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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G21C
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G21C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G21C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G21C
管理番号 1313665
審判番号 不服2015-12516  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-02 
確定日 2016-04-21 
事件の表示 特願2011-257179「調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月10日出願公開、特開2013-113597〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年11月25日を出願日とする出願であって、平成26年7月31日付けで拒絶理由が通知され、同年10月2日付けで手続補正がなされるとともに意見書及び上申書が提出され、同年12月12日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成27年2月16日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年3月31日付けで前記平成27年2月16日付け手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月2日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成27年7月31日に面接を希望する上申書が提出され、同年8月19日に前置審査において審査官と面接がなされ、同年8月21日に前置報告がなされ、平成28年1月22日に電話で審判合議体に対して面接要請がなされ、同年2月3日に審判合議体との技術説明の面接がなされたものである。

第2 平成27年7月2日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、補正前(平成26年10月2日付け手続補正書によるもの)の特許請求の範囲の請求項1ないし3につき、
「【請求項1】
長方形状の本体と、該本体に搭載されたカメラと、前記本体下部の長手方向前後にそれぞれ設けられた一輪のクローラと、前記一輪の各クローラの取り付け方向を、前記長方形状の本体の長手方向と、前記長方形状の本体の直交方向とに切替るためのクローラ方向変換手段を備えていることを特徴とする調査ビークル。
【請求項2】
請求項1に記載の調査ビークルにおいて、前記クローラ方向変換手段は、前記一輪の各クローラの取り付け方向を、ともに前記長方形状の本体の長手方向とし、またともに前記長方形状の本体の直交方向とすることを特徴とする調査ビークル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の調査ビークルにおいて、配管などの狭隘部内を進行するときには、前記一輪の各クローラはその長手方向を前記本体の長手方向に沿って直列に配置し、平面上を進行するときには、その長手方向を前記本体の直交方向に沿って並列に配置するように、前記クローラ方向変換手段により位置づけることを特徴とする調査ビークル。」
とあったものを、
「【請求項1】
長方形状の本体と、該本体に搭載されたカメラと、前記本体下部の長手方向前後に1つずつ設けられたクローラであって、該長手方向前後の各クローラは、1つの履帯状ローラ駆動部を備え少なくとも第1の方向に回転されて進行し、該第1の方向を長手方向とするクローラ、該クローラと前記本体を接続するクローラ方向変換軸が、クローラ方向変換モータにより駆動されて、前記本体下部の長手方向前後の2つのクローラの長手方向を、ともに前記長方形状の本体の長手方向とし、またともに前記長方形状の本体の直交方向とするクローラ方向変換手段を備え、配管などの狭隘部内を進行するときには、前記各クローラはその長手方向を前記本体の長手方向に沿って直列に配置し、平面上を進行するときには、その長手方向を前記本体の直交方向に沿って並列に配置するように、前記クローラ方向変換手段により位置づけるとともに、前記各クローラは同じ方向に回転することで進行することを特徴とする調査ビークル。」(以下「本願補正発明」という。)
に補正するものである(下線は請求人が付したとおりである。)。

2 特許法第17条の2第3項(新規事項の追加)について
(1)本件補正は、補正前の請求項1の「各クローラ」に関して、「該長手方向前後の各クローラは、1つの履帯状ローラ駆動部を備え」るとの構成を付加する内容を含むものである。

(2)本願出願当初の明細書及び図面の記載内容
本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「本願当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。
ア 「【0034】
図3は、調査ビークルに駆動力を与える円形断面クローラ43a,43bの構造を示す図である。同図において、上が上面図、中央が下面図、左下が平面図、右下が側面図を示している。この図のように円形断面クローラ43a,43bは、クローラケースに囲まれて履帯状ローラ駆動部62a,62bを備え、履帯状ローラ駆動部62a,62bの長手方向Xが長軸回転軸61により支えられている。また、2つの履帯状ローラ駆動部62a,62bは、長手方向のW1方向に回転するとともに、長手方向のW1方向と直行するY方向W2に回転することもできる。これにより全方向駆動が可能になる。」(下線は、理解の一助のために当審で付したものである。)

