結合構造を提供することにある。」(段落【0005】)
b 「上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける構成」(段落【0006】)
c 「図1乃至図9に示す第1の実施の形態は、縦柱が上下軸方向に所定の間隔で孔付きのフランジが固定されたタイプにおける仮設足場の構築方法と、これに用いる手摺り筋交い及び縦柱と水平材の結合構造を示している。」(段落【0016】)
d 「以上のように、この発明によると、縦柱を順次継ぎ足し、隣接する縦柱を所定の間隔に配置してその間に足場板を架設することによって組み立てる仮設構造物において、下階の足場板上で縦柱の継ぎ足しと、継ぎ足した縦柱間への手摺り筋交いの取り付けを、上階足場板の架設に先行して行なうようにしたので、足場板の上部側面に先行して安全手摺りを配置することができ、上階足場板上での支柱の継ぎ足しや手摺り筋交いの取り付け作業時にすでに上階足場板の上部周囲に、縦柱と安全手摺りが位置することになり、従って、高所作業となる足場板上での組み立て作業の安全性を縦柱と手摺り筋交いで確保でき、仮設構造物の組み立てが安全に行なえるようになる。」(段落【0055】)
e 「また、仮設構造物の構成部材である縦柱、手摺り筋交いは汎用性があり、既存の部材との組み合わせで多様な仮設構造物の構築が可能となり、構成部材の多目的利用によって種々の仮設構造物を構築することができる。」(段落【0056】)
f 「さらに、手摺り筋交いは、縦柱間への取付けと同時にロック化することができ、固定のための手間が省けると共に、手摺りとなる水平材と筋交いとなる斜材の二本の鋼管で形成したので、構成部品数を最小限に抑えることがてき、コスト的に安価となるだけでなく、軽量化と着脱時の操作性が良好となり、仮設構造物の構築や解体作業の短時間化が可能になる。」(段落【0057】)
(イ)上記(ア)a?fの記載事項からみて、上記訂正事項4は、本件明細書等に記載に基づき導き出される構成であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(5)訂正事項5について
上記訂正事項5は、上記訂正事項3,4に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、段落【0011】の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

3 訂正請求のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2ただし書き第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものであるから、本件訂正を認める。


第3 本件発明
本件特許第3851105号の請求項1ないし8に係る発明は、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち請求項1及び5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明5」という。)は次のとおりのものである。

【請求項1】
上下軸方向に所定の間隔で孔付きのフランジが固定され、順次継ぎ足しが可能となる縦柱を足場板の架設間隔で立設し、水平材の一端側に斜材を該水平材に沿う状態から角度可変に枢止して形成された手摺り筋交いを、先ず、水平材の両端をフランジの孔に結合し、水平材の一端は、該端部の係止フックに設けた縦柱に対する水平材の直交状態で孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状の差し込み爪をフランジの孔に差し込んだ後、該係止フックの先端を縦柱の外面に当接させ、該係止フックに設けた切り欠きをフランジの周縁に嵌合させることで、該係止フックをフランジの孔に対して上方に抜け止め状に結合して、隣接する縦柱間に架設し、この後、斜材の下端を一方縦柱のフランジの孔に結合して隣接する縦柱間に斜めに架設することにより、上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付けることを特徴とする仮設構造物の構築方法。

【請求項5】
縦柱に孔付きのフランジを固定し、水平材の端部にフランジの孔に上部から抜き差しが自在に係止する係止フックを固定し、この係止フックに、上記孔への差し込み爪と、この差し込み爪の内側に位置して下縁が開放し、フランジ周縁に対して嵌合する切り欠きとを、縦柱に対する水平材の直交状態で差し込み爪が孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状に設け、上記切り欠きに縦柱に対する水平材の直交状態でフランジの板厚が嵌合する凹欠部を設け、上記係止フックの先端に縦柱に対する水平材の直交状態で縦柱の外面に当接する先端凸部を設けた、上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行し上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける仮設構造物の縦柱と水平材の結合構造。


第4 当事者の主張
1 請求人の主張の概要
請求人は、特許第3851105号の請求項1及び5に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、平成27年1月16日提出の口頭審理陳述要領書、平成27年2月6日提出の上申書及び平成27年9月14日付け審判事件弁駁書において無効とすべき理由を次のように主張するとともに、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出している。

[無効理由]
(D)本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証に記載された発明及び甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証で示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1号第2号に該当し、無効とすべきものである。
(E)本件発明5は、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1号第2号に該当し、無効とすべきものである。
(F)本件発明5は、明確性を欠くものであるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反しており、その特許は、特許法第123条第1号第4号に該当し、無効とすべきものである。
(審判事件弁駁書3頁11?19行、8頁2?3行、10頁3?4行、14頁10?11行、14頁28行?15頁4行)

[具体的主張]
(1)本件発明1の「水平材の一端の係止フックに、縦柱に対する水平材の直交状態で孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状の差し込み爪が設け」られている点について

ア 甲4発明は、「係合部14cに対して抜け止め状に係合する傾斜状の差し込み爪が設けられたフック6a」に関するものである。
甲2発明及び甲4発明のみならず、甲1発明も共通の技術分野に属する発明であり、甲1発明、甲2発明及び甲4発明は全て、土木・建設現場における足場等の架設構造物の組み立ての技術分野に属するものである点で共通している。
そうすると、甲1発明において、甲2発明のフランジと爪先による結合方法を採用するに際して、さらに甲4発明の構成を採用し、「水平材の一端の係止フックに、縦柱に対する水平材の直交状態で孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状の差し込み爪が設け」られた構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(審判事件弁駁書6頁6?7行、22?30行)

イ 甲4発明は、「係合部14cに対して抜け止め状に係合する傾斜状の差し込み爪が設けられたフック6a」に関するものである。
甲1発明、甲3発明及び甲4発明は全て、土木・建設現場における足場等の架設構造物の組み立ての技術分野に属するものである点で共通している。
そうすると、甲1発明において、甲3発明のフランジと楔による結合方法を採用するに際して、さらに甲4発明の構成を採用し、「水平材の一端の係止フックに、縦柱に対する水平材の直交状態で孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状の差し込み爪が設け」られた構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(審判事件弁駁書9頁5?14行)

(2)本件発明1の「傾斜状の差し込み爪をフランジの孔に差し込んだ後、該係止フックの先端を縦柱の外面に当接させ、該係止フックに設けた切り欠きをフランジの周縁に嵌合させることで、該係止フックをフランジの孔に対して上方に抜け止め伏に結合して」いる点について

ア 甲4発明は、甲第4号証の第4図のとおり、傾斜状のフック6bを構造物13の壁面と係合部14cとの間の隙間に差し込んだ後、フック6bの先端を壁面に当接させ、フック6bに設けた切り欠きを係合部14cの周縁に嵌合させることで、フック6bを壁面と係合部14cとの間の隙間に対して上方に抜け止め状に結合させる構成を有している。なお、甲第4号証には、「鋸歯状部6aが構造物13の壁面に突きささり」(明細書8頁1行目)とあり、フック6bの先端が壁面に当接することが記載されている。
甲1発明、甲2発明及び甲4発明は全て、土木・建設現場における足場等の架設構造物の組み立ての技術分野に属する発明である点で共通している。
そうすると、甲1発明において、甲2発明のフランジと爪先による結合方法を採用するに際して、さらに甲4発明の構成を採用し、「傾斜状の差し込み爪をフランジの孔に差し込んだ後、該係止フックの先端を縦柱の外面に当接させ、該係止フックに設けた切り欠きをフランジの周縁に嵌合させることで、該係止フックをフランジの孔に対して上方に抜け止め状に結合」する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(審判事件弁駁書7頁4?末行)

イ 甲4発明は、傾斜状のフック6bを構造物13の壁面と係合部14cとの間の隙間に差し込んだ後、フック6bの先端を壁面に当接させ、フック6bに設けた切り欠きを係合部14cの周縁に嵌合させることで、フック6bを壁面と係合部14cとの間の隙間に対して上図中上方に抜け止め状に結合させるように構成されている。なお、甲第4号証には、「鋸歯状部6aが構造物13の壁面に突きささり」(明細書8頁1行目)とあり、フック6bの先端が壁面に当接することが記載されている。
そして、甲1発明、甲3発明及び甲4発明は全て、土木・建設現場における足場等の架設構造物の組み立ての技術分野に属する発明である点で共通している。
そうすると、甲1発明において、甲3発明のフランジと楔による結合方法を採用するに際して、さらに甲4発明の構成を採用し、「傾斜状の差し込み爪をフランジの孔に差し込んだ後、該係止フックの先端を縦柱の外面に当接させ、該係止フックに設けた切り欠きをフランジの周縁に嵌合させることで、該係止フックをフランジの孔に対して上方に抜け止め状に結合」する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(審判事件弁駁書9頁21行?10頁1行)

(3)本件発明5の「差し込み爪と・・・切り欠きとを、縦柱に対する水平材の直交状態で差し込み爪が孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状に設けた」点について

ア 甲第2号証、甲第4号証に記載の発明は、いずれも建設現場の足場等の仮設構造物の分野に属する発明であり、技術分野が同一である。
また、甲第4号証に記載の「フック金具6」は、仮設構造物を構成する2つの部材(壁つなぎ部材1と受け部材14)を連結するためのものである。一方、甲第2号証に記載の「フック金具14」も、差し込み爪及び切り欠きが抜け止め状に傾斜状に設けられてはいないものの、仮設構造物を構成する支持脚11と水平管体13とを連結するためのものである点で、両者は作用・機能が共通する。
そうすると、甲第2号証に記載の発明において、「フック金具14」に代えて甲第4号証に記載の「差し込み爪及び切り欠きが抜け止め状に傾斜状に設けられたフック金具6」を用いることに関しては十分な動機づけがあるというべきであり、甲第2号証に記載の発明に甲第4号証に記載の発明を適用して本件特許発明5の構成に到達することは、当業者にとって容易である。
(審判請求書23頁2?14行)

イ 甲4発明は「係合部4cに対し抜け止め状に連結するための、斜め前後方向に長くかつ手前側に開口するフック6aが先端部に形成されている、ハンドルを持って調整ボルト2を回転して構造物13の壁面と作業足場8間を固定するための壁つなぎ部材1のフック金具6。」である。
そして、甲2発明及び甲4発明は共に、土木・建設現場における足場等の架設構造物を構成する2つの部材を連結するための技術である点で共通しているし、甲4発明において、ハンドル7を持って調整ボルト2を回転する前にフック金具6を連結した状態は仮置き状態といえる。
したがって、甲2発明において、水平管体13を仮置き状態で架設するためのフック金具14の形状を、同じく仮置き状態を形成する甲4発明の形状とし、相違点Bに係る本件訂正発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
以上のことは、審決の予告においても認定されているとおりである。
(審判事件弁駁書14頁29行?15頁8行)

