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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H03K
管理番号 1314004
審判番号 不服2014-11252  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-13 
確定日 2016-05-18 
事件の表示 特願2009-113914「クロック発生回路、電源供給システム及びクロック信号の周波数変更方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月18日出願公開、特開2010-263498、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成21年5月8日の出願であって,平成26年2月12日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月13日に拒絶査定に対する審判が請求された。そして,平成27年3月20日付けで当審より拒絶の理由が通知され,同年8月24日に意見書が提出されるとともに,手続補正書が提出され,同年9月24日付けで当審より拒絶の理由が通知され,同年12月10日に意見書が提出されるとともに,手続補正書が提出され,平成28年1月4日付けで当審より拒絶の理由が通知され,同年3月24日に意見書が提出されるとともに,手続補正書が提出されたものである。


第2 補正について
1.補正の内容
平成28年3月24日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は,平成27年12月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲を,平成28年3月24日に提出された手続補正書に記載されたとおりに補正しようとするものであり,その内容は以下の補正事項1?4のとおりである。

(補正事項1)
請求項1及び5に「(前記)複数の抵抗を介して調整電流を前記クロック発生回路のノードに流し込み又は当該ノードから引き込む」と記載されていたものを,「オンするトランジスタに接続された抵抗を介して調整電流を前記クロック発生回路のノードに流し込み又は当該ノードから引き込む」とする補正。(下線は当審で付した。以下同様。)

(補正事項2)
請求項2に「前記充放電コンデンサの前記充放電電流を切り換える」と記載されていたものを,「前記充放電コンデンサの充電電流を切り換える」とする補正。

(補正事項3)
請求項3に「・・・前記充放電コンデンサの前記充放電電流を大きくする方向に制御させ,・・・充放電コンデンサの前記充放電電流を小さくする方向に制御させる」と記載されていたものを「・・・前記充放電コンデンサの充電電流を大きくする方向に制御させ,・・・前記充放電コンデンサの充電電流を小さくする方向に制御させる」とする補正。

(補正事項4)
請求項5に「前記充放電コンデンサの充放電の時間を制御する」と記載されていたものを「前記充放電コンデンサの充電の時間を制御する」とする補正。

2.補正の適否
ア 補正事項1について
補正事項1は,補正前の記載では調整電流が複数の抵抗を介するだけで,どのようにして調整電流を流し込んだり引き込んだり制御できるか不明瞭であったものを,本件補正によってオンするトランジスタに接続される抵抗を介して調整電流を流し込んだり引き込んだり制御することが明確になる補正であるから,明りょうでない記載の釈明を目的とする補正である。
また,補正事項1は願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,シフト補正にあたらないことも明らかである。

イ 補正事項2について
補正事項2は,補正前の記載では充放電コンデンサの充放電電流を切り換えるとされていたものを,発明の詳細な説明に記載された実施例では,充電電流だけを切り換えているから,これに合わせて,「前記充放電コンデンサの充電電流を切り換える」と記載を改めたものであって,明りょうでない記載の釈明を目的とする補正である。
また,補正事項2は願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,シフト補正にあたらないことも明らかである。

ウ 補正事項3について
補正事項3は,補正前の記載では充放電コンデンサの充放電電流を大きくする方向や小さくする方向に制御させるとしていたものを,発明の詳細な説明に記載された実施例では,充電電流だけを大きくしたり小さくしたり制御しているから,これに合わせて,「・・・前記充放電コンデンサの充電電流を大きくする方向に制御させ,・・・前記充放電コンデンサの充電電流を小さくする方向に制御させる」と記載を改めたものであって,明りょうでない記載の釈明を目的とする補正である。
また,補正事項3は願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,シフト補正にあたらないことも明らかである。

エ 補正事項4について
補正事項4は,補正前の記載では「前記充放電コンデンサの充放電の時間を制御する」とされていたものを,発明の詳細な説明に記載された実施例では,充電の時間だけを制御しているから,これに合わせて,「前記充放電コンデンサの充電の時間を制御する」と記載を改めたものであって,明りょうでない記載の釈明を目的とする補正である。
また,補正事項4は願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,シフト補正にあたらないことも明らかである。

オ まとめ
上記ア?エにおいて検討したように,補正事項1?4は,いずれも特許法17条の2第3項(新規事項),同法17条の2第4項(シフト補正),同法17条の2第5項4号(補正の目的)の規定に適合しており,適法な補正である。


