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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A47C
審判 全部無効 2項進歩性  A47C
管理番号 1313313
審判番号 無効2015-800081  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-03-30 
確定日 2016-04-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第4715980号発明「中芯材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4715980号は、平成12年8月14日に出願され、平成23年4月8日に設定登録がなされたものである。
そして、本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
平成27年3月30日 無効審判請求書提出
平成27年6月12日 審判事件答弁書提出
平成27年10月26日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成27年10月27日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成27年11月10日 上申書提出(被請求人)
平成27年11月10日 口頭審理
平成27年11月24日 上申書提出(請求人)
平成27年11月24日 上申書提出(被請求人)


第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明3」という。また、これらを総称して「本件特許発明」という。)。
「【請求項1】
軟質ポリウレタン発泡体製の板状物のおもて面とうら面にそれぞれ多数の溝を設け、その両方の溝の深さh1,h2の合計を上記板状物の厚さHより大にしておもて面側の溝とうら面側の溝とが互いに交差する箇所に両溝に連通する連通孔を形成してなる中芯材。
【請求項2】
上記連通孔を介して互いに連通している板状物表裏両面の溝にそれぞれ無膜化した発泡合成樹脂体を装填してなる請求項1記載の中芯材。
【請求項3】
上記連通孔を介して互いに連通している板状物表裏両面の溝にそれぞれ無膜化した発泡合成樹脂体を装填するとともに、無膜化した発泡合成樹脂体が装填されている板状物の片面に凹凸部を設けてなる請求項2記載の中芯材。」


第3 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第4715980号発明の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、無効理由の概要は以下の1ないし5のとおりであって、本件特許は無効とすべきである旨主張している。
1.本件特許発明1は、実質的に甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(以下「無効理由1」という。)
甲第1号証に記載された発明は、「裏面側に、凹凸面を構成する凹部の底部側と交わるような切断面を形成して、上記凹部の底部に貫通した孔が形成される」ため、板状物の厚さ寸法より、凹部の深さと切断面の深さ(切削深さ)との合計の寸法の方が、当然大きくなるから、甲第1号証に記載された発明と本件特許発明1は共に、「凹部の深さと切断面の深さ(裏面からの切削深さ)との合計は、板状物の厚さよりも大きくなる」点において共通する(無効審判請求書6頁下から11?8行、17頁1行?23頁6行)。

2.本件特許発明1?3は、甲第1号証?甲第15号証に記載された発明(周知技術、記載事項)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである(以下「無効理由2」という。)。
(1)甲第1号証に記載された発明に基づく本件特許発明の進歩性について(以下「無効理由2-1」という。)
ア.本件特許発明1について
本件特許発明1及び甲第1号証に記載された発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件特許発明1では、おもて面に多数の溝が設けられているのに対し、甲第1号証に記載された発明では、表面が連続した凹凸面(凹凸面を構成する多数の凹部)である点。
(相違点2)
本件特許発明1のうら面側には多数の溝が設けられているのに対し、甲第1号証に記載された発明の裏面は、実質的に平面上に切断された切断面(それゆえ、溝は存在しない。)である点。
(相違点3)
本件特許発明1は「中芯材」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明は「フォーム部材」である点。
(相違点4)
連通孔の形成について、本件特許発明1では、おもて面とうら面の溝の深さh1,h2の合計を上記板状物の厚さHより大にして、おもて面側の溝とうら面側の溝とが互いに交差する箇所に両溝に連通する連通孔を形成するのに対し、甲第1号証に記載された発明では、裏面側に、上記凹凸面を構成する凹部の底部側と交わるような切断面を形成して、上記凹部の底部に裏面側へと貫通した連通孔を形成する点。
以下、各相違点について検討する。
(相違点1について)
甲第1号証には、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項が実質的に開示されているから、相違点1は実質的な相違点ではない。
また、仮に、上記相違点1に実質的な差異があるとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲第2、3、4号証に示されているように、周知技術に過ぎない。
(相違点2について)
甲第1号証には、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項が実質的に開示されているから、相違点2は実質的な相違点ではない。
また、仮に、上記相違点2に実質的な差異があるとしても、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲第2、3、4号証に開示されているように、周知技術に過ぎない。
(相違点3について)
本件特許発明1の「中芯材」と甲第1号証に記載された発明の「フォーム部材」の間に差異はなく、相違点3は実質的な相違点ではない。
(相違点4について)
第1号証に記載された発明のフォーム部材の裏面を部分的かつ筋状に切断して、裏面側に多数の溝(溝の深さh2=h2’)を形成すれば、関係式(h1+h2>H)を含めて、相違点4に係る本件特許発明1の発明事項に至り、その際、裏面側の溝を通気孔と連通するように形成することは、甲第2、3、4号証に開示されているように、周知技術であって、格別の困難性はない(平成27年10月27日付け口頭審理陳述要領書16頁17行?26頁4行、無効審判請求書19頁10行?22頁6行)。
イ.本件特許発明2について
本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明に、甲第12号証に記載された発明と、周知技術(甲第7?10号証)を単に組み合わせたに過ぎず、あるいはまた、甲第1号証に記載された発明に、甲第12号証に記載された発明と、周知技術(甲第2?4号証、甲第7?10号証)を単に組み合わせたに過ぎず、何ら困難性を伴うことなく、容易になし得たものである(無効審判請求書23頁7行?24頁16行)。
ウ.本件特許発明3について
本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明に、甲第12号証に記載された発明と、周知技術(甲第7?10号証)を単に組み合わせたに過ぎず、あるいはまた、甲第1号証に記載された発明に、甲第12号証に記載された発明と、周知技術(甲第2?4号証、甲第7?10号証)を単に組み合わせたに過ぎず、何ら困難性を伴うことなく、容易になし得たものである(無効審判請求書24頁17?末行)。

