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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A41C
審判 全部無効 2項進歩性  A41C
管理番号 1313711
審判番号 無効2015-800045  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-02-27 
確定日 2016-04-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3672920号発明「衣料」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3672920号の請求項1ないし42に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 << 目 次 >>

第1.請求及び答弁の趣旨
第2.手続の経緯
第3.請求人の主張及び証拠方法
第4.本件発明
第5.当審の判断
1.甲号証及び周知文献の記載事項
(1)甲2の記載事項、甲2発明
(2)甲3の記載事項
(3)甲4の1の記載事項、甲4発明
(4)甲5の記載事項、甲5発明
(5)甲6の記載事項、甲6発明の1、甲6発明の2
(6)甲7の1の記載事項
(7)甲8の1の記載事項
(8)甲11の2の記載事項
(9)甲13の記載事項
(10)職権で探知した周知文献1?7の記載事項
2.無効理由3の検討-本件発明1について
3.無効理由4の検討(1)-本件発明2?12について
4.無効理由4の検討(2)-本件発明13?17について
5.無効理由4の検討(3)-本件発明18?35について
6.無効理由4の検討(4)-本件発明36?39について
7.無効理由4の検討(5)-本件発明40?42について
第6.むすび


第1.請求及び答弁の趣旨
請求人は、結論と同旨の審決を求めている。
被請求人は、本件無効審判において答弁しなかった。

第2.手続の経緯
本件に係る主な手続の経緯を以下に示す。
平成15年 5月13日 特願2003-134586号(本件特許
国内優先権主張の基礎とする出願の一方)の出願
平成15年10月29日 特願2003-369540号(本件特許
国内優先権主張の基礎とする出願の他方)の出願
平成16年 4月26日 本件特許出願
平成17年 4月28日 設定登録(特許第3672920号)
平成27年 2月26日付け 審判請求書(平成27年2月27日差出)
平成27年 4月20日付け 手続補正書(審判請求書)
平成27年 4月30日 審判請求書及び手続補正書の送達
平成27年 8月 4日付け 書面審理通知
平成27年10月28日付け 審決の予告

以下、本件特許の請求項1ないし42に係る発明を、「本件発明1」ないし「本件発明42」といい、これらを総称する場合には「本件発明」ということがある。また、「甲第1号証」等を、「甲1」等と略記し、「請求人が主張する無効理由1」等を単に「無効理由1」等ということがある。

第3.請求人の主張及び証拠方法
1.請求人の主張の要旨
請求人は、以下の(1)?(4)に示す無効理由1ないし無効理由4を主張しており、下記2に示す証拠方法を提示している。
(1)無効理由1
本件特許に伴う国内優先権主張は無効であるから、本件発明の新規性及び進歩性を判断する基準とすべき日は、本件特許出願の現実の出願日である平成16年4月26日である。
本件発明1は、平成16年4月26日より前に頒布された刊行物である甲6又は甲11の2に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
若しくは、本件発明1は、甲6、甲11の2、甲12の2、甲2、甲3、甲5?9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1は、特許法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきものである。

(2)無効理由2
本件特許に伴う国内優先権主張は無効であるから、本件発明の新規性及び進歩性を判断する基準とすべき日は、本件特許出願の現実の出願日である平成16年4月26日である。
本件発明2ないし42は、平成16年4月26日より前に頒布された刊行物である甲6又は甲11の2に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
若しくは、本件発明2ないし42は、甲6、甲11の2、甲12の2、甲2?9、甲13に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明2ないし42は、特許法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきものである。

(3)無効理由3
本件発明1は、本件特許が優先権として主張する日である平成15年5月13日より前に頒布された刊行物である甲2、甲3、甲5、甲7の1?9に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1は、特許法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきものである。

(4)無効理由4
本件発明2ないし42は、本件特許が優先権として主張する日である平成15年5月13日(甲1の2の出願日)又は平成15年10月29日(甲1の3の出願日)より前に頒布された刊行物である甲2?9、甲11の2、甲12の2、甲13に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明2ないし42は、特許法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきものである。

2.請求人が提示した証拠方法
甲1の1:特許第3672920号公報(本件特許公報)
甲1の2:特願2003-134586号の優先権証明書
甲1の3:特願2003-369540号の優先権証明書
甲2:特開2001-181908号公報
甲3の1:イタリアの雑誌「SCI ★ FONDO n.120」、Eurojersey、
1996年2月発行、表紙、目次、34?35頁の“Sensitive a
fior di pelle”と題する記事及びその英訳
甲3の2:「甲3の1」の翻訳文(日本語訳)
甲4の1:米国特許出願公開第2002/0106970号明細書
甲4の2:「甲4の1」の部分訳
甲5:特開2001-115358号公報
甲6:国際公開第03/040448号
甲7の1:Dr. S. Raz、『Warp Knitting Production』、独国 Melliand
Textilberichte GmbH、1987年、5、82?85及び109?12
3頁
甲7の2:「甲7の1」の翻訳文
甲8の1:David J Spencer、『KNITTING TECHNOLOGY A comprehensive
handbook and practical guide Third edition』、英国 Woodhead
publishing limited、2001年、51?59及び313?321頁
甲8の2:「甲8の1」の翻訳文
甲9の1:Stephanie K. Holland、『ALL ABOUT Fabrics AN INTRODUCTION
TO NEEDLECRAFT』、英国 Oxford university press、1985年、27頁
甲9の2:「甲9の1」の翻訳文
甲10:特願2001-340071号の優先権証明書
甲11の1:特願2001-340072号の優先権証明書
甲11の2:特開2003-147618号公報
甲12の1:特願2002-184580号の優先権証明書
甲12の2:特開2003-201654号公報
甲13:特開2000-8203号公報
甲14:インタ-ネットフリ-百科事典「ウィキペディア」の「スパンデッ
クス」と題するページのプリントアウト、印刷日2015年2月1日、
(https://ja. wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%B3%E3%8
3%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9)
甲15:東レ・オペロンテックス株式会社のホ-ムペ-ジの「ライクラ(R)
ファイバーとは」と題するページのプリントアウト、印刷日2015年
2月1日、(http://www.toray-opt.co.jp/whatslycra/)
甲16の1:欧州特許第1623637号明細書(本件特許の対応欧州特許)
甲16の2:欧州特許第1623637号に対する異議申立書
甲16の3:「甲16の2」の翻訳文
甲16の4:欧州特許第1623637号に対する特許取消の通知、及び
その翻訳文
甲17の1:米国特許第7631521号明細書(本件特許の対応米国特許)
甲17の2:米国特許第7631521号に対する再審査請求書
甲17の3:「甲17の2」の翻訳文
甲17の4:米国特許第7631521号に対する再審査請求を認める旨の
米国特許商標庁の決定の通知及びその翻訳文
甲17の5:米国特許第7631521号の請求項1?48(全項)が拒絶
される旨の米国特許商標庁の通知及びその翻訳文

第4.本件発明
本件発明1ないし42は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし42に記載された事項によって特定される発明であると認める。請求項1ないし42は、次のとおりである。
【請求項1】
少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸がルーピング組織からなる、伸縮性を有する経編地を、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成された衣料。
【請求項2】
前記経編地が、非弾性糸と弾性糸が同行する1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸の両方が開き目である経編地からなる請求項1記載の衣料。
【請求項3】
前記経編地が、非弾性糸と弾性糸が逆行する1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸の少なくとも一方が閉じ目である経編地からなる請求項1記載の衣料。
【請求項4】
前記経編地が、非弾性糸と弾性糸が逆行する1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸の両方が閉じ目である経編地からなる請求項1記載の衣料。
【請求項5】
弾性糸の組織がハーフ組織である請求項1記載の衣料。
【請求項6】
弾性糸の組織がアトラス組織である請求項1記載の衣料。
【請求項7】
非弾性糸と弾性糸の、少なくとも一方が閉じ目である経編地からなる請求項5又は6のいずれかに記載の衣料。
【請求項8】
非弾性糸と弾性糸の両方が閉じ目である経編地からなる請求項5又は6のいずれかに記載の衣料。
【請求項9】
非弾性糸が綿糸である請求項5又は6のいずれかに記載の衣料。
【請求項10】
非弾性糸が綿糸である請求項5記載の衣料。
【請求項11】
非弾性糸が綿糸で、非弾性糸と弾性糸の少なくとも一方が閉じ目である経編地からなる請求項5記載の衣料。
【請求項12】
非弾性糸が綿糸で、非弾性糸と弾性糸の両方が閉じ目である経編地からなる請求項5記載の衣料。
【請求項13】
前記部片が、下記(A-1)、(A-2)からなる群(A)から選ばれた少なくとも1種の素材と(A-1)、(A-2)以外の他の布からなる素材を接合して積層した部片からなる請求項1に記載の衣料。
(A-1)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地。
(A-2)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸のどちらか一方が閉じ目、他方が開き目である経編地。
【請求項14】
他の布からなる素材が、下記(B-1)?(B-4)からなる群(B)から選ばれた少なくとも1種の素材である請求項13に記載の衣料。
(B-1)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がハーフ組織である経編地。
(B-2)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がアトラス組織である経編地。
(B-3)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に開き目である経編地。
(B-4)非弾性糸と弾性糸とが逆行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地。
【請求項15】
前記部片が、下記(B-1)?(B-4)からなる群から選ばれた少なくとも1種の素材を複数枚接合して積層した部片からなる請求項1に記載の衣料。
(B-1)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がハーフ組織である経編地。
(B-2)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がアトラス組織である経編地。
(B-3)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に開き目である経編地。
(B-4)非弾性糸と弾性糸とが逆行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地。
【請求項16】
素材(A)が(A-1)であり、素材(B)が(B-1)である請求項14に記載の衣料。
【請求項17】
(B-1)の非弾性糸が綿であり、且つ非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である請求項16に記載の衣料。
【請求項18】
前記部片の衣料における上縁あるいは下縁の少なくとも一方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が編み方向に対して、10?120度の角度で裁断されている請求項1?17のいずれかに記載の衣料。
【請求項19】
前記部片の衣料における上縁および下縁の両方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が編み方向に対して、10?120度の角度で裁断されている請求項1?17のいずれかに記載の衣料。
【請求項20】
前記部片が、衣料の上下方向に連続した経編地からなる請求項1?19のいずれかに記載の衣料。
【請求項21】
前記部片の衣料における上縁あるいは下縁の少なくとも一方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が曲線に裁断されている請求項1?20のいずれかに記載の衣料。
【請求項22】
前記部片の衣料における上縁および下縁の両方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が曲線に裁断されている請求項1?20のいずれかに記載の衣料。
【請求項23】
前記部片の衣料における上縁あるいは下縁の少なくとも一方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が複数の曲線のある波形状である請求項1?21のいずれかに記載の衣料。
【請求項24】
前記部片の衣料における上縁および下縁の両方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が複数の曲線のある波形状である請求項1?22のいずれかに記載の衣料。
【請求項25】
前記部片の衣料における上縁および下縁の両方の縁が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、上縁および下縁が相互に非平行である請求項1?24のいずれかに記載の衣料。
【請求項26】
前記部片の衣料における上縁および下縁の両方の縁が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、上縁の縁の形状と、下縁の縁の形状が異なっている請求項1?25のいずれかに記載の衣料。
【請求項27】
衣料がボトム衣料であり、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、ウェストもしくは裾の少なくとも一方を形成する請求項1?26のいずれかに記載の衣料。
【請求項28】
衣料がボトム衣料であり、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、ウェストと裾の両方を形成する請求項1?26のいずれかに記載の衣料。
【請求項29】
衣料がブラジャー、もしくは水着あるいはレオタードのトップスであり、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、バック布の上縁又は下縁の少なくとも一方の縁を形成する請求項1?26のいずれかに記載の衣料。
【請求項30】
衣料がブラジャー、もしくは水着あるいはレオタードのトップスであり、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、バック布の上縁及び下縁の両方の縁を形成している請求項1?26のいずれかに記載の衣料。
【請求項31】
前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、編み方向に対して、20?80度の角度で裁断されている請求項27に記載の衣料。
【請求項32】
前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、共に編み方向に対して、20?80度の角度で裁断された縁である請求項28に記載の衣料。
【請求項33】
バック布を形成する前記部片の衣料における前記縁始末不要な縁が、編み方向に対して10?90度の角度で裁断されている請求項29または30のいずれかに記載の衣料。
【請求項34】
バック布を形成する前記部片の衣料における前記縁始末不要な縁が、編み方向に対して75?90度の角度で裁断されている請求項29または30のいずれかに記載の衣料。
【請求項35】
前記部片が、前記部片を構成する前記非弾性糸と弾性糸とからなる地編組織に、更に柄糸となる非弾性糸がジャカード制御により編みこまれて、ジャカード柄模様が形成されている請求項1?34のいずれかに記載の衣料。
【請求項36】
地編組織を形成する弾性糸が1×1トリコット組織であり、地編組織を形成する非弾性糸とジャカード制御される柄糸となる非弾性糸の少なくともいずれか一方が、弾性糸と同行する1×1トリコット組織となっており、柄糸においてジャカード柄模様を形成する部分が、1×1トリコット組織以外の組織となっている請求項35に記載の衣料。
【請求項37】
地編組織を形成する弾性糸が1×1トリコット組織であり、地編組織を形成する非弾性糸とジャカード制御される柄糸となる非弾性糸のいずれか一方が、弾性糸と同行する1×1トリコット組織であり、他方の非弾性糸が、弾性糸と逆行する1×1トリコット組織であり、柄糸においてジャカード柄模様を形成する部分が、1×1トリコット組織以外の組織となっている請求項35に記載の衣料。
【請求項38】
地編組織を形成する非弾性糸が地編組織を形成する弾性糸と逆行する1×1トリコット組織であり、ジャカード制御される柄糸となる非弾性糸が、弾性糸と同行する組織で、柄糸においてジャカード柄模様を形成する部分が、1×1トリコット組織以外の組織となっている請求項35に記載の衣料。
【請求項39】
前記部片が、下記(A-1)、(A-2)からなる群から選ばれた少なくとも1種の素材からなる部片と請求項35、36、37、38のいずれかに記載のジャカード柄模様が形成されている部片からなる素材を接合して積層した部片からなる請求項1に記載の衣料。
(A-1)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地。
(A-2)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸のいずれか一方が閉じ目、他方が開き目である経編地。
【請求項40】
バック布が、請求項13?17、39のいずれかに記載の部片を用いたバック布である請求項29、30、33、34のいずれかに記載の衣料。
【請求項41】
前記部片が、弾性糸による直線状の伸縮パワーの切替え部位を有する請求項1?40のいずれかに記載の衣料。
【請求項42】
衣料が、身体に密着する衣料である請求項1?41のいずれかに記載の衣料。

第5.当審の判断
1.甲号証及び周知文献の記載事項
(1)甲2の記載事項、甲2発明
ア.甲2の記載事項
甲2は、本件特許が優先権を主張する平成15年5月13日より前に頒布された刊行物である。甲2には、次の事項が記載されている。
(ア)【発明の名称】衣類及び衣類の提供方法
………
【請求項1】経編組織にて編成され、それぞれが衣類の前見頃、後見頃となる分離された二つの層を具備しており、前記の二つの層を衣類の輪郭線に沿って接結する接結部を備えた衣類において、袖や裾等の衣類における人体を通す部位に切断によるサイズの調節の容易化のための指標部が形成されていることを特徴とする衣類。

(イ)【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は長尺の経編の布帛より切り出される無縫製の衣類及びそのような衣類の提供方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の既製服の製造にあたっては、製織又は編成後に前身頃、後身頃、襟等の各部を型紙にそって裁断し、裁断された各部を縫製によって連結し、衣類とする工程をとるのが行われているところである。サイズに付いては多種類であればあるほど適合性が上がるが、あまり多種類とすることは型の数が増え、工程が増え、縫製の手間が多くなることからコスト増につながる。そこで、大(L)、中(М)、小(S)の3種類程度に押えるのが通常であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、需要者にとっては個人間で微妙に変化するサイズや嗜好にベストフィットさせたいという要求があり、既製品の衣料のサイズは限られている現状に不満は大きい。そのため、サイズ調整の可能性が広い衣服に対する要求があった。
【0004】この発明は以上の現状に鑑みてなされたものであり、縫製コストを伴うことなく広範囲での寸法適合が可能とすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明になる、経編組織にて編成され、それぞれが衣類の前見頃、後見頃となる分離された二つの層を具備しており、前記の二つの層を衣類の輪郭線に沿って接結する接結部を備えた衣類は、袖や裾等の衣類における人体を通す部位に切断による袖丈や身丈の調節の容易化のための指標部が形成されていることを特徴とする。
【0006】このような構造の経編による布帛は少なくとも2枚の地筬と少なくとも2枚のジャカード筬とを有する経編機にて編成することができる。即ち、衣類の二つの層のうち一方の層は第1の地筬によって編成され、他方の層は第2の地筬によって編成される。二つの層を衣類の輪郭線に沿って接結する接結部はジャカード筬によってその編成を行うことができる。

(ウ)【0008】そして、この発明の構成によれば、袖や裾等の衣類における人体を通す部位に切断による袖丈や身丈の調節の容易化のための指標部が形成されている。需要者は指標部をガイドとして任意のラインでカットを行う。指標部は、例えば、S,M,L等の表示よりなるが、カットはこれらの指標に厳密に合わせて行われるものではなく、これらの指標を目安にサイズ及び嗜好に合わせた任意のラインでカットを行うことができる。例えば、需要者が標準ではMのサイズであるが、幾分長い袖丈としようとすれば、Mの表示を指標にそれより幾分袖丈が長くなる部位で切断を行うことになろう。従って、従来の衣類がサイズが固定のいくつかのものから選択せざるを得なかったことと比較してこの発明では需要者のサイズや嗜好に合わせた無段階的な調整が可能であり、サイズのベストフィット化が可能である。
【0009】以上述べたように、この発明は任意の点でのカットにより袖丈や身丈を任意に調整することができるが、任意の点でのカットしつつ無縫製というこの発明の解決手段との関係で重要な点は編組織として経編となっていることである。即ち、織成や横編による布ではカットによって織り目や網目が露出すると、糸のほつれが極めて簡単に生ずることから、ほつれを生じさせないため、カット部分での追加的な縫製処理が必須である。これに対して、経編組織においては、縦糸がウエール方向(経糸と交叉する方向)に振られることによりどのカットラインに沿っても経糸同士間での糸間は複雑な交絡構造となっており、任意のカットラインによるカットを行い、カットラインをそのままとしても、カットラインでの糸のほつれは殆ど起こり得ない。

(エ)【0012】
【発明の実施の形態】図1,2はこの発明の実施によって得られる袋状の経編組織による編物を示しており、編物は分離した第1層10(表層)と、第2層12(裏層)とを備える。第1層10は編物からの切り出し後に衣類(この実施形態においてはTシャツ)の一方側、例えば前身頃となり、第2層12は布帛からの切り出し後に衣類の他方側、例えば後身頃となる。衣類は布帛の長手方向(経糸方向)にリピートするように編成されている。
【0013】図1において、14-1,14-2,14-3は接結線であり、この接結線14-1,14-2,14-3に沿って第1層10と第2層とは一体に連結されている。これらの接結線14-1,14-2,14-3を総称して14にて表す(図2参照)。図1に示すように、接結線14-1,14-2,14-3は衣類(Tシャツ)の外形線に沿っており、接結線14-1は衣類の胴部における両側、接結線14-2は衣類の脇の下から袖口までのライン、接結線14-3は肩から袖口までのラインを示している。
【0014】14Aは衣類の首回りの開口部分を示し、14Bは袖口の開口部分、14Cは胴部の裾の開口部分を示し、これらの人体を通過させる部分においては上下層10,12の接結は行われておらず、両者は分離しており、上下層間に首、腕、胴体を通過させるための開口が形成される。
【0015】図1において、CL1,CL2,CL3のラインは衣類としてのTシャツの袖口の部位に設けられた切断用の案内用の案内線である。この案内線は経編の編物の編成と一体に形成されたTシャツを編物から分離した後において、顧客である着用者のサイズや嗜好にベストフィットした袖長となるようにTシャツの袖の部分を切断する際の案内線となるものである。即ち、ラインCL1,CL2,CL3は例えばL,M,Sの基準サイズに応じた切断線であり、顧客はラインCL1,CL2,CL3のうち自分のサイズに合ったいずれかのラインを選択し、選択されたラインをガイドとしてはさみによって切断を行うことにより自らのサイズないしは嗜好にベストフィットした最適の袖長が得られるようにカットを行う。従って、布帛から切り出した状態での袖口の開口部14BはサイズとしてはLL(Lより幾分大きめのサイズ)というべきものとなっている。