イ 図1ないし3は次のものである。






(3)判断
ア 上記(2)によれば、本願当初明細書等には、「円形断面クローラ43a,43b」は、「クローラケースに囲まれて履帯状ローラ駆動部62a,62bを備え」るとされ、「履帯状ローラ駆動部62a,62b」の「長手方向Xが長軸回転軸61により支えられている」とされる。
そうすると、各「円形断面クローラ43a,43b」は、それぞれが2つの「履帯状ローラ駆動部62a,62b」を備えることが記載されていると認められるところ、本願当初明細書等を見ても、各「円形断面クローラ43a,43b」が、「1つの履帯状ローラ駆動部」を有するとは記載されておらず、また、示唆もない。むしろ、「2つの履帯状ローラ駆動部」と記載されている。
また、「履帯状ローラ駆動部」が1つの場合には、「クローラケースに囲まれ」、「長手方向Xが長軸回転軸61により支えられ」る構成とした上で、どのようにして、「長手方向のW1方向に回転するとともに、長手方向のW1方向と直行するY方向W2に回転することもできる。これにより全方向駆動が可能になる」ものを実現するのか理解できない。
また、このように動作する「1つの履帯状ローラ駆動部」が自明な事項であったとする根拠もない。

イ しかるに、上記(2)のような、「円形断面クローラ43a,43bは、クローラケースに囲まれて(2つの)履帯状ローラ駆動部62a,62bを備え」ることに係り、これを1つの「履帯状ローラ駆動部」を有するものとする構成は、本願当初明細書の記載により導かれる技術的事項とは別異のものであるから、本願当初明細書には、上記「各クローラは、1つの履帯状ローラ駆動部を備え」るものである本件補正発明が記載されていたということはできない。

ウ 小括
以上によれば、上記(1)の内容を含む本件補正は、本願当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、本願当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

3 特許法第17条の2第6項(独立特許要件)について
(1)本件補正の目的
ア 本件補正は、補正前の請求項1にあった、「前記本体下部の長手方向前後にそれぞれ設けられた一輪のクローラと」との記載を「前記本体下部の長手方向前後に1つずつ設けられたクローラであって、該長手方向前後の各クローラは、1つの履帯状ローラ駆動部を備え少なくとも第1の方向に回転されて進行し、該第1の方向を長手方向とするクローラ」と補正し(以下「補正1」という。)、補正前の請求項1にあった、「前記一輪の各クローラの取り付け方向を、前記長方形状の本体の長手方向と、前記長方形状の本体の直交方向とに切替るためのクローラ方向変換手段」、及び、補正前の請求項2にあった、「前記クローラ方向変換手段は、前記一輪の各クローラの取り付け方向を、ともに前記長方形状の本体の長手方向とし、またともに前記長方形状の本体の直交方向とする」を、「該クローラと前記本体を接続するクローラ方向変換軸が、クローラ方向変換モータにより駆動されて、前記本体下部の長手方向前後の2つのクローラの長手方向を、ともに前記長方形状の本体の長手方向とし、またともに前記長方形状の本体の直交方向とするクローラ方向変換手段を備え」と補正し(以下「補正2」という。)、「補正前の請求項3にあった、「配管などの狭隘部内を進行するときには、前記一輪の各クローラはその長手方向を前記本体の長手方向に沿って直列に配置し、平面上を進行するときには、その長手方向を前記本体の直交方向に沿って並列に配置するように前記クローラ方向変換手段により位置づける」を「配管などの狭隘部内を進行するときには、前記各クローラはその長手方向を前記本体の長手方向に沿って直列に配置し、平面上を進行するときには、その長手方向を前記本体の直交方向に沿って並列に配置するように、前記クローラ方向変換手段により位置づけるとともに、前記各クローラは同じ方向に回転することで進行する」と補正する(以下「補正3」という。)ものである。

イ 上記アによれば、補正1は「一輪のクローラ」との不明確な記載を釈明しつつ、「クローラ」に関して、「該長手方向前後の各クローラは、1つの履帯状ローラ駆動部を備え少なくとも第1の方向に回転されて進行し、該第1の方向を長手方向とする」との限定を付加するものである。

