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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1313715
審判番号 不服2014-22138  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-31 
確定日 2016-05-13 
事件の表示 特願2011-540300「光発電装置及び光発電装置で使用する導波路」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月17日国際公開、WO2010/067296、平成24年 5月24日国内公表、特表2012-511827、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、2009年(平成21年)12月7日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2008年12月12日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成23年6月14日に手続補正がなされ、平成25年10月24日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月5日に手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年6月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月31日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされ、平成26年12月10日付けで前置報告がなされ、平成27年10月29日付けで当審より拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成28年1月28日付けで意見書が提出されるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、同年3月16日付けで請求人からファクシミリによる説明が送付されたものである。

第2 本願発明
1 本願の請求項1ないし12に係る発明は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれを「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
光発電装置で使用する導波路であり、前記導波路が、
透明マトリックスであって、
(i)前記マトリックス内に分散される無機発光粒子及び/又は(ii)少なくとも前記マトリックスの一方側に設けられる無機発光材料を含む透明マトリックスを含み、
前記無機発光材料のストークスシフトが50nm以上であり、
前記無機発光材料が、吸収線幅が50nm以上であり、300nmから1420nmの領域内の光を吸収する第一の種と、発光線幅が20nm以下であり、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記無機発光材料の前記第一の種が300nmから1420nmの領域内の光を吸収し、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて、前記無機発光材料の前記第二の種が前記第一の種の吸収よりもより大きな波長で発光し、前記大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じさせる、導波路。
【請求項2】
請求項1に記載の導波路であり、前記吸収線幅が100nm以上であり、前記発光線幅が10nm以下であり、前記ストークスシフトが100nm以上である、導波路。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の導波路であり、前記導波路がさらに、前記透明マトリックスの少なくとも一方側に設けられる干渉フィルタを含み、前記干渉フィルタが、(i)前記無機発光材料により吸収される電磁波領域内に、光を前記導波路内に通過させ、及び(ii)前記無機発光材料から放射される前記電磁波領域内の光を選択的に反射する、導波路。
【請求項4】
請求項1に記載の導波路であり、前記透明マトリックスが非結晶性材料を含み、及び前記無機発光材料が結晶性材料を含む、導波路。
【請求項5】
請求項1に記載の導波路であり、前記無機発光材料が無機燐光材料を含む、導波路。
【請求項6】
請求項5に記載の導波路であり、前記無機燐光材料が、第一の及び第二の種を含む無機ホスト材料を含み、前記第一の種が、Ce^(3+)、Eu^(2+)及びYb^(2+)から選択されるイオンであり、前記第二の種が、希土類金属及び遷移金属イオンから選択される、導波路。
【請求項7】
請求項6に記載の導波路であり、前記無機燐光材料がGd_(3)Ga_(5)O_(12);Ce,Crを含む、導波路。
【請求項8】
請求項1に記載の導波路であり、前記無機発光材料が、無機蛍光材料を含む、導波路。
【請求項9】
請求項8に記載の導波路であり、前記無機蛍光材料が、第一の種と第二の種を含む無機ホスト材料を含み、前記無機ホスト材料中の前記第一の種の濃度が、前記第二の種の濃度よりも大きく、かつ前記第二の種が前記無機ホスト材料中に0.5モル%以下である、導波路。
【請求項10】
請求項8に記載の導波路であり、前記無機蛍光材料がCaAlSiN_(3);Ce,Euを含む、導波路。
【請求項11】
請求項1に記載の導波路であり、前記第一及び第二の種が、独立して、量子ドット、量子ロッド及び量子コア/シェル粒子から選択される種を含む、導波路。
【請求項12】
光発電電池;及び
請求項1乃至11のうちいずれか一項に記載の導波路を有する光発電装置であり:
前記導波路が前記光発電電池と、使用の際に、前記無機発光材料から放射される光の少なくとも一部が前記光発電電池を通って前記光発電電池に電圧を生じるように関連付けされる、光発電装置。」

2 なお、本件補正で補正される前の特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される発明(以下、それぞれを「本件補正前発明1」ないし「本件補正前発明13」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
光発電装置であり;
光発電電池;及び
透明マトリックスを含む導波路であって、
前記透明マトリックスが、(i)前記マトリックス中に分散された無機発光材料及び/又は(ii)前記マトリックスの少なくとも一方側に設けられた無機発光材料を含む、透明マトリックスを含む導波路を含み、
前記導波路が前記光発電電池と、使用の際に、前記無機発光材料から放射される光の少なくとも一部が前記光発電電池を通って前記電池に電圧を生じるように関連付けされ、
前記無機発光材料が、前記UV領域、前記可視領域及び前記赤外領域内で最大吸収ピークを持ち、吸収線幅が50nm以上であり、発光線幅が20nm以下であり、及びストークスシフトが50nm以上であり、
前記無機発光材料が、300nmから1420nmの領域内の光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて、前記無機発光材料が300nmから1420nmの領域内の光を吸収し、かつより大きな波長で発光し、前記より大きな波長の光が、前記光発電電池に電圧を生じる、
光発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光発電装置であり、前記無機発光材料が、100nm以上の吸収線幅と、10nm以下の発光線幅及び100nm以上のストークスシフトを持つ、光発電装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の光発電装置であり、前記導波路がさらに、前記透明マトリックスの少なくとも一方側に設けられる干渉フィルタを含み、前記干渉フィルタが、(i)前記無機発光材料により吸収される電磁波領域内に、光を前記導波路内に通過させ、及び(ii)前記無機発光材料から放射される前記電磁波領域内の光を選択的に反射する、光発電装置、
【請求項4】
請求項1に記載の光発電装置であり、前記透明マトリックスが非結晶性材料を含み、及び前記無機発光材料が結晶性材料を含む、光発電装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光発電装置であり、先記無機発光材料が無機燐光材料を含む、光発電装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光発電装置であり、前記無機燐光材料が、第一の及び第二の種を含む無機ホスト材料を含み、前記第一の種が、Ce^(3+)、Eu^(2+)及びYb^(2+)から選択されるイオンであり、前記第二の種が、希土類金属及び遷移金属イオンから選択される、発電装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光発電装置であり、前記無機燐光材料がGd_(3)Ga_(5)O_(12);Ce,Crを含む、発電装置。
【請求項8】
請求項1に記載の発電装置であり、前記無機発光材料が、無機蛍光材料を含む、発電装置。
【請求項9】
請求項8に記載の発電装置であり、前記無機蛍光材料が、第一の種と第二の種を含む無機ホスト材料を含み、前記無機ホスト材料中の前記第一の種の濃度が、前記第二の濃度よりも大きく、かつ前記第二の種が前記無機ホスト材料中に0.5モル%以下である、発電装置。
【請求項10】
請求項8に記載の発電装置であり、前記無機蛍光材料がCaAlSiN^(3);Ce,Euを含む、発電装置。
【請求項11】
請求項1に記載の発電装置であり、前記第一及び第二の種が、独立して、量子ドット、量子ロッド及び量子コア/シェル粒子から選択される種を含む、発電装置。
【請求項12】
光発電装置で使用する導波路であり、前記導波路が、
透明マトリックスであって、
(i)前記マトリックス内に分散される無機発光粒子及び/又は(ii)少なくとも先記マトリックスの一方側に設けられる無機発光材料を含む透明マトリックスを含み、
前記無機発光材料が、前記UV領域、前記可視領域及び前記赤外領域内で最大吸収ピークを持ち、吸収線幅が50nm以上であり、発光線幅が20nm以下であり、及びストークスシフトが50nm以上であり、
前記無機発光材料が、300nmから1420nmの領域内の光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて、前記無機発光材料が300nmから1420nmの領域内の光を吸収し、かつより大きな波長で発光し、前記より大きな波長の光が、前記光発電電池に電圧を生じる、
導波路。
【請求項13】
請求項12に記載の導波路であり、前記導波路が、請求項2乃至13のいずれか1項に記載される導波路である、導波路、」

3 「本願発明1」、「本件補正前発明1」及び「本件補正前発明12」における「エネルギ移動」との記載について
(1)「エネルギ移動」に関して、本願の発明の詳細な説明には、下記の記載がある。
「【0032】
前記無機発光材料は無機蛍光材料又は無機燐光材料を含み、無機燐光材料が好ましい。無機燐光材料は当該技術分野の熟練者に知られている。これには、ある特定の波長の光を吸収し、量子力学的に禁止される電子遷移、例えばスピン又はパリティ禁止遷移を通じて再び他の波長で発光する、無機発光材料が含まれる。燐光材料の発光持続時間は一般的に約1μ秒又はそれより長い。特定の材料、例えばEu^(2+)及び/又はYb^(2+)でドープされた多くの材料で、発光が許容光学遷移であるにもかかわらず、発光がまた遅いものがある。いくつかの燐光材料では、発光は数秒又は数分でさえ持続する。」
「【0037】
前記無機発光材料は、吸収及び発光が前記材料中での異なるイオンで起こる無機材料も含む。前記無機発光材料は、無機ホスト材料を含み、そこで吸収が起こる第一のイオン及びそこで発光が起こる第二のイオンを含む。かかる材料において、前記第一のイオンから前記第二のイオンへのエネルギ移動が、前記第一のイオンにより入射光が吸収された後で起こり、それにより前記第二のイオンが励起され光を放射することができるようになる。前記第一のイオンは好ましくは、電磁波のUV及び/又は可視及び/又は赤外領域(場合により300nmから1420nmの領域)を吸収する。前記第一のイオンは、Ce^(3+)、Eu^(2+)及びYb^(2+)から選択され得る。前記第二のイオンは、希土類金属イオンであってよく、Pr^(3+)、Er^(3+)、Nd^(3+)、Ho^(3+),Yb^(3+),Tm^(3+)、Sm^(3+)、Dy^(3+)、Mn^(2+)、Yb^(2+)及びEu^(2+)が挙げられる。前記第二のイオンは、遷移金属イオンであってよく、限定されるものではないが、d^(3)遷移金属イオンである、V^(2+)、Cr^(3+)、Mn^(4+)及びFe^(5+)から選択され得る。
【0038】
前記第二のイオンでの発光は上で説明したように禁止遷移である。吸収が起こる第一のイオン及び発光が起こる第二のイオンでドープされた無機ホスト材料を含む前記無機発光材料は、無機燐光材料であってよい。かかる燐光性無機材料には、限定されないが、Gd_(3)GaO_(12);Ce,Crが挙げられる。ここでGd_(3)GaO_(12)がホスト材料であり、Ceはそのカチオン形で第一のイオンであり、Crはそのカチオン形で第二のイオンである。この材料は、300nmから500nmの範囲で吸収し(Ce^(3+)による許容光学吸収)、かつ730nmで発光する(Cr^(3+)への移動を経て、この遷移は量子力学的に禁止遷移である)。このような材料は有利である。なぜなら発光された光子の再吸収は減少されるからである。」