第3 本願発明
上記のように本件補正は適法な補正であるから,本願発明は,平成28年3月24日に提出された手続補正書に記載されたとおりの以下のものである。(以下,請求項1?5に係る発明を,それぞれ,本願発明1?5という。)
「 【請求項1】
周波数が時間の経過と共に変更するクロック信号を生成するクロック発生回路であって,
前記クロック発生回路は,
充放電コンデンサを含み,その充放電コンデンサに充放電する時間を周期とする前記クロック信号を生成するクロック発生部と,
前記クロック信号の周期を変更する電流量調整部と
を有し,
前記電流量調整部は,
前記クロック信号を受信して分周することにより,それぞれ周波数の異なる複数の分周信号を生成する分周回路と,
前記生成された複数の分周信号を組み合わせて論理演算を行うことにより,1周期においてそれぞれ異なるタイミングでレベルがそれぞれ変化する複数の制御信号を生成するパルス制御部と,
複数のトランジスタ及び複数の抵抗を有し,前記生成された複数の制御信号の前記複数のトランジスタへの入力に応じて,オンするトランジスタに接続された抵抗を介して調整電流を前記クロック発生回路のノードに流し込み又は当該ノードから引き込むことによって,前記クロック信号の周期を変更するように前記充放電コンデンサの充電の時間を制御する電流制御部と
を含むことを特徴とするクロック発生回路。
【請求項2】
請求項1に記載のクロック発生回路であって,
前記分周回路は,フリップフロップを含み,
前記パルス制御部は,前記分周回路のフリップフロップの複数の段に応じた前記充放電コンデンサの充電電流を切り換えるための前記複数の制御信号を生成することを特徴とするクロック発生回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクロック発生回路であって,
前記電流制御部は,
前記充放電コンデンサの高電位側と電源との間に接続された,前記トランジスタと前記抵抗の直列回路を複数並列接続した第1抵抗部,及び,前記充放電コンデンサの高電位側とグランド線との間に接続された,前記トランジスタと前記抵抗の直列回路を複数並列接続した第2抵抗部を含み,
前記パルス制御部は,前記複数の制御信号を前記トランジスタにそれぞれ供給することにより,前記電流制御部に,前記電流制御部の第1抵抗部の抵抗値を変更することで前記充放電コンデンサの充電電流を大きくする方向に制御させ,前記第2抵抗部の抵抗値を変更することで前記充放電コンデンサの充電電流を小さくする方向に制御させることを特徴とするクロック発生回路。
【請求項4】
DC-DCコンバータと,前記DC-DCコンバータにクロック信号を供給する請求項1?3のいずれか1つに記載のクロック発生回路とを有することを特徴とする電源供給システム。
【請求項5】
クロック発生部と,電流量調整部とを有するクロック発生回路が生成するクロック信号の周波数変更方法であって,
前記クロック発生部が,充放電コンデンサに充放電する時間を周期とする前記クロック信号を生成すること,
前記電流量調整部が,前記クロック信号を受信して分周することにより,それぞれ周波数の異なる複数の分周信号を生成すること,
前記電流量調整部が,前記生成された複数の分周信号を組み合わせて論理演算を行うことにより,1周期においてそれぞれ異なるタイミングでレベルがそれぞれ変化する複数の制御信号を生成すること,
前記電流量調整部が,前記生成された複数の制御信号の複数のトランジスタへの入力に応じて,オンするトランジスタに接続された抵抗を介して調整電流を前記クロック発生回路のノードに流し込み又は当該ノードから引き込むことによって,前記クロック信号の周期を変更するように前記充放電コンデンサの充電の時間を制御すること
を有することを特徴とするクロック信号の周波数変更方法。」


第4 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要

平成25年10月22日付け拒絶理由通知書には以下のように記載されている。
「A. この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
B. この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

請求項1?6
(理由A) いわゆる弛緩発振器(一次発振器)は、当業者にとっての周知な技術(例えば、引用文献1?2の各図を参照。)にすぎない。請求項1?3及び6に係る発明は、引用文献1(図1)に開示がされており新規性がない。
(理由B) 公知の技術の具体的適用に伴う設計変更などは、当業者の通常の創作能力の発揮と言うべきものにすぎない。請求項1?6に係る発明は、引用刊行物に記載された発明と対比し格別の差違を備えるものではないから、当業者が容易に発明することができたものである。