ウ 上記アによれば、補正2は「一輪の各クローラの取り付け方向」との不明確な記載を釈明しつつ、「クローラ方向変換軸」に関して、「クローラ方向変換モータにより駆動され」るとの限定を付加するものである

エ 上記アによれば、補正3は補正1に合わせて補正するとともに、「平面上を進行するときに」関して、「前記各クローラは同じ方向に回転することで進行する」との限定を付加するものである。

オ 上記イないしエの検討によれば、上記アの本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含む。

(2)独立特許要件について
そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。
ア 特許法第17条の2第6項(特許法第36条第6項第1号)について
(ア)本件補正は、上記2(1)の補正を含むものである。

(イ)本願出願当初の明細書及び図面の記載内容
本願当初明細書等には、上記2(2)に摘記したとおりの記載がある。

(ウ)判断
上記2(3)で検討したとおり、本願当初明細書には、上記「各クローラは、1つの履帯状ローラ駆動部を備え」るものである本件補正発明が記載されていたということはできない。

(エ)小括
以上によれば、上記(ア)の内容を含む本件補正は、本願明細書に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件も満たさないものであって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(オ)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。

イ 特許法第36条第4項第1号について
(ア)上記2(2)で摘記したとおり、本願の「履帯状ローラ駆動部」は、「クローラケースに囲まれ」、「長手方向Xが長軸回転軸61により支えられ」、「長手方向のW1方向に回転するとともに、長手方向のW1方向と直行するY方向W2に回転することもできる。これにより全方向駆動が可能になる」ものであるとされる。(下線は、理解の一助のために当審で付したものである。)

(イ)しかしながら、「該長手方向前後の各クローラは、1つの履帯状ローラ駆動部を備え」るものである場合、「クローラケースに囲まれ」、「長手方向Xが長軸回転軸61により支えられ」る構成とした上で、具体的にどのようにして、「長手方向のW1方向と直行するY方向W2に回転することもできる。」ものを実現するのか理解できない。
また、「長手方向のW1方向と直行するY方向W2に回転することもできる」「1つの履帯状ローラ駆動部」が説明がなくとも当業者が実施をすることができることが理解できるような周知技術があったとの証拠もない。

(ウ)したがって、本願補正発明が、「該長手方向前後の各クローラは、1つの履帯状ローラ駆動部を備え」るものである場合は、どのようにして「長手方向のW1方向に回転するとともに、長手方向のW1方向と直行するY方向W2に回転することもできる。これにより全方向駆動が可能になる」ものを実現するのか、理解できず当業者が実施できない。
また、平成28年2月3日の面接でもこの点についての説明はなされなかった。

(エ)よって、本願補正発明が、「該長手方向前後の各クローラは、1つの履帯状ローラ駆動部を備え」るものであるとあるとする場合は、本願の発明の詳細な説明は、経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないものである。

(オ)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。

4 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、上記2での検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、上記3での検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、平成26年10月2日付けで補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2、[理由]1において、補正前のものとして示したとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶理由である、審査官による平成26年12月12日付けの最後の拒絶理由の概要は以下のとおりである。
『理由1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1-3
・引用文献1-5
・・・(途中省略)・・・

理由2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1には、「一輪のクローラ」という記載があるが、請求項1及び明細書には、「一輪のクローラ」という記載が意味するものが明確に定義されておらず、「一輪のクローラ」という記載の技術的意味が不明確である。(なお、最初に添付された明細書の【0030】段落には「2つのクローラ」と記載されており、「1つのクローラ」と「一輪のクローラ」との技術的差異が明確ではない。もし「一輪のクローラ」に「1つのクローラ」との技術的差異があるならば、「一輪のクローラ」という記載は、最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されておらず、該補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとは認められない。もし、技術的差異がないならば、誤解が生じないように「1つのクローラ」という記載に補正されたい。)
また、請求項1を引用する請求項2,3にも同様の点が指摘される。
(2)請求項1には、「取り付け方向」という記載があるが、請求項1及び明細書には、クローラを取り付ける際の方向を指すのか、取り付けた後のクローラの位置関係を表すのか等の該記載の定義について明確に規定されておらず、該記載が何を指し示すのかが不明確である。(なお、「取り付け方向」という記載は、最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されておらず、該補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとは認められない。)
また、請求項1を引用する請求項2,3にも同様の点が指摘される。
よって、請求項1-3に係る発明は明確でない。』