(4)本件発明5の「上記切り欠きに縦柱に対する水平材の直交状態でフランジの板厚が嵌合する凹欠部を設け」る点について

甲2発明は、甲第2号証の図1及び図2(B)のとおりの構成を有している。
具体的には、長穴27に挿入されたピン28により、フック金具14内において座金15が前後に移動可能に保持され、座金15の後方からクサビ体17が打込まれると、座金15が垂直管体11の壁面に対し移動して押圧されるように構成されている。
フック金具14、座金15及びクサビ体17が組み合わされた結合体(以下、「フック結合体」という)には、フランジ12を受け取る切り欠きが形成されるが、当該切り欠きには、縦柱に対する水平材の直交状態でフランジの板厚が嵌合する凹欠部が形成される。
したがって、本件訂正発明5と甲2発明とは、「切り欠きに縦柱に対する水平材の直交状態でフランジの板厚が嵌合する凹欠部を設けた」点で一致する。
(審判事件弁駁書11頁1行?12頁4行)

(5)本件発明5の「上記係止フックの先端に縦柱に対する水平材の直交状態で縦柱の外面に当接する先端凸部を設けた」点について

甲第2号証には、「前面側にフランジの上下で一方管体の外面に対する当接面を有する座金と、前記座金の背面側に打込み、フック金具に対して座金を一方管体側に押圧するクサビ体と(段落番号「0008」参照)」とあり、甲2発明に係るフック構造体の座金15は、縦柱に対する水平管体13の直交状態で垂直管体11の外面に当接する先端凸部を備えていると言える。
したがって、本件訂正発明5と甲2発明とは、「上記係止フックの先端に縦柱に対する水平材の直交状態で縦柱の外面に当接する先端凸部を設けた」点で一致する。
(審判事件弁駁書12頁8?15行)

(6)「上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける仮設構造物」について

施工の手順を示したものであるから、物の発明である本件訂正発明5をその製造方法によって特定したものである。
そして、物の発明をその製造方法により特定する記載(以下「プロダクトバイプロセス記載」という)がある場合の発明の要旨とは、当該製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である物として認定されるべきである。
この点、手摺り筋交いが、上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して取り付けられたものであろうとなかろうと、物としての同一性に差異はない。そうすると、構成要件5Eは、単に「仮設構造物」を特定する構成要件であると解するべきである。
これに対し、甲2発明は、明らかに仮設構造物に関する発明である。
したがって、本件訂正発明5と甲2発明とは、構成要件5Gに関し一致するといえる。
(審判事件弁駁書13頁1?16行)

(7)本件発明5の「上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける仮設構造物」の明確性について

上記(6)で既に述べたとおり、仮設構造物を施工の手順を用いて示したものであるので、プロダクトバイプロセス記載である。
そして、プロダクトバイプロセス記載が「「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である。」(最判平成27年6月5日平成24年(受)第1204号)。
この点、本件訂正発明5に関しては、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するとはおよそ考えられない。
したがって、本件訂正発明5は、明確性を欠くものである。
(審判事件弁駁書14頁15?26行)

[証拠方法]
甲第1号証:特開平7-269097号公報
甲第2号証:実願平5-42326号(実開平7-11647号)のCD-ROM
甲第3号証:実願昭58-114910(実開昭60-22639号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実願昭61-132120(実開昭63-40435号)のマイクロフィルム
甲第5号証:特許第2670739号
甲第6号証:特開2000-303683号公報
甲第7号証:実公平7-596号公報

2 被請求人の反論の概要
被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、平成26年10月20日提出の審判事件答弁書、平成27年1月23日提出の口頭審理陳述要領書及び平成27年2月17日提出の上申書において請求人の主張する無効理由にはいずれも理由が無い旨主張している。


第5 当審の判断
1 甲各号証に記載された事項
(1)甲第1号証
本件特許の出願日前に頒布された甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下、同様。)。

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、土木・建設現場における作業用足場の骨組みである仮設足場枠において、建枠を相互に連結するための交叉状連結部材に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に仮設足場枠は、H型又は門型の建枠を建物の壁面等に沿って適当間隔置きに並列して立設し、相互に隣接する建枠同士を交叉状連結部材で連結し、さらにこれを上方に多段に連設して組立てられており、隣接する建枠の梁部の間に足場板を掛け渡すことにより作業用足場が構成されている。」

イ 「【0009】図1において、1は交叉状連結部材であって、中央位置を枢支ピン4にて互いに回動自在に枢支されてX字状に結合された一対の連結杆2、3と、一方の連結杆2の一端部に一端が回動自在に連結された水平連結杆5とから構成されている。一方の連結杆2の一端部には、図2に詳細を示すように、側方に突出する取付板6が固着され、この取付板6の先端部に枢支ピン7にて水平連結杆5の一端部が枢支されている。なお、図3に示すように、水平連結杆5の一端部を枢支ピン7にて直接一方の連結杆2の一端部に枢支することもできる。
【0010】一方の連結杆2の一端部と他端部には連結孔8a、8bが、他方の連結杆3の一端部と他端部には連結孔8c、8dがそれぞれ設けられている。これら連結孔8a?8dは、図4に示すようなH型建枠10に固着されている止め金具13に嵌合可能である。
【0011】H型建枠10は、図4に示すように、一対の支持脚11、11の中間部が梁部12にて連結されており、一対の支持脚11の上端近傍位置と梁部12の下部位置とに互いに内側に向けて対向するように止め金具13が突設されている。止め金具13は、周知のように、連結孔8a?8dを嵌合させる筒状本体13aとこの筒状本体13a内に退入可能に突出された抜け止め用の係止片13bとから構成されている。
【0012】このような構成のH型建枠10が適当間隔あけて配設され、隣合うH型建枠10における支持脚11の上下の止め金具13に連結杆2、3の連結孔8a?8dを嵌合させることによりH型建枠10が相互に連結され、図5に示すような仮設足場枠14が構成される。」

ウ 「【0014】次に、以上の構成の交叉状連結部材1の取付作業について、図5及び図6を参照して説明する。この図示例では、適当間隔あけて配設したH型建枠10を交叉状連結部材1にて互いに連結して下段の架設足場枠14を構成し、そのH型建枠10の梁部12間に足場板15を掛け渡した状態から、その上段の架設足場枠14を形成する場合を示している。なお、下段の架設足場枠14も以下に説明するのと同様に構成されたものである。
【0015】下段の架設足場枠14における足場板15上に作業者が乗ってそのH型建枠10の上にそれぞれ上段のH型建枠10を接続した後、まず図6(a)に示すように、水平連結杆5の他端部の連結孔9を上部の一方の止め金具13に嵌合し、次に図6(b)に示すように一方の連結杆2の一端部の連結孔8aを上部の他方の止め金具13に嵌合し、次に図6(c)に示すように一方の連結杆2の他端部の連結孔8bを下部の一方の止め金具13に嵌合するとともに、図6(d)に示すように他方の連結杆3の他端部の連結孔8dを先に連結孔9を嵌合した上部の一方の止め金具13に嵌合し、次に図6(e)に示すように他方の連結杆3の一端部の連結孔8cを下部の他方の止め金具13に嵌合することにより、交叉状連結部材1の取付が完了し、上段の架設足場枠14が構築される。その後、図6(f)に示すように上段の架設足場枠14におけるH型建枠10の梁部12、12間に足場板15を掛け渡す。
【0016】以上の作業は全て下段の架設足場枠14の足場板15上で行うことができるので安全に作業することができ、かつ下段の架設足場枠14の足場板15上に乗る時には既にその両側に水平連結杆5を有する交叉状連結部材1が取付けられているので、安全を確保することができる。」

エ 上記アの「H型建枠10は、図4に示すように、一対の支持脚11、11の中間部が梁部12にて連結されており、一対の支持脚11の上端近傍位置と梁部12の下部位置とに互いに内側に向けて対向するように止め金具13が突設されている。」の記載によれば、「止め金具13」が「一対の支持脚11、11」の上下軸方向に所定の間隔で設けられているといえる。

オ 上記アの「H型建枠10は、図4に示すように、一対の支持脚11、11の中間部が梁部12にて連結されており」という記載から、H型建枠10には一対の支持脚11、11が構成として含まれているから、上記ウの「下段の架設足場枠14における足場板15上に作業者が乗ってそのH型建枠10の上にそれぞれ上段のH型建枠10を接続した後」の「接続」に関し、「H型建枠10」の上に「H型建枠10」を接続する際に、「一対の支持脚11」同士が接続されることは明らかである。

カ 上記アないしオからみて、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「下段の架設足場枠14における足場板15上に作業者が乗って、上下に位置するH型建枠10の一対の支持脚11同士を接続した後、
水平連結杆5の他端部の連結孔9を、上部の一方の止め金具13に嵌合し、
一方の連結杆2の一端部の連結孔8aを上部の他方の止め金具13に嵌合し、
一方の連結杆2の他端部の連結孔8bを下部の一方の止め金具13に嵌合することにより、交叉状連結部材1の取付が完了し、
上段の架設足場枠14が構築され、
その後、上段の架設足場枠14におけるH型建枠10の梁部12、12間に足場板15を掛け渡す方法において、
一対の支持脚11、11には、止め金具13が上下軸方向に所定の間隔で設けられており、
一対の支持脚11、11の中間部が梁部12にて連結されており、
H型建枠10には、一対の支持脚11の上端近傍位置と梁部12の下部位置とに互いに内側に向けて対向するように、抜け止め用の係止片13bを有する止め金具13が突設されており、
交叉状連結部材1は、一方の連結杆2の一端部に一端が回動自在に枢止された水平連結杆5から構成される方法。」


(2)甲第2号証
本件特許の出願日前に頒布された甲第2号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、垂直管体と水平管体の端部とを直角に結合するクサビ式の接続装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築や土木の工事において、作業足場や型枠支持支柱、支保工等の仮設構造物として、四方に配置した縦柱を水平材で結合し、これを上方に順次継ぎ足して支柱とすると共に、平面的に多数の支柱を並べ、隣接する支柱を水平材で結合するようにした仮設構造物が提案されている。
【0003】
上記のような仮設構造物を構築するには、縦柱となる垂直管体と水平材となる水平管体の端部を直角に結合する接続装置が必要になり、図8は、上記結合に使用する従来の接続装置の構造を示している。」

イ 「【0008】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題を解決するため、この考案は、角度をもって互に結合せんとする管体の一方管体にフランジを固定し、このフランジの管体径方向の位置に係止孔を設け、他方管体の端部に、この管体の端部に固定され、フランジの係止孔に上部から挿入して係止する爪先を有するフック金具と、他方管体の軸方向に移動自在となるよう保持され、前面側にフランジの上下で一方管体の外面に対する当接面を有する座金と、前記座金の背面側に打込み、フック金具に対して座金を一方管体側に押圧するクサビ体とを設けた構成を採用したものである。」