(2)甲第5号証に記載された発明に基づく本件特許発明の進歩性について(以下「無効理由2-2」という。)
ア.本件特許発明1について
本件特許発明1及び甲第5号証に記載された発明は、以下の点で相違する。
(相違点5)
本件特許発明1では、おもて面とうら面の溝の深さh1,h2の合計を板状物の厚さHより大であるのに対し、甲第5号証に記載された発明では、おもて面とうら面の溝の深さの合計が板状物の厚さに等しい点。
以下、各相違点について検討する。
(相違点5について)
甲第5号証に記載された発明と本件特許発明1も一致点である「おもて面側の溝とうら面側の溝とが互いに交差する箇所に両溝に連通する連通孔を形成する」場合に、甲第11号証の技術(両面から切欠部を形成する技術)を適用して連通孔を形成すれば、おもて面とうら面の溝の深さh1,h2の合計を板状物の厚さHより大きくなることは、自明である(無効審判請求書25頁23行?30頁7行、平成27年10月27日付け口頭審理陳述要領書8頁5行?9頁5行)。
イ.本件特許発明2について
本件特許発明2は、甲第5号証に記載された発明に、周知技術(甲第6?10号証)と甲第11号証、甲第12号証の記載事項に基づいて容易に想到できた発明である(無効審判請求書30頁8?19行)。
ウ.本件特許発明3について
本件特許発明3は、甲第5号証に記載された発明に、周知技術(甲第1号証、甲第6?10号証)と甲第11号証、甲第12号証の記載事項に基づいて容易に想到できた発明である(無効審判請求書30頁20行?31頁2行)。

また、上記無効理由を立証するための証拠方法は、以下のとおりである。
(証拠方法)
[書証]
甲第1号証:特開平9-272166号公報
甲第2号証:特開平10-295500号公報
甲第3号証:特開平10-243843号公報
甲第4号証:特開平6-316014号公報
甲第5号証:実公昭41-10832号公報
甲第6号証:特開平10-272036号公報
甲第7号証:特開平11-318646号公報
甲第8号証:特開2000-41794号公報
甲第9号証:特開2000-166707号公報
甲第10号証:特開2000-217870号公報
甲第11号証:登録実用新案第3035349号公報
甲第12号証:特開2000-37265号公報
甲第13号証:特開平5-116096号公報
甲第14号証:新村出、「広辞苑」、第4版、株式会社岩波書店、1991年11月15日
甲第15号証:甲第1号証記載の凹部及び谷部が溝であることの説明図
(以上、無効審判請求書に添付して提出された。)
甲第16号証:「ウレタン」に関するウィキペディア記事、インターネット<https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%AC%E3%82%BF%E3%83%B3>
甲第17号証:「中芯」に関する布団情報サイト・おふとんの人掲載記事、インターネット<https://www.ofuton.info/terms/terms kana051.html>
甲第18号証:特開昭60-229353号公報
甲第19号証:特開平2-272131号公報
甲第20号証:特開平4-15962号公報
甲第21号証:特開平8-111330号公報
甲第22号証:特開平8-220132号公報
甲第23号証:実願平1-14131号(実開平2-105417号)のマイクロフィルム
(以上、平成27年10月27日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出された。)
なお、被請求人は、甲第1ないし23号証の成立を認めている。


第4 被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、上記請求人の主張に対し、概略、以下のとおり主張して、本件特許を無効とすべき理由はない旨の主張をしている。
(1)甲第1号証に記載された発明に基づく本件特許発明の進歩性について
ア.本件特許発明1について
甲第1号証に記載された発明の認定、本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明との一致点、及び相違点の認定、並びに相違点の判断を誤っている。
本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明において、甲第2?4号証に記載の技術を組み合わせることで、当業者ならば容易に想到することができる程度の発明ではない(審判事件答弁書8頁11行?20頁19行、平成27年11月10日付け上申書12頁26行?15頁18行)。
イ.本件特許発明2について
本件特許発明2は、当業者が、甲第1号証に記載のフォーム部材の発明に、甲第7?10号証に記載された技術を組み合わせたとしても、また甲第7?10号証に加え、更に甲第2?4号証に記載された技術を組み合わせたとしても、容易に想到することができる発明ではない(審判事件答弁書20頁20行?22頁20行)。
ウ.本件特許発明3について
本件特許発明3の「前記溝とは別個に、凹凸部を設けてなる」との発明特定事項は、新規な構成である上に、当業者と云えども、公知文献から容易に想到することができない構成である(審判事件答弁書22頁21行?23頁22行)。