<拒絶の理由を発見しない請求項>
なし。

引 用 文 献 等 一 覧

1. 特開2008-17309号公報 (図1)
2. 特開2000-278097号公報(図1)」


また,平成26年2月12日付け拒絶査定には以下のように記載されている。
「 この出願については、平成25年10月22日付け拒絶理由通知書に記載した理由A及びBによって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
備考
・請求項1?6について
出願人の意見(平成26年 1月23日付け意見書)は、「新請求項1は、引用文献1には開示も示唆もされていない構成を有します。・・(中略)・・・。以上のことから、新請求項1に係る発明は、引用文献1及び2には開示されておらず、また、引用文献1及び2の開示から容易に想到し得たものではありません」というものである。
しかしながら、いわゆる弛緩発振器が周知な技術にすぎないことは、先の拒絶理由通知に摘示したとおりであって、例えば、引用文献1の図1には、「周波数が時間の経過と共に変更するクロック信号を生成するスペクトラム拡散回路100であって、前記スペクトラム拡散回路は、充放電コンデンサ12を含み、その充放電コンデンサに充放電する時間を周期とする前記クロック信号を生成する比較回路13及びクロック信号生成回路14(本願の「クロック発生部」に相当。)と、前記クロック信号に同期して前記充放電コンデンサの充放電電流を制御する電流供給ユニットU1?U5(本願の「電流制御部」に相当。)を含み、その電流供給ユニット(電流制御部)にて前記充放電コンデンサの充放電時間を制御して前記クロック信号の周期を変更する制御部20(本願の「電流量調整部」に相当。)とを有し、前記制御部(電流量調整部)は、前記クロック信号の分周信号を生成する分周回路201及び202を含み、前記生成された分周信号の1つD1は、少なくとも1つの他の前記生成された分周信号D2?D4又はCK1に論理的に結合され、前記充放電コンデンサ12の前記充放電電流を制御する制御信号C11?C42を作り出すことを特徴とするスペクトラム拡散回路(本願の「クロック発生回路」に相当。)」の発明が開示されているのは明らかである。
そうすると、補正によっても先の拒絶理由は依然として解消されていないというべきであるから、出願人の意見は、採用することができない。
請求項1?6に係る発明は、引用刊行物に記載された発明と同一であるか、又は、当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることはできない。

