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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A01N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A01N
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A01N
管理番号 1314138
審判番号 不服2014-20589  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-10 
確定日 2016-05-06 
事件の表示 特願2011-517117「イソオキサゾリン化合物Iを含む殺有害生物活性混合物」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月14日国際公開、WO2010/003923、平成23年10月27日国内公表、特表2011-527307〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年7月6日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年7月9日(US)米国〕を国際出願日とする出願であって、
平成25年11月15日付けの拒絶理由通知に対し、平成26年5月19日付けで手続補正書の提出がなされ、その後、平成26年5月21日付けで上申書の提出がなされ、
平成26年6月6日付けの拒絶査定に対し、平成26年10月10日付けで審判請求がなされるとともに手続補正書の提出がなされ、その後、平成26年12月18日付けで上申書の提出がなされたものである。

第2 平成26年10月10日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成26年10月10日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1.補正の内容
平成26年10月10日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、
補正前の請求項1の「活性化合物として、
1)式I:
【化1】

[式中、Aは、A-1、A-4またはA-6:
【化2】

から選択され、ここで#は式I中の結合を表し、
R^(1)、R^(3)は、互いに独立して、水素、クロロまたはCF_(3)から選択され;
R^(2)は、水素またはクロロであり;
R^(4)は、水素またはCH_(3)であり、
R^(5)は水素であり、あるいは
R^(4)とR^(5)は共に、それらが結合する芳香族フェニル環Cと一緒になってナフチル環を形成する架橋1,3-ブタジエニル基である]で表される少なくとも1種のイソオキサゾリン化合物I、またはその互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマーもしくは塩と、
2)以下のもの:
A.2 GABA依存性クロライドチャネルアンタゴニストであって、アセトプロール、エチプロール、フィプロニル、ピラフルプロール、ピリプロール、バニリプロールおよびフェニルピラゾール化合物II.A^(2.1):
【化3】

からなるフェニルピラゾール系化合物のクラスから選択されるもの;
A.3 ナトリウムチャネルモジュレーターであって、アレトリン、ビフェントリン、ベータ-シフルトリン、シフルトリン、ラムダ-シハロトリン、シペルメトリン、アルファ-シペルメトリン、ベータ-シペルメトリン、ゼータ-シペルメトリン、デルタメトリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フルシトリネート、タウ-フルバリネート、メトフルトリン、ペルメトリン、プロフルトリン、ピレトリン(除虫菊)、シラフルオフェン、およびトラロメトリンからなるピレスロイド系化合物のクラスから選択されるもの;
A.4 ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト/アンタゴニストであって、アセタミプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、イミダクロプリド、ニテンピラム、スピノサド(アロステリックアゴニスト)、スピネトラム(アロステリックアゴニスト)、チアクロプリド、チアメトキサムおよびAKD-1022からなるネオニコチノイド系化合物のクラスから選択されるもの;
A.5 クロライドチャネル活性化因子であって、アバメクチン、エマメクチン安息香酸塩、レピメクチンまたはミルベメクチンから選択されるもの;
A.7 酸化的リン酸化に影響を及ぼす化合物であって、ジアフェンチウロン、フェンブタチンオキシド、プロパルギットまたはクロルフェナピルから選択されるもの;
A.12 脂質合成阻害剤であって、スピロジクロフェン、スピロメシフェンまたはスピロテトラマトから選択されるもの;
A.13 以下からなる一群の様々な化合物:フロニカミドおよびフルベンジアミン
からなる群Aから選択される少なくとも1種の活性化合物II
とを含む殺有害生物剤混合物であって、ただし、殺有害生物剤混合物が4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]ベンズアミドと、イミダクロプリド、チアメトキサムまたはフロニカミドとの混合物を含まない、前記殺有害生物剤混合物。」との記載を、
補正後の請求項1の「活性化合物として、
1)式I:
【化1】

[式中、Aは、A-6:
【化2】

であり、ここで#は式I中の結合を表し、
R^(1)、R^(3)は、互いに独立して、水素、クロロまたはCF_(3)から選択され;
R^(2)は、水素またはクロロであり;
R^(4)は、水素またはCH_(3)であり、
R^(5)は水素であり、あるいは
R^(4)とR^(5)は共に、それらが結合する芳香族フェニル環Cと一緒になってナフチル環を形成する架橋1,3-ブタジエニル基である]
で表される少なくとも1種のイソオキサゾリン化合物I、またはその互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマーもしくは塩と、
2)アルファ-シペルメトリン、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、チアメトキサム、アバメクチンおよびフロニカミドからなる群から選択される少なくとも1種の活性化合物II
とを含む殺有害生物剤混合物であって、ただし、殺有害生物剤混合物が4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]ベンズアミドと、イミダクロプリド、チアメトキサムまたはフロニカミドとの混合物を含まない、前記殺有害生物剤混合物。」との記載に改める補正を含むものである。

2.補正の適否
(1)補正の目的
上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1における式Iの「Aは、A-1、A-4またはA-6:」との記載部分を補正後の請求項1において「Aは、A-6:」との記載に改めることにより請求項に記載した発明特定事項を限定する補正を含むものであって、その補正前の請求項1に記載される発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について検討する。

(2)新規性
ア.公知刊行物及びその記載事項
本願優先日前の平成19年7月12日に頒布された刊行物であって、原査定において「引用文献1」として引用された「国際公開第2007/079162号」には、和訳にして、次の記載がある。