(2)甲第5号証に記載された発明に基づく本件特許発明の進歩性について
ア.本件特許発明1について
甲第5号証に記載された発明の認定、本件特許発明1と甲第5号証に記載された発明との一致点、及び相違点の認定、並びに相違点の判断を誤っている。
本件特許発明1は、甲第5号証に記載された発明において、甲第6?11号証に記載の技術を組み合わせることで、当業者ならば容易に想到することができる程度の発明ではない(審判事件答弁書23頁23行?31頁25行、平成27年11月10日付け上申書15頁19行?16頁8行)。
イ.本件特許発明2について
本件特許発明2は、当業者が、甲第5号証に記載の「継ぎ目を存して数多の切れ目が設けられたウレタンホーム製の薄板の数枚を重ね合わせた物」の発明に、甲第6?10号証に記載された技術を組み合わせ、さらに甲第11、12号証に記載された技術を組み合わせたとしても、容易に想到することができる発明ではない(審判事件答弁書31頁26行?33頁16行)。
ウ.本件特許発明3について
本件特許発明3の「前記溝とは別個に、凹凸部を設けてなる」との発明特定事項は、新規な構成である上に、当業者と云えども、公知文献から容易に想到することができない構成である(審判事件答弁書33頁17行?34頁29行)。

また、上記無効理由に反論するための証拠方法は、以下のとおりである。
(証拠方法)
[書証]
乙第1号証:本件特許発明に係る中芯材の典型例を図示した模式図
乙第2号証:新村出、「広辞苑」、第3版、株式会社岩波書店、昭和60年11月5日
乙第3号証:特許第5246911号公報
乙第4号証:特許第3435534号公報
乙第5号証:特許第5619407号公報
乙第6号証:実願昭58-102065号(実開昭60-10577号)のマイクロフィルム
(以上、審判事件答弁書に添付して提出された。)
乙第7号証:特開2003-265277号公報
乙第8号証:「西川リビングの快圧ケアウェーブマットレス」の商品カタログ、西川リビング株式会社
乙第9号証:「西川リビングの特殊寝台用マットレス」の商品カタログ、西川リビング株式会社
乙第10号証:登録実用新案第3116453号公報
乙第11号証:特開2002-78572号公報
乙第12号証:インターネットショッピングサイト【楽天市場】に掲載された「好圧リバーシブルマットレス」のウェページ、インターネット<https://itemrakuten.co.jp/senior/ms08780405/>
乙第13号証:「リバーシブル好圧マットレス」の商品カタログ、西川リビング株式会社
乙第14号証:「アルサフリー リバーシブルPROマットレス」の商品カタログ、株式会社イノアックリビング
乙第15号証:特開2000-125996号公報
乙第16号証:特開平10-243843号公報
乙第17号証:側材に包まれた状態にある本件特許発明の夫々の態様の中芯材を示す模式断面図
(以上、平成27年10月26日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出された。)
[物証]
乙第18号証:「無膜化した発泡合成樹脂体」見本、アキレス株式会社製造
(以上、平成27年11月24日付け上申書に添付して提出された。)
なお、請求人は、乙第1ないし17号証の成立を認めている。