(オ)【0017】以上の実施形態では袖丈を可変とするため袖口にカット案内表示を挿入した例について説明したが、胴部の下端に同様な表示を編み込んでおき、その表示をガイドにしてカットすることにより自由な裾丈を設定できるようにすることもこの発明に包含される。また、首部の開口14Aにおいても同様な方式で切断案内表示を編みこんでおき、需要者の好みの首部の開口形状(開口の大きさ)を自由に設定可能とすることもこの発明の範囲に包含される。
【0018】この発明において重要な点はTシャツを一体に形成した編物は経編組織にて編成されていることである。経編組織においては、周知の通りのウエール方向における経糸ループ同士の複雑な交絡構造を有している。そのため、任意のラインでのカットにかかわらず、カット縁において編物を構成する糸が交絡を維持することができる。即ち、この実施形態では経編布帛中に衣類(Tシャツ)を一体形成し、一体形成された衣類を切り出した後、ショップないしは個人が過程において袖口に設けた案内線を利用して適当な袖丈が得られるようにカットしており、カットされた縁部はそのままで何等処理を加えていないが、このようにカットしたままでも縁部に糸のほつれがない状態を確保することができる。

(カ)図1には、首部の開口14Aが半円形状とされているから、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度になる部分、10?120度の角度になる部分、10?90度の角度になる部分、20?80度の角度になる部分、75?90度の角度になる部分を含んでいることが明らかである。

イ.甲2発明
以上の記載事項及び図1?3からみて、甲2に開示されている技術的事項を、技術常識に従い本件発明1に倣って整理すれば、甲2には次の発明が記載されている。(以下、「甲2発明」という。)
《甲2発明》
経編組織にて編成されている衣類であり、
首部の開口を、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度の部分を含む任意のラインでカットし、カットした縁部はそのままで何等処理を加えなくても縁部に糸のほつれがない状態を確保することができる衣類。

(2)甲3の記載事項
甲3は、本件特許が優先権として主張する平成15年5月13日より前の1996年(平成8年)2月に頒布された刊行物である。
甲3の34頁には、スポーツウェアの生地として用いられる Sensitive (R) という生地が、Lycra (R) と、Meril (R) ポリアミドマイクロファイバーとの組合せであり、クロスカントリースキーヤーの身体に完全に密着し動作の自由度を確保する生地であることが記載されている。Lycra (R) はスパンデックスの1種であるから弾性繊維である(甲14、甲15)。Meril (R) ポリアミドマイクロファイバーは、スパンデックスと比較すれば非弾性繊維といえる。編成する場合には、これら繊維を糸にする必要があることが当業者に自明であるから、Sensitive (R) という生地は、弾性糸と非弾性糸とを組み合せた生地であることが当業者に明らかである。甲3の35頁に示された Sensitive (R) 布地の拡大図には、Sensitive (R) 生地が、Meril (R) からなる非弾性糸と、Lycra (R) からなる弾性糸とが同行する1×1トリコット組織で、弾性糸と非弾性糸の両方が開き目である経編地であることが示されている。

(3)甲4の1の記載事項、甲4発明
ア.甲4の1は、本件特許が優先権を主張する平成15年5月13日より前の1996年(平成8年)2月に頒布された刊行物である。甲4の1には、次の事項が記載されている。
(ア)Abstract
Feminine undergarments, particularly brassieres and other body
shaping garments that are fabricated using a multi-layered fabric
laminate that is formed by gluing multiple fabric layers together,
preferably to permit body shaping garments to be substantially
fabricated from a single main piece of material or blank cut from
the multi-layered fabric laminate and which has finished edges
which do not require separate binding or narrow edge finishing,
together with a method of making such garments, both on an
individual, batch basis, as well as an automated process for making
the fabric laminate and multiple garments on a continuous basis,
are disclosed. Multi-layer composite fabric laminate materials
wherein different portions of at least one fabric layer thereof are
made of different fabrics, and a method for making them, are also
disclosed.(フロントページ)
(要約 女性用下着、特にブラジャーや体型補整衣服で、複数の布地層を接着一体化した多層布地積層体から製造される。好ましくは、体型補整衣服が実質的に、単一の材料主片、即ち、多層布地積層体から裁断されたブランクから製造され、個別の結合作業、即ち、狭い縁仕上げ作業を必要としない、完成した縁を備えるように製造される。このような下着を個別に又は一括して製造する方法、及び、自動化工程で布地を積層し多数の下着を連続して製造する方法も開示される。多層複合布地積層材料の少なくとも1層が、異なる部位において異なる布地となっている多層複合布地積層材料、及びその製造方法も開示される。)

(イ)SUMMARY OF THE INVENTION
[0016] According to the present invention, garments in general and
women's' brassieres and underpants in particular, are manufactured
from a dual layer fabric including a first fabric and a second
overlaid fabric, which fabrics are adhered to one another by an
adhesive material between the adjacent layers of fabric. The
individual fabric layers can be selected from natural or synthetic
materials, or materials that are a blend containing both. The
individual fabric layers can be made of stretchable or non-
stretchable materials, but preferably at least one includes
elastomeric materials. The individual fabric layers can be made of
the same material or they can each be made from different
materials. ………(明細書2頁右欄)
(発明の概要 [0016」本発明では、一般に衣類、特に女性のブラジャーとパンツ下着が、二層布地から製造される。二層布地は、第一の布地とそれに重ねる第二の布地がそれらの間に介在する接着剤によって互いに接着されている。個々の布地層は、天然又は合成材料、又は両者の混合物から選択できる。個々の布地層は、伸縮性又は非伸縮性の材料で作ることができるが、好ましくは少なくとも一方はエラストマー材料を含む。個々の布地層は、同じ材料で作ってもよく、また、それぞれ異なる材料から作ってもよい。……)

(ウ)[0049] As illustrated in FIG. 1, the perimeter of the blank
10 is cut-out in the shape of a smooth, straight edge 26. The
fabric laminate used in the manufacture of garments according to
the present invention provides a finished edge that is smooth and
resists unraveling, so that additional edge finishing steps are not
required. According to certain embodiments, a decorative edge, such
as a scalloped edge 27, can be provided. Still other edge
configurations can also be provided. The self-finishing edge
eliminates the need of edge tapes and/or narrow elastic finishing
parts, and has the benefits of additional comfort and aesthetics.
Since the self-edge is of the same material as the principal fabric
laminate of the brassiere, its properties are generally the same as
the main body of the garment. Thus, there is no abrupt transition
between the principal fabric and the bordering portions of the
brassiere. As well, the thickness of the edge of the finished
brassiere is generally the same as that of the principal fabric,
thus providing a smooth surface in intimate contact with the body
of the wearer and as well provides a smooth outer surface where the
finished brassiere comes into contact with the user's outerwear. (明細書5頁左欄)
([0049] 図1に示すように、ブランク10の周囲は、滑らかで直線的な縁形状26になるように裁断されている。本発明による衣類の製造に使用される多層布地積層体は、滑らかでほつれにくい完成した縁を提供するので、追加の縁仕上げ作業を必要としない。特定の実施形態では、スカラップ縁(ホタテガイの縁のように波打った縁)27のような装飾的な縁を提供することもできる。更に他の形状の縁も提供できる。自動で完成する縁は、縁テープ及び/又は狭い弾性仕上げ部品の必要をなくすだけでなく、心地よさと美しさという利点を有する。自動完成縁は、ブラジャー主要部の布地積層体と全く同じ材料なので、その特性は、全般的に、ブラジャー本体部と同じである。そのため、ブラジャーの主要部の布地と縁部との間に、突然の変化がない。更に、完成したブラジャーの縁部の厚さは、一般的に主要部の布地と同じであるから、着用者の身体に密着するとともに、着用者の上着に接触するブラジャー完成品の外側表面を滑らかにする。)

(エ)[0051] Referring now to FIGS. 2A-B, which illustrate various
types of two fabric layer fabric laminates made according to the
present invention, FIG. 2A shows one form of a two-layer fabric
laminate material, wherein a first layer 30 of an elastomeric
material preferably incorporates spandex fabric. In this
embodiment, layer 30 of fabric is placed in juxtaposition to a
layer of a dry ternary elastomeric polyamide thermoplastic adhesive
resin material 32, having a melt temperature in the range of from
about 109° C. to about 170° C., Preferably, the adhesive is in
the form of a loosely and amorphously woven filamentous web.
Depending on the garment to be produced from a particular fabric
laminate, the web adhesive 32 is alternatively applied to cover
either an entire first surface of the first layer of fabric 30, as
shown in FIG. 2A; or only over selected portions thereof, as shown
in FIG. 2B. (明細書5頁左欄)
([0051] 図2A-Bを参照すると、本発明に関して作製される種々の形態の二層布地積層体が例示されている。図2Aは、二層布地積層体の一形態を示しており、エラストマー材である第一層30は、好ましくはスパンデックス繊維を組み込んでいる。この実施形態では、約109℃から約170℃の範囲の溶融温度を有する乾燥三元エラストマー性ポリアミド接着剤の層32に重ねて、布地層30が配置される。好ましくは、この接着剤は、緩い無定型織りにされた繊維状ウェブの形態である。衣類が特定の布地積層物から製造されることに応じて、接着剤ウェブ32は、図2Aに示すように、第一層30の第一表面全体を覆うように配置されたり、図2Bに示すように、選択された一部の部分のみ覆うように配置されたりする。)

(オ)[0074] FIG. 9 illustrates a finished brassiere 70, including
breast cups 72 made from a first fabric laminate made from two
layers of a stretch fabric and having two side sections 74, each
made from a stretchable elastomeric synthetic spandex blend fabric.
The adhesive material used to join the fabric layers of the two
different fabric laminates together, as well as adhering the
stabilizing and reinforcing joining materials as well as a gore
insert 76 in the front body section, is a thermoplastic polyamide
adhesive resin material, in the form of a web positioned at joining
junctures and is either exposed on the inner surface of the
brassiere or preferably itself covered by a stretchable, but not
necessarily elastomeric fabric to provide a smooth inner finished
surface to the brassiere.
[0075] FIG. 17 illustrates a controlling panty 80 made in
accordance with the present invention. Each layer of the two fabric
layers can be seamlessly knit in a manner known in the art - with
the adhesive placed therebetween or the fabrics can be made by non-
seamless construction using with a glued seam provided for joining
panels or parts thereof.(明細書7頁右欄)
([0074] 図9は、完成したブラジャー70を示す。ブラジャー70は、2層の伸縮性布地からなる第1の布地積層体から作られたバストカップ72と、伸縮性エラストマー合成スパンデックスを混紡した生地から作られた2つのサイド部74とを有する。2つの異なる布地層を結合すると共に、結合する素材や本体前部の三角挿入片76を安定化し強化するために使用される接着剤は、接合箇所に配置されるウェブ形態の熱可塑性ポリアミド接着性樹脂材料であり、ブラジャーの内側面に接するよう配置される。好ましくは、この接着剤は、伸縮性の布地---必ずしもエラストマー性である必要はない---によって覆われ、ブラジャーに滑らかな内側仕上げ面を提供する。
[0075] 図17は、本発明に従って製造された締付けパンティ80を示す。層間が接着される二層布地の各層は、当技術分野で公知の方法でシームレス(接合部無し)に編んでよく、あるいは、複数のパネル即ち部片が接着接合された非シームレス構造であってもよい。)

(カ)[0087] As shown in area a of FIG. 7A, the individual fabric
layers of the blank and the adhesive web are first cut from yard
goods (rolls, bolts, or sheets) of the respective fabric or fabrics
30, 34 that are to be used for each layer, and, for the adhesive web layer 32, from a roll, bolt, or sheet of the adhesive material.
The two fabric layers and the adhesive web layer can be cut
individually from separate yard goods of the respective materials.
Where the two fabric layers of the garment are to be made of the
same fabric, both layers can be cut sequentially from the same yard
goods, or the two layers can be cut from two separate sources
(e.g., rolls, bolts, or sheets) of the yard goods. Alternatively,
where the two fabric layers are the same or are different, the two
fabric layers of the blank can be cut by “stacking” yard goods
from two sources of the respective fabrics and cutting the two
fabric layers of the blanks simultaneously. As a still further
alternative, all three layers of the blank, including the two
fabric layers, whether of the same or different fabrics, and also
the layer of the adhesive web material, can be stacked and cut
simultaneously. Cutting of the individual or stacked layers of the
blank can be done in any manner, manual (e.g., hand cut using
scissors and the like) or mechanized, using mechanical cutting
devices and machines. It is preferable to utilize mechanical
cutting devices, especially of the type that are computer
controlled and which can be programmed to cut to any specified
shape and size, in order to ensure consistency and uniformity of
the resulting cut layer pieces of the blank. (明細書9頁左欄)
([0087] 図7Aの領域aに示すように、個々の布地層ブランクと接着剤ウェブは、最初に、ヤード品(ロール、ボルト、又はシート)(当審注:「ヤード品」とは「ヤード長さ単位で売られる布等の製品」、「ボルト」とは「織物や壁紙等の一巻き」という意味である。)であるそれぞれの布地、即ち、個々の層として用いられる布地30、34から切り取られ、接着剤ウェブ層32は、接着剤材料のロール、ボルト、又はシートから切り取られる。これら2つの布地層と接着剤ウェブ層は、それぞれの材料である別々のヤード品から個別に切り取ってよい。衣服の2つの布地層が同一の布地である場合、両方の層を、同じヤード品から続けて切り取ってもよいし、2つの層を別々のヤード品(例えば、ロール、ボルト、又はシート)から切り取ってもよい。別の方法として、2つの布地層が同一又は異なっていても、それぞれの材料である2つのヤード品を「積み重ね」、2つの布地層を同時に切断することによって、2つの布地層を切り出すことができる。更に別の方法として、同一又は異なる2つの布地層と接着剤ウェブ層を含む3つの層のブランクを積み重ね、同時に切断することができる。これらの層を個々に又は積層して切断する方法は、手作業(例えば、鋏を用いた手作業での切断等)や機械的切断工具や装置を用いた機械的作業のいずれでも実行可能である。好ましくは、機械的切断装置、特に、コンピュータ制御で任意の形状及び大きさにプログラムすることができる形式の装置を利用し、切断されたブランク片の一貫性と均一性を確実にする。)

イ.甲4発明
以上の記載事項及びFig.1、2A、2B、7Aからみて、甲4の1に開示されている技術的事項を、技術常識に従い本件発明13に倣って整理すれば、甲4の1には次の発明が記載されている。(以下、「甲4発明」という。)
《甲4発明》
2つの同一の又は異なる布地層が互いに接着された布地積層体から製造される衣類であって、
滑らかでほつれにくい完成した縁を提供し、追加の縁仕上げ作業を必要としない衣類。

(4)甲5の記載事項、甲5発明
ア.甲5は、本件特許が優先権として主張する平成15年5月13日より前に頒布された刊行物である。甲5には、次の事項が記載されている。
(ア)【請求項1】切り出しによって衣類を形成する長尺布帛であって、分離した複数の層を備え、その少なくとも1つの第1層が衣類の一方の側面、少なくとも1つの第2層が衣類の他方の側面となり、第1層と第2層とは衣類の外形線に沿って接結され、接結線に沿った衣類の襟、袖、裾等の人体を通すための開口の部分は未完成又は半完成であり、かつ接結線はパターンとして布帛長さ方向に繰り返されており、接結線に沿って布帛の切り出しを行いかつ人体に合わせて適宜寸法や形状を調節することにより衣類とするようにすることを特徴とする長尺布帛。
【請求項2】請求項1の発明において、布帛は少なく2枚の地筬と少なくとも2枚のジャカード筬とを有する経編機にて編成され、衣類の前記第1層及び第2層はそれぞれのための地筬によって編成され、接結線に沿った部分はジャカード筬によって第1層及び第2層間の接結を行わしめたことを特徴とする長尺布帛。

(イ)【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は切り出しによって衣類を形成するための長尺布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術】織布や編布からの衣類の製造にあたっては、製織又は編成後に前身頃、後身頃、襟等の各部を型紙に沿って裁断し、裁断された各部を縫製によって連結し、衣類とする工程をとるのが古来連綿として行われているところである。
【0003】衣類の製造を効率化するため、裁断についてはコンピュータ裁断などにより相当な自動化を行うことは可能である。即ち、サイズに応じた型を格納するデータベースが備えられ、選択された型よりレーザカッタにより裁断することは既製服では通常行われているところである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、縫製については自動化は相当に困難であり、基本的には手作業であり、効率化、低コスト化のネックとなっていた。そこで、織布からの衣類の製造における無縫製化が希求されていた。
【0005】また、縫製により衣類製品にした場合も、既製服のサイズの種類は限られており個人によって微妙に変化する体格や嗜好に合わせることは困難であり、多少の妥協をもって選択することは通常されているところである。この場合、ベストフットではないため、顧客にとって少なからず不満となるところである。
【0006】以上の問題点に鑑み、この発明の目的は、実質的に縫製作業をなくすことができ、かつ個人間で微妙に変化する体格や嗜好にかかわらず、各個人にベストフィットさせることができるようにする布帛製品を提供することにある。

(ウ)【0007】
【課題を解決するための手段】この発明になる、切り出しによって衣類を形成する長尺布帛は、分離した複数の層を備え、その少なくとも1つの第1層が衣類の一方の側面、少なくとも1つの第2層が衣類の他方の側面となり、第1層と第2層とは衣類の外形線に沿って接結され、接結線に沿った衣類の襟、袖、裾等の人体を通すための開口の部分は未完成又は半完成であり、かつ接結線はパターンとして布帛長さ方向に繰り返されている。布帛より衣類を切り出すため、接結線に沿って布帛の切り出しが行われかつ人体に合わせて適宜寸法や形状が調節される。そのため、各個人間の微妙な寸法の相違や嗜好の変化にかかわらず各人各人にベストフィットした衣類を得ることができる。
【0008】この発明の布帛は経編及び丸編を含む編成並びに編成のいずれによっても製造することができる。経編みにて編成する場合は、布帛は少なく2枚の地筬と少なくとも2枚のジャカード筬とを有する経編機にて編成され、衣類の前記第1層及び第2層はそれぞれのための地筬によって編成され、接結線に沿った部分はジャカード筬によって第1層及び第2層間の接結を行わしめる。

(エ)【0011】
【発明の実施の形態】図1,2はこの発明の実施によって得られる袋状の布帛を示しており、布帛は分離した第1層10(表層)と、第2層12(裏層)とを備える。第1層10は布帛からの切り出し後に衣類の一方側、例えば前身頃となり、第2層12は布帛からの切り出し後に衣類の他方側、例えば後身頃となる。
【0012】図1において、14は接結線であり、この接結線14に沿って第1層10と第2層とは一体に連結されている。図1に示すように、接結線14は衣類の外形線の形態をなしている。即ち、接結線14における14aは首から肩にかけての部分であり、14bは両袖の部分であり、14cは両脇の部分であり、14dは裾の部分である。衣類の外形線におけるこれらの部分のうち、襟、袖、裾等の人体を通すための開口のとなる部分14a,14b,14dは未完成又は半完成である。即ち、襟の部分14a、袖の部分14b、及び裾の部分14dにおいては第1層10と第2層とは接結線によってつながったままとなっている。この発明では顧客のサイズや嗜好などに応じて、適宜の首回りや袖長や裾長が得られるように販売点においてカットを行い、顧客に販売される最終的な商品としている。
【0013】……この発明では上下層の接結線である衣類の外形線としてのパターンが布帛の長手方向に繰り返し的に形成されており、そしてこのパターンは首、袖、裾などの人体を通す部分については未完成となっており、店頭では、顧客の採寸を行い、またその嗜好を調査し、顧客にとって最適な首回り、袖長、裾長が得られるようにカットを行い、必要あれば、店に接地した小型の染色機によって染色を行い、顧客に完成品としての衣類を提供するようにしているのである。
【0014】第1の実施形態では図1の布帛を少なくとも2枚の地筬と少なくとも2枚のジャカード筬を有するラッシェル経編機を使用して編成するようにしている。即ち、図3は第1の実施形態において使用しうるラッシェル経編機を模式的に示しており、経編機は2列の針列20,22と、針列20,22に対応して設けた2列の地筬24,26と、2列のジャカード筬28,30を備えており、地筬24には第1層10を構成する経糸32が挿通され、地筬26には第2層12を構成する経糸34が挿通される。従って、非接結部では針列20及地筬24によって経糸32より第1層10が編成されると同時に針列22及地筬26によって経糸34より第2層12が編成され、これら第1層10と第2層12とは非接結部では相互に分離している。そして、ジャカード筬28,30にはそれぞれ経糸36,38が挿通されており、ジャカード筬28,30は接結線14に沿って第1層10と第2層12とを経糸36,38によって綴じ、これにより図1及び図2で説明した、第1層10と第2層12とが衣類の外形線に沿った接結された構造を得ることができる。