3 上記2の拒絶理由に対する請求人の主張
(1)平成27年2月16日付け意見書の概要
「(1)本件出願は、特許法第29条第2項、特許法第36条を適用条文として拒絶理由通知(最後)を受けました。
つきましては、別紙の通り手続補正書を提出して、特許請求の範囲の記載を補正すると共に、特許請求の範囲に記載された発明に基づいて意見を申し述べます。
(2)補正の内容
(イ)今回の手続補正書では、特許請求範囲の記載を以下のように見直しております。
・・・(途中省略)・・・
(ロ)今回の補正では、旧請求項1,2,3の構成要件を取り込んでおります。このため、アンダーラインは実質的に補正された箇所のみに記載しております。
(ハ)また今回の補正では、特許法第36条第6項第2号によるご指摘事項(1)(2)に対して、以下のように対処しております。この対応により、特許法第36条第6項第2号によるご指摘は解消をしているものと考えます。
ご指摘事項(1)について、「一輪」との記載は誤記ですので、これを取りやめております。
ご指摘事項(2)について、「取り付け方向」との記載は不明瞭でありますので、これを取りやめております。
・・・(途中省略)・・・
(4)引用文献の記載事項と拒絶理由での指摘事項
(イ)引用文献1について、審査官殿は「本体下部の長手方向前後に1つずつ設けられたクローラ」を備えていない点で相違するとされておりますが、今回の補正により、それ以外にも、クローラの形状「長手方向と短手方向の形状を備えるクローラ」、進行時における配置形状と回転方向「配管と、平面で、各クローラは同じ方向に回転することで進行する」などの点でも相違しております。
(ロ)また審査官殿は、引用文献2-5に「クローラ型の走行機構として1つの無限軌道帯を用いる構成は周知」とされたうえで、引用文献1の構造に引用文献2-5の1つの無限軌道帯を適用することは容易とされております。
然るにこれらの引用文献2-5の構造は、前後2つのクローラを接続部で接続した、いば蛇のような直線状の形状としたものであり、本発明のように本体下部にクローラを備えた形状のものではありません。
・・・(途中省略)・・・
(ハ)さらに本発明では、ただ単に4輪駆動を2輪駆動(前後配置の意味)にしたのみではありません。今回の補正で明らかにしたように、2輪駆動(前後配置)にしたうえで、長手方向2輪駆動と直交方向2輪駆動の2つの態様をとって進行するようにしたものであります。進行に関し、各クローラは同じ方向に回転することとしたものであります。
・・・(途中省略)・・・
(ニ)以上要するに、引用文献を組み合わせることの必然性が存在したにしても、組み合わせた結果は全く相違する形状、機能、運用のものであることが明らかであります。
(ホ)以上述べたように、本発明は単に前後に2つずつのクローラを備えた4輪駆動の構成を、前後1つずつのクローラを備えた2輪駆動に置き換えただけものではありません。
・・・(途中省略)・・・」
(なお、平成27年2月16日付け意見書とともに提出された同日付けの手続補正は、同年3月31日付けで却下された。)