(2)平成28年1月28日付けで意見書では、「エネルギ移動」に関して、下記の説明がなされている。
「3-3)本願発明と引用文献の発明との対比
引用文献1は、2種以上の量子ドットにおけるエネルギ移動を開示していない。引用文献1では、拒絶理由通知書の『2 引用刊行物及び引用発明 オ』で指摘されているように、『波長λ_(1)の光を放出する量子ドットの波長λ_(1)は、波長λ_(2)の光を放出する量子ドットの吸収波長及び波長λ_(3)の光を放出する量子ドットの吸収波長と重なり、波長λ_(2)の光を放出する量子ドットの波長λ_(2)は、波長λ_(3)の光を放出する量子ドットの吸収波長と重なる』ことにより、すなわち、或る量子ドットが光を放出し、放出された光を次の量子ドットが吸収して、光を更に放出している。本願発明では、第一の種が光を吸収することによる第二の種へのエネルギ移動により第二の種が光を放出するのであって、第一の種が光を放出するものではない。本願発明では、第一の種が光を吸収し、第二の種を共鳴させるようなエネルギ移動が起こり、第二の種で光を放射するものである。『エネルギ移動』は、当業者であれば理解できるように、電磁波の放出によらず、電子の共鳴によりエネルギが移動するものである。
引用文献2においても、エネルギ移動により第二の種で光を放射することについては開示も示唆もない。引用文献2では、蓄光体からの光が蛍光体に吸収されて、蛍光体から光を発するのであって、エネルギ移動を利用しているわけではない。」

(3)平成28年3月16日付け請求人提出のファクシミリでは、「エネルギ移動」に関して、下記の説明がなされている。
「本願明細書に記載の無機発光材料における『エネルギ移動』は、光吸収によるものではなく、共鳴によるものかどうかについて、以下のように考察する。

先ず、本願明細書において、『エネルギ移動』については、段落0037『・・省略(上記(1)【0037】参照)・・』との記載等がある。この記載から明らかなように、第一のイオンが入射光を吸収し、第一のイオンから第二のイオンへのエネルギ移動が起こり、結果として、第二のイオンが励起されて光を放射することが起こる。
例えば、段落0037には『・・省略(上記(1)【0037】参照)・・』との具体例が記載されている。
また、禁止遷移に関して、段落0032に『・・省略(上記(1)【0032】参照)・・』との記載。段落0038に『・・省略(上記(1)【0038】参照)・・』との記載がある。・・・
これらの文献からも、エネルギ移動は、光吸収によるものではなく、共鳴によるものであることは、明らかである。」(同請求人提出のファクシミリ2頁1行ないし3頁最下行)

(4)上記(1)ないし(3)を踏まえると、「本願発明1」、「本件補正前発明1」及び「本件補正前発明12」における「エネルギ移動」は、光吸収によるものではなく、共鳴によるものであることを意味するものと解される。

第3 原査定の理由について
1 原査定の拒絶理由の概要
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1-14
・引用文献1-4
備考:1.請求項1について
引用文献1の段落【0042】-【0046】,【0102】-【0121】,【図4】-【図8】などには,光起電力電池13と,発光層1及び導波路2を含む光学ラミネート,発光層1及び導波路コア2を含む光学ファイバー,又は,発光コア1及び導波路2を含む光学ファイバーであって,前記発光層1又は前記発光コア1が光励起性発光分子3を含む光学ラミネート又は光学ファイバーと,光励起性発光材料を励起することができる放射に対して殆ど透過性であることが必要とされ,同時に前記光励起性発光材料によって放出される放射を効果的に反射する波長選択性ミラー7,8とを含み,前記光学ラミネート又は前記光学ファイバーが前記光起電力電池13と,使用の際に,前記光励起性発光分子3からの放射5が前記光起電力電池13を通って前記電池13に電圧を生じるように関連付けされる,光起電力装置が記載されている。また,段落【0009】,【0067】などには,光励起性発光材料について,放出する波長と吸収する波長との間において重なりが殆ど無いか,または全く無いように保証する配慮が不可欠であることが記載され,段落【0085】には,最適な光励起性発光材料は,太陽のスペクトルの殆どをカバーする広い吸収域と,ある程度長い波長を持つ狭い発光域とを持つことが記載されている。
請求項1に係る発明と引用文献1記載の発明とを対比すると,前者は無機発光材料を用いるのに対し,後者について,引用文献1には無機系の光励起性発光材料を用いることは記載されていない点(相違点1),前者は,吸収線幅,発光線幅,ストークスシフトが数値限定されているのに対し,後者は,それらのいずれも数値限定されていない点(相違点2)で相違する。
そこで,上記相違点1について検討するに,光起電力装置に用いる光励起性発光材料として無機系のものは周知である(引用文献2-4)ので,引用文献1記載の発明において,無機系の光励起性発光材料を用いることは,当業者が容易に想到し得ることである。
また,上記相違点2について検討するに,引用文献1の段落【0009】,【0067】,【0085】の記載に接した当業者であれば,光励起性発光材料について,吸収域を広く,ストークスシフトを大きくすることは,容易に想到し得ることである。また,光励起性発光材料の発光域を狭くすることは,段落【0085】の記載に基づいて,当業者が容易に想到し得ることであるし,用いる波長選択性ミラーの波長選択性を考慮して,発光域を最適化することは,当業者が適宜なし得ることにすぎず,発光域を狭くすることに格別の困難性を認められないともいえる。そして,吸収線幅,発光線幅,ストークスシフトのそれぞれを,請求項1記載の数値限定を満たすようにすることは,単なる設計事項にすぎない。

2.請求項2-4,13-14について
いずれも引用文献1-4のいずれかに記載された事項か,そうでなければ,周知事項,慣用事項,又は,単なる設計事項にすぎない。

3.請求項5-12について
引用文献1の段落【0016】,【0067】などには,2つ以上の異なる光励起性発光材料を組み合わせることがされている。また,段落【0012】には,蛍光材料,燐光材料が使用できることが記載されており,請求項8,11に記載される材料は周知である。また,引用文献3-4には,量子ドットを使用することが記載されている。
してみると,請求項5-12に記載される事項にも格別の点は認められない。

よって,請求項1-14に係る発明は,引用文献1-4記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得るものである。
引 用 文 献 等 一 覧
1.特表2008-536953号公報
2.羽根義,LSC(螢光形太陽光集光板)を用いた太陽エネルギーの波長別有効利用システムに関する研究(その1),清水建設研究報告,1988年10月,第48号,p.97-109
3.特表2002-539614号公報
4.特開2006-216560号公報」

2 原査定の拒絶査定の概要
「この出願については,平成25年10月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
引用文献1の段落【0067】には,「光励起性発光成分の組み合わせが使用される場合、…、強い重なりがある場合は、この組み合わせはカスケードとして機能するべきで、これは一方の光励起性発光材料によって放出される放射および他方の成分によって吸収される放射が後者の成分を発光させる」と記載されており,請求項1に記載された「光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて」,「光を吸収し、かつより大きな波長で発光し、前記より大きな波長の光が、前記光発電電池に電圧を生じる」点は,引用文献1に記載されていると認められる。また,段落【0085】から,吸収する光の波長領域を広くする点も,引用文献1に記載されていると認められる。
一方,光起電力装置に用いる光励起性発光材料として無機系のものは周知である(引用文献2-4のほか,引用文献5-7も参照されたい。特に,引用文献6には,光を吸収する第一の種Nd^(3+)と,前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種Yb^(3+)を含み,前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて,光を吸収し,かつより大きな波長で発光するものが記載され,引用文献7には,Gd_(3)Ga_(5)O_(12):Cr,Ceが記載されている。)。また,引用文献3の段落【0006】,【0009】には,量子ドットについて,有機色素に対する良好な代替物となることが記載されている。さらに,特に段落【0009】に記載された有機色素における日光の中での劣化という欠点に対して,無機発光材料の方が有利であることは,当業者であれば容易に気付くと認められる(引用文献6の第178頁右欄第15-26行も参照されたい。)。
してみると,引用文献1記載の発明において,光励起性発光材料として無機系のものを採用することは,当業者が適宜なし得ることにすぎない。そして,引用文献1の段落【0085】に基づいて吸収する光の波長領域を広くして「300nmから1420nmの領域内」とすることは,単なる設計事項にすぎない。
よって,請求項1に係る発明は,依然として,進歩性を有しない。
また,請求項2-13に係る発明も,依然として,進歩性を有しない。

