• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09K
管理番号 1313433
審判番号 不服2014-25690  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-16 
確定日 2016-04-14 
事件の表示 特願2012-115583「重合性液晶組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月30日出願公開、特開2012-162742〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成18年3月29日に出願した特願2006-90761の一部を平成24年5月21日に新たな特許出願としたものであって、出願後の手続きの経緯の概略は、以下のとおりである。
平成25年12月17日付け 拒絶理由通知
平成26年 2月24日 意見書及び手続補正書提出
平成26年 9月10日付け 拒絶査定
平成26年12月16日 審判請求書及び手続補正書提出
平成27年 2月27日付け 前置報告

第2 平成26年12月16日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年12月16日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成26年12月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、特許請求の範囲の請求項1について、
補正前(平成26年2月24日付けの手続補正書参照)の
「【請求項1】
少なくとも1つ以上の水素原子がtert-ブチル基で置換されているフェノール骨格を有する分子量300以上700未満の酸化防止剤を含有し、当該酸化防止剤の含有量が0.1?5質量%であることを特徴とする重合性液晶組成物。」から、
補正後の
「【請求項1】
少なくとも1つ以上の水素原子がtert-ブチル基で置換されているフェノール骨格を有する分子量300以上700未満の酸化防止剤を含有し、当該酸化防止剤の含有量が0.1?5質量%であり、
一般式(I)
【化1】


(式中、Pは反応性官能基を表し、Spは炭素原子数1?20のスペーサー基を表し、mは0又は1を表し、MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表し、R^(9)は一般式(I-a)
【化2】

(式中、Pは反応性官能基を表し、Spは炭素原子数1?20のスペーサー基を表し、mは0又は1を表す。)で表される構造を表す。)で表され、
前記Spがアルキレン基を表し、該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH_(2)基又は隣接していない2つ以上のCH_(2)基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH_(3))-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていても良い。)で表される構造を表し、
前記MGが一般式(I-b)
【化3】

(式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立的に、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、テトラヒドロチオピラン-2,5-ジイル基、1,4-ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基、フルオレン2,7-ジイル基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基及びフルオレン2,7-ジイル基は置換基として1個以上のF、Cl、CF_(3)、OCF_(3)、シアノ基、炭素原子数1?8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2?8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基、アルケノイルオキシ基を有していても良く、Z0、Z1、及びZ3はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH_(2) CH_(2)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH_(2)CH_(2)COO-、-CH_(2)CH_(2)OCO-、-COOCH_(2)CH_(2)-、-OCOCH_(2)CH_(2)-、又は単結合を表し、Z2は-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH_(2)CH_(2)COO-、-CH_(2)CH_(2)OCO-、-COOCH_(2)CH_(2)-、-OCOCH_(2)CH_(2)-又は単結合を表し、nは0、1又は2を表す。)で表される構造を表し、
前記Pが一般式(I-c)、一般式(I-d)又は一般式(I-e)
【化4】

(式中、R^(61)、R^(62)、R^(63)、R^(71)、R^(72)、R^(73)、R^(81)、R^(82)及びR^(83)はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1?5のアルキル基を表し、nは0又は1を表す。)で表される置換基からなる群より選ばれる置換基を表す化合物を含有することを特徴とする重合性液晶組成物。」(注:下線は原文のとおり)
とする補正を含むものである。
上記補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の重合性液晶組成物について、「一般式(I)」(式及び式中の符号の説明は省略)の化合物を含有することを特定するものであり、また、当該補正は、請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、「改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件について
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された本願出願日前の刊行物1?10は以下のとおりである。

1.国際公開第2005/005573号
2.国際公開第2005/019379号
3.国際公開第2006/027076号
4.K. Fateh-Alavi, M.E. Nunez, S. Karlsson, U.W. Gedde, "The
effect of stabilizer concentration on the air-plasma-induced
surface oxidation of crosslinked polydimethylsiloxane",
Polymer Degradation and Stability, 2002, Vol.78, No.1, p.17-25
5.特表2002-529562号公報
6.特開2005-105066号公報
7.特開2006-064805号公報
8.特開2005-272561号公報
9.特開2003-193053号公報
10.特開2005-241710号公報