(2)平成27年7月2日付け拒絶査定不服審判請求の概要
「(3)本願発明が特許されるべき理由
(a)本願発明の説明
第1手続補正書に記載された請求項1に係る発明を、今回、別途提出しました手続補正書(以下、第2手続補正書という)に記載された請求項1のように補正致しました。
・・・(途中省略)・・・
この補正は、クローラとクローラ方向変換手段の構成を明確にしたものであります。このうちクローラについて、「前記本体下部の長手方向前後に1つずつ設けられたクローラであって、該長手方向前後の各クローラは、1つの履帯状ローラ駆動部を備え少なくとも第1の方向に回転されて進行し、該第1の方向を長手方向とするクローラ」の点は、図1、図2、図3のクローラ構成、および出願時明細書の段落0030から0034の記載を補正の根拠としております。特に段落0034には、履帯状ローラ駆動部62a、62bが本体下部前後に1つずつ備えられることが記載されており、また図1において第1の方向(X方向)に回転(W1)されて進行するとき、この第1の方向がクローラあるいは履帯状ローラ駆動部62a、62bにおける長手方向になっていることが明らかであります。
・・・(途中省略)・・・
第2補正後の請求項1に係る発明の補正の趣旨
この第2補正後の請求項1に係る発明の補正では、配管から進入した平面上においてビークルが行う作業として、カメラによる複数個所の定点観測を可能とし、かつ一連の作業が短時間で完遂可能なクローラ構造を明確にしております。
具体的には例えば福島第1原子力発電所内に、進入監視を行うことを想定し、内部がどのようになっているか不明、かつ高放射線環境下において、20か所ほどの定点での観測を、装置が正常に機能可能な例えば5時間以内に完遂することが可能な構造のビークルを提案したものであります。
(ロ)このために採用した構成の主要点の第1は、補正後請求項1に係る発明に記載の「A:長方形状の本体にカメラを搭載し、本体下部にクローラを設けた高さ方向配置を採用している点。」であります。
・・・(途中省略)・・・
(ハ)また採用した構成の主要点の第2は、第2補正後請求項1に係る発明に記載の「C:クローラと本体を接続するクローラ方向変換軸が、クローラ方向変換モータにより駆動されてクローラが本体に対して方向変更される点。」であります。
・・・(途中省略)・・・
(ニ)また採用した構成の主要点の第3は、第2補正後請求項1に係る発明に記載の「B:本体下部の長手方向前後に、それぞれ1つの履帯状ローラ駆動部を有するクローラを備えた点。」であります。
・・・(途中省略)・・・
(C-3)第2補正後請求項1に係る発明の容易推考性の判断
上記第2補正後請求項1に係る発明について、平成27年4月7日付けの補正却下決定通知書に記載の理由、特に容易推考とされた部分の理由を検討すると、以下の点について、再考を求める次第であります。
(b)(ロ)(ロー2)本願発明1と引用発明1との対比について:
「また、引用文献1の第10頁第7行-第10行及び第9図には、「第9図に示す如く前後のクローラ形走行機構3a,3bを互いに反対方向まで回動させて」と記載されており、クローラ形走行機構が、長方形状の車体の長手方向と、長方形状の本体の長手方向と直交する方向とに切り替わっているため、引用発明1の原子炉格納容器内点検装置は、クローラ形走行機構3a,3bの方向を切替えるためのクローラ方向変換手段を備えていると認められる。」について、ここには第2補正後請求項1に係る発明に記載の「C:クローラと本体を接続するクローラ方向変換軸が、クローラ方向変換モータにより駆動されてクローラが本体に対して方向変更される点。」であることまでを含めて詳細に記載されてはおりません。
「また、引用文献1の第4頁第8-10行目には、引用発明1の「クローラ形走行機構3a,3b」には、それぞれ「左右一対の無限軌道帯5a,5b,5c,5d」が設けられることが記載されている。そのため、引用発明1の「クローラ形走行機構3a,3b」は本願発明1の「本体下部の長手方向前後に1つずつ設けられたクローラ」に相当すると認められる。」について、ここには第2補正後請求項1に係る発明に記載の「B:本体下部の長手方向前後に、それぞれ1つの履帯状ローラ駆動部を有するクローラを備えた点。」において、本質的に相違しております。
・・・(途中省略)・・・
このため、引用文献1のタンク型構成のビークルと、引用文献2から5の蛇型ビークルを組み合わせて考慮すべき必然的な理由が見当たりません。むしろ、これらの引用文献からは上記2態様のビークルが、それぞれ完成した別箇目的の装置として存在している状況が明らかであり、単に周知との理由で部品を入れ替えることを容認できる状態にはありません。むしろ別箇目的の装置として存在している2態様のビークルについて、完成された全体構成の中から、その一部部品のみを入れ替えて別の機能を達成しているとしたら、これは特許されてしかるべきであります。」
(なお、平成27年7月2日付けの拒絶査定不服審判請求とともに提出された同日付けの手続補正は、上記第2[理由]で述べた理由により却下すべきものである。)

