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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  F16F
審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更  F16F
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  F16F
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  F16F
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  F16F
審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  F16F
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  F16F
審判 全部無効 2項進歩性  F16F
管理番号 1313288
審判番号 無効2013-800102  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-06-03 
確定日 2016-02-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4968682号「振動低減機構およびその諸元設定方法」の特許無効審判事件についてされた平成26年 6月 9日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成26年(行ケ)第10175号平成27年 4月28日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第4968682号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4968682号に係る発明についての出願(以下「本件出願」という。)は、平成19年8月10日(優先権主張平成18年10月23日)に出願したものであって、平成24年4月13日にその発明について特許の設定登録がなされた。
以後の本件に係る手続の概要は、以下のとおりである。

平成25年 6月 3日 本件無効審判の請求
同年 8月14日 答弁書
同年10月 9日 審理事項通知書
同年11月19日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年11月21日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年12月19日 口頭審理
平成26年 1月21日 審決の予告
同年 3月24日 訂正請求
同年 3月24日 上申書(被請求人)
同年 4月11日 手続補正書
同年 6月 9日 審決(送達日:同年6月19日)
同年 7月18日 知的財産高等裁判所に出訴
平成26年(行ケ)第10175号
審決取消請求事件
平成27年 4月28日 審決取り消しの判決

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
被請求人が求めた訂正の内容は、下記訂正事項1ないし3のとおり訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「多層構造物の任意の層に、」を、「多層構造物の全層を除く任意の層に、」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の「多層構造物の任意の層に、」を、「多層構造物の全層を除く任意の層に、」に訂正する。
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された「多層構造物の任意の層に、」とあるのを、「多層構造物の全層を除く任意の層に、」に訂正する。(下線は訂正箇所を示す。)

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1及び2
ア 訂正事項1及び2は、請求項1及び2の「多層構造物の任意の層に、」を、「多層構造物の全層を除く任意の層に、」に訂正するものである。
訂正前の請求項1及び2に係る発明では、「多層構造物の任意の層」であることを特定していたが、その多層構造物の任意の層がいかなる任意の層であるかについては何ら特定していない。
これに対して、訂正後の請求項1及び2に係る発明では、多層構造物の任意の層が、全層を除く任意の層であることを特定するものである。
そうすると、訂正事項1及び2は、任意の層に含まれるすべての態様から全層である態様を除くことにより、特許請求の範囲を減縮するものである。

イ 特許の設定登録時の明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】には、「本発明は、回転慣性質量ダンパーの設置位置には制約がなく、任意の層に設置すれば充分であって各層に設置する必要はない・・・任意の特定層にのみ設置することで多層構造物全体に対して大きな振動低減効果が得られる」との記載がある。
この記載からみて、訂正事項1及び2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされるものである。

ウ 上記アで述べたとおり、訂正事項1及び2は、任意の層に含まれるすべての態様から全層である態様を除くものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項3
ア 訂正事項3は、訂正事項1及び2の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明細書の段落【0005】に記載された「多層構造物の任意の層に、」とあるのを、「多層構造物の全層を除く任意の層に、」に訂正するものである。
そうすると、訂正事項3は、明瞭でない記載を釈明するものである。

イ 上記(1)イで摘記した明細書の段落【0006】の記載からみて、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされるものである。

ウ 上記(1)ウと同様の理由により、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、平成26年3月24日付けの訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するので、適法な訂正と認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり、平成26年3月24日付けの訂正は認められるので、本件特許第4968682号の請求項1及び2に係る発明は、訂正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
多層構造物の振動を低減する機構であって、
多層構造物の全層を除く任意の層に、層間変形によって作動して錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを設置するとともに、該回転慣性質量ダンパーと直列に付加バネを設置し、回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を前記多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させてなることを特徴とする振動低減機構。」(以下「本件訂正発明1」という。)

「【請求項2】
多層構造物の振動を低減する機構の諸元設定方法であって、
多層構造物の全層を除く任意の層に、層間変形によって作動して錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを設置するとともに、該回転慣性質量ダンパーと直列に付加バネを設置し、回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を前記多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させるように回転慣性質量ダンパーと付加バネの諸元を設定することを特徴とする振動低減機構の諸元設定方法。」(以下「本件訂正発明2」という。)

第4 請求人主張の概要
請求人は、審判請求書において、「特許第4968682号発明の特許請求の範囲の請求項1,2に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、審判請求書、口頭審理陳述要領書、口頭審理を総合すると、請求人が主張する無効理由は、概略、次のとおりのものである。

1 無効理由1(特許法第29条第1項第3号)
(1)「付加バネ」とは、回転慣性質量ダンパーに直列して設置されて構造物と接続され、弾性を利用して、ひずみエネルギーを蓄え、または衝撃を緩和する作用をするものであれば、解析モデルにおける概念的なものも含めて広くこれに含まれるから、甲第1号証の「ダンパー取付部材24,26」は、本件訂正発明1及び2の「付加バネ」に相当する。

(2)「同調」とは、「機械的振動体または電気的振動回路などが、外部から与えられる振動に共振するように、その固有振動数を調節すること。」(広辞苑第六版)をいい、「共振」とは「振動系の固有振動数が外部からの強制振動の振動数に一致したとき、系の振幅が著しく大きくなる現象」(建築大辞典)をいう。
そして、建物2の1次、2次、3次の固有振動数のそれぞれに対して、各層に設置した付加振動系の緒元(ダンパー取付部材24,26の剛性、回転慣性機構の質量、ダンパー12)を調節することによって、建物2の1次、2次、3次の固有振動数付近(共振域)の制振効果が大幅に向上するから、甲第1号証における「共振」するように「調整」することは、本件訂正発明1及び2の「同調」に相当する。

(3)本件訂正発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、後者の「建物2」が前者の「多層構造物」に相当し、以下同様に、「回転慣性機構」が「層間変形によって作動して錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパー」に、「ダンパー取付部材24,26」が「付加バネ」に、「建物2の1次、2次、3次の固有振動数」が「多層構造物の固有振動数」に、「共振」するように「調整」することが「同調」に、「制振装置」が「振動低減機構」に、それぞれ相当するから、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明と同一である。

(4)本件訂正発明2と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、後者の「共振」するように「調整」することが、前者の「同調させるように・・・諸元を設定する」に相当するから、本件訂正発明2は、甲第1号証に記載された発明と同一である。

(5)よって、本件訂正発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2 無効理由2(甲第1号証を主引例とした特許法第29条第2項)
(1)本件訂正発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、後者の「建物2」が前者の「多層構造物」に相当し、以下同様に、「回転慣性機構」が「層間変形によって作動して錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパー」に、「ダンパー取付部材24,26」が「付加バネ」に、「制振装置」が「振動低減機構」に、それぞれ相当する。

したがって、本件訂正発明1と、甲第1号証に記載された発明とは、
「多層構造物の振動を低減する機構であって、
多層構造物の任意の層に、層間変形によって作動して錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを設置するとともに、該回転慣性質量ダンパーと直列に付加バネを設置してなる振動低減機構。」
の点で一致し、以下の相違点で相違する。

[相違点]
本件訂正発明1は、「回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を前記多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させ」るのに対し、甲第1号証に記載された発明は、このような構成を有しない点。

(2)甲第13号証には、一対の引張材14a,14bと回転軸5等の増幅手段とに定まる固有振動数を構造体12の固有振動数に一致させることが記載されている。

そして、甲第1号証及び甲第13号証は、いずれも制振装置という同一の技術分野に属し、かつその制振対象も同一であるから、甲第1号証に甲第13号証を組み合わせる動機づけは十分である。

したがって、甲第1号証に記載された発明に甲第13号証に記載された事項を適用して、上記相違点とすることは当業者が容易に想到し得た。

(3)甲第13号証に記載された、一対の引張材14a,14bと回転軸5等の増幅手段とに定まる固有振動数を構造体12の固有振動数に一致させることが、本件訂正発明2の「同調させるように・・・諸元を設定する」に相当するから、本件訂正発明2は、当業者が、甲第1号証に記載された発明及び甲第13号証に記載された事項に基いて、容易に想到し得た。

(4)よって、本件訂正発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第13号証に記載された事項に基いて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

3 無効理由3(甲第10号証を主引例とした特許法第29条第2項)
(1)本件訂正発明1と、甲第10号証に記載された発明とは、
「多層構造物の振動を低減する機構であって、
多層構造物の任意の層に、層間変形によって作動して錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを設置するとともに、該回転慣性質量ダンパーと直列に付加バネを設置してなる振動低減機構。」
の点で一致し、以下の相違点で相違する。

[相違点]
本件訂正発明1は、「回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を前記多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させ」るのに対し、甲第10号証に記載された発明は、「MVEDダンパー」の緒元を算出する旨の記載があるにとどまる点。

(2)甲第9号証には、主振動系である建物の固有振動数ω_(n)と、付加振動系であるMVEDダンパーの固有振動数ω_(r)との、最適な振動数比β*を求めることが記載されていて、MVEDダンパーの固有振動数ω_(r)を、建物の固有振動数ω_(n)と最適な振動数比β*から求められる特定振動数とすることが、「回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を前記多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させ」ることに相当する。

そして、甲第10号証及び甲第9号証は、同一の技術分野における同一装置に関する一連のテーマの同一機会における研究発表であるから、甲第10号証に記載された発明に甲第9号証に記載された事項を組み合わせる動機づけは十分である。

したがって、甲第10号証に記載された発明に甲第9号証に記載された事項を適用して、上記相違点とすることは当業者が容易に想到し得た。

(3)甲第9号証に記載された、MVEDダンパーの固有振動数ω_(r)を、建物の固有振動数ω_(n)と最適な振動数比β*から求められる特定振動数とすることが、本件訂正発明2の「同調させるように・・・諸元を設定する」に相当するから、本件訂正発明2は、当業者が、甲第10号証に記載された発明及び甲第9号証に記載された事項に基いて、容易に想到し得た。

