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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1313667
審判番号 不服2015-14105  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-27 
確定日 2016-04-21 
事件の表示 特願2011- 61664「現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月19日出願公開,特開2012-137724〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成23年3月18日(優先権主張平成22年12月8日)の出願であって,平成26年11月21日付けで拒絶理由が通知され,平成27年1月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年4月20日付けで拒絶査定がなされたところ,同年7月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

2 平成27年7月27日提出の手続補正書による補正の適否
(1) 平成27年7月27日提出の手続補正書による補正(以下,「本件補正」という。)は,平成27年1月26日提出の手続補正書による補正後の特許請求の範囲及び明細書についてするもので,本件補正のうち請求項1に係る補正(以下,「請求項1に係る本件補正」という。)は,本件補正前の請求項1の「前記トナー補給口は,前記供給路搬送部材の回転中心を通る垂直線を基準として,前記供給路搬送部材の回転方向が上から下向きとなる側のみに位置する」との記載を,「前記トナー補給口は,前記供給路搬送部材の回転中心を通る垂直線を基準として,前記供給路搬送部材の回転方向が上から下向きとなる側のみに位置する」に補正するものである。

(2) 請求人は,審判請求書において,請求項1に係る本件補正の目的について説明していないものの,当該請求項1に係る本件補正は,請求項1に係る発明の発明特定事項である「トナー補給口」の位置について,本件補正前には,「供給路搬送部材の回転中心を通る垂直線を基準として,供給路搬送部材の回転方向が上から下向きとなる側」(以下,便宜上「供給路搬送部材の落下方向移動側」という。)のみに位置し,供給路搬送部材の回転方向が下から上向きとなる側(以下,便宜上「供給路搬送部材の上昇方向移動側」という。)には存在しないことを指しているのか,それとも,供給路搬送部材の上昇方向移動側に存在するか否かは任意であって,その一部が少なくとも供給路搬送部材の落下方向移動側に存在すればよいことを指しているのかが明りょうでなかった記載を,前者を指していることを明りょうにする補正であるといえるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
また,当該補正は,平成27年1月26日提出の手続補正書による補正によって請求項1に付加された,回収路へのトナー落下箇所に関する発明特定事項が,新規事項を追加するものであると解されるとの原査定の備考欄における指摘に対して,トナー補給口の位置について,「のみ」を付すとともに,トナー落下箇所については,「のみ」を付さないことによって,付加した発明特定事項が,回収路へのトナーの補給位置(トナー落下箇所)が,回収路搬送部材の回転中心を通る垂直線を基準として,回収路搬送部材の回転方向が下から上向きとなる側「のみ」でないことを明らかにし,新規事項の追加でないことを示したものと解されるところ,前記原査定の備考欄における指摘は,実質上,拒絶理由通知に係る拒絶の理由といえるから,当該明りょうでない記載の釈明は,特許法17条の2第5項4号が規定する「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするもの」に該当すると認められる。
したがって,請求項1に係る本件補正は,特許法17条の2第5項4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものと認められる。

(3) さらに,本件補正の前後で,請求項1に係る発明の発明特定事項に実質的な違いはないから,請求項1に係る本件補正は新規事項を追加するものではなく,かつ,本件補正前後の請求項1に係る発明は単一性の要件を満たしている。
したがって,請求項1に係る本件補正は,特許法17条の2第3項及び4項に規定する要件を満たしている。

(4) 以上のとおりであるから,請求項1に係る本件補正は,適法になされたものである。

3 本願の請求項1に係る発明
(1) 前記2で述べたとおり,請求項1に係る本件補正は適法になされたものであるから,本願の請求項1に係る発明は,本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ,次のとおりのものと認められる。

「像担持体上にトナー像を形成するための現像剤を担持し,回転駆動される現像剤担持体と,
前記現像剤担持体の長手方向に沿って延びる供給路と,
前記供給路内の現像剤を前記長手方向に搬送しながら前記現像剤担持体に現像剤を供給する供給路搬送部材と,
前記現像剤担持体の長手方向に沿って延び,前記像担持体に現像剤を付与する現像領域を通過した前記現像剤担持体上の現像剤を回収する回収路と,
前記回収路内の現像剤を搬送する回収路搬送部材と,
前記回収路から前記供給路に現像剤が移動する第一連通部と,
前記供給路から前記回収路に現像剤が移動する第二連通部と,
を有する現像装置において,
第二連通部の上方にトナー補給口が設けられ,
前記トナー補給口は,前記供給路搬送部材の回転中心を通る垂直線を基準として,前記供給路搬送部材の回転方向が上から下向きとなる側のみに位置するように設けられ,
前記供給路搬送部材より下方に位置する前記回収路搬送部材の回転中心を通る垂直線を基準として,前記回収路搬送部材の回転方向が下から上向きとなる側の前記回収路の上流側にトナーを補給し,回転方向が上から下向きとなる側で前記現像領域を通過した前記現像剤担持体上の現像剤を回収し,混合することを特徴とする現像装置。」(以下,「本願発明」という。)

(2) 本件補正後の請求項1において,トナー補給口の位置については「のみ」と表現されている一方,回収路に補給されるトナーの落下位置については「のみ」との表現が付されていないこと,また,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された各実施形態においては,供給路と回収路を遮蔽する仕切り板を設けていない部分を「第二連通部」としているのであって(【0029】及び【0030】等),回収路に補給するトナーの落下位置を規制するような部材は特段設けられておらず,当該構成では,補給されたトナーの全てが回収路搬送部材の上昇方向移動側のみに落下し,落下方向移動側には一切落下しないことなど,技術常識からみておよそ考え難いこと,とはいえ,「供給路搬送部材の落下方向移動側」のみに位置するように設けられたトナー補給口から供給路に補給されたトナーは,そのほとんどが供給路搬送部材の回転に巻き込まれて供給路搬送部材の底部側に移動し,当該移動の途中で第二連通部を通って回収路に落下すると考えられ,当該落下したトナーの相当多くの部分が,トナー補給口の下部に位置する「回収路搬送部材の回転中心を通る垂直線を基準として,回収路搬送部材の回転方向が下から上向きとなる側」に到達するものと解されるから,本願発明の「前記トナー補給口は,前記供給路搬送部材の回転中心を通る垂直線を基準として,前記供給路搬送部材の回転方向が上から下向きとなる側のみに位置するように設けられ,
前記供給路搬送部材より下方に位置する前記回収路搬送部材の回転中心を通る垂直線を基準として,前記回収路搬送部材の回転方向が下から上向きとなる側の前記回収路の上流側にトナーを補給し,回転方向が上から下向きとなる側で前記現像領域を通過した前記現像剤担持体上の現像剤を回収し,混合する」なる発明特定事項については,
ア 「トナー補給口が,供給路搬送部材の落下方向移動側のみに位置し,上昇方向移動側の位置には存在しないこと」,
イ 「回収路搬送部材が供給路搬送部材より下方に位置すること」,
ウ 「トナー供給口から供給路に補給されたトナーが第二連通路を通って回収路に補給される際に,その相当多くの部分が,『回収路搬送部材の回転中心を通る垂直線を基準として,回収路搬送部材の回転方向が下から上向きとなる側』(以下,便宜上『回収路搬送部材の上昇方向移動側』という。)であって,かつ回収路の上流側の位置に補給されること」,
エ 「現像領域を通過した現像剤担持体上の現像剤が回収路に回収される際に,『回収路搬送部材の回転方向が下から上向きとなる側』(以下,便宜上『回収路搬送部材の落下方向移動側』という。)で回収されること」,
及び,
オ 「前記回収路に補給されたトナーと,前記回収路に回収された現像剤とが,(回収路搬送部材によって)混合されること」
を意味していると解するのが相当である。