ウ 「【0011】
図1乃至図4は、クサビ式接続装置の第1の実施例を示し、鋼管製の垂直管体11に外嵌固定したフランジ12と、水平管体13の両端部に固定したフック金具14と、フック金具14の先端部分に取り付けた座金15と、座金15に水平管体13に向けての移動弾性を付与する板ばね16と、この座金15の背面側でフック金具14の内部に打ち込むクサビ体17とで接続装置が構成されている。
【0012】
上記フランジ12は、矩形状の金属板を用いて垂直管体11に溶接で固定し、垂直管体11の径方向に沿う四方の位置に、各々一対の係止孔18、18が設けられている。
【0013】
水平管体13の端部に溶接で固定したフック金具14は、水平管体13に固定する後壁19の両側に側壁20、20を対向して設けた平面コ字状に形成され、両側壁20、20の前縁にフランジ12へ外嵌する切欠21、21を設け、この切欠21、21の上縁で先端部の位置に、フランジ12の係止孔18、18に上部から挿入して係止する下向きの爪先22、22が設けられている。
【0014】
前記座金15は、傾斜後壁23の両側に対向する側壁24、24を設けて、フック金具14の側壁20、20間に納まる平面コ字状に形成され、両側壁24、24の先端部中央にフランジ12を逃がすための切欠25、25が設けられ、両側壁24、24の切欠25を挾む先端縁が垂直管体11の外面に対する当接縁26になっている。
【0015】
両側壁24、24の上下位置に水平の長孔27、27が設けられ、フック金具14の上下には長孔27、27を貫通するピン28、28を側壁20、20間への架設によって設け、両側壁20、20間に座金15を水平管体13の軸方向へ長孔27、27の範囲で移動自在に保持している。
【0016】
上記座金15の傾斜後壁23は、下部が水平管体13側に接近する方向の傾斜となり、板ばね16はこの座金15の内部に納まり、両端部をピン28、28に係止し、中間の屈曲部分で傾斜後壁23の内面側を押圧し、座金15に常時水平管体13側へ向けての移動弾性を付勢している。
【0017】
クサビ体17は、フック金具14の内部で後壁19と座金15の間に圧入するものであり、後壁19に対応する一方側縁は垂直となり、傾斜後壁23に対応する他方側縁はこの傾斜後壁23と等しい傾斜面になり、フック金具14内に上部から打込むことにより座金15を垂直管体11側に押圧することになる。
【0018】
前記フック金具14の一方側壁20の外面で上下の位置にブレースピン29、29が突設されている。
【0019】
図3は、水平管体13で結合した両側垂直管体11、11を補強するブレース31を示し、上下対角位置にある接続装置のブレースピン29、29間に架設する二本の斜材32、32を中央の交差部においてピン33で結合し、更に、このピン33の部分に水平材34の中央部を結合し、水平材34の両端部に垂直管体11のホルダー35を設けた構造になっている。
【0020】
上記ホルダー35は、図5(A)、(B)のように、水平材34の端部に固定され、垂直管体11に外嵌係合するフック36と、水平材34の端部に起伏動自在となるよう取り付けられた軸状のストッパー杆37とからなり、ストッパー杆37は、伏倒時にフック36の開口部分に突出し、このフック36とで垂直管体11を抱持することになる。
【0021】
このように、水平材34によって両側垂直管材11、11の途中を結合すると、垂直管体11、11の撓みによる座屈発生を防ぎ、荷重支持力を大幅に向上させることができる。
【0022】
接続装置の第1の実施例は上記のような構成であり、仮設構造物の組立てを行なうには、図3のように、下端をジャッキ38で支持した垂直管体11を四方に配置し、対向する垂直管体11、11の上部のフランジ12間及び下部のフランジ12間に各々水平管体13を架設する。
【0023】
水平管体13の端部に取り付けてある接続装置は、クサビ体17の抜き取りにより、座金15が板ばね16で押され、その当接縁26はフック金具14の前縁よりも内側に没入しているので、フック金具14に設けた爪先22をフランジ12の係止孔18に係止する作業は支障なく行なえる。
【0024】
両側のフランジ12間に架設する水平管体13は、フック金具14の爪先22を係止孔18に上部から引掛けることにより、仮置き状態となり、一人の作業員で架設作業が行なえる。
【0025】
上記水平管体13は、仮置き状態で、係止孔18と爪先22のクリアランス分だけ水平方向の移動性があり、この仮置き状態で、上下水平管体13間にブレース31を取り付け、水平材34の両端に設けたホルダー35で垂直管体11の途中を抱持する。
【0026】
水平管体13は仮置き状態で水平の移動性があるため、上下水平管体13のブレースピン29間へのブレース31の取り付け作業が円滑に支障なく行なえる。
【0027】
ブレース31の取り付け後において、水平管体13の両端に設けた接続装置のフック金具14内にクサビ体17を上部から挿入して打込む。
【0028】
クサビ体17の打込みにより、座金15が前方に移動し、図2のように、座金15は垂直管体11側に移動し、その当接縁26が垂直管体11の外面に当接してこれを押すと同時に、フック金具14は爪先22でフランジ12を水平管体13側に引くことになる。
【0029】
このように、垂直管体11とフランジ12に相反する方向の力を加えることにより、図2のように、垂直管体11と水平管体13を直角状の配置で強固に結合固定化することができる。
【0030】
上記のように、各垂直管体11の四面において、水平管体13とブレース31による結合を行ない、次に各垂直管体11上にジョイント39を用いて垂直管体11を継ぎ足し、対向する垂直管体11の上部を水平管体13で結合し、かつ、上下水平管体13をブレース31で結合し、これを上方に順次繰り返して行くことにより、必要とする高さの支柱41を組み立てる。」

エ 【図2】を参照すると、座金15の切欠25には、フランジ12の厚みと略同じ厚みであって、フランジ12がはまり込む水平方向に凹む凹部が設けられていることが見てとれる。

オ 上記アないしエからみて、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「鋼管製の垂直管体11に外嵌固定したフランジ12と、水平管体13の両端部に固定したフック金具14と、フック金具14の先端部分に取り付けた座金15と、座金15に水平管体13に向けての移動弾性を付与する板ばね16と、この座金15の背面側でフック金具14の内部に打ち込むクサビ体17とで構成された、架設構造物の接続装置において、
上記フランジ12は、垂直管体11の径方向に沿う四方の位置に、各々一対の係止孔18、18が設けられ、
前記フック金具14は、前縁にフランジ12へ外嵌する切欠21、21を設け、この切欠21、21の上縁で先端部の位置に、フランジ12の係止孔18、18に上部から挿入して係止する下向きの爪先22、22が設けられ、
前記座金15は、傾斜後壁23の両側に対向する側壁24、24を設け、両側壁24、24の先端部中央にフランジ12を逃がすための切欠25、25が設けられ、両側壁24、24の切欠25を挾む先端縁が垂直管体11の外面に対する当接縁26になり、さらに切欠25には、フランジ12の厚みと略同じ厚みであって、フランジ12がはまり込む水平方向に凹む凹部が設けられており、
クサビ体17は、フック金具14の内部で後壁19と座金15の間に圧入するものであり、フック金具14内に上部から打込むことにより座金15を垂直管体11側に押圧することになるものであって、
両側のフランジ12間に架設する水平管体13のフック金具14の爪先22を係止孔18に上部から引掛け、フック金具14内にクサビ体17を上部から挿入して打込むことにより、座金15は垂直管体11側に移動し、その凹部に水平方向からフランジがはまり込み、その当接縁26が垂直管体11の外面に当接してこれを押すと同時に、フック金具14は爪先22でフランジ12を水平管体13側に引くことになって、垂直管体11と水平管体13を直角状の配置で強固に結合固定化することができる、接続装置。」

(3)甲第3号証
本件特許の出願日前に頒布された甲第3号証には、次の事項が記載されている。

ア 「2.実用新案登録請求の範囲
(1).円管状の支柱本体の外周面に鍔状のフランジ部材が固着されており、該フランジ部材にはステー等の他部材との連結用の係合孔が設けられているとともに、該フランジ部材の外周の少なくとも一部に直線状の辺部が形成されていることを特徴とする建築工事等に用いる仮設用支柱。」

イ 「本考案は建築工事等に用いる仮設用支柱の改良に関し、建築工事における作業員の通路や仮枠用の足場等に利用される。」(第1頁第17?19行目)

ウ 「第1図及び第2図に示す支柱1において、2は円管状の支柱本体であって、この支柱本体2の両端面にはリング状の端板3,3が、外周面2aには鍔状のフランジ部材4,4が溶接によって固着されている。」(第4頁第5?9行目)

エ 「フランジ部材4の外周の各辺部6,6・・・と丸孔5との間には、ステー等の他部材との連結にあたり例えば楔を挿入するための長方形状の係合孔7が設けられている。」(第4頁第12?15行目)

オ 「支柱1,1・・・を鉛直に立設し、各支柱1間にステー8を架設する。」(第5頁第5?6行目)

カ 「このように、各辺部6・・・と係合孔7・・・とを利用して複数のステー8・・・を連結することによって、組立てられた構造物は強なものとなる。」(第6頁第12?14行目)

キ 「第6図に示すステー13は管材14の端部に楔15が固着したものであって、この楔15が係合孔7内に嵌入して連結されている。」(第7頁第16?18行目)

ク 上記アないしキからみて、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。

「円管状の支柱本体の外周面に鍔状のフランジ部材が固着されており、該フランジ部材にはステーとの連結用の係合孔が設けられている仮設用支柱を鉛直に立設し、各支柱間に、管材14の端部に楔15が固着したステー13を架設し、楔15が係合孔7内に嵌入することにより、足場等に利用される仮設用支柱とステー13とを連結する方法。」

(4)甲第4号証
本件特許の出願日前に頒布された甲第4号証には、次の事項が記載されている。

ア 「この考案は、構造物と当該構造物の壁面に沿って構築された作業足場間を堅固につなぐ壁つなぎ部材に関する。」(明細書1頁15?17行)

イ 「壁つなぎ部材1は、調整ボルト2、調整パイプ3、テーパボルト4、クランプ5およびフック金具6等の部品から構成されている。」(明細書3頁11?13行)

ウ 「テーパボルト4の先端部にはフック金具6が取付けられている。フック金具6の先端部には壁つなぎ部材1の材軸に対し、斜め前後方向に長くかつ手前側に開口するフック6aが形成されている。」(明細書4頁14?18行)

エ 「壁つなぎ部材1を構造物13の壁面と作業足場8間に設置するとともにクランプ5を作業足場8の堅地9に固定し、さらにフック金具6を受け部材14の係合部14cに係合することによって壁つなぎ部材1の両端を構造物13の壁面および作業足場8にそれぞれ連結する。」(明細書6頁11?17行)

オ 「続いて、ハンドル7を持って調整ボルト2を回転し、調整パイプ3に深く螺入することにより調整ボルト2および調整パイプ3全体の長さを短くする。その結果として、作業足場8は壁つなぎ部材1によって構造物13側に引き寄せられ、堅固に固定できる。」(明細書6頁18行?7頁 3行)