(4)よって、本件訂正発明1及び2は、甲第10号証に記載された発明及び甲第9号証に記載された事項に基いて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2003-56199号公報
甲第2号証:「定点理論から導かれるパッシブ型の層間ダンパー方式に於 ける最適制振の形」,日本建築学会大会学術講演梗概集(東 海),2003年9月発行,21388
甲第3号証:「慣性質量要素を利用した粘性ダンパーによる構造骨組の応 答制御(その1 付加系及びシステムの貯蔵剛性・損失剛性 )」,日本建築学会大会学術講演梗概集(北海道),20 04月8月発行,21046
甲第4号証:「慣性質量要素を利用した粘性ダンパーによる構造骨組の応 答制御(その2 システムの付加剛性比及び付加減衰定数) 」,日本建築学会大会学術講演梗概集(北海道),200 4年8月発行,21047
甲第5号証:「慣性質量要素を利用した粘性ダンパーによる構造骨組の応 答制御(その3 MVDダンパーの制振性能曲線)」,日本 建築学会大会学術講演梗概集(北海道),2004年8月発 行,21048
甲第6号証:「慣性質量要素を利用した粘性ダンパーによる構造骨組の応 答制御(その4 MVDダンパーを用いた設計例)」,日本 建築学会大会学術講演梗概集(北海道),2004年8月発 行,21049
甲第7号証:「慣性質量要素を利用した粘性ダンパーによる構造骨組の応 答制御(その5 入力低減効果を考慮した応答予測)」,日 本建築学会大会学術講演梗概集(近畿),2005年9月発 行,21468
甲第8号証:「慣性質量要素を利用した粘性ダンパーによる構造骨組の応 答制御(その6 非線形粘性ダンパーの応答予測)」,日本 建築学会大会学術講演梗概集(近畿),2005年9月発行 ,21469
甲第9号証:「慣性質量要素を利用した粘性ダンパーによる構造骨組の応 答制御(その7 弾性バネ付きMVDダンパーによる最適応 答制御)」,日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),2 006年9月発行,21364
甲第10号証:「慣性質量要素を利用した粘性ダンパーによる構造骨組の 応答制御(その8 弾性バネ付きMVDダンパーを適用した 建物の応答特性)」,日本建築学会大会学術講演梗概集(関 東),2006年9月発行,21365
甲第11号証:「慣性接続要素によるモード分離 慣性接続要素による応 答制御に関する研究 その1」,日本建築学会構造系論文集 ,2004年2月発行,第576号,第55頁?第62頁
甲第12号証:「慣性接続要素による多質点振動系の応答制御 慣性接続 要素による応答制御に関する研究 その2」,日本建築学会 構造系論文集,2006年3月発行,第601号,第83頁 ?第90頁
甲第13号証:特開平9-25740号公報
甲第14号証:「建築構造物のケーブル制振法に関する研究(その1)慣 性体を用いた最適位相修正法について」,日本建築学会大会 学術講演梗概集(北海道),1995年8月発行,2138 8

第5 被請求人主張の概要
被請求人は、答弁書において、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、答弁書、口頭審理陳述要領書、口頭審理、上申書を総合すると、概略、次のとおり主張する。

1 無効理由1(特許法第29条第1項第3号)について
甲第1号証に記載された発明は、回転慣性質量ダンパー及び付加バネを多層構造物の全層を除く任意の層に設置するものではなく、甲第1号証の取付部材24、26は付加バネに相当せず、甲第1号証の回転慣性機構は回転慣性質量ダンパーに相当しないので、本件訂正発明1及び2は甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

2 無効理由2(特許法第29条第2項)について
甲第1号証に記載された発明に甲第13号証に記載された事項を組み合わせても、回転慣性質量ダンパー及び付加バネを多層構造物の全層を除く任意の層に設置するものにはならず、回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させるものにならないので、本件訂正発明1及び2は、当業者が甲第1号証に記載された発明及び甲第13号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることはできたとはいえないので、特許法第29条第2項に違反しない。

3 無効理由3(特許法第29条第2項)について
甲第10号証に記載された発明に甲第9号証に記載された事項を組み合わせても、回転慣性質量ダンパー及び付加バネを多層構造物の全層を除く任意の層に設置するものにはならず、回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させるものにならないので、本件訂正発明1及び2は、当業者が甲第10号証に記載された発明及び甲第9号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることはできたとはいえないので、特許法第29条第2項に違反しない。

[証拠方法]
乙第1号証:「慣性接続要素を利用した線形粘性ダンパーによる一質点構 造の最適応答制御とKelvinモデル化手法に関する考察 」 日本建築学会 構造工学論文集 Vol.53B(2 007年3月)
乙第2号証:特開2009-68659号公報
参考資料1:「評定・評価を踏まえた高層建築物の構造設計実務」 財団 法人日本建築センター 平成14年7月1日 p.8-20 別紙1:甲第1号証の取付部材24、26の力学的計算

第6 甲各号証について
1 甲第1号証
甲第1号証は、本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物であり、図面(特に、図1参照。)とともに、次の記載がある。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建物の上下階間に生じる層間変位を質量体の回転または揺動等の運動に変換して、その慣性力によって建物を制振するようにした、建物層間に設置する慣性力を利用した制振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図5に示すように、建物2の制振装置4として、層間の柱6と梁8とに囲まれた架構の内部空間に設置されるブレース10の一端またはその途中に、これを取付部材としてダンパー12を介在させて、振動エネルギーを吸収する方法が広く一般的に採用されている。このように層間にブレース10などの取付部材を介してダンパー12を設けた場合の制振効果は、建物伝達関数の定点理論からも説明できる。
【0003】即ち、この定点理論によれば、図6に示すように、ダンパー12の減衰定数をゼロとしたときの建物伝達関数とダンパー12の減衰定数を無限大としたときの建物伝達関数との交点は、ダンパー12の減衰定数をいかなる値に設定した場合にもその建物伝達関数が必ず通過する点となる。そして、この点が建物伝達関数の定点と呼ばれ、この定点をピークとなすような減衰定数を有したダンパー12が最適ダンパーとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、建物の上階層と下階層との層間変位をダンパー12に伝えるべくその高さ方向に延設するダンパー取付部材にはその剛性に限界があり、ブレース10をダンパー取付部材とした場合でも、一般的には建物自体の層剛性の1割から2割程度の剛性にしかならない場合が多い。このような場合にあっては、ダンパー12には十分な振動エネルギーが伝わらず、結果として建物2の減衰定数を数%上昇させる程度の制振効果に止まっていた。
【0005】つまり、十分な制振効果を得るためには、ダンパー12の取付部材の剛性を上げることが必要となり、そのためには大きな部材を用いるか、あるいはダンパー12の設置箇所を増やさねばならず、そうすると居住スペースを減らす結果となってしまい、建物平面利用計画上の制約から限界に突き当たっていた。
【0006】また、定点理論からみても、ダンパーの減衰定数を0とした場合の固有振動数とその減衰定数を無限大にした場合の固有振動数とが接近していると、その定点は伝達率の高い位置に存在することになり、この状態では例え最適ダンパーを用いても、定点自体が高い位置にあるために大きな制振効果は期待することができない。
【0007】本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、居住スペースを減じることなく設置できて、しかも十分に大きな制振力が得られる制振装置を提供することにある。」

(2)「【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の建物層間に設置する慣性力を利用した制振装置の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る制振装置の概略構成図である。本発明の制振装置は、基本的には、建物2の上下階の層間に設けられて、層間の動きを増幅して出力端に出力する増幅機構20と、この増幅機構20の出力端に取り付けられた錘32などの付加質量体とを備え、当該付加質量体を含む出力端の慣性力で建物2を制振するものである。
【0015】本実施形態にあっては、上記増幅機構20には、図示するように、上下階の層間変位による水平方向の相対変位量を出力側部材の回転量として取り出すラック・ピニオン機構22が採用されている。このラック・ピニオン機構22は、建物2の柱6と梁8とに囲まれた架構内に設けられている。この架構内には、一方の柱6の上階側部分に一端が固定されて当該架構の対角線に沿って延びる第1取付部材24と、他方の柱6の下階側部分に一端が固定されて該第1取付部材24に沿って平行に延びる第2取付部材26とが設けられ、これら第1取付部材24と第2取付部材26との双方にラック・ピニオン機構22のラック部材28a,28bが相対向されて一対で設けられ、当該一対のラック28a,28b間にこれらに噛合してピニオン30が挟持されている。
【0016】上記第2取付部材26の延出側の他端には、これと上階側の梁8とを連結してダンパー12が設けられていて、当該第2取付部材26はダンパー12を備えたブレース10として機能するように構成されている。ここで、ダンパー12には油圧式、摩擦式などのものが採用し得る。また、第1取付部材24と第2取付部材26とには、これらを相互に繋いでその平行度を保つための連結部材34a,34bが一対で設けられている。これらの連結部材34a,34bは、各取付部材24,26に対してその一方に固定され、他方に摺動自在に係合されて設けられる。ここでは、各取付部材24,26の延出端側が固定部となっており、連結部材34aは第1取付部材24の延出端近傍に固定されて、第2取付部材26に摺動自在に係合し、連結部材34bは第2取付部材26の延出端近傍に固定されて、第1取付部材24に摺動自在に係合していて、両取付部材24,26の軸方向への相対移動を許容している。
【0017】ピニオン30にはその端面に付加質量体として円盤状のフライホイール36が一体に取り付けられ、且つこのフライホイール36の外周面には更に付加質量体として複数の錘38が等間隔に放射状に配置されて一体的に設けられている。なお、付加質量体のフライホイール36はピニオンの軸方向両端面に一対で取り付けて、フライホイール36で取付部材24と26との両側を挟むようにして、ラック28a,28bからのピニオン30の脱落を防止するようにしても良い。
【0018】以上の構成により本実施形態の制振装置にあっては、地震や風により建物2に振動が発生し、上・下階に層間変位が発生すると、第1,第2取付部材24,26が連結部材34a,34bにより平行を保たれつつ、それぞれ軸方向に沿って逆方向に相対移動し、これに伴い第1,第2取付部材24,26のラック28a,28bに噛合したピニオン30が付加質量のフライホイール36と錘32と共に一体に回転する。
【0019】従って、上記ピニオン30とフライホイール28と錘32とからなる回転質量体は回転慣性機構を構成し、建物2の層間変位に伴って回転慣性力を発生する。そして、この回転慣性力を反力となして建物2を制振することができる。この際、層間変位荷重に対しては、主に第2取付部材26がブレース10として機能してその強度の大きな軸方向の圧縮力としてこれを受けるため、大きな層間変位量にも十分に対応することができ、大地震等により過大な層間変位が建物2の上下階間に発生した場合にも、十分に制振機能を確保することができる。
【0020】また、公知のように上記回転慣性力は、ピニオン30と付加質量体のフライホイール36との総質量は一定であっても、その回転速度や錘32の質量及びその回転半径によって異なったものとなり、その回転慣性力の大きさは回転半径の2乗に比例し、回転速度に比例したものとなるが、建物2の層間変位に伴うラック28a,28bの往復直進運動をピニオン30の往復揺動回転運動に変換するラック・ピニオン機構のギヤ比(増幅率)、並びに付加質量体である錘32の回転半径及び質量をそれぞれ適宜に設定することで、所望の回転慣性力(即ち減衰力)を容易に得ることができる。
【0021】つまり、ダンパー12の減衰定数を無限大とした場合の固有振動数は取付部材24,26の剛性で決まるが、当該剛性を変更できないならば、ダンパー12の減衰定数をゼロとしたときの固有振動数を下げる工夫をすれば良い。そして、この固有振動数を下げるためには振動方程式おける慣性項を大きくすれば良く、その方法として、上記の様な上下階の水平方向の相対変位量を出力側部材の回転量として取り出すラック・ピニオン機構22を利用して、層間変位を質量体の回転慣性力に変換する回転慣性機構を組み付けることが有用となる。
【0022】上記の様に、回転慣性機構は回転軸から付加質量の錘の設置位置までの半径を大きくすることによって、回転質量体の総質量は同一に維持したままでも、その半径の2乗に比例した回転慣性力を得ることができ、よって小さい負荷質量で大きな慣性力が得られるから、小型軽量に構成しつつ容易に固有振動数を下げることが可能となる。但し、このようなラック・ピニオン機構22等の慣性機構を用いた場合、慣性機構と取付部材24,26とで新たな共振点が形成されることになり、この共振点はダンパー12を無限大としたときの固有振動数より高い振動数になって現れる。そして、この振動数がダンパー12を無限大にした場合の固有振動数に近づくと、新たに高い伝達率の定点が構成されるため、この慣性機構の大きさやダンパー12の減衰定数に最適値が存在することになる。従って、これらを調整することによって慣性機構を用いない場合よりも定点での伝達率を大幅に下げることが可能になり、よって大きな制振効果(減衰を上げること)が実現できる。【0023】図2は、図1の実施形態において、ダンパー取付部材24,26の剛性は建物2の剛性の1割となした条件下で、最下層の制振装置の回転慣性機構の質量を1次振動数に対して調整し、中間層の回転慣性機構の質量は3次振動数に対して調整し、最上層の回転慣性機構の質量は2次振動数に対して調整し、且つ各層の制振装置のダンパーには、それぞれに定点理論の最適ダンパーを配した結果の伝達関数を表したものである。このように、全層を特定の次数に調整してより大きな制振効果を実現することも可能である。
【0024】一方、図6は、図5の従来の制振装置において、同様にダンパー取付部材(ブレース10)の剛性を建物自体の層剛性の1割とした条件下で定点理論による最適なダンパー12を配し、伝達関数のピークを低くした場合の伝達関数の結果を示すものである。また、図3と図7は、ダンパー12を有したブレース10に加えて、更にラックピニオン機構22による回転慣性機構を併用することによって制振効果を改善しているという同じ現象を、応答に対する制御力(ブレースに掛かる力)の位相遅れという物理的な側面から説明するものであり、これらに図示するように、図3の本実施形態にあっては慣性機構を設置することで、層間の変形速度に対する応答(制御力)は位相が180度進ので(審決注:「進むので」の誤記と認める。)、図7の従来例のような位相遅れは生じない。さらに、下表は本実施形態と従来例との両者の減衰定数の比較を示す。同表からも回転慣性機構を用いることによって、減衰定数が3倍以上に向上することが分かる。
【0025】
【表1】(省略)
【0026】また、ラック・ピニオン機構22で構成される回転慣性機構は、小型軽量に構成し得ることから、建物平面利用計画上の制約を受けずに柱・梁架構内の空間に収納して設置可能であり、これ故、特に設置スペースを広く確保する必要が無く、居住スペースを減じることがない。」