4 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明に対応する本件補正前の請求項1に係る発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は,請求項1に係る発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
原査定の拒絶の理由で引用した引用文献1及び2は,次のとおりである。

引用文献1:特開2003-263012号公報
引用文献2:特開2004-272295号公報

5 引用例
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1は,本願の優先権主張の日(以下,「本願優先日」という。)より前に頒布された刊行物であって,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,静電潜像の可視像化手段である現像装置およびこの現像装置を用いるプリンタ,ファクシミリ,複写機等の画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】静電潜像の可視像化手段として,トナーと粒状磁性体のキャリアよりなる2成分現像剤(以下,単に現像剤という。)を用いる2成分現像方式の現像装置が知られている。かかる現像装置では,現像剤撹拌部分でキャリアとトナーを十分に混合した現像剤を,回転体たる筒状をした現像剤担持体(以下,現像ローラという。)に供給し,現像ローラにより現像剤を回転体たる筒状をした像担持体(以下,感光体という。)と対向する領域に搬送して,感光体表面の静電潜像にトナーを付着させて現像する。
【0003】現像剤を撹拌混合し,現像ローラに供給する現像剤撹拌部の構成は,従来様々な構成が考案されている・・・(中略)・・・
【0011】特開平11-202627号公報では,現像ローラの横に撹拌搬送スクリューを上下に2本並べた構成としており,横方向の省スペース化が図れるが,現像に際して静電潜像に付着するなどして消費されるため現像後,トナー濃度の少なくなった現像剤と,現像前のトナー濃度の高い現像剤が同時に現像ローラに汲み上げられることになり,現像ローラ上の現像剤のトナー濃度が均一にならないため画像濃度にムラが生じやすい。
【0012】また,帯電の不充分なトナーがあるためにハーフトーン画像部の粒状性が悪化したり,地肌部にトナーが付着する地肌汚れや,キャリアからトナーが遊離してしまうことによるトナー飛散等の不具合を生じるおそれがある。
【0013】さらに,上スクリューに撹拌される現像剤と,下スクリューに撹拌される現像剤が所々で入れ替わってしまう可能性が大であり,現像剤が均一に撹拌されにくいことからも,均一な画像が得られにくく,上記の不具合を招くと考えられる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は,水平方向の大きさを小さくした上で,高画質が得られ,さらに,現像剤へのストレスが少なく,安定した性能の得られる現像装置,画像形成装置を提供することにある。」

(イ) 「【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は,前記課題を達成するため以下の構成とした。
(1).磁性体を含む現像剤を担持して回転し,像担持体に形成された静電潜像を可視像化する現像剤担持体と,前記現像剤担持体に前記現像剤を汲み上げる剤汲み上げ領域の近傍に配置されていて,前記現像剤担持体の中心線と平行な中心線を中心に回転し,その長手方向に現像剤を撹拌しつつ搬送する第1現像剤撹拌搬送部材と,前記現像剤担持体から前記現像剤を離す剤離し領域の近傍に配置されていて,前記現像剤担持体の中心線と平行な中心線を中心に回転し,前記第1現像剤撹拌搬送部材が現像剤を搬送する向きの反対の向きに現像剤を撹拌しつつ搬送する第2現像剤撹拌搬送部材と,前記第1現像剤撹拌搬送部材と前記第2現像剤撹拌搬送部材の間であって,少なくとも前記現像剤担持体の長手方向両端部を除く中央部で,前記第1現像剤撹拌搬送部材周囲の空間と前記第2現像剤撹拌搬送部材周囲の空間とを遮蔽する仕切板とを有することとした(請求項1)。
(2).(1)記載の現像装置において,前記剤汲み上げ領域が前記剤離し領域よりも上方に位置することとした(請求項2)。
・・・(中略)・・・
(5).(1)乃至(4)の何れか一つに記載の現像装置において,前記第1現像剤撹拌搬送部材に沿う長手方向に形成された現像剤の上搬送路の上流側端部に現像剤の補給部を設けた(請求項5)。」