なお,本願発明は,引用文献3を主引例としても,進歩性を有しない。
出願人は,平成26年 2月 5日付け意見書において,「しかし請求項1,12では吸収線幅と発光線幅が特定されているにもかかわらず、刊行物3は吸収線幅と発光線幅について特定していません。本願発明と刊行物3に記載の発明との具体的な差異は、(i)50nm以上の吸収線幅、(ii)20nm以下の発光線幅、(iii)50nm以上のストークスシフト、及び、(iv)300nm乃至1420nmの領域内で光を吸収する第一の種と、前記第一種が吸収する波長よりも長い波長で光を吸収する第二種、及び、前記第一の種と第二の種との間でのエネルギー移動であります。上記(i)乃至(iv)は結果として、本願発明は、発光効率の向上、より具体的には発光材料による光子の吸収が減少します。」と主張するが,引用文献3記載の発明において,記載の上記(i)乃至(iv)を満足させることは,引用文献1の段落【0009】,【0067】,【0085】の開示に基づいて,当業者が容易に想到し得ることである。・・・

引用文献等一覧
1.特表2008-536953号公報
2.羽根義,LSC(螢光形太陽光集光板)を用いた太陽エネルギーの波長別有効利用システムに関する研究(その1),清水建設研究報告,1988年10月,第48号,p.97-109
3.特表2002-539614号公報
4.特開2006-216560号公報
5.米国特許出願公開第2008/0149165号明細書
6.R.REISFELD, et al.,Nd^(3+) AND Yb^(3+) GERMANATE AND TELLURITE GLASSES FOR FLUORESCENT SOLAR ENERGY COLLECTORS,CHEMICAL PHYSICS LETTERS,1981年 5月15日,Vol.80, No.1,p.178-183
7.W.Rossner, et al.,THE CONVERSION OF HIGH ENERGY RADIATION TO VISIBLE LIGHT BY LUMINESCENT CERAMICS,IEEE TRANSACTIONS ON NUCLEAR SCIENCE,1993年 8月,Vol.40, No.4,p.376-379」

3 原査定の理由についての判断
(1)刊行物の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の優先日前に頒布された特表2008-536953号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(ア)「【0001】
発明の技術分野
本発明は発光体および特に光学発光集光装置、例えば発光太陽集光装置におけるこのような発光体の応用に関する。」

(イ)「【0009】
この発光体を使用して入射光をより長い波長に変換できるであろう。放出光が発光体の表面に関して比較的小さな角度で放射される場合(比較的大きなプレチルト角を要する)、放出された光は前記表面に平行な平面内で、例えば出口または光起電力装置まで効率よく輸送される。したがって本フィルムは独立の導波路無しに、それ自体で例えばLSCに適用することができる。この特定の場合において、大きなストークスシフトおよび/または吸収スペクトルと発光スペクトルの間の重なりが小さい光励起性発光材料を用いて、再吸収現象による大きな光のロスを避けることは非常に有利である。」

(ウ)「【0012】
定義
ここで用いた用語『発光(luminescent)』は、十分な量子エネルギーの光またはその他の放射を吸収した際に光を放出する材料の能力を言う。この用語は蛍光と燐光の両方を含む。」

(エ)「【0016】
ここで用いた用語『光励起性発光材料(photoluminescent material)』は、光励起性発光が可能なイオンを含む原子または分子を言う。用語『光励起性発光材料』は、2つ以上の異なる光励起性発光成分の組み合わせ、例えば2つ以上の異なる光励起性発光分子の組み合わせも包含する。用語『光励起性発光材料』は、蛍光分子、蛍光ポリマーおよび/またはコポリマーを含むホスト-ゲストシステムも包含する。・・・
【0025】
ここで用いた用語『導波路』は、光に対して透過性があり、入力から所望の出力まで光放射を閉じ込める光学要素を言う。」

(オ)「【0042】
図4は、発光層1および導波路2を含む光学ラミネートの断面を描写する。ラミネートはさらに、2つの波長選択性かつ偏波選択性の反射性コレステリック層7および8と、反射性ミラー9とを含む。矢印4で表される光放射は左回りコレステリック層8および右回りコレステリック層7を通ってラミネートに入り、発光層1に到達する。発光層1内で、或るプレチルトに配列されている光励起性発光分子3は、入射する放射4によって励起され矢印5で表される光放射を放出する。放出された放射5の大部分は導波路2に入り、出口10および11に到達するまで内部で反射される。コレステリック層7および8は、放出された放射5のせいぜい少しの部分しかラミネートから漏れないことを保証する。これらの波長選択性ミラー7および8がともに発光層1に再び入る放出された放射を効率的に反射するためである。ミラー層9は光放射4および放出された放射5を反射して導波路内に戻す。
【0043】
図5は、ミラー層9が2つのコレステリック層9aおよび9bで置き換えられている以外は図4に示したものと同一の光学ラミネートの断面を示す。放出された放射5に対して殆ど反射性であるが、光励起性発光染料分子3によって吸収されない光放射12に対しては透過性であるコレステリック層7、8、9aおよび9bの組み合わせを用いることによって、光放射12が全ラミネートを通って進むことを保証できる。この特定のラミネートを、入射太陽光の一部を選択的に集光する一方で他の部分を窓ガラスを通して進ませる窓ガラスとして有利に用いてもよい。先述したように、2つの層9aおよび9bの代わりにより多いまたは少ない層を使用することができる。
【0044】
図6は、発光層1および導波路2を含む光学ラミネートの断面を描写する。ラミネートはさらに複数のサブレイヤー7aないし7kを含むポリマー性積層7と、反射性ミラー層9とを含む。矢印4で表される光放射はポリマー性積層7を通ってラミネートに入り、発光層1に到達する。発光層1内でチルト配列された光励起性発光分子3が入射する放射4によって励起され、矢印5で描写される光放射を放出する。放出された放射5の大部分は導波路に入り、出口10に到達するまで内部で反射される。ポリマー性積層7は放出される放射5のせいぜい少しの部分しかラミネートから漏れないことを保証する。このポリマー性積層7が発光層1に再び入る放出された放射を効率的に反射するためである。ミラー層9は光放射4および放出された放射5を反射して導波路2内に戻す。出口11を含む光学ラミネートの3つの面も反射性ミラー被膜9を具備し、光放射4および放出される放射5の両方を反射して導波路2内に戻す。したがって、実際光学ラミネートから放出された放射の出口は、光起電力電池13に光学的に接続されている出口10のみである。
【0045】
図7は、発光層1および導波路コア2を含む光学ファイバーの断面を描写する。ラミネートはさらに、2つの波長選択性かつ偏波選択性の反射性コレステリック層7および8を含む。矢印4で表される光放射は左回りコレステリック層8および右回りコレステリック層7を通ってラミネートに入り、発光層1に到達する。発光層1内で、プレチルト配列された光励起性発光分子3は、入射する放射4によって励起され矢印5で表される光放射を放出する。放出された放射5の大部分は導波路2に入り、出口10に到達するまで内部で反射される。コレステリック層7および8は、放出される放射5のせいぜい少しの部分しか光学ファイバーから漏れないことを保証する。これらの波長選択性ミラー7および8がともに発光層1に再び入る放出された放射を効率的に反射するためである。
【0046】
図8は、発光コア1および導波路2を含む光学ファイバーの断面を描写する。ラミネートはさらに、2つの波長選択性かつ偏波選択性の反射性コレステリック層7および8を含む。矢印4で表される光放射は左回りコレステリック層8および右回りコレステリック層7を通ってラミネートに入り、発光コア1に到達する。発光層1内でプレチルト配列された光励起性発光分子3は、入射する放射4によって励起され矢印5で表される光放射を放出する。放出された放射5の大部分は導波路2に入り、そこで出口10に到達するまで内部で反射される。コレステリック層7および8は、放出された放射5のせいぜい少しの部分しか光学ファイバーから漏れないことを保証する。これらの波長選択性ミラー7および8がともに導波路2の外壁に当る放出された放射を効率的に反射するためである。」

(カ)「【0067】
本発光体の配向された光励起性発光材料は単一の光励起性発光成分で構成されていてもよく、または光励起性発光成分の混合物を含んでいてもよい。各々が異なる波長の光放射を吸収する光励起性発光成分の組み合わせを用いることは利点があるだろう。したがって好適な光励起性発光成分を選択することによって、本発光体に含まれる光励起性発光材料が光放射の広いバンド幅、例えば太陽放射スペクトルの大部分を吸収することが保証され得る。本発光体が複数の層を含む場合、異なる光励起性発光材料を異なる層に適用することは利点があるだろう。したがって、光集光効率の見地から本目的の性能は最大化されるだろう。当然、光励起性発光成分の組み合わせが使用される場合、この光励起性発光成分の組み合わせが放出する波長と吸収する波長との間において重なりが殆ど無いか、または全く無いように保証する配慮が不可欠であり、強い重なりがある場合は、この組み合わせはカスケードとして機能するべきで、これは一方の光励起性発光材料によって放出される放射および他方の成分によって吸収される放射が後者の成分を発光させることを意味する。・・・
【0069】
二色光励起性発光材料は本発光体での使用に特に好適である。好ましい実施形態によれば、配向された光励起性発光材料は有機および/またはポリマー性光励起性発光染料を含む。ここで用いた用語『光励起性発光染料』は、自身で発色する分子であって、したがって可視スペクトル、可能ならば紫外スペクトルの光(100?800nmの範囲の波長)を吸収するが、普通の染料と対照的に、吸収したエネルギーを主にスペクトルの可視領域で放出されるより長い波長の蛍光に変換する。光励起性発光染料は高い量子収率、良好な安定性を持ち、高度に精製されているべきである。通常、染料は10-1?10-5Molarの濃度で存在する。本発明に従って好適に用いることができる典型的な有機光励起性発光染料の例は、(限定されないが)置換されたピラン類(例えばDCM)、クマリン類(例えばクマリン30)、ローダミン類(例えばローダミンB)、Lumogen(BASF(登録商標)の商標)シリーズ、ペリレン誘導体、Exciton(登録商標)LDSシリーズ、ナイルブルー、ナイルレッド、DODCI、オキサジン類、ピリジン類、『スチリル』シリーズ(Lambdachrome(登録商標))、ジオキサジン類、ナフタルイミド類、チアジン類、およびスチルベン類を含む。」