・引用文献等
1.特開2008-17309号公報 (図1)
2.特開2000-278097号公報(図1)」


2.原査定の理由の判断
(1)引用発明
ア 引用発明1
原査定の拒絶理由に引用された特開2008-17309号公報(平成20年1月24日公開。以下,「引用例1」という。)には「スペクトラム拡散回路」に関して,図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0012】
<1.実施形態>
図1を参照して,本発明の実施形態に係るスペクトラム拡散回路の構成を説明する。同図に示されるスペクトラム拡散回路100は,第1クロック信号CK1及び第2クロック信号CK2を発生する信号発生部10と,信号発生部10で発生する第1クロック信号CK1及び第2クロック信号CK2の周波数を制御する制御部20を備える。
【0013】
信号発生部10は,電圧発生回路11,電流供給ユニットU1?U5,容量素子12,比較回路13,及びクロック信号生成回路14を備える。電圧発生回路11において,pチャネルのトランジスタ111は,そのゲートとドレインとが接続されており,ダイオードとして機能する。トランジスタ111のドレインと接地線(接地電圧を供給)との間に抵抗114,115,及び116が直列に接続されている。抵抗114と抵抗115との接続点の電圧は上限電圧ULMTとして出力され,抵抗115と抵抗116の接続点の電圧は下限電圧DLMTとして出力される。上限電圧ULMTは後述する三角波の上限の電圧を規定し,下限電圧DLMTは三角波の下限の電圧を規定する。また,pチャネルのトランジスタ112はトランジスタ111と共にカレントミラー回路を構成するので,トランジスタ111に流れる電流に比例した電流がトランジスタ111とトランジスタ112とに流れる。さらに,トランジスタ112のドレインは,nチャネルのトランジスタ113のドレイン及びゲートと接続される。トランジスタ112のゲート電圧は第1基準電圧Vref1として出力され,トランジスタ113のゲート電圧は第2基準電圧Vref2として出力される。
【0014】
次に,電流供給ユニットU1?U5は,容量素子12に対して電荷の充放電を実行する。電流ユニットU1?U5はそこに用いるトランジスタのサイズを除いて同一の構成である。ここでは,電流供給ユニットU1について説明する。電流供給ユニットU1は,電源電圧を供給する電源線と接地線との間に,スイッチSW1,pチャネルのトランジスタTrp,nチャネルのトランジスタTrn,及びスイッチSW2を直列に接続して構成される。トランジスタTrpのゲートには第1基準電圧Vref1が供給される一方,トランジスタTrnのゲートには第2基準電圧Vref2が供給される。
【0015】
スイッチSW1は,例えば,pチャネルのトランジスタによって構成され,指定信号C11がローレベルのときオン状態となり,ハイレベルのときオフ状態となる。スイッチSW1がオン状態になると,トランジスタTrpは第1基準電圧Vref1に応じた一定の電流を容量素子12に流し込む。これによって,容量素子12は定電流で充電され,ノードZの電圧TRIが上昇する。このときの電圧波形は直線状となり,その傾きは充電する電流の大きさに応じたものとなる。スイッチSW1及びトランジスタTrpは指定信号C11(個別指定信号)によってオン・オフが制御され,オン状態で容量素子12へ一定の電流を流し込み,オフ状態で一定の電流を遮断する第1定電流源として機能する。
【0016】
一方,スイッチSW2は,例えば,nチャネルのトランジスタによって構成され,指定信号C12がハイレベルのときオン状態となり,ローレベルのときオフ状態となる。スイッチSW2がオン状態になると,トランジスタTrnは第2基準電圧Vref2に応じた一定の電流を容量素子12から流し出す。これによって,容量素子12は定電流で放電され,ノードZの電圧TRIが下降する。このときの電圧波形は直線状となり,その傾きは放電する電流の大きさに応じたものとなる。スイッチSW2及びトランジスタTrnは指定信号C12(個別指定信号)によってオン・オフが制御され,オン状態で容量素子12から一定の電流を流し出し,オフ状態で一定の電流を遮断する第2定電流源として機能する。
【0017】
この例では,容量素子12に対して充電する電流と放電する電流が等しくなるように電流供給ユニットU1のトランジスタサイズを設定している。なお,この点は,電流供給ユニットU2?U5においても同様である。このように容量素子12に対して一定の電流を充電・放電することによって,ノードZの電圧を三角波TRIとして取り出すことが可能となる。振幅が一定であるとすれば,三角波の周波数は波形の傾きで決定される。本実施形態では,三角波の振幅を一定として,指定信号C11,C12,C21,C22,C31,C32,C41,C42,C51,及びC52の論理レベルを所定のシーケンスで切り替えることによって三角波TRIの周波数を調整している。
【0018】
より具体的には,容量素子12の容量値を10PFとしたとき,例えば,電流供給ユニットU1の電流値を3μA,電流供給ユニットU2の電流値を2.25μA,電流供給ユニットU3の電流値を1.5μA,電流供給ユニットU4の電流値を0.75μA,電流供給ユニットU5の電流値を24μAとする。そして,三角波TRIの周波数を480KHzに設定する場合は電流供給ユニットU5を有効にし,三角波TRIの周波数を490KHzに設定する場合は電流供給ユニットU5及びU4を有効にし,三角波TRIの周波数を500KHzに設定する場合は電流供給ユニットU5及びU3を有効にし,三角波TRIの周波数を510KHzに設定する場合は電流供給ユニットU5及びU2を有効にし,三角波TRIの周波数を520KHzに設定する場合は電流供給ユニットU5及びU1を有効にする。なお,各電流供給ユニットU1?U5で設定される電流値は,トランジスタTrp及びTrnのサイズ(ゲート幅/ゲート長)を調整することによって設定することができる。
【0019】
次に,比較回路13はコンパレータ131及び132を備える。コンパレータ131及び132の正入力端子には三角波TRIが供給され,コンパレータ131の負入力端子には上限電圧ULMTが供給される一方,コンパレータ132の負入力端子には下限電圧DLMTが供給される。
