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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04J
管理番号 1313586
審判番号 不服2015-11271  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-16 
確定日 2016-05-10 
事件の表示 特願2014- 46692「通信方法、およびネットワーク要素」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月 7日出願公開、特開2014-143710、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2005年5月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年5月4日、米国)を国際出願日とする特願2007-512199号の一部を平成23年7月12日に新たな特許出願とした特願2011-153728号の一部を、さらに平成26年3月10日に新たな特許出願としたものであって、同年12月24日付けの拒絶理由(以下、「原審拒絶理由」という)の通知に対し、平成27年2月20日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年3月17日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これを不服として同年6月16日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ、その後、当審による平成28年1月22日付けの拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)の通知に対し、同年3月3日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-17に係る発明は、平成28年3月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-17に記載された事項により特定されるものと認められる。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「 第1のアンテナおよび第2のアンテナを有する移動体無線ネットワークのネットワーク要素から移動端末と通信する方法であって、
前記第1のアンテナのための第1のトレーニングシーケンスを選択する段階と;
第1のデータペイロードを準備する段階と;
前記準備された第1のデータペイロードおよび前記第1のトレーニングシーケンスを含む第1の信号を生成する段階と;
前記ネットワーク要素の前記第1のアンテナからMIMOタイムスロットにおいて前記第1の信号を送信する段階と;
前記選択された第1のトレーニングシーケンスと前記第1のアンテナの間の関連を示す第1の表示を送信する段階と;
前記第2のアンテナのための前記第1のトレーニングシーケンスと異なる第2のトレーニングシーケンスを選択する段階と;
第2のデータペイロードを準備する段階と;
前記準備された第2のデータペイロードおよび前記第2のトレーニングシーケンスを含む第2の信号を生成する段階と;
前記MIMOタイムスロットにおける前記第1の信号の送信と共に、前記ネットワーク要素の前記第2のアンテナから前記MIMOタイムスロットにおいて前記第2の信号を送信する段階と;
前記選択された第2のトレーニングシーケンスと前記第2のアンテナの間の関連を示す第2の表示を送信する段階と、
を含み、
前記第1の表示および前記第2の表示を送信する段階は、前記第1の表示および前記第2の表示を制御チャネルメッセージ内で通知することを含む、方法。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
(1)原査定
原査定は以下のとおりである。

「 この出願については、平成26年12月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由Bによって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
出願人は意見書において、『引用文献1には「2以上の数から送信に用いるアンテナの数を決定する」構成について開示されておらず、引用文献1では、通信装置に設けられるアンテナ本数が2本であることが想定されているため、2本や4本などの2以上の数から、送信に用いるアンテナの数を決定する構成を採用する動機付けもない。さらに、補正後の本願発明は、「前記決定された数の複数のアンテナから前記第1のアンテナを決定するステップ」を有し、これは、送信に用いられるアンテナの本数が2本以上の数のうちで動的に変化するからこそ存在するステップであり、引用文献1には記載も示唆もない』と主張している。
ここで検討するに、引用文献1には、2以上の数から送信に用いるアンテナの数を決定することは記載されていないものの、1本か2本かで送信に用いるアンテナの数を決定することは記載されており([0410]-[0413]、図29)、そうすると、引用文献1には、「前記決定された数の複数のアンテナ」までは記載されていなくとも、「前記決定された数のアンテナから前記第1のアンテナを決定するステップ」は記載されていると認められる。
そして、2以上の数から送信に用いるアンテナの数を決定することは、先の引用文献3([0007]、第1図、第2図)に記載されており、また、新たに追加する“時 慧 ,最適電力配分を行う送信アンテナ選択型MIMOチャネル伝送方式 ,電子情報通信学会2003年総合大会講演論文集 通信1,2003年 3月 3日,P.622,B-5-163”(以下、「周知例1」という)には、送信アンテナN本から送信に用いるアンテナの数Ne(1≦Ne≦N)を決定することが記載されており、Neを2以上に限定することは適宜成し得た事項にすぎないと認められる。
1本か2本かで送信に用いるアンテナの数を決定する引用文献1記載の発明において、先の引用文献3や周知例1に記載の構成を適用することにより、「2以上の数から送信に用いるアンテナの数を決定するステップ」、「前記決定された数の複数のアンテナから前記第1のアンテナを決定するステップ」が行われることになると認められる。
したがって、出願人の主張は採用できない。
したがって、補正後の本願の請求項1、19に係る発明は、先の引用文献1に記載された発明と先の引用文献2、引用文献3、周知例1に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
その他の請求項についても先拒絶理由通知書に記載のとおりである。

<引用文献>
1.特開2003-338802号公報
2.ESTI TS 125 221,2003年12月,V6.0.0
3.特開2002-152091号公報
4.(略)
<本拒絶査定で追加する周知例>
5.時 慧 ,最適電力配分を行う送信アンテナ選択型MIMOチャネル伝送方式,電子情報通信学会2003年総合大会講演論文集 通信1,2003年 3月 3日,P.622,B-5-163」