(オ)【0016】次に、図1及び図2に示す長尺の経編布帛より衣類を形成する方法について説明すると、販売店には図1の反物もしくは接結線に沿って切断した未完成の衣類が持ちこまれる。販売店では顧客の採寸を行うと共にその嗜好を把握し、襟、袖、裾のカットを行う。図4(イ)は前身頃における襟のカットラインの例を40A,40B,40Cのように示している。これらのカットライン40A,40B,40Cは予め規定されているわけではなく、顧客の採寸結果及び嗜好に応じて任意のカットラインに設定することができる。そのため、従来の完成品のようにL,M,Sの3種類の一つしか選定できないものと比較して自由度は無制限に上げることができる。図4(ロ)は襟を顧客の好みのラインにカット後、袖、裾の採寸結果又は嗜好によるカットラインを破線にて示している。袖、裾についても無制限に任意のカットラインを設定することができる。図4(ハ)は襟、袖、裾について顧客に合わせてカットした後の衣類を示している。
【0017】必要あれば、販売店には小型の染色機械が備えられており、カット後の衣類を好みの色に染色するようなサービスを附加することができる。
【0018】第1の実施形態のように経編組織にて構成した場合は経編組織特有の経糸同士の交絡によってかがりなどの補助的な縫製作業を行わなくてもカットラインでのほつれが殆ど問題とならない点でこの発明の実施に特に適している。
【0019】図5は図1の反物よりTシャツ様の衣類を形成する場合について説明したが、この発明においては同一の反物を使用してより自由な形態の衣類を形成することもできる。即ち、図5は図1の反物より外形線(接結線)に沿ってカットすることにより得られる未完成(半完成)の衣類よりタンクトップ様の衣類を形成するものである。即ち、図5(イ)は未完成の衣類に付すべきカットラインを破線にて示し、図5(ロ)は切断後のタンクトップ様の衣類を示している。この場合においても、顧客の採寸結果や嗜好に合わせて任意のカットラインにてカットを行い、顧客にベストマッチさせた衣類を得ることができる。

(カ)【0029】図1では説明の簡明のため繰り返しパターンである衣類の外形線は経、緯に平行するように図示されているが、経、緯に平行しない接結線=外形線の配置がむしろ常態であろう。経、緯に平行しない接結線の配置であっても、ジャカードの採用により、全織幅にわたるような大柄のパターンでも編成ないしは製織は可能である。

(キ)図4(イ)に示された襟のカットライン40A?40Cは半円形状であるから、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度になる部分、10?120度の角度になる部分、10?90度の角度になる部分、20?80度の角度になる部分、75?90度の角度になる部分を含んでいることが明らかである。図5(イ)には、タンクトップ様の衣類とするための襟及び脇のカットラインが、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度になる部分を含んでいることが記載されている。

イ.甲5発明
以上の記載事項及び図1?5からみて、甲5に開示されている技術的事項を、技術常識に従い本件発明1に倣って整理すれば、甲5には次の発明が記載されている。(以下、「甲5発明」という。)
《甲5発明》
経編機にて編成された衣類であり、
襟を顧客の好みのラインにカットするカットラインが、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度になる部分を含んでおり、かがりなどの補助的な縫製作業を行わなくてもカットラインでのほつれが殆ど問題とならない衣類。

(5)甲6の記載事項、甲6発明の1、甲6発明の2
ア.甲6は、本件発明13ないし17並びに36ないし39についての優先権主張日である平成15年10月29日(下記4(1)、6(1)参照)より前に頒布された刊行物である。甲6には、次の事項が記載されている。

(ア)(要約。フロントページの2頁目)
非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1トリコットであって、かつ、各編針において非弾性糸と弾性糸のうちの少なくとも1方が、閉じ目により編成されている伸縮性たて編地、その製造方法及び前記編地を少なくとも一部に用いた伸縮性衣類。編地を裁断して、裁断したままの縁をそのままの状態で衣類の縁部として使用できるので、縫製の簡素化および適度の伸縮性があって身体に気持ちよくフィットする、薄地で編目の美しい、かつ下着のヘムラインが外衣を通して外観に現れない、ファッショナブルな衣類を提供できる。

(イ)(明細書24頁3行?27頁23行)
請求の範囲
1.非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1トリコットであって、かつ、各編針において非弾性糸と弾性糸のうちの少なくとも1方が、閉じ目により編成されている伸縮性たて編地。
2.非弾性糸と弾性糸のいずれもが、閉じ目により編成されている請求項1記載の伸縮性たて編地。
3.非弾性糸が閉じ目により、弾性糸が開き目により編成されている請求項1記載の伸縮性たて編地。
………
11.ジャカードラッシェル編磯を用い、編地に柄出しして編成されている請求項1に記載の伸縮性たて編地。
………
14.請求項1に記載の同一の伸縮性たて編地を複数枚重ね、貼り合わせてなる伸縮性たて編地。
15.請求項1?13のいずれかに記載の伸縮性たて編地の中から選んだ少なとも2種の編地を複数枚組み合わせて重ね、貼り合わせてなる伸縮性たて編地。
………
19.編組織が非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1トリコットであって、かつ各編針において非弾性糸と弾性糸のうちの少なくとも1方が閉じ目により編成された伸縮性たて編地を含んで形成されている伸縮性衣類。
………
24.前記衣類の縁の一部又は全部が、前記の伸縮性たて編地が、裁断された状態のままの縁からなるヘミングレスのままの縁である請求項19に記載の伸縮性衣類。
25.ヘミングレスのままの縁のラインが、波形である請求項24に記載の伸縮性衣類。
26.前記の伸縮性たて編地が、衣類の少なくとも上端および下端の縁を構成し、該縁が裁断された状態のままの縁からなるヘミングレスのままの縁で形成されている請求項19に記載の伸縮性衣類。
27.前記の伸縮性たて編地を、上端および下端の縁を構成する上下方向に継ぎ目のない同じ1枚の身頃として含み、衣類が形成されている請求項26に記載の伸縮性衣類。
………
30.前記の伸縮性たて編地が、編み方向に対し45度を超えない範囲で裁断され、かつ該裁断された状態のままの縁をヘミングレスのままの縁として含み、衣類が形成されている請求項19に記載の伸縮性衣類。
31.伸縮性衣類が、少なくとも下半身部を含んで着用される、ガードル、ショーツ、ボディスーツから選ばれた1つのファンデーション衣類である請求項19に記載の伸縮性衣類。
………
34.伸縮性たて編地が、編組織が非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1トリコットであって、かつ各編針において非弾性糸と弾性糸のうちの少なくとも1方が閉じ目により編成された伸縮性たて編地からなる同一の編地を複数枚重ねて貼り合わせた積層伸縮性たて編地からなる請求項19に記載の伸縮性衣類。
35.前記の積層伸縮性編地が、ブラジャー類又はブラジャー類に相当するスポーツ用衣類のバック布として用いられている請求項34に記載の伸縮性衣類。

(ウ)(明細書7頁24行?9頁3行)
さて、図1に1×1シングルトリコットの基本的な編成形態を示した。本発明伸縮性たて編地は、主に図1に示される編成形態を組合せ、2枚おさの使用を標準に編成されるが、これらに限定されるものではなく、例えば閉じ目と開き目とが2つずつ交互に配列されたものであってもよい。ただし、各編針において編糸として同行する非弾性糸および弾性糸のうちの少なくとも1方が閉じ目になる組合せを選択することが必要である。図1の(a)はすべての編目が閉じ目の場合を示し、図1の(b)はすべての編目が開き目の場合を示し、図1の(c)と(d)は、いずれも閉じ目と開き目が交互に現れる場合を示している。
まず、本発明伸縮性たて編地は、非弾性糸に弾性糸を同行させた1×1トリコット編であって、伸縮性が付与され、かつ編目が揃って美しく薄いという特長がある。1×1トリコット編は糸脚(ループ長)が短く、とくに本発明では、各編針において非弾性糸と弾性糸のうちの少なくとも1方を閉じ目により編成して編目の安定、ほつれの防止をはかっている。
非弾性糸としては、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維、レーヨンなどの半合成繊維、絹や綿などの天然繊維のいずれでも、またフィラメント糸、紡績糸のいずれも使用することができる。なかでも吸水性に富むナイロンはインナーウエア用編地として好ましく用いられる。弾性糸についてもとくに制限はなくポリウレタン弾性糸やポリエーテル・エステル系弾性糸を利用することができるが、一般的には、広く利用されているポリウレタン弾性糸やその被覆弾性糸(カバードヤーン)が好適である。
本発明編地の中でも、図2に示す様に、非弾性糸1と弾性糸2のいずれもが閉じ自により編成されている伸縮性たて編地(A)、図3に示す様に、非弾性糸1が閉じ目により、弾性糸2が開き目により編成されている伸縮性たて編地(B)、および図4に示す様に、非弾性糸1と弾性糸2とがともに開き目と閉じ目とを交互に、ただし、同じ編針においては非弾性糸1の開き目に対して弾性糸2は閉じ目、同様に非弾性糸1の閉じ目に対しては弾性糸2は開き目が組み合わされ編成されている伸縮性たて編地(C)が実用的で優れている。(A)および(B)の編地はとくに外観に優れ、(C)はループドロップしにくいという特徴がある。

(エ)(明細書13頁24行?14頁8行)
そして本発明の伸縮性衣類は、衣類の縁部となる箇所を伸縮性たて編地を編地の編み立て方向に対し、裁断方向が鋭角となるように見頃を裁断し、その裁断された状態のままの縁をヘミングレスのままの縁とし衣類の縁部となるように形成することが望ましく、さらに好ましくは、伸縮性たて編地の編み方向に対し左右にそれぞれ45度を超えない範囲で裁断した裁断縁を、ヘミングレスのままの縁として衣類の縁部として用いることが好ましい。
また本発明で用いる伸縮性たて編地は、これを複数枚重ねて貼り合わせた積層伸縮性編地としても伸縮性衣類に有効に利用することができる。具体的には、ブラジャー類のバック布又はブラジャー類に相当するスポーツ用衣類のバック布として好ましく用いることができる。

(オ)(明細書14頁11?22行)
本発明伸縮性衣類は、前述したような非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1トリコットであって、かつ各編針において非弾性糸と弾性糸のうちの少なくとも1方が閉じ目により編成された伸縮性たて編地を含んで形成されている。編糸に非弾性糸と弾性糸とを用いて適度の伸縮性を付与している。1×1の編み組織のトリコットは編目が揃って美しく薄いという特長があって糸脚(ループ長)が短い上、各編針において非弾性糸と弾性糸のうちの少なくとも1方を閉じ目により編成することにより、編目の安定、ほつれの防止をはかっている。かかる伸縮性たて編地は、前述した各種のものを用いることができる。また、本発明の伸縮性衣類には、上記の伸縮性たて編地のほかに、伸縮性の有無に関係なく、更に前記以外の編地、織地、不織布、皮革などを任意に選択し併用してもよい。

(カ)(明細書15頁12行?16頁16行)
さて、本発明の伸縮性衣類にあってヘミングレスとなる裾などの衣類の縁の形状には、極端に先の尖ったギザギザの縁などの極端な形状を除き特別の制限はなく、伸縮性たて編地のどこを裁断しても、ほつれが生じず、縁始末を行う必要がないことから湾曲したカーブラインや波形ラインなど好みに応じて自由に採用することができる。また、本発明伸縮性衣類では、衣類の上、下の両端部ともに伸縮性たて編地を使用してヘミングレスでありながら、かつ上端および下端の縁を構成するラインを、相互に非平行に形成するなど、機能的、デザイン的に縁部の始末が必要な従来品に比べ、ウエストや裾などの衣類の縁部デザインを広範囲に自由に設計ができる。さらに、上端および下端の縁を構成する見頃を、縫い目のない同じ1枚の前記伸縮性たて編地を用いて形成し、よこ方向に走る縫い目をなくしてもよい。すなわち上下の間に接ぎのない身頃を使用することにより、また縁をヘミングレスにすることにより、衣類の段差が少なくフラットなものになって着用感が向上する。
図6に本発明伸縮性衣類の一実施態様例のショーツを示した。このショーツでは、ヒップ部を左、右に分け、それぞれ上下方向は1枚となって連続している伸縮性たて編地をヒップ布11、12として用い、下端の裾部13とともに上端のウエスト部14をヘミングレスにしてよこ方向の縫合部を省いた。また、裾部の縁のライン13に、従来は縁始末を行わなければ、不可能であった、レースではない経編地でありながら、縁部始末を行わなくてもほつれない波形ラインを採用してファッション性を付与した。この様にウエストから裾までをつながった1枚の布で形成していながら、ウエストライン、裾ラインともに縁始末を行わず、編地から裁断した見頃の縁部をそのままショーツのウエストライン、裾ラインとして使用している。尚、15は左右のヒップ布11と12の後中心における縫合線である。このショーツは、ヒップに適度の締付力を付与して体形を整える効果があり、裾部に縁始末による違和感がなく、デザイン的にも好評で着用した外衣に下着のラインが表出することはなかった。そして、上下に連続した1枚の身頃からなるショーツのウエストラインと裾ラインという上、下の両線を、縁始末を行わなくてもほつれない状態でありながら、任意の曲線とすることができるようになった。

(キ)(明細書16頁17行?17頁11行)
本発明伸縮性衣類において、端部の縁をヘミングレスに設計する際には、伸縮性たて編地を裁断するに当たってヘミシグレスの裁断縁を、編地の編み立て方向に対し鋭角に裁断できるようにしておくことが好ましい。編み立て方向に対し、裁断縁の裁断ラインの方向が鋭角であると、それが鈍角の場合に比べて、裁断縁がより一層ほつれにくいからである。ヘミングレスのままの縁を、編地の編み方向と平行に近い、つまり編み方向と角度をつけないように見頃を裁断すると最もほつれが生じにくい。つまり、好ましくは、編地の編立て方向に対し左右にそれぞれ45度を超えない範囲で裁断することが、裁断縁が一層ほつれにくく好ましい。編立て方向に対し裁断ラインが鈍角、例えば135度に近づく程ほつれがやや目立ちやすくなるので、これにヘミングレスになる裁断ラインが重ならないように留意することが好ましい。図7は、この裁断について理解を助けるため、ヘミングレスになる編地16の縁17と伸縮性たて編地の裁断方向との関係を示す参考図である。18の矢印の方向が編み立て方向である。編地16aと16bの裁断ラインである縁17の方が、編地16cと16dの裁断ラインである縁17に比べて、よりほつれが生じにくいと言うことである。
前記の伸縮性たて編地は、その長所を生かして各種の衣類に利用することができるが、縁始末不要な任意の形状の裁断された見頃縁部を少なくとも下半身部を有するガードルやショーツのウエスト部や裾部、ブラジャーのバック布の上下線として使用すると好適である。

(ク)(明細書17頁23行?19頁2行)
衣類によってはとくに強い伸縮パワーあるいは、張りを必要とする部位がある。そのような、より強い伸縮パワーあるいは、張りを求められる部位においては、同じ伸縮性たて編地を複数枚重ねて貼り合わせ、あるいは縫い合わせ積層して用いることができる。通常、同じヘミングレスの編地を2枚、接着剤を用いてドット状に接着する。そしてたとえば、図9に示すブラジャーや水着のバック布21などに用いるとよい。1枚では強度が十分でないため、着用時に上下幅が保たれず、バック布がくしゃくしゃになる恐れがあるが、前記の積層伸縮性たて編地を用いて強度と張りとをもたせ問題を解決することができる。複数の編地をその編み方向が同方向になるように重ねて用いることにより、伸びをもたせたまま強度と張りとを増強することができる。しかもバック布21の上下の縁22、23のラインは図9に示したように波形ラインとするなど自由なライン形状に裁断し、裁断したままの縁とすることができる。
………
図10に、本発明の伸縮性経編地36を用いた本発明の衣類の一例のスリップの正面図を示した。35は肩紐である。裾部分の縁31は、裁断ラインが波状で、裁断されたままのヘミングレスな縁であり、縁31の近傍には、パンチング加工により、穴32が複数個設けられていて、ファッション性を向上させている。同様に、前側の胸の上部側の縁33は、裁断ラインが波状で、裁断されたままのヘミングレスな縁であり、縁33の近傍には、パンチング加工により、穴34が複数個設けられていて、ファッション性を向上させている。このような、穴33や34を、後加工によって形成しても、ほつれが生じにくい。従って生産効率が良く、ファッション性に優れた付加価値の高い衣類とすることができる。

(ケ)(明細書23頁7?16行)
また、本発明の伸縮性衣類は、着用者に適度の締付力を付与して体形を整える効果があり、従来の縁部始末による違和感がなく、デザイン的にも魅力的であり、縁部始末を行わずとも、ほつれが生じないため縫製が合理化されて経済的でもある。また、下着に用いた場合、そのラインが外衣に及ぶことはない。かつ、裾などの衣類縁部のラインを連続的にスムーズな任意の曲線とすることができる。本発明の伸縮性衣類は、たとえば、ガードル、ショーツ、ボディスーツ、ブラジャー、シャツなどの肌着類、ランジェリー類、レオタード、スパッツ、水着などのスポーツ衣類として有用である。勿論のこと男性用伸縮性衣類としても有用である。

イ.甲6発明の1、甲6発明の2
(ア)以上の記載事項及び図1A?10(Fig.1A?10)からみて、甲6に開示されている技術的事項を、技術常識に従い本件発明13に倣って整理すれば、甲6には次の発明が記載されている。(以下、「甲6発明の1」という。)
《甲6発明の1》
2種の編地を複数枚組み合わせて重ね、貼り合わせてなる伸縮性たて編地を含んで形成されている伸縮性衣類であって、伸縮性たて編地の1種が、下記の(A-1)又は(A-2)であり、
衣類の縁の一部が、前記伸縮性たて編地の編み方向に対し左右にそれぞれ45度で裁断した裁断縁からなるヘミングレスのままの縁である伸縮性衣類。
(A-1)非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1トリコットであって、非弾性糸と弾性糸のいずれもが、閉じ目により編成されている伸縮性たて編地
(A-2)非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1トリコットであって、非弾性糸が閉じ目により、弾性糸が開き目により編成されている伸縮性たて編地

(イ)同様に、以上の記載事項及び図1A?10(Fig.1A?10)からみて、甲6に開示されている技術的事項を、技術常識に従い本件発明15に倣って整理すれば、甲6には次の発明が記載されている。(以下、「甲6発明の2」という。)
《甲6発明の2》
伸縮性編地を複数枚組み合わせて重ね、貼り合わせてなる伸縮性たて編地を含んで形成されている伸縮性衣類であって、
衣類の縁の一部が、前記伸縮性たて編地の編み方向に対し左右にそれぞれ45度で裁断した裁断縁からなるヘミングレスのままの縁である伸縮性衣類。

(6)甲7の1の記載事項
甲7の1は、本件特許が優先権として主張する平成15年5月13日より前の1987年(昭和62年)に頒布された刊行物であり、当業者の一般的知識を示す教科書(手引書)である。甲7の1の109?118頁には、一方の糸が1×1トリコット組織であり、他方の糸がルーピング組織である経編地の種々の例が記載されており、120?122頁には、伸縮性トリコット生地で、弾性糸と非弾性糸とを用いて編成する例が記載されている。甲7の1の111頁1?5行には、編組織の相違によって編地の外観や特性が異なることが記載されており、111?122頁の9.1?9.8には、それぞれの編組織の外観や触感等の特性が説明されている。
109?112頁には、「逆行する1×1トリコット組織で少なくとも一方の糸が閉じ目である経編地」が記載されている。110頁図89のb及びe、112頁、115頁には、「一方の糸が1×1トリコット組織であり、他方の糸がハーフ組織であり、両方の糸が閉じ目である経編地」が記載されている(「ロックニット」及び「逆ロックニット」)。83?84頁には、「アトラス組織」が記載されている。

(7)甲8の1の記載事項
甲8の1は、本件特許が優先権として主張する平成15年5月13日より前の2001年(平成13年)に頒布された刊行物であり、当業者の一般的知識を示す教科書(手引書)である。甲8の1の313?321頁には、一方の糸が1×1トリコット組織であり、他方の糸がルーピング組織である経編地の種々の例が記載されており、314頁及び317頁には、伸縮性トリコット生地では、弾性糸と非弾性糸とを用いて編成することが開示されている。甲8の1の313?321頁には、それぞれの編組織の外観や触感等の特性が説明されている。
314頁図25.1及び317頁には、「逆行する1×1トリコット組織で少なくとも一方の糸が閉じ目である経編地」が記載されている(「ロックニット編」及び「逆ロックニット編」)。319頁には、「アトラス組織」が記載されている。

(8)甲11の2の記載事項
ア.甲11の2は、本件発明13ないし17並びに36ないし39についての優先権主張日である平成15年10月29日(下記4(1)参照)より前に頒布された刊行物である。甲11の2には、次の事項が記載されている。