摘記1a:請求項8、10、12及び13
「8.次の群から選択される請求項1に記載の化合物:…
4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-(トリフルオロメチル)-3-イソオキサゾリル]-N-(2-ピリジニルメチル)-1-ナフタレンカルボキサミド、…
4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-(トリフルオロメチル)-3-イソオキサゾリル]-N-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2-オキソエチル]-1-ナフタレンカルボキサミド、…。
10.生物学的に有効な量の請求項1に記載の化合物と、界面活性剤、固体希釈剤および液体希釈剤からなる群から選択される少なくとも1つの追加の成分とを含む、無脊椎有害生物を防除するための組成物であって、場合により、生物学的に有効な量の少なくとも1つの追加の生物学的に活性な化合物または薬剤をさらに含む組成物。…
12.少なくとも1つの追加の生物学的に活性な化合物または薬剤が、アバメクチン、…アセタミプリド、…クロチアニジン、…シペルメトリン、…フロニカミド、…イミダクロプリド、…ニテンピラム、…チアクロプリド、チアメトキサム、…からなる群から選択される請求項10に記載の組成物。
13.少なくとも1つの追加の生物学的に活性な化合物または薬剤が、アバメクチン、アセタミプリド、…クロチアニジン、…シペルメトリン、…フロニカミド、…イミダクロプリド、…ニテンピラム、…チアクロプリド、チアメトキサム、…からなる群から選択される請求項12に記載の組成物。」

摘記1b:第85頁第28?35行
「特定の場合には、本発明の化合物と、他の生物学的に活性な(特に、無脊椎有害生物防除)化合物または薬剤(すなわち、活性成分)との組み合わせは、付加的を上回る(すなわち、相乗的な)効果を生じることができる。有効な防除を保証しながら環境に放出される活性成分の量を低減することは常に望ましい。農業的に満足できるレベルの無脊椎有害生物の防除を提供する適用量において無脊椎有害生物の防除活性成分の相乗効果が起こる場合、このような組み合わせは、作物の生産コストを低下し、環境負荷を低減するために有利であり得る。」

摘記1c:第86頁第9行?第88頁表A
「表Aは、本発明の混合物、組成物および方法を例証する、式1の化合物と他の無脊椎有害生物防除剤との特定の組み合わせを記載している。表Aの1列目には、特定の無脊椎有害生物防除剤(例えば、1行目では「アバメクチン」)が記載される。表Aの2列目には、無脊椎有害生物防除剤の作用形態(既知であれば)または化学分類が記載される。表Aの3列目には、式1の化合物、そのN-オキシドまたはその塩に対して無脊椎有害生物防除剤が適用され得る量の重量比の範囲の実施形態が記載される(例えば、重量により、式1の化合物に対するアバメクチンの「50:1?1:50」)。従って、例えば、表Aの1行目には、特に、式1の化合物と、アバメクチンとの組み合わせが、50:1?1:50の間の重量比で適用され得ることが開示される。表Aの残りの行も同様に解釈されるべきである。さらに注目すべきは、表Aが、本発明の混合物、組成物および方法を例証する、式1の化合物と他の無脊椎有害生物防除剤との特定の組み合わせを記載しており、適用量の重量比範囲のさらなる実施形態を含むことである。
表A
┌──────────┬────────────┬───────┐
│無脊椎有害生物防除剤│作用モード又は化学的種類│典型的な重量比│
├──────────┼────────────┼───────┤
│アバメクチン │大環状ラクトン │ 50:1?1:50 │
│アセタミプリド │ネオニコチノイド │ 150:1?1:200 │
│ … │ … │ … │
│クロチアニジン │ネオニコチノイド │ 100:1?1:400 │
│ … │ … │ … │
│シペルメトリン │ナトリウムチャネル調節剤│ 150:1?1:200 │
│ … │ … │ … │
│フロニカミド │ │ 200:1?1:100 │
│ … │ … │ … │
│イミダクロプリド │ネオニコチノイド │1000:1?1:1000│
│ … │ … │ … │
│ニテンピラム │ネオニコチノイド │ 150:1?1:200 │
│ … │ … │ … │
│チアクロプリド │ネオニコチノイド │ 100:1?1:200 │
│チアメトキサム │ネオニコチノイド │1250:1?1:1000│
│ … │ … │ … │
└──────────┴────────────┴───────┘」

摘記1d:第89頁第27行?第96頁表B
「表Bにおいて以下に記載されるのは、式1の化合物(化合物番号は索引表A?Cの化合物を指す)および追加の無脊椎有害生物防除剤を含む特定の組成物の実施形態である。
表B

┌─────┬───────────────────┐
│混合物番号│化合物番号 及び 無脊椎有害生物防除剤│
├─────┼───────────────────┤
│ B-1 │ 2 及び アバメクチン │
│ B-2 │ 2 及び アセタミプリド │
│ … │ … │
│ H-1 │ 51 及び アバメクチン │
│ H-2 │ 51 及び アセタミプリド │
│ … │ … │
│ H-13 │ 51 及び クロチアニジン │
│ … │ … │
│ H-16 │ 51 及び シペルメトリン │
│ … │ … │
│ H-30 │ 51 及び フロニカミド │
│ … │ … │
│ H-35 │ 51 及び イミダクロプリド │
│ … │ … │
│ H-43 │ 51 及び ニテンピラム │
│ … │ … │
│ H-58 │ 51 及び チアクロプリド │
│ H-59 │ 51 及び チアメトキサム │
│ … │ … │
└─────┴───────────────────┘」

摘記1e:第103頁第30行?第105頁検索表A


化合物 W (R^(2))_(m) R^(4) R^(5) …
2(Ex.2) O 3-Cl,5-Cl H CH_(2)-2-ピリジニル **…
51 O 3-Cl,5-Cl H CH_(2)CONHCH_(2)CF_(3) *
…* ^(1)H NMRデータに関しては索引表Dを参照のこと
** ^(1)H NMRデータに関しては実施例を参照のこと」

摘記1f:第106頁第5行?第109頁第3行
「索引表D
化合物番号 ^(1)H NMRデータ(特に指示がない限りCDCl_(2)溶液)^(a) …
51 δ8.82(d,1H),8.26(d,1H),7.67-7.46(m,7H),7.09(m,2H),4.28(d,2H),4.25(d,1H),3.96(m,2H),3.88(d,1H)…
a ^(1)H NMRデータはテトラメチルシランからのppm低磁場における。カップリングは、(s)が一重項、(d)が二重項、(t)が三重項、(q)が四重項、(m)が多重項、(dd)が二重項の二重項、(dt)が三重項の二重項、(br s)が広域一重項、(br t)が広域二重項により示される。」