そうすると、原査定の理由の概要は、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて引用文献2、引用文献3、引用文献5(周知例1)に記載した周知技術を参酌して、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

(2)原審拒絶理由
原審拒絶理由は、以下のとおりである。

「【理由A】(略)

【理由B】
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

(略)

【理由B】について
請求項:1、2、13-16、19-22
引用文献:1、2
備考:
引用文献1には、基地局が移動端末と通信する方法であって(【0433】)、第1及び第2のアンテナの数を決定し、決定された数の複数のアンテナから第1のアンテナを決定し(【0410】-【0413】、図29)、第1のアンテナのための第1のトレーニングシーケンスを選択し(【0313】-【0331】、図20)、第1のデータペイロードを準備し(図20)、準備された第1のデータペイロード及び第1のトレーニングシーケンスを含む第1の信号を生成し(図20)、第1のアンテナから第1の信号を送信し、第2のアンテナから第2の信号を送信するか否かを決定し(【0410】-【0413】、図29)、第2のアンテナのための第1のトレーニングシーケンスと異なる第2のトレーニングシーケンスを選択し(【0313】-【0331】、図20)、第2のデータペイロードを準備し(図20)、準備された第2のデータペイロード及び第2のトレーニングシーケンスを含む第2の信号を生成し(図20)、第1の信号の送信とともに、第2のアンテナから第2の信号を送信する、方法が記載されている。
タイムスロットを用いた通信は、本願の中で先行技術文献として引用されている引用文献2(P.l2のFigure1)に記載のように普通に行われていることである。
引用文献1の図20のトレーニングシーケンスは、プリアンブル、ポストアンブルに対応しているが、ミッドアンブルも引用文献2に記載のように普通に用いられるものである。

(略)

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2003-338802号公報
2.ESTI TS 125 221,2003年12月,V6.0.0
3.特開2002-152091号公報
4.(略)」

2.原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項
(引用文献1)
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-338802号公報(引用文献1)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア「【0098】図2は、本実施の形態における送信装置の構成の一例を示しており、チャネルAの変調信号生成部202は、フレーム構成信号210、チャネルAの送信ディジタル信号201を入力とし、フレーム構成にしたがったチャネルAの変調信号203を出力する。
【0099】チャネルAの無線部204は、チャネルAの変調信号203を入力とし、チャネルAの送信信号205を出力する。
【0100】チャネルAの電力増幅部206は、チャネルAの送信信号205を入力とし、増幅し、増幅されたチャネルAの送信信号207を出力し、電波としてチャネルAのアンテナ208から出力される。
【0101】フレーム構成生成部209は、フレーム構成信号210を出力する。
【0102】チャネルBの変調信号生成部212は、フレーム構成信号210、チャネルBの送信ディジタル信号211を入力とし、フレーム構成にしたがったチャネルBの変調信号213を出力する。
【0103】チャネルBの無線部214は、チャネルBの変調信号213を入力とし、チャネルBの送信信号215を出力する。
【0104】チャネルBの電力増幅部216は、チャネルBの送信信号215を入力とし、増幅し、増幅されたチャネルBの送信信号217を出力し、電波としてチャネルBのアンテナ218から出力される。」