(ア)【請求項1】編組織が非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1編み組織であって、かつ各編針において非弾性糸と弾性糸のうちの少なくとも1方が閉じ目により編成された伸縮性たて編地を含んで形成されていることを特徴とする伸縮性衣類。
………
【請求項6】さらに、縁の一部又は全部において、前記の伸縮性たて編地が、裁断された状態のままに、すなわちへミングレスのままに含まれて形成されていることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の伸縮性衣類。
【請求項7】へミングレスのままの縁のラインが、波形であることを特徴とする請求項6記載の伸縮性衣類。
【請求項8】前記の伸縮性たて編地が、衣類の少なくとも上端および下端の縁を構成し、該縁がへミングレスのままに形成されていることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の伸縮性衣類。
【請求項9】前記の伸縮性たて編地を、上端および下端の縁を構成する上下方向に継ぎ目のない同じ1枚の見頃として含み、形成されていることを特徴とする請求項8記載の伸縮性衣類。
………
【請求項12】前記の伸縮性たて編地が、編み方向に対し45度を超えない範囲で裁断され、かつ該裁断縁をへミングレスのままの縁として含み、形成されていることを特徴とする請求項1?11のいずれかに記載の伸縮性衣類。
【請求項13】請求項1?12のいずれかに記載の伸縮性衣類が、少なくとも下半身部を含んで着用される、ファンデーション衣類として形成されていることを特徴とする伸縮性衣類。
【請求項14】ヒップに当接する裾部が大きなカーブのへミングレスに形成されていることを特徴とする請求項13に記載の伸縮性衣類。
………
【請求項16】請求項1?5のいずれかに記載の伸縮性たて編地を、複数枚重ねて貼り合わせた積層伸縮性編地を含んで形成されていることを特徴とする伸縮性衣類。
【請求項17】前記の積層伸縮性編地が、ブラジャー類又はブラジャー類に相当するスポーツ用衣類のバック布として用いられていることを特徴とする請求項16記載の伸縮性衣類。

(イ)【0002】
【従来の技術】婦人用衣類の多様化、ファッション化の傾向は、時代とともにますます進行し、なかでも、適度の伸縮性があって身体に気持ちよくフィットする、薄地で編目の美しい、かつ下着のヘムラインが外衣を通して外観に現れない、ファッショナブルなファンデーション衣類に対する要求が大きい。加えて、縁の始末(へミングのこと)をしないで切り放しのまま形成し、お洒落な着衣として楽しみたいという傾向がある。
………
【0005】直線や曲線、あるいはこれらを組み合わせた様々な形状、様々な角度の始末不要な端部を形成し、かつ全体に、張りやこし、緊締力がある編地を使って、始末不要な編地の縁を衣類の縁にすることができれば、縁の始末が不要であって、緊締力も有する衣類を形成することができる。幅が平行でないものでも上下方向に全く縫合箇所のない見頃から衣類を形成することができ、縫合箇所が少なく、段差の少ないフラットな衣類を楽しむことができる。本発明は前記の要求と縫製の合理化とを課題として研究し、完成したものである。
………
【0010】また、本発明は前記した伸縮性衣類であって、かつ、用いた伸縮性たて編地が、衣類の少なくとも上端および下端の縁を構成し、前記の縁がへミングレスのままに形成されていることを特徴とする伸縮性衣類、あるいは伸縮性たて編地を上端および下端の縁を構成する上下方向に継ぎ目のない同じ1枚の見頃として含み、形成されていることを特徴とする伸縮性衣類、および、上端および下端の縁を構成するラインが、相互に非平行であることを特徴とする伸縮性衣類を提供する。
【0011】そして、本発明の伸縮性衣類は、衣類の縁部となる箇所を伸縮性たて編地を編地の編み立て方向に対し編始め側となるように見頃を裁断し、その裁断縁をへミングレスのままの縁として衣類の縁部となるように形成することが望ましく、さらに好ましくは、伸縮性たて編地の編み方向に対し左右にそれぞれ45度を超えない範囲で裁断した裁断縁を、へミングレスのままの縁として衣類の縁部として用いる。
【0012】また、伸縮性たて編地は、これを複数枚重ねて貼り合わせた積層伸縮性編地としても伸縮性衣類に有効に利用することができる。具体的には、ブラジャー類又はブラジャー類に相当するスポーツ用衣類バック布として好ましく用いることができる。

(ウ)【0014】本発明伸縮性衣類は、非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1編み組織であって、かつ各編針において非弾性糸と弾性糸のうちの少なくとも1方が閉じ目により編成された伸縮性たて編地を含んで形成する。編糸に非弾性糸と弾性糸とを用いて適度の伸縮性を付与している。1×1の編み組織は編目が揃って美しく薄いという特長があって糸脚が短い上、各編針において非弾性糸と弾性糸のうちの少なくとも1方を閉じ目により編成することにより、編目の安定、ほつれの防止をはかっている。また、本発明の伸縮性衣類には、伸縮性たて編地のほか、伸縮性の有無に関係なく、前記以外の編地、織地、不織布、皮革などを任意に選択し使用してもよい。
【0015】伸縮性たて編地の中でも、非弾性糸と弾性糸のいずれもが閉じ目により編成されている伸縮性たて編地(A:図1に示す)、非弾性糸が閉じ目により、弾性糸が開き目により編成されている伸縮性たて編地(B:図2に示す)、および非弾性糸と弾性糸とがともに開き目と閉じ目とを交互に、ただし、同じ編針においては非弾性糸の開き目に対して弾性糸は閉じ目、同様に閉じ目に対しては開き目が組み合わされ編成されている伸縮性たて編地(C:図3に示す)が実用的で優れている。AおよびBの編地はとくに外観に優れ、Cはループドロップしにくいという特長がある。
【0016】使用する非弾性糸としては、伸縮性衣類の種類により、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維、レーヨンなどの半合成繊維、絹や綿などの天然繊維のいずれでも、またフィラメント糸、紡績糸のいずれも使用することができる。なかでも吸水性に富むナイロンはインナーウエア用編地として好ましく用いられる。弾性糸についてもとくに制限はないが、一般にポリウレタン弾性糸やその被覆弾性糸等を使用する。

(エ)【0022】さて、本発明の伸縮性衣類にあってへミングレスとなる裾などの衣類の縁の形状には、極端に先の尖ったギザギザ縁などの極端な形状を除き特別の制限はなく、伸縮性たて編地のどこを裁断しても、ほつれが生じず、縁始末を行う必要がないことから湾曲したカーブラインや波形ラインなど好みに応じて自由に採用することができる。また、本発明伸縮性衣類では、衣類の上、下の両端部ともに伸縮性たて編地を使用してヘミングレスに、かつ上端および下端の縁を構成するラインを、相互に非平行に形成するなど、機能的、デザイン的に従来とは比較にならない広範囲の自由設計ができる。さらに、上端および下端の縁を構成する見頃を、縫い目のない同じ1枚の前記伸縮性たて編地を用いて形成し、よこ方向に走る縫い目をなくしてもよい。衣類の段差が少なくフラットなものになって着用感が向上する。
【0023】図4に本発明伸縮性衣類実施例のショーツを示した。このショーツでは、ヒップ部を左、右に分け、それぞれ上下方向に1枚の伸縮性たて編地をヒップ布1,2として用い、下端の裾部3とともに上端のウエスト部4をヘミングレスにしてよこ方向の縫合部を省いた。また、裾部の縁のライン3に、従来は実用的に1枚もので縁始末を行わないままでは、不可能であった斬新的な波形を採用してファッション性を付与した。この様にウエストから裾までをつながった1枚の布で形成していながら、ウエストライン、裾ラインともに縁始末を行わず、編地から裁断した見頃の縁部をそのままショーツのウエストライン、裾ラインとして使用している。このショーツは、ヒップに適度の締付力を付与して体形を整える効果があり、裾部に縁始末による違和感がなく、デザイン的にも好評で着用した外衣に下着のラインが表出することはなかった。そして、ショーツのウエストラインと裾ラインという上、下の両縁においても、任意の連続的にスムーズな曲線とすることができるようになった。
【0024】本発明伸縮性衣類において、端部の縁をヘミングレスに設計する際には、伸縮性たて編地を裁断するに当たってヘミングレスの裁断縁を、編地の編み立て方向に対し編始め側において裁断できるようにしておくことが好ましい。編終り側の裁断縁に対し編み始め側の裁断縁の方がほつれにくいからである。へミングレスのままの縁を、編地の編み方向(地の目方向)と平行に近い、つまり編み方向と角度をつけないように見頃を裁断するとほつれが生じにくい。つまり、編地の編始め側方向に対し左右にそれぞれ45度を超えない範囲で裁断することができればほつれにくく好ましい。編終り側での裁断ラインが45度に近づく程ほつれが目立ちやすくなるので、これにヘミングレスになる裁断ラインが重ならないように留意する必要がある。図5は、この裁断について理解を助けるため、ヘミングレスになる編地の縁と伸縮性たて編地の裁断方向との関係を示す参考図である。
【0025】前記の伸縮性たて編地は、その長所を生かして各種の衣類に利用することができるが、縁始末不要な任意の形状の裁断された見頃縁部を少なくとも下半身部を含んで着用されるガードルやショーツのウエスト部や裾部、ブラジャーのバック布の上下縁としてとして使用すると好適である。たとえば、ヒップ布の裾部が大きなカーブのへミングレスに形成されているショーツなどのパンティ類はシンプルなデザインで着用感に優れる。………
【0026】衣類によってはとくに強い伸縮パワーあるいは、張りを必要にする部位がある。そのような、より強い伸縮パワーあるいは、張りを求められる部位においては、同じ伸縮性たて編地を複数枚重ねて貼り合わせ、あるいは縫い合わせ積層して用いることができる。通常、同じ編地をヘミングレスで2枚、接着剤を用いてドット状に貼り合わせる。そしてたとえば、図7に示すブラジャーや水着のバック布11などに用いるとよい。1枚では強度が十分でないため、着常時に上下幅が保たれず、バック布がくしゃくしになる恐れがあるが、前記の積層伸縮性たて編地を用いて強度と張りとをもたせ問題を解決することができる。編地を地の目方向を同方向に重ねることにより、伸びをもたせたまま強度と張りとを増強することができる。
………
【0028】
【発明の効果】本発明伸縮性衣類は、着用者にに適度の締付力を付与して体形を整える効果があり、従来の縁部始末による違和感がなく、デザイン的にも魅力的であり、縁部始末を行わずとも、ほつれが生じないため縫製が合理化されて経済的でもある。また、下着に用いた場合、そのラインが外衣に及ぶことはない。かつ、裾などの衣類縁部のラインを連続的にスムーズな任意の曲線とすることができる。本発明伸縮性衣類は、たとえば、ガードル、ショーツ、ボディスーツ、ブラジャー、シャツなどの肌着類、ランジェリー類、レオタード、スパッツ、水着などのスポーツ衣類として有用である。勿論のこと男性用伸縮性衣類としても有用である。

(9)甲13の記載事項
甲13は、本件特許が優先権として主張する平成15年5月13日より前に頒布された刊行物である。甲13には、次の事項が記載されている。
(ア)【発明の名称】体型補整機能または筋肉サポート機能を有する衣類
………
【0002】
【従来の技術】従来より、ガードル、ショーツ、ボディスーツ、水着、レオタード、ブラジャー、スパッツ、スポーツ用タイツなどは、体型補整機能または筋肉サポート機能を付与するため、緊迫力を大きくしたい部分には、適宜の当て布を衣類本体生地の裏側または表側から当てがうことが最も一般的に行われている。
………
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、当て布によって緊迫力の大きい部分を形成した衣類は、当て布の存在する部分と当て布の存在しない部分との境界に厚みの相違による段差があるため、その段差がアウターウェアーに反映し、アウターウェアーの外側からも段差が見えてしまい、着用者の外観を著しく低下させると言う問題がある。更に当て布は衣類本体に縫合されるので、縫合部分の厚みの増大により、肌触りが低下したり、皮膚病(皮膚傷害)の原因となったりすると言う問題がある。
………
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明は、次の様な体型補整機能または筋肉サポート機能を有する衣類を提供するものである。
【0013】(1)ジャカード編からなる地編が非弾性糸で構成され、更に弾性糸が挿入されるか及び/又は弾性糸が編み込まれてなる経編地からなる衣類に於て、緊迫力の強弱の要求に応じて前記地編の編組織を切り替えて、組織の変化により、所定部分に所定の比較的緊迫力の強い部分と比較的緊迫力の弱い部分をパターン状に設けた経編地からなる体型補整機能または筋肉サポート機能を有する衣類。

(イ)【0033】
【発明の実施の形態】本発明の衣類に用いる生地は経編であり、特に限定するものではないが、一般的には、編方向、即ち、糸が供給される方向が、完成した衣類のほぼ横方向になる様に設計される。しかし、適用される衣類の種類や適用される部位によっては斜めになることもある。
【0034】本発明で用いる経編生地は、実際にはジャカード制御装置を有する経編機(例えば特開平6-166934号など参照)などを用いて、これらの経編機に地編用の非弾性糸と挿入糸用及び/又は編み込み用の弾性糸とを供給して同時に編まれるのであるが、理解を容易にするために、地編の部分をまず説明する。
【0035】本発明において、地編は、緊迫力の強弱の要求に応じて地編の編組織を切り替えて、組織の変化により、所定部分に所定の比較的緊迫力の強い部分と比較的緊迫力の弱い部分をパターン状に形成する。……
………
【0057】ここで仮に比較的緊迫力の強い部分2の地編組織をサテン調トリコット組織、比較的緊迫力の弱い部分3と4をメッシュ調トリコット組織と仮定すると、この地編生地は例えば次の様な方法で製造される。……
………
【0063】本発明で用いるサテン調トリコット組織の表側の代表的な組織図を図7?図9に示した。この組織図は、編業界において慣用されている規定に従って描いた組織図である。従って、実際の編組織の糸の状態を忠実に写実したものではないが、当業者に於いては、通常使用されている組織図である。
【0064】いずれの図においても矢印Sの方向が図2の矢印Sの方向を示している。すなわちサテン調トリコット組織(経編生地)を形成するための糸の供給方向は矢印Sの方向である。図7?図9に示したサテン調トリコット組織は、一例であって、本発明においてはこれ以外のサテン調トリコット組織を用いることもできる。
【0065】図7に示したサテン調トリコット組織は、ジャカード運動の矢印X_(1)、X_(2)、X_(3)で示したコースが図7の左方向にそれぞれの矢印で示した様に3針の振りが入ったサテン調トリコット組織である。図7に於いてその左端に点線で示した部分は、参考のため、ジャカード制御をしない場合の組織を示している。尚、図7中一点鎖線AとBの間が1繰り返し単位である。
【0066】3針の振りが入った部分は、糸がより緊張した状態になる。従って、1繰り返し単位中、3針の振りが入った割合が多い程、より緊迫力が強くなるのである。図7に示したサテン調トリコット組織に於いては、1繰り返し単位中、3針以上の振りが入ったコースがX_(1)、X_(2)、X_(3)の3箇所存在し、後述する図8や図9に示すサテン調トリコット組織に比べて、最も緊迫力が強いサテン調トリコット組織である。……
………
【0069】次に本発明で用いるメッシュ調トリコット組織の表側の代表的な組織図の一例を図10に示した。図10においても矢印Sの方向が図2の矢印Sの方向を示している。すなわちメッシュ調トリコット組織(経編生地)を形成するための糸の供給方向は矢印Sの方向である。図10に示したメッシュ調トリコット組織は、一例であって、本発明においてはこれ以外のメッシュ調トリコット組織を用いることもできる。
【0070】メッシュ調トリコット組織は、図10からも明らかな様にサテン調トリコット組織に比べて、空間部分が大きく、単位面積あたりの糸の密度が小さく、従って、上述した図7?図9のサテン調トリコット組織に比べて、緊迫力が弱くなる。尚、図10中一点鎖線AとBならびにBとCの間がそれぞれ1繰り返し単位である。すなわちAとBの間の組織とBとCの間の組織とは同じ組織の繰り返しである。……
………
【0074】以上の様な地編を構成する非弾性糸としては、ナイロン糸、ポリエステル糸などの合成繊維糸、レーヨン糸、アセテート糸、キュプラ糸などの再生繊維糸、木綿糸、絹糸、麻糸、ウール糸などの天然繊維などを用いることができるが、ナイロン糸が特に好ましく、太さとしてはナイロン糸で20?80デニールに相当する太さの糸が好ましく用いられる。
………
【0076】以上、地編について説明したが、本発明で用いる生地は、かかる地編が非弾性糸で構成され、更に生地のウェール方向に挿入糸として弾性糸が挿入されているか、及び/又は弾性糸が編み込まれている(ルーピングされている)。挿入される弾性糸及び/又は編み込まれる弾性糸は、均等に挿入及び/又は編み込まれていてもよいが、緊迫力の強弱の要求に応じて、挿入及び/又は編み込む弾性糸の本数及び/または太さを変化させてもよい。

(ウ)【0086】図14にジャカード編からなる地編組織に弾性糸が編み込まれている(ルーピングされている)トリコット組織の状態を説明する為の組織図を示した。図14に示した弾性糸が編み込まれている態様は、代表的な一例であって、本発明においては、本発明の目的を阻害しない限り、弾性糸が編み込まれているこれ以外の態様を用いることもできる。
【0087】図14においては、図7で示したサテン調トリコット組織を例にとって、この地編組織に弾性糸が編み込まれている状態を示した。尚、図7においては、サテン調トリコット組織は、表側の組織のみを示したが、図14においては、サテン調トリコット組織の裏側の組織も重ねて示してある。そして、図14においては、図14(b)が、前記サテン調トリコット組織に弾性糸が編み込まれている状態を示した組織図であり、図14(a)が、それらを構成するそれぞれの糸1本づつを取り上げて別々に組織図に記載したものである。尚、矢印Sの方向が糸の供給方向である。
【0088】図14に示した態様は、地編としてのサテン調トリコット組織の各ウェールごとに1本づつの弾性糸が編み込まれている状態を示した組織図である。図14(a)、(b)において、10が地編としてのサテン調トリコット組織の表側に現れる非弾性糸であり、11が地編としてのサテン調トリコット組織の裏側に現れる非弾性糸であり、12が編み込まれた弾性糸である。図14に示した態様では、各ウェールB_(1)、B_(2)、B_(3)、B4、B_(5)についてそれぞれ1本づつの弾性糸12があるウェールと隣りのウェールとを交互に往復する様に編み込まれている。地編として図14に示したサテン調ネット組織を例にとって説明したが、他のサテン調ネット組織やメッシュ調ネットその他の組織の場合にも、「1本づつの弾性糸が編み込まれている」とは、地編の組織が異なっても、概念的には同じであり、あるウェールに1本の弾性糸が編み込まれている状態を言う。

(エ)【0093】……図15に本発明の衣類であるロングタイプのガードルの前側から見た斜視図、図16にその後側から見た斜視図を示した。また、図17には、前記図15、図16に示したガードルの主として後ろから前脇ならびに脚部に用いられる生地の裁断前の平面図……を示した。……
【0094】……24f、24m、24nが脚部をカバーする脚部充当部である。……
………
【0096】……24fの部分の地編組織はメッシュ調ネット、24mの部分の地編組織はメッシュ調ネット、24nの地編組織は図3で説明した様な2針の振りが入った割合の大きいサテン調ネットからなり、これらはいずれも地編は40デニールのナイロン糸が用いられ、挿入糸は140デニールのポリウレタン糸が2本づつ挿入されている。
………
【0098】このロングタイプのガードルの各部位の緊迫力は、高い順にランク付けすると、およそで、第1番目が21c、22i、24l、24nの部分であり、第2番目が22hの部分であり、第3番目が21b、22gの部分であり、第4番目が21a、24f、24m,22pの部分であり、第5番目が23eの部分であり、第6番目が23jの部分であり、第7番目の最も緊迫力の弱い部分が23dと23kの部分となる。

(オ)図14(a)、(b)には、非弾性糸11が1×1トリコット組織であり、弾性糸12が逆行する1×1トリコット組織で、非弾性糸11と弾性糸12の両方が閉じ目である経編地が記載されている。

(10)職権で探知した周知文献1?7の記載事項
ア.下記《周知文献一覧》に示す7件の刊行物(以下、「周知1」?「周知7」という。)は、当審が職権で探知した刊行物であり、本件特許が優先権として主張する平成15年5月13日より前に頒布された刊行物である。周知1?7には、下記イ?クに示した事項が記載又は開示されている。
《周知文献一覧》
周知1.特開2000-303209号公報
周知2.特開2002-317308号公報
周知3.特開2001-303414号公報
周知4.特開2002-4158号公報
周知5.特開昭52-5369号公報
周知6.特開平5-247806号公報
周知7.特開平10-96147号公報

イ.周知1(特開2000-303209)の記載事項
(ア)【発明の名称】体型補整機能を有する衣類

(イ)段落0002、0008、0012には、甲13の段落0002、0008、0012と同様な事項が記載されている。段落0013には、甲13と類似ではあるが異なる方法で地編の編組織を切り替えて、所定部分に所定の比較的緊迫力の強い部分と比較的緊迫力の弱い部分をパターン状に設けた経編地とすることが記載されている。段落0067、0069?0072、0075?0077、0102?0105には、それぞれ甲13の段落0057、0063?0066、0069?0070、0086?0088と同様な事項が記載されている。(甲13の記載は上記(9)を参照)