(3)「【0029】なお、以上の各実施形態の説明にあっては、層間の動きを増幅して出力端に出力する増幅機構20及び慣性機構として、ラック・ピニオン機構22やレバー機構36を例示しているが、本発明はこれらに限らず、付加質量体としての錘を取り付けたボールナット機構やトグル機構も採用することができる。
【0030】
【発明の効果】以上、実施形態で説明したように、本発明に係る慣性力を利用した制振装置にあっては、建物上下階の層間に、該層間の動きを増幅して出力端に出力する増幅機構を設けると共に、該増幅機構の出力端に付加質量体を取り付けて慣性機構を構成し、地震や風等によって建物の上下階間に生じる層間変位を、該出力端の質量体の運動に変換して伝えて慣性力を発生させるようにしたので、当該慣性力で建物を制振することができる。また、慣性機構を用いることで、層間の変形速度に対する応答(制御力)に位相遅れが生じるのを防止でき、制振力の大幅な改善が図れる。」

(4)上記(2)の「本実施形態の制振装置にあっては、地震や風により建物2に振動が発生し、上・下階に層間変位が発生すると、第1,第2取付部材24,26が連結部材34a,34bにより平行を保たれつつ、それぞれ軸方向に沿って逆方向に相対移動し、これに伴い第1,第2取付部材24,26のラック28a,28bに噛合したピニオン30が付加質量のフライホイール36と錘32と共に一体に回転する。従って、上記ピニオン30とフライホイール28と錘32とからなる回転質量体は回転慣性機構を構成し、建物2の層間変位に伴って回転慣性力を発生する。」(段落【0018】及び段落【0019】)との記載及び図1からみて、制振装置において、回転慣性機構と第1,第2取付部材24,26とは直列に設置されているといえる。

これらの記載事項及び図示内容を総合し、本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「建物2を制振する制振装置であって、
建物2の全層に、層間変形によって作動して錘32の回転により回転慣性力を発生する回転慣性機構を設置するとともに、該回転慣性機構と直列に第1,第2取付部材24,26を設置し、回転慣性機構と第1,第2取付部材24,26とで新たな共振点を形成し、第1,第2取付部材24,26の剛性を建物2の剛性の1割とした条件下で、最下層の制振装置の回転慣性機構の質量を1次振動数に対して調整し、中間層の回転慣性機構の質量は3次振動数に対して調整し、最上層の回転慣性機構の質量は2次振動数に対して調整して、より大きな制振効果を実現する制振装置。」

2 甲第3号証
甲第3号証は、本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物であり、図面とともに、次の記載がある。

(1)「筆者らは、これら粘性ダンパーにおける変位応答と加速度応答のトレードオフの関係(図1)を改善する目的で図2に示すような粘性減衰要素に慣性質量要素を並列配置したダンパー(以下MVDダンパーと呼ぶ)を提案する。」(第91頁左欄第16?20行)

(2)「2.ダンパー減衰力
ここでは、笠井ら^(2))により提案されている貯蔵剛性および損失剛性を用いて1質点系におけるMVDダンパーの応答特性について検討する。
まず、ここで扱うダンパーの減衰力は速度に正比例するものとし、荷重と変位の関係は以下の通りとする。

ここでF_(d)(t)、u_(d)(t)は、それぞれダンパーの荷重、変位を表す。また、C_(d)、M_(d)は、それぞれ粘性ダッシュポットの粘性係数、MVDダンパーの慣性質量を表す(図2)。」(第91頁右欄第1?11行)

(3)上記(2)の式(1b)と図2(b)に示されたMVDダンパーの構造とをあわせみると、慣性質量要素が、変位u_(d)(t)の時間に関する二階微分すなわち加速度に比例した力を生じることが分かる。

3 甲第9号証
甲第9号証は、本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物であり、図面とともに、以下の記載がある。

(1)「1.はじめに
筆者らは、その6までの報告で粘性減衰要素に慣性質量要素を並列に配置したMVDダンパーを1自由度系に適用した場合の応答特性を慣性質量要素のない従来の粘性ダンパーを適用した場合との比較により明らかにした。
また、10質点系のモデルを対象としてダンパー支持部材の剛性の大小が応答に与える影響について検討し、支持部材剛性がフレーム剛性に対してある程度の大きさを有していればダンパー支持部材の剛性は剛として扱いうることを示した。
本論では、ダンパー支持部材剛性の影響は単にダンパーの減衰力を低減させるだけでなく、支持部材がある適度な剛性を有する場合には支持部材を剛とした場合と比較してより応答を低減できることを示す。さらに、応答を低減するうえで最適なダンパー支持部材剛性、ダンパー粘性減衰力、ダンパー慣性質量の関係を明らかにする。」(第727頁左欄第1?16行)

(2)「2.MVDダンパーをもつ1自由度系の最適無次元化マックスウェル緩和時間

図1に示すような弾性バネ付きのMVDダンパー(以後MVEDダンパーと呼ぶ)をもつ1自由度系が加振力p_(0)、振動数ωの調和加振を受けるときの運動方程式は次式で与えられる。

ここで、mとm_(r)はそれぞれ系の主質量とMVEDダンパーの質量を、kとk_(b)はそれぞれ系の剛性とMVEDダンパーの弾性バネ剛性を、cとc_(d)はそれぞれ系の粘性減衰係数とダンパーの粘性減衰係数を表す。系の内部粘性減衰cを無視した場合の系の動的応答倍率R_(d)は次式で与えられる。

ここで、U:変位uのフーリエ変換、ω_(n)=√k/mは系の固有振動数、ω_(r)=√k_(b)/m_(r)はダンパーの固有振動数、β=ω_(r)/ω_(n)はダンパーの固有振動数と系の固有振動数の比、μ=m_(r)/mはダンパーの質量と系の質量との比、γ=ω/ω_(n)は加振振動数と系の固有振動数との比をそれぞれ表す。また、λ=ω_(n)(c_(r)/k_(b))(審決注:「c_(r)」は「c_(d)」の誤記と認める。)は無次元化マックスウェル緩和時間(normalizedmaxwellrelaxationtime)を表す。以下、文献(1)及び(2)を参考にして、(57)式で与えられる共振曲線のピーク値を最小化する無次元化マックスウェル緩和時間を求める。
(57)式により表される系の共振曲線が交差する2点の横座標は、次式で与えられる。

さらに、2つの交点の縦座標が等しくなる最適な振動数比β^(*)は次式で与えられる。


γ_(1)とβ^(*)を(57)式に代入することにより、λを変化させた場合にも共振曲線が必ず通過する2つの交点に共通な縦座標が次式により与えられる。


また、共振曲線が2つの交点で極大値をとるときのλは、(61)、(62,a)、(62,b)式で与えられる。


(58)式で与えられるγ_(1)^(2)、(59)式で与えられるβ*、および(60)式で与えられるR_(d)(γ_(1),β^(*))を(62,a)、(62,b)に代入し、最終的に(61)式より極大値を与える無次元化マックスウェル緩和時間の一方の解λ_(1)^(2)は次式で与えられる。

同様にして、λ_(2)^(2)は次式により与えられる。

最後に、文献(1)の定義にならいλ_(1)^(2)とλ_(2)^(2)の平均値を最適無次元化マックスウェル緩和時間(optimumnormalizedmaxwellrelaxationtime)λ_(opt)と定義する。


」(第727頁左欄第17行?第728頁左欄7行)