イ「【0313】(実施の形態5)実施の形態5では、同一周波数帯域に複数のチャネルの変調信号を複数のアンテナから送信する送信方法において、あるチャネルに挿入する復調のためのシンボルは連続した複数シンボルで構成され、各チャネルの復調のためのシンボルは同一時刻に配置され、互いに直交していることを特徴とした送信方法、その送信方法における送信装置および受信装置について説明する。
【0314】図20は、本実施の形態における時間軸におけるチャネルAおよびチャネルBのフレーム構成の一例を示しており、2001、2002、2003、2004、2006、2007、2008、2009はチャネルAのパイロットシンボル、2005はチャネルAのデータシンボル、2010、2011、2012、2013、2015、2016、2017、2018はチャネルBのパイロットシンボル、2014はチャネルBのデータシンボルである。
【0315】図21は、チャネルA、チャネルBのパイロットシンボルの同相I-直交Q平面における信号点配置の一例を示しており、2101、2102はパイロットシンボルの信号点である。
【0316】図2は、本実施の形態における送信装置の構成の一例を示している。
【0317】図22は、図2の変調信号生成部202、212の詳細の構成の一例を示しており、データシンボル変調信号生成部2202は、送信ディジタル信号2201およびフレーム構成信号2208を入力とし、フレーム構成信号2208がデータシンボルであることを示していた場合、例えばQPSK変調し、データシンボルの送信直交ベースバンド信号の同相成分2203および直交成分2204を出力する。
【0318】パイロットシンボル変調信号生成部2205は、フレーム構成信号2208を入力とし、フレーム構成がパイロットシンボルであることを示していた場合、パイロットシンボルの送信直交ベースバンド信号の同相成分2206および直交成分2207を出力する。
【0319】同相成分切り替え部2209は、データシンボル送信直交ベースバンド信号の同相成分2203、パイロットシンボルの送信直交ベースバンド信号の同相成分2206、フレーム構成信号2208を入力とし、フレーム構成信号2208で示されたシンボルに相当する送信直交ベースバンド信号の同相成分を選択し、選択された送信直交ベースバンド信号の同相成分2210として出力する。
【0320】直交成分切り替え部2211は、データシンボル送信直交ベースバンド信号の直交成分2204、パイロットシンボルの送信直交ベースバンド信号の直交成分2207、フレーム構成信号2208を入力とし、フレーム構成信号2208で示されたシンボルに相当する送信直交ベースバンド信号の直交成分を選択し、選択された送信直交ベースバンド信号の直交成分2212として出力する。
【0321】直交変調器2213は、選択された送信直交ベースバンド信号の同相成分2210および選択された送信直交ベースバンド信号の直交成分2212を入力とし、直交変調し、変調信号2214を出力する。
【0322】図5は、本実施の形態における受信装置の構成の一例を示している。
【0323】図17は、時間軸における伝送路歪み量を示しており、1701は時刻0における相関演算によって得られた伝送路歪みを(I0,Q0)とする。1702は時刻1におけるデータシンボルを示しており、伝送路歪みを(I1,Q1)とする。1703は時刻2におけるデータシンボルを示しており、伝送路歪みを(I2,Q2)とする。1704は時刻3におけるデータシンボルを示しており、伝送路歪みを(I3,Q3)とする。1705は時刻4におけるデータシンボルを示しており、伝送路歪みを(I4,Q4)とする。1706は時刻5におけるデータシンボルを示しており、伝送路歪みを(I5,Q5)とする。1707は時刻6における相関演算によって得られた伝送路歪みを(I6,Q6)とする。
【0324】図23は、本実施の形態における図5のチャネルAの伝送路歪み推定部506、518、チャネルBの伝送路歪み推定部508、520の構成の一例を示している。
【0325】パイロットシンボル相関演算部2303は、受信直交ベースバンド信号の同相成分2301および直交成分2302、パイロットシンボル系列2304を入力とし、相関演算後のパイロットシンボルの受信直交ベースバンド信号の同相成分2305および直交成分2306を出力する。
【0326】伝送路歪み推定部2307は、相関演算後のパイロットシンボルの受信直交ベースバンド信号の同相成分2305および直交成分2306を入力とし、伝送路歪み推定信号2308を出力する。
【0327】そして、図20、図21を用いて、本実施の形態の送信方法について説明する。
【0328】図20における時刻0のチャネルAのパイロットシンボル2001の信号点を図21の2101(1,1)に配置する。時刻1のチャネルAのパイロットシンボル2002の信号点を図21の2101(1,1)に配置する。時刻2のチャネルAのパイロットシンボル2003の信号点を図21の2101(1,1)に配置する。時刻3のチャネルAのパイロットシンボル2004の信号点を図21の2102(1,1)に配置する。
【0329】そして、時刻0のチャネルBのパイロットシンボル2010の信号点を図21の2101(1,1)に配置する。時刻1のチャネルBのパイロットシンボル2011の信号点を図21の2101(1,1)に配置する。時刻2のチャネルBのパイロットシンボル2012の信号点を図21の2102(-1,-1)に配置する。時刻3のチャネルBのパイロットシンボル2013の信号点を図21の2102(-1,-1)に配置する。
【0330】同様に、2006は2001と信号点配置を同一とし、2007は2002、2008は2003、2004は20092015は2010、2016は2011、2017は2012、2018は2013と信号点配置を同一とする。
【0331】このように、チャネルAの連続したパイロットシンボル2001、2002、2003、2004とチャネルBの連続したパイロットシンボル2010、2011、2012、2013の相関が0となるようにする。
【0332】次に、図2、図22を用いて、送信装置の動作について説明する。
【0333】図2において、フレーム構成信号生成部209は、図20に示したフレーム構成の情報をフレーム構成信号210として出力する。チャネルAの変調信号生成部202は、フレーム構成信号210、チャネルAの送信ディジタル信号201を入力とし、フレーム構成にしたがったチャネルAの変調信号203を出力する。そして、チャネルBの変調信号生成部212は、フレーム構成信号210、チャネルBの送信ディジタル信号211を入力とし、フレーム構成にしたがったチャネルBの変調信号213を出力する。
【0334】このときの変調信号生成部202および変調信号生成部212の動作を図22を用いて、チャネルAの送信部を例に説明する。
【0335】データシンボル変調信号生成部2202は、送信ディジタル信号2201つまり図2のチャネルAの送信ディジタル信号201およびフレーム構成信号2208つまり図2のフレーム構成信号210を入力、フレーム構成信号208がデータシンボルであることを示していた場合、例えば、QPSK変調し、データシンボルの送信直交ベースバンド信号の同相成分2203および直交成分2204を出力する。
【0336】パイロットシンボル変調信号生成部2205は、フレーム構成信号2208を入力とし、フレーム構成信号がパイロットシンボルであることを示していた場合、パイロットシンボルの送信直交ベースバンド信号の同相成分2206および直交成分2207を出力する。
【0337】同相成分切り替え部312は、データシンボル送信直交ベースバンド信号の同相成分2203、パイロットシンボルの送信直交ベースバンド信号の同相成分2206、フレーム構成信号2208を入力とし、フレーム構成信号2208で示されたシンボルに相当する送信直交ベースバンド信号の同相成分を選択し、選択された送信直交ベースバンド信号の同相成分2210として出力する。
【0338】直交成分切り替え部2211は、データシンボル送信直交ベースバンド信号の直交成分2204、パイロットシンボルの送信直交ベースバンド信号の直交成分2207、フレーム構成信号2208を入力とし、フレーム構成信号2208で示されたシンボルに相当する送信直交ベースバンド信号の直交成分を選択し、選択された送信直交ベースバンド信号の直交成分2212として出力する。
【0339】直交変調器2213は、選択された送信直交ベースバンド信号の同相成分2210および選択された送信直交ベースバンド信号の直交成分2212を入力とし、直交変調し、変調信号2214つまり図2の203を出力する。」