カ 「第4図は、壁つなぎ部材の変形例を示したもので、フック金具6の先端部に鋸歯状部6bが設けてある。
この種のつなぎ部材を使用すれば構造物13と作業足場8間に壁つなぎ部材1を斜めに取付けて作業足場8を固定する必要がある場合でも、鋸歯状部6a(審決注:「6a」は「6b」の誤記と認める。)が構造物13の壁面に突きささり、すべることもないので、作業足場8による圧縮力にも充分抵抗できる。」(明細書7頁15行?8頁3行)

キ 上記エの記載、第1図及び第4図によれば、フック金具6は係合部14cに対して抜け止め状に連結されているといえる。

ク 上記アないしキからみて、甲第4号証には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。

「調整ボルト2、調整パイプ3、テーパボルト4、クランプ5およびフック金具6等の部品から構成され、
受け部材14の係合部14cに対し抜け止め状に連結するための、斜め前後方向に長くかつ手前側に開口するフック6aが先端部に形成され、
先端部に鋸歯状部6bが設けてあることにより、壁つなぎ部材1を斜めに取付けて作業足場8を固定する必要がある場合でも、鋸歯状部6bが構造物13の壁面に突きささり、すべることがなく、
ハンドル7を持って調整ボルト2を回転して、調整ボルト2および調整パイプ3全体の長さを短くし、その結果として、作業足場8は壁つなぎ部材1によって構造物13側に引き寄せられ、構造物13の壁面と作業足場8間を固定するための壁つなぎ部材1のフック金具6。」

(5)甲第5号証
本件特許の出願日前に頒布された甲第5号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0020】
本発明の枠組足場も前記図6で示す従来例と同じく、建枠1を適宜間隔で並列させ、この建枠1同士を布板(足場板)2および筋かい3で連結してなる点は同一である。」

イ 「【0024】
かかる交差筋かい3には、各バー3aの端付近で係止されて、この交差筋かい3に水平に掛渡されるバー9を各バー3aとともに平行に重なり合うようにして折畳み可能に組込んでいる。このバー9は作業員のための手摺としての機能の他に部材の脱落防止の機能の役割もなすものである。」

(6)甲第6号証
本件特許の出願日前に頒布された甲第6号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、枠組足場又は建物躯体の外側に長尺足場板や鋼製布枠(床板)等からなる作業床を設ける場合に使用される作業床用ブラケットに関する。」

イ 「【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明の作業床用ブラケットは、垂直材3の上端部に水平材4の基端部を枢着すると共に、垂直材3の下端部と水平材4の先端部とに伸縮可能な斜材5の両端部を夫々枢着し、垂直材3の背面側上下両端部には枠組足場又は建物躯体2に固定可能なクランプ6を取り付け、斜材5がそれ以上収縮しない状態で、この斜材5と垂直材3とによって水平材4を水平位置に保持し、斜材5をその収縮状態から伸長させることによって、この斜材5を水平材4と共に垂直材3と平行に折り畳み可能としてなることを特徴とする。」

ウ 「【0015】
上記のように水平材4の先端部を持ち上げると、図4の1及び2に示すように水平材4が枢軸P1を中心に上向きに回動し、これに伴い斜材5の第1部材11が第2部材12に対しスライドしながら伸長する。そして、水平材4が垂直材3と平行になるまで回動して垂直姿勢になると、斜材5の第1部材11も水平材4と平行になり、斯くして斜材5及び水平材4は、同図の3に示すように垂直材3と平行な垂直姿勢に折り畳まれる。この状態で、固定用ねじ具13を締め付けることにより、斜材5及び水平材4は、折り畳み姿勢に保持されて、倒れることがない。」

(7)甲第7号証
本件特許の出願日前に頒布された甲第7号証には、次の事項が記載されている。

ア 「次にこの考案の折り畳み式足場台の設置状態から折り畳む場合には、先ず第1図の基礎枠体2の左端を足等でおさえて固定し、次に頂部枠体1と足場板12の左端を若干持ち上げて、棒体10’を足場板の掛合凹部13から外し、第5図に示す如く掛合凹部13の最左端に掛合すれば夫々の支持杆体3、4は夫々装着部7、11によって夫々基礎枠体2、頂部枠体1上を摺動し、第5図に示す如く、頂部枠体1と基礎枠体2とが当接するように嵩を低くすることができる。」(第2頁右欄第2?10行目)

2 無効理由Dについて
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

ア 甲1発明の「一対の支持脚11」は、本件発明1の「順次継ぎ足しが可能となる縦柱」に相当し、以下同様に、
「足場板15」は、「足場板」に、
「水平連結杆5」は、「水平材」に、
「一方の連結杆2」は、「斜材」に、
「一方の連結杆2の一端部に一端が回動自在に枢止された水平連結杆5から構成される」「交叉状連結部材1」は、「水平材の一端側に斜材を角度可変に枢止して形成された手摺り筋交い」に相当する。

イ 甲1発明の「上下軸方向に所定の間隔で」「止め金具13」を「設ける」ことと、本件発明1の「上下軸方向に所定の間隔で孔付きフランジが固定され」ることとは、上下軸方向に所定の間隔で結合用部材が固定され」ることで共通する。

ウ 甲1発明の「水平連結杆5の他端部の連結孔9を、上部の一方の止め金具13に嵌合し、一方の連結杆2の一端部の連結孔8aを上部の他方の止め金具13に嵌合」することは、本件発明1の「水平材の両端を」「隣接する縦柱間に架設」することに相当する。

エ 甲1発明の「一方の連結杆2の他端部の連結孔8bを下部の一方の止め金具13に嵌合すること」と、本件発明1の「斜材の下端を一方縦柱のフランジの孔に結合して隣接する縦柱間に斜めに架設すること」とは、「斜材の下端を一方縦柱に結合して隣接する縦柱間に斜めに架設すること」で共通する。

オ 甲1発明の「上」「段に位置するH型建枠10」の「一対の支持脚11」は、本件発明1の「上部継ぎ足し縦柱」に相当する。

カ 甲1発明の「下段の架設足場枠14における足場板15上に作業者が乗って」「上下段に位置するH型建枠10」を「接続した後」、「交叉状連結部材1の取付が完了し、上段の架設足場枠14が構築され、その後、上段の架設足場枠14におけるH型建枠10の梁部12、12間に足場板15を掛け渡す方法」は、本件発明1の「縦柱を足場板の架設間隔で立設し」、「上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける」「仮設構造物の構築方法」に相当する。

したがって、両者は、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「上下軸方向に所定の間隔で結合用部材が固定され、順次継ぎ足しが可能となる縦柱を足場板の架設間隔で立設し、水平材の一端側に斜材を角度可変に枢止して形成された手摺り筋交いを、先ず、水平材の両端を隣接する縦柱間に架設し、この後、斜材の下端を一方縦柱に結合して隣接する縦柱間に斜めに架設することにより、上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける仮設構造物の構築方法。」

[相違点D-1]
本件発明1では、「縦柱」に「孔付きのフランジが固定され、」「水平材の両端をフランジの孔に結合し、水平材の一端は、該端部の係止フックに設けた縦柱に対する水平材の直交状態で孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状の差し込み爪をフランジの孔に差し込んだ後に、該係止フックの先端を縦柱の外面に当接させ、該係止フックに設けた切り欠きをフランジの周縁に嵌合させることで、該係止フックをフランジの孔に対して上方に抜け止め状に結合」するのに対し、甲1発明は、「縦柱」に固定されるのは「止め金具13」であって、「交叉状連結部材1」の一端を、「止め金具13」に「結合」するものである点。

[相違点D-2]
「手摺り筋交い」が、本件発明1では、「水平材の一端側に斜材を該水平材に沿う状態から角度可変に枢止」するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。

(2)判断
上記相違点D-1及びD-2について検討する。
ア 相違点D-1
(ア)フランジと傾斜状の差し込み爪について
a 甲第2号証及び甲第3号証には、上記「1(2)オ」及び「1(3)ク」に示した甲2発明及び甲3発明が記載されている。
甲2発明の「フック金具14」の「爪先22」及び甲3発明の「楔15」が、本件発明1の「差し込み爪」に相当するが、当該「爪先22」及び「楔15」は、「縦柱に対する水平材の直交状態で孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状」のものではない。
b 次に、甲第4号証には、上記「1(4)ク」に示した甲4発明が記載されており、甲4発明の「フック6a」が本件発明1の「差し込み爪」に相当する。
この「フック6a」に関して、請求人は、上記「第4 1(1)ア及びイ」において、甲1発明に、甲2発明のフランジと爪先による結合方法又は甲3発明のフランジと楔による結合方法を採用するに際し、甲4発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことと主張する(「第4 1(1)ア及びイ」参照。)。
しかしながら、甲1発明の止め金具13による結合構造に、甲2発明のフランジと爪先による結合方法又は甲3発明のフランジと楔による結合方法を適用した後に、当該甲2発明「爪先」及び甲3発明の「楔」のみを、甲4発明の「フック6a」のような傾斜状とすることは、論理付けが困難であって、請求人の主張は、所謂後知恵の論理付けというべきである。
c また、甲2発明は、「フランジ12」,「フック金具14」,「座金15」,「板ばね16」及び「クサビ体17」という多数の部材で構成され、これら部材を用いて、「フック金具14の爪先22を係止孔18に上部から引掛け、フック金具14内にクサビ体17を上部から挿入して打込むことにより、座金15は垂直管体11側に移動し、その凹部に水平方向からフランジがはまり込み、その当接縁26が垂直管体11の外面に当接してこれを押すと同時に、フック金具14は爪先22でフランジ12を水平管体13側に引くことになって、垂直管体11と水平管体13を直角状の配置で強固に結合固定化する」ことからみて、甲2発明の各構成部材は、垂直方向又は水平方向に移動しながら結合するものである。
仮に、本件発明1の「差し込み爪」に相当する甲2発明の「爪先22」を傾斜状に設けることによって、甲2発明における「爪先22」以外の他の構成部材との結合方向が相違することとなるから、当該他の構成部材の結合方向を含めて見直し、さらなる改良を重ねる必要が生ずるものである。
d 甲3発明は、抜け止めを考慮したかどうか不明であって、下方から上方の架設枠を作業するものでもないので、甲4発明を適用する動機付けが存在しない。
(イ)係止フックの先端を縦柱の外面に当接させること及び上方に抜け止め状に係合することについて
a 請求人は、上記「第4 1(2)ア及びイ」において、当該構成が甲第4号証に記載されている旨主張している。
b ここで、甲第4号証をみると、上記「1(4)ク」に示した甲4発明が記載されている。
しかしながら、甲4発明は、「ハンドル7を持って調整ボルト2を回転して、調整ボルト2および調整パイプ3全体の長さを短くし、その結果として、作業足場8は壁つなぎ部材1によって構造物13側に引き寄せられ、構造物13の壁面と作業足場8間を固定する」もの、つまり調整ボルト2及び調整パイプ3全体の長さを短くすることによって抜け止め機能を奏するものであるから、「フック金具6」の先端が壁面に当接することによって、上方への抜け止めの機能を有しているかどうかは不明と言わざるをえない。
c また、甲4発明は、「先端部に鋸歯状部6bが設けてあることにより、壁つなぎ部材1を斜めに取付けて作業足場8を固定する必要がある場合でも、鋸歯状部6bが構造物13の壁面に突きささり、すべることがない」ものであるが、当該「壁面に突きささり、すべることがない」ことは、水平材が直交状態で奏するものではなく、また上方への抜け止め機能となり得るかどうかも不明である。
d 上記b及びcのとおりであるから、請求人が主張するように、当該構成は、甲第4号証に記載されているとは認められない。
(ウ)相違点D-1は、上記の(ア)及び(イ)のとおり分けて検討したが、上記(ア)及び(イ)の点等を含めてそれぞれ相互に関連するものであることからみても、当業者が甲1発明ないし甲4発明に基いて、上記相違点D-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