(3)「3.最適無次元化緩和時間をもつ系の応答特性
質量比μ=0.2に対する最適無次元化マックスウェル緩和時間を有する系の共振曲線を図3に示す。緩和時間がゼロの場合は、粘性減衰が無い場合に相当する。図より無次元化マックスウェル緩和時間を最適化することにより、系の応答のピーク値を大幅に低減できることがわかる。また、最適無次元化マックスウェル緩和時間に対する共振曲線は、共振振動数よりも低振動数側で極小値をとる共振曲線と高振動数側で極値をとる共振曲線とのちょうど平均的な応答倍率を示し、その2つのピーク値はほぼ等しい値となっている。」(第728頁左欄第8?18行)

(4)「4.まとめ
慣性質量効果を利用した粘性ダンパーにそれを支持する弾性バネを考慮したMVEDダンパーの1自由度系の応答特性を共振曲線などにより検討した。その結果、バネ剛性を考慮した場合には剛とした場合に比べ系の応答を大幅に低減できることを明らかにした。また、MVEDダンパーをもつ系の応答は無次元化マックスウェル緩和時間で支配されることを示し、系の応答倍率を最小とできる最適無次元化マックスウェル緩和時間を示した。」(第728頁左欄第34?41行)

(5)上記(2)ないし(4)によれば、甲第9号証には、弾性バネ付きMVDダンパー(図1)をもつ1質点系モデル(図2)が1自由度の加振力P_(0)を受けるとき、系の無次元化マックスウェル緩和時間を最適化することによって、系の応答のピーク値を大幅に低減できることが記載され、その最適無次元化マックスウェル緩和時間を求める条件として、ダンパーの固有振動数と系の固有振動数の比β^(*)=ω_(r)/ω_(n)を1/√(1-μ)とすることが記載されている((59)式)。ここで、μ=m_(r)/mは、ダンパーの質量m_(r)と系の質量mとの比で定数であり、ω_(n)は系の固有振動数、ω_(r)はダンパーの固有振動数であるから、(59)式は、ダンパーの固有振動数と系の固有振動数とを特定の関係とすることを示している。

ただし、ダンパーの質量m_(r)と系の質量mは、通常0<m_(r)<mの関係にあるから、μ(=m_(r)/m)は、0<μ<1となる。
そして、0<μ<1の条件で1/√(1-μ)>1となるから、ダンパーの固有振動数ω_(n)と系の固有振動数ω_(r)の比β^(*)=ω_(r)/ω_(n)を1/√(1-μ)とする場合、ω_(r)/ω_(n)>1となる。

つまり、最適無次元化マックスウェル緩和時間の条件を満足するように設定すると、ダンパーの固有振動数ω_(r)は、系の固有振動数ω_(n)より大きくなる。

4 甲第10号証
甲第10号証は、本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物であり、図面とともに、以下の記載がある。なお、丸付き数字は算用数字で表記した。

(1)「1.はじめに
ここでは、時刻歴応答解析により免震建物および制振建物に弾性バネ付きMVDダンパー(以下、MVEDダンパー)を適用した場合の応答低減効果を示す。その際、ダンパーの弾性バネ剛性およびダッシュポッドの粘性係数の大小が建物応答に与える影響について考察を行う。」(第729頁左欄第1?6行)

(2)「2.時刻歴応答解析条件
本解析では、図1に示すようにMVEDダンパーを免震建物の免震層に設置して減衰装置として利用した場合と図2に示すように中層建物の各階に設置して制振装置として利用した場合の2ケースについて検討を行う。それぞれ、建物のモデルはパッシブ制振構造設計・施工マニュアル^(1))の制振構造テーマストラクチャーのモデルとする。免震建物の上部構造はマニュアルの4階建て、在来タイプとし、制振建物は10階建て、トリムタイプとする。表1に各層の重量と剛性、表2に建物の固有周期を示す。建物の復元力特性は弾性とし、免震建物モデルの免震層の水平剛性は上部構造を剛体と考えた場合に周期が6秒となるような剛性を与え、線形弾性とする。入力地震動はBCJ-L2、解析時間は120秒とする。建物の内部粘性減衰は剛性比例型とし、建物の1次固有周期に対して1%の減衰を設定する。

表2(省略)
MVEDダンパーの慣性質量、ダッシュポッド粘性係数、弾性バネ剛性はそれぞれ加速度、速度、変位に対して線形弾性とし、各パラメータの設定は以下の通りとする。」(第729頁左欄第7?右欄第3行)

(3)「[制振建物モデルのダンパー特性]
はじめに、各階のダンパーの付加質量を(その4)^(2))の手法に基づき各階の剛性に比例して設定する。得られた各層の付加質量から文献3に示す方法にて広義節点質量sMuおよび広義慣性接続要素質量sM'を算出し、質量比μ(=sM'/sMu)を求める。続いて、最適な振動数比β^(*)に対応する各階のダンパーの弾性バネ剛性K_(bi)を求める。さらに、最適無次元化マックスウェル緩和時間より各階のダッシュポッドの減衰係数C_(di)を求める。このようにして求めたパラメータを表4に示す。」(第729頁右欄第11?20行)


(4)「4.まとめ
MVEDダンパーを免震建物および制振建物に適用した場合の時刻歴応答解析を行った結果、以下のことが分った。
1 MVEDダンパーの弾性バネ剛性、ダッシュポッド粘性係数、慣性質量の各パラメータを最適無次元化マックスウェル緩和時間の条件を満足するように設定すると、建物の加速度応答、変位応答を効果的に低減することができる。」(第730頁右欄第1?8行)

(5)甲第10号証には、上記(1)及び(2)によれば、中層建物の各階に弾性バネ付きMVDダンパーを設置して制振装置として利用すること、図2によれば、弾性バネ付きMVDダンパーの慣性質量と弾性バネとを直列に設置すること、上記(3)及び(4)によれば、弾性バネ付きMVDダンパーの弾性バネ剛性、ダッシュポッド粘性係数、慣性質量の各パラメータを最適無次元化マックスウェル緩和時間の条件を満足するように設定することがそれぞれ記載されている。

ここで、MVDダンパーとは、前記「2 甲第3号証」の記載事項を参酌すると、粘性減衰要素に慣性質量要素を並列配置したダンパーであり、慣性質量要素が慣性質量を備え、加速度に比例した力を生じるものといえる。

(6)図2及び表4には、制振建物モデルの1ないし10層の全ての層に弾性バネ付きMVDダンパーを設置し、各層毎に、慣性質量、弾性バネ剛性、粘性係数を定めることが記載されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合し、本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第10号証には、次の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されている。

「中層建物の各階に弾性バネ付きMVDダンパーを設置した制振装置において、弾性バネ付きMVDダンパーの慣性質量と弾性バネとを直列に設置し、弾性バネ付きMVDダンパーの弾性バネ剛性、ダッシュポッド粘性係数、慣性質量の各パラメータを最適無次元化マックスウェル緩和時間の条件を満足するように設定した制振装置。」

5 甲第13号証
甲第13号証は、本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物であり、図面(特に、図2(c)、図4参照。)とともに、以下の記載がある。

(1)「【0028】このような位相調整については類似する技術として、図2(c)にモデルで示したような、いわゆるTMD法が知られている。このTMD法は、構造物2に設置されてその振動を減衰させるダンパ19を、当該構造物2にバネ20を介して搭載した付加質量体21に連結するようにし、この付加質量体21が構造物2の振動に対応して振動することで生じる慣性力をダンパ19の反力として利用し、これによりダンパ19の減衰力を構造物2に作用させて制振するものである。そして、構造物2に一括して搭載したダンパ19、バネ20および付加質量体21で構成した振動系22の固有振動周波数を、構造物2の固有振動周波数に一致させるようにして、当該構造物2の振動伝達関数のピークにおいて制振効果を得るようにしている。この際、付加質量体21の質量を適宜に設定することで、この振動系22の固有振動周波数を調整しており、これが付加質量体21の一つの役割となっている。
【0029】ところで、このTMD法にあっては、ダンパ19を構造物2に搭載する構成であり、この構造物2に設置したダンパ19を機能させるための反力をいかに得るかという観点から当該付加質量体21が採用されたもので、この付加質量体21の第一の役割は、地震時などに構造物2の振動に伴って振動する付加質量体21の慣性力を、ダンパ19の減衰力の反力として利用することにある。したがって、このTMD法では要するに、構造物2の振動を減衰させるための振動系22全体を構造物2に搭載することが必須であり、かつまたそのように構成しなければ制振効果を得ることができない。したがって、付加質量体21は必要的に構造物2に搭載されている。このようにTMD法では、付加質量体21の機能として、振動系22の固有振動周波数調整機能を有するものの、本来的には、振動する構造物2に必ず搭載され、その慣性力を、ダンパ19に作用させる機能が要求される。」

(2)「【0039】この考え方をさらに押し進めて構成された装置構成が図4に示されている。図示するように、この実施例では、上記テコ23の支持軸24が、地盤11に回転自在に支持された、相当の外径を有する回転軸25として構成されるとともに、この回転軸25には、これに関して点対称に径方向外方へ延出させて複数のアーム26が設けられ、これらアーム26の先端それぞれに付加質量体17が設けられている。そして地盤11に固定された複数のダンパ13のピストンロッド13bが、いずれかの付加質量体17にそれぞれ連結されている。また回転軸25には、引張材14a,14bが巻き掛けられている。そして引張材14a,14bが左右方向に引張されると回転軸25が相当の揺動回転角度で回され、これによりアーム26を介して付加質量体17が振り動かされるようになっている。本実施例にあっても、引張材14a,14bが巻き掛けられる回転軸25の回転半径と、アーム26の回転半径との比が、上記のテコ比に相当し、この回転半径比に応じて引張材14a,14bの運動に対し付加質量体17の運動を増幅でき、回転半径比の2乗を掛けた質量を用いた効果を確保できて、小さな質量の付加質量体17で大きな固有振動周波数調整能力を得ることができる。また図示のように構成すれば、複数の付加質量体17を回転軸25の回りにまとめて配列でき、かつ各付加質量体17もさらに軽量化できるので、装置をコンパクト化できて省スペース化や、設備作業を容易化することができる。また本実施例にあっても、アーム26に接続した付加質量体17にダンパ13を連結しているので、小さな能力のダンパ13を用いて大きな振動減衰効果を得ることができる。」

(3)「【0055】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る制振装置および制振方法によれば、実際上引張材が有する相当の弾性作用に起因して、ダンパからの減衰力を構造物に伝達する際に生じてしまう位相遅れを、この付加質量体によって修正することができる。これにより、付加質量体をダンパと引張材とからなる振動系に備えることによって、その固有振動周波数を、構造物自体の固有振動周波数に一致させることができて、構造物の揺れが最も顕著となる振動伝達関数のピークにおいてダンパの減衰力を位相遅れなく構造物に伝達することができ、優れた制振効果を得ることができる。」