第5 主な各甲号証に記載されている事項
1.甲第1号証
甲第1号証には、以下のとおり記載されている(なお、下線は審決で付した。以下同じ。)。
(1)「【請求項3】 表面に錐形状の凸部及び逆錐形状の凹部を有する連続した凹凸面を形成し、上記凹部の底部側と交わるような切断面を形成して、上記凹部の底部に貫通した孔が設けてあることを特徴とする、
フォーム部材。」
(2)「【0014】フォーム部材を構成する材料は、クッション効果を有する軟質または半硬質のものであればよく、例えば、発泡ポリウレタンフォーム、発砲ポリエチレンフォームなどが挙げられる。しかし、これらに限定するものではない。」
(3)「【0021】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。図1は本発明に係るフォーム部材の一実施の形態を示す斜視図であり、想像線で示す部分は一体フォームから切除する肉厚部を表わしている。図2は図1に示すフォーム部材を示す断面図である。符号Fは本発明に係る合成樹脂製のフォーム部材を示している。このフォーム部材Fの表面には連続した凹凸面1が形成してある。凹凸面1には頂部100を含む錐形状の凸部である山部材10が形成してある。
【0022】山部材10の隣り合う斜面間にはこの山部材10の半分ほどの高さを有する谷部101が形成してある。隣り合う山部材10で四方を囲まれた部分には逆錐形状の凹部11が形成してある。凹部11の底部には裏面へと貫通した通気孔2が設けてある。なお、本実施の形態において示すフォーム部材Fは、クッション効果を有する発泡ポリウレタンフォームで形成されている。しかしながら、これに限定するものではない。」
(4)「【0024】2○(審決注:甲第1号証には丸の中に数字1が記載されているが、このように表示できないので上記のように記載する。以下、同じ。) 次に、切断面が凹部11の底部側と交わるように、つまり、図1、図2において想像線で示す肉厚部Lが切除されるように、一体フォームKの裏面側を実質的に平面状に切断する。これにより凹部11の底部に裏面へと貫通した通気孔2が形成される。本実施の形態においてこの切断は、対称形状を有する二つの一体フォームKの表面に形成された凹凸面1を互いに合わせ重ねた状態で一方ずつ行う。なお、この切断方法は、例えば、カッターなどの刃物による切断、熱線による切断などが挙げられる。しかし、これらに限定するものではない。」
(5)「【0039】なお、フォーム部材Fを使用したものとして上記の第1ないし第3の実施の形態に示すような敷布団以外にも、例えば、座布団、マットレス、クッションなどを挙げることができる。また、本発明は図示の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内において種々の変形が可能である。」
(6)上記(5)において、「フォーム部材Fを使用したものが、敷布団やマットレス等である」との記載事項、及び図1、2の開示事項から、「フォーム部材が、板状物である」といえる。
上記(1)?(6)の開示事項を総合すると、甲第1号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第1号証発明」という。)。
「軟質の発泡ポリウレタンフォームで形成された板状物のフォーム部材であって、表面に錐形状の凸部である山部材を形成し、山部材の隣り合う斜面間にはこの山部材の半分ほどの高さを有する谷部を形成し、隣り合う山部材で四方を囲まれた部分には逆錐形状の凹部を形成した連続した凹凸面を形成し、上記凹部の底部側と交わるような実質的に平面状に切断された切断面を形成して、上記凹部の底部には裏面へと貫通した通気孔が設けれているマットレスのフォーム部材。」
なお、請求人は、「甲第1号証の「表面に連続した凹凸面を形成し、上記凹凸面を構成する凹部の底部側と交わるような切断面を形成して、上記凹部の底部に貫通した孔が設けてあることを特徴とする、フォーム部材。」(【請求項2】)との記載から、前記切断面は、凹部の底部側と交わりかつ前記凹部の底部に貫通する孔を形成できる程度の所定の幅を有する切断面も含まれる」旨(無効審判請求書18頁2?6行)、また「板状体の裏面に対して、所定の幅を有する切断面を形成すれば、切断面は溝となる」旨(無効審判請求書21頁19?20行)、主張する。
しかしながら、甲第1号証には、切断面に関して、「次に、切断面が凹部11の底部側と交わるように、つまり、図1、図2において想像線で示す肉厚部Lが切除されるように、一体フォームKの裏面側を実質的に平面状に切断する。これにより凹部11の底部に裏面へと貫通した通気孔2が形成される。」(段落【0024】)、「フォーム部材Fは、上記に示すように表面に山部材10及び凹部11を有する一体フォームKの裏面側に、凹部11の底部側と交わるような切断面を形成し、凹部11の底部に貫通した通気孔2を設けることにより製造される。このように通気孔2は、切断刃の直線状の動きにより形成することができるので、従来のような間欠的な動きに比べて無駄が少なく加工効率が良い。」(段落【0026】)、「通気孔2は一体フォームKの裏面側における切断の位置を、例えば図3に示すように、1○、2○、3○と変えることにより、その大きさを変えることができる。従って、従来のように通気孔2の大きさを変えるために切断刃を交換したり、金型を新たに準備したりする等の手間がいらず、空気の流通量の異なるフォーム部材Fを簡単に製造することができる。」(段落【0028】)と記載され、図2、3には、「切断面が、一体フォームKの裏面とほぼ平行である」ことが開示されている。
してみると、上記の記載事項から、甲第1号証には、一体フォームKの裏面とほぼ平行にその裏面側全体を実質的に平面状に切断する切断面が記載されているのみで、請求人が上記において主張するような「凹部の底部側と交わりかつ前記凹部の底部に貫通する孔を形成できる程度の所定の幅を有する切断面」に関する記載や示唆はなく、また自明の事項ともいえないし、当然、請求人が上記において主張するように「切断面が溝となる」こともない。
したがって、請求人の上記の主張は、理由がない。
また、請求人は、「甲第1号証に記載された発明は、「裏面側に、凹凸面を構成する凹部の底部側と交わるような切断面を形成して、上記凹部の底部に貫通した孔が形成される」ため、板状物の厚さ寸法より、凹部の深さと切断面の深さ(切削深さ)との合計の寸法の方が、当然大きくなるから、甲第1号証に記載された発明と本件特許発明1は共に、「凹部の深さと切断面の深さ(裏面からの切削深さ)との合計は、板状物の厚さよりも大きくなる」点において共通する」旨(無効審判請求書18頁10?16行)、主張する。
しかしながら、上記のとおり、請求人の主張は、その前提に誤りがあるから、理由がない。

2.甲第2号証
甲第2号証には、以下のとおり開示されている。
(1)「【0016】
【発明の実施の形態】以下図面を参照しながら本発明を更に詳細に説明する。図1は、本発明の快眠マットの一実施態様例のモデル図を、図2は、本発明の快眠マットの他の一実施態様例のモデル図を示すものである。ここで(a)は縦断面図、(b)は底面図であり、(A)は繊維構造体、(B)は樹脂発泡体、(C)は(A)と(B)との積層界面、(D)は、樹脂発泡体に穿孔されている空洞孔を示す。」
(2)「【0024】本発明の快眠マットを構成するもう一方の樹脂発泡体(B)は、独立気泡型の熱可塑性発泡体であって、繊維構造体(A)との積層界面(C)が、図1(a)又は図2(a)に示されるように、凹凸形状を呈していることが必要である。」
(3)「【0027】この凹凸形状は、発泡体の巾方向又は/及び長さ方向に連続していることが重要である。図1は巾方向のみに凹凸部が形成されている実施態様であり、図2は巾方向及び長さ方向に凹凸部が形成されている実施態様である。この凹凸形状において、凸部は、繊維構造体と発泡体とが熱溶融接着されており、凹部は、繊維構造体を介して通過する水分や空気の快眠マット外への流路となり、透湿性や通気性が良好になるのである。
【0028】この凹凸の形状、大きさや個数は、適宜選定できる。またこの凹部から、図1(b)に示される如く発泡体の底面へ貫通する空洞孔(D)を横断面に散在させること、更には図2(b)に示される如く積層界面の凹凸形状に対応する如く、発泡体の底面にも凹凸形状を形成し、上下の凹部を貫通する空洞孔を横断面に散在させることにより、大巾に透湿性や通気性が向上し、従って、睡眠時の快適性(特に夏期)が向上する。」