(ウ)図7?10、14(a)、(b)は、甲13の図7?10、14(a)、(b)と同様の図である。図14(a)、(b)には、甲13と同様に、非弾性糸11が1×1トリコット組織であり、弾性糸12が逆行する1×1トリコット組織で、非弾性糸11と弾性糸12の両方が閉じ目である経編地が記載されている。

ウ.周知2(特開2002-317308)の記載事項
(ア)【発明の名称】産前妊婦用ガードルまたはショーツ

(イ)段落0006には、甲13の段落0013に記載したのと同様な編組織の変化を応用して、産前妊婦用ガードルまたはショーツについての従来技術の課題を達成することが記載されている。段落0043、0070、0072?0075、0078?0080、0100?0103には、それぞれ甲13の段落0035、0057、0063?0066、0069?0070、0086?0087と同様な事項が記載されている。(甲13の記載は上記(9)を参照)

(ウ)図7?10、14(a)、(b)は、甲13の図7?10、14(a)、(b)と同様の図である。図14(a)、(b)には、甲13と同様に、非弾性糸11が1×1トリコット組織であり、弾性糸12が逆行する1×1トリコット組織で、非弾性糸11と弾性糸12の両方が閉じ目である経編地が記載されている。

エ.周知3(特開2001-303414)の記載事項
(ア)【発明の名称】レース編地とその製造方法
………
【請求項1】地編組織に対して伸縮性糸が配されて経編編成され、編地全体に伸縮性が付与されてなるレース編地であって、
該編地の所定部分に所定幅で、編地全体に配される第1の伸縮性糸とは別の伸縮強化用の伸縮性糸が挿入され、伸長性及び伸縮力の一方又は双方が他部分より大きい帯状の強化伸縮部を形成するように編成されるとともに、該強化伸縮部が所定のカーブや折れ曲がり等を有する任意の形状で編方向に連続していることを特徴とするレース編地。
………
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として伸縮性を有するレース編地、特にガードル、ブラジャー、ショーツ等の女性用下着やボディスーツ、水着、レオタード等のスポーツウエアその他の体型補整機能を要する衣類に好適に使用できる経編編成によるレース編地と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来より、ガードル、ブラジャー、ショーツ等の女性用下着やボディスーツ、水着、レオタード等のスポーツウエアその他の衣類において、経編編成等による伸縮性を有するレース編地が使用されることが多い。
【0003】このレース編地として、経編編成による場合、地編の基本組織を、鎖編糸と挿入糸によるサテン編、プレーンコード編、デンビ編、チュール編あるいはメッシュ調の編組織にして、ポリウレタン繊維等のスパンデックス糸その他の伸縮性糸を挿入して編成することにより、編地全体に比較的大きな伸長性や伸縮性を付与し、これに柄筬による通常のレース柄、あるいはジャカードガイド筬による厚地、薄地、穴地等の変化による所謂ジャカードレース柄を構成したものが一般的である。
【0004】ところで、従来のレース編地は、伸縮性糸が編地全体に挿入されて、編地全体が略一様な伸長性や伸縮力を有するものであり、このレース編地を使用して作ったガードルやブラジャーを等の衣類を着用した場合に、フィット性は有る程度はよいものの、体型に応じて部分的に大きい伸長性を得ることができず、また体型補整機能にも乏しものであった。そのため、部分的に大きい伸長性や伸縮力(パワー)を持たせて体型補整機能を発揮させるために、別の伸縮性生地を当て布等として縫製していた。
【0005】しかしながら、別の伸縮性生地を当て布にして部分的に伸縮力を大きくした衣類は、当て布が存在する部分と存在しない部分との境界部に、厚みの違いによる段差があらわれ、それがアウターウエアの外側からも視覚でき、外観的体裁を著しく低下させるという問題があった。また縫合部が硬くなって肌触りが悪くなり、着用者に不快感を与えるという問題もあった。
【0006】そのため、近年、経編や丸編による伸縮性生地において、当て布を使用することなく、部分的に伸長性や伸縮力を高めることが提案されている。
【0007】例えば、特開平7-116663号には、非伸縮性糸と2種以上の伸縮性糸とを交編することにより、部分的に高い伸縮性を有する部分と低い伸縮性を有する部分とを、切り替え部を有しないように連続させて編成することが提案されている。
【0008】しかしながら、前記提案の場合、前記高伸縮性部分と低伸縮性部分との切り替えによる段差が生じることはないが、前記高伸縮性部分および低伸縮性部分が編立ての方向に直線状、すなわち丸編の場合は周方向に、経編の場合はウエール方向(経方向)に直線状をなしているもので、体型補整機能も直線的なものに限られ、充分な機能を発揮できないものである。
………
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の第1は、地編組織に対して伸縮性糸が配されて経編編成され、編地全体に伸縮性が付与されてなるレース編地であって、該編地の所定部分に所定幅で、編地全体に配される第1の伸縮性糸とは別の伸縮強化用の伸縮性糸が挿入されて、伸長性及び伸縮力の一方又は双方が他部分より大きい帯状の強化伸縮部を形成するように編成されるとともに、該強化伸縮部が使用態様に応じて求められる所定のカーブや折れ曲がり等を有する任意の形状で編方向に連続していることを特徴とする。
【0013】前記の構成により、前記強化伸縮部分においては、伸縮強化用の伸縮性糸の追加により、組織の変化のみでは得られない大きな伸長性及び/又は伸縮力を得ることができ、この強化伸縮部と他部分との伸長性や伸縮力の差を大きくできる。そのため、このレース編地の使用上の伸長性や伸縮力の強弱の求めに応じて、必要個所で任意のカーブや折れ曲がりを有する形状の強化伸縮部を形成でき、例えば衣類での使用における体型への適応性が増し、かつまた良好な体型補整機能をも発揮できることになる。

(イ)【0025】図1は本発明に係るレース編地の1実施例を示す平面図、図2は同上の一部の拡大平面図、図3は同上の一部の編組織図、図4は各筬毎に分離したラッピング組織図、図5(a)?(d)は強化伸縮部の形状の変形例を示す略示図、図6及び図7はレース編地の使用例を示す略示斜視図である。
【0026】この実施例のレース編地(A)は、地編を編成するいわゆる地筬とは別に、柄を編成する柄筬を備える経編機、あるいはジャカード装置により運動が制御される少なくとも1枚のジャカードガイド筬を備える経編機により編成される。
【0027】すなわち、前記の経編機により、レース用の地編の基本組織、例えばウールや絹、綿等の天然繊維あるいは合成繊維等の非伸縮性糸よりなる鎖編糸(1)と挿入糸(2)とによる地編の組織に対して、ポリウレタン繊維等のスパンデックス糸その他よりなる第1の伸縮性糸(3)が、編目を形成しない挿入糸として、あるいは編目を形成する編目形成糸として、編地全体に配されて編成されることにより、編地全体に主として経方向の伸縮性が付与されている。
………
【0039】上記したレース編地(A)は、例えば、図3および図4に例示の編組織のように編成する。
【0040】すなわち、図4(a)のように、少なくとも1枚の筬(L1)により非伸縮性糸よりなる編目を形成する編糸(1)を導糸して各ウエールの編目列を編成するとともに、他の少なくとも1枚の筬(L2)により
非伸縮性糸よりなる挿入糸(2)を導糸して、前記編目列に対して所要コース毎に横振り挿入して編成することにより、地編の基本組織を編成する。図示する編組織の場合、前記筬(L1)を所要コース毎に左右交互に隣接ウエールに移行させて編目形成する編成を繰り返しており、前記編糸(1)に切断が生じた場合の解れを防止できるようになっている。
【0041】この地編の基本組織としては、図示する実施例のものに限らず、サテン編、デンビ編、プレーンコード編、チュール編あるいはメッシュ調の組織やネット組織等を基本とする種々の編組織による実施が可能であり、また組織を変化させることも可能である。
【0042】そして、前記とは別に2枚以上の筬を使用して、そのうちの1枚の筬(L3)で第1の伸縮性糸(3)を主として総詰めで導糸し、地編全体にわたって前記の鎖編による各ウエールの編目列に対してジグザグ状に経方向に挿入して編成することにより、編地(A)の全体に伸縮性を、主として経方向(編方向)に付与する。
【0043】なお、前記の編組織における筬(L3)により導糸する第1の伸縮性糸(3)を、図4(b)のように、1もしくは複数ウエール離れた二つの編目列間を交互に移行させて編目形成するように編成することも可能であり、この場合、編地全体として、縦方向のみでなく、緯方向にも高い伸縮性を付与することができる。すなわち経緯両方向に高い伸縮性を付与できる。

(ウ)【0046】さらにレース柄については、上記の筬とは別の柄筬により柄糸を導糸して、適宜の柄を編成することも、また柄用のジャカードガイド筬を用いて、レース調の穴部と厚地と薄地を構成したレース柄とすることもできる(いずれもラッピング組織については図示を省略)。

(エ)段落0041に「デンビ編」による実施が可能であると記載されているところ、「デンビ編」は「1×1トリコット組織」を意味する。段落0043に「1もしくは複数ウエール離れた二つの編目列間を交互に移行させて編目形成するように編成する」と記載されているところ、このような編目は「ハーフ組織」を意味する。図4(b)には、1ウエール離れた二つの編目列間を交互に移行する編目で、閉じ目になっている編目が記載されている。
段落0040に記載された、筬(L1)、(L2)により非伸縮性糸で地編の基本組織を編成すること、段落0041に記載された、地編の基本組織として「デンビ編」による実施が可能であること、段落0043に記載された、筬(L3)により導糸する第1の伸縮性糸を「1もしくは複数ウエール離れた二つの編目列間を交互に移行させて編目形成するように編成する」こと及び図4(b)からみて、周知3には、「非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸がルーピング組織からなる、伸縮性を有する経編地であって、弾性糸がハーフ組織で、非弾性糸が閉じ目又は開き目であり、弾性糸が閉じ目である」構成が開示されている。

オ.周知4(特開2002-4158)の記載事項
(ア)【発明の名称】衣料用ジャカードレース編地とその製造方法
………
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主としてショーツ、ガードル、ブラジャー等のファンデーション、スリップ、キャミソール等のランジェリーその他の女性用下着、あるいはスポーツウエアや外衣等にも好適に使用されるジャカードレース柄を有する衣料用ジャカードレース編地に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来より、ジャカード筬を備える経編機により、基布をサテン編、デンビ編、プレーンコード編、チュール編等を基本とする編組織にして、ジャカード筬により厚地、薄地、穴地等の変化によるレース調の柄を構成した所謂ジャカードレース編地が知られている。
【0003】特に、かかるジャカードレース編地として、その構成糸に伸縮性糸と非伸縮性糸との2種の糸を使用して編成することにより、経方向あるいは経緯両方向に大きな伸縮性を有するものが多くなっている。
………
【0006】ところで、従来の衣料用のジャカードレース柄の経編地は、レース柄が構成されてはいるもの、ジャカード筬により導糸する柄構成用糸は同素材の同色の糸を用いるのが一般的であり、単に一色のレース柄のみであって、柄が比較的不鮮明でメリハリがないものである。
【0007】本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、かかる衣料用のジャカードレース編地として、編地表面の柄部分に2色以上の色柄を合わせて表現することにより、明瞭で美麗な柄をつくり出すことができて、装飾性やデザイン性に富み、商品価値の高い編地を提供するものであり、さらにはこのジャカードレース編地を容易に得ることができる製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決する本発明は、1針おきの交互配列をなすように分割構成されかつ並設された2枚の分割ジャカード筬と、少なくとも1枚の地筬とにより編成され、地編の組織に対して分割ジャカード筬によりレース調の柄が構成されてなる衣料用ジャカードレース編地であって、前記2枚の分割ジャカード筬によりそれぞれ導糸される柄構成用糸として、編幅方向の少なくとも一部においては各々に異色または異種素材の糸が配されて編成され、編地表面の柄部分に2色以上の色柄が表現せしめられてなることを特徴とする。
【0009】このジャカードレース編地によれば、ジャカードレース柄が構成されて美麗で、しかも目が細かく緻密で肌触りも良好である。特に、編地表面の柄部分においては、2枚の分割ジャカード筬により導糸される柄構成用糸に、例えば異色あるいは異種素材の糸を使用することにより、2色以上の色柄が合わせて表現されているため、本来のレース柄と色柄とが相俟って、明瞭でメリハリのある柄が表現される。従って、この種のジャカードレース編地としては、従来品にはみられない極めて美麗なレース柄となり、その装飾性やデザイン性に優れ、商品価値を高めることができる。それゆえ、各種の女性用下着あるいはその身生地として好適に使用でき、さらにはアウターウエア等の各種の衣料に好適に使用できる。

(イ)【0022】図1は本発明に係る衣料用ジャカードレース編地の1実施例を示す平面図であり、図2は同上の一部の拡大略示平面図、図3は前図と同部分の分割ジャカード筬のみの略示組織図、図4は同上の編地を編成する最も基本的な筬構造での各筬の基本組織と分割ジャカード筬の変化状態の一例を示すラッピング組織図(a)と糸通し状態の説明図(b)である。図5は地筬の配列の変更例を示すラッピング組織図である。
………
【0025】具体例として、伸縮性のあるジャカードレース編地(A)の場合は、その構成糸に非伸縮性糸と伸縮性糸を用い、図4に示すように、2枚の分割ジャカード筬(L1-1)(L1-2)と、3枚の地筬(L2)(L3)(L4)とを備える経編機により編成される。
【0026】すなわち、前記の2枚の分割ジャカード筬(L1-1)(L1-2)により、それぞれ柄構成用糸として非伸縮性糸を導糸して、厚地、薄地、穴地組織等の適宜の組合せによる任意のレース調の柄(2)を構成する。この際、柄部分を除いて部分的に地編組織を構成するように編成する場合もある。また、他の1枚の地筬(L2)により非伸縮性糸を導糸して地編の編目を形成するとともに、他の2枚の地筬(L3)(L4)により伸縮性糸を導糸して前記の編目に対して挿入して地編組織を構成するように編成する。これにより、基本的構成として、ジャカードレース柄を有しかつ編地全体が前記の伸縮性糸によって経緯両方向または経方向に伸縮性が付与された編地となる。
【0027】本発明のジャカードレース編地(A)の場合は、前記のような編成組織の編地を基本構成として、前記2枚の分割ジャカード筬(L1-1)(L1-2)によりそれぞれ導糸する柄構成用糸(Y1)(Y2)として、編幅方向の少なくとも一部、例えば製品の裾部分になる側端部の所要領域、あるいは所要幅の側端部を除く中央部の領域において、各々に異色または異種素材の糸を配して編成することにより、編地表面の柄(2)の部分に2色以上の色柄を併せて表現している。

(ウ)【0030】1枚の地筬(L2)には、非伸縮性糸を基本的にフルセットで導糸して、例えば鎖編により地編組織(基布)の編目を形成し、また他の2枚の地筬(L3)(L4)には、ポリウレタン繊維のスパンデックス糸等の伸縮性糸をフルセットで導糸して、前記鎖編のウエールに対し地筬(L3)については同一の編目ウエールにジグザグ状に挿入し、また地筬(L4)については左右に3ウエール間にわたって横振り挿入することにより、地編組織を編成する。この場合、前記地筬(L3)により導糸される伸縮性糸により経方向の伸縮性が付与され、また地筬(L4)により導糸される伸縮性糸により主に緯方向の伸縮性が付与される。すなわち経緯両方向の伸縮性が付与された編地となる。
【0031】そして、2枚の分割ジャカード筬(L1-1)(L1-2)には、それぞれ柄構成用糸(Y1)(Y2)として、その一部または全部において、互いに異色または異種素材の非伸縮性糸を、基本的に図4(b)のように交互配列のガイドに導糸して、両分割ジャカード筬(L1-1)(L1-2)のガイドを各々個々にジャカード制御することにより、2針間に交互に渡る基本組織に対して、任意のコース位置で同図の(L1-a)あるいは(L1-b)の組織のように変化させて、前記の地編組織の上で厚地、薄地、穴地等の各組織による所望の柄(2)を構成するように編成する。

(エ)【0039】なお、本発明のジャカードレース編地(A)の基本となる地編組織については、上記した実施例のように編目を形成する図4の地筬(L2)または図5の地筬(L3)を鎖編の組織で編成する場合のほか、用途やデザインに応じて適宜変更できる。例えば、サテン編、デンビ編、プレーンコード編、チュール編等において実施することができる。
【0040】また、上記の実施例においては、2枚の分割ジャカード筬(L1-1)(L1-2)と3枚の地筬(L2)(L3)(L4)で、伸縮性編地を編成する場合を示したが、これ以外の種々の筬構造での編成が可能である。
………
【0043】他の変更例として、図4あるいは図5の筬構造において、伸縮性糸を導糸する1枚の地筬(Ln)を、例えば図6の(a)(b)のように、横振りしながら編目を形成する組織で編成することができる(図示せず)。この場合、伸縮性糸が編目形成されることにより、編地の組織が安定したものになる。また、他の地筬を省略して、この1枚の地筬と前記2枚の分割ジャカード筬(L1-1)(L1-2)とのみによる編成も可能になる。
【0044】さらに、図4あるいは図5の筬構造において、分割ジャカード筬(L1-1)(L1-2)に伸縮性糸を導糸して、上記したようにレース柄や色柄を構成し、他の少なくとも1枚の地筬により非伸縮性糸を導糸して編目形成するようにして編成することがてきる。これにより、編地表面でジャカード柄を構成する糸が収縮することになり、これが色柄の効果と相俟って、通常のジャカードレース柄とは趣きの違った柄を呈するものになる。

(オ)図6(b)には、1×1トリコット組織で閉じ目である編目が記載されている。段落0030に記載された、地筬(L2)に非伸縮性糸を導糸して地編組織(基布)の編目を形成すること、段落0039に記載された、地編組織をデンビ編(1×1トリコット組織)にすること、段落0043に記載された、地筬(Ln)に伸縮性糸を導糸して横振りしながら編目を形成すること、及び図6(b)からみて、周知4には、「非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸がルーピング組織からなる、伸縮性を有する経編地であって、弾性糸が1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸の両方が閉じ目である」構成が開示されている。

カ.周知5(特開昭52-5369)の記載事項
(ア)(1頁左下欄3?4行)
1.発明の名称 ジャカード経編機による編成生地

(イ)(1頁左下欄15行?2頁左上欄10行)
本発明は編目形成用筬2枚、挿入糸用筬2枚およびジヤカード筬を有する経編機により編成した生地に関し、自由な柄構成ができ、特に女性用下着などの生地として使用するのに好適な伸縮性生地を提供しようとしている。
従来経編機による伸縮性生地の編成、特にパワーネツトと呼ばれる編み組織の編成については、第3図に示すように編目形成用筬に通糸された編糸(14’)(15’)はラツピング方向を異にするため、通常編機ゲージに対して1本おきに通糸されており、編目形成用筬の後部に柄出しを受け持つ柄筬を配置し、さらに最後部には伸縮性糸用筬を上記編目形成用筬と同様2枚設け、それに伸縮性糸(16’)(17’)を上記等同様編機ゲージに対して1本おきにそれぞれ通糸して伸縮性生地を編成していた。しかしながらチエーンによって柄出しを制御しているため、柄の表現が限定されたものとなり、自由な柄構成ができなかった。
本発明は、このような従来の欠点を解消するためになしたものであって、以下図の実施例によりながら説明すると、第1図は本発明生地を編成するための筬配列を示し、フランチン筬(1)とドロツパー筬(2)とよりなるジヤカード筬の背部に落下板(3)、2枚目の編目形成糸用筬(4)(5)および同じく2枚の伸縮性糸用筬(6)(7)が順次配置されている。(8)はニードルである。
上記したジヤカード筬としては、単列のものを使用するほか、第2図に示すように複列のジヤカード筬を使用しても同様に本発明生地を編成することができ、(9)はバツクフランチン筬、(10)はドロツパー筬を示す。

(ウ)(2頁左上欄11行?右上欄13行)
次に単列ジヤカード筬を使用して編成した組織を第4図(a)(b)に基づいて説明すると、編目形成用の筬(4)(5)にナイロンその他の合成繊維の糸(14)(15)を編機ゲージに対し1本おきに、しかも互いに隣接するように通糸して、互いにラツピング方向を異にしながら3本の編針に対して編目形成を行うとともに、筬(6)(7)に伸縮性の糸(16)(17)を、上記と同様編機ゲージに対し1本おきに、かつ互いに隣接するように通糸して編目列に対し互いに反対方向から挿入しながら伸縮性ある地組織を編成する。そしてフランチン筬(1)の偶数列(1e)に通糸された柄糸(11e)および奇数列(1o)に通糸された柄糸(11o)を第5図に示すフランチン筬(1)およびドロツパー筬(2)のラツピング相互関係図の通り制御して、例えば第4図(a)に示した編コース(L_(1))に相当するコースにおいて柄糸(11e)(11o)を厚地形成糸(11e’)(11o’)として3針間にかけわたし、あるいは穴地形成糸(11e”)(11o”)として編目列に編み込んで厚地部分〔第4図(b)〕、穴地部分〔第4図(a)〕を形成することにより地組織上に柄構成する。