これらのうち、刊行物1、4、6?8(以下、「引用例1」ないし「引用例5」という)には、それぞれ次のことが記載されている。
なお、引用例1の摘示事項については、翻訳文が記載されている特表2007-506813号公報(以下、「公表公報」という)の該当箇所の訳文をもって示し、国際公開及び公表公報双方における記載箇所を明示した。

2-1-1 引用例1(国際公開第2005/005573号 )
(1a)「1.重合性液晶(LC)材料であって、1種または2種以上の重合性メソゲン性化合物および1種または2種以上の重合性接着促進剤を含む、重合性液晶材料。」(国際公開のPatent Claims 1、及び、公表公報の特許請求の範囲【請求項1】参照)
(1b)「重合性化合物として重合性LC材料において用いられるものは、好ましくは、メソゲン性または液晶性化合物である。したがって、重合性LC材料は、典型的には1種または2種以上の重合性キラルな、またはアキラルなメソゲン性または液晶性化合物を含む。それは好ましくは、1つの重合性基を有する(単反応性(monoreactive))1種または2種以上の重合性化合物および2つまたは3つ以上の重合性基を有する(二反応性(direactive)または多反応性(multireactive))1種または2種以上の重合性化合物を含む混合物である。」(国際公開の第11頁下から3行?第12頁5行、及び、公表公報の段落【0026】参照)
(1c)「重合性LC材料にはさらに添加剤を含むことが可能である。添加剤は、例えば界面活性剤、触媒、増感剤、安定剤、連鎖移動剤、阻害剤、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水剤(hydrophobing agent)、流動改善剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、着色剤、染料または他の補助剤である。」(国際公開の第12頁23行?27行、及び、公表公報の段落【0028】参照)
(1d)「本発明の重合LCフィルムまたは重合性LC材料は、光学素子、例えば液晶ディスプレイまたは投射システムにおける偏光板、補償板、配向層、円偏光板またはカラーフィルターに、装飾絵柄に、液晶または効果顔料の製造のために、およびとくに空間的に変化する反射色を有する反射性フィルムに、例えば装飾、情報蓄積またはセキュリティー用途、例えば偽造不能な文書、例えば身分証明書またはクレジットカード、紙幣などのための多色
絵柄として有用である。」(国際公開の第19頁28行?36行、及び、公表公報の段落【0044】参照)
(1e)「例1
重合性LC混合物M1の処方を以下のように行った。
M1:
(1) 39.4 %
(2) 24.60 %
(3) 24.60 %
(4) 9.72 %
イルガキュア651 1.00 %
フルオラッド FC171 0.60 %
イルガノックス1076 0.08 %


イルガキュア651(登録商標)は光開始剤であり、イルガノックス(Irganox)1076(登録商標)は安定剤であり、ともに商業的に入手できる(Ciba AG, Basel, Switzerlandから)。FC171(登録商標)は非イオン系フルオロカーボン界面活性剤であり、商業的に入手できる(3M Co.から)。
M1をPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート)に33%の濃度で溶解する。2-ヒドロキシエチルアクリラートを異なる濃度で前記溶液に添加する。精製した溶液のスピンコート(2,000 RPM;30s)をラビングしたポリイミド(JSR AL1054)/スライドガラスに行い、光重合する(20 mWcm^(-2), 60s, N_(2))。
全ての混合物から、清澄で透明なポリマーフィルムであって、良好な配向性を有するものが得られた。」(国際公開の第20頁下から2行?第20頁7行、及び、公表公報の段落【0048】?【0050】参照)

2-1-2 引用例2( "The effect of stabilizer concentration on
the air-plasma-induced surface oxidation of crosslinked
polydimethylsiloxane")
(2a)「The stabilizers used in this study were Irganox 1076,
Tinuvin 770 and Irganox 565, all supplied by Ciba peciality
Chemicals Inc. The chemical structures of the stabilizers are shown
in Fig.1. (当審訳:この研究において使用した安定剤は、Irganox 1076、Tinuvin 770、そしてIrganox 565であり、すべてCiba Specialty Chemicals Inc.より供給された。これらの安定剤の化学構造は図1に示される。)」(第18頁右欄15行?18行、第19頁図1参照)