(キ)「【0085】
本発明に従って用いられる光励起性発光材料は、典型的に100nm?2500nmの範囲に波長を持つ光放射を放出する。好ましくは光励起性発光材料は250?1500nm、より好ましくは400?1000nmの範囲の放射を放出する。多くの応用にとって最適な光励起性発光材料は、太陽のスペクトルの殆どをカバーする広い吸収域と、ある程度長い波長を持つ狭い発光域とを持つ。したがって、光励起性発光材料は入射太陽放射を吸収し、それを他の波長で放出する。本発光体において用いられる光励起性発光材料は800nmを下回る、好ましくは700nmを下回る、最も好ましくは600nmを下回る吸収極大を持つ吸収曲線を有する。特に好ましい実施形態によれば、発光体は500?600nmの光を吸収し、より長い波長で光を放出する。」

(ク)「【0102】
本発明の光学ラミネートおよびファイバーが入射の光放射を集光できる効率は、とりわけ放出された放射のトラップ効率に依存している。このパラメータは光励起性発光材料によって放出された電磁放射を反射する1つ以上の追加の層を適用することによって好適に影響され得る。特に有利な実施形態において、このような反射性層は光励起性発光材料によって吸収される光放射に対して殆ど透過性であって、これは、これらの1つ以上の層が波長選択性ミラーとして機能することを意味する。先述した波長選択性ミラーは、発光層と入射の光放射を受けることを意味する表面との間のどこにでも、独立の層として好適に配置することができる。特に、或る入射の光放射が光学ラミネートまたは光学ファイバーによって伝えられることが所望される場合には波長選択性ミラーを発光層の反対の面に有利に適用してもよい。波長選択性ミラーは、光励起性発光材料を励起することができる放射に対して殆ど透過性があることが必要とされ、同時に追加の層は前記光励起性発光材料によって放出される放射を効果的に反射するのがよい。
【0103】
波長選択性ミラーによる全ての利点を享受するために、前記ミラーは前記発光層の1つの面の少なくとも80%を被覆するか、または発光コアの外表面の少なくとも80%を被覆すべきである。さらに、比較的薄い波長選択性ミラーを用いることが好ましい。典型的に、波長選択性ミラーの厚さは100μmを超過せず、好ましくは20μmを超過しない。通常、先述のミラーの厚さは5μmを超過するだろう。本発明の波長選択性ミラーは、波長選択性ミラーとしてともに機能する2つ以上の層(例えばポリマー積層またはコレステリック層の組み合わせ)を適切に含んでいてもよいことは注目される。
【0104】
好ましい実施形態において、この目的はさらに光励起性発光材料によって吸収される光に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも90%の透過性があり、光励起性発光材料によって放出される放射に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも90%の反射性がある波長選択性ミラーを含むここで先に定義したような発光体を提供することによって実現される。波長選択性ミラーは有利にはポリマー性波長選択性ミラーおよび/または偏波選択性ミラーを含んでもよい。
【0105】
本発光体が光励起性発光材料によって放出される放射を集光する効率は、波長選択性ミラーが前記放射を反射する効率に決定的に依存している。典型的に波長選択性ミラーは、500?2000nmの範囲内、好ましくは600?2000nmの範囲内、最も好ましくは630?1500nmの範囲内の波長の光放射に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%の最大反射率を示す。
【0106】
同様に、特に波長選択性ミラーが独立の層として発光層/コアと入射の光放射を受けることを意図する表面との間のどこかに配置された場合、光励起性発光材料を励起することができる高エネルギーの放射が前記ミラーによって高効率で伝わることが重要である。したがって、波長選択性ミラーは350?600nmの範囲内、好ましくは250?700nmの範囲内、さらにより好ましくは100?800nmの範囲内の波長の光放射に対して少なくとも60%、好ましくは70%の最大透過率を示す。
【0107】
光励起性発光材料によって放出される放射の波長が同じ材料によって吸収される放射の波長を必然的に超過するので、或る波長で生じる反射率の極大値が透過率の極大を好ましくは少なくとも30nm、より好ましくは少なくとも50nm、さらにより好ましくは少なくとも100nmを超過することが好ましい。
【0108】
有利な実施形態において、波長選択性ミラーは光励起性発光材料によって吸収される光に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも90%の透過性があり、適当な偏波を持つ円および直線偏光に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%の反射性がある偏波選択性ミラーを含む。このような有利な実施形態はポリマー性積層および/またはコレステリック層を用いることによって実現されてもよい。
【0109】
本発光体は、有利にはキラルネマチックポリマーのコレステリック層を含む波長選択性ミラーを含んでいてもよい。さらにより好ましい実施形態において、ポリマー性波長選択性ミラーは右回り円偏光を反射する第1のコレステリック層と、左回り円偏光を反射する第2のコレステリック層とを含む。後者の実施形態において、発光配列ポリマー層はコレステリック層と導波路との間に適切に挟み込まれるか、または代替的に導波路がコレステリック層と発光配列ポリマー層との間に挟み込まれる。好ましくは、発光配列ポリマー層は隣接したコレステリック層と導波路との間に挟み込まれる。コレステリック層は狭いバンドの円偏光放射を効率的に反射することができる。コレステリック層のらせん配向に依存して、この層は右または左回り円偏光放射のいずれかを反射するであろう。反対のらせん配向を持つ2つのコレステリック層を用いることによって、右と左回り両方の偏光は効率的に反射されるだろう。
【0110】
本発光体は、有利には1つ以上のキラルネマチックポリマーのコレステリック層を含む波長選択性ミラーを含んでもよい。好ましくは、ポリマー性波長選択性ミラーは、右回り円偏光を反射するコレステリック層、および左回り円偏光を反射するコレステリック層からなる群より選択される1つ以上の層を含む。発光配列ポリマー層はコレステリック層と導波路との間に挟み込まれるか、または導波路がコレステリック層と配列発光ポリマー層との間に挟み込まれてもよい。好ましくは、発光配列ポリマーは隣接したコレステリック層と導波路との間に挟み込まれる。
【0111】
特定の変形例において、ポリマー性波長選択性ミラーは右回り円偏光を反射する1つ以上のコレステリック層、または左回り円偏光を反射する1つ以上のコレステリック層を含むか、または右回り円偏光を反射する1つ以上のコレステリック層と左回り円偏光を反射する1つ以上のコレステリック層の両方を含む。「単純な」右または左回りの2つの層機構は、例えば75nmのバンド幅の光を反射するだけかもしれない。バンドを拡げることは可能だが、現在の技術水準においてこれは単純なことではないことがわかっている。本発明によれば、有利には連続する右回りコレステリック体を互いの上部に重ね、その後左回り体を互いの上部に重ねるか、または反対に重ねるか、または右と左回りの層の任意の組み合わせによって反射される波長のバンドを拡げることはより容易であろう。全ての試料に対して1つの掌性コレステリック体のみ、すなわち、例えば2-5の左回り層または2-5の右回り層を使うことも考えられる。本発明は2層システムに限定されない。・・・
【0116】
コレステリック層またはコレステリック層の組み合わせは、発光配列ポリマー層またはコアによって放出される光放射を有利に反射し、100?600nm、好ましくは250?700nm、最も好ましくは350?800nmの範囲における波長の光放射に対して殆ど透過性である。
【0117】
他の実施形態において、本発光体は光励起性発光材料によって放出される放射に対して強く反射性であるポリマー性積層の形態にある波長選択性ミラーを追加で含む。より詳細には、ポリマー性偏波選択性ミラーは或る平面偏光を反射する第1のポリマー性積層と、反対の平面偏光を反射する第2のポリマー性積層とを含み、発光配列ポリマー層はポリマー性積層と導波路との間に挟み込まれるか、または導波路がポリマー性積層と発光配列ポリマー層との間に挟み込まれる。
【0118】
ポリマー性積層は多層反射器とも呼ばれ、反射と透過との間の電磁スペクトルの部分を仕切るために使用される。ポリマー性積層は典型的に光学積層内で少なくとも2つの異なる材料のいくつかの層を用いる。異なる材料は、積層の少なくとも1つの面内軸に沿って、層の界面において実質的に光を反射するのも十分異なる複数の屈折率を持つ。ポリマー性積層を垂直および/または斜めの入射角で入射する光放射を反射するように構成することができる。
【0119】
好ましくは、本発光体に用いられるポリマー性積層は600nmを上回る光放射、より好ましくは700nmを上回る、最も好ましくは800nmを上回る光放射を反射するように設計されている。好ましい実施形態において、発光配列ポリマー層はポリマー性積層と導波路との間に挟みこまれている。本発明に従って波長選択性ミラーとして用いられるポリマー性積層は、US 6,157,490およびWeber,M.F.et.al.Science 287,2451に記載された方法論を用いて適切に作製することができ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
本発明の発光体から放射が漏れるのを防ぐために、広い範囲の光放射に対して反射性があるミラーを用いること有利であり、前記ミラーは発光体の底面に位置し、これは発光配列ポリマー層を通過した入射放射および同じ層によってミラーの方向に放出された光放射が前記ミラーによって反射されるであろうことを意味する。より詳細には、この実施形態はここで以前に定義されたような発光体を提供し、底面は、450?1200nmの波長に対して少なくとも80%の反射性があって、好ましくは450?1200nmの波長に対して少なくとも90%の反射性があるミラーで被覆されている。
【0121】
本発光体からの放射損失は、放射を例えば光起電力装置に伝えることを想定していない発光体の面にミラーを適用することによってさらに最小化することができるだろう。したがって、好ましい実施形態において発光体の少なくとも1つの面は、450?1200nmの波長に対して少なくとも80%の反射性があって、好ましくは450?1200nmの波長に対して少なくとも90%の反射性があるミラーで被覆される。より好ましくは少なくとも2つの面、最も好ましくは少なくとも3つの面をこのようなミラーで被覆する。」