ここで、上記アの【0098】?【0104】、上記イの【0313】、【0316】、【0317】の記載によれば、チャネルAのアンテナ208およびチャネルBのアンテナ218を有する送信装置からチャネルAの変調信号及びチャネルBの変調信号を受信装置に送信する方法が記載されている。
また、上記イの【0331】の記載によれば、チャネルAのパイロットシンボルと、チャネルBのパイロットシンボルとは、相関が0となるようにしたものであり、さらに、上記イの【0314】、【0317】、【0318】、【0333】の記載によれば、各チャネルで、送信ディジタル信号を入力し、データシンボルの変調信号を生成し、データシンボルおよびパイロットシンボルを含む変調信号を生成すると言える。
そうすると、摘記事項ア、イ及び図2、20、22の記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「チャネルAのアンテナ208およびチャネルBのアンテナ218を有する送信装置から受信装置に送信する方法であって、
アンテナ208のためのパイロットシンボル2001?2004をアンテナBのためのパイロットシンボル2010?2013との相関が0となるようにし、
データシンボルの変調信号を生成するために、チャネルAの送信ディジタル信号を入力し、
データシンボル2005およびパイロットシンボル2001?2004を含むチャネルAの変調信号203を生成し、
前記送信装置のアンテナ208からチャネルAの変調信号203を送信し、
アンテナ218のためのパイロットシンボル2010?2013をアンテナ208のためのパイロットシンボル2001?2004との相関が0となるようにし、
データシンボルの変調信号を生成するために、チャネルBの送信ディジタル信号を入力し、
データシンボル2014およびパイロットシンボル2010?2013を含むチャネルBの変調信号213を生成し、
チャネルAの変調信号203と共に、前記送信装置のアンテナ218からチャネルBの変調信号213を送信する方法。」

(引用文献2)
原審拒絶理由に引用されたETSI TS 125 221 V6.0.0,ETSI,2003年12月,p.12(引用文献2)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ウ「5 Physical channels for the 3.84 Mcps option
All physical channels take three-layer structure with respect to timeslots, radio frames and system frame numbering(SFN), see [14]. Depending on the resource allocation, the configuration of radio frames or timeslots becomes different. All physical channels need a guard period in every timeslot. The time slots are used in the sense of a TDMA component to separate different user signals in the time domain. The physical channel signal format is presented in figure 1.

A physical channel in TDD is a burst, which is transmitted in a particular timeslot within allocated Radio Frames. The allocation can be continuous, i.e. the time slot in every frame is allocated to the physical channel or discontinuous, i.e. the time slot in a subset of all frames is allocated only. A burst is the combination of two data parts, a midamble part and a guard period. The duration of a burst is one time slot. Several bursts can be transmitted at the same time from one transmitter. In this case, the data parts must use different OVSF channelisation codes, but the same scrambling code. The midamble parts are either identicaly or differently shifted versions of a cell-specific basic midamble code, see section 5.2.3.」
(当審仮訳:5 3.84 Mcpsオプションの物理チャネル
すべての物理チャネルは、タイムスロット及び無線フレーム、システムフレームナンバリング(SFN)に関し、3レイヤ構造をとる([14]参照)。リソース割当てに依存して、無線フレーム又はタイムスロットのコンフィギュレーションは異なる。すべての物理チャネルは、タイムスロット毎にガード期間が必要である。タイムスロットは、時間ドメインにおける異なるユーザの信号を分類するため、TDMAコンポーネントの識別に使用される。物理チャネル信号フォーマットを図1に示す。