イ.引用文献1に記載された発明
摘記1aの「生物学的に有効な量の請求項1に記載の化合物…を含む、無脊椎有害生物を防除するための組成物であって、…生物学的に有効な量の少なくとも1つの追加の生物学的に活性な化合物または薬剤をさらに含む組成物。…追加の生物学的に活性な化合物または薬剤が、アバメクチン、アセタミプリド、…クロチアニジン、…シペルメトリン、…フロニカミド、…イミダクロプリド、…ニテンピラム、…チアクロプリド、チアメトキサム、…からなる群から選択される…組成物。」との記載、
摘記1bの「本発明の化合物と、他の生物学的に活性な(特に、無脊椎有害生物防除)化合物または薬剤(すなわち、活性成分)との組み合わせは、付加的を上回る(すなわち、相乗的な)効果を生じることができる。」との記載、
摘記1dの混合物番号H-1、H-2、H-13、H-16、H-30、H-35、H-43、H-58及びH-59の実施形態の記載、並びに
摘記1eの『化合物51』についての記載からみて、引用文献1には、
『生物学的に有効な量の

で示される化合物51と、生物学的に有効な量のアバメクチン、アセタミプリド、クロチアニジン、シペルメトリン、フロニカミド、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド及びチアメトキサムからなる群から選択される追加の生物学的に活性な化合物または薬剤を含む無脊椎有害生物を防除するための組成物。』についての発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

ウ.対比・判断
補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「化合物51」は、本願明細書の段落0044の「C.I.402」に合致する化合物であって、補正発明の「式I」において、AがA-6(-CH_(2)CONHCH_(2)CF_(3))であり、R^(1)がクロロであり、R^(3)がクロロであり、R^(2)が水素であり、R^(4)とR^(5)が共に、それらが結合する芳香族フェニル環Cと一緒になってナフチル環を形成する架橋1,3-ブタジエニル基である「イソオキサゾリン化合物I」に相当する活性化合物である。
引用発明の「アバメクチン、アセタミプリド、クロチアニジン、シペルメトリン、フロニカミド、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド及びチアメトキサムからなる群から選択される追加の生物学的に活性な化合物または薬剤」は、補正発明の「アルファ-シペルメトリン、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、チアメトキサム、アバメクチンおよびフロニカミドからなる群から選択される少なくとも1種の活性化合物II」に相当する活性化合物である。
引用発明の「無脊椎有害生物を防除するための組成物」は、イソオキサゾリン化合物と追加の活性化合物を含む混合物であるから、補正発明の「殺有害生物剤混合物」に相当する。
そして、補正発明の「ただし、殺有害生物剤混合物が4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]ベンズアミドと、イミダクロプリド、チアメトキサムまたはフロニカミドとの混合物を含まない」は、化合物Iが本願明細書の「C.I.240」であって、活性化合物IIがイミダクロプリド、チアメトキサムまたはフロニカミドである場合の混合物を除外したものである(平成26年5月21日付け上申書の第3頁第5?10行参照。)から、引用発明の化合物51(本願明細書の「C.I.402」のもの)の場合の混合物は、当該ただし書により除外されていない。
してみると、補正発明と引用発明は『活性化合物として、
1)式I:
【化1】

[式中、Aは、A-6:
【化2】

であり、ここで#は式I中の結合を表し、
R^(1)、R^(3)は、互いに独立して、水素、クロロまたはCF_(3)から選択され;
R^(2)は、水素またはクロロであり;
R^(4)は、水素またはCH_(3)であり、
R^(5)は水素であり、あるいは
R^(4)とR^(5)は共に、それらが結合する芳香族フェニル環Cと一緒になってナフチル環を形成する架橋1,3-ブタジエニル基である]
で表される少なくとも1種のイソオキサゾリン化合物I、またはその互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマーもしくは塩と、
2)アルファ-シペルメトリン、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、チアメトキサム、アバメクチンおよびフロニカミドからなる群から選択される少なくとも1種の活性化合物II
とを含む殺有害生物剤混合物であって、ただし、殺有害生物剤混合物が4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]ベンズアミドと、イミダクロプリド、チアメトキサムまたはフロニカミドとの混合物を含まない、前記殺有害生物剤混合物。』である点において一致し、両者に構成上の差異はない。
また、引用発明は、摘記1bの「本発明の化合物と、他の生物学的に活性な(特に、無脊椎有害生物防除)化合物または薬剤(すなわち、活性成分)との組み合わせは、付加的を上回る(すなわち、相乗的な)効果を生じることができる。」との記載にあるように、相乗的な効果を生じることができるものである。
したがって、補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(3)拡大先願
ア.先願明細書及びその記載事項
原査定において「先願4」として引用された優先権の主張を伴う特許出願であって、特許法第184条の15第2項の規定において読み替えて準用する同法第41条第3項の規定により「先の出願について出願公開がされたもの」とみなされる特願2010-514991号(特表2010-531883号)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、次の記載がある。

摘記4a:明細書の段落0322
「【0322】特定の場合には、本発明の化合物と、他の生物学的に活性な(特に、無脊椎有害生物防除)化合物または薬剤(すなわち、活性成分)との組み合わせは、付加的を上回る(すなわち相乗的な)効果を生じることができる。有効な有害生物の防除を保証しながら環境に放出される活性成分の量を低減することは常に望ましい。農業的に満足できるレベルの無脊椎有害生物の防除を提供する適用量において無脊椎有害生物防除活性成分の相乗効果が起こる場合、このような組み合わせは、作物の生産コストを低下し、環境負荷を低減するために有利であり得る。」

摘記4b:明細書の段落0332?0333
「【0332】表Bにおいて以下に記載されるのは、式1の化合物(化合物番号は索引表Aの化合物を指す)および追加の無脊椎有害生物防除剤を含む特定の組成物の実施形態である。
【0333】【表99】