上記(1)?(3)の開示事項を総合すると、甲第2号証には、以下のとおりの事項が示されていると認められる(以下「甲第2号証に記載の事項」という。)。
「透湿性や通気性を良好にするために、快眠マットを構成する樹脂発泡体の積層界面と底面にそれぞれ凹凸部を形成し、前記凹凸部は、樹脂発泡体の巾方向及び長さ方向に形成されており、上下の凹部を貫通する空洞孔を横断面に散在させた快眠マットの樹脂発泡体。」

3.甲第3号証
甲第3号証には、以下のとおり開示されている。
(1)「【0011】本発明マットレス芯材1を構成する中芯材2は、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂に用いて発泡成形された発泡板からなり、該中芯材2はその上面及び/又は下面に、縦横に形成された多数の溝2a、2a、・・・によって区画される多数の突起状支持体2b、2b、・・・を有している。尚、図示する一例において、中芯材2の長手方向の長さは1950mm、幅方向の長さは850mm、厚みは26mmであり、溝2aの幅は8mm、深さは8mmである。」
(2)「【0014】本発明において、マットレス芯材1の屈曲性、クッション性、通気性を考慮すると、中芯材2に形成される溝2aの幅wは0.5?2.5cmであるのが好ましく、深さdは0.5?3cmであるのが好ましい。更に、通気性を高めるために中芯材2には、図2に示すように該中芯材2の上下両面に貫通する孔4、4、・・・を多数設けるのが好ましい。」
(3)上記(2)の「図2に示すように該中芯材2の上下両面に貫通する孔4、4、・・・を多数設けるのが好ましい」との記載、及び図2から、「中芯材の上下両面に形成された溝に多数の孔が設けられている」といえる。

上記(1)?(3)の開示事項を総合すると、甲第3号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第3号証に記載の事項」という。)。
「通気性を高めるために、マットレス芯材を構成する中芯材の上面及び下面に、縦横に形成された多数の溝を形成し、上下両面に形成された溝を貫通する多数の孔が設けられた中芯材。」

4.甲第5号証
甲第5号証には、以下のとおり開示されている。
(1)「本考案は上記した様に成るから之が製品は適度の弾性と緩衝性を得られ」(1頁右欄21?22行)
(2)「継ぎ目を存して数多の切れ目を設けたウレタンホーム製の薄板の数枚を使用しその継ぎ目及び切れ目が1枚毎に交互になる様に重合し、之をカバー内に納めて成る布団。」(1頁右欄33?36行)

上記(1)の開示事項を総合すると、甲第5号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第5号証発明」という。)。
「継ぎ目を存して数多の切れ目を設けたウレタンホーム製の薄板の数枚を使用しその継ぎ目及び切れ目が1枚毎に交互になる様に重合して、適度の弾性と緩衝性を得られる布団のカバー内に納めて成るもの。」

5.甲第11号証
甲第11号証には、以下のとおり開示されている。
(1)「【請求項1】ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン-ポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニルおよびポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の独立気泡発泡体の片面あるいは両面に複数の切欠部を設けてなる布団用の中芯。」
(2)「【0022】
独立気泡発泡体に形成される切欠部の形状は、図1にI字状、V字状、U字状、切欠状のものが例示されるが、これらに限定されない。なお、「切欠状」とは、
図1に示されるように切欠部が上下に貫通する形状を意味する。」
(3)「【0025】
シングルサイズの掛け布団ないし敷き布団には、図2に示されるように横スリット型に切欠部を形成するだけで折り畳むことが可能になる。セミダブル又はダブルサイズの掛け布団ないし敷き布団は、横方向だけでなく縦方向にも折り畳む場合があるため、縦方向にも少なくとも中心付近に切欠部を形成するのが好ましい。
【0026】
切欠部は、常法に従い形成されるが、例えばI字状の場合、カッターで切断すればよく、V字状の場合、2枚のカッターで切断すればよい。また、U字状及び切欠状の場合には、ドリルを用いて形成すればよい。」

上記の開示事項を総合すると、甲第11号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第11号証に記載の事項」という。)。
「布団用の中芯の両面に複数の切欠部を設けてなり、切欠部は、I字状、V字状、U字状、切欠状であって、カッター等の常法に従い形成される布団用の中芯。」