2-1-3 引用例3(特開2005-105066号公報)
(3a)「【請求項1】 一般式(1)で示されるリン酸エステル系化合物の少なくとも1種をセルロースアシレートに対し5?30質量%含有し、かつ一般式(2)又は(3)で示されるフェノール系化合物の少なくとも1種をセルロースアシレートに対し0.001?5質量%含有するセルロースアシレートフィルムにおいて、60℃95%RHにおける透湿係数が1500?3000g/(m^(2)・day)であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【化1】


(式中、R^(11)は、炭素数1?30の有機基を示し、各々同一でも異なっていてもよく、2つまたは3つのR^(11)が互いに連結して環を形成してもよい。)
【化2】

(式中、R^(21)は炭素数1?20のアルキル基を示し、Y^(21)は炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルコキシ基、炭素数1?20のアシルオキシ基、炭素数1?20のアルコキシカルボニル基、又はアミノ基を示し、複数ある場合は、各々同一でも異なっていてもよく、これらは互いに連結して環を形成してもよく、xは0?4の整数、mは0?4の整数であり、(x+m)≦4を満たす。)
【化3】

(式中、R^(22)およびR^(24)は炭素数1?20のアルキル基を表し、R^(23)およびR^(25)は水素原子又は炭素数1?20のアルキル基を表し、各々同一でも異なっていてもよく、Rは水素原子又はアシル基を表し、L^(21)及びL^(22)はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表し、Vは(p+q)価の連結基を表し、xは0?3の整数、yは0?3の整数、pは0?4の整数、qは0?4の整数であり、1≦(p+q)≦4を満たす。)」(特許請求の範囲【請求項1】参照)
(3b)「【0001】本発明は、極めて過酷な湿熱条件においても耐久性に優れるセルロースアシレートフィルムを提供し、耐久性に優れる偏光板を提供し、信頼性の高い液晶表示装置を提供するものである。」(段落【0001】参照)
(3c)「【0021】本発明のセルロースアシレートフィルムに用いられるフェノール系化合物(以下、「劣化防止剤」とも言う。)としては、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物が好ましい。セルロースアシレートフィルム中、フェノール系化合物はセルロースアシレートに対して、好ましくは0.001?5質量%、より好ましくは0.005?5質量%、さらに好ましくは0.01?5質量%含有される。」(段落【0021】参照)
(3d)「【0026】以下に、一般式(2)で表される化合物の具体例を示す。
【0027】
【化6】

」(段落【0027】参照)
(3e)「【0034】以下に、一般式(3)で表される化合物の具体例を挙げる。
【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

」(段落【0034】?【0037】参照)

2-1-4 引用例4(特開2006-064805号公報)
(4a)「【請求項1】基体及びバインダー中に分散された液晶組成物を含有する液晶層の少なくとも1層を含む構成層を有する表示媒体であって、構成層の少なくとも1層に下記(a)?(d)で示される化合物群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする表示媒体。
(a)フェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及びヒドロキノン誘導体から選ばれる1つの酸化防止剤
(b)紅藻類に由来する天然高分子多糖類
(c)高沸点有機溶媒
(d)防黴剤」(特許請求の範囲【請求項1】参照)
(4b)「【0006】本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、過酷な環境下での保存や折り曲げを行った際の表示特性の安定性に優れたメモリー性を備えた表示媒体を提供することにある。」(段落【0006】参照)
(4c)【0041】〈ヒンダートフェノール系酸化防止剤〉
ヒンダートフェノール系の化合物としては、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4′-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、n-オクタデシル-3-(4′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プピオネート]、トリエチレングリコ-ル-ビス[3-(3-t-ブチル-t-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N′-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロキシンナマミド)、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウムとポリエチレンワックスの1:1混合物、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメイト)]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル、ヒンダート・ビスフェノール等が挙げられる。」(段落【0041】参照)
(4d)「【0048】好ましい酸化防止剤の使用量は、バインダー1kgに対して0.1g?100gであり、さらに好ましくは1g?10gである。」(段落【0048】参照)

2-1-5 引用例5(特開2005-272561号公報)
(5a)「【請求項1】一般式(I)
【化1】

(式中、W^(1)及びW^(2)はそれぞれ独立的に単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、Y^(1)及びY^(2)はそれぞれ独立的に-COO-又は-OCO-を表し、p及びqはそれぞれ独立的に2?18の整数を表し、式中に存在する3種の1,4-フェニレン基の水素原子はそれぞれ独立的に、炭素原子数1?7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。)で表される2官能液晶性アクリレート化合物を50から95%含有し、一般式(II-1)から一般式(II-4)
【化2】