キ.周知6(特開平5-247806)の記載事項
(ア)【発明の名称】経編地と該経編地を編成するための経編機及び経
編方法(1頁)

(イ)【特許請求の範囲】
【請求項1】緯方向にも経方向にも各種の編組織エリアを有する経編地であって、編地を形成する少なくとも1つの地糸系と少なくとも1つの柄糸系とを有し、柄糸系の糸(21,22)が、それぞれ経方向において、ベースエリア(B)ではプレーンコード編組織で、そして柄出しエリア(M1,M2,M3)では、鎖編、デンビ編、プレーンコード編、サテン編及びベルベット編の群から選択された各種の編組織で順次編成され、所定のパターンリピート(R)において上記順次編成された各種の編組織のアンダラップの平均長がプレーンコード編組織のアンダラップ長にほぼ等しくなった経編地。
………
【請求項8】請求項1から請求項7のいずれか1の項に記載の経編地を編成するための経編機であって、1本のニードルバー(2)と、地編地を編成する少なくとも1本のガイドバー(9)と、柄出しをおこなう2本のジャカードガイドバー(L2,L3)とを有し、該ジャカードガイドバーのガイドピッチが編針ピッチの2倍であり、更に、付属のガイドバー制御装置(6,7)と、ジャカード制御装置(16,17;117)と、上記2本のジャカードガイドバーに供給すべき柄糸系の糸(21,22)用の共通のワープビーム(23)とを有し、ジャカード制御装置により柄糸系の糸を選択的にプレーンコード編組織で、又は鎖編、デンビ編、プレーンコード編、サテン編及びベルベット編の群から選択された各種の編組織を編成するべく給糸可能となるよう、且つこれらの各種の編組織のアンダラップの平均長が所定のパターンリピート(R)内でプレーンコード編組織のアンダラップ長にほぼ等しくなるように構成されたガイドバー制御装置を有する経編機。

ク.周知7(特開平10-96147)の記載事項
【発明の名称】ストレッチジャカード経編地
【要約】
【課題】ジャカード筬を用いて、地組織編地に対して際立って鮮明に浮き立つてみえる表面編組織柄を有するストレッチ経編地及び経編方法の提供。
【解決手段】少なくとも一本のオーバ-ラップをする柄出糸用ジャカードガイド筬と地編を編成する複数本のガイドを有する経編装置を用いて編成された編地であって、前記の柄出糸ジャカードガイド筬に通された非伸長弾性糸がそのパターンリピート(基本組織)を同一ウエール間にとどめた組織で編成されると共に、地編みを編成する複数本のガイド筬の少なくともオーバーラップする一本のガイド筬に非伸長弾性糸を、そして挿入で2針以上の振りが入る少なくとも一本の筬に伸長性弾性糸をそれぞれ通して編成されたストレッチジャカード経編地。(1頁)

2.無効理由3の検討-本件発明1について
事案に鑑み、まず無効理由3について検討する。
(1)無効理由3の検討(1)-甲2による進歩性欠如
ア.本件発明1と甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「経編組織にて編成されている」及び「衣類」は、それぞれ本件発明1の「経編地」及び「衣料」に相当する。
甲2発明の「首部の開口を、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度の部分を含む任意のラインでカットし」は、本件発明1の「編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し」に相当する。
甲2発明の「カットした縁部はそのままで何等処理を加えなくても縁部に糸のほつれがない状態を確保することができる」は、本件発明1の「裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成された」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
《一致点》
経編地を、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成された衣料。

《相違点1》
本件発明1は、「経編地」が、「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸がルーピング組織からなる、伸縮性を有する経編地」であるのに対し、甲2発明は、そのように特定していない点。

イ.相違点1の検討
伸縮性の衣料は、下着用、水着用、スポーツ用等の種々の用途で用いられていること、伸縮性生地とするために弾性糸と非弾性糸とを用いてトリコット生地を編成することは、いずれも本件特許が優先権として主張する日前に多くの文献に記載されており、周知の技術的事項であったといえる(甲3、甲7の1、甲8の1、甲13、周知1?5)。また、編組織の相違によって編地の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性が異なることも周知の技術的事項であり(甲7の1、甲13、周知3)、「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸がルーピング組織からなる、伸縮性を有する経編地」は、甲13、周知1?4に記載されている(上記1(9)(オ)、上記1(10)イ(ウ)、同ウ(ウ)、同エ(エ)、同オ(オ))。すると、甲2発明の衣料を伸縮性の衣料とすることを考慮して、「経編地」を弾性糸と非弾性糸とを用いた伸縮性トリコット生地とし、その際、編組織の外観や触感等の特性を考慮して、非弾性糸を1×1トリコット組織とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)無効理由3の検討(2)-甲5による進歩性欠如
本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明の「経編機にて編成された」及び「衣類」は、それぞれ本件発明1の「経編地」及び「衣料」に相当する。
甲5発明の「襟を顧客の好みのラインにカットするカットラインが、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度になる部分を含んで」いることは、本件発明1の「編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し」に相当する。
甲5発明の「かがりなどの補助的な縫製作業を行わなくてもカットラインでのほつれが殆ど問題とならない」は、本件発明1の「裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成された」に相当する。

すると、本件発明1と甲5発明との一致点及び相違点は、上記2(1)アで述べた、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点1と同じである。
そして、相違点1は、上記2(1)イで検討したとおり、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)無効理由3の検討の結論
上記(1)、(2)で述べたとおり、本件発明1と、甲2発明又は甲5発明との相違点である相違点1は、当業者が容易に想到し得たことである。本件発明1の奏する効果も、甲2発明又は甲5発明、及び周知の技術的事項から当業者が予測し得た事項であり、格別顕著なものではない。したがって、本件発明1は、甲2発明及び周知の技術的事項に基づいて、又は甲5発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。請求人の主張する無効理由3は、理由がある。

3.無効理由4の検討(1)-本件発明2?12について
次に、無効理由4について検討する。
(1)本件発明2について
本件発明2と、甲2発明又は甲5発明とを対比すると、上記2(1)アで述べた一致点で一致する。そして、次の相違点2で相違する。
《相違点2》
本件発明2は、「経編地」が、「非弾性糸と弾性糸が同行する1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸の両方が開き目である」のに対し、甲2発明又は甲5発明は、そのように特定していない点。

相違点2について検討すると、上記2(1)イで検討したとおり、伸縮性の衣料が、下着用、水着用、スポーツ用等の種々の用途で用いられていること、伸縮性生地とするために、弾性糸と非弾性糸とを用いてトリコット生地を編成すること、及び編組織の相違によって編地の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性が異なることは、いずれも周知の技術的事項である。また、甲3には、非弾性糸と弾性糸が同行する1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸の両方が開き目である伸縮性経編地が示されている(上記1(2))。
すると、甲2発明又は甲5発明の衣料を伸縮性の衣料とすることを考慮し、その際、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性を考慮して、「経編組織」として甲3に記載の弾性糸と非弾性糸とが同行する1×1トリコット組織を採用し、相違点2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明2について理由がある。

(2)本件発明3について
本件発明3と、甲2発明又は甲5発明とを対比すると、上記2(1)アで述べた一致点で一致する。そして、次の相違点3で相違する。
《相違点3》
本件発明3は、「経編地」が、「非弾性糸と弾性糸が逆行する1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸の少なくとも一方が閉じ目である」のに対し、甲2発明又は甲5発明は、そのように特定していない点。

相違点3について検討すると、上記2(1)イで検討したとおり、伸縮性の衣料が、下着用、水着用、スポーツ用等の種々の用途で用いられていること、伸縮性生地とするために、弾性糸と非弾性糸とを用いてトリコット生地を編成すること、及び編組織の相違によって編地の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性が異なることは、いずれも周知の技術的事項である。「逆行する1×1トリコット組織で少なくとも一方の糸が閉じ目である経編地」は、例えば、甲7の1、甲8の1に記載されており(上記1(7)、(8))周知の技術的事項であるし、「非弾性糸と弾性糸が逆行する1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸の少なくとも一方が閉じ目である」構成は、甲13、周知1、2に記載されている(上記1(9)(オ)、上記1(10)イ(ウ)、同ウ(ウ))。そうすると、甲2発明又は甲5発明の衣料を伸縮性の衣料とすることを考慮し、その際、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性を考慮して、相違点3に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明3について理由がある。

(3)本件発明4について
本件発明4と、甲2発明又は甲5発明とを対比すると、上記2(1)アで述べた一致点で一致する。そして、次の相違点4で相違する。
《相違点4》
本件発明4は、「経編地」が、「非弾性糸と弾性糸が逆行する1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸の両方が閉じ目である」のに対し、甲2発明及び甲5発明は、そのように特定していない点。

相違点4について検討すると、上記2(1)イで検討したとおり、伸縮性の衣料が、下着用、水着用、スポーツ用等の種々の用途で用いられていること、伸縮性生地とするために、弾性糸と非弾性糸とを用いてトリコット生地を編成すること、及び編組織の相違によって編地の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性が異なることは、いずれも周知の技術的事項である。「逆行する1×1トリコット組織で、両方の糸が閉じ目である経編地」は、例えば甲7の1、甲8の1に記載されており(上記1(6)、(7))周知の技術的事項であるし、「非弾性糸と弾性糸が逆行する1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸の両方が閉じ目である」構成は、甲13、周知1、2に記載されている(上記1(9)(オ)、上記1(10)イ(ウ)、同ウ(ウ))。
そうすると、甲2発明又は甲5発明の衣料を伸縮性の衣料とすることを考慮し、その際、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性を考慮して、相違点4に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明4について理由がある。

(4)本件発明5について
本件発明5と、甲2発明又は甲5発明とを対比すると、上記2(1)アで述べた一致点で一致する。本件発明5が規定する「ハーフ組織」は、本件発明1が規定する「ルーピング組織」の下位概念であるから、本件発明5と、甲2発明又は甲5発明とは、次の相違点5で相違する。
《相違点5》
本件発明5は、「経編地」が、「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織」であり「弾性糸の組織がハーフ組織」であり「伸縮性を有する」のに対し、甲2発明及び甲5発明は、そのように特定していない点。

相違点5について検討すると、上記2(1)イで検討したとおり、伸縮性の衣料が、下着用、水着用、スポーツ用等の種々の用途で用いられていること、伸縮性生地とするために、弾性糸と非弾性糸とを用いてトリコット生地を編成すること、及び編組織の相違によって編地の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性が異なることは、いずれも周知の技術的事項である。「一方の糸が1×1トリコット組織であり、他方の糸がハーフ組織である経編地」は、周知の編組織であるし(上記1(6)、(7)参照)、「非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸の組織がハーフ組織であり、伸縮性を有する経編地」は、例えば周知3に記載されている(上記1(10)エ(エ))。
そうすると、甲2発明又は甲5発明の衣料を伸縮性の衣料とすることを考慮し、その際、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性を考慮して、相違点5に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明5について理由がある。

(5)本件発明6について
本件発明6と、甲2発明又は甲5発明とを対比すると、上記2(1)アで述べた一致点で一致する。本件発明6が規定する「アトラス組織」は、「ルーピング組織」の下位概念であるから、本件発明6と、甲2発明又は甲5発明とは、次の相違点6で相違する。
《相違点6》
本件発明6は、「経編地」が、「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織」であり「弾性糸の組織がアトラス組織」であり「伸縮性を有する」のに対し、甲2発明及び甲5発明は、そのように特定していない点。

相違点6について検討すると、上記2(1)イで検討したとおり、伸縮性の衣料が、下着用、水着用、スポーツ用等の種々の用途で用いられていること、伸縮性生地とするために、弾性糸と非弾性糸とを用いてトリコット生地を編成すること、及び編組織の相違によって編地の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性が異なることは、いずれも周知の技術的事項である。また、「1×1トリコット組織」も「アトラス組織」も周知の編組織である(上記1(6)、(7)参照)。
そうすると、甲2発明又は甲5発明の衣料を伸縮性の衣料とすることを考慮し、その際、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性を考慮して、相違点6に係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明6について理由がある。

(6)本件発明7について
ア.本件発明7と、甲2発明又は甲5発明とを対比すると、上記2(1)アで述べた一致点で一致する。本件発明7は、本件発明5を引用する発明と、本件発明6を引用する発明とを含んでいるところ、本件発明5を引用する本件発明7の構成と、甲2発明又は甲5発明とは、次の相違点7-1で相違し、本件発明6を引用する本件発明7の構成と、甲2発明又は甲5発明とは、次の相違点7-2で相違する。
《相違点7-1》
本件発明7は、「経編地」が、「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織」であり「弾性糸の組織がハーフ組織」であり「非弾性糸と弾性糸の、少なくとも一方が閉じ目」であり「伸縮性を有する」のに対し、甲2発明及び甲5発明は、そのように特定していない点。

《相違点7-2》
本件発明7は、「経編地」が、「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織」であり「弾性糸の組織がアトラス組織」であり「非弾性糸と弾性糸の、少なくとも一方が閉じ目」であり「伸縮性を有する」のに対し、甲2発明及び甲5発明は、そのように特定していない点。

イ.相違点7-1について検討すると、上記2(1)イで検討したとおり、伸縮性の衣料が、下着用、水着用、スポーツ用等の種々の用途で用いられていること、伸縮性生地とするために、弾性糸と非弾性糸とを用いてトリコット生地を編成すること、及び編組織の相違によって編地の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性が異なることは、いずれも周知の技術的事項である。「一方の糸が1×1トリコット組織であり、他方の糸がハーフ組織であり、少なくとも一方の糸が閉じ目である経編地」は、周知の編組織であるし(上記1(6)、(7)参照)、「非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸の組織がハーフ組織であり、伸縮性を有する経編地」は、例えば周知3に記載されている(上記1(10)エ(エ))。
そうすると、甲2発明又は甲5発明の衣料を伸縮性の衣料とすることを考慮し、その際、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性を考慮して、相違点7-1に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明7について理由がある。

ウ.相違点7-2について検討すると、上記2(1)イで検討したとおり、伸縮性の衣料が、下着用、水着用、スポーツ用等の種々の用途で用いられていること、伸縮性生地とするために、弾性糸と非弾性糸とを用いてトリコット生地を編成すること、及び編組織の相違によって編地の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性が異なることは、いずれも周知の技術的事項である。また、「1×1トリコット組織」も「アトラス組織」も周知の編組織であるし、編目(ループ)を「閉じ目」にすることも「開き目」にすることも周知の技術的事項である(上記1(6)、(7)参照)。
そうすると、甲2発明又は甲5発明の衣料を伸縮性の衣料とすることを考慮し、その際、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性を考慮して、相違点7-2に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明7について理由がある。

(7)本件発明8について
ア.本件発明8と、甲2発明又は甲5発明とを対比すると、上記2(1)アで述べた一致点で一致する。本件発明8は、本件発明5を引用する発明と、本件発明6を引用する発明とを含んでいるところ、本件発明5を引用する本件発明8の構成と、甲2発明又は甲5発明とは、次の相違点8-1で相違し、本件発明6を引用する本件発明8の構成と、甲2発明又は甲5発明とは、次の相違点8-2で相違する。
《相違点8-1》
本件発明8は、「経編地」が、「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織」であり「弾性糸の組織がハーフ組織」であり「非弾性糸と弾性糸の両方が閉じ目」であり「伸縮性を有する」のに対し、甲2発明又は甲5発明は、そのように特定していない点。

《相違点8-2》
本件発明8は、「経編地」が、「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織」であり「弾性糸の組織がアトラス組織」であり「非弾性糸と弾性糸の両方が閉じ目」であり「伸縮性を有する」のに対し、甲2発明又は甲5発明は、そのように特定していない点。

イ.相違点8-1について検討すると、上記2(1)イで検討したとおり、伸縮性の衣料が、下着用、水着用、スポーツ用等の種々の用途で用いられていること、伸縮性生地とするために、弾性糸と非弾性糸とを用いてトリコット生地を編成すること、及び編組織の相違によって編地の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性が異なることは、いずれも周知の技術的事項である。「一方の糸が1×1トリコット組織であり、他方の糸がハーフ組織であり、両方の糸が閉じ目である経編地」は、例えば甲7の1、甲8の1に示されており(上記1(6)、(7))、周知の編組織であるし、「非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸の組織がハーフ組織であり、非弾性糸と弾性糸の両方が閉じ目」であり、伸縮性を有する経編地」は、例えば周知3に記載されている(上記1(10)エ(エ))。
そうすると、甲2発明又は甲5発明の衣料を伸縮性の衣料とすることを考慮し、その際、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性を考慮して、相違点8-1に係る本件発明8の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明8について理由がある。

ウ.相違点8-2について検討すると、上記2(1)イで検討したとおり、伸縮性の衣料が、下着用、水着用、スポーツ用等の種々の用途で用いられていること、伸縮性生地とするために、弾性糸と非弾性糸とを用いてトリコット生地を編成すること、及び編組織の相違によって編地の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性が異なることは、いずれも周知の技術的事項である。また、「1×1トリコット組織」も「アトラス組織」も周知の編組織であるし、編目(ループ)を「閉じ目」にすることも「開き目」にすることも周知の技術的事項である(上記1(6)、(7)参照)。
そうすると、甲2発明又は甲5発明の衣料を伸縮性の衣料とすることを考慮し、その際、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性を考慮して、相違点8-2に係る本件発明8の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明8について理由がある。

(8)本件発明9について
本件発明9と、甲2発明又は甲5発明とを対比すると、上記2(1)アで述べた一致点で一致する。本件発明9は、本件発明5を引用する発明と、本件発明6を引用する発明とを含んでいるところ、本件発明5を引用する本件発明9の構成と、甲2発明又は甲5発明とは、上記(4)で述べた相違点5で相違し、さらに次の相違点9で相違する。本件発明6を引用する本件発明9の構成と、甲2発明又は甲5発明とは、上記(5)で述べた相違点6で相違し、さらに次の相違点9で相違する。
《相違点9》
本件発明9は、「非弾性糸」が、「綿糸」であるのに対し、甲2発明及び甲5発明は、そのように特定していない点。

相違点5及び相違点6は、上記(4)及び(5)で検討したとおり、いずれも当業者が容易に想到し得たことである。
相違点9について検討すると、編物において、非弾性糸として綿糸を使用することは、例えば甲13の段落0074に記載されており(上記1(10)(イ))周知の技術的事項である。甲2発明又は甲5発明の衣料において、所望の外観や触感等の特性を考慮して、非弾性糸として綿糸を採用し、相違点9に係る本件発明9の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明9について理由がある。

(9)本件発明10について
本件発明10と、甲2発明又は甲5発明とを対比すると、上記2(1)アで述べた一致点で一致する。本件発明10と、甲2発明又は甲5発明とは、上記(4)で述べた相違点5及び上記(8)で述べた相違点9で相違する。
相違点5及び相違点9は、上記(4)及び(8)イで検討したとおり、いずれも当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明10について理由がある。

(10)本件発明11について
本件発明11と、甲2発明又は甲5発明とを対比すると、上記2(1)アで述べた一致点で一致する。本件発明11と、甲2発明又は甲5発明とは、上記(6)で述べた相違点7-1及び上記(8)で述べた相違点9で相違する。
相違点7-1及び相違点9は、上記(6)及び(8)で検討したとおり、いずれも当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明11について理由がある。

(11)本件発明12について
本件発明12と、甲2発明又は甲5発明とを対比すると、上記2(1)アで述べた一致点で一致する。本件発明12と、甲2発明又は甲5発明とは、上記(7)で述べた相違点8-1及び上記(8)で述べた相違点9で相違する。
相違点8-1及び相違点9は、上記(7)及び(8)で検討したとおり、いずれも当業者が容易に想到し得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明12について理由がある。