(ウ) 「【0016】
【発明の実施の形態】[1]画像形成の概要
図1は,感光体1を用いた画像形成装置に,本発明の現像装置3を用いたときの感光体1まわりの概略を示した各部材配置構成図である。感光体1は矢印で示すように時計まわりの向きに回転される。・・・(中略)・・・
【0018】現像装置3はケーシング301内に,現像剤320を撹拌搬送する第1現像剤撹拌搬送部材304及び第2現像剤撹拌搬送部材305,現像ローラ302などの回転部材及びその他の部材を具備している。現像ローラ302はその長手方向の寸法が感光体1の長手方向と略同じ長さを有している。
【0019】現像ローラ302は2時と3時の間の位置(2時半の位置)で感光体1に近接して対向させることで現像ニップ領域Aを構成するようにして近接配置されている。この感光体1との対向部位に相当するケーシング301の部位は現像ローラ302を露出させるため開口している。
【0020】現像ローラ302によりケーシング301内の現像剤320は現像ニップ領域Aへ搬送されるようになっている。現像ニップ領域Aで感光体1の表面に形成されている静電潜像に現像剤320中のトナーが付着してトナー像として顕像化される。
・・・(中略)・・・
【0024】[2]現像装置
(請求項1,2関連)現像装置3は,ケーシング301の内部に現像ローラ302,第1現像剤撹拌搬送部材304,第2現像剤撹拌搬送部材305,現像剤規制部材303を有し,現像剤320を撹拌搬送して循環させている。
・・・(中略)・・・
【0043】以下,必要に応じて,現像装置の内部の構成を組み立て状態で示した図4及び分解状態で示した図5等をも参照しつつ,各部材の配置構成などを説明する。図1,図2に示したように,第1現像剤撹拌搬送部材304は現像ローラ302のまわりの位置であって現像ローラ302の2時の方向上で,剤汲み上げ領域10の近傍に配置されている。この位置は現像剤規制部材303の上流側でもある。図4,5に示すように,第1現像剤撹拌搬送部材304は回転軸の回りにスパイラルを設けたスクリュー形状をしており,現像ローラ302の中心O?302を通る中心線O?302aと平行な中心線O-304aを中心に矢印で示す時計まわりの向きに回転し,該中心線O-304aの長手方向奥側から手前側に向けて矢印11で示すように現像剤を撹拌しながら搬送する。つまり,第1現像剤撹拌搬送部材304は回転軸の回転により現像剤をその軸方向,奥側から手前側に向けて搬送する。
【0044】第2現像剤撹拌搬送部材305は現像ローラ302のまわりの位置であって現像ローラ302の4時の方向上で,剤離し領域9の近傍に配置されている。図4に示すように,第2現像剤撹拌搬送部材305は回転軸の回りにスパイラルを設けたスクリュー形状をしており,現像ローラ302の中心O?302を通る中心線O?302aと平行な中心線O-305aを中心に矢印で示す反時計まわりの向きに回転し,中心線O-305aの長手方向手前側から奥側側に向けて矢印12で示すように現像剤を撹拌しながら搬送する。つまり,第2現像剤撹拌搬送部材305は回転軸の回転により現像剤を第1現像剤撹拌搬送部材304による搬送方向と逆向きの手前側から奥側に向けて搬送する。
【0045】第1現像剤撹拌搬送部材304に対して第2現像剤撹拌搬送部材305は上方に位置する関係(審決注:「第1現像剤撹拌搬送部材304に対して第2現像剤撹拌搬送部材305は上方に位置する関係」は誤記であり,正しくは「第1現像剤撹拌搬送部材304は第2現像剤撹拌搬送部材305に対して上方に位置する関係」であると認める。)となっており,ケーシング301内で第1現像剤撹拌搬送部材304周囲の空間と第2現像剤撹拌搬送部材305周囲の空間とは隣接している。
【0046】第1現像剤撹拌搬送部材304及び第2現像剤撹拌搬送部材305の奥側端部は現像ローラ302の奥側端部よりも若干奥側に位置するように設定して,現像ローラ302の奥側端部の現像剤の供給を確保している。また,第1現像剤撹拌搬送部材304及び第2現像剤撹拌搬送部材305の手前側端部は現像ローラ302の手前側端部よりも手前側に位置するようにして後述するトナー補給のためのスペースを確保している。現像剤規制部材303は現像ローラ302の長さに合わせて設置されている。
【0047】第1現像剤撹拌搬送部材304と第2現像剤撹拌搬送部材305の間であって,現像ローラ302の長手方向両端部を除く中央部で,第1現像剤撹拌搬送部材304周囲の空間と第2現像剤撹拌搬送部材305周囲の空間とを遮蔽する仕切板306がケーシング301の現像ローラ302から離れる側の内壁と一体に片持ち支持状に形成されている。
【0048】仕切板306はその長手方向については,現像ローラ302の長手方向両端部を除く中央部に位置し,現像ローラ302の長手方向両端部に対応する部位には無い。一方,第1現像剤撹拌搬送部材304及び第2現像剤撹拌搬送部材305の各長手方向端部は現像ローラ302の長手方向両端部まで及んでいる。
【0049】第2現像剤撹拌搬送部材305で矢印12の向きに搬送された現像剤はその搬送方向端部でケーシング301の側壁で進路を絶たれるため該側壁に沿って盛り上がり,矢印13に沿って第1現像剤撹拌搬送部材304により該第1現像剤撹拌搬送部材304に沿う上搬送路を移動する。
【0050】同様に,第1現像剤撹拌搬送部材304で矢印11の向きに搬送された現像剤はその搬送方向端部でケーシング301の側壁で進路を絶たれるために該側壁に沿って降下し,矢印14に沿って第2現像剤撹拌搬送部材305にり該第2現像剤撹拌搬送部材305よる(審決注:「第2現像剤撹拌搬送部材305にり該第2現像剤撹拌搬送部材305よる」は誤記であり,正しくは「第2現像剤撹拌搬送部材305に沿う」であると認める。)下搬送路に移動する。
【0051】仕切板306はその長手方向については,現像ローラ302の長手方向両端部を除く中央部に位置するようにしたのは,その長手方向の端部での矢印13,14の現像剤の流れを可能にして,全体として矢印11,14,12,13に沿う循環搬送路を形成するためである。
【0052】なお,図示の例では,仕切板306はその奥側の端部近傍に開口307を設けていて,この開口307を介して下搬送路から上され搬送路(審決注:「上され搬送路」は誤記であり,正しくは「上搬送路」であると認める。)への現像剤の汲み上げを行なうようにしているので,現像ローラ302の長手方向奥側端部まで仕切板306が及ぶ構成とすることもできる。
・・・(中略)・・・
【0054】かかる構成では,現像装置3内,つまりケーシング,現像ローラ302の長手方向両端部を除く中央部で,第1現像剤撹拌搬送部材304周囲の空間と第2現像剤撹拌搬送部材305周囲の空間とを遮蔽する仕切板306とを有する構成により,矢印11,14,12,13に沿う循環搬送路を構成する301内の現像剤撹拌搬送部材304,305が現像ローラ302の横に上下に2本並べて配置されることから,現像ローラから離れる方向(水平方向に)に2つの撹拌搬送部材を配置する図8に示した従来技術に比べて,現像装置の横(水平方向)の大きさを小さくすることができる。
【0055】さらに,こうして,水平方向のコンパクト化を図った現像装置3においても,仕切板306により現像ローラ302の長手方向両端部を除く中央部で第1現像剤撹拌搬送部材304周囲と第2現像剤撹拌搬送部材305周囲の空間が仕切られているので,現像ローラ302に対しては第1現像剤撹拌搬送部材304により,トナーとキャリアを十分に撹拌混合された現像剤320のみが供給されるし,現像直後のトナー濃度の下がった現像剤は専ら第2現像剤撹拌搬送部材305により撹拌搬送されるだけで,直ぐに現像ローラ320に供給されることがないので,現像ローラ320へは狙いの帯電量を持ったトナーだけが現像に用いられることとなり,高画質を得ることができる。
【0056】また,仕切板306の機能により,第2現像剤撹拌搬送部材305により搬送されるトナー濃度の下がった現像剤は現像ローラ302と現像剤規制部材303の空隙を通過せず,スクリューによる撹拌を受けるだけなので,キャリア,トナーにかかるストレスが押さえられ,劣化を抑制できるので,現像剤の性能を長期にわたった維持することが可能で,高寿命,高耐久な現像装置を提供することができる。かかる利点は,現像装置を感光体1の横に配置した上記例に限らず,剤汲み上げ領域が剤離し領域より上に位置する構成とすることで,得ることが可能である。
・・・(中略)・・・
【0076】(請求項5関連)現像装置3内の現像剤320は,現像動作を繰り返す内にトナーが消費されていくので,現像装置外部から装置内の現像剤に対してトナーを補給する必要がある。本例では,現像ローラ302から現像剤320が離される剤離し領域9の近傍に配置した第2現像剤撹拌搬送部材305による上搬送路の上流側端部部,即ち,現像装置の手前側の端部近傍に設けた現像剤の補給部より外部などからトナーの補給を行なう(請求項5)。この部位での補給では,補給されたトナーが直ちに現像に供されることはなく,第2現像剤撹拌搬送部材305で撹拌され安定した所定のトナー濃度で現像に供される。
【0077】この補給部は,仕切板306が無い手前側の端部上方のケーシング301に形成した補給用開口310を以って構成される。補給用開口310から補給されたトナーは,現像ローラ302から外れた第1現像剤撹拌搬送部材304の上流側端部(審決注:「上流側端部」は誤記であり,正しくは「下流側端部」であると認める。)を経て降下し,第2現像剤撹拌搬送部材305により下搬送(審決注:「下搬送」は誤記であり,正しくは「下搬送路」であると認める。)を搬送される。
【0078】第2現像剤撹拌搬送部材305による下搬送路では,現像ローラ302から離れた現像剤320を回収するのみで,現像ローラ302へのトナー供給は行なわないので,補給用開口310から新しく補給されたトナーにより十分に撹拌されていないトナー濃度が不均一な状態の現像剤が現像に供されることがない。
【0079】この補給トナーは現像ローラ302から離れたトナー濃度の低下した現像剤320中で撹拌混合されたながら(審決注:「されたながら」は誤記であり,正しくは「されながら」であると認める。),現像装置3の奥側まで搬送されるまでにトナー濃度が正常化され,羽根車308,磁石部材309などの作用によるなどして第1現像剤撹拌搬送部材304による上搬送路まで汲み上げられ,第1現像剤撹拌搬送部材304により手前側に搬送されながら現像ローラ302に供給され現像に使用される。」