第7 当審の判断
1 本件訂正発明1及び2の用語について
(1)「付加バネ」の解釈
ア 田中正躬編「JIS ばね用語 JIS B 0103:2012
(JSMA/JSA) 平成24年5月21日改正 日本工業標準調査会審議」(平成24年5月一般財団法人日本規格協会発行)においては、「ばね」につき、
「たわみを与えたときにエネルギーを蓄積し、それを解除したとき、内部に蓄積されたエネルギーを戻すように設計された機械要素。」(「JISによるばねの定義」)と説明されており、当業者は、「ばね(バネ)」という用語に接したとき、通常は、JISによるばねの定義を想起するものと考えられる。

この点に鑑みると、JISによるばねの定義に該当するものが、当業者によって、通常、技術的に「ばね」として認識されるもの(以下「技術常識としてのばね」という。)というべきである。

イ(ア)本件訂正明細書中、本件発明の付加バネの意義を端的に説明する記載は、見られない。
(イ)本件訂正明細書には、本件発明の実施形態に係る本件振動低減機構につき、「構造物(図示例は3階建ての建物)の任意の層に、層間変位が生じた際に作動して錘を回転させることにより所定の回転慣性質量Ψ_(0)を生じる回転慣性質量ダンパー1を設置するとともに、その回転慣性質量ダンパー1に対して付加バネ2を直列に設置することを主眼とする。」(【0007】)との記載があり、さらに、「回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数」(本件訂正発明1及び2)について、「固有角振動数Ωは回転慣性質量Ψ_(0)および付加バネ2のバネ定数k_(0)から,Ω^(2)=k_(0)/Ψ_(0)なる関係で定まる」(【0012】)旨の記載がある。
これらの記載からは、付加バネが、技術常識としてのばねとは異なる特性を備えていることは認められず、本件訂正明細書中、他に、そのような特性の存在をうかがわせる記載も見当たらない。

ウ 以上によれば、本件訂正発明1及び2の付加バネは、技術常識としてのばねを指すものと解するのが相当である。

(2)「同調」の解釈
ア 長倉三郎ほか編「岩波 理化学辞典 第5版」(平成10年4月岩波書店発行)においては、「同調」につき、「受信機などで共振回路の共振周波数を目的の周波数に合わせること」と説明されており、同説明によれば,一般的な理化学用語としての「同調」は、「一致」を意味するものと解される。
イ 本件訂正明細書中、本件発明の「同調」の意義を端的に説明する記載は、見られない。
しかしながら、本件発明の「回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を前記多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させ」(本件訂正発明1及び2)につき、本件訂正明細書には、以下の記載が存在する。
「【0012】
そして、本実施形態においては、上記の回転慣性質量ダンパー1とそれに直列に設置される付加バネ2とにより定まる固有振動数を、構造物全体の所望の固有振動数に同調させるようにそれらの諸元を適正に設定することにより、その振動数での構造物の応答を大きく低減させることができるものである。
すなわち、一般に質量mとバネkによる振動系における固有角振動数ωは
ω^(2)=k/m
なる関係で定まるのと同様に本実施形態のような回転慣性質量ダンパー1と付加バネ2とによる振動系においては、その固有角振動数Ωは回転慣性質量Ψ_(0)および付加バネ2のバネ定数k_(0)から
Ω^(2)=k_(0)/Ψ_(0)
なる関係で定まる。したがって、その固有角振動数Ωをたとえば構造物全体の固有1次角振動数ω_(1)に一致させれば、つまり
Ω^(2)=k_(0)/Ψ_(0)=ω_(1)^(2)
の関係が成り立つようにΨ_(0)およびk_(0)の値を設定すれば、従来のTMDを設置した場合と同様に、構造物全体の固有1次モードの振動に対する応答を大きく低減させることができ、特に風揺れに対する充分な低減効果が得られる。
【0013】
あるいは、固有角振動数Ωを構造物全体の固有2次角振動数ω_(2)と一致させることでも良く、その場合は
Ω^(2)=k_(0)/Ψ_(0)=ω_(2)^(2)
となるようにΨ_(0)およびk_(0)の値を設定すれば,固有2次モードの振動に対する応答を大きく低減させることができる。
同様に、必要であればさらに高次の固有角振動数に同調させたり、機械振動のような特定の振動数を対象とする場合にはその振動数に同調させることにより、目的とする振動数との共振による応答増大を有効に防止することができる。」
これらの記載内容は、「回転慣性質量ダンパー1の回転慣性質量Ψ_(0)と付加バネ2のバネ定数k_(0)とにより、Ω^(2)=k_(0)/Ψ_(0)として定まる固有角振動数Ω」を、構造物全体の固有1次角振動数ω_(1)、固有2次角振動数ω_(2)、更に高次の固有角振動数等に「一致」させることによって、その振動数での構造物の応答を低減させるというものである。

ウ 以上によれば、本件訂正発明1及び2の「同調」とは、「一致」を意味するものと解される。

2 無効理由1及び2について
(1)本件訂正発明1
まず、本件訂正発明1を検討する。

ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「建物2」は前者の「多層構造物」に相当し、以下同様に、「制振する」は「振動を低減する」に、「制振装置」は「振動低減機構」にそれぞれ相当する。
そして、後者の「錘32の回転により回転慣性力を発生する回転慣性機構」に関して、甲第1号証には、
「建物2に振動が発生し、上・下階に層間変位が発生すると、第1,第2取付部材24,26が・・・それぞれ軸方向に沿って逆方向に相対移動し、これに伴い第1,第2取付部材24,26のラック28a,28bに噛合したピニオン30が付加質量のフライホイール36と錘32と共に一体に回転する。従って、上記ピニオン30とフライホイール28と錘32とからなる回転質量体は回転慣性機構を構成し、建物2の層間変位に伴って回転慣性力を発生する。そして、この回転慣性力を反力となして建物2を制振することができる。」(段落【0018】及び段落【0019】)との記載があり、この記載と前者の「回転慣性質量ダンパー」に関する
「構造物(図示例は3階建ての建物)の任意の層に、層間変位が生じた際に作動して錘を回転させることにより所定の回転慣性質量Ψ_(0)を生じる」(段落【0007】)
「2点間の相対加速度に比例した力を生じる質量効果」(段落【0005】)
「回転慣性質量ダンパー1の変位方向の慣性力(制御力)Pは・・・一般的なバネが相対変位にバネ定数を乗じて負担力とするのと同様に、相対加速度に回転慣性質量を乗じて負担力とすることを意味しており、相対変位ではなく相対加速度を乗じる点で通常のバネによる場合と大きく異なる」(段落【0009】)との記載を合わせみると、
後者の「錘32の回転により回転慣性力を発生する回転慣性機構」は、その構造及び機能からみて、前者の「錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパー」に相当する。

なお、被請求人は、後者の「回転慣性機構」に関して、「甲第1号証に記載の回転慣性機構は、油圧式ダンパー等を備えた制振装置を前提として建物の変形が油圧式ダンパー等に伝達される際の位相遅れを調整することによって、油圧式ダンパー等の制振効果をより高めるために設置されているものである・・・甲第1号証の発明の回転慣性機構と本件訂正発明1及び2の回転慣性質量ダンパーとは期待される機能が異なり、当然作用が相違している。」(前記「第5」の「1(3)」)と主張するが、後者の「回転慣性機構」は、前述のとおり、前者の「回転慣性質量ダンパー」に相当するから、当該主張は採用できない。

そして、後者の「第1,第2取付部材24,26」は、前者の「付加バネ」と、付加部材という点に限れば、一致する。

以上を総合すると、両者は、
「多層構造物の振動を低減する機構であって、
多層構造物に、層間変形によって作動して錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを設置し、該回転慣性質量ダンパーと直列に付加部材を設置してなる振動低減機構。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
前者は、多層構造物の「全層を除くの任意の層」に回転慣性質量ダンパーを設置するのに対し、
後者は、建物2の全層に回転慣性機構を設置する点。

[相違点2]
前者は、付加部材が「付加バネ」であって、「回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を前記多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させ」るのに対し、
後者は、付加部材が「第1,第2取付部材24,26」であって、「回転慣性機構と第1,第2取付部材24,26とで新たな共振点を形成し、第1,第2取付部材24,26の剛性を建物2の剛性の1割とした条件下で、最下層の制振装置の回転慣性機構の質量を1次振動数に対して調整し、中間層の回転慣性機構の質量は3次振動数に対して調整し、最上層の回転慣性機構の質量は2次振動数に対して調整して、より大きな制振効果を実現する」点。

イ 判断
(ア)新規性について
本件訂正発明1と甲1発明とは、相違点1及び2において相違するから、両者は同一ではない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明と同一ではなく、特許法第29条第1甲第3号に該当しない。

(イ)相違点1について
甲第1号証には、「本発明は、建物の上下階間に生じる層間変位を質量体の回転または揺動等の運動に変換して、その慣性力によって建物を制振するようにした、建物層間に設置する慣性力を利用した制振装置」(段落【0001】)との記載、「本発明の制振装置は、基本的には、建物2の上下階の層間に設けられ」(段落【0014】)との記載、前記した「建物2に振動が発生し、上・下階に層間変位が発生すると、第1,第2取付部材24,26が・・・それぞれ軸方向に沿って逆方向に相対移動し、・・・建物2の層間変位に伴って回転慣性力を発生する。そして、この回転慣性力を反力となして建物2を制振することができる。」(段落【0018】及び段落【0019】)との記載、「最下層の制振装置の回転慣性機構の質量を1次振動数に対して調整し、中間層の回転慣性機構の質量は3次振動数に対して調整し、最上層の回転慣性機構の質量は2次振動数に対して調整し、且つ各層の制振装置のダンパーには、それぞれに定点理論の最適ダンパーを配した結果の伝達関数を表したものである。このように、全層を特定の次数に調整してより大きな制振効果を実現することも可能である。」(段落【0023】)との記載がある。
これらの記載からみて、甲1発明が、建物の上下階間に生じる層間変位に着目したものであることは明らかである。

そして、甲1発明は、回転慣性機構と第1,第2取付部材24,26とを最下層、中間層、及び最上層に設置して、それぞれ異なる振動数に対して調整することによって、より大きな制振効果を実現するものである(段落【0023】)。

そうすると、甲1発明の回転慣性機構と第1,第2取付部材24,26とは、各階毎に制振効果を生じるものであることがわかる。

また、甲第1号証には、回転慣性機構と第1,第2取付部材24,26とを全層に必ず設置しなければならないとする記載や示唆がないから、甲1発明の基礎となる技術思想は、回転慣性機構と第1,第2取付部材24,26とを全層に設置することを前提としたものではない。