次に,クロック信号生成回路14は,インバータ141,ナンド回路142及び143,Dフリップフロップ144を備える。インバータ141,ナンド回路142及び143はSRフリップフロップを構成する。SRフリップフロップの出力信号はナンド回路142の出力端子から第1クロック信号CK1として取り出される。SRフリップフロップは,インバータ141の入力信号がローレベルからハイレベルに遷移すると第1クロック信号CK1の論理レベルをハイレベルにセットし,ナンド回路143に入力信号がハイレベルからローレベルに遷移すると第1クロック信号CK1の論理レベルをローレベルにリセットする。また,Dフリップフロップ144はデータ入力端子Dとデータ出力端子QN(反転出力端子)が接続されているので,クロック入力端子に供給される第1クロック信号CK1を2分周して第2クロック信号CK2として出力する。Dフリップフロップ144は2分周回路として機能する。このように2分周して第2クロック信号CK2を生成するので,第1クロック信号CK1のデューティ比は50%でなくても,第2クロック信号CK2のデューティ比は50%にすることができる。したがって,上述した電流供給ユニットU1?U5において放電の電流値と充電の電流値が不一致であってもデューティ比が50%の第2クロック信号CK2を出力することができる。
【0020】
ここで,図2を参照して,比較回路13及びクロック信号発生回路14の動作を説明する。時刻t1において三角波TRIが下限電圧DLMTを下回ると,コンパレータ132の出力信号Xがハイレベルからローレベルに遷移する。そして,時刻t2において三角波TRIが下限電圧DLMTを上回ると,出力信号Xがローレベルからハイレベルに遷移する。出力信号Xがローレベルになると,第1クロック信号CK1の論理レベルがローレベルにリセットされる。
時刻t3において三角波TRIが上限電圧ULMTを上回ると,コンパレータ131の出力信号Y1はローレベルからハイレベルに遷移する。そして,時刻t4において三角波TRIが上限電圧ULMTを下回ると,出力信号Y1がハイレベルからローレベルに遷移する。出力信号Y1はインバータ141によって論理レベルが反転され,信号Y2としてナンド回路142に供給される。信号Y2がローレベルになると,第1クロック信号CK1の論理レベルがハイレベルにセットされる。これによって,三角波TRIが下限電圧DLMTを下回るか,あるいは上限電圧ULMTを上回ると,第1クロック信号CK1の論理レベルが反転する。
【0021】
次に,図1に示す制御部20について,図3に示すタイミングチャートを参照しつつ説明する。制御部20は,Dフリップフロップ201,5分周回路202,インバータ203,ナンド回路N1?N4,及びアンド回路A1?A4を備える。Dフリップフロップ201は第1クロック信号CK1を2分周して第2クロック信号CK2を生成する。5分周回路202は,カウンタによって構成されており,第2クロック信号CK2を計数し,所定の計数値でハイレベルとなる第1?第4分周信号D1?D4を生成する。この例では,計数値が「1」?「4」のとき第1?第4分周信号D1?D4が各々ハイレベルとなる。そして,計数値が「5」のとき,第1?第4分周信号D1?D4は全てローレベルとなって計数値がリセットされ,次に第1クロック信号CK1がローレベルからハイレベルに立ち上がると,計数値が「1」となる。この結果,図3に示すように第1?第4分周信号D1?D4の論理レベルは排他的に順次ハイレベルとなる。
【0022】
ここで,電流供給ユニットU5のスイッチSW1及びスイッチSW2には,第1クロック信号CK1が指定信号C51及びC52として供給される。したがって,電流供給ユニットU5は,常時,有効となり,第1クロック信号CK1の論理レベルの遷移に同期してスイッチSW1とスイッチSW2とが交互にオン状態となる。
【0023】
次に,電流供給ユニットU1?U4のスイッチSW1にはナンド回路N1?N4の出力信号が指定信号C11,C21,C31,及びC41として供給される一方,スイッチSW2にはアンド回路A1?A4の出力信号が指定信号C12,C22,C32,及びC42として供給される。電流供給ユニットU3に着目すると,アンド回路A3の一方の入力端子には第1分周信号D1が供給される一方,その他方の入力端子には第1クロック信号CK1が供給される。このため,指定信号C32は,図3に示すように第1分周信号D1がハイレベルとなる第1期間T1において,第1クロック信号CK1がハイレベルとなる期間においてのみハイレベルとなる。また,ナンド回路N3の一方の入力端子には第1分周信号D1が供給される一方,その他方の入力端子には反転第1クロック信号CK1’が供給される。このため,指定信号C31は,図3に示すように第1分周信号D1がハイレベルとなる第1期間T1において,反転第1クロック信号CK1’がハイレベルとなる期間においてのみローレベルとなる。
【0024】
この結果,電流供給ユニットU3は,期間T1において有効となり,他の期間T2?T5においては無効となる。上述したように電流供給ユニットU5は,常時,有効となるので,期間T1では,電流供給ユニットU3及びU5によって三角波TRIの周波数が設定される。同様に,期間T2では,電流供給ユニットU1及びU5によって三角波TRIの周波数が設定され,期間T3では,電流供給ユニットU2及びU5によって三角波TRIの周波数が設定され,期間T4では,電流供給ユニットU4及びU5によって三角波TRIの周波数が設定され,期間T5では,電流供給ユニットU5によって三角波TRIの周波数が設定される。そして,期間T1?T5を1シーケンスとしたとき,これを繰り返して第1クロック信号CK1及び第2クロック信号CK2が生成される。すなわち,制御部20は,各周波数の第1クロック信号CK1のパルス数(この例では「2」)が等しくなるように,指定信号C11?C52が指定する複数の周波数を切り替える。
【0025】
図4は,三角波TRI,第1クロック信号CK1及び第2クロック信号CK2の関係を示すタイミングチャートである。上述したように電流供給ユニットU3及びU5が有効の場合,三角波TRIの周波数が500KHzになるように容量素子12に対する電流が設定されるから,期間T1において第1クロック信号CK1の周波数は1MHz,第2クロック信号CK2の周波数は500KHzとなる。同様に,期間T2では,電流供給ユニットU1及びU5が有効となるので,第1クロック信号CK1の周波数は1.04MHz,第2クロック信号CK2の周波数は520KHzとなる。期間T3では,電流供給ユニットU2及びU5が有効となるので,第1クロック信号CK1の周波数は1.02MHz,第2クロック信号CK2の周波数は510KHzとなる。期間T4では,電流供給ユニットU4及びU5が有効となるので,第1クロック信号CK1の周波数は0.98MHz,第2クロック信号CK2の周波数は490KHzとなる。期間T5では,電流供給ユニットU5が有効となるので,第1クロック信号CK1の周波数は0.96MHz,第2クロック信号CK2の周波数は480KHzとなる。」