第6 当審の判断
1.無効理由1について
(1)対比
本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比すると、
後者における「軟質の発泡ポリウレタンフォーム」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「軟質ポリウレタン発泡体」に相当し、以下同様に、「表面」は「おもて面」に、「裏面」は「うら面」に、「通気孔」は「連通孔」に、「マットレスのフォーム部材」は「中芯材」に、それぞれ相当する。
また、後者における「通気孔」は、「表面に形成された凹部の底部側と交わるような切断面を形成して、裏面へと貫通」し、前者の「連通孔」は、おもて面側の溝とうら面側の溝とが互いに交差する箇所を連通」しているから、両者は、「おもて面側とうら面側とが連通する」との概念で共通する。
したがって、両者は、
「軟質ポリウレタン発泡体製の板状物におもて面とうら面を設け、おもて面側とうら面側とが連通する連通孔を形成してなる中芯材。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本件特許発明1は、板状物のおもて面に「多数の溝を設け」ているのに対し、甲第1号証発明は、表面に錐形状の凸部である山部材を形成し、山部材の隣り合う斜面間にはこの山部材の半分ほどの高さを有する谷部を形成し、隣り合う山部材で四方を囲まれた部分には逆錐形状の凹部を形成した連続した凹凸面を形成した点。
[相違点2]
本件特許発明1は、板状物の「うら面に多数の溝を設け」ているのに対し、甲第1号証発明は、(裏面が、)凹部の底部側と交わるような実質的に平面状に切断された切断面を形成した点。
[相違点3]
おもて面側とうら面側とが連通する連通孔に関して、本件特許発明1は、「その両方の溝の深さh1,h2の合計を板状物の厚さHより大にしておもて面側の溝とうら面側の溝とが互いに交差する箇所に両溝に連通する連通孔を形成してなる」のに対し、甲第1号証発明は、凹部の底部側と交わるような実質的に平面状に切断された切断面を形成して、上記凹部の底部には裏面へと貫通した通気孔が設けれている点。

(2)判断
そうすると、甲第1号証発明は、本件特許発明1を特定するために必要な板状物の「うら面に多数の溝を設け」との発明特定事項、及び「その両方の溝の深さh1,h2の合計を板状物の厚さHより大にしておもて面側の溝とうら面側の溝とが互いに交差する箇所に両溝に連通する連通孔を形成してなる」との発明特定事項を具備していない。
したがって、本件特許発明1が、甲第1号証発明であるとすることはできない。
なお、下記「2.(1)(イ)a.」のとおり、甲第1号証発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項は、実質的な相違点ではない。

(3)小括
よって、本件特許発明1は、甲第1号証発明であるとすることはできないから、本件特許発明1についての特許は、無効理由1により無効とすることはできない。

2.無効理由2について
(1)無効理由2-1について
ア.本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比すると、上記「1.(1)」のとおりである。

(イ)判断
上記相違点について以下検討する。
a.相違点1について
本件特許明細書には、本件特許発明1の「溝」に関して、特段の定義は示されていない。
一般に「溝」とは、細長くくぼんだところを意味するものである(甲第14号証参照。)。
甲第1号証発明の板状物の表面に形成された凹凸面は、錐形状の凸部である山部材を形成し、山部材の隣り合う斜面間にはこの山部材の半分ほどの高さを有する谷部を形成し、隣り合う山部材で四方を囲まれた部分には逆錐形状の凹部を形成したものであるから、谷部と凹部とが交互に連続した部位が形成されることになる。してみると、当該部位は、細長くくぼんだ部位といえることから、甲第1号証発明の板状物の表面(おもて面)には、多数の溝が設けられていることになる。
したがって、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明事項は、甲第1号証発明に示されているから、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。

b.相違点2について
一般に、マットレス等の中芯材において、通気性を高めるために、中芯材の板状物のおもて面とうら面にそれぞれ多数の溝を設け、おもて面側の溝とうら面側の溝とを連通する連通孔を形成してなるものは、周知の技術事項(例えば、上記「1.」の甲第2号証に記載の事項、及び甲第3号証に記載の事項を参照。)である。
してみると、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明事項は、上記周知の技術事項に示されている。
そして、甲第1号証発明と上記周知の技術事項とは、共に中芯材に関する技術分野に属し、また、通気性を高めるという共通の課題を有するものであるから、甲第1号証発明に上記周知の技術事項を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、甲第1号証発明において、上記周知の技術事項を適用することにより、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