4.無効理由4の検討(2)-本件発明13?17について
(1)本件発明13?17の優先権主張日
請求人は、本件特許について、2つの特許出願を優先権の基礎として主張している。その一方である特願2003-369540号(甲1の3)の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項13には、本件発明13の構成要件である、本件特許の請求項13に記載された事項が記載されている。しかし、他方である特願2003-134586号(甲1の2)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、本件特許の請求項13に記載された事項が記載されていない。また、本件特許の請求項13に記載された事項が、特願2003-134586号(甲1の2)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載事項を総合することにより導かれる技術的事項であるともいえない。したがって、特願2003-369540号(甲1の2)の出願日である平成15年5月13日は、本件発明13については、優先権主張が認められない。本件発明13についての優先権主張日は、特願2003-369540号(甲1の3)の出願日である平成15年10月29日である。
また、本件発明14、15の構成要件である、本件特許の請求項14、15に記載された事項も、一方である特願2003-369540号(甲1の3)の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項14、15には記載されているが、他方である特願2003-134586号(甲1の2)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、記載されていない。本件発明14、15についての優先権主張日も、特願2003-369540号(甲1の3)の出願日である平成15年10月29日である。
本件発明16、17は、直接又は間接的に本件発明14を引用しているから、本件発明16、17についての優先権主張日も、特願2003-369540号(甲1の3)の出願日である平成15年10月29日である。

(2)本件発明13について
ア.本件発明13の検討(1)-甲6による進歩性欠如
(ア)本件発明13と甲6発明の1との対比
本件発明13と甲6発明の1とを対比すると、甲6発明の1の「(A-1)非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1トリコットであって、非弾性糸と弾性糸のいずれもが、閉じ目により編成されている伸縮性たて編地」は、本件発明13の「(A-1)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地」及び本件発明13(が引用する本件発明1)の「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸がルーピング組織からなる、伸縮性を有する経編地」に相当する。
甲6発明の1の「(A-2)非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1トリコットであって、非弾性糸が閉じ目により、弾性糸が開き目により編成されている伸縮性たて編地」は、本件発明13の「(A-2)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸のどちらか一方が閉じ目、他方が開き目である経編地」及び本件発明13(が引用する本件発明1)の「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸がルーピング組織からなる、伸縮性を有する経編地」に相当する。
甲6発明の1の「衣類の縁の一部が、前記伸縮性たて編地の編み方向に対し左右にそれぞれ45度で裁断した裁断縁からなるヘミングレスのままの縁である」は、本件発明13(が引用する本件発明1)の「伸縮性を有する経編地を、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する」に相当する。
甲6発明の1の「2種の編地を複数枚組み合わせて重ね、貼り合わせてなる伸縮性たて編地を含んで形成されている伸縮性衣類であって、伸縮性たて編地の1種が、下記の(A-1)又は(A-2)であり」と、本件発明13の「部片が、下記(A-1)、(A-2)からなる群(A)から選ばれた少なくとも1種の素材と(A-1)、(A-2)以外の他の布からなる素材を接合して積層した部片からなる」「衣料」とは、「(A-1)、(A-2)からなる群(A)から選ばれた少なくとも1種の素材を含む、2種の編地を接合して積層した部片からなる衣料」である限りにおいて一致する。
すると、本件発明13と甲6発明の1との一致点及び相違点は次のとおりである。
《本件発明13と甲6発明の1との一致点》
少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸がルーピング組織からなる、伸縮性を有する経編地を、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成された衣料であって、
前記部片が、下記(A-1)、(A-2)からなる群(A)から選ばれた少なくとも1種の素材を含む、2種の編地を接合して積層した部片からなる請求項1に記載の衣料。
(A-1)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地。
(A-2)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸のどちらか一方が閉じ目、他方が開き目である経編地。

《相違点13-1》
本件発明13は、「2種の編地を接合して積層した部片」は、その1種が「(A-1)、(A-2)からなる群(A)から選ばれた少なくとも1種の素材」であり、他の1種が「(A-1)、(A-2)以外の他の布からなる素材」であるのに対し、
甲6発明の1は、その1種が「(A-1)、(A-2)からなる群(A)から選ばれた少なくとも1種の素材」であるものの、他の1種が「(A-1)、(A-2)以外の他の布からなる素材」であるとは特定していない点。

(イ)相違点13-1の検討
甲3には、「非弾性糸と、弾性糸とが同行する1×1トリコット組織で、両方が開き目である経編地」が開示されている(上記1(2))。甲4には、衣類用の二層布地を、異なる布地層を接着して得ることが記載されている(上記1(3)ア(イ)、(オ))。「非弾性糸と、弾性糸とが同行しないトリコット組織」として種々の編組織があること、及び編組織の相違によって外観や触感等の特性が異なることも、周知の技術的事項である(上記1(6)、(7)、(9)、(10))。
そうすると、甲6発明の1において、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性を得ることを考慮して、「(A-1)、(A-2)からなる群(A)から選ばれた少なくとも1種の素材」に接合する他の1種として、甲3に示された編組織や、周知の「非弾性糸と、弾性糸とが同行しないトリコット組織」等の「(A-1)、(A-2)とは異なる布地層」を採用することは、当業者が容易に推考し得たことである。

イ.本件発明13の検討(2)-甲4による進歩性欠如
(ア)本件発明13と甲4発明との対比
本件発明13と甲4発明とを対比すると、甲4発明の「滑らかでほつれにくい完成した縁を提供し、追加の縁仕上げ作業を必要としない衣類」は、本件発明13(が引用する本件発明1)の「裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成された衣料」に相当する。
甲4発明の「2つの同一の又は異なる布地層が互いに接着された布地積層体から製造される衣類」と、本件発明13の「(A-1)、(A-2)からなる群(A)から選ばれた少なくとも1種の素材と(A-1)、(A-2)以外の他の布からなる素材を接合して積層した部片からなる」「衣料」とは、「2つの異なる布からなる素材を接合して積層した部片からなる衣料」である限りにおいて一致する。
すると、本件発明13と甲4発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
《本件発明13と甲4発明との一致点》
裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成された衣料であって、
前記部片が、2つの異なる布からなる素材を接合して積層した部片からなる衣料。

《相違点13-2》
本件発明13は、「部片」が、「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸がルーピング組織からなる、伸縮性を有する経編地を、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する」ものであり、「部片」を構成する2つの異なる布の一方が、「(A-1)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地、及び、(A-2)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸のどちらか一方が閉じ目、他方が開き目である経編地からなる群(A)から選ばれた少なくとも1種の素材」であり、布の他方が、「(A-1)、(A-2)以外の他の布からなる素材」であるのに対し、
甲4発明は、「部片」について、そのように特定していない点。

(イ)相違点13-2の検討
「部片」が、「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸がルーピング組織からなる、伸縮性を有する経編地を、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する」ものであり、「部片」を構成する2つの異なる布の一方が、「(A-1)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地、及び、(A-2)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸のどちらか一方が閉じ目、他方が開き目である経編地からなる群(A)から選ばれた少なくとも1種の素材」であることは、甲6に記載されている(上記ア(ア))。
「(A-1)、(A-2)以外の他の布からなる素材」は、その例が甲3に記載されており、また、甲7の1、甲8の1、甲13、周知1?4にも種々の例が記載されている。したがって、「(A-1)、(A-2)以外の他の布からなる素材」は、本件発明13の優先権主張日前に周知の技術的事項である。
また、布は、その材料の相違や、編組織又は織組織の相違によって、外観、触感、強度、弾性、切断縁のほつれにくさ等の特性が異なることが、一般的に周知である。
そうすると、甲4発明において、所望の外観、触感、強度、弾性、切断縁のほつれにくさ等の特性を得ることを考慮して、相違点13-2に係る構成とすることは、当業者が容易に推考し得たことである。

ウ.本件発明13の検討のまとめ
所望の外観、触感、強度、弾性、切断縁のほつれにくさ等の特性を得ることを考慮して、甲4発明に、甲3及び甲6に記載された技術的事項、並びに周知の技術的事項を適用し、本件発明13を得ることは、当業者が容易になし得たことである。また、甲6発明の1に甲3及び甲4に記載された技術的事項、並びに周知の技術的事項を適用し、本件発明13を得ることも、当業者が容易になし得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明13について理由がある。

(3)本件発明14について
ア.本件発明14の検討(1)-甲6による進歩性欠如
(ア)本件発明14と甲6発明の1とを対比すると、上記(2)ア(ア)で述べた《本件発明13と甲6発明の1との一致点》で一致し、《相違点13-1》で相違し、さらに、次に示す《相違点14》でも相違する。
《相違点14》
本件発明14は、「他の布からなる素材」が、「(B-1)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がハーフ組織である経編地」、「(B-2)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がアトラス組織である経編地」、「(B-3)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に開き目である経編地」、及び「(B-4)非弾性糸と弾性糸とが逆行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地」からなる群(B)から選ばれた少なくとも1種の素材であるのに対し、
甲6発明の1は、そのように特定していない点。

(イ)相違点の検討
相違点13-1は、上記(2)ア(イ)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点14について検討すると、「編目を開き目又は閉じ目にすること」、「弾性糸と非弾性糸とを用いて編成する伸縮性トリコット生地」、「一方の糸が1×1トリコット組織で、他方の糸がハーフ組織である経編地」、「2本の糸が逆行する共に1×1トリコット組織で、共に閉じ目である経編地」、「アトラス組織である経編地」及び「編組織の相違によって編地の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性が異なること」は、いずれも周知の技術的事項である(上記1(6)、(7)参照)。
そして、「(B-1)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がハーフ組織である経編地」は、周知3に記載されており(上記1(10)エ(エ))、「(B-3)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に開き目である経編地」は、甲3に記載されており(上記1(2))、「(B-4)非弾性糸と弾性糸とが逆行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地」は、甲13、周知1、2に記載されている(上記1(9)(オ)、1(10)イ(ウ)、1(10)ウ(ウ))。
そうすると、甲6発明の1を、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性にすることを考慮して、甲3、甲13、又は周知の技術的事項に基づいて、「他の布からなる素材」を(B-1)ないし(B-4)の経編地とし、相違点14に係る本件発明14の構成とすることは、当業者が容易に推考し得たことである。

イ.本件発明14の検討(2)-甲4による進歩性欠如
本件発明14と甲4発明とを対比すると、上記(2)イ(ア)で述べた《本件発明13と甲4発明との一致点》で一致し、《相違点13-2》で相違し、さらに、上記ア(ア)で述べた《相違点14》で相違する。
相違点13-2は、上記(2)イ(イ)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。相違点14は、上記ア(イ)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。

ウ.本件発明14の検討のまとめ
所望の外観、触感、強度、弾性、切断縁のほつれにくさ等の特性を得ることを考慮して、甲4発明に、甲3、甲6、甲13に記載された技術的事項、並びに周知の技術的事項を適用し、本件発明14を得ることは、当業者が容易になし得たことである。また、甲6発明の1に甲3、甲4、区13に記載された技術的事項、並びに周知の技術的事項を適用し、本件発明14を得ることも、当業者が容易になし得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明14について理由がある。

(4)本件発明15について
ア.本件発明15の検討(1)-甲6による進歩性欠如
本件発明15と甲6発明の2とを対比すると、甲6発明の2の「伸縮性たて編地」は、本件発明15が引用する本件発明1の「伸縮性を有する経編地」に相当する。
甲6発明の2の「衣類の縁の一部が、前記伸縮性たて編地の編み方向に対し左右にそれぞれ45度で裁断した裁断縁からなるヘミングレスのままの縁である伸縮性衣類」は、本件発明15が引用する本件発明1の「編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成された衣料」に相当する。
甲6発明の2の「伸縮性編地を複数枚組み合わせて重ね、貼り合わせてなる伸縮性たて編地を含んで形成されている伸縮性衣類」と、本件発明15の「(B-1)?(B-4)からなる群から選ばれた少なくとも1種の素材を複数枚接合して積層した部片からなる」「衣料」とは、「伸縮性を有する経編地を複数枚接合して積層した部片からなる衣料」である点で一致する。
すると、本件発明15と甲6発明の2との一致点及び相違点は次のとおりである。
《本件発明15と甲6発明の2との一致点》
伸縮性を有する経編地を、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成された衣料であって、
前記部片が、伸縮性を有する経編地を複数枚接合して積層した部片からなる衣料。

《相違点15-1》
本件発明15は、「積層した部片」を構成する複数枚の伸縮性編地が、「(B-1)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がハーフ組織である経編地、(B-2)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がアトラス組織である経編地、(B-3)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に開き目である経編地、及び(B-4)非弾性糸と弾性糸とが逆行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地からなる群(B)から選ばれた少なくとも1種の素材」であるのに対し、
甲6発明の2は、そのように特定していない点。

(イ)相違点15-1の検討
相違点15-1について検討すると、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性にすることを考慮して、(B-1)ないし(B-4)の経編地を「積層した部片」を構成する複数枚の伸縮性編地として採用することは、相違点14について検討したのと同様の理由(上記(3)ア(イ))により、当業者が容易に推考し得たことである。

イ.本件発明15の検討(2)-甲4による進歩性欠如
(ア)本件発明15と甲4発明との対比
本件発明15と甲4発明とを対比すると、甲4発明の「滑らかでほつれにくい完成した縁を提供し、追加の縁仕上げ作業を必要としない衣類」は、本件発明15(が引用するの本件発明1)の「裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成された衣料」に相当する。
甲4発明の「2つの同一の又は異なる布地層が互いに接着された布地積層体から製造される衣類」と、本件発明15の「(B-1)?(B-4)からなる群から選ばれた少なくとも1種の素材を複数枚接合して積層した部片からなる」「衣料」とは、「2つの同一の又は異なる布からなる素材を接合して積層した部片からなる衣料」である限りにおいて一致する。
すると、本件発明15と甲4発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
《本件発明15と甲4発明との一致点》
裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成された衣料であって、
前記部片が、2つの同一の又は異なる布からなる素材を接合して積層した部片からなる衣料。

《相違点15-2》
本件発明15は、「部片」が、「少なくとも非弾性糸が1×1トリコット組織であり、弾性糸がルーピング組織からなる、伸縮性を有する経編地を、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する」ものであり、「部片」を構成する2つの同一の又は異なる布が、「(B-1)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がハーフ組織である経編地、(B-2)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がアトラス組織である経編地、(B-3)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に開き目である経編地、及び(B-4)非弾性糸と弾性糸とが逆行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地からなる群(B)から選ばれた少なくとも1種の素材」であるのに対し、
甲4発明は、「部片」について、そのように特定していない点。

(イ)相違点15-2の検討
相違点15-2について検討すると、「伸縮性を有する経編地を、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が衣料の縁部の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する」衣料とすることは、甲6に記載されている。「部片」を構成する布を(B-1)ないし(B-4)からなる群(B)から選ぶことは、上記ア(イ)で検討したのと同様の理由により、当業者が容易に推考し得たことである。

ウ.本件発明15の検討のまとめ
所望の外観、触感、強度、弾性、切断縁のほつれにくさ等の特性を得ることを考慮して、甲4発明に、甲3、甲13、又は周知の技術的事項を適用し、本件発明15を得ることは、当業者が容易になし得たことである。また、甲6発明の2に、甲3、甲13、又は周知の技術的事項を適用し、若しく甲3に記載された技術的事項及び周知の技術的事項を適用し、本件発明15を得ることも、当業者が容易になし得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明15について理由がある。

(5)本件発明16について
ア.本件発明16の検討(1)-甲6による進歩性欠如
(ア)本件発明16と甲6発明の1とを対比すると、上記(2)ア(ア)で述べた《本件発明13と甲6発明の1との一致点》で一致し、《相違点13-1》で相違し、さらに、次に示す《相違点16》でも相違する。
《相違点16》
本件発明16は、「部片」を構成する2つの異なる布の一方である「素材(A)」が「(A-1)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地」であり、2つの異なる布の他方である「素材(B)」が「(B-1)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がハーフ組織である経編地」であるのに対し、
甲6発明の1は、そのように特定していない点。

(イ)相違点の検討
相違点13-1は、上記(2)ア(イ)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点16について検討すると、「素材(A)」が「(A-1)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地」であることは、甲6発明の1の選択肢の1つであるから、「素材(A)」として「(A-1)」を採用することは、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。
「弾性糸と非弾性糸とを用いて編成する伸縮性トリコット生地」、「一方の糸が1×1トリコット組織で、他方の糸がハーフ組織である経編地」及び「編組織の相違によって編地の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性が異なること」は、いずれも周知の技術的事項であるし(上記1(6)、(7)、(10)エ(エ)、2(1)イ参照)、「(B-1)非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がハーフ組織である経編地」は、例えば周知3に記載されている(上記1(10)エ(エ))。
そうすると、甲6発明の1を、所望の外観や緊迫力、伸縮力、触感等の特性にすることを考慮して、相違点16に係る本件発明16の構成とすることは、当業者が容易に推考し得たことである。

イ.本件発明16の検討(2)-甲4による進歩性欠如
本件発明16と甲4発明とを対比すると、上記(2)イ(ア)で述べた《本件発明13と甲4発明との一致点》で一致し、《相違点13-2》で相違し、さらに、上記イ(ア)で述べた《相違点16》で相違する。
相違点13-2は、上記(2)ア(イ)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。相違点16は、上記ア(イ)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。

ウ.本件発明16の検討のまとめ
所望の外観、触感、強度、弾性、切断縁のほつれにくさ等の特性を得ることを考慮して、甲4発明に、甲6に記載された技術的事項及び周知の技術的事項を適用し、本件発明16を得ることは、当業者が容易になし得たことである。また、甲6発明の1に、甲4に記載された技術的事項及び周知の技術的事項を適用し、本件発明16を得ることも、当業者が容易になし得たことである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明16について理由がある。

(6)本件発明17について
本件発明17は、本件発明16が特定する事項に加え、「(B-1)の非弾性糸が綿であり、且つ非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である」ことを特定する発明である。
本件発明17と甲6発明の1とを対比すると、上記(5)アで述べたとおり《本件発明13と甲6発明の1との一致点》で一致し、《相違点13-1》及び《相違点16》で相違する。そして、次に示す《相違点17》でも相違する。
また、本件発明17と甲4発明とを対比すると、上記(5)イで述べたとおり《本件発明13と甲4発明との一致点》で一致し、《相違点13-2》及び《相違点16》で相違する。そして、次に示す《相違点17》でも相違する。
《相違点17》
本件発明17は、(B-1)(非弾性糸が1×1トリコット組織で、弾性糸がハーフ組織である経編地)の「非弾性糸が綿であり、且つ非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である」のに対し、
甲4発明又は甲6発明の1は、そのように特定していない点。

相違点13-1、相違点13-2及び相違点16は、上記(5)ア、イで述べたとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点17について検討すると、経編地に用いる非弾性糸として「綿」を用いること、及び経編地に用いる2本の糸を共に閉じ目とすることは、いずれも周知の技術的事項である。
本件発明17は、甲4発明に、甲6に記載された技術的事項及び周知の技術的事項を適用することにより、又は、甲6発明の1に、甲4に記載された技術的事項及び周知の技術的事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求人の主張する無効理由4は、本件発明17について理由がある。

5.無効理由4の検討(3)-本件発明18?35について
(1)本件発明18?35の検討について
本件発明18ないし35は、本件発明1ないし17を直接的又は間接的に引用して発明特定事項を規定し、さらに他の発明特定事項を加えた発明である。本件発明1ないし12と、甲2発明又は甲5発明との一致点及び相違点は、上記2又は3で述べたとおりであり、それら相違点は、上記2又は3で検討したとおり、いずれも当業者が容易に推考し得た事項、又は当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。本件発明13ないし17と、甲4発明、甲6発明の1又は甲6発明の2との一致点及び相違点は、上記4で述べたとおりであり、それら相違点は、上記4で検討したとおり、いずれも当業者が容易に推考し得た事項、又は当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。
よって、以下では、本件発明18ないし35が、本件発明1ないし17にさらに加える発明特定事項が、甲各号証又は周知の技術的事項から容易に推考し得たものであるかについて検討を行う。以下では、甲2発明、甲4発明、甲5発明、甲6発明の1及び甲6発明の2を総称して「甲号発明」という。

(2)本件発明18について
本件発明18と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点18でも相違する。
《相違点18》
本件発明18は、「部片の衣料における上縁あるいは下縁の少なくとも一方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が編み方向に対して、10?120度の角度で裁断されている」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点18について検討すると、「部片の衣料における上縁あるいは下縁の少なくとも一方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁」からなる構成は、甲2の段落0017(胴部の下端、首部の開口。上記1(1)ア(オ))、甲4の1の段落0049(ブラジャーの上下の縁。上記1(3)ア(ウ))、Fig.1、7A、7B、甲5の段落0016(襟、裾。上記1(4)ア(オ))、甲6の請求項26(衣類の少なくとも上端および下端の縁。上記1(5)ア(イ))、甲11の2の請求項8、9及び段落0011に記載されている。
「縁始末不要な縁」を「編み方向に対して、10?120度の角度で裁断」することは、甲2の図1の「首回りの開口部分14A」(上記1(1)ア(カ))及び「胴部の裾の開口部分14C」、甲5の図4(イ)の「襟のカットライン40A?40C」(上記1(4)ア(キ))、図4(ロ)の「裾のカットライン」及び図5の「襟及び脇のカットライン」、甲6の請求項30(上記1(5)ア(イ))、明細書16頁17?25行(上記1(5)ア(キ)参照)及び図7、甲11の2の請求項12及び段落0011に記載されている。
したがって、相違点18は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(3)本件発明19について
本件発明19と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点19でも相違する。
《相違点19》
本件発明19は、「部片の衣料における上縁および下縁の両方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が編み方向に対して、10?120度の角度で裁断されている」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点19は、上記(2)で述べたのと同様の理由により、当業者が容易に推考し得たことである。