TDDにおける1つの物理チャネルは1つのバーストであり、これは割当て無線フレーム内の特定のタイムスロットで送信される。割当ては、連続、すなわち、すべてのフレームのタイムスロットがその物理チャネルに割当てられるか、または、不連続、すなわち、一部分のフレームのタイムスロットだけが割り当てられる。1つのバーストは、2つのデータパート、ミッドアンブルパート、ガード期間の組み合わせである。バーストの長さは、1つのタイムスロットである。いくつかのバーストは、1つの送信機から同時に送信され得る。この場合、データパートは、異なるOVSFチャネライゼーションコードを用いなければならないが、スクランブリングコードは同じである。ミッドアンブルパートは、セル固有の基本ミッドアンブルコードが、同様に又は異ならせてシフトされたバージョンである(section 5.2.3参照)。)

摘記事項ウ及び図1の記載によれば、引用文献2には、以下の技術事項が記載されている。

「2つのデータパート、ミッドアンブルパート、ガード期間からなるバーストを、無線フレーム内のタイムスロットで送信すること。」

(引用文献3)
原審拒絶理由に引用された特開2002-152091号公報(引用文献3)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

エ「【0006】
【発明の実施の形態】図1は、チャネルを有限インパルス応答(FIR)フィルタとしたときに、チャネル長さMを有するMIMOシステムのトレーニング用または同期化用、あるいはその両方の直交シーケンスの組を生成する方法を表す。このような長いチャネル長は、高速データレートのCDMAシステムおよびTDMAシステムで用いられ、そしてチャネル長は1Mbps以上である。
【0007】新たな直交シーケンスが必要とされたとき、例えば新たなMIMO無線通信システムを展開するときに、プロセスはステップ101で始まる。ステップ103において、チャネル長Mが従来公知の方法で決定される。送信用アンテナの本数Nは、ステップ105で決定される。一般的にこれは、通信用に使用される送信器に具備したアンテナの数である。
【0008】その後、ステップ107において、チャネル長Mと送信用アンテナの本数Nの積が決定され、少なくともその長さの直交シーケンスが前掲の同時特許出願に記載した方法で決定される。
【0009】次に条件ブランチ109で等しいオフセットスペース、すなわち等しいシフト長さが、生成されるべきシーケンスの組に対し好ましいか否かを決定するためのテストをする。このステップ109におけるテスト結果がYESの場合は、等しいシフトスペースが望ましいことを表し、制御はステップ111に行き、長さMのN個のシフトがステップ107で決定されたシーケンスに適用され、これによりN個のシーケンスを生成する。これは、各送信用アンテナに対しチャネル長さの倍数だけ、各シーケンスがオフセットされたのと同じことである。ここで倍数は0?N-1である。次にこのプロセスは、ステップ113に行く。
【0010】ステップ109におけるテスト結果がNOの場合には、制御はステップ115に行き、N個のシフトがステップ107で得られた直交シーケンスに適用されるが、このシフトは均一に行われるものではない。かくしてN個のシフトはあるが、シフトの平均のみがMに等しい。好ましくは、様々な信号が発信されるアンテナを区別するためには、シフトのパターンには対称があってはならない。シフトのシーケンスは、ROMあるいは他の揮発性メモリ内に記憶しておくことができる。別法として、特定の規則、例えばどのアンテナから信号が発信されているかを検出することがさらに容易となるような規則がある。次にこのプロセスは、ステップ113に進む。」

摘記事項エ、図1、2の記載によれば、引用文献3には、以下の技術事項が記載されている。

「新たなMIMO無線通信システムを展開するとき、送信用アンテナの本数を決定し、トレーニング用または同期化用のシーケンスの組を生成すること。」

(引用文献5)
原査定において周知例として引用された「時 慧,外3名,“最適電力配分を行う送信アンテナ選択型MIMOチャネル伝送方式”,2003年電子情報通信学会総合大会講演論文集,電子情報通信学会,2003年 3月,通信1,p.622」(引用文献5)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

オ「1.はじめに 複数の送受信アンテナを用いて高速信号伝送を行う技術として,MIMOチャネル伝送方式がある[1].また,送信側でチャネル情報が既知である場合,チャネル容量を増大できるE-SDM方式も検討されている[2].しかしながら,このE-DSM方式では,完全なチャネル情報を必要とするため,大量のフィードバックが必要となる.その対策として,少ないフィードバック量で容量を増大する方法,アンテナ選択方式[3]と電力配分方式[4]が検討されている.本稿では,受信側で送信アンテナ選択及び最適な電力配分を同時に行い,その情報を送信側にフィードバックする方式を提案し,容量増大効果を明らかにする.
2.システムモデル 図1は送受信機にそれぞれN,M本のアンテナを用いた最適電力配分を行う送信アンテナ選択型MIMOチャネル伝送方式を示している.この提案方式では,伝搬チャネルに応じて送信アンテナの選択と,選択したアンテナに対する最適な電力配分を同時に行って送信することにより,容量を増大させている.
送信機は受信機からのフィードバック情報に基づき,N本の送信アンテナのうち,Ne本(1≦Ne≦N)を用いて,各送信アンテナから独立な信号サブストリームを同じ周波数で送信する.受信機では,すべての送信アンテナの組み合わせパターンごとに,受信処理後の通信容量を計算し,容量が最大となる送信アンテナの組み合わせパターンを送信機にフィードバックする.」(上記「≦」は、下部の等号が「=」であるが、「-」である原文の記号に代替して用いたものである。)