上記摘記事項の記載及び図面,並びにこの分野における技術常識を考慮すると,

a.上記摘記事項の特に【0012】段落を参照すれば,引用例1に記載されたものは「第1クロック信号CK1」を発生させており,【0025】段落を参照すれば「第1クロック信号CK1」の周波数は,1MHz→1.04MHz→1.02MHz→0.98MHz→0.96MHzのように時間と共に変化していることが明らかである。

b.上記摘記事項を参照すれば,引用例1に記載されたものは「容量素子12」を備えており,【0014】段落によれば,「容量素子12」は電流供給ユニットU1?U5によって電荷の充放電が実行される。そして,【0020】段落,図2,図4を参照すれば,容量素子12に充放電される時間が第1クロックCK1の周期となっていることは明らかである。

c.上記摘記事項を参照すれば,引用例1に記載されたものは「5分周回路202」を備えており,図3の第1?第4分周信号D1?D4の波形をみると,「5分周回路202」は周波数は同じだが位相の異なる第1?第4分周信号D1?D4を生成するものといえる。

d.上記摘記事項の特に【0023】段落,及び図1を参照すれば,引用例1では,第1?第4分周信号D1?D4のそれぞれは,複数のアンド回路及びナンド回路に別々に入力され,上記アンド回路及びナンド回路の出力として複数の指定信号C11?C42が出力される。そして,特に図3を参照すれば,複数の指定信号C11?C42は,1シーケンスの中のそれぞれ異なるタイミングでレベルが変化しているといえる。

e.上記摘記事項によれば,引用例1はトランジスタにより構成される複数のスイッチSW1,SW2,及び複数のトランジスタTrn,Trpを備えており,これらは,複数の指定信号C11?C42によってオン・オフが制御されている。さらに,これらによってノードZへ電流を流し込んだり引き込んだりしていることは明らかであり,これにより容量素子12の充電時間と放電時間が変化し,その結果として第1クロック信号CK1の周波数が変化している。

したがって,上記摘記した引用例の記載及び図面を総合すると,引用例1には以下のような発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明1)
「 周波数が時間の経過とともに変化する第1クロック信号CK1を発生させるスペクトラム拡散回路であって,
前記スペクトラム拡散回路は,
容量素子12を備えており,当該容量素子12に充放電される時間が第1クロックCK1の周期になっており,
第1クロック信号CK1を2分周した第2クロック信号CK2を受け,周波数は同じだが位相の異なる第1?第4分周信号D1?D4を生成する5分周回路202と
上記第1?第4分周信号D1?D4をそれぞれ入力し,1シーケンスの中のそれぞれ異なるタイミングでレベルが変化する複数の指定信号C11?C42を出力する,複数のアンド回路及びナンド回路よりなる構成と,
トランジスタにより構成される複数のスイッチSW1,SW2,及び複数のトランジスタTrn,Trpを備えており,前記複数の指定信号C11?C42がスイッチSW1,SW2を制御してオン・オフ制御することにより,ノードZへ電流を流し込んだり引き込んだりし,これにより容量素子12の充電時間と放電時間を制御し,第1クロック信号CK1の周波数を変化させる構成と,
を含むスペクトラム拡散装置。」


イ 引用発明2
原査定の拒絶理由に引用された特開2000-278097号公報(平成12年10月6日公開。以下,「引用例2」という。)には,「パルス発振回路」に関して,主に図1及びそれに関連する発明の詳細な説明の欄の記載,並びにこの分野における技術常識を総合すれば,以下のような発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明2)
「 周波数が変更可能なパルス信号を生成するパルス発振回路であって,
コンデンサ6を含み,当該コンデンサ6に充放電する時間を周期とするパルス信号を生成し,
パルス信号の周期を変更するために,電流源15が流す入力電流Iinを外部から可変設定することができるように構成された,
パルス発振回路。」