4 当審の判断
(1)上記2における「理由2」について
ア 審査官が、平成26年12月12日付けの最後の拒絶理由の「理由2(1)」(上記2)で指摘した、「請求項1には、『一輪のクローラ』という記載があるが、請求項1及び明細書には、『一輪のクローラ』という記載が意味するものが明確に定義されておらず、『一輪のクローラ』という記載の技術的意味が不明確である。」点については、上記3(1)の「平成27年2月16日付け意見書の概要」で述べたとおり、請求人も「ご指摘事項(1)について、「一輪」との記載は誤記ですので、これを取りやめております」と認め、平成27年2月16日付け意見書とともに同日付けの手続補正を提出したところである。

イ しかるところ、平成27年2月16日付けの手続補正は同年3月31日付けで却下されたため、平成27年7月2日付けの拒絶査定不服審判請求とともに提出された同日付けの手続補正で再度補正したところ、当該補正も上記第2[理由]で述べた理由により却下すべきものであるため、上記請求人も認める誤記たる「一輪のクローラ」との記載はなお解消されない。

ウ したがって、上記ア及びイでの検討によれば、本願請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)上記2における「理由1」について
ア 刊行物の記載及び引用発明
(ア)原査定における拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭56-32336号(実開昭57-144782号)のマイクロフィルム(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。引用文献に当初から付されていた下線は省略した。)。
a 「車体と、この車体の全部および後部に水平面内および垂直面内で回動自在に設けられそれぞれ左右一対の無限軌道帯を有する2個のクローラ形走行機構と、上記無限軌道帯をそれぞれ独立して駆動する駆動機構とを具備したことを特徴とする走行装置。」(実用新案登録請求の範囲)

b 「本考案はたとえば原子炉格納容器内等を自由に走行し得る走行装置に関する。・・・このためテレビカメラ等の点検監視用機器を搭載し、原子炉格納容器内を自由に移動してこの原子炉格納容器内の機器の点検監視を遠隔的におこなうことのできる装置の開発が試みられている。ところで、原子炉格納容器内は限られた空間に多くの機器が収容されているため、この原子炉格納容器内に設けられている通路は複雑な形状をなし、各所に段差や狭隘部、急な階段等が設けられている。」(明細書1頁18行?同2頁11行)

c 「以下本考案を第3図ないし第9図に示す一実施例にしたがって説明する。この一実施例イは原子炉格納容器内を走行し、この原子炉格納容器内に収容されている各種機器を遠隔的に点検監視する装置であつて、図中1はその車体である。そして、この車体1上にはたとえばテレビカメラ2等の点検監視用の機器が搭載され、また電池等の動力源や遠隔操作機器等が搭載されている。そして、この車体1の前端部および後端部にはそれぞれクローラ形走行機構3a、3bが設けられている。」(明細書3頁12行?同4頁2行)

d 「そして、上記クローラ形走行機構3a、3bのフレーム4a、4bの略中央部にはこれを横断する方向に回動軸13a、13bが設けられており、これら回動軸13a、13bは車体1の前端部および後端部の下面から突設された操向軸14a、14bの下端部に枢支されており、各クローラ形走行機構3a、3bはこの回動軸13a、13bを中心として垂直面内で自由に回動し得るように構成されている。そして、上記操向軸14a、14bは、それぞれ軸受15a、15bにより車体1に回転自在に取付けられており、上記クローラ形走行機構3a、3bはそれぞれこれら操向軸14a、14bを中心として水平面内で回転し得るように構成されている。」(明細書5頁6行?同最下行)

e 「また、第9図に示す如く前後のクローラ形走行機構3a、3bを互に反対方向まで回動させて走行させれば車体1をその場所で旋回させることもできる。」(明細書10頁7?10行)