(エ) 「【図面の簡単な説明】
【図1】感光体まわりの概略構成図である。
・・・(中略)・・・
【図5】現像装置の要部分解斜視図である。
・・・(中略)・・・
【図1】

・・・(中略)・・・
【図5】



イ 引用文献1に記載された発明
図1から,現像ローラ302が第1現像剤撹拌搬送部材304及び第2現像剤撹拌搬送部材305の左側に位置していること,現像ローラ302の回転方向が反時計まわりの向きであること,及び第2現像剤撹拌部材305の中心線O-305aが,若干左寄り(現像ローラ302寄り)ではあるものの第1現像剤撹拌部材304の中心線O-304aの略真下に位置することを看取できるところ,各部材の位置,回転方向及び搬送方向等を示す表現として,現像ローラ302が第1現像剤撹拌搬送部材304及び第2現像剤撹拌搬送部材305の左側に位置する方向から断面をみたときの表現を用いることを前提として認定すると,前記ア(ア)ないし(エ)の記載から,引用文献1には,次の発明が記載されていると認められる。

「現像ニップ領域Aで画像形成装置の感光体1の表面に形成されている静電潜像に現像剤320中のトナーを付着してトナー像として顕像化させるために,反時計まわりの向きに回転して前記現像ニップ領域Aに現像剤320を搬送する現像ローラ302と,
前記現像ローラ302のまわりの位置であって前記現像ローラ302の2時の方向上で,剤汲み上げ領域10の近傍に配置され,回転軸の回りにスパイラルを設けたスクリュー形状をしており,前記現像ローラ302の中心O?302を通る中心線O?302aと平行な中心線O-304aを中心に時計まわりの向きに回転し,前記中心線O-304aの長手方向奥側から手前側に向けて現像剤320を撹拌しながら搬送する第1現像剤撹拌搬送部材304と,
前記現像ローラ302のまわりの位置であって前記現像ローラ302の4時の方向上で,剤離し領域9の近傍に配置され,回転軸の回りにスパイラルを設けたスクリュー形状をしており,前記中心線O?302aと平行な中心線O-305aを中心に反時計まわりの向きに回転し,前記中心線O-305aの長手方向手前側から奥側に向けて現像剤320を撹拌しながら搬送する第2現像剤撹拌搬送部材305と,
前記現像ローラ302,前記第1現像剤撹拌搬送部材304及び前記第2現像剤撹拌搬送部材305を内部に有するケーシング301と,
前記ケーシング301の前記現像ローラ302から離れる側の内壁と一体に片持ち支持状に形成され,前記第1現像剤撹拌搬送部材304周囲の空間と前記第2現像剤撹拌搬送部材305周囲の空間とを遮蔽する仕切板306と,
現像装置外部から装置内の現像剤に対してトナーを補給するために,前記ケーシング301に形成した補給用開口310と,
を有し,
前記第1現像剤撹拌搬送部材304は前記第2現像剤撹拌搬送部材305に対して上方に位置する関係となっており,前記第2現像剤撹拌搬送部材305の前記中心線O-305aは,前記第1現像剤撹拌搬送部材304の前記中心線O-304aの略真下に位置しており,
前記第1現像剤撹拌搬送部材304及び前記第2現像剤撹拌搬送部材305の奥側端部は前記現像ローラ302の奥側端部よりも若干奥側に位置するように設定して,前記現像ローラ302の奥側端部の現像剤の供給を確保するとともに,前記第1現像剤撹拌搬送部材304及び前記第2現像剤撹拌搬送部材305の手前側端部は前記現像ローラ302の手前側端部よりも手前側に位置するようにしてトナー補給のためのスペースを確保しており,
前記仕切板306の長手方向については,中央部から前記現像ローラ302の長手方向奥側端部まで及ぶ構成とするとともに,奥側の端部近傍に開口307を設けていて,この開口307を介して前記第2現像剤撹拌搬送部材305に沿う下搬送路から前記第1現像剤撹拌搬送部材304に沿う上搬送路への現像剤320の汲み上げを行なうようにされ,前記現像ローラ302の長手方向手前側端部に対応する部位には前記仕切板306が無く,前記第1現像剤撹拌搬送部材304で搬送された現像剤320がその搬送方向端部で前記ケーシング301の側壁に沿って降下し,前記下搬送路に移動するよう構成されており,
前記第1現像剤撹拌搬送部材304及び前記第2現像剤撹拌搬送部材305の各長手方向端部は前記現像ローラ302の長手方向両端部まで及んでおり,
前記補給用開口310は,前記仕切板306が無い手前側の端部上方に設けられ,
前記第1現像剤撹拌搬送部材304により,トナーとキャリアを十分に撹拌混合された現像剤320のみが現像ローラ302に対して供給され,現像直後のトナー濃度の下がった現像剤320は専ら前記第2現像剤撹拌搬送部材305により撹拌搬送されるだけで,直ぐに前記現像ローラ320に供給されることがないように構成すると共に,
前記補給用開口310から補給されたトナーが,前記現像ローラ302から外れた前記第1現像剤撹拌搬送部材304の下流側端部を経て降下し,前記第2現像剤撹拌搬送部材305により,前記現像ローラ302から離れたトナー濃度の低下した現像剤320中で撹拌混合されながら,前記下搬送路を搬送され,奥側まで搬送されるまでにトナー濃度が正常化されるよう構成されている,
現像装置3。」(以下,「引用発明」という。)