摘記事項オの記載によれば、引用文献5には、以下の技術事項が記載されている。

「MIMOチャネル伝送において、通信容量が最大となるように、受信側で伝搬チャネルに応じて送信アンテナ選択及び最適な電力配分を行い、その情報を送信側にフィードバックし、N本の送信アンテナのうちNe本(1≦Ne≦N)を用いて送信すること。」

(引用文献6)
前置報告書で引用された特開平11-252002号公報(引用文献6)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

カ「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば直接拡散符号分割多元接続(DS-CDMA)方式を用いた自動車電話・携帯電話システム(セルラシステム)に関し、特に同期検波および送信電力制御のために用いられるパイロットチャネルの送信方法に特徴を有するセルラシステムに関する。」

キ「【0026】図1を参照すると、本実施の形態の基地局装置は、N個(Nは正整数)のパイロットチャネル送信手段101?103と、M個(Mは正整数)のデータ送受信手段104?106と、複数のアンテナエレメント109と、各送信手段101?107から送信される信号の位相および振幅に重みをつけて前記各アンテナエレメント109へ供給することにより、L種類(Lは正整数)のアンテナ指向性パターンを生成するアンテナ重み付けマトリックス108と、前記アンテナ重み付けマトリックス108へ重み付け係数を供給するとともに、データチャネルとパイロットチャネルとを対応させ、制御チャネル送受信手段107より通知する制御部110と、各移動端末へ通信に用いるデータチャネルと対応するパイロットチャネルを通知するための制御チャネル送受信手段107とにより構成される。」

ク「【0038】次に、制御チャネルを使って、該移動端末が使用するべきパイロットチャネルの番号(あるいは拡散符号)、データチャネルの番号(あるいは拡散符号)を通知して(F-5)、データチャネルの送受信を開始する(F-6)。」

摘記事項カ、キ、クの記載によれば、引用文献6には、以下の技術事項が記載されている。

「CDMA方式のセルラシステムにおいて、移動端末が通信に用いるデータチャネルの番号と対応するパイロットチャネルの番号を制御チャネルにより通知すること。」

(2)対比
本願発明を引用発明と対比すると、

a 引用発明の「アンテナ208」、「アンテナ218」は、本願発明の「第1のアンテナ」、「第2のアンテナ」にそれぞれ相当する。
また、本願明細書の「ネットワーク要素」は、本願明細書の【0030】、【0031】の記載によれば、「基地局」又は「移動端末」と解されるから、引用発明の「送信装置から受信装置に送信する」ことと、本願発明の「移動体無線ネットワークのネットワーク要素から移動端末と通信する」ことは、「装置から他の装置と通信する」ことである点で共通する。

b 引用発明の「送信ディジタル信号を入力」することは、「データシンボルの変調信号を生成する」ことの準備と言えるから、本願発明の「データペイロード」の「準備」に相当する。

c 引用発明の「パイロットシンボル2001?2004」、「データシンボル2005」、「チャネルAの変調信号203」は、本願発明の「第1のトレーニングシーケンス」、「第1のデータペイロード」、「第1の信号」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「アンテナ218のためのパイロットシンボル2010?2013」は、「アンテナ208のためのパイロットシンボル2001?2004」との相関が0であり、異なるものであることを踏まえると、引用発明の「パイロットシンボル2010?2013」、「データシンボル2014」、「チャネルBの変調信号213」は、本願発明の「前記第1のトレーニングシーケンスと異なる第2のトレーニングシーケンス」、「第2のデータペイロード」、「第2の信号」にそれぞれ相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「 第1のアンテナおよび第2のアンテナを有する装置から他の装置と通信する方法であって、
第1のデータペイロードを準備する段階と;
前記準備された第1のデータペイロードおよび前記第1のトレーニングシーケンスを含む第1の信号を生成する段階と;
前記装置の前記第1のアンテナから前記第1の信号を送信する段階と;
第2のデータペイロードを準備する段階と;
前記準備された第2のデータペイロードおよび前記第2のトレーニングシーケンスを含む第2の信号を生成する段階と;
前記第1の信号の送信と共に、前記装置の前記第2のアンテナから前記第2の信号を送信する段階と;
を含む、方法。」

(相違点1)
一致点の「装置」、「他の装置」に関し、本願発明では、「移動体無線ネットワークのネットワーク要素から移動端末と通信する方法であって」、「前記ネットワーク要素の前記第1のアンテナからMIMOタイムスロットにおいて前記第1の信号を送信する段階と;」「前記ネットワーク要素の前記第2のアンテナから前記MIMOタイムスロットにおいて前記第2の信号を送信する段階と;」を含むのに対し、引用発明では、「送信装置」が「移動体無線ネットワークのネットワーク要素」であること、及び、「受信装置」が「移動端末」であることについて明示されていない点。