(式中、rは2?18の整数を表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の単官能液晶性アクリレート化合物を5から50%含有し、室温でスメクチックA相を呈することを特徴とする重合性液晶組成物。」(特許請求の範囲【請求項1】参照)
(5b)「【0001】本発明は位相差フィルム等の光学異方体を製造するのに有用な重合性液晶組成物、及びこれを用いた重合体に関する。」(段落【0001】参照)
(5c)「【0029】また、本発明の重合性液晶組成物を偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて金属、金属錯体、染料、顔料、色素、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等を添加することもできる。」(段落【0029】参照)

2-2.対比、判断
上記引用例1の請求の範囲1.には、「重合性液晶(LC)材料であって、1種または2種以上の重合性メソゲン性化合物および1種または2種以上の重合性接着促進剤を含む、重合性液晶材料」の発明が記載されており(摘示事項(1a)参照)、この重合性液晶材料には、さらに界面活性剤や安定剤などの添加剤を含み得ることが記載され(摘示事項(1c)参照)、そして具体例として、「例1」には、『式(1)の化合物を39.4%、式(2)の化合物を24.60%、式(3)の化合物を24.60%、式(4)の化合物を9.72%、光開始剤として「イルガキュア651」を1.00%、界面活性剤として「フルオラッドFC171」を0.60%、安定剤として「イルガノックス1076」を0.08%配合した「重合性LC混合物M1」に、重合性接着促進剤である2-ヒドロキシエチルアクリラートを添加した重合性液晶材料』が記載されている(摘示事項(1d)参照)。
ここで、摘記事項(1b)を参酌すれば、上記式(1)?(4)の化合物が、「重合性メソゲン性化合物」に相当することは明らかである。
以上のことから、上記引用例1には、「重合性液晶(LC)材料であって、重合性メソゲン性化合物として式(1)?(4)の化合物(※式は省略)、重合性接着促進剤として2-ヒドロキシエチルアクリラートを含み、さらに光開始剤としてイルガキュア651を1.00%、界面活性剤としてフルオラッドFC171を0.60%、安定剤としてイルガノックス1076を0.08%含む、重合性液晶材料。」の発明が実質的に記載されているものと認められる(以下、この発明を「引用例1発明」という)。

そこで、本願補正発明と上記引用例1発明とを対比すると、両者の対応関係は以下のとおりである。
(ア)引用例1発明における「イルガノックス1076」は、引用例2に安定剤として記載されている「Irganox1076」の化学構造からみて(摘示事項(2a)参照)、本願補正発明における「少なくとも1つ以上の水素原子がtert-ブチル基で置換されているフェノール骨格を有する分子量300以上700未満」の化合物であることは明らかであり、また、この化合物は「酸化防止剤」として公知の化合物であるから(必要であれば、「便覧 ゴム・プラスチック配合薬品」2003年12月2日、株式会社ポリマーダイジェスト発行、第91頁?第97頁の「a.フェノール系酸化防止剤」の項、特に第93頁下から8行?第94頁8行参照)、本願補正発明における「少なくとも1つ以上の水素原子がtert-ブチル基で置換されているフェノール骨格を有する分子量300以上700未満の酸化防止剤」に相当する。
(イ)引用例1発明における「重合性液晶材料」は、さらに他の成分として「重合性接着促進剤」、「光開始剤」、及び「界面活性剤」を含有しているが、本願補正発明においても光重合開始剤や他の添加剤成分を排除しているわけではないので、本願補正発明における「重合性液晶組成物」に相当する。
(ウ)本願補正発明における一般式(I)で表される置換基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物は、本願明細書【0017】によれば、「棒状重合性液晶化合物」であるところ、引用例1発明における「重合性メソゲン性化合物」も、その構造からみて(摘示事項(1e)参照)、「棒状重合性液晶化合物」に相当するものである。

上記(ア)?(ウ)のとおりであるから、本願補正発明と上記引用例1発明は、
「少なくとも1つ以上の水素原子がtert-ブチル基で置換されているフェノール骨格を有する分子量300以上700未満の酸化防止剤を含有し、棒状重合性液晶化合物を含有することを特徴とする重合性液晶組成物。」
である点で一致し、次の点で相違している。