(2)対比・判断
ア 本願発明1を引用発明1と対比すると,

a.引用発明1の「スペクトラム拡散装置」は,「第1クロック信号CK1」を生成しているから,クロック生成回路ということができ,本願発明1の「クロック発生回路」に対応する。

b.引用発明1の「第1クロック信号CK1],「容量素子12」は,本願発明1の「クロック信号」,「充放電コンデンサ」にそれぞれ相当する。

c.引用発明1において「容量素子12」とこれに充放電を行う部分は,クロックを発生させているから,本願発明1の「クロック発生部」に相当する。

d.引用発明1の「5分周回路」と本願発明1の「分周回路」とは,分周回路であり,複数の分周信号を生成する点では共通するものの,引用発明1の「5分周回路」は「第1クロック信号CK1を2分周した第2クロック信号CK2を受け,周波数は同じだが位相の異なる第1?第4分周信号D1?D4を生成する」のに対して,本願発明1の「分周回路」では「前記クロック信号を受信して分周することにより,それぞれ周波数の異なる複数の分周信号を生成する」点で相違する。

e.引用発明1の「1シーケンス」は,本願発明1の「1周期」に相当する。また,引用発明1の「指定信号C11?C42」は,本願発明1の「複数の制御信号」に対応する。そうすると,引用発明1の「複数のアンド回路及びナンド回路よりなる構成」が「1シーケンスの中のそれぞれ異なるタイミングでレベルが変化する複数の指定信号C11?C42を出力する」ことは,本願発明1の「パルス制御部」が「1周期においてそれぞれ異なるタイミングでレベルがそれぞれ変化する複数の制御信号を生成する」ことに対応する。

f.引用発明1の「トランジスタにより構成される複数のスイッチSW1,SW2」は,スイッチ動作をするトランジスタであるから,本願発明1の「複数のトランジスタ」に相当する。そして,引用発明1の「複数のトランジスタTrn,Trp」と本願発明1の「複数の抵抗」は電流を規定する素子として機能していることは明らかであり,この点で両者は共通する。
また引用発明1では,容量素子12の「充電時間と放電時間を制御」しているのに対して,本願発明1では,充放電コンデンサの「充電の時間を制御」している点で相違はするものの,充放電コンデンサの「時間特性を制御」しているといえる点では両者は共通する。
また,引用発明1においてノードZへ流し込んだり引き込んだりする電流が,本願発明1の「調整電流」に対応する。さらに,引用発明1の「ノードZ」が,本願発明1の「ノード」に対応する。

g.引用発明1の「トランジスタにより構成される複数のスイッチSW1,SW2,及び複数のトランジスタTrn,Trpを備え・・・第1クロック信号CK1の周波数を変化させる構成」は,「ノードZへ電流を流し込んだり引き込んだり」して電流を制御しているから,これを本願発明1のように「電流制御部」と称するのは任意である。
また,引用発明1の「5分周回路202」,「アンド回路及びナンド回路よりなる構成」,及び「トランジスタにより構成される複数のスイッチSW1,SW2,及び複数のトランジスタTrn,Trpを備え・・・第1クロック信号CK1の周波数を変化させる構成」,を合わせて「電流量調整部」と称するのは任意である。

したがって,本願発明1と引用発明1は以下の点で一致ないし相違するものと認められる。

(一致点)
「 周波数が時間の経過と共に変更するクロック信号を生成するクロック発生回路であって,
前記クロック発生回路は,
充放電コンデンサを含み,その充放電コンデンサに充放電する時間を周期とする前記クロック信号を生成するクロック発生部と,
前記クロック信号の周期を変更する電流量調整部と
を有し,
前記電流量調整部は,
複数の分周信号を生成する分周回路と,
前記生成された複数の分周信号から,1周期においてそれぞれ異なるタイミングでレベルがそれぞれ変化する複数の制御信号を生成するパルス制御部と,
複数のトランジスタ及び複数の電流を規定する素子を有し,前記生成された複数の制御信号の前記複数のトランジスタへの入力に応じて,前記複数の電流を規定する素子を介して調整電流を前記クロック発生回路のノードに流し込み又は当該ノードから引き込むことによって,前記クロック信号の周期を変更するように前記充放電コンデンサの時間特性を制御する電流制御部と
を含むことを特徴とするクロック発生回路。」

(相違点1)
「分周回路」に関し,本願発明1では,「前記クロック信号を受信して分周することにより,それぞれ周波数の異なる複数の分周信号を生成する」のに対して,引用発明1では「5分周回路」であり,クロック信号を2分周した信号を受け,周波数は同じだが位相の異なる複数の分周信号を生成する点。

(相違点2)
「パルス制御部」に関し,本願発明1では,「前記生成された複数の分周信号を組み合わせて論理演算を行うことにより」制御信号を生成しているのに対して,引用発明1では複数の分周信号が別々にアンド回路又はナンド回路に入力されて制御信号が生成される点。

(相違点3)
「複数の電流を規定する素子」として,本願発明1では,「複数の抵抗」を用いているのに対して,引用発明1では「複数のトランジスタTrn,Trp」を用いている点。

(相違点4)
「前記充放電コンデンサの時間特性を制御する」点に関して,本願発明1では充放電コンデンサの「充電の時間」が制御されているのに対して,引用発明1では「充電時間と放電時間」が制御されている点。