摘記4c:明細書の段落0195及び0199
「【0195】合成実施例4 4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-(トリフルオロメチル)-3-イソオキサゾリル]-N-[2-オキソ-2-[(2,2,2-トリフルオロエチル)アミノ]エチル]-1-ナフタレンカルボキサミドの調製…
【0199】ステップE:4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-(トリフルオロメチル)-3-イソオキサゾリル]-N-[2-オキソ-2-[(2,2,2-トリフルオロエチル)アミノ]エチル]-1-ナフタレンカルボキサミドの調製…
^(1)HNMR(CDCl^(3)):δ8.82(d,1H)、8.26(d,1H)、7.46-7.67(m,7H)、7.09(m,2H)、4.28(d,2H)、4.25(d,1H)、3.96(m,2H)、3.88(d,1H)。」

摘記4d:明細書の段落0424?0427及び0429
「【0424】以下の試験は、特定の有害生物に対する本発明の化合物の防除効力を実証する。「防除効力」は、著しく低下した摂食を引き起こす無脊椎有害生物の発育の阻害(死亡も含む)を表す。しかしながら、化合物によって提供される有害生物の防除による保護はこれらの種に限定されない。化合物の説明については索引表A?Dを参照されたい。…
【0425】【表108】

…【0426】【表109】



…【0427】【表110】

…【0429】【表112】
…* ^(1)HNMRデータについては索引表Dを参照
** ^(1)HNMRデータについては合成実施例を参照」

摘記4e:明細書の段落0455?0457
「【0455】試験G ワタアブラムシ(Aphis gossypii)の防除を接触および/または浸透移行性手段によって評価するために、6?7日齢の綿植物を内部に有する小型開放容器で試験ユニットを構成した。これに、試験Fに記載されるカット-リーフ法に従って、葉片上の30?40匹の昆虫を事前に寄生させ、試験ユニットの土壌を砂層で被覆した。
【0456】試験化合物を配合し、250ppmで噴霧し、試験を3回繰り返した。噴霧の後、試験ユニットを成長チャンバ内に保持し、次に昆虫の死亡率について視覚的に評価した。
【0457】試験した化合物のうち、以下のものが、少なくとも80%の死亡率をもたらした:1、8、10、19、21、23、30、33、34、38、40、47、50、52、53、55、58、60、63、65、67、68、69、79、84、88、95、96、100、101、106、107、108、109、110、117、119、125、126、132、133、135、137、138、139、141、142、143および144。」

イ.先願4の当初明細書に記載された発明
摘記4aの「本発明の化合物と、他の生物学的に活性な(特に、無脊椎有害生物防除)化合物または薬剤(すなわち、活性成分)との組み合わせは、付加的を上回る(すなわち相乗的な)効果を生じることができる。…農業的に満足できるレベルの無脊椎有害生物の防除を提供する」との記載、
摘記4bの「表Bにおいて以下に記載されるのは、式1の化合物(化合物番号は索引表Aの化合物を指す)および追加の無脊椎有害生物防除剤を含む特定の組成物の実施形態である。」との記載、及び混合物番号「A-1」の化合物番号「1」及び「アバメクチン」を含む組成物の記載、並びに
摘記4dの『化合物1』についての記載からみて、先願4の願書に最初に添付した明細書には、
『無脊椎有害生物の防除を提供するための組成物であって、

で示される化合物1及びアバメクチンを含む組成物。』についての発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。

ウ.対比・判断
補正発明と先願発明を対比する。
補正発明の「化合物1」は、本願明細書の段落0044の「C.I.402」に合致する化合物であって、補正発明の「式I」において、AがA-6(-CH_(2)CONHCH_(2)CF_(3))であり、R^(1)がクロロであり、R^(3)がクロロであり、R^(2)が水素であり、R^(4)とR^(5)が共に、それらが結合する芳香族フェニル環Cと一緒になってナフチル環を形成する架橋1,3-ブタジエニル基である「イソオキサゾリン化合物I」に相当する活性化合物である。
先願発明の「アバメクチン」は、補正発明の「アルファ-シペルメトリン、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、チアメトキサム、アバメクチンおよびフロニカミドからなる群から選択される少なくとも1種の活性化合物II」に相当する活性化合物である。
先願発明の「無脊椎有害生物の防除を提供するための組成物」は、イソオキサゾリン化合物とアバメクチンの混合物であるから、補正発明の「殺有害生物剤混合物」に相当する。
そして、補正発明の「ただし、殺有害生物剤混合物が4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]ベンズアミドと、イミダクロプリド、チアメトキサムまたはフロニカミドとの混合物を含まない」は、化合物Iが本願明細書の「C.I.240」であって、活性化合物IIがイミダクロプリド、チアメトキサムまたはフロニカミドである場合の混合物を除外したものであるから、先願発明の化合物1の場合の混合物は、当該ただし書により除外されていない。
してみると、補正発明と先願発明は『活性化合物として、
1)式I:
【化1】