イ 相違点D-2
斜材が水平材に沿う状態になる手前で回動を止めるような構成がなく、水平材の一端側に、斜材を水平材に沿う状態から角度可変に枢止した筋交いは、甲第5?7号証に記載されているように、枠組足場等の分野において本件出願日前に周知の技術である(以下「周知技術」という。)。
そうすると、甲1発明において、交叉状連結部材1の水平連結杆5の一端側に連結杆2を該水平連結杆5に沿う状態から角度可変に枢止し、相違点D-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、当業者が、甲1発明ないし甲4発明及び甲第5号証ないし甲第7号証に示された周知技術に基いて容易に発明をすることができたものではない。

3 無効理由Eについて
(1)対比
本件発明5と甲2発明とを対比する。
ア 甲2発明の「垂直管体11」は、本件発明5の「縦柱」に相当し、以下同様に、
「係止孔18、18が設けられているフランジ12」は、「孔付きのフランジ」に、
「水平管体13」は、「水平材」に、
「フック金具14」は、「係止フック」に、
「爪先22」は、「孔への差し込み爪」及び「差し込み爪」にそれぞれ相当する。

イ 甲2発明の「垂直管体11に」「係止孔18、18が設けられ」た「フランジ12」を「外嵌固定」することは、本件発明5の「縦柱に孔付きのフランジを固定」することに相当する。
また、甲2発明の「水平管体13の両端部に」、「フランジ12の係止孔18、18に上部から挿入して係止する下向きの爪先22を設け」た「フック金具14」を「固定」」すること、本件発明5の「水平材の端部にフランジの孔に上部から抜き差しが自在に係止する係止フックを固定」することに相当する。

ウ 甲2発明の「切欠21、21」は「フランジ12に外嵌」されるのであるから、「爪先22」よりも内側にあることは明らかである。したがって、甲2発明の「フランジ12の係止孔18、18に上部から挿入して係止する下向きの爪先22、22」を、その「上縁先端部の位置」に設けた「切欠21,21」は、本件発明5の「差し込み爪の内側に位置して下縁が開放し、フランジ周縁に対して嵌合する切り欠き」に相当する。

エ 甲2発明の「垂直管体11と水平管体13を直角状の配置で」「固定化する」「架設構造物の接続装置」は、本件発明5の「架設構造物の縦柱と水平材の結合構造」に相当する。

したがって、両者は、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「縦柱に孔付きのフランジを固定し、水平材の端部にフランジの孔に上部から抜き差しが自在に係止する係止フックを固定し、この係止フックに、上記孔への差し込み爪と、この差し込み爪の内側に位置して下縁が開放し、フランジ周縁に対して嵌合する切り欠きとを設けた水平材の結合構造。」

[相違点E-1]
「差し込み爪」と「切り欠き」とを、本件発明5は、「縦柱に対する水平材の直交状態で差し込み爪が孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状に設け」るのに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。
[相違点E-2]
「切り欠き」に、本件発明5は、「縦柱に対する水平材の直交状態でフランジの板厚が嵌合する凹欠部を設け」るのに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。
[相違点E-3]
「切り欠き」に、本件発明5は、「上記係止フックの先端に縦柱に対する水平材の直交状態で縦柱の外面に当接する先端凸部を設けた」のに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。
[相違点E-4]
本件発明5は、「上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行し上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける」のに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。

(2)判断
上記相違点E-1?E-4について検討する。
ア 相違点E-1
(ア)請求人が上記「第4 1(3)」において主張するように、甲第4号証には、本件発明における「差し込み爪」及び「切り欠き」を「傾斜状」に設けることに相当する、「フック6a」及び「手前側」の「開口」を「斜め前後方向に長く」形成する甲4発明が記載されている。
(イ)しかしながら、甲2発明は、「フランジ12」、「フック金具14」、「座金15」、「板ばね16」及び「クサビ体17」という多数の部材とで構成され、これら部材用いて、「フック金具14の爪先22を係止孔18に上部から引掛け、フック金具14内にクサビ体17を上部から挿入して打込むことにより、座金15は垂直管体11側に移動し、その凹部に水平方向からフランジがはまり込み、その当接縁26が垂直管体11の外面に当接してこれを押すと同時に、フック金具14は爪先22でフランジ12を水平管体13側に引くことになって、垂直管体11と水平管体13を直角状の配置で強固に結合固定化する」ことからみて、甲2発明の各構成部材は、垂直方向又は水平方向に移動しながら結合するものである。
仮に、本件発明5の「差し込み爪」及び「切り欠き」に相当する甲2発明の「爪先22」及び「切り欠き22」を傾斜状に設けた場合、甲2発明における「爪先22」及び「切り欠き22」以外の他の構成部材との結合方向が相違することとなるから、当該他の構成部材の結合方向を含めて見直し、さらなる改良を重ねる必要が生ずるものである。
(ウ)したがって、当業者が、甲2発明の「爪先22」及び「切り欠き22」を、甲4発明に基づいて傾斜状に設けることは、容易になし得たこととはいえない。

イ 相違点E-2
(ア)甲2発明の「座金15」の「切欠25」には、「フランジ12の厚みと略同じ厚みであって、フランジ12がはまり込む水平方向に凹む凹部」が、一応、設けられている。
(イ)しかしながら、当該「座金15」は、甲2発明の接続装置の一構成要素ではあるものの、本件発明5の「係止フック」に相当するものではないから、甲2発明の「凹部」は、本件発明5でいうところの「切り欠きに」設けた「凹欠部」に相当しない。
よって、請求人の上記「第4 1(4)」の主張は採用できない。
(ウ)また、甲2発明の上記「凹部」を、「フック金具14」側に設ける動機付けも存在しないことから、当業者が、甲2発明の「切り欠き」に、「縦柱に対する水平材の直交状態でフランジの板厚が嵌合する凹欠部を設け」ることは、容易になし得たこととはいえない。

ウ 相違点E-3
(ア)甲2発明の「座金15」の「当接縁26」は、「垂直管体11の外面に当接」する。
(イ)しかしながら、当該「座金15」は、上記イで説示したとおりであるから、甲2発明の「当接縁26」は、本件発明5でいうところの「係止フックの先端に縦柱に対する水平材の直交状態で縦柱の外面に当接する先端突部」に相当しない。
よって、請求人が上記「第4 1(5)」で主張するような相当関係は存在しない。
(ウ)また、甲2発明の上記「当接縁26」を、「フック金具14」側に設ける動機付けも存在しないことから、甲2発明において、当業者が、「係止フックの先端に縦柱に対する水平材の直交状態で縦柱の外面に当接する先端突部」を設けることは、容易になし得たこととはいえない。

エ 相違点E-4
本件発明5の「上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行し上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける」ことは、「上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける」ことを、「上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行」するという時期を規定している発明とみることができるので、「仮設構造物の縦柱と水平材の結合構造」という物の発明において、本件発明5の発明特定事項とは認められない。
したがって、相違点E-4は、実質的な相違点とは認められない。

オ 小括
上記相違点E-1?E-3は、便宜上3つに分けて検討したが、相互に関連する相違点でもあるので、仮に相違点E-1?E-3を併せた相違点として検討したとしても、上記アないしウに記載した検討事項によって、当業者が容易になし得たこととはいえない。
以上のとおり、本件発明5は、当業者が、甲2発明及び甲4発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(4)無効理由Fについて
本件請求項5の「上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける」との記載は、本件発明5の「架設構造物の縦柱と水平材の結合構造」において、「水平材」である「手摺り筋交い」を「縦柱」に取り付ける時期を「足場板の架設前」に限定する、つまり用途を限定するものと認められ、請求人が主張するような施工の手順、つまり当該「結合構造」を構成する各部材の施工の手順を限定するものではないから、「結合方法」を製造方法により特定するものではない。
よって、請求人の主張する無効理由を採用することはできない。