<相違点1>
本願補正発明の重合性液晶組成物は、棒状重合性液晶化合物として、「一般式(I)
【化1】

(式中、Pは反応性官能基を表し、Spは炭素原子数1?20のスペーサー基を表し、mは0又は1を表し、MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表し、R^(9)は一般式(I-a)
【化2】

(式中、Pは反応性官能基を表し、Spは炭素原子数1?20のスペーサー基を表し、mは0又は1を表す。)で表される構造を表す。)で表され、
前記Spがアルキレン基を表し、該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH_(2)基又は隣接していない2つ以上のCH_(2)基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH_(3))-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていても良い。)で表される構造を表し、
前記MGが一般式(I-b)
【化3】

(式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立的に、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、テトラヒドロチオピラン-2,5-ジイル基、1,4-ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基、フルオレン2,7-ジイル基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基及びフルオレン2,7-ジイル基は置換基として1個以上のF、Cl、CF_(3)、OCF_(3)、シアノ基、炭素原子数1?8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2?8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基、アルケノイルオキシ基を有していても良く、Z0、Z1、及びZ3はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH_(2) CH_(2)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH_(2)CH_(2)COO-、-CH_(2)CH_(2)OCO-、-COOCH_(2)CH_(2)-、-OCOCH_(2)CH_(2)-、又は単結合を表し、Z2は-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH_(2)CH_(2)COO-、-CH_(2)CH_(2)OCO-、-COOCH_(2)CH_(2)-、-OCOCH_(2)CH_(2)-又は単結合を表し、nは0、1又は2を表す。)で表される構造を表し、
前記Pが一般式(I-c)、一般式(I-d)又は一般式(I-e)
【化4】

(式中、R^(61)、R^(62)、R^(63)、R^(71)、R^(72)、R^(73)、R^(81)、R^(82)及びR^(83)はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1?5のアルキル基を表し、nは0又は1を表す。)で表される置換基からなる群より選ばれる置換基を表す化合物」を使用しているのに対して、引用例1発明では、「式(1)?(4)の化合物」を使用している点。

<相違点2>
本願補正発明においては、重合性液晶組成物に対する「当該酸化防止剤の含有量が0.1?5質量%」であるのに対して、引用例1発明においては、安定剤であるイルガノックス1076の含有量は「0.08%」である点。