(ケ)図4ないし8は、次のものである。


(コ)引用発明1
上記(ア)ないし(ケ)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「発光層1及び導波路2を含む光学ラミネート、発光層1及び導波路コア2を含む光学ファイバー、または、発光コア1及び導波路2を含む光学ファイバーであって、
前記導波路2は、光に対して透過性があり、
前記発光層1又は前記発光コア1が光励起性発光分子3を含む光学ラミネート又は光学ファイバーと、
前記光励起性発光分子3を励起することができる放射に対して殆ど透過性であり、同時に前記光励起性発光分子3によって放出される放射を効果的に反射する波長選択性ミラー7、8とを含み、
前記光学ラミネートまたは前記光学ファイバーから放出された放射は、出口10で光起電力電池13に光学的に接続され、
前記光励起性発光分子3は、放出する波長と吸収する波長との間において重なりが殆ど無いか、または全く無く、
前記光励起性発光分子3は、太陽のスペクトルの殆どをカバーする広い吸収域と、ある程度長い波長を持つ狭い発光域とを持つ、
光学ラミネートまたは光学ファイバー。」

イ 同じく、本願出願の優先日前に頒布された羽根義,LSC(螢光形太陽光集光板)を用いた太陽エネルギーの波長別有効利用システムに関する研究(その1),清水建設研究報告,1988年10月,第48号,p.97-109(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
「2.1 LSCの特徴と研究開発状況
LSCとは,図1に示すように透明媒質中に蛍光染料をドープしたもので,通常は平板状である。上面より入射した光は一部蛍光染料により吸収され,残りは下面へと透過する。染料に吸収された光は,ストークスシフトによって入射光より長波長の光となって放射される。・・・・
2.1.1 LSC本体の研究の現状
LSCの材質自体の研究としては,大きく分けて有機系染料(母材としては多くがPMMA^(3)))と無機系染料(母材としては多くがガラス)を用いるものがある。有機系染料を用いたものは,無機系染科より蛍光量子効率が良いために,LSCとしての効率は無機系染料を用いたものより良いのが現状である。このため太陽電池等と組み合わせて研究さこれているのは大体が有機系染料である。しかし,有機系染料は光劣化の問題がある。一方,無機系染料は蛍光量子効率が低く,効率の良いLSCは製作されていないが光安定性は非常に良い。このように有機系,無機系ともに利点と欠点とがあり,それぞれ前者は光劣化,後者は蛍光量子効率の問題を中心に研究されている。」(97頁右欄13行?98頁左欄30行)

ウ 同じく、本願出願の優先日前に頒布された特表2002-539614号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【0006】
量子ドットの使用により、ルミネセンス太陽光集束器の実用性が大幅に改善される。量子ドットのある性質、特に量子ドットのルミネセンス効率、吸収閾値の調整可能性、および赤方偏移の大きさにより、量子ドットは低価格なこの集束器のテクノロジーの性能を制限する有機色素に対する良好な代替物となる。また、誘電導波管テクノロジーと光電池の使用、特に量子井戸光電池がバンドギャップを調整できることは、太陽電池と熱光電池の用途での全体的な高い効率が可能であるということも意味する。」

(イ)「【0009】
従来技術の問題に対処する新しい型のルミネセンス集束器である量子ドット集束器(QDC:quantum dot concentrator)について、ここで説明する。コロイド溶液[参考文献9参照]または単一分子前駆物質[参考文献10参照]の手法による微結晶半導体の成長の最近の進歩により、量子ドット(QD)は発光色素に対する良好な代替物となる。このような製造手法は大量生産に適しており、低コストとなる。また、ドット自体が半導体材料であるので、適当な媒体では有機色素よりも日光の中での劣化が少ない。」

エ 同じく、本願出願の優先日前に頒布された特開2006-216560号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、量子ドットを含むエネルギー変換膜及び量子ドット薄膜に係り、具体的には
、量子ドットの吸収と発光の効果とを利用して特定エネルギー以上の光を遮断するカットオフフィルターの機能、および高いエネルギーの光を低いエネルギーに変換させる機能を行う量子ドットを含むエネルギー変換膜、ならびに量子ドット薄膜に関する。」

(イ)「【0015】
前記エネルギー変換膜が含んでいる量子ドットは、単独で含まれているか、または無機物質もしくはポリマー樹脂のマトリックス中に、混合されているかもしくは埋め込まれている状態で含まれていることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、太陽電池で電気的に変換されない波長領域の太陽光を吸収するとともに、その吸収した太陽光を太陽電池で用いることができる波長の光に変換させることによって、エネルギー変換効率を高める手段が提供される。」

オ 原査定の拒絶査定に引用された、本願出願の優先日前に頒布された米国特許出願公開第2008/0149165号明細書(以下「引用文献5」という。)には、以下の記載がある(訳は当審で訳した。)。
「[0077] Quantum dots are nanostructures, having particle sizes in the range of from about 2 nanometers to about 100 nanometers. They may be inorganic compounds, but they are suitable for coloring the thermoplastic composition. Quantum dots may be considered interchangeable with fluorescent dyes. However, to be clear, pigments having particle sizes in the micrometer range are still unsuitable.」
([0077]量子ドットは、約2nmから100nmの範囲の粒子サイズのナノ構造体である。前記量子ドットは一般に無機化合物であるが、熱可塑性樹脂の色付けにふさわしい。量子ドットは蛍光染料に置き換え可能であると考えられている。しかしながら、マイクロメーターの範囲の粒子サイズの顔料は、明らかに適さない。)

カ 同じく、本願出願の優先日前に頒布されたR.REISFELD, et al.,Nd^(3+) AND Yb^(3+) GERMANATE AND TELLURITE GLASSES FOR FLUORESCENT SOLAR ENERGY COLLECTORS,CHEMICAL PHYSICS LETTERS,1981年 5月15日,Vol.80, No.1,p.178-183(以下「引用文献6」という。)には、以下の記載がある。
「Usually, organic dyes possess much higher absorption and larger quantum efficiencies than inorganic materials. However, their disadvantages are photodecomposition and an overlapping of the emission and absorption spectra. This leads to considerable selfabsorption of the luminescent light along the path of the collector.
Inorganic ions in glasses have much more narrow absorption bands, and usually lower quantum efficiencies. However, they are expected to be stable for longer time periods, and in the future, can be incorporated as an integral part of photoconversion devices.・・・
While the emission of Nd^(3+) peaking at 880 nm(^(4)F_(3/2)→^(4)I_(9/2)) is ideal for matching the sensitivity of the silicon solar cells, its disadvantage is that this emission may be reabsorbed again due to the ^(4)I_(3/2)→^(4)F_(3/2) transition. On the other hand, the 1.06 μm emission, arising from the ^(4)F_(3/2)→^(4)I_(11/2) transition is at a wavelength slightly longer than the sensitivity of most of the silicon cells.
In order to increase the operational efficiency of solar collectors, it seems that transferring energy to Yb^(3+)[5] will accomplish two goals. It will circumvent the limitation due to self-absorption of the ^(4)F_(3/2)→^(4)I_(9/2 )emission, and will decrease the eimssion at 1.06 μm due to depopulation of ^(4)F_(3/2) of Nd^(3+) by energy transfer to the ^(2)F_(5/2) state of Yb^(3+) in glasses[6]. 」(178頁右欄14行?179頁右欄7行)
(一般に、有機染料は無機物質に比べてより高い吸収率とより大きい量子効率を有する。しかしながら、それらの欠点は光分解と、発光スペクトルと吸収スペクトルがオーバーラップすることにある。これは収集経路に沿った蛍光の自己吸収をもたらす。
ガラス中の無機イオンは、より狭い吸収バンドと一般に低い量子効率を有する。しかしながら、それらはより長い期間安定しており、そして将来、光変換素子の不可欠な要素に組み込まれ得る。・・・
Nd^(3+)の発光ピーク880nm(^(4)F_(3/2)→^(4)I_(9/2))がシリコン太陽電池の感度に理想的に合致すると同時に、その不利益は、この発光が^(4)I_(3/2)→^(4)F_(3/2)遷移で再吸収され得ることにある。他方、^(4)F_(3/2)→^(4)I_(11/2)遷移から生じる1.06μm発光は、シリコン電池の大部分の感度より少し長い波長である。
太陽集光器の運用効率を増すために、エネルギー転送をYb^(3+)[5]に移すことが2つのゴールを達成することになる。それは、^(4)F_(3/2)→^(4)I_(9/2)発光の自己吸収による限界を回避し得るもので、ガラス中のYb^(3+)[6]の^(2)F_(5/2)状態へのエネルギー転送による、Nd^(3+)中の^(4)F_(3/2)の過疎化により、1.06μ発光を減少する。)