上記相違点について検討する。
上記相違点1及び相違点2について合わせて検討すると,本願発明1ではクロック信号を分周して,それぞれ周波数の異なる複数の分周信号を生成し,当該複数の分周信号を組み合わせて論理演算を行うことにより制御信号を得ているのに対して,引用発明1では,クロック信号を2分周した信号を5分周回路で分周して,周波数は同じだが位相の異なる複数の分周信号を生成し,当該複数の分周信号を別々にアンド回路又はナンド回路に入力して制御信号を得ており,複数の分周信号を組み合わせて論理演算は行っていない。そして,複数の分周信号を組み合わせて論理演算を行う制御信号を得るような構成は引用例1に何らの示唆もなく,また,引用例2にも記載も示唆もされておらず,さらに,周知技術ということもできない。
したがって,相違点1,2とした相違点は,当業者が引用発明1に基づき,引用発明2や周知技術を組み合わせても,当業者が容易に想到できたものということはできない。
よって,本願発明1は,引用発明1に基づき,引用発明2や周知技術を組み合わせても,当業者が容易に想到できたものということはできない。


イ 本願発明1を引用発明2と対比・検討すると,
引用発明2は,少なくとも上記相違点1,2とした本願発明1の構成を有していない。そして,上記アでも検討したように,この点について引用例2に何らの示唆もなく,また,引用例1にも記載も示唆もされていない。さらに,周知技術ということもできない。そうしてみると,相違点1,2とした本願発明1の構成は,当業者が引用発明2に基づき,引用発明1や周知技術を組み合わせても,当業者が容易に想到できたものということはできない。
したがって,本願発明1は,引用発明2に基づき,引用発明1や周知技術を組み合わせても,当業者が容易に想到できたものということはできない。


ウ 本願発明2?5について
本願発明2?4は,上記相違点1,2とした本願発明1の構成を含め,本願発明1の構成をすべて有した上で,さらに構成を限定したものである。また,本願発明5は上記相違点1,2とした本願発明1の構成と同様の構成を含むものである。
したがって,本願発明2?5は,本願発明1と同様の理由により当業者が容易に想到できたものということはできない。


新規性について
本願発明1?5は,既に検討したように引用発明1,2と実質的な相違点を有するから,引用発明1,2と同一ということはできない。


第5 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
平成28年1月4日付け拒絶理由通知書の概要は以下のとおりである。
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項1の「前記複数の抵抗を介して調整電流を前記クロック発生回路のノードに流し込み又は当該ノードから引き込む」という記載の示す構成が不明瞭である。当該記載が,複数の抵抗に同時に調整電流が流れることを意味しているとすると,図3の実施例を含まないことになり,実施例との関係が不明瞭である。

イ 請求項3の「前記電流制御部の第1抵抗部の抵抗値を変更することで前記充放電コンデンサの前記充放電電流を大きくする方向に制御させ、前記第2抵抗部の抵抗値を変更することで前記充放電コンデンサの前記充放電電流を小さくする方向に制御させる」は,「前記電流制御部の第1抵抗部の抵抗値を変更することで前記充放電コンデンサの前記充電電流を大きくする方向に制御させ、前記第2抵抗部の抵抗値を変更することで前記充放電コンデンサの前記充電電流を小さくする方向に制御させる」の誤りか。(請求項2の「充放電電流」についても同様に改められたい。)

ウ 請求項5の記載では,上記1.と同様の理由により本願発明の構成が不明瞭であり,実施例との関係も不明瞭である。

2.当審拒絶理由の判断
(1)平成28年3月24日付け手続補正書により,請求項1の「複数の抵抗」という記載を「オンするトランジスタに接続された抵抗」と補正することにより,当審拒絶理由アは解消した。

(2)平成28年3月24日付け手続補正書により,請求項2,3の「充放電電流」という記載を「充電電流」と補正することにより,当審拒絶理由イは解消した。

(3)平成28年3月24日付け手続補正書により,請求項5の「複数の抵抗」及び「充放電の時間」という記載を,「オンするトランジスタに接続された抵抗」及び「充電の時間」と補正することにより,当審拒絶理由ウは解消した。


第6 むすび
以上のとおり,本願の特許請求の範囲の請求項1?5に係る発明は,引用発明1,2と同一ではなく,引用発明1,2及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく,また記載の不備も有さないから,特許法29条1項3号,同法29条2項,及び同法36条6項に違反するものではなく,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-05-06 
出願番号 特願2009-113914(P2009-113914)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H03K)
P 1 8・ 113- WY (H03K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石田 勝  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 萩原 義則
山本 章裕
発明の名称 クロック発生回路、電源供給システム及びクロック信号の周波数変更方法  
代理人 江口 昭彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  

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