(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2は,本願優先日前に頒布された刊行物であって,当該引用文献2には次の記載がある。(下線は,後述する引用文献2記載の技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
・・・(中略)・・・
【0010】
また,上述のような従来の画像形成装置では,トナー補給は第2の現像剤攪拌搬送部材の端部上方からトナー補給口を介してなされるため,補給トナーはスクリュー羽根に当たり,また,現像剤攪拌搬送部材は通常200rpm以上の高速で回転し,且つ,トナーは3?12μmの微小粒子であるため,トナー補給口から下方に全て落ちることはできず,現像剤(特にキャリア)に混合攪拌されることなく飛散・浮遊(もしくは現像剤表面を移動)するトナーが発生する。このようなトナーが未・弱帯電状態で現像スリーブやその周辺の現像剤にダイレクトに到達することにより,地肌汚れや,トナー飛散による機内汚損が生じていた。」
・・・(中略)・・・
【課題を解決するための手段】
【0013】
・・・(中略)・・・
【0014】
請求項3記載の発明では,像担持体上の静電潜像を顕像する現像剤担持体に対して現像剤を撹拌搬送する現像剤撹拌搬送部材と,該現像剤撹拌搬送部材の現像剤撹拌搬送経路に連通するトナーを搬送するトナー搬送経路に設けられたトナー搬送部材と,該トナー搬送部材に対してトナーを補給するトナー補給部材とを有する画像形成装置において,上記トナー搬送経路のトナーの補給部よりも下流側に上記現像剤撹拌搬送部材の最下流の現像剤を搬送し,現像剤の循環を行う,という構成を採っている。
・・・(中略)・・・
【0015】
・・・(中略)・・・
請求項6記載の発明では,請求項3記載の構成において,上記トナー補給部から補給されるトナーを受け取る上記トナー搬送部材のトナー受取部を,上記トナー搬送部材の回転軸部から外れた部位とする,という構成を採っている。
請求項7記載の発明では,請求項6記載の構成において,上記トナー搬送部材の上記トナー受取部の回転方向が,上記トナー補給部から補給されるトナーの補給方向と同一方向である,という構成を採っている。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0020】
・・・(中略)・・・
【0023】
請求項6記載の発明によれば,トナー搬送部材のトナー受取部を該トナー搬送部材の回転軸部から外れた部位としたので,回転軸部が補給トナーの落下の妨げとならず,現像剤中への補給トナーの取り込みを促進できる。
【0024】
請求項7記載の発明によれば,トナー搬送部材の補給トナーの受取部側の回転方向を,補給トナーの補給方向と同一方向としたので,トナー搬送部材のトナー受取部における回転軌道の接線方向が補給トナーの落下方向と同一方向となるので,トナー搬送経路の底部側へ補給トナーを素早く取り込むことができ,現像剤中への補給トナーの取り込みをより促進させることができるとともに,補給トナーの飛散を防止できる。」

(オ) 「【0081】
次に,他の実施例について説明する。この実施例では,図11に示すように,トナー補給口4cを通してトナー補給部4aから補給される補給トナーを受け取るスクリュー部材3eのトナー受取部を,スクリュー部材3eの回転軸部から外れた部位としている。これにより,現像剤中への補給トナーの取り込みを促進させるとともに,補給トナーの飛散を防止することができる。
【0082】
すなわち,スクリュー部材3eのトナー受取部を,スクリュー部材3eの回転軸部の真上にすると,この回転軸部により補給トナーの現像剤中への落下が妨げられるため,現像剤中への補給トナーの取り込みが遅れ,また,図11において破線の矢印で示すように,スクリュー部材3eの搬送フィン3jのトナー受取部における回転軌道の接線方向が,補給トナーの落下方向に対して略直交する方向となるため,この搬送フィン3j上に落下した補給トナーが,その側方に向けて跳ね返される。この補給トナーは,前述したように,極めて軽量であるため,上述のように側方に向けて跳ね返されることにより飛散となー(審決注:「となー」は誤記であり,正しくは「トナー」であると認める。)となって浮遊してしまう。
【0083】
これに対し,本実施例のように,補給トナーの受取部をスクリュー部材3eの回転軸部から外れた部位とすれば,回転軸部が補給トナーの現像剤中への落下を妨げることがなく,現像剤中への補給トナーの取り込みが促進され,また,図11において白抜きの矢印で示すように,スクリュー部材3eの搬送フィン3jのトナー受取部における回転軌道の接線方向が,補給トナーの落下方向と略平行な方向となるので,この搬送フィン3j上に落下した補給トナーが,その側方に向けて跳ね返されることがなくなり,補給トナーの飛散が解消される。
【0084】
ここで,スクリュー部材3eの補給トナーの受取部側の回転方向は,トナー補給部から補給されるトナーの補給方向と同一方向であることが,補給トナーの飛散を防止し,且つ,現像剤中への補給トナーの取り込みをより促進させる上で効果的である。
【0085】
すなわち,スクリュー部材3eの補給トナーの受取部側の回転方向をトナーの補給方向と同一方向にすることにより,図11に示すように,スクリュー部材3eの搬送フィン3jのトナー受取部における回転軌道の接線方向が,トナー補給口4cから補給される補給トナーの落下方向と同一方向となるので,このトナー補給口4cから補給されたトナーを,スクリュー部材3eのトナー搬送経路の底部側へ素早く取り込むことができ,補給トナーの飛散を防止し,且つ,現像剤中への補給トナーの取り込みをより促進させることができる。
【0086】
この例においても前記実施例の場合と同様に,スクリュー部材3e(第2現像剤撹拌搬送部材3d)の回転方向は,図11(a)に示すように,反時計方向としている。この場合には,搬送フィン3jの補給トナー受取部がスクリュー部材3eの回転軸部から図11において左方側に外れた部位となるように,補給トナーのトナー補給口4cを設ける。なお,図11(b)に示すように,その回転方向を時計方向とした場合には,搬送フィン3jの補給トナー受取部がスクリュー部材3eの回転軸部から図11において右方側に外れた部位となるように,補給トナーのトナー補給口4cを設ける。」