第6 むすび
以上のとおり、本件の請求項1及び請求項5に係る発明の特許は、請求人が提示した理由並びに証拠によって、無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
仮設構造物の構築方法とこれに用いる手摺り筋交い
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下軸方向に所定の間隔で孔付きのフランジが固定され、順次継ぎ足しが可能となる縦柱を足場板の架設間隔で立設し、水平材の一端側に斜材を該水平材に沿う状態から角度可変に枢止して形成された手摺り筋交いを、先ず、水平材の両端をフランジの孔に結合し、水平材の一端は、該端部の係止フックに設けた縦柱に対する水平材の直交状態で孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状の差し込み爪をフランジの孔に差し込んだ後、該係止フックの先端を縦柱の外面に当接させ、該係止フックに設けた切り欠きをフランジの周縁に嵌合させることで、該係止フックをフランジの孔に対して上方に抜け止め状に結合して、隣接する縦柱間に架設し、この後、斜材の下端を一方縦柱のフランジの孔に結合して隣接する縦柱間に斜めに架設することにより、上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付けることを特徴とする仮設構造物の構築方法。
【請求項2】
上下軸方向に所定の間隔でホルダーが固定され、順次継ぎ足しが可能となる縦柱を足場板の架設間隔で立設し、水平材の一端側に斜材を該水平材に沿う状態から角度可変に枢止して形成された手摺り筋交いを、先ず、水平材の両端をホルダーに結合して隣接する縦柱間に架設し、この後、斜材の下端を一方縦柱のホルダーに結合して隣接する縦柱間に斜めに架設することにより、上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付けることを特徴とする仮設構造物の構築方法。
【請求項3】
順次継ぎ足しが可能で、上下軸方向に所定の間隔で孔付きのフランジが固定され、足場板の架設間隔で立設した縦柱間に取り付けるための手摺り筋交いであり、水平材の一端側に斜材を該水平材に沿う状態から角度可変に枢止して形成され、上記水平材の一端側に、フランジの孔に上部からの抜き差しが自在となる挿入片を設け、この水平材の他端側に、フランジの孔に上部からの抜き差しが自在となり、縦柱に対する水平材の直交配置でフランジに抜け止め係合する係止フックを固定し、上記斜材の一端側に、フランジの孔に対する挿入片の挿入を許容し、縦柱に対する斜材の設定角度の傾斜でフランジに対して挿入片の抜け止め方向に係合する抜け止め係合部を設け、この斜材の他端側に、フランジに対する上下からの外接金具を固定し、この外接金具にフランジと外接金具の結合具を組み合わせた手摺り筋交い。
【請求項4】
順次継ぎ足しが可能で、上下軸方向に所定の間隔でホルダーが固定され、足場板の架設間隔で立設した縦柱間に取り付けるための手摺り筋交いであり、水平材の一端側に斜材を該水平材に沿う状態から角度可変に枢止して形成され、この斜材の一端側に、ホルダー内へ上部からの抜き差しが自在となり、縦柱に対する斜材の設定角度の傾斜でホルダーに抜け止め係合する係止部材を固定し、上記水平材の他端側に、ホルダー内へ上部からの抜き差しが自在となり、縦柱に対する水平材の直交配置でホルダーに抜け止め係合する係止部材を固定し、上記斜材の他端側に、ホルダーに対する上下からの外接金具を固定し、この外接金具にホルダーと外接金具の結合具を組み合わせた手摺り筋交い。
【請求項5】
縦柱に孔付きのフランジを固定し、水平材の端部にフランジの孔に上部から抜き差しが自在に係止する係止フックを固定し、この係止フックに、上記孔への差し込み爪と、この差し込み爪の内側に位置して下縁が開放し、フランジ周縁に対して嵌合する切り欠きとを、縦柱に対する水平材の直交状態で差し込み爪が孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状に設け、上記切り欠きに縦柱に対する水平材の直交状態でフランジの板厚が嵌合する凹欠部を設け、上記係止フックの先端に縦柱に対する水平材の直交状態で縦柱の外面に当接する先端凸部を設けた、上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける仮設構造物の縦柱と水平材の結合構造。
【請求項6】
縦柱に孔付きのフランジを固定し、水平材の端部にフランジ上へ載置する接続部材を固定し、この接続部材にフランジの孔に上部から抜き差しが自在に係止する下向きの挿入片と、この挿入片の内側に位置して下縁が開放し、フランジ周縁に対して嵌合する切り欠きとを設け、上記接続部材に斜材を角度可変に枢着し、この斜材の枢止側端部に、フランジの孔に対する挿入片の挿入を許容し、縦柱に対する斜材の設定角度の傾斜で切り欠き内に突出し、フランジに対して挿入片の抜け止め方向に係合する抜け止め係合部を設けた縦柱と水平材の結合構造。
【請求項7】
縦柱に上下が開放するホルダーを固定し、水平材の端部にホルダー内へ上部からの抜き差しが自在となる係止部材を固定し、上記係止部材が、縦柱の外面に対する当接部と、この当接部の下縁から水平材の下方に突出して水平材の軸方向内側に向かう傾斜部と、この傾斜部の下端から水平材の長さ方向の内方に屈曲し、縦柱に対する水平材の直交状態でホルダーの下縁に係合する係合片とで形成されている縦柱と水平材の結合構造。
【請求項8】
縦柱に上下が開放するホルダーを固定し、ホルダー上に載置する水平材の端部に斜材を角度可変に枢着し、この斜材の枢止側端部にホルダー内へ上部からの抜き差しが自在となる係止部材を固定し、上記係止部材が、縦柱の外面に対する当接部と、この当接部の下縁から斜材の下方に突出して斜材の軸方向内側に向かう傾斜部と、この傾斜部の下端から斜材の長さ方向の内方に屈曲し、縦柱に対する斜材の設定角度の傾斜でホルダーの下縁に係合する係合片とで形成されている縦柱と水平材の結合構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、建設工事の仮設足場やローリングタワー、室内足場等の多目的な用途に用いることができる仮設構造物の構築方法と、これに用いる手摺り筋交い及び縦柱と水平材の結合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種建物や土木等の建設工事に使用される一般的な仮設枠組足場は、門型や鳥居型の建枠と交差筋交い及び足場板を使用し、対向させた建枠を交差筋交いで結合すると共に、対向する建枠の上部に足場板を架設し、建枠の上方への継ぎ足しと水平方向への建て増しを行なうことにより、所望する高さと平面的な長さを有する足場を構築するものである。
【0003】
また、簡易な足場としての一側足場は、順次継ぎ足しが可能で、上下軸方向に所定の間隔で孔付きのフランジやホルダーが固定された縦柱を、壁つなぎ等で建物側に固定することにより足場板の架設間隔で立設し、隣接する縦柱を、水平材を用いてフランジやホルダーの部分で結合し、更に、各縦柱の建物側にフランジやホルダーを利用してブラケットを取付け、隣接するブラケット間に足場板を架設することによって構築するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の枠組足場や一側足場の構築方法では、対向する建枠や縦柱の上部間に架設した足場板の上で上方への継ぎ足し作業を行なうとき、足場板の上部周囲に何も存在しないことになり、このため、高所作業となる足場板上での組み立て作業の安全対策が取れず、墜落のような事故が発生する危険性があるという問題がある。
【0005】
そこで、この発明の課題は、足場板の上部周囲に先行して安全手摺り枠を配置することができ、高所作業となる足場板上での組み立て作業の安全確保が実現できる仮設構造物の構築方法と、これに用いる手摺り筋交い及び縦柱と水平材の結合構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明の方法は、上下軸方向に所定の間隔で孔付きのフランジが固定され、順次継ぎ足しが可能となる縦柱を足場板の架設間隔で立設し、水平材の一端側に斜材を該水平材に沿う状態から角度可変に枢止して形成された手摺り筋交いを、先ず、水平材の両端をフランジの孔に結合し、水平材の一端は、該端部の係止フックに設けた縦柱に対する水平材の直交状態で孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状の差し込み爪をフランジの孔に差し込んだ後、該係止フックの先端を縦柱の外面に当接させ、該係止フックに設けた切り欠きをフランジの周縁に嵌合させることで、該係止フックをフランジの孔に対して上方に抜け止め状に結合して、隣接する縦柱間に架設し、この後、斜材の下端を一方縦柱のフランジの孔に結合して隣接する縦柱間に斜めに架設することにより、上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける構成を採用したものである。
【0007】
請求項2の発明の方法は、上下軸方向に所定の間隔でホルダーが固定され、順次継ぎ足しが可能となる縦柱を足場板の架設間隔で立設し、水平材の一端側に斜材を該水平材に沿う状態から角度可変に枢止して形成された手摺り筋交いを、先ず、水平材の両端をホルダーに結合して隣接する縦柱間に架設し、この後、斜材の下端を一方縦柱のホルダーに結合して隣接する縦柱間に斜めに架設することにより、上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける構成を採用したものである。
【0008】
請求項3の手摺り筋交いの発明は、順次継ぎ足しが可能で、上下軸方向に所定の間隔で孔付きのフランジが固定され、足場板の架設間隔で立設した縦柱間に取り付けるための手摺り筋交いであり、水平材の一端側に斜材を該水平材に沿う状態から角度可変に枢止して形成され、上記水平材の一端側に、フランジの孔に上部からの抜き差しが自在となる挿入片を設け、この水平材の他端側に、フランジの孔に上部からの抜き差しが自在となり、縦柱に対する水平材の直交配置でフランジに抜け止め係合する係止フックを固定し、上記斜材の一端側に、フランジの孔に対する挿入片の挿入を許容し、縦柱に対する斜材の設定角度の傾斜でフランジに対して挿入片の抜け止め方向に係合する抜け止め係合部を設け、この斜材の他端側に、フランジに対する上下からの外接金具を固定し、この外接金具にフランジと外接金具の結合具を組み合わせた構成を採用したものである。
【0009】
請求項4の手摺り筋交いの発明は、順次継ぎ足しが可能で、上下軸方向に所定の間隔でホルダーが固定され、足場板の架設間隔で立設した縦柱間に取り付けるための手摺り筋交いであり、水平材の一端側に斜材を該水平材に沿う状態から角度可変に枢止して形成され、この斜材の一端側に、ホルダー内へ上部からの抜き差しが自在となり、縦柱に対する斜材の設定角度の傾斜でホルダーに抜け止め係合する係止部材を固定し、上記水平材の他端側に、ホルダー内へ上部からの抜き差しが自在となり、縦柱に対する水平材の直交配置でホルダーに抜け止め係合する係止部材を固定し、上記斜材の他端側に、ホルダーに対する上下からの外接金具を固定し、この外接金具にホルダーと外接金具の結合具を組み合わせた構成を採用したものである。
【0010】
上記した各発明における手摺り筋交いは、水平材と斜材に鋼管を用い、水平材は隣接する縦柱間に水平状態で架設することのできる長さを有し、架設せんとする足場板よりも所定高さだけ上方の位置に架設すると共に、また、斜材は、架設した水平材と足場板間の空間に対して斜めに配置され、足場板の架設に先行してその上部側面に手摺りを形成することになる。