一方、本件訂正発明1の「全層を除くの任意の層」について、発明の詳細な説明からは、「任意の層」から「全層を除く」ことによる格別の効果を確認できない。

そうしてみると、甲1発明の回転慣性機構と第1,第2取付部材24,26とが各階毎に制振効果を生じることを把握した当業者であれば、甲1発明において、建物2の「全層を除くの任意の層」に回転慣性機構及び第1,第2取付部材24,26を設置することは、容易に想到し得たことである。

したがって、相違点1は当業者が容易に想到し得たと認められる。

(ウ)相違点2について
甲1発明の第1取付部材24及び第2取付部材26について検討する。

甲1発明に係る従来の技術の問題点として、
「ダンパー取付部材にはその剛性に限界があり、ブレース10をダンパー取付部材とした場合でも、一般的には建物自体の層剛性の1割から2割程度の剛性にしかならない場合が多い。このような場合にあっては、ダンパー12には十分な振動エネルギーが伝わらず、結果として建物2の減衰定数を数%上昇させる程度の制振効果に止まっていた」(段落【0004】)こと、
「十分な制振効果を得るためには、ダンパー12の取付部材の剛性を上げることが必要となり、そのためには大きな部材を用いるか、あるいはダンパー12の設置箇所を増やさねばならず、そうすると居住スペースを減らす結果となってしまい、建物平面利用計画上の制約から限界に突き当たっていた」(段落【0005】)ことが挙げられている。

以上によれば、十分な制振効果を得るという観点からは、ダンパー取付部材が一定程度以上の剛性を備えていることを要すると認められる。

また、甲1発明の作動状況については、
建造物の上下階間に層間変位が発生すると、第1取付部材24及び第2取付部材26並びにこれらにそれぞれ設けられたラック材28a及び28bは、それぞれ軸方向に沿って逆方向に相対移動すること、
これに伴って、ラック材28a及び28bに噛合したピニオン30が、その端面に取り付けられたフライホイール36及びその外周面に設けられた錘32と共に、一体に回転すること、
ラック・ピニオン機構は、ラック材28a及び28bの往復直進運動をピニオン30の往復揺動回転運動に変換するものといえること、
その結果、回転慣性力が発生し、これが反力となって建物2を制振すること(段落【0018】及び段落【0019】)が認められる。

以上によれば、第1取付部材24及び第2取付部材26が受けた層間変位の力は、ラック・ピニオン機構を通じて、最終的には回転慣性力に変換されるといえる。この点に鑑みると、第1取付部材24及び第2取付部材26には、上記層間変位の力を可能な限り吸収することなく、相対移動(往復直進運動)に用いることができるよう、JISによるばねの定義の本質的要素と解される「たわみ」のない材質が求められる。

他方、本件証拠上、甲1制振装置において、第1取付部材24及び第2取付部材26のいずれについても、JISによるばねの定義に係る機能、すなわち、「たわみを与えたときにエネルギーを蓄積し、それを解除したとき、内部に蓄積されたエネルギーを戻す」を果たしていることは、うかがわれない。

以上によれば、第1取付部材24及び第2取付部材26は、JISによるばねの定義に該当せず、したがって、技術常識としてのばねではない。

また、「たわみ」のないことが求められる第1取付部材24及び第2取付部材26を、「たわみ」が与えるられる「ばね」に置換することは、合理的ではない。

したがって、相違点2は当業者が容易に想到し得たということができない。
(エ)進歩性について
以上のとおり、相違点1は当業者が容易に想到し得たと認められるが、相違点2は当業者が容易に想到し得たということができないから、本件訂正発明1は、当業者が甲1発明及び甲第13号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、本件訂正発明1は特許法第29条第2項に違反しない。

ウ 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1発明と同一ではなく、当業者が甲1発明及び甲第13号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえないから、本件訂正発明1についての特許は、無効理由1及び2によっては無効とすることはできない。


(2)本件訂正発明2
次に、本件訂正発明2を検討する。

ア 対比・判断
(ア)新規性について
甲第1号証に記載された発明の「第1,第2取付部材24,26の剛性を建物2の剛性の1割とした条件下で、最下層の制振装置の回転慣性機構の質量を1次振動数に対して調整し、中間層の回転慣性機構の質量は3次振動数に対して調整し、最上層の回転慣性機構の質量は2次振動数に対して調整」することは、本件訂正発明2の「機構の諸元設定方法」であって「回転慣性質量ダンパー」と付加部材(付加バネ)の「諸元を設定すること」に相当する。

そうすると、本件訂正発明2と甲1発明とは、前記「(1)イ(ア)」と同様に、相違点1及び2において相違するから、両者は同一ではない。
したがって、本件訂正発明2は、甲1発明と同一ではなく、特許法第29条第1甲第3号に該当しない。

(イ)進歩性について
前記「(1)イの(イ)及び(ウ)」のとおり、相違点1は当業者が容易に想到し得たと認められるが、相違点2は当業者が容易に想到し得たということができないから、本件訂正発明2は、当業者が甲1発明及び甲第13号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、本件訂正発明2は特許法第29条第2項に違反しない。

ウ 小括
以上のとおり、本件訂正発明2は、甲1発明と同一ではなく、当業者が甲1発明及び甲第13号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえないから、本件訂正発明2についての特許は、無効理由1及び2によっては無効とすることはできない。

(3)まとめ
よって、本件訂正発明1及び2は、甲1発明と同一ではなく、当業者が甲1発明及び甲第13号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法第29条第2項に違反するものではなく、本件訂正発明1及び2についての特許は、無効理由1及び2によっては無効とすることはできない。

3 無効理由3について
(1)本件訂正発明1
まず、本件訂正発明1を検討する。

ア 対比
本件訂正発明1と甲10発明とを対比すると、後者の「中層建物」は前者の「多層構造物」に相当し、以下同様に、「中層建物の各階に弾性バネ付きMVDダンパーを設置した制振装置」は「多層構造物の振動を低減する機構」及び「振動低減機構」に相当し、「MVDダンパー」は、加速度に比例した力を生じるものであり、しかも、甲第10号証の表4からみて、各階毎の変形によって作動することが明らかであるから、「層間変形によって作動して錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパー」に相当し、「弾性バネ」は「付加バネ」に、「弾性バネ付きMVDダンパーの慣性質量と弾性バネとを直列に設置」することは「回転慣性質量ダンパーと直列に付加バネを設置」することにそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「多層構造物の振動を低減する機構であって、
多層構造物に、層間変形によって作動して錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを設置するとともに、該回転慣性質量ダンパーと直列に付加バネを設置する振動低減機構。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点3]
前者は、多層構造物の「全層を除く任意の層」に回転慣性質量ダンパーを設置するのに対し、
後者は、中層建物の「各階」に弾性バネ付きMVDダンパーを設置する点。

[相違点4]
前者は、「回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を前記多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させてなる」のに対し、
後者は、「弾性バネ付きMVDダンパーの弾性バネ剛性、ダッシュポッド粘性係数、慣性質量の各パラメータを最適無次元化マックスウェル緩和時間の条件を満足するように設定した」点。

イ 判断
そこで、各相違点を検討する。

(ア)相違点3について
甲第9号証には、弾性バネ付きMVDダンパーをもつ1質点系モデルが1自由度の加振力を受けるとき、系の無次元化マックスウェル緩和時間を最適化することによって、系の応答のピーク値を大幅に低減できることが記載されている。

甲10発明の弾性バネ付きMVDダンパーは、各階毎に変形によって作動することは明らかであるから、甲第9号証に記載された事項を参酌すると、甲10発明の弾性バネ付きMVDダンパーは、各階毎に制振効果を生じるものであることがわかる。

一方、本件訂正発明1の「全層を除くの任意の層」について、発明の詳細な説明からは、「任意の層」から「全層を除く」ことによる格別の効果を確認できない。

そうしてみると、甲10発明の弾性バネ付きMVDダンパーが各階毎に制振効果を生じることを把握した当業者であれば、甲10発明において、中層建物の「全層を除くの任意の層」に弾性バネ付きMVDダンパーを設置することは、容易に想到し得たことである。

したがって、相違点3は当業者が容易に想到し得たと認められる。

(イ)相違点4について
甲第9号証には、最適無次元化マックスウェル緩和時間を求める条件として、ダンパーの固有振動数と系の固有振動数とを特定の関係とすることが示されており(前記「第6」の「3(5)」)、甲第9号証に記載された事項に照らせば、甲第10号証に記載された発明の「弾性バネ付きMVDダンパーの弾性バネ剛性、ダッシュポッド粘性係数、慣性質量の各パラメータを最適無次元化マックスウェル緩和時間の条件を満足するように設定する」ことは、弾性バネ付きMVDダンパーの固有振動数と中層建物の固有振動数とを特定の関係とすることを意味していると解される。

しかしながら、最適無次元化マックスウェル緩和時間の条件を満足するように設定すると、「ダンパーの固有振動数ωrは、系の固有振動数ωnより大きくなる」ことから、「回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数」は「多層構造物の固有振動数」より大きくなることとなり、「同調」することはない。

そうであれば、相違点4は、甲10発明及び甲第9号証に記載された事項に基いて、容易に導き出すことはできない。

したがって、相違点4は当業者が容易に想到し得たということができない。
(ウ)まとめ
以上のとおり、相違点3は当業者が容易に想到し得たと認められるが、相違点4は当業者が容易に想到し得たということができないから、本件訂正発明1は、当業者が甲10発明及び甲第9号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、本件訂正発明1は特許法第29条第2項に違反しない。

ウ 小活
以上のとおり、本件訂正発明1は、当業者が甲10発明及び甲第9号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえないから、本件訂正発明1についての特許は、無効理由3によっては無効とすることはできない。

(2)本件訂正発明2
次に、本件訂正発明2を検討する。
ア 対比・判断
甲10発明の「弾性バネ付きMVDダンパーの弾性バネ剛性、ダッシュポッド粘性係数、慣性質量の各パラメータを最適無次元化マックスウェル緩和時間の条件を満足するように設定」することは、本件訂正発明2の「機構の諸元設定方法」であって「回転慣性質量ダンパーと付加バネの諸元を設定すること」に相当する。

そうすると、本件訂正発明2と甲第10号証に記載された発明との相違点は、前記「(1)ア」の[相違点3]及び[相違点4]と同一であり、前記「(1)イの(ア)、(イ)」のとおり、相違点3は当業者が容易に想到し得たと認められるが、相違点4は当業者が容易に想到し得たということができないから、本件訂正発明2は、当業者が甲10発明及び甲第9号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、本件訂正発明2は特許法第29条第2項に違反しない。

イ 小活
以上のとおり、本件訂正発明2は、当業者が甲10発明及び甲第9号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえないから、本件訂正発明2についての特許は、無効理由3によっては無効とすることはできない。

(3)まとめ
よって、本件訂正発明1及び2は、当業者が甲10発明及び甲第9号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえないから、特許法第29条第2項に違反するものではなく、本件訂正発明1及び2についての特許は、無効理由3によっては無効とすることはできない。