(カ) 「【図面の簡単な説明】
【0113】
・・・(中略)・・・
【図11】本発明の他の実施例におけるトナー補給部の構成を示す断面図である。
・・・(中略)・・・
【図11】



イ 引用文献2に記載された技術的事項
前記アで摘記した引用文献2の記載から,引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
「像担持体上の静電潜像を顕像する現像剤担持体に対して現像剤を撹拌搬送する現像剤撹拌搬送部材と,該現像剤撹拌搬送部材の現像剤撹拌搬送経路に連通するトナーを搬送するトナー搬送経路に設けられたスクリュー部材と,該トナー搬送部材に対してトナーを補給するトナー補給部材とを有する画像形成装置において,
スクリュー部材のトナー受取部を,スクリュー部材の回転軸部の真上にすると,この回転軸部により補給トナーの現像剤中への落下が妨げられ,また,スクリュー部材の搬送フィンのトナー受取部における回転軌道の接線方向が,補給トナーの落下方向に対して略直交する方向となるため,この搬送フィン上に落下した補給トナーが,その側方に向けて跳ね返されることにより飛散トナーとなって浮遊してしまい,このような飛散トナーが未・弱帯電状態で現像スリーブやその周辺の現像剤にダイレクトに到達することにより,地肌汚れや機内汚損が生じてしまうことから,
トナー補給口4cを通してトナー補給部4aから補給される補給トナーを受け取る前記トナー搬送部材であるスクリュー部材3eのトナー受取部を,スクリュー部材3eの回転軸部から外れた部位であって,前記スクリュー部材3eの補給トナーの受取部側の回転方向が,前記トナー補給部4aから補給されるトナーの補給方向と同一方向である位置に設定することによって,
トナー補給口4cから補給されたトナーを,スクリュー部材3eのトナー搬送経路の底部側へ素早く取り込み,補給トナーの飛散を防止し,且つ,現像剤中への補給トナーの取り込みを促進すること。」(以下,「トナー補給口4cを通してトナー補給部4aから補給される補給トナーを受け取るトナー搬送部材であるスクリュー部材3eのトナー受取部を,スクリュー部材3eの回転軸部から外れた部位であって,スクリュー部材3eの補給トナーの受取部側の回転方向が,トナー補給部4aから補給されるトナーの補給方向と同一方向である位置に設定する」技術を,「引用文献2記載の技術」という。)

6 対比
(1) 引用発明の「感光体1」,「現像剤320」,「現像ローラ302」,「上搬送路」,「第1現像剤撹拌搬送部材304」,「現像ニップ領域A」,「下搬送路」,「開口307」,「現像装置3」及び「補給用開口310」は,本願発明の「像担持体」,「現像剤」,「現像剤担持体」,「供給路」,「供給路搬送部材」,「現像領域」,「回収路」,「第一連通部」,「現像装置」及び「トナー補給口」に相当する。

(2) 引用発明の「現像ローラ302」(本願発明の「現像剤担持体」に相当する。以下,「6 対比」欄中のカッコ書きにおいて,「・・・に相当」とは本願発明の「・・・」という構成に相当することを指す。)は,現像ニップ領域Aで画像形成装置の「感光体1」(像担持体に相当)の表面に形成されている静電潜像にトナーを付着してトナー像として顕像化させるために,前記現像ニップ領域Aに「現像剤320」(現像剤に相当)を搬送する回転部材であるから,引用発明の「現像ローラ302」と,本願発明の「現像剤担持体」とは,「像担持体上にトナー像を形成するための現像剤を担持し,回転駆動される」点で一致する。

(3) 引用発明の「第1現像剤撹拌搬送部材304」(供給路搬送部材に相当)は,「現像ローラ302」(現像剤担持体に相当)の中心O?302を通る中心線O?302aと平行な中心線O-304aを中心に時計まわりの向きに回転し,中心線O-304aの長手方向奥側から手前側に向けて「現像剤320」(現像剤に相当)を撹拌しながら搬送する部材であるところ,中心線O-304aの長手方向とは「現像ローラ302」の長手方向に他ならないから,「第1現像剤撹拌搬送部材304」は「現像ローラ302の長手方向に沿って延び」ている部材である。
したがって,「第1現像剤撹拌搬送部材304」に沿う「上搬送路」(供給路に相当)も,「現像ローラ302の長手方向に沿って延び」ているといえる。
よって,引用発明の「上搬送路」と,本願発明の「供給路」とは,「現像剤担持体の長手方向に沿って延びる」点で一致する。

(4) 引用発明の「第1現像剤撹拌搬送部材304」(供給路搬送部材に相当)は,「現像ローラ302」(現像剤担持体に相当)の中心O?302を通る中心線O?302aと平行な中心線O-304aの長手方向奥側から手前側に向けて「現像剤320」(現像剤に相当)を撹拌しながら搬送する部材であり,当該「第1現像剤撹拌搬送部材304」によって搬送される「現像剤320」(現像剤に相当)は,「第1現像剤撹拌部材304」に沿った「上搬送路」(供給路に相当)内を移動するのであって,前記「第1現像剤撹拌搬送部材304」により,トナーとキャリアを十分に撹拌混合された「現像剤320」のみが「現像ローラ302」に対して供給されるよう構成されているところ,中心線O-304aの長手方向とは,「現像ローラ302」の長手方向に他ならないから,引用発明の「第1現像剤撹拌搬送部材304」と,本願発明の「供給路搬送部材」とは,「供給路内の現像剤を現像剤担持体の長手方向に搬送しながら現像剤担持体に現像剤を供給する」点で一致する。