そこで、これらの相違点について検討する。

<相違点1について>
引用例1発明における「式(1)?(4)の化合物」に関して、式(1)及び(4)の化合物の構造を見てみると、これらは、「CH_(2)=CHCOO-」基(以下、「基1」という。)、炭素数2又は5のアルキレン基(以下、「基2」という。)、「-CH_(2)O-」基(以下、「基3」という。)、1,4-フェニレン基(以下、「基4」という。)、-COO-(以下、「基5」という。)、メチル基で置換された1,4-フェニレン基(以下、「基6」という。)、「-OCO-」基(以下、「基7」という。)、1,4-フェニレン基(以下、「基8」という。)、「-OCH_(2)-」基(以下、「基9」という。)、基2、基1が順次結合したものとなっている。
ここで、式(1)及び(4)の化合物の両末端基を構成する基1及び基2に着目すると、基1は本願補正発明の置換基「P」においてこれを「一般式(I-d)(式中R^(71)、R^(72)、R^(73)は水素原子)」としたもの、基2は本願補正発明の置換基「-(Sp)m-」においてこれを「mは1とし、Spが炭素数1?20のアルキレン基を表」すとしたものにそれぞれ相当する。しかるに、本願補正発明の一般式(I)の化合物と引用例1発明の式(1)及び(4)の化合物とは、両末端の構造が本願補正発明でいうところの「P-(Sp)m-」(ただし、mは1を表す。)となっている点で、一致している。
次に、式(1)及び(4)の化合物における上記両末端に挟まれた中間部分の連結基に着目すると、基3は本願補正発明の置換基「Z0」又は「Z3」においてこれを「-CH_(2)O-」基としたもの、基4は本願補正発明の置換基「A1」又は「A3」においてこれを1,4-フェニレン基としたもの、基5は本願補正発明の置換基「Z1」又は「Z2」においてこれを「-COO-」基としたもの、基6は本願補正発明の置換基「A2」においてこれを炭素数1?8のアルキル基で置換した1,4-フェニレン基としたもの、基7は本願補正発明の置換基「Z2」又は「Z1」を「-OCO-」基としたもの、基8は本願補正発明の置換基「A3」又は「A1」においてこれを1,4-フェニレン基としたもの、基9は本願補正発明の置換基「Z3」又は「Z0」においてこれを「-OCH_(2)-」基としたものと認められる。しかるに、本願補正発明の一般式(I)の化合物と引用例1発明の式(1)及び(4)の化合物とは、中間部分の結合基の構造が本願補正発明でいうところの「-Z0-(A1-Z1)n-A2-Z2-A3-Z3-」(ただし、nは1を表す。)となっている点で一致している。また、本願補正発明でいうところの置換基「Z0」、「A1」、「Z1」、「A2」、「A3」及び「Z3」の構造においても、両者は一致している。
一方、本願補正発明の置換基「Z2」においては、「-OCO-」基と「-COO-」基とは選択肢にないので、結局、本願補正発明の一般式(I)の化合物と引用例1発明の式(1)及び(4)の化合物とは、本願補正発明でいうところの置換基「Z2」の構造が、前者では「-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH_(2)CH_(2)COO-、-CH_(2)CH_(2)OCO-、-COOCH_(2)CH_(2)-、-OCOCH_(2)CH_(2)-又は単結合」であるのに対し、後者では「-OCO-又-COO-」である点でのみ相違しているといえる。
これに関して、引用例5には、重合性液晶組成物における重合性液晶化合物として、一般式(I)
【化1】

(式中、W^(1)及びW^(2)はそれぞれ独立的に単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、Y^(1)及びY^(2)はそれぞれ独立的に-COO-又は-OCO-を表し、p及びqはそれぞれ独立的に2?18の整数を表し、式中に存在する3種の1,4-フェニレン基の水素原子はそれぞれ独立的に、炭素原子数1?7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。)で表される2官能液晶性アクリレート化合物を使用する点が記載されている(摘示事項(5a)参照)。また、引用例5には、当該重合性液晶組成物は位相差フィルム等の光学異方体を製造するのに有用であって、偏光フィルムや配向膜の原料として使用可能であること、そしてその使用の際には抗酸化剤などが添加可能であることが記載されている(摘示事項(5b)、(5c)参照)。ここで、当該2官能液晶性アクリレート化合物は、引用文献1発明の式(1)及び(4)の化合物において、本願補正発明でいうところの置換基「Z2」に相当する部分を、本願補正発明における選択肢である「-CH_(2)CH_(2)COO-」又は「-CH_(2)CH_(2)OCO-」とした化合物であると認められる。
したがって、引用例1発明において、抗酸化剤等を配合した重合性液晶組成物のフィルムを偏光板や配向層の原料として使用するにあたり(摘示事項(1d)参照)、当該重合性液晶化合物として、式(1)あるいは(4)の化合物に代えて、これに類似の構造を有する引用例5記載の2官能性アクリレート化合物を用いることは、当業者が容易に想到し得たことといえる。
また、本願補正発明においては、置換基「Z2」を特定のものとすることによる作用効果については何ら説明されていないので、これとして「-CH_(2)CH_(2)COO-」又は「-CH_(2)CH_(2)OCO-」とした化合物を用いることによって、格段の作用効果が生じたものとは認められない。