(4)本件発明20について
本件発明20と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点20でも相違する。
《相違点20》
本件発明20は、「部片が、衣料の上下方向に連続した経編地からなる」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点20について検討すると、「部片が、衣料の上下方向に連続した経編地からなる」構成は、甲2の段落0012(上記1(1)ア(エ))及び図1、甲5の段落0012(上記1(4)ア(エ))及び図1、甲6の請求項27(上記1(5)ア(イ))、明細書15頁26行?16頁4行(図6の説明。上記1(5)ア(カ)参照)及び図6、甲11の2の請求項9に記載されている。
したがって、相違点20は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(4)本件発明21について
本件発明21と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点21でも相違する。
《相違点21》
本件発明21は、「部片の衣料における上縁あるいは下縁の少なくとも一方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が曲線に裁断されている」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点21について検討すると、「部片の衣料における上縁あるいは下縁の少なくとも一方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が曲線に裁断されている」構成は、甲2の段落0017(首部の開口。上記1(1)ア(オ))及び図1の「首回りの開口部分14A」、甲4の1の段落0049(スカラップ縁27。上記1(3)ア(ウ))及びFig.1、7A、7B、甲5の段落0016(襟。上記1(4)ア(オ))及び図4(イ)の「襟のカットライン40A?40C」、甲6の請求項25(上記1(5)ア(イ))、明細書16頁4?7行(上記1(5)ア(カ))、同書18頁7?9行、同書同頁20?24行(上記1(5)ア(ク))、Fig.6、8?10、甲11の2の請求項7、14、段落0023、0025、図4、6、7に記載されている。
したがって、相違点21は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(5)本件発明22について
本件発明22と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点22でも相違する。
《相違点22》
本件発明22は、「部片の衣料における上縁あるいは下縁の両方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が曲線に裁断されている」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点22について検討すると、「部片の衣料における上縁あるいは下縁の両方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が曲線に裁断されている」構成は、甲4の1の段落0049(スカラップ縁27。上記1(3)ア(ウ))及びFig.1、7A、7B、甲6の明細書18頁7?9行、同書同頁20?24行(上記1(5)ア(ク))、Fig.9、10に記載されている。
したがって、相違点22は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(6)本件発明23について
本件発明23と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点23でも相違する。
《相違点23》
本件発明23は、「部片の衣料における上縁あるいは下縁の少なくとも一方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が複数の曲線のある波形状である」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点23について検討すると、「部片の衣料における上縁あるいは下縁の少なくとも一方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が複数の曲線のある波形状である」構成は、甲4の1の段落0049(スカラップ縁27。上記1(3)ア(ウ))及びFig.7B、甲6の請求項25(上記1(5)ア(イ))、明細書16頁4?7行(上記1(5)ア(カ))、同書18頁7?9行、同書同頁20?24行(上記1(5)ア(ク))、Fig.6、9、10、甲11の2の請求項7、図4、7に記載されている。
したがって、相違点23は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(7)本件発明24について
本件発明24と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点24でも相違する。
《相違点24》
本件発明24は、「部片の衣料における上縁および下縁の両方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が複数の曲線のある波形状である」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点24について検討すると、「部片の衣料における上縁および下縁の両方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が複数の曲線のある波形状である」構成は、甲4の1の段落0049(スカラップ縁27。上記1(3)ア(ウ))及びFig.7B、甲6の明細書18頁7?9行、同書同頁20?24行(上記1(5)ア(ク))、Fig.9、10、甲11の2の図7に記載されている。
したがって、相違点24は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(8)本件発明25について
本件発明25と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点25でも相違する。
《相違点25》
本件発明25は、「部片の衣料における上縁および下縁の両方の縁が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、上縁および下縁が相互に非平行である」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点25について検討すると、「部片の衣料における上縁および下縁の両方の縁が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、上縁および下縁が相互に非平行である」構成は、甲2の段落0017(首部の開口及び胴部の下端。上記1(1)ア(オ))及び図1の「首回りの開口部分14A」及び「胴部の裾の開口部分14C」、甲4の1の段落0049(スカラップ縁27。上記1(3)ア(ウ))及びFig.1、7A、7B、甲5の段落0016(襟、裾。上記1(4)ア(オ))及び図4(イ)の「襟のカットライン40A?40C」及び図4(ロ)の「裾のカットライン」、甲6の明細書15頁27行?16頁10行(上記1(5)ア(カ))、同書18頁7?9行、同書同頁20?24行(上記1(5)ア(ク))、Fig.6、8?10、甲11の2の請求項10、段落0022、図4、6、7に記載されている。
したがって、相違点25は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(9)本件発明26について
本件発明26と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点26でも相違する。
《相違点26》
本件発明26は、「部片の衣料における上縁および下縁の両方の縁が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、上縁の縁の形状と、下縁の縁の形状が異なっている」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点26について検討すると、「部片の衣料における上縁および下縁の両方の縁が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、上縁の縁の形状と、下縁の縁の形状が異なっている」構成は、甲2の段落0017(首部の開口及び胴部の下端。上記1(1)ア(オ))及び図1の「首回りの開口部分14A」及び「胴部の裾の開口部分14C」、甲4の1の段落0049(スカラップ縁27。上記1(3)ア(ウ))及びFig.1、7A、7B、甲5の段落0016(襟、裾。上記1(4)ア(オ))及び図4(イ)の「襟のカットライン40A?40C」及び図4(ロ)の「裾のカットライン」、甲6の明細書15頁27行?16頁10行(上記1(5)ア(カ))、同書18頁7?9行(上記1(5)ア(ク))、Fig.6、9、甲11の2の段落0023、図4、6、7に記載されている。
したがって、相違点26は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(10)本件発明27について
本件発明27と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点27でも相違する。
《相違点27》
本件発明27は、「衣料がボトム衣料であり、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、ウェストもしくは裾の少なくとも一方を形成する」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点27について検討すると、伸縮性を有する経編地をボトム衣料の素材として用いることは周知の技術的事項である(例えば甲3の1の表紙及び裏表紙の写真、甲9の1)。また、「衣料がボトム衣料であり、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、ウェストもしくは裾の少なくとも一方を形成する」構成は、甲4の1の要約(上記1(3)ア(ア))、段落0075(上記1(3)ア(オ))及びFig.17、甲6の請求項30、31(上記1(5)ア(イ))、明細書16頁4?10行(上記1(5)ア(カ))、Fig.6、8、甲11の2の請求項14、段落0023、0025、図4、6に記載されている。
したがって、相違点27は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(11)本件発明28について
本件発明28と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点28でも相違する。
《相違点28》
本件発明28は、「衣料がボトム衣料であり、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、ウェストと裾の両方を形成する」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点28について検討すると、「衣料がボトム衣料であり、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、ウェストと裾の両方を形成する」構成は、甲4の1の要約(上記1(3)ア(ア))、段落0075(上記1(3)ア(オ))及びFig.17、甲6の明細書16頁4?10行(上記1(5)ア(カ))、Fig.6、甲11の2の段落0023、0025、図4、6に記載されている。
したがって、相違点28は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(12)本件発明29について
本件発明29と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点29でも相違する。
《相違点29》
本件発明29は、「衣料がブラジャー、もしくは水着あるいはレオタードのトップスであり、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、バック布の上縁又は下縁の少なくとも一方の縁を形成する」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点29について検討すると、「衣料がブラジャーであり、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、バック布の上縁又は下縁の少なくとも一方の縁を形成する」構成は、甲4の1の段落0049(上記1(3)ア(ウ))、0074(上記1(3)ア(オ))及びFig.1、7A、7B、9、甲6の請求項35(上記1(5)ア(イ))、明細書18頁1?9行(上記1(5)ア(ク))、Fig.9、甲11の2の請求項17、段落0026、図7に記載されている。
したがって、相違点29は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(13)本件発明30について
本件発明30と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点30でも相違する。
《相違点30》
本件発明30は、「衣料がブラジャー、もしくは水着あるいはレオタードのトップスであり、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、バック布の上縁及び下縁の両方の縁を形成している」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点30について検討すると、「衣料がブラジャーであり、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、バック布の上縁及び下縁の両方の縁を形成している」構成は、甲4の1の段落0049(上記1(3)ア(ウ))、0074(上記1(3)ア(オ))及びFig.1、7A、7B、9、甲6の請求項35(上記1(5)ア(イ))、明細書18頁1?9行(上記1(5)ア(ク))、Fig.9、甲11の2の請求項17、段落0026、図7に記載されている。
したがって、相違点30は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(14)本件発明31について
本件発明31と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、上記(10)で述べた相違点27及び次の相違点31でも相違する。
《相違点31》
本件発明31は、「部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、編み方向に対して、20?80度の角度で裁断されている」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点27は、上記(10)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点31について検討すると、「部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、編み方向に対して、20?80度の角度で裁断されている」構成は、甲2の図1の「首回りの開口部分14A」(上記1(1)ア(カ))、甲5の図4(イ)の「襟のカットライン40A?40C」(上記1(4)ア(キ))及び図5の「襟及び脇のカットライン」、甲6の請求項30(上記1(5)ア(イ))、明細書16頁17?25行(上記1(5)ア(キ)参照)及び図7、甲11の2の段落0011に記載されている。
したがって、相違点31は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(15)本件発明32について
本件発明32と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、上記(11)で述べた相違点28及び次の相違点32でも相違する。
《相違点32》
本件発明32は、「部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、共に編み方向に対して、20?80度の角度で裁断された縁である」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点28は、上記(11)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点32について検討すると、「部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、編み方向に対して、20?80度の角度で裁断されている」構成が、上記(14)で述べたとおり、甲2、甲5、甲6、甲11の2に記載されている。「部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁」を「共に」「編み方向に対して、20?80度の角度で裁断された縁」にすることは、甲2、甲5、甲6、甲11の2の記載事項から、当業者が容易に推考し得たことである。

(16)本件発明33について
本件発明33と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、上記(12)又は(13)で述べた相違点29又は30並びに次の相違点33でも相違する。
《相違点33》
本件発明33は、「バック布を形成する前記部片の衣料における前記縁始末不要な縁が、編み方向に対して10?90度の角度で裁断されている」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点29、30は、上記(12)、(13)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点33について検討すると、「縁始末不要な縁が、編み方向に対して10?90度の角度で裁断されている」構成が、上記(14)で述べたとおり、甲2、甲5、甲6、甲11の2に記載されている。
したがって、相違点33は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(17)本件発明34について
本件発明34と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、上記(12)又は(13)で述べた相違点29又は30並びに次の相違点34でも相違する。
《相違点34》
本件発明34は、「バック布を形成する前記部片の衣料における前記縁始末不要な縁が、編み方向に対して75?90度の角度で裁断されている」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点29、30は、上記(12)、(13)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点34について検討すると、「縁始末不要な縁が、編み方向に対して75?90度の角度で裁断されている」構成が、甲2の図1の「首回りの開口部分14A」(上記1(1)ア(カ))、甲5の図4(イ)の「襟のカットライン40A?40C」(上記1(4)ア(キ))、甲6の明細書16頁17?21行(裁断縁の裁断ラインの方向が鋭角。上記1(5)ア(キ))に記載されている。
したがって、相違点34は、これら記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(18)本件発明35について
本件発明35と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし17について上記した相違点に加え、次の相違点35でも相違する。また、本件発明35のうち、本件発明18?34を引用する発明は、上記相違点18?34でも相違する。
《相違点35》
本件発明35は、「部片を構成する前記非弾性糸と弾性糸とからなる地編組織に、更に柄糸となる非弾性糸がジャカード制御により編みこまれて、ジャカード柄模様が形成されている」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

相違点18?34は、上記(1)?(17)で述べたとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点35について検討すると、「ジャカードラッシェル編磯を用い、編地に柄出しして編成」することが甲6の請求項11に記載されているし(上記1(5)ア(イ))、「地編組織に、更に柄糸となる非弾性糸がジャカード制御により編みこまれて、ジャカード柄模様が形成されている」構成は、周知の技術的事項である(周知3?7)。相違点35は、甲6の記載又は周知の技術的事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(19)本件発明18?35の検討のまとめ
本件発明18?35は、当業者が容易に発明をすることができたものである。本件発明18?35について請求人が主張する無効理由4は、理由がある。

6.無効理由4の検討(4)-本件発明36?39について
(1)本件発明36?39の優先権主張日
本件発明36?39の構成要件である、本件特許の請求項36?39に記載された事項は、本件特許の優先権の基礎として主張された一方の特許出願である特願2003-369540号(甲1の3)の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項36?39に記載されている。しかし、本件特許の優先権の基礎として主張された他方の特許出願である特願2003-134586号(甲1の2)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、本件特許の請求項36?39に記載された事項が記載されていない。また、本件特許の請求項36?39記載された事項が、特願2003-134586号(甲1の2)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載事項を総合することにより導かれる技術的事項であるともいえない。したがって、特願2003-369540号(甲1の2)の出願日である平成15年5月13日は、本件発明36?39については、優先権主張が認められない。本件発明36?39についての優先権主張日は、特願2003-369540号(甲1の3)の出願日である平成15年10月29日である。

(2)本件発明36について
本件発明36と甲号発明とを対比すると、上記5(18)で述べた相違点に加え、次の相違点36でも相違する。
《相違点36》
本件発明36は、「地編組織を形成する弾性糸が1×1トリコット組織であり、地編組織を形成する非弾性糸とジャカード制御される柄糸となる非弾性糸の少なくともいずれか一方が、弾性糸と同行する1×1トリコット組織となっており、柄糸においてジャカード柄模様を形成する部分が、1×1トリコット組織以外の組織となっている」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

上記5(18)で述べた相違点は、上記5(18)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点36について検討すると、「地編組織を形成する弾性糸が1×1トリコット組織であり、地編組織を形成する非弾性糸が、弾性糸と同行する1×1トリコット組織となって」いる構成は、甲3に記載されているし、「柄糸においてジャカード柄模様を形成する部分が、1×1トリコット組織以外の組織となっている」構成は、周知の技術的事項である(周知3?7)。相違点36は、甲3の記載及び周知の技術的事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(3)本件発明37について
本件発明37と甲号発明とを対比すると、上記5(18)で述べた相違点に加え、次の相違点37でも相違する。
《相違点37》
本件発明37は、「地編組織を形成する弾性糸が1×1トリコット組織であり、地編組織を形成する非弾性糸とジャカード制御される柄糸となる非弾性糸のいずれか一方が、弾性糸と同行する1×1トリコット組織であり、他方の非弾性糸が、弾性糸と逆行する1×1トリコット組織であり、柄糸においてジャカード柄模様を形成する部分が、1×1トリコット組織以外の組織となっている」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

上記5(18)で述べた相違点は、上記5(18)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点37について検討すると、「地編組織を形成する弾性糸が1×1トリコット組織であり、地編組織を形成する非弾性糸が、弾性糸と同行する1×1トリコット組織となって」いる構成は、甲3に記載されている。ジャカード制御される柄糸を種々の組織とすることは、周知の技術的事項である(甲6の請求項11、周知3?7)。「他方の非弾性糸が、弾性糸と逆行する1×1トリコット組織であり、柄糸においてジャカード柄模様を形成する部分が、1×1トリコット組織以外の組織となっている」構成とすることは、所望する柄や、生地の特性を考慮して、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。

(4)本件発明38について
本件発明38と甲号発明とを対比すると、上記5(18)で述べた相違点に加え、次の相違点38でも相違する。
《相違点38》
本件発明38は、「地編組織を形成する非弾性糸が地編組織を形成する弾性糸と逆行する1×1トリコット組織であり、ジャカード制御される柄糸となる非弾性糸が、弾性糸と同行する組織で、柄糸においてジャカード柄模様を形成する部分が、1×1トリコット組織以外の組織となっている」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

上記5(18)で述べた相違点は、上記5(18)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点38について検討すると、「地編組織を形成する非弾性糸が地編組織を形成する弾性糸と逆行する1×1トリコット組織」である構成は、甲13、周知1、2に記載されている(上記1(9)(オ)、1(10)イ(ウ)、1(10)ウ(ウ))。ジャカード制御される柄糸を種々の組織とすることは、周知の技術的事項である(甲6の請求項11、周知3?7)。「ジャカード制御される柄糸となる非弾性糸が、弾性糸と同行する組織で、柄糸においてジャカード柄模様を形成する部分が、1×1トリコット組織以外の組織となっている」構成とすることは、所望する柄や、生地の特性を考慮して、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。

(5)本件発明39について
本件発明39と甲号発明とを対比すると、上記(2)?(4)及び上記5(18)で述べた相違点に加え、次の相違点39でも相違する。
《相違点39》
本件発明39は、「部片」が、「(A-1)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に閉じ目である経編地、及び(A-2)非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸のいずれか一方が閉じ目、他方が開き目である経編地、からなる群から選ばれた少なくとも1種の素材からなる部片」と「請求項35、36、37、38のいずれかに記載のジャカード柄模様が形成されている部片」からなる素材を「接合して積層した部片からなる」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

上記(2)?(4)及び上記5(18)で述べた相違点は、上記(2)?(4)及び上記5(18)で検討したとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点39について検討すると、(A-1)、(A-2)の経編地は、甲6の請求項2、3、甲11の2の段等0015に記載されている。甲4の1には、2つの異なる生地を接合することが記載されている。相違点39に係る本件発明39の構成とすることは、所望する柄や生地の特性を考慮して、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。

(6)本件発明36?39の検討のまとめ
本件発明36?39は、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものである。本件発明36?39について請求人が主張する無効理由4は、理由がある。

7.無効理由4の検討(5)-本件発明40?42について
(1)本件発明40について
本件発明40は、「バック布が、請求項13?17、39のいずれかに記載の部片を用いたバック布である請求項29、30、33、34のいずれかに記載の衣料」である。
請求項13?17、39に記載の部片は、上記4(2)?(6)、6(5)で検討したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、請求項29、30、33又は34に記載のバック布は、上記5(12)、(13)、(13)、(16)、(17)で検討したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものである。本件発明29、30、33又は34のバック布の部片として、本件発明13?17、39の部片を用いることは、所望する外観や、生地の特性を考慮して、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。

(2)本件発明41について
本件発明41と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし39について上記した相違点に加え、次の相違点41でも相違する。
《相違点41》
本件発明41は、「部片が、弾性糸による直線状の伸縮パワーの切替え部位を有する」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

本件発明1ないし39について上記した相違点は、それらの検討箇所で述べたとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点41について検討すると、「部片が、弾性糸による伸縮パワーの切替え部位を有する」ことは、甲13の段落0076、周知3の請求項1に記載されており、「伸縮パワーの切替え部位」が「直線状」であることは、甲13の段落0093?0098及び図15?17の符号24f、24m、24n、周知3の段落0007?0008に記載されている。
「部片が、弾性糸による直線状の伸縮パワーの切替え部位を有する」構成とすることは、甲13、周知3の記載事項から当業者が容易に推考し得たことである。

(3)本件発明42について
本件発明42と甲号発明とを対比すると、本件発明1ないし39及び41について上記した相違点に加え、次の相違点42でも相違する。
《相違点42》
本件発明42は、「身体に密着する衣料である」のに対し、甲号発明ではそのように特定していない点。

本件発明1ないし39及び41について上記した相違点は、それらの検討箇所で述べたとおり、当業者が容易に推考し得たことである。
相違点42について検討すると、「身体に密着する衣料」は、甲3、甲4の1、甲6、甲11の2、甲13、周知1?7に記載されており、周知の技術的事項である。「身体に密着する衣料」とすることは、当業者が容易に推考し得たことである。

(4)本件発明40?42の検討のまとめ
本件発明40?42は、当業者が容易に発明をすることができたものである。本件発明40?42について請求人が主張する無効理由4は、理由がある。

第6.むすび
以上のとおり、本件発明1に対して請求人が主張する無効理由3、及び本件発明2ないし42に対して請求人が主張する無効理由4は、いずれも理由がある。したがって、他の無効理由について検討するまでもなく、本件発明1ないし42についての特許は、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定に従って、結論記載のとおりの負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-10 
結審通知日 2016-02-15 
審決日 2016-02-29 
出願番号 特願2005-504485(P2005-504485)
審決分類 P 1 113・ 113- Z (A41C)
P 1 113・ 121- Z (A41C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 蓮井 雅之
栗林 敏彦
登録日 2005-04-28 
登録番号 特許第3672920号(P3672920)
発明の名称 衣料  
代理人 中村 哲士  
代理人 夫 世進  
代理人 前澤 龍  
代理人 富田 克幸  
代理人 蔦田 璋子  
代理人 有近 康臣  
代理人 蔦田 正人  

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