(5) 引用発明の「第2現像剤撹拌搬送部材305」(回収路搬送部材に相当)は,「現像ローラ302」(現像剤担持体に相当)の中心O?302を通る中心線O?302aと平行な中心線O-305aを中心に反時計まわりの向きに回転し,中心線O-305aの長手方向手前側から奥側に向けて「現像剤320」(現像剤に相当)を撹拌しながら搬送する部材であるところ,中心線O-305aの長手方向とは「現像ローラ302」の長手方向に他ならないから,「第2現像剤撹拌搬送部材305」は「現像ローラ302の長手方向に沿って延び」ている部材である。
したがって,「第2現像剤撹拌搬送部材305」に沿う「下搬送路」(回収路に相当)も,「現像ローラ302の長手方向に沿って延び」ているといえる。
また,引用発明では,現像直後のトナー濃度の下がった「現像剤320」は専ら前記「第2現像剤撹拌搬送部材305」により撹拌搬送されるよう構成されており,当該「現像剤320」は,「現像ローラ302」の4時の方向で現像ローラ302上から「下搬送路」に移動するものと認められるところ,現像直後のトナー濃度の下がった「現像剤320」とは,「感光体1」(像担持体に相当)に「現像剤320」を付与する「現像ニップ領域A」(現像領域)を通過した「現像ローラ302」上の「現像剤320」に他ならない。
したがって,引用発明の「下搬送路」と,本願発明の「回収路」とは,「現像剤担持体の長手方向に沿って延び,像担持体に現像剤を付与する現像領域を通過した現像剤担持体上の現像剤を回収する」点で一致する。

(6) 引用発明の「第2現像剤撹拌搬送部材305」(回収路搬送部材に相当)は,「現像ローラ302」(現像剤担持体に相当)の中心O?302を通る中心線O?302aと平行で,前記中心線O-304aの略真下に位置する中心線O-305aを中心に反時計まわりの向きに回転し,中心線O-305aの長手方向手前側から奥側に向けて「現像剤320」(現像剤に相当)を撹拌しながら搬送する部材であり,当該「第2現像剤撹拌搬送部材305」によって搬送される「現像剤320」は,「第2現像剤撹拌部材305」に沿った「下搬送路」(回収路に相当)内を移動するのであるから,引用発明の「第2現像剤撹拌搬送部材305」と,本願発明の「回収路搬送部材」とは,「回収路内の現像剤を搬送する」点で一致する。

(7) 引用発明の「開口307」(第一連通部に相当)は,当該「開口307」を介して「下搬送路」(回収路に相当)から「上搬送路」(供給路に相当)への「現像剤320」(現像剤に相当)の汲み上げが行なわれるのであるから,本願発明の「第一連通部」と,「回収路から供給路に現像剤が移動する」点で一致する。

(8) 引用発明では,現像ローラ302の長手方向手前側端部に対応する部位には仕切板306が無く,第1現像剤撹拌搬送部材304で搬送された現像剤320がその搬送方向端部でケーシング301の側壁に沿って降下し,「下搬送路」(回収路に相当)に移動するよう構成されているところ,当該仕切板306の無い部位を,「供給路から回収路に現像剤が移動する第二連通部」ということができる。
したがって,引用発明と本願発明とは,「供給路から回収路に現像剤が移動する第二連通部」を有する点で一致する。

(9) 引用発明の「補給用開口310」(トナー補給口に相当)は,仕切板306が無い手前側の端部上方に設けられているところ,当該仕切板306が無い手前側の端部とは,前記(8)で述べた「供給路から回収路に現像剤が移動する第二連通部」に他ならない。
したがって,引用発明と本願発明は,「第二連通部の上方にトナー補給口が設けられ」ている点で一致する。

(10)ア 引用発明では,「第1現像剤撹拌搬送部材304」(供給路搬送部材に相当)が「第2現像剤撹拌搬送部材305」(回収路搬送部材に相当)に対して上方に位置する関係となっているから,本願発明の前記3(2)イの「回収路搬送部材が供給路搬送部材より下方に位置すること」という要件を満たしている。
イ また,引用発明では,「補給用開口310」(トナー補給口に相当)は,仕切板306が無い手前側の端部上方に設けられており,当該「補給用開口310」から「上搬送路」(供給路に相当)補給されたトナーは,「第二連通部」を通って「下搬送路」(回収路に相当)の手前側,すなわち「下搬送路」の上流側に移動することが明らかである。ここで,引用文献には,「補給用開口310」の位置が,「第1現像剤撹拌搬送部材304」の回転中心線を通る垂直線を基準として,「第1現像剤撹拌搬送部材304」の回転方向が上から下向きとなる側(以下,便宜上「第1現像剤撹拌搬送部材304の落下方向移動側」という。)のみに設けられているのか,下から上向きとなる側(以下,便宜上「第1現像剤撹拌搬送部材304の上昇方向移動側」という。)のみに設けられているのか,それとも第1現像剤撹拌搬送部材304の落下方向移動側及び上昇方向移動側の双方にかかるように設けられているのかについて,明記されていないものの,そのいずれの配置であったとしても,「供給路から回収路に現像剤が移動する第二連通部」が,仕切板306が無い部位で構成されている引用発明において,「補給用開口310」から補給されたトナーが上搬送路から下搬送路に降下(落下)する際に,その全てが,「第2現像剤撹拌搬送部材305」の回転中心線を通る垂直線を基準として,「第2現像剤撹拌搬送部材305」の回転方向が上から下向きとなる側(以下,便宜上「第2現像剤撹拌搬送部材305の落下方向移動側」という。)のみに落下し,「第2現像剤撹拌搬送部材305」の回転方向が下から上向きとなる側(以下,便宜上「第2現像剤撹拌搬送部材305の上昇方向移動側」という。)側には一切落下しないことなど,技術常識からみておよそ考え難いから,引用発明においては,「補給用開口310」から「上搬送路」に補給されたトナーが「第二連通路」を通って「下搬送路」に補給される際に,少なくともその一部が,「第2現像剤撹拌搬送部材305の上昇方向移動側」に補給されるものと認められる。
したがって,本願発明の前記3(2)ウの要件に関して,引用発明と本願発明は,「トナー供給口から供給路に補給されたトナーが第二連通路を通って回収路に補給される際に,少なくともその一部が,回収路搬送部材の上昇方向移動側であって,かつ回収路の上流側の位置に補給される」点で共通するといえる。
ウ また,引用発明においては,「現像ローラ302」(現像剤担持体に相当)が反時計まわりの向きに回転し,「第2現像剤撹拌搬送部材305」(回収路搬送部材に相当)が「現像ローラ302」の4時の方向上に配置され,反時計まわりの向きに回転しているから,「現像ニップ領域A」(現像領域に相当)を通過した「現像ローラ302」上の「現像剤320」(現像剤に相当)は,「下搬送路」(回収路に相当)に回収される際に,「第2現像剤撹拌搬送部材305の落下方向移動側」で回収されるものと認められる。
したがって,引用発明は,本願発明の前記3(2)エの「現像領域を通過した現像剤担持体上の現像剤が回収路に回収される際に,『回収路搬送部材の落下方向移動側』で回収されること」という要件を満たしている。