第8 むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件訂正発明1及び2についての特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
振動低減機構およびその諸元設定方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば高層建物等の多層構造物の振動を低減させるための振動低減機構、およびその諸元設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の振動を低減するための機構として、たとえば特許文献1に示されているような所謂チューンド・マス・ダンパー(Tunned Mass Damper:TMD)が知られている。これは、構造物に付加バネを介して付加質量を接続し、それらの付加バネと付加質量により定まる固有振動数を構造物の固有振動数に同調させることにより、構造物の共振点近傍における応答を低減するものである。
【特許文献1】特開昭63-156171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来一般のTMDは大きな振動低減効果を得るためには付加質量を大きくする必要があり、必然的に大型大重量とならざるを得ないが、構造物にあまり大きな質量を付加することは好ましくないし、TMDが大型大重量になるほど設置位置や設置スペースに関しての制約も大きくなるので、通常は付加質量を構造物の全質量の1?2%程度とすることが現実的であり、したがって振動低減効果にも自ずと限界がある。
また、従来一般のTMDは建物の頂部に設置することが効果的であるので、屋上等に設置スペースを確保する必要があるし、それを設置するうえでは建築計画上の制約を受けることも多い。
【0004】
上記事情に鑑み、本発明は原理的にはTMDと同様に機能するものの、従来一般のTMDのように過大な付加質量を必要とせず、また設置位置に対する制約や設置箇所数も少なく、特に高層建物等の多層構造物に適用して充分な振動低減効果が得られる有効な振動低減機構とその諸元設定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の振動低減機構およびその諸元設定方法は、多層構造物の全層を除く任意の層に、層間変形によって作動して錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを設置するとともに、該回転慣性質量ダンパーと直列に付加バネを設置し、回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を前記多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させるようにしたものである。
なお、回転慣性質量とは、2点間の相対加速度に比例した力を生じる質量効果であり、慣性接続要素と呼称されることもある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来一般のTMDにおける付加質量に代えて、小質量の錘を回転させる構成の小形軽量でコンパクトな回転慣性質量ダンパーと、それに直列した小さな付加バネを設置するのみで、錘の実際の質量の10?1000倍もの大きな付加質量を付加したことと等価となり、それにより大きな振動低減効果が得られる。特に、従来のTMDでは付加質量の大きさを構造物の質量の1?2%程度とすることが限度であって振動低減効果も自ずと限界があったが、本発明によれば構造物の質量の10?50%ないしそれ以上の回転慣性質量を支障なく容易に得ることができ、それにより従来一般のTMDによる場合に比べて格段に優れた振動低減効果を得ることができ、風や交通振動のような小振幅の振動のみならず地震時の応答低減にも有効である。
しかも本発明は、回転慣性質量ダンパーの設置位置には制約がなく、任意の層に設置すれば充分であって各層に設置する必要はないし、従来のTMDのように構造物の頂部に設置する必要もなく、任意の特定層にのみ設置することで多層構造物全体に対して大きな振動低減効果が得られるものであり、したがって設置スペースを確保する上での制約は少なく、設置箇所数が少ないことからコストも安くて済む。
勿論、低減対象の振動数への同調は錘の質量や付加バネの値を調整することで自由にかつ幅広く行うことができ、構造物全体の固有1次モードのみならず固有2次モードやさらに高次モードの振動、あるいは共振が問題となっている特定振動数を対象とする振動低減効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の振動低減機構の一実施形態を図1に示す。
本実施形態の振動低減機構の基本原理は、従来一般のTMDと同様に、構造物に対して付加バネを介して付加質量を設置し、それら付加バネと付加質量とにより定まる固有振動数を構造物の固有振動数に同調させて振動低減効果を得るというものであるが、本実施形態においては単なる付加質量に代えて錘の回転により生じる回転慣性質量を利用するものである。
すなわち、本実施形態の振動低減機構は、図1に示すように構造物(図示例は3階建ての建物)の任意の層に、層間変位が生じた際に作動して錘を回転させることにより所定の回転慣性質量Ψ_(0)を生じる回転慣性質量ダンパー1を設置するとともに、その回転慣性質量ダンパー1に対して付加バネ2を直列に設置することを主眼とする。
なお、この振動低減機構には付加減衰3も必要であり、その付加減衰3は図示しているように付加バネ2に並列に設置するか、または回転慣性質量ダンパー1に対して並列に設置すれば良い。あるいは、回転慣性質量ダンパー1に付加減衰3を並列に組み込み一体化したものもあるので、それを用いる場合には他に格別の付加減衰を設置する必要はない。
【0008】
本実施形態の振動低減機構は、従来一般のTMDのように建物の頂部に設置しなければならないといった設置位置に関する制約はなく、任意の層に設置することで充分な効果が得られるものである。したがってたとえば図1に示すように3 階建ての建物への設置パターンとしては、(a)?(c)に示すようにいずれか任意の1層にのみ設置すれば良く、あるいは任意の2層(図示例の場合にはたとえば1階と3階、あるいは2階と3階)に設置するか、もしくは全層に設置することでも勿論良い。但し、特定の1層にのみ設置する場合には、一般には上層部に設置するよりも下層部に設置する方が効果的であり、特に層間変形が大きい部位に設置するとより効果的である。
【0009】
本発明において使用する回転慣性質量ダンパー1は、層間変位が生じた際に作動して小質量の錘が回転するものであって、その錘の回転慣性モーメントと回転角加速度とにより錘に生じる慣性モーメントを慣性力として利用して振動低減効果を得るものである。すなわち、回転慣性質量ダンパー1に生じる加力(加振)方向の相対変位をx、その際の錘の回転角をθとし、それらxとθとの間に
x=αθ
の関係があるとき、摩擦等による回転ロスを無視すると、この回転慣性質量ダンパー1の変位方向の慣性力(制御力)Pは次式で表される。
【数1】

上式は、一般的なバネが相対変位にバネ定数を乗じて負担力とするのと同様に、相対加速度に回転慣性質量を乗じて負担力とすることを意味しており、相対変位ではなく相対加速度を乗じる点で通常のバネによる場合と大きく異なるものである。
【0010】
上記のような回転慣性質量ダンパー1が発生する回転慣性質量Ψ_(0)の大きさは、回転する錘の実際の質量に対して10?1000倍にもなるので、小質量の錘を回転させることのみで極めて大きな慣性回転質量Ψ_(0)を得ることができ、したがって錘が小質量であっても充分な制御力つまりは充分な振動低減効果が得られる。換言すれば、従来一般の大型大重量のTMDにおける付加質量のわずか1/10?1/1000程度の小質量の錘であっても従来と同等の振動低減効果が得られることになる。
勿論、回転慣性質量Ψ_(0)の大きさは、錘の質量とその径寸法および径方向の質量分布により決定されるものであり、錘の質量が大きいほど、径寸法が大きいほど、質量が内周部よりも外周部に分布しているほど回転慣性質量Ψ_(0)は大きくなるから、それらを適正に設定することによって回転慣性質量Ψ_(0)を所望の大きさに設定することができ、所望の振動低減効果を得られる。
【0011】
なお、この種の回転慣性質量ダンパーとしてはたとえば特許第3250795号公報や特開2004-44748号公報に免震装置として使用されるものが公知であり、本実施形態においてはそれらに示されているようなボールネジ式の回転慣性質量ダンパーが好適に採用可能であるが、回転慣性質量ダンパーの構成は特に限定されるものではなく、所望の形式、特性のものを任意に採用すれば良い。
【0012】
そして、本実施形態においては、上記の回転慣性質量ダンパー1とそれに直列に設置される付加バネ2とにより定まる固有振動数を、構造物全体の所望の固有振動数に同調させるようにそれらの諸元を適正に設定することにより、その振動数での構造物の応答を大きく低減させることができるものである。
すなわち、一般に質量mとバネkによる振動系における固有角振動数ωは
ω^(2)=k/m
なる関係で定まるのと同様に、本実施形態のような回転慣性質量ダンパー1と付加バネ2とによる振動系においては、その固有角振動数Ωは回転慣性質量Ψ_(0)および付加バネ2のバネ定数k_(0)から
Ω^(2)=k_(0)/Ψ_(0)
なる関係で定まる。したがって、その固有角振動数Ωをたとえば構造物全体の固有1次角振動数ω_(1)に一致させれば、つまり
Ω^(2)=k_(0)/Ψ_(0)=ω_(1)^(2)
の関係が成り立つようにΨ_(0)およびk_(0)の値を設定すれば、従来のTMDを設置した場合と同様に構造物全体の固有1次モードの振動に対する応答を大きく低減させることができ、特に風揺れに対する充分な低減効果が得られる。
【0013】
あるいは、固有角振動数Ωを構造物全体の固有2次角振動数ω_(2)と一致させることでも良く、その場合は
Ω^(2)=k_(0)/Ψ_(0)=ω_(2)^(2)
となるようにΨ_(0)およびk_(0)の値を設定すれば、固有2次モードの振動に対する応答を大きく低減させることができる。
同様に、必要であればさらに高次の固有角振動数に同調させたり、機械振動のような特定の振動数を対象とする場合にはその振動数に同調させることにより、目的とする振動数との共振による応答増大を有効に防止することができる。
なお、付加減衰があることにより、上記の固有角振動数Ωは厳密には構造物の固有振動数と一致しないが、ほぼ同じになるため、両者を一致させると表記している。
【0014】
さらに、本実施形態の振動低減機構を複数の層に設置する場合には、それぞれの振動低減機構におけ固有角振動数Ωを互いに異なるように設定しても良く、それにより複数の振動数に対する低減効果を同時に得ることが可能である。たとえば、図1に示したように3階建ての建物を対象とする場合において、その1階と2階に振動低減機構をそれぞれ設置することとして、1階に設置する振動低減機構の固有角振動数Ωを構造物全体の固有1次角振動数ω_(1)に同調させ、2階に設置する振動低減機構の固有角振動数Ωを構造物全体の固有2次角振動数ω_(2)に同調させるような設定とすれば、建物全体の固有1次モードでの振動と固有2次モードでの振動に対する応答をいずれも低減させることができる。
【0015】
勿論、本実施形態の振動低減機構は、図1に示しているように、地震や交通振動などのように地盤を通じて構造物に対して加振入力される場合のみならず、風荷重や機械振動により構造物に対して直接に加振入力される場合についても有効に振動低減効果が得られるものである。
【0016】
なお、本実施形態においては、回転慣性質量ダンパー1の錘の実質量が小さいといえども、その負担力は従来のTMDにおける付加質量による慣性力と同等ないしそれ以上に大きなものとなるから、回転慣性質量ダンパー1やその設置のための接合部材等の設計においてはそのことを配慮して充分な強度を見込む必要がある。
そのため、必要であれば回転慣性質量ダンパー1に過大な力が作用して破損するようなことを防止するために、付加バネ2の負担力にリミッターをかけることも考えられる。そのためのリミッター機構としては、たとえば付加バネ2が許容限度を超える負担力を受けた際には降伏するようにしたり、あるいは付加バネ2にすべり機構を直列に配置しておくことが考えられる。また、回転慣性質量ダンパー1に作用する相対加速度が許容限度を超えた場合には錘が空回りして回転慣性質量Ψ_(0)が過大にならないようにしても同様のリミッター効果が得られる。
また、以上で説明したように回転慣性質量ダンパー1を層間変位により作動させて水平振動を対象として振動低減効果を得ることに代え、回転慣性質量ダンパー1を上下方向の振動に対して作動するように設置すれば、同様の原理で上下振動に対する振動低減効果を得ることができる。
【0017】
以下、本実施形態の振動低減機構の効果を確認するための解析手法とその結果を図2?図6に示す。
【0018】
(1)基本モデル(図2参照)
図1に示した3階建ての建物は図2(a)に示すような3質点系の振動モデルとして考えることができる。そのモデルに対して、時刻tにおける変位加振入力x(t)を
x(t)=x_(0)・e^(iωt)
として想定し、質点j(j=1?3)の加振方向変位をx_(j)、加振点変位をx_(0)とすると、質点jの静止座標系(絶対変位)の釣合式は、
【数2】