【0011】
請求項5の縦柱と水平材の結合構造の発明は、縦柱に孔付きのフランジを固定し、水平材の端部にフランジの孔に上部から抜き差しが自在に係止する係止フックを固定し、この係止フックに、上記孔への差し込み爪と、この差し込み爪の内側に位置して下縁が開放し、フランジ周縁に対して嵌合する切り欠きとを、縦柱に対する水平材の直交状態で差し込み爪が孔に対して抜け止め状に係合する傾斜状に設け、上記切り欠きに縦柱に対する水平材の直交状態でフランジの板厚が嵌合する凹欠部を設け、上記係止フックの先端に縦柱に対する水平材の直交状態で縦柱の外面に当接する先端凸部を設けた、上部継ぎ足し縦柱への足場板の架設前に先行して上部継ぎ足し縦柱間に手摺り筋交いを取り付ける仮設構造物の縦柱と水平材の結合構造の構成を採用したものである。
【0012】
請求項6の縦柱と水平材の結合構造の発明は、縦柱に孔付きのフランジを固定し、水平材の端部にフランジ上へ載置する接続部材を固定し、この接続部材にフランジの孔に上部から抜き差しが自在に係止する下向きの挿入片と、この挿入片の内側に位置して下縁が開放し、フランジ周縁に対して嵌合する切り欠きとを設け、上記接続部材に斜材を角度可変に枢着し、この斜材の枢止側端部に、フランジの孔に対する挿入片の挿入を許容し、縦柱に対する斜材の設定角度の傾斜で切り欠き内に突出し、フランジに対して挿入片の抜け止め方向に係合する抜け止め係合部を設けた構成を採用したものである。
【0013】
請求項7の縦柱と水平材の結合構造の発明は、縦柱に上下が開放するホルダーを固定し、水平材の端部にホルダー内へ上部からの抜き差しが自在となる係止部材を固定し、上記係止部材が、縦柱の外面に対する当接部と、この当接部の下縁から水平材の下方に突出して水平材の軸方向内側に向かう傾斜部と、この傾斜部の下端から水平材の長さ方向の内方に屈曲し、縦柱に対する水平材の直交状態でホルダーの下縁に係合する係合片とで形成されている構成を採用したものである。
【0014】
請求項8の縦柱と水平材の結合構造の発明は、縦柱に上下が開放するホルダーを固定し、ホルダー上に載置する水平材の端部に斜材を角度可変に枢着し、この斜材の枢止側端部にホルダー内へ上部からの抜き差しが自在となる係止部材を固定し、上記係止部材が、縦柱の外面に対する当接部と、この当接部の下縁から斜材の下方に突出して斜材の軸方向内側に向かう傾斜部と、この傾斜部の下端から斜材の長さ方向の内方に屈曲し、縦柱に対する斜材の設定角度の傾斜でホルダーの下縁に係合する係合片とで形成されている構成を採用したものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0016】
図1乃至図9に示す第1の実施の形態は、縦柱が上下軸方向に所定の間隔で孔付きのフランジが固定されたタイプにおける仮設足場の構築方法と、これに用いる手摺り筋交い及び縦柱と水平材の結合構造を示している。
【0017】
この仮設足場の基本的な構成部材は、図2乃至図4に示すように、上方に継ぎ足して行く縦柱1と、隣接する縦柱1を互いに結合する手摺り筋交い2と、隣接する縦柱1の間に架設する足場板3と、図示省略したが、縦柱1に足場板3を架設するためのブラケットと、最下位縦柱1の下端を支持するジャッキベースと、縦柱1を建物側に固定するための壁つなぎ等である。
【0018】
先ず、縦柱1は、所定の直径を有する鋼管を用いて形成され、上端に縦柱1を順次継ぎ足して接続するための小径のジョイントパイプ4が設けられ、この縦柱1には上下軸方向に一定間隔の配置で孔付きのフランジ5が固定されている。ちなみに、縦柱1の高さ寸法は、1800mmに設定され、足場板3の架設間隔で立設配置されると共に、フランジ5は円形で半径方向に長い四個の孔6が等間隔の配置で設けられている。
【0019】
上記手摺り筋交い2は、鋼管を用いた水平材7と斜材8の組み合わせからなり、水平材7の一方端部に斜材8の一方端部をピン9で枢止することにより、斜材8を水平材7に沿わせて一本の棒状にした折り畳み状態から、水平材7に対して斜材8を傾斜させることができるようになっている。
【0020】
上記水平材7には、一端側にフランジ5上へ載置する垂直の板状となる接続部材10と、他端側にフランジ5の孔6に上部からの抜き差しが自在となり、縦柱1に対する水平材7の直交配置でフランジ5に抜け止め係合する係止フック11が固定されている。
【0021】
この接続部材10は、図5と図7のように、先端下部にフランジ5の孔6へ上部から抜き差しが自在に係止する下向きの挿入片12と、この挿入片12の内側に位置して下縁が開放し、フランジ5の周縁に対して嵌合する切り欠き13とが設けられている。
【0022】
また、係止フック11は、図5と図8のように、先端下部に上記孔6への差し込み爪14と、この差し込み爪14の内側に位置して下縁が開放し、フランジ5の周縁に対して嵌合する切り欠き15とを、縦柱1に対する水平材7の直交状態で差し込み爪14が孔6に対して抜け止め状に係合する傾斜状に設けて形成され、切り欠き15の上部外コーナ部分には、縦柱1に対する水平材7の直交状態でフランジ5の板厚が嵌合する凹欠部16が設けられている。
【0023】
上記水平材7は、接続部材10の挿入片12を一方縦柱1のフランジ5の孔6に挿入し、係止フック11を他方縦柱1のフランジ5の孔6に係止することにより、足場板3の架設間隔で立設配置した縦柱1間に水平状態で架設することができる長さに設定されている。
【0024】
図8(A)のように、上記係止フック11のフランジ5の孔6に対する挿入は、差し込み爪14が垂直になるよう水平材7を傾斜状に保持し、この差し込み爪14をフランジ5の孔6に差し込んだ後、図8(B)のように、水平材7を水平にすると、係止フック11の先端凸部11aが縦柱1の外面に当接し、凹欠部16がフランジ5の外周部に嵌まり、係止フック11は上方への抜け止め状態になる。
【0025】
図5と図7のように、上記斜材8の一方端部に係止プレート17を溶接固定し、この係止プレート17を接続部材10の一面側にピン9で枢止することにより、水平材7に対する斜材8の取付けが行われ、係止プレート17の先端には、接続部材10の切り欠き13に対して出没可能となり、フランジ5の孔6に対する挿入片12の挿入を許容し、水平材7に対する斜材8の設定角度の傾斜でフランジ5に対して挿入片12の抜け止め方向に係合する抜け止め係合部18が設けられている。
【0026】
図7(A)のように、水平材7に対して斜材8を略直角の角度に近づけると、係合部18は切り欠き13の外部に移動し、挿入片12のフランジ5の孔6に対する挿入に支障を与えないと共に、図7(B)のように、水平材7に対して斜材8を所定の角度に傾斜させると、係合部18は切り欠き13に向けて突出し、フランジ5の下面に対して挿入片12の抜け止め方向に係合することになる。
【0027】
図6と図9のように、上記斜材8の他方端部に、フランジ5に対する上下からの外接金具19が固定され、この外接金具19にフランジ5と外接金具19の結合具20が装着されている。この外接金具19は、金属板を狭いコ字状に折り曲げ、上下に角孔21が貫通し、斜材8を所定の角度に傾斜させときその先端面19aが縦柱1の外面に当接するよう、斜材8の端部に角度をもって溶接固定され、フランジ5に対して外嵌する凹溝22が先端面で開口するように設けられている。
【0028】
結合具20は、角孔21に上部から挿入するプレート23に、フランジ5の孔6に対する係止片24と、この係止片24の後方に係止片24よりも長い下向片25とを設け、係止片24と下向片25の間にフランジ5の周縁部に嵌合する凹欠部26を形成し、プレート23の上端に角孔21への落ち込みを防ぐ頭部27を設け、下向片25の下端に抜け止めピン28を設けた構造になっている。
【0029】
この結合具20は、図9のように、外接金具19の凹溝22をフランジ5に対して外嵌した状態で、同図一点鎖線の位置に引き上げておいた結合具20を落とし込み、係止片24を孔6に挿入すれば、フランジ5に対して外接金具19が抜け止め状に結合されることになる。
【0030】
次に、上記手摺り筋交い2を用いた一側足場の構築方法を説明する。
【0031】
先ず、複数の縦柱1を上方に継ぎ足し、これを足場板3の架設間隔で立設配置し、下位の位置において、隣接する縦柱1間に手摺り筋交い2を後述する手順で取付け、縦柱1間の建物側にフランジ5を用いて固定したブラケット間に足場板3を架設する。
【0032】
次に、図2のように、作業者が足場板3の上に載り、手摺り筋交い2を水平材7と斜材8が略直角の状態になるよう両手で保持し、係止フック11の差し込み爪14が垂直になるよう水平材7を傾斜状にし、上位に架設せんとする足場板3よりも上位の位置にあるフランジ5の孔6に差し込み爪14を上から差し込み、続いて、図3のように、斜材8の下端部を保持して水平材7の一方端部を押し上げるようにしながら、水平材7を略水平にして接続部材10の挿入片12を縦柱1のフランジ5の孔6に挿入する。この挿入時に斜材8を水平材7に対して略直角の位相にすれば、フランジ5の孔6に対する挿入片12の差し込みは支障なく行えることになる。
【0033】
これにより、水平材7は隣接する縦柱1間に水平の架設状態となり、次に、斜材8の下端部を縦柱1のフランジ5に外接金具19と結合具20を用いて固定化する。図2乃至図4の例では、水平材7は上位に架設せんとする足場板3よりも2ピッチ上のフランジ5間に架設し、斜材8の下端部は上位に架設せんとする足場板3と同じ高さ位置のフランジ5に固定する。
【0034】
水平の架設状態となる水平材7は、図8(B)のように、係止フック11がフランジ5の孔6に対して上方に抜け止め状となり、また、図7(B)のように、斜材8を傾斜状に架設することにより、枢止端の係合部18は切り欠き13に向けて突出し、フランジ5に対して挿入片12の抜け止め方向に係合し、かつ、図9の実線のように、斜材8の下端が外接金具19と結合具20でフランジ5に固定化されるので、両側の縦柱1を水平材7と斜材8で結合し、強度の向上が図れることになる。
【0035】
上記のようにして、両側の縦柱1間に手摺り筋交い2を取り付けた後、図4のように、上位の位置に足場板3を架設する。この足場板3を架設した時点において、すでに足場板3の上部で建物と反対側の側面に手摺り筋交い2が先行して架設されているので、上位の足場板3に載って上方への組み立て作業を行うときの安全性を確保することができる。
【0036】
両側の縦柱1間に取り付けた手摺り筋交い2は、水平材7が手摺りとなり、斜材8が水平材7と足場板3間の空間を斜めに遮蔽する筋交いとなり、足場板3上からの転落事故の発生を有効に防ぐことになる。
【0037】
なお、一側足場の解体手順は、上記組み立てと全く逆の工程を行うことによって実施することができる。
【0038】
図10乃至図18の第2の実施の形態は、縦柱1が上下軸方向に所定の間隔でホルダーが固定されたタイプにおける仮設足場の構築方法と、これに用いる手摺り筋交い及び縦柱と水平材の結合構造を示している。
【0039】
この仮設足場の基本的な構成部材は、図11乃至図13に示すように、上方に継ぎ足して行く縦柱1と、隣接する縦柱1を互いに結合する手摺り筋交い31と、隣接する縦柱1の間に架設する足場板3と、図示省略したが、縦柱1に足場板3を架設するためのブラケットと、最下位縦柱1の下端を支持するジャッキベースと、縦柱1を建物側に固定するための壁つなぎ等である。
【0040】