エ さらに,引用発明では,補給用開口310から補給されたトナーが,第1現像剤撹拌搬送部材304の上流側端部を経て降下し,「第2現像剤撹拌搬送部材305」により,現像ローラ302から離れたトナー濃度の低下した「現像剤320」(現像剤に相当)中で撹拌混合されながら,「下搬送路」(回収路に相当)を搬送され,奥側まで搬送されるまでにトナー濃度が正常化されるよう構成されているのであって,「現像ローラ302から離れたトナー濃度の低下した現像剤320」とは,すなわち,「現像ニップ領域A」(現像領域に相当)を通過した「現像ローラ302」上の「現像剤320」が「下搬送路」に回収されたものに他ならないから,引用発明は,本願発明の前記3(2)オの「回収路に補給されたトナーと,回収路に回収された現像剤とが,(回収路搬送部材によって)混合されること」という要件を満たしている。

オ 前記アないしエから,引用発明と本願発明とは,「供給路搬送部材より下方に位置する『回収路搬送部材の上昇方向移動側』の回収路の上流側に少なくとも一部のトナーを補給し,『回収路搬送部材の落下方向移動側』で現像領域を通過した現像剤担持体上の現像剤を回収し,混合する」点で共通しているといえる。

(11) 前記(1)ないし(10)から,本願発明と引用発明は,
「像担持体上にトナー像を形成するための現像剤を担持し,回転駆動される現像剤担持体と,
前記現像剤担持体の長手方向に沿って延びる供給路と,
前記供給路内の現像剤を前記長手方向に搬送しながら前記現像剤担持体に現像剤を供給する供給路搬送部材と,
前記現像剤担持体の長手方向に沿って延び,前記像担持体に現像剤を付与する現像領域を通過した前記現像剤担持体上の現像剤を回収する回収路と,
前記回収路内の現像剤を搬送する回収路搬送部材と,
前記回収路から前記供給路に現像剤が移動する第一連通部と,
前記供給路から前記回収路に現像剤が移動する第二連通部と,
を有する現像装置において,
第二連通部の上方にトナー補給口が設けられ,
前記供給路搬送部材より下方に位置する『回収路搬送部材の上昇方向移動側』の前記回収路の上流側に少なくとも一部のトナーを補給し,『回収路搬送部材の落下方向移動側』で前記現像領域を通過した前記現像剤担持体上の現像剤を回収し,混合する現像装置。」である点で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本願発明では,「トナー補給口」が,「供給路搬送部材の落下方向移動側」のみに位置し,「供給路搬送部材の上昇方向移動側」の位置には存在しないように設けられ(前記3(2)アを参照。),「回収路搬送部材の上昇方向移動側」に補給されるトナーが,相当多くの部分である(前記3(2)ウを参照。)のに対して,
引用発明では,「第1現像剤撹拌搬送部材304の落下方向移動側」及び「第1現像剤撹拌搬送部材304の上昇方向移動側」に対する「補給用開口310」の位置は定かでなく,かつ,「第2現像剤撹拌搬送部材305の上昇方向移動側」に補給されるトナーは本願発明ほど多くの部分とはいえない点。

7 判断
(1)相違点の容易想到性について
ア 引用発明においても,「補給用開口310」からトナー補給を行う際に,補給トナーが,「補給用開口310」の下方に位置する「第1現像剤撹拌搬送部材304」のスクリュー羽根に当たって跳ね返され,飛散トナーとなって浮遊してしまい,このような飛散トナーが未・弱帯電状態で現像スリーブやその周辺の現像剤にダイレクトに到達することにより,地肌汚れや機内汚損が生じてしまうという,引用文献2記載の問題が発生するおそれがあることは,当業者が容易に把握できることである。
そうであれば,引用発明において,当該問題の発生を防止するために,前記5(2)イで認定した引用文献2記載の技術を適用し,「補給用開口310」を,「第1現像剤撹拌搬送部材304の落下方向移動側」のみに位置し,「第1現像剤撹拌搬送部材304の上昇方向移動側」の位置には存在しないように設けることは,当業者が容易に想到し得たことというほかない。

イ しかるに,前記アで述べた構成の変更を行った引用発明においては,「第1現像剤撹拌搬送部材304の落下方向移動側」のみに位置する「補給用開口310」から上搬送路に補給されたトナーは,本願発明と同様に(前記3(2)を参照。),そのほとんどが第1現像剤撹拌搬送部材304の回転に巻き込まれて第1現像剤撹拌搬送部材304の底部側に移動し,当該移動の途中で「第二連通部」を通って下搬送路に落下することとなり,当該落下したトナーの相当多くの部分が,補給用開口310の下部に位置する「第2現像剤撹拌搬送部材305の上昇方向移動側」に到達することとなると認められる。

ウ 前記ア及びイのとおりであるから,引用発明において,「補給用開口310」を,「第1現像剤撹拌搬送部材304の落下方向移動側」のみに位置し,「第1現像剤撹拌搬送部材304の上昇方向移動側」の位置には存在しないように設け,「第2現像剤撹拌搬送部材305の上昇方向移動側」に補給されるトナーが,相当多くの部分となるようにすること,すなわち,引用発明を,相違点に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(2)効果について
本願発明が有する効果は,引用文献1及び2に記載された事項から当業者が予測できた程度のものである。
なお,審判請求書において,本願発明が有していると請求人が主張する効果は,本願明細書に記載された効果でなく,かつ,本願発明が具備する発明特定事項のみによって得られる効果とも認められないから,本願発明の進歩性の有無についての判断においては考慮しない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

8 むすび
本願の請求項1に係る発明は,引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-17 
結審通知日 2016-02-23 
審決日 2016-03-09 
出願番号 特願2011-61664(P2011-61664)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 孝幸  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 鉄 豊郎
清水 康司
発明の名称 現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置  
代理人 工藤 修一  
代理人 樺山 亨  
代理人 本多 章悟  

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