f 第3、4及び9図は次のものである。


g 上記aないしdの記載をふまえて、上記fの図3及び4を見ると、車体1は長方形状であり、クローラ形走行機構3a、3bは車体1の下部の長手方向前後にそれぞれクローラ形走行機構3a、及び、クローラ形走行機構3bが1つづつ設けられ、車体1の長手方向に走行する状態で、車体1の長手方向がクローラ形走行機構3a、3bの長手方向であることが見てとれる。
また、上記eの記載をふまえて、上記fの図9を見ると、前後のクローラ形走行機構3a、3bはともに車体1の長手方向の直交方向とすることできることが見てとれる。

(イ)引用発明
上記(ア)によれば、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車体と、この車体の全部および後部に水平面内および垂直面内で回動自在に設けられそれぞれ左右一対の無限軌道帯を有する2個のクローラ形走行機構3a、3bと、上記無限軌道帯をそれぞれ独立して駆動する駆動機構とを具備し、
車体上にはテレビカメラが搭載され、前記車体の前端部および後端部にはそれぞれクローラ形走行機構3a、3bが設けられ、
前記クローラ形走行機構3a、3bに回動軸13a、13bが設けられ、前記回動軸13a、13bは操向軸14a、14bの下端部に枢支され、前記クローラ形走行機構3a、3bはそれぞれ前記操向軸14a、14bを中心として水平面内で回転し得るように構成され、
前記車体は長方形状であり、前記クローラ形走行機構3a、3bは車体の下部の長手方向前後にそれぞれクローラ形走行機構3a、及び、クローラ形走行機構3bが1つづつ設けられ、車体の長手方向に走行する状態で、車体の長手方向がクローラ形走行機構3a、3bの長手方向であり、
前後のクローラ形走行機構3a、3bはともに車体の長手方向の直交方向とすることできる、点検監視用の走行装置。」

イ 対比・判断
(ア)本願発明と引用発明を対比する。
a 引用発明の「車体」は「長方形状であ」るから、本願発明の「長方形状の本体」に相当する。

b 引用発明の「テレビカメラ」は、「車体上に」「搭載され」るから、本願発明の「本体に搭載されたカメラ」に相当する。

c 引用発明の「クローラ形走行機構3a、3b」は、「車体の前端部および後端部にはそれぞれ」「設けられ」るところ、「前記車体は長方形状であり、前記クローラ形走行機構3a、3bは車体の下部の長手方向前後にそれぞれクローラ形走行機構3a、及び、クローラ形走行機構3bが1つづつ設けられ」るから、本願発明の「本体下部の長手方向前後にそれぞれ設けられた一輪の」「クローラ」と、「本体下部の長手方向前後にそれぞれ設けられた」「クローラ」の点で一致する。

d 引用発明の「クローラ形走行機構3a、3b」は、「回動軸13a、13bが設けられ、前記回動軸13a、13bは操向軸14a、14bの下端部に枢支され」、「それぞれ前記操向軸14a、14bを中心として水平面内で回転し得るように構成され」、「車体の長手方向に走行する状態で、車体の長手方向がクローラ形走行機構3a、3bの長手方向であり、前後のクローラ形走行機構3a、3bはともに車体の長手方向の直交方向とすることできる」から、クローラ形走行機構3a、3bの方向を車体の長手方向と車体の長手方向の直交方向とに切替るためのクローラ形走行機構3a、3bの方向変換手段を備えるといえる。
また、上記(1)でも指摘しているとおり、「クローラの取り付け方向」を切替るという記載の技術的意味が不明確であるが、本願明細書及び図面の記載全体からみて、以下「取り付けられているクローラの方向」の意味であると解釈する。
そうすると、引用発明の、「回動軸13a、13bが設けられ、前記回動軸13a、13bは操向軸14a、14bの下端部に枢支され」、「それぞれ前記操向軸14a、14bを中心として水平面内で回転し得るように構成され」、「車体の長手方向に走行する状態で、車体の長手方向がクローラ形走行機構3a、3bの長手方向であり、前後のクローラ形走行機構3a、3bはともに車体の長手方向の直交方向とすることできる」クローラ形走行機構3a、3bの方向変換手段は、本願発明の「一輪の各クローラの取り付け方向を、前記長方形状の本体の長手方向と、前記長方形状の本体の直交方向とに切替るための」「クローラ方向変換手段」と、「各クローラの取り付け方向を、前記長方形状の本体の長手方向と、前記長方形状の本体の直交方向とに切替るための」「クローラ方向変換手段」の点で一致する。