先ず、縦柱1は、所定の直径を有する鋼管を用いて形成され、上端に縦柱1を順次継ぎ足して接続するための小径ジョイントパイプが設けられ、この縦柱1には周囲四箇所の位置に固定され、かつ、上下軸方向に一定間隔の配置でホルダー32が設けられている。ちなみに、縦柱1の高さ寸法は、1800mmに設定され、足場板3の架設間隔で立設配置されると共に、ホルダー32は金属板をコ字状に折り曲げて形成され、上下が開放するように溶接固定されている。
【0041】
上記手摺り筋交い31は、鋼管を用いた水平材33と斜材34の組み合わせからなり、ホルダー32上に載置する水平材33の一方端部に斜材34の一方端部をピン35で枢止することにより、斜材34を水平材33に沿わせて一本の棒状にした折り畳み状態から、水平材33に対して斜材34を傾斜させることができるようになっている。
【0042】
図14のように、上記斜材34の一端側に、ホルダー32内へ上部からの抜き差しが自在となり、縦柱1に対する斜材34の設定角度の傾斜でホルダー32に抜け止め係合する係止部材36を固定し、上記水平材33の他端側に、ホルダー32内へ上部からの抜き差しが自在となり、縦柱に対する水平材の直交配置でホルダー32に抜け止め係合する係止部材37を固定し、図15のように、上記斜材34の他端側に、ホルダー32に対する上下からの外接金具38を固定し、この外接金具38にホルダー32と外接金具38の結合具39が装着されている。
【0043】
上記斜材34の一端側に固定した係止部材36は、図14と図16のように、帯状の金属板を用い、斜材34の傾斜端部に固定され、縦柱1の外面に対する当接部36aと、この当接部36aの下縁から斜材34の下方に突出して斜材34の軸方向内側に向かう傾斜部36bと、この傾斜部36bの下端から斜材34の長さ方向の内方に屈曲し、縦柱1に対する斜材34の設定角度の傾斜でホルダー32の下縁に係合する係合片36cとで形成され、図16(A)のように、傾斜部36bを垂直にした位相で、係合片36cがホルダー32の下縁から離脱し、ホルダー32に対する係止部材36の抜き差しが上下に行えることになる。
【0044】
上記水平材33の他端側に固定した係止部材37は、図14と図17のように、帯状の金属板を用い、水平材33の端部に直角に固定され、縦柱1の外面に対する当接部37aと、この当接部37aの下縁から水平材33の下方に突出して水平材33の軸方向内側に向かう傾斜部37bと、この傾斜部37bの下端から水平材33の長さ方向の内方に屈曲し、縦柱1に対する水平材33の直交状態でホルダー32の下縁に係合する係合片37cとで形成され、図17(A)のように、傾斜部37bを垂直にした位相で、係合片37がホルダー32の下縁から離脱し、ホルダー32に対する係止部材37の抜き差しが行えることになる。
【0045】
上記斜材34の他方端部に固定した外接金具38は、図15と図18のように、ホルダー32に対して上下から外嵌する側面コ字状に形成され、結合具39は外接金具38の上孔40から挿入する係止片41と、この係止片41の後方に係止片41よりも長く、外接金具38の上孔40から下孔40aにわたって貫通する下向片42とを設けて形成され、ホルダー32内に挿入する係止片41と下向片42の間にホルダー32の板厚に嵌合する凹欠部43を設け、下向片42の下端に抜け止めピン44を取付けた構造になっている。
【0046】
この結合具39は、外接金具38をホルダー32に対して外嵌した状態で、図18に一点鎖線で示した引き上げ位置の結合具39を落とし込み、係止片41をホルダー32内に挿入すれば、同図実線のように、ホルダー32に対して外接金具38が抜け止め状に結合されることになる。
【0047】
次に、上記手摺り筋交い31を用いた一側足場の構築方法を説明する。
【0048】
先ず、複数の縦柱1を上方に継ぎ足し、これを足場板3の架設間隔で立設配置し、下位の位置において、隣接する縦柱1間に手摺り筋交い31を後述する手順で取付け、縦柱1間の建物側にホルダーを用いて固定したブラケット間に足場板3を架設する。
【0049】
次に、図11のように、作業者が足場板3の上に載り、手摺り筋交い31を水平材33と斜材34が略直角の状態になるよう両手で保持し、水平材33の係止部材37における傾斜部37bが垂直となるよう水平材33を傾斜状にし、上位に架設せんとする足場板3よりも上位の位置にあるホルダー32に係止部材37を上から差し込み、続いて、図12のように、斜材34の下端部を保持して水平材33の一方端部を押し上げるようにしながら、水平材33を略水平にして斜材34の係止部材36を縦柱1のホルダー32に挿入する。図16(A)のように、この挿入時に傾斜部36bが垂直となるよう斜材34を水平材33に対して直角に近い位相にすれば、ホルダー32に対する係止部材36の差し込みは支障なく行えることになり、図16(B)の如く、水平材33の一方端部はホルダー32上に載って支持される。
【0050】
これにより、水平材33は隣接する縦柱1間に水平の架設状態となり、次に、斜材34の下端部を縦柱1のホルダー32に外接金具38と結合具39を用いて固定化する。図11乃至図13の例では、水平材33は上位に架設せんとする足場板3よりも2ピッチ上のホルダー32間に架設し、斜材34の下端部は上位に架設せんとする足場板3と同じ高さ位置のホルダー32に固定する。
【0051】
水平の架設状態となる水平材33の他端は、図17(B)のように、係止部材37がホルダー32に対して上方に抜け止め状となり、また、図16(B)のように、斜材34を傾斜状に架設することにより、枢止端の係止部材36がホルダー32に対して上方に抜け止め状となり、かつ、図18のように、斜材34の下端が外接金具38と結合具39でホルダー32に固定化されるので、両側の縦柱1を水平材33と斜材34で結合し、強度の向上が図れることになる。
【0052】
上記のようにして、両側の縦柱1間に手摺り筋交い31を取り付けた後、図13のように、上位の位置に足場板3を架設する。この足場板3を架設した時点において、すでに足場板3の上部で建物と反対側の側面に手摺り筋交い31が先行して架設されているので、上位の足場板3に載って上方への組み立て作業を行うときの安全性を確保することができる。
【0053】
両側の縦柱1間に取り付けた手摺り筋交い31は、水平材33が手摺りとなり、斜材34が水平材33と足場板3間の空間を斜めに遮蔽する筋交いとなり、足場板3上からの転落事故の発生を有効に防ぐことになる。
【0054】
なお、上記した一側足場の解体手順は、上記組み立てと全く逆の工程を行うことによって実施することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、この発明によると、縦柱を順次継ぎ足し、隣接する縦柱を所定の間隔に配置してその間に足場板を架設することによって組み立てる仮設構造物において、下階の足場板上で縦柱の継ぎ足しと、継ぎ足した縦柱間への手摺り筋交いの取り付けを、上階足場板の架設に先行して行なうようにしたので、足場板の上部側面に先行して安全手摺りを配置することができ、上階足場板上での支柱の継ぎ足しや手摺り筋交いの取り付け作業時にすでに上階足場板の上部周囲に、縦柱と安全手摺りが位置することになり、従って、高所作業となる足場板上での組み立て作業の安全性を縦柱と手摺り筋交いで確保でき、仮設構造物の組み立てが安全に行なえるようになる。
【0056】
また、仮設構造物の構成部材である縦柱、手摺り筋交いは汎用性があり、既存の部材との組み合わせで多様な仮設構造物の構築が可能となり、構成部材の多目的利用によって種々の仮設構造物を構築することができる。
【0057】
さらに、手摺り筋交いは、縦柱間への取付けと同時にロック化することができ、固定のための手間が省けると共に、手摺りとなる水平材と筋交いとなる斜材の二本の鋼管で形成したので、構成部品数を最小限に抑えることがてき、コスト的に安価となるだけでなく、軽量化と着脱時の操作性が良好となり、仮設構造物の構築や解体作業の短時間化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】手摺り筋交いの第1の実施の形態を示す正面図
【図2】同上の手摺り筋交いを用いた仮設足場の組み立て工程の初期の状態を示す正面図
【図3】同上の手摺り筋交いを用いた仮設足場の組み立て工程の中間の状態を示す正面図
【図4】同上の手摺り筋交いを用いた仮設足場の組み立て工程の足場板架設状態を示す正面図
【図5】同上の手摺り筋交いの水平材と斜材の構造を示す分解斜視図
【図6】同上の手摺り筋交いの外接金具と結合具及び縦柱を示す分解斜視図
【図7】(A)は同上の手摺り筋交いにおける水平材の一端側と縦柱の結合前の状態を示す一部切り欠き正面図、(B)は同結合状態を示す一部切り欠き正面図
【図8】(A)は同上の手摺り筋交いにおける水平材の他端側と縦柱の結合前の状態を示す一部切り欠き正面図、(B)は同結合状態を示す一部切り欠き正面図
【図9】同上の手摺り筋交いにおける斜材の下端部と縦柱の結合状態を示す一部切り欠き正面図
【図10】手摺り筋交いの第2の実施の形態を示す正面図
【図11】同上の手摺り筋交いを用いた仮設足場の組み立て工程の初期の状態を示す正面図
【図12】同上の手摺り筋交いを用いた仮設足場の組み立て工程の中間の状態を示す正面図
【図13】同上の手摺り筋交いを用いた仮設足場の組み立て工程の足場板架設状態を示す正面図
【図14】同上の手摺り筋交いの水平材と斜材の構造を示す分解斜視図
【図15】同上の手摺り筋交いの外接金具と結合具及び縦柱を示す分解斜視図
【図16】(A)は同上の手摺り筋交いにおける水平材の一端側と縦柱の結合前の状態を示す正面図、(B)は同結合状態を示す正面図
【図17】(A)は同上の手摺り筋交いにおける水平材の他端側と縦柱の結合前の状態を示す正面図、(B)は同結合状態を示す正面図
【図18】同上の手摺り筋交いにおける斜材の下端部と縦柱の結合状態を示す正面図
【符号の説明】
1 縦柱
2 手摺り筋交い
3 足場板
4 ジョイントパイプ
5 フランジ
6 孔
7 水平材
8 斜材
9 ピン
10 接続部材
11 係止フック
12 挿入片
13 切り欠き
14 差し込み爪
15 切り欠き
16 凹欠部
17 係止プレート
18 抜け止め係合部
19 外接金具
20 結合具
21 角孔
22 凹溝
23 プレート
24 係止片
25 下向片
26 凹欠部
27 頭部
28 抜け止めピン
31 手摺り筋交い
32 ホルダー
33 水平材
34 斜材
35 ピン
36 係止部材
37 係止部材
38 外接金具
39 結合具
40 上孔
41 係止片
42 下向片
43 凹欠部
44 抜け止めピン
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-12-02 
結審通知日 2015-12-04 
審決日 2015-12-21 
出願番号 特願2001-122147(P2001-122147)
審決分類 P 1 123・ 537- YAA (E04G)
P 1 123・ 121- YAA (E04G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 家田 政明  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
中田 誠
登録日 2006-09-08 
登録番号 特許第3851105号(P3851105)
発明の名称 仮設構造物の構築方法とこれに用いる手摺り筋交い  
代理人 辻村 和彦  
代理人 山口 慎太郎  
代理人 山下 未知子  
代理人 立花 顕治  
代理人 中村 小裕  
代理人 山口 慎太郎  
代理人 辻村 和彦  
代理人 山田 威一郎  
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