[式中、Aは、A-6:
【化2】

であり、ここで#は式I中の結合を表し、
R^(1)、R^(3)は、互いに独立して、水素、クロロまたはCF_(3)から選択され;
R^(2)は、水素またはクロロであり;
R^(4)は、水素またはCH_(3)であり、
R^(5)は水素であり、あるいは
R^(4)とR^(5)は共に、それらが結合する芳香族フェニル環Cと一緒になってナフチル環を形成する架橋1,3-ブタジエニル基である]
で表される少なくとも1種のイソオキサゾリン化合物I、またはその互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマーもしくは塩と、
2)アルファ-シペルメトリン、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、チアメトキサム、アバメクチンおよびフロニカミドからなる群から選択される少なくとも1種の活性化合物II
とを含む殺有害生物剤混合物であって、ただし、殺有害生物剤混合物が4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]ベンズアミドと、イミダクロプリド、チアメトキサムまたはフロニカミドとの混合物を含まない、前記殺有害生物剤混合物。』である点において一致し、両者に構成上の差異はない。
また、先願発明は、摘記4aの「本発明の化合物と、他の生物学的に活性な(特に、無脊椎有害生物防除)化合物または薬剤(すなわち、活性成分)との組み合わせは、付加的を上回る(すなわち相乗的な)効果を生じることができる。」との記載にあるように、相乗的な効果を生じることができるものである。
したがって、補正発明は、先願4の出願当初明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本願の出願の時にその出願人が当該他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(4)サポート要件
ア.発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】
【0006】従って、本発明の目的は、施用量を低減させる課題、活性の範囲を強化する課題、ノックダウン活性と長期間にわたる防除とを併せ持たせる課題、または耐性管理に関する課題の少なくとも1つを解決する殺有害生物剤混合物を提供することであった。…
【0163】化合物Iおよび1種または複数の化合物IIは、通常、500:1?1:100、好ましくは20:1?1:50、特に5:1?1:20の重量比で施用する。所望の効果に応じて、本発明による混合物の施用量は、5g/ha?2000g/ha、好ましくは50?1500g/ha、特に50?750g/haである。…
【0278】一般に、「殺寄生生物有効量」とは、標的生物の成長に関する顕著な効果(ネクローシス、死滅、遅延、阻止および除去、駆除の効果など)を得るために必要とされる、さもなければ、標的生物の発生および活動を低下させるのに必要とされる活性成分の量を意味する。殺寄生生物有効量は、本発明で用いられる種々の化合物/組成物によって異なり得る。本組成物の殺寄生生物有効量はまた、一般的条件(例えば、所望の殺寄生生物効果およびその持続期間、標的種、施用方法など)によっても異なる。…
【0292】生物学所見 相乗効果は、2種以上の化合物の併用効果が各化合物の個別効果の和よりも大きい場合の相互作用として説明することができる。2種の混合パートナー(XおよびY)間の防除率における相乗効果の存在は、コルビーの式(Colby,S.R.,1967,Calculating Synergistic and Antagonistic Responses in Herbicide Combinations,Weeds,15,20-22)を用いて計算することができる:
【数1】

【0293】観察された併用防除効果が予想した併用防除効果(E)よりも大きい場合、その併用効果は相乗的である。…
【0295】試験B.1:モモアカアブラムシ(Green Peach Aphid、ミズス・ペルシカエ(Myzus persicae))の防除 浸透法によるモモアカアブラムシ(Myzus persicae)の防除を評価するため、人工膜の下に液体人工食餌を入れた96ウェルマイクロタイタープレートで試験ユニットを構成した。
【0296】75重量%の水と25重量%のDMSOを含む溶液を使用して本化合物または混合物を製剤化した。異なる濃度の製剤化化合物または混合物を、特注のピペッターを用いてアブラムシの食餌中にピペッティングし、これを2回繰り返した。
【0297】これらの試験における実験混合物については、同一量の、それぞれ所望濃度の両混合パートナーを一緒に混合した。
【0298】施用後、5?8匹のアブラムシ成虫をマイクロタイタープレートウェル内の人工膜上に置いた。その後、処理したアブラムシ食餌上でこのアブラムシに吸汁させ、23±1℃、RH(相対湿度)50±5%で3日間インキュベートした。その後、アブラムシの死滅率と繁殖力を目視により評価した。試験した混合物の結果を表B.1に示す。
【0299】表B.1 モモアカアブラムシ(Myzus persicae)の防除
【化12】

【0300】試験化合物はC.I.240である:
【表4】

【0301】試験B.2:ワタミハナゾウムシ(Boll weevil、アントノムス・グランジス(Anthonomus grandis))の防除 ワタミハナゾウムシ(Anthonomus grandis)の防除を評価するため、昆虫餌と20?30個のワタミハナゾウムシの卵を入れた24ウェルマイクロタイタープレートで試験ユニットを構成した。
【0302】化合物または混合物は、75重量%の水と25重量%のDMSOを含有する溶液を使用して製剤化した。異なる濃度の製剤化化合物または混合物を、特注のマイクロアトマイザーを用いて昆虫餌に20μlスプレーした(2回繰り返し)。
【0303】これらの試験における実験混合物については、同一量の、それぞれ所望濃度の両混合パートナーを一緒に混合した。
【0304】施用後、マイクロタイタープレートを23±1℃、50±5%のRHで5日間インキュベートした。次いで、卵および幼虫の死亡率を目視により評価した。試験した混合物の結果を表B.2に示す。
【0305】表B.2:ワタミハナゾウムシ(Anthonomus grandis)の防除
【化13】

【0306】試験化合物はC.I.240である:
【表5】



イ.検討
一般に『特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人…が証明責任を負うと解するのが相当である。』とされている〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。
そこで、補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものが、本願明細書の段落0006に記載された「施用量を低減させる課題、活性の範囲を強化する課題、ノックダウン活性と長期間にわたる防除とを併せ持たせる課題、または耐性管理に関する課題の少なくとも1つを解決する殺有害生物剤混合物を提供すること」という課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて検討する。

先ず、発明の詳細な説明の記載について検討する。補正発明は、ただし書きで『I.C.240と、イミダクロプリド、チアメトキサムまたはフロニカミドとの混合物を含まない』ものとされている。すなわち、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された試験結果において補正発明の要件を満たすものは「アルファ-シペルメトリン+試験化合物C.I.240」と「アバメクチン+試験化合物C.I.240」の2つの組合せの混合物のみである。
そして、殺有害生物剤混合物という技術分野においては、一般に『2種以上の活性化合物を併用した混合物において、相乗効果を奏する組合せについては予測性が低く、実際に確認してみなければわからないのが通常である』というのが当業者の通常の認識であるところ、例えば、摘記1bの記載にあるように、相乗効果が起こる場合には活性化合物の低施用量でも農業的に満足できるレベルの防除効果が得られるので、相乗効果が実際に確認されている混合物については、補正発明の解決しようとする課題のうちの「施用量を低減させる課題」を解決できると認識できる範囲にあると認められる。
しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、上記「アルファ-シペルメトリン+試験化合物C.I.240」と「アバメクチン+試験化合物C.I.240」の2つの組合せ混合物において相乗効果が起こることが実際に確認されているにすぎないので、これら2つの組合せ混合物以外の混合物については、発明の詳細な説明の記載により当業者が補正発明の課題(相乗効果により「施用量を低減」させる課題)を解決できると認識できる範囲のものであると直ちに認めることはできない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明には、その【表4】及び【表5】に示されるとおりの「*コルビーの式による相乗的防除効果」についての試験結果が示されているが、補正発明の組合せ混合物が「活性の範囲を強化する課題」や「ノックダウン活性と長期間にわたる防除とを併せ持たせる課題」や「耐性管理に関する課題」を解決できることについては、具体的な試験結果による裏付けがなされていない。このため、補正発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が前述の「活性の範囲を強化する課題」等の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。