c.相違点3について
上記「b.」のとおり、一般に、マットレス等の中芯材において、通気性を高めるために、中芯材の板状物のおもて面とうら面にそれぞれ多数の溝を設け、おもて面側の溝とうら面側の溝とを連通する連通孔を形成してなるものは、周知の技術事項である。
しかしながら、上記周知の技術事項には、連通孔は形成されているものの、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項である「その両方(おもて面側、及びうら面側)の溝の深さh1,h2の合計を板状物の厚さHより大にしておもて面側の溝とうら面側の溝とが互いに交差する箇所に両溝に連通する」連通孔を形成してなる点は示されていない。
してみると、甲第1号証発明に上記周知の技術事項を適用しても、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることを、当業者が容易に導き出すことはできない。
また、上記相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本件特許発明1は、上記相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を具備することにより、本件特許明細書に記載の「連通孔を介して板状物表裏両側の溝どうしが互いに連通しているため、体圧が加わっても通気性および保温性を保有することができるようになった。」(段落【0032】)という作用効果を奏するものである。
したがって、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲第1号証発明、及び上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、甲第1号証発明において、他に相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとなすことを、当業者が容易に想到し得たといえる根拠も見当たらない。
なお、甲第18?23号証に示された事項は、本件特許発明1や甲第1号証発明とは、その技術分野が異なり、またその目的も高い通気性等を保有するものでもないから、甲第1号証発明に甲第18?23号証に示された事項、つまり請求人の主張する周知慣用技術(平成27年10月27日付け口頭審理陳述要領書26頁5行?29頁末行)を適用することは、当業者が容易に想到し得るものではない。
また、請求人は、「甲1発明において、フォーム部材Fにおける凹凸面の深さh1'と、裏面から切除される肉厚部Lの厚さh2'との合計は、肉厚部Lを切除する前のフォーム部材Fの厚さH'よりも大きくなっている(h1'+h2'>H')。すなわち、甲1発明において、「裏面側に、上記凹凸面を構成する凹部の底部側と交わる」とは、残存厚(H'-h1')よりも大きな厚さh2'で肉厚部Lを切除することであって、結局のところ、フォーム部材Fにおける凹凸面の深さh1'と、裏面から切除される肉厚部Lの厚さh2'との合計を、肉厚部Lを切除する前のフォーム部材の厚さH'よりも大にすることに他ならない(h1'+h2'>H')。そうすると、甲1発明の上記関係式(h1'+h2'>H')は、貫通孔が自ずと形成されるための条件を規定しているという点で、本件特許発明1の関係式(h1+h2>H)と技術思想が共通するものである。唯一相違するのは、甲1発明の裏面は平面上であるのに対し、本件特許発明1では、裏面が部分的にかつ筋状に切断して形成された多数の「溝」が設けられた点である。しかしながら、この点は、甲第2?4号証の周知技術を甲1発明に適用することにより、当業者が容易に想到し得るものである。」旨(平成27年10月27日付け口頭審理陳述要領書22頁6行?23頁24行)、主張する。
しかしながら、請求人が主張する甲第1号証に記載された「H'」は、肉厚部Lを切除する前のフォーム部材F(一体フォームK)の厚さであり、一方、本件特許発明1の「H」は、中芯材そのものである板状体の厚さであるから、両者の厚さは、異なる部材の厚さであり、甲第1号証において、本件特許発明1の板状体(中芯材)の厚さHに相当する厚さは、フォーム部材Fそのものの厚さ、つまり肉厚部Lを切除する前のフォーム部材F(一体フォームK)の厚さH'から裏面から切除される肉厚部Lの厚さh2'を削除した厚さ(H'-h1')である。
してみると、請求人が主張する上記の関係式「h1'+h2'>H'」は、肉厚部Lを切除する前のフォーム部材F(一体フォームK)の厚さに関する事項を示すものであって、本件特許発明1の「中芯材」に相当する甲第1号証に記載の「フォーム部材F」の厚さに関する事項を示すものではないから、甲第1号証発明や本件特許発明1とは関係ないものであるし、そのような上記の関係式「h1'+h2'>H'」に上記周知技術を適用しても、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項に、当業者が容易に到達することはできない。
したがって、請求人の上記の主張は、理由がない。

(ウ)小括
よって、甲第1号証発明において、上記相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることが、当業者にとって容易に想到し得るものではないから、本件特許発明1についての特許は、無効理由2-1により無効とすることはできない。

イ.本件特許発明2、及び3について
(ア)本件特許発明2、及び3について検討すると、本件特許発明2、及び3は、本件特許発明1の発明特定事項をその発明特定事項の一部とするものであって、上記「ア.」のとおり、本件特許発明1が、当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に本件特許発明2、及び3は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(イ)小括
したがって、本件特許発明2、及び3についての特許は、無効理由2-1により無効とすることはできない。