キ 同じく、本願出願の優先日前に頒布されたW.Rossner, et al.,THE CONVERSION OF HIGH ENERGY RADIATION TO VISIBLE LIGHT BY LUMINESCENT CERAMICS,IEEE TRANSACTIONS ON NUCLEAR SCIENCE,1993年 8月,Vol.40, No.4,p.376-379(以下「引用文献7」という。)には、以下の記載がある。
「However, the preparational techniques vary considerably depending on the treated chemical compounds. In the present study exemplary luminescent ceramic specimens were prepared on the basis of (Y,Gd)_(2)O_(3):Eu[1], Gd_(2)O_(2)S:Pr,Ce[5], Gd_(3)Ga_(5)O_(12):Cr,Ce[6], and Y_(2)SiO_(5):Pr[7]. The structural and, luminescence properties were determined by conventional methods which are microscopic surface analysis, scintillation spectroscopy, optical and time resolved spectrocopy.」(376頁右欄16行?377頁左欄3行)
(しかしながら、準備に関する技術は扱う化合物によって様々である。現時点で研究の典型的な発光性セラミックの実例は、(Y,Gd)_(2)O_(3):Eu[1],Gd_(2)O_(2)S:Pr,Ce[5],Gd_(3)Ga_(5)O_(12):Cr,Ce[6],及びY_(2)SiO_(5):Pr[7]を基本に準備した。構造及び蛍光特性は、顕微鏡を使った表面分析、シンチレーション分光法、及び、光学及び時間分解分光といった、従来の方法によって決定した。)

(2)対比・判断
ア 本件補正前発明1ないし11について
(ア)本件補正前発明1と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1の「光学ラミネートまたは光学ファイバー」は、「放出された放射は、出口10で光起電力電池13に光学的に接続され」る「光学ラミネートまたは光学ファイバー」であるから、本件補正前発明1の「導波路」、「光発電装置で使用する導波路」及び「光が、光発電電池に電圧を生じる」点に相当する。

b 引用発明1の「光学ラミネートまたは光学ファイバー」が、「導波路2は、光に対して透過性があ」る点は、本件補正前発明1の「導波路が、透明マトリックスであ」る点に相当する。

c 引用発明1の「光学ラミネートまたは光学ファイバー」は、「前記発光層1又は前記発光コア1が光励起性発光分子3を含む」点は、本件補正前発明1の「導波路」は、「(i)前記マトリックス内に分散される無機発光粒子及び/又は(ii)少なくとも前記マトリックスの一方側に設けられる無機発光材料を含む透明マトリックスを含」む点と、「導波路」は、「(i)前記マトリックス内に分散される発光粒子・・・含む透明マトリックスを含」む点で一致する。

d 引用発明1の、「放出する波長と吸収する波長との間において重なりが殆ど無いか、または全く無く」、「太陽のスペクトルの殆どをカバーする広い吸収域と、ある程度長い波長を持つ狭い発光域とを持つ」「光励起性発光分子3」は、本件補正前発明1の「UV領域、可視領域及び赤外領域内で最大吸収ピークを持ち、吸収線幅が50nm以上であり、発光線幅が20nm以下であり、及びストークスシフトが50nm以上であり」、「300nmから1420nmの領域内の光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて」、「300nmから1420nmの領域内の光を吸収し、かつより大きな波長で発光」する「無機発光材料」と、「UV領域、可視領域及び赤外領域内で最大吸収ピークを持ち」、「300nmから1420nmの領域内の光を吸収し、かつより大きな波長で発光」する「発光材料」の点で一致する。

e したがって、両者は、
「光発電装置で使用する導波路であり、前記導波路が、
透明マトリックスであって、
(i)前記マトリックス内に分散される発光粒子を含む透明マトリックスを含み、
前記発光材料が、UV領域、可視領域及び赤外領域内で最大吸収ピークを持ち、
前記発光材料が300nmから1420nmの領域内の光を吸収し、かつより大きな波長で発光し、吸収よりも大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じる、
導波路。」
である点で一致し、
本件補正前発明1の「発光粒子」及び「発光材料」は「無機発光材料」であって、「吸収線幅が50nm以上であり、発光線幅が20nm以下であり、及びストークスシフトが50nm以上であり」、「300nmから1420nmの領域内の光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて」、「前記第一の種の」吸収よりも大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じるのに対して、引用発明1の「光励起性発光分子3」は、「無機発光粒子」であると特定されず、吸収線幅、発光線幅及びストークスシフトが特定されず、さらに、「300nmから1420nmの領域内の光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて」、「前記第一の種の」吸収よりも大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じるものと特定されない点(以下「相違点1」という)で相違する。

(イ)判断
上記相違点1について検討する。
a 引用発明1の「光励起性発光分子3」は、「放出する波長と吸収する波長との間において重なりが殆ど無いか、または全く無く」、「太陽のスペクトルの殆どをカバーする広い吸収域と、ある程度長い波長を持つ狭い発光域とを持つ」ものとされるところ、引用文献1の記載をみても、これを「吸収線幅が50nm以上であり、発光線幅が20nm以下であり、及びストークスシフトが50nm以上であ」るものとした上で、さらに、「300nmから1420nmの領域内の光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて」、「前記第一の種の」吸収よりも大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じるものとすることを示唆する記載も動機も見あたらない。
また、引用発明1の「光励起性発光分子3」は、引用文献1によれば「有機および/またはポリマー性光励起性発光染料」を意味しており(上記(1)ア(カ)段落【0069】参照)、これを「無機発光粒子」とするとの記載は見当たらない。

b これに対して、引用文献2ないし7には、「光起電力装置に用いる光励起性発光材料として無機系のものは周知である」点が記載されている。
また、引用発明1の「光励起性発光分子3」の吸収線幅、発光線幅及びストークスシフトを適宜のものとすることは、引用発明1を実施するに際して当業者が適宜なし得ることといえる。
そうすると、引用発明1の「有機および/またはポリマー性光励起性発光染料」である「光励起性発光分子3」を周知の無機系のものとすること、及び、「光励起性発光分子3」の吸収線幅、発光線幅及びストークスシフトを適宜のものとすることまでは、当業者が容易になし得ることといえるが、引用発明1の「光励起性発光分子3」を第一の種と第二の種からなるものとすることを示唆する記載はなく、動機も見当たらないため、引用発明1の「光励起性発光分子3」を周知の無機系のものとし、「吸収線幅が50nm以上であり、発光線幅が20nm以下であり、及びストークスシフトが50nm以上であ」るものとした上で、さらに、「300nmから1420nmの領域内の光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて」、「前記第一の種の」吸収よりも大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じるものとすることまでを、当業が容易になし得たというには無理がある。

c したがって、光起電力装置に用いる光励起性発光材料として無機系のものが引用文献2ないし7に記載のとおり周知の事項であって、「光励起性発光分子3」の吸収線幅、発光線幅及びストークスシフトを適宜のものとすることは当業者が適宜なし得ることであっても、引用発明1における「光励起性発光分子3」を周知の無機系のものとし、「吸収線幅が50nm以上であり、発光線幅が20nm以下であり、及びストークスシフトが50nm以上であ」るものとした上で、さらに、「300nmから1420nmの領域内の光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて」、「前記第一の種の」吸収よりも大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じるものとなし、上記相違点1に係る構成となすことが容易に想到し得たということはできない。

(ウ)小括
したがって、本件補正前発明1は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし7に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本件補正前発明2-11は、本件補正前発明1をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明及び引用文献2ないし7に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 本件補正前発明12及び13について
(ア)「導波路」の発明である本件補正前発明12は、「光発電装置」の発明である本件補正前発明1から、「光発電電池」及び「前記導波路が前記光発電電池と、使用の際に、前記無機発光材料から放射される光の少なくとも一部が前記光発電電池を通って前記電池に電圧を生じるように関連付けされ」るとの構成を除いたものであるところ、上記アのとおり、本件補正前発明1は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし7に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないから、本件補正前発明12も同様に、当業者が引用発明及び引用文献2ないし7に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)また、本件補正前発明13は、本件補正前発明12をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明及び引用文献2ないし7に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ まとめ
ア及びイでの検討によれば、本件補正前発明1-13は、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
「[理由1]
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)本願請求項1は「無機発光材料」が、「UV領域、可視領域及び赤外領域内で最大吸収ピークを持ち、吸収線幅が50nm以上であり、発光線幅が20nm以下であり、及びストークスシフトが50nm以上であ」ること、及び、「300nmから1420nmの領域内の光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて、前記無機発光材料が300nmから1420nmの領域内の光を吸収し、かつより大きな波長で発光し、前記第一の種の吸収よりも大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じる」ことを発明特定事項とする。

そうすると、「無機発光材料」には、「300nmから1420nmの領域内の光を吸収する第一の種」と「前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種」があるところ、「UV領域、可視領域及び赤外領域内で最大吸収ピークを持ち、吸収線幅が50nm以上であり、発光線幅が20nm以下であり、及びストークスシフトが50nm以上であ」る「無機発光材料」が、「第一の種」であるのか、「第二の種」であるのか、あるいは、その両方であるのか不明である。

[理由2]
本件出願の下記の請求項1ないし12に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・引用文献1 特表2002-539614号公報
・引用文献2 特開平5-315635号公報

1 本願発明について
特許請求の範囲に記載された請求項1ないし12に係る発明を、それぞれ本願発明1ないし12という。

2 引用刊行物及び引用発明
(1)本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1には、以下の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は光電池装置用放射集束器に関するものである。」