e 引用発明の「点検監視用の走行装置」は、本願発明の「調査ビークル」に相当する。

(イ)一致点、及び、相違点
上記(ア)によれば、本願発明と引用発明は、
「長方形状の本体と、該本体に搭載されたカメラと、前記本体下部の長手方向前後にそれぞれ設けられたクローラと、前記各クローラの取り付け方向を、前記長方形状の本体の長手方向と、前記長方形状の本体の直交方向とに切替るためのクローラ方向変換手段を備えている調査ビークル。」
で一致し、
本願発明の「クローラ」は、「一輪」であるのに対して、引用発明の「クローラ形走行機構3a、3b」は、このように特定されるものではない点(以下「相違点」という。)で相違する。

(ウ)判断
上記相違点について検討する。
a 上記3でも摘記したとおり、「一輪のクローラ」との記載は請求人も認めるとおり誤記で、技術的意味が不明確であるが、上記2の「原査定の拒絶理由」の「理由2」を避けるべく、本願明細書及び図面の記載全体から何らかの意味に解釈する場合、「1つの履帯を用いるクローラ」の意味であると解釈せざるを得ない。

b ここで、引用発明の「クローラ形走行機構3a、3b」に関して、引用文献の第4図(上記ア(ア)f)には、細い履帯を2つ用いる「クローラ形走行機構3a、3b」がみてとれる。

c また、クローラ形の走行機構として1つの履帯を用いるものは周知技術である(例えば、特開2007-216936号公報、特表2010-509129号公報、特表2010-509128号公報、特表昭63-501208号公報参照)。

d 引用発明が具体的には引用文献に記載の細い履帯を2つ用いるクローラであっても、本願発明がクローラの履帯の幅を具体的に特定しないものであり、また、どのようにして履帯の幅を所望の幅とするかは設計的事項であるから、細い履帯を2つ用いるクローラにかえて、太い1つの履帯を用いる周知のクローラを採用して、本願発明に係る相違点の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。

e そして、本願発明が解決しようとする課題である、「非常時に備えて内部環境把握用の配管系統を準備しておくにしても、この配管系統が非常時に確保されているという保証がなく、実際の場面で使用できるか不明と言わざるを得ない。・・・以上のことから本発明においては、非常時に原子炉格納容器内部調査を実行するに好適な調査ビークル、容器内の調査装置・・・を提供する」(本願明細書 段落【0005】?【0006】)こと、そして、その効果である、「本発明の調査ビークルによれば、進行する場所の制約条件に適した形態をとることで安定に移動することができる。・・・本発明の原子炉格納容器内部調査装置によれば、格納容器外から進入し格納容器内部の状況を調査可能となる。特に、狭隘な配管から進入し、広域かつグレーチング等の上を進入可能な移動が可能となる」(本願明細書 段落【0012】?【0013】)ことと、クローラの履帯の本数との間には技術的な直接の関連がなく、クローラの履帯の本数の相違による格別の作用効果はみられないから、本願発明が「1つの履帯を用いるクローラ」を用いるものであることによる顕著な作用効果も認められない。

ウ まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第36条第6項第2号及び特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-22 
結審通知日 2016-02-23 
審決日 2016-03-08 
出願番号 特願2011-257179(P2011-257179)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G21C)
P 1 8・ 537- Z (G21C)
P 1 8・ 121- Z (G21C)
P 1 8・ 561- Z (G21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 聡一郎青木 洋平  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 井口 猶二
松川 直樹
発明の名称 調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法  
代理人 ポレール特許業務法人  
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