で表される。
【0019】
ここで、各層の質量m_(1)?m_(3)、バネk_(1)?k_(3)、減衰c_(1)?c_(3)がそれぞれ同じであるとして、それぞれの変位x_(j)が角振動数ωの正弦波振動、すなわち
x_(j)=x_(j)e^(iωt)
であり、また、各層の固有角振動数ω_(0)が
ω_(0)^(2)=k_(1)/m_(1)(=k_(2)/m_(2)=k_(3)/m_(3))
であり、
h_(1)=c_(1)/(2m_(1)ω_(0))
ξ=ω/ω_(0)
とすると、
【数3】

となる。
上式から求まる|x_(j)/x_(0)|(複素数の絶対値)が加振入力に対する各質点の応答倍率を示し、その応答倍率は変位、速度、加速度のいずれについても同じものとなる。
【0020】
一方、反力比率R/fは、加振入力に対する固定端反力R(最下層のベースシャー)を加振力fで除したもので、応答倍率を用いて次式で求められる。下式で求まる|R/f|(複素数の絶対値)が加振入力に対する固定端反力の応答比率を示す。なお。加振力fは総質量に入力加速度を乗じた値であって、ここでは
f=3m_(1)ω^(2)x_(0)
である。
【数4】

【0021】
以上で求まる応答倍率と反力比率を、減衰h_(1)=0.02である場合について、図2(b)、(c)に示す。
この図から、この系の固有1次角振動数ω_(1)は各層の固有角振動数ω_(0)に対して、ω_(1)≒0.445ω_(0)であり、同様に固有2次角振動数ω_(2)はω_(2)≒1.25ω_(0)であり、固有3次角振動数ω_(3)はω_(3)≒1.80ω_(0)であり、それぞれの振動数の近傍においてピークが生じるものとなる。
【0022】
(2)最下層に振動低減機構を設置した場合(図3参照)
図1(a)に示したように最下層(1階)に振動低減機構を設置した場合、その振動モデルは図3(a)に示すものとなる。
このモデルにおいて、質点jの加振方向変位をx_(j)、回転慣性質量ダンパーと付加バネとの接合部の変位をx_(c)とし、各質点jの静止座標系(絶対変位)の釣合式で表示すると
【数5】

【0023】
基本モデルの場合と同様に、変位xが角振動数ωの正弦波振動、すなわち
x_(j)=x_(j)e^(iωt)
とすると
【数6】

【0024】
また、同様に各層の質量m_(1)?m_(3)、バネk_(1)?k_(3)、減衰c_(1)?c_(3)がいずれも同じであり
ω_(0)^(2)=k_(1)/m_(1)
h_(0)=c_(0)/(2Ψ_(0)ω_(0))
( ̄k_(0))=k_(0)/k_(1)
( ̄Ψ_(0))=Ψ_(0)/m_(1)
ξ=ω/ω_(0)
とおく。なお、( ̄k_(0))はk_(0)の上部に ̄(バー)がつくことを表し、( ̄Ψ_(0))はΨ_(0)の上部に ̄がつくことを表す。
【数7】

【0025】
上式を用いて振動方程式は次式となる。
【数8】

この式から求まる|x_(j)/x_(0)|(複素数の絶対値)が、加振入力に対する各質点の応答倍率を示す(j=1?3)。
【0026】
一方、反力比率は次式で求められる。
【数9】

この式から求まる|R/f|(複素数の絶対値)が加振入力に対する固定端の反力比率を示す。
【0027】
回転慣性質量ダンパーと付加バネとにより定まる固有角振動数Ωを構造物全体の固有1次角振動数ω_(1)に同調させた場合、つまり、
Ω^(2)=k_(0)/Ψ_(0)=ω_(1)^(2)
となるように回転慣性質量ダンパーおよび付加バネの諸元を設定した場合、具体的には、
ω_(1)≒0.445ω_(0)
ω_(0)^(2)=k_(1)/m_(1)
の関係から、
Ω^(2)=ω_(1)^(2)≒0.2ω_(0)^(2)=0.2k_(1)/m_(1)
となるように設定し、かつ
回転慣性質量比 ( ̄Ψ_(0))=Ψ_(0)/m_(1)=0.2
付加バネのバネ比 ( ̄k_(0))=k_(0)/k_(1)=0.04
付加減衰定数 h_(0)=c_(0)/(2Ψ_(0)ω_(0))=0.03
とした場合における頂部質点(および底部質点)の応答倍率を図3(b)に示し、固定端の反力比率を(c)に示す。
これらの図から、回転慣性質量ダンパーと付加バネからなる振動低減機構を最下層にのみ設置しただけでも、その固有角振動数Ωを構造物全体の固有1次角振動数ω_(1)に同調させることにより、1次モードの振動に対する頂部の最大応答変位を約75%も低減させることができ、かつ固定端反力を大幅に低減できることがわかる。
【0028】
また、固有角振動数Ωを固有2次角振動数ω_(1)に同調させた場合、つまり、
Ω^(2)=k_(0)/Ψ_(0)=ω_(2)^(2)
となるように回転慣性質量ダンパーおよび付加バネの諸元を設定し、かつ付加バネを大きくして、
付加バネのバネ比 ( ̄k_(0))=k_(0)/k_(1)=0.4
付加減衰定数 h_(0)=c_(0)/(2Ψ_(0)ω_(0))=0.1
とした場合における応答倍率を(d)に示し、固定端への反力比率を(e)に示す。
この場合は、1次モードの振動に対する効果はなく、目的とする2次モードの振動に対する応答倍率と反力比率とを効果的に低減できることがわかる。
【0029】
(3)中間層に振動低減機構を設置した場合(図4参照)
上記と同様の振動低減機構を中間層(2階)に設置し、1次モードに同調させた場合の結果を図4に示す。この場合は、最下層に設置する場合に比べ応答倍率やダンパー反力がやや増加するものの、最大応答を約68%も低減させることができ、中間層に設置することでも充分に有効であることがわかる。
【0030】
(4)最上層に振動低減機構を設置した場合(図5参照)
上記と同様の振動低減機構を最上層(3階)に設置し、1次モードに同調させた場合の結果を図5に示す。この場合は、最下層や中間層に設置する場合に比べ応答倍率やダンパー反力の低減効果がやや低下するものの、最大応答を約50%も低減させることができるので充分に有効である。
【0031】
(5)頂部加振入力される場合(図6参照)
振動低減機構を最下階に設置して1次モードに同調させた場合において、図6(a)に示すように、風荷重や機械振動などが建物の頂部に作用する場合、その加振入力を
f(t)=f_(0)・e^(iωt)
として想定すると、質点の釣合式は
【数10】

となる。
【0032】
また、基本モデルと同様に各層の質量、バネ、減衰が同じとすると、振動方程式は
【数11】

となる。
各質点の応答倍率は下式(複素数)の絶対値として求められる。
【数12】

【0033】
この式から求まる応答倍率と反力比率を図6(b),(c)に示す。この場合も最大応答を約72%も低減させることができ、地震等のように固定端から建物に加振入力される場合と同様に、風荷重や機械振動などにより建物の頂部に加振力が作用する場合においても同様に有効であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態である振動低減機構を3階建ての建物に設置する場合の概念図である。
【図2】同、解析モデルと解析結果を示す図である。
【図3】同、解析モデルと解析結果を示す図である。
【図4】同、解析モデルと解析結果を示す図である。
【図5】同、解析モデルと解析結果を示す図である。
【図6】同、解析モデルと解析結果を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 回転慣性質量ダンパー
2 付加バネ
3 付加減衰
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造物の振動を低減する機構であって、
多層構造物の全層を除く任意の層に、層間変形によって作動して錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを設置するとともに、該回転慣性質量ダンパーと直列に付加バネを設置し、回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を前記多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させてなることを特徴とする振動低減機構。
【請求項2】
多層構造物の振動を低減する機構の諸元設定方法であって、
多層構造物の全層を除く任意の層に、層間変形によって作動して錘の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを設置するとともに、該回転慣性質量ダンパーと直列に付加バネを設置し、回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を前記多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に同調させるように回転慣性質量ダンパーと付加バネの諸元を設定することを特徴とする振動低減機構の諸元設定方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-12-03 
結審通知日 2015-12-07 
審決日 2015-12-18 
出願番号 特願2007-210213(P2007-210213)
審決分類 P 1 113・ 853- YAA (F16F)
P 1 113・ 121- YAA (F16F)
P 1 113・ 841- YAA (F16F)
P 1 113・ 855- YAA (F16F)
P 1 113・ 854- YAA (F16F)
P 1 113・ 113- YAA (F16F)
P 1 113・ 832- YAA (F16F)
P 1 113・ 851- YAA (F16F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 禎恒  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 内田 博之
小関 峰夫
登録日 2012-04-13 
登録番号 特許第4968682号(P4968682)
発明の名称 振動低減機構およびその諸元設定方法  
代理人 中島 淳  
代理人 川渕 健一  
代理人 重入 正希  
代理人 福田 浩志  
代理人 山崎 哲男  
代理人 山崎 哲男  
代理人 重入 正希  
代理人 上野 敏範  
代理人 坂手 英博  
代理人 中野 浩和  
代理人 寺本 光生  
代理人 寺本 光生  
代理人 福田 親男  
代理人 川渕 健一  
代理人 福田 親男  
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