イ 「【0006】
量子ドットの使用により、ルミネセンス太陽光集束器の実用性が大幅に改善される。量子ドットのある性質、特に量子ドットのルミネセンス効率、吸収閾値の調整可能性、および赤方偏移の大きさにより、量子ドットは低価格なこの集束器のテクノロジーの性能を制限する有機色素に対する良好な代替物となる。また、誘電導波管テクノロジーと光電池の使用、特に量子井戸光電池がバンドギャップを調整できることは、太陽電池と熱光電池の用途での全体的な高い効率が可能であるということも意味する。
・・・
【0009】
従来技術の問題に対処する新しい型のルミネセンス集束器である量子ドット集束器(QDC:quantum dot concentrator)について、ここで説明する。コロイド溶液[参考文献9参照]または単一分子前駆物質[参考文献10参照]の手法による微結晶半導体の成長の最近の進歩により、量子ドット(QD)は発光色素に対する良好な代替物となる。このような製造手法は大量生産に適しており、低コストとなる。また、ドット自体が半導体材料であるので、適当な媒体では有機色素よりも日光の中での劣化が少ない。」

ウ 「【0025】
図2は、導波管に添加して使用されるべき量子ドットの望ましい吸収と放出(日蔭)のスペクトルを示す。図1で、波長λ_(1)、λ_(2)およびλ_(3)はそれぞれ、光電池装置S_(1)、S_(2)およびS_(3)のバンドギャップのすぐ上のエネルギーに対応する。
【0026】
図3は放射集束器を更に詳しく示す。入射光を導波管2が受ける。導波管2の中の量子ドットは入射放射を吸収し、それを赤方偏移された波長として放出する。この赤方偏移された放射は導波管2の中で内部反射される。導波管の一方の端での反射鏡4は、その端から出現する光を止める。導波管出力6はテーパ素子8に対向して配置される。テーパ素子8は微結晶ダイヤモンドで形成され、更に赤方偏移された放射を光電池装置10に向かって集束する役目を果たす。導波管出力6の透過表面やどこか他のところに多層反射防止コーティングを形成してもよい。光電池装置10は量子井戸光電池装置または直接バンドギャップ光電池装置とすることができる。光電池装置10により電気エネルギーが生成される。
【0027】
導波管2はその中に埋込まれた量子ドットと連続していてもよい。その代わりに、導波管2は、液体の中に浮遊する量子ドットで満たされた液体であってもよい。もう一つの代替案として、導波管の表面に量子ドットを形成してもよい。このような量子ドットの表面形成と液体中での浮遊は量子ドットの生産モードに非常に適している。とにかく、導波管2は赤方偏移された放射に対して実質的に透明であるべきである。
【0028】
上記の種々の材料で形成されるだけでなく、量子ドットはCuInSe_(2)、II/V族ヘテロ構造、III/VI族ヘテロ構造の一つ以上で形成してもよい。量子ドット集束器の中での二つ以上の種類(型)のドットの混合を使用して、量子ドット集束器の性質を入射放射と光電池装置に合わせやすいようにしてもよい。」

エ 図1ないし3は次のものである。


オ 上記ウの記載を踏まえて上記エの図2をみると、図2の波長λ_(1)の光を放出する量子ドットの波長λ_(1)は、波長λ_(2)の光を放出する量子ドットの吸収波長及び波長λ_(3)の光を放出する量子ドットの吸収波長と重なり、波長λ_(2)の光を放出する量子ドットの波長λ_(2)は、波長λ_(3)の光を放出する量子ドットの吸収波長と重なることが見てとれる。

カ 引用発明1
上記アないしオによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「入射光を導波管2が受け、前記導波管2の中の量子ドットは入射放射を吸収し、それを赤方偏移された波長として放出し、前記赤方偏移された放射は導波管2の中で内部反射され、前記導波管2の一方の端での反射鏡4は、その端から出現する光を止め、導波管出力6はテーパ素子8に対向して配置され、前記テーパ素子8は前記赤方偏移された放射を光電池装置10に向かって集束し、光電池装置10により電気エネルギーが生成され、
前記導波管2はその中に埋込まれた量子ドットと連続し、
前記導波管2は赤方偏移された放射に対して実質的に透明であり、
前記導波管2に添加して使用されるべき量子ドットの望ましい放出の波長はλ_(1)、λ_(2)およびλ_(3)であって、
波長λ_(1)の光を放出する量子ドットの波長λ_(1)は、波長λ_(2)の光を放出する量子ドットの吸収波長及び波長λ_(3)の光を放出する量子ドットの吸収波長と重なり、波長λ_(2)の光を放出する量子ドットの波長λ_(2)は、波長λ_(3)の光を放出する量子ドットの吸収波長と重なる、放射集束器。」

(2)同じく、引用文献2には、以下の記載がある。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光電変換システムに関するものであり、太陽光や蛍光灯等の人工光をうけてそのエネルギーを蓄え、夜間あるいは日影等の暗所にて光の形でエネルギーを放出する材料と太陽電池を組み合わせ、夜間あるいは日影等の暗所にても発電する光発電装置に関するものである。」

イ 「【0005】本発明の光発電装置の代表的なものを図1に例示する。構造体としての基板(1)の上部に反射面(2)と蓄光層(3)さらに、蛍光層(6)が積層されている。蓄光層(3)中には、蓄光体(4)が分散されている。また蛍光層(6)には、蛍光体(7)が分散されている。蓄光層(3)の両端面は反射面(2)となっている。太陽電池(10)を蛍光層の端面に設置する。この構造により、昼にあるいは光照射時に蛍光体からの光により発電が行われると同時に蓄光体(4)にエネルギーが蓄積され、蓄えられたエネルギーが遮光後夜間や日影等において光となって徐放される。この光をうけて蛍光体(7)が光を発し、これにより太陽電池にて発電が行われる。
【0006】蓄光層中の蓄光体から発した光は、全方位に放射されるが端面及び下面には反射面(2)を設置してあるので全反射する。これにより蓄光体からの光は全て蛍光層へ入り込み、蛍光体に吸収される。可視光に対して透明である蛍光層中において、蛍光体から発した光は、蛍光層材料と空気の屈折率に依存した割合で、界面での全反射により蛍光層に閉じ込められ端面に集められる。具体例として屈折率1.49のポリメチルメタクリレートの場合発光光のうち75%が全反射により蛍光層に閉じ込められる。
【0007】蓄光体は、母材、付活剤からつくられるのが一般的であり、さらに融剤を加えるものもある。以下蓄光体を母材:付活剤(融剤)の形式で表現する。蓄光体としては市販のZnS:Cu,Alの外に、CaS:Bi、CaS,SiS:Bi、ZnS,CaS:Cu、CaS:Bi,Pb(LiS)、ZnS:Cuなどがある。
・・・
【0009】蛍光層は、・・・無機のガラス蛍光体としてNd^(2+)、Nd^(2+)とYb^(3+)、Cr^(3+)、UO_(2)^(2+)イオン等を含むケイ酸ガラス、リン酸ガラス等がある。
【0010】蛍光体と蓄光体とを組み合わせ、ひとつの発光体として用いる場合、有効に発光させるためには組み合わせを考慮するのが好ましい。蓄光体の燐光(発光)波長と蛍光体の励起波長との一致性がその発光性能に影響を与えることになる。また蓄光体は、光源により選択される。つまり、光源の波長と蓄光体の励起光波長とが一致するのが好ましい。さらに、発光体と太陽電池とを組み合わせるので、蛍光体からの発光波長は、太陽電池の発電にもっとも適した波長となるように選択する。」

ウ 図1は次のものである。


エ 引用文献2に記載の事項
上記アないしウによれば、引用文献2には、次の事項(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「基板の上部に反射面と蓄光層さらに、蛍光層が積層され、前記蓄光層中には、蓄光体が分散され、前記蛍光層には、蛍光体が分散され、前記蓄光層の両端面は反射面となり、太陽電池を蛍光層の端面に設置し、
可視光に対して透明である蛍光層であって、
前記蓄光体はZnS:Cu,Al、CaS:Bi、CaS,SiS:Bi、ZnS,CaS:Cu、CaS:Bi,Pb(LiS)、ZnS:Cu等であって、
前記蛍光層は、無機のガラス蛍光体としてNd^(2+)、Nd^(2+)とYb^(3+)、Cr^(3+)、UO_(2)^(2+)イオン等を含むケイ酸ガラス、リン酸ガラス等であって、
前記蓄光体の燐光(発光)波長と前記蛍光体の励起波長とが一致する、
光発電装置。」

3 対比・判断
(1)本願発明1ないし12と引用発明1との対比・判断
ア 請求項1に対して
(ア)本願発明1と引用発明1とを対比すると、上記2(1)カによれば、本願発明1と引用発明1は、
「光発電装置で使用する導波路であり、前記導波路が、
透明マトリックスであって、
(i)前記マトリックス内に分散される無機発光粒子を含み、
前記無機発光材料が、光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて、前記無機発光材料が光を吸収し、かつより大きな波長で発光し、前記第一の種の吸収よりも大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じる、
導波路。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

・本願発明1の「無機発光材料」は、「UV領域、可視領域及び赤外領域内で最大吸収ピークを持ち、吸収線幅が50nm以上であり、発光線幅が20nm以下であり、及びストークスシフトが50nm以上であ」るのに対して、引用発明の「量子ドット」は、最大吸収ピーク、吸収線幅、発光線幅及びストークスシフトが特定されない点(以下「相違点1」という。)。

(イ)判断
上記相違点1について検討する。
引用発明1は太陽電池に用いるものであるから、引用発明1の量子ドットの最大吸収ピークを太陽光の波長の範囲であるUV領域、可視領域及び赤外領域内とすることは当然のことであり、また、量子ドットとして適宜の広い吸収線幅及びストークスシフト、狭い発光線幅のものを採用して本願発明1の範囲のものとなし、上記相違点1にかかる本願発明1の構成とすることは、当業者にとって格別の困難性はない。