(2)無効理由2-2について
ア.本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲第5号証発明とを対比すると、
後者における「布団のカバー内に納めて成るもの」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「中芯材」に相当すると共に、薄板の数枚を重合したものであるから、「板状物」といえる。
また、後者における「布団のカバー内に納めて成るもの」は、適度の弾性と緩衝性を得られるものであって、ウレタンホーム製の薄板の数枚を重合したものであって、通常、「ウレタン樹脂」とは「ポリウレタン」を意味することを踏まえれば、「軟質ポリウレタン発泡体製」といえる。
また、後者における「布団のカバー内に納めて成るもの」は、「おもて面、及びうら面を有するもの」であることは、明らかである。
したがって、両者は、
「軟質ポリウレタン発泡体製の板状物におもて面とうら面を設けてなる中芯材。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点4]
本件特許発明1は、板状物のおもて面とうら面に「それぞれ多数の溝を設け、その両方の溝の深さh1,h2の合計を上記板状物の厚さHより大にしておもて面側の溝とうら面側の溝とが互いに交差する箇所に両溝に連通する連通孔を形成してなる」のに対し、甲第5号証発明は、数多の切れ目を設けたウレタンホーム製の薄板の数枚を使用しその切れ目が1枚毎に交互になる様に重合した点。
なお、請求人は、「甲第5号証の「切れ目」は切断刃の動きによって形成されることに照らせば、切断刃の刃幅相当の幅を有する「切れ目」と解することができる。ただ、「切れ目」の幅がいずれであっても、布団の使用時には、就寝者の体型に沿って布団が湾曲し、薄板に設けられた「切れ目」に空間(幅≠0)が生じるので、V字状の「溝」と同様の状態になる。薄板の変形によって生じた「切れ目」内の空間は、布団の通気性を確保するための通路となるので、その技術的意義に照らしても、本件特許発明1の「溝」との間に差異はない。よって、甲5発明の多数の「切れ目」は、本件特許発明1の多数の「溝」に相当する。」旨(平成27年10月27日付け口頭審理陳述要領書7頁14行?8頁4行)、主張する。
請求人の上記主張について検討する。
本件特許明細書には、本件特許発明1の「溝」に関して、特段の定義は示されていない。また、前記溝を有することによって、軽量で高い通気性等を保有することができるものである(本件特許明細書の段落【0002】?【0006】参照。)。そして、一般に「溝」とは、「細長くくぼんだところ」を意味するものである(甲第14号証参照。)。
してみると、本件特許発明1の「溝」とは、板状物のおもて面、及びうら面に設けられた細長くくぼんだ部位であって、軽量で高い通気性等を保有するためのものである。
一方、甲第5号証には、甲第5号証発明の「切れ目」に関して、「第3図は同じくウレタンホーム製の薄板3を示し、継ぎ目3aを存して数多の切れ目3bが設けられているが、その継ぎ目3a及び切れ目3bは千鳥状に設けられ、之を左右に引張ることにより第4図に示す様な網状となる。」(1頁右欄11?15行)との記載されているように、切れ目は、薄板の表面から裏面にわたって切断された切れ目といえるが、特段の定義は示されていない。また、前記切れ目を設けることによって、適度の弾性と緩衝性を得ることができる(1頁右欄21?22行参照。)。そして、一般に「切れ目」とは、「切れてできたあと、切れたところ」を意味するものである(乙第2号証参照。)。
してみると、甲第5号証発明の「切れ目」とは、1枚の薄板の表面から裏面にわたって切れたところであって、適度の弾性と緩衝性を得られるようにするためのものである。
以上を踏まえると、甲第5号証発明における「切れ目」と本件特許発明1における「溝」とは、その構造、目的、作用が異なるものであるから、両者が相当するものであるとはいえない。
したがって、請求人の上記の主張は、理由がない。

(イ)判断
上記相違点4について以下検討する。
上記「第5 5.」によれば、甲第11号証に記載の事項には、「布団用の中芯の両面に複数の切欠部を設けてなり、切欠部は、I字状、V字状、U字状、切欠状であって、カッター等の常法に従い形成される布団用の中芯」が記載されている。
そして、甲第11号証に記載の事項における「両面」は、その構造、機能、作用等からみて、本件特許発明1における「『おもて面』、『うら面』」に相当し、以下同様に、「V字状の切欠部」は「溝」に、「布団用の中芯」は「中芯材」に、それぞれ相当する。
しかしながら、甲第11号証に記載の事項には、上記相違点4に係る本件特許発明1の「その両方(おもて面側、及びうら面側)の溝の深さh1,h2の合計を板状物の厚さHより大にしておもて面側の溝とうら面側の溝とが互いに交差する箇所に両溝に連通する」連通孔を形成してなる点は示されていない。
また、甲第5号証発明の切れ目は、1枚の薄板の厚み以上に切れ目の深さを形成することはできないから、複数枚の薄板を重合したものにおいて、切れ目の深さを複数枚の薄板を重合したもの以上の深さとすることはできないし、当業者は、そのようにすることを想定することはできない。
してみると、甲第5号証発明に甲第11号証に記載の事項を適用しても、相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることを、当業者が容易に導き出すことはできない。
また、上記相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本件特許発明1は、上記相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項を具備することにより、本件特許明細書に記載の「連通孔を介して板状物表裏両側の溝どうしが互いに連通しているため、体圧が加わっても通気性および保温性を保有することができるようになった。」(段落【0032】)という作用効果を奏するものである。
したがって、相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲第5号証発明、及び甲第11号証に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、甲第5号証発明において、他に相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとなすことを、当業者が容易に想到し得たといえる根拠も見当たらない。

(ウ)小括
よって、甲第1号証発明において、上記相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることが、当業者にとって容易に想到し得るものではないから、本件特許発明1についての特許は、無効理由2-2により無効とすることはできない。

イ.本件特許発明2、及び3について
(ア)本件特許発明2、及び3について検討すると、本件特許発明2、及び3は、本件特許発明1の発明特定事項をその発明特定事項の一部とするものであって、上記「ア.」のとおり、本件特許発明1が、当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に本件特許発明2、及び3は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(イ)小括
したがって、本件特許発明2、及び3についての特許は、無効理由2-2により無効とすることはできない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許発明1ないし3についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-03 
結審通知日 2016-02-08 
審決日 2016-02-24 
出願番号 特願2000-245592(P2000-245592)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A47C)
P 1 113・ 113- Y (A47C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲村 正義  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 黒瀬 雅一
藤本 義仁
登録日 2011-04-08 
登録番号 特許第4715980号(P4715980)
発明の名称 中芯材  
代理人 加藤 勉  
代理人 澤田 優子  
代理人 久米川 正光  
代理人 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所  
代理人 萼 経夫  
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