ここで、平成26年10月10日付けの審判請求書の第10頁第25行?第12頁第20行において、審判請求人は『補正後の本願請求項1に記載される化合物Iは、本願明細書の実施例において相乗効果を奏することが実証されている化合物C.I.240と構造が類似する化合物であるので、当業者は、補正後の本願請求項1に記載される化合物Iは、C.I.240と同様に相乗効果を奏することを予測することができる。…また、アセタミプリド、クロチアニジン、ニテンピラムは、[化1]に示す通り、本願明細書の実施例及び実験成績証明書において相乗効果を奏することが実証されているネオニコチノイド系化合物の「チアメトキサム、イミダクロプリド、チアクロプリド」と構造が類似する化合物である。…以上より、補正後の本願請求項1に記載される化合物I及び活性化合物IIの組合せは、本願明細書の実施例で相乗効果を奏することが示されている上記の5種類の組合せと同様に相乗効果を奏するものである。』と主張している。
しかしながら、上記『(3)ア.』の摘記4eの「試験G」では、補正発明の「イソオキサゾリン化合物I」に該当する化合物1(本願C.I.402)、19(同411)、35(同366又は438)、37(同474)、及び62(同420又は456)の5種類の薬理活性が、化合物1及び19の2種については「80%の死亡率」を示すのに対して、他の35、37及び62の3種については「80%の死亡率」を示さないとされている。してみると、化学構造が類似するイソオキサゾリン化合物であっても、その薬理活性は相互に異なるので、補正後の請求項1に記載される多種多様の化合物Iを含む混合物の全てが、本願明細書の「C.I.240」を用いた2つの具体例と同様な相乗効果を奏すると直ちに認めることはできない。
また、上記『(2)ア.』の摘記1cには、イソオキサゾリン化合物に組み合わせて使用されるアセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、及びチアメトキサムの「典型的な重量比」が、その種類に応じて異なることが示されている。してみると、化学構造が類似するネオニコチノイドであっても、薬理活性を発揮できる配合量が相互に異なるので、ネオニコチノイド化合物の全てが相互に全く同じ薬理活性を示すとはいえない。このため、補正後の請求項1に記載される合計9種の化合物IIを含む混合物の全てが、本願明細書の2つの具体例と同様な相乗効果を奏すると直ちに認めることはできない。
加えて、本願明細書の【表5】における「平均防除%」が「100*」であって、その注釈で「*コルビーの式による相乗的防除効果」とされる結果については、本願明細書の段落0293に記載された「観察された併用防除効果が予想した併用防除効果(E)よりも大きい場合、その併用効果は相乗的である。」との説明にある「観察された併用防除効果」と「予想した併用防除効果(E)」のいずれを意味するのか明確ではなく、同段落0292に記載された「E=XY/100」で表されるコルビーの式〔なお、コルビーの式は、原審で提示された先願3(特願2008-261239号)の明細書の段落0126の「E=X+Y-XY/100」との記載にある式が一般的である。〕との関係も明確ではないので、当該結果によっては上記2つの具体例の『相乗的な併用効果』の存在を直ちに認めることはできない。
そうすると、補正発明が、発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。

次に、本願出願時の技術常識について検討する。上記『(2)イ.』の項に示したように、本願優先日(2008年7月9日)前に頒布された上記引用文献1には、本願の「C.I.402」に合致するイソオキサゾリン化合物と、アバメクチン、アセタミプリド、クロチアニジン、シペルメトリン、フロニカミド、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド及びチアメトキサムからなる群から選択される活性化合物との組合せが、相乗的な効果を生じることが記載されている。
また、本願出願日(2009年7月6日)前の同年5月21日に出願公開された特開2009-108046号公報(原審で提示された先願3に対応する公開公報)の段落0126には、本願の「C.I.240」に合致するイソオキサゾリン化合物(化合物No.20)と、アセタミプリド(ny)、クロチアニジン(os)、イミダクロプリド(qq)、ニテランピラム(rj)、チアメトキサム(su)、フロニカミド(qb)、若しくはチアクロプリド(sr)との組合せが、相乗的な効果を生じることが記載されており、原査定で「引用文献2」として引用された「国際公開第2005/085216号」にも同様な組合せが示唆されている。
しかしながら、上記引用文献1及び2並びに先願3の明細書に記載された公知の組合せとその相乗効果が、本願出願時の技術水準において当業者にとって「技術常識」といえる程度に知られていたとは認められない。
また、上記引用文献1及び2並びに先願3の明細書に記載された公知の組合せ以外の補正発明の組合せが、本願出願時の「技術常識」として普通に知られていたとも認められない。
そうすると、補正発明が、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。

以上総括するに、補正発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識である範囲のものであるとも認められない。
したがって、補正後の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3.まとめ
以上のとおり、補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、本件補正は、その余のことを検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、〔補正の却下の決定の結論〕のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?26に係る発明は、平成26年5月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は「この出願については、平成25年11月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由1?5によって、拒絶をすべきものです。」というものであって、当該拒絶理由通知書には、
当該「理由1」として「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」との理由と、
当該「理由3」として「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。」との理由と、
当該「理由4」として「この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」との理由と、
当該「理由5」として「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」との理由が示されている。