<相違点2について>
上記引用例3には、「極めて過酷な湿熱条件においても耐久性に優れるセルロースアシレートフィルムを提供し、耐久性に優れる偏光板を提供し、信頼性の高い液晶表示装置を提供する」(摘示事項(3b)参照)ために、劣化防止剤である一般式(2)又は(3)で示されるフェノール系化合物の少なくとも1種をセルロースアシレートに対し0.001?5質量%含有させることが記載されており(摘示事項(3a)(3c)参照)、また上記引用例4には、「過酷な環境下での保存や折り曲げを行った際の表示特性の安定性に優れたメモリー性を備えた表示媒体を提供する」(摘示事項(4b)参照)ために、液晶層の少なくとも1層を含む構成層の少なくとも1層にフェノール系酸化防止剤を含有させることが記載され(摘示事項(4a)参照)、その酸化防止剤の好ましい使用量は、「バインダー1kgに対して0.1g?100gであり、さらに好ましくは1g?10gである」ことが記載されている(摘示事項(4d)参照)。そして引用例3あるいは4に挙げられているフェノール系酸化防止剤には、引用例1で用いられている安定剤である「イルガノックス1076」に相当する酸化防止剤も含まれており(摘示事項(3d)のA4、(4c)の「オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル」参照)、このような酸化防止剤を熱劣化の防止を目的として使用する際に、引用例3あるいは4において定められている使用量を考慮して決定することは、当業者が実施に当たり適宜行うことである。
したがって、引用例1発明において、酸化防止剤の含有量を「0.1?5質量%」と定めることは当業者が容易になし得たことであり、その効果も予測された範囲内のものであって格別のものではない。

なお、請求人は、審判請求書において、「しかしながら、連結基が-COO-及び-OCO-のみからなるものではなく、それ以外の連結基を有する重合性液晶化合物を用いた場合に、高温において位相差変化を少なくすることが可能な酸化防止剤については知られていなかった。このようななか、本願発明は、連結基が-COO-及び-OCO-のみからなるものではない重合性液晶化合物を用いた場合において、特定の含有量の特定の酸化防止剤を用いることで、高温における位相差変化を少なくするという効果を発現するものであり、これは従来にない本願発明の有する有利な効果であると思量する。」として、本願補正発明の有利な効果を主張しているが、本願補正発明における酸化防止剤の種類については従前より重合性液晶組成物において用いられてきたものにすぎず、またその含有量を特定する効果については実際にこれを裏付ける具体的な実施例や比較例が明細書中には何も示されていないため、請求人の主張する上記の「有利な効果」を確認することができない。よって、明細書の記載に基づくものではない請求人の上記主張は理由のないものである。

したがって、本願補正発明は、本願の出願日前に頒布された刊行物である上記引用例1ないし5に記載された発明、及びこの出願前周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-3.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成26年12月16日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成26年2月24日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも1つ以上の水素原子がtert-ブチル基で置換されているフェノール骨格を有する分子量300以上700未満の酸化防止剤を含有し、当該酸化防止剤の含有量が0.1?5質量%であることを特徴とする重合性液晶組成物。」

1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記第2 2.2-1.に記載したとおりである。

2.対比、判断
前記第2 2.2-2.に記載したとおり、引用例1には、「重合性液晶(LC)材料であって、重合性メソゲン性化合物として式(1)?(4)の化合物、重合性接着促進剤として2-ヒドロキシエチルアクリラートを含み、さらに光開始剤としてイルガキュア651を1.00%、界面活性剤としてフルオラッドFC171を0.60%、安定剤としてイルガノックス1076を0.08%含む、重合性液晶材料」の発明(以下、「引用例1発明」という)が実質的に記載されているものと認められる。

そこで、本願発明と引用例発明とを対比すると、発明特定事項の対応関係は、前記第2 2.2-2.の(ア)?(ウ)において述べたとおりであるから、両発明は、本願発明の表現を借りて表すと、

「少なくとも1つ以上の水素原子がtert-ブチル基で置換されているフェノール骨格を有する分子量300以上700未満の酸化防止剤を含有することを特徴とする重合性液晶組成物。」

である点で一致し、次の点で相違している。

<相違点>
本願補正発明においては、「当該酸化防止剤の含有量が0.1?5質量%」であるのに対して、引用例1発明においては、安定剤であるイルガノックス1076の含有量は「0.08%」である点。

上記相違点は、前記第2 2.2-2.において検討した「相違点2」と同じであり、その判断も第2 2.2-2.において述べたのと同じである。

3.むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、本願の出願日前に頒布された刊行物である上記引用例1ないし5に記載された発明、及びこの出願前周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-17 
結審通知日 2016-02-18 
審決日 2016-03-01 
出願番号 特願2012-115583(P2012-115583)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C09K)
P 1 8・ 121- Z (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼澤 英一天野 宏樹  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 冨士 良宏
岩田 行剛
発明の名称 重合性液晶組成物  
代理人 河野 通洋  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