(相違点2)
一致点の「第1のアンテナおよび第2のアンテナを有する装置から他の装置と通信する方法」が、本願発明では、「前記第1のアンテナのための第1のトレーニングシーケンスを選択する段階」及び「前記第2のアンテナのための前記第1のトレーニングシーケンスと異なる第2のトレーニングシーケンスを選択する段階」を含むのに対し、引用発明では、パイロットシンボルを選択することについて明示されていない点。

(相違点3)
一致点の「第1の信号を送信する」こと、及び、「第2の信号を送信する」ことに関して、本願発明では、「MIMOタイムスロットにおいて」送信するのに対し、引用発明では、「MIMOタイムスロット」について明示されていない点。

(相違点4)
一致点の「第1のアンテナおよび第2のアンテナを有する装置から他の装置と通信する方法」が、本願発明では、「前記選択された第1のトレーニングシーケンスと前記第1のアンテナの間の関連を示す第1の表示を送信する段階」と、「前記選択された第2のトレーニングシーケンスと前記第2のアンテナの間の関連を示す第2の表示を送信する段階」を含み、「前記第1の表示および前記第2の表示を送信する段階は、前記第1の表示および前記第2の表示を制御チャネルメッセージ内で通知することを含む」のに対し、引用発明では、トレーニングシーケンスとアンテナの間の関連を示す表示を送信することについて明示されていない点。

(3)判断
まず、上記相違点4について検討する。
引用発明の「アンテナ208のためのパイロットシンボル2001?2004」と、「アンテナ218のためのパイロットシンボル2010?2013」に関して、いずれのアンテナに、いかなるシンボル列を用いるかは、設計段階など、事前に受信側と取り決めたシンボルを用いるようにすることで足り、両者の関連についての通知を要するものではないから、本願発明のように、トレーニングシーケンスとアンテナの間の関連を示す表示を送信することを、引用発明から導き出すことはできない。

また、上記「(1)引用文献の記載事項」の項で述べたように、引用文献2には、「2つのデータパート、ミッドアンブルパート、ガード期間からなるバーストを、無線フレーム内のタイムスロットで送信すること。」が記載されているが、タイムスロットを用いた通信に関するものであり、本願発明のように、トレーニングシーケンスとアンテナの間の関連を示す表示を送信することについては、開示も示唆もされていない。

さらに、引用文献3には、「新たなMIMO無線通信システムを展開するとき、送信アンテナの本数を決定し、トレーニング用または同期化用のシーケンスの組を生成すること。」が記載されており、引用文献5には、「MIMOチャネル伝送において、通信容量が最大となるように、受信側で伝搬チャネルに応じて送信アンテナ選択及び最適な電力配分を行い、その情報を送信側にフィードバックし、N本の送信アンテナのうちNe本(1≦Ne≦N)を用いて送信すること。」が記載されているが、いずれも送信アンテナの本数の決定に関するものであり、トレーニングシーケンスとアンテナの間の関連を示す表示を送信することについては、開示も示唆もされていない。

したがって、引用発明、又は、引用文献2、3、5に基づいて、相違点4に係る本願発明の構成、すなわち「前記選択された第1のトレーニングシーケンスと前記第1のアンテナの間の関連を示す第1の表示を送信する段階」と、「前記選択された第2のトレーニングシーケンスと前記第2のアンテナの間の関連を示す第2の表示を送信する段階」を含み、「前記第1の表示および前記第2の表示を送信する段階は、前記第1の表示および前記第2の表示を制御チャネルメッセージ内で通知することを含む」ことは、想起し得ない。

また、相違点4に係る本願発明の上記構成は、技術常識を勘案しても周知技術と言えるものでもない。

よって、本願発明は、上記相違点1?3について検討するまでもなく、引用発明及び引用文献2、3、5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとは言えない。

(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明並びに引用文献2、3、5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

また、本願の請求項2-15に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明並びに引用文献2、3、5に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

さらに、請求項16は、請求項1に係る「方法」の発明のカテゴリーを物とし、「ネットワーク要素」とした発明であり、請求項17は、請求項16に係る発明をさらに限定したものであるから、同様に、引用発明並びに引用文献2、3、5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