そして、その「記」には、
『理由1、2について(請求項1?33)
(1)引用文献1:請求項1?33:理由1、2
本願請求項1?33に係る発明は、引用文献1に記載された発明であり、それに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許請求の範囲、表B、第89頁第23?26行、第102頁第37行?第103頁第8行)。なお、表Bに具体的に記載された組み合わせ以外についてみても、引用文献1において、同等とされている他の有効成分との組合せを検討することは、当業者が容易に行うことである。
…理由3について(請求項1?33)
本願請求項1?33に係る発明は、先願明細書3、4に記載された発明と同一である。…先願明細書4:特許請求の範囲、表B、【0346】、【0348】、【0420】を特に参照。
…理由4、5について(請求項1?33)
発明の詳細な説明の【0006】には、本願請求項1?33に係る発明の解決しようとする課題は、施用量を低減させ、活性の範囲を強化させ、ノックダウン活性と長期にわたる防除とを併せ持たせ、耐性管理に関する課題の少なくとも一つを解決する殺有害生物剤混合物の提供であると記載されている。そして、具体的には、式IとしてC.I.240を選択し、それと、チアメトキサム、イミダクロプリド、アルファ-シペルメトリン、アバメクチン、フロニカミドから選択される一つの成分からなる5種類の混合物について実施し、上記課題を解決できることが確認されている。一方、本願請求項1?33に係る発明は、上記5種類の混合物とは全く異なる多種多様な化合物の混合物を広汎に包含するものであるが、引用文献1、2にも記載されているように、活性化合物をその他の殺菌剤や殺虫剤と併用し作用の増強を図ることは、普通に行われていることであるところ、その中でも特に顕著な相乗効果を奏する組み合わせについては予測性が低く、実際に確認してみなければ分からないのが通常であるといえる。そうすると、本願請求項1?33に係る発明のうち、上記5種類の混合物以外に関する発明については、実際に相乗効果の確認がされておらず、上記課題を解決できると認識することはできないから、発明の詳細な説明に実質的に記載された発明ではなく、また、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載された発明でもない。
…引用文献等一覧
1.国際公開第2007/079162号
2.国際公開第2005/085216号
3.特願2007-264352号(特開2009-108046号)
4.特願2010-514991号(特表2010-531883号)』との指摘がなされている。

また、原査定の「備考」には、
『(1)理由1、2(29条1項3号、同条2項:引用文献1:請求項1?26)…引用文献1には、式1の化合物と他の無脊椎有害生物防除剤との組合せは、相乗効果を生じることができると記載され(第85頁第28?36行)、相乗効果を生じる特定の組合せとして表Bが記載されている。そして、表Bには、化合物番号2をアバメクチン等のその他の無脊椎有害生物防除剤と併用した組成物が具体的に記載されているところ(例えば、混合物番号B-1等)、上記化合物番号2は、索引表2によれば、本願式Iの化合物(AがA-6であって、R4とR5がナフチル環を形成している化合物)に相当し、アバメクチン等は、本願活性化合物IIに相当する。そうすると、引用文献1には、相乗効果を奏する組合せとして、本願化合物IとIIの組合せが具体的に記載されているといえる。
…(3)理由3(29条の2:先願明細書4:請求項1?26)先願明細書4には、式1の化合物と他の無脊椎有害生物防除剤との組合せは、相乗効果を生じることができると記載され(【0322】)、相乗効果を生じる特定の組合せとして表Bが記載されている。そして、表Bには、例えば化合物番号1をアバメクチン等のその他の無脊椎有害生物防除剤と併用した組成物が具体的に記載されているところ(例えば、混合物番号A-1等)、上記化合物番号1は、索引表Aによれば、本願式Iの化合物(AがA-6であって、R4とR5がナフチル環を形成している化合物)に相当し、アバメクチン等は、本願活性化合物IIに相当する。そうすると、先願明細書4には、相乗効果を奏する組合せとして、本願化合物IとIIの組合せが具体的に記載されているといえる。
…(4)理由4、5(36条4項1号、同条6項1号:請求項1?26)…補正後の本願発明のうち、化合物IにおけるAが、A-1、A-4である場合については、依然として、発明の詳細な説明に実質的に記載された発明ではなく、また、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載された発明でもない。そして、AがA-6である場合について検討すると、出願人は上記のとおり、新たに実験成績証明書を提出して、発明の詳細な説明に具体的に開示された5種類の組み合わせ以外も相乗効果を奏することを主張しているが、発明の詳細な説明の記載が不足しているために、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができるといえない場合には、出願後に実験成績証明書を提出して、発明の詳細な説明の記載不足を補うことによって、請求項に係る発明の範囲まで、拡張ないし一般化できると主張したとしても、拒絶理由は解消しない(審査基準第I部第1章2.2.1.5(1)参照。)。ここで、新たに追加された組合せは、化合物IIが、エチプロール、フィプロニル、スピノサド、チアクロプリド、クロルフェナピル、スピロテトラマト、フルベンジアミンである組合せであるが、発明の詳細な説明に具体的に開示された式IがC.I.240であり、化合物IIが、チアメトキサム、イミダクロプリド、アルファ-シペルメトリン、アバメクチン、フロニカミドから選択される一つである組み合わせと同様に相乗効果を奏すると推認できる技術常識は存在しない。特に、「A.2 GABA依存性クロライドチャネルアンタゴニスト」であるエチプロール、フィプロニル、「A.7 酸化的リン酸化に影響を及ぼす化合物」であるクロルフェナピル、「A.12 脂質合成阻害剤」であるスピロテトラマト、「A.13 様々な化合物」であるフルベンジアミンは、上記5種の化合物とは、作用機序さえも異なる化合物であるから、5種の化合物と同様に相乗効果を奏すると推認することは到底できるものではない。以上のとおりであるから、出願人の主張は採用できず、補正後の本願発明のうち、上記5種の混合物に関する発明以外については、発明の詳細な説明に実質的に記載された発明ではなく、また、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載された発明でもない。』との指摘がなされている。