イ 本願発明2ないし12について
本願発明2ないし12は本願発明1に設計的事項や周知技術を付加するにすぎないものであるから、引用発明1及び引用文献1に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。

(2)本願発明1ないし12と引用発明2との対比・判断
ア 請求項1に対して
(ア)本願発明1と引用発明2とを対比すると、上記2(2)エによれば、本願発明1と引用発明2は、
「光発電装置で使用する導波路であり、前記導波路が、
透明マトリックスであって、
(i)前記マトリックス内に分散される無機発光粒子を含み、
前記無機発光材料が、光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて、前記無機発光材料が光を吸収し、かつより大きな波長で発光し、前記第一の種の吸収よりも大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じる、
導波路。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

・本願発明1の「無機発光材料」は、「UV領域、可視領域及び赤外領域内で最大吸収ピークを持ち、吸収線幅が50nm以上であり、発光線幅が20nm以下であり、及びストークスシフトが50nm以上であ」るのに対して、引用発明の「蓄光層」及び「蛍光層」は、最大吸収ピーク、吸収線幅、発光線幅及びストークスシフトが特定されない点(以下「相違点2」という。)。

(イ)判断
引用発明2は太陽電池などに用いるものであるから、引用発明2の蓄光体と蛍光体の最大吸収ピークを太陽光の波長の範囲であるUV領域、可視領域及び赤外領域内とすることは当然のことであり、また、蓄光体及び蛍光体として適宜の広い吸収線幅及びストークスシフト、狭い発光線幅のものを採用して本願発明1の範囲のものとなし、上記相違点2にかかる本願発明1の構成とすることは、当業者にとって格別の困難性はない。

イ 本願発明2ないし12について
本願発明2ないし12は本願発明1に設計的事項や周知技術を付加するにすぎないものであるから、引用発明2及び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし12は、引用発明1及び引用文献1に記載の事項に基づいて、または、引用発明2及び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。」

2 当審拒絶理由についての判断
(1)理由1について
ア 本件補正によって、本願の請求項1は
「光発電装置で使用する導波路であり、前記導波路が、透明マトリックスであって、(i)前記マトリックス内に分散される無機発光粒子及び/又は(ii)少なくとも前記マトリックスの一方側に設けられる無機発光材料を含む透明マトリックスを含み、前記無機発光材料のストークスシフトが50nm以上であり、前記無機発光材料が、吸収線幅が50nm以上であり、300nmから1420nmの領域内の光を吸収する第一の種と、発光線幅が20nm以下であり、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記無機発光材料の前記第一の種が300nmから1420nmの領域内の光を吸収し、前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じて、前記無機発光材料の前記第二の種が前記第一の種の吸収よりもより大きな波長で発光し、前記大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じさせる、導波路。」(下線は当審が付した。)と補正された。このことにより、請求項1に係る発明は明確となった。
よって、当審拒絶理由の[理由1]は解消した。

(2)理由2について
ア 刊行物の記載事項
(ア)当審拒絶理由に引用された、特表2002-539614号公報(上記第3.2(1)ウに示した引用文献3)には、上記1に引用した当審拒絶理由の[理由2]2(1)アないしオのとおりの事項が記載され、また、同2(1)カに示した発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。

(イ)当審拒絶理由に引用された、本願出願の優先日前に頒布された特開平5-315635号公報(以下「引用文献8」という。)には、上記1に引用した当審拒絶理由の[理由2]2(2)アないしウのとおりの事項が記載され、また、同2(2)エに示した発明(以下「引用発明8」という。)が記載されているものと認められる。

イ 対比・判断
(ア)本願発明1と引用発明3の対比・判断
a 上記1に引用した当審拒絶理由の[理由2]2(1)イ及びウを踏まえると、引用発明3は、量子ドットは無機発光粒子ということができるから、本願発明1と引用発明3を対比すると、引用発明3の「導波管2」、「量子ドット」、「光電池装置10」、「光電池装置10により電気エネルギーが生成され」、「導波管2はその中に埋込まれた量子ドット」、「導波管2は赤方偏移された放射に対して実質的に透明であり」、「波長λ_(1)の光を放出する量子ドット」及び「波長λ_(2)の光を放出する量子ドット」は、本願発明1の「導波路」、「無機発光粒子」、「光発電装置」、「光発電電池に電圧を生じさせる」、「マトリックス内に分散される無機発光粒子」、「導波路が、透明マトリックスであって」、「第一の種」及び「前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種」にそれぞれ相当する。

b そうすると、本願発明1と引用発明3は、
「光発電装置で使用する導波路であり、前記導波路が、
透明マトリックスであって、
(i)前記マトリックス内に分散される無機発光粒子を含む透明マトリックスを含み、
前記無機発光材料が、光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記無機発光材料の前記第二の種が前記第一の種の吸収よりもより大きな波長で発光し、前記大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じさせる、導波路。」
である点で一致し、
本願発明1の「無機発光材料」は、「ストークスシフトが50nm以上であり」、第一の種と第二の種を含み、第一の種の無機発光材料は、「吸収線幅が50nm以上であり、300nmから1420nmの領域内の」光を吸収するものであり、第二の種の無機発光材料は「発光線幅が20nm以下であり」、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射するものであり、「前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じ」るものであるのに対して、引用発明3の「量子ドット」は、ストークスシフトが特定されず、「波長λ_(1)の光を放出する量子ドット」は吸収線幅と吸収波長が特定されず、「波長λ_(2)の光を放出する量子ドット」は発光線幅が特定されず、さらに、上記第2.3でいうところの共鳴によるエネルギ移動が生じるものとはされない点(以下「相違点2」という)で相違する。

c 判断
引用発明3は「量子ドット」を用いるものであるところ、当該「量子ドット」が上記第2.3でいうところの共鳴によるエネルギ移動が生じるものとはされないため、「量子ドット」を前記共鳴によるエネルギ移動が生じるものとなした上で、さらに、「量子ドット」のストークスシフトを所定のものとなし、「波長λ_(1)の光を放出する量子ドット」の吸収線幅と吸収波長を所定のものとなし、「波長λ_(2)の光を放出する量子ドット」の発光線幅を所定のものとなして上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項となす動機は無く、上記相違点2に係る構成を容易に想到し得たということはできない。

(イ)本願発明1と引用発明8の対比・判断
a 本願発明1と引用発明8を対比すると、引用発明8の「『蓄光層』及び『蛍光層』」、「『ZnS:Cu,Al、CaS:Bi、CaS,SiS:Bi、ZnS,CaS:Cu、CaS:Bi,Pb(LiS)、ZnS:Cu等である蓄光体』及び『Nd^(2+)、Nd^(2+)とYb^(3+)、Cr^(3+)、UO_(2)^(2+)イオン等』」、「前記蓄光層中には、蓄光体が分散され、前記蛍光層には、蛍光体が分散され」、「太陽電池」、「可視光に対して透明である蛍光層」、「蓄光体」及び「蛍光体」は、本願発明1の「導波路」、「無機発光粒子」、「前記マトリックス内に分散される無機発光粒子」、「光発電装置」、「前記導波路が、透明マトリックスであって」、「第一の種」及び「第二の種」にそれぞれ相当する。

b そうすると、本願発明1と引用発明8は、
「光発電装置で使用する導波路であり、前記導波路が、
透明マトリックスであって、
(i)前記マトリックス内に分散される無機発光粒子を含む透明マトリックスを含み、
前記無機発光材料が、光を吸収する第一の種と、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射する第二の種を含み、前記無機発光材料の前記第二の種が前記第一の種の吸収よりもより大きな波長で発光し、前記大きな波長の光が、光発電電池に電圧を生じさせる、導波路。」
である点で一致し、
本願発明1の「無機発光材料」は、「ストークスシフトが50nm以上であり」、第一の種と第二の種を含み、第一の種の無機発光材料は、「吸収線幅が50nm以上であり、300nmから1420nmの領域内の」光を吸収するものであり、第二の種の無機発光材料は「発光線幅が20nm以下であり」、前記第一の種の吸収よりも大きな波長で光を放射するものであり、「前記第一の種と第二の種間のエネルギ移動が生じ」るものであるのに対して、引用発明8の「蓄光体及び蛍光層」は、ストークスシフトが特定されず、「蓄光体」は吸収線幅と吸収波長が特定されず、「蛍光体」は発光線幅が特定されず、さらに、上記第2.3でいうところの共鳴によるエネルギ移動が生じるものとはされない点(以下「相違点3」という)で相違する。

c 判断
引用発明8は「蓄光体及び蛍光体」を用いるものであるところ、当該「蓄光体及び蛍光体」が上記第2.3でいうところの共鳴によるエネルギ移動が生じるものとはされないため、「蓄光体及び蛍光体」を前記共鳴によるエネルギ移動が生じるものとなした上で、さらに、「蓄光体及び蛍光体」のストークスシフトを所定のものとなし、「蓄光体」の吸収線幅と吸収波長を所定のものとなし、「蛍光体」の発光線幅を所定のものとなして上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項となす動機は無く、上記相違点3に係る構成を容易に想到し得たということはできない。

(ウ)小括
したがって、本願発明1は、当業者が引用発明3または引用発明8に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明2-12は、本願発明1をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明3または引用発明8に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-04-22 
出願番号 特願2011-540300(P2011-540300)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 将彦  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 松川 直樹
川端 修
発明の名称 光発電装置及び光発電装置で使用する導波路  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  
代理人 伊東 忠重  
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