なお、上記「(2)対比」の項の上記相違点4に関し、平成27年7月21日付けの前置報告書において引用された、引用文献6:特開平11-252002号公報について検討する。
引用文献6には、上記「(1)引用文献の記載事項」の項で述べたように、「CDMA方式のセルラシステムにおいて、移動端末が通信に用いるデータチャネルの番号と対応するパイロットチャネルの番号を制御チャネルにより通知すること。」が記載されている。
ここで、上記データチャネルを、CDMAの拡散符号のチャネルのみならず、アンテナ毎の空間チャネルも含むような一般化したチャネルとして捉え、引用発明のようなアンテナ毎のチャネルで通信する技術に適用したとしても、チャネルの番号とともに通知される情報は、いずれのパイロットシーケンスを送信するかといった情報ではなく、いずれのパイロットチャネルでパイロットシーケンスを送信するかといった情報となるので、本願発明のように、トレーニングシーケンスとアンテナの間の関連を示す表示を送信することを、引用文献6に記載された技術事項から導き出すことはできない。
また、引用発明では、「パイロットシンボル」が、「データシンボル」と同じ変調信号に含まれ、引用文献6に記載された技術事項のように、データチャネルと別のチャネルで送信されるものではないから、そもそも、いずれのパイロットチャネルで送信されるかを通知する必要がなく、引用発明に、引用文献6に記載された技術事項を適用する動機付けも存在しない。
したがって、引用文献6に基づいて、本願発明の「前記選択された第1のトレーニングシーケンスと前記第1のアンテナの間の関連を示す第1の表示を送信する段階」と、「前記選択された第2のトレーニングシーケンスと前記第2のアンテナの間の関連を示す第2の表示を送信する段階」を含み、「前記第1の表示および前記第2の表示を送信する段階は、前記第1の表示および前記第2の表示を制御チャネルメッセージ内で通知することを含む」ことは、想起し得ない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

「 1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



●理由1(明確性)について

・請求項 1?17
(1)請求項1には、「第1のアンテナおよび第2のアンテナを有する移動体無線ネットワークのネットワーク要素から移動端末との通信する方法であって、
2以上の数から送信に用いるアンテナの数を決定するステップ」と記載されている。

「第1のアンテナ」と「第2のアンテナ」の2つのアンテナを前提としているため、送信に用いることができるアンテナは2つに限られるように解される。

そうすると、「アンテナの数」に関し、「2以上の数」とは、「2」のみに限られるから、「2以上の数」から「決定」を行うことの技術的意味が不明である。

また、仮に、3以上の数のアンテナを備えているという前提の下で、送信に用いるアンテナの数を3以上として決定する場合、第1及び第2のアンテナ以外のアンテナで、いかなるトレーニングシーケンス、ペイロードを送信するのか、不明である。

請求項16の記載も同様であるので、従属請求項を含め、請求項1?17に係る発明が不明確である。

・請求項 1?15
(2)請求項1には、「請求項1に記載の方法。」と記載されており、自らの請求項を引用しており、不明確である。

従属請求項を含め、請求項1?15に係る発明が不明確である。

・請求項 2、3
(3)請求項2には、「第1の信号を生成する段階は、前記準備された第3のデータペイロード及び前記第3のトレーニングシーケンスを更に有する」と記載されているが、「第1の信号」自体ではなく、「段階」が「データペイロード」及び「トレーニングシーケンス」を有する旨が記載されているので、日本語として意味が不明確である。

請求項3の「前記第2の信号を生成する段階は、・・・(中略)・・・有する」の記載も同様である。

・請求項 16、17
(4)請求項16には、「前記ネットワーク要素の前記第1のアンテナから前記MIMOタイムスロットにおいて前記第1の信号を送信し」と記載されているが、該記載より前に「MIMOタイムスロット」の記載がないので、「前記MIMOタイムスロット」の記載では、不明確である。

従属請求項を含め、請求項16、17に係る発明が不明確である。 」

2.当審拒絶理由の判断
(1)平成28年3月3日付け手続補正書によって、補正前の請求項1の「2以上の数から送信に用いるアンテナの数を決定するステップと;
前記決定された数の複数のアンテナから前記第1のアンテナを決定するステップと;」の記載が削除された。
請求項16も同様の補正がされ、不明確な記載が削除されることで、当審拒絶理由の理由1(1)は解消した。

(2)平成28年3月3日付け手続補正書によって、補正前の請求項1の「請求項1に記載の」の記載が削除された。
自らの請求項を引用する旨の記載が削除されることで、当審拒絶理由の理由1(2)は解消した。

(3)平成28年3月3日付け手続補正書によって、補正前の請求項2の「前記第1の信号を生成する段階」の記載が「前記第1の信号」に補正された。
これにより、「第1の信号」が「データペイロード」及び「トレーニングシーケンス」を有する旨の記載となり、日本語としての意味が明確になった。
請求項3も同様の補正がされ、当審拒絶理由の理由1(3)は解消した。

(4)平成28年3月3日付け手続補正書によって、補正前の請求項16の「前記MIMOタイムスロット」の記載が「MIMOタイムスロット」に補正され、不明確であった「前記」の記載が削除された。
これにより、当審拒絶理由の理由1(4)は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-04-22 
出願番号 特願2014-46692(P2014-46692)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04J)
P 1 8・ 537- WY (H04J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 羽岡 さやか  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 坂本 聡生
林 毅
発明の名称 通信方法、およびネットワーク要素  
代理人 亀谷 美明  

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