3.判断
(1)原査定の理由1について
本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、補正発明の「イソオキサゾリン化合物I」について、その「式I」の「Aは、A-6:」という選択肢を「Aは、A-1、A-4またはA-6:」という選択肢にするとともに、補正発明の「活性化合物II」について、その「2)アルファ-シペルメトリン、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、チアメトキサム、アバメクチンおよびフロニカミドからなる群から選択される」という選択肢を「2)以下のもの:A.2 GABA依存性クロライドチャネルアンタゴニストであって、アセトプロール、エチプロール、フィプロニル、ピラフルプロール、ピリプロール、バニリプロールおよびフェニルピラゾール化合物II.A2.1:【化3】…からなるフェニルピラゾール系化合物のクラスから選択されるもの;A.3 ナトリウムチャネルモジュレーターであって、アレトリン、ビフェントリン、ベータ-シフルトリン、シフルトリン、ラムダ-シハロトリン、シペルメトリン、アルファ-シペルメトリン、ベータ-シペルメトリン、ゼータ-シペルメトリン、デルタメトリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フルシトリネート、タウ-フルバリネート、メトフルトリン、ペルメトリン、プロフルトリン、ピレトリン(除虫菊)、シラフルオフェン、およびトラロメトリンからなるピレスロイド系化合物のクラスから選択されるもの;A.4 ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト/アンタゴニストであって、アセタミプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、イミダクロプリド、ニテンピラム、スピノサド(アロステリックアゴニスト)、スピネトラム(アロステリックアゴニスト)、チアクロプリド、チアメトキサムおよびAKD-1022からなるネオニコチノイド系化合物のクラスから選択されるもの;A.5 クロライドチャネル活性化因子であって、アバメクチン、エマメクチン安息香酸塩、レピメクチンまたはミルベメクチンから選択されるもの;A.7 酸化的リン酸化に影響を及ぼす化合物であって、ジアフェンチウロン、フェンブタチンオキシド、プロパルギットまたはクロルフェナピルから選択されるもの;A.12 脂質合成阻害剤であって、スピロジクロフェン、スピロメシフェンまたはスピロテトラマトから選択されるもの;A.13 以下からなる一群の様々な化合物:フロニカミドおよびフルベンジアミンからなる群Aから選択される」という選択肢にしたものである。
すなわち、本願発明は補正発明を包含するものである。
してみると、上記『第2 2.(2)』の項に示したのと同様の理由により、本願発明は引用文献1に記載された発明である。
したがって、本願発明は、本願優先日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)原査定の理由3について
上記『3.(1)』に示したように、本願発明は補正発明を包含するものである。
してみると、上記『第2 2.(3)』の項に示したのと同様の理由により、本願発明は先願4の出願当初明細書に記載された発明である。
したがって、本願発明は、先願4の出願当初明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本願の出願の時にその出願人が当該他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

(3)原査定の理由4及び5について
ア.理由5(サポート要件)について
上記『3.(1)』に示したように、本願発明は補正発明を包含するものである。
してみると、上記『第2 2.(4)』の項に示したのと同様の理由により、本願発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識である範囲のものであるとも認められない。
したがって、本願の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

イ.理由4(実施可能要件)について
本願明細書の発明の詳細な説明には、上記『第2 2.(4)ア.』に示したとおりの記載がある。そして、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された具体例において本願発明の要件を満たすものは「アルファ-シペルメトリン+試験化合物C.I.240」と「アバメクチン+試験化合物C.I.240」の2つの組合せの混合物のみである。
ここで、物の発明について実施をすることができるとは、その物を作ることができ、かつ、その物を使用できることである。また、殺有害生物剤のような化学物質の場合、一般に物の構造や名称からその物がどのように使用できるかを理解することが困難であって、本願明細書の段落0278に記載されるように、例えば、殺有害生物剤の有効量は、本願発明で用いられる種々の化合物I及びII並びにその混合組成によって異なるものである。
してみると、原査定の「本願発明のうち、化合物IにおけるAが、A-1、A-4である場合については、…当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載された発明でもない。」との指摘について、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の化合物IのAが「A-1」や「A-4」である場合に、どのような実施形態(有効量や施用方法などの各種条件)で所望の殺有害生物効果を奏する殺有害生物剤混合物として実際に使用できるのかが具体的に記載されていないので、当業者といえども過度の試行錯誤をすることなく本願発明を実施できるとはいえない。
また、原査定の『特に、「A.2 GABA依存性クロライドチャネルアンタゴニスト」であるエチプロール、フィプロニル、「A.7 酸化的リン酸化に影響を及ぼす化合物」であるクロルフェナピル、「A.12 脂質合成阻害剤」であるスピロテトラマト、「A.13 様々な化合物」であるフルベンジアミンは、上記5種の化合物とは、作用機序さえも異なる化合物であるから、…本願発明のうち、上記5種の混合物に関する発明以外については、…当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載された発明でもない。』との指摘について、発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識を参酌しても、本願発明の化合物IIが当該「エチプロール」や「クロルフェナピル」や「スピロテトラマト」や「フルベンジアミン」などである場合に、組合せによる拮抗作用などを生じることなく所望の殺有害生物効果を奏する殺有害生物剤混合物として実際に使用できるといえる根拠が見当たらないので、当業者といえども過度の試行錯誤をすることなく本願発明を実施できるとはいえない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条及び第29条の2の規定により特許をすることができないものに該当し、また、本願は、特許法第36条第4項第1号及び第6項に規定する要件を満たしていないものに該当するから、その余の事項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-27 
結審通知日 2015-12-01 
審決日 2015-12-14 
出願番号 特願2011-517117(P2011-517117)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (A01N)
P 1 8・ 575- Z (A01N)
P 1 8・ 113- Z (A01N)
P 1 8・ 161- Z (A01N)
P 1 8・ 537- Z (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 千弥子  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 辰己 雅夫
木村 敏康
発明の名称 イソオキサゾリン化合物Iを含む殺有害生物活性混合物  
代理人 平木 祐輔  
代理人 田中 夏夫  
代理人 藤田 節  
代理人 